IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピップ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-変動磁場発生装置 図1
  • 特許-変動磁場発生装置 図2
  • 特許-変動磁場発生装置 図3
  • 特許-変動磁場発生装置 図4
  • 特許-変動磁場発生装置 図5
  • 特許-変動磁場発生装置 図6
  • 特許-変動磁場発生装置 図7
  • 特許-変動磁場発生装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】変動磁場発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/12 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61N2/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020156632
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2021053378
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019176227
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川上 穣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 仁支
(72)【発明者】
【氏名】大和 開
(72)【発明者】
【氏名】伯耆原 愛
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225615(JP,A)
【文献】中国実用新案第202605540(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193476(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0171326(US,A1)
【文献】特開平04-269974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体と、
前記磁性体を移動させることで変動磁場を発生させる駆動部と、
前記磁性体と前記駆動部とを収容する筐体と、を備え、
前記磁性体が備える複数の磁性部分の磁極は、全て同一の磁極の向きであり、
発生した前記変動磁場により細胞内の生理活性イオンの振動を低減させることを特徴とする変動磁場発生装置。
【請求項2】
前記生理活性イオンは、カルシウムイオンであることを特徴とする請求項1に記載の変動磁場発生装置。
【請求項3】
前記細胞は、平滑筋細胞、或いは、間葉系細胞であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変動磁場発生装置。
【請求項4】
前記磁性体は流動性を有しており、前記駆動部は、前記磁性体が周回路を循環するように移動させることによって前記変動磁場を発生させることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の変動磁場発生装置。
【請求項5】
磁性体と、
前記磁性体の磁気を一部遮断する磁気シールド材と、
前記磁気シールド材を回転させる駆動部と、
前記磁性体、前記磁気シールド材、及び前記駆動部を収容する筐体と、を備え、
前記磁性体が備える複数の磁性部分の磁極は、全て同一の磁極の向きであり、
前記磁性体が固定されている場合に、
前記駆動部は、前記磁気シールド材を回転させることで変動磁場を発生させることを特徴とする変動磁場発生装置。
【請求項6】
前記磁気シールド材は、前記変動磁場を通す間隙を備えていることを特徴とする請求項に記載の変動磁場発生装置。
【請求項7】
前記磁気シールド材は、その一部に磁気シールド性の低い素材で構成される部位を備えていることを特徴とする請求項に記載の変動磁場発生装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記磁気シールド材を毎分500回転以上の回転速度で回転させることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれかに記載の変動磁場発生装置。
【請求項9】
前記磁性体は、前記変動磁場発生装置が装着される対象から13mm以内の位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の変動磁場発生装置。
【請求項10】
前記細胞を載置する部屋を有するプレートをさらに備え、
前記磁性体は、前記部屋に載置された前記細胞の周囲を、載置面を垂直に貫通する軸を回転軸として前記載置面と平行な面において移動することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の変動磁場発生装置。
【請求項11】
前記部屋は、前記プレートに単数、または、複数設けられていることを特徴とする請求項10に記載の変動磁場発生装置。
【請求項12】
前記細胞を載置する部屋を有するプレートをさらに備え、
前記磁性体は、前記細胞を挟んで互いに対向する位置に複数配置され、前記部屋に載置された前記細胞に対して、載置面と平行な軸であって複数の前記磁性体に共通する軸を回転軸として回転することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の変動磁場発生装置。
【請求項13】
複数の前記磁性体は、いずれも同じ向きに回転することを特徴とする請求項12に記載の変動磁場発生装置。
【請求項14】
前記部屋は、前記プレートに1つ設けられていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の変動磁場発生装置。
【請求項15】
前記磁性体が前記駆動部により回転可能に構成されている場合に、
前記駆動部は、前記磁性体を毎分500回転以上の回転速度で回転させることを特徴とする請求項1ないし請求項、請求項10ないし請求項14のいずれかに記載の変動磁場発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、変動磁場発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平滑筋は各種の生体内物質、神経伝達物質、オータコイド、ホルモン等のそれぞれの特異的受容体を介して反応し、収縮または弛緩を起こす。平滑筋は内臓平滑筋、血管平滑筋、眼平滑筋に大別され、その存在部位は消化器系(食道、胃、小腸、大腸、胆嚢、胆管)、気管、気管支、精管、精嚢、子宮、卵管、動静脈の血管系等であり多岐にわたる。これらは消化、呼吸、生殖、循環、体温調節、焦点光量調節に重要な役割を果たしている。
【0003】
平滑筋はまた、それぞれの臓器固有の目的に添った機能とそれに伴う形態を呈している。そして、平滑筋は多種多様な物質により上述したような収縮弛緩を起こし、同一物質でも平滑筋の種類により反応が逆であったりする。
【0004】
例えば、子宮平滑筋は交感神経と副交感神経の両支配を受けているが、ヒトの場合副交感神経興奮による反応は不変で、交感神経興奮による反応は、非妊娠子宮では弛緩、妊娠子宮では収縮が起こる。
【0005】
また本発明における細胞は、細胞内において生理活性イオン振動やカルシウム振動反応を発現している細胞であれば、いずれの細胞でもよく、特に限定はしないが、例えば、平滑筋細胞以外にも間葉系細胞が該当する。間葉系細胞は、中胚葉又は外肺葉(神経堤)由来の細胞から構成される細胞群であり、主に胎児の結合組織を形成し、軟骨芽細胞、骨芽細胞神経細胞、グリア細胞、皮膚色素細胞、副腎髄質細胞、骨・軟骨等の間葉細胞、血管平滑筋細胞等の多様な細胞への分化能力を有している。
【0006】
そこで好ましくは、血管平滑筋・膀胱平滑筋・子宮平滑筋等の平滑筋細胞、間葉系幹細胞、骨芽細胞、免疫細胞又は神経細胞等であり、特に好ましくは、血管平滑筋・膀胱平滑筋・子宮平滑筋等の平滑筋細胞又は間葉系幹細胞であり、更に好ましくは血管平滑筋細胞である。
【0007】
平滑筋が収縮弛緩することによって様々な反応が生ずるが、この点に着目し平滑筋の収縮弛緩といった状態を変える効果を奏する、平滑筋に作用する薬物を用いることによって各種の疾病の治療に役立てられている。また間葉系細胞の分化や機能に対しても、生理活性イオンに影響を与え、その分化や機能を調節したり疾病を制御する目的で薬物が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-162554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、薬物による治療は、患者の状態によって効果がまちまちである場合も多く、副作用の心配もある。また、そもそも使用する薬物自体が患者にとって禁忌である場合も考えられる。従って、薬物による治療は有効なことも多い一方で使用する場面が限定されることもある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、変動磁場を利用して直接的に生理活性イオン振動の抑制を図ることによって、例えば平滑筋の場合、平滑筋が収縮することで生ずる障害を除去することができる変動磁場発生装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、使用者の皮膚に貼付して使用する場合のみならず、例えば単離した細胞に直接磁気を当てることによって細胞内における生理活性イオン振動やカルシウム振動反応の発現を確認する場合にも用いることができる変動磁場発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施の形態における変動磁場発生装置は、磁性体と、駆動部と、筐体とを備える。駆動部は、磁性体を移動させることで変動磁場を発生させる。筐体は、磁性体と駆動部とを収容する。駆動部が磁性体を移動させることで発生する変動磁場により細胞内の生理活性イオンの振動を低減させることで、血管平滑筋であれば血管の収縮を抑えることを特徴とする。また磁性体が備える複数の磁性部分の磁極は、全て同一の磁極の向きである。
【0013】
また生理活性イオンはカルシウムイオンであることが好ましい。
【0014】
また、細胞は、平滑筋細胞、或いは、間葉系細胞であることが好ましい。
【0017】
さらに、磁性体は流動性を有しており、駆動部は、磁性体が周回路を循環するように移動させることによって変動磁場を発生させることが好ましい。
【0018】
さらに磁性体が駆動部により回転可能に構成されている場合に、駆動部は、磁性体を毎分500回転以上の回転速度で回転させることが好ましい。
【0019】
さらに、実施の形態における変動磁場発生装置は、磁性体と、磁気シールド材と、駆動部と、筐体と、を備える。磁気シールド材は、磁性体の磁気を一部遮断する。駆動部は、磁気シールド材を回転させる。筐体は、磁性体、磁気シールド材、及び駆動部を収容する。また磁性体が備える複数の磁性部分の磁極は、全て同一の磁極の向きである。そして、磁性体が固定されている場合に、駆動部は、磁気シールド材を回転させることで変動磁場を発生させる。
【0020】
また、磁気シールド材は、変動磁場を通す間隙を備えていることが好ましい。
【0021】
また、磁気シールド材は、変動磁場を通す、その一部に磁気シールド性の低い素材で構成される部位を備えていることが好ましい。
【0022】
さらに駆動部は、磁気シールド材を毎分500回転以上の回転速度で回転させることが好ましい。
【0023】
磁性体は、変動磁場発生装置が装着される対象からおよそ13mm以内の位置に配置されていることが好ましい。
【0024】
実施の形態における変動磁場発生装置は、細胞を載置する部屋を有するプレートをさらに備え、磁性体は、部屋に載置された細胞の周囲を、載置面を垂直に貫通する軸を回転軸として載置面と平行な面において移動することが好ましい。
【0025】
また部屋は、プレートに単数、または、複数設けられていることが好ましい。
【0026】
実施の形態における変動磁場発生装置は、細胞を載置する部屋を有するプレートをさらに備え、磁性体は、細胞を挟んで互いに対向する位置に複数配置され、部屋に載置された細胞に対して、載置面と平行な軸であって複数の磁性体に共通する軸を回転軸として回転することが好ましい。
【0027】
複数の磁性体は、いずれも同じ向きに回転することが好ましい。
【0028】
また部屋は、プレートに1つ設けられていることが好ましい。
【0029】
さらに磁性体が駆動部により回転可能に構成されている場合に、駆動部は、磁性体を毎分500回転以上の回転速度で回転させることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明はこのような構成を採用したことから、変動磁場を利用して直接的に生理活性イオン振動の抑制を図ることによって、例えば平滑筋の場合、平滑筋の収縮抑制を図ることにより、平滑筋が収縮することで生ずる障害を除去することができる変動磁場発生装置を提供することができる。
【0031】
また、使用者の皮膚に貼付して使用する場合のみならず、例えば単離した細胞に直接磁気を当てることによって細胞内における生理活性イオン振動やカルシウム振動反応の発現を確認する場合にも用いることができる変動磁場発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施の形態における変動磁場発生装置の全体構成を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態における磁性体の一例を示す模式図である。
図3】第1の実施の形態における磁性体の一例を示す模式図である。
図4】第1の実施の形態における磁性体の一例を示す模式図である。
図5】第1の実施の形態における変動磁場発生装置を用いて使用者に対して変動磁場を与えた際における効果を示す波形図である。
図6】第2の実施の形態における変動磁場発生装置の全体構成を示す平面図である。
図7】第2の実施の形態における変動磁場発生装置の第1の変形例である変動磁場発生装置の全体構成を示す平面図である。
図8】第2の実施の形態における変動磁場発生装置の第2の変形例である変動磁場発生装置の全体構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
(第1の実施の形態)
[変動磁場発生装置の構成]
図1は、第1の実施の形態における変動磁場発生装置1の全体構成を示す断面図である。図1に示されているように、本発明の第1の実施形態における変動磁場発生装置1は、使用者の皮膚Sに貼付されて使用される。図1に示す変動磁場発生装置1は、皮膚Sに貼付された状態を示している。
【0035】
このように変動磁場発生装置1が使用者の皮膚Sに貼付されて使用されることにより、発生した変動磁場が皮膚S及び皮膚Sの表面近傍における体内各部に与えられる。
【0036】
なお、変動磁場発生装置1が貼付される位置については、特に限定されることはなく、首や肩、腹や腰の皮膚など、変動磁場による効果を利用できる位置であればいかなる位置であってもよい。
【0037】
変動磁場発生装置1は、磁性体2と、駆動部3と、筐体4とを備える。上述したように、図1は、変動磁場発生装置1を使用する使用者の皮膚Sに貼付した状態を示している。この場合、変動磁場発生装置1における筐体4が皮膚Sに直接接触することになる。
【0038】
また、筐体4の内部には磁性体2と駆動部3とが収容されるが、皮膚Sにより近い位置に磁性体2が配置され、その上部、すなわち磁性体2を挟んで皮膚Sと対向する位置に駆動部3が配置される。
【0039】
また図1においては、磁性体2と駆動部3とをつなぐ軸5が示されているが、これは、磁性体2の一例としての円盤状の磁性体2を駆動部3が回転させるための回転軸を示している。
【0040】
なお、図1においては、磁性体2及び駆動部3は、いずれもその詳細を示していない。これは後述するように、磁性体2も駆動部3も様々な配置、形状、態様等を採用することができるからである。
【0041】
磁性体2は、後述する駆動部3によって移動され変動磁場を発生する。なお、本明細書では、「変動磁場」という語句は、磁界の向きや強度が変動することを意味する。
【0042】
また、以下本発明の実施の形態において、「磁性体」とは、固体、流体 といった物の態様、或いは、利用形態(例えば、磁石、磁性流体等)を問わず、磁性を帯びることが可能な物質や仕組み、構造を意味する。複数の磁石を内包する構造や電磁石を含む構造であってもかまわない。
【0043】
すなわち磁性体2としては、例えば、磁石、電磁石、或いは、磁性を帯びた流体(磁性流体)のいずれであっても良い。また、例えば磁性体2が磁石である場合に、磁性体2はフェライト、ネオジム、サマコバ、アルニコ、鉄クロムコバルト、鉄白金等、磁性を備えていればどのような材質が用いられても良い。
【0044】
磁性体2の数については単数、複数、いずれであっても良い。例えば、磁性体2が円盤状に形成されている場合には、磁性体2は1つであり、その中心を回転軸として回転させて用いることができる。また、複数の磁性体2を組み合わせて移動させることで変動磁場を発生させるように構成しても良い。
【0045】
また、磁性体2が備える複数の磁性部分の磁極については、同極(N極とN極、或いは、S極とS極といった同一の磁極の向き)であっても異極(N極とS極、或いは、S極とN極といった異なる磁極の向き)のいずれであっても構わない。これは、変動磁場が与えられることによる使用者の内部各部における反応が非常に早いからである。
【0046】
すなわち、例えば、上述したように磁性体2が円盤状に形成され、駆動部3によって回転された場合、例えば、第1の磁極、第2の磁極、第3の磁極、第Nの磁極というように、複数の磁極による変動磁場を連続して使用者の内部に与えることができる。
【0047】
この場合、第1の磁極によって与えられた変動磁場による内部各部における反応は、次の第2の磁極によって変動磁場が与えられる前に終了してしまう。そしてこの現象は、第2の磁極によって与えられる変動磁場における反応についても、同様に第3の磁極による変動磁場が与えられる前に終了する。
【0048】
そのため、変動磁場を与える連続する磁極が同じ磁極であるか異なる磁極であるかについては問題とはならず、変動磁場を与える連続する磁極は同極であっても異極であっても良い。
【0049】
また、磁性体2の配置については、どのような配置を採用することも可能である。図2ないし図4は、第1の実施の形態に係る変動磁場発生装置1における磁性体2についての様々な配置、形状、態様の一例を示す模式図である。
【0050】
但し好ましくは、磁性体2は、筐体4の底面(使用者の皮膚Sと接触する面)に対して磁極同士を結ぶ軸が略垂直となるように配置される。このように配置されることによって、磁性体2の磁極方向が筐体4の底面(皮膚Sの表面)に対して略垂直に延びることになる。そのため、磁極方向が底面(皮膚Sの表面)に対して平行に延びる磁性体を用いる場合に比べて、皮膚Sの表面に対して略垂直な方向の磁界強度が大きくなり、皮膚Sの表面からより深い体内まで磁気が作用することになる。
【0051】
図2では、円盤状に形成された磁性体2Aが示されている。当該磁性体2Aの中心部には駆動部3からの駆動力の伝達を受ける回転軸5が設けられており、磁性体2Aと駆動部3とを連結している。
【0052】
図2の磁性体2Aにおいては、2つのN極、S極が互いに交互に現れるように配置されている。但しこのように連続する磁極が異極に限定されず、同極であっても良いことは上述した通りである。
【0053】
図3に示す磁性体2Bは、棒状体に形成された2つの磁性体を互いに直交するように組み合わせた形状を採用している。当該磁性体2Bの中心部にも駆動部3からの駆動力の伝達を受ける回転軸5が設けられており、磁性体2Bと駆動部3とを連結している。
【0054】
なお、図3に示す磁性体2Bにおいては、磁極を表示していないが、連続する磁極が異極、同極のいずれであっても良いことは上述した通りである。
【0055】
図4に示す磁性体2Cは、これまで説明してきた磁性体2A,2Bとは異なり、固体としての磁石ではなく、流動性を有する磁性流体で構成されている点に特徴がある。磁性体2Cは、磁性流体2C1をその内部に保持し循環させるための循環パイプ2C2と、磁性流体2C1を循環パイプ2C2内で循環させるためのポンプ2C3を備えている。
【0056】
磁性体2Cは、筐体4の内部において使用者の皮膚Sに最も近い位置に配置され、磁性流体2C1がポンプ2C3によって循環パイプ2C2内を循環することによって、皮膚Sの内部に変動磁場を与える。
【0057】
ここでの磁性体2Cは、循環パイプ2C2はその内部を磁性流体2C1が循環できるように、周回路を描くように形成されている。
【0058】
このように磁性体2は、上述した回転することで変動磁場を発生させるだけではなく、図4に示すような、磁性流体2C1が循環パイプ2C2内を流れるように直線的な移動を行うことで変動磁場を発生させることとしても良い。
【0059】
なお、図4で示す循環パイプ2C2の配置はあくまでも例示である。図4に示すような配置ではなく、例えば、循環パイプ2C2を折り返して配置したり、蛇行させて配置したりして磁性体2の移動距離を長くすることが可能な形状とすることもできる。
【0060】
なお、図面を用いて説明していないが、磁性体2は、例えば、電磁石であっても良い。磁性体2が電磁石の場合には、直流、或いは、交流電源からの電源の供給を受けて使用者の内部に変動磁場が与えられる。またこの場合、電磁石である磁性体2を制御する制御部を設けても良い。
【0061】
このように磁性体2は、変動磁場を発生させる態様であればこれまで説明したようにどのような配置、形状、態様を採用しても良い。
【0062】
駆動部3は、磁性体2を移動させることで変動磁場を発生させる。駆動部3は、例えば、上述したように磁性体2が回転可能に構成されている場合には、軸5を介して当該磁性体2に対して回転を付加する機構を採用することができる。
【0063】
回転を付加する機構としては、例えば、モータやぜんまいといった機構が考えられる。また、回転を付加するに当たって、モータ等が直接磁性体2を回転させても良く、或いは、プーリや歯車等を用いて回転を伝達する機構を採用しても良い。
【0064】
なお、駆動部3が例えばモータである場合には、磁性体2の効果を発揮させるために、モータと磁性体2との間の距離を十分に取る必要がある。この距離については、軸5の長さを調整することによって確保することができる。
【0065】
また、磁性体2が磁性流体2C1である場合には、上述したようにポンプ2C3が用いられる。駆動部3は、当該ポンプ2C3を駆動することで磁性流体2C1を循環パイプ2C2内で循環させる。
【0066】
なお、これまでは駆動部3が磁性体2を回転等させることについて説明したが、例えば、磁性体2を筐体4の内部で固定しておき、駆動部3が、例えば変動磁場がその一部から与えられるような遮蔽板を回転させることで使用者に変動磁場を与えるように構成されていても良い。
【0067】
例えば、間隙が設けられた磁気シールド材が固定された磁性体の周囲を回転させることで磁性体の磁気を一部遮断することで遮蔽位置を変化させて変動磁場を発生させることができる。ここで磁気シールド材としては、例えば、パーマロイを用いることができる。
【0068】
また、磁気シールド材は、間隙の代わりに、例えば、磁気シールド材の一部に磁気シールド性の低い素材で構成される部位が備えられていても良い。このような磁気シールド材が磁性体の周囲を回転することによって、当該磁気シールド性の低い素材の部位を通して変動磁場を発生させることができる。
【0069】
図1に示すように、筐体4は、磁性体2と駆動部3とをその内部空間に収容する。筐体4は、内部空間を囲む、上面と、側面と、変動磁場発生装置1が皮膚Sに貼り付けられたときに皮膚Sに接触する底面とを有している。本発明の実施の形態では、例えば変動磁場発生装置1は、筐体4の底面に設けられた公知の粘着シートにより、底面が使用者の皮膚Sに間接的に接触するように、その皮膚Sに貼り付けられる。
【0070】
筐体4の形状については、磁性体2を移動可能に収容することができる大きさの内部空間が形成され、使用者の皮膚Sに接触する底面を有していれば、例えば、略円柱状、略角柱状というように、どのような形状に形成されても良い。
【0071】
また、筐体4の成形材料は、外部から力を受けた時に内部空間の形状を維持することができ、磁性体2の磁力線が容易に透過することができれば特に限定されることはない。従って、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン(PC-ABS)、ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂材料を好適に用いることができる。
【0072】
なお、例えば、駆動部3が磁性体2を移動させて変動磁場を発生させるといった、変動磁場発生装置1を動作させる入力部や使用者に変動磁場発生装置1が動作している状態を報知する出力部等については、実際には設けられているが、図1に示す変動磁場発生装置1においてはその描画を省略している。
【0073】
例えば入力部については、電源投入のためのスイッチ等、各種スイッチやつまみ等により構成され、使用者による様々な入力操作を受け付ける。この入力部としては、このようなスイッチの他、例えば、GUI(Graphical User Interface)、或いは、ボタンといった様々な形態の入力デバイスを用いることが可能である。
【0074】
また、上述したように、例えば駆動部3がぜんまいを用いる機構の場合には、ぜんまいを巻く竜頭等も入力部に含めることができる。
【0075】
一方出力部については、例えば、使用者に対して変動磁場発生装置1のON、OFF等の動作状態を示すランプ等を挙げることができる。なお、出力部としては、このような使用者に対して視覚に訴えるものだけではなく、聴覚等、五感に訴えるものであれば良い。
【0076】
[動作]
次に、図5を利用して、変動磁場発生装置1の動作及び磁性体2が移動することによってもたらされる効果について、以下説明する。図5は、第1の実施の形態における変動磁場発生装置1を用いて使用者に対して変動磁場を与えた際における効果を示す波形図である。
【0077】
まず血管の拡張や収縮を例に挙げて、外部刺激が与えられた場合における細胞の一般的な動作メカニズムについて説明する。例えば、外部刺激が血管に与えられると、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞の内部における細胞内カルシウムイオンに影響する。
【0078】
血管内皮細胞における細胞内カルシウムイオンが外部刺激を受けて上昇した場合、血管の拡張を促すように作用する。一方、血管平滑筋細胞における細胞内カルシウムイオンが外部刺激を受けて上昇した場合、血管の収縮を促すように作用する。
【0079】
但し、血管内皮細胞による血管拡張促進作用では、血管内皮細胞において細胞内カルシウムイオンが作用することによって一酸化窒素合成タンパク質が活性化し、産生された一酸化窒素が血管平滑筋細胞に移動することで、血管平滑筋細胞の血管収縮を抑制するように働く。
【0080】
また、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞とにおいて、外部刺激に基づく血管弛緩作用の現れ方をみると、血管内皮細胞による反応よりも血管平滑筋細胞の方が早く現れて収束する。
【0081】
ここで図5の波形図を見てみる。当該波形図は、採取された血管平滑筋細胞に対して生理活性イオンを検出する蛍光指示薬を加えたのち、変動磁場を与え、蛍光顕微鏡を用いてその反応を観察した結果を示したものである。
【0082】
波形図において横軸は時間を示している。一方縦軸は、蛍光強度から換算された生理活性イオン濃度を示している。この数値が高い程、細胞内生理活性イオンの濃度が高くなることを示している。このことは、血管平滑筋細胞においては血管の収縮を促進することにつながる。従って、血管平滑筋細胞の血管収縮が発生したことと同視できる。
【0083】
一方数値が低い状態は、細胞内生理活性イオンの濃度が低くなることを示している。細胞内生理活性イオンの濃度が低くなると、血管平滑筋細胞における血管収縮の作用が収まり、反対に血管内皮細胞における血管拡張の作用が強く表れることになる。つまり、細胞内生理活性イオンの濃度が低くなると、血管が弛緩した状態が顕現することになる。
【0084】
また、波形図においては、900秒の部分に縦線が引かれている。当該縦線は変動磁場発生装置1によって使用者の体内に対して変動磁場を与えたか否かを区切る線である。すなわち、当該縦線の左側、すなわち、900秒以前には変動磁場は与えられていない。一方、当該縦線の右側、900秒以降においては変動磁場が与えられている。
【0085】
変動磁場発生装置1によって変動磁場が与えられる前は、血管平滑筋細胞において細胞内生理活性イオンが作用しており、細胞内生理活性イオンの濃度が上下するという周期的な変動によって、血管の収縮が時間平均として引き起こされていることを示している。
【0086】
ところが、変動磁場発生装置1によって使用者の血管に対して変動磁場が与えられた900秒以降、変動磁場が与えられる前に比べて、細胞内生理活性イオンの濃度が低下している。
【0087】
もし変動磁場が与えられるか否かに拘わらず細胞内生理活性イオンの濃度に変化がないのであれば、図5の破線で示すような波形が現れるはずである。しかしながら、上述したように変動磁場が与えられた後は、細胞内生理活性イオンの濃度が低下している。このことはすなわち、血管の収縮が発生せず、弛緩している状態が維持されていることを示している。
【0088】
以上のことから、変動磁場発生装置1によって変動磁場が与えられることによって、細胞内生理活性イオンの濃度が上下するという周期的な変動(振動)が低減(消失)し、細胞内生理活性イオンの濃度は低く抑えられる。
【0089】
また、血管が収縮せず弛緩した状態が継続しているということは、与えられた変動磁場が血管平滑筋細胞に直接働き、血管平滑筋細胞による血管収縮の作用が阻害されているものと考えることができる。血管収縮の作用が阻害されるということは、血管拡張の状態が発生する。
【0090】
従って、変動磁場発生装置1によって変動磁場が与えられている状態においては、血管拡張の状態が継続し、血管が拡張されると血行が良くなり、例えば、血流の改善が図られる。
【0091】
このような血管平滑筋細胞における細胞内生理活性イオンの振動が抑えられ、細胞内生理活性イオンの濃度が低い状態が維持される効果をもたらす際の変動磁場発生装置1の動作は以下の通りである。
【0092】
本発明の実施の形態における変動磁場発生装置1では、磁性体2の磁極について必ずしも異極であることを求めていない。上述したように、1つの磁極によって与えられた変動磁場による使用者の内部各部における反応は、次の磁極によって変動磁場が与えられる前に終了してしまう。従って、磁性体2の磁極は同極であっても異極であっても良い。
【0093】
また、駆動部3によって磁性体2に対して与えられる回転数は、例えば、毎分500回転以上である。実験の結果、駆動部3が毎分500回転以上の回転数で磁性体2を回転させることによって、生理活性イオンの振動の抑制効果が発現することが把握されているからである。そしてさらに回転数の上限については、例えば毎分6500回転とすることができる。
【0094】
同じように、駆動部3によって磁気シールド材に対して与えられる回転数は、例えば、毎分500回転以上である。
【0095】
さらに、磁性体2は、可能な限り使用者の皮膚Sに近い位置に配置されている。磁性体2が、変動磁場発生装置1が貼付される皮膚Sに近ければ近いほど、より確実に変動磁場を使用者の体内各部に与える変動磁場の強度を強くすることができるからである。具体的には、本発明の実施の形態における変動磁場発生装置1では磁性体2は、変動磁場発生装置1が使用者の皮膚Sに接触する面から概ね1mmから13mmの間に収まる位置に配置されている(図1の符号H参照)。
【0096】
以上説明した少なくとも1つの実施の形態によれば、本発明の実施の形態における変動磁場発生装置1では上述した構成を採用していることから、変動磁場を利用して直接的に平滑筋の収縮抑制を図ることによって、平滑筋が収縮することで生ずる障害を除去することができる。
【0097】
このように変動磁場を血管平滑筋細胞に与えることによって、血管平滑筋細胞が収縮しようとする作用を阻害できる。従って、変動磁場が与えられている状態においては、血管が収縮せず弛緩(拡張)した状態を維持することができる。そのため血行が良くなり様々な疾病を改善させる効果を期待することができる。
【0098】
さらに、変動磁場を与えることによって血管の収縮を抑え弛緩した状態を顕現させることができる、ということは、変動磁場が与えられている間、何らかの要因で細胞内生理活性イオンの濃度が一時的であっても高くなる現象が生ずることを減らすことができる。
【0099】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0100】
[変動磁場発生装置の構成]
図6は、第2の実施の形態における変動磁場発生装置11の全体構成を示す平面図である。また、図7は、第2の実施の形態における変動磁場発生装置11の第1の変形例である変動磁場発生装置12の全体構成を示す平面図である。さらに、図8は、第2の実施の形態における変動磁場発生装置11の第2の変形例である変動磁場発生装置13の全体構成を示す平面図である。
【0101】
図6ないし図8に示されている第2の実施の形態における変動磁場発生装置11ないし変動磁場発生装置13は、例えば単離した細胞に直接磁気を当てることによって細胞内における生理活性イオン振動やカルシウム振動反応の発現を確認する場合に用いられる。そのため、上述した第1の実施の形態における変動磁場発生装置1とは異なり、使用者の皮膚Sに貼付されて使用されるものではない。
【0102】
すなわち、第2の実施の形態における変動磁場発生装置は、プレートに設けられた部屋の中に載置された細胞を、例えば顕微鏡で観察する際に用いられる。より具体的には、これらの変動磁場発生装置に観察対象となる細胞を収容し、顕微鏡に当該変動磁場発生装置を固定して観察する。
【0103】
まず、図6に示す変動磁場発生装置11には、矩形の筐体の略中央部に観察対象となる細胞を載置するプレートP1が配置される。ここで、プレートP1には細胞を収容する部屋Rが複数設けられている。図6に示すプレートP1では4つの部屋R1ないし部屋R4が設けられている。
【0104】
但し、プレートP1に複数の部屋Rが設けられていればよく、その数については特に限定されない。なお、以下、各部屋についてまとめて説明を行う場合には、適宜「部屋R」と表わす。
【0105】
プレートP1には、板状の底面上に屹立するように4つの、例えば円柱状の形状を有する部屋R1ないしR4が設けられている。この部屋R1ないし部屋R4の内部には、観察対象となる細胞が収容される。
【0106】
このように細胞は部屋Rの内部に収容されて観察されるが、実際に部屋Rに収容された細胞は、部屋Rの中で広く薄く広がり、その底面にくっつくような形で存在することになる。そのため、部屋Rの中に細胞が収容される状態を、適宜「細胞が部屋に載置される」と表現する。
【0107】
プレートP1は、観察の際に変動磁場発生装置11の内部に収容される。すなわち、変動磁場発生装置11においては、プレートP1の収容部11aが設けられている。ここでは、プレートP1の外形が円形状に形成されていることに合わせて収容部11aは円柱状に形成されている。
【0108】
なお、ここでは収容部11aにおけるプレートP1の固定方法については特に限定されない。プレートP1の底面と収容部11aとの間で何らかの機構を用いて連結されることで固定されても、或いは、プレートP1の上面を鉛直方向下向きに押さえることによって収容部11a内においてプレートP1を固定することとしても良い。
【0109】
この収容部11aの側壁部分には、複数の磁性体21が配置される。すなわち、当該収容部11aにプレートP1が載置された場合に、その周囲を磁性体21が取り囲むことになる。図6に示す変動磁場発生装置11では、4つの磁性体21aないし磁性体21dが互いに直交するように配置されている。
【0110】
このようにここでの磁性体21は、4つ配置されているが、配置される磁性体21の数は問わない。例えば、2つや6つの磁性体21が配置されてもよく、或いは、1つの円環状の磁性体21を用いても良い。また、複数の磁性体21が配置される場合には、その配置位置やN極、S極の別も問わない。
【0111】
また、これら4つの磁性体21aないし磁性体21dは、1つの円環状の磁性体収容部11bに収容されている。そのため、当該磁性体収容部11bが回転することによって、磁性体21aないし磁性体21dが一体的に移動可能とされている。磁性体収容部11bを回転させる構成として、第2の実施の形態に係る変動磁場発生装置11においては、以下の構成を採用している。
【0112】
すなわち、当該磁性体収容部11bの上面であってその円周状に歯車11cが設けられている。この歯車11cは、駆動部31に連結されてその回転を伝達する歯車に噛み合っており、駆動部31からの駆動力を受けることが可能とされている。そのため磁性体収容部11bは駆動部31の動力を受けて回転することができる。
【0113】
この動きによって、複数の磁性体21aないし磁性体21dが、部屋R1ないし部屋R4に載置された細胞の周囲を、細胞の載置面を垂直に貫通する軸を回転軸として載置面と平行な面において移動し、細胞に変動磁場を与えることになる。
【0114】
なお、本発明の実施の形態の変動磁場発生装置11においては、このように磁性体収容部11bに直接歯車11cが設けられているが、駆動部31からの駆動力を受けて磁性体収容部11bが細胞の周囲を回転して細胞に変動磁場を与えることができるのであれば、その構造については限定されない。
【0115】
次に、上述した変動磁場発生装置11の変形例について、図7に示す変動磁場発生装置12を例に挙げて説明する。第1の変形例である変動磁場発生装置12は、駆動部からの駆動力を受けて磁性体が細胞の周囲を回転して細胞に変動磁場を与える点については、変動磁場発生装置11と同じであるが、その構造を異にする。
【0116】
すなわち、まず、変動磁場発生装置12において用いられるプレートP2は、部屋Rが1つだけ設けられている。この部屋R5は、プレートP2の中央部に設けられており、この中に観察対象となる細胞が収容(載置)される。
【0117】
当該部屋R5の構造自体は、上述したプレートP1に設けられる部屋R1ないし部屋R4と同じである。但し、プレートP2は1つの部屋R5のみを備え、その配置位置も中央部である点がプレートP1に設けられる部屋R1ないし部屋R4と異なる。また、プレートP2ではこのような構成を採用することから、この部屋R5の側壁とプレートP2の周縁との間に空間が確保されることになる。
【0118】
そして当該空間が磁性体を収容する空間に利用される。変動磁場発生装置12では、図7にて破線で示されているように、4つの磁性体21eないし磁性体21hが部屋R5の周囲に互いに直交するように配置されている。
【0119】
そして第1の変形例では、このように部屋R5の側壁とプレートP2の周縁との間に空間が確保されていることから、変動磁場発生装置12において用いられる磁性体21eないし磁性体21hは、上述した変動磁場発生装置11において用いられる磁性体21aないし磁性体21dよりも大きな磁性体が用いられている。このように大きな磁性体を利用することができるので、変動磁場発生装置11に比べて変動磁場発生装置12は、より大きな磁力を細胞に付加することができる。
【0120】
なお、変動磁場発生装置12においては、4つの磁性体21eないし磁性体21hが部屋R5の周囲に配置されているが、磁性体の数、配置位置、或いは、N極、S極の別については自由に設定することができる。
【0121】
また、変動磁場発生装置11では、既に変動磁場発生装置11に設けられている磁性体収容部11b内に4つの磁性体21aないし磁性体21dが収容されている。一方、変動磁場発生装置12における磁性体21eないし磁性体21hは、変動磁場発生装置11における磁性体21aないし磁性体21dよりも大きいことから、プレートP2の形状、大きさ、配置位置との関係上、プレートP2の上部から被せるような形で配置される。
【0122】
すなわち、変動磁場発生装置12を用いた細胞の観察が行われる場合、まず、細胞が載置される部屋R5が設けられているプレートP2が変動磁場発生装置12の収容部12a内に載置される。プレートP2に設けられた部屋R5は、その中央部に設けられていることから、収容部12aの側壁との間には空間が形成されることになる。
【0123】
上述したようにこの空間に磁性体21eないし磁性体21hが配置されることになるが、まずはプレートP2を収容部12aに載置する関係上、最初からこの位置に配置しておくことはできない。そこで、磁性体21eないし磁性体21hが収容される磁性体収容部12bは、プレートP2の上部から被せるような形で収容部12a内に配置される。
【0124】
なお、ここでは収容部12a内に配置される磁性体収容部12bは、ボルト等を用いて変動磁場発生装置12に固定される。但し、磁性体収容部12bの固定方法については、このような固定方法に限定されず、様々な固定方法を採用することができる。
【0125】
このようにプレートP2に被せる形で磁性体収容部12bを収容部12aに配置することから、磁性体収容部12bが採用する形状によっては、部屋R5内に載置された細胞を観察することができないことも考えられる。そこで変動磁場発生装置12における磁性体収容部12bの中央部には貫通孔12cが設けられている。この貫通孔12cが設けられていることによって、プレートP2の中央部に設けられる部屋R5内に載置される細胞を顕微鏡で観察することができる。
【0126】
そして当該磁性体収容部12bは、プレートP2の部屋R5の周囲を回転することができるようにされている。変動磁場発生装置12においては、磁性体収容部12bの周囲に歯車12dが設けられており、この歯車12dは、駆動部31に連結される歯車に噛み合っており、駆動部31からの駆動力を受けることが可能とされている。
【0127】
そのため磁性体収容部12bは駆動部31の動力を受けて回転する。この動きによって、磁性体21eないし磁性体21hは細胞が載置された部屋Rの周囲を回転して細胞に変動磁場を与えることができる。
【0128】
なお、磁性体収容部12bの周囲に設けられている歯車12dは、変動磁場発生装置11の磁性体収容部11bに設けられている歯車11cよりも幅広に形成されている。これは変動磁場発生装置12において用いられる磁性体21eないし磁性体21hは、変動磁場発生装置11において用いられる磁性体21aないし磁性体21dよりも大きく、これらの磁性体を収容する磁性体収容部12bを回転させるためには、より大きな駆動力が必要とされるためである。
【0129】
次に、上述した変動磁場発生装置11の第2の変形例について、図8に示す変動磁場発生装置13を例に挙げて説明する。第2の変形例である変動磁場発生装置13は、駆動部からの駆動力を受けて磁性体が回転することで細胞に変動磁場を与える点については、変動磁場発生装置11や変動磁場発生装置12と同じであるが、その構造や磁性体の回転の方法を異にする。
【0130】
変動磁場発生装置13において用いられるプレートP3は、プレートP2と同様、その中央部に1つの部屋R6を備えるものである。この部屋R6の内部に観察対象となる細胞が載置される。
【0131】
一方、磁性体の配置位置と回転の向きはこれまでの変動磁場発生装置11や変動磁場発生装置12の場合と異なる。すなわち、変動磁場発生装置13において用いられる磁性体21i及び磁性体21jは、図8に示すように細胞が載置される部屋R6を挟み、互いに対抗する位置に配置される。つまり、変動磁場発生装置11や変動磁場発生装置12で用いられる磁性体のように細胞の周囲を回転して変動磁場を与えるものではない。
【0132】
第2の変形例における磁性体21i及び磁性体21jは、その回転軸をそれぞれの磁性体21i及び磁性体21jの長手方向の軸とする。従って、細胞の周囲を磁性体21i及び磁性体21jが回転するのではなく、磁性体21i及び磁性体21jはその位置を動かず、その配置位置において長手方向の軸を回転軸として回転する。
【0133】
磁性体21i及び磁性体21jは、上述したように、部屋R6を間に挟んで対向する位置に配置される。そして、第2の変形例における変動磁場発生装置13における磁性体21iは、短手方向に切断してその断面を見た場合に、一例として挙げるならば、例えば、上半分がN極、下半分がS極となるようにされている。
【0134】
すなわちこのような場合、長手方向の回転軸を通るように切断した場合に、上半分がN極、下半分がS極となる。そして磁性体21iがこのような状態にあるとき、部屋R6を挟んで対向する位置にある磁性体21jは、下半分がN極、上半分がS極となるように配置される。つまり磁性体21i及び磁性体21jが部屋R6を挟んで向き合った際に互いに異極が向き合う形になる。
【0135】
なお、磁性体21i及び磁性体21jにおけるN極、S極の配置については、上述したような上下半分ずつに互いに配置される場合の他、例えば、短手方向に切断してその断面を見た場合に、N極及びS極が円周方向に互い違いとなるように配置されていても良く、その配置位置については限定されない。また、磁性体21i及び磁性体21jが部屋R6を挟んで向き合った際に互いに同極が向き合う形に配置されていても良い。
【0136】
ここで、第2の変形例における変動磁場発生装置13では、部屋R6を挟んで対向する位置にある磁性体21i及び磁性体21jそれぞれに対して駆動力を伝達するように駆動部31が構成されている。すなわち、変動磁場発生装置13においては、駆動部31は磁性体21iを駆動するための第1の駆動部311と磁性体21jを駆動するための第2の駆動部312とから構成されている。
【0137】
但し、回転を付加する機構としては、図8に示すように1つだけ設けられており、この1つの機構からの駆動力が第1の駆動部311及び第2の駆動部312を貫通するギアを介して磁性体21i及び磁性体21jに伝達される。変動磁場発生装置13はこのような構造を備えているため、駆動部31からの駆動力によって磁性体21i及び磁性体21jは同方向に回転する。
【0138】
このように、磁性体21i及び磁性体21jは、細胞を挟んで互いに対向する位置に配置されているため、部屋R6に載置された細胞に対して、細胞の載置面と平行な軸であって磁性体21i及び磁性体21jに共通する軸を回転軸として回転する。
【0139】
しかもこれら磁性体21i及び磁性体21jは、部屋R6を挟んで対向した場合に、互いに異極が向きあうように配置されている。これらのことから、部屋R6に載置される細胞に対して効果的に変動磁場を付加することができる。
【0140】
なお、このように変形例2における磁性体21i及び磁性体21jは互いに異極が向き合う形で配置されているが、例えば、同極が向き合う形、或いは、磁性体の一方がN極、対向する磁性体がS極となる磁性体を採用し配置しても良い。
【0141】
また、変動磁場発生装置13における磁性体21i及び磁性体21jは、その一部分が磁性体カバー22によって覆われている。磁性体21i及び磁性体21jは、上述したようにその長手方向を回転軸として回転する。ただ、磁性体21i及び磁性体21jはある程度の重さを有しているため、磁性体21i及び磁性体21jは自身の重さによって回転軸がずれてくる可能性が考えられる。回転軸がずれると、磁性体21i及び磁性体21jが周囲の構造物に接触することも考えられることから、当該磁性体カバー22によって回転軸を維持することとしている。
【0142】
また、磁性体21i及び磁性体21jの磁力の強度によっては、周囲の機構に影響を与える可能性もある。そこで、磁性体カバー22によって磁性体21i及び磁性体21jをそれぞれ覆うようにすることで、磁力の影響を他の機構に及ぼさないようにしている。
【0143】
なお、第2の実施の形態に係る変動磁場発生装置における駆動部31としては、例えば、モータやぜんまいといった機構が考えられることは第1の実施の形態において説明した通りである。さらに変動磁場発生装置11ないし変動磁場発生装置13における駆動部31の配置位置は、あくまでも例示であって、その配置位置は任意の位置とすることができる。
【0144】
筐体4の形状については、磁性体2を移動可能に収容することができる大きさの内部空間が形成されていれば、例えば、略円柱状、略角柱状というように、どのような形状に形成されても良い。また、筐体4の成形材料は、外部から力を受けた時に内部空間の形状を維持することができれば特に限定されることはない。
【0145】
以上説明した本発明の実施の形態における変動磁場発生装置11ないし変動磁場発生装置13では上述した構成を採用していることから、例えば単離した細胞に直接磁気を当てることによって細胞内における生理活性イオン振動やカルシウム振動反応の発現を確認することができる。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0147】
1 変動磁場発生装置
2 磁性体
3 駆動部
4 筐体
5 軸
11~13 変動磁場発生装置
21 磁性体
R 部屋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8