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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01L9/00 303K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020026180
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131297
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 祐希
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 里奈
(72)【発明者】
【氏名】新村 悠祐
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-056367(JP,A)
【文献】特開昭62-150131(JP,A)
【文献】特開2017-120212(JP,A)
【文献】特開平03-226638(JP,A)
【文献】特開2004-045140(JP,A)
【文献】特表2008-527313(JP,A)
【文献】特表2007-516746(JP,A)
【文献】特表2000-508425(JP,A)
【文献】特開昭63-217671(JP,A)
【文献】特開2014-145623(JP,A)
【文献】特開昭57-125828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291812(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32,27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体の圧力を受ける第1主面とこの第1主面の反対側に位置する第2主面とを有するダイアフラムと、
ひずみゲージを構成する複数の抵抗が設けられたセンサチップと、
前記第2主面の法線に沿って延設されかつ一端が前記センサチップに接合する電気的絶縁性の複数の支持部材と、
を備え、
前記複数の支持部材は、前記ダイアフラムよりも線膨張率が小さい中間材と接合しこの中間材を介して前記第2主面に固定され
前記中間材は、前記複数の支持部材に接合する複数の接合部とこれら複数の接合部の少なくとも2つをつなぐ連結部とから構成され、前記連結部の前記法線に沿った厚みは、前記複数の接合部の前記厚みよりも小さくなるように形成されている圧力センサ。
【請求項2】
測定対象の流体の圧力を受ける第1主面とこの第1主面の反対側に位置する第2主面とを有するダイアフラムと、
ひずみゲージを構成する複数の抵抗が設けられたセンサチップと、
前記第2主面の法線に沿って延設されかつ一端が前記センサチップに接合する電気的絶縁性の複数の支持部材と、
を備え、
前記複数の支持部材は、前記ダイアフラムよりも線膨張率が小さい中間材と接合しこの中間材を介して前記第2主面に固定され、
前記中間材と前記第2主面との接合面積は、前記中間材と前記支持部材との接合面積よりも小さい圧力センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力センサにおいて、
前記中間材は、前記支持部材より線膨張率が大きい材料から成る圧力センサ。
【請求項4】
請求項2または請求項2を引用する請求項3に記載の圧力センサにおいて、
前記中間材は、前記複数の支持部材に接合する複数の接合部とこれら複数の接合部の少なくとも2つをつなぐ連結部とから構成され、前記連結部の前記法線に沿った厚みは、前記複数の接合部の前記厚みよりも小さくなるように形成されている圧力センサ。
【請求項5】
請求項1および請求項1を引用する請求項3、ならびに請求項4のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記連結部は、前記ダイアフラムの板厚よりも薄い薄膜として形成されている圧力センサ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記複数の支持部材は、互いに離間する少なくとも2つの前記中間材を介して前記第2主面に固定されている圧力センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の圧力センサにおいて、
前記中間材は、前記支持部材と対をなすように設けられている圧力センサ。
【請求項8】
請求項1および請求項1を引用する請求項3ないし7のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記中間材と前記第2主面との接合面積は、前記中間材と前記支持部材との接合面積よりも小さい圧力センサ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の圧力センサにおいて、
前記中間材は、異なる線膨張率をもつ複数の材料から成り、前記材料は、前記第2主面と接合する側から前記センサチップと接合する側に向かうにつれて線膨張率が小さなくなるよう前記法線に沿って積層されている圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体等の圧力を検出する圧力センサ、特にサニタリー用圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力を検出する圧力センサのうち、食品や医薬品等の分野の製造現場等で用いられるサニタリー用圧力センサに対しては、衛生的な配慮が必要とされることから、耐食性、清浄性、信頼性および汎用性等に関して厳しい要件が課せられている。このような要件は、衛生管理に関する法規制の厳格化が図られている近年において、さらに厳しいものとなっている。
【0003】
このような状況にあるサニタリー用圧力センサにおいては、例えば耐食性の要件から、圧力の測定対象の流体(例えば液体)が接触する接液部分にステンレス鋼(SUS)、セラミックスおよびチタン等の耐食性の高い材料が用いられている。また、清浄性の要件から、洗浄しやすいフラッシュダイアフラム構造が採用され、且つ蒸気洗浄に対する高い耐熱衝撃性をもつように設計されている。さらに、信頼性の要件から、封入剤を使用しない構造(オイルフリー構造)およびダイアフラムが破れ難い構造(バリア高剛性)が採用されている。
【0004】
このように、サニタリー用圧力センサにおいては、使用する材料や構造が他の圧力センサに比べて制限されている。このため、高い耐圧性能を有しかつ測定誤差が抑制されたなかで、さらに高感度化を図ることは容易ではない。例えば、高い耐圧強度を有しかつ圧力に対するヒステリシスを低減して測定誤差を抑制するためには、膜厚を大きくした(厚みに対する径のアスペクト比を小さくした)高剛性のダイアフラムとすることが有用であるが、このような高剛性のダイアフラムにおいては、圧力変化に対する変形量が微小となり、これを直接センシングするだけでは十分なセンサ感度を得ることができない。このため、ダイアフラムの微小な変形量を効率的にセンシング部へ伝達してセンサ感度を高める技術が幾つか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ダイアフラム(3)の支持面(3B)に3つの支持部材(2a、2b,2c)を所定の位置に立設し、これら支持部材の上に半導体チップを載置した圧力センサ(100)が記載されている。この圧力センサ(100)においては、ダイアフラム(3)の微小なたわみが、3つの支持部材(2a、2b,2c)を通じセンシング部である半導体チップ(1)へ効率的に伝えられる(具体的には、半導体チップ1が、支持面3Bに直接設けられている場合に比べて大きく歪むように構成されている)ことで、センサ感度が高められている。この圧力センサ(100)が備える上記3つの支持部材(2a、2b,2c)は、いずれも支持面(3B)に対し略垂直に起立しており、このうちの1つ(支持部材(2a))が支持面(3B)の中心(30)に配設され、残りの2つ(支持部材(2b,2c))が中心(30)に対して点対称となる位置に配設していることを特徴とする。
【0006】
また、特許文献2には、ダイアフラム(3)の支持面(3B)に台座(5b)を設け、この台座の上に少なくとも1つの支持部材(2b)を起立させ、さらにこの台座上に起立する支持部材と他の支持部材との上に半導体チップ(1)を載置した圧力センサ(100)が記載されている。この圧力センサ(100)においては、ダイアフラム(3)の微小なたわみが、台座および支持部材を通じて、センシング部である半導体チップ(1)へ効率的に伝えられることで、センサ感度が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-120214号公報
【文献】特開2017-120212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記引用文献1に記載の圧力センサにおいては、例えば、ダイアフラムが線膨張率の大きなステンレス鋼(例えばSUS304の線膨張率は約17.3×10-6)からなり、支持部材は、絶縁性を有する線膨張率の小さなガラス(例えばホウケイ酸ガラスの線膨張率は約3.0×10-6)からなる。このような線膨張率に大きな差がある2つの部材が接合する部分には接合残留応力(引張り残留応力)が発生する。この接合残留応力は、接合する2つの材料の線膨張率が大きいほど顕著に現れ、ダイアフラムおよび支持部材の強度を低下させてダイアフラムの耐圧性能を悪化させるといった事態をもたらす。当該事態は、衛生管理に関する法規制の厳格化が図られている現状に鑑みれば、早急に解消しなければならない技術課題の1つである。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく創作されたものであって、その目的は、支持部材を通じてダイアフラム3の微小なたわみを効率的にセンシング部に伝達しつつ、接合残留応力による耐圧性能の低下が抑制された圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサ(1A、1B、1C)は、測定対象の流体の圧力を受ける第1主面(11)とこの第1主面の反対側に位置する第2主面(12)とを有するダイアフラム(10)と、ひずみゲージを構成する複数の抵抗が設けられたセンサチップ(20A、20B)と、前記第2主面の法線に沿って延設されかつ一端が前記センサチップに接合する電気的絶縁性の複数の支持部材(41、42)と、を備え、前記複数の支持部材は、前記ダイアフラムよりも線膨張率が小さい中間材(50A、50B、50C)と接合しこの中間材を介して前記第2主面に固定されていることを特徴とする。
【0011】
前記圧力センサにおいて、前記中間材が、前記支持部材より線膨張率が大きい材料から成るように構成してもよい。
【0012】
また、前記圧力センサにおいて、前記中間材が、前記複数の支持部材に接合する複数の接合部(51、52、53、56、57、58)とこれら複数の接合部の少なくとも2つをつなぐ連結部(54、55、59)とから構成され、前記連結部の前記法線に沿った厚みが、前記複数の接合部の前記厚みよりも小さくなるように形成してもよい。
【0013】
さらに、前記圧力センサにおいて、前記連結部が、前記ダイアフラムの板厚よりも薄い薄膜として形成されてもよい。
【0014】
また、前記圧力センサにおいて、前記複数の支持部材が、互いに離間する少なくとも2つの前記中間材を介して前記第2主面に固定されてもよい。
【0015】
さらに、前記圧力センサにおいて、前記中間材が、前記支持部材と対をなすように設けられてもよい。
【0016】
また、前記圧力センサにおいて、前記中間材と前記第2主面との接合面積が、前記中間材と前記支持部材との接合面積よりも小さくなるように形成してもよい。
【0017】
さらに、前記圧力センサにおいて、前記中間材が、異なる線膨張率をもつ複数の材料から成り、前記材料は、前記第2主面と接合する側から前記センサチップと接合する側に向かうにつれて線膨張率が小さなくなるよう前記法線に沿って積層されてもよい。
【0018】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を括弧付きで記載している。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持部材を通じてダイアフラム3の微小なたわみを効率的にセンシング部に伝達しつつ、接合残留応力による耐圧性能の低下が抑制された圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る圧力センサ及びこれと接合した配管の断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム近傍を拡大した平面図である。
図4図4は、図3におけるQ-Q線の断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラムの変形態様を表した概念図である。
図6図6は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム近傍を拡大した平面図である。
図8図8は、図7におけるQ-Q線の断面図である。
図9図9は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラムの変形態様を表した概念図である。
図10図10は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの断面図である。
図11図11は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラム近傍を拡大した平面図である。
図12図12は、図11におけるQ-Q線の断面図である。
図13図13は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサが備えるダイアフラムの変形態様を表した概念図である。
図14図14は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサが備える中間材および支持部材を表した概念図である。
図15図15は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサが備える中間材および支持部材を表した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態である第1の実施の形態ないし第3の実施の形態を、図1ないし図15に基づいて説明する。各実施の形態において共通する構成要素については、同一の参照符号を付するとともに繰り返しの説明を割愛する。なお、説明文中の左右方向、前後方向および上下方向は、各図に示されたX、YおよびZ軸に沿った方向、または各図に示された圧力センサ1A、1B、1Cまたはダイアフラム10の紙面に対する奥行き方向、上下方向および左右方向としてそれぞれ定義する。ここで、+Z方向は被測定流体Fの圧力Pが印加される方向と一致するように定義される。また、各図は概念図であって、それぞれに示された内容は、実際の圧力センサと必ずしも同一ではない。
【0022】
≪第1の実施の形態≫
はじめに、本発明の第1の実施の形態である圧力センサ1Aを、図1ないし図5に基づいて説明する。
【0023】
〔圧力センサの構成〕
まず、圧力センサ1Aの構成を、図1ないし図4に基づいて説明する。この圧力センサ1Aは、図1に示すように、ダイアフラム10とセンサチップ20Aとを少なくとも備え、さらに、ダイアフラム10の外周部と接合してこれを支持するハウジング30を含む。当該構成の圧力センサ1Aにおいては、被測定流体Fの圧力Pを受圧してたわむダイアフラム10の変位がセンサチップ20Aを通じて電気信号(例えば、電圧信号)として検出される。このセンサチップ20Aは、支持部材40Aおよび中間材50Aを介してダイアフラム10の表面(後述するセンサ保持面12)に配設されている。
【0024】
[ダイアフラム10]
ダイアフラム10は、図1に示すように、円板状の薄板部材であって、上述したように、その外周縁10aが、ハウジング30、より具体的には、後述するハウジング30の開口部31を画成する内周側壁面31aと、例えば溶接によって接合されている。これにより、ダイアフラム10は、図2に示すように、ハウジング30の内側に形成された空間(後述する空間30V)と、被測定流体Fが流出入する空間Vとを隔絶する薄膜の隔壁を形成している。
【0025】
ダイアフラム10の下面は、被測定流体Fに接触してその圧力Pを受ける受圧面11を形成している。この受圧面11は、特許請求の範囲に記載の第1主面に相当する部位である。また、その上面、すなわち、受圧面11と反対側に位置する面は、図1ないし図4に示すように、支持部材40および中間材50を介してセンサチップ20Aが配設されこれを保持するセンサ保持面12を形成している。このセンサ保持面12は、特許請求の範囲に記載の第2主面に相当する部位である。
【0026】
ダイアフラム10は、耐食性が高い材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)またはチタンからなる。これら材料は、線膨張率が比較的大きく、例えば、SUS304の線膨張率は約17.3/K×10-6であり、チタンの線膨張率は約11.3/K×10-6である。
【0027】
[センサチップ20A]
センサチップ20Aは、ダイアフラム10の機械的な変位を電気信号として検出する回路を備えた要素であって、上述したように、ダイアフラム10に形成されたセンサ保持面12の略中央に配設されている。センサチップ20Aは、例えば、Si等の半導体材料から成る基板とこの基板の上面20Aaに形成されたホイートストンブリッジ回路からなるひずみゲージとから構成されている。ホイートストンブリッジ回路が備える4つの抵抗素子(例えば拡散抵抗)は、ダイアフラム10の変形(より具体的には、載置されているダイアフラム10のセンサ保持面12の変形)に応じてその長さが変位(伸縮)することで抵抗値が増減するように構成されている。これにより、ダイアフラム10の変形がホイートストンブリッジ回路の中間点の電圧値の変化として検出される。
【0028】
[ハウジング30]
ハウジング30は、図1に示すように、内側に開口部31が開口する略円筒状のケーシング要素であって、耐食性の高い金属材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)から形成されている。ハウジング30は、その下部に、配管Hのフェルールフランジ部Hfと接合するフェルールフランジ部30fが、半径方向外側に向かって突出するように設けられている。圧力センサ1Aと配管Hとは、上下に重なり合うフェルールフランジ部30fとフェルールフランジ部HfとがクランプCによって上下方向に挟持されることで互いが連結している。開口部31の内周側壁面31aは、上述したように、その下部でダイアフラム10の外周縁10aと接合し、ダイアフラム10、より具体的には、ダイアフラム10のセンサ保持面12と共に、被測定流体Fが流出入する配管Hの内部と隔絶された円柱状の空間30Vを形成している。この空間30Vは、例えば大気と連通し、内側に上述したセンサチップ20Aが配置される。
【0029】
[支持部材40A]
支持部材40Aは、センサチップ20Aを支持する柱として機能する部材であって、図1ないし図4に示すように、ダイアフラム10のセンサ保持面12に対して垂直に起立するように配設(センサ保持面12の法線方向(Z軸方向)に沿って延設)された2つの柱状部材、具体的には、四角柱状に形成された同一形状の第1支持部材41および第2支持部材42から構成されている。第1支持部材41および第2支持部材42は、電気的に絶縁性を有する材料、好ましくは、熱伝導率の小さい材料からなり、例えば、ガラス、具体的にはホウケイ酸ガラス(パイレックス、登録商標))から形成されている。第1支持部材41および第2支持部材42は、その一端(頂部)がセンサチップ20Aの下面20Ab、より具体的には、下面20Abの左右両端部近傍に接合し、他端が中間材50Aの上面50Aaに接合している。
【0030】
上記中間材50Aは、後述するように、ダイアフラム10のセンサ保持面12に接合しており、第1支持部材41および第2支持部材42が、中間材50Aを介してダイアフラム10のセンサ保持面12に上記態様(垂直に起立した態様)で固定されている。第1支持部材41および第2支持部材42は、例えば平面視において、ダイアフラム10の中心点P0に対して点対称となる2つの第1の支持点P41Aおよび第2の支持点P42Aに固定されている。ここで、ダイアフラム10の中心点P10とは、センサ保持面12に加わる圧力(例えば大気圧)よりも大きな圧力が受圧面11に加わった状態において、ダイアフラム10が上下方向(Z軸方向)に最も大きく変位する点として定義される。当該中心点P10は、円板状のダイアフラム10の厚みが均一であって剛性に偏りがない場合、図3に示すように、幾何学的な中心点と一致する。
【0031】
[中間材50A]
中間材50Aは、ダイアフラム10と支持部材40Aとの間に介在する部材であって、例えば図3に示すように、平面視略長方形の薄板部材から形成されている。中間材50Aは、その線膨張率がダイアフラム10を形成する材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)の線膨張率(SUS304の線膨張率は約17.3/K×10-6)よりも小さい材料から形成されており、好ましくは、支持部材40A(支持部材41、42)を形成する材料、例えばガラスの線膨張率(ホウケイ酸ガラスの線膨張率は約3.0×10-6)よりも大きな材料から形成されている。この好ましい形態の中間材50Aとして、例えばコバール(コバールの線膨張率は約5.2/K×10-6)挙げられる。
【0032】
中間材50Aは、図3および図4に示すように、ダイアフラム10が被測定流体Fの圧力Pを受圧して変形する(たわむ)領域にあってその中心点がダイアフラム10の中心点P0と一致する位置に、下面50Abを通じてスポット溶接等によってセンサ保持面12に接合されている。また、中間材50Aは、例えばその上面50Aaの両端部近傍に、スポット溶接等によって第1支持部材41および第2支持部材42の下端部が接合されている。これにより、第1支持部材41および第2支持部材42は、ダイアフラム10の中心点P0に対して点対称の位置にある第1支持点P41Aおよび第2支持点P42Aに固定されることとなる。
【0033】
〔圧力センサ1Aの動作態様〕
つづいて、圧力センサ1Aの動作態様を、図5に基づいて説明する。この図5は、ダイアフラム10が変形したときの第1支持部材41、第2支持部材42および中間材50A、ならびにセンサチップ20AのXZ断面における変位を模式的に示した図である。
【0034】
センサ保持面12に加わる圧力(例えば大気圧)よりも大きな圧力Pを有する被測定流体Fが受圧面11に接すると、薄板部材からなるダイアフラム10は、中心点P10が上方(+Z方向)に突出した略円錐状に変形する(たわむ)。このとき、薄膜状の中間材50Aもまた、ダイアフラム10の変形に倣って変形(たわむ)。
【0035】
中間材50Aを介してセンサ保持面12に略垂直に起立し、かつ点対称の位置にあって中心点P10から離れた第1支持点P41Aおよび第2支持点P42Aに固定されている第1支持部材41および第2支持部材42は、Z軸に対して略線対称となるようにそれぞれが傾く。この結果、センサチップ20Aの下面20bと接合する第1支持部材41および第2支持部材42の頂部は、いずれも+Z方向に略同じ量だけ変位するとともに、一方(第1支持部材41)は-X方向に変位し、他方(第2支持部材42)は+X方向に変位する(図5中の矢印を参照)。当該第1支持部材41および第2支持部材42の頂部における±X方向の変位量は、各支持部材の高さ(詳細には、センサ保持面12から各支持部材の頂部までの高さ)に比例して大きくなる。すなわち、ダイアフラム10の変位量は、第1支持部材41および第2支持部材42によって増幅される形でセンサチップ20Aに伝達される。センサチップ20Aは、当該増幅されたダイアフラム10の変位量に応じた電気信号(例えば電圧信号)を出力する。
【0036】
〔圧力センサ1Aの効果〕
上記構成の圧力センサ1Aによれば、上述したように、支持部材40Aを通じてダイアフラム10の変形量が±X方向に増幅される形でセンサチップ20Aに伝達される。このため、ダイアフラム10を僅かに変位させる程度の小さな圧力変動に対しても、センサチップ20Aは左右方向(+X方向および-X方向)に大きく引っ張られる。この結果、センサチップ20Aに設けられたひずみゲージ(ホイートストンブリッジ回路)を構成する抵抗素子は、出力変動を伴う程度に十分に変位(伸縮)することとなり、被測定流体の圧力を高精度に検知することが可能になる。
【0037】
また、ダイアフラム10と支持部材40Aとの間に、線膨張率の値がダイアフラム10のそれよりも小さく支持部材40Aのそれよりも大きな中間材50Aが介在することで、両部材間の接合残留応力を低減させることができる。これにより、ダイアフラム10の耐圧性能の低下を抑えることができる。
【0038】
≪第2の実施の形態≫
つぎに、本発明の第2の実施の形態である圧力センサ1Bを、図6ないし図9に基づいて説明する。
【0039】
圧力センサ1Bは、圧力センサ1Aと比較して、支持部材40Bを構成する柱状部材の数とこれらが設けられる位置、および支持部材40Bによって支持されるセンサチップ20Bの形態(支持部材40Bとの接合部分の形態)、ならびに支持部材40Bをダイアフラム10のセンサ保持面12に固定する中間材50Bの形態が相違し、これら以外の構成は同一である。
【0040】
[支持部材40B]
支持部材40Bは、図6および図8に示すように、3つの柱状部材、具体的には、支持部材40Aを構成する第1支持部材41および第2支持部材42と同一の部材と、これら部材と同一形状かつ同一材料からなる第3支持部材43とから構成されている。支持部材40Bを構成する第1支持部材41および第2支持部材42は、支持部材40Aと同様に、その一端(頂部)が後述するセンサチップ20Bの下面20Bb、より具体的には、下面20Bbの左右両端部近傍(後述する第1接合部51の上面51aおよび第2接合部52の上面52a)に接合している。また、第1支持部材41および第2支持部材42の他端は、中間材50Bの上面の左右両端部近傍に接合している。さらに、追加された第3支持部材43の一端(頂部)および他端が、センサチップ20Bの下面20Bbの略中央および中間材50Bの上面の略中央(後述する第3接合部53の上面53a)にそれぞれ接合している。
【0041】
[中間材50B]
中間材50Bは、ダイアフラム10と支持部材40Bとの間に介在する部材であって、中間材50Aと同一の材料、すなわち、その線膨張率がダイアフラム10を形成する材料よりも小さい材料から形成され、好ましくは、支持部材40Bを形成する材料よりも大きな材料から形成されている。中間材50Bは、例えば図6および図8に示すように、第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53、ならびに第1連結部54および第2連結部55から構成されている。
【0042】
第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53は、いずれも同一形状を呈しており、例えば、略直方体を呈した部位として形成されている。なお、第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53の形状を異なるものとしてもよい。
【0043】
第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53は、その高さ(厚み)が、例えば、ダイアフラム10の厚みよりも大きく設定されており、センサ保持面12に対して略垂直に起立した状態で当該保持面に接合されている。
【0044】
第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53は、それぞれ第1支持部材41、第2支持部材42および第3支持部材43と、上面51a、52a、53aを通じて、例えばスポット溶接によって接合している。また、第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53は、それぞれ下面51b、52b、53bを通じて、例えばスポット溶接によってセンサ保持面12に接合している。ここで、上面51a、52a、53aの表面積Suは、接合される支持部材41、42、43の下端面の表面積と同等か僅かに大きく設定されている。また、本実施の形態では、下面51b、52b、53bの表面積Sdは、上面51a、52a、53aの表面積Suと等しいが、これを表面積Suよりも小さくなるように、第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53の形状を変更してもよい。これにより、下面51b、52b、53bとセンサ保持面12との接合面積が小さくなり、ダイアフラム10の変形への影響を抑えることができる。
【0045】
図7に示すように、上記3つの接合部のうちの第1接合部51および第2接合部52は、ダイアフラム10の中心点P10に対して点対称の位置にある第1支持点P41Bおよび第2支持点P42Bに配設されており、第3接合部53は、中心点P10と一致する第3支持点P43Bに配設されている。これにより、第3支持部材43は、中心点P10(第3支持点P43B)に固定され、第1支持部材41および第2支持部材42は、ダイアフラム10の中心点P0(第3支持点P43B)に対して点対称の位置にある第1支持点P41Bおよび第2支持点P42Bに固定されることとなる。
【0046】
第1連結部54および第2連結部55は、いずれもセンサ保持面12に沿って(平行に)延在する薄膜状の部材として形成されている。第1連結部54は、第1接合部51の下端部(センサ保持面12に近接した端部)と第2接合部52の下端部とに接続してこれら2つの部位を接続している。また、第2連結部55は、第2接合部52の下端部と第3接合部53の下端部とに接続してこれら2つの部位を接続している。このように、第1連結部54および第2連結部55が薄膜状の部材として形成され、かつ各接合部の下端部を接続する形態とすることで、各接合部の相対移動(相対変位)を可能にしている。すなわち、各接合部は、互いに干渉することなく当該変形に倣って(固定されているセンサ保持面12に対して垂直な姿勢を保持したまま)個別に変位(移動)することができる(図9参照)。また、第1連結部54および第2連結部55を上記形態とすることで、中間材50Bの各接合部が厚みのある部位として形成された場合であっても、これによるダイアフラム10の変形への影響(変形の妨げ)を最小限に留めることが可能になる。
【0047】
なお、接合部と連結部とが接続する位置によっては、接合部の相対移動(相対変位)が一部規制されることとなる。すなわち、当該接続位置によって、接合部の相対移動(相対変位)を制御することができる、このため、当該接続位置は、センサチップ20Bが配設される位置に応じて適宜変更することが望ましい。上記規制機能をもつ接続態様の一つとして、後述する第3の実施の形態(中間材50Cにおける第1接合部56と第3接合部58とを接続する連結部59の接続形態)がある。
【0048】
〔圧力センサ1Bの動作態様〕
つづいて、圧力センサ1Bの動作態様を、図9に基づいて説明する。この図9は、図5と同様に、ダイアフラム10が変形したときの第1支持部材41、第2支持部材42、第3支持部材43および中間材50B(第1接合部51、第2接合部52、第3接合部53、第1連結部54、第2連結部55)、ならびにセンサチップ20BのXZ断面における変位を模式的に示した図である。
【0049】
センサ保持面12に加わる圧力(例えば大気圧)よりも大きな圧力Pを有する被測定流体Fが受圧面11に接すると、薄板部材からなるダイアフラム10は、中心点P10が上方(+Z方向)に突出した略円錐状に変形する(たわむ)。このとき、上記形態の薄膜状の第1連結部54および第2連結部55を備える中間材50Bは、例え厚みの大きな第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53を有してしても、これら接合部によってダイアフラム10の変形を妨げることなく、また、各接合部が互いに干渉することなく当該変形に倣って(各接合部が固定されているセンサ保持面12に対して垂直な姿勢を保持したまま)変形(移動)する。
【0050】
中間材50Bの上記変形(移動)により、中間材50Bの第3接合部53を介して中心点P10(第3支持点P43B)に立設された第3支持部材43は、Z軸に沿って変位する(具体的には、+Z方向に変位する)。この結果、センサチップ20Bの下面20bと接合する第3支持部材43の頂部は、ダイアフラム10の変位量と略同じ量だけ+Z方向に変位する。また、中間材50Bの第1接合部51および第2接合部52を介してセンサ保持面12に略垂直に起立し、かつ点対称の位置にあって中心点P10から離れた第1支持点P41Bおよび第2支持点P42Bに固定されている第1支持部材41および第2支持部材42は、Z軸に対して略線対称となるようにそれぞれが傾く。この結果、センサチップ20Bの下面20bと接合する第1支持部材41および第2支持部材42の頂部は、いずれも+Z方向に略同じ量だけ変位するとともに、一方(第1支持部材41)は-X方向に変位し、他方(第2支持部材42)は+X方向に変位する。当該第1支持部材41および第2支持部材42の頂部の±X方向の変位量は、上述したように、各支持部材の高さ(詳細には、センサ保持面12から各支持部材の頂部までの高さ)に比例して大きくなる。すなわち、ダイアフラム10の変位量は、第1支持部材41および第2支持部材42によって増幅される形でセンサチップ20Bに伝達される。
【0051】
〔圧力センサ1Bの効果〕
上記構成の圧力センサ1Bによれば、上述したように、ダイアフラム10の変形量が支持部材40Bの第1支持部材41および第2支持部材42を通じて±X方向に増幅され、かつ第3支持部材43を通じて+Z方向の変位がセンサチップ20Bに伝達される。このセンサチップ20Bに伝達される変形量は、+Z方向の変位分だけセンサチップ20Aのそれよりも大きい。このため、ダイアフラム10を僅かに変位させる程度の小さな圧力変動に対しても、センサチップ20Bは左右方向(+X方向および-X方向)およびに+Z方向に大きく引っ張られる。この結果、センサチップ20Bに設けられたひずみゲージ(ホイートストンブリッジ回路)を構成する抵抗素子は、出力変動を伴う程度に十分に変位(伸縮)することとなり、被測定流体の圧力を高精度に検知することが可能になる。
【0052】
また、ダイアフラム10と支持部材40Bとの間に、線膨張率の値がダイアフラム10のそれよりも小さく支持部材40Bのそれよりも大きな中間材50Bを介在させたことで、両部材間の接合残留応力を低減させることができる。これにより、ダイアフラム10の耐圧性能の低下を抑えることができる。この効果は、ダイアフラム10よりも厚く形成された熱容量の大きい接合部、すなわち、ダイアフラム10と支持部材40Bとを熱的に隔絶する作用の大きい第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53を設けたことでより顕著なものとなる。
【0053】
また、中間材50Bに連結部(第1連結部54および第2連結部55)が設けられていることで、上記高さ(厚み)の大きな接合部を有していてもこれによってダイアフラム10の変形が妨げられることを可及的に抑制することができる。これにより、上記接合残留応力を低減させる効果と測定精度(感度)とを高い次元で両立させることができる。
【0054】
さらに、中間材50Bが1つの部品として形成されることで、部品点数が削減され、組付け性が向上する。例えば、3つの支持点(第1支持点P41B、第2支持点P42B、第3支持点P43B、)に、各接合部が個別部品として構成された中間材を配置する場合、各支持点(3つの支持点)ごとに位置決めすることが必要となるが、中間材が1つの部品から形成されている場合、2つの支持点において位置決めすれば足りる。これにより、組付け精度の悪化(バラツキ)を抑制することができる。
【0055】
≪第3の実施の形態≫
つぎに、本発明の第3の実施の形態である圧力センサ1Cを、図10ないし図13に基づいて説明する。
【0056】
圧力センサ1Cは、圧力センサ1Bと比較して、ダイアフラム10のセンサ保持面12と支持部材40Bとの間に介在する中間材50Cの形態および固定位置が相違し(この関係で支持部材40Bおよびセンサチップ20Bが配置される位置も相違し)、これら以外の構成は同一である。
【0057】
[中間材50C]
中間材50Cは、上記実施の形態における中間材50A、50Bと同様に、その線膨張率がダイアフラム10を形成する材料よりも小さい材料から形成され、好ましくは、支持部材40Bを形成する材料よりも大きな材料から形成されている。中間材50Cは、例えば図10および図12に示すように、第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58、ならびに連結部59から構成されている。
【0058】
第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58は、いずれも同一形状を呈し、例えば、センサ保持面12との接合面が支持部材40Bとの接合面よりも小さくなるよう縦断面形状(XZ平面の断面形状)が逆台形の6面体として形成されている。ただし、当該形状に限定されるわけではなく、また、第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58が異なる形状を呈していてもよい。
【0059】
第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58は、その高さ(厚み)が、例えばダイアフラム10の厚みよりも大きく設定されており、センサ保持面12に対して略垂直に起立した状態で当該保持面に接合されている。なお、第1接合部56と第3接合部58とは、連結部59を通じて一体的に接続しているが、第1接合部56および第3接合部58と第2接合部57とは別体として形成されている。
【0060】
第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58は、支持部材40Bを構成する第1支持部材41、第2支持部材42および第3支持部材43と、上面56a、57a、58aを通じて、例えばスポット溶接によって接合している。また、第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58は、それぞれ下面56b、57b、58bを通じて、例えばスポット溶接によってセンサ保持面12に接合している。ここで、上面56a、57a、58aの表面積Suは、接合される支持部材41、42、43の下端面の表面積と同等か僅かに大きく設定されている。また、下面56b、57b、58bの表面積Sdは、上述したように、上面51a、52a、53aの表面積Suよりも小さくなるように形成されている。当該形態とすることで、支持部材41、42、43と安定した状態で接合し、かつセンサ保持面12との接合面積が小さくなることでダイアフラム10の変形への影響(変形の妨げとなること)を抑えることができる。
【0061】
図11に示すように、第1接合部56は、ダイアフラム10の中心点P10と一致する第1支持点P41Cに配設され、第2接合部57は、X軸上にあって中心点P10よりも+X寄りの第2支持点P42Cに配設され、第3接合部58は、X軸上にあって第1支持点P41Cと第2支持点P42Cとの間に位置する第3支持点P43Cに配設されている。これにより、第1支持部材41は、中心点P10(第1支持点P41C)に固定され、第2支持部材42および第3支持部材43は、いずれもX軸上にあってダイアフラム10の中心点P0に対して同じ側(+X側)に位置する第2支持点P42Cおよび第3支持点P43Cに固定されることとなる。
【0062】
連結部59は、図12に示すように、センサ保持面12に沿って(平行に)延在する薄膜状の部位として形成され、第1接合部56の上端部と第3接合部58の上端部とを一体的に接続している。当該形態の連結部59は、接続する第1接合部56と第3接合部58との相対移動(相対変位)に関し、被測定流体Fの圧力Pが印加される方向(Z軸に沿った方向)は規制せず、当該方向と垂直な面内(XY平面内)を規制するように制御する。これにより、第3接合部58は、第1接合部56に追従するようにしてXY平面内を移動(変位)することとなる。
【0063】
なお、本実施の形態においては、接合部の形状を、上述したようなセンサ保持面12との接合面積が小さくなる形状とし、また、第1接合部56および第3接合部58と第2接合部57とを別体として形成することで、ダイアフラム10の変形への影響(変形の妨げとなること)を小さく抑えている。
【0064】
〔圧力センサ1Cの動作態様〕
つづいて、圧力センサ1Cの動作態様を、図13に基づいて説明する。この図13は、ダイアフラム10が変形したときの第1支持部材41、第2支持部材42、第3支持部材43および中間材50C(第1接合部56、第2接合部57、第3接合部58、連結部59)、ならびにセンサチップ20BのXZ断面における変位を模式的に示した図である。
【0065】
センサ保持面12に加わる圧力(例えば大気圧)よりも大きな圧力Pを有する被測定流体Fが受圧面11に接すると、薄板部材からなるダイアフラム10は、中心点P10が上方(+Z方向)に突出した略円錐状に変形する。このとき、中心点P10の近傍部は曲率の大きな半球状の曲面として形成され、それよりも外側は円錐台面に近い曲面となる。このため、中心点P10の近傍部より外側の部分は、XZ断面において傾きが略等しい斜面として形成されることとなる。
【0066】
上記変形を伴うダイアフラム10の表面(センサ保持面12)に配置された中間材50Cのうち、第1接合部56は、中心点P10(第1支持点P41C)に配置されているためZ軸に沿った方向(+Z方向)に移動(変位)する。
また、第2接合部57は、X軸上にあってダイアフラム10の中心点P0に対して+X側に位置する第2支持点P42C、すなわち、上記斜面上に位置する第2支持点P42Cに単独で配置されているため、上記斜面に対して垂直な方向、例えば、Z軸に対して角度αだけ傾いた軸Z´に沿った方向へ移動(変位)する。
これに対し、第3接合部58は、第2支持点P42Cと同じく上記斜面上に位置する第3支持点P43Cに配置されているものの、上記制御機能をもつ連結部59を介して+Z方向に変位する第1接合部56と接続しているため、XY平面内の移動(変位)が規制されることとなる。このため、第3接合部58は、上記斜面に対して垂直な方向(軸Z´)よりも第1接合部56側へ寄った方向、すなわち、Z軸に対して角度β(β<α)だけ傾いた軸Z´´に沿った方向へ移動(変位)することとなる。
【0067】
このように、第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58は、それぞれ異なる方向(軸Z、軸Z´、軸Z´´に沿った方向)へ移動(変位)することとなり、それぞれの接合部の上面と接合する第1支持部材41、第2支持部材42および第3支持部材43もそれぞれ異なる方向(軸Z、軸Z´、軸Z´´に沿った方向)へ移動(変位)することとなる。換言すれば、これら3つの支持部材の頂部間で、ダイアフラム10の変形の前後においてX方向とZ方向とで相対変位が生じる。当該2つの方向の相対変位は、センサチップ20に伝達される。ここで、X方向の相対変位は、上述したように、各支持部材の高さ(詳細には、センサ保持面12から各支持部材の頂部までの高さ)に比例して大きくなる。すなわち、ダイアフラム10の変位量は、第1支持部材41、第2支持部材42および第3支持部材43によって増幅される形でセンサチップ20に伝達される。
【0068】
〔圧力センサ1Cの効果〕
中間材50Cが配設されていない場合、すなわち、支持部材40Bが、ダイアフラム10のセンサ保持面12に直接立設されている場合、支持部材40Bを構成する第1支持部材41、第2支持部材42および第3支持部材43は、センサ保持面12と垂直な方向へ変位することとなる。当該場合にあって中心点P10の近傍部より外側に位置する上記斜面に第2支持部材42および第3支持部材43が立設された形態においては、これら2つの支持部材は、ともに同一方向(Z´軸に沿った方向)へ変位することとなる。当該変位態様においては、第2支持部材42の頂部と第3支持部材43の頂部との間には、ダイアフラム10の変形前後で相対変位しないことになる。すなわち、上記形態においては、センサチップ20Bのうちのこれら2つの支持部材によって支持された領域が、ダイアフラム10の変形前後で変位(伸縮)しないこととなる。したがって、上記形態では、被測定流体の圧力を高精度に検知することができない。
【0069】
これに対し、上記構成の圧力センサ1Cによれば、上述したように、中心点P10の近傍部より外側に位置する上記斜面に第2支持部材42および第3支持部材43が立設されていても、これら2つの支持部材の頂部の間で、Z方向の相対変位と各支持部材の高さ(詳細には、センサ保持面12から各支持部材の頂部までの高さ)に応じて増幅されたX方向の相対変位が生じ、これがセンサチップ20に伝達される。このため、上記構成の圧力センサ1Cによれば、ダイアフラム10を僅かに変位させる程度の小さな圧力変動に対しても、センサチップ20の全領域においてX方向およびZ方向に大きく引っ張られる。この結果、センサチップ20に設けられたひずみゲージ(ホイートストンブリッジ回路)を構成する抵抗素子は、出力変動を伴う程度に変位(伸縮)することとなり、被測定流体の圧力を高精度に検知することが可能になる。
【0070】
また、ダイアフラム10と支持部材40Bとの間に、線膨張率の値がダイアフラム10のそれよりも小さく支持部材40Bのそれよりも大きな中間材50Cを介在させたことで、両部材間の接合残留応力を低減させることができる。これにより、ダイアフラム10の耐圧性能の低下を抑えることができる。この効果は、ダイアフラム10よりも厚く形成された熱容量の大きい接合部、すなわち、ダイアフラム10と支持部材40Bとを熱的に隔絶する作用の大きい第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58を設けたことでより顕著なものとなる。
【0071】
また、各接合部の形状を、上述したように、センサ保持面12との接合面積が小さくなる形状とし、また、第1接合部56および第3接合部58と第2接合部57とを別体として形成したことで、中間材50Cを配設したことによるダイアフラム10の変形への影響(変形の妨げとなること)を可及的に抑制することができる。これにより、上記接合残留応力を低減させる効果と測定精度(感度)とを高い次元で両立させることができる。
【0072】
≪変形例≫
上記実施の形態の一部を変形した事例として、例えば、図14で示される中間材50B´がある。この中間材50B´は、上記第2の実施の形態における中間材50Bから第1連結部54および第2連結部55を取り除いたものに相当し、第1接合部51´、第2接合部52´および第3接合部53´から構成されている。なお、その他の構成は、中間材50Bと同一である。
【0073】
上記構成の中間材50B´を備える圧力センサによれば、中間材50Bを備えた圧力センサ1Bと比較して、中間材を配設したことによるダイアフラム10の変形への影響(変形の妨げとなること)をより小さくすることができる。
【0074】
また、上記実施の形態の一部を変形した事例として、例えば、図15で示される中間材50C´がある。この中間材50C´は、上記第3の実施の形態における中間材50Cを2層構造にしたものである。具体的には、中間材50Cを構成する第1接合部56、第2接合部57および第3接合部58の全高を低くした第1接合部56´、第2接合部57´および第3接合部58´の上面(支持部材40Bと接合する面)に、当該上面と相補的な形状の下面をもつ略直方体の第4接合部56´´、第5接合部57´´および第6接合部58´´を載置し、さらに第4接合部56´´と第6接合部58´´の上端部を一体的に接続する第2連結部59´´を設けたものである。
【0075】
第4接合部56´´、第5接合部57´´および第6接合部58´´ならびに第2連結部59´´を形成する材料の線膨張率は、第1接合部56´、第2接合部57´および第3接合部58´ならびに第1連結部59´を形成する材料のそれよりも小さく、支持部材40Bを形成する材料のそれよりも大きい。これにより、ダイアフラム10の表面(センサ保持面12)に支持部材40Bを固定する際に生じる接合残留応力をより低減させることができる。
【0076】
また、第1連結部59´および第2連結部59´´からなる多重化された連結部を備えることで結合強度と結合剛性が増大することとなる。この結果、接続された2つの接合部の間の相対移動(相対変位)、例えば、被測定流体Fの圧力Pが印加される方向(Z軸に沿った方向)と垂直な面内(XY平面内)の相対移動(相対変位)をより確実に規制することができる。
【0077】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、明細書および図面に直接記載のない構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、上記記載および各図で示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることも可能である。
【0078】
例えば、上記実施の形態においては、ダイアフラム変形による圧力検出手法(センシング原理)として、ひずみゲージを含む半導体チップを用いているが、これに限定されるわけではなく、例えば、静電容量式センサ、金属歪みゲージ、抵抗ゲージをスパッタ等により成膜したものを用いた圧力検出手法(センシング原理)であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1A、1B、1C…圧力センサ、10…ダイアフラム、11…受圧面、12…センサ保持面、20A、20B…センサチップ、30…ハウジング、40A、40B…支持部材、41…第1支持部材、42…第2支持部材、43…第3支持部材、50A、50B、50C…中間材、51、56…第1接合部、52、57…第2接合部、53、58…第3接合部、54…第1連結部、55…第2連結部、59…連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15