IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

特許7436330送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム
<>
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図1
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図2
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図3
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図4
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図5
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図6
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図7
  • 特許-送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】送液計画作成装置及び方法、並びに液化ガスの送液支援システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20240214BHJP
   B67D 9/00 20100101ALI20240214BHJP
   B63B 27/24 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
F17C13/00 302F
B67D9/00 Z
B63B27/24 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020146927
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041613
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広崇
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】横山 元気
(72)【発明者】
【氏名】平沼 真衣
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕也
(72)【発明者】
【氏名】江口 雄三
(72)【発明者】
【氏名】和泉 徳喜
(72)【発明者】
【氏名】永原 斉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040579(JP,A)
【文献】特開2007-303605(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0120862(KR,A)
【文献】特開2016-105022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0176937(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018209423(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B67D 9/00
B63B 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部と、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部における状況を表す情報の予測値を求める状況予測部と、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成部とを、備え
前記状況予測部は、前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて前記送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部のシミュレーションを行って前記予測値を求めるように構成された、少なくとも1つのシミュレーションモデルを有する、
送液計画作成装置。
【請求項2】
供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部と、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部における状況を表す情報の予測値を求める状況予測部と、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成部とを、備え、
前記状況予測部は、前記受入側情報及び前記供給側情報から前記予測値を導き出すように構成された、少なくとも1つの学習済みモデルを有する、
液計画作成装置。
【請求項3】
供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部と、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部における状況を表す情報の予測値を求める状況予測部と、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成部とを、備え、
前記状況予測部は、前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷に関する液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測する予冷予測部を含み、
前記送液計画は、前記予冷予測部で予測された情報を含む、
液計画作成装置。
【請求項4】
前記状況予測部は、前記供給タンクから前記受入タンクへの前記液化ガスの送液に関する液化ガス送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つを予測する送液予測部を含み、
前記送液計画は、前記送液予測部で予測された情報を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の送液計画作成装置。
【請求項5】
前記予測値に基づいて前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷の要否を判断する予冷検討部を更に備え、
前記送液計画は、前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷の要否を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の送液計画作成装置。
【請求項6】
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて、送液完了後の前記受入タンクに収容された前記液化ガスのメタン価を推定するメタン価推定部を更に備え、
前記送液計画は、前記メタン価の推定結果を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の送液計画作成装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の送液計画作成装置と、
前記供給タンクから前記送液ラインへ前記液化ガスを送り出す送液ポンプと、
前記受入タンクの圧力及び液位の測定値、並びに、前記送液計画作成装置が作成した前記送液計画を取得し、前記送液計画に従って前記圧力及び前記液位の測定値に基づいて前記送液ポンプを動作させるように構成された供給側端末と、を備える、
液化ガスの送液支援システム。
【請求項8】
前記受入タンクは、当該受入タンク内を冷却するタンク冷却装置を備えており、
前記供給側端末は、前記受入タンクの前記圧力、前記液位、及び温度の測定値を取得し、前記送液計画に従って前記受入タンクを冷却するように前記圧力、前記液位、及び前記温度の測定値に基づいて前記タンク冷却装置に対して動作指令を出すように構成されている、
請求項に記載の液化ガスの送液支援システム。
【請求項9】
前記受入タンクは、前記送液ラインの配管の一部又は全部を冷却する配管冷却装置を備えており、
前記供給側端末は、前記送液ラインの配管温度を取得し、前記送液計画に従って前記送液ラインの配管を冷却するように前記配管温度に基づいて前記配管冷却装置に対して動作指令を出すように構成されている、
請求項又は請求項に記載の液化ガスの送液支援システム。
【請求項10】
前記受入タンクは液化ガス燃料船の燃料貯蔵タンクであり、前記供給タンク及び前記供給側端末はバンカー船に搭載されている、
請求項のいずれか一項に記載の液化ガスの送液支援システム。
【請求項11】
供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画をコンピュータで生成する送液計画作成方法であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含み、
前記状況予測ステップは、前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて前記送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部のシミュレーションを行って前記予測値を求めることを含む、
送液計画作成方法。
【請求項12】
供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画をコンピュータで生成する送液計画作成方法であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含み、
前記状況予測ステップは、前記受入側情報及び前記供給側情報から少なくとも1つの学習済みモデルを用いて前記予測値を導き出すことを含む、
液計画作成方法。
【請求項13】
供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画をコンピュータで生成する送液計画作成方法であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含み、
前記状況予測ステップは、前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷に関する液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測することを含む、
液計画作成方法。
【請求項14】
前記状況予測ステップは、前記供給タンクから前記受入タンクへの前記液化ガスの送液に関する液化ガス送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つを予測することを含む、
請求項1113のいずれか一項に記載の送液計画作成方法。
【請求項15】
求めた前記予測値に基づいて前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷の要否を判断するステップを更に含み、
前記送液計画は、前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷の要否を含む、
請求項1114のいずれか一項に記載の送液計画作成方法。
【請求項16】
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて、送液完了後の前記受入タンクに収容された前記液化ガスのメタン価を推定するメタン価推定ステップを更に含み、
前記送液計画は、前記メタン価の推定結果を含む、
請求項1115のいずれか一項に記載の送液計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給タンクから受入タンクへ液化ガスを送液するための送液計画を作成する送液計画作成装置及び方法、並びに当該送液計画作成装置を備える液化ガスの送液支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排ガス規制の大幅強化を機に、重油と比べて環境負荷の小さいLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)などの液化ガスを燃料とする船舶(以下、「液化ガス燃料船」と称する)の普及が急速に進んでいる。これに伴い、液化ガス燃料船へのバンカリング拠点の整備が進められている。液化ガス燃料は常温より低い温度で取り扱われるケースが多いことから、バンカリングに様々な制約がある。
【0003】
液化ガス燃料船へのバンカリング方式として、陸上のタンクローリーから補給するTruck to Ship方式、陸上の燃料基地から直接補給するShore to Ship方式、燃料ガス供給船(バンカー船)から補給するShip to Ship方式などが知られている。例えば、Ship to Ship方式では、岸壁・桟橋に係留中又は錨泊中の液化ガス燃料船に燃料ガス供給船を係留し、フレキシブルホースやローディングアームで液化ガス燃料船の受入配管と燃料ガス供給船の供給配管とを接続して燃料供給ラインを形成し、燃料供給ライン内を窒素でエアパージしたうえで、燃料供給ラインをクールダウンしてから送液を開始する(非特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】青山憲之、「LNGバンカリングの手順と安全要件」、日本マリンエンジニアリング学会誌、2016年、第51巻、第1号、12~16頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現状のLNGバンカリングでは、バンカリングに伴う燃料供給ライン及び燃料貯蔵タンクのクールダウンの要否判断やその所要時間の見積もりは、LNGサプライヤや作業員(船員)の経験に頼っている。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、供給タンクから受入タンクへ液化ガスを送液するにあたり、サプライヤや作業員の技量に頼らずに適切な送液計画を作成する送液計画作成装置及び方法、並びに、この送液計画を利用する液化ガスの送液支援システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の一態様に係る送液計画作成装置は、供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部と、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測部と、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成部とを、備え
前記状況予測部は、前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて前記送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部のシミュレーションを行って前記予測値を求めるように構成された、少なくとも1つのシミュレーションモデルを有することを特徴としている。
本開示の別の一態様に係る送液計画作成装置は、供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部と、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測部と、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成部とを、備え、
前記状況予測部は、前記受入側情報及び前記供給側情報から前記予測値を導き出すように構成された、少なくとも1つの学習済みモデルを有することを特徴としている。
本開示の更に別の一態様に係る送液計画作成装置は、供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部と、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測部と、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成部とを、備え、
前記状況予測部は、前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷に関する液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測する予冷予測部を含み、
前記送液計画は、前記予冷予測部で予測された情報を含むことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る液化ガスの送液支援システムは、
上記送液計画作成装置と、
前記供給タンクから前記送液ラインへ前記液化ガスを送り出す送液ポンプと、
前記受入タンクの圧力及び液位の測定値、並びに、前記送液計画作成装置が作成した前記送液計画を取得し、前記送液計画に従って前記圧力及び前記液位の測定値に基づいて前記送液ポンプを動作させるように構成された供給側端末と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本開示の一態様に係る送液計画作成方法は、供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成方法であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含み、
前記状況予測ステップは、前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて前記送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部のシミュレーションを行って前記予測値を求めることを含むことを特徴としている。
本開示の別の一態様に係る送液計画作成方法は、供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成方法であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含み、
前記状況予測ステップは、前記受入側情報及び前記供給側情報から少なくとも1つの学習済みモデルを用いて前記予測値を導き出すことを含むことを特徴としている。
本開示の更に別の一態様に係る送液計画作成方法は、供給タンクから受入タンクへ当該受入タンクと接続された送液ラインを通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成方法であって、
前記受入タンクの性能に関するタンク性能情報及び前記受入タンクに収容された前記液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、前記供給タンクから送給される前記液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
前記受入側情報及び前記供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた前記予測値に基づいて前記送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含み、
記状況予測ステップは、前記受入タンク及び前記送液ラインのうち少なくとも一方の予冷に関する液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測することを含むことを特徴としている。
【0010】
上記構成の送液計画作成装置及び方法では、受入側情報及び供給側情報を用いて、送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値が生成され、この予測値に基づいて送液計画が作成される。このように、上記構成の送液計画作成装置及び方法によれば、サプライヤや作業員の技量に頼らない送液計画の生成が可能となる。また、送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況の予測が行われることによって、非効率なオペレーションの省略や待ち時間の削減が可能となり、送液及びその準備に要する時間の短縮が可能となる。これにより供給側と受入側の運用を効率化することができる。
【0011】
また、上記構成の液化ガスの送液支援システムでは、上記のように作成された送液計画に基づいて、供給側端末が送液に関わる機器(即ち、送液ポンプ及び送液バルブ)を動作させる。これにより、供給側や受入側の作業員の労力が軽減されるとともに、供給側や受入側の作業員の技量の差異に起因するオペレーションのばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、供給タンクから受入タンクへ液化ガスを送液するにあたり、サプライヤや作業員の技量に頼らずに適切な送液計画を作成する送液計画作成装置及び方法、並びに、作成された送液計画を利用する液化ガスの送液支援システムを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る液化ガスの送液支援システムの概略構成を説明する図である。
図2図2は、液化ガスの受入側設備と供給側設備とを説明するブロック図である。
図3図3は、送液計画作成装置の機能ブロック図である。
図4図4は、送液計画作成処理のフローチャートである。
図5図5は、送液時の供給側端末による制御系統の構成を示す図である。
図6図6は、送液時の供給側端末の処理の流れを示す図である。
図7図7は、変形例に係る送液計画作成装置の機能ブロック図である。
図8図8は、学習装置及びその周辺の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る液化ガスの送液支援システム100は、供給側に設けられた供給タンクから受入側に設けられた受入タンクへ液化ガスを送液する作業を支援するものである。供給タンク及び受入タンクは基本的に常温よりも低温の液化ガスを収容可能な液化ガスタンクである。液化ガスとしては、LNGやLPGなどが例示される。例えば、受入タンクがLNG燃料船のLNG燃料貯蔵タンクである場合に、供給タンクはLNG燃料供給船(LNGバンカー船)、LNGガスバンカリングポンツーン、又はLNGバンカリングバージに設けられたLNG燃料貯蔵タンクであってよい。また、例えば、受入タンクが陸上又は海上に設置されたLNGタンクである場合に、供給タンクはLNG燃料船に搭載された荷役タンクであってよい。このように、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されることなく液化ガスの送液に適用しうる。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る液化ガスの送液支援システム100の概略構成を説明する図である。図1には、液化ガスの受入側である液化ガス燃料船3と、液化ガスの供給側である液化ガス供給船4とが示されている。液化ガスは液化ガス供給船4の供給タンク40から液化ガス燃料船3の受入タンク30へ供給される。送液支援システム100は、液化ガス燃料船3に搭載された受入側端末6、液化ガス供給船4に搭載された供給側端末7、及び送液計画作成装置8を備える。
【0016】
〔受入側の設備〕
図2は、液化ガスの受入側設備と供給側設備とを説明するブロック図である。図2に示すように、受入側の液化ガス燃料船3は、液化ガスを燃料として使用する船舶であり、受入側端末6と、受入タンク30としての燃料貯蔵タンクとを備える。
【0017】
受入タンク30には、タンク冷却装置39が設けられている。タンク冷却装置39は、特に限定されないが、例えば、従来のスプレー式冷却装置であってよい。スプレー式冷却装置は、受入タンク30内に貯蔵された液化ガスを汲み上げてタンク内頂部からスプレーすることにより、液化ガスを強制的に気化させてタンク内の温度を低下させるものである。
【0018】
受入タンク30には、送液ライン35と返送ガスライン36とが接続されている。送液ライン35は、マニホールド及び配管などで構成される。この配管には、送液バルブ351(図5、参照)をはじめとする弁類及び継手等の配管付属品が含まれる。送液ライン35には、配管冷却装置38が設けられている。配管冷却装置38は、特に限定されないが、例えば、従来の冷却ガス導通式冷却装置であってよい。冷却ガス導通式冷却装置は、低温ガス(例えば、受入タンク30内の気化ガスや液化ガス又は供給タンク40内の気化ガスや液化ガス)を送液ライン35に導通させることにより、送液ライン35の温度を低下させるものである。返送ガスライン36は、マニホールド及び配管などで構成される。この配管には、返送バルブ361(図5、参照)をはじめとする弁類及び継手等の配管付属品が含まれる。
【0019】
受入タンク30には、液位計31、温度計32、及び圧力計33が設けられている。液位計31は、受入タンク30に貯蔵された液化ガスの液位を計測する。計測された液位とタンク性能情報に含まれるタンクの形状や容積とに基づいて、液化ガスの残液量を求めることができる。温度計32は、受入タンク30内の温度(液化ガスの液温)を計測する。圧力計33は、受入タンク30内の圧力を計測する。送液ライン35には、配管温度計34が設けられている。配管温度計34は、送液ライン35を構成する配管内の温度(配管温度)を計測する。
【0020】
受入側端末6は、プロセッサ、ROM及びRAMなどのメモリ、及び、I/O部(いずれも図示略)を備えるコンピュータにより構成される。受入側端末6のプロセッサは、I/O部を介して無線通信装置61、有線通信装置62、記憶装置63、及び出力装置64と電気的に接続されている。無線通信装置61は、例えば、通信衛星9(又は無線)を介して、他の情報機器と情報の送受信を行うことができる。有線通信装置62は、有線通信ラインを介して、当該通信ラインに接続された他の情報機器と情報の送受信を行うことができる。記憶装置63には、液化ガス燃料船3の識別情報、航海計画、タンク性能情報、及び、受入履歴情報などが格納されている。タンク性能情報には、受入タンク30の数、種類、外形、容積、及び付帯設備に係る情報が含まれる。付帯設備に係る情報には、タンク冷却装置39の種類や性能、送液ライン35の構成、配管冷却装置38の種類や性能が含まれる。受入履歴情報には、受入タンク30への液化ガスの受け入れ(即ち、バンカリング)の日時、場所、量、燃料組成、及び燃料消費量の履歴が含まれる。
【0021】
受入側端末6は、液位計31、温度計32、圧力計33、及び配管温度計34と電気的に接続されている。受入側端末6は、液位計31、温度計32、圧力計33、及び配管温度計34で計測された情報を取得する。
【0022】
受入側端末6は、液位計31、温度計32、圧力計33、及び配管温度計34で計測された情報や、記憶装置63から読み出した情報を用いて、受入側情報を生成する。受入側端末6は、生成した受入側情報及び送液要請を無線通信装置61を介して送液計画作成装置8へ送る。
【0023】
受入側情報には、少なくともタンク性能情報及びタンク状況情報が含まれる。受入側情報には、液化ガス燃料船3の識別情報、及び、受入履歴情報が更に含まれていてよい。タンク状況情報には、受入タンク30の圧力、液化ガスの温度、液化ガスの組成、及び配管温度が含まれる。受入タンク30に貯蔵されている液化ガスの組成は、外部からの入熱によって軽質成分から自然蒸発することから、積み込み後の経過日数に応じて重質化が進んで組成が変化する(但し、蓄圧時を除く)。タンク状況情報に含まれる液化ガスの組成は、前回の受け入れ時からの経過日数(及び、受入タンク30の圧力履歴)に応じた重質化が推定されたものであってよい。
【0024】
〔供給側の設備〕
液化ガス供給船4は、液化ガス燃料船3へ液化ガス燃料を供給する船舶(所謂、バンカー船)であり、供給側端末7と、供給タンク40とを備える。
【0025】
供給タンク40には、送液ライン45と、返送ガスライン46とが接続されている。送液ライン45は、送液ポンプ48、マニホールド、ローディングアーム(又は、フレキシブルホース)、緊急離脱装置、及び配管などで構成される。送液ライン45は、受入側の送液ライン35と接続される。供給タンク40に貯蔵されている液化ガスは、送液ライン45,35を通じて、受入タンク30へ送られる。
【0026】
返送ガスライン46は、ローディングアーム(又は、フレキシブルホース)、圧縮機49、及び配管などで構成される。返送ガスライン46は、受入側の返送ガスライン36と接続される。返送ガスライン46,36を通じて、受入タンク30が受け入れた液化ガスの体積置換分に相当するガス及びポンプや配管からの入熱により発生するボイルオフガスが、返送ガスとして受入タンク30から供給タンク40へ送られる。返送ガス量は圧縮機49の負荷によって調整される。返送ガスは、供給タンク40内に回収される他、一部はGCU(Gas Combustion Unit))47で焼却される。
【0027】
供給側端末7は、プロセッサ、ROM及びRAMなどのメモリ、及び、I/O部(いずれも図示略)を備えるコンピュータにより構成される。供給側端末7のプロセッサは、I/O部を介して無線通信装置71、有線通信装置72、記憶装置73、及び出力装置74と電気的に接続されている。無線通信装置71は、例えば、通信衛星9(又は無線)を介して、他の情報機器と情報の送受信を行うことができる。有線通信装置72は、有線通信ラインを介して、当該通信ラインに接続された他の情報機器と情報の送受信を行うことができる。記憶装置73には、送液計画作成装置8から取得した送液計画が格納されている。出力装置74は、送液計画を表示出力することができる。
【0028】
供給側端末7は、送液ポンプ48及び圧縮機49と接続されて、これらの動作を制御する。また、供給側端末7が有線通信装置72を介して受入側端末6と有線で電気的に接続されている場合には、供給側端末7は受入側端末6に対し送液に関わる機器の操作指令を出力する。
【0029】
〔送液計画作成装置8の構成〕
図3は、送液計画作成装置8の機能ブロック図である。送液計画作成装置8は、液化ガス供給船4、図示されない海上又は陸上の燃料基地のうちいずれか一つに設置されてよい。また、送液計画作成装置8の複数の機能が分散して設置されてもよい。送液計画作成装置8は、プロセッサ、ROM及びRAMなどのメモリ、及び、I/O部(いずれも図示略)を備えるコンピュータにより構成される。上記のプロセッサは、集中制御を行う単独のプロセッサであってもよいし、分散制御を行う複数のプロセッサであってもよい。
【0030】
送液計画作成装置8のプロセッサは、I/O部を介して通信装置82、記憶装置83、及び出力装置84と接続されている。送液計画作成装置8は、記憶装置83に情報を格納したり、格納された情報を読み出して利用したりすることができる。通信装置82は、通信衛星9(又は無線)を介して情報の送受信を行うように構成されている。また、送液計画作成装置8が地上に設けられている場合には、通信装置82は地上の通信インフラを介した通信を行うように構成されていてもよい。送液計画作成装置8は、通信装置82を介して、液化ガス燃料船3に搭載された受入側端末6や、液化ガス供給船4に搭載された供給側端末7と情報の送受信を行うことができる。
【0031】
メモリや記憶装置83には、プロセッサが実行する基本プログラムやアプリケーションプログラム等のプログラムや、データが格納されている。プログラムは、プロセッサに後述する各機能部の処理を行わせるように構成されている。プロセッサがプログラムを読み出して実行することによって、送液計画作成装置8は後述する各機能部として処理を行う。
【0032】
送液計画作成装置8は、情報取得部803と、メタン価推定部804と、状況予測部810(予冷予測部805、送液予測部806)と、予冷検討部807と、送液計画作成部808との各機能部を有する。以下、図3及び図4を参照しながら、送液計画作成装置8の各機能部の機能を送送液計画作成方法の流れに沿って説明する。なお、図4は、送液計画作成処理のフローチャートである。
【0033】
情報取得部803は、送液計画作成装置8で行われる処理に必要な情報を取得し(ステップS1)、取得した情報をメモリ等に一時的に記憶させる。情報取得部803が取得する情報には、受入側情報及び供給側情報が含まれる。情報取得部803は、受入側情報を通信装置82を介して受入側端末6から取得するが、図示されない他の情報端末や記憶媒体から受入側情報を取得してもよい。
【0034】
供給側情報は予め送液計画作成装置8に記憶されているか、供給側端末7から送液計画作成装置8へ送信される。供給側情報には、供給タンク40から送給される液化ガスの状況に関する供給側状況情報や、液化ガスサプライヤ情報が含まれていてよい。供給側状況情報には、受入タンク30へ送給される液化ガスの組成、温度、及び圧力が含まれる。なお、通常、供給タンク40に収容された液化ガスの組成は出荷前に分析されている。また、供給タンク40に収容された液化ガスの温度・圧力は出荷前に所定の値となるように管理されている。
【0035】
状況予測部810は、受入側情報及び供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を予測する。具体的には、状況予測部810は、状況を表す情報(例えば、操作量やプロセス量)の予測値を求める。送液工程の状況を表す情報として、液化ガス送液量、送液時間、タンク圧力、液温度(又は、液温変化量)、液組成変化(例えば、メタン価変化量)、ボイルオフガス発生量、及び、労働力が例示される。上記の液化ガス送液量、送液時間に変えて、送液バルブ351や送液ポンプ48の操作量が用いられてもよい。準備工程(即ち予冷)の状況を表す情報として、液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力が例示される。上記の液化ガス消費量、予冷時間に変えて、送液バルブ351や送液ポンプ48の操作量が用いられてもよい。上記の労働力は、一人の単位時間当たりの労動力を所定の指標で表した場合の、送液工程又はその準備工程にかかる労働力の総和である。
【0036】
本実施形態に係る状況予測部810は、受入側情報及び供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部をシミュレートすることによりその状況を予測し、状況を表す情報の予測値を求める。本実施形態に係る状況予測部810は、予冷予測部805及び送液予測部806を含む。但し、状況予測部810は予冷予測部805及び送液予測部806のうち少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0037】
予冷予測部805は、受入側情報に含まれるタンク性能情報及びタンク状況情報と供給側情報に含まれる液化ガスの温度とに基づき、受入タンク30及び送液ライン35の予冷の状況を表す情報の予測値を求める(ステップS2)。
【0038】
本実施形態において、予冷予測部805は、受入タンク30及び送液ライン35の予冷シミュレーションモデルを利用する。予冷シミュレーションモデルは、コンピュータで実行される数値解析モデルであって、予め送液計画作成装置8に記憶されている。予冷予測部805は、受入タンク30の予冷シミュレーションによって、受入側情報が作成された時点から、受入タンク30に装備されたタンク冷却装置39を用いてタンク内温度を所定の目標温度まで冷却するために必要な液化ガス消費量、所要時間、及び労働力を予測する。また、予冷予測部805は、送液ライン35の予冷シミュレーションによって、受入側情報に基づいて、送液ライン35(又は、送液ライン45)に装備された配管冷却装置38を用いて送液ライン35,45の温度(即ち、配管温度)を所定の目標温度まで冷却するために必要な液化ガス消費量、所要時間、及び労働力を予測する。上記の所定の目標温度は、例えば、送液される液化ガスの温度であってよい。また、上記では受入タンク30及び送液ライン35の予冷を個別にシミュレーションするが、シミュレーションモデルは受入タンク30及び送液ライン35の予冷をまとめてシミュレーションするものであってもよい。更に、予冷予測部805は、液化ガス消費量、所要時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測するように構成されていてもよい。
【0039】
送液予測部806は、受入側情報に含まれるタンク性能情報及びタンク状況情報、並びに、供給側情報に基づき、受入タンク30への送液の状況を表す情報の予測値を求める(ステップS3)。
【0040】
本実施形態において、送液予測部806は、送液シミュレーションモデルを利用する。送液シミュレーションモデルは、コンピュータで実行される数値解析モデルであって、予め送液計画作成装置8に記憶されている。送液予測部806は、送液シミュレーションによって、受入タンク30及び送液ライン35を予冷しない場合の、送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量を予測する。また、送液予測部806は、受入タンク30及び送液ライン35を予冷する場合の、送液量、送液時間、及びボイルオフガス発生量を予測する。但し、送液予測部806は、送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つを予測するように構成されていてもよい。
【0041】
メタン価推定部804は、情報取得部803が取得した受入側情報及び供給側情報に基づいて、受入タンク30への液化ガスの送液完了後の、受入タンク30内の液化ガスのメタン価を推定する(ステップS4)。ここで、メタン価推定部804は、受入タンク30への液化ガスの送液完了後の、受入タンク30及び供給タンク40内の液化ガスのメタン価を推定してもよい。
【0042】
受入側情報に含まれる送液履歴情報及び受入タンク30の圧力履歴に基づいて、受入タンク30の残液のメタン価が推定され得る。更に、受入側情報に含まれるタンク状況情報に基づいて、受入タンク30へ送液される液化ガス、つまり、受入タンク30に積み増しされる液化ガスの量が推定され得る。メタン価推定部804は、予め記憶された演算式又はモデルを利用して、送液完了後の受入タンク30に貯蔵されている液化ガスのメタン価の推定値を求め、これをメモリに記憶させる。また、受入タンク30の液化ガスのメタン価の推定値、受入タンク30に積み増しされる液化ガスの量、及び供給側情報に基づいて、受入タンク30への液化ガスの送液完了後の、供給タンク40内の液化ガスのメタン価が推定され得る。メタン価推定部804は、予め記憶された演算式又はモデルを利用して、送液完了後の供給タンク40に貯蔵されている液化ガスのメタン価の推定値を求めてもよい。なお、上記においてメタン価とは、純メタンを100、水素を0として、ガス燃料の耐ノッキング性指標を表すものとして広く使われている。燃料ガスの組成が変わると、燃料ガスの熱量やメタン価などの特性が変化し、エンジンのノッキングや失火などの異常燃焼を引き起こす原因になりうる。
【0043】
予冷検討部807は、予冷予測部805及び送液予測部806が求めた予測値を利用して、受入タンク30及び送液ライン35の予冷の要否を判断する(ステップS5)。予冷検討部807は、受入タンク30の予冷の要否と、送液ライン35の予冷の要否とを個別に検討してもよい。
【0044】
予冷検討部807は、例えば、予め記憶された評価関数を用いて予冷の要否を検討する。この場合の評価関数は、送液及びその準備(予冷)を含む一連の作業にかかる労働力を評価する項、所要時間を評価する項、及び、液化ガス送液量(消費量を含む)を評価する項のうち少なくとも1つを含んでよい。つまり、評価関数を用いて、一連の作業にかかるコストを評価することができる。例えば、一連の作業にかかるコストが、ボイルオフガスの発生により消費される液化ガスのコストを上回る場合に、予冷が不要と判断される。例えば、ボイルオフガスの発生量が液化ガス燃料船3の処理容量を大きく上回る場合には、予冷に係るコストの高低に関わらず、予冷が必要と判断される。但し、予冷検討部807の予冷の要否の判断方法は上記に限定されない。
【0045】
なお、液化ガスは、組成によって安定する温度(飽和温度)が異なるため、受入タンク30内の液化ガスの残液が現在の温度・圧力で安定していても、受入タンク30に残液と組成の異なる液化ガスが積み増しされた途端に液化ガスが激しく沸騰することがある。そこで、予冷検討部807は、予冷予測部805及び送液予測部806が求めた予測値に加えて、受入タンク30内に残っている液化ガスの組成と供給される液化ガスの組成との差を考慮して、予冷の要否を判断してもよい。
【0046】
送液計画作成部808は、メタン価推定部804のメタン価推定結果、予冷予測部805で求めた予測値、送液予測部806で求めた予測値、及び、予冷検討部807の予冷要否検討結果を用いて、送液計画を生成する(ステップS6)。送液計画には、例えば、受入タンク30及び送液ライン35の予冷の要否、送液スケジュール(送液量、送液時間など)、送液完了後のメタン価の推定値が含まれる。予冷が必要な場合には、送液計画に、予冷スケジュール(予冷目標温度、予冷時間など)が更に含まれる。但し、送液計画の内容は上記に限定されない。
【0047】
送液計画作成装置8は、生成された送液計画を出力する。例えば、送液計画作成装置8は送液計画を受入側端末6及び供給側端末7へ伝達する。受入側端末6及び供給側端末7では、取得した送液計画に基づいて予冷スケジュール及び送液スケジュールを生成することができる。このように、液化ガスサプライヤや作業員の技量に関わらず、適切な予冷スケジュール及び送液スケジュールの作成が可能となる。
【0048】
〔送液手順〕
供給タンク40から受入タンク30への送液手順は、例えば、以下の(1)~(10)の工程を含む。
(1)本実施形態ではShip to Ship方式が採用され、先ず、液化ガス供給船4が液化ガス燃料船3に接舷され、これらが係留される。
(2)ローディングアーム(又は、フレキシブルホース)によって、受入タンク30の送液ライン35と供給タンク40の送液ライン45とが接続され、受入タンク30の返送ガスライン36と供給タンク40の返送ガスライン46とが接続される。
(3)受入側端末6と供給側端末7とが、有線通信装置62,72を介して有線で通信可能に接続される。但し、受入側端末6と供給側端末7とは無線で通信可能に接続されていてもよい。
(4)送液ライン35,45のエアパージが行われ、酸素や水分(湿気)が除去される。
(5)必要に応じて送液ライン35,45及び受入タンク30の予冷(クールダウン)が行われる。事前に受入側に送液計画が通知されている場合には、送液開始予定時刻に合わせて予冷が完了するように、予冷スケジュールに従って液化ガス燃料船3と液化ガス供給船4との接舷に先立って受入タンク30及び送液ライン35の冷却が行われてもよい。これにより液化ガス供給船4の拘束時間が削減され、液化ガス供給船4の効率的な運用に寄与することができる。
(6)送液ライン35,45を通じた送液と返送ガスライン36を通じたガスの返送とが行われる。液化ガスの送液量は徐々にフルレートまで引き上げられ、送液終了時には送液量が徐々に引き下げられる。送液量が予定に達した段階で、送液が終了する。
(7)送液ライン35,45のドレインが行われ、送液ライン35,45に残っている液化ガスが除去される。
(8)送液ライン35,45の窒素ガスによる液化ガスパージが行われる。
(9)送液ライン35,45、返送ガスライン36,46、及び有線通信の接続が解除される。
(10)液化ガス燃料船3と液化ガス供給船4との係留が解除される。
【0049】
図5は、送液時の供給側端末7による制御系統の構成を示す図である。図5では、上記の工程(3)で受入側端末6と供給側端末7とが有線で通信可能に接続された状態が示されている。供給側端末7は、液化ガス燃料船3に搭載された受入タンク30に関する各種計器(液位計31、温度計32、圧力計33)による計測情報を受入側端末6を通じて(或いは直接に)取得することができる。また、供給側端末7は、受入タンク30への送液に関わる機器へ受入側端末6を介して動作指令を出すことができる。送液に関わる機器には、送液バルブ351、返送バルブ361、タンク冷却装置39、及び配管冷却装置38が含まれる。
【0050】
供給側端末7は、送液計画に従って、受入タンク30の送液に関わる機器の制御を行う。
【0051】
例えば、予冷工程(5)において、供給側端末7は、受入タンク30の液位、温度、及び圧力の計測値を取得し、送液計画に従って受入タンク30の液位、温度、及び圧力の計測値に基づいてタンク冷却装置39への動作指令(開始指令及び終了指令)を出す。この指令を受けた受入側端末6は、指令に従ってタンク冷却装置39を動作させる。これにより、送液計画に含まれる予冷スケジュールに沿って受入タンク30の予冷が行われる。
【0052】
また、例えば、予冷工程(5)において、供給側端末7は、送液ライン35の配管温度の測定値を取得し、送液計画に従って配管温度の測定値に基づいて配管冷却装置38への動作指令(開始指令及び終了指令)を出す。この指令を受けた受入側端末6は、指令に従って配管冷却装置38を動作させる。これにより、送液計画に含まれる予冷スケジュールに沿って送液ライン35の予冷が行われる。
【0053】
また、例えば、送液工程(6)において、供給側端末7は、送液計画に含まれる送液スケジュールに従って、送液に関する機器への動作指令を出す。図6は、送液時の供給側端末7の処理の流れを示す図である。以下、図5及び図6を参照しながら、上記工程(6)の送液時の供給側端末7の処理の流れを説明する。
【0054】
供給側端末7は、送液計画を取得する(ステップS11)。このステップは、接舷前に行われてもよい。
【0055】
先ず、供給側端末7は、液位計31、温度計32、及び圧力計33から計測情報を取得し、受入タンク30の状況をモニタリングする(ステップS12)。受入タンク30や返送ガスライン36の予冷が行われる場合には、予冷の前にモニタリングが開始され、一連の送液作業の終了まで継続される。
【0056】
供給側端末7は、返送バルブ361の開放指令を出す(ステップS13)。この指令を受けた受入側端末6は、閉止している返送バルブ361を開放するよう動作させる。
【0057】
続いて、供給側端末7は、圧縮機49を動作させる(ステップS14)。これにより、受入タンク30のボイルオフガスが、返送ガスライン36,46を通じて供給側へ返送される。
【0058】
供給側端末7は、送液バルブ351の開放指令を出す(ステップS15)。この指令を受けた受入側端末6は、閉止している送液バルブ351を開放するよう動作させる。
【0059】
続いて、供給側端末7は、送液ポンプ48を動作させる(ステップS16)。これにより、供給タンク40の液化ガスが、送液ライン35,45を通じて受入タンク30へ送液される。送液中、供給側端末7(及び/又は受入側端末6)は、送液スケジュールに沿った送液量及びタンク内圧が実現されるように、受入タンク30の液位及び圧力のモニタリング状況に応じて圧縮機49及び送液ポンプ48の動作を制御する。
【0060】
供給側端末7は、送液量が予定された送液量となると(ステップS17でYES)、送液ポンプ48を停止させて(ステップS18)、送液バルブ351の閉止指令を出し(ステップS19)、送液を終了する。
【0061】
供給側端末7は、圧縮機49を停止させて(ステップS20)、返送バルブ361の閉止指令を出し(ステップS21)、ボイルオフガスの返送を停止し、送液工程(6)を終了する。そして、供給側端末7は、受入タンク30の状況のモニタリングを終了する(ステップS22)。モニタリングの終了は、例えば、上記の工程(9)で行われてよい。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態に係る送液計画作成装置8は、供給タンク40から受入タンク30へ当該受入タンク30と接続された送液ライン35を通じて液化ガスを送液するための送液計画を生成する送液計画作成装置8であって、
受入タンク30の性能に関するタンク性能情報及び受入タンク30に収容された液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、供給タンク40から送給される液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得部803と、
受入側情報及び供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測部810と、
求めた予測値に基づいて送液計画を作成する送液計画作成部808とを、備える。
【0063】
同様に、本実施形態に係る送液計画作成方法は、
受入タンク30の性能に関するタンク性能情報及び受入タンク30に収容された液化ガスの状況に関するタンク状況情報を含む受入側情報と、供給タンク40から送給される液化ガスの状況に関する供給側状況情報を含む供給側情報とを取得する情報取得ステップと、
受入側情報及び供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を求める状況予測ステップと、
求めた予測値に基づいて送液計画を作成する送液計画作成ステップとを、含む。
【0064】
上記構成の送液計画作成装置8及び方法では、受入側情報及び供給側情報を用いて、送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値が生成され、この予測値に基づいて送液計画が作成される。このように、上記構成の送液計画作成装置8及び方法によれば、液化ガスサプライヤや作業員の技量に頼らない送液計画の作成が可能となる。例えば、バンカリングにおいては、固定契約の液化ガス燃料船に限らず、スポット契約の液化ガス燃料船に対しても同等の精度で送液計画の作成することができる。また、送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況が予測されることによって、非効率なオペレーションの省略や待ち時間の削減が可能となり、送液及びその準備に要する時間の短縮が可能となる。これにより、受入側と比較して数の少ない供給側の運用を効率化することができる。
【0065】
本実施形態において、状況予測部810は、受入側情報及び供給側情報に基づいて送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部のシミュレーションを行って予測値を求めるように構成された、少なくとも1つのシミュレーションモデルを有する。
【0066】
このように受入タンク30の状況に即したシミュレーションが行われることによって、サプライヤや作業員は送液工程及びその準備工程のうちシミュレーションが行われた部分についての状況を容易に予測し理解することができる。
【0067】
また、本実施形態において、上記の送液計画作成装置8の状況予測部810は、受入タンク30及び送液ライン35のうち少なくとも一方の予冷に関する液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測する予冷予測部805を含み、送液計画は予冷予測部805で予測された情報を含んでいる。
【0068】
同様に、上記の送液計画作成方法において、状況予測ステップは、受入タンク30及び送液ライン35のうち少なくとも一方の予冷に関する液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測することを含み、送液計画は予測された情報を含んでいる。
【0069】
このように、送液の準備工程である受入タンク30及び送液ライン35の予冷について、液化ガス消費量、予冷時間、及び労働力のうち少なくとも1つを予測することによって、サプライヤや作業員の技量に頼らずに適切な予冷の計画を立てることができる。予冷に関する液化ガス消費量が予測されることにより、液化ガスのボイルオフガスの使用計画を立てやすくなり、ボイルオフガスを燃料として有効に利用することができる。また、予冷時間が予測されることにより、予冷時間を考慮して供給側の到着を待たずに予冷を開始することが可能となり、また、予冷時間を考慮してオペレーションのスケジュールを作成することが容易となる。また、労働力が予測されることにより、予冷の要否の検討の材料として利用したり、比較的精度の高い費用見積もりを立てたりすることができる。
【0070】
また、本実施形態において、上記の送液計画作成装置8の状況予測部810は、供給タンク40から受入タンク30への液化ガスの送液に関する液化ガス送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つを予測する送液予測部806を含み、送液計画は送液予測部806で予測された情報を含んでいる。
【0071】
同様に、上記の液計画作成方法において、状況予測ステップは、供給タンク40から受入タンク30への液化ガスの送液に関する液化ガス送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つを予測することを含み、送液計画は予測された情報を含んでいる。
【0072】
このように、液化ガスの送液に関する液化ガス送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つを予測することによって、サプライヤや作業員の技量に頼らずに適切な送液計画を立てることができる。液化ガス送液量が予測されることにより、供給側は適切な送液量の見積もりをすることができる。また、送液時間が予測されることにより、送液時間を考慮してオペレーションのスケジュールを作成することが容易となる。また、ボイルオフガス発生量が予測されることにより、ボイルオフガスの使用計画を立てやすくなり、ボイルオフガスを燃料として有効に利用することができる。
【0073】
また、本実施形態において、上記の送液計画作成装置8は、求めた予測値に基づいて受入タンク30及び送液ライン35のうち少なくとも一方の予冷の要否を判断する予冷検討部807を更に備え、送液計画は受入タンク30及び送液ライン35のうち少なくとも一方の予冷の要否を含んでいる。
【0074】
同様に、上記の送液計画作成方法は、求めた予測値に基づいて受入タンク30及び送液ライン35のうち少なくとも一方の予冷の要否を判断するステップを更に含み、送液計画は受入タンク30及び送液ライン35のうち少なくとも一方の予冷の要否を含んでいる。
【0075】
このように求めた予測値に基づいて予冷の要否が判断されることにより、サプライヤや作業員の技量に頼らずに適切な送液計画を立てることができる。また、必要性の低い予冷を省くことが可能となり、経済的で効率的な送液が可能となる。
【0076】
また、本実施形態において、上記の送液計画作成装置8は、受入側情報及び供給側情報に基づいて、送液完了後の受入タンク30に収容された液化ガスのメタン価を推定するメタン価推定部804を更に備え、送液計画はメタン価の推定結果を含んでいる。
【0077】
同様に、上記の送液計画作成方法は、受入側情報及び供給側情報に基づいて、送液完了後の受入タンク30に収容された液化ガスのメタン価を推定するメタン価推定ステップを更に含み、送液計画は、メタン価の推定結果を含んでいる。
【0078】
このように、送液計画に送液完了後の受入タンク30内の液化ガスのメタン価の推定値が含まれることによって、受入タンク30が液化ガス燃料船3に搭載された燃料貯蔵タンクである場合には、予めメタン価に応じたエンジンの運転計画を立てることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態に係る液化ガスの送液支援システム100は、送液計画作成装置8と、供給タンク40から送液ライン35,45へ液化ガスを送り出す送液ポンプ48と、受入タンク30の圧力及び液位の測定値、並びに、送液計画作成装置8が作成した送液計画を取得し、送液計画に従って圧力計33及び液位計31の測定値に基づいて送液ポンプ48を動作させるように構成された供給側端末7と、を備える。
【0080】
このように、送液のオペレーションが送液計画に基づいて自動的に行われることによって、供給側及び受入側の作業員の労力を削減することができる。また、作業員の技量による送液オペレーションのばらつきを低減することができる。
【0081】
本実施形態において、受入タンク30は当該受入タンク30内を冷却するタンク冷却装置39を備えており、上記の送液支援システム100の供給側端末7は、受入タンク30の圧力、液位、及び温度の測定値を取得し、送液計画に従って受入タンク30を冷却するように圧力、液位、及び温度の測定値に基づいてタンク冷却装置39に対して動作指令を出すように構成されている。
【0082】
このように、受入タンク30の冷却のオペレーションが送液計画に基づいて自動的に行われることによって、供給側及び受入側の作業員の労力を削減することができる。また、作業員の技量による予冷オペレーションのばらつきを低減することができる。
【0083】
本実施形態において、受入タンク30は、送液ライン35の配管の一部又は全部を冷却する配管冷却装置38を備えており、上記の送液支援システム100の供給側端末7は、送液ライン35の配管温度を取得し、送液計画に従って送液ライン35の配管を冷却するように配管温度に基づいて配管冷却装置38に対して動作指令を出すように構成されている。
【0084】
このように、送液ライン35の冷却のオペレーションが送液計画に基づいて自動的に行われることによって、供給側及び受入側の作業員の労力を削減することができる。また、作業員の技量による予冷オペレーションのばらつきを低減することができる。
【0085】
〔変形例〕
上記実施形態において、送液計画作成装置8の状況予測部810はシミュレーションモデルを用いて予冷や送液をシミュレーションするが、機械学習モデルをシミュレーションの代理モデルとして利用してもよい。この場合、実際の予冷オペレーション結果や送液オペレーション結果を用いて機械学習モデルを学習させることにより、予測の精度を高めていくことができる。以下では、機械学習モデルを用いて送液工程及びその準備工程の状況を表す情報の予測値を求めるように構成された状況予測部810を備える、送液計画作成装置8の変形例を説明する。
【0086】
図7は、変形例に係る送液計画作成装置8Aの機能ブロック図であり、図8は学習装置50及びその周辺構成を示す図である。図7に示す送液計画作成装置8Aは、前述の実施形態に係る送液計画作成装置8の構成要素に加えて、学習装置50と学習用の記憶装置60を備える。但し、学習装置50及び記憶装置60は、送液計画作成装置8Aから独立した装置として構成され、送液計画作成装置8Aと通信可能に接続されていてもよい。
【0087】
図8に示すように、学習装置50は、学習用データ取得部51、前処理部52、及び、学習部53の各機能部を有する。記憶装置60には、学習用データ(生データ)を格納した学習用データDBと、教師データを格納した教師データDBと、パラメータDBとが構築されている。学習用データは、実際の予冷オペレーション結果や送液オペレーション結果に基づいて作成される。学習用データには、対象の液化ガス供給船4に限定されず、他の液化ガス供給船の実際のオペレーション結果が含まれていてもよい。
【0088】
学習用データ取得部51は、学習用データやなどの機械学習で用いられるデータを取得する。前処理部52は、学習用データを前処理して、教師データを作成する。前処理は、データ形式の変換、異常の確認、データの抽出、変数名やファイル名の変更などの各種処理のうち少なくとも1つを含む。
【0089】
学習部53は、機械学習により入力データと出力データとの相関関係を学習する。本実施例では、入力データは受入側情報及び供給側情報であり、出力データは送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値である。学習部53は、機械学習の学習アルゴリズムの一例として教師あり学習を実行する。一般に、教師あり学習は、入力データとそれに対応する出力データとの既知のデータセット(教師データと称する)が予め大量に与えられ、それら教師データから入力データと出力データとの相関性を暗示する特徴を識別することで、新たな入力データに対する所要の出力データを推定するための相関性モデルを学習する手法である。学習アルゴリズムの開始時には入力データと出力データとの相関性は実質的に未知であるが、学習部53は、学習を進めるに従い徐々に特徴を識別して相関性を解釈する。入力データと出力データとの相関性が、ある程度信頼できる水準まで解釈されると、学習部53が反復出力する学習結果は、入力データに対して、出力データがどのようなものとなるべきかという推定を行うために使用できるものとなる。つまり、学習部53は、学習アルゴリズムの進行に伴い、入力データと出力データとの相関性を最適解に徐々に近づけることができる。
【0090】
本実施形態において、学習部53は、教師データをニューラルネットワークに入力して、入力データと出力データとの間の関係性を学習する。ニューラルネットワークに設定される各種パラメータはパラメータDBに記憶される。例えば、パラメータDBは、学習されたニューラルネットワークのシナプスの重みなどを記憶する。記憶される各パラメータを設定したニューラルネットワークが学習済みモデルとなる。
【0091】
変形例に係る送液計画作成装置8の状況予測部810は、上記のように作成された少なくとも1つの学習済みモデルを有する。学習済みモデルは、受入側情報及び供給側情報から、送液工程及びその準備工程のうち少なくとも一部の状況を表す情報の予測値を導き出すように構成されている。状況予測部810は、状況を表す情報ごとの学習済みモデルを有していてよい。又は、状況予測部810は、状況を表す情報の組み合わせごとの学習済みモデルを有していてよい。
【0092】
状況予測部810は、予冷予測部805及び送液予測部806を含む。予冷予測部805は、受入側情報に含まれるタンク性能情報及びタンク状況情報と供給側情報に含まれる液化ガスの温度とから、送液ライン35(又は、送液ライン45)に装備された配管冷却装置38を用いて送液ライン35,45の温度(即ち、配管温度)を所定の目標温度まで冷却するために必要な液化ガス消費量、所要時間、及び労働力のうち少なくとも1つの予測値を導き出す学習済みモデルを有する。
【0093】
送液予測部806は、受入側情報に含まれるタンク性能情報及びタンク状況情報と供給側情報とから、受入タンク30及び送液ライン35を予冷しない場合及び/又は予冷する場合の、送液量、送液時間、タンク圧力、液温度、液組成変化、及びボイルオフガス発生量のうち少なくとも1つの予測値を導き出す学習済みモデルを有する。
【0094】
予冷予測部805及び送液予測部806は、受入側情報及び供給側情報を入力データとして学習済みモデルに入力し、出力データとしての状況を表す情報の予測値を得る。得られた予測値は前述の実施形態と同様に送液計画の作成のために利用される。
【0095】
以上に本発明の好適な実施の形態(及び、変形例)を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0096】
上記実施形態において受入タンク30は液化ガス燃料船3の燃料貯蔵タンクであるが、本発明が適用される受入タンク30は、液化ガス燃料船3に搭載された受入タンク30に限定されない。受入タンク30は、例えば、陸上や海上に設置された液化ガス貯蔵タンクであってもよい。また、本実施形態において、供給タンク40及び供給側端末7はバンカー船(液化ガス供給船4)に搭載されているが、本発明の適用はこれに限定されない。供給タンク40は、例えば、バンカリングバージやバンカリングポンツーンなどの浮体式バンカリング施設、或いは、陸上又は海上に設置された液化ガス貯蔵タンクであってもよい。
【0097】
また、上記実施形態において、供給側端末7が送液及び予冷のオペレーションを担うが、供給側端末7が送液及び予冷のオペレーションのうち少なくとも1つを担って、他は作業員によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0098】
3 :液化ガス燃料船
4 :液化ガス供給船
6 :受入側端末
7 :供給側端末
8,8A:送液計画作成装置
30 :受入タンク
31 :液位計
32 :温度計
33 :圧力計
34 :配管温度計
35 :送液ライン
36 :返送ガスライン
38 :配管冷却装置
39 :タンク冷却装置
40 :供給タンク
45 :送液ライン
46 :返送ガスライン
48 :送液ポンプ
49 :圧縮機
50 :学習装置
51 :学習用データ取得部
52 :前処理部
53 :学習部
60 :記憶装置
100 :送液支援システム
351 :送液バルブ
361 :返送バルブ
803 :情報取得部
804 :メタン価推定部
805 :予冷予測部
806 :送液予測部
807 :予冷検討部
808 :送液計画作成部
810 :状況予測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8