(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】太陽電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H02S 40/42 20140101AFI20240214BHJP
H02S 10/40 20140101ALI20240214BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20240214BHJP
H01L 31/049 20140101ALI20240214BHJP
【FI】
H02S40/42
H02S10/40
B60R16/04 U
H01L31/04 562
(21)【出願番号】P 2020058479
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】口山 崇
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073903(JP,A)
【文献】特開2009-107399(JP,A)
【文献】特開昭60-022566(JP,A)
【文献】特開平04-356213(JP,A)
【文献】特開2010-137809(JP,A)
【文献】特開2003-219512(JP,A)
【文献】特開2011-037314(JP,A)
【文献】特開平02-151583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0029544(US,A1)
【文献】米国特許第06505696(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第105083397(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
H01L 31/04-31/078
B62D 1/00-67/00
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに搭載された太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールの放熱のための放熱部材と、
前記車両に搭載されたスポイラーと、
を備え、
前記放熱部材は、シート状をなしており、前記太陽電池モジュールの裏面側に貼付されており、
前記放熱部材の端部は、前記スポイラーの内部に配置されて
おり、
前記スポイラーは、前記放熱部材の前記端部の空冷のための吸気孔および排気孔を有する、
太陽電池ユニット。
【請求項2】
前記スポイラーは、内部に浸入した水を抜くための水抜孔を有する、請求項
1に記載の太陽電池ユニット。
【請求項3】
前記水抜孔には、メッシュが形成されており、
前記メッシュを構成するワイヤは、前記スポイラーの内側から外側に向けて次第に太くなる断面台形形状である、
請求項
2に記載の太陽電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のルーフに太陽電池モジュールを搭載する技術が知られている。このような太陽電池モジュールでは、表面側は走行風や自然風によって冷却されるが、裏面側は放熱されず、裏面側に熱がこもる。そのため、太陽電池モジュールの性能低下、或いは車内温度の上昇等が生じてしまう。
【0003】
この点に関し、特許文献1には、車両のルーフに設けられた太陽電池を冷却するために、太陽電池の裏面側に空気流路を設ける(空冷)ことが記載されている。また、特許文献2には、車両のルーフに設けられた太陽電池を冷却するために、太陽電池の裏面側に空気流路を設け(空冷)、更に、太陽電池の裏面に冷却フィンを設けることが記載されている。また、特許文献3には、車両のルーフに設けられた太陽電池を冷却するために、太陽電池の裏面側に冷却液の循環路を設ける(水冷)ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-356213号公報
【文献】実開昭57-92527号公報
【文献】実開昭57-93150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3に記載の放熱構造では、太陽電池の裏面側に、空気流路または冷却液の循環路を設けるため、太陽電池の裏面側の耐水性が低く、太陽電池の信頼性が低い。
【0006】
本発明は、太陽電池モジュールの裏面側の放熱性と耐水性との両立が可能な太陽電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池ユニットは、車両のルーフに搭載された太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールの放熱のための放熱部材と、前記車両に搭載されたスポイラーと、を備える。前記放熱部材は、シート状をなしており、前記太陽電池モジュールの裏面側に貼付されており、前記放熱部材の端部は、前記スポイラーの内部に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、太陽電池ユニットにおいて、太陽電池モジュールの裏面側の放熱性と耐水性との両立が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る太陽電池ユニットを備える車両の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す車両におけるII-II線断面図であって、第1実施形態に係る太陽電池ユニットを備える車両の一部を示す断面図である。
【
図3】
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおける太陽電池モジュールを示す側面図である。
【
図4】
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおける放熱部材を示す斜視図である。
【
図5】
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおけるスポイラーの前面側を示す斜視図である。
【
図6】
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおけるスポイラーの背面側を示す斜視図である。
【
図7】
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおけるスポイラーの断面図であって、
図1のII-II線相当の断面図である。
【
図8】
図5~
図7に示すスポイラーにおける水抜孔のメッシュを示す図である。
【
図9】
図8に示す水抜孔のメッシュのVIII-VIII線断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る車両ルーフ放熱構造を備える車両の一部を示す断面図であって、
図1のII-II線相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池ユニットを備える車両の一部を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す車両におけるII-II線断面図であって、第1実施形態に係る太陽電池ユニットを備える車両の一部を示す断面図である。また、
図3は、
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおける太陽電池モジュールを示す側面図であり、
図4は、
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおける放熱部材を示す斜視図である。
図1~
図4に示すように、太陽電池ユニット10は、車両(移動体)1に搭載される。太陽電池ユニット10は、太陽電池モジュール20と、放熱部材30と、スポイラー40とを備える。
【0012】
太陽電池モジュール20は、車両1のルーフに搭載されている。太陽電池モジュール20は、例えば、2次元状に配列された複数の太陽電池セル21と、太陽電池セル21の受光面側に配置された受光面保護部材22と、太陽電池セル21の裏面側に配置された裏面保護部材23と、受光面保護部材22と裏面保護部材23との間に配置されて太陽電池セル21を封止する封止材24とで構成されている。受光面保護部材22は、ガラスまたは樹脂等の材料からなる基板であると好ましい。一方、裏面保護部材23は、放熱部材30への熱伝導を行うため、公知のバックシート等の材料からなるフィルムであると好ましい。すなわち、裏面保護部材23には、受光面保護部材22のように数mmの厚みを有するガラスまたは樹脂等の材料からなる基板は適さない。
【0013】
放熱部材30は、太陽電池モジュール20の裏面側の放熱のための部材である。放熱部材30は、シート状をなしており、太陽電池モジュール20の裏面側に貼付されている。放熱部材30の端部は、車両1のボディの外部に露出して、スポイラー40の内部に配置されている。
【0014】
放熱部材30の材料としては、特に限定されないが、グラファイト、カーボン、または金属等の面方向の熱伝導性に優れた材料が用いられる。
【0015】
スポイラー40は、車両1のリア側に搭載されている所謂エアロパーツである。スポイラー40は、放熱部材30の端部を固定するための固定部材49を備えていてもよい。
【0016】
スポイラー40の材料としては、カーボンまたは金属等の熱伝導性に優れた材料が用いられる。或いは、スポイラー40の材料としては、エアロパーツの材料として公知の軽量化に優れた部材、例えばFRP(ファイバー・レインホース・プラスチック)が用いられてもよい。スポイラー40の材料としてFRPが用いられる場合、放熱性を高めるために、スポイラー40は以下に説明する冷却機構を備えてもよい。
【0017】
図5は、
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおけるスポイラーの前面側を示す斜視図であり、
図6は、
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおけるスポイラーの背面側を示す斜視図である。また、
図7は、
図1および
図2に示す太陽電池ユニットにおけるスポイラーの断面図であって、
図1のII-II線相当の断面図である。
【0018】
スポイラー40は、放熱部材30の端部の空冷のための吸気孔41および排気孔42を有していてもよい。吸気孔41は、スポイラー40の前面側の前方に形成されており、スリット状をなす。排気孔42は、スポイラー40の背面側の後方に形成されており、スリット状をなす。吸気孔41および排気孔42の位置は、車両走行時に、吸気孔41から空気が効率的に入り(点線矢印)、かつ吸気孔41から入る空気が放熱部材30の端部に効率的にあたり(点線矢印)、かつ放熱部材30から熱が伝導された空気が排気孔42から効率的に抜ける(点線矢印)、ような位置である。
【0019】
また、スポイラー40は、内部に浸入した水を抜くための水抜孔43を有していてもよい。水抜孔43は、スポイラー40の背面の下方に形成されており、スリット状をなす。水抜孔43には、
図8に示すように、メッシュが形成されていてもよい。また、メッシュを構成するワイヤは、
図9に示すように、前記スポイラー40の内側から外側に向けて次第に太くなる断面台形形状であってもよい。
【0020】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池ユニット10によれば、放熱部材30が太陽電池モジュール20の裏面側に貼付されており、放熱部材30の端部が車両1のボディの外部に露出している。これにより、太陽電池モジュール20の裏面側の熱を、放熱部材30の端部から効率よく放熱することができ、太陽電池モジュール20の裏面側の放熱性を高めることができる。このように、放熱効率の観点から、放熱部材30の端部は車両1のボディの外部に露出していてもよい。しかし、太陽電池ユニット10(および車両1)の信頼性の観点からは、放熱部材30の端部はスポイラー40の内部に配置されていることが好ましい。
【0021】
また、特許文献1~3のように、太陽電池モジュール20の裏面側に、空気流路または冷却液の循環路を設ける必要がないため、太陽電池モジュール20の裏面側の密閉性を確保することができる。これにより、太陽電池モジュール20の裏面側の耐水性を高めることができ、太陽電池の信頼性を高めることができる。
【0022】
このように、本実施形態の太陽電池ユニット10によれば、太陽電池モジュール20の裏面側の放熱性と耐水性との両立が可能である。
【0023】
また、本実施形態の太陽電池ユニット10によれば、車両1のボディの外部に露出した放熱部材30の端部が、スポイラー40の内部に配置されている。これにより、太陽電池ユニット10(および車両1)の信頼性の低下を抑制することができ、また車両1の外観が損なわれることを抑制することができる。
【0024】
また、本実施形態の太陽電池ユニット10によれば、スポイラー40が、放熱部材30の端部の空冷のための吸気孔41および排気孔42を有する。これにより、太陽電池ユニット10(および車両1)の信頼性の低下を抑制しつつ、また車両1の外観が損なわれることを抑制しつつ、太陽電池モジュール20の裏面側の放熱性を高めることができる。
【0025】
また、本実施形態の太陽電池ユニット10によれば、スポイラー40が、内部に浸入した水を抜くための水抜孔43を有する。これにより、スポイラー40の内部に浸入した水を抜くことができる。
【0026】
また、本実施形態の太陽電池ユニット10によれば、水抜孔43にはメッシュが形成されており、メッシュを構成するワイヤは、スポイラー40の内側から外側に向けて次第に太くなる断面台形形状である。これにより、スポイラー40の内側から外側へ水が抜け易く、かつスポイラー40の外側から内側へ水が浸入し難い。
【0027】
(第2実施形態)
第1実施形態では、放熱部材が、車両のルーフ(roof)に搭載される太陽電池モジュールの放熱を行う態様を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、放熱部材が、車両のルーフ(roof)部材の放熱を行う態様にも適用可能である。例えば、採光性を高めるために、車両のルーフ部材としてガラスルーフが用いられることがある。本発明は、このようなルーフ部材の放熱のための放熱構造にも好適に適用可能である。
【0028】
図10は、第2実施形態に係る車両ルーフ放熱構造を備える車両の一部を示す断面図であって、
図1のII-II線相当の断面図である。
図10に示すように、車両ルーフ放熱構造100は、車両(移動体)1に搭載される。車両ルーフ放熱構造100は、上述した放熱部材30を備える。
【0029】
放熱部材30は、車両1のルーフ部材2の裏面側の放熱のための部材である。放熱部材30は、シート状をなしており、ルーフ部材2の裏面側に貼付されている。放熱部材30の端部は、車両1のボディの外部に露出して、スポイラー40の内部に配置されている。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の車両ルーフ放熱構造100でも、上述した太陽電池ユニット10と同様に、放熱部材30が車両1のルーフ部材2の裏面側に貼付されており、放熱部材30の端部が車両1のボディの外部に露出している。これにより、上述同様に、車両1のルーフ部材2の裏面側の熱を、放熱部材30の端部から効率よく放熱することができ、車両1のルーフ部材2の裏面側の放熱性を高めることができる。
【0031】
また、上述同様に、特許文献1~3のように、車両1のルーフ部材2の裏面側に、空気流路または冷却液の循環路を設ける必要がないため、車両1のルーフ部材2の裏面側の密閉性を確保することができる。これにより、上述同様に、車両1のルーフ部材2の裏面側の耐水性を高めることができ、車両1のルーフの裏面側の信頼性を高めることができる。例えば、車両のルーフの裏面側には、電気配線や断熱・遮音材などの部材があり、これらが水等により劣化することが抑制される。さらに(信頼性確保のための)部品点数の増加を抑制できることから、重量面でも好ましい。
【0032】
このように、本実施形態の車両ルーフ放熱構造100でも、上述同様に、車両1のルーフ部材2の裏面側の放熱性と耐水性との両立が可能である。
【0033】
また、本実施形態の車両ルーフ放熱構造100でも、上述した太陽電池ユニット10と同様に、車両1のボディの外部に露出した放熱部材30の端部が、スポイラー40の内部に配置されている。これにより、上述同様に、車両ルーフ放熱構造100(および車両1)の信頼性の低下を抑制することができ、また車両1の外観が損なわれることを抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の車両ルーフ放熱構造100でも、上述した太陽電池ユニット10と同様に、スポイラー40が、放熱部材30の端部の空冷のための吸気孔41および排気孔42を有する。これにより、上述同様に、車両ルーフ放熱構造100(および車両1)の信頼性の低下を抑制しつつ、また車両1の外観が損なわれることを抑制しつつ、車両1のルーフ部材2の裏面側の放熱性を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態の車両ルーフ放熱構造100でも、上述した太陽電池ユニット10と同様に、スポイラー40が、内部に浸入した水を抜くための水抜孔43を有する。これにより、上述同様に、スポイラー40の内部に浸入した水を抜くことができる。
【0036】
また、本実施形態の車両ルーフ放熱構造100でも、上述した太陽電池ユニット10と同様に、水抜孔43にはメッシュが形成されており、メッシュを構成するワイヤは、スポイラー40の内側から外側に向けて次第に太くなる断面台形形状である。これにより、上述同様に、スポイラー40の内側から外側へ水が抜け易く、かつスポイラー40の外側から内側へ水が浸入し難い。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、太陽電池ユニット10における太陽電池モジュール20が車両1のルーフ(roof)に搭載される態様を例示した。しかし、本発明の太陽電池ユニットにおける太陽電池モジュールはこれに限定されず、車両のボディにおけるフロントフード(front food, engine food)、リアフード(rear food, trunk food)、またはサイドパネル等の種々の箇所に搭載される態様であってもよい。この場合、放熱部材の端部は、車両の外部に露出されたままでもよい。
【0038】
また、本発明の太陽電池ユニットにおける太陽電池モジュールは、車両(vehicle)のボディに限らず、電車(train)、飛行機(airplane)、または船(ship)等の種々の移動体のボディに搭載される態様であってもよい。この場合、放熱部材の端部は、移動体のボディの外部に露出されたままでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 車両(移動体)
10 太陽電池ユニット
20 太陽電池モジュール
21 太陽電池セル
22 受光面保護部材
23 裏面保護部材
24 封止材
30 放熱部材
40 スポイラー
41 吸気孔
42 排気孔
43 水抜孔