(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20240214BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F13/534 100
A61F13/535 100
(21)【出願番号】P 2020127070
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-195856(JP,A)
【文献】特開2019-63098(JP,A)
【文献】特開2018-138065(JP,A)
【文献】特表2018-502627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シートと、前記第1シートよりも幅広の第2シートと、前記第2シートよりも幅広の第3シートと、をこの順に積層した3層積層体を含み、
前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、いずれも、複数の起毛繊維が立設された起毛面及び非起毛面を有し、前記非起毛面が前記トップシートを臨むように配置される基体不織布と、前記基体不織布の前記起毛面の前記起毛繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、前記起毛面に前記高吸収性ポリマーを固着担持した前記基体不織布の全体を包む親水性シートと、を含む高吸収性シートであり、
前記第1シートと前記第2シートとの層間、及び前記第2シートと前記第3シートとの層間に設けられ、これらを固定する接着手段をさらに備え、
前記接着手段は、前記吸収体の長さ方向、及び幅方向の略中心の、前記着用者の股下部に当接する位置で、直線状に帯状に延びる2本の領域が交差した略X字状の平面視形状を有するホットメルト接着剤層であり、
前記ホットメルト接着剤層の接着面積は、前記ホットメルト接着剤層の肌側に位置する前記第1シートの面積又は前記第2シートの面積の9%以上38%以下であり、
前記第1シート、前記第2シート及び前記第3シートは、それぞれ、前記ホットメルト接着剤層と厚み方向に重なる位置に、前記高吸収性ポリマーの目付がその周囲の通常散布域よりも低い低目付域を有し、
前記低目付域は、前記吸収体の長さ方向、及び幅方向の前記略中心を含んだ、長さ140mm以上、前記第1シート、前記第2シート又は前記第3シートのシート長さの60%以上85%以下の領域に設けられたことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、それぞれ、長さ方向の中央部周辺の幅方向両縁辺が幅方向両内側に曲線状に切れ込んで、幅方向に凸状に対向する脚周りくびれ部を有し、
前記第1シートの前記脚周りくびれ部の曲率半径R1が380mm以上680mm以下、前記第2シートの前記脚周りくびれ部の曲率半径R2が360mm以上660mm以下、前記第3シートの前記脚周りくびれ部の曲率半径R3が340mm以上640mm以下であり、曲率半径R1>曲率半径R2>曲率半径R3である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記3層積層体の圧縮回復性が40%以上である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、いずれも一方向に長い形状を有し、前記第1シートの対角線の交点、前記第2シートの対角線の交点、及び前記第3シートの対角線の交点が厚み方向に重なるように積層されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、一般に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備え、トップシートを透過した尿等の体液を、吸収体で吸収及び保持するように構成されている。吸収性物品には、成人用又は幼児用を問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド等、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
従来から、吸収体としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)とを併用することが一般的である。フラッフパルプとSAPとを含むフラッフパルプ吸収体は、良好な吸収性能や肌触り、装着感を有するものの、最近では、吸収性物品を着けていることが目立たず、着用時に違和感がなく、つけている感がない薄型の吸収性物品が望まれている。また、要介護者にとっても、フィット性の良好な薄型の吸収性物品は心地よく、体の向きを変えやすく、望ましいものである。
【0004】
吸収性物品を薄型化する上では、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が大きな課題になる。このような薄型吸収体として、例えば、2枚の不織布と、これらの間にホットメルト接着剤により固着担持されたSAP粒子と、を含む高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)、及びSAPシートを吸収体として用いた吸収性物品がそれぞれ提案されている。
【0005】
特許文献1には、吸収体の厚みの増加を防止しつつ、体液吸収量を向上させることを目的として、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体とを備え、吸収体は、着用者の非肌側に位置する下層吸収体と、着用者の肌側に位置し、下層吸収体の肌側面の長手方向及び幅方向の中央部に配置された上層吸収体とを有し、上層吸収体は、第1の不織布と、第2の不織布と、これらの間に保持されたSAP粒子とを含むSAPシートであり、下層吸収体はフラッフパルプ吸収体であり、上層吸収体の幅方向両端部に設けられ、上層吸収体と下層吸収体とを接合した2つの接合部と、これらの接合部の間を上層吸収体の長手方向の一端から他端まで延びるように設けられ、上層吸収体と下層吸収体とを接合していない非接合部と、を有する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、上層吸収体である薄型のSAPシートと、下層吸収体であるフラッフパルプ吸収体との組み合わせにより、体液吸収量の向上を図っている。しかしながら、フラッフパルプ吸収体とSAPシートとでは構造や強度、密度、体液吸収後の性状等が全く異なることから、体液を複数回吸収する間に全体としての吸収体に変形を生じ、体液の漏れ、吸収速度や吸収量等の吸収性能の低下、装着感やフィット性の低下といった問題が生じやすくなる。特許文献1では、上層吸収体と下層吸収体との間に上述の接合部と非接合部とを設けているが、このような構造は吸収体の変形を助長することがある。
【0008】
また、複数のSAPシートを積層して吸収体を構成した場合、従来のフラッフパルプ吸収体より薄くなるが、吸収体の剛性が比較的高くなる傾向があり、良好なフィット性を保てなくなる。健康寿命の延長を図るため介助によるトイレ誘導が推奨されており、極力日常の動きを妨げない吸収性物品のニーズが高まっている。フィット性、密着性を保ちながら、薄型で吸収力を長時間維持できる吸収性物品が求められている。また、吸収性物品の長時間着用を想定する場合、特に体液吸収後のSAPの膨潤によるフィット性の低下を抑制することが求められている。
【0009】
本発明の目的は、フィット性、密着性を保ちながら、薄型で吸収力を長時間維持できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の構造を有する高吸収性シートを厚み方向に重ね合わせ、着用者の肌側から非肌側に向けて順次幅広とした3層積層体を含み、高吸収性シートの各層間には、平面視形状が略X字状である所定面積のホットメルト接着剤層を設け、ホットメルト接着剤層と厚み方向に重なり、かつそれ以外の領域(通常散布域)よりも高吸収性ポリマーの目付量が低い所定寸法の低目付域を各高吸収性シートに設けた吸収体を用いることにより、薄型で所望の特性を有する吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0011】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シートと、前記第1シートよりも幅広の第2シートと、前記第2シートよりも幅広の第3シートと、をこの順に積層した3層積層体を含み、
前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、いずれも、複数の起毛繊維が立設された起毛面及び非起毛面を有し、前記非起毛面が前記トップシートを臨むように配置される基体不織布と、前記基体不織布の前記起毛面の前記起毛繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、前記起毛面に前記高吸収性ポリマーを固着担持した前記基体不織布の全体を包む親水性シートと、を含む高吸収性シートであり、
前記第1シートと前記第2シートとの層間、及び前記第2シートと前記第3シートとの層間に設けられ、これらを固定する接着手段をさらに備え、
前記接着手段は、前記吸収体の長さ方向、及び幅方向の略中心の、前記着用者の股下部に当接する位置で、直線状に帯状に延びる2本の領域が交差した略X字状の平面視形状を有するホットメルト接着剤層であり、
前記ホットメルト接着剤層の接着面積は、前記ホットメルト接着剤層の肌側に位置する前記第1シートの面積又は前記第2シートの面積の9%以上38%以下であり、
前記第1シート、前記第2シート及び前記第3シートは、それぞれ、前記ホットメルト接着剤層と厚み方向に重なる位置に、前記高吸収性ポリマーの目付がその周囲の通常散布域よりも低い低目付域を有し、かつ、
前記低目付域は、前記吸収体の長さ方向、及び幅方向の前記略中心を含んだ、長さ140mm以上、前記第1シート、前記第2シート又は前記第3シートのシート長さの60%以上85%以下の領域に設けられたことを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、それぞれ、長さ方向の中央部周辺の幅方向両縁辺が幅方向両内側に曲線状に切れ込んで、幅方向に凸状に対向する脚周りくびれ部を有し、
前記第1シートの前記脚周りくびれ部の曲率半径R1が380mm以上680mm以下、前記第2シートの前記脚周りくびれ部の曲率半径R2が360mm以上660mm以下、前記第3シートの前記脚周りくびれ部の曲率半径R3が340mm以上640mm以下であり、曲率半径R1>曲率半径R2>曲率半径R3である、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記3層積層体の圧縮回復性が40%以上である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記第1シート、前記第2シート、及び前記第3シートは、いずれも一方向に長い形状を有し、前記第1シートの対角線の交点、前記第2シートの対角線の交点、及び前記第3シートの対角線の交点が厚み方向に重なるように積層されている、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィット性、密着性を保ちながら、薄型で吸収力を長時間維持できる吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態である吸収性物品の構成を示す模式平面図である。
【
図2】
図1に示すX
1-X
1切断線における幅方向の模式断面図である。
【
図3】
図1に示す吸収性物品中吸収体の構成を示す模式平面図である。
【
図4】
図3に示す吸収体の幅方向断面図である。(a)は
図3に示すA-A切断線における幅方向の模式断面図であり、(b)は
図3に示すB-B切断線における幅方向の模式断面図である。
【
図5】
図3に示す吸収体の着用時の変形の様子を示す模式断面図である。
【
図6】第1シートと第2シートとの層間に設けられたホットメルト接着剤層、及び第2シートと第3シートとの層間に設けられたホットメルト接着剤層を示す模式平面図である。(a)は吸収体を示す。(b)は第1シートと、第2シートと、その層間のホットメルト接着剤層とを示す。(c)は第2シートと、第3シートと、その層間のホットメルト接着剤層とを示す。
【
図7】ホットメルト接着剤層の接着面積率の算出方法を説明する模式平面図である。
【
図8】
図3に示す吸収体の作用効果の一部を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向(又は長手方向)とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股下部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の吸収性物品50について説明する。
図1及び
図2は、第1実施形態に係る吸収性物品50を示す。
図3~
図8は、吸収体20について示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50は、例えば、寝たきりではなく介助付きであればトイレ誘導可能な被介護者、仰臥位が主な使用シーンである寝たきりの被介護者等に好適に使用されるが、着用を気付かれたくない介護不要者にも好適に使用できる。吸収性物品50の、長さ(長さ方向寸法、以下同じ)、及び幅(幅方向寸法、以下同じ)はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品を容易に得ることができる。
【0017】
吸収性物品50は、
図1及び
図2に示すように、吸収性物品50を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、吸収性物品50を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20はトップシート10とバックシート30との間に第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の3層積層体が挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート10を通して吸収体20に吸収及び保持される。第1シート60と第2シート70とは、及び第2シート70と第3シート80とは、それぞれ略X字状の平面視形状を有するホットメルト接着剤層90、91により接着され、さらに、第1シート60、第2シート70、及び第第3シート80の各所定の位置には、剛性緩衝域(剛性が高くなるのを抑制する領域)としても機能する低目付域61、71、81が設けられている。吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
本実施形態によれば、第1に、吸収体20が、着用者の肌側から非肌側にいくにつれて幅広になる第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の3層積層体を構成し、該3層積層体が凸形状をとることで、吸収体20ひいては吸収性物品50の、着用者の股下部へのフィット性が向上する。
第2に、吸収体20の、着用者の股下部に当接する領域を中心にして交差する略X字状の接着手段(ホットメルト接着剤層90、91)で第1シート60と第2シート70とを、及び第2シート70と第3シート80とをそれぞれ固定することで、比較的少ない接着面積により従来の高吸収性シートに生じやすい固さが緩和され、良好な屈曲性、可動性が得られると共に、
図8に示すような動作による吸収体20のヨレも防止され、これらの効果が1日程度の長時間着用でも維持される耐久性が付与された吸収性物品50が得られる。
第3に、第1シート60と第2シート70との接着面積、及び第2シート70と第3シート80との接着面積を所定範囲から選択するとともに、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80に、接着手段(ホットメルト接着剤層90、91)と厚み方向に重なり、例えば剛性緩衝域として機能する、高吸収ポリマー低目付域61、71、81を設けることにより、屈曲性、柔軟性をさらに高め、動作に追随しやすく、適度の剛性を維持しつつ、変形自在な吸収性物品50が得られる。
第4に、非肌側面を起毛面11aとした毛羽立ち基体不織布11をコアにした第1シート60、第2シート70、及び第3シート80を積層して用いることで、圧縮回復性ひいてはクッション性が良好であり、動作による負荷に対し密着性を保ちつつ吸収性を発揮しやすい吸収性物品50が得られる。
【0019】
以下、シート状の各構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状以外の立体構造を有していてもよい。
【0020】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。
【0021】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。また、肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0022】
(吸収体)
吸収体20は、長さが例えば100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲であり、幅が例えば50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は90mm以上190mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長さが180mm以上480mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅がともに60mm以上160mm以下の範囲であり、着用者の股下部に当接する股部の幅が50mm以上140mm以下の範囲である。また、吸収体20の厚みは、後述する構成を採用することにより、例えば、2.7mm以上5.4mm以下の範囲の、薄型にすることができる。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられ、これらの中でも砂時計型が好ましい。
【0023】
以下、本実施形態の吸収体20について、3層積層体、ホットメルト接着剤層90、91、並びに、低目付域61、71、81の順で説明する。
【0024】
(3層積層体)
本実施形態の吸収体20は、
図2~
図4に示すように、吸収性物品50を身体に着用したときに、着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シート60、第1シート60よりも幅広の第2シート70、及び第2シート70よりも幅広の第3シート80をこの順に厚み方向に積層した3層積層体(以下単に「3層積層体」ともいう)を含む。すなわち、第1シート60は着用者の最も肌側に位置し、第3シート80は着用者の最も非肌側に位置し、第2シート70は第1シート60と第3シート80との間に位置し、それぞれの幅が肌側から非肌側に向けて段階的に大きくなるように構成している。また、本実施形態では、着用者の肌側から非肌側に向けて、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の各長さが段階的に大きくなるように構成され、3層積層体は、全体として凸状の立体形状を有している。
【0025】
3層積層体が凸状の立体形状を有すると、着用者の股下部(股ぐり)にフィットし、後述する剛性緩衝域としての低目付域61、71、81と協働して、体液吸収の前後に関係なく密着性や可動性が高まりフィット性が向上し、体液拡散性も向上するため、3層積層体の吸収能力を余さず有効に活かすことができる。また、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80のすべてが、トップシート10を介して供給される体液を直接受け止める肌側の露出面を有することになり、吸収体20全体としての体液拡散性を向上させることができる。
【0026】
図4に示すように、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は幅が異なるものの、同じ構造の高吸収性シートから構成されている。すなわち、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は、それぞれ、高吸収性ポリマー12を起毛面11aに固着担持した基体不織布11の全体を、親水性シート13による内三つ折り(以下「C折り」ともいう)で包んだ構造を有する、フラッフパルプを含有しない高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)である。基体不織布11は、一方の表面が起毛面11a及び他方の表面が非起毛面11bであり、起毛面11aは複数の起毛繊維11xを立設した面であり、クッション性を有し、非起毛面11bがトップシート10を臨むように基体不織布11が配置されている。起毛面11aは、複数の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12が固着担持され、SAP層を形成している。SAP層は、後述するように、高吸収性ポリマー12を通常の目付で固着担持させた通常散布域と、高吸収性ポリマー12の目付が通常散布域よりも相対的に低い低目付域61、71、81と、を含んでいる。本実施形態では、複数の起毛繊維11xを立設した起毛面11aを有する基体不織布11が良好なクッション性、フィット性を示すことで、良好な着用感が得られる。
【0027】
このような基体不織布11を含む第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の3層積層体は、圧縮回復性が40%以下の範囲である。本明細書において、圧縮回復性は、圧縮回復性RC(%)を意味する。圧縮回復性RC(%)は、圧縮に対する弾性を示すもので、数値が高いほど圧縮に対する反発性を有することを意味する。圧縮回復性RC(%)は、ハンディ圧縮試験機(商品名:KES-G5、カトーテック(株)製)を用い、試験台に吸収体20の試料(10cm×10cm、3層が重なった部分)を置き、面積2cm2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.1cm/秒、最大圧縮応力20gf/cm2の条件で試料に押し込み圧縮し、得られた測定データをもとに数値処理により算出することができる。
【0028】
(基体不織布)
図4に示すように、基体不織布11の片側表面11aは、基体不織布11を構成する繊維が起毛した起毛繊維11xである。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート10に適度な厚みとやわらかさが付与されることで、クッション性が発生し、着用時のフィット性が向上する。また、基体不織布11を上記のように起毛させると、基体不織布11の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0029】
本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、基体不織布11の起毛率は5%以上90%以下が好ましく、8%以上80%以下であることがより好ましい。なお、起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)は、[(T2―T1)/T1]×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。なお、基体不織布11のもう一方の面は本実施形態では非起毛面11bであるが、これに限定されず、繊維を起毛させてもよい。
【0030】
基体不織布11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、エアスルー不織布が好ましい。
【0031】
基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は特に限定されないが、例えば、20g/m2以上200g/m2以下の範囲、20g/m2以上160g/m2以下の範囲、又は20g/m2以上80g/m2以下の範囲である。
【0032】
基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が20g/m2以上80g/m2以下の範囲であり、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。エアスルー不織布を構成する繊維の太さを上述の範囲に調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0033】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、尿等の体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。基体不織布11の起毛面11aの通常散布域における高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、150g/m2以上800g/m2以下の範囲である。
【0034】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート10が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー12としては中位粒子径を有する粒子状の高吸収性ポリマー12を用いることが好ましい。該中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0035】
高吸収性ポリマー12は、ホットメルト接着剤により、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持されていることが好ましく、基体不織布11の坪量が比較的低い場合に、高吸収性ポリマー12の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー12の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m2以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0036】
(親水性シート)
親水性シート13としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、ティシュペーパー、吸収紙等のパルプ含有基材、スパンボンド不織布、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、例えば、入手性やコスト等の観点から、パルプ含有基材やエアレイド不織布が好ましい。親水性シート13の坪量は、例えば、10g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は13g/m2以上50g/m2以下の範囲である。
【0037】
好ましい実施形態では、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は、それぞれ、長さ方向の中央部周辺の幅方向両縁辺が幅方向両内側に曲線状に切れ込んで、幅方向に凸状に対向する脚周りくびれ部を有している。これは、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の各平面視形状が、例えば、砂時計型であることを意味している。着用者の脚周りの快適性や動きやすさ等の観点から、第1シート60の脚周りくびれ部の曲率半径R1は380mm以上680mm以下の範囲、第2シート70の脚周りくびれ部の曲率半径R2が360mm以上660mm以下の範囲、第3シート80の脚周りくびれ部の曲率半径R3が340mm以上640mm以下の範囲であり、曲率半径R1>曲率半径R2>曲率半径R3である。
【0038】
なお、第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の平面視形状は、いずれも砂時計型であるが、本実施形態に限定されず、例えば、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。本実施形態の第1シート60、第2シート70、及び第3シート80は、対角線の交点(又は各幅方向中心線と各長さ方向中心線との交点)が厚み方向に重なるように積層されているが、これに限定されず、各幅方向中心線及び各長さ方向中心線の少なくとも1つが厚み方向に重ならないように積層してもよい。
【0039】
(ホットメルト接着剤層)
図2、及び
図3に示すように、第1シート60と第2シート70との層間、及び第2シート70と第3シート80との層間には、それぞれ、これらを固定する接着手段として、ホットメルト接着剤層90、91が設けられている。ホットメルト接着剤層90、91は、いずれも、吸収体20(又は3層積層体の中でも長さ及び幅が最も大きい第3シート80)の長さ方向、及び幅方向の略中心であって、着用者の股下部に当接する位置及びその近傍で、直線状に帯状に延びる2本の領域が交差した略X字状の平面視形状を有している。この2本の領域は、例えば、第1シート60の対角線又は第2シート70の対角線に沿って設けられる。ホットメルト接着剤層90、91に用いられるホットメルト接着剤としては、上述した、高吸収性ポリマー12の固着担持に用いられるものと同じものを使用できる。
【0040】
本発明者の研究によれば、ホットメルト接着剤層90、91が略X字状の平面視形状を有することで、ホットメルト接着剤層90、91による接着面積を減らしても、十分な補強効果が得られ、吸収体20全体の剛性が向上するとともに、接着面積を減らすことで、吸収体20の肌触りやフィット性の良好さが損なわれることがない。
【0041】
ホットメルト接着剤層90の接着面積は、
図7(b)に示すように、ホットメルト接着剤層90の面積の、第1シート60の全面積に対する割合(接着面積率、%)として表される。同様に、ホットメルト接着剤層91の接着面積は、ホットメルト接着剤層91の面積の、第2シート70の全面積に対する割合(接着面積率、%)として表される。ホットメルト接着剤層90、91の接着面積率はともに、上述の効果を十分に発揮させる観点から、例えば、9%以上38%以下である。9%未満では、吸収体20の剛性が低下する傾向がある。38%を超えると、吸収体20の肌触りやフィット性が損なわれる傾向がある。ここで、ホットメルト接着剤層90、91の面積、第1シート60及び第2シート70の面積は、例えば、3D形状測定マイクロスコープ ワンショットVR-3000(商品名、製造元:株式会社キーエンス)を用いて求めることができる。
【0042】
(低目付域)
図4に示すように、第1シート60、第2シート70及び第3シート80の各SAP層は、ホットメルト接着剤層90、91と厚み方向に重なる位置に、高吸収性ポリマー12の目付がその周囲の通常散布域よりも低い低目付域61、71、81を有している。本実施形態では、低目付域61、71、81の高吸収性ポリマー12の目付は、通常散布域よりも低目付であれば特に限定されないが、例えば、60g/m
2以下の範囲である。なお、本実施形態の低目付域61、71、81は、高吸収性ポリマー12が固着担持されていない領域として構成されている。
【0043】
低目付域61、71、81は、通常散布域に比べて高吸収性ポリマー12の量が少ないことから、通常散布域に比べて屈曲性に富む領域となっている。したがって、
図5に示すように、吸収体20が変形するときには、低目付域61、71、81を中心にして折れ曲がりが生じやすくなり、吸収体20の変形自由度が高まる。その結果、着用者の股下部の形状に合わせて、吸収体20、ひいては吸収性物品50が変形しやすくなり、フィット性を高めることができる。また、低目付域61、71、81を設けても、吸収体20が3層積層体であることから、体液吸収量や繰返し吸収速度等の吸収性能は高水準に維持されている。
【0044】
本実施形態の低目付域61、71、81は、ホットメルト接着剤層90、91と同じ、略X字状の平面視形状を有するように設けられている。これにより、ホットメルト接着剤層90、91による剛性の高まりや、通常散布域に固着担持された高吸収性ポリマー12の体液吸収に起因する第1シート60、第2シート70、及び第3シート80の剛性の高まりが生じても、吸収体20全体としての剛性の高まりを抑制し、吸収体20の変形自由度を高水準に維持することができる。
【0045】
低目付域61、71、81の最長部分の長さは、前述の効果を十分発揮させる観点から、吸収体20の長さ方向、及び幅方向の略中心を含んだ長さとして140mm以上であり、かつ第1シート60、第2シート70又は第3シート80の各シート長さの60%以上85%以下の領域に設けられている。好ましい実施形態では、この領域は、長さ方向の中心を含んで各シート長さの60%以上85%以下の範囲である。この実施形態によれば、低目付域61、71、81の前述の効果を安定的に発揮させることができる。
【0046】
本実施形態では、吸収体20の形状の安定化等の観点から、吸収体20の全体を包むキャリアシート(不図示)を用いてもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0047】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体20が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布、これらの2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0048】
バックシート30の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。また、装着時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート30が好ましい。バックシート30に通気性を付与するには、例えば、樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施す方法等を利用できる。ここで、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、フィラーを公知の方法に従って配合できる。
【0049】
(立体ギャザー)
吸収性物品50は、
図1に示すように、例えば、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品50の長手方向に沿って、トップシート10の肌側面の両側端部付近に、一対の立体ギャザー40を備えている。本実施形態の立体ギャザー40は、幅方向一端がバックシート30の肌側面の両側端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の両側端部付近に固定され、その幅方向他端はトップシート10に固定されない自由端40aである。自由端40a付近に弾性伸縮部材(不図示)を長手方向に沿って配設すると、自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
【0050】
立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10とバックシート30との各縁辺を部分的又は全体的に接合し、内部に吸収体20を収納した袋体の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品50は、立体ギャザー40を含まない実施形態をも包含する。
【0051】
立体ギャザー40を構成するシート部材としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は液不透過性の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が挙げられる。弾性伸縮部材としては、この分野での常用品を特に限定なく使用でき、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が挙げられる。
【0052】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0053】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0054】
10 トップシート
20 吸収体
30 バックシート
40 立体ギャザー
50 吸収性物品
60 第1シート
61 低目付域
70 第2シート
71 低目付域
80 第3シート
81 低目付域
90、91 ホットメルト接着剤層