(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】耐放射線回路、および耐放射線回路の自己診断方法
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20240214BHJP
H03K 19/003 20060101ALI20240214BHJP
H03K 17/693 20060101ALI20240214BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240214BHJP
G01R 31/30 20060101ALI20240214BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240214BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
H03K17/00 B
H03K19/003 130
H03K17/693 A
H03K17/687 G
G01R31/30
G01R31/28 V
G01R31/26 B
(21)【出願番号】P 2020136120
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 諒
(72)【発明者】
【氏名】増永 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 睦三
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷部 祐
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-236687(JP,A)
【文献】特開2007-309773(JP,A)
【文献】特開2014-022856(JP,A)
【文献】特表2017-502273(JP,A)
【文献】特開2009-110516(JP,A)
【文献】特開昭58-180955(JP,A)
【文献】特開2013-140100(JP,A)
【文献】特開2003-347914(JP,A)
【文献】特開平07-294688(JP,A)
【文献】特開2007-285764(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0008294(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00ー17/70
H03K 19/003
G01R 31/30
G01R 31/28
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線領域に設置され、pMOSとnMOSの並列回路で構成されたアナログスイッチ回路と、
既知の信号であるパイロット信号を生成し、前記アナログスイッチ回路の第1端子に
入力するパイロット信号生成部と、
非放射線領域に設置され、前記アナログスイッチ回路を通過して当該アナログスイッチ回路の第2端子から出力される前記パイロット信号をもとに、放射線劣化に関わる信号処理を行う信号処理部と、
非放射線領域に設置され、前記信号処理部の出力
をもとに、前記アナログスイッチ回路
の放射線による劣化状況と、前記アナログスイッチ回路を含む自己装置の劣化の状態を診断する自己診断部と、を備え、
前記信号処理部は、
前記放射線の照射により前記nMOSよりも先に劣化が起る前記pMOSにおいて、前記pMOSの劣化の発生に起因する前記pMOSと前記nMOSの特性差によって、前記アナログスイッチ回路を通過する前記パイロット信号に生じさせる信号の歪みを、前記信号処理して出力する、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記信号処理部は、前記pMOSが、前記nMOSよりも放射線劣化が速いことに起因する、前記pMOSに流れる電流と前記nMOSに流れる電流の変化から、前記アナログスイッチ回路の放射線劣化に関わる信号処理を行う
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記アナログスイッチ回路の
前記pMOSと
前記nMOSは、シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有する半導体を用いて構成される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項4】
請求項
3において、
前記アナログスイッチ回路の
前記pMOSと
前記nMOSは、シリコンカーバイドによる半導体を有して構成される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項5】
請求項1において、
前記アナログスイッチ回路と前記パイロット信号生成部は、放射線領域に設置され、
前記信号処理部と前記自己診断部は、非放射線領域に設置される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項6】
請求項1において、
放射線の照射に対する前記パイロット信号生成部のパイロット信号のアナログスイッチ回路におけるpMOSとnMOSの劣化の差により生じる信号歪みを、あらかじめデータベースとして有するデータベース部を備え、
前記自己診断部は、前記信号処理部の出力信号を診断する際に、前記データベース部のデータを参照する、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項7】
請求項1において、
前記パイロット信号生成部は、半導体のバンドギャップに対応する信号を出力するバンドギャップリファレンス回路で構成される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項8】
請求項1において、
前記パイロット信号生成部は、固定電圧の電池、またはツェナーダイオードを備えて構成される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項9】
請求項5において、
放射線領域に設置された前記アナログスイッチ回路の異状を表示するアラーム表示部を備え、
前記アラーム表示部は、前記信号処理部、または前記自己診断部のアラーム指令によって、アラーム表示をする、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項10】
放射線領域に設置され、pMOSとnMOSの並列回路で構成されたアナログスイッチ回路と、当該の複数のアナログスイッチ回路を選択するデコーダ回路とを有するマルチプレクサ回路と、
既知の信号であるパイロット信号を生成し、前記マルチプレクサ回路の複数の前記アナログスイッチ回路のそれぞれの第1端子に入力するパイロット信号生成部と、
非放射線領域に設置され、前記アナログスイッチ回路を通過して当該アナログスイッチ回路のそれぞれの
第2端子から出力される前記パイロット信号をもとに、放射線劣化に関わる信号処理を行う信号処理部と、
非放射線領域に設置され、前記信号処理部の出力
をもとに、前記アナログスイッチ回路
の放射線による劣化状況と、前記アナログスイッチ回路を含む自己装置の劣化の状態を診断する自己診断部と、を備え、
前記マルチプレクサ回路は、複数の
前記アナログスイッチ回路のそれぞれの
前記第1端子に前記パイロット信号生成部の信号と一つ以上の計測機器の信号のいずれかをそれぞれ入力し、複数のアナログスイッチ回路のそれぞれの
前記第2端子が互いに接続され、前記デコーダ回路によって選択された一つのアナログスイッチ回路の
前記第2端子の信号が前記マルチプレクサ回路の出力として出力され、
前記信号処理部は、
前記放射線の照射により前記nMOSよりも先に劣化が起る前記pMOSにおいて、前記pMOSの劣化の発生に起因する前記pMOSと前記nMOSの特性差によって、前記アナログスイッチ回路を通過する前記パイロット信号に生じさせる信号の歪みを、前記信号処理して出力する、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項11】
請求項10において、
前記パイロット信号生成部の信号は、前記マルチプレクサ回路の複数のアナログスイッチ回路の第1端子のいずれかに接続される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項12】
請求項10において、
前記パイロット信号生成部の信号と、前記計測機器の計測信号とを切り替えが可能なアナログスイッチ切替回路を備える、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項13】
請求項10において、
前記マルチプレクサ回路と前記パイロット信号生成部と前記計測機器は、放射線領域に設置され、
前記信号処理部と前記自己診断部は、非放射線領域に設置される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項14】
請求項10において、
前記マルチプレクサ回路の前記デコーダ回路を制御する複数の制御信号は、1本のケーブルに収納される、
ことを特徴とする耐放射線回路。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の耐放射線回路を備え、
放射線領域に設置された前記pMOSとnMOSの劣化の差により生じる信号歪みを検出して耐放射線回路の劣化を診断する耐放射線回路の自己診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐放射線回路、および耐放射線回路の自己診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線の環境下における回路装置の保全を図る必要があるものとして、例えば原子力プラントがある。
原子力プラントでは、プラント内や施設内を監視するために、多くの計測装置(計測機器、計測器)が設置されている。これらの計測装置を構成する半導体回路は、放射線で劣化する可能性がある。
この半導体回路が放射線で劣化する可能性に対して、半導体回路部に従来のSi(シリコン)を用いたSi半導体から、SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)のようなバンドギャップの広い、高バンドギャップ半導体を用いることで、半導体回路の放射線耐性を大幅に向上させている。
しかし、この対策においても、放射線の積算線量がkGy~MGyオーダとなると、放射線によって半導体回路が劣化する可能性がある。
そのため、半導体回路の健全性を確認する手段が必要である。
【0003】
このような技術に関連するものとして、例えば特許文献1がある。
特許文献1の[要約]には、「[目的]本発明は、伝送異常の発生箇所を自己診断で特定でき、信頼性及び保守性の向上とシステム稼働率の改善を図ることを目的とする。[構成]データ端末装置10Aの伝送コントローラ12から他データ端末装置10Bへ伝送データを出力し、他から送られてくるデータを伝送コントローラ12の受信端子から入力する伝送装置であり、テストデータを他のデータ端末装置10Bへ向けて送出し且つ返信データから異常診断を行う診断手段11と、伝送コントローラ12の受信端子の前段に設けられ他のデータ端末装置10Bから送られてきたデータがテストデータか否か判別するデータ検出手段13と、伝送コントローラ12の送信端子の前段に設けられデータ検出手段13でテストデータと判別されたならば他のデータ端末装置10Bから送られてきたデータを伝送元のデータ端末装置10Bへ返す返送手段14とを備えたことを特徴とする。」と記載され、自己診断機能付き伝送装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の特許文献1では、診断対象の回路にテストデータを送信し、返信データから異常診断を行う手段を設けている。
しかしながら、放射線環境に診断対象がある状況においては、診断対象の装置に追加で診断部(診断回路)を設けることは、放射線による故障リスクを高めてしまう可能性があるという課題(問題)がある。
【0006】
本発明は、前記した課題に鑑みて創案されたものであって、耐放射線性などの環境性能に優れ、かつ放射線による劣化を診断する耐放射線回路、および耐放射線回路の自己診断方法を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の耐放射線回路は、放射線領域に設置され、pMOSとnMOSの並列回路で構成されたアナログスイッチ回路と、既知の信号であるパイロット信号を生成し、前記アナログスイッチ回路の第1端子に入力するパイロット信号生成部と、非放射線領域に設置され、前記アナログスイッチ回路を通過して当該アナログスイッチ回路の第2端子から出力される前記パイロット信号をもとに、放射線劣化に関わる信号処理を行う信号処理部と、非放射線領域に設置され、前記信号処理部の出力をもとに、前記アナログスイッチ回路の放射線による劣化状況と、前記アナログスイッチ回路を含む自己装置の劣化の状態を診断する自己診断部と、を備え、前記信号処理部は、前記放射線の照射により前記nMOSよりも先に劣化が起る前記pMOSにおいて、前記pMOSの劣化の発生に起因する前記pMOSと前記nMOSの特性差によって、前記アナログスイッチ回路を通過する前記パイロット信号に生じさせる信号の歪みを、前記信号処理して出力する、ことを特徴とする。
【0008】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐放射線性などの耐環境性能に優れ、かつ放射線による劣化を診断する耐放射線回路、および耐放射線回路の自己診断方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。
【
図4A】本発明の第4実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。
【
図4B】本発明の第4実施形態の第1変形例におけるパイロット信号生成部の回路構成を示す図である。
【
図4C】本発明の第4実施形態の第2変形例におけるパイロット信号生成部の回路構成を示す図である。
【
図5】本発明の第5実施形態に係る耐放射線回路におけるパイロット信号生成部をバンドギャップリファレンス回路で構成した一例を示す図である。
【
図6A】本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路において、アナログスイッチ回路を複数個、用いてマルチプレクサ回路を構成した一例を示す図である。
【
図6B】本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路において、マルチプレクサ回路におけるデコーダ回路の制御信号に対する出力信号の真理値表を示す図である。
【
図6C】本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路において、マルチプレクサ回路におけるデコーダ回路の制御信号に対して、アナログスイッチ回路のいずれかを選択する論理回路を構成するための論理式表を示す図である。
【
図7】本発明の第6実施形態の変形例に係る耐放射線回路におけるマルチプレクサ回路の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。
ただし、本発明は以下の実施形態・変形例に限らず、例えば複数の実施形態・変形例を組み合わせたり、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で任意に変形したりできる。
また、本明細書において、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。図示の内容は、図示の都合上、本発明の趣旨を損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
【0012】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る耐放射線回路の構成について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。なお、以下の説明は、主として耐放射線回路についての説明であるが、耐放射線回路の自己診断方法の説明も兼ねるものとする。
また、放射線は、γ線を例として説明する。
【0013】
図1において、耐放射線回路11は、アナログスイッチ回路101、パイロット信号生成部102、信号処理部103、自己診断部104を備えて構成されている。
【0014】
アナログスイッチ回路101は、p型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であるpMOS111と、n型のMOSFETであるnMOS112が並列に接続されて構成されている。なお、pMOS111とnMOS112は、Siよりもバンドギャップの広い(高い)半導体である、例えば、SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)を用いて構成される。
【0015】
pMOS111のゲート電極1001には、制御信号1が入力している。
nMOS112のゲート電極1002には、制御信号2が入力している。
アナログスイッチ回路101は、制御信号1と制御信号2によって、導通(ON)、もしくは、遮断(OFF)される。なお、アナログスイッチ回路101を導通(ON)する場合には、制御信号1を低電位(負電位、L)とし、制御信号2を高電位(正電位、H)として、pMOS111とnMOS112を併せて導通(ON)とする。
また、アナログスイッチ回路101を遮断(OFF)する場合には、制御信号1を高電位(正電位、H)とし、制御信号2を低電位(負電位、L)として、pMOS111とnMOS112を併せて遮断(OFF)する。
【0016】
アナログスイッチ回路101の第1端子1003は、パイロット信号生成部102の出力信号(電気信号)が入力している。なお、パイロット信号生成部102のパイロット信号は、既知の信号(例えば、固定のDC電圧)である。パイロット信号生成部の具体的な構成例については、
図4A、
図4B、
図4C、
図5などを参照して後記する。
【0017】
アナログスイッチ回路101の第2端子1004は、ケーブル1010を介して信号処理部103の入力部に接続されている。すなわち、パイロット信号生成部102の出力信号(電気信号)が、アナログスイッチ回路101とケーブル1010とを介して信号処理部103に入力している。
信号処理部103から出力した信号は、自己診断部104に入力している。
【0018】
アナログスイッチ回路101とパイロット信号生成部102は、放射線の線量が高い放射線領域に設置されている。例えば原子力発電プラントの格納容器(PCV:Primary Containment Vessel)内部に設置されている。
信号処理部103と自己診断部104は、放射線の線量が低い非放射線領域(もしくは低放射線領域)に設置されている。
境界2001が放射線領域と非放射線領域の境であって、例えば原子力発電プラントの格納容器(PCV)の壁に相当する。この壁には、ケーブル1010を格納容器(PCV)の外部に引き出すための貫通部(ペネ)が設けられている。
【0019】
放射線領域に設置されているパイロット信号生成部102とアナログスイッチ回路101は、放射線の影響を受ける可能性がある。
そのため、アナログスイッチ回路101を構成するpMOS111とnMOS112の半導体素子は、前記したように、放射線の影響を受けにくい、例えばSiCを基に構成される。
パイロット信号生成部102は、鉛などの遮蔽物で覆われる場合がある。鉛などの放射線遮蔽物によって、照射される放射線量を低減する。
なお、制御信号1と制御信号2を生成する回路、または信号源は、非放射線領域に設ける場合もあるし、
図6Aを参照して後記するマルチプレクサ回路110(
図6A)のデコーダ回路120(
図6A)のように、放射線領域に設ける場合もある。
【0020】
<アナログスイッチ回路101の放射線の影響>
図1に示した構成において、前記したように、アナログスイッチ回路101は、放射線が照射される環境にあるので、アナログスイッチ回路101を構成するpMOS111とnMOS112の半導体素子は、放射線による劣化が起こることがある。
この放射線による劣化は、半導体のバンドギャップが低いほど顕著である。そのため、バンドギャップが比較的に低いSi(シリコン)を用いたpMOSとnMOSの半導体素子は、放射線による劣化が起きやすい。
この放射線による劣化を低減するために、半導体のバンドギャップがSiよりも高いSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)を
図1のpMOS111とnMOS112に用いている。
しかしながら、バンドギャップが相対的に高いSiCを用いたpMOS111とnMOS112でも、放射線による劣化が起こる可能性がある。
【0021】
SiCを用いたpMOS111とnMOS112においては、放射線が照射され続けると、nMOS(112)よりも先にpMOS(111)の劣化が起こる。具体的には放射線による電離作用によりリーク電流が増加する。
このようにpMOS111の劣化が発生すると、nMOS112とpMOS111の特性差によって、アナログスイッチ回路101を通過したパイロット信号に歪み(ドリフト)が生じる。この歪みを信号処理部103で受信し、自己診断部104で診断することで、アナログスイッチ回路101の劣化度を評価することができる。
なお、前記したように、信号処理部103と自己診断部104は、非放射線領域に設置されている。そのため、信号処理部103と自己診断部104は、放射線の影響は受けない。
【0022】
アナログスイッチ回路101は、前記のように放射線領域に設置されているので、放射線の影響が少ないことが望ましい。そのため、アナログスイッチ回路101を構成するpMOS111とnMOS112は、耐放射線性に優れるSiCを用いて構成されている。
しかしながら、pMOS111とnMOS112にSiCを用いたとしても、放射線の影響によって、半導体素子として所定の劣化が進行する。前記したように、SiCにおいては、pMOSの方がnMOSよりも放射線劣化が速い。
このように、アナログスイッチ回路101は、pMOS111とnMOS112とが放射線に対して劣化すると電気的特性が変化する。
【0023】
パイロット信号生成部102は、所定の電位の信号を生成し、アナログスイッチ回路101の第1端子1003に入力する。
アナログスイッチ回路101は、この入力した所定の電位の信号を伝達して、第2端子1004に出力する。
アナログスイッチ回路101の第2端子1004に出力された所定の信号は、前記したように、ケーブル1010を介して、信号処理部103に入力する。
【0024】
信号処理部103は、パイロット信号生成部102の信号がpMOS111とnMOS112を有するアナログスイッチ回路101を経て、入力した信号の信号処理を行う。
前記したように、アナログスイッチ回路101において、pMOS111は、nMOS112よりも放射線劣化が速い。この放射線劣化はpMOS111に流れる電流とnMOS112に流れる電流に異なる影響を与える。
信号処理部103は、これらのpMOS111に流れる電流とnMOS112に流れる電流の信号処理を行う。すなわち、pMOS111に流れる電流とnMOS112に流れる電流の変化から、アナログスイッチ回路101の放射線劣化に関わる信号処理を行う。
【0025】
自己診断部104は、信号処理部103の信号によって、耐放射線回路11の放射線劣化に関する自己診断を行う。
具体的には、自己診断部104は、信号処理部103の放射線劣化に関わる信号処理の結果を基に、アナログスイッチ回路101の劣化状況、さらには耐放射線回路11そのもの放射線劣化を解析して、耐放射線回路11としての自己診断を行う。
【0026】
<第1実施形態の総括>
耐放射線回路11は、アナログスイッチ回路101、パイロット信号生成部102、信号処理部103、自己診断部104を備えて構成されている。
アナログスイッチ回路101は、放射線の線量が高い放射線領域、例えば原子力発電プラントの格納容器(PCV)内部に設置されている。信号処理部103と自己診断部104は、放射線の線量が低い非放射線領域(もしくは低放射線領域)に設置されている。
【0027】
アナログスイッチ回路101を構成するpMOS111とnMOS112の半導体素子は、放射線の影響を受けにくい、SiCを基に構成されている。ただし、pMOS111とnMOS112にSiCを用いたとしても、放射線の影響によって、半導体素子として所定の劣化が進行する。アナログスイッチ回路101は、pMOS111とnMOS112とが放射線に対して劣化すると電気的特性が変化する。なお、nMOSよりもpMOSの方が、放射線劣化が速い。
そこで、信号処理部103は、入力した信号の変化から、アナログスイッチ回路101の放射線劣化に関わる信号処理を行う。自己診断部104は、信号処理部103の信号によって、耐放射線回路11の放射線劣化に関する自己診断を行う。
【0028】
<第1実施形態の効果>
本発明の第1実施形態の耐放射線回路によれば、SiCによるpMOSとnMOSで構成されたアナログスイッチ回路が、pMOSとnMOSの特性差によって、アナログスイッチ回路を通過したパイロット信号に歪みが生じる。この歪みを信号処理部で受信し、自己診断部で診断することで、アナログスイッチ回路の劣化度を評価することができる。
すなわち、本発明の第1実施形態によれば、耐放射線性などの耐環境性能に優れ、かつ放射線による劣化を診断する耐放射線回路、および耐放射線回路の自己診断方法を提供できる。
【0029】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る耐放射線回路の構成について、図を参照して説明する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。なお、以下の説明は、主として耐放射線回路についての説明であるが、その自己診断方法の説明も兼ねるものとする。
【0030】
図2において、耐放射線回路12は、アナログスイッチ回路101、パイロット信号生成部102、信号処理部103、自己診断部104、データベース部(DB)105を備えて構成されている。
以上の
図2に示す耐放射線回路12が、
図1の耐放射線回路11と異なるのは、データベース部(DB)105である。他の構成要素は、同じであるので重複する説明は省略する。
【0031】
データベース部105は、あらかじめ放射線の照射量に対するパイロット信号生成部102のパイロット信号のアナログスイッチ回路101を通過後における信号の歪みの影響のデータをデータベースとして蓄積している。
したがって、自己診断部104は、信号処理部103の信号を都度、演算して判定するよりは、データベース部105にあらかじめ蓄積されたデータベース(データ)を参照すれば、短時間に精度よく、アナログスイッチ回路101の劣化を診断できる。
【0032】
<第2実施形態の効果>
本発明の第2実施形態によれば、データベース部105にあらかじめ蓄積されたデータベース(データ)を参照することにより、短時間に精度よく、アナログスイッチ回路101の劣化を診断できる。
【0033】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態に係る耐放射線回路の構成について、図を参照して説明する。
図3は、本発明の第3実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。なお、以下の説明は、主として耐放射線回路についての説明であるが、その自己診断方法の説明も兼ねるものとする。
【0034】
図3において、耐放射線回路13は、アナログスイッチ回路101、パイロット信号生成部102、信号処理部103、自己診断部104、アラーム指令部106、アラーム表示部107を備えて構成されている。
以上の
図3に示す耐放射線回路15が
図1の耐放射線回路11と異なるのは、アラーム指令部106、アラーム表示部107である。他の構成要素は、同じであるので重複する説明は省略する。
【0035】
図3において、自己診断部104でアナログスイッチ回路101の故障、もしくは電気特性の劣化が検知された場合に、信号処理部103からアラーム指令部106を介して第1のアラーム指令がアラーム表示部107に発信される。
あるいは、自己診断部104から第2のアラーム指令がアラーム表示部107に発信される。
信号処理部103からアラーム指令部106を介して発信される第1のアラーム指令は、アナログスイッチ回路101が故障した場合のような重大な状況のアラームである。
また、自己診断部104から発信される第2のアラーム指令は、アナログスイッチ回路101の電気特性の劣化が検知された場合のような状況に対応するアラームである。
【0036】
アナログスイッチ回路101が故障した場合のような明確な状況は、信号処理部103の段階でも比較的容易に判定できるので、自己診断部104を介さずにアラーム表示部107にアラーム指令部106を介してアラーム(第1のアラーム指令)を出す。
また、アナログスイッチ回路101の電気特性の劣化を検知するような場合のような軽微な変化の状況においては、自己診断部104の診断を経てから、アラーム表示部107にアラーム(第2のアラーム指令)を出す。
アラーム表示部107は、第1のアラーム指令、または第2のアラーム指令を受信すると、アナログスイッチの異状(異常)を表示する。この表示は、単に異状(故障、異常)を表示するように設定する場合と、第1のアラーム指令と第2のアラーム指令を区別して、例えば第2のアラーム指令においては、詳細な情報を表示するようにも設定できる。
【0037】
<第3実施形態の効果>
本発明の第3実施形態によれば、耐放射線回路のアラーム表示を使用者(保全者)が確認しやすくなるため、機器の交換が適切に実施することができるようになる。そして機器の健全性を保証できるようになる。
【0038】
≪第4実施形態≫
本発明の第4実施形態に係る耐放射線回路の構成について、図を参照して説明する。
図4Aは、本発明の第4実施形態に係る耐放射線回路の構成例を示す図である。
図4Aにおいて、耐放射線回路14は、アナログスイッチ回路101、電池311、信号処理部103、自己診断部104を備えて構成されている。
以上の
図4に示す耐放射線回路14が
図1の耐放射線回路11と異なるのは、
図1におけるパイロット信号生成部102が、
図4におけるパイロット信号生成部202として、電池311で構成されていることである。他の構成要素は、同じであるので重複する説明は省略する。
【0039】
図4Aにおいては、前記したように、
図1におけるパイロット信号生成部102(
図4におけるパイロット信号生成部202)が電池311で構成されている。
電池311は、負極がグラウンド(GND、アース)322に接続され、正極が信号線321として、アナログスイッチ回路101の入力部の第1端子に接続されている。
電池311が安定した所定の固定電位を出力する電池であれば、
図1におけるパイロット信号生成部102の機能を有する。
なお、電池311は、放射線環境に設置してもよいし、また非放射線領域に設置してもよい。ただし、電池311の設置場所は、アナログスイッチ回路101の近傍である方がノイズの影響が少なく、安定したパイロット信号を供給できる。
また、電池311を放射線環境に設置する場合には、鉛などの放射線遮蔽物による遮蔽によって電池311に照射される放射線量を低減させてもよい
【0040】
<第4実施形態の効果>
第4実施形態の前記の構成によれば、パイロット信号生成部202としては、電池311であって、格別な回路の追加が不要であるため、比較的に簡易な構成で実現できる効果がある。
【0041】
《第4実施形態の第1変形例》
前記のように、第4実施形態として、パイロット信号生成部に、電池を用いる例を示したが、さらにツェナーダイオードを用いる例を、
図4Bを参照し、第4実施形態の第1変形例として、次に説明する。
【0042】
図4Bは、本発明の第4実施形態の第1変形例におけるパイロット信号生成部の回路構成を示す図である。
図4Bにおいて、パイロット信号生成部302は、電池411、ツェナーダイオード412、抵抗413を備えて構成されている。
電池411の負極とツェナーダイオード412のアノードは、互いに接続されているとともに、グラウンド422に接続されている。
電池411の正極とツェナーダイオード412のカソードの間に、抵抗413が接続されている。
ツェナーダイオード412のカソードは、パイロット信号生成部302の出力端子421に接続されている。
パイロット信号生成部302の出力端子421は、
図4Aまたは
図1におけるアナログスイッチ回路101の入力部の第1端子に接続される。
【0043】
図4Bにおいて、前記したように、電池411の正極は、抵抗413を介してツェナーダイオード412のカソードに接続されているので、出力端子421の電位は、ツェナーダイオード412の所定のツェナー電圧に保たれる。
なお、出力端子421からアナログスイッチ回路101(
図4A)の入力部の第1端子に流れる電流が変化しても、出力端子421の電圧は、ツェナーダイオード412の所定のツェナー電圧に保たれる。
また、電池411の電池電圧が所定の電圧範囲で変動したとしても、出力端子421の電圧は、ツェナーダイオード412の所定のツェナー電圧に保たれる。
以上の
図4Bの構成によって、パイロット信号生成部302は、電池411の電池電圧の変動やアナログスイッチ回路101(
図4A)に流れる電流が変化したとしても、パイロット信号生成部302の出力端子421に安定した電圧を供給する。
【0044】
<第4実施形態の第1変形例の効果>
第4実施形態の第1変形例の前記の構成によれば、比較的に簡易な構成でありながら、電池411の電池電圧が所定の電圧範囲で変動したとしても、また、アナログスイッチ回路101に流れる電流が変化したとしても、パイロット信号生成部302の出力端子421に安定した電圧を供給する効果がある。
【0045】
《第4実施形態の第2変形例》
前記のように、第4実施形態の第1変形例では、パイロット信号生成部に、ツェナーダイオードを用いる回路構成例を示したが、さらに第4実施形態の第2変形例として、ツェナーダイオードを用いる他の回路構成例を、
図4Cを参照して次に説明する。
【0046】
図4Cは、本発明の第4実施形態の第2変形例におけるパイロット信号生成部の回路構成を示す図である。
図4Cにおいて、パイロット信号生成部402は、ツェナーダイオード412、抵抗413、コンデンサ414を備えて構成されている。また入力端子432、出力端子431、グラウンド422を備えている。
ツェナーダイオード412とコンデンサ414は並列に接続されている。そしてツェナーダイオード412のアノードは、グラウンド422に接続され、ツェナーダイオード412のカソードは、出力端子431に接続されている。
【0047】
抵抗413は、入力端子432とツェナーダイオード412のカソードに接続されている。
入力端子432とグラウンド422との間に入力電圧が印加される。この入力電圧は所定の電圧範囲、所定の時間の間に変動する可能性があってもよい。前記の入力電圧は、抵抗413とコンデンサ414とによって、平滑化される。また、抵抗413とコンデンサ414の接続点、すなわち出力端子431とグラウンド422との間には、ツェナーダイオード412が接続されている。そのため、出力端子431とグラウンド422との間は、ツェナーダイオード412のツェナー電圧に保たれる。
【0048】
以上の回路構成によって、入力端子432とグラウンド422との間に印加される入力電圧が所定の電圧範囲で変動したとしても、また、アナログスイッチ回路101(
図4A)に流れる電流が変化したとしても、出力端子431とグラウンド422との間の電位は、所定の電圧(ツェナー電圧)に安定して保たれる。すなわち、パイロット信号生成部402の出力端子431は、安定した電圧を出力、供給する。
【0049】
<第4実施形態の第2変形例の効果>
第4実施形態の第2変形例の前記の構成によれば、固定電圧を供給する電池を必要としない。
そして、入力電圧が所定の電圧範囲で変動したとしても、また、アナログスイッチ回路101に流れる電流が変化したとしても、パイロット信号生成部402の出力端子431に安定した電圧を出力、供給する効果がある。
【0050】
≪第5実施形態≫
本発明の第5実施形態に係る耐放射線回路の構成を、図を参照して説明する。
図5は、本発明の第5実施形態に係る耐放射線回路におけるパイロット信号生成部をバンドギャップリファレンス回路で構成した一例を示す図である。
【0051】
図5において、バンドギャップリファレンス回路502は、
図1におけるパイロット信号生成部102の具体的な構成例を示すものである。他の耐放射線回路(11)の構成は、
図1と同じであるので重複する説明は省略する。
図5に示すバンドギャップリファレンス回路502は、トランジスタQ1,Q2、抵抗R1,R2,R3、オペアンプ回路510を備えて構成されている。
【0052】
トランジスタQ1は、ベースとコレクタがショートされており、いわゆるダイオード接続されている。
また、トランジスタQ1のコレクタは、抵抗R1の一端に接続されている。トランジスタQ1のエミッタは、グラウンド(GND)に接続されている。抵抗R1の他端は、オペアンプ回路510の出力端子230(Vout)に接続されている。
トランジスタQ1のコレクタと、抵抗R1の接続点はオペアンプ回路510の非反転端子に接続されている。
【0053】
トランジスタQ2は、ベースとコレクタがショートされており、いわゆるダイオード接続されている。
また、トランジスタQ2のコレクタは、直列に接続された抵抗R3の一端に接続されている。
トランジスタQ2のエミッタは、グラウンド(GND)に接続されている。抵抗R3と抵抗R2は直列に接続されている。抵抗R3の多端である抵抗R3と抵抗R2との接続点は、オペアンプ510の反転端子に接続されている。
抵抗R2の他端はオペアンプ回路510の出力端子230に接続されている。
【0054】
以上の回路構成のバンドギャップリファレンス回路502は、一般的に知られた回路であるので、詳細な説明は省略する。ただし、概要としては、次のとおりである。
【0055】
図5において、ベースとコレクタがショートされたトランジスタQ1と定電流を流す意図の抵抗R1との組み合わせにより、それらの接続点にはトランジスタQ1のベースエミッタ間の電圧が生成される。なお、この電圧は、前記したようにオペアンプ回路510の非反転端子に入力する。
また、ベースとコレクタがショートされたトランジスタQ1と抵抗R2と抵抗R3との組み合わせにより、抵抗R2と抵抗R3の接続点には、トランジスタQ2のベースエミッタ間の電圧に比例する電圧が生成される。なお、この電圧は、前記したようにオペアンプ回路510の反転端子に入力する。
【0056】
以上の構成によって、抵抗R3にかかる電圧は、トランジスタQ1のエミッタベース電圧とトランジスタQ2のエミッタベース電圧の差の電圧となる。また、抵抗R2と抵抗R3に流れる電流が等しいことを考慮すれば、オペアンプ回路510の出力電圧V
outは、トランジスタQ1のエミッタベース間電圧V
BE1と、熱電圧VTに比例(比例定数K)するKVTの和となる。すなわち、
V
out =V
BE1+KVT ・・・(式1)
となる。なお、比例定数Kは、抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3の抵抗値の比で定まる。
式1におけるV
BE1とKVTは、正負、逆の温度係数を有しているので、比例定数Kを適切に選択すれば、温度の変化に強い基準電圧回路を提供できる。
また、前記のV
BE1は、シリコン等の半導体のバンドギャップ電圧に関連する電圧値であるので、
図5は、一般的に「バンドギャップリファレンス回路」と呼称される。
【0057】
なお、バンドギャップリファレンス回路502は、放射線環境に設置してもよいし、非放射線領域に設置してもよい。
バンドギャップリファレンス回路502を放射線領域に設置する場合、放射線耐性を上げるために、Siよりもバンドギャップの高い半導体素子、例えばSiCで構成することが望ましい。また、鉛などの遮蔽により照射される放射線量を低減させてもよい。
なお、鉛などの遮蔽物でバンドギャップリファレンス回路502を覆う場合には、
図5におけるトランジスタQ1,Q2、オペアンプ510は、Si半導体を用いることも可能である。
【0058】
以上のように、
図5に示したバンドギャップリファレンス回路502は、半導体材料のバンドギャップ電圧を利用して所定の電圧値を生成する回路であって、
図1におけるパイロット信号生成部102の構成例を示すものである。
図5に示すバンドギャップリファレンス回路502の出力端子230の出力(Vout)は、パイロット信号生成部102(
図1)のパイロット信号として、アナログスイッチ回路の入力部(第1端子1003:
図1)に印加する。
【0059】
なお、
図5において、オペアンプ510は、電源としてのVcc,GND間に接続されている。この電源としてのVcc,GNDは、後記する
図6Aのマルチプレクサ回路110の電源VDD,VSSと実質的には概ね同じ意味であり、同じ機能を果たす。
ただし、動作に適正な電圧の差や、ノイズの混入を防止するために、電源系を分けて使用する場合もある。電源系を分けて使用する場合には、前記のように、(Vcc,GND)や(VDD,VSS)と区別して表記することもある。
【0060】
<第5実施形態の効果>
第5実施形態の耐放射線回路におけるパイロット信号生成部をバンドギャップリファレンス回路で構成することによって、供給電圧の変動や環境温度の変化に対してもパイロット信号生成部としての出力端子に安定した電圧を供給する効果がある。
【0061】
≪第6実施形態≫
本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路の構成を、
図6A、
図6B、
図6Cを参照して説明する。
図6Aは、本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路において、
図1に示したアナログスイッチ回路101を複数個、用いてマルチプレクサ回路110を構成した一例を示す図である。
【0062】
図6Aにおいて、マルチプレクサ回路110は、複数個のアナログスイッチ回路(SW0,SW1,SW2,SW3)と、デコーダ回路(DEC)120を備えて構成されている。また、マルチプレクサ回路110の出力(出力信号D)を増幅する増幅部116を、マルチプレクサ回路110の外部に備えている。
図6Aにおけるアナログスイッチ回路(SW0,SW1,SW2,SW3)は、それぞれ
図1におけるアナログスイッチ回路101に相当する。
なお、耐放射線回路(11)としての他の構成は、
図1と概ね同じ構成であるので、重複する説明は省略する。
【0063】
図6Aにおいて、4個のアナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3は、それぞれの第1端子に、それぞれに信号S0,S1,S2,S3を入力している。
信号S0は、パイロット信号生成部(102)の出力信号である。また、信号S1,S2,S3は、PCV(原子力発電プラントの格納容器)内部に設置された計測機器の信号、または、他のパイロット信号生成部の出力信号である。
また、アナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3のそれぞれの第2端子は、互い接続され、マルチプレクサ回路110の出力端子となっている。この出力端子から出力信号Dが出力する。
また、デコーダ回路120の制御信号A0,A1が入力している。
また、マルチプレクサ回路110には正電源VDDと負電源VSSが供給されている。
【0064】
図6Aにおいて、デコーダ回路120は、4個のNAND回路140,141,142,143と、6個のインバータ回路130,131,150,151,152,153を備えて構成されている。
デコーダ回路120は、制御信号A0,A1を入力している。
制御信号A0は、NAND回路141,143のそれぞれの第1入力端子に入力している。また、制御信号A0は、インバータ回路130の入力端子に接続されている。インバータ回路130の出力端子は、NAND回路140,142のそれぞれの第1入力端子に入力している。
制御信号A1は、NAND回路142,143のそれぞれの第2入力端子に入力している。また、制御信号A1は、インバータ回路131の入力端子に接続されている。インバータ回路131の出力端子は、NAND回路140,141のそれぞれの第2入力端子に入力している。
【0065】
NAND回路140の出力信号は、インバータ回路150に入力している。NAND回路140の出力信号SW0Iとインバータ回路150の出力信号SW0hは、アナログスイッチ回路SW0のそれぞれpMOSのゲートとnMOSのゲートに入力している。
前記の出力信号SW0Iと出力信号SW0hは、インバータ回路150の動作により互いに反転した関係にあるので、NAND回路140の出力信号SW0Iが低電位(負電位、L、0)で、インバータ回路150の出力信号SW0hが高電位(正電位、H、1)となるとき、アナログスイッチ回路SW0が導通(ON)する。
なお、NAND回路140の出力信号SW0Iが低電位(負電位、L、0)となるのは、デコーダ回路120の制御信号A0と制御信号A1が共に低電位(負電位、L、0)の場合である。
【0066】
NAND回路141の出力信号は、インバータ回路151に入力している。NAND回路141の出力信号SW1Iとインバータ回路151の出力信号SW1hは、アナログスイッチ回路SW1のそれぞれpMOSのゲートとnMOSのゲートに入力している。
前記の出力信号SW1Iと出力信号SW1hは、インバータ回路151の動作により互いに反転した関係にあるので、NAND回路141の出力信号SW1Iが低電位(負電位、L、0)で、インバータ回路151の出力信号SW1hが高電位(正電位、H、1)となるとき、アナログスイッチ回路SW1が導通(ON)する。
なお、NAND回路141の出力信号SW1Iが低電位(負電位、L、0)となるのは、デコーダ回路120の制御信号A0が高電位(正電位、H、1)であり、制御信号A1が低電位(負電位、L、0)の場合である。
【0067】
NAND回路142の出力信号は、インバータ回路152に入力している。NAND回路142の出力信号SW2Iとインバータ回路152の出力信号SW2hは、アナログスイッチ回路SW2のそれぞれpMOSのゲートとnMOSのゲートに入力している。
前記の出力信号SW2Iと出力信号SW2hは、インバータ回路152の動作により互いに反転した関係にあるので、NAND回路142の出力信号SW2Iが低電位(負電位、L、0)で、インバータ回路152の出力信号SW2hが高電位(正電位、H、1)となるとき、アナログスイッチ回路SW2が導通(ON)する。
なお、NAND回路142の出力信号SW2Iが低電位(負電位、L、0)となるのは、デコーダ回路120の制御信号A0が低電位(負電位、L、0)であり、制御信号A1が高電位(正電位、H、1)の場合である。
【0068】
NAND回路143の出力信号は、インバータ回路153に入力している。NAND回路143の出力信号SW3Iとインバータ回路153の出力信号SW3hは、アナログスイッチ回路SW3のそれぞれpMOSのゲートとnMOSのゲートに入力している。
前記の出力信号SW3Iと出力信号SW3hは、インバータ回路153の動作により互いに反転した関係にあるので、NAND回路143の出力信号SW3Iが低電位(負電位、L、0)で、インバータ回路153の出力信号SW3hが高電位(正電位、H、1)となるとき、アナログスイッチ回路SW3が導通(ON)する。
なお、NAND回路143の出力信号SW3Iが低電位(負電位、L、0)となるのは、デコーダ回路120の制御信号A0と制御信号A1が共に高電位(正電位、H、1)の場合である。
【0069】
なお、以上の構成において、アナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3のいずれか一つが導通(ON)すると、他のアナログスイッチ回路は、すべて非導通(OFF)となるように、デコーダ回路120が構成されている。
また、アナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3は、アナログ回路動作であり、デコーダ回路120は、デジタル回路動作であるので、放射線に対しての回路動作において、デコーダ回路120は、アナログスイッチ回路よりも安定した動作をする。
【0070】
図6Bは、本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路において、
図6Aに示したマルチプレクサ回路110におけるデコーダ回路120の制御信号A0,A1に対する出力信号Dの真理値表を示す図である。
図6Bにおいて、符号A0と符号A1は、それぞれ制御信号A0と制御信号A1を示し、符号Dはマルチプレクサ回路110の出力信号Dを示している。
制御信号A0と制御信号A1の1もしくは0の組み合わせによって、出力信号Dが入力信号S0,S1,S2,S3のいずれかとして出力される。
【0071】
図6Cは、本発明の第6実施形態に係る耐放射線回路において、
図6Aに示したマルチプレクサ回路110におけるデコーダ回路の制御信号A0,A1に対して、アナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3のいずれかを選択する論理回路を構成するための論理式表を示す図である。
アナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3のいずれかが、制御信号A0,A1に対して、
図6Cに示すNAND回路とインバータ回路の論理の組み合わせで選択される論理構成を示している。
【0072】
以上、
図6A、
図6B、
図6Cに示した構成によって、マルチプレクサ回路110は、制御信号A0,A1に基づいたデコーダ回路120により、アナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3のいずれかが導通(ON)して、信号S0,S1,S2,S3のいずれかがマルチプレクサ回路110から出力(出力信号D)される。
また、マルチプレクサ回路110から出力信号Dは、増幅部116で増幅されて、信号処理部103(
図1)に入力する。なお、増幅部116は、必須要素ではない。例えば信号処理部103の信号検出感度を高める構成としてもよい。
信号処理部103以降の動作は、
図1での説明と重複する説明は省略する。
【0073】
前記したように、
図6Aに示した構成において、入力信号S0の入力部に、PCV(原子力発電プラントの格納容器)内部に設置されたパイロット信号生成部(102:
図1)の出力(出力信号)を接続することで、
図1で示すようにアナログスイッチ回路SW0の劣化診断が可能となる。また、残りの入力信号S1,S2,S3には、PCV内部に設置された計測機器の計測信号などが入力される。
【0074】
半導体素子は、同じレイアウト、同じ製造ラインであれば、放射線による劣化度合いの相関が近くなることが分かっており、アナログスイッチ回路SW0の診断結果を、アナログスイッチ回路SW1,SW2,SW3にも適用することが可能である。
この方法により、マルチプレクサ回路110のようにアナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3を利用した回路(マルチプレクサ回路110)の健全性を保証することができるようになる。
以上の構成によって、SiCの半導体素子を用いた耐放射線型のマルチプレクサ回路が具現化する。
【0075】
<第6実施形態の総括>
6実施形態に係る耐放射線回路においては、アナログスイッチ回路(SW0,SW1,SW2,SW3)を複数、用いてマルチプレクサ回路110を構成している。
PCV(原子力発電プラントの格納容器)内には温度計などの電子回路部をもたない計測機器がいくつか設置されているが、複数の計測機器の出力を複数のアナログスイッチ回路に接続し、そのアナログスイッチ回路の複数の出力をPCVの外部に取り出す場合には、PCVの外部にケーブルを引き出すためのPCVの壁のペネ(貫通部)に制限がある。
そのため、マルチプレクサ回路110の構成をとることによって、複数のアナログスイッチ回路(SW0,SW1,SW2,SW3)の出力を1本化して、PCVの外部に取り出す。この1本の信号線を用いて、PCV内における複数の計測機器の多点計測をPCVの外部で実施する。
【0076】
<第6実施形態の効果>
PCV(原子力発電プラントの格納容器)内の多点に設置した複数の計測機器の複数の信号を、pMOSとnMOSの並列回路構成からなるアナログスイッチ回路を複数個と、複数の制御信号によるデコーダ回路を備えるマルチプレクサ回路を用いることによって、前記の多点計測をした複数の信号を1本の出力として、PCVの外部に取り出せる。
この多点計測をした複数の信号を1本の出力として、PCVの壁の1箇所のペネ(貫通部)から外部にケーブルを通じて取り出すことができるので、PCVの放射能に対する防護機能が確保しやすいという効果がある。
また、PCVの壁の1箇所のペネ(貫通部)から外部に1本のケーブルとして取り出せるのでケーブル削減によるコストダウンが図れるという効果がある。
【0077】
また、前記のケーブル削減によって、原子力発電プラントの廃炉作業の効率化が図れるという効果がある。
また、前記のように、マルチプレクサ回路がpMOSとnMOSの並列回路構成からなるアナログスイッチ回路を有しており、放射線に強いSiC化技術により高放射線下での高度センシングを可能とする効果がある。
また、マルチプレクサ回路自身の予兆診断を可能とする効果がある。
また、PCV内の高度センシングによるプラント運転の効率化が図れるという効果がある。
【0078】
≪第6実施形態の変形例≫
本発明の第6実施形態の変形例に係る耐放射線回路におけるマルチプレクサ回路の構成について、
図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第6実施形態の変形例に係る耐放射線回路におけるマルチプレクサ回路の他の構成例を示す図である。
【0079】
図7において、第6実施形態の変形例としてのマルチプレクサ回路110Bは、マルチプレクサ回路110の他にアナログスイッチ切替回路170を備えて構成されている。なお、マルチプレクサ回路110は、
図6で説明しているので、重複する説明は省略する。
アナログスイッチ切替回路170は、信号S3Aと信号S3Bを入力している。そして制御信号A3を入力しており、制御信号A3によって、信号S3Aと信号S3Bとを切り替えて、出力している。
アナログスイッチ切替回路170としての出力信号は、マルチプレクサ回路110の信号S3としてマルチプレクサ回路110に入力している。
【0080】
図7において、信号S3Aは、計測機器の計測信号で、
図6における信号S3に相当する信号である。
また、信号S3Bは、信号S0とは異なるパイロット信号生成部から生成されたパイロット信号である。
【0081】
アナログスイッチ切替回路170が信号S3Aを選択すれば、
図7のマルチプレクサ回路110の信号S3(S3A)は、計測機器の計測信号S3(S3A)となって、
図6のマルチプレクサ回路110と同じ機能・動作をする。
また、アナログスイッチ切替回路170が信号S3Bを選択すれば、
図7のマルチプレクサ回路110の信号S3(S3B)は、信号S0とは異なるパイロット信号生成部から生成されたパイロット信号(S3B)となる。そのため、マルチプレクサ回路110Bの出力は、異なるパイロット信号生成部から生成されたパイロット信号が選択可能となって、放射線の影響に対して、より正確な診断が可能となる。
【0082】
<第6実施形態の変形例の効果>
第6実施形態の変形例としてのマルチプレクサ回路110Bは、アナログスイッチ切替回路170を備え、信号S0とは異なるパイロット信号生成部から生成されたパイロット信号の信号S3Bの選択が可能となることによって、マルチプレクサ回路110Bは、放射線の影響に対して、より正確な診断が可能な構成となる。
【0083】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0084】
《半導体素子について》
第1実施形態においては、バンドギャップがSiより広く、放射線に強い半導体として、SiCをpMOSやnMOSに用いる場合について説明した。
しかし、バンドギャップがSiより広く、放射線に強い半導体は、SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)に限定されない。例えば、バンドギャップが広い半導体としては、化合物半導体のGaAs(ヒ化ガリウム)、GaN(窒化ガリウム)、AlP(リン化アルミニウム)、InP(リン化インジウム)等がある。
【0085】
なお、SiCは、IV族-IV族の組み合わせで、Siと同じくIV族であるので、pMOSやnMOSを制作する際のp型半導体とn型半導体の形成には、それぞれ3価(V族)のB(ホウ素)や、5価(III族)のP(リン)を不純物として打ち込む。
また、例えばGaAsは、III族-V族の組み合わせである。Ga(ガリウム)がAs(ヒ素)より多く含まれるとp型半導体となり、AsがGaより多く含まれるとn型半導体となる。
以上のように、バンドギャップがSiより広く、放射線に強い半導体(化合物半導体を含む)を用いることによって、耐放射線に強いpMOSやnMOSが形成できる。
【0086】
《MOSFETについて》
第1実施形態において、pMOSやnMOSの説明として、単にMOSFETと説明した。このMOSFETは、プレーナ型(横型)の構造のMOSFET、あるいはトレンチ型(縦型)の構造のMOSFET、さらにはスーパージャンクションMOSFETにおいても、前記した効果がある。
【0087】
《アナログスイッチ回路》
図1においては、アナログスイッチ回路101は、pMOS111とnMOS112の並列回路の構成で説明した。しかしアナログスイッチ回路101は、この構成に限定されない。
前記したように、放射線に対する影響はpMOS111の方が支配的であるので、一つのpMOS111によって、アナログスイッチ回路(101)を構成してもよい。
pMOS111とnMOS112の並列回路のアナログスイッチ回路101の構成は、pMOS111が単独の構成のアナログスイッチ回路(101)よりもアナログスイッチとしての電気特性はよい。一方、pMOS111が単独の構成のアナログスイッチ回路(101)の方が放射線の影響に対する感度は高くなる。
また、一般的に、同一形状のpMOSとnMOSでは、nMOSの方が、電流駆動能力が高いので、それを補うように、pMOSの形状を相対的に大きくして設定してもよい。この場合には、pMOSとnMOSの電流駆動能力のバランスがとれるとともに、pMOSの形状を相対的に大きくしたため、放射線の影響に対する感度は高くなる。
【0088】
《パイロット信号生成部の生成信号について》
図4A、
図4B、
図5においては、パイロット信号生成部の出力信号の電位は、所定の電位であって、基本的には電位は変動しないものとして説明した。
しかしながら、パイロット信号生成部の出力信号の電位が基本的には変動しないものとして限定される訳ではない。
例えば、
図1のパイロット信号生成部の出力信号を所定の幅の周期的な1,0の矩形波として出力する。この場合には、
図1の信号処理部103では、パイロット信号生成部の2種類の出力信号に対して、アナログスイッチ回路101の特にpMOS111の放射線に対する影響の情報がそれぞれ得られる。すなわち、二つの情報によって、より精度の高い検出ができる可能性がある。
【0089】
《アラーム表示部について》
図3に示した第3実施形態において、アラーム指令部106とアラーム表示部107を備えて、第1のアラーム指令、または第2のアラーム指令によって、耐放射線回路13の異状(異常)をアラーム表示部107で表示する構成を説明した。
しかし、アラームを表示する構成は、前記の構成に限定されない。
例えば、耐放射線回路13の異状をアラーム表示部107は、自己診断部104のアラーム指令によって表示するように構成を簡略化してもよい。
また、アラーム表示部107の表示は、視覚的な表示のみならず、さらに音声や音響で警告してもよい。また、アラーム表示部107から、原子力プラントを含む関連施設にアラームに関連する電気信号を送信してもよい。
【0090】
《マルチプレクサ回路》
図6Aに示したマルチプレクサ回路110において、nMOSとpMOSによるアナログスイッチ回路(SW0,SW1,SW2,SW3)は、4個で構成されている場合を説明したが、4個に限定されない。5個以上で構成してもよいし、2個または3個の場合であってもよい。
また、デコーダ回路120の構成も、アナログスイッチ回路の個数に応じて変更する。
また、
図6Aに示したデコーダ回路120においては、NAND回路とインバータ回路を用いている例を示したが、NOR回路を併せて用いてもよい。
【0091】
また、
図6Aの説明においては、4個のアナログスイッチ回路SW0,SW1,SW2,SW3のそれぞれに入力する信号S0,S1,S2,S3について、信号S0はパイロット信号生成部の出力信号であり、信号S1,S2,S3は計測機器の信号であるとして説明したが、この信号の組み合わせに限定されない。パイロット信号生成部の出力信号はアナログスイッチ回路SW0以外に入力してもよい。
また、複数の異なるパイロット信号生成部の信号を、マルチプレクサ回路110に入力してもよい。
また、一つのパイロット信号生成部の出力信号を、複数のアナログスイッチ回路の第1端子に入力してもよい。
【0092】
なお、
図6Aにおける制御信号A0,A1は、1本のケーブルの中に併せて、PCV(原子力発電プラントの格納容器)の外部から取り入れてもよい。
また、
図6Aにおいて、増幅部116は、マルチプレクサ回路110の外部に設置した場合を示したが、マルチプレクサ回路110の内部に設けてもよい。
また、
図7において、マルチプレクサ回路110Bは、マルチプレクサ回路110の外部にアナログスイッチ切替回路170を備えて構成されると説明したが、アナログスイッチ切替回路170をマルチプレクサ回路110の内部に取り込んで1チップとして構成してもよい。
【0093】
《マルチプレクサ回路以外のSiC集積回路》
図6Aにおいては、SiCで構成されたpMOSとnMOSによるアナログスイッチ回路を複数、備えてマルチプレクサ回路110を構成する例を説明した。
しかし、第6実施形態に含まれるSiCで構成されたpMOSとnMOSによるアナログスイッチ回路の特性上の効果は、マルチプレクサ回路110に限定されない。
SiC集積回路において、前記したSiCで構成されたpMOSとnMOSによるアナログスイッチ回路を備え、このアナログスイッチ回路の放射線による劣化を検出するようにすれば、前記のSiC集積回路の放射線劣化を検出したり、健全性を確認したりすることが可能となる。
【0094】
《アナログスイッチ切替回路について》
図7を参照したアナログスイッチ切替回路170の説明において、信号S3Bを「信号S0とは異なるパイロット信号生成部から生成、出力されたパイロット信号」として説明した。しかし、信号S3Bとして、信号S0を用いてもよい。この場合には、同じパイロット信号生成部のパイロット信号を、マルチプレクサ回路110における異なる二つのアナログスイッチ回路のpMOSとnMOSの放射線の影響を検出することになるので、検出結果を比較することができるので、検出精度も把握できて、検出の信頼度が高まる効果がある。
また、
図7においては、アナログスイッチ切替回路170を1個として表記したが、複数、備えてもよい。
なお、
図7における制御信号A0,A1,A3は、1本のケーブルの中に併せて、PCV(原子力発電プラントの格納容器)の外部から取り入れてもよい。
【符号の説明】
【0095】
11,12,13,14 耐放射線回路
101,SW0,SW1,SW2,SW3 アナログスイッチ回路
102,202,302,402,502 パイロット信号生成部
103 信号処理部
104 自己診断部
105 データベース部(DB)
106 アラーム指令部
107 アラーム表示部
110,110B マルチプレクサ回路
111 pMOS
112 nMOS
116 増幅部
120 デコーダ回路(DEC)
130,131,150,151,152,153 インバータ回路
140,141,142,143 NAND回路
170 アナログスイッチ切替回路
311,411 電池
412 ツェナーダイオード
413,R1,R2,R3 抵抗
414 コンデンサ
502 バンドギャップリファレンス回路(パイロット信号生成部)
510 オペアンプ回路
1003 第1端子(アナログスイッチ回路の第1端子)
1004 第2端子(アナログスイッチ回路の第2端子)
Q1,Q2 トランジスタ