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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/42 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020126747
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023657
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛地 陽
(72)【発明者】
【氏名】梶川 謙士
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079721(JP,A)
【文献】特開2002-198116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、
前記端子金具を挿入可能な端子収容室と、前記端子金具の挿入方向に交差する第1撓み方向に撓むことが可能になるように、前記挿入方向の後端側が固定端となり、前記挿入方向の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成され、前記端子金具の前記挿入方向の後端側を係止する係止片と、を有するハウジングと、を備えるコネクタにおいて、
前記端子金具は、前記第1撓み方向に突出する突出部を有し、
前記係止片は、前記挿入方向及び前記第1撓み方向の双方に交差する第2撓み方向に撓むことが可能に構成され、前記第2撓み方向に対向する側面のうち前記突出部側に、前記挿入方向の先端側に向かうに従って前記第2撓み方向において前記突出部に近づく傾斜面が設けられた、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記端子金具の挿入時に前記傾斜面が前記突出部により押されて前記係止片が、前記第2撓み方向に撓む、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記係止片が、前記突出部の前記挿入方向の後端側を係止する、
コネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタにおいて、
前記端子金具が、相手方端子金具が挿入されることになる箱部を有し、
前記突出部が、前記箱部の前記挿入方向の後端から突出して設けられ、
前記係止片が、前記箱部及び前記突出部の双方を係止する、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出部が設けられた端子金具を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子金具として、スタビライザ(突出部)が突出されているものがある。誤った姿勢で端子金具をハウジングに挿入すると、スタビライザがハウジングに当たって端子金具を挿入できないようになっている。しかしながら、端子金具にスタビライザを設けると、ハウジングに端子金具を挿入する際に、ランス(係止片)が突出量の大きいスタビライザを乗り越える必要があり、端子の挿入力が増加する、という問題が生じていた。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されたコネクタが提案されている。特許文献1に記載されたコネクタは、端子金具の挿入時にランスの両側をスタビライザが通過することにより、ランスがスタビライザを乗り越える必要がない。しかしながら、特許文献1のコネクタによれば、スタビライザを設ける位置の自由度が限定されてしまう、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-236678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子金具の挿入力の低減を図ったコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
端子金具と、
前記端子金具を挿入可能な端子収容室と、前記端子金具の挿入方向に交差する第1撓み方向に撓むことが可能になるように、前記挿入方向の後端側が固定端となり、前記挿入方向の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成され、前記端子金具の前記挿入方向の後端側を係止する係止片と、を有するハウジングと、を備えるコネクタにおいて、
前記端子金具は、前記第1撓み方向に突出する突出部を有し、
前記係止片は、前記挿入方向及び前記第1撓み方向の双方に交差する第2撓み方向に撓むことが可能に構成され、前記第2撓み方向に対向する側面のうち前記突出部側に、前記挿入方向の先端側に向かうに従って前記第2撓み方向において前記突出部に近づく傾斜面が設けられた、
コネクタであること。
[2]
[1]に記載のコネクタにおいて、
前記端子金具の挿入時に前記傾斜面が前記突出部により押されて前記係止片が、前記第2撓み方向に撓む、
コネクタであること。
[3]
[1]又は[2]に記載のコネクタにおいて、
前記係止片が、前記突出部の前記挿入方向の後端側を係止する、
コネクタであること。
[4]
[3]に記載のコネクタにおいて、
前記端子金具が、相手方端子金具が挿入されることになる箱部を有し、
前記突出部が、前記箱部の前記挿入方向の後端から突出して設けられ、
前記係止片が、前記箱部及び前記突出部の双方を係止する、
コネクタであること。
【0007】
上記[1]及び[2]の構成のコネクタによれば、係止片は、第2撓み方向に対向する側面のうち突出部側に傾斜面が設けられている。これにより、端子金具の挿入時に傾斜面が突出部により押されて係止片が、第2撓み方向に撓む。係止片の撓み方向を第1撓み方向及び第2撓み方向の2方向とすることにより、端子金具の挿入力の低減を図ることができる。
【0008】
上記[3]の構成のコネクタによれば、係止片が突出部を係止する。これにより、端子収容室内における端子金具の保持力を向上できる。
【0009】
上記[4]の構成のコネクタによれば、端子金具の箱部の先端が係止片を第1撓み方向に変形させる。その後、端子金具をさらに挿入すると後端に設けた突出部が係止片を第2撓み方向に変形させる。そして、端子金具を端子収容室内に収容すると係止片が箱部及び突出部の双方を係止する。これにより、端子金具を挿入する際、係止片が最初に第1撓み方向に撓み、その後、第2撓み方向に撓むため、より一層、端子金具の挿入力の低減を図ることができる。また、係止片が箱部及びスタビライザの双方を係止することにより、端子金具の保持力を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子金具の挿入力の低減を図ったコネクタを提供することができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、フロントハウジングを仮係止位置まで挿入したときの本発明のコネクタの先端側から見た斜視図である。
図2図2は、図1に示すコネクタの分解斜視図である。
図3図3は、端子金具をランスに係止する前の図1のI-I線断面図である。
図4図4は、端子金具をランスに係止する直前の図1のII-II線断面図である。
図5図5は、端子金具をランスに係止した後の図1のI-I線断面図である。
図6図6は、図1に示すコネクタの後端側から見た斜視図である。
図7図7は、図4のIII-III線部分断面図である。
図8図8は、図2に示すハウジングの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
本実施形態に係るコネクタ1は、雄コネクタと嵌合可能な雌コネクタである。図1及び図2などに示すように、コネクタ1は、端子金具2(図2)と、端子金具2を挿入可能なハウジング3と、ハウジング3内に収容されるフロントホルダ4と、を備えている。
【0015】
端子金具2は、図2に示すように、雌型の端子金具であって、金属板材に折り曲げ加工等を施すことで所定の形状に形成されている。端子金具2は、相手側端子金具が挿入される箱部21と、電線の芯線をかしめる芯線かしめ部22と、電線の被覆部をかしめる被覆かしめ部23と、を有している。箱部21、芯線かしめ部22、被覆かしめ部23は、この順で端子金具2の挿入方向D1に沿って連なって設けられている。なお、上記「挿入方向D1」とは、ハウジング3に端子金具2を挿入する方向のことである。また、以下の説明において、挿入方向D1において箱部21側を先端側、被覆かしめ部23側を後端側と言う。
【0016】
箱部21は、底壁211と、一対の側壁212,212と、天井壁213と、を有する四角筒状に設けられ、内側に相手側端子金具が挿入される。一対の側壁212,212は、幅方向(第2撓み方向)D2両側から上下方向D3(第1撓み方向)上方に向かって立設される。上記幅方向D2及び上下方向D3は互いに直交(交差)し、挿入方向D1にも直交(交差)する方向である。天井壁213は、一対の側壁212,212の上端間に架け渡されている。天井壁213の後端かつ幅方向D2一方側には、スタビライザ24(突出部)が上方へ突出して形成されている。スタビライザ24は、天井壁213の一部を切り起こして形成される。
【0017】
芯線かしめ部22は、箱部21の底壁211の挿入方向D1後端に連なる底壁(図示せず)と、底壁の幅方向D2両側から上方に立ち上げられた一対のかしめ片221,221と、を有している。この底壁(図示せず)に芯線を搭載して、一対のかしめ片221,221の先端を芯線に向けてかしめることにより、芯線と端子金具2とを電気的に接続することができる。
【0018】
被覆かしめ部23は、芯線かしめ部22の底壁の挿入方向D1後端に連なる底壁231と、底壁231の幅方向D2両側から上方に立ち上げられた一対のかしめ片232,232と、を有している。この底壁231に被覆部を搭載して、一対のかしめ片232,232の先端を被覆部に向けてかしめることにより、被覆部を端子金具2に固定することができる。
【0019】
ハウジング3は、図3図5に示すように、端子金具2を挿入可能な複数の端子収容室301と、ランス302(係止片)と、を備えている。ランス302は、端子収容室301毎に設けられている。ランス302は、挿入方向D1の後端側が固定端となり、挿入方向D1の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成されている。このように片持ち梁状に構成することにより、ランス302は、端子金具2の挿入時に上下方向D3(第1撓み方向)上方に撓み、端子金具2が端子収容室301内の正規位置に収容されると上下方向D3下方に復元して端子金具2の箱部21後端を係止する。
【0020】
ハウジング3は、図6に示すように、底壁303と、一対の第1ハウジング側壁304,304と、一対の第2ハウジング側壁305,305と、天井壁306と、を有し、挿入方向D1が開口された略四角筒状に設けられている。一対の第1ハウジング側壁304,304は、底壁303の幅方向D2両端から上方に立設する。一対の第2ハウジング側壁305,305は、底壁303の幅方向D2両端よりも少し内側から立設する。一対の第1ハウジング側壁304,304と、一対の第2ハウジング側壁305,305と、は挿入方向D1に沿って並んで設けられている。
【0021】
また、第1ハウジング側壁304,304は、ハウジング3の先端部に設けられ、第2ハウジング側壁305,305は、ハウジング3の後端部に設けられている。第1ハウジング側壁304,304の後端から突出する複数のアーム307により第1ハウジング側壁304,304及び第2ハウジング側壁305,305が連結されている。天井壁306は、一対の第1ハウジング側壁304,304の上端間、第2ハウジング側壁305,305の上端間に架け渡される。天井壁306の上方には、相手側ハウジングを係止する係止部308が設けられている。
【0022】
一対の第2ハウジング側壁305,305間には、ハウジング3内の上下方向D3を仕切る第1ハウジング隔壁309と、ハウジング3内の幅方向D2を仕切る第2ハウジング隔壁310と、が設けられている。第1ハウジング隔壁309は、ハウジング3の後端部のみ(即ち第2ハウジング側壁305,305間にのみ)設けられ、先端部には設けられていない。上記底壁303、一対の第2ハウジング側壁305,305、天井壁306、第1ハウジング隔壁309、第2ハウジング隔壁310に囲まれた空間がそれぞれ、端子収容室301の後端部となる。本実施形態では、第1ハウジング隔壁309が1つ、第2ハウジング隔壁310が複数設けられ、端子収容室301は、上下2段、幅方向D2に複数並べて設けられている。
【0023】
また、天井壁306及び第1ハウジング隔壁309には、端子金具2のスタビライザ24が通過可能な挿入方向D1に延在する溝部311が端子収容室301毎に設けられている。この溝部311を設けることにより、スタビライザ24が上側に突出する姿勢で端子金具2をハウジング3に挿入したとき、スタビライザ24が溝部311を通ることができる。即ち、誤った姿勢で端子金具2をハウジング3に挿入すると、スタビライザ24がハウジング3に当たって端子金具2を挿入することができない。これにより、端子金具2が誤った姿勢でハウジング3に挿入されるのを防止することができる。
【0024】
また、図3図5に示すように、第2ハウジング側壁305間の天井壁306は、第1ハウジング側壁304間の天井壁306よりも厚く設けられ、天井壁306には段差面が設けられている。この段差面の下端から複数の板状のランス302が先端側に向かって突設されている。また、上記第1ハウジング隔壁309の先端面の下端からも、複数の板状のランス302が先端側に向かって突設されている。ランス302は、天井壁306の段差面及び第1ハウジング隔壁309の先端面において、スタビライザ24を通す溝部311の幅方向D2他方側に隣接する位置から突設されている。
【0025】
また、ランス302は、後端部が、先端に向かうに従って下方に近づくように設けられ、先端部が上下方向D3に略垂直に設けられている。ランス302は、後端が天井壁306又は第1ハウジング隔壁309に支持され、先端面及び幅方向D2一方側の側面S1は支持されていない。図7に示すように、ランス302の幅方向D2両側の側面のうち、スタビライザ24側(即ち一方側)の側面S1には、先端に向かうに従って幅方向D2においてスタビライザ24に近づく傾斜面が設けられている。傾斜面は、側面S1の後端に設けられている。
【0026】
また、図3及び図5に示すように、第2ハウジング側壁305間の底壁303は、第1ハウジング側壁304間の底壁303よりも厚く設けられ、段差面が設けられている。また、底壁303には、上記段差面よりも少し先端側から段差面にかけて挿入方向D1に沿って延在する位置決め凸部312が設けられている。第1ハウジング隔壁309の上面には、ランス302が突出する先端面よりも少し後端側から先端面にかけて挿入方向D1に沿って延在する位置決め凸部312が設けられている。これら位置決め凸部312は端子収容室301毎に設けられ、後述するフロントホルダ4に設けられた切欠部47と嵌合して、フロントホルダ4の幅方向D2を位置決めする。
【0027】
また、ハウジング3は、図8に示すように、第2ハウジング側壁305及び第2ハウジング隔壁310の上下から各々先端に向かって突出する底壁313と、底壁313の幅方向D2両端から立設する第1立壁314及び第2立壁315と、幅方向D2に隣り合う底壁313から立設された第1立壁314及び第2立壁315の先端を架け渡すガイド壁316と、をさらに有している。底壁313は、上下方向D3に直交して設けられている。幅方向D2他方側に設けられた第2立壁315の後端部は切りかかれていて、ランス302とは離間して設けられている。
【0028】
幅方向D2一方側に設けられた第1立壁314は、ランス302の幅方向D2他方を支持する。第1立壁314には、挿入方向D1に長尺な貫通孔314aが設けられている。ランス302は、この貫通孔314aの上方に支持されていて、幅方向D2及び上下方向D3に撓みやすく設けられている。ガイド壁316は、相手側端子金具を端子金具2内にガイドするための壁であり、挿入方向D1の後端側に向かうに従って端子金具2に近づく傾斜面が設けられている。
【0029】
次に、フロントホルダ4について説明する。フロントホルダ4は、ハウジング3の先端部に収容され、端子金具2の先端を係止すると共に、ランス302を押し下げてランス302の係止力を高める。フロントホルダ4は、図2に示すように、底壁41と、底壁41の幅方向D2両端から上方に立設した一対のフロント側壁42,42と、一対のフロント側壁42,42の上端間に架け渡される天井壁43と、を有し、略四角筒状に設けられている。また、フロントホルダ4は、筒部内部を上下方向D3に仕切るフロント隔壁45と、底壁41、フロント隔壁45の挿入方向D1先端から立設するガイド壁46と、を備えている。
【0030】
図4に示すように、ハウジング3の先端部においては、上段の端子収容室301に収容される端子金具2は、天井壁43とフロント隔壁45との間に挟まれ、上下方向D3が位置決めされる。また、ハウジング3の先端部において、下段の端子収容室301に収容される端子金具2は、フロント隔壁45と、底壁41との間に挟まれ、上下方向D3が位置決めされる。即ち、フロントホルダ4の天井壁43、フロント隔壁45、底壁41、ハウジング3の第1立壁314及び第2立壁315に囲まれた空間が、ハウジング3の先端部における端子収容室301となる。
【0031】
底壁41及びフロント隔壁45は、一対のフロント側壁42及び天井壁43よりも挿入方向D1に長く設けられ、フロント側壁42及び天井壁43よりも挿入方向D1後端側に突出して設けられている。また、底壁41及びフロント側壁42の後端側は、端子収容室301毎に設けた切欠部47が設けられ、上述したハウジング3に設けた位置決め凸部312と嵌合する。また、天井壁43及びフロント隔壁45には、ランス302を下側に押し下げるためのランス押下部48が突設されている。ランス押下部48は、端子収容室301毎に設けられている。
【0032】
天井壁43に設けられたランス押下部48は、天井壁43の後端面から突設されている。また、フロント隔壁45は、天井壁43の後端面より先端側が後端側よりも厚く設けられ、段差面が設けられている。フロント隔壁45に設けられたランス押下部48は、この段差面から後端に向かって突設されている。
【0033】
フロント側壁42には、図2に示すように、仮係止部42aと、本係止部42bとが、設けられている。仮係止部42aがハウジング3と係止することにより、図1に示すように、フロントホルダ4は、先端部がハウジング3から突出し、ランス押下部48がランス302を押し下げない仮係止位置でハウジング3に仮係止することができる。本係止部42bがハウジング3と係止することにより、フロントホルダ4は、先端部までハウジング3内に収容され、ランス押下部48がランス302を押し下げる本係止位置でハウジング3に本係止することができる。
【0034】
次に、上述した構成のコネクタ1の組み立てについて説明する。まず、フロントホルダ4をハウジング3に先端側から挿入する。フロントホルダ4に設けた仮係止部42aがハウジング3に係止して、フロントホルダ4が仮係止される。図4に示すように、仮係止位置において、ランス押下部48はランス302よりも先端側に位置し、ランス302を押し下げない。また、フロントホルダ4の底壁41の上面とハウジング3の底壁303の後端部の上面と、は略同一平面上に配置される。フロントホルダ4のフロント隔壁45の上面とハウジング3の第1ハウジング隔壁309の上面と、も略同一平面上に配置される。
【0035】
その後、図3に示すように、端子金具2をハウジング3の後端から挿入する。このとき、スタビライザ24が上方に立設する姿勢で端子金具2をハウジング3内に挿入する。スタビライザ24は、溝部311内に挿入される。端子金具2を先端側に向けてさらに挿入すると、図3に示すように、端子金具2の先端がランス302の傾斜面に形成された下面に当接する。端子金具2をさらに挿入すると、端子金具2によりランス302が上方に撓む。
【0036】
さらに端子金具2を挿入すると、図4及び図7に示すように、スタビライザ24がランス302の傾斜面が形成された側面S1に当接する。端子金具2をさらに挿入すると、スタビライザ24によりランス302が幅方向D2他方側に撓む。さらに端子金具2を挿入すると、図5に示すように、スタビライザ24がランス302よりも先端側に位置する。これにより、ランス302が下方、かつ、幅方向D2一方側に復元して、箱部21及びスタビライザ24の双方の後端を係止する。また、このとき、端子金具2の先端がガイド壁316に係止され、端子金具2がガイド壁316を超えて挿入方向D1先端側に行かないようになっている。
【0037】
その後、フロントホルダ4を後端側に向かって押し込むと、本係止部42bがハウジング3に係止される。このとき、フロントホルダ4のランス押下部48がランス302後端の上方に位置し、ランス302を下側に押し下げる。これにより、ランス302による端子金具2の係止力をさらに向上させることができる。また、ガイド壁46が端子金具2の先端に当接して、端子金具2を係止する。さらに、底壁41及びフロント隔壁45の後端に設けた切欠部47にハウジング3の位置決め凸部312が嵌合する。
【0038】
上述した実施形態によれば、ランス302は、幅方向D2に対向する側面のうちスタビライザ24側の側面S1に傾斜面が設けられている。これにより、端子金具2の挿入時に傾斜面がスタビライザ24により押されてランス302が、幅方向D2に撓む。ランス302の撓み方向を上下方向及び幅方向の2方向とすることにより、端子金具2の挿入力の低減を図ることができる。
【0039】
上述した実施形態によれば、ランス302がスタビライザ24を係止する。これにより、端子収容室301内における端子金具2の保持力を向上できる。
【0040】
上述した実施形態によれば、端子金具2の箱部21の先端がランス302を上下方向D3に変形させる。その後、端子金具2をさらに挿入すると後端に設けたスタビライザ24がランス302を幅方向D2に変形させる。そして、端子金具2を端子収容室301内に収容するとランス302が箱部21及びスタビライザ24の双方を係止する。これにより、端子金具2を挿入する際、ランス302が最初に上下方向に撓み、その後、幅方向D2に撓むため、より一層、端子金具2の挿入力の低減を図ることができる。また、ランス302が箱部21及びスタビライザ24の双方を係止することにより、端子金具2の保持力を向上できる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
上述した実施形態によれば、コネクタ1は、フロントホルダ4を備えていたが、これに限ったものではない。フロントホルダ4は、必須ではなく、なくてもよい。
【0043】
上述した実施形態によれば、スタビライザ24を箱部21の後端に設けて、ランス302がスタビライザ24を係止するようにしていたが、これに限ったものではない。ランス302がスタビライザ24を係止することは必須ではない。スタビライザ24としては、箱部21の挿入方向D1中央に設けてもよく、ランス302はスタビライザ24を係止しなくてもよい。
【0044】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
端子金具(2)と、
前記端子金具(2)を挿入可能な端子収容室(301)と、前記端子金具(2)の挿入方向(D1)に交差する第1撓み方向(D3)に撓むことが可能になるように、前記挿入方向(D1)の後端側が固定端となり、前記挿入方向(D1)の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成され、前記端子金具(2)の前記挿入方向(D1)の後端側を係止する係止片(302)と、を有するハウジング(3)と、を備えるコネクタ(1)において、
前記端子金具(2)は、前記第1撓み方向(D3)に突出する突出部(24)を有し、
前記係止片(302)は、前記挿入方向(D1)及び前記第1撓み方向(D3)の双方に交差する第2撓み方向(D2)に撓むことが可能に構成され、前記第2撓み方向(D2)に対向する側面(S1)のうち前記突出部(24)側に、前記挿入方向(D1)の先端側に向かうに従って前記第2撓み方向(D2)において前記突出部(24)に近づく傾斜面が設けられた、
コネクタ(1)。
[2]
[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記端子金具(2)の挿入時に前記傾斜面が前記突出部(24)により押されて前記係止片(302)が、前記第2撓み方向(D2)に撓む、
コネクタ(1)。
[3]
[1]又は[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記係止片(302)が、前記突出部(24)の前記挿入方向(D1)の後端側を係止する、
コネクタ(1)。
[4]
[3]に記載のコネクタ(1)において、
前記端子金具(2)が、相手方端子金具が挿入されることになる箱部(21)を有し、
前記突出部(24)が、前記箱部(21)の前記挿入方向(D1)の後端から突出して設けられ、
前記係止片(302)が、前記箱部(21)及び前記突出部(24)の双方を係止する、
コネクタ(1)。
【符号の説明】
【0045】
1 コネクタ
2 端子金具
3 ハウジング
21 箱部
24 スタビライザ(突出部)
301 端子収容室
302 ランス(係止片)
D1 挿入方向
D2 幅方向(第2撓み方向)
D3 上下方向(第1撓み方向)
S1 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8