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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020065733
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021160621
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 健介
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163022(JP,A)
【文献】特開2010-095171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床に固定されるロアレールと、
シートに固定される共に、前記ロアレールに対して摺動可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとの相対移動を解除可能にロックするロック部材と、
前記ロック部材のロック状態とロック解除状態とを切り換えるレバー機構と、
を備え、
前記レバー機構は、
搭乗者によって操作され、前記ロック部材のロック状態とロック解除状態とを切り替える回転可能なレバーと、
前記ロック部材とは別部材から成り、前記ロック部材に回転可能に保持されると共に、前記レバーのロック解除動作に伴い、押圧部によって前記ロック部材を押圧して前記ロック部材をロック解除位置に移動させるレバーブラケットと、
前記ロック部材よりも前方の位置で前記レバーと前記レバーブラケットとを連結する連結ピンと、
を備えるシートスライド装置。
【請求項2】
前記ロアレールは、複数の第一係合部を備え、
前記アッパーレールは、複数の第二係合部を備え、
前記ロック部材は、前記第一係合部及び前記第二係合部に対して係合及び離脱可能なロック歯を有するロック片と、前記ロック片よりも車両前方に設けられ、前記レバーブラケットを回転可能に保持する保持部と、前記ロック片と前記保持部とを接続する弾性変形可能な接続部と、を備える、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記レバーは、前記連結ピンよりも後方の位置に回転中心を有し、
前記レバーブラケットは、前記連結ピンよりも後方で、且つ、前記押圧部よりも前方の位置に回転中心を有する、
請求項1又は2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記連結ピンよりも後方の位置に支持部を備え、
前記レバーは前記支持部上に配置されると共に、前記支持部との接触点を中心として回転する、
請求項3に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記連結ピンよりも後方の位置に貫通穴を有し、
前記レバーブラケットは、前記貫通穴に挿入されると共に、回転中心となる軸部を有する、
請求項3又は4に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートの前後位置を調節し、所定の位置でシートをロックできるシートスライド装置が知られている。図9(a)は、従来のシートスライド装置の一例を示す断面図である。図9(b)は、従来のシートスライド装置の分解斜視図である。なお、図9(b)では、一部の部品を省略している。従来のシートスライド装置100は、主として、ロアレール110と、アッパーレール120と、ロック装置130と、レバー機構140とを備える。ロアレール110とアッパーレール120とは、ロック装置130によるロック時には相対移動不能であり、ロック解除時には相対移動可能になる。ロック装置130は、
レバー機構140によりロック解除される。
【0003】
レバー機構140は、レバー141と、レバーブラケット142と、バネブラケット143とを備える。レバーブラケット142は、第一端部側(前方側)においてレバー141と接続されている。レバーブラケット142の第二端部側(後方側)には、ロック装置130を作動させる押圧部142aが設けられている。レバーブラケット142は、第一端部と第二端部との間に突起状の軸部142bを有している。バネブラケット143は、板バネから成り、貫通穴143aを有する。バネブラケット143は、レバーブラケット142に取り付けられる。レバーブラケット142の軸部142bは、バネブラケットの貫通穴143aに挿入されると共に、アッパーレール120の側壁に設けられた貫通穴120aに軸支される。
【0004】
搭乗者がレバー141を持ち上げることにより、レバーブラケット142が軸部142bを中心として回転し、押圧部142a側が下がる。押圧部142aがロック装置130に力を及ぼすことにより、ロック装置130がロック解除される。
【0005】
ここで、図10を参照して、従来のロック装置130についてさらに詳しく説明する。図10(a)はロック装置130の分解斜視図、図10(b)はロック装置130の組立斜視図である。ロック装置130は、ロック体131と、軸部材132と、ロックブラケット133と、付勢部材134と、固定部材135を備えている。
【0006】
ロック体131は、複数のロック歯131aを備える。ロック歯131aがロアレール110及びアッパーレール120の係合部(不図示)に係合しているとき、ロアレール110とアッパーレール120とはロックされた状態となる。ロック体131は軸部材132によってロックブラケット133に接続される。付勢部材134は軸部材132に取り付けられ、ロック体131をロック状態に付勢している。ロックブラケット133は、ピン等の固定部材135によってアッパーレール120に固定される。
【0007】
ロック体131は、レバーブラケット142の押圧部142aによって下方に押圧されることで、軸部材132を中心として回転する。これにより、ロック歯131aが、ロアレール110及びアッパーレール120の係合部から離脱する。こうして、アレール110とアッパーレール120とのロックが解除され、アレール110とアッパーレール120とは相対移動可能になる。押圧部142aによるロック体131への力が除荷されると、付勢部材134の復元力により、ロック体131は自動的に逆回転し、ロック状態に戻る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のシートスライド装置では、ロック装置やレバー機構は多数の部品から構成されているため、構造が複雑になり、シートスライド装置の質量が大きくなると共に、コストが高くなっていた。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、シートスライド装置の構造を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
車両の床に固定されるロアレールと、
シートに固定される共に、前記ロアレールに対して摺動可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとの相対移動を解除可能にロックするロック部材と、
前記ロック部材のロック状態とロック解除状態とを切り換えるレバー機構と、
を備え、
前記レバー機構は、
搭乗者によって操作され、前記ロック部材のロック状態とロック解除状態とを切り替える回転可能なレバーと、
前記ロック部材に回転可能に保持されると共に、前記レバーのロック解除動作に伴い、押圧部によって前記ロック部材を押圧して前記ロック部材をロック解除位置に移動させるレバーブラケットと、
前記レバーと前記レバーブラケットとを連結する連結ピンと、
を備えるシートスライド装置。
【0011】
(項目2)
前記ロアレールは、複数の第一係合部を備え、
前記アッパーレールは、複数の第二係合部を備え、
前記ロック部材は、前記第一係合部及び前記第二係合部に対して係合及び離脱可能なロック歯を有するロック片と、前記ロック片よりも車両前方に設けられ、前記レバーブラケットを回転可能に保持する保持部と、前記ロック片と前記保持部とを接続する弾性変形可能な接続部と、を備える、
項目1に記載のシートスライド装置。
【0012】
(項目3)
前記レバーは、前記連結ピンよりも後方の位置に回転中心を有し、
前記レバーブラケットは、前記連結ピンよりも後方で、且つ、前記押圧部よりも前方の位置に回転中心を有する、
項目1又は2に記載のシートスライド装置。
【0013】
(項目4)
前記ロック部材は、前記連結ピンよりも後方の位置に支持部を備え、
前記レバーは前記支持部上に配置されると共に、前記支持部との接触点を中心として回転する、
項目3に記載のシートスライド装置。
【0014】
(項目5)
前記ロック部材は、前記連結ピンよりも後方の位置に貫通穴を有し、
前記レバーブラケットは、前記貫通穴に挿入されると共に、回転中心となる軸部を有する、
項目3又は4に記載のシートスライド装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシートスライド装置では、ロック部材によってレバーブラケットを保持すると共に、レバーとレバーブラケットを連結ピンによって連結している。これにより、シートスライド装置の構造を簡略化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シート及びシートスライド装置の概略側面図である。
図2】シートスライド装置の分解斜視図である。
図3図2における、アッパーレールのIII-III線断面図である。
図4】シートスライド装置の組立後の部分断面斜視図である。
図5】ロック部材の斜視図である。
図6】レバーブラケットの斜視図である。
図7】ロアレール及びアッパーレールを省略した、シートスライド装置の組立斜視図である。
図8】(a)レバーの非操作時の断面図、(b)レバーの操作時の断面図である。
図9】(a)従来のシートスライド装置の一例を示す断面図、(b)従来のシートスライド装置の一例を示す分解斜視図である。
図10】(a)従来のロック装置の一例を示す分解斜視図、(b)従来のロック装置の一例を示す組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のシートスライド装置について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。なお、明確性のため、断面図において、一部の構成要素及びハッチングを省略することがある。
【0018】
<1 シートスライド装置の全体構造>
図1は、車両のシートS及びシートスライド装置1の概略側面図である。以下では、「車両上下方向」、「車両前後方向」、「車両左右方向(車幅方向)」をそれぞれ単に「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」と表記する。
【0019】
シートスライド装置1は、ロアレール2と、アッパーレール3と、ロック部材4と、レバー機構5と、を備える。シートスライド装置1は、後述するレバー51の操作部511を除いて、一つのシートSに対し、左右一対設けられている。
【0020】
ロアレール2は、ブラケットBを介して車両のフロアに固定される。アッパーレール3は、シートSに固定されると共に、ロアレール2に組み付けられている。ロアレール2とアッパーレール3とは、ロック部材4によって解除可能にロックされている。ロック部材4がロック位置にあるとき、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に相対移動不能である。ロック部材4がロック解除位置にあるとき、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に相対移動可能になる。レバー機構5は、ロック部材4のロック状態とロック解除状態とを切り替える。以下、各構成要素について詳述する。
【0021】
<1-1 ロアレール及びアッパーレール>
図2は、シートスライド装置1の分解斜視図である。図3は、図2における、アッパーレール3のIII-III線断面図である。図4は、シートスライド装置1の組立後の部分断面斜視図である。
【0022】
主に図2を参照して、ロアレール2について説明する。ロアレール2は、底壁21と、側壁22と、上壁23と、フランジ部24と、を備えた、前後方向に延びる長尺な部材から成る。側壁22、上壁23及びフランジ部24はそれぞれ一対設けられている。ロアレール2は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0023】
底壁21は、前後方向に延びる略平板状である。側壁22は、底壁21の左右両端から、底壁21と略直角を成して上方に延びている。上壁23は、側壁22の上端から他方側の側壁22に向けて、底壁21と略平行に延びている。フランジ部24は、上壁23の端部から下方に、側壁22と略平行に延びている。
【0024】
フランジ部24の下端には、複数の切欠き24aが前後方向に間隔をあけて形成されている。複数の切欠き24aを設けることによって、フランジ部24の下端には複数のロック歯24bが形成される。ロック部材4がロック位置に配置されているとき、ロック歯24bは、後述するロック部材4の貫通穴41a内に配置される。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、アッパーレール3について説明する。
【0026】
図2及び図3に示すように、アッパーレール3は、上壁31と、側壁32と、底壁33と、フランジ部34と、を備えた、前後方向に延びる長尺な部材から成る。側壁32、底壁33、フランジ部34はそれぞれ一対設けられている。アッパーレール3は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0027】
上壁31は、前後方向に延びる略平板状である。側壁32は、上壁31の左右両端から、上壁31と略直角を成して下方に延びている。底壁33は、側壁32から離れるように、側壁32の下端から斜め上方に向けて延びている。フランジ部34は、側壁32に近づくように底壁33から斜め上方に向けて延びると共に、屈曲して、側壁32から離れるように斜め上方に向けて延びている。
【0028】
図3に示すように、側壁32には、複数の切欠き32aが、前後方向に、ロアレール2の切欠き24aと同じ間隔で形成されている。複数の切欠き32aを設けることにより、側壁32の下端には、複数のロック歯32bが形成される。ロック部材4がロック位置に配置されているとき、ロック歯32bは、後述するロック部材4の貫通穴41a内に配置される。
【0029】
ロアレール2とアッパーレール3とは、ロアレール2の一対のフランジ部24間の空間にアッパーレール3の側壁32が配置され、ロアレール2の側壁22とフランジ部24との間の空間に、アッパーレール3のフランジ部34が配置されるように組み立てられる。
【0030】
ロアレール2の底壁21と側壁22との間のコーナ部と、アッパーレール3の底壁33との間には、図2に示すボール等の転動手段6が配置されている。また、ロアレール2の側壁22の上端と、アッパーレール3のフランジ部34の上端との間には、ボール等の転動手段6が配置されている。この転動手段6により、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に円滑に摺動できるようになっている。
【0031】
<1-2 ロック部材>
主に図5を参照して、ロック部材4について説明する。図5は、ロック部材4の斜視図である。
【0032】
ロック部材4は、バネ鋼などの弾性変形可能な材料を、例えばプレス加工することにより製造される。ロック部材4は、ロック片41と、保持部42と、接続部43と、を備える。保持部42は、ロック片41よりも前方に設けられている。接続部43は、ロック片41と保持部42とを接続する長尺な部分である。
【0033】
ロック片41には、複数の貫通穴41aが前後方向に間隔をあけて設けられている。ロック片41のうち、前後方向において複数の貫通穴41aに隣接する部分は、ロック歯41bとして機能する。ロック部材4がロック位置に配置されているとき、ロアレール2のロック歯24b及びアッパーレール3のロック歯32bは、貫通穴41a内に挿入され、ロック部材4のロック歯41bは、ロアレール2の切欠き24a及びアッパーレール3の切欠き32a内に挿入される。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とは摺動不能にロックされる。
【0034】
保持部42は、接続部43の左右両端からそれぞれ立ち上がる一対の壁部421を備える。一対の壁部421にはそれぞれ、円形の貫通穴421aが設けられている。貫通穴421aは、壁部421の後方に設けられている。貫通穴421aには、後述するレバーブラケット52の軸部5213が挿入される。
【0035】
接続部43は、その前端部に、上方に折り曲げることによって形成された支持部43aを有する。支持部43a上には、後述するレバー51の連結部513の後端部が接触した状態で配置される(図8(a)参照)。また、接続部43には、前後方向において貫通穴421aとほぼ同じ位置に、貫通穴43が設けられている。貫通穴43には、ロック部材4をアッパーレール3に固定するための固定部材7が挿入される(図4及び図8参照)。固定部材7の下部はロック部材4にカシメられ、固定部材4の上部はアッパーレール3にカシメられる。
【0036】
<1-3 レバー機構>
主に図2図4図6及び図7を参照して、レバー機構5について説明する。レバー機構5は、レバー51と、レバーブラケット52と、連結ピン53と、付勢部材54と、を備える。レバー51とレバーブラケット52とは、連結ピン53によって連結されている。搭乗者がレバー51を操作することにより、レバー51の動作に連動してレバーブラケット52が動き、レバーブラケット52によってロック部材4のロック片41が下方に押圧されることで、ロック解除が行われる。
【0037】
図2及び図4に示すように、レバー51は、操作部511と、アーム部512と、連結部513と、を備える。操作部511及びアーム部512は、アッパーレール3の外部に配置されている。操作部511は、搭乗者が掴んでレバー51を操作する部位である。アーム部512は左右一対設けられており、一対のアーム部512は操作部511によって連結されている。連結部513は、一対のアーム部512のそれぞれの先端に設けられている。連結部513の後部上端には、切欠き513aが設けられている。切欠き513aには、付勢部材54が取り付けられる。付勢部材54は、例えば線状のバネである。また、連結部513には、その後端部よりも前方の位置に貫通穴513bが設けられている。
貫通穴513bには、連結ピン53が挿入される。
【0038】
図6(b)は、レバーブラケット52の斜視図である。図7は、ロアレール2及びアッパーレール3を省略した、シートスライド装置1の斜視図である。図6(b)に示すように、レバーブラケット52は、本体部521と、押圧部522と、を備える。本実施形態では、本体部521と押圧部522とは別部材から成るが、本体部521と押圧部522とは一体形成されていてもよい。
【0039】
本体部521は、上壁5211と、一対の側壁5212と、一対の軸部5213と、を備える。上壁5211の一部には開口部が設けられており、この開口部には固定部材7が挿入される(図4参照)。
【0040】
一対の側壁5212は、上壁5211から下方に延びている。一対の側壁5212にはそれぞれ、第一切欠き5212aと、第二切欠き5212bと、第三切欠き5212cとが設けられている。第一切欠き5212aは、側壁5212の前端から後方に延びている。図7に示すように、第一切欠き5212aには、連結ピン53が挿入される。第二切欠き5212bは、第一切欠き5212aの上方に設けられている。第三切欠き5212cは、第二切欠き5212bよりも後方で、且つ、側壁5212の下端に設けられている。図7に示すように、第二切欠き5212及び第三切欠き5212cには、付勢部材54が取り付けられる。
【0041】
一対の軸部5213は、第一切欠き5212aよりも後方に設けられている。一対の軸部5213は、円柱状又は円筒状であり、一対の側壁5212の外面から、互いに反対方向に突出している。
【0042】
図7に示すように、本体部521の一部は、ロック部材4の一対の壁部421間に配置される。一対の軸部5213はそれぞれ、ロック部材4の貫通穴421a内に挿入される。これにより、レバーブラケット52は、ロック部材4の保持部42に回転可能に保持される。連結ピン53は、連結部513の貫通穴513b、及び、第一切欠き5212aに挿入され、連結ピン53の軸方向端部は、レバーブラケット52にカシメられる。こうして、レバー51とレバーブラケット52とが連結される。
【0043】
図6(b)及び図7に示すように、押圧部522は、上壁5211の後端に取り付けられている。押圧部522は、下方に突出しており、ロック部材4のロック片41上に、好ましくは接触して配置されている。押圧部522はレバーブラケット52の回転に伴い、ロック部材4のロック片41を下方に押圧する。
【0044】
<2 ロック部材及びレバー機構の動作>
主に図8を参照して、ロック部材4及びレバー機構5の動作について説明する。図8(a)はレバー51の非操作時のシートスライド装置1の断面図であり、図8(b)はレバー51の操作時(すなわち、レバー51を上方に持ち上げたとき)のシートスライド装置1の断面図である。
【0045】
図8(a)に示す状態から、搭乗者がレバー51の操作部511を持ち上げると、レバー51はその後端(すなわち、連結部513の後端と支持部43aとの接触点P1)を中心として回転する。レバー51とレバーブラケット52とは、連結ピン53によって連結されているため、レバー51を持ち上げると、レバーブラケット52は、軸部5213を中心として回転する。すなわち、レバーブラケット52は、軸部5213よりも前方部分が上方に移動し、軸部5213よりも後方部分が下方に移動するように回転する。
【0046】
レバーブラケット52の回転に伴い、押圧部522が、ロック部材4のロック片41を下方に押圧する。これにより、主に接続部43が、弾性変形により下方に撓み、その結果、ロック片41が下方に移動する。そして、ロック歯41bが、ロアレール2の切欠き24a内、及びアッパーレール3の切欠き32a内から離脱する。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とのロックが解除され、ロアレール2とアッパーレール3とは互いに摺動可能になる。
【0047】
ここで、レバー51の操作部511に操作力T1を印加したとき、ロック片41に作用する力を求めると以下のようになる。なお、図8(a)では、各部材に作用する力を矢印で表記しているが、矢印の向き及び長さは、その力の向き及び大きさを正確に表しているわけではない。
【0048】
レバー51の操作部511から接触点P1までの距離をY1、連結ピン53の中心から接触点P1までの距離をY2、連結ピン53の中心から軸部5213の中心までの距離をY3、軸部5213の中心から押圧部522(押圧部522とロック片41との接触点P2)までの距離をY4とする。
【0049】
レバー51の操作部511を力点、接触点P1を支点、連結ピン53を作用点とするテコの原理により、作用点(連結ピン53)に働く力T2は、T2=(Y1/Y2)T1となる。つまり、レバーブラケット52の前方部分には、レバー51の操作部511に加えられた力T1よりも大きな力T2が働く。(Y1/Y2)は、好ましくは、5~6である。
【0050】
次に、連結ピン53を力点、軸部5213を支点、接触点P2を作用点とするテコの原理により、ロック片41に働く力T3は、(Y3/Y4)T2=(Y1/Y2)(Y3/Y4)T1となる。(Y3/Y4)は、好ましくは、0.5以上であり、例えば0.5~0.6である。
【0051】
言い換えると、ロック部材4によるロック力をFとしたとき、ロック部材4をロック解除するのに必要な操作力は、(Y4/Y3)(Y2/Y1)Fとなる。
【0052】
レバー51の操作部511に印加された力を除荷すると、レバー51自体の自重及び付勢部材54の復元力によりレバー51が下がる。これにより、レバーブラケット52の押圧部522は上昇し、ロック部材4のロック片41を押圧しなくなる。その結果、ロック部材4はその弾性力により元の位置(すなわち、図8(a)の状態)に戻り、ロック歯41bは、切欠き24a及び切欠き32a内に挿入され、ロック歯24b及びロック歯32bは、貫通穴41a内に挿入される。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とが摺動不能となるようにロックされる。
【0053】
<3 特徴>
本発明では、レバー51とレバーブラケット52とを、連結ピン53という簡単な構造によって連結させている。また、本発明では、ロック部材4に、レバーブラケット52を回転可能に保持するための保持部42を設けたため、レバーブラケット52を保持するための部材を別に設ける必要がない。したがって、本発明のシートスライド装置1では、部品数を減らすことができると共に、構造を簡略化することができる。
【0054】
また、本発明のシートスライド装置1では、従来と異なり、レバーブラケット52を保持するために、アッパーレール3の側壁32に貫通穴を設ける必要がないため、従来よりもアッパーレール3の強度を向上させることができる。
【0055】
本発明のシートスライド装置1では、操作部511に印加された力よりも大きな力をレバーブラケット52の前方部分に働かせることができる。その結果、レバー51の操作部511に印加された力よりも大きな力を、ロック部材4のロック片41に加えることができるようになる。よって、小さな力でもロック解除することができるようになる。
【0056】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 シートスライド装置
2 ロアレール
24a 切欠き(第一係合部)
3 アッパーレール
32a 切欠き(第二係合部)
4 ロック部材
41 ロック片
41b ロック歯
42 保持部
421a 貫通穴
43 接続部
43a 支持部
5 レバー機構
51 レバー
52 レバーブラケット
5213 軸部
522 押圧部
53 連結ピン
S シート
P1 接触点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10