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特許7436327芳香機能により立体ギャザーの認識等を促す吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】芳香機能により立体ギャザーの認識等を促す吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240214BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20240214BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F13/15 143
A61F13/475 110
A61F13/494 110
A61F13/15 210
A61F13/15 220
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020145029
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039826
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彩
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102614(JP,A)
【文献】特表2000-513627(JP,A)
【文献】特開2010-154928(JP,A)
【文献】国際公開第2013/105571(WO,A1)
【文献】特開2013-208318(JP,A)
【文献】特開2005-307383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の肌に対向する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、
前記表面の両側部の前後方向にわたり、立体ギャザーが設けられており、
前記立体ギャザーは、前記表面から起き上がる起き上がり部を有し、
前記起き上がり部を通り幅方向に延びる少なくとも一か所の折り位置で前後方向に畳まれており、
少なくとも前記表面から吸収可能な吸収性物品であって、
前記立体ギャザーの起き上がり部に、香料を内包するマイクロカプセルを含む芳香部が設けられており、
前記芳香部は、前記折り位置の前後両側にわたる部分であり、
前記芳香部は、前記折り位置の前後方向前側に30mmの位置から前記折り位置の前後方向後側に30mmの位置までの範囲にのみ設けられており、
前記マイクロカプセルは外圧により前記香料を放出するものである、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
装着者の肌に対向する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、
前記表面の両側部の前後方向にわたり、立体ギャザーが設けられており、
前記立体ギャザーは、前記表面から起き上がる起き上がり部を有し、
少なくとも前記表面から吸収可能な吸収性物品であって、
前記立体ギャザーは、表面の両側部に取り付けられた付根部と、前記付根部から延び出た主部と、前記主部における前端部及び後端部がそれぞれ倒伏状態で固定されて形成された倒伏部と、前記主部における前後の倒伏部の間の部分が非固定とされて形成された前記起き上がり部と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられた立体弾性部材とを有し、
前記起き上がり部における前端部の根元部及び後端部の根元部のみ、香料を内包するマイクロカプセルを含む芳香部が設けられており
前記マイクロカプセルは外圧により前記香料を放出するものである、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項3】
前記芳香部の部位を表示する芳香部表示を有する、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記起き上がり部の内面に、前記芳香部が設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記起き上がり部は、厚み方向に複数積層されたシート層を有しており、
前記起き上がり部の厚み方向に隣接するシート層の間に、前記芳香部が設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記起き上がり部は、厚み方向に隣接するシート層の対向面を直接的又は間接的に接合するホットメルト接着剤を有しており、
前記マイクロカプセルは前記ホットメルト接着剤により前記起き上がり部に固定されている、
請求項記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドタイプやフラットタイプ、テープタイプ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パッドタイプやフラットタイプ(尿取りパッドとも称される。)といった吸収性物品の他、背側部分の両側部が腹側部分の外面に対して着脱可能とされたテープタイプ使い捨ておむつは、製品状態で脚を通す脚開口を有せず、平坦又はそれに近い状態から、装着者の股の間に宛がうことにより装着を行うものであり、展開型と称される。また、製品状態で脚開口を有するパンツタイプ吸収性物品というものもあり、これは展開型吸収性物品とは異なる。
【0003】
これら吸収性物品の中には、尿などの体液が吸収性物品から漏れ出ることを防止する立体ギャザーが設けられるものもある。このような立体ギャザーとしては、例えば、吸収性物品の前後方向の両側部に設けられ、装着の際に、着用者の肌方向に起き上がる起き上がり部を有するものが知られている。
【0004】
ところで、吸収性物品は、前後方向に二つ折りや三つ折りする等、コンパクトに折り畳んだ状態で包装体内に詰められ、保管・販売されることが多い。そのため、折り畳まれた吸収性物品を展開して、介護者の股間部に着用する際、吸収性物品に折り癖が強く残っている場合、折り癖を直し、立体ギャザーの起き上がり部を着用者の肌側に向けて立ち上げることが必要となる。この作業を省いて、パンツタイプおむつなどの外装体に吸収性物品を装着すると、折り癖に沿って、漏れが発生することがある。
【0005】
また、立体ギャザーは、製造の際に全体が平坦に倒れた状態で取り付けられ、かつ厚み方向に加圧されるだけでなく、その後に使用されるまでの間も厚み方向に加圧された状態となるため、製品を使用する際になっても、起き上がり部が倒れた状態で対向面に弱く付着したままとなることがある。したがって、このような状況になっていることに気付かずに使用した場合にも、漏れが発生するおそれがある。
【0006】
また、立体ギャザーの起き上がり部がどのようなものか手で触れて理解していないと、適切な装着状態を見誤り、漏れを発生させるおそれもある。
【0007】
それにもかかわらず、吸収性物品に不慣れな使用者や、不注意な使用者は、立体ギャザーの起き上がり状態の重要性に気付くことなく、又は立体ギャザーの存在すら気付かずに製品を使用し、漏れが発生してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-150824号公報
【文献】特開2018-102614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、装着の際、使用者に立体ギャザーを摘まませて認識等を促す吸収性物品は従来提案されていない。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、使用者に立体ギャザーの起き上がり部を摘まませて認識等を促す吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
装着者の肌に対向する表面と、その反対側に位置する裏面とを有し、
少なくとも前記表面から吸収可能な吸収性物品であり、
前記表面の両側部の前後方向にわたり、立体ギャザーが設けられており、
前記立体ギャザーは、前記表面から起き上がる起き上がり部を有し、
前記立体ギャザーの起き上がり部の少なくとも一部に、香料を内包するマイクロカプセルを含む芳香部が設けられており、
前記マイクロカプセルは外圧により前記香料を放出するものである、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
本吸収性物品では、外圧により香料を放出するマイクロカプセルを含む芳香部が立体ギャザーの起き上がり部に設けられている。したがって、使用者は芳香部を指で摘まんで加圧することにより、芳香機能を発揮させることができる。換言すると、本吸収性物品はその使用に際して芳香機能を発現させようとすると、意図せずに立体ギャザーの起き上がり部を摘まみ、その存在や機能を認識することができるようになる。
なお、「外圧により」香料を放出するとは、マイクロカプセルのシェルが破れて内部の香料が放出される機構、及びマイクロカプセルのシェルが破壊せずに内部の香料がシェルに浸透してシェル外に放出される機構の両者を含むが、前者がより好ましい。立体ギャザーの芳香部における芳香発現のための圧力は、指で摘まむ力を考慮して適宜設計することができ、例えば0.5~4.3N/cm2程度とすることができる。
なお、特許文献2記載のものは、立体ギャザーに香料を含ませるものであるが、排泄物から生じる臭いを抑制することを目的とするものであり、立体ギャザーの起き上がり部を認識させるために、香料をマイクロカプセルに内包させ、指で摘まむことにより香料を放出させるものではない。
【0013】
<第2の態様>
前記起き上がり部を通り幅方向に延びる少なくとも一か所の折り位置で前後方向に畳まれた吸収性物品であり、
前記起き上がり部における前記折り位置が通る部分に、前記芳香部が設けられている、
第1の態様の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
多くの吸収性物品(特に展開型吸収性物品)では、前述のように、前後方向に二つ折りや三つ折りする等、コンパクトに折り畳んだ状態で包装体内に詰められ、保管・販売される。そして、この場合の折り位置は、立体ギャザーの起き上がり部を横切ることが殆どであるため、装着の際、包装体から取り出した折り畳まれた吸収性物品を展開した時、立体ギャザーの起き上がり部についた折り癖の有無を目で見て確認し、折り癖がある場合、手直しすることが望ましい。本吸収性物品では、使用に際して芳香機能を発現させようとすると、折り癖が付きやすい部位(又はついた部位)を芳香が発現するまで摘まんで、揉んだり、なぞったりすることとなり、その結果として意図せずに折り癖を直す又は弱くすることが可能となる(折り癖を直すことが当たり前になっている使用者にとっては、折り癖を直そうとすると自動的に芳香が発現する)。また、芳香機能を発現させるだけで折り癖が直らないとしても、折り癖を有する部位に指で触れることにより、折り癖の認識が促されるため、折り癖に気付いた使用者が折り癖を手直しすることが期待される。
【0015】
<第3の態様>
前記芳香部は、前記起き上がり部の先端部に設けられている、
第2の態様の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
立体ギャザーの折り癖に起因する漏れは、起き上がり部の先端部に折り癖が残っているときに問題となりやすい。よって、折り位置に芳香部を設ける場合、起き上がり部の少なくとも先端部に芳香部を有することが好ましい。
【0017】
<第4の態様>
前記芳香部は、前記起き上がり部の根元部に設けられている、
第1~3のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
本吸収性物品では、使用に際して芳香機能を発現させようとすると、立体ギャザーの起き上がり部の根元部を摘まむこととなるため、芳香部を有する部位が倒れた状態で対向面に付着していても、これを意図せずに剥がして、立体ギャザーを根元から立ち上げることができる。
【0019】
<第5の態様>
前記立体ギャザーは、表面の両側部に取り付けられた付根部と、前記付根部から延び出た主部と、前記主部における前端部及び後端部がそれぞれ倒伏状態で固定されて形成された倒伏部と、前記主部における前後の倒伏部の間の部分が非固定とされて形成された前記起き上がり部と、前記起き上がり部の少なくとも先端部に取り付けられた立体弾性部材とを有し、
前記起き上がり部の前端部及び後端部に、前記芳香部が設けられている、
第1~4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
本態様の構造を有する立体ギャザーでは、起き上がり部は、倒伏部に近いほど、つまり前端部及び後端部ほど倒れた状態で対向面に付着しやすい。よって、本態様のように、起き上がり部のうち少なくとも前端部及び後端部に芳香部が設けられていると、芳香機能を発現させる際、立体ギャザーの起き上がり部の前端部及び後端部が倒れた状態で対向面に付着していても、これを意図せずに剥がして、立体ギャザーを根元から立ち上げることができるため好ましい。
【0021】
<第6の態様>
前記芳香部の部位を表示する芳香部表示を有する、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
本態様のように芳香部表示を設けることで、芳香部を摘まみやすくなる。また、芳香機能を意識しない人に、芳香機能の存在気付かせることができる。
【0023】
<第7の態様>
前記起き上がり部は、複数積層されたシート層と、これらシート層の対向面を直接的又は間接的に接合するホットメルト接着剤とを有しており、
前記マイクロカプセルは前記ホットメルト接着剤により前記起き上がり部に固定されている、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0024】
(作用効果)
立体ギャザーの起き上がり部が、本態様のようにホットメルト接着剤により接着された層構造を有する場合、このホットメルト接着剤を利用してマイクロカプセルを固定すると、芳香部作製専用の工程を必要とせずに芳香部を設けることができるだけでなく、マイクロカプセルが立体ギャザーの外部に露出せず、肌に触れにくいため好ましい。なお、起き上がり部におけるシート層の対向面を直接的又は間接的に接合するホットメルト接着剤には、シート層同士を直接接合するホットメルト接着剤のほか、シート層同士を接合するだけでなく、シート層に糸ゴム等の弾性部材を固定するホットメルト接着剤を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、使用者に立体ギャザーの起き上がり部を摘まませて認識等を促すことができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】吸収性物品の平面図(内面図)である。
図2】(a)1―1線の断面図、(b)吸収性物品の折りたたみ図である。
図3】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
図4】吸収性物品の平面図(内面図)である。
図5】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
図6】(a)吸収性物品の平面図(内面図)、及び(b)1―1線の断面図である。
図7】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
図8】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
図9】(a)吸収性物品の平面図(内面図)、及び(b)1―1線の断面図である。
図10】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
図11】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
図12】吸収性物品の立体ギャザー付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、吸収性物品の一例としてのパッドタイプ吸収性物品について、添付図面を参照しつつ詳説する。
なお、平面図中で、パッドタイプ吸収性物品の側縁部及び両端部の色が塗られている部分は、立体ギャザーBSの付根部15及び倒伏部9を示し、裏側に隣接する部材(例えばトップシート4等)に固定されている部分である。マイクロカプセル17を配置する芳香部16は、図3図5図7図8、及び図10図12で示す立体ギャザーBS付近の拡大図で、起き上がり部8において斜線がひかれている部分である。尚、これら立体ギャザーBS付近の拡大図では、幅方向WDの折り位置2を示す2点線のみを表示し、前後方向LDの折り位置3を示す2点線は省略する。
【0028】
(吸収性物品の構造例)
図1図12はパッドタイプの吸収性物品を示している。このパッドタイプの吸収性物品(以下、単にパッドともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bにわたるトップシート4と、前身頃Fから後身頃Bにわたるようにバックシート5との間に吸収体6を介在させた構造を有しており、トップシート4を透過した排泄液を吸収体6により吸収保持するものである。吸収性物品の平面形状は特に限定されず、ほぼ長方形とするほか、図1図12のように、中間両側部にくびれを形成し、全体としてほぼ砂時計形状とする等、適宜の形状とすることができる。
【0029】
図2(a)、図6(b)及び図9(b)で示す、吸収体6の表側(肌当接面側)を覆うトップシート4としては、有孔又は無孔の不織布や有孔プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート4に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになる。
【0030】
吸収体6の裏側(非肌当接面側)を覆うバックシート5は、トップシート4と同様に液透過性でも、液不透過性でもよい。液不透過性の場合、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に、炭酸カルシウム等の無機微粒子を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを好適に用いることができる。
【0031】
吸収体6は図2(a)、図6(b)及び図9(b)に示すように単層構造となっていても、複数の層から成る構造となっていてもよい。
吸収体6としては、公知のもの、例えば、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。
吸収体6は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シートによって包装することができる。
吸収体6は、図1図12では股間部において前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する砂時計状に形成されているが、長方形状等、適宜の形状とすることができる。
【0032】
図1図12で示すように、トップシート4の両側部には主に脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されている。この立体ギャザーBSは、図2(a)に示されるように、幅方向WDから見ると、吸収性物品の表面の両側部に固定された付根部15と、この付根部15からトップシート4の幅方向WD内側に延在する主部12とを有する。主部12は、先端部13で折り返されて積層されたギャザーシートで形成されていると好ましい。ギャザーシートの積層部分は、主部12の根元部14まで延びていてもよいし、先端部13までしか延びていなくてもよい。主部12は、前後方向LDから見ると、図1で示されるように、前端部10及び後端部11に位置し、倒伏状態で固定された倒伏部9と、前後の倒伏部9の間に位置し、非固定である起き上がり部8から形成されている。付根部15及び倒伏部9は、その裏側に隣接する部材(図示例では、トップシート4及びバックシート5)に固定されており、図1図12で色が塗られている部分として表す。起き上がり部8の少なくとも先端部13には細長状のギャザー弾性部材7が前後方向に沿って配設されている。この結果、立体ギャザーBSは、ギャザー弾性部材7の収縮により起き上がり部8が、装着状態において立ち上がるようになっている。立体ギャザーBSとしては撥水性とされた不織布が好適に用いられる。
なお、平面図で示されるギャザー弾性部材7は、倒伏部9には存在せず、起き上がり部8に位置するように図示されているが、製造上の理由で、起き上がり部8に収まりきらず、倒伏部9に一部はみ出して存在する場合がある。
【0033】
ギャザー弾性部材7としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150~350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材7としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0034】
立体ギャザーBSを構成するギャザーシートとしては不織布を好適に用いることができる。この不織布としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を原料とし、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができる。さらに、ギャザーシートに不織布を用いる場合、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。特に、防水性を高めるために、立体ギャザーの一部又は全部にバックシートと同様の液不透過性シートを用いることもできる。
【0035】
(芳香機能)
他方、立体ギャザーBSの起き上がり部8の少なくとも一部に、香料を内包するマイクロカプセルを含む芳香部16が設けられており、この芳香部16に含まれるマイクロカプセルは外圧により香料を放出するものであると好ましい。
吸収性物品の立体ギャザーBSの起き上がり部8内であれば、芳香部16の位置は限定されず、図3(a)で示すように立体ギャザーBSの起き上がり部8全体に芳香部16が設けられても、図3(b)のように起き上がり部8の一部に芳香部16が設けられても良い。
使用者は、立体ギャザーBSが適切な形状になっていないまま装着され、使用時に漏れが生じることを防ぐために、吸収性物品の立体ギャザーBSを手で触り、伸ばしたり、起こしたりしてから使用することが好ましいが、吸収性物品を使い慣れていない、又は無頓着な使用者は、この作業を飛ばして使用することがある。これに対して、立体ギャザーBSの起き上がり部8に、香料入りのマイクロカプセル17を含む芳香部16を設けた場合、使用に際して芳香機能を発現させようとすると、意図せずに立体ギャザーの起き上がり部を摘まみ、その存在や機能を認識することができるようになる。
【0036】
マイクロカプセルの膜材は、物理刺激で破壊する材質であれば使用可能であり、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが利用できる。特に、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が取扱いの点において優れる。
【0037】
マイクロカプセルの平均粒子径は、特に限定されないが、一例としては1~40μm、好ましくは5~30μm、より好ましくは10~20μmである。なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計により、マイクロカプセルが適宜の分散液に分散されたスラリーにおけるマイクロカプセルの粒度分布により測定した値である。
【0038】
マイクロカプセルに封入される香料としては、天然香料及び合成香料のいずれを用いてもよいが、排泄物の臭気に対するマスキング効果(臭気と拮抗し又は競り勝って、その臭気を感じにくくさせる効果)や、特にハーモナージュ効果(臭気と調和し、不快とは感じさせなくする効果)を狙って調香されたものを使用するのが好ましい。香料の具体例としては、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然抽出香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料、あるいはこれらの2種以上の混合物を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。香料として市販品のものを広く使用することができる。
【0039】
マイクロカプセル17は、手で触ることにより、香料が入ったシェルが割れて香りを発しても、シェル内の香料がシェル外へ浸透して香りを発しても良いが、前者の方が好ましい。使用者が手で触ることによりマイクロカプセル17から香料が放出されるように、マイクロカプセル17のシェルの強度や、マイクロカプセルの付与位置を適宜定めることができる。通常の場合、立体ギャザーの芳香部に対して厚み方向に加わる圧力が0.5~4.3N/cm2のとき、より好ましくは0.5~3.6N/cm2のときにマイクロカプセルのシェルが割れる等により、香料が放出されるように構成されていると好ましい。
【0040】
香料を内包するマイクロカプセル17は、図9(b)の拡大図で示すように、厚み方向に隣接するシート層の間に配置されても、起き上がり部8の内面又は外面に配置されても良いが、使用前に脱落する可能性が低いという点では前者の方が、より良い配置となる。また、立体ギャザーBSを摘まむ力は、一般的に、人差し指及び中指よりも親指の方が強い傾向にあり、立体ギャザーBSを親指と人差し指及び中指で摘まんだ際、親指側にマイクロカプセル17が配置されていると、親指の圧力がマイクロカプセル17に加わりやすいと考えられる。そして、立体ギャザーBSの根元部14を手で触る際、根元部14の内側を親指、外側を人差し指及び中指で触れることが多いことから、マイクロカプセル17は起き上がり部8の外面よりも、図9(b)のように起き上がり部8のシート層の間に挟まれているか、又は起き上がり部8の内面に配置されている方が好ましい。図2(a)、図6(b)及び図9(b)では、起き上がり部8は二層のシート層が重ねられているが、積層されるシート層数に限定はなく、複数枚のシート層を接着して、起き上がり部8を形成することができる。
【0041】
前述のように、多くの吸収性物品(特に展開型吸収性物品)では、前後方向に二つ折りや三つ折りする等、コンパクトに折り畳んだ状態で包装体内に詰められ、保管・販売される。そして、この場合の折り位置は、立体ギャザーの起き上がり部を横切ることが殆どである。例えば、図2(b)に示すようにトップシート4の内面方向に折り畳んだ状態で包装体に詰められた吸収性物品は、立体ギャザーBSの折り位置2にあたる部分に折り癖がつくことがある。吸収性物品の使用時、折り畳まれた吸収性物品を展開し、この折り癖を直すために、立体ギャザーBSに手で触れることが必要であり、この作業を省くと、折り癖がついた状態で使用することとなり、折り癖と装着者の身体の間から漏れが生じる可能性がある。そこで、このような製品では、芳香部16は、図4及び図5に示すように、幅方向WDの折り位置2の少なくとも一か所に設けられていると好ましい。図4に示す例及び図5(b)に示す例は、全ての折り位置2に芳香部16が設けられているが、図5(a)に示す例のように、一部の折り位置2にのみ芳香部16を設け、他の折り位置2には芳香部16を設けなくてもよい。
【0042】
折り癖を手直しする習慣が少ない使用者でも、立体ギャザーBSの折り位置2に存在する芳香部16の芳香機能を発揮させることで、そこに位置する折り癖を手直しすることになる。ただし、立体ギャザーBSの折り位置2上にのみ芳香部16が設けられていると、折り畳んで包装体に詰められ保管されている間に、マイクロカプセル17のシェルが破けて中の香料が一部放出されてしまうおそれがある。このため、折り位置2上にのみに芳香部16を設けるのではなく、折り位置2から少なくとも前後方向LD前側に30mm以内及び前後方向LD後側に30mm以内、に芳香部16を設け、折り癖を含む折り位置2周辺を触ることで香りが発するように構成することが望ましい。図2(b)では、幅方向WDの折り位置2が2箇所あり、前後LD方向に3つ折りされているが、折り位置の個数や場所などは、包装体の形状等により適宜決めることができる。
【0043】
また、立体ギャザーの折り癖に起因する漏れは、起き上がり部8の先端部13に折り癖が残っているときに問題となりやすい。よって、図6図8に示すように、立体ギャザーBSの起き上がり部8の先端部13に芳香部16が設けられているのも好ましい。特にギャザー弾性部材7が幅方向に間隔を空けて複数本設けられている場合、図6(b)の拡大図で示すように、立体ギャザーBSの先端部13がギャザー弾性部材7の間で外側に折れ、反り返った癖がつくことがある。したがって、芳香部16はギャザー弾性部材の間のみ又はこれを含む範囲に設けると、より好ましい。図6(b)の拡大図では、立体ギャザーBSの起き上がり部8先端部13に弾性部材7が2本配設されているが、弾性部材7の本数は1本であっても、また3本以上であってもよく、特に限定されない。
【0044】
起き上がり部8の先端部13に芳香部16を設ける場合、芳香部16の位置は適宜定めることができるが、例えば展開状態で、起き上がり部8の幅方向WDの寸法をXとすると、起き上がり部8の先端から幅方向WD内側に0~0.7Xの範囲内、より好ましくは0~0.9Xの範囲に芳香部が位置していると好ましい。図7で示すように、芳香部16はギャザー弾性部材7が位置する部分の一部に設けられても、図8のようにギャザー弾性部材7が位置する部分の全部に設けられてもよい。
【0045】
図9及び図10で示すように、起き上がり部8の根元部14に芳香部16が設けられているのも好ましい。起き上がり部8の根元部14は、立体ギャザーBSが固定された付根部15近くに位置するため、吸収性物品が折り畳まれた状態から展開した際に、起き上がりにくく、倒れた状態が維持されやすい。このため、使用に際して芳香機能を発現させようとすると、意図せずに根元部14に指を入れて立体ギャザーBSを手直しすることとなり、根元部14から立体ギャザーBSが立ち上がり、立体ギャザーBSを起立した状態にして装着することが可能となる。
【0046】
起き上がり部8の根元部14に芳香部16を設ける場合、芳香部16の位置は適宜定めることができるが、例えば展開状態で、起き上がり部8の幅方向WDの寸法をXとすると、起き上がり部8の基端(起き上がり部8と付根部15との境界)から幅方向WD内側に0~0.7Xの範囲内、より好ましくは0~0.9Xの範囲に芳香部が位置していると好ましい。図10(a)で示すように、芳香部16は根元部14の一部に設けられても、図10(b)のように根元部14の全部に設けられてもよい。
【0047】
図11で示すように、起き上がり部8の前端部10及び後端部11に芳香部16が位置するのも好ましい。立体ギャザーBSの起き上がり部8の起立が始まる前端部10又は後端部11から、起立が終わる後端部11又は前端部10まで指で触ると、芳香部16内のマイクロカプセル17のシェルが破ける等により香りが発生するとともに、意図せずに立体ギャザーBSの起き上がり部8の全体を確実に根元から立ち上げることができる。前端部10及び後端部11に芳香部16を設ける場合、それぞれの前後方向LDの寸法は10mm以上、特に20mm以上であることが望ましい。特に、例えば図12で示す例のように、前端部10及び後端部11においては幅方向WDの全体にわたり芳香部16が設けられ、かつ前端部10及び後端部11以外ではその前後方向LD全体にわたり少なくとも根元部14に芳香部16が設けられていると、立体ギャザーBSの倒伏部9及び付根部15と起き上がり部8の境目をすべて手でなぞることになり、立体ギャザーBSの起き上がり部8全体をしっかりと立ち上げることが可能となる。
【0048】
芳香部16の位置を示すために、インク、矢印、模様などの芳香部表示を芳香部16の配置位置又はその隣接位置につけるのも好ましい。これにより、立体ギャザーBSの触らせたい位置を視覚的に理解できるようにし、芳香部16があっても立体ギャザーを意識しない人に、立体ギャザーBSを認識させ、触るように誘導しやすくなる。芳香部表示を触ると、香りがするため、触れたことが確認できる。つまり、使用者に立体ギャザーBSに触ることをインクや模様等の目印で視覚的に促すことが可能で、十分に触れたことが香りとして確認もできる。使用前に立体ギャザーBSに触れることを意識しない者にとって、立体を触れるように意識を誘導できる。芳香部表示は、使用者が芳香部の部位を視覚的に認識できるものであれば、特に限定されることはなく、芳香部を周囲と異なる色に着色すること(芳香剤の着色や、マイクロカプセルの着色、シートの印刷等による着色、芳香部に位置するホットメルト接着剤の着色等を含む)の他、芳香部の部位を指し示す矢印や、芳香部を取り囲む図形等を、印刷等によりシートに付加すること等を含む。
【0049】
マイクロカプセル17は起き上がり部8に設けられる限り、例えば起き上がり部8のシート層の間に挟まれているだけや、シート層の繊維に絡まっているだけでもよいが、起き上がり部8に固定されていることが望ましい。例えば、図2(a)、図6(b)及び図9(b)の1-1線断面図で示すように、起き上がり部を構成する複数のシート層をホットメルト接着剤で接合する場合、このホットメルト接着剤を介してマイクロカプセル17がシート層に固定されていると、マイクロカプセル17の固定専用のホットメルト接着剤を用いなくてよいだけでなく、マイクロカプセルが立体ギャザーの外部に露出せず、肌に触れにくくなるとともに、脱落しにくくなるため好ましい。この場合、シート層に塗布したホットメルト接着剤上にマイクロカプセル17を配置してもよいし、あらかじめマイクロカプセル17を混ぜたホットメルト接着剤をシート層に塗布してもよい。また、起き上がり部を構成する複数のシート層を接着するホットメルト接着剤の位置は、ギャザー弾性部材7の通過位置であってもよいし、ギャザー弾性部材7を有しない位置であってもよい。前者の場合、ギャザー弾性部材7の外周面に塗布されるホットメルト接着剤により、マイクロカプセル17が固定されていても良い。図2(a)、図6(b)及び図9(b)では、2枚の不織布を張り合わせて立体ギャザーBSを形成しているが、積層される不織布枚数に限定はなく、複数枚の不織布を接着して、立体ギャザーBSを形成することができる。
【0050】
なお、上述の各例では、他の例の構造を適宜組み合わせることができる。
【0051】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(横方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、上記例のようなパッドタイプやフラットタイプ、テープタイプ等の吸収性物品(使い捨ておむつ又は生理用ナプキン等)において利用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
4…トップシート、5…バックシート、6…吸収体、7…ギャザー弾性部材、8…起き上がり部、9…倒伏部、10…前端部、11…後端部、12…主部、13…先端部、14…根元部、15…付根部、16…芳香部、17…マイクロカプセル、WD…幅方向、LD…前後方向、BS…立体ギャザー、F…前身頃、B…後身頃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12