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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】振動発生装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20240214BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20240214BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B06B1/04 S
B06B1/06 A
H04R1/00 310G
H04R17/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020034759
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137677
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】岸本 純明
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆幸
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/147741(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3069057(JP,U)
【文献】国際公開第2015/092966(WO,A1)
【文献】実開平03-017960(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0333699(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1046017(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00- 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体から離間して配置される振動板であって、前記振動体側の第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する振動板と、
前記振動板に接合された圧電アクチュエータと、
前記第1の主面から前記振動体に向かって延伸する柱状の支持部と、前記支持部に接続され、前記振動体に接合される接合面を有する固定部とを有し、前記振動板を支持する複数の支持部材と、を具備し、
前記複数の支持部材は、平面視にて前記圧電アクチュエータを挟むように設けられ、前記接合面が平面視にて前記支持部より大きい前記固定部を有する
振動発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発生装置であって、
周波数が10Hz以上250Hz以下である低周数領域の信号波を変調波とし、周波数が20kHz以上40kHz以下である高周波領域の正弦波を前記変調波によって振幅変調してなる波形を有する駆動信号を前記圧電アクチュエータに出力する駆動装置
をさらに具備する振動発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振動発生装置であって、
前記駆動装置は、前記正弦波の電圧ゲインを-10dB以上0dB以下とし、前記変調波の電圧ゲインを-6dB以上0dB以下とする
振動発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の振動発生装置であって、
前記駆動装置は、前記正弦波の電圧ゲインを-10dBとし、前記変調波の電圧ゲインを0dBとする
振動発生装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の振動発生装置であって、
前記振動板は、矩形形状を有する前記第1の主面及び前記第2の主面を有し、
前記複数の支持部材は、前記第1の主面の長手方向の両端部に設けられた前記支持部を含む
振動発生装置。
【請求項6】
請求項5に記載の振動発生装置であって、
前記複数の支持部材は、前記接合面が矩形形状を有する前記固定部を有し、前記固定部は前記接合面の長辺が前記振動板の短辺に平行である
振動発生装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の振動発生装置であって、
前記圧電アクチュエータは、平面視にて前記振動体の中央領域に重なって設けられる
振動発生装置。
【請求項8】
振動体から離間して配置される振動板であって、前記振動体側の第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する振動板と、前記振動板に接合された圧電アクチュエータと、前記第1の主面から前記振動体に向かって延伸する柱状の支持部と、前記支持部に接続され、前記振動体に接合される接合面を有する固定部とを有し、前記振動板を支持する複数の支持部材とを備え、前記複数の支持部材は、平面視にて前記圧電アクチュエータを挟むように設けられ、前記接合面が平面視にて前記支持部より大きい前記固定部を有する振動発生装置
を具備する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動による触覚提示に係る振動発生装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザに触覚を提示する触覚機能デバイスには様々なアクチュエータが用いられている。例えば、通知機能には偏心モータやリニア共振アクチュータ等の電磁式アクチュエータが用いられている。また、フォースフィードバック機能にはこれらの電磁式アクチュエータに加え、圧電式アクチュエータも用いられている。
【0003】
近年、触感技術は高度化が進んでおり、低周波領域(100~250Hz)でのフォースフィードバック機能では、駆動信号の複合加算や変調等により、触感表現の幅が拡張されている。また、高周波領域(20~40kHz程度)では、ザラザラ感やツルツル感等の触感も提示可能な技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-314369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、高周波領域(20~40kHz程度)の振動を用いることによりユーザに新たな触感を提示することが可能である。しかしながら、高周波駆動領域での駆動は、パネル上に定在波を発生させる必要があり、2つのアクチュエータをパネル両端に配置する必要がある等、アクチュエータの配置に制限がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、新たな触感を提示することが可能であり、アクチュエータの配置に制限が少ない振動発生装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る振動発生装置は、振動版と、圧電アクチュエータと、複数の支持部材とを具備する。
上記振動版は、振動体から離間して配置される振動板であって、上記振動体側の第1の主面と、上記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する。
上記圧電アクチュエータは、上記振動板に接合されている。
上記複数の支持部材は、上記第1の主面から上記振動体に向かって延伸する柱状の支持部と、上記支持部に接続され、上記振動体に接合される接合面を有する固定部とを有し、上記振動板を支持し、平面視にて上記圧電アクチュエータを挟むように設けられ、上記接合面が平面視にて上記支持部より大きい上記固定部を有する
【0008】
この構成によれば、圧電アクチュエータは振動体に直接に接合されないため、圧電アクチュエータの配置に制限が少なく、振動体の有効面積を向上させることが可能である。さらに、振動体と振動板は離間しているため、振動体と振動体の間の空間を有効に利用することができる。
【0009】
上記振動発生装置は、周波数が10Hz以上250Hz以下である低周数領域の信号波を変調波とし、周波数が20kHz以上40kHz以下である高周波領域の正弦波を上記変調波によって振幅変調してなる波形を有する駆動信号を上記圧電アクチュエータに出力する駆動装置をさらに具備してもよい。
【0010】
上記駆動装置は、上記正弦波の電圧ゲインを-10dB以上0dB以下とし、上記変調波の電圧ゲインを-6dB以上0dB以下としてもよい。
【0011】
上記駆動装置は、上記正弦波の電圧ゲインを-10dBとし、上記変調波の電圧ゲインを0dBとしてもよい。
【0012】
上記振動板は、矩形形状を有する上記第1の主面及び上記第2の主面を有し、
上記複数の支持部材は、上記第1の主面の長手方向の両端部に設けられた上記支持部を含んでもよい。
【0013】
上記複数の支持部材は、上記接合面が矩形形状を有する上記固定部を有し、上記固定部は上記接合面の長辺が上記振動板の短辺に平行であってもよい。また、上記圧電アクチュエータは、平面視にて上記振動体の中央領域に重なって設けられていてもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、振動発生装置を備える。
上記振動発生装置は、振動体から離間して配置される振動板であって、上記振動体側の第1の主面と、上記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する振動板と、上記振動板に接合された圧電アクチュエータと、上記第1の主面から上記振動体に向かって延伸する柱状の支持部と、上記支持部に接続され、上記振動体に接合される接合面を有する固定部とを有し、上記振動板を支持する複数の支持部材とを備え、上記複数の支持部材は、平面視にて上記圧電アクチュエータを挟むように設けられ、上記接合面が平面視にて上記支持部より大きい上記固定部を有する
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、新たな触感を提示することが可能であり、一つのアクチュエータで定在波を発生させることができる等、アクチュエータの配置に制限が少ない振動発生装置及び電子機器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る振動発生装置の斜視図である。
図2】上記振動発生装置の分解斜視図である。
図3】上記振動発生装置の平面図である。
図4】上記振動発生装置の側面図である。
図5】上記振動発生装置の一部構成の平面図である。
図6】上記振動発生装置が備える支持部材の側面図である。
図7】上記振動発生装置が備える支持部材の平面図である。
図8】本実施形態に係る、他の構成を有する振動発生装置の平面図である。
図9】本実施形態に係る、駆動装置を備える振動発生装置の模式図である。
図10】上記駆動装置が発生させる高周波波形である。
図11】上記駆動装置が発生させる低周波波形である。
図12】上記駆動装置が発生させる振幅変調波波形である。
図13図12の振幅変調波を拡大した波形である。
図14】上記駆動装置が発生させる振幅変調波波形(電圧波形のみ)である。
図15図14の振幅変調波を拡大した波形である。
図16】振幅変調波の振幅を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る振動発生装置について説明する。なお、以下の各図においてX方向、Y方向及びZ方向を相互に直交する3方向とする。
【0018】
[振動発生装置の構成]
図1は本実施形態に係る振動発生装置100の斜視図であり、図2は振動発生装置100の分解斜視図である。図3は振動発生装置100の平面図であり、図4振動発生装置100の側面図である。
【0019】
これらの図に示すように、振動発生装置100は、振動体101、振動板102、圧電アクチュエータ103及び支持部材104を備える。
【0020】
振動体101は、振動体101に触れるユーザに触覚を提示する。振動体101はガラス又はプラスチック等の材料からなる板状の部材とすることができ、例えば、液晶パネルや電子機器の筐体等である。図3に示すように振動体101は、主面が矩形形状を有する板状とすることができ、振動体101の長辺(Y方向)を長辺101aとし、短辺(X方向)を短辺101bとする。
【0021】
振動板102は、圧電アクチュエータ103によって振動を生じる。振動板102はステンレス、42アロイ又は銅等の金属からなる板とすることができ、厚みは0.1mm以上0.5mm以下とすることができる。図4に示すように、振動板102は支持部材104によって振動体101から離間し、振動体101に対して平行に配置されている。振動板102の主面のうち、振動体101側の面を第1の主面102aとし、第1の主面102aとは反対側の主面を第2の主面102bとする。
【0022】
図5は、振動発生装置100から振動体101を除いた状態の平面図である。振動板102は、図5に示すように主面が矩形形状を有する板状とすることができ、振動板102の長辺を長辺102cとし、短辺を短辺102dとする。振動板102は、振動体101と長手方向及び短手方向が一致するように配置され、即ち図3に示すように、長辺101aと長辺102cが平行となり、短辺101bと短辺102dが平行となるように配置される。
【0023】
圧電アクチュエータ103は、振動板102の第1の主面102aに接合され、振動を生じる。圧電アクチュエータ103は、正極、負極及び圧電材料層を備え、正極と負極の間に電圧を印加すると、逆圧電効果により圧電材料層に変形が生じ、振動が発生する。圧電アクチュエータ103は正極と負極を圧電材料層を介して交互に積層した積層構造を有するものであってもよく、他の構造を有するものであってもよい。また、圧電アクチュエータ103は第2の主面102bに接合されてもよい。
【0024】
圧電アクチュエータ103は、図5に示すように、圧電アクチュエータ103の長手方向が振動板102の長辺102cと平行となるように、振動板102の中央部分に配置さされる。一般に圧電アクチュエータは振動体の両端部に1つずつが配置されることが多いが、本実施形態の構成では圧電アクチュエータ103は一つのみで有効な触覚が得られる振動を発生させることが可能である。圧電アクチュエータ103は接着等によって振動板102に接合されるものとすることができる。
【0025】
支持部材104は、振動板102を振動体101に固定する。図6は、支持部材104の側面図である。同図に示すように支持部材104は、支持部104aと固定部104bを備える。
【0026】
支持部104aは、振動板102と固定部104bを接続する。支持部104aは、第1の主面102aから振動体101に向かって延伸する柱状の部分であり、図4に示すように、ネジ105によって振動板102と固定されるものとすることができる。また、支持部104aは他の方法で振動板102と固定されてもよい。
【0027】
固定部104bは、図6に示すように接合面104cを有し、接合面104cが振動体101に接合される。接合面104cはエポキシ樹脂等の樹脂によって振動体101に接着されるものとすることができる。図7は接合面104cを示す平面図である。同図に示すように接合面104cは矩形状であり、長辺104d及び短辺104eを有する。
【0028】
支持部材104は、別部材である支持部104aと固定部104bをネジ留あるいは溶接等によって接合したものであってもよい。また、支持部材104は削り出し加工等によって形成され、支持部104aと固定部104bが連続した部材であってもよい。支持部材104は例えば鉄、ステンレス又は真鍮等の金属からなるものとすることができる。
【0029】
図5に示すように、支持部材104は、振動板102の長手方向(Y方向)の両端部、即ち短辺102dの近傍に、短辺102dに沿って2つずつ、計4つが配置され、振動板102を振動体101に固定するものとすることができる。この際、固定部104bは、図5に示すように接合面104cの長辺104dが振動板102の短辺102dと平行となるように配置されるものとすることができる。
【0030】
なお、固定部104bは1つの支持部104aに1つが接続されるものに限られない。図8は、支持部材104の他の構成を示す模式図である。同図に示すように、1つの固定部104bが2つの支持部104aに接続されるものとすることも可能である。また、支持部104aの数も4つに限られず、短辺102dに沿って1つ又は3つ以上が設けられてもよい。
【0031】
[駆動装置について]
振動発生装置100は、圧電アクチュエータ103に駆動信号を供給する駆動装置を備えるものとすることができる。図9は、駆動装置150を備える振動発生装置100の模式図である。
【0032】
駆動装置150は、例えばアンプであり、圧電アクチュエータ103の正極及び負極に接続され、正極と負極の間に後述する電圧波形を駆動信号として出力する。以下、駆動装置150から圧電アクチュエータ103に出力される駆動信号の波形について説明する。なお、低周波領域の信号波については、以下の説明において便宜上正弦波としているが、これに限定されるものではない。
【0033】
図10は、周波数が20kHz以上40kHz以下である高周波領域の正弦波である電圧波形と電流波形を示す。駆動装置150から圧電アクチュエータ103に図10に示す電圧波形を駆動信号として印加すると、図10に示す電流波形を有する電流が流れる。
【0034】
しかしながら、このような高周波領域の正弦波を駆動信号としても、振動板102の振動が振動体101に伝達されず、振動体101において振動が生じない。また、高周波領域の正弦波を駆動信号としても圧電アクチュエータ103の駆動電流が増加し、消費電力が増大し、圧電アクチュエータ103の発熱も大きい。さらに、ユーザの指と振動体101の間で異音が発生する場合もある。
【0035】
図11は、周波数が10Hz以上250Hz以下である低周波領域の正弦波である電圧波形と電流波形を示す。駆動装置150から圧電アクチュエータ103に図11示す電圧波形を駆動信号として印加すると、図11に示す電流波形を有する電流が流れる。
【0036】
10Hz以上250Hz以下の低周波領域の振動は、人の皮膚の受容器であるマイスナー小体及びパチニ小体等が敏感に感じることが可能な振動である。しかしながら、このような低周波領域の正弦波を駆動信号とすると、振動板102は振動するものの、振動板102の振動が振動体101に伝達されず、振動体101において振動が生じない。
【0037】
図12は、低周波領域の正弦波(信号波)を変調波とし、この変調波によって高周波領域の正弦波を振幅変調した振幅変調波の波形を有する電圧波形と電流波形を示す。図13図12の拡大図である。駆動装置150から圧電アクチュエータ103に、図12示す電圧波形を駆動信号として印加すると、図12及び図13に示す電流波形を有する電流が流れる。
【0038】
図14図12の電圧波形のみを示し、図15図13の電圧波形のみを示す。図14及び図15においてW1で示す波長の小さい波が高周波領域の正弦波であり、W2で示す波長の大きい波が低周波領域の正弦波である。以下、高周波領域の正弦波を高周波W1とし、低周波領域の正弦波を低周波W2とする。
【0039】
図14及び図15に示す波形では、低周波W2は、高周波W1の振幅の変化によって形成されており、即ち図14及び図15に示す波形は高周波W1を搬送波、低周波W2を変調波とする振幅変調波である。なお、高周波W1は20kHz以上40kHz以下の周波数を有し、低周波W2は10Hz以上250Hz以下の周波数を有する。
【0040】
高周波W1の電圧ゲインは-10dB以上0dB以下が好適であり、低周波W2の電圧ゲインは-6dB以上0dB以下が好適である。図16は、振幅変調波の波形と電圧ゲインの関係を示す模式図である。同図に示すように、振幅変調波の「ピーク」の振幅を振幅aとし、「谷底」の振幅を振幅bとすると、変調度mは以下の(式1)で表される。下記(式1)で示すように、振幅aに対して振幅bが小さいほど変調度mが大きくなる。
【0041】
m=(a-b)/(a+b) (式1)
【0042】
図14においても、低周波W2の電圧ゲインを高くすると、図14中白矢印で示すように、低周波W2の「谷底」が深くなり、低周波W2の電圧ゲインを0dBとすると、「谷底」の振幅は最小となる。また、低周波W2の電圧ゲインを低くし、-6dBに近づけると、低周波W2の「谷底」は浅くなり、振幅は大きくなる。さらに、低周波W2の電圧ゲインを低くし、-10dBに近づけると、低周波W2の「谷底」の振幅bは「ピーク」の振幅と同等となり、「谷」が形成されなくなる。
【0043】
本実施形態において、高周波W1及び低周波W2の電圧ゲインは、「谷」が形成される範囲に調整される。具体的には高周波W1の電圧ゲインは-10dB以上0dB以下が好適であり、低周波W2の電圧ゲインは-6dB以上0dB以下が好適である。また、高周波W1の電圧ゲインは-10dBがより好適であり、低周波W2の電圧ゲインは0dBがより好適である。
【0044】
駆動装置150が、図14に示す振幅変調波の電圧波形を有する駆動信号を圧電アクチュエータ103に出力すると、圧電アクチュエータ103によって振動板102に振動が生じる。振動板102の振動は支持部材104によって振動体101に伝達され、固定部104bを支点として振動体101に高周波W1による定在波が形成され、浮揚現象が発生する。さらに、低周波W2によって振動体101にマイスナー小体及びパチニ小体等の受容体を刺激する振動が発生する。
【0045】
これにより、ユーザが指を振動体101に接触させると低周波W2が敏感に指に触感を提示し、指を振動体101に押圧すると浮揚現象によるスクィーズ効果を受けると共に、強い低周波数の振動を受けるという、これまでにない触感を感じることができる。
【0046】
さらに、高周波W1が振幅変調されていることにより、振幅変調されていない場合に比べて波形全体の電流平均が小さくなり、消費電力及び発熱を小さくすることが可能である。加えて、図10に示すような高周波領域の正弦波を駆動信号とすると、ユーザの指と振動体101の間で異音が発生することがあるが、図12に示す振幅変調波の場合にはこのような異音の発生を防止することが可能である。
【0047】
本実施形態の構成においては、振動体101のうち、固定部104bの間の領域でのみ振動をさせることが可能であり、振動を生じる領域を調整することが可能である。また、圧電アクチュエータ103は振動体101に直接に接合されないため、圧電アクチュエータ103の配置に制限が少なく、振動体101の有効面積を向上させることが可能である。さらに、振動体101と振動板102は離間しているため、振動体101と振動板102の間の空間を有効に利用することができる。
【0048】
振動発生装置100は以上のような構成を有する。振動発生装置100は、スマートフォンや触覚機能デバイス等の各種電子機器に搭載することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
100…振動発生装置
101…振動体
102…振動板
103…圧電アクチュエータ
104…支持部材
150…駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16