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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】低振動シリンダ
(51)【国際特許分類】
   B41F 13/08 20060101AFI20240214BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240214BHJP
   B41F 13/10 20060101ALI20240214BHJP
   B41F 5/24 20060101ALI20240214BHJP
   B41N 1/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B41F13/08 173
B32B1/08 Z
B41F13/10
B41F5/24
B41N1/06
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020026047
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2020131714
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】19158348.3
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】エクシス ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】XSYS Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 77731 Willstaett, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュヴィアツ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベニンク
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540617(JP,A)
【文献】国際公開第2017/194440(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157285(US,A1)
【文献】特開平11-139027(JP,A)
【文献】国際公開第99/036270(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0313511(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 13/08
B32B 1/08
B41F 13/10
B41F 5/00
B41N 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの中空シリンダの用途のために形成されたシリンダ(10)であって、前記シリンダ(10)は層構造を有しており、前記層構造は、内側から外側へと、
ベース層(12)またはシリンダコア、
第1の圧縮性層(14)、
充填層(16)、
第1の中間層(18)、
第2の圧縮性層(20)、
第2の中間層、および
外層(22)、
の順番で層を有しており、前記外層(22)は、前記シリンダ(10)の外周面を形成しており
前記第1の圧縮性層(14)の硬さおよび前記第2の圧縮性層(20)の硬さは、前記ベース層(12)、前記充填層(16)、前記第1の中間層(18)、前記第2の中間層、および前記外層(22)の硬さよりも低い、シリンダ(10)。
【請求項2】
前記シリンダ(10)は、少なくとも1つの第3の中間層を有しており、前記少なくとも1つの第3の中間層は、前記第1の圧縮性層(14)と前記充填層(16)との間に配置されている、請求項1記載のシリンダ(10)。
【請求項3】
前記シリンダ(10)は、前記シリンダの内部に配置されている少なくとも1つの通路を備え、前記通路は、前記シリンダ(10)の前記外周面上の開口に、かつ/または前記シリンダ(10)の端面上の開口または接続部に連通している、請求項1または2記載のシリンダ(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの通路は、前記充填層(16)に配置されている、請求項3記載のシリンダ(10)。
【請求項5】
前記ベース層(12)、前記第1の中間層(18)、前記第2の中間層、および前記第3の中間層の少なくとも1つの材料は、繊維強化プラスチックである、請求項記載のシリンダ(10)。
【請求項6】
前記ベース層(12)、前記第1の中間層(18)、前記第2の中間層、および前記第3の中間層の少なくとも1つは、0.5mm~5mmの範囲の厚さを有する、請求項記載のシリンダ(10)。
【請求項7】
前記第1の圧縮性層(14)および/または前記第2の圧縮性層(20)は、0.1mm~10mmの範囲の厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項8】
前記ベース層(12)、前記中間層、および前記外層(22)の厚さの合計と、前記第1および前記第2の圧縮性層(14,20)の厚さの合計との比は、0.01~400の範囲にある、請求項1から7までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項9】
前記第1の圧縮性層(14)の厚さと、前記第2の圧縮性層(20)の厚さとの比は、0.1~10の範囲にある、請求項1から8までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項10】
前記充填層(16)は、1mm~200mmの範囲の厚さを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項11】
前記外層(22)は、0.1mm~50mmの範囲の厚さを有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項12】
質量390g、支点までの長さ245mm、および30°の振れ角を有する試験用ハンマ(104)による刺激が与えられた場合、前記シリンダ(10)の共振は、最大で、3m/sの加速度値を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項13】
前記シリンダ(10)の共振は、指数関数的に減衰し、この場合、減衰定数dは、0.15<d<0.95の値を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項14】
前記シリンダ(10)は、印刷版胴として構成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項15】
記シリンダは中空シリンダであって、この場合、前記ベース層は、アダプタスリーブまたは印刷スリーブを形成する前記中空シリンダを閉じる内面を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載のシリンダ(10)。
【請求項16】
請求項15記載の第1のシリンダと、前記第1のシリンダの内部に配置される請求項15記載の第2のシリンダと、を備える装置。
【請求項17】
請求項14に記載のシリンダと、前記シリンダ(10)の外周面上に配置された印刷スリーブと、を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの中空シリンダの用途のためにセットアップされたまたは適したシリンダ(例えば印刷胴)であって、シリンダの外周面を形成する硬質外層を有する層構造を備えるシリンダに関する。
【0002】
本発明はさらに、少なくとも2つのこのようなシリンダを備える装置に関する。
【0003】
従来技術
フレキソ印刷は、印刷版の凸部から基材上へ可動性の高い印刷インキを移す、レタープレス印刷プロセスである。フレキソ印刷の特徴は、多種の基材(紙、段ボール、フィルム)の印刷を可能にする、柔軟な印刷版の使用である。オフセット印刷およびグラビア印刷に加えて、フレキソ印刷は、包装業界で最も重要な印刷プロセスの1つである。
【0004】
フレキソ印刷機に関しては、マルチシリンダ印刷機とセンタードラム印刷機とが区別される。センタードラム印刷機の場合は、個々の印刷ユニットが、センタードラムの周りに配置され、センタードラムの上を基材ウェブが通過する。マルチシリンダ印刷機の場合は、個々の印刷ユニットが、直列に配置されている。これらの印刷ユニットは、印刷版胴、印刷版にインキを着けるための彫刻ロール、およびそこから彫刻ロールへ印刷インキを供給するインキ槽から成る。最も単純には、印刷版胴は鋼製のロールから成り、このロール上にフレキソ印刷の版が接着されている。
【0005】
他の印刷プロセスを凌ぐフレキソ印刷の大きな利点は、フォーマットの可変性である。様々な直径の印刷版胴として鋼製のシリンダを使用することにより、様々なフォーマットのために印刷することができる。当業者により使用される用語は、リピート長さという用語である。リピート長さは、印刷版胴の完全な1回転において印刷される長さに相当する。しかしながら、重い鋼製のシリンダを交換するのには時間がかかる。したがって、今日では、アダプタスリーブによってリピート長さをより簡単に変更できるフレキソ印刷機が利用可能である。アダプタスリーブは、鋼製のシリンダ上に係合される。通常、アダプタスリーブの壁厚さは、7mm~300mmの範囲にある。アダプタスリーブには、通常、事前に取り付けられた印刷版を支持する印刷スリーブが係合する。アダプタスリーブと印刷スリーブとは、今日、一般に、スリーブとも呼ばれる。スリーブは、プラスチックから製造される。プラスチック製のスリーブは、相当する鋼製のシリンダよりもかなり軽量であり、したがって、印刷機においてより容易に交換することができる。
【0006】
スリーブの構造は、通常以下の通りである(内側から外側に向かって)。GRP材料(GRP=ガラス繊維強化プラスチック)の薄い層の上に、薄い圧縮性層が存在しており、この圧縮性層は、第2の薄いGRP材料の層によって覆われている。この層システムは、圧縮空気によってスリーブを膨張させることができ、このスリーブを、以下では、GRPベーススリーブと呼ぶ。GRPベーススリーブは通常、1mm~4mmの厚さを有している。GRPベーススリーブには、数mm~数cmの厚さを有するポリウレタン発泡層が適用される。この層の機能は、層の厚さを形成することであり、または所望のリピート長さを生成することである。通常、ポリウレタン発泡層は、さらに薄いGRP層、または薄い外層を支持し、スリーブの機械的および化学的安定性を保証する。
【0007】
アダプタスリーブが容易に係合されることを保証するために、印刷版胴は、圧縮空気の流れを放出する空気孔を有していてよい。圧縮空気の結果として、エアクッションが形成され、これによりアダプタスリーブの内径が拡大し、アダプタスリーブは、印刷版胴上をスライドする。空気の供給が停止すると、アダプタスリーブが、印刷版胴をクランプし、その上にしっかりと固定される。
【0008】
印刷スリーブをアダプタスリーブ上に装着することができるように、アダプタスリーブも同様に、通常、空気案内システムを含む。従来技術ではこの場合、2つの公知のシステムがある。圧縮空気が、直接印刷版胴から案内される(ブリッジシステム)、またはアダプタスリーブの端面の1つへの別個の空気接続(エアロシステム)である。
【0009】
ブリッジシステムの場合は、アダプタは、アダプタスリーブの内側からアダプタスリーブの外側へと延在する空気通路を有しているので、印刷版胴から出てくる圧縮空気により、アダプタスリーブ上にエアクッションを形成することができる。ブリッジシステムのアダプタスリーブは、欧州特許第1263592号明細書により公知である。
【0010】
印刷画像を損なうことなく、高い印刷速度を達成するためには、印刷プロセス中のシリンダの振動をできるだけ小さくすべきである。この目的で、シリンダは、良好な減衰特性を有しているべきである。シリンダの振動および減衰特性は、特に、シリンダの質量および使用される材料の物理的特性に依存する。特に弾性率は、材料が変形に対して示す抵抗に影響を与え、したがってその材料の減衰特性に影響を与える。
【0011】
国際公開第2017/089221号により、寸法安定性があり、液体不透過性の外層と複数の内層とを有するスリーブが公知である。複数の内層は、最も内側の層としてのガラス繊維強化プラスチックを主体としたベース層、圧縮性層、およびビルドアップ層を含む。端面に加えて付加的に、スリーブは、液体不透過性材料のリングを備え、このリングにより、端面が閉じられる。
【0012】
独国特許出願公開第102014220850号明細書には、内層と外層とを有する印刷スリーブが記載されており、この外層は内層に直接接触している。内層は、ガラス繊維強化された圧縮性層である。外層の外面は、印刷面として設計されている。
【0013】
欧州特許出願公開第3189976号明細書には、伸縮可能な材料から成るベース層、可融性ポリマコードにより強化された層、および印刷表面層を備える印刷スリーブが記載されている。熱処理中に、可融性ポリマコードは溶融する。さらに、強化層に埋め込まれた不融性コードがあってもよく、ベース層と強化層との間に配置された非融合コードを備えるさらなる層があってもよい。
【0014】
欧州特許第2051856号により、ガス通路が組み込まれたアダプタスリーブが公知である。アダプタスリーブは、ベース層、補強層、バリア層、および表面層を有する。ベース層は、金属またはポリマから形成されてよい。補強層は、ガス通路が組み込まれた発泡ポリウレタン層である。バリア層は、繊維強化ポリマ材料として形成されていてよい。表面層は、ポリウレタンのようなポリマを含む。
【0015】
国際公開第2005/110751号および国際公開第2005/111725号には、ベーススリーブ、クッション層、バリア層、および光重合性層を有する印刷スリーブが開示されている。ベーススリーブとクッション層とはこの場合、光重合性層の硬化に適していて放射線に対して透過性である。
【0016】
米国特許出願公開第2004/0103976号明細書には、繊維強化された薄壁ベーススリーブ、その上に配置された圧縮性層、および画像形成層を有した印刷スリーブが記載されている。
【0017】
国際公開第99/36270号および米国特許第5860360号明細書により、内側ポリマ層、繊維含有補強層、ポリマ中間層、クッション層、および外側ポリマ層を有するスリーブが公知である。内側ポリマ層は、65~90ショアA硬さの範囲にある硬さを有している。クッション層は、25~55ショアA硬さの範囲にある硬さを有している。個々の層の間には、付加的な接着層が配置されていてよい。
【0018】
発明の開示
少なくとも1つの中空シリンダの用途のためにセットアップされたまたは適したシリンダであって、このシリンダは層構造を有しており、この層構造は、内側から外側へと、ベース層またはシリンダコア、第1の圧縮性層、充填層、中間層、第2の圧縮性層、および外層、の順番で層を有しており、外層は、シリンダの外周面を形成する、シリンダが提案される。
【0019】
シリンダは、中実シリンダとして、または中空シリンダとして構成されていてよい。中実シリンダとして構成されている場合は、シリンダは、シリンダコアを有しており、その上にシリンダの層構造のその他の層が配置される。シリンダコアは、中実に具現化されていてもよく、または選択的にキャビティを有していてもよい。
【0020】
中空シリンダとして構成されている場合は、シリンダは、最も内側の層としてベース層を有しており、その上にシリンダの層構造のその他の層が配置される。シリンダは、印刷版胴として構成されていてよい。印刷版胴の可能な実施形態は、中空シリンダとしてのまたは中実シリンダとしての構造を含み、印刷版胴は、特に、印刷版胴の外周面上に印刷スリーブおよび/またはアダプタスリーブを受容するように形成されている。
【0021】
シリンダは、アダプタスリーブとして、または印刷スリーブとして構成されていてもよい。この場合、シリンダは通常、中空シリンダであって、中空シリンダを閉じ込める内面を有したベース層を備える。印刷スリーブは好適には、フレキソ印刷スリーブまたはリソグラフ印刷スリーブである。この場合、印刷スリーブの外層は、特に印刷プレートを外層に接着できるように、形成されている、または適している。
【0022】
シリンダは好適には、少なくとも1つの別の中間層を有しており、この場合、少なくとも1つの別の中間層は、第1の圧縮性層と充填層との間に、かつ/または第2の圧縮性層と外層との間に配置されている。
【0023】
したがってシリンダは、例えば層構造を有していてよく、この層構造は、内側から外側に向かって、ベース層またはシリンダコア、第1の圧縮性層、第1の別の中間層、充填層、中間層、第2の圧縮性層、第2の別の中間層、および硬質の外層の順番で層を有している。
【0024】
シリンダは、その内部に配置されている少なくとも1つの通路を備えていてよく、通路は、シリンダの外周面上の開口に、かつ/またはシリンダの端面上の開口または接続部に連通する、かつ/またはシリンダが、ベース層を有する中空シリンダとして設計されている場合には、中空シリンダの内面または端面の開口に連通する。少なくとも1つの通路は、この場合、好適には、シリンダ軸線に対して平行に配置されている。
【0025】
例えば、中実シリンダとして構成されたシリンダは、1つの端面に、圧縮空気のための接続部を有しており、この接続部は、少なくとも1つの通路を介して、シリンダの外周面上の開口に連通している。この種のシリンダは、特に印刷版胴として構成されていてよい。外周面に流出する圧縮空気により、例えば別のアダプタスリーブとしての、または印刷スリーブとしての1つ以上の中空シリンダの取り付けが容易になる。外周面上の開口は、外層における1つ以上の円形の、スリット状の、またはアングル状の開口の形態で、または多孔性材料として、または高い割合の開口を有する材料として、設計されてよい。
【0026】
中空シリンダとして構成されたシリンダは、その内面に、例えば、開口を有していてよく、この開口は、少なくとも1つの通路を介して、シリンダの外周面上の開口に連通している。中空シリンダの内面上の開口は、ガス入口として機能することができる。このようにして、印刷版胴から供給される圧縮空気は、外面の開口へと流通することができる。この種の中空シリンダは、特にアダプタスリーブとして構成されていてよい。
【0027】
中空シリンダの内面上のガス入口または開口はこの場合、ベース層における1つ以上の円形の、スリット状の、またはアングル状の開口の形態で、または多孔性材料として、または高い割合の開口を有する材料として、設計されてよい。ガス入口はこの場合、アダプタスリーブの長さ方向に沿って見た場合、アダプタスリーブの片側の最初の3分の1に位置しており、この片側は、ユーザーに面する側であることが好ましい。
【0028】
圧縮空気がアダプタスリーブの外周の表面へと案内されるならば、これにより、例えば別のアダプタスリーブとしての、または印刷スリーブとしての1つ以上の別の中空シリンダの取り付けが容易になる。アダプタスリーブの外周上の開口は、例えば、外層における1つ以上の円形の、スリット状の、またはアングル状の開口の形態で、または多孔性材料として、または高い割合の開口を有する材料として、設計されてよい。
【0029】
所定の領域に、多孔質かつガス透過性の構成を与えるために、多孔質材料だけでなく、単位面積あたりの開口の割合が高い材料を使用することも可能である。このような材料は、ふるい状の、グリル状の、フィン状の、またはスリット状の開口を有していてもよい。
【0030】
少なくとも1つの通路は、充填層に配置されていてよい。この場合、通路は、例えば、充填層内の孔またはスリットの形態で設計されてよく、好適には軸方向に延在していてよく、換言するとシリンダの軸線に対して平行に延在していてよい。さらには、通路は、充填層内に埋め込まれているホースの形態で構成されてもよい。さらなる実施形態では、少なくとも1つの通路が、シリンダの1つ以上の別の層内に配置されていてもよい。通路をシリンダ内の開口に接続するために、1つ以上の半径方向孔が設けられてよい。
【0031】
シリンダは、以下に説明する複数の層を備えた層構造を有する。
【0032】
ベース層/中間層
シリンダの構成では、ベース層が、シリンダを内部に対して閉じている。ベース層はシリンダに安定性を提供し、層システムのさらなる層の適用のためのベースを成す。シリンダが中実のシリンダである場合は、ベース層の代わりにシリンダコアが使用される。
【0033】
ベース層、中間層、および/または少なくとも1つの別の中間層の材料は、好適には、繊維強化プラスチックである。
【0034】
この場合のプラスチックは、好適には、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシド、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびこれらの組み合わせを含むグループから選択される。
【0035】
プラスチックを強化するために使用される繊維は、好適には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、およびこれらの組み合わせを含むグループから選択される。
【0036】
適切な繊維は、特に、少なくとも50GPaの引張弾性率を有するものであり、約60GPaから約700GPaの範囲の引張弾性率を有する、プラスチックを補強するために使用される通常の繊維を含む。
【0037】
適切なポリマ繊維の例は、特に、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、およびポリウレタン繊維である。
【0038】
ベース層、中間層、および/または少なくとも1つの別の中間層は好適には、0.5mm~5mmの範囲の厚さを有する。さらに好適には、厚さは、0.7mm~4mmの範囲にあり、極めて好適には0.9mm~4mmの範囲にあり、最も好適には1mm~2mmの範囲にある。
【0039】
特に、シリンダが、アダプタスリーブまたは印刷スリーブとして構成されている場合には、ベース層の厚さは好適には1mm未満である。これにより達成される効果は、ベース層が、例えば圧縮空気の圧力にさらされることにより膨張することができるというものである。ベース層の膨張により、中空シリンダの内径が拡大し、これにより好適には、別のアダプタスリーブ上または印刷版胴上へのベース層の装着が容易になる。
【0040】
ベース層、中間層、および/または少なくとも1つの別の中間層は好適には、60ショアD~99ショアDの範囲の硬さを有する。さらに好適には、硬さは、65ショアD~95ショアDの範囲にあり、極めて好適には70ショアD~95ショアDの範囲にあり、最も好適には80ショアD~95ショアDの範囲にある。
【0041】
ベース層、中間層、および/または少なくとも1つの別の中間層は好適には、10GPa~1000GPaの範囲の弾性率を有する。さらに好適には、弾性率は、20GPa~900GPaの範囲にあり、極めて好適には30GPa~800GPaの範囲にあり、最も好適には40GPa~640GPaの範囲にある。弾性率のこの記述は、プラスチック内の繊維の方向に実質的に対応する方向に沿った測定による。
【0042】
ベース層、中間層、および/または少なくとも1つの別の中間層は好適には、0.9g/cm~3g/cmの範囲の密度を有する。さらに好適には、密度は、1g/cm~2.8g/cmの範囲にあり、極めて好適には1.1g/cm~2.4g/cmの範囲にあり、最も好適には1.1g/cm~2.1g/cmの範囲にある。
【0043】
シリンダコア
シリンダが、中実シリンダとして構成されている場合は、シリンダコアは、シリンダの層構造の別の層のためのベースを形成する。シリンダコアは、中実の形態で具現化されていてもよく、または選択的にキャビティを有していてもよい。
【0044】
シリンダコアに適した材料は、例えば、繊維強化材料、鋼、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、クロム、合金、および/またはこれらの複合体、またはこれらの組み合わせである。
【0045】
第1/第2の圧縮性層
シリンダ内の圧縮性層により、シリンダは、シリンダに作用する圧縮力を吸収することができる。圧縮性層は付加的に、シリンダ振動における減衰作用を有する。第1の圧縮性層は、特に、下にある層の部分上の膨張を補償するのに役立つ。
【0046】
第1の圧縮性層および/または第2の圧縮性層の材料は、好適には、弾性固体材料、弾性発泡体、中空球で満たされた材料、およびこれらの材料の組み合わせを含むグループから選択される。
【0047】
弾性材料は、例えば、ゴム、ラテックス、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、シリコーンゴム、またはそれらの組み合わせから選択される。適切なラテックスの一例は、ポリエステルウレタンゴムである。弾性発泡体は、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエステルウレタン発泡体、エポキシ発泡体、シリコーン発泡体、およびこれらの発泡体の2つ以上の組み合わせを含むグループから選択される。
【0048】
第1の圧縮性層および/または第2の圧縮性層は好適には、0.1mm~10mmの範囲の厚さを有する。さらに好適には、厚さは、0.5mm~4mmの範囲にあり、極めて好適には0.7mm~4mmの範囲にあり、最も好適には1mm~3.5mmの範囲にある。
【0049】
第1の圧縮性層および/または第2の圧縮性層は好適には、15ショアA~80ショアAの範囲の硬さを有する。さらに好適には、硬さは、10ショアA~70ショアAの範囲にあり、極めて好適には25ショアA~60ショアAの範囲にあり、最も好適には25ショアA~50ショアAの範囲にある。
【0050】
第1の圧縮性層および/または第2の圧縮性層は好適には、0.1g/cm~1.2g/cmの範囲の密度を有する。さらに好適には、密度は、0.1g/cm~1.1g/cmの範囲にあり、極めて好適には0.1g/cm~1g/cmの範囲にあり、最も好適には0.2g/cm~0.9g/cmの範囲にある。
【0051】
第1の圧縮性層および/または第2の圧縮性層は好適には、シリンダの全ての層のうち最も低い弾性率を有する。
【0052】
充填層
シリンダの充填層は、シリンダの外径を指定された値に合わせて調整するために使用することができる。大きなシリンダ直径が求められる場合、それに応じて充填層の厚さを増加させることができ、逆に小さなシリンダ直径が必要な場合は充填層の厚さを減少させることができる。
【0053】
充填層の材料は好適には、硬質発泡体である。
【0054】
充填層は好適には、0.05g/cm~0.8g/cmの範囲の密度を有する。さらに好適には、密度は、0.1g/cm~0.8g/cmの範囲にあり、極めて好適には0.1g/cm~0.7g/cmの範囲にあり、最も好適には0.2g/cm~0.6g/cmの範囲にある。
【0055】
硬質発泡体は好適には、ポリウレタンフォーム、エポキシフォーム、シリコーンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンテレフタレートフォームである。硬質発泡体は好適には低密度を有し、その密度は好適には、0.05g/cm~0.8g/cmの範囲にある。
【0056】
充填層は好適には、1mm~200mmの範囲の厚さを有する。さらに好適には、厚さは、1mm~180mmの範囲にあり、極めて好適には2mm~150mmの範囲にあり、最も好適には4mm~100mmの範囲にある。
【0057】
充填層は好適には、10ショアD~60ショアDの範囲の硬さを有する。さらに好適には、硬さは、20ショアD~55ショアDの範囲にあり、極めて好適には35ショアD~45ショアDの範囲にあり、最も好適には30ショアD~45ショアDの範囲にある。
【0058】
外層
外層は、シリンダを外部に対して閉じていて、別のシリンダをその上に保持できる表面を提供する。外層の表面は、粗い構造または滑らかな構造を有していてよく、好適には中空シリンダを容易にスライドさせることができるように、極めて滑らかである。外層は好適には、寸法的に安定的である、または硬質である。
【0059】
外層の材料は好適には、金属、セラミック、非強化プラスチック、強化プラスチック、およびこれらの材料の2つ以上の組み合わせを含むグループから選択される。繊維で強化することもできる外層に適したプラスチックの例には、ポリウレタン、エポキシ、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体が含まれる。
【0060】
外層のプラスチックを強化するために使用される繊維は、好適には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、およびこれらの組み合わせを含むグループから選択される。さらに、ベース層に関連して記載された繊維が特に適している。
【0061】
外層は好適には、0.1GPa~10GPaの範囲の弾性率を有する。さらに好適には、弾性率は、0.5GPa~8GPaの範囲にあり、極めて好適には1GPa~7GPaの範囲にあり、最も好適には1GPa~5GPaの範囲にある。
【0062】
外層の厚さは好適には、0.1mm~50mmの範囲にある。さらに好適には、厚さは、0.5mm~30mmの範囲にあり、極めて好適には0.7mm~20mmの範囲にあり、最も好適には1mm~15mmの範囲にある。
【0063】
外層は好適には、60ショアD~99ショアDの範囲の硬さを有する。さらに好適には、硬さは、70ショアD~95ショアDの範囲にあり、極めて好適には80ショアD~95ショアDの範囲にあり、最も好適には85ショアD~95ショアDの範囲にある。
【0064】
層構造
シリンダの層構造の個々の層は、好適には互いに直接隣接している。選択的な可能性は、層間の接着を改善するために2つの層の間に接着促進剤または接着剤を配置することである。
【0065】
層構造では、個々の層の厚さに関して、ベース層、中間層、および外層の厚さの合計と、両圧縮性層の厚さの合計との比が、0.01~400の範囲にあり、より好適には、0.1~100の範囲にあるように選択されると好適である。付加的にまたは選択的に、第1の圧縮性層と第2の圧縮性層との厚さの比は、0.1~10の範囲で選択されると好適であり、より好適には、0.3~3の範囲で選択される。
【0066】
第1の圧縮性層および第2の圧縮性層の硬さは、好適には、これらの層が、ベース層またはシリンダコア、中間層および外層よりも軟質であるように選択される。
【0067】
好適には、圧縮性層の硬さは、充填層の硬さよりも低く、充填層の硬さは、ベース層またはシリンダコアおよび中間層の硬さ以下であり、および外層は、全ての層の中で最も高い硬さを有している。最も硬い層は、好適には繊維強化層である。
【0068】
提案された層構造を有する提案されたシリンダは、良好な振動特性を有する。シリンダの振動特性にとって重要な要素は、共振が発生する周波数およびその範囲である。シリンダの減衰特性も重要であるから、シリンダ振動が大きく減衰され、したがってその振幅は制限され、シリンダは、高速印刷での使用に適している。さらに、シリンダは、好適には、印刷動作でもたらされる周波数に対して共振を示さない。
【0069】
シリンダの共振(周波数)が600Hz未満である場合、500m/分以上の印刷速度でのシリンダの振動の程度は、経験上、印刷において目視可能となるほどに十分に大きい。高い印刷速度を可能にするために、シリンダの共振(周波数)は、好適には、900Hzよりも大きい周波数を有する。
【0070】
さらに、シリンダは、シリンダに作用する衝撃に対して強力な減衰を示す。この場合、質量390g、支点からの長さ245mm、および30°の振れ角を有する試験用ハンマによる刺激が与えられた場合、シリンダの共振振動は、最大で、3m/sの加速度値を示すならば好適である。
【0071】
シリンダ振動は、減衰により、指数関数的に減衰する。したがって、減衰挙動を表すシリンダの振動A(t)の包絡線は、式
A(t)=A-dt
によって、記述されてよく、この場合、Aは時点t=0における振動の振幅であり、dは減衰定数である。この場合、シリンダは好適には、減衰定数dが0.15<d<0.95の値を有するように、構成されている。
【0072】
減衰定数dが0.15未満である場合、共振現象は、印刷試験における所定の速度で知覚されるほどの大きさとなる。dが0.95以上である場合、アダプタスリーブとして形成されたシリンダは、速度が上がるにつれより振動を示すことが観察されている。
【0073】
本発明のさらなる態様は、本明細書で説明した中空シリンダのうちの1つと、この中空シリンダの外周面上に配置される、本明細書で説明した中空シリンダのうちの少なくとも別の1つとを備える装置に関する。中空シリンダの外周面上に配置される1つの別の中空シリンダに対して付加的にまたは選択的に、本明細書で説明される印刷版胴のうちの1つ、または本明細書で説明される中空シリンダのうちの付加的な1つが、中空シリンダの内部に配置されてよい。
【0074】
本発明はさらに、本明細書で説明されたシリンダのうちの1つの外周面上に、または本明細書で説明された装置の最も外側のシリンダの外周面上に印刷スリーブが配置されている装置に関する。
【0075】
本発明による装置の例は、特に、印刷版胴、印刷版胴上に配置されるアダプタスリーブ、およびアダプタスリーブ上に配置される印刷スリーブを備えた装置を含む。さらなる例は、上に配置される印刷スリーブを備えたアダプタスリーブ、および上に配置されるアダプタスリーブを備えた印刷版胴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】層構造を有する中空シリンダを示す断面図である。
図2】(中空)シリンダの振動挙動を確認するための測定装置を概略的に示す図である。
図3】(中空)シリンダの振動のスペクトルを示す図である。
図4】第1の(中空)シリンダの減衰挙動を示すグラフである。
図5】第2の(中空)シリンダの減衰挙動を示すグラフである。
【0077】
図1には、中空シリンダとして構成されたシリンダ10が示されている。このシリンダ10は層構造を有し、この層構造は、内側から外側に向かって、ベース層12、第1の圧縮性層14、充填層16、中間層18、第2の圧縮性層20、および外層22の順番で層を有している。
【0078】
別の実施形態では、シリンダ10は、中実のシリンダとして構成されていてもよく、この場合、ベース層12の代わりにシリンダコアが使用される。さらに、第1の圧縮性層と充填層との間に、かつ第2の圧縮性層と外層との間にそれぞれ別の中間層が任意に配置されていてもよい。
【0079】
図2には、シリンダ10の振動挙動を調査するための測定装置100が示されている。この場合、シリンダ10の振動挙動は、特に、共振が起こる周波数によって決まる。さらに、共振のそれぞれの範囲は、シリンダの特性にとって重要である。
【0080】
項目を測定するために、換言すると共振の周波数およびその範囲を測定するために、調査されるシリンダ10は、測定装置100内へ挿入される。測定センサ102は、シリンダ10上に固定される。測定装置100はさらに、所定の衝撃によってシリンダ10に制御された刺激を与えるために、ハンマ104を備える。
【0081】
測定センサ102は、例えば、加速度センサとして構成されていて、衝撃後にシリンダ10内に励起された振動を測定するようにセットアップされている。この目的で、測定センサ102の測定データは、測定ユニット106に送信され、そこに保存され、解析される。
【0082】
例:
振り子式衝撃試験
図2を参照して説明された測定装置100を使用する測定のために、アダプタスリーブとして構成された中空シリンダが、取付けスチールシリンダの上に係合される。測定センサ102は、アダプタスリーブの長さの1/4のところで、12時のところに、すなわち上面に固定されている。3時のところで、すなわち、測定センサ102に対して90°ずらされて、同じ長さ位置でハンマ104によって衝撃が加えられる。この衝撃が測定に影響を与える。ハンマ104は質量390gであり、支点からの長さは245mmである。シリンダ10に所定の衝撃を加えるために、ハンマ104は、30°振られて、放される。ハンマ104の頭部は、硬質プラスチックから成るので、測定中のシリンダ10は破損しない。
【0083】
以下のトライアルは、機器ビブエキスパート2(VIBXpert II)およびオムニトレンドソフトウェアバージョン2.91(Omnitrend software version2.91)(DB プルーフテクニック社)と、取付け測定センサIPC100mV/g(DB プルーフテクニック社)とを使用して行われ、測定センサは、調査するシリンダにワックスで固定された。
【0084】
共振周波数は、測定センサ102によって測定された、ハンマの衝撃による加速度の時間的推移の収集データから算出される。時間信号は、次いで、例えばフーリエ変換または数値変換によって、測定ユニット106により周波数分析にかけられる。
【0085】
シリンダの共振は、衝撃試験によって、0.25Hzの分解能で、2Hz~6400Hzの周波数範囲において5回の測定を通じて測定される。振動の時間的推移または振動の減衰は、加速度測定による1回の測定で、サンプリングレート65.5kHzで1Hz~10000Hzの全周波数範囲にわたって、450ミリ秒の時間にわたり測定される。
【0086】
時間的推移は、振動が減衰する速度を表している。この目的で、時間的推移の測定値が解析される。
【0087】
包絡線指数関数
A(t)=A-dt
は、カーブフィッティングにより測定値自体に適合されている。この場合、振幅Aは、時点t=0における最大加速度である。減衰定数dは、指数関数がどの程度速く減衰するかを決定し、dが大きくなるほど指数関数はより速く減衰する。Aが小さいほど、そして指数関数の減衰が速いほど、シリンダにおける減衰は大きくなる。
【0088】
図4および図5には、時間に対する加速度測定の例が示されている。各場合で、Y軸には加速度Aがm/sの単位で示されており、X軸には時間tがmsの単位で示されている。
【0089】
図4は、アダプタスリーブとして構成された第1のシリンダにおける加速度測定の第1の例が示されている。第1のアダプタスリーブは、0.9の高い減衰定数dを有していて、測定開始時に測定された加速度は850m/sであった。
【0090】
図5は、アダプタスリーブとして構成された第2のシリンダにおける加速度測定の第2の例が示されている。第2のアダプタスリーブは、0.1の高い減衰定数dを有していて、測定開始時に測定された加速度は1350m/sであった。
【0091】
図4および図5の記載からわかるように、第1のアダプタスリーブの振動は、減衰定数dがより大きいために、第2のアダプタスリーブの場合よりも速く減衰する。
【0092】
印刷試験
付加的に、製造されたシリンダは印刷機で試用され、印刷された印刷画像が評価された。これらの試用のために使用された印刷機は、コロナ処理を含むSoma Optima 2(Soma spol. sr.o.社)であって、これは厚さ1.12mmのFlexcell NX印刷プレート(Kodak社)、およびFlexPrint MVマゼンタインク(Flint Group社)、20μmの厚さおよび1300mmの幅を有するBOPPを備える。印刷速度375m/分および500m/分において印刷結果を評価した。この場合、印刷結果は全体的に良好であり、付加的に、ウェブ中央とウェブ縁との間に生じる差はごく僅かなはずである。振動が大きいシリンダの場合は、中央と縁との間に大きな差が認められている。結果は、良好な場合(振動が殆どない場合)は+、不良な場合は-、中間の場合は0として評価される。
【0093】
下記の表2に挙げられた測定のために、本発明の様々なシリンダと、異なる層配列を有する比較例とが製造され、上述した測定および評価にしたがって調査された。表1にはその構造が示されている。この場合、略語PEURは、400kg/mの密度、3.5N/mm超の引張強度、および330%超の破断点伸びを有するポリエステルウレタンゴムを示している。略語GRPはガラス繊維強化ポリエステル樹脂を示し、CRPは、炭素繊維強化ポリエステル樹脂を示す。
【表1】
【表2】
【符号の説明】
【0094】
10 シリンダ
12 ベース層
14 第1の圧縮性層
16 充填層
18 中間層
20 第2の圧縮性層
22 外層
100 測定装置
102 測定センサ
104 ハンマ
106 測定ユニット
図1
図2
図3
図4
図5