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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】過流防止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F16K17/30 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020029444
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021134813
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】朴 龍天
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06173734(US,B1)
【文献】実開昭57-028981(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110608302(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104613199(CN,A)
【文献】実開昭59-073676(JP,U)
【文献】特開平04-362380(JP,A)
【文献】特開平09-112722(JP,A)
【文献】特開2017-110678(JP,A)
【文献】特開2010-266000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
17/18-17/34
27/00-27/12
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のボデー部材とキャップ部材とが接合されて内部に流体流路を備えたボデー本体が構成され、このボデー本体の対向面近傍には前記流体流路と連通するとともに円筒状のホルダ部材が収容される収容空間が形成され、この収容空間に収容された前記ホルダ部材の一、二次側には、それぞれスプリング部材で弁開方向に弾発付勢された第1弁体と第2弁体とが流体の圧力で弁閉可能な状態で装着され、前記ホルダ部材は、前記ボデー部材或いは前記キャップ部材の少なくとも一方側との対向面に対向する緩衝部材が装着された状態で、その外周位置で前記ボデー部材と前記キャップ部材との対向面の間に装着されたシール用ガスケットを通して前記収容空間に挟着されていることを特徴とする過流防止弁。
【請求項2】
前記第1弁体にかかる弾発付勢力FAと前記第2弁体にかかる弾発付勢力FBがFA<FBの関係であり、かつ、前記第1弁体は、弁閉位置においても流量が絞られた状態で二次側に流体が流れるようになっている請求項1に記載の過流防止弁。
【請求項3】
前記キャップ部材と前記ボデー部材との前記対向面の何れか一方或いは双方に前記流体流路よりも拡径した環状段部が形成され、この環状段部に前記ホルダ部材の外周が嵌め込まれて位置決めされた請求項1又は2に記載の過流防止弁。
【請求項4】
前記環状段部が、前記キャップ部材と前記ボデー部材との双方に形成され、前記キャップ部材側の前記環状段部は、前記ホルダ部材の外径と略同じ径であり、前記ボデー部材側の前記環状段部は、前記ホルダ部材の外径よりもやや大径である請求項3に記載の過流防止弁。
【請求項5】
前記ボデー本体には、前記第1弁体の一次側から前記ホルダ部材の外周側を通り、前記緩衝部材に至るまでの領域を連通する連通路が形成された請求項1乃至4の何れか1項に記載の過流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側に接続された機器等の破損などにより、流量が常用流量以上に流れようとしたときに、流路を遮断して二次側への過剰な流体の流出を防止する過流防止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用燃料電池の水素ステーションの水素供給用配管設備では、手動弁や自動弁などのバルブや配管などを通して多数の機器が接続され、高圧水素はこれらを経由した後に、吐出側の充填用ノズルから自動車の車載タンクに供給される。このような高圧水素(高圧流体)が流れる設備では、機器やバルブ・配管等のわずか一部に破損や故障が生じた場合であっても、高圧流体が二次側から過剰に漏れ出す危険があることから、流体の常用以上の過剰な二次側への流出を阻止するために、一般に、流体を遮断する過流防止弁が流路内に接続される。
【0003】
この種の過流防止弁として、例えば、特許文献1の過流防止弁が開示されている。この過流防止弁は、弁室を有する第1の管状部材に第2の管状部材がねじ込みにより接合され、弁室内にはその流路方向に沿って一つの弁体が移動可能に取付けられている。このような過流防止弁は、略管状に形成されて流路に直列するように接続され、正常時には、弁開状態を維持して常用流量が流れ、一方、機器や配管の破損により流量が常用流量よりも極端に大きくなった場合には、弁体が二次側に移動して弁閉状態となって流路を遮断する。このバルブは、本体内に一つの弁体が装着され、この一段の弁体の動作により流路を閉状態とする、いわゆる一段構造になっている。
【0004】
これに対して、図6(a)に示すように、本体内に2つの弁体が装着された、いわゆる二段構造の過流防止弁100も知られている。この過流防止弁100は、管状のボデー101とキャップ102とを備え、キャップ102の先方側には円筒部103、後方側には円筒部103よりも拡径した拡径円筒部104が形成され、この拡径円筒部104の外周には雄ねじ部105が設けられている。円筒部103における拡径円筒部104との境界付近の外周には、シール用Oリング106が装着されている。一方、ボデー101には、円筒部103が挿着される挿入穴部110と、拡径円筒部104が装着される装着凹部111とが形成され、この装着凹部111の内周には雄ねじ部105が螺着される雌ねじ部112が設けられている。
【0005】
キャップ102は、雄ねじ部105と雌ねじ部112との螺合によりボデー101に取り付けられ、その取付け後には、円筒部103が挿入穴部110に挿入されてこれらがOリング106でシールされた状態で、拡径円筒部104先端側の先端面104aが装着凹部111の底面111aに当接してボデー101に位置決め固定される。挿入穴部110の円筒部103よりも先方側には、円筒状のホルダ120が収容され、このホルダ120は、円筒部先端面103aと挿入穴部110の当接面110aとの間に位置決め状態で固定される。ホルダ120の一次側には第1ポペット弁体121、二次側には第2ポペット弁体121がそれぞれ装着され、図6(b)に示すように、これら第1ポペット弁体121、第2ポペット弁体122は、内部に装着されたスプリング123の弾発力に抗してそれぞれ弁閉方向に動作可能に設けられている。
円筒部103の先端側には、環状の弾性部材124が取り付けられ、キャップ102のねじ込み時に、この弾性部材124がホルダ120との間に圧着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-266000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の特許文献1の過流防止弁は、弁体が一段構造であるために、このバルブが接続された配管設備を流れる流体圧力が急激に上昇したとき(例えば、電源を投入した動作直後など)には、常用以上の過剰な流出が発生していないにもかかわらず、急激な流れにより一つの弁体が閉方向に移動して誤動作が生じ、この誤動作により流路が閉止するおそれがある。
【0008】
一方、後者の図6の過流防止弁100は、二段構造のポペット弁体121、122を設けていることで、一段目の第1ポペット弁体121が急激な圧力上昇により誤動作して弁閉状態になったとしても、その弁閉時に二段目の第2ポペット弁体122側にわずかな流体が流れ続けることで、特許文献1の一段構造の過流防止弁のような、急激な流路の閉止を回避することが可能になっている。
しかし、この過流防止弁100は、拡径円筒部104を装着凹部111にねじ込みつつ、Oリング106によって円筒部103の外周と挿入穴部110の内周とを円周方向にシールする構成であるため、例えば、流体の温度変化などによりOリング106が膨張或いは収縮したときにはシール性が低下し、特に、低温の高圧流体が流れるときには、Oリング106が収縮して外部漏れを生じる可能性がある。
【0009】
また、拡径円筒部104の先端面104aを装着凹部111の底面111aに当接させることでキャップ102をボデー101に位置決め固定し、これにより挿入穴部110のホルダ120が収容される空間Cを設定していることから、この空間Cの流路方向の長さが一定となる。そのため、ホルダ120と円筒部先端面103aとの間に圧接されている弾性部材124が経年劣化したり、或いは収縮や破損したりして流路方向に短くなった場合には、キャップ102とホルダ120との間に過大な隙間が生じ、ホルダ120の固定が不十分となる。
【0010】
上記のように、拡径円筒部の先端面104aと装着凹部の底面111aとの当接によってホルダ120の空間Cが設定されるため、製作時には精密な寸法精度が要求され、内部構造も複雑であることから加工も難しいという問題も有している。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、誤動作を回避しつつ弁閉して常用流量以上の過剰な流体の二次側への流出を阻止し、流体に温度変化が生じた場合にもシール性を十分に維持して外部漏れを確実に防ぎ、簡易な内部構成によって製作も容易な過流防止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、管状のボデー部材とキャップ部材とが接合されて内部に流体流路を備えたボデー本体が構成され、このボデー本体の対向面近傍には流体流路と連通するとともに円筒状のホルダ部材が収容される収容空間が形成され、この収容空間に収容されたホルダ部材の一、二次側には、それぞれスプリング部材で弁開方向に弾発付勢された第1弁体と第2弁体とが流体の圧力で弁閉可能な状態で装着され、ホルダ部材は、ボデー部材或いはキャップ部材の少なくとも一方側との対向面に対向する緩衝部材が装着された状態で、その外周位置でボデー部材とキャップ部材との対向面の間に装着されたシール用ガスケットを通して収容空間に挟着されている過流防止弁である。
【0013】
請求項2に係る発明は、第1弁体にかかる弾発付勢力FAと第2弁体にかかる弾発付勢力FBがFA<FBの関係であり、かつ、第1弁体は、弁閉位置においても流量が絞られた状態で二次側に流体が流れるようになっている過流防止弁である。
【0014】
請求項3に係る発明は、キャップ部材とボデー部材との対向面の何れか一方或いは双方に流体流路よりも拡径した環状段部が形成され、この環状段部にホルダ部材の外周が嵌め込まれて位置決めされた過流防止弁である。
【0015】
請求項4に係る発明は、環状段部が、キャップ部材とボデー部材との双方に形成され、キャップ部材側の環状段部は、ホルダ部材の外径と略同じ径であり、ボデー部材側の環状段部は、ホルダ部材の外径よりもやや大径である過流防止弁である。
【0016】
請求項5に係る発明は、ボデー本体には、第1弁体の一次側からホルダ部材の外周側を通り、緩衝部材に至るまでの領域を連通する連通路が形成された過流防止弁である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によると、第1弁体と第2弁体とによる二段構造としていることで、誤動作を回避しつつ弁閉して常用流量以上の過剰な流体の二次側への流出を阻止できる。ボデー部材とキャップ部材との対向面の間にシール用ガスケットを装着し、この流路方向に挟着したガスケットにより、流体に温度変化が生じた場合にもシール性を十分に維持して外部漏れを確実に防ぐことが可能となる。ボデー部材とキャップ部材との締め込み力を調整できることで、ガスケットによるシール性を調整し、必要なシール力を確保しやすくなる。特に、ボデー部材とキャップ部材との間に緩衝部材を装着していることで、この緩衝部材で締め込み力を緩和しつつ強く締め込んで最適なシール性を確保でき、増し締めによりガスケットの挟着力を高めてシール性を回復させることもできる。このように、緩衝部材を装着したホルダ部材を、ガスケットを通して流体流路と連通する収容空間に装着していることで、収容空間とホルダ部材との間に流路方向の隙間が過大に発生することを防ぎ、弁開時には騒音の発生を防ぎつつ常用流量を流すことが可能になる。ガスケット及びホルダ部材を、ボデー部材とキャップ部材との間に挟んで固定できるため組立て容易であり、簡易な内部構成であることから製作も容易になる。
【0018】
請求項2に記載の発明によると、弾発付勢力FA<弾発付勢力FBの関係より、二次側流量が大きくなったときには、先ず第1弁体が動作し、次いで第2弁体が動作する二段階の動作となることで、一時的な急激な流れが発生したときには、両方の弁体が動作して流路が完全に遮断される誤動作を防ぎ、二次側の過剰な流出のみの場合に両方の弁体が動作して過剰な流体の流出を阻止できる。第1弁体は、弁閉時にも流量が絞られた状態で二次側に流体が流れるようになっているため、一時的な急激な流れにより第1弁体が弁閉位置に動作したときにも二次側への流れを確実に維持できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によると、環状段部にホルダ部材の外周を嵌め込みより位置決めできることで、ホルダ部材をボデー本体内の所定位置に容易に装着でき、装着後のホルダ部材をボデー内に強固に固定可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によると、組立て時に、ボデー部材をキャップ部材との対向面が上向きになるように配置し、その所定位置に第1弁体、第2弁体、スプリング部材、ホルダ部材、ガスケットを重ねた状態で載置し、その上方からキャップ部材を被せて締め込みことにより、簡便に組立てできる。このとき、キャップ部材の環状段部がホルダ部材の外径と略同じ径であることで、キャップ部材に対してホルダ部材をほぼ固定した状態で装着し、これに対してホルダ部材の外径よりもやや大径の環状段部を、隙間を設けた状態で嵌め込むことで容易に装着可能になる。
【0021】
請求項5に記載の発明によると、流体流路内と連通路との領域を均圧化し、これらの間の差圧を防いで流体により緩衝部材に過剰な力が加わることを防止し、緩衝部材の破損を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の過流防止弁の実施形態を示す断面図である。
図2図1の過流防止弁の分離斜視図である。
図3図1の要部拡大断面図である。
図4図3の第1弁体の弁閉状態を示す要部拡大断面図である。
図5図3の第1弁体と第2弁体の弁閉状態を示す要部拡大断面図である。
図6】従来の過流防止弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明における過流防止弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の過流防止弁は、特に、水素ステーションにおける水素供給用配管設備に使用する過流防止用のバルブとして好適である。図1においては、本発明の過流防止弁の実施形態であり、弁開状態を示している。図2は、図1の過流防止弁の分離斜視図、図3は、図1の過流防止弁の弁開状態における要部拡大断面図を示す。
【0024】
図において、過流防止弁は、ボデー部材1、キャップ部材2、円筒状のホルダ部材3、コイルスプリングからなるスプリング部材4、第1弁体5、第2弁体6、緩衝部材7、シール用ガスケット8を備え、これらが組み合わされて構成され、常用流量では弁開状態を維持し、常用流量以上の流量となったときに、弁閉状態に動作して二次側への過流を防止する。なお、図1の過流防止弁において、左側を一次側、右側を二次側とする。
【0025】
ボデー部材1とキャップ部材2とは、例えばステンレスやステンレス合金により管状に形成され、これらが一体に接合されてボデー本体10が構成され、このボデー本体10の内部に流体流路11が備えられる。
【0026】
ボデー本体10において、ボデー部材1のキャップ部材2との接合側(図における左側)には、その外周付近が一次側に立ち上がった側壁部10aが形成され、この側壁部10aの内周には雌ネジ12が形成される。ボデー部材10の中心側の内周には、流体流路11の二次側をなす二次側流路13が形成され、この二次側流路13は、キャップ部材2との対向側がより拡径して形成されている。二次側流路13には一次側に向けてやや拡径した装着部14が形成され、この装着部14の一次側内周側には弁座部15が形成されている。装着部14の二次側(右側)には縮径状の当接係止面16が形成され、この当接係止面16には弾発付勢したスプリング部材4の一端側(右側端部)が当接係止可能に設けられる。
【0027】
ボデー部材1の側壁部10aの内側において、キャップ部材2の接合端面側には対向面20が設けられ、この対向面20の流体流路11付近の内径側には、装着部14よりも拡径した段差部による環状段部21が所定深さにより形成される。この環状段部21は、ホルダ部材3の外径よりもやや大径に設けられる。
【0028】
ボデー部材側対向面20の環状段部21よりも外径側には、内径方向に略テーパ状に隆起するように鈍角状のエッジシール部22が形成され、さらにこのエッジシール部22よりも外径側には、このエッジシール部22に続けて拡径状の環状凹部23が形成されている。
【0029】
一方、キャップ部材2において、ボデー部材1との接合側(図における右側)の外周には、雌ネジ12に螺合可能な雄ネジ30が形成されている。キャップ部材2の中心側の内周には、流体流路11の一次側をなす一次側流路31が形成され、この一次側流路31は、ボデー部材1との対向側がより拡径して形成されている。
【0030】
キャップ部材2におけるボデー部材1との接合端面側には対向面32が設けられ、この対向面32の流体流路11付近の内径側には、この流体流路11よりも拡径した段差部による環状段部33が、本例においてはボデー部材1の環状段部21よりも流路方向に深く形成される。環状段部33は、ホルダ部材3の外径と略同じ径により所定深さに設けられ、本実施形態ではこれらの間にごくわずかの間隙を設けるように、環状段部33の内径をホルダ部材外径よりもやや大きく形成している。
【0031】
さらに、キャップ部材側対向面32の環状段部33よりも外径側には、ボデー部材側エッジシール部22と対向するように、内径方向に略テーパ状に隆起した鈍角状のエッジシール部34が、ボデー側エッジシール部22と略対称形状になるように形成される。
【0032】
上述したボデー部材1側及びキャップ部材2側の各エッジシール部22、34は、例えば、角度α1、角度α2がそれぞれ160~178°の範囲の適宜の角度で形成されているとよく、本実施形態では、角度α1、α2ともに、170°の鈍角に設けられている。
【0033】
対向面20と対向面30とは、各エッジシール部22、34より外径側、特にガスケット8よりも外径側で互いに離間しており、クリアランスG1を有している。このクリアランスG1により、キャップ部材2とボデー部材3との更なる締め込みが可能であり、シール性が低下した際の増し締めが可能となる。
【0034】
上記ボデー部材1とキャップ部材2との一体化後には、ボデー本体1の対向面近傍に、前述した環状段部21、33により所定広さの収容空間Sが形成され、この収容空間S内に、ホルダ部材3が収容可能に設けられる。
ボデー本体10の一次側(キャップ部材2側)端部には、めねじによる一次側接合部35、二次側(ボデー部材1側)端部には、めねじによる二次側接合部36がそれぞれ設けられ、これら一次側接合部35、二次側接合部36を通して、過流防止弁が配管設備の所定位置に接続可能に設けられる。
【0035】
ホルダ部材3は、収容空間Sに装着可能な大きさに形成され、このホルダ部材3のボデー部材1の対向面20と対向する外径側には環状の凹溝40が形成され、この凹溝40に、嵌め込みにより緩衝部材7が装着される。ホルダ部材3のキャップ部材2の対向面32との対向側には、その中心側から外周側にかけてV字状の切欠溝41が2箇所に等間隔で形成され、この切欠溝41を通して流体が通過可能になっている。
【0036】
切欠溝41よりも内径側には、連通穴からなる収容部42が形成され、この収容部42にスプリング部材4が装着可能に設けられる。図において、収容部42の右側には縮径状の当接係止面43が形成され、この当接係止面43に弾発付勢したスプリング部材4の一端側(右側端部)が当接係止可能に設けられる。収容部42の左側の開口端部側には、第1弁体5が当接シール可能な弁座部44が形成されている。
【0037】
緩衝部材7は、例えばPTFEなどのフッ素樹脂材料により、環状段部21の対向する面に当接可能な外径及び厚さに形成される。この緩衝部材7は、ホルダ部材3とボデー部材1とが押し付け合う力に応じて、これらの間に収縮可能な状態で収容空間Sに収容される。この緩衝部材7は、キャップ部材2とボデー部材1との接合時に、その接合力に応じて収縮できる。また、ホルダ部材3を、ボデー本体10に対して固定する機能も有する。
【0038】
ここで、この緩衝部材7を介して対向するホルダ部材3とボデー部材1との対向面は、所定のクリアランスG2にて離間されている。このクリアランスG2は、少なくとも、クリアランスG1を利用したキャップ部材2とボデー部材1との締め込みの分以上に設ける必要があり、最大でもクリアランスG1と同程度とすればよい。
【0039】
さらに、ホルダ部材3の凹溝40から環状段部21側への突出量が大きすぎると、ボデー部材1とキャップ部材2との締め込み力が過剰に必要となる一方、小さすぎると環状段部21に当接できず、ホルダ部材3を固定できない。したがって、緩衝部材7の当該突出量は、少なくとも、ボデー部材1とキャップ部材2とを締め込んだ状態で当接できる程度であることが必要である。一方で、過剰な締め込みを不要とできるよう、エッジシール部22及びエッジシール部34がガスケット8に接した状態で、緩衝部材7が環状段部21にちょうど接するか、あるいはわずかに接しない程度とすることが好ましい。
【0040】
環状凹部23には、ホルダ部材3の外周側よりも大径に形成されたガスケット8が装着される。ガスケット8は、例えば銅又は銅合金より形成され、環状凹部23に嵌め込まれた状態で、この環状凹部23とキャップ部材3側の対向面32との間に挟着される。
この取付け構造により、上記ホルダ部材3は、その外周位置で対向面20、32の間にガスケット8が装着された状態となり、このガスケット8の内径側を通るように、ホルダ部材3が収容空間S内においてボデー部材1とキャップ部材2とにより挟着される。
【0041】
ホルダ部材3とキャップ部材2との間には切欠溝41が配置されていることで、これらホルダ部材3及びキャップ部材2によるボデー本体10における一次側付近に連通路Tが形成される。この場合、キャップ部材2の対向面32とホルダ部材3との間が切欠溝41を通して内外周方向にかけて連通され、この切欠溝41に続けてキャップ部材2内周とホルダ部材3外周との間に設けられるごくわずかな隙間により連通路Tが設けられる。このように、連通路Tは、第1弁体5の一次側からホルダ部材3の外周側の環状段部21との隙間を通り、緩衝部材7が装着されている箇所に至るまでの領域を連通する範囲に設けられる。
【0042】
収容空間Sに収容されたホルダ部材3に対し、それぞれポペット弁体状に形成された第1弁体5、第2弁体6が、それぞれ一次側及び二次側に直列状態に装着され、これら第1弁体5及び第2弁体6により、二段構造の過流防止弁が構成される。
【0043】
第1弁体5、第2弁体6は、例えば、スーパーエンジニアリングプラスチックに属するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリイミド(PI)などの樹脂材料により形成される。これらの一部には、それぞれ拡径した円板部50、51が形成され、これら円板部50、51の二次側外周位置にシール部52、53が形成され、各シール部52、53は、前述した弁座部44、15にそれぞれ当接シール可能に設けられている。
【0044】
第1弁体5、第2弁体6の双方において、各シール部52、53よりも一次側には短筒部54、55がそれぞれ形成され、各短筒部54、55は、それぞれの一次側にて、一次側流路の端面56、ホルダ部材3の二次側の端面57に当接する。短筒部54、55は、それぞれ一部が切欠かれるようにして複数の連通口58、59がそれぞれ形成され、これら連通口58、59により、短筒部54、55が端面56、57に当接した状態において流体が流入する。各弁体のシール部52、53よりも二次側には長筒部60、61がそれぞれ形成され、各長筒部60、61の円板部50、51側には、複数の連通孔部62、63がそれぞれ形成される。連通孔部62、63よりも二次側には、縮径状の当接係止面64、65がそれぞれ形成され、各当接係止面64、65には、弾発付勢したスプリング部材4の一端側(左側端部)が当接係止可能に設けられる。
【0045】
第1弁体5の長筒部60は、収容部42に挿入可能な外径に形成され、第2弁体6の長筒部61は、装着部14に挿入可能な外径に形成される。
第1弁体5の円板部50の中央には貫通孔70が形成され、第1弁体は、この貫通孔70を通して第1弁体5のシール部52が弁座部44に当接した状態(弁閉位置)においても、その流量が絞られた状態で二次側に流体が流れるようになっている。一方、第2弁体6の円板部51には貫通孔は形成されておらず、この第2弁体の閉塞時には二次側への流体の流れが防がれる。
【0046】
なお、第2弁体6も、場合により、弁閉位置においてわずかに流体が二次側に流出できるようにしても良い。その手段としては、第1弁体5と同様の貫通孔を設けることや、第2弁体6のシール部53や弁座部15に溝を設けること等が考えられ、二次側の破損等の際にも許容される第2弁体6からの漏れの量に応じて設定できる。こうすることで、二次側の過剰な流れの原因が解消された後に、第2弁体6が速やかに弁開状態に復帰できるようになる。
【0047】
第1弁体5は、キャップ部材2の一次側流路31内において、このキャップ部材2とホルダ部材3の収容部42との間に配置され、その二次側が収容部42に遊嵌されている。第1弁体5の当接係止面64とホルダ部材3の当接係止面43との間にはスプリング部材4が弾発付勢状態で収容され、通常時は、スプリング部材4により第1弁体5が一次側(図における左方向)に弾発付勢されて弁開状態が維持される。一方、一次側から流体圧が加わったときには、第1弁体5がスプリング部材4の弾発付勢に抗して二次側(図における右方向)に移動し、流体圧がスプリング部材4の弾発付勢力を超えれば、そのシール部52が弁座部44に当接シールして弁閉状態となる。
【0048】
第2弁体6は、ボデー部材1の二次側流路13内において、ホルダ部材3とボデー部材1の装着部14との間に配置され、その二次側は装着部14に遊嵌されている。第2弁体6の当接係止面65とボデー部材1の当接係止面16との間にはスプリング部材4が弾発係止状態で収容され、第1弁体5の場合と同様に、通常時は、スプリング部材4により第2弁体6が一次側(図における左方向)に弾発付勢されて弁開状態が維持される。一方、第1弁体5側から流体圧が加わったときには、第2弁体6がスプリング部材4の弾発付勢に抗して二次側(図における右方向)に移動し、流体圧がスプリング部材4の弾発付勢力を超えれば、そのシール部53が弁座部15に当接シールして弁閉状態となる。
【0049】
この場合、スプリング部材4により第1弁体5にかかる弾発付勢力をFA、スプリング部材4により第2弁体にかかる弾発付勢力をFBとすると、これらは弾発付勢力FA<弾発付勢力FBの関係となるように設定される。これにより、ホルダ部材3を中心としたボデー本体10の一次側と二次側との差圧に応じて、先ず第1弁体5が動作し、次いで第2弁体6する二段階の動作が可能になっている。
【0050】
なお、上記実施形態では、ホルダ部材3において、ボデー部材1の対向面20と対向する側に緩衝部材7が装着されているが、この緩衝部材7は、ボデー部材1或いはキャップ部材2の少なくとも一方側の対向面20、32に対向する側に装着してあればよく、ボデー部材1及びキャップ部材2の双方の対向面20、32に対向するように設けられていてもよい。
【0051】
また、緩衝部材7は、ホルダ部材3側に溝を設けて固定するのではなく、ボデー部材1又はキャップ部材2に溝を設けて固定してもよく、あるいは単に挟み込むだけでも良い。さらに、緩衝部材は、必ずしも環状でなくても良く、例えば、複数の部材に分かれていても良い。
【0052】
また、ホルダ部材3が、キャップ部材2とボデー部材1との双方に設けられた環状段部33、21に嵌め込まれて位置決めされているが、キャップ部材2とボデー部材1との対向面の何れか一方に環状段部が形成され、この環状段部にホルダ部材3の外周を嵌め込んで位置決めしてもよい。
【0053】
ホルダ部材3の切欠溝41は、1箇所或いは3箇所以上に形成されていてもよく、3箇所以上に形成する場合にも、中心側から外周側にかけて等間隔で放射状に形成されているとよい。切欠溝41は、V字形状以外の断面形状に設けられていてもよく、例えば、断面矩形状の切欠溝を形成することもできる。
【0054】
上記の過流防止弁を組み立てる場合には、ボデー部材1を、キャップ部材2との対向面20が上向きになるように配置し、このボデー部材20の二次側流路13に、二次側のスプリング部材4、第2弁体6を装着し、この第2弁体6の上にホルダ部材3の中央部を対向させつつその外径側を環状段部21に配置し、このホルダ部材3の収容部42に一次側のスプリング部材4を配置し、その上から第1弁体5の長筒部60を収容部42に挿入するように取り付ける。これと同時に、ボデー部材1の環状凹部23に、ガスケット8を嵌め込むようにして装着する。
【0055】
この状態で、雌ネジ12と雄ネジ30とを螺合し、ボデー部材1とキャップ部材2を接合する。これにより、収容空間S内にホルダ部材3が位置決めされた状態となり、このホルダ部材3の一次側に第1弁体5、二次側に第2弁体5が、それぞれスプリング部材4で弾発付勢された状態で装着される。
【0056】
ボデー本体10の構成後には、ボデー部材1とキャップ部材2とがガスケット8によりシールされる。このとき、ガスケット8が鈍角のエッジシール部22、34の間に挟まれた状態になることで、これらの幅の狭いシール面によって挟圧力が高まりシール性が向上する。
【0057】
続いて、本発明の過流防止弁の上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
図1図3においては、第1弁体5、第2弁体6が、それぞれスプリング部材4によって左方向に弾発付勢され、各弁体5、6の端面56、57がキャップ部材2、ホルダ部材3の対向する当接面に当接した状態を示している。この場合、第1弁体5の連通口58、連通孔部62、貫通孔70、及び第2弁体の連通口59、連通孔部63が、一次側流路31、二次側流路13とそれぞれ連通し、弁開状態が維持される。
【0058】
これにより、図の左方向から正常流量の高圧水素(高圧流体)が流れ込むときには、この流体がキャップ部材2側の連通口58、連通孔部62を通してホルダ部材3内に流れ、続いて、この流体がボデー部材1側の連通口59、連通孔部63を通して二次側に流れ、常用流量による流体が流出する。このとき、連通口58、59、連通孔部62、63は、常用流量が流れるのに十分な開口面積を有し、一次側との二次側との間の差圧が生じることを防いでいる。
【0059】
過流防止弁の二次側で図示しない機器やバルブ・配管等の破損等が発生し、二次側流量が常用流量よりも極端に大きくなると、開口面積(ノズル面積)を流体が流れきれずに一次側と二次側との間に差圧が生じる。
【0060】
この差圧が大きくなると、第1弁体5にかかる弾発付勢力FA<第2弁体にかかる弾発付勢力FBの関係より、図4に示すように、先ず、流体の流れ方向に対する抗力がより小さい第1弁体5が図の右方向に移動し、シール部52が弁座部44に着座して弁閉状態となる。このとき、貫通孔70がホルダ部材3の収容部42と連通した状態を維持するため、この貫通孔70を通して一次側から二次側には流体が、常用流量よりも小さい一定の流量により流れ続ける。これにより、貫通孔70がオリフィスとなって流量が絞られて、一次側、二次側の流体圧力が小さくなる。
【0061】
さらに、過流防止弁の二次側流量が大きくなると、これに伴って二次側流路13内の圧力も大きくなるが、この二次側流路13内の圧力回復に一次側流路31側からの流体供給量が追い付かず、これらの差圧によって第2弁体6が図5に示すように右方向に移動し、そのシール部53が弁座部15に着座して弁閉状態となって流路が遮断する。
【0062】
このように、第1弁体5と第2弁体6とによる二段構造の過流防止弁とし、先ず、第1弁体5が作動し、次に第2弁体5が作動する構成としていることで、二次側で過剰な流出が発生した場合には、破損や故障を防ぎつつ各弁体5、6が動作して流路を確実に閉止できる。一方、例えば、電源投入直後の流れなど、二次側の過剰な流れ以外の一次的な急激な流れが発生した場合には、第1弁体5が所定流量を確保しつつ弁閉状態になることで、完全な弁閉状態になることを防ぎ、過流防止弁全体の誤動作を阻止する。また、完全な弁閉状態にはならないことで、一時的な急激な流れが解消された場合には、すみやかに第1弁体5が弁開状態に戻る。
【0063】
緩衝部材7を対向面20に対向させた状態でホルダ部材3に装着し、このホルダ部材3を、その外周位置でボデー部材1とキャップ部材2との間に装着した銅又は銅合金製のガスケット8を通して収容空間S内で挟着していることにより、ガスケット8をボデー部材1とキャップ部材2とで流路方向に挟み込んでシールできる。このため、高圧流体に温度差が生じ、例えば低温流体が流れる場合でも、ガスケット8の膨張や収縮を防ぎつつ、その挟着方向の圧接力により十分にシール性を発揮した状態を維持し、外部漏れを確実に阻止することができる。
【0064】
しかも、緩衝部材7がホルダ部材3とボデー部材1との間に配置されていることで、この緩衝部材7の弾性力を通してボデー部材1とキャップ部材2との締め込み力を調整し、ガスケット8による最適なシール性能を発揮した状態でボデー本体10を組立てできると共に、増し締めによりシール性を回復することもできる。
【0065】
緩衝部材7を通してホルダ部材3と収容空間Sとの過大な隙間を防ぎ、流体によるホルダ部材3のチャタリング現象を回避することもできる。
【0066】
キャップ部材2とボデー部材1との対向面32、20の双方に環状段部33、21を形成し、これら環状段部33、21の間にホルダ部材3の外周を嵌め込んで位置決めしているので、このホルダ部材3を通して、第1弁体5や第2弁体6、スプリング部材4を仮組みした状態で、ボデー部材1とキャップ部材2とを容易に一体化でき、組立て後には、ホルダ部材3の外周位置にガスケット8が位置することで、このガスケット8によりホルダ部材3の装着側からの流体漏れを確実に防止する。
また、このように環状段部33、21を設けて収容空間Sを形成し、この収容空間Sにホルダ部材3を挟着により固定しているので、ホルダ部材3を装着するためのスペースを必要最小限にすることができ、構造の簡素化とともにコンパクト化も図ることができる。
【0067】
ボデー本体1に連通路Tを形成し、この連通路Tが、第1弁体5の一次側からホルダ部材3の外周側を通り、緩衝部材7に至るまでの領域を連通しているので、第1弁体5の弁開又は弁閉状態の何れの場合にも、一次側流路31から緩衝部材7までの間を連通路Tを通して均圧化し、緩衝部材7への過剰な流体圧力の印加を回避する。しかも、ホルダ部材3に設けたV字状の切欠溝41、及び環状段部21とホルダ部材3外周との間のごくわずかの間隙により連通路Tを常時確保している。
【0068】
なお、緩衝部材7とボデー部材1側の環状段部21との間にも間隙が設けられていてもよく、第2弁体6の閉止時に二次側流路13を遮断できる構造であれば、第1弁体5側、ホルダ部材3側から第2弁体6側までの流路が完全にシールされていなくてもよい。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0070】
1 ボデー部材
2 キャップ部材
3 ホルダ部材
4 スプリング部材
5 第1弁体
6 第2弁体
7 緩衝部材
8 ガスケット
10 ボデー本体
11 流体流路
20、32 対向面
21、33 環状段部
S 収容空間
T 連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6