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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】棒状基材容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/22 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A45D40/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020042612
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142105
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小橋 佳彦
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実公昭31-010953(JP,Y1)
【文献】実開昭62-067516(JP,U)
【文献】実開昭59-101915(JP,U)
【文献】意匠登録第1358361(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/22
A45D 40/24
A45D 40/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状基材を収容する中筒と、この中筒を保持する把持部とを有する棒状基材ホルダー、および、この棒状基材ホルダーの中筒を内部に収めるキャップからなる棒状基材容器において、
前記キャップが、
前記中筒を収める内部空間を有する収容箱であって、収容箱長さ方向の一端と他端との間を延びて前記内部空間に連通する側部開口、および該一端または他端に形成されて前記内部空間に連通する端部開口を有する収容箱と、
前記長さ方向に延びる揺動軸を中心に揺動して前記側部開口を開閉する蓋体と、
前記蓋体を開蓋方向に付勢する蓋体付勢手段とを有し、
キャップの前記蓋体には、前記棒状基材ホルダーが前記収容箱に対して棒状基材収容位置に配され、かつ該蓋体が前記側部開口を閉じる閉蓋位置にあるとき、前記棒状基材ホルダーの把持部の一部と係合して該蓋体を閉蓋位置に保ち、前記棒状基材ホルダーが前記端部開口内を収容箱外方側に移動して前記棒状基材収容位置から外れると前記係合を解除する係合部が設けられ
前記把持部は、前記棒状基材ホルダーが前記棒状基材収容位置に配された状態において、前記端部開口を閉じるように構成されており、
前記蓋体は、閉蓋位置にあるとき、前記棒状基材収容位置にある前記棒状基材ホルダーの把持部の前端面に対面する端面を有し、
前記把持部の前端面は、前記把持部の後端側に掘り下げられ、前記蓋体に設けられた係合部が嵌入する凹部を有し、
前記係合部は、前記長さ方向に直線移動可能に構成され、前記棒状基材ホルダーが前記棒状基材収容位置にある状態で、前記蓋体が閉蓋されたとき前記凹部に弾力的に嵌入するよう突出付勢されていることを特徴とする棒状基材容器。
【請求項2】
前記揺動軸が前記蓋体と一体化して形成され、
前記揺動軸の一端部に、該軸の径外方に延びる延長部が設けられ、
前記蓋体付勢手段が、一端が前記延長部に係止すると共に他端が前記収容箱に係止して、前記延長部を引っ張ることにより前記揺動軸を回転させる引張コイルばねから形成されている請求項に記載の棒状基材容器。
【請求項3】
前記係合部は、板状部材であり、前記長さ方向に直交する方向における両端部の一部が、前記蓋体に設けられた直線状溝部によって上下から挟まれている、請求項1または請求項2に記載の棒状基材容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒状基材容器、より詳しくは、口紅のような棒状基材を収容する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状の口紅が広く実用に供されている。周知の通りこの種の口紅は多くの場合、使用者によって把持される把持部と、この把持部に保持された中筒とを有するホルダーを利用して取り扱われている。詳述すれば、棒状の口紅は、このホルダーの中筒に一端部が収容された状態とされ、使用者はこのホルダーの把持部を把持しながら、中筒外に出させた口紅の他端部を塗布に用いる。
【0003】
一般にこの種のホルダーは、口紅使用時以外の携行や保管時には口紅を露出させないように、口紅ごと中筒を内部に収めるキャップと合わせて利用される。つまりこの場合は、上記ホルダーとキャップとから口紅容器が構成されている。このような口紅容器を構成するキャップとして、多くは有底円筒状の簡単な形状のものが適用されているが、特別な目的に合わせて、それ以外の形状とされたキャップも提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、一端が開口とされた四角い箱状に形成され、ホルダー(容器本体)に保持された口紅を上記開口から受け入れるように構成されたキャップが示されている。このキャップは、4つの側面の1つに、化粧用の鏡を保持した鏡板を枢支するために、上述のような箱状に形成されたものである。また特許文献2には、口紅を保持した円筒状のホルダー(容器本体)を受け入れる開口を一端に有し、そして1つの側面に概略長さ方向、つまりホルダーを受け入れる方向に延びる器部を有する箱状のキャップが示されている。このキャップは、上記器部に化粧用筆を嵌合収容し、そして上記と同様の鏡板を枢支するために、上述のような構造とされたものである。
【0005】
上述のように箱状に形成されたキャップを備えた口紅容器は、有底円筒状のキャップを口紅部分に被着するようにした従来の多くの口紅容器と比べると、キャップの形状が明らかに相違することから、さらには、箱状のキャップをテーブル等の上に置いた状態でキャップを着脱できることから、「特別なもの」ひいては「高級なもの」といった商品イメージを備え得るものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実全昭56-069210号公報
【文献】実全昭55-105009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、以上説明したように、側面の全体あるいは一部が平らに形成された箱状のキャップを有し、その一端の開口から口紅を受け入れるように構成された従来の口紅容器においては、テーブル等の上に置いたキャップ内に口紅を収容させる際に、キャップの開口に対して口紅の位置が少しズレたりしていると、キャップの開口周囲部分を口紅で汚すといった、好ましくない事態を招くことがある。そのため、従来のこの種の口紅容器のキャップ内に口紅を収容させる際には、キャップの開口に対して口紅の位置をある程度正確に合わせるか、あるいは、それが面倒な場合は、口紅を口紅容器の中筒内に収容した状態(つまり口紅が中筒から繰り出ていない状態)にして、キャップ内に口紅を収容させるようにしていた。
【0008】
上記のように、キャップの開口に対する口紅の位置に注意を払ったり、口紅を口紅容器の中筒内に収容したりすることは、いずれも使用者にとって煩わしい作業となる。また、この種の口紅容器においては、キャップ内に口紅を収容させた状態下では、口紅を保持している容器本体から不用意にキャップが外れてしまうことは回避したいという事情がある。そのために特許文献1では、容器本体の外面にキャップの方に飛び出た係止爪を設け、容器本体とキャップとを組み合わせたとき、この係止爪でキャップを(より詳しくは、キャップに枢支されて回動可能とされた鏡板毎)押え付ける構造が提案されている。このような構造を備えた特許文献1の口紅容器では、容器本体とキャップとを組み合わせる際に、上記係止爪の位置にも気を付ける必要があるので、組み合わせの作業がさらに煩わしいものとなる。以上のことから、この種の従来の口紅容器は使い勝手が良くないものとなっていた。
【0009】
以上、口紅容器における問題について説明したが、上述のようなキャップとホルダーとからなる容器は、口紅以外の棒状基材、例えばスティック糊用の容器としても適用されており、その場合も上記と同様の問題が起こり得る。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、口紅等の棒状基材を棒状基材ホルダーに保持させ、棒状基材をキャップの内部に収めるようにした棒状基材容器において、棒状基材をキャップの内部に収める際の煩わしい操作を不要にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による棒状基材容器は、
口紅等の棒状基材を収容する中筒と、この中筒を保持する把持部とを有する棒状基材ホルダー、および、この棒状基材ホルダーの中筒を内部に収めるキャップからなる棒状基材容器において、
前記キャップが、
前記中筒を収める内部空間を有する収容箱であって、収容箱長さ方向の一端と他端との間を延びて上記内部空間に連通する側部開口、および該一端または他端に形成されて上記内部空間に連通する端部開口を有する収容箱と、
前記長さ方向に延びる揺動軸を中心に揺動して前記側部開口を開閉する蓋体と、
前記蓋体を開蓋方向に付勢する蓋体付勢手段とから構成され、
キャップの上記蓋体には、棒状基材ホルダーが収容箱に対して棒状基材収容位置に配され、かつ蓋体が前記側部開口を閉じる閉蓋位置にあるとき、棒状基材ホルダーの把持部の一部と係合して蓋体を閉蓋位置に保ち、棒状基材ホルダーが上記端部開口内を収容箱外方側に移動して上記棒状基材収容位置から外れると前記係合を解除する係合部が設けられている、
ことを特徴とするものである。
【0012】
ここで、上述の「収容箱長さ方向」とは、収容箱が内部に収めた中筒の筒軸と平行になる方向である。また上述の側部開口が「収容箱長さ方向の一端と他端との間を延びる」とは、一端から他端まで収容箱全長に亘って延びることも、また、この全長の中の一部に亘って延びることも含むものとする。また上述の「棒状基材ホルダーが収容箱に対して棒状基材収容位置に配され」とは、棒状基材ホルダーが保持している棒状基材が収容箱内に収容されるようになる位置(収容箱に対する相対位置)に棒状基材ホルダーが配されていることを意味する。
【0013】
なお棒状基材ホルダーの把持部は、該棒状基材ホルダーが棒状基材収容位置に配された状態において、収容箱の端部開口を閉じるように構成されていることが望ましい。
そして、把持部が上述のように構成されている場合、
蓋体は、閉蓋位置にあるとき、棒状基材収容位置にある棒状基材ホルダーの把持部の前端面に対面する端面を有し、
把持部の前端面は、蓋体に設けられた係合部が嵌入する凹部を有し、
上記係合部は、棒状基材ホルダーが棒状基材収容位置にある状態で、蓋体が閉蓋されたとき上記凹部に弾力的に嵌入するよう突出付勢されている、
ことがさらに望ましい。
なお把持部の前端面とは、把持部が保持している中筒側を向く端面のことである。
【0014】
また、本発明による棒状基材容器においては、
上記揺動軸が蓋体と一体化して形成され、
揺動軸の一端部に、該軸の径外方に延びる延長部が設けられ、
蓋体付勢手段が、一端が上記延長部に係止すると共に他端が収容箱に係止して、上記延長部を引っ張ることにより上記揺動軸を回転させる引張コイルばねから形成されている、
ことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の棒状基材容器においては、キャップを構成する収容箱に、キャップの長さ方向の一端と他端との間を延びて内部空間に連通する側部開口と、上記一端または他端に形成されて内部空間に連通する端部開口が設けられているので、中筒内に口紅等の棒状基材を収容している棒状基材ホルダーを、その把持部を使用者が把持して動かすことにより、該棒状基材ホルダーに保持されている棒状基材を側部開口を通して簡単に収容箱の内部空間に収めることができる。
【0016】
そしてキャップの蓋体には、棒状基材ホルダーが収容箱に対して棒状基材収容位置に配され、かつ蓋体が上記側部開口を閉じる閉蓋位置にあるとき、棒状基材ホルダーの把持部の一部と係合して蓋体を閉蓋位置に保つ係合部が設けられているので、使用者が棒状基材を側部開口を通して収容箱内に収めた後、蓋体を閉蓋位置まで揺動させるだけで、この閉蓋位置が係合部によって自動的に維持される。またこの係合部は、棒状基材ホルダーが収容箱の端部開口内を収容箱外方側に移動して棒状基材収容位置から外れると、棒状基材ホルダーの把持部との係合を解除するように構成されているので、使用者が棒状基材ホルダーを収容箱外方側に移動させるだけで上記係合が解除される。この係合が解除されれば、蓋体付勢手段によって付勢されている蓋体は自動的に開蓋されるので、使用者は収容箱の側部開口を通して棒状基材を収容箱の外に、つまりキャップの外に取り出して使用することができる。以上の通りにして本発明の棒状基材容器によれば、棒状基材をキャップの外に取り出す操作も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による棒状基材容器を示す斜視図
図2】上記棒状基材容器を構成する棒状基材ホルダーを示す正面図
図3】上記棒状基材容器を構成するキャップの一部を示す斜視図
図4図3に示したキャップの一部の動作を説明する概略図
図5図1とは異なる状態にある上記棒状基材容器を示す斜視図
図6図1とはさらに異なる状態にある上記棒状基材容器を示す斜視図
図7】上記棒状基材容器の要部を示す部分正面図
図8図7とは異なる状態にある上記棒状基材容器の要部を示す部分正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による棒状基材容器1を示す斜視図である。この棒状基材容器1は一例として口紅容器であり、棒状基材ホルダー10と、この棒状基材ホルダー10の一部を内部に収めるキャップ20とから構成されている。棒状基材ホルダー10およびキャップ20は、基本的に例えばABS樹脂等の合成樹脂から形成されている。しかし、それに限らず特にキャップ20の一部は、美観を考慮してその他の例えば金属等の材料から形成されてもよい。
【0019】
棒状基材ホルダー10は、棒状の口紅11を収容する概略円筒状の中筒12と、この中筒12を外側から保持する同じく概略円筒状の外筒13と、この外筒13の外側に配置された概略円筒状の螺旋筒14と、この螺旋筒14を一端側(図中の下端側)から保持した把持部15とを有している。上記中筒12、外筒13および螺旋筒14は、互いに同軸状態に配置されている。外筒13の周壁には、互いに180°(度)の角度間隔を置いて、筒軸と平行な方向に延びる図示外の直線状スリットが形成されている。この外筒13は把持部15と連結されており、それらは一体的に螺旋筒14に対して相対回転可能とされている。螺旋筒14はその周壁内面に、筒軸方向に繰り返す図示外の螺旋溝が刻設されたものである。中筒12は、その一端(図中の下端)近くにおいて、互いに180度の角度間隔を置いて、径外方に突出した図示外の凸部を有する。それらの凸部はそれぞれ、外筒13の上記スリットを通過し、先端部が螺旋筒14の上記螺旋溝内に収められている。
【0020】
したがって、例えば螺旋筒14を押さえながら、この螺旋筒14に対して把持部15を相対回転させると、把持部15と一体的に回転する外筒13によって、中筒12の上記凸部が回転される。それにより、これらの凸部が螺旋筒14の上記螺旋溝内を案内されながら上記スリット内を移動し、中筒12が筒軸方向に移動するので、該中筒12に保持されている口紅11が外筒13に対して筒軸方向に進退する。こうして、把持部15を回転させ、その回転方向に応じて口紅11を外筒13から繰り出したり、外筒13内に収めたりすることができる。
【0021】
図2は、上記把持部15を口紅11の先端側から見て示す正面図である。以下この図2も参照して、把持部15について詳しく説明する。把持部15の前端面15aは、中筒12、外筒13および螺旋筒14の筒軸方向に対して、つまりは口紅11の軸方向に対して垂直な平面とされている。この前端面15aには、把持部15の後端側に掘り下げられた凹部15bが形成されている。この凹部15bは、上記筒軸の周り方向に互いに90度の角度間隔を置いて、換言すれば概略四角柱状の把持部15の各外側面と平行な方向に延びる状態にして、4つ形成されている。
【0022】
一方キャップ20は、棒状基材ホルダー10の中筒12、外筒13および螺旋筒14を収容する収容箱21と、蓋体22とから構成されている。収容箱21は、棒状基材ホルダー10の中筒12、外筒13および螺旋筒14を収容するための概略円柱状の内部空間23を有している。収容箱21はさらに、収容箱21の長さ方向(矢印L方向)の一端と他端との間をほぼ収容箱全長に亘って延びる側部開口23aと、キャップ20の一端となる収容箱21の端面21aに開口した端部開口23bとを有している。これらの側部開口23aおよび端部開口23bは共に、上記内部空間23に連通している。側部開口23aの長さは、ここを通して中筒12等を内部空間23に出し入れする作業を容易化するためには、より長い方が望ましい。なお、収容箱21の端面21aは、内部空間23が延びる方向に対して垂直に形成されている。
【0023】
蓋体22は、キャップ20の長さ方向(矢印L方向)に延びる揺動軸24を中心として、矢印R方向に揺動可能とされている。すなわち揺動軸24は、図示外の軸受部を介してその軸芯周りに回転可能にして収容箱21の一部に保持されている。また蓋体22は、連結部25を介して揺動軸24と一体化されている。そこで、揺動軸24が軸芯周りに回転すれば、蓋体22が上述のように矢印R方向に揺動する。蓋体22はこのように揺動することにより、収容箱21の側部開口23aを開閉可能である。図1は、蓋体22が開蓋位置、つまり側部開口23aを開く位置にある状態を示している。
【0024】
上述のように揺動可能な蓋体22は、開蓋方向に付勢されている。すなわち、揺動軸24の一端部(図1中の左端部)には、その径外方に延びる延長部24aが付設され、この延長部24aの折り返し部に、蓋体付勢手段としての引張コイルばね26の一端が係止されている。収容箱21の内部には円柱状のばね係止部材27が固定されており、引張コイルばね26の他端はこのばね係止部材27に係止されている。そこで引張コイルばね26により、蓋体22が開蓋方向に付勢される。なお、この蓋体22の付勢については、後に図7および図8を参照してさらに詳しく説明する。
【0025】
蓋体22の長さ方向の一端部には、図3にも拡大して示す通り、係合部28が配設されている。この係合部28は、蓋体22の裏面に形成された凹部22a内に配され、その左右側端部(図1中の上下端部)が蓋体22の直線状溝部内に収められている。より詳しく説明すると上記直線状溝部は、係合部28の左側端部と右側端部の各一部を上下から挟む蓋体22の一部によって構成されている。それにより係合部28は、蓋体22に対してキャップ20の長さ方向、つまり図1中の矢印L方向に相対的に直線移動可能とされている。
【0026】
ここで係合部28について、図4も参照して詳しく説明する。この図4は、係合部28が凹部22a内に収められている状態を、凹部22aの深さ方向から見て示す平面図であり、上記の直線状溝部を構成している蓋体22の部分は省略している。図示のように係合部28の左右側端部は、それぞれアーム部28bによって構成されている。係合部28は比較的弾性の高い合成樹脂等から形成されており、したがって1対のアーム部28bの各々は、自身の長手方向と交わる方向に弾性変形可能となっている。一方、凹部22aの側壁となる蓋体22の部分には、1対のアーム部28bの各先端と向かい合う位置において、それぞれ斜面部22bが形成されている。以上の構成において、係合部28に特に外力が作用しない場合、係合部28は同図(A)に示す位置を取る。この状態から係合部28が凹部22aの奥方つまり図中の左方に押し込まれると、各アーム部28bはその先端が斜面部22bに沿って動くように弾性変形し、係合部28は同図(B)に示す状態となる。この状態となった後に係合部28の押し込みが止められると、各アーム部28bは自身の弾性によって元の状態に戻り、係合部28は同図(A)に示す位置に復帰する。
【0027】
なお、係合部28を上記図4の(A)に示す状態に保つためには、上記以外の機構が適用されてもよい。つまり例えば、係合部28の上記左右側端部に該係合部28の直線移動方向に延びる圧縮コイルばねをそれぞれ内在させ、それらの圧縮コイルばねの後端(先端部28aと反対側の端)を蓋体22の一部に当接させた機構等が適用可能である。さらには、上記圧縮コイルばねに代えて、係合部28の直線移動方向と交わる方向に延びる板ばねを、係合部28の左右側端部の外側にそれぞれ配置し、それらの板ばねの先端部によって係合部28を先端部28aの方に弾力的に押す機構等も適用可能である。
【0028】
以下、上記構成を有する棒状基材容器1の作用について説明する。図1は、棒状基材ホルダー10がキャップ20から取り外された状態を示している。棒状基材ホルダー10がこの状態になっていれば、使用者は棒状基材ホルダー10の把持部15を把持し、該棒状基材ホルダー10に保持されている口紅11を使用して化粧することができる。このように口紅11を利用するに当たっては、前述したように螺旋筒14に対して把持部15を相対回転させることにより、中筒12に保持されている口紅11を外筒13から繰り出したり、外筒13内に収めたりすることができる。
【0029】
口紅11の使用が終了したならば、使用者は以下の操作により中筒12をキャップ20内に収め、口紅11を保護することができる。その際には、まず図5に示すように、収容箱21の端面21a(図1も参照)に、把持部15の前端面15aが接するように棒状基材ホルダー10が配置される。前述した通り収容箱21の端面21aは、内部空間23が延びる方向に対して垂直に形成されており、また把持部15の前端面15aは中筒12、外筒13および螺旋筒14の筒軸方向に対して垂直に形成されているので、収容箱21に対して上記のように棒状基材ホルダー10を配置すれば、中筒12、外筒13および螺旋筒14は、それらの筒軸方向が内部空間23の延びる方向と一致した状態に配される。そして把持部15の前端面15aが収容箱21の端面21aに密接するので、収容箱21の内部空間23が閉じられて、そこに埃等が侵入することが防止される。なお、図5に示す棒状基材ホルダー10の位置が、前述した棒状基材収容位置である。
【0030】
このように棒状基材ホルダー10を配置する際、使用者は、中筒12、外筒13および螺旋筒14を、収容箱21の側部開口23aを通すことにより、簡単に収容箱21の内部空間23に収めることができる。このとき蓋体22は開蓋位置にあるから、側部開口23aを上述の通りに利用可能となっている。蓋体22が開蓋位置にあるとき、引張コイルばね26およびその周辺部分の状態は、図7に示す通りとなっている。なお、この図7は、図1中のA-A線に沿った部分の断面形状として示している。
【0031】
図7の状態は、引張コイルばね26の作用によって維持される。つまり引張コイルばね26が揺動軸24の延長部24aを引っ張ることにより、揺動軸24が図7中で時計方向に回転付勢され、蓋体22が同図の矢印R1方向に弾力的に付勢される。蓋体22の開蓋位置は、上記付勢の力を受けた状態のまま蓋体22の一部が適宜のストッパ部に当接して規定されてもよいし、あるいは、揺動軸24に上記回転付勢の力が作用しない状態になって蓋体22の揺動が抑えられて規定されてもよい。
【0032】
使用者は、棒状基材ホルダー10を図5に示すように配置した後、引張コイルばね26の付勢力に抗しつつ蓋体22を押して、閉蓋位置、つまり収容箱21の側部開口23aを閉じる位置に向けて揺動軸24周りに揺動させる。図6は、このようにして蓋体22が閉蓋位置にある状態になった棒状基材容器1を示している。この蓋体22の閉蓋位置は、図1および図3に示した係合部28の作用によって維持される。すなわち、蓋体22を上述のように押し込むと、蓋体22から飛び出ている係合部28は、蓋体22が閉蓋位置に至る少し前に、把持部15の前端面15aの縁部に当たる。そのまま蓋体22が押し込まれると、係合部28の先端部28aの傾斜面とされた裏面が把持部15によって押され、係合部28はアーム部28bを図4の(B)に示すように弾性変形させながら内方(図3中の左上方)に退く。
【0033】
このように退いている係合部28は、蓋体22が図6に示す閉蓋位置に達すると、把持部15の凹部15bと整合する状態となる。そこで係合部28は、アーム部28bの弾力によって図4の(A)に示すように再び突出して、上記凹部15b内に嵌入する。なお把持部15において凹部15bは、前述した通りにして4つ形成されているので、把持部15が収容箱21に対してどのような向き(ただし両者の外表面が互いに平行となる向き)に配置されても、4つの凹部15bのいずれかに係合部28が嵌入する。このように係合部28が凹部15b内に嵌入して把持部15と係合することにより、蓋体22は引張コイルばね26による付勢力を受けつつも、閉蓋位置に保たれる。蓋体22が閉蓋位置にあるとき、引張コイルばね26およびその周辺部分の状態は、図8に示す通りとなっている。この図8の表示の仕方は、前述した図7の表示の仕方と同じである。また、この図8に示す矢印R2方向が、使用者により押された蓋体22が揺動する方向である。
【0034】
使用者は、次に口紅11を使用する場合、棒状基材ホルダー10を、収容箱21の端部開口23bを通して外方に動かし、収容箱21から引き抜く。こうして棒状基材ホルダー10が収容箱21から引き抜かれると、把持部15の凹部15bに嵌入していた係合部28が凹部15bから外れる。そこで、引張コイルばね26の付勢力により揺動軸24が軸芯周りに回転し、蓋体22が図7の矢印R1方向に揺動して図1に示す開蓋位置に設定される。この状態になった後、棒状基材ホルダー10の中筒12、外筒13および螺旋筒14は、そのまま端部開口23bを通して収容箱21の外に取り出すことができる。しかしそれに限らず、より大きな側部開口23aを通して、あるいは端部開口23bと側部開口23aの双方を通して、簡単に収容箱21の外に取り出すこともできる。
【0035】
以上、棒状の口紅を収容する容器として構成された棒状基材容器の実施形態について説明したが、本発明の棒状基材容器は口紅以外の棒状基材、例えば前述したスティック糊を収容する容器として構成することも可能であり、そうした場合も同様の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0036】
1 棒状基材容器
10 棒状基材ホルダー
11 口紅
12 中筒
13 外筒
14 螺旋筒
15 把持部
15a 把持部の前端面
15b 把持部の凹部
20 キャップ
21 収容箱
21a 収容箱の端面
22 蓋体
22a 蓋体の凹部
22b 蓋体の斜面部
23 収容箱の内部空間
23a 収容箱の側部開口
23b 収容箱の端部開口
24 揺動軸
24a 揺動軸の延長部
26 引張コイルばね
27 ばね係止部材
28 係合部
28a 係合部の先端部
28b 係合部のアーム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8