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  • 特許-液切れ性に優れたプラスチックキャップ 図1
  • 特許-液切れ性に優れたプラスチックキャップ 図2
  • 特許-液切れ性に優れたプラスチックキャップ 図3
  • 特許-液切れ性に優れたプラスチックキャップ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】液切れ性に優れたプラスチックキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B65D47/08 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020058257
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021155085
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】脇島 淳
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306473(JP,A)
【文献】特開2019-043680(JP,A)
【文献】特開2006-111319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部及び該頂板部の周縁から垂下するスカート部から成り、前記頂板部には内容物を流通させるための開口が形成されているプラスチックキャップにおいて、
前記頂板部の開口には、開口端部からキャップ軸方向上方に延びる環状側壁及び該環状側壁上端部を閉塞する上面部が形成され、前記上面部には、内容物を吐出するための円筒状の吐出部が少なくとも1つ形成されており、該円筒状吐出部の開口端縁にはキャップ水平方向内方に突出する環状薄板が形成されており、
前記環状側壁の上面部が、前記頂板部の開口中心に対して偏心して形成されており、前記吐出部が、上面部の偏心方向側に形成されていると共に、吐出部先端で形成される仮想平面の傾斜が吐出部の偏心方向に下向きに傾斜することを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記環状側壁が、キャップ軸方向上方に行くにしたがって内径が縮径する請求項1記載のプラスチックキャップ。
【請求項3】
前記円筒状吐出部の先端で形成される仮想平面がキャップ軸方向に対して傾斜している請求項1又は2記載のプラスチックキャップ。
【請求項4】
前記環状薄板の厚みが、前記円筒状吐出部の厚みよりも薄い請求項1~3の何れかに記載のプラスチックキャップ。
【請求項5】
前記頂板部の周縁にヒンジを介して、天面及び周状壁から成る上蓋が形成されている請求項1~の何れかに記載のプラスチックキャップ。
【請求項6】
マヨネーズ用のキャップである請求項1~の何れかに記載のプラスチックキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズのような粘稠な内容物を排出するための小孔を備えたプラスチックキャップに関するものであり、より詳細には、吐出後の液だれが有効に防止されたプラスチックキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に充填されたマヨネーズのような粘稠物質を排出可能なプラスチックキャップにおいて、複数の小孔を設けることにより、適量を広範囲にわたって同時に吐出し得るプラスチックキャップが提案されている。
例えば下記特許文献1には、容器頭部に設けたねじ部に螺合するキャップ本体と開閉する蓋で構成し、キャップ本体の上端にはマヨネーズが流出する穴を形成した凸部を突出し、該穴を複数個設けたマヨネーズ容器のキャップが提案されている。
しかしながら、上記キャップでは各孔からのマヨネーズの流出量が均等でないと共に、液切れ性の悪さから流出後に残ったマヨネーズが各孔の周囲に付着した状態となり、繰り返し使用によりキャップ本体や蓋が汚れやすくなるという問題や、或いはキャップ本体内のマヨネーズがヒンジ取付側に滞留しやすいという問題がある。
【0003】
液切れ性の問題を解決するために、下記特許文献2には、複数の筒状ノズルを離間して配置してなる容器の注出口構造において、前記筒状ノズルの軸線が略平行に設定されると共に筒状ノズルのすべての先端面が、筒状ノズルの前記軸線に対して所定角度で傾斜する傾斜面となる想定傾斜面上に設定することが提案されている。
また液切れ性の問題やキャップ本体内のマヨネーズの偏りの問題を解決するために、下記特許文献3では、複数の注出孔が形成された注出ノズルの内側に、容器内に連通する注出室が形成され、注出孔は注出室に連通し、注出ノズルは、キャップ本体の軸心方向から見て、ヒンジ取付側が欠除すると共にその反対側が円弧状に膨らんだ半円形状又はC字形状を有しているキャップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3189876号
【文献】特開2019-43680号公報
【文献】特開2019-167119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マヨネーズのような粘稠なスラリー或いはペースト状の内容物はそもそも液切れが悪く、キャップに付着残存しやすいという特徴を有していることから、上述した特許文献2及び3におけるキャップであっても、上述した問題を完全に解決することは困難である。
従って本発明の目的は、マヨネーズのような粘稠な内容物に用いられた場合であっても、吐出口付近の内容物の付着が低減され、液切れ性をさらに改善可能なプラスチックキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、頂板部及び該頂板部の周縁から垂下するスカート部から成り、前記頂板部には内容物を流通させるための開口が形成されているプラスチックキャップにおいて、前記頂板部の開口には、開口端部からキャップ軸方向上方に延びる環状側壁及び該環状側壁上端部を閉塞する上面部が形成され、前記上面部には、内容物を吐出するための円筒状の吐出部が少なくとも1つ形成されており、該円筒状吐出部の開口端縁にはキャップ水平方向内方に突出する環状薄板が形成されており、前記環状側壁の上面部が、前記頂板部の開口中心に対して偏心して形成されており、前記吐出部が、上面部の偏心方向側に形成されていると共に、吐出部先端で形成される仮想平面の傾斜が吐出部の偏心方向に下向きに傾斜することを特徴とするプラスチックキャップが提供される。
【0007】
本発明のプラスチックキャップにおいては、
1.前記環状側壁が、キャップ軸方向上方に行くにしたがって内径が縮径すること、
2.前記円筒状吐出部先端で形成される仮想平面がキャップ軸方向に対して傾斜していること、
3.前記環状薄板の厚みが、前記円筒状吐出部の厚みよりも薄いこと、
.前記頂板部の周縁にヒンジを介して、天面及び周状壁から成る上蓋が形成されていること、
.マヨネーズ用のキャップであること、
が好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプラスチックキャップによれば、マヨネーズのような粘稠な内容物の吐出をスムーズに排出可能であると共に、内容物の液切れ性を従来品に比して向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のプラスチックキャップの一例を示す図であり、(A)は上蓋を開いた状態における上面図、(B)は(A)の側断面図、(C)は(A)の下面図である。
図2図1(B)のX部の拡大断面図である。
図3図1に示したプラスチックキャップにおいて、上蓋を閉じた状態の側断面図である。
図4】本発明のプラスチックキャップにおける内容物の吐出を説明するための図であり、(A)は吐出時の状態を示す断面図であり、(B)は吐出直後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプラスチックキャップは、前述したように、円筒状吐出部の開口端縁から内方に突出する環状薄板が形成されていることが重要な特徴であり、これにより、マヨネーズのような液切れ性が悪い内容物においても優れた液切れ性を発現することが可能になる。
すなわち、マヨネーズのような高分子量の物質の混合物の液切れ性は、キャップの開口から垂れ下がった残液の重量と開口の径の大きさに依存すると共に、このような内容物は、瞬間的な変化に対しては弾性的な挙動を示し、ゆっくりとした変化に対して粘性的な挙動を示すという粘弾性特性を有する。本発明者等は、このような特徴を有する内容物について、細いノズル(円筒状吐出部)へ高速で流動させると、吐出用開口から吐出されるときに大きく膨らむというスウェル現象を利用することにより、キャップの開口から垂れ下がる残液の重量を大きくする一方、吐出用開口に開口端縁から内方に突出する環状薄板を形成することにより、吐出用開口付近に付着した滴状の内容物を環状薄板の端縁で切り取ることが可能になった。
また、環状側壁の内径がキャップ軸方向上方に行くにしたがって縮径することにより、内容物の流動がスムーズになり、その流速が大きくなるため、内容物が低粘度化され、開口付近の内容物の付着自体を抑制することができる。
【0011】
本発明のプラスチックキャップについて、添付図面に基づいて説明する。
図1~3に示す本発明のプラスチックキャップの一例は、キャップ本体1、及びこのキャップ本体1にヒンジ30で連結された上蓋20から成り、これらが一体的に成形されて成るヒンジキャップである。
容器口部(図示せず)に固定されるキャップ本体1は、頂板部2及び頂板部2の周縁から垂下するスカート部3から成り、スカート部3の内面には、容器口部の螺子部と螺合する螺子部4が形成されている。また図に示す具体例では、スカート部3の外面には、スカート部3の把持を容易にするための軸方向に延びる凹部5a及び凸部5bが交互に複数形成されている。またスカート部3の外面上端のヒンジ30と反対側には、閉蓋状態において上蓋20を固定するための係合部6が形成されている。
頂板部2には、内容物を排出するための開口7が形成されており、この開口7の端部からキャップ軸方向上方に延びる環状側壁8、この環状側壁8の上端部を閉塞する上面部9が形成されている。
図1(A)に示すように、環状側壁8は、ヒンジ30の反対側に位置する半円部分abcにおいてはキャップ軸方向に垂直に延びる垂直壁8aを形成し、ヒンジ30側の半円部分adcにおいては円弧adc側から線ac方向に向かう傾斜面8bとして形成されている。このように環状側壁8が吐出方向に行くにしたがってその内径を縮径することによって、内容物の流速を大きくすることが可能になる。しかも傾斜面8bが環状側壁8の吐出用開口12の反対側に形成されているので、ヒンジ側に内容物が滞留することなく、内容物を効率よく吐出用開口に流動させることができるため、内容物の流速を高めることができる。
【0012】
環状側壁8の上端部を閉塞する上面部9には、内容物を吐出するための円筒状吐出部10が、図1(C)から明らかなように、垂直壁8aの円弧abcに沿って3つ形成されている。前述した通り、この円筒状吐出部10の先端面11には、開口端縁から内方に突出する環状薄板13が形成され、円筒状吐出部10の内径に比して吐出用開口12の径が低減されている。このため、内容物のスウェル現象を効率よく発現することが可能となり、内容物は大きく垂れ下がると共に、この大きく垂れ下がった内容物は環状薄板13により切断されることから、液切れ性が向上する。
また、図2から明らかなように、円筒状吐出部10は、吐出用開口12を含む仮想平面である先端面11が内容物の吐出方向に向かって水平方向に対してΘだけ下方に傾斜している。これにより、内容物の巻き込みが防止され、開口付近への内容物の付着(液だれ)を減少させることができる。
【0013】
上蓋20は、天面21の周縁から垂下する周状壁22から成り、周状壁22の内面下端にはキャップ本体1の係合部6と係合して上蓋をキャップ本体に固定するための複数個の係合突起23,23・・が形成されている。また周状壁22のヒンジ30と反対側の位置の外面下端には、上蓋20を開封するための摘み24が形成されている。
上蓋がキャップ本体に固定された閉蓋状態を示す図3から明らかなように、上蓋20の天面21の内面側には、上蓋の閉蓋状態において、上述した吐出用開口12,12,12に嵌合し、閉蓋状態において内容物の漏洩を防止するための嵌合部25,25,25が形成されている。図3に示す嵌合部25は環状薄板13の端縁で区画される吐出用開口12の水平方向の投影口径Dよりもわずかに大きい外径を有する筒状部材から成っている。このように嵌合部25が筒状部材から成ることにより、筒状部材が内方に撓むことが可能になり、吐出用開口12に容易に嵌合可能であると共に、吐出用開口12に嵌合した後は、環状薄板13に圧着し、内容物の漏洩を確実に防止できる。
【0014】
図4(A)は、図1~3に示した本発明のプラスチックキャップが、マヨネーズのような粘弾性特性を有する内容物50が充填された容器40に適用され、容器40の胴部を押圧し、内容物が吐出されている状態を説明するための図であり、図4(B)は、図4(A)の状態から胴部の押圧を中止し、内容物の吐出を中止した直後の状態を説明するための図である。
図4(A)から明らかなように、内容物50はキャップ本体1内から環状側壁8内を通って、吐出用開口12から吐出されるが、環状側壁8は吐出方向に行くにしたがって縮径し、容器40を押圧した際の圧力損失を抑制しつつ、内容物50は円筒状吐出部10に向かってスムーズに流動するため、その流速が大きくなる。その結果、前述した通り、内容物の粘性が低下するため液切れ性を向上できる。また前述した通り、環状側壁8の傾斜面8bは吐出用開口12の反対側に形成されているため、ヒンジ側に内容物が滞留することなく、内容物50が吐出用開口12に効率よく流動するため、内容物の粘性低下により、液切れ性がさらに向上できる。
また、円筒状吐出部10の先端面11が傾斜していることにより、吐出された内容物が環状薄板13の外面に巻きこまれ付着することが有効に防止されている。
吐出用開口12に形成される環状薄板13は、円筒状吐出部10の厚みよりも薄肉に形成されていることから、図4(B)に示すように吐出用開口12から垂れ下がった滴状の内容物51をその端縁で切断可能であり、その結果、上述した流速の上昇による粘性の低下と相俟って、さらに液切れ性を向上することができる。
【0015】
本発明のプラスチックキャップにおいて、円筒状吐出部の大きさは、その個数や、内容物の種類及び粘度、或いは容器の容量等に応じて適宜設定することができるが、一般的なマヨネーズ等の容器においては、2~10mmの内径(図2のD)を有することが望ましい。
吐出用開口に形成される環状薄板の幅(図2のL)は、円筒状吐出部の内径(図2のD)に対して10~50%(計算式:2L/D×100〔%〕)となるように形成されていることが望ましい。上記範囲よりも環状薄板の幅が大きいと、内容物流出のための開口が小さくなり過ぎ、内容物を充分に吐出できないおそれがある。また上記範囲よりも環状薄板の幅が小さいと吐出用開口付近に垂れ下がった(付着した)滴状の内容物の切断を効率よく行うことができず、上記範囲にある場合に比して液切れ性が低下するおそれがある。
また環状薄板の厚みTは、前述した通り、円筒状吐出部の厚みT以下の薄肉とすることが望ましく、好適には1mm以下、特に0.2~0.8mmの範囲に薄肉化されていることが望ましい。このように環状薄板が薄肉化されていることにより、吐出用開口付近に垂れ下がった滴状の内容物の切断を効率よく行うことができる。
【0016】
本発明のプラスチックキャップにおいては、上述した具体例に限定されず、種々の形態を採用することができる。
例えば、環状側壁は、内容物の流速を上昇させる観点からは吐出方向に向かって縮径する形状であることが望ましく、図に示した具体例では、吐出方向側は垂直壁でヒンジ側に傾斜面が形成され、円筒状吐出部はヒンジと反対側の吐出方向側に偏心して形成されていたが、吐出用開口に形成される環状薄板によって十分に液切れ性が向上されることから、環状側壁は円筒状であってもよい。また後述するように、上蓋がキャップ本体と連結されていないキャップにおいては、環状側壁は上方に行くに従って縮径する円錐台状であってもよい。
また、図に示した具体例では、吐出時の内容物の巻き込みによる液だれ(滴状の内容物)の発生を防止するために、円筒状吐出部の先端面を内容物の吐出方向下方に傾斜(図2のΘ)させていたが、本発明のプラスチックキャップにおいては、液だれが発生した場合でも環状薄板により切断され、液切れ性が向上されているため、必ずしも傾斜を形成しなくてもよいが、傾斜させる場合には、Θが2~20度の範囲にあることが望ましい。
【0017】
更に図に示した具体例では、上蓋がヒンジで連結されたヒンジキャップであったが、これに限定されない。ヒンジキャップの場合には、図に示す具体例のように、円筒状吐出部がヒンジの反対側の吐出方向側に偏心して形成されていることが望ましいが、上蓋がキャップ本体から離脱するキャップにおいては、キャップ頂板部の中央に円筒状吐出部が形成されていることが望ましい。
また円筒状吐出部に形成する吐出用開口は、少なくとも1つ、好適には2~4個形成されていることが望ましく、図に示した具体例のように円弧状に複数個並ぶ以外にも、一列に並んでいてもよい。
更に図に示した具体例では、スカート部内面に螺子部を有する螺子キャップであったが、容器口部に打栓により固定するキャップであってもよい。
【0018】
本発明のプラスチックキャップは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の従来プラスチックキャップの成形に用いられていた樹脂を用い、射出成形等、従来公知の方法によって成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のプラスチックキャップは、マヨネーズのような粘稠物質を液だれすることなく吐出することができることから、特に25℃での粘度が100mPa・s以上の粘性の高い内容物が充填された容器用キャップとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0020】
キャップ本体、2 頂板部、3 スカート部、4 螺子部、5 ローレット溝、6 係合部、7 開口、8 環状側壁、9 上面部、10 円筒状吐出部、11 先端面、12 吐出用開口、13 環状薄板、20 上蓋、21 天面、22 周状壁、23 係合突起、24 摘み、25 嵌合部、30 ヒンジ、40 容器、50 内容物。
図1
図2
図3
図4