(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】気吹き清掃装置及び気吹き清掃方法
(51)【国際特許分類】
B60S 3/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B60S3/00
(21)【出願番号】P 2020137707
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 周平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】大津 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088133(JP,A)
【文献】特開平10-053133(JP,A)
【文献】特開平11-010100(JP,A)
【文献】特開平06-311709(JP,A)
【文献】特開平09-056122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を在姿状態で清掃するのに用いる気吹き清掃装置であって、
前記鉄道車両の車輪をレールから離間させる車輪持上手段と、
レールから離間した前記車輪を回転させて、前記電動機の回転子を回転させる回転子回転手段と、
前記電動機の内部の前記回転子に向けて圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記電動機の排気スリットを覆うフードを有し、そのフードを介して前記排気スリットから吸引することで前記電動機の内部の塵埃を集塵する集塵手段と、
を備え
、
前記電動機には、前記排気スリットとの間に前記回転子を挟む位置に空気穴が設けられており、
前記圧縮空気供給手段は、前記空気穴から前記電動機の内部に圧縮空気を吹き込むための第1のノズルと、前記排気スリットから前記電動機の内部に圧縮空気を吹き込むための第2のノズルとを有していることを特徴とする気吹き清掃装置。
【請求項2】
鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を在姿状態で清掃するのに用いる気吹き清掃装置であって、
前記鉄道車両の車輪をレールから離間させる車輪持上手段と、
レールから離間した前記車輪を回転させて、前記電動機の回転子を回転させる回転子回転手段と、
前記電動機の内部の前記回転子に向けて圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記電動機の排気スリットを覆うフードを有し、そのフードを介して前記排気スリットから吸引することで前記電動機の内部の塵埃を集塵する集塵手段と、
を備え
、
前記車輪持上手段は、
支持台本体と、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体が床面に載置されている状態で作動されて、前記車輪の車軸箱を押し上げる第1のシリンダーと、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体を移動させる際にキャスターを床面に押し付けるように作動されて、前記支持台本体を床面から離間させる第2のシリンダーと、
を備えていることを特徴とする気吹き清掃装置。
【請求項3】
前記車輪持上手段は、
支持台本体と、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体が床面に載置されている状態で作動されて、前記車輪の車軸箱を押し上げる第1のシリンダーと、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体を移動させる際にキャスターを床面に押し付けるように作動されて、前記支持台本体を床面から離間させる第2のシリンダーと、
を備えていることを特徴とする請求項
1に記載の気吹き清掃装置。
【請求項4】
前記回転子回転手段は、前記電動機の回転子の回転速度と回転方向をそれぞれ切り替え可能に構成されており、
前記圧縮空気供給手段は、前記電動機の内部に圧縮空気を供給する圧力を切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載の気吹き清掃装置に記載の気吹き清掃装置。
【請求項5】
鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を在姿状態で清掃する気吹き清掃方法であって、
前記鉄道車両の車輪をレールから離間させた状態で前記車輪を回転させることで前記電動機の回転子を回転させるとともに、前記電動機の内部の前記回転子に向けて圧縮空気を供給しつつ、前記電動機の排気スリットから吸引を行うことで前記電動機の内部に溜まっていた塵埃を集塵する
清掃方法であり、
前記電動機には、前記排気スリットとの間に前記回転子を挟む位置に空気穴が設けられており、前記回転子には、前記電動機の空気穴側から排気スリット側に貫通している複数の冷却穴が設けられており、
前記空気穴を通じて前記回転子に圧縮空気を供給する工程と、
前記空気穴を通じて前記回転子に圧縮空気を供給しつつ、前記排気スリット側からも前記回転子に向けて圧縮空気を供給する工程と、
を有することを特徴とする気吹き清掃方法。
【請求項6】
前記回転子の回転速度と回転方向の少なくとも一方の切り替えを行うことを特徴とする請求項5に記載の気吹き清掃方法。
【請求項7】
前記電動機の内部に供給する前記圧縮空気の供給圧力の切り替えを行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の気吹き清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の電動機を清掃する気吹き清掃装置及び気吹き清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に搭載されている駆動用主電動機は一般的に台車に装架されており、その冷却方式には開放形と全閉形があり、開放形は内部を通風冷却する構造を有している。
通風冷却構造を有する電動機であると、外気に含まれている塵埃が電動機内部に徐々に堆積することで冷却効率が低下することがある。また、電動機内部の回転子に塵埃が堆積することで回転子のバランスが崩れ、軸受けの摩耗など不具合が生じることがある。
そのため、その堆積した塵埃を取り除くべく定期的に台車から電動機を取り外し、その電動機に設けられている気吹孔を通じて、もしくは電動機を分解して、電動機内部を圧縮空気による気吹き清掃を行うようにしているが、電動機を台車から取り外したり、清掃後に取り付けたりする作業は煩雑であり、この清掃作業の省力化が望まれている。
【0003】
このような清掃作業を省力化するため、気吹き清掃用のノズルが電動機の所定箇所に予め配設されている気吹き装置付き電動機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術の場合、所定箇所に固定されたノズルから圧縮空気を気吹くので、圧縮空気が当たり難い箇所には塵埃が残ってしまうことがある。また、圧縮空気が当たり難い箇所を気吹くために圧縮空気の圧力を高めると、電動機内部の絶縁膜を劣化させてしまうことがある。
そして、回転子に付着した塵埃を除去しきれていないと、回転子のバランスは崩れたままとなり、その僅かなバランスの崩れにより回転子の回転が乱れて異常振動や軸受の摩耗等の不具合が生じてしまうことがあるので好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、より好適に電動機の気吹き清掃を行うことができる気吹き清掃装置及び気吹き清掃方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、
鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を在姿状態で清掃するのに用いる気吹き清掃装置であって、
前記鉄道車両の車輪をレールから離間させる車輪持上手段と、
レールから離間した前記車輪を回転させて、前記電動機の回転子を回転させる回転子回転手段と、
前記電動機の内部の前記回転子に向けて圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記電動機の排気スリットを覆うフードを有し、そのフードを介して前記排気スリットから吸引することで前記電動機の内部の塵埃を集塵する集塵手段と、
を備え、
前記電動機には、前記排気スリットとの間に前記回転子を挟む位置に空気穴が設けられており、
前記圧縮空気供給手段は、前記空気穴から前記電動機の内部に圧縮空気を吹き込むための第1のノズルと、前記排気スリットから前記電動機の内部に圧縮空気を吹き込むための第2のノズルとを有しているようにした。
かかる構成の気吹き清掃装置であれば、鉄道車両から電動機を取り外すことなく、その電動機の内部をより好適に気吹き清掃することができる。
特に、回転する回転子に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給することで、回転子の軸周りに複数設けられている全ての冷却穴に圧縮空気を流通させて、各冷却穴に溜まった塵埃を除去することができる。
また、排気スリットを覆うフードを介して塵埃を集塵することで、塵埃を漏らすことなく集塵することができる。
また、圧縮空気供給手段が第1のノズルと第2のノズルとを有していることで、電動機内の回転子に圧縮空気を2方向から吹き付けるように供給することができる。
【0008】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、
鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を在姿状態で清掃するのに用いる気吹き清掃装置であって、
前記鉄道車両の車輪をレールから離間させる車輪持上手段と、
レールから離間した前記車輪を回転させて、前記電動機の回転子を回転させる回転子回転手段と、
前記電動機の内部の前記回転子に向けて圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記電動機の排気スリットを覆うフードを有し、そのフードを介して前記排気スリットから吸引することで前記電動機の内部の塵埃を集塵する集塵手段と、
を備え、
前記車輪持上手段は、
支持台本体と、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体が床面に載置されている状態で作動されて、前記車輪の車軸箱を押し上げる第1のシリンダーと、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体を移動させる際にキャスターを床面に押し付けるように作動されて、前記支持台本体を床面から離間させる第2のシリンダーと、
を備えているようにした。
かかる構成の気吹き清掃装置であれば、鉄道車両から電動機を取り外すことなく、その電動機の内部をより好適に気吹き清掃することができる。
特に、回転する回転子に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給することで、回転子の軸周りに複数設けられている全ての冷却穴に圧縮空気を流通させて、各冷却穴に溜まった塵埃を除去することができる。
また、排気スリットを覆うフードを介して塵埃を集塵することで、塵埃を漏らすことなく集塵することができる。
また、第1のシリンダーによって鉄道車両の車輪をレールから離間させる際、第2のシリンダーはオフに切り替えられており、支持台本体が床面に載置された状態になっているので、第2のシリンダーに不具合が生じても、床面から離れたキャスターを機能させずに支持台本体が床面に載置された状態を維持することができるフェイルセーフとなっており、支持台本体が突然動いてしまうようなトラブルが生じないようになっている。
【0009】
また、望ましくは、
前記回転子回転手段は、前記電動機の回転子の回転速度と回転方向をそれぞれ切り替え可能に構成されており、
前記圧縮空気供給手段は、前記電動機の内部に圧縮空気を供給する圧力を切り替え可能に構成されているようにする。
【0010】
回転子の回転速度が一定であったり、回転子の回転方向が一定であったり、圧縮空気の供給圧力が一定であったりすると、圧縮空気の当たり易い箇所/当たり難い箇所に偏りが生じてしまうことがあるが、回転子の回転方向、回転子の回転速度、圧縮空気の供給圧力の少なくとも1つを切り替えるようにすれば、圧縮空気の当たり具合が変わるので、様々な箇所にこびりついた塵埃を除去することができる。
【0013】
また、望ましくは、
前記車輪持上手段は、
支持台本体と、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体が床面に載置されている状態で作動されて、前記車輪の車軸箱を押し上げる第1のシリンダーと、
前記支持台本体に配設されており、前記支持台本体を移動させる際にキャスターを床面に押し付けるように作動されて、前記支持台本体を床面から離間させる第2のシリンダーと、
を備えるようにする。
【0014】
第1のシリンダーによって鉄道車両の車輪をレールから離間させる際、第2のシリンダーはオフに切り替えられており、支持台本体が床面に載置された状態になっているので、第2のシリンダーに不具合が生じても、床面から離れたキャスターを機能させずに支持台本体が床面に載置された状態を維持することができるフェイルセーフとなっており、支持台本体が突然動いてしまうようなトラブルが生じないようになっている。
【0015】
また、本出願に係る他の発明は、
鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を在姿状態で清掃する気吹き清掃方法であって、
前記鉄道車両の車輪をレールから離間させた状態で前記車輪を回転させることで前記電動機の回転子を回転させるとともに、前記電動機の内部の前記回転子に向けて圧縮空気を供給しつつ、前記電動機の排気スリットから吸引を行うことで前記電動機の内部に溜まっていた塵埃を集塵する清掃方法であり、
前記電動機には、前記排気スリットとの間に前記回転子を挟む位置に空気穴が設けられており、前記回転子には、前記電動機の空気穴側から排気スリット側に貫通している複数の冷却穴が設けられており、
前記空気穴を通じて前記回転子に圧縮空気を供給する工程と、
前記空気穴を通じて前記回転子に圧縮空気を供給しつつ、前記排気スリット側からも前記回転子に向けて圧縮空気を供給する工程と、
を有するようにした。
【0016】
このような気吹き清掃方法であれば、鉄道車両から電動機を取り外すことなく、その電動機の内部をより好適に気吹き清掃することができる。
特に、回転する回転子に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給することで、回転子の軸周りに複数設けられている全ての冷却穴に圧縮空気を流通させて、各冷却穴に溜まった塵埃を除去することができる。
また、空気穴を通じて回転子に圧縮空気を吹き付けるように供給しつつ、排気スリット側からも回転子に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給すれば、空気穴側からの圧縮空気と排気スリット側からの圧縮空気がぶつかった乱流によって、空気穴側からの圧縮空気だけでは取り除き難かった塵埃を除去することができる。
【0017】
また、望ましくは、
前記回転子の回転速度と回転方向の少なくとも一方の切り替えを行うようにする。
【0018】
回転子の回転速度や回転方向が一定であると、圧縮空気の当たり易い箇所/当たり難い箇所に偏りが生じてしまうことがあるが、回転子の回転方向や回転速度を切り替えるようにすれば、圧縮空気の当たり具合が変わるので、様々な箇所にこびりついた塵埃を除去することができる。
【0019】
また、望ましくは、
前記電動機の内部に供給する前記圧縮空気の供給圧力の切り替えを行うようにする。
【0020】
圧縮空気の供給圧力が一定であると、圧縮空気の当たり易い箇所/当たり難い箇所に偏りが生じてしまうことがあるが、圧縮空気の供給圧力を切り替えるようにすれば、圧縮空気の当たり具合が変わるので、様々な箇所にこびりついた塵埃を除去することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より好適に電動機の気吹き清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の気吹き清掃装置を示す概略図であり、鉄道車両の電動機を気吹き清掃する状態を示している。
【
図2】本実施形態の気吹き清掃装置を示す概略図であり、鉄道車両の電動機の清掃前あるいは清掃後の状態を示している。
【
図3】電動機の内部の気吹き清掃に関する説明図である。
【
図4】電動機の内部の気吹き清掃に関する説明図である。
【
図5】鉄道車両の電動機と車輪を示す前面図である。
【
図6】鉄道車両の電動機と車輪を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る気吹き清掃装置及び気吹き清掃方法の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0026】
気吹き清掃装置は、車両基地の検査区において、在姿状態の鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機を気吹き清掃するのに用いる装置である。
なお、以下の説明にて参照する図(
図1、
図2)において、鉄道車両の車体部分の図示は省略して、鉄道車両の台車部分を図示しており、それを在姿状態の鉄道車両と見なしている。
【0027】
本実施形態の気吹き清掃装置100は、例えば、
図1、
図2に示すように、鉄道車両を持ち上げるようにして、その鉄道車両の車輪1をレールRから離間させる車輪持上手段であるジャッキ装置10と、レールRから離間した車輪1を回転させて、その車輪1の回転を電動機2に伝達して電動機2の回転子5(
図3,
図4参照)を回転させる回転子回転手段である車輪回転装置20と、電動機2の内部で回転する回転子5に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給する圧縮空気供給手段である圧縮空気供給装置30と、電動機2の排気スリット3aから電動機2の内部に溜まっていた塵埃を集塵する集塵手段である集塵装置40等を備えている。
なお、気吹き清掃装置100におけるジャッキ装置10は、車輪1を押し上げるために2台1組で使用するので、気吹き清掃装置100は一対のジャッキ装置10を備えている。
【0028】
この気吹き清掃装置100による清掃対象の電動機2は、例えば、
図3、
図4に示すように、外枠3、固定子4、回転子5等を備えて構成されている周知の誘導電動機であり、鉄道車両の車輪1を回転させる駆動源である。
外枠3には、排気スリット3aと空気穴3bが設けられている。排気スリット3aは、外枠3の周囲に複数設けられている。
電動機2の外枠3の空気穴3bは、排気スリット3aとの間に回転子5を挟む位置に設けられている。
回転子5の軸心には、中心軸5aが設けられている。
この回転子5の軸周りには、中心軸5aに沿う方向に貫通している複数の冷却穴5bが設けられている。冷却穴5bは、電動機2の外枠3の空気穴3b側から排気スリット3a側に貫通している。
【0029】
電動機2の回転子5の中心軸5aと、鉄道車両の車輪1の車軸1aは、例えば、
図5、
図6に示すように、駆動伝達手段6を介して連結されている。なお、車輪1の車軸1aの両端側にはそれぞれ車軸箱1bが配設されている。
駆動伝達手段6は、例えば、回転子5の中心軸5aに設けられている小歯車6aと、車輪1の車軸1aに設けられている大歯車6bとが歯合してなる歯車機構を有しており、電動機2の回転子5の中心軸5aの回転を車輪1の車軸1aに伝達するようになっている。
この駆動伝達手段6を介して、回転子5の中心軸5aと車輪1の車軸1aとが連結されているので、車輪1の車軸1aの回転を回転子5の中心軸5aに伝達することができる。
【0030】
一対のジャッキ装置10はそれぞれ、支持台本体13と、支持台本体13に配設されており、支持台本体13が床面に載置されている状態で作動されて、車輪1の車軸箱1bを押し上げる第1のシリンダー11と、支持台本体13に配設されており、支持台本体13を移動させる際にキャスター14を床面に押し付けるように作動されて、支持台本体13を床面から離間させる第2のシリンダー12と、を備えている。
なお、一方のジャッキ装置10(
図1,2中、右側のジャッキ装置10)の支持台本体13には、車輪回転装置20と圧縮空気供給装置30が配設されている。
【0031】
支持台本体13は、上部支持台13aと下部支持台13bを備えており、支持台本体13の上部支持台13a上に、押しシリンダーである第1のシリンダー11が固定されており、支持台本体13の下部支持台13b上に、引きシリンダーである第2のシリンダー12が固定されている。
【0032】
第1のシリンダー11は、車輪1をレールRから離間させる際に作動される。
具体的には、支持台本体13を床面に載置するようにジャッキ装置10が所定位置に据え付けられた後、
図1に示すように、第1のシリンダー11はピストンロッドを押し出すオンに切り替えられ、車軸箱1bを押し上げるように車輪1を押し上げるようになっている。
つまり、一対のジャッキ装置10は、鉄道車両の台車を持ち上げるようにして、その鉄道車両の車輪1をレールRから離間させる。
【0033】
第2のシリンダー12のピストンロッドには、複数(例えば4つ)のキャスター14を備えたキャスター支持台14aが連結されている。
そして、第1のシリンダー11を作動させて車輪1の車軸箱1bを押し上げる際、
図1に示すように、第2のシリンダー12はピストンロッドを押し出したオフに切り替えられており、キャスター14が床面から離され、支持台本体13(下部支持台13b)が床面に載置された態勢をとるようになっている。
一方、ジャッキ装置10(支持台本体13)を移動させる際、
図2に示すように、第2のシリンダー12はピストンロッドを引き込むオンに切り替えられ、キャスター14を床面に押し付け、支持台本体13(下部支持台13b)を床面から離間させた態勢をとるようになっている。
つまり、ジャッキ装置10によって鉄道車両の車輪1をレールRから離間させる際、第2のシリンダー12はオフに切り替えられており、支持台本体13が床面に載置された状態になっているので、第2のシリンダー12に不具合が生じても、床面から離れたキャスター14を機能させずに支持台本体13が床面に載置された状態を維持することができるフェイルセーフとなっており、支持台本体13が突然動いてしまうようなトラブルが生じないようになっている。
【0034】
車輪回転装置20は、支持台本体13の上部支持台13a上に設置されている。
この車輪回転装置20は、駆動モーター(図示省略)によって回転される転動輪21を備えており、レールRから離間した車輪1に押し当てた転動輪21を回転させることで、その車輪1を回転させることができる。
つまり、車輪回転装置20は、レールRから離間した車輪1を転動輪21によって回転させ、駆動伝達手段6を介して車輪1の回転を電動機2に伝達して回転子5を回転させることができる。
特に、車輪回転装置20は、駆動モーターの動作を切り替えることで車輪1を回転させる速度と方向を切り替えるようにして、電動機2の回転子5の回転速度と回転方向をそれぞれ切り替えることができる。
【0035】
圧縮空気供給装置30は、支持台本体13の上部支持台13a上に設置されており、例えば、圧縮空気の供給源となるエアコンプレッサーやエアタンクを備えている。
この圧縮空気供給装置30は、その供給源(エアコンプレッサー、エアタンク)からの圧縮空気を電動機2の内部に供給するためのエアホース33を2本備えている。
一方のエアホース33の先端には、電動機2の外枠3の空気穴3bから電動機2の内部に圧縮空気を吹き込むための第1のノズル31が設けられている。
他方のエアホース33の先端には、電動機2の外枠3の排気スリット3aから電動機2の内部に圧縮空気を吹き込むための第2のノズル32が設けられている。
圧縮空気供給装置30の第1のノズル31と第2のノズル32はいずれも、電動機2の内部で回転する回転子5に向けて圧縮空気を供給するためのものである。
そして、この圧縮空気供給装置30は、電動機2の内部に圧縮空気を供給する圧力を、第1のノズル31と第2のノズル32のそれぞれ個別に設定することが可能になっている。
なお、ここでは、圧縮空気供給装置30として、圧縮空気の供給源(エアコンプレッサー、エアタンク)を装置内部に備えた構成のものを例に説明したが、これに限定されず、例えば、圧縮空気供給装置30は外部の圧縮空気供給源(例えば、施設内配管)から圧縮空気が供給される構成を有しており、供給された圧縮空気の圧力をノズルごとに切り替えて、各ノズルを通じて圧縮空気を電動機2の内部に供給するというものであってもよい。
また、圧縮空気圧力切替装置が上部支持台13aに備えられ、外部の圧縮空気供給源から供給された圧縮空気の圧力を圧縮空気圧力切替装置によって可変する構成であってもよい。
【0036】
集塵装置40は、例えば、空気を吸い込む吸引力を発生させる吸引機と、吸い込んだ空気に含まれている塵埃を分離する分離機と、分離された塵埃が捕集されるダストボックス等を備えた周知の装置であり、装置本体41に一端が繋がれ、他端に集塵フード43が取り付けられている集塵パイプ42を有している。
集塵フード43は、電動機2の外枠3に設けられている全ての排気スリット3aを覆うことができ、外枠3の表面に密接可能な形状に形成されている。
また、集塵フード43には、圧縮空気供給装置30の第2のノズル32を挿し込むための挿入孔43aが設けられている。この挿入孔43aに第2のノズル32を挿し込むと、第2のノズル32の先端部が所定の排気スリット3aに挿し入れられるようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の気吹き清掃装置100を用いて、鉄道車両に搭載されている車輪回転用の電動機2を在姿状態で清掃する気吹き清掃の手順について説明する。
【0038】
まず、ジャッキ装置10の支持台本体13を床面から離間させるべく、キャスター14を床面に押し付けるように第2のシリンダー12を作動させ、床面と接触させたキャスター14を使って一対のジャッキ装置10をそれぞれ車軸箱1b近傍の所定位置に移動させる。
そして、車軸箱1bの下方に第1のシリンダー11を位置合わせした後、第2のシリンダー12をオフに切り替えて支持台本体13を床面に載置するようにして、ジャッキ装置10を所定位置に据え付ける。
こうして所定位置に据え付けられたジャッキ装置10の第1のシリンダー11を作動させ、車輪1の両端にある車軸箱1bを下面から押し上げて、鉄道車両の車輪1をレールRから離間させる。
【0039】
次いで、集塵装置40の集塵フード43を電動機2の外枠3の表面に取り付ける。このとき、集塵フード43が全ての排気スリット3aを覆うように外枠3に装着する。
また、圧縮空気供給装置30の第1のノズル31を電動機2の外枠3の空気穴3bに取り付ける。
また、圧縮空気供給装置30の第2のノズル32を集塵フード43の挿入孔43aに挿し込んで、その第2のノズル32の先端部を所定の排気スリット3aに挿し入れる。
また、車輪回転装置20の転動輪21をレールRから離間させた車輪1に押し当てるように調整する。
【0040】
次いで、車輪回転装置20を作動させて車輪1を回転させ、その車輪1の回転を電動機2に伝達して電動機2の回転子5を回転させる。
また、回転子5の回転にあわせて圧縮空気供給装置30を作動させて、電動機2の内部の回転子5に向けて圧縮空気を供給しつつ、集塵装置40を作動させて、電動機2の内部に溜まっていた塵埃を排気スリット3aから吸い出すように集塵する。
なお、集塵装置40は、漏れなく塵埃を吸引するため所定の吸引量を保つようにして、排気スリット3aから集塵するようになっている。
【0041】
このように、電動機2の内部で回転子5を回転させつつ、電動機2内部に向けて圧縮空気を供給し、集塵装置40を作動させることで、回転子5の冷却穴5bなどに溜まっていた塵埃を排気スリット3aから集塵して除去することができる。
また、排気スリット3aから一定の吸引量で塵埃を吸引することで、排気スリット3aに塵埃が詰まることや、集塵フード43と外枠3の接合箇所や挿入孔43aから塵埃が漏れることを防ぐことができる
特に、回転する回転子5に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給することで、回転子5の軸周りに複数設けられている全ての冷却穴5bに圧縮空気を流通させて、各冷却穴5bに溜まった塵埃を除去することができる。
つまり、この気吹き清掃装置100を用いれば、鉄道車両から電動機2を取り外すことなく、その電動機2の内部をより好適に気吹き清掃することができる。
【0042】
このような気吹き清掃を行うにあたり、回転子5の回転方向、回転子5の回転速度、回転子5に吹き付ける圧縮空気の供給圧力の少なくとも1つを切り替えるようにすれば、圧縮空気の当たり具合が変わり、電動機2の内部に万遍に圧縮空気を供給することができるので、様々な箇所にこびりついた塵埃を効率よく除去することができる。
また、単に圧縮空気の供給圧力を高めて塵埃を除去する手法よりも電動機2内部の絶縁膜の劣化を防ぐことができる。
【0043】
例えば、
図3に示すように、圧縮空気供給装置30の第1のノズル31と第2のノズル32のうち、第1のノズル31のみから圧縮空気を供給するようにして、電動機2の外枠3の空気穴3bを通じて回転子5に圧縮空気を吹き付けるように供給し、一定時間経過後に圧縮空気の供給圧力をあげて一定時間気吹くようにする。
こうすることで、比較的取り除き易い塵埃をあらかた除去した後、こびりついた塵埃を除去することができる。
なお、回転子5の回転方向や、回転子5の回転速度を、所定時間経過後に切り替えるようにしてもよい。一定の回転方向や回転速度では圧縮空気の当たり易い箇所/当たり難い箇所に偏りが生じてしまい、塵埃を吹き飛ばし難い箇所があるが、回転子5の回転方向や回転速度を切り替えるようにすれば、圧縮空気の当たり具合が変わるので、様々な箇所にこびりついた塵埃を除去することができる。
【0044】
また、
図4に示すように、圧縮空気供給装置30の第1のノズル31と第2のノズル32の両方から圧縮空気を供給するようにして、電動機2の外枠3の空気穴3bを通じて回転子5に圧縮空気を吹き付けるように供給しつつ、電動機2の外枠3の排気スリット3a側からも回転子5に向けて圧縮空気を吹き付けるように供給する。そして、一定時間経過後に圧縮空気の供給圧力をあげて一定時間気吹くようにする。
このとき、空気穴3b側からの圧縮空気と排気スリット3a側からの圧縮空気の一方の供給圧力をあげても、両方の供給圧力をあげてもよい。
こうすることで、空気穴3b側からの圧縮空気と排気スリット3a側からの圧縮空気がぶつかった乱流によって、空気穴3b側からの圧縮空気だけでは取り除き難かった塵埃を除去することができる。例えば、排気スリット3a側の冷却穴5bの開口近傍に溜まっていた塵埃をその乱流によって除去することができる。
なお、回転子5の回転方向や、回転子5の回転速度を、所定時間経過後に切り替えるようにしてもよい。一定の回転方向や回転速度では圧縮空気の当たり易い箇所/当たり難い箇所に偏りが生じてしまい、塵埃を吹き飛ばし難い箇所があるが、回転子5の回転方向や回転速度を切り替えるようにすれば、圧縮空気の当たり具合が変わるので、様々な箇所にこびりついた塵埃を除去することができる。
【0045】
このように、気吹き清掃装置100を用いた気吹き清掃を行う際に、外枠3の空気穴3bを通じて回転子5に圧縮空気を吹き付ける作業と、外枠3の空気穴3bを通じて回転子5に圧縮空気を吹き付けつつ、外枠3の排気スリット3a側からも回転子5に向けて圧縮空気を吹き付ける作業を行うようにすれば、塵埃をより一層除去することができる。
【0046】
そして、気吹き清掃装置100を用いて気吹き清掃を行うにあたり、回転子5の回転速度と回転方向の切り替えや、回転子5に吹き付ける圧縮空気の供給圧力の切り替えに加えて、外枠3の空気穴3bを通じて回転子5に圧縮空気を吹き付ける作業と、外枠3の空気穴3bを通じて回転子5に圧縮空気を吹き付けつつ、外枠3の排気スリット3a側からも回転子5に向けて圧縮空気を吹き付ける作業との切り替えを自動化すれば、清掃作業員の熟練度によらず、常に安定した清掃を行うことが可能になる。
気吹き清掃を自動化するには、車輪回転装置20と圧縮空気供給装置30の制御を自動化すればよい。
【0047】
ここで、気吹き清掃装置100の車輪回転装置20と圧縮空気供給装置30の制御を自動化した清掃パターンの一例を示す。
例えば、
図1に示したように、在姿状態の鉄道車両(電動機2)に気吹き清掃装置100をセットし、車輪1をレールRから離間させた後、その気吹き清掃装置100による清掃をスタートさせると、まず、集塵装置40が作動する。
次いで、車輪回転装置20が回転子5を正転方向に回転速度5[rpm]で回転させつつ、圧縮空気供給装置30が第1のノズル31のみから圧縮空気を供給するようにして、空気穴3b側から300[kPa]の圧縮空気を10分間供給する(第一工程)。
次いで、車輪回転装置20が回転子5を正転方向に回転速度5[rpm]で回転させつつ、圧縮空気供給装置30が第1のノズル31のみから圧縮空気を供給するようにして、空気穴3b側から600[kPa]の圧縮空気を10分間供給する(第二工程)。
次いで、車輪回転装置20が回転子5を正転方向に回転速度10[rpm]で回転させつつ、圧縮空気供給装置30が第1のノズル31と第2のノズル32の両方から圧縮空気を供給するようにして、空気穴3b側から300[kPa]の圧縮空気、排気スリット3a側から300[kPa]の圧縮空気を5分間供給する(第三工程)。
次いで、車輪回転装置20が回転子5を正転方向に回転速度10[rpm]で回転させつつ、圧縮空気供給装置30が第1のノズル31と第2のノズル32の両方から圧縮空気を供給するようにして、空気穴3b側から300[kPa]の圧縮空気、排気スリット3a側から600[kPa]の圧縮空気を5分間供給する(第四工程)。
次いで、車輪回転装置20が回転子5を反転方向に回転速度10[rpm]で回転させつつ、圧縮空気供給装置30が第1のノズル31と第2のノズル32の両方から圧縮空気を供給するようにして、空気穴3b側から300[kPa]の圧縮空気、排気スリット3a側から600[kPa]の圧縮空気を5分間供給する(第五工程)。
この5工程を終えると、車輪回転装置20と圧縮空気供給装置30が停止し、その後に集塵装置40が停止する。
このように、車輪回転装置20と圧縮空気供給装置30の制御を自動化して、電動機2の気吹き清掃を自動化すれば、鉄道車両の電動機2の清掃を大幅に省力化することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の気吹き清掃装置100を用いた気吹き清掃方法によれば、より好適に電動機の気吹き清掃を行うことができる。
【0049】
なお、以上の実施の形態においては、気吹き清掃するにあたり、回転子の回転速度や、圧縮空気の供給圧力の切り替えを2段階で行うことを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3段階以上の切り替えを行うようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態における回転子5の回転速度や、圧縮空気の供給圧力、気吹き時間は一例であり、それらの値は適宜設定して気吹き清掃すればよい。
例えば、回転速度や圧縮空気の供給圧力を任意に設定し、回転方向と供給圧力を切り替えることで、内部構造の異なる別の型の電動機2の気吹き清掃にも対応することができる。
具体的には、電動機2によっては回転子5を挟む配置に空気穴3bと排気スリット3aが設けられていないものもあるが、圧縮空気の流入位置を調整するなどして、電動機2内の回転子5に向けて圧縮空気を供給可能にして気吹き清掃を行うことができる。
【0051】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 車輪
1a 車軸
1b 車軸箱
2 電動機
3 外枠
3a 排気スリット
3b 空気穴
4 固定子
5 回転子
5a 中心軸
5b 冷却穴
6 駆動伝達手段
6a 小歯車
6b 大歯車
10 ジャッキ装置(車輪持上手段)
11 第1のシリンダー
12 第2のシリンダー
13 支持台本体
13a 上部支持台
13b 下部支持台
14 キャスター
14a キャスター支持台
20 車輪回転装置(回転子回転手段)
21 転動輪
30 圧縮空気供給装置(圧縮空気供給手段)
31 第1のノズル
32 第2のノズル
33 エアホース
40 集塵装置(集塵手段)
41 装置本体
42 集塵パイプ
43 集塵フード
43a 挿入孔
100 気吹き清掃装置
R レール