(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】タッチ検出装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/95 20060101AFI20240214BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20240214BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20240214BHJP
H03K 17/955 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
H03K17/95 G
G06F3/02 F
H01H36/00 J
H03K17/955 G
(21)【出願番号】P 2020073980
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 羊平
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-073160(JP,A)
【文献】特開2018-116631(JP,A)
【文献】特開2017-111507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0157076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74-17/98
G06F 3/02
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者がセンサ電極に近接されることでセンサ電極における静電容量が変化するセンサ部と、
前記センサ電極における静電容量値を検出する検出部と、
予め設定されている基準値、及び前記基準値に対して設定されるしきい値を用い、前記検出部により検出された前記静電容量値が前記しきい値に達したか否かから、操作者が前記センサ部に近接したか否かを判定する判定部と、
前記検出部により検出される静電容量値が前記しきい値に達した状態で所定の経過時間が経過した後の静電容量値が予め設定されている規定値以上となっている場合、該静電容量値を初期値に設定し、前記検出部により検出される静電容量値の前記初期値に対する変化が予め設定されている変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新する更新部と、
を含
み、
前記更新部は、前記経過時間が経過した後の静電容量値が前記規定値未満の場合に、該静電容量値が前記規定値以上の場合に比して小さくなるように前記変化静電容量値を設定し、前記検出部により検出される静電容量値の前記初期値に対する変化が前記変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新することを含むタッチ検出装置。
【請求項2】
操作者がセンサ電極に近接されることでセンサ電極における静電容量が変化するセンサ部と、
前記センサ電極における静電容量値を検出する検出部と、
予め設定されている基準値、及び前記基準値に対して設定されるしきい値を用い、前記検出部により検出された前記静電容量値が前記しきい値に達したか否かから、操作者が前記センサ部に近接したか否かを判定する判定部と、
前記検出部により検出される静電容量値が前記しきい値に達した状態で所定の経過時間が経過した後の静電容量値が予め設定されている規定値以上となっている場合、該静電容量値を初期値に設定し、前記検出部により検出される静電容量値の前記初期値に対する変化が予め設定されている変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新する更新部と、
を含み、
前記更新部は、前記経過時間が経過した
時点から前記検出部により検出される静電容量値が
減少開始するまでの間の静電容量値の最大値を前記初期値とするタッチ検出装置。
【請求項3】
操作者がセンサ電極に近接されることでセンサ電極における静電容量が変化するセンサ部と、
前記センサ電極における静電容量値を検出する検出部と、
予め設定されている基準値、及び前記基準値に対して設定されるしきい値を用い、前記検出部により検出された前記静電容量値が前記しきい値に達したか否かから、操作者が前記センサ部に近接したか否かを判定する判定部と、
前記検出部により検出される静電容量値が前記しきい値に達した状態で所定の経過時間が経過した後の静電容量値が予め設定されている規定値以上となっている場合、該静電容量値を初期値に設定し、前記検出部により検出される静電容量値の前記初期値に対する変化が予め設定されている変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新する更新部と、
を含み、
前記変化静電容量値
は、更新前の基準値と前記しきい値との差よりも大きい静電容量値とするタッチ検出装置。
【請求項4】
前記経過時間が経過した後の前記静電容量値が前記規定値以上の場合の前記変化静電容量値
としての第1静電容量値、及び前記経過時間が経過した後の前記静電容量値が前記規定値未満の場合の前記変化静電容量値としての第2静電容量値が予め設定されている請求項
1に記載のタッチ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のタッチ式入力装置は、複数の駆動電極と複数のセンサ電極とが格子状に重ねられてセンサパターンが形成されたタッチパネルにおいて、駆動電極とセンサ電極との交点部分ごとの静電容量の変化をコントローラが検出し、タッチ操作を検出する。このタッチ式入力装置では、交点部分の静電容量の各々が一定範囲内にある状態が一定時間継続することで、基準値が更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タッチセンサにおいて、静電容量の一定範囲内にある状態が一定時間継続することで基準値を更新するようにした場合、基準値の更新サイクルが長くなるのみならず、基準値を更新するタイミングが制限される。ここから、タッチセンサに指を長く触れる長押し操作してから所定の時間経過後の静電容量を用いて基準値を更新する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、この方法では、長押し操作後の経過時間を短縮することで、基準値の更新のための時間を短縮することができるが、静電容量が十分に低下していない状態で基準値が設定されると、誤検出の原因となってしまう。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、検出精度の低下を抑制できるタッチ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1の態様のタッチ検出装置は、操作者がセンサ電極に近接されることでセンサ電極における静電容量が変化するセンサ部と、前記センサ電極における静電容量値を検出する検出部と、予め設定されている基準値、及び前記基準値に対して設定されるしきい値を用い、前記検出部により検出された前記静電容量値が前記しきい値に達したか否かから、操作者が前記センサ部に近接したか否かを判定する判定部と、前記検出部により検出される静電容量値が前記しきい値に達した状態で所定の経過時間が経過した後の静電容量値が予め設定されている規定値以上となっている場合、該静電容量値を初期値に設定し、前記検出部により検出される静電容量値の前記初期値に対する変化が予め設定されている変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新する更新部と、を含む。
【0008】
第2の態様のタッチ検出装置は、第1の態様において、前記更新部は、前記経過時間が経過した後の静電容量値が前記規定値未満の場合に、該静電容量値が前記規定値以上の場合に比して小さくなるように前記変化静電容量値を設定し、前記検出部により検出される静電容量値の前記初期値に対する変化が前記変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新することを含む。
【0009】
第3の態様のタッチ検出装置は、第2の態様において、前記経過時間が経過した後の前記静電容量値が前記規定値以上の場合の前記変化静電容量値としての第1静電容量値、及び前記経過時間が経過した後の前記静電容量値が前記規定値未満の場合の前記変化静電容量値としての第2静電容量値が予め設定されている。
【0010】
第4の態様のタッチ検出装置は、第1から第3の何れか1の態様において、前記更新部は、前記経過時間が経過した時点から前記検出部により検出される静電容量値が減少開始するまでの間の静電容量値の最大値を前記初期値とする。
【0011】
第5の態様のタッチ検出装置は、第1から第4の何れか1の態様において、前記変化静電容量値は、更新前の基準値と前記しきい値との差よりも大きい静電容量値とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様のタッチ検出装置では、操作者が近接されることで静電容量が変化するセンサ電極がセンサ部に設けられ、検出部は、センサ電極における静電容量値を検出する。判定部は、予め設定されている基準値、及び基準値に対して設定されるしきい値を用い、検出部により検出された静電容量値がしきい値に達したか否かから、操作者がセンサ部に近接したか否かを判定する。このため、基準値が更新されることで、しきい値が変更される。
【0013】
更新部は、検出部により検出される静電容量値がしきい値に達した状態で所定の経過時間が経過することで基準値の更新が可能になる。また、更新部は、所定の経過時間が経過した際の静電容量値が予め設定されている規定値以上となっている場合、該静電容量値を初期値に設定し、検出部により検出される静電容量値の初期値に対する変化が予め設定されている変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新する。
【0014】
これにより、規定値に対して変化静電容量値分を確保して基準値を設定できるので、基準値が高くなりすぎることに起因する誤判定を抑制できて、検出精度の低下を抑制できる。
【0015】
第2の態様のタッチ検出装置では、経過時間が経過した後の静電容量値が規定値未満の場合に、該静電容量値が規定値以上の場合に比して小さくなるように変化静電容量値を設定する。また、更新部は、記検出部により検出される静電容量値の初期値に対する変化が変化静電容量値に達した後の静電容量値を新たな基準値として更新する。
【0016】
このため、基準値が低くなりすぎるのを抑制できて、検出精度の低下を効果的に抑制できる。
【0017】
第3の態様のタッチ検出装置では、経過時間が経過した後の静電容量値が規定値以上の場合に変化静電容量値として適用される第1静電容量値、及び経過時間が経過した後の静電容量値が規定値未満の場合に変化静電容量値として適用される第2静電容量値予め設定されている。このため、検出精度の低下を抑制するための基準値を適正に更新できる。
【0018】
第4の態様のタッチ検出装置では、経過時間が経過した時点から検出部により検出される静電容量値が減少開始するまでの間の静電容量値の最大値を初期値とする。これにより、操作者のセンサ部への触れ方が変化しても、適正な基準値に更新できる。
【0019】
第5の態様のタッチ検出装置では、変化静電容量値を、更新前の基準値としきい値との差よりも大きい静電容量値としている。これにより、センサ部に操作者が近接した際に静電容量値がしきい値を越えるように基準値を設定できて、操作者がセンサ部に近接した際に誤判定が生じるのを抑制できて、検出精度の低下を一層効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るタッチ検出装置を示す概略構成図である。
【
図2】タッチ検出装置が配置された車両の主要部を示す斜視図である。
【
図5】(A)及び(B)は、各々タッチ操作、タッチ操作に応じた静電容量の変化、及び判定信号の変化を示す線図である。
【
図6】(A)及び(B)は、各々長押し時のタッチ操作、タッチ操作に応じた静電容量の変化、及び判定信号の変化を示す線図であり、(A)は、(B)よりも静電容量値が低い場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係るタッチ検出装置10が概略構成図にて示されている。
図1に示すように、タッチ検出装置10は、センサ部としてのタッチ操作部12、及びコントローラ14を備えている。タッチ操作部12は、センサ電極16を備えており、センサ電極16は、導電性材料が用いられてシート状に形成されている。
【0022】
タッチ操作部12では、操作者(例えば操作者の指先)がセンサ電極16に近接される(タッチ操作部12にタッチ操作される)ことで、センサ電極16と操作者との間に静電容量が生じることで、センサ電極16における静電容量(静電容量値)Capが変化する。このようなタッチ操作部12としては、自己容量方式又は相互容量方式の何れが適用されてもよく、本実施形態では、タッチ操作によりセンサ電極16と図示しない駆動電極等との間の静電容量が変化する相互容量方式を適用している。なお、以下では、説明を簡略化するために、タッチ操作によりセンサ電極16の静電容量値Capが増加する(大きくなる)ものとして説明する。
【0023】
タッチ操作部12は、コントローラ14に電気的に接続されている。コントローラ14は、タッチ操作部12のセンサ電極16における静電容量(寄生容量等を含む)及び静電容量の変化を検出する。コントローラ14は、センサ電極16の静電容量値Capの変化から操作者の指が近接されたか否か、すなわち、操作者によりタッチ操作部12(センサ電極16)に対するタッチ操作がなされたか否かを判定する。コントローラ14は、センサ電極16に対してタッチ操作がなされたと判定すると、タッチ信号をオンする。また、コントローラ14は、センサ電極16から操作者の指が離れる非タッチ状態となることで、非タッチ判定してタッチ信号をオフする。
【0024】
本実施形態に係るタッチ検出装置10は、車両18に設けられた各種の被操作装置に接続できる。
図2には、タッチ検出装置10が設けられた車両18の主要部が車幅方向外側かつ斜め前側から見た斜視図にて示されている。
【0025】
図2に示すように、車両18には、サイドドア20にドアアウターハンドル(以下、ドアハンドルとする)22が設けられている。ドアハンドル22は、絶縁材料により形成されており、ドアハンドル22には、グリップ式、フラップ式及びポップアップ式の何れが適用されてもよい(
図2では、フラップ式としている)。
【0026】
サイドドア20には、ロック機構(図示省略)が設けられており、ロック機構は、ドアハンドル22に機械的又は電気的に接続されている。ロック機構は、ロック状態とされることで、サイドドア20が開閉されるのを制限し、アンロック状態とされることで、ドアハンドル22の操作によりサイドドア20の開閉を可能とする。
【0027】
前席側のサイドドア20のドアハンドル22には、タッチ検出装置10のタッチ操作部12(センサ電極16)が配置されている。タッチ操作部12は、センサ電極16が絶縁材料により被覆された状態でドアハンドル22の車両外側面に配置されている。なお、タッチ操作部12は、前席側のサイドドア20に限らず、車両後部のトランクリッドやリアゲートのハンドルに配置されていてもよい。また、タッチ操作部12は、後席側のサイドドアに設けられてもよく、タッチ操作部12が配置される後席側のサイドドアは、ヒンジ式に限らずスライド式であってもよい。
【0028】
また、
図1に示すように、車両18には、被操作装置としてのドアロック装置24が配置されている。ドアロック装置24は、サイドドア20等のドアロック機構に電気的に接続されており(図示省略)、ドアロック装置24は、ロック機構に対してロック状態とアンロック状態とに切換える。
【0029】
タッチ検出装置10のコントローラ14には、ドアロック装置24が電気的に接続されている。コントローラ14は、サイドドア20のドアハンドル22のタッチ操作部12に乗員がタッチ操作することで、ドアロック装置24にタッチ信号を出力する。ドアロック装置24は、コントローラ14から入力されるタッチ信号がオンされるごとに、ロック機構をロック状態とアンロック状態とに切換える。なお、ドアロック装置24では、車室内(車両18の制御システムなど)からロック操作されることで、コントローラ14のタッチ信号に応じたアンロックが制限される。
【0030】
ここで、
図1に示すように、タッチ検出装置10のコントローラ14には、検出部26、記憶手段としてのメモリ28、判定部30、及び更新部32が形成されている。コントローラ14は、CPU、ROM、RAM及び不揮発性メモリであるストレージ等がバスによって接続されたマイクロコンピュータ(図示省略)を備えている。コントローラ14では、CPUがROM及びストレージに記憶されたプログラムを読出し、RAMに展開しながら実行することで、検出部26、判定部30及び更新部32の各機能が実現される。また、コントローラ14では、ストレージによってメモリ28が実現される。
【0031】
検出部26は、タッチ操作部12のセンサ電極16に生じる静電容量(静電容量値Cap)を検出すると共に、静電容量値Capの変化を検出する。
【0032】
メモリ28には、静電容量値Capを用いてタッチ判定をするために予め設定されている各種のデータ(静電容量値や時間等)が格納されている。メモリ28には、基準値(基準値の静電容量値)としての基準容量値Cbase、及び基準値(基準容量値Cbase)に対するしきい値の静電容量値(以下、しきい値Cthとする)を設定するための差分の静電容量値ΔCdが格納されている。基準容量値Cbaseに対するしきい値Cthは、Cth=Cbase+ΔCdとして得られる。
【0033】
判定部30では、メモリ28に格納されているデータを用い、静電容量値Capからタッチ操作部12にタッチされたか否かのタッチ判定を実行し、判定結果に応じた判定信号(タッチ信号)を出力する。判定部30は、静電容量値Capがしきい値Cth(=基準容量値Cbase+静電容量値ΔCd)以上となると(Cap≧Cth)、タッチ操作がなされたと判定する(タッチ信号がオン)。また、判定部30は、静電容量値Capがしきい値Cthよりも低下していると(Cap<Cth)、非タッチ状態であると判定する(タッチ信号がオフ)。
【0034】
また、タッチ検出装置10では、タッチ操作部12に対して所定の継続時間Ts以上連続したタッチ操作(長押し操作)がなされることで、基準容量値Cbaseが更新される。更新部32は、タッチ操作部12(センサ電極16)に継続時間Ts以上触れ続けられると動作し、メモリ28に格納されている基準容量値Cbaseを更新する。タッチ検出装置10では、基準容量値Cbaseが更新されると、基準容量値Cbaseに対して設定されるしきい値Cthが更新される。
【0035】
次に、本実施形態の作用として、タッチ検出装置10におけるタッチ検出処理、及びタッチ検出処理に適用する基準容量値Cbaseの更新処理を説明する。
図3には、タッチ検出装置10においてコントローラ14により実行されるタッチ検出処理が流れ図にて示され、
図4には、基準容量値Cbaseの更新処理が流れ図にて示されている。
【0036】
図3のフローチャートは、車両18の図示しない電源(バッテリ)から電力が供給されることで、コントローラ14において実行され、最初のステップ100では、初期設定が行われる。
【0037】
タッチ検出装置10では、基準容量値Cbase及び静電容量値ΔCdと共に、規定値としての規定容量値Crefと、変化静電容量値及び第2静電容量値としての変化容量値Cdif1と、変化静電容量値及び第1静電容量値としての変化容量値Cdif2とが予め設定され、メモリ28に格納されている。規定容量値Crefは、しきい値Cth(=基準容量値Cbase+静電容量値ΔCd)よりも大きい値(静電容量値)とされており、ノイズ等が含まれていない状態において、乗員の指がタッチ操作部12に触れることにより生じる静電容量値Capの最大値などが適用される。なお、センサ電極16において寄生容量等が生じた場合には、静電容量値Capは、規定容量値Crefを越えることがある。
【0038】
基準容量値Cbase、静電容量値ΔCd、規定容量値Cref、及び変化容量値Cdif1、Cdif2は、タッチ検出装置10の製造時や、タッチ検出装置10を車両18に搭載時において設定されており、変化容量値Cdif1、Cdif2は、基準容量値Cbase、静電容量値ΔCd、及び規定容量値Crefの各々と、各々の静電容量値の差とに基づいて設定されている。
【0039】
また、変化容量値Cdif1及び変化容量値Cdif2は、各々静電容量値ΔCdより大きい値とされている。また、変化容量値Cdif2は、変化容量値Cdif1より大きい値とされている(Cdif2>Cdif1>ΔCd)。
【0040】
このような変化容量値Cdif1、Cdif2は、基準容量値Cbase、しきい値Cth及び規定容量値Crefの各々の静電容量値(大きさ)や静電容量値の割合(相対的な比率)などに基づいて設定できる。また、変化容量値Cdif1と変化容量値Cdif2は、静電容量値の割合として1:2などとして設定することもできる。
【0041】
これにより、
図5(A)に示すように、コントローラ14では、初期設定されることで、基準容量値Cbase、しきい値Cth、及び規定容量値Crefが設定される。
【0042】
規定容量値Crefの初期値は、タッチ検出装置10の製造時又は車両18への搭載時に設定された値がメモリ28に格納される。また、メモリ28に格納された規定容量値Crefは、所定のタイミングで更新される。ステップ100の初期設定において、規定容量値Crefは、メモリ28に格納された値が用いられる。また、
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)及び
図6(B)では、横軸を時間軸としており、
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)及び
図6(B)では、タッチ操作の時間変化が示されている。
【0043】
図3に示すように、コントローラ14は、初期設定が行われると、タッチ検出処理(タッチ判定処理)を開始する。タッチ検出処理では、コントローラ14において所定の時間間隔でステップ102から順に実行され、ステップ102では、センサ電極16の静電容量値Capを検出する。また、コントローラ14は、ステップ104において、検出した静電容量値Capがしきい値Cth以上か否かを判定する。
【0044】
操作者としての乗員の指がタッチ操作部12に触れておらず、静電容量値Capがしきい値Cthに達していない場合(Cth<Cap)、コントローラ14は、ステップ104において否定判定し(ステップ104:N)、ステップ106に移行した後に、ステップ102に戻る。コントローラ14は、ステップ106においてタッチ信号をオフ(OFF)状態とする。これにより、
図5(A)に示すように、乗員がタッチ操作部12に触れていない間は、非タッチ状態と判定されて、タッチ信号のオフ状態が継続される。
【0045】
これに対して、乗員がタッチ操作部12に対してタッチ操作を行うと、静電容量値Capが増加し、静電容量値Capがしきい値Cthに達すると(Cap≧Cth)、コントローラ14は、ステップ104において肯定判定して(ステップ104:Y)、ステップ108に移行する。ステップ108では、タッチ信号をオン(ON)にする。
【0046】
この後、コントローラ14は、ステップ110において静電容量値Capがしきい値Cthを超えている時間、すなわちタッチ状態と判定されている時間が継続時間Tsに達したか否かを確認する。乗員の指が継続時間Tsに達する前にタッチ操作部12から離れて静電容量値Capが減少し、静電容量値Capがしきい値Cthに満たなくなると、コントローラ14は、ステップ104において否定判定して、ステップ106に移行する。これにより、コントローラ14から出力されるタッチ信号がオフされる。
【0047】
タッチ検出装置10では、タッチ操作部12がドアハンドル22に設けられており、コントローラ14は、タッチ操作部12へのタッチ操作に応じてドアロック装置24にタッチ信号を出力する。この際、コントローラ14は、ドアハンドル22のタッチ操作部12に対してタッチ操作がなされていないと、ドアロック装置24に出力するタッチ信号をオフする。これにより、ドアロック装置24は、タッチ信号がオフされていると、ロック機構をロック状態又はアンロック状態に維持し、サイドドア20の開閉を制限した状態、又はサイドドア20を開閉可能な状態に維持する。
【0048】
また、コントローラ14は、ドアハンドル22のタッチ操作部12に対してタッチ操作がなされると、ドアロック装置24に出力するタッチ信号をオンする。これにより、ドアロック装置24は、ロック機構がロック状態であると、ロック機構をアンロック状態に切換えて、サイドドア20を開閉可能とする。また、ドアロック装置24は、ロック機構がアンロック状態であると、ロック機構をロック状態に切換えて、サイドドア20の開閉を制限する。
【0049】
一方、タッチ検出装置10では、タッチ操作部12を配置しているドアハンドル22に汚れが付着したり、タッチ操作部12のセンサ電極16の寄生容量等が増加していたりすると、非タッチ状態であっても静電容量値Capが増加する等の静電容量値Capに変化が生じる。この場合、タッチ検出装置10では、タッチ操作に対する誤判定が生じ易くなる。特に、
図5(B)に示すように、基準容量値Cbaseが高くなりすぎて、しきい値Cthが高くなってしまうと、コントローラ14では、タッチ操作がなされているにも関わらず静電容量値Capがしきい値Cthを越えることができず、非タッチ状態と誤判定してしまう。
【0050】
タッチ検出装置10のコントローラ14では、タッチ操作部12にタッチされると、タッチ信号をオンする。また、タッチ操作部12が連続された長押し操作され(
図6(A)及び
図6(B)参照)、タッチ操作を検出している時間が継続時間Tsに達する。これにより、コントローラ14は、ステップ110において肯定判定(ステップ110:Y)して、基準容量値Cbaseの更新処理を行う(ステップ112)。
【0051】
ここで、
図4、
図6(A)及び
図6(B)を参照しながらタッチ検出装置10のコントローラ14における基準容量値Cbaseの更新処理を説明する。なお、
図6(A)には、継続時間Tsの経過後の静電容量値Capが規定容量値Cref以上の場合が示され、
図6(B)には、継続時間Tsの経過後の静電容量値Capが規定容量値Crefに満たない場合が示されている。
【0052】
図6(A)及び
図6(B)に示すように、長押し操作された後、乗員がタッチ操作部12(ドアハンドル22)に対する長押しをやめて、センサ電極16から乗員の指が離れると、検出部26で検出される静電容量値Capが減少する。
【0053】
図4の基準容量値Cbaseの更新処理が実行されることで、コントローラ14は、最初のステップ120において静電容量値Capを検出する。また、コントローラ14は、ステップ122において静電容量値Capの減少を開始したか否かを判定する。乗員がタッチ操作部12(ドアハンドル22)に対する長押しをやめ、検出部26で検出される静電容量値Capが減少すると、コントローラ14は、ステップ122において肯定判定して(ステップ122:Y)、ステップ124に移行する。
【0054】
ステップ124において、コントローラ14は、減少直前の静電容量値Capを初期値C0に設定する。すなわち、コントローラ14は、減少直前の静電容量値Capを更新の際の静電容量値の初期値C0に設定する。
【0055】
なお、タッチ操作部12が長押しされている際、タッチ操作部12に触れる力(接触面積)が変化すると静電容量値Capも変化する。ここから、コントローラ14は、初期値C0として、継続時間Tsが経過した後の静電容量値Capの最大値が適用されてもよい。
【0056】
また、コントローラ14は、減少直前の静電容量値Cap(初期値C0)を基準容量値Cbaseに仮設定する。これにより、しきい値Cthを高くできて、基準容量値Cbaseの更新時に、コントローラ14がタッチ信号をオンするのが制限される。
【0057】
コントローラ14は、次のステップ126において、初期値C0と規定容量値Crefを比較し、初期値C0が規定容量値Cref以上か否かを確認する。コントローラ14は、初期値C0が規定容量値Crefに達していなければ(Cth≦C0<Cref、
図6(B)参照)、ステップ126において否定判定(ステップ126:N)してステップ128に移行する。コントローラ14は、ステップ128において変化量を示す静電容量値ΔCを変化容量値Cdif1に設定する。
【0058】
また、コントローラ14は、初期値C0が規定容量値Cref以上となっていると(C0≧Cref>Cth、
図6(A)参照)、ステップ126において肯定判定(ステップ126:Y)してステップ130に移行する。コントローラ14は、ステップ130において静電容量値ΔCを変化容量値Cdif2に設定する。
【0059】
コントローラ14は、初期値C0及び規定容量値Crefに基づいて静電容量値ΔCを変化容量値Cdif1又は変化容量値Cdif2に設定すると、ステップ132に移行し、静電容量値Capを検出する。また、コントローラ14は、ステップ134において静電容量値Capが初期値C0から静電容量値ΔCだけ低下したか否か、すなわち、低下する静電容量値Capの変化が静電容量値ΔCに達したか否かを確認する。
【0060】
コントローラ14は、静電容量値Capが初期値C0から静電容量値ΔCだけ低下すると(Cap≦(C0-ΔC))、ステップ134において肯定判定して(ステップ134:Y)、ステップ136に移行する。なお、コントローラ14は、初期値C0からの静電容量値Capの低下が、静電容量値ΔCに達しない場合(Cap>(C0-ΔC))、ステップ134において否定判定して(ステップ134:N)、ステップ136に移行して静電容量値Capの変化の検出を継続する。
【0061】
コントローラ14は、ステップ136に移行すると、静電容量値Capを検出し、検出した静電容量値Capを基準容量値Cbaseに設定した後(ステップ138)、設定した基準容量値Cbaseをメモリ28に格納することで、基準容量値Cbaseを更新する(ステップ140)。なお、基準容量値Cbaseに設定される静電容量値Capは、静電容量値Capの変化が静電容量値ΔCに達した後の所定時間後の静電容量値Capが適用されてもよく、所定時間内の静電容量値Capの最低値が適用されてもよい。
【0062】
コントローラ14は、基準容量値Cbaseを更新すると、更新した基準容量値Cbaseを適用して、タッチ検出処理(
図3参照)を開始する。
【0063】
ここで、
図6(A)に示すように、コントローラ14は、減少直前の静電容量値Capが、規定容量値Cref以上となっていると、静電容量値ΔCとして、変化容量値Cdif1より高い変化容量値Cdif2を適用する。これにより、コントローラ14では、更新された基準容量値Cbaseが高くなってしまうのを抑制して、タッチ操作がなされているのにも関わらず、非タッチ状態と判定してしまうのが抑制される。
【0064】
また、
図6(B)に示すように、コントローラ14は、減少直前の静電容量値Capが、規定容量値Crefに満たないと、静電容量値ΔCとして、変化容量値Cdif2より低い変化容量値Cdif1を適用する。これにより、コントローラ14では、更新された基準容量値Cbaseが必要以上に低くなってしまうのを抑制して、タッチ操作がなされていないにも関わらず、タッチ状態と判定してしまうのが抑制される。
【0065】
さらに、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、更新された基準容量値Cbaseが適用されることで、タッチ操作に応じたタッチ判定を行うことができる。したがって、タッチ検出装置10では、ドアハンドル22のタッチ操作部12へのタッチ操作に応じて、サイドドア20のドアロック及びドアアンロックを的確に行うことができる。
【0066】
このように、タッチ検出装置10では、基準容量値Cbase及び基準容量値Cbaseに対して設定されるしきい値Cthを用い、タッチ操作部12のセンサ電極16における静電容量値Capがタッチ操作部12に対するタッチ操作を検出する。
【0067】
また、タッチ検出装置10では、タッチ操作部12が長押し操作されると、基準容量値Cbaseの更新を行う。これにより、タッチ検出装置10では、任意のタイミングでの基準容量値Cbaseの更新が可能になる。
【0068】
この際、タッチ検出装置10では、継続時間Tsが経過した際の静電容量値Capが予め設定されている規定容量値Cref以上となっていると、予め設定している静電容量値ΔCだけ変化した後の静電容量値Capを基準容量値Cbaseに設定する。これにより、タッチ検出装置10では、規定容量値Crefに対して静電容量値ΔCを確保して基準容量値Cbaseを設定できるので、基準容量値Cbaseが高くなりすぎるのを抑制できて、検出精度が低下するのが抑制される。しかも、タッチ検出装置10では、基準容量値Cbaseの更新に要する時間が長くなってしまうのを抑制できる。
【0069】
また、タッチ検出装置10では、継続時間Tsが経過した際の静電容量値Capが規定容量値Cref未満の場合の静電容量値ΔCを、静電容量値Capが規定容量値Cref以上の場合の静電容量値ΔCより低い値に設定する。このため、タッチ検出装置10では、基準容量値Cbaseが低くなりすぎるのを抑制できて、ノイズ等に起因する誤判定が生じるのを抑制できる。
【0070】
さらに、タッチ検出装置10では、静電容量値Capが規定容量値Cref未満の場合の変化容量値Cdif1、及び静電容量値Capが規定容量値Cref以上の場合の変化容量値Cdif2が予め設定されているので、適切な基準容量値Cbaseの更新を容易にできる。
【0071】
また、タッチ検出装置10では、継続時間Tsが経過した後の静電容量値Capの最大値を初期値C0に設定する。これにより、タッチ検出装置10では、タッチ操作部12への触れ方が変化しても、基準容量値Cbaseを適切に設定できる。
【0072】
また、タッチ検出装置10では、静電容量値ΔCを基準容量値Cbaseとしきい値Cthとの差よりも大きい値に設定しているので、タッチ操作部12への乗員のタッチ操作を精度よく検出でき、タッチ操作の検出精度の低下を一層効果的に抑制できる。
【0073】
なお、タッチ検出装置10では、タッチ操作部12に対する長押し操作の継続時間Ts後の静電容量値Capが規定容量値Crefに満たない場合に、静電容量値ΔCとして変化容量値Cdif1を適用して、基準容量値Cbaseの更新を行った。しかしながら、タッチ操作部12に対する長押し操作の継続時間Ts後の静電容量値Capが規定容量値Crefに満たない場合には、基準容量値Cbaseの更新は行わずに、タッチ操作部12に対する長押し操作の継続時間Ts後の静電容量値Capが規定容量値Cref以上の場合のみに基準容量値Cbaseの更新を行うようにしてもよい。
【0074】
なお、以上説明した本実施形態では、相互容量式のタッチ操作部12を例に説明した。しかしながら、センサ部は、静電容量方式でもよく、センサ部及びセンサ部に適用するセンサ電極は、各種の構成を適用できる。
【0075】
また、本実施形態では、タッチ検出装置10にドアロック装置24を接続して、タッチ操作部12のタッチ操作に応じてサイドドア20のロック/アンロックを行った。しかしながら、タッチ検出装置は、操作されるスイッチ等が設けられた各種の被操作装置に接続されて用いることができ、タッチ検出装置は、センサ部に対するタッチ操作を検出することで、検出した操作に応じて被操作装置を操作できる。
【0076】
タッチ検出装置は、車両の空調装置に設けられ、センサ部に対するタッチ操作によって空調装置のオン/オフ、設定温度のアップ/ダウン、風量の増減、風向の切換え等を行うようにしてもよい。空調装置のオン/オフを行う場合、空調装置のスイッチにセンサ部を設け、センサ部のタッチ操作を行うことで、オンとオフとを交互に切換える。また、空調装置の設定温度のアップ/ダウンに用いる場合、アップスイッチ及びダウンスイッチの各々にセンサ部を設け、アップスイッチをタッチ操作するごとに設定温度を所定ステップで上昇させ、ダウンスイッチをタッチ操作するごとに設定温度を所定ステップで下降させる。
【0077】
また、タッチ検出装置は、車両のオーディオ装置に設けられ、センサ部に対するタッチ操作によってオーディオ装置のオン/オフ、音量のアップ/ダウン、ラジオにおける選局、オーディオソースの切換え等を行うようにしてもよい。オーディオ装置において、オーディオソースの切換えを行う場合、入力切替スイッチにセンサ部を設け、センサ部のタッチ操作を行うごとに、オーディオソースが順に切換えられるようにすればよい。
【0078】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した判定処理及び更新処理などは、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0079】
また、本実施形態では、検出処理、判定処理、及び更新処理のプログラムが記憶媒体(ストレージ)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10・・・タッチ検出装置、12・・・タッチ操作部(センサ部)、14・・・コントローラ、16・・・センサ電極、26・・・検出部(検出手段)、30・・・判定部(判定手段)、32・・・更新部(更新手段)。