(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】線条体案内装置
(51)【国際特許分類】
F16G 13/16 20060101AFI20240214BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20240214BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F16G13/16
H02G11/00
H02G3/04 075
(21)【出願番号】P 2020104434
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】石山 尚弥
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-123691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/16
H02G 11/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体を貫通可能な開口を有する複数のリンク部材と、該リンク部材の前記開口を複数の小開口に区画する複数の仕切り板とを備え、
隣り合う前記リンク部材が相互に揺動可能に連結されることにより、複数の前記開口が連続的に配置された細長い収容空間を備える長鎖状に形成され、
各前記リンク部材の前記仕切り板が、少なくとも1つの前記小開口に2本以上の前記線条体を通過させる位置で前記開口を区画し、
前記線条体の長手方向に間隔を空けた異なる前記リンク部材において、1つの前記小開口を通過する前記線条体の組合せが異な
り、
各前記リンク部材においては、前記開口が1つの前記仕切り板により2つの小開口に区画され、異なる前記リンク部材において、前記仕切り板による前記開口の区画方向が異なる線条体案内装置。
【請求項2】
各前記リンク部材の前記仕切り板が、各前記小開口に最大2本の前記線条体を通過させ、かつ少なくとも1つの前記小開口に2本の前記線条体を通過させる位置で前記開口を区画する請求項1に記載の線条体案内装置。
【請求項3】
前記仕切り板
の位置が異なる前記リンク部材が、交互に連結されている請求項1
または請求項2に記載の線条体案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線条体案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仕切り部材によって複数の区画に区分された収容空間を有し、複数のケーブル類を各区画に仕分けて収容するリンク枠体が、相互に屈曲可能に多数連結されてなるケーブル類保護案内装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仕切り部材によって区分された1区画内に、2以上のケーブルが収容され、かつ区画内に各ケーブルが移動できるスペースがある場合に、一方のケーブルが他方のケーブルに乗り上げる現象が起こり得る。このような現象が発生すると、案内装置の動作時に本来受けることのない摩擦力や張力が各ケーブルに加わってしまう可能性がある。
【0005】
1区画に1本ずつケーブルが収容させる方式に仕切れば、ケーブル同士の乗り上げは回避できるが、ケーブル数に対応した数だけ仕切り部材が必要となり、リンク枠体のサイズアップおよび製造コストの増大につながる。
したがって、仕切り部材の数を低減しつつ、ケーブル同士の乗り上げの発生を抑制できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、線条体を貫通可能な開口を有する複数のリンク部材と、該リンク部材の前記開口を複数の小開口に区画する複数の仕切り板とを備え、隣り合う前記リンク部材が相互に揺動可能に連結されることにより、複数の前記開口が連続的に配置された細長い収容空間を備える長鎖状に形成され、各前記リンク部材の前記仕切り板が、少なくとも1つの前記小開口に2本以上の前記線条体を通過させる位置で前記開口を区画し、前記線条体の長手方向に間隔を空けた異なる前記リンク部材において、1つの前記小開口を通過する前記線条体の組合せが異なり、各前記リンク部材においては、前記開口が1つの前記仕切り板により2つの小開口に区画され、異なる前記リンク部材において、前記仕切り板による前記開口の区画方向が異なる線条体案内装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る線条体案内装置の全体構成図である。
【
図2】
図1の線条体案内装置の切断面Aにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図3】
図1の線条体案内装置の切断面Bにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図4】
図1の線条体案内装置の第1の変形例の切断面Aにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図5】
図1の線条体案内装置の第1の変形例の切断面Bにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図6】
図1の線条体案内装置の第2の変形例の切断面Aにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図7】
図1の線条体案内装置の第2の変形例の切断面Bにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図8】
図1の線条体案内装置の第3の変形例の切断面Aにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【
図9】
図1の線条体案内装置の第3の変形例の切断面Bにおける仕切り板の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る線条体案内装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る線条体案内装置1は、
図1および
図2に示されるように、開口30を有する複数のリンク部材20と、開口30を区画する仕切り板40とを備えている。線条体案内装置1は、隣接するリンク部材20を相互に平行な軸線回りに揺動可能に順次連結することにより、全体として屈曲動作可能な長鎖状に形成されている。
【0009】
本実施形態においては、例えば、同等の直径を有する3本の線条体10を収容する場合について説明する。ここで、線条体10とは、動力用ケーブルおよび信号用ケーブルの他、エアチューブ等の湾曲可能な長尺の部材を意味している。
【0010】
各リンク部材20は、
図2および
図3に示されるように、間隔をあけて平行に配置された一対の側面プレート21と、側面プレート21の幅方向の両端を互いに接続する位置に間隔をあけて平行に配置された蓋プレート22および底プレート23を備えている。そして、各リンク部材20は、これら側面プレート21と蓋プレート22および底プレート23によって囲まれる長方形の開口30を有している。
【0011】
リンク部材20が複数個連結された線条体案内装置1においては、各リンク部材20の開口30が間隔をあけて一列に配置されることにより、柔軟な線条体10を貫通状態に収容可能な細長い収容空間が設けられている。
【0012】
仕切り板40は、リンク部材20毎に1枚ずつ備えられ、リンク部材20の開口30を
図2および
図3に示されるように、左右2つの小開口31に区画している。
本実施形態に係る線条体案内装置1は、
図2に示される位置に仕切り板40を配置したリンク部材20と、
図3に示される位置に仕切り板40を配置したリンク部材20とを交互に連結している。
【0013】
図2に示される仕切り板40は、側面プレート21に平行に配置されることにより、リンク部材20の開口30を、左側の幅の小さい小開口31と、右側の幅の大きな小開口31とに区画している。一方、
図3に示される仕切り板40は、側面プレート21に平行に配置されることにより、リンク部材20の開口30を、左側の幅の大きい小開口31と、右側の幅の小さい小開口31とに区画している。
【0014】
そして、全てのリンク部材20において、幅の小さい小開口31は、1本の線条体10の直径寸法よりも若干大きな幅寸法を有している。幅の大きな小開口31は、2本の線条体10の直径寸法の合計よりも若干大きな幅寸法を有している。蓋プレート22と底プレート23との間の間隔は、大きな直径の線条体10を収容することもできるように、2本の線条体10の直径寸法の合計よりも大きく設定されている。
【0015】
このように構成された本実施形態に係る線条体案内装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る線条体案内装置1によれば、
図1に示されるように、複数のリンク部材20の開口30が連続的に配置されることによって形成された細長い収容空間に、3本の線条体10が貫通状態に収容される。
【0016】
リンク部材20を通過する3本の線条体10は、各リンク部材20を通過する際に、そのうち1本が幅の小さい小開口31、残りの2本が幅の大きい小開口31を通過させられる。
すなわち、
図2のリンク部材20においては、左側の小開口31に1本、右側の小開口31に2本の線条体10が収容され、
図3のリンク部材20においては、左側の小開口31に2本、右側の小開口31に1本の線条体10が収容される。
【0017】
図2のリンク部材20と
図3のリンク部材20とは交互に連結されているので、隣接するリンク部材20においては、3本の線条体10の仕切られる位置が異ならされる。これにより、一のリンク部材20において、同一の小開口31を通過する2本の線条体10は、隣接する他のリンク部材20においては、それぞれ別々の小開口31を通過させられる。すなわち、隣接するリンク部材20において同一の小開口31を通過する2本の線条体10の組合せは異ならされる。
【0018】
その結果、各リンク部材20において、幅の広い小開口31には、2本の線条体10の相互に乗り上げる方向への移動を規制する仕切り板40は配置されていないが、隣接する他のリンク部材20においては仕切り板40によって移動が制限される。したがって、各リンク部材20に配置される仕切り板40が1枚であっても、3本の線条体10を収容して、線条体10同士の乗り上げを防止することができるという利点がある。
【0019】
なお、本実施形態においては、3本の線条体10を収容する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、任意の本数の線条体10を収容する場合に適用してもよい。
例えば、4本の線条体10を収容する場合には、1枚の仕切り板40を
図4に示す位置に配置するリンク部材20と、2枚の仕切り板40を
図5に示す位置に配置するリンク部材20の2種類を交互に連結させればよい。
【0020】
この場合、
図4に示されるリンク部材20の1枚の仕切り板40は、開口30の幅方向の中央に配置され、開口30を左右2つの同じ大きさの小開口31に区画している。
一方、
図5に示されるリンク部材20の2枚の仕切り板40は、開口30を左右の幅の小さい小開口31と、中央の幅の大きな小開口31との3つに区画している。
【0021】
これにより、4本の線条体10が、
図4に示されるリンク部材20を通過する際には、左側の小開口31に左側の2本の線条体10が配置され、右側の小開口31に右側の2本の線条体10が配置される。
一方、
図5に示されるリンク部材20を通過する際には、左側および右側の小開口31には、それぞれ1本の線条体10が配置され、中央の小開口31には、2本の線条体10が配置される。
【0022】
このように、仕切り板40の数および配置が異なる2種類のリンク部材20を交互に配置することにより、4本の線条体10についても、隣り合うリンク部材20において、同一の小開口31を通過する2本の線条体10の組合せを異ならせることができる。これにより、より少ない数の仕切り板40によって、全ての線条体10の相互の乗り上げを防止することができる。
【0023】
また、本実施形態においては、全ての線条体10の直径が同等の場合を例示したが、互いに直径の異なる線条体10が含まれてもよい。例えば、
図6および
図7に示されるように、最も右側に位置する線条体10の直径が、他の線条体10の直径よりも大きくてもよい。
【0024】
図6に示されるリンク部材20においては、右から1本目、2本目および3本目の線条体10が右側の小開口31を通過させられ、右から4本目の線条体10が左側の小開口31を通過させられる。
図7に示されるリンク部材20においては、右から1本目および2本目の線条体10が右側の小開口31を通過させられ、右から3本目および4本目の線条体10が左側の小開口31を通過させられる。
【0025】
この場合、各リンク部材20の開口30の高さ方向(幅方向に直交する方向)の寸法よりも、右から1本目および2本目の線条体10の直径の合計の方が大きいため、各リンク部材20において、両線条体10が相互に乗り上がるだけのスペースがない。
また、
図6に示されるリンク部材20においては、右から3本目および4本目の間に仕切り板40が配置され、両線条体10の相互に乗り上げる方向への移動を規制している。同様に、
図7に示されるリンク部材20においては、右から2本目および3本目の間に仕切り板40が配置され、両線条体10の相互に乗り上げる方向への移動を規制している。
【0026】
このため、
図6に示されるリンク部材20と
図7に示されるリンク部材20とを交互に配置することによって、各リンク部材20に設けられる仕切り板40の数が1枚ずつであっても、4本の線条体10の全てに対して乗り上げを防止することができる。
【0027】
また、本実施形態では、各リンク部材20の開口30は、全て幅方向に区画されていたが、これに代えて、隣り合う各リンク部材20において、開口30の区画方向を異ならせてもよい。
【0028】
例えば、一のリンク部材20においては、
図8に示すように仕切り板40が開口30を幅方向に区画し、他のリンク部材20においては、
図9に示すように仕切り板40が開口30を高さ方向(幅方向に直交する方向)に区画してもよい。
【0029】
図8に示す例では、仕切り板40によって区画された左右の小開口31に、線条体10が2本ずつ通過させられている。また、
図9に示す例では、仕切り板40によって区画された上下の小開口31に、線条体10が2本ずつ通過させられている。
【0030】
図8に示されるリンク部材20の各小開口31を通過する2本の線条体10の組合せは、
図9に示されるリンク部材20の各小開口31を通過する2本の線条体10の組合せとは異ならされている。
これにより、各リンク部材20に配置する仕切り板40を1枚にしても、線条体10同士の相互の乗り上げを防止しつつ、4本の線条体10を収容することができる。
また、この構造の線条体案内装置1によれば、線条体10を、収容空間内において上下方向にも配置することができ、スペース効率を改善し、リンク部材20および線条体案内装置1の小型化を図ることができるという利点もある。
【0031】
また、本実施形態では、仕切り板40の位置が異なる2種類のリンク部材20を交互に配置したが、これに代えて、仕切り板40の位置が異なる2種類のリンク部材20をそれぞれ2つずつ交互に配置してもよい。
また、仕切り板40の位置が異なる2種類のリンク部材20との間に、仕切り板40を持たないリンク部材を1つないし2つ配置してもよい。
【0032】
いずれの場合においても、1つおきないし2つおきに、隣接する線条体10の相互に乗り上げる方向への移動が制限されるので、各線条体10における予期しない摩擦や張力の防止効果を保持しつつ、仕切り板40の数をさらに少なくすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 線条体案内装置
10 線条体
20 リンク部材
30 開口
31 小開口
40 仕切り板