(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
A01B 63/11 20060101AFI20240214BHJP
B62D 49/08 20060101ALI20240214BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20240214BHJP
B62D 55/06 20060101ALI20240214BHJP
A01B 63/108 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A01B63/11
B62D49/08 A
B62D49/00 K
B62D55/06
A01B63/108
(21)【出願番号】P 2020070573
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓実
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-144530(JP,A)
【文献】実開昭58-116483(JP,U)
【文献】特開2000-270619(JP,A)
【文献】特開2007-118908(JP,A)
【文献】特開2002-087335(JP,A)
【文献】特開2000-204583(JP,A)
【文献】特開2007-112233(JP,A)
【文献】特開2003-276653(JP,A)
【文献】特開2007-118909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/11
B62D 49/08
B62D 49/00
B62D 55/06
A01B 63/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前作業機を機体の前部に取付可能なトラクタであって、
前記機体の機体フレームと、
前記機体フレームに設けられ、前記前作業機を前記機体フレームに取り付けることができるように構成された前作業機用取付部材と、
重量調節用の
左右のウェイトと、
前記前作業機が前記機体フレームに前記前作業機用取付部材を介して取り付けられた場合に、平面視で前記機体フレームと前記前作業機用取付部材と前記前作業機とにより形成される空間に前記ウェイトが位置するように、前記ウェイトを前記前作業機用取付部材に取付可能であるウェイト用取付部材と、
を備え
、
左の前記ウェイトは、左右方向で前記機体フレームと前記前作業機との間に位置する前記空間に配置され、
右の前記ウェイトは、左右方向で前記機体フレームと前記前作業機との間に位置する前記空間に配置されることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトラクタであって、
前記前作業機用取付部材は、前記機体フレームから機体側方へ突出するように設けられ、
前記ウェイト用取付部材は、前作業機用取付部材の突出方向における中央部で、前作業機用取付部材の前部に取り付けられていることを特徴とするトラクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトラクタであって、
前記前作業機は、フロントドーザであることを特徴とするトラクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のトラクタであって、
前作業機用取付部材は、前記機体フレームから機体側方へ突出するように設けられ、
前記前作業機に備えられた油圧シリンダが、前作業機用取付部材の突出方向において、前作業機用取付部材の先端部に取り付けられていることを特徴とするトラクタ。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のトラクタであって、
クローラ式走行装置を備えるクローラトラクタであることを特徴とするトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウェイトが機体の前部に取り付けられるトラクタが知られている。特許文献1及び2は、それぞれ、この種のトラクタを開示する。
【0003】
特許文献1のトラクタにおいては、機体の前部にバンパーが設置されている。このバンパーに、重量調節用のウェイトが着脱可能に取り付けられる。
【0004】
特許文献2のトラクタにおいては、上部車体の下部に、フロントフレームが配置されている。このフロントフレームは、車体の前方から後方に向かって配置されるフレームである。フロントフレームには、ウェイトブラケット一体型アンダーガードが取り付けられている。そして、このウェイトブラケット一体型アンダーガードに、ウェイトが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-87335号公報
【文献】特開2007-118908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の構成においては、ウェイトの取付けが行われた場合、ウェイトは機体(車体)の前方に配置される。この場合、ウェイト等を取り外さなければ、ウェイト等が邪魔になるので、機体(車体)の前部にフロントドーザ等の前作業機を取り付けることができない。言い換えれば、ウェイト等を取り付けたまま、前作業機を取り付けることができない。よって、前作業機の取付作業が煩雑になっていた。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ウェイトが取り付けられている場合に、当該ウェイトを取り外さずに前作業機を機体の前部に取り付けることができるトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成のトラクタが提供される。即ち、このトラクタは、前作業機を機体の前部に取付可能である。前記トラクタは、前記機体の機体フレームと、前作業機用取付部材と、重量調節用の左右のウェイトと、ウェイト用取付部材と、を備える。前記前作業機用取付部材は、前記機体フレームに設けられ、前記前作業機を前記機体フレームに取り付けることができるように構成される。前記ウェイト用取付部材は、前記前作業機が前記機体フレームに前記作業機用取付部材を介して取り付けられた場合に、平面視で前記機体フレームと前記作業機用取付部材と前記前作業機とにより形成される空間に前記ウェイトが位置するように、前記ウェイトを前記作業機用取付部材に取り付けることができるように構成される。左の前記ウェイトは、左右方向で、前記機体フレームと前記前作業機との間に配置される。右の前記ウェイトは、左右方向で、前記機体フレームと前記前作業機との間に配置される。
【0010】
これにより、ウェイトが作業機用取付部材に、即ち機体フレーム(機体)に取り付けられている場合に、当該ウェイト及びウェイト用取付部材を機体フレームから取り外さなくても、機体の前部に対する前作業機の着脱作業を行うことができる。即ち、前作業機を機体の前部に取り付ける際にウェイト等が邪魔にならないので、ウェイトの取外し作業を不要にすることができる。従って、前作業機の着脱作業の簡易化を図ることができる。
【0011】
前記のトラクタは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記前作業機用取付部材は、前記機体フレームから機体側方へ突出するように設けられる。前記ウェイト用取付部材は、前作業機用取付部材の突出方向における中央部で、前作業機用取付部材の前部に取り付けられる。
【0012】
これにより、ウェイトの着脱作業を容易に行うことができる。
【0013】
前記のトラクタは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前作業機用取付部材は、前記機体フレームから機体側方へ突出するように設けられる。前記前作業機に備えられた油圧シリンダが、前作業機用取付部材の突出方向において、前作業機用取付部材の先端部に取り付けられる。
【0014】
これにより、前作業機の油圧シリンダを機体外側に配置することができる。従って、油圧シリンダのメンテナンス作業を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示す側面図。
【
図4】前作業機用ブラケットが機体フレームに取り付けられ、かつ、ウェイト用ブラケットが前作業機用ブラケットに取り付けられた様子を示す図。
【
図5】前作業機用ブラケット及びウェイト用ブラケットの構成を示す斜視図。
【
図6】(a)ウェイト用ブラケットの構成を示す斜視図。(b)ウェイトの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の側面図である。なお、以下の説明では、トラクタ1が前進する方向に対して左側を「左」と呼び、右側を「右」と呼ぶ。
【0017】
図1に示すように、トラクタ1は、圃場領域等を走行することができる走行機体(機体)3を備える。本実施形態では、トラクタ1は、走行機体3に左右のクローラ式走行装置5が備えられたクローラトラクタである。なお、トラクタ1の種類は特に限定されない。トラクタ1は、例えば、ホイール型のトラクタであっても良い。
【0018】
トラクタ1は、走行機体3の後部に、ロータリ耕耘機等の後作業機を着脱可能に取り付けることができる。また、トラクタ1は、走行機体3の前部に、フロントドーザ等の前作業機9を着脱可能に取り付けることができる。後作業機及び前作業機9のそれぞれについて、どのような作業機を用いるかは任意に選択可能である。
【0019】
走行機体3は、左右のクローラ式走行装置5のほか、機体フレーム11と、エンジン13と、第1ミッション15と、第2ミッション17と、ボンネット19と、キャビン21と、を備える。トラクタ1にキャビン21を備えない構成とすることもできる。
【0020】
機体フレーム11は、左右のクローラ式走行装置5に支持されている。機体フレーム11は、前後方向に延びるように設けられている。
【0021】
機体フレーム11は、左右の延長体23と、連結体25と、を有する。左右の延長体23は、それぞれ、前後方向に延びるように設けられ、左右方向に所定間隔をあけて互いに対向するように配置されている。連結体25は、左右の延長体23の前端部間に設けられ、左右の延長体23を連結している。
【0022】
エンジン13は、走行機体3の前部に配置されている。エンジン13は、その下部が左右の延長体23間に配置された状態で、機体フレーム11の前部に支持されている。エンジン13は、所定の動力伝達経路により、左右のクローラ式走行装置5に動力を伝達することができる。
【0023】
エンジン13は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源として、エンジン13に加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
【0024】
第1ミッション15は、走行機体3の後部に配置されている。第1ミッション15は、その下部が左右の延長体23間に配置された状態で、機体フレーム11の後部に支持されている。第1ミッション15は、走行機体3の走行変速等を行うことができるように構成されている。
【0025】
第2ミッション17は、走行機体3の前部に配置されている。第2ミッション17は、機体フレーム11の前部に支持されている。第2ミッション17は、左右のクローラ式走行装置5を用いて走行機体3に旋回を行わせることができるように構成されている。
【0026】
ボンネット19は、走行機体3の前部に配置されている。ボンネット19は、左右のクローラ式走行装置5の間において機体フレーム11の前部上に設けられ、エンジン13を覆っている。
【0027】
キャビン21は、走行機体3の後部に配置されている。キャビン21は、ボンネット19の後方において機体フレーム11の後部上に設けられている。キャビン21の左右両側には、それぞれ、オペレータが当該キャビン21内に出入りするための乗降口31が設けられている。
【0028】
キャビン21の内部には、オペレータが座ることが可能な座席、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル、及び、操向操作以外の各種の操作を行うための様々な操作装置等が設けられている。
【0029】
キャビン21の左右外側には、オペレータが当該キャビン21に乗降する際に用いられる上段ステップ33が設けられている。上段ステップ33は、各乗降口31付近に配置されるとともに、上下方向において各乗降口31と下段ステップ35との間に配置されている。
【0030】
左右のクローラ式走行装置5は、左右方向において機体フレーム11を挟むように配置されている。各クローラ式走行装置5は、機体フレーム11に沿って前後方向に延びるように設けられている。各クローラ式走行装置5の前端部は、機体フレーム11の前端部よりも後方に位置している。
【0031】
左右の各クローラ式走行装置5は、トラックフレーム41と、駆動スプロケット43と、テンションローラ45と、複数の遊転輪47と、ガイドローラ49と、クローラベルト51と、を備える。
【0032】
トラックフレーム41は、前後方向に延びるように設けられている。左右一方のクローラ式走行装置5のトラックフレーム41は、左右他方のクローラ式走行装置5のトラックフレーム41と、
図3のロアフレーム53を介して連結されている。ロアフレーム53上に、機体フレーム11等が設けられている。
【0033】
トラックフレーム41の前後途中部には、前述の下段ステップ35が取り付けられている。下段ステップ35は、左右方向においてトラックフレーム41の外側に配置される。上段ステップ33及び下段ステップ35は、オペレータがキャビン21に乗降する際に用いられる。
【0034】
駆動スプロケット43は、第2ミッション17のミッションケースの側部から突出するように設けられたアクスルケースに設けられた駆動軸に取り付けられている。このアクスルケースは、トラックフレーム41の前端部に固定されている。
【0035】
テンションローラ45は、テンションフレーム61に回転可能に支持されている。テンションフレーム61は、トラックフレーム41の後端部に設けられている。テンションフレーム61は、トラックフレーム41に対して、前後方向に伸縮することができる。
【0036】
複数の遊転輪47は、トラックフレーム41の前後途中部に設けられている。複数の遊転輪47は、トラックフレーム41の下方に配置されている。複数の遊転輪47は、前後方向において駆動スプロケット43とテンションローラ45との間で並べられている。
【0037】
複数の遊転輪47は、複数のイコライザフレーム63を介してトラックフレーム41に取り付けられている。複数のイコライザフレーム63は、それぞれ、トラックフレーム41の下部に前後揺動可能に設けられている。複数の遊転輪47は、それぞれ、適宜のイコライザフレーム63に回転可能に支持されている。
【0038】
ガイドローラ49は、トラックフレーム41の前後途中部に設けられている。ガイドローラ49は、トラックフレーム41の上方に配置されている。ガイドローラ49は、前後方向において駆動スプロケット43とテンションローラ45との間でトラックフレーム41の前後途中部に回転可能に支持されている。
【0039】
クローラベルト51は、駆動スプロケット43、テンションローラ45、複数の遊転輪47、及び、ガイドローラ49に巻かれている。
【0040】
このような構成において、駆動スプロケット43にエンジン13からの動力が伝達されると、クローラベルト51が回転する。即ち、各クローラ式走行装置5が駆動する。これにより、各クローラ式走行装置5を用いて、走行機体3(トラクタ1)を走行させることができる。
【0041】
次に、
図2から
図6を参照して、走行機体3の前部の構成について説明する。ここでは、走行機体3の前部に前作業機9としてのフロントドーザが取り付けられた例で説明する。なお、前作業機9は、フロントドーザに限るものではない。前作業機9の種類は特に限定されない。
【0042】
図2に示すように、フロントドーザ9は、左右の前作業機用ブラケット(前作業機用取付部材)71を介して、走行機体3の前部に取り付けられている。なお、
図2には、左右一方の前作業機用ブラケット71だけが現れている。左右の前作業機用ブラケット71は、それぞれ、機体フレーム11における左右の延長体23の前部に取り付けられている。
【0043】
以下では、機体フレーム11の前部において左側の構成と右側の構成とは実質的に同じであるので、主として左側の構成について説明する。
【0044】
前作業機用ブラケット71は、その前部がクローラ式走行装置5よりも前方に位置するように配置されている。前作業機用ブラケット71は、延長体23にボルト等を用いて固定されている。本実施形態では、
図3に示すように、前作業機用ブラケット71は、ロアフレーム53の前部にも固定されている。
【0045】
図2に示すように、前作業機用ブラケット71は、延長体23から左右外側(機体側方)へ突出するように設けられている。前作業機用ブラケット71は、所定の突出幅(左右幅)を有する。前作業機用ブラケット71は、クローラ式走行装置5の外側端面よりも左右内側に配置されている。
【0046】
フロントドーザ(前作業機)9は、ブレード73を備える。そして、ブレード73が、フロントドーザ9が走行機体3の前部に取り付けられた状態で、昇降、前後傾斜、及び上下傾斜可能に構成されている。
【0047】
具体的には、フロントドーザ9は、ブレード73のほか、左右の連結部材75と、支持アーム77と、ブレード取付体79と、左右の昇降シリンダ81と、左右のアングルシリンダ83と、傾斜シリンダ85と、を備える。
【0048】
連結部材75は、それぞれ、前作業機用ブラケット71の先端(左右外側の突出端部)にボルト等を用いて固定されている。連結部材75は、上下方向に延びる前部を有する。連結部材75は、クローラ式走行装置5(クローラベルト51)の左右外側の端面よりも左右内側に配置されている。
【0049】
支持アーム77は、
図3に示すように、平面視U字状に構成されている。支持アーム77は、開放側が後方の走行機体3側を向き、閉鎖側が走行機体3の前方に位置するように配置されている。支持アーム77の開放側において、左右の側部は機体フレーム11の前端部を挟むように配置されている。
【0050】
支持アーム77の開放側(後側)において、当該支持アーム77の側部の後端部は、連結部材75の前部下側に回転可能に支持されている。支持アーム77は、連結部材75による支持部分を支点として、上下方向に回転することができる。
【0051】
ブレード取付体79は、支持アーム77の閉鎖側(前側)に回転可能に支持されている。ブレード取付体79は、支持アーム77による支持部分を支点として、左右方向に回転することができる。ブレード取付体79の左右中央部は、支持アーム77の閉鎖側(前側)の左右中央部に略一致している。
【0052】
ブレード73は、ブレード取付体79を介して、支持アーム77の閉鎖側(前側)に取り付けられている。ブレード73は、左右方向に延びるように設けられている。そして、ブレード73は、その左右中央部でブレード取付体79の前側に傾倒可能に支持されている。
【0053】
昇降シリンダ81は、連結部材75の前部上側と、支持アーム77の閉鎖側(前側)に備えられた前端部と、の間に設けられている。昇降シリンダ81は、油圧シリンダである。左右の昇降シリンダ81を伸縮させることで、連結部材75による支持部分を支点として、支持アーム77を昇降させることができる。
【0054】
アングルシリンダ83は、支持アーム77の左側と、ブレード取付体79の左側と、の間に設けられている。左右のアングルシリンダ83を伸縮させることで、ブレード取付体79を左右方向に回転させることができる。そして、ブレード73をブレード取付体79と一体的に回転させることができる。
【0055】
傾斜シリンダ85は、ブレード73の左右中央部付近と、ブレード取付体79の左右一側と、の間に設けられている。傾斜シリンダ85を伸縮させることで、ブレード73を傾倒させることができる。
【0056】
図4及び
図5に示すように、前作業機用ブラケット71に、ウェイト用ブラケット(ウェイト用取付部材)89が設けられている。ウェイト用ブラケット89は、重量調節用のウェイト87を前作業機用ブラケット71、ひいては機体フレーム11に取り付けるためのものである。
【0057】
本実施形態において、ウェイト用ブラケット89は、前作業機用ブラケット71の突出方向(左方向)における中央部(左右中央部)で、前作業機用ブラケット71の前部に取り付けられている。前作業機用ブラケット71の前部は、前方に臨む略平坦な前端面93を有する。
【0058】
前作業機用ブラケット71の前端面93は、
図3に示すように、平面視で機体フレーム11の延長体23に対して当該延長体側(左右内側)が前方に位置し、かつ先端側(左右外側)が後方に位置するように傾いている。この前端面の傾き角度は任意に設定可能である。
【0059】
そして、前作業機用ブラケット71の前端面93に、ウェイト用ブラケット89が、ボルト等を用いて着脱可能に取り付けられている。ウェイト用ブラケット89は、前作業機用ブラケット71から前方へ突出した状態で、前作業機用ブラケット71に取り付けられている。
【0060】
ウェイト用ブラケット89は、機体フレーム11の前端部よりも後方に位置する。ウェイト用ブラケット89は、平面視で、機体フレーム11の延長体23と、フロントドーザ9の支持アーム77と、前作業機用ブラケット71と、の間に形成された空間91に位置している。
【0061】
図6(a)に示すように、ウェイト用ブラケット89は、取付部95と、保持部97と、を有する。
【0062】
取付部95は、板状に形成されている。取付部95は、前作業機用ブラケット71の前端面93に接触可能に構成されている。取付部95は、前作業機用ブラケット71の前端面93に接触した状態で、ボルト等により着脱可能に固定されている。
【0063】
保持部97は、平面視U字状に形成されている。保持部97は、開放側が後方を向くように取付部95の前方に配置され、この開放側の一部が閉じられるように取付部95に連結されている。保持部97と取付部95とにより、挿入空間99が形成される。この挿入空間99に、ウェイト87の一部を挿入することができる。
【0064】
図6(b)に示すように、ウェイト87は、本体部101と、挿入部103と、を有する。
【0065】
本体部101は、所定の重量を有する。挿入部103は、本体部101から突出するように設けられている。挿入部103は、挿入空間99に挿入可能に形成されている。このような構成により、ウェイト87は、ウェイト用ブラケット89に着脱可能に取り付けることができる。
【0066】
具体的には、挿入部103がウェイト用ブラケット89側の挿入空間99に上方から挿入されることで、本体部101を保持部97に引っ掛けられた状態として、ウェイト87をウェイト用ブラケット89に保持することができる。
【0067】
この場合、ウェイト及びウェイト用ブラケット89は、空間91に位置する。よって、ウェイト87及びウェイト用ブラケット89は、フロントドーザ9の位置にかかわらず、これと干渉することがない。即ち、ウェイト87及びウェイト用ブラケット89は、フロントドーザ9の昇降等の動作を妨げない。
【0068】
よって、ウェイト87及びウェイト用ブラケット89を走行機体3(機体フレーム11)に取り付けたままの状態で、フロントドーザ9を走行機体3に取り付けることができる。また、ウェイト87及びウェイト用ブラケット89が走行機体3に取り付けられた状態で、フロントドーザ9を走行機体3から取り外すことができる。そのため、フロントドーザ9の着脱作業を行う度に、ウェイト87及びウェイト用ブラケット89を走行機体3から取り外さなくても良い。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1は、前作業機(フロントドーザ)9を走行機体3の前部に取付可能である。トラクタ1は、走行機体3の機体フレーム11と、前作業機用ブラケット71と、重量調節用のウェイト87と、ウェイト用ブラケット89と、を備える。前作業機用ブラケット71は、機体フレーム11に設けられ、前作業機9を機体フレーム11に取り付けることができるように構成される。ウェイト用ブラケット89は、前作業機9が機体フレーム11に前作業機用ブラケット71を介して取り付けられた場合に、平面視で機体フレーム11と前作業機用ブラケット71と前作業機9とにより形成される空間91にウェイト87が位置するように、ウェイト87を前作業機用ブラケット71に取付可能である。
【0070】
これにより、ウェイト87が前作業機用ブラケット71に、即ち走行機体3(機体フレーム11)に取り付けられている場合に、当該ウェイト87及びウェイト用ブラケット89を走行機体3の前部から取り外さなくても、走行機体3の前部に対する前作業機9の着脱作業を行うことができる。即ち、前作業機9を走行機体3の前部に取り付ける際に、機体フレーム11に取り付けられたウェイト87が邪魔にならないので、ウェイト87等の取外し作業を不要にすることができる。従って、前作業機9の着脱作業の簡易化を図ることができる。
【0071】
なお、この場合における走行機体3の前部への前作業機9の取付けとは、単に前作業機9が走行機体3の前部に取り付けられることを意味するだけではなく、取付後の前作業機9が正常に動作することを意味する。
【0072】
また、本実施形態のトラクタ1において、前作業機用ブラケット71は、機体フレーム11(延長体23)から機体側方(左右外側)へ突出するように設けられる。ウェイト用ブラケット89は、前作業機用ブラケット71の突出方向における中央部で、前作業機用ブラケット71の前部に取り付けられる。
【0073】
これにより、ウェイト87の着脱作業を容易に行うことができる。
【0074】
また、本実施形態のトラクタ1において、前作業機用ブラケット71は、機体フレーム11から機体側方へ突出するように設けられる。フロントドーザ(前作業機)9に備えられた昇降シリンダ81が、前作業機用ブラケット71の突出方向において、前作業機用ブラケット71の先端部に取り付けられる。
【0075】
これにより、昇降シリンダ81を機体外側に配置することができる。従って、昇降シリンダ81のメンテナンス作業を行い易くすることができる。
【0076】
次に、
図1及び
図7を参照して、キャビン21に対して設けられた上段ステップ33について詳細に説明する。
【0077】
本実施形態では、キャビン21の左右の外側部分に、それぞれ、乗降口31が設置されている。そして、左右の乗降口31のそれぞれに対応するように、左右の上段ステップ33が設けられている。左右の上段ステップ33に関する構成は実質的に同じであるので、以下では左側の構成について説明する。
【0078】
図1に示すように、上段ステップ33は、キャビン21の乗降口31よりも下方に配置されるとともに、クローラ式走行装置5よりも上方(クローラベルト51の上方)に配置されている。また、
図7に示すように、上段ステップ33は、キャビン21の床部分に含まれる乗降口31の底部111の左右外側に配置されている。
【0079】
上段ステップ33は、踏板部113を備える。踏板部113は、オペレータがキャビン21に乗降口31を介して乗降する際に踏むことができるように構成されている。踏板部113は、平面視でキャビン21の乗降口31の底部と連続的に設けられている。
【0080】
上段ステップ33の踏板部113は、乗降口31の底部111と側面視で略平行に配置されている。踏板部113は、本実施形態では、乗降口31の底部111と同様に、オペレータが踏む部分が略水平となるように形成されている。これにより、オペレータはキャビン21に対して直感的に乗降することができる。
【0081】
オペレータは、キャビン21への乗降に際して、アシストバー117を掴んで自身の体を支えることができる。従って、オペレータは、アシストバー117を掴みながら、上段ステップ33(踏板部113)又は下段ステップ35を踏み、無理なく移動することができる。
【0082】
また、クローラ式走行装置5は、前後方向に沿って直線状に延びる外縁部119を含む。上段ステップ33の踏板部113は、平面視矩形状に形成されている。そして、踏板部113の外縁部121が、
図7に示すように、クローラ式走行装置5の外縁部119に対して平面視で傾いた状態で配置されている。
【0083】
上段ステップの踏板部113は、平面視で、前側部分が乗降口31に近く、かつ、後側部分が前側部分よりも乗降口31から離れるように傾いている。なお、上段ステップ33は、踏板部113の外縁部121が傾いていれば良い。そのため、例えば、上段ステップ33は、平面視台形状に形成することもできる。
【0084】
踏板部113の外縁部121が平面視で乗降口31の底部111の外縁部119に対してなす傾き角度は、任意に設定可能である。この傾き角度は、踏板部113の外縁部121の最も外側部分がクローラ式走行装置5の外縁部近傍でかつこれよりも左右内側に位置するように設定することが好ましい。
【0085】
これにより、クローラ式走行装置5の駆動時(走行機体3の走行時)において、クローラベルト51により当該クローラ式走行装置5の上側に運ばれた土砂を、上段ステップ33により左右外側へ落とすことができる。従って、土砂により上段ステップ33が変形することを抑制することができる。
【0086】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0087】
ウェイト用ブラケット89は、前作業機用ブラケット71と一体的に構成されても良い。
【0088】
上記の実施形態においては、ウェイト87は、複数の分割体から構成されている。これにより、当該ウェイト87による重量調節の容易化を図ることができる。しかし、ウェイト87は、一体物から構成されても良い。
【0089】
ウェイト87は、前作業機9と干渉しない構成であれば、前作業機9の着脱に際し、後作業機の取付状態等に応じて任意にウェイト用ブラケット89とともに走行機体3に取り付けたままとすることができる。
【0090】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0091】
1 トラクタ(クローラトラクタ)
3 走行機体(機体)
5 クローラ式走行装置
9 フロントドーザ(前作業機)
11 機体フレーム
71 前作業機用ブラケット(前作業機用取付部材)
87 ウェイト
89 ウェイト用ブラケット(ウェイト用取付部材)