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特許7436254ウインドシールド、及びウインドシールドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ウインドシールド、及びウインドシールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240214BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   C03B 23/03 20060101ALI20240214BHJP
   B60J 1/02 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60J1/00 H
C03B23/03
B60J1/02 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020051931
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147298
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】神吉 哲
(72)【発明者】
【氏名】堀田 啓文
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124374(WO,A1)
【文献】特開2017-165608(JP,A)
【文献】特開2018-193299(JP,A)
【文献】特開2019-119285(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117650(WO,A1)
【文献】特開2020-027116(JP,A)
【文献】特開平11-240737(JP,A)
【文献】特開2012-158477(JP,A)
【文献】特開2001-208999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B60J 1/00 - 1/20
B60K 35/00 - 37/06
C03B 23/03
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する第1ガラス板と、
第1面及び第2面を有し、当該第1面と前記第1ガラス板の第2面とが対向するように配置される、第2ガラス板と、
第1面及び第2面を有し、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に挟持される中間膜と、
を備え、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、それぞれ、第1端部及び当該第1端部と対向する第2端部を有し、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の少なくとも一方は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成され、
車両に取り付けたとき、前記第1ガラス板、前記第2ガラス板、及び前記中間膜は、それぞれ、前記第1端部が、上側に配置される上辺を構成し、前記第2端部が、下側に配置され、前記上よりも長い下辺を構成し、
水平方向における前記上辺の曲率半径は、前記下辺の曲率半径よりも大きい、
ウインドシールド。
但し、前記上辺の前記曲率半径は、前記上辺の中央部、当該中央部から両側に前記上辺に沿って所定間隔をおいた2点を規定し、前記中央部及び前記2点を通過する円の半径とし、
前記下辺の前記曲率半径は、前記下辺の中央部、当該中央部から両側に前記下辺に沿って前記所定間隔をおいた2点を規定し、前記中央部及び前記2点を通過する円の半径とする。
【請求項2】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の少なくとも一方は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように変化するように断面が楔形に形成されている、請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項3】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように変化するように断面が楔形に形成されている、請求項2に記載のウインドシールド。
【請求項4】
前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成されている、請求項2または3に記載のウインドシールド。
【請求項5】
前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成されている、請求項4に記載のウインドシールド。
【請求項6】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板の楔角が、前記第2ガラス板の楔角よりも大きい、請求項1から5のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項7】
前記第1ガラス板または前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の楔角は、0.1~0.7mradであり、
前記中間膜の楔角は、0.02~0.18mradである、請求項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項8】
前記第1ガラス板または前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の楔角は、0.15~0.45mradであり、
前記中間膜の楔角は、0.05~0.15mradである、請求項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項9】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板の前記楔角と、前記第2ガラス板の前記楔角との差が、0.35~0.45mradである、請求項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項10】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板の前記楔角と、前記第2ガラス板の前記楔角との差が、0.75~0.85mradである、請求項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項11】
ヘッドアップディスプレイ装置用のウインドシールドの製造方法であって、
第1ガラス板、第2ガラス板、及び前記両ガラス板の間に配置される中間膜を備えた、ウインドシールドの製造方法であって、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、それぞれ、第1端部、及び当該第1端部と対向する第2端部を有し、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の少なくとも一方は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板及び第2ガラス板を、プレス成形により湾曲した形状に形成する第1ステップと、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に前記中間膜を配置し、所定の圧力下で、加熱することで、前記中間膜を前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板に接着する第2ステップと、
を備え、
前記第1ステップでは、楔形に形成された前記ガラス板の第1端部側を、第2端部側よりも高温で加熱した後、プレス成形により前記第1端部に沿う辺の曲率半径が、前記第2端部に沿う辺の曲率半径よりも大きくなるように湾曲した形状に形成する、ウインドシールドの製造方法。
但し、前記第1端部に沿う辺の前記曲率半径は、前記第1端部に沿う辺の中央部、当該中央部から両側に前記第1端部に沿う辺に沿って所定間隔をおいた2点を規定し、前記中央部及び前記2点を通過する円の半径とし、
前記第2端部に沿う辺の前記曲率半径は、前記第2端部に沿う辺の中央部、当該中央部から両側に前記第2端部に沿う辺に沿って前記所定間隔をおいた2点を規定し、前記中央部及び前記2点を通過する円の半径とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールド、及びウインドシールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置が用いられるウインドシールドは、二重像を防止するために、楔形に形成されているのが一般的である。このように、ウインドシールドを楔形にするためには種々の方法があるが、例えば、特許文献1には、中間膜と内側ガラス板の厚みを一定にし、外側ガラス板を楔形に形成したウインドシールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-105665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような楔形のガラス板を用いてウインドシールドを作成する場合、視認性について問題になる可能性がある。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、楔形のガラス板を用いても、視認性が低下するのを抑制することができる、ウインドシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.第1面及び第2面を有する第1ガラス板と
第1面及び第2面を有し、当該第1面と前記第1ガラス板の第2面とが対向するように配置される、第2ガラス板と、
第1面及び第2面を有し、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に挟持される中間膜と、
を備え、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、それぞれ、第1端部及び当該第1端部と対向する第2端部を有し、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の少なくとも一方は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成され、
車両に取り付けたとき、前記第1ガラス板、前記第2ガラス板、及び前記中間膜は、それぞれ、前記第1端部が、上側に配置される上辺を構成し、前記第2端部が、下側に配置され、前記上よりも長い下辺を構成し、
水平方向における前記上辺の曲率半径は、前記下辺の曲率半径よりも大きい、
ウインドシールド。
【0006】
項2.前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の少なくとも一方は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように変化するように断面が楔形に形成されている、項1に記載のウインドシールド。
【0007】
項3.前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように変化するように断面が楔形に形成されている、項2に記載のウインドシールド。
【0008】
項4.前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成されている、項2または3に記載のウインドシールド。
【0009】
項5.前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成されている、項4に記載のウインドシールド。
【0010】
項6.前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板の楔角が、前記第2ガラス板の楔角よりも大きい、項1から5のいずれかに記載のウインドシールド。
【0011】
項7.前記第1ガラス板または前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の楔角は、0.1~0.7mradであり、
前記中間膜の楔角は、0.02~0.18mradである、項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【0012】
項8.前記第1ガラス板または前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記中間膜は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが変化するように断面が楔形に形成され、


前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の楔角は、0.15~0.45mradであり、
前記中間膜の楔角は、0.05~0.15mradである、項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【0013】
項9.前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板の前記楔角と、前記第2ガラス板の前記楔角との差が、0.35~0.45mradである、項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【0014】
項10.前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板の前記楔角と、前記第2ガラス板の前記楔角との差が、0.75~0.85mradである、項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【0015】
項11.ヘッドアップディスプレイ装置用のウインドシールドの製造方法であって、
第1ガラス板、第2ガラス板、及び前記両ガラス板の間に配置される中間膜を備えた、ウインドシールドの製造方法であって、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、それぞれ、第1端部、及び当該第1端部と対向する第2端部を有し、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の少なくとも一方は、前記第1端部から第2端部に向かって厚みが薄くなるように断面が楔形に形成され、
前記第1ガラス板及び第2ガラス板を、プレス成形により湾曲した形状に形成する第1ステップと、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に前記中間膜を配置し、所定の圧力下で、加熱することで、前記中間膜を前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板に接着する第2ステップと、
を備え、
前記第1ステップでは、楔形に形成された前記ガラス板の第1端部側を、第2端部側よりも高温で加熱した後、プレス成形により湾曲した形状に形成する、ウインドシールドの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るウインドシールドによれば、楔形のガラス板を用いても、視認性が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るウインドシールドの一実施形態を示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】フロートガラス板の製造方法の一例を説明する図である。
図4】ガラス板の切り出し方法を説明する断面図である。
図5】フロートガラス板の断面図である。
図6図1のウインドシールドの断面図である。
図7図1のウインドシールドの筋目を説明する正面図である。
図8】中間膜の延伸処理を示す断面図である。
図9】中間膜の延伸処理を示す平面図である。
図10】ガラス板の成形ラインの概略図である。
図11図10の成形型が通過する炉の平面図である。
図12】ヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
図13】楔角が異なるウインドシールドの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1.ウインドシールドの概要>
以下、本発明に係る自動車のウインドシールドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るウインドシールドは、ヘッドアップディスプレイ装置により、照射される光が投影され、情報を表示するために用いられるものである。
【0019】
図1は、本実施形態に係るウインドシールドの正面図、図2図1のA-A線断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るウインドシールドは、自動車に取り付けられたときに、車外側を向く外側ガラス板(第1ガラス板)1と、車内側を向く内側ガラス板2(第2ガラス板)と、これらガラス板1,2の間に配置される中間膜3と、を備えており、全体として断面が楔形(楔角αX)に形成されている。そして、このウインドシールドには遮蔽層4が積層されている。なお、本実施形態の各図面では、説明の便宜のため、実際よりも誇張した楔角を示している。以下、各部材について説明する。
【0020】
<2.外側ガラス板及び内側ガラス板>
まず、外側ガラス板1及び内側ガラス板2から説明する。外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板1、2は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板1により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板2により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの一例を示す。
【0021】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al23:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.08~0.14質量%
【0022】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT-Fe23、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0023】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al23:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
23:0~5質量%
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.02~0.03質量%
【0024】
外側ガラス板1は、台形状に形成され、上辺(短辺)11、上辺11よりも長い下辺(長辺)12、右側辺13、及び左側辺14を有しており、自動車に取り付けられたときに、上辺11が上側に配置され、右側辺13及び左側辺14は、それぞれ、車内側から見たときに、右側及び左側にそれぞれ配置される。また、外側ガラス板は車外側を向く第1面101及び車内側を向く第2面102を有しており、これら第1面及び第2面を連結する端面を有している。また、外側ガラス板1は、上辺11から下辺12にいくにしたがって、厚みが小さくなるような楔形に形成されている。楔形を形成するための第1面101と第2面102とのなす楔角α1は、特には限定されないが、例えば、0.1~0.7mradとすることができ、さらには0.15~0.45mradとすることができる。
【0025】
内側ガラス板2も、同様に、台形状に形成され、上辺21、下辺22、右側辺23、及び左側辺24を有している。また、内側ガラス板も車外側を向く第1面201及び車内側を向く第2面202を有しており、これら第1面201及び第2面202を連結する端面を有している。図2の例では、内側ガラス板2は、外側ガラス板1とは異なり、厚みが一定の平板により形成されている。但し、内側ガラス板2も外側ガラス板1と同様に楔形に形成することができる。この場合、内側ガラス板2の楔角は、外側ガラス板1と同様にすることができる。なお、内側ガラス板2を楔形にする場合、例えば、外側ガラス板1の楔角を内側ガラス板2の楔角よりも大きくすることができる。この場合、外側ガラス板1の楔角と内側ガラス板2の楔角との差は、例えば、0.35~0.45mrad、あるいは0.75~0.85mradとすることができる。
【0026】
そして、外側ガラス板1の第2面102と、内側ガラス板2の第1面201との間に上述した中間膜3が配置されている。
【0027】
本実施形態に係るウインドシールドの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4~5.0mmとすることが好ましく、2.6~4.6mmとすることがさらに好ましく、2.7~3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板1と内側ガラス板2との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板1,2のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みを決定することができる。なお、ガラス板1,2の厚みは、断面が楔形に形成されている場合は、最も薄い部分の厚みとし、マイクロメータで測定することができる。
【0028】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは、1.8~2.3mmとすることが好ましく、1.9~2.1mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。但し、上辺11が下辺12よりも厚いため、例えば、上辺11の厚みを2.5~5.0mm,下辺12の厚みを2.6~6.7mmとし、上辺11と下辺12との厚みの差を0.1~1.7mmとすることができる。
【0029】
内側ガラス板2の厚みは、外側ガラス板1と同等にすることができるが、例えば、ウインドシールドの軽量化のため、外側ガラス板1よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.1~2.3mmであることが好ましく、0.8~2.0mmであることが好ましく、1.0~1.4mmであることが特に好ましい。更には、0.8~1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0030】
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、湾曲形状である。ウインドシールドが湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ウインドシールドの曲げを示す量であり、例えば、ウインドシールドの上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線を設定したとき、この直線とウインドシールドとの距離のうち最も大きいものをダブリ量と定義する。
【0031】
ここで、ウインドシールドの厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、ウインドシールドの左右方向の中央を上下方向に延びる中央線上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM-112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にウインドシールドの湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでウインドシールドの端部を挟持して測定する。
【0032】
<3.外側ガラス板及び内側ガラス板の製造方法>
次に、外側ガラス板1及び内側ガラス板2の製造方法の一例について、図3を参照しつつ説明する。一例として、これら外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、フロート法により製造されるフロートガラス板とすることができる。
【0033】
図3は、フロートガラス板の製造方法を示す図である。図3において、紙面垂直方向が溶融ガラス55の流動方向、左右方向が溶融ガラス55の幅方向である。図3においては、溶融ガラス55の厚さの変化を誇張して示している。
【0034】
フロート法は、溶融スズなどの溶融金属54の上に溶融ガラス55を連続的に供給し、供給した溶融ガラス55を溶融金属54の上で流動させることにより帯板状に成形する。このように成形されたガラスをガラスリボン55と称する。
【0035】
そして、ガラスリボン55の幅方向への収縮を抑制するために、ガラスリボン55の幅方向の両端部は、一対のローラ56によってそれぞれ押さえられている。これら一対のローラ56は、ガラスリボン55の流動方向に間隔をおいて複数設けられている。これら複数対のローラ16が回転することにより、ガラスリボン55が下流側に移動する。
【0036】
ガラスリボン55は、下流側に向かうにつれて冷却され、冷却固化された上で溶融金属54から引き上げられる。そして、徐冷された後、切断される。こうして、フロートガラス板が得られる。ここで、フロートガラス板において、溶融金属54と接触していた面をボトム面と称し、それとは反対の面をトップ面と称することとする。ボトム面及びトップ面は、未研磨であってよい。なお、ボトム面は、溶融金属54と接していたため、溶融金属54がスズである場合には、ボトム面に含有される酸化スズの濃度が、トップ面に含有される酸化スズの濃度よりも大きくなる。
【0037】
図3では、一対のローラ56がガラスリボン55を幅方向に引っ張ることで、ガラスリボン55の厚みが、幅方向の両端部から中央部に向かうほど、大きくなっている。こうして形成されたガラスリボン55が固化した後に切断すると、外側ガラス板1が得られる。このとき、外側ガラス板の切り出し方は、図4に示すように、2種類ある。まず、図4の右側のように、ガラスリボン55を、切断面K1,K2が鉛直方向に延びるように切断する。これら切断面K1,K2は、平行に延びており、こうして得られた外側ガラス板1Aは、切断面K1,K2とボトム面とが直交している。もう一つの方法では、図4の左側のように、ガラスリボン55を、トップ面に対して垂直な切断面K3,K4が形成されるように切断する。これら切断面K3,K4は、平行に延びており、こうして得られた外側ガラス板1Bは、切断面K3,K4とトップ面とが直交している。いずれにしても、上辺11の厚みが大きく、下辺12の厚みが小さくなるような外側ガラス板1が切り出される。
【0038】
一方、内側ガラス板2も外側ガラス板1と同様にフロート法により形成されるが、上述したローラを用いない公知の方法により形成される。そのため、内側ガラス板2の厚みは概ね一定に形成される。但し、内側ガラス板2を楔形に形成する場合には、外側ガラス板1と同様の方法で形成することができる。
【0039】
また、ガラスリボン55は、溶融金属54上を流動するため、その表面には流動方向に延びる複数の筋目が形成される。そして、冷却されたフロートガラス板の表面にもこの筋目が形成される。筋目によって内側ガラス板2の表面には、図5に示すように、筋目に直交する方向に波状の凹凸が形成されている。なお、図5図3と同様の断面であり、ガラス板の流動方向と直交する断面を示している。同様の凹凸は、外側ガラス板1にも形成される。但し、各ガラス板1,2においては、溶融金属54に接していたボトム面の凹凸が、トップ面の凹凸よりも小さくなっている。ここで、凹凸が小さいとは、凹凸の最深部と最上部との差が小さいことをいう。また、フロート法により形成されたガラス板の表面には、上記のような筋目による凹凸に加え、それと直交する方向に凹凸を有するウネリも形成される。このウネリは、筋目のピッチよりも大きいピッチを有し、また大きさは筋目の凹凸よりも大きい。
【0040】
そして、本実施形態に係るウインドシールドでは、図6に示すように、外側ガラス板1の第2面102及び内側ガラス板2の第1面201を、ともにトップ面としている。これにより、外側ガラス板1の第1面101、内側ガラス板2の第2面202、つまりウインドシールドにおいて外部を向く面の凹凸がともに小さくなるようにしている。
【0041】
また、本実施形態では、図7に示すように、外側ガラス板1の筋目と、内側ガラス板2の筋目が直交するようにしている。すなわち、外側ガラス板1の筋目150は、上述した方法により、上辺11及び下辺12と平行に筋目が延びる。一方、内側ガラス板2は、厚みが一定であるため、筋目の方向を調整することができるため、上辺21から下辺22に向かって筋目250が延びるように、ガラスリボンから切り出す。こうして、外側ガラス板1の筋目150と内側ガラス板2の筋目250が直交するように、ウインドシールドが形成される。
【0042】
なお、外側ガラス板1の製造においては、成形条件を調整すれば、幅方向の両端部から中央部に向かうほど厚さが大きくなるようにしたり、あるいは幅方向の一端部から他端部に向かうほど厚さが大きくなるようにすることもできる。このようなガラスリボン55の厚さは、ローラ56による張力のほか、ローラ56の周速度などで調整できる。
【0043】
上述したように外側ガラス板1及び内側ガラス板2を切り出した後、各ガラス板1,2の4辺の端面は、公知の方法で研磨され、例えば、外側に凸となるように断面円弧状に形成される。
【0044】
ところで、後述するように、外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、上辺11,21側が下辺12,22側よりも高温で軟化された後に、プレス加工されるため、上辺11,21に沿う方向(水平方向)の曲率半径が、下辺12,22に沿う方向(水平方向)の曲率半径よりも大きくなる。そのため、製造後のウインドシールドにおいても、上辺11,21に沿う方向(水平方向)の曲率半径が、下辺12,22に沿う方向(水平方向)の曲率半径よりも大きくなる。なお、ウインドシールドの曲率半径は、凹面側、つまり、内側ガラス板2の車内側の面で測定するが、ウインドシールドの面は、一般的には曲率半径が異なる複数の円弧が組み合わさっているため、以下のように測定を行う。
【0045】
まず、上辺の中央部で接する接触平面を考え、次に、その接点を通り、その接点近傍で上辺に平行で、かつ接触平面に直交する平面を考える。さらに、その直交平面上にあり、その接点で接する円を考える。その円の半径を、上辺における曲率半径とする。具体的には、ウインドシールドを、水平な定盤に上辺の中央部で接するように固定する。この定盤が接触平面となる。この定盤に垂直に立てた定規として、例えば、尺立てホルダーに鋼尺をセットして、その幅方向が接点近傍に接するように置く。このとき定規の面が直交平面となる。次に、定盤の表面からウインドシールド下面の定盤側の主面までの距離を、接点および上辺上で所定の間隔をあけた2点の合計3点測定する。接点では距離ゼロになる。その3点を通る円の半径を、上辺における曲率半径とする。3点決まれば円が決まり、その3点は直交平面上にあって、1点は接点を通る。よって、その円は直交平面上にあり、接点で接するので、本実施形態に係る曲率半径の測定が実現する。下辺についても上辺と同様に測定を行う。
以上の測定方法により、例えば、ウインドシールドの上辺の曲率半径は、3000~12000mmであり、下辺の曲率半径は、上辺の曲率半径よりも小さく、2500~10000mmとすることができる。
【0046】
<4.中間膜>
中間膜3は、両ガラス板1,2と同様に、台形状に形成されている。また、図2に示すように、中間膜3は、車外側を向く第1面301及び車内側を向く第2面302を有しており、これら第1面301及び第2面302を連結する端面を有している。ここでは、上辺側の端面を上端面311、下辺側の端面をした下端面312と称することとする。そして、中間膜3は、上端面311から下端面312にいくにしたがって、厚みが小さくなるような楔形に形成されている。第1面301と第2面302とのなす楔角α2は、特には限定されないが、外側ガラス板1の楔角α1よりも小さくすることができる。具体的には、例えば、0.02~0.18mradとすることができ、さらには、0.05~0.15mradとすることができる。
【0047】
また、中間膜3は、少なくとも一層で形成されている。一例として、図2の拡大図に示すように、軟質のコア層31を、これよりも硬質のアウター層32で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、コア層31と、外側ガラス板1側に配置される少なくとも1つのアウター層32とを有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層31と、外側ガラス板1側に配置される1つのアウター層32を含む2層の中間膜3、またはコア層31を中心に両側にそれぞれ2層以上の偶数のアウター層32を配置した中間膜3、あるいはコア層31を挟んで一方に奇数のアウター層32、他方の側に偶数のアウター層32を配置した中間膜3とすることもできる。なお、アウター層32を1つだけ設ける場合には、上記のように外側ガラス板1側に設けているが、これは、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能を向上するためである。また、アウター層32の数が多いと、遮音性能も高くなる。
【0048】
コア層31はアウター層32よりも軟質であるかぎり、その硬さは特には限定されない。各層31,32を構成する材料は、特には限定されないが、例えば、アウター層32は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層31は、例えば、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0049】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層32に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層31に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化によっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層32がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層31には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-へプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0050】
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3~6.0mmであることが好ましく、0.5~4.0mmであることがさらに好ましく、0.6~2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層31の厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層32の厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。以上の厚みは、楔形に形成されたる中間膜3の最も厚い部分の厚みとする。
【0051】
コア層31及びアウター層32の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH-5500)によってウインドシールドの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31及びアウター層32の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31、アウター層32の厚みとする。
【0052】
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3~6.0mmであることが好ましく、0.5~4.0mmであることがさらに好ましく、0.6~2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層31の厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層32の厚みは、コア層31の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。
【0053】
コア層31及びアウター層32の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH-5500)によってウインドシールドの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31及びアウター層32の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31、アウター層32の厚みとする。例えば、ウインドシールドの拡大写真を撮影し、このなかでコア層やアウター層32を特定して厚みを測定する。
【0054】
中間膜3の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、中間膜3は、上記のような複数の層で形成する以外に、1層で形成することもできる。
【0055】
そして、本実施形態に係る中間膜3は、成形後の平面視長方形状の中間膜3をローラで引き延ばすことで、下辺側が長くなるように形成している。以下、この処理を延伸処理と称し、詳細に説明する。また、延伸処理前の中間膜を延伸前中間膜、延伸処理後の中間膜を延伸後中間膜と称することとする。
【0056】
図8に示すように、延伸処理は、2つの円錐状のローラ91,92の間を延伸前中間膜を通すことで行われる。ここでは、上側のローラを第1ローラ91、下側のローラを第2ローラ92と称することとする。また、各ローラ91,92の径が大きい方の軸方向の端部を第1端部911,921、径が小さい方の軸方向の端部を第2端部912,922と称することとする。これら第1ローラ91及び第2ローラ92は、回転軸G1,G2が平行になるように配置されている。また、両ローラ91,92における第1端部911,921及び第2端部912,922がそれぞれ、同じ側になるように配置している。これにより、両ローラ91,92の間には、第1端部911,921側が狭く、第2端部912,922側が広くなる隙間900が形成される。
【0057】
したがって、延伸前中間膜をこれらローラ91,92の間を通過させると、図9に示すように、各ローラ91,92の第1端部911,921側の周速度が早いため、第1端部911,921側において、延伸前中間膜が引き延ばされる。これにより、平面視台形状の延伸後中間膜3が形成される。また、図8に示すように、両ローラ91,92の隙間900が形成されているため、延伸後中間膜3の断面は、第1端部911,921側が厚くなり、第2端部912,922側が薄くなる。その結果、上端面311が厚く、下端面312が薄い中間膜3が形成される。
【0058】
<5.遮蔽層>
図1に示すように、このウインドシールドの周縁には、黒などの濃色のセラミックに遮蔽層4が積層されている。この遮蔽層4は、車内また車外からの視野を遮蔽するのであり、ウインドシールドの4つの辺に沿って積層されている。
【0059】
遮蔽層4は、例えば、外側ガラス板1の内面のみ、内側ガラス板2の内面のみ、あるいは外側ガラス板1の内面と内側ガラス板2の内面、など種々の態様が可能である。また、セラミック、種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0060】
セラミックは、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。スクリーン印刷を採用する場合、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミックを形成することができる。
【0061】
なお、セラミックは、上述したガラスリボン55のボトム面と密着しやすい。これは、ボトム面における酸化スズの濃度が高いからである。したがって、遮蔽層4をセラミックで形成する場合には、ボトム層に形成することが好ましい。そのため、例えば、図6に示すようなウインドシールドを形成する場合には、遮蔽層4は、内側ガラス板2の第2面202に形成することができる。なお、遮蔽層4は、セラミックを積層するほか、濃色の樹脂製の遮蔽フィルムを貼り付けることで形成することもできる。
【0062】
<6.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0063】
次に、ウインドシールドの製造方法の一例について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0064】
図10に示すように、この製造ラインには、上流から下流へ、加熱炉801、成形装置802がこの順で配置されている。そして、加熱炉801から成形装置802、及びその下流側に亘ってはローラコンベア803が配置されており、加工対象となる外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、このローラコンベア803により搬送される。これらガラス板1,2は、加熱炉801に搬入される前には、平板状に形成されており、例えば、内側ガラス板2の内面(車内側の面)には、上述した遮蔽層4が積層された後、加熱炉801に搬入される。なお、上述したように、遮蔽層4は内側ガラス板2の内面以外に積層することもできる。
【0065】
加熱炉801は、種々の構成が可能であるが、例えば、電気加熱炉とすることができる。この加熱炉801は、上流側及び下流側の端部が開放する角筒状の炉本体を備えており、その内部に上流から下流へ向かって公知のローラコンベア803が配置されている。炉本体の内壁面の上面、下面、及び一対の側面には、それぞれヒータ(図示省略)が配置されており、加熱炉801を通過するガラス板1,2を成形可能な温度、例えば、ガラスの軟化点付近まで加熱する。
【0066】
また、外側ガラス板1を加熱する際には、図11に示すように、加熱炉801内のローラコンベア803の幅方向において、外側ガラス板1の上辺11が通過する領域L1は、それ以外の領域L2よりも加熱温度が高くなっている。これにより、外側ガラス板1の上辺11付近は、他の部分よりも軟化する。なお、平板状の内側ガラス板2を加熱する際には、加熱温度を変化させず、一定にするが、外側ガラス板1と同様に、楔形である場合には、上辺21側の加熱温度を高くする。例えば、領域L1の温度を600~700℃とし、領域L2の温度を570~670℃とすることができる。
【0067】
成形装置802は、上型821及び下型822によりガラス板1,2をプレスし、所定の形状に成形するように構成されている。上型821はガラス板1,2の上面(車内側の面)全体を覆うような下に凸の曲面形状を有し、上下動可能に構成されている。また、下型822はガラス板1,2の周縁部に対応するような枠状に形成されており、その上面は上型821と対応するように曲面形状を有している。この構成により、ガラス板1,2は、上型821と下型822との間でプレス成形され、最終的な曲面形状に成形される。また、下型822の枠内には、ローラコンベア903が配置されており、このローラコンベア803は、下型822の枠内を通過するように、上下動可能となっている。そして、図示を省略するが、成形装置802の下流側には、徐冷装置(図示省略)が配置されており、成形されたガラス板が冷却される。
【0068】
なお、成形装置802の下型822はガラス板1,2の全面に亘って接するような形態でもよい。このほか、成形装置802は、ガラス板を成形するものであれば、上型及び下型の形態は特には限定されない。
【0069】
こうして、外側ガラス板1及び内側ガラス板2が成形されると、これに続いて、中間膜3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟む。中間膜3は、外側ガラス板1及び内側ガラス板2より、やや大きい形状とする。これにより、中間膜3の外縁は、外側ガラス板1及び内側ガラス板2からはみ出した状態となる。
【0070】
次に、両ガラス板1,2、及び中間膜3が積層された積層体を、ゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70~110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能であり、次の方法を採ることもできる。例えば、上記積層体をオーブンにより45~65℃で加熱する。次に、この積層体を0.45~0.55MPaでロールにより押圧する。続いて、この積層体を、再度オーブンにより80~105℃で加熱した後、0.45~0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0071】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8~15気圧で、100~150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、中間膜3が、各ガラス板1,2に接着される。最後に、外側ガラス板1及び内側ガラス板2からはみ出した中間膜3を切断すれば、図2に示すような断面を有するウインドシールドが製造される。すなわち、外側ガラス板1の楔角α1と、中間膜3の楔角α2とが組み合わされて、楔角αXのウインドシールドが形成される。なお、これ以外の方法、例えば、プレス加工により、湾曲したウインドシールドを製造することもできる。
【0072】
<7.ヘッドアップディスプレイ装置>
次に、ヘッドアップディスプレイ装置について説明する。ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置という)は、ウインドシールドに、車速等の情報を投射するものである。しかしながら、このHUD装置を用いると、ウインドシールドに投影された光により、二重像が形成されることが知られている。すなわち、ウインドシールドの内面で反射することで視認される像と、ウインドシールドの外面で反射することで視認される像とが別々に視認されるため、像が二重になっていた。
【0073】
これを防止するためには、本実施形態のような楔角αXのウインドシールドを用いる。すなわち、図12に示すように、ウインドシールドにおいて、少なくともHUD装置500から光が投影される表示領域においては、厚みが下方にいくにしたがって、小さくなるように形成する。これにより、ウインドシールドの内面(内側ガラス板2の第2面202)で反射して車内に入射する光と、ウインドシールドの外面(外側ガラス板1の第1面101)で反射した後、車内に入射する光とが、概ね一致するため、二重像が解消される。
【0074】
<8.特徴>
本実施形態に係るウインドシールドによれば、次のような効果を得ることができる。
【0075】
(1)長さが短い上辺11,12側の曲率半径が、長さの長い下辺12,22側の曲率半径よりも大きいため、全体として曲率半径が大きくなる。その結果、透視歪みを小さくすることができる。したがって、楔形のガラス板1、2を用いても、視認性が低下するのを抑制することができる。
【0076】
(2)外側ガラス板1は、上辺11側が厚く、下辺12側が薄いため、プレス加工時には、成形型821,822の上辺側に大きい負荷が作用する。そのため、成形型821,822は上辺側の劣化が早いという問題が生じることが分かった。これに対し、本実施形態では、加熱炉801において、外側ガラス板1の上辺11側の温度を高くしているため、下辺12側に比べて柔らかくなる。そのため、厚みの大きい上辺11側をプレスする際に、成形型821,822の作用する負荷を緩和することができる。その結果、成形型821,822の上辺側の劣化を抑制することができる。
【0077】
(3)外側ガラス板1、内側ガラス板2、及び中間膜3の楔角を調整することができるため、種々の楔角のウインドシールドを形成することができる。図2の例と同様に図13(a)の例では、外側ガラス板1と中間膜3とを楔形に形成しているが、これら外側ガラス板1と中間膜3の楔角α1,α2を調整することで、ウインドシールドの楔角αXを調整することができる。これに加え、図13(b)に示すように、内側ガラス板2も楔角α3の楔形に形成すると、さらに大きい楔角αXのウインドシールドを形成することができる。なお、外側ガラス板1の楔角α1と内側ガラス板2の楔角α3は同じであってもよいし、相違していてもよい。
【0078】
さらに、例えば、上端面311の厚みが小さい中間膜3を用いると、図13(c)に示すように、外側ガラス板1の楔角α1よりも小さい楔角αXのウインドシールドも形成することができる。すなわち、本実施形態においては、各ガラス板1,2の楔角α1、α3よりも小さい楔角α2を有する中間膜3を用いているため、図13(a)及び図13(b)に示すように、各ガラス板1,2の楔角α1、α3よりも大きい楔角αX、あるいは、図13(c)に示すように、小さい楔角αXのウインドシールドを形成することができる。すなわち、要求に応じた種々の楔角αXのウインドシールドを形成することができる。以下の表2には、外側ガラス板1、内側ガラス板2、及び中間膜3の楔角を調整することで形成される楔形のウインドシールドの例を示している(単位は、mrad)。なお、以下の表2では、水平を0mradとし、上辺が厚い場合の傾斜を正、上辺が薄い場合の傾斜を負として示している。例えば、例1の楔角α2が-0.10mradの中間膜は、上端面311の厚みが下端面312の厚みよりも小さい中間膜3であり、例3の楔角α2が0.05mradの中間膜は、図8に示すような中間膜3である。
【表2】
【0079】
なお、表2の楔角は一例であり、ウインドシールドの楔角αXは、例えば、0.1~1.2mradとすることができる。
【0080】
(4)上記実施形態では、筋目による凹凸が小さいボトム面を、ウインドシールドの外面としている。すなわち、ウインドシールドの2つの外面は、いずれも凹凸が小さいため、車内からウインドシールドを通して車外の対象物を見たときの透視歪みを小さくすることができる。
【0081】
(5)上記実施形態では、外側ガラス板1の筋目150と内側ガラス板2の筋目250とが直交するように、両ガラス板1,2を配置している。これに対して、例えば、両ガラス板1,2の筋目150,250が同じ方向に延びていると、ウインドシールドの車外側の面の筋目と車外側の面の筋目が組み合わさり、ウインドシールド全体としての厚みの変化が大きくなる可能性がある。これにより、透視歪みが増大するおそれがある。そこで、本実施形態では、両ガラス板1,2の筋目150,250が直交するようにしているため、凹凸が増大するのを防止し、これによって透視歪みを抑制することができる。
【0082】
<9.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す複数の変形例は適宜組合わせることが可能である。
【0083】
<9-1>
上記実施形態では、外側ガラス板1と内側ガラス板2は、トップ面同士が対向するように配置しているが、これに限定されない。例えば、ボトム面同士が対向するように配置することもできる。また、トップ面とボトム面とが対向するように配置することもできる。この場合、外側ガラス板1のトップ面を中間膜3と対向させてもよいし、あるいは、内側ガラス板2のトップ面を中間膜3と対向させてもよい。
【0084】
上述したように、ボトム面がウインドシールドの外面になると透視歪みを抑制できるという利点があるが、セラミックの遮蔽層4を積層するのはボトム面が有利である。したがって、用途に応じて、いずれの面を対向させるかを検討すればよい。また、このようなボトム面は、遮蔽層4以外にも、例えば、銅や銀などのアンテナ素子を印刷などで積層するのにも適している。また、アンテナ素子は、内側ガラス板の車内側の面に形成することができる。
【0085】
<9-2>
上記実施形態では、外側ガラス板1と内側ガラス板2の筋目同士が直交するようにしているが、平行にすることもできる。この場合、筋目が水平方向(上辺11、21及び下辺12、22と平行)に延びるようにすることができる。
【0086】
<9-3>
上記実施形態では、中間膜3が楔形に形成されているが、第1面301と第2面302とが平行な平板状に形成することもできる。
【0087】
<9-4>
遮蔽層4の形状は特には限定されず、種々の形状が可能である。例えば、センサによる光の照射やカメラによる外部の撮影が可能なように、窓(開口)を設けた遮蔽層を形成することもできる。
【0088】
<9-6>
外側ガラス板1、内側ガラス板2、中間膜3を楔形状に形成する方法は、特には限定されず、上述した方法以外でも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 外側ガラス板(第1ガラス板)
2 内側ガラス板(第2ガラス板)
3 中間膜
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図11
図12
図13