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特許7436346ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240214BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20240214BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20240214BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240214BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240214BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/123 A
G08G1/01 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020182642
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072934
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 尚保
(72)【発明者】
【氏名】稗圃 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】川田 亮一
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-050624(JP,A)
【文献】特開2012-178779(JP,A)
【文献】特開2015-065571(JP,A)
【文献】特開2020-176995(JP,A)
【文献】特開平10-019591(JP,A)
【文献】特開2014-178256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
G16Y 10/00 - 40/60
G05D 1/00 - 1/12
H04M 3/00
H04M 3/16 - 3/20
H04M 3/38 - 3/58
H04M 7/00 - 7/16
H04M 11/00 - 11/10
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
H04B 1/60
H04B 3/46 - 3/493
H04B 17/00 - 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置であり、
位置と、当該位置における無線通信品質と、当該位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報とが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納する位置無線品質基地局情報格納部と、
前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報に基づいて、前記経路の候補に対して、経路上の位置における無線通信品質が悪いと低評価になるように重み付けを行うコスト算出部と、
前記重み付けがされた前記経路の候補の中から重み付けに基づいて前記経路を探索する経路探索部と、
前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、前記移動体が前記目的地に向けて移動するタイミングにおける無線通信品質との比較を行う無線品質新旧比較部と、
前記無線品質新旧比較部の比較結果に基づいて、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う無線品質悪化量補正部と、
を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路探索部は、前記無線通信品質悪化量の補正の結果、前回の探索結果の経路では無線通信が切断される可能性がある場合に、前記経路の再探索を行う、
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記無線品質悪化量補正部は、前記無線品質新旧比較部の比較の結果、無線通信品質が悪化したと判定された位置で前記移動体が無線通信接続する基地局が提供する無線通信接続範囲に限定して前記無線通信品質悪化量の補正を行う、
請求項1又は2のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記無線品質悪化量補正部は、無線通信品質悪化量が一定期間継続して一定値を超える場合に、前記無線通信品質悪化量の補正を行う、
請求項1から3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記無線品質悪化量補正部は、無線周波数帯と、無線環境区分と、無線通信品質の測定地点及び最悪値地点から基地局までの距離とのうちの少なくともいずれかに基づいて、前記無線通信品質悪化量の補正量を変える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記位置無線品質基地局情報格納部は、前記無線通信品質悪化量の補正の結果、無線通信品質が無線通信の切断が発生すると判定される閾値よりも悪くなった位置に対して、別の基地局の基地局識別情報及び無線通信品質に変更した前記位置無線品質基地局情報を格納する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記移動体は、配送を行う移動体であり、
前記経路は、前記移動体が配送する経路である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション方法であり、
位置と、当該位置における無線通信品質と、当該位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報とが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を位置無線品質基地局情報格納部に格納する位置無線品質基地局情報格納ステップと、
前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報に基づいて、前記経路の候補に対して、経路上の位置における無線通信品質が悪いと低評価になるように重み付けを行うコスト算出ステップと、
前記重み付けがされた前記経路の候補の中から重み付けに基づいて前記経路を探索する経路探索ステップと、
前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、前記移動体が前記目的地に向けて移動するタイミングにおける無線通信品質との比較を行う無線品質新旧比較ステップと、
前記無線品質新旧比較ステップの比較結果に基づいて、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う無線品質悪化量補正ステップと、
を含むナビゲーション方法。
【請求項9】
遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置のコンピュータに、
位置と、当該位置における無線通信品質と、当該位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報とが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を位置無線品質基地局情報格納部に格納する位置無線品質基地局情報格納ステップと、
前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報に基づいて、前記経路の候補に対して、経路上の位置における無線通信品質が悪いと低評価になるように重み付けを行うコスト算出ステップと、
前記重み付けがされた前記経路の候補の中から重み付けに基づいて前記経路を探索する経路探索ステップと、
前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、前記移動体が前記目的地に向けて移動するタイミングにおける無線通信品質との比較を行う無線品質新旧比較ステップと、
前記無線品質新旧比較ステップの比較結果に基づいて、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う無線品質悪化量補正ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律的に移動するロボットや自動運転車両が屋外を走行することを想定したナビゲーション技術が検討されている。例えば特許文献1には、対象物を自動搬送する際に、ナビゲーション経路及び中間ノードのノードタイプ(ノードにおいて車両によって実行されるべき動作)に基づいてナビゲーションデータを取得するナビゲーションデータ生成システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-537730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外を自律的に移動するロボットや自動運転車両を無線通信により遠隔で監視する場合、無線通信が切断されない経路を移動することが好ましい。しかしながら、上述した従来のナビゲーション技術では、無線通信が切断されない経路をナビゲーションすることができない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、無線通信により遠隔で移動体を監視する際に安定的な無線通信の実現を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置であり、位置と、当該位置における無線通信品質と、当該位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報とが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納する位置無線品質基地局情報格納部と、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報に基づいて、前記経路の候補に対して、経路上の位置における無線通信品質が悪いと低評価になるように重み付けを行うコスト算出部と、前記重み付けがされた前記経路の候補の中から重み付けに基づいて前記経路を探索する経路探索部と、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、前記移動体が前記目的地に向けて移動するタイミングにおける無線通信品質との比較を行う無線品質新旧比較部と、前記無線品質新旧比較部の比較結果に基づいて、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う無線品質悪化量補正部と、を備えるナビゲーション装置である。
(2)本発明の一態様は、前記経路探索部は、前記無線通信品質悪化量の補正の結果、前回の探索結果の経路では無線通信が切断される可能性がある場合に、前記経路の再探索を行う、上記(1)のナビゲーション装置である。
(3)本発明の一態様は、前記無線品質悪化量補正部は、前記無線品質新旧比較部の比較の結果、無線通信品質が悪化したと判定された位置で前記移動体が無線通信接続する基地局が提供する無線通信接続範囲に限定して前記無線通信品質悪化量の補正を行う、上記(1)又は(2)のいずれかのナビゲーション装置である。
(4)本発明の一態様は、前記無線品質悪化量補正部は、無線通信品質悪化量が一定期間継続して一定値を超える場合に、前記無線通信品質悪化量の補正を行う、上記(1)から(3)のいずれかのナビゲーション装置である。
(5)本発明の一態様は、前記無線品質悪化量補正部は、無線周波数帯と、無線環境区分と、無線通信品質の測定地点及び最悪値地点から基地局までの距離とのうちの少なくともいずれかに基づいて、前記無線通信品質悪化量の補正量を変える、上記(1)から(4)のいずれかのナビゲーション装置である。
(6)本発明の一態様は、前記位置無線品質基地局情報格納部は、前記無線通信品質悪化量の補正の結果、無線通信品質が無線通信の切断が発生すると判定される閾値よりも悪くなった位置に対して、別の基地局の基地局識別情報及び無線通信品質に変更した前記位置無線品質基地局情報を格納する、上記(1)から(5)のいずれかのナビゲーション装置である。
(7)本発明の一態様は、前記移動体は、配送を行う移動体であり、前記経路は、前記移動体が配送する経路である、上記(1)から(6)のいずれかのナビゲーション装置である。
【0007】
(8)本発明の一態様は、遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション方法であり、位置と、当該位置における無線通信品質と、当該位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報とが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を位置無線品質基地局情報格納部に格納する位置無線品質基地局情報格納ステップと、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報に基づいて、前記経路の候補に対して、経路上の位置における無線通信品質が悪いと低評価になるように重み付けを行うコスト算出ステップと、前記重み付けがされた前記経路の候補の中から重み付けに基づいて前記経路を探索する経路探索ステップと、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、前記移動体が前記目的地に向けて移動するタイミングにおける無線通信品質との比較を行う無線品質新旧比較ステップと、前記無線品質新旧比較ステップの比較結果に基づいて、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う無線品質悪化量補正ステップと、を含むナビゲーション方法である。
【0008】
(9)本発明の一態様は、遠隔監視が無線通信回線を介して行われる移動体に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供するナビゲーション装置のコンピュータに、位置と、当該位置における無線通信品質と、当該位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する基地局識別情報とが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を位置無線品質基地局情報格納部に格納する位置無線品質基地局情報格納ステップと、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報に基づいて、前記経路の候補に対して、経路上の位置における無線通信品質が悪いと低評価になるように重み付けを行うコスト算出ステップと、前記重み付けがされた前記経路の候補の中から重み付けに基づいて前記経路を探索する経路探索ステップと、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、前記移動体が前記目的地に向けて移動するタイミングにおける無線通信品質との比較を行う無線品質新旧比較ステップと、前記無線品質新旧比較ステップの比較結果に基づいて、前記位置無線品質基地局情報格納部に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う無線品質悪化量補正ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線通信により遠隔で移動体を監視する際に安定的な無線通信の実現を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る位置・無線品質・基地局ID格納部403の構成例を示す図である。
図3】一実施形態に係る経路探索方法の手順の例を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る経路探索方法の一例を説明するための説明図である。
図5】一実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。
図6】一実施形態に係る効果を説明するための説明図である。
図7】一実施形態に係るナビゲーション方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、自律的に移動するロボット(以下、移動ロボットと称する)を使用して配送を行う配送サービスシステムにおけるナビゲーションシステムを例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成例を示すブロック図である。図1において、移動ロボット2は、ナビゲーション装置4との間で無線通信回線を介して通信を行う。移動ロボット2は、移動体の一例である。ナビゲーション装置4は、移動ロボット2に対して出発地から目的地に到達する経路を示す経路情報を提供する。
【0013】
本実施形態に係るナビゲーション装置4は、ナビゲーション機能に加えてさらに遠隔監視機能を備える。なお、遠隔監視機能については、移動ロボット2の外部のナビゲーション装置4以外の他の装置が備えてもよい。
【0014】
ナビゲーション装置4は、遠隔監視機能により、移動ロボット2を無線通信により遠隔で監視する。例えば、ナビゲーション装置4は、移動ロボット2が撮像する画像や収音する音を移動ロボット2から無線通信回線を介して受信し、受信した画像や音を表示や再生する。監視者が当該画像や当該音を視聴することにより、リアルタイムで移動ロボット2の移動の状況の監視が行われる。このため、本実施形態に係る配送サービスシステムでは、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現が要求される。そこで、本実施形態では、ナビゲーション装置4が、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図るための経路情報を提供する。
【0015】
また、万が一、移動ロボット2における無線通信が不安定になってナビゲーション装置4との間の通信が途絶えると、ナビゲーション装置4との間の通信が復旧する場所まで移動ロボット2が自律的に引き返すようになっている。しかしながら、そのような状況は好ましくない。このため、移動ロボット2における無線通信が不安定になってナビゲーション装置4との間の通信が途絶える前に、安定的な無線通信が得られる経路に移動ロボット2の経路を変更することができればより好ましい。そこで、本実施形態では、ナビゲーション装置4が、そのような経路の変更を図る。
【0016】
以下、図1を参照して本実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成を説明する。
【0017】
[利用者端末]
利用者端末1は、本実施形態に係る配送サービスシステムの利用者(以下、配送サービス利用者と称する)が利用する端末である。配送サービス利用者は、荷物を配送する宛先である目的地を指定して配送を依頼する。利用者端末1は、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置であってもよく、又は据置き型の通信端末装置(例えば据置き型のパーソナルコンピュータ等)であってもよい。
【0018】
利用者端末1は、商品発注部101と、目的地情報入力部102とを備える。商品発注部101は、配送サービス利用者による操作に応じて、商品の選択及び選択した商品の発注を行う。
【0019】
なお、商品発注部101は、配送サービス利用者が所有する物品の残量をリアルタイムに管理し、物品の残量が予め設定された閾値以下になったときに、補充用の商品を自動的に発注してもよい。
【0020】
目的地情報入力部102は、商品発注部101が商品を発注する際に、住所等の目的地を示す目的地情報を入力する。目的地情報は、配送サービス利用者が毎回指定してもよく、又は目的地情報入力部102が過去に配送サービス利用者から指定された目的地情報を記録しておき当該記録の目的地情報を自動的に再利用してもよい。
【0021】
また、目的地情報入力部102は、利用者端末1が備えるGPS(Global Positioning System)による測位機能を用いて、GPSで取得した現在位置を目的地としてもよい。また、目的地情報入力部102は、利用者端末1のカメラで撮影した利用者端末1の周囲の景色の画像を目的地の参考情報として目的地情報に付加してもよい。
【0022】
[移動ロボット]
移動ロボット2は、自律走行可能なロボットである。移動ロボット2は、例えば、街中を走行し、配送サービス利用者が指定した目的地まで荷物を配送する。
【0023】
移動ロボット2は、現在位置取得部201と、無線品質取得部202と、基地局識別情報(基地局ID)取得部203と、状態取得部204と、無線通信部205と、経路情報格納部206と、撮像部207と、動作判断部208と、動作制御部209とを備える。
【0024】
現在位置取得部201は、GPS等の測位システムによって、現在位置(位置情報)を取得する。無線品質取得部202は、無線通信部205が対応する無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、無線通信部205がナビゲーション装置4との間で無線通信を行う際の無線通信品質(無線通信品質情報)を取得する。
【0025】
基地局ID取得部203は、移動ロボット2(無線通信部205)が無線通信接続を行うことができる各基地局の基地局IDを取得する。基地局IDは、各基地局を個体識別する識別情報である。基地局IDとして、例えば、CID(Cell ID)と呼ばれるものが挙げられる。なお、MCC(Mobile Country Code:国コード)、MNC(Mobile Network Code:ネットワークコード)、LAC(Location Area Code:エリアコード)、CID(Cell ID:基地局ID)を組合わせることにより、各国、各通信事業者の基地局を一意に特定することができる。
【0026】
状態取得部204は、移動ロボット2に備わっている各種センサから、バッテリー残量や温度や移動速度等の状態データ(状態情報)を取得する。
【0027】
無線通信部205は、ナビゲーション装置4との間で無線通信を行う。無線通信部205は、例えばLTE(Long Term Evolution)や5G(第5世代移動通信システム)等の無線通信方式に対応し、自己が対応する無線通信方式の基地局を介して無線通信を行う。また、無線通信部205は、Wi-Fi(登録商標)等のアンライセンス系の無線通信方式に対応し、当該アンライセンス系の無線通信方式により無線通信を行ってもよい。
【0028】
無線通信部205は、現在位置取得部201や無線品質取得部202や基地局ID取得部203や状態取得部204により得られた情報をナビゲーション装置4の運用監視部401へ送信する。また、無線通信部205は、ナビゲーション装置4の経路配信部412から送信された経路情報を受信して経路情報格納部206に格納する。経路情報格納部206に格納された経路情報は、移動ロボット2の動作の判断に活用される。
【0029】
撮像部207は、移動ロボット2の進行方向を撮像する。動作判断部208は、移動ロボット2の次の動作を判断する。動作判断部208は、経路情報格納部206に格納されている経路情報に示される経路を移動する際に、現在位置取得部201で取得した現在位置や撮像部207で撮像した撮像画像等を用いて、移動ロボット2の周囲の環境に合わせた動作を判断する。
【0030】
動作制御部209は、動作判断部208で判断した動作を移動ロボット2に実行させる。動作制御部209は、移動ロボット2の前進や後退や右左折等の走行種別及び走行速度、並びに撮像部207の撮像方向の変更等の走行以外の動作種別を制御する。
【0031】
[携帯端末]
携帯端末3は、スマートフォンやタブレットPC等の携帯通信端末装置である。携帯端末3は、利用者端末1として利用されるものであってもよく、又は利用者端末1とは別個のものであってもよい。携帯端末3として、例えば、特定の無線通信キャリアに加入した加入者により当該無線通信キャリアとの間で位置情報取得の合意が取れている全ての加入者の携帯端末を対象としてもよい。
【0032】
携帯端末3は、自己が対応する無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、現在位置(位置情報)と当該現在位置における無線通信品質(無線通信品質情報)とを定期的にナビゲーション装置4へ報告する。
【0033】
[ナビゲーション装置]
ナビゲーション装置4は、一又は複数の移動ロボット2に対して出発地から目的地までのナビゲーションを行う。また、ナビゲーション装置4は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視を行う。
【0034】
ナビゲーション装置4は、運用監視部401と、運用情報格納部402と、位置・無線品質・基地局ID格納部403と、地図情報格納部404と、無線品質移動コスト変換部405と、携帯端末位置情報格納部406と、屋外人口密度推計部407と、移動コスト算出部408と、オーダー情報格納部409と、目的地取得部410と、経路探索部411と、経路配信部412と、無線品質新旧比較部413と、無線品質悪化量補正部414と、別経路探索指示部415と、を備える。本実施形態では、無線品質移動コスト変換部405と移動コスト算出部408とがコスト算出部に対応する。
【0035】
ナビゲーション装置4の各機能は、ナビゲーション装置4がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、ナビゲーション装置4として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、ナビゲーション装置4は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、ナビゲーション装置4の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、ナビゲーション装置4は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又はナビゲーション装置4の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。また、ナビゲーション装置4として、例えばWWWシステム等を利用してウェブサイトを開設するように構成してもよい。
【0036】
運用監視部401は、一又は複数の移動ロボット2に対して運用監視を行う。運用監視部401は、移動ロボット2からリアルタイムに受信した位置情報や無線通信品質情報や状態情報を当該移動ロボット2の個体を識別する情報(移動ロボットID)と関連付けて、運用監視を行う。運用監視部401は、定期的に、例えば1秒間隔で更新される情報(位置情報や無線通信品質情報や状態情報)に基づいて運用監視する。運用監視部401は、移動ロボット2から受信した位置情報や無線通信品質情報や状態情報を解析し、移動ロボット2の障害を検出した場合には、例えば、監視者に対して警報を発出する。運用情報格納部402は、障害発生時の原因究明や将来の対策検討のために、運用監視部401が移動ロボット2から受信した情報(位置情報や無線通信品質情報や状態情報)を格納する。
【0037】
位置・無線品質・基地局ID格納部403は、無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、位置情報と無線通信品質情報と基地局IDとが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納する。
【0038】
位置無線品質基地局情報に記録される位置情報、無線通信品質情報及び基地局IDは、移動ロボット2や携帯端末3からナビゲーション装置4へ送信された情報である。なお、移動ロボット2や携帯端末3以外の装置によって測定された位置情報、無線通信品質情報及び基地局IDが位置無線品質基地局情報に記録されてもよい。
【0039】
また、位置情報は、例えばGPS座標である。GPS座標を取得することができない屋内施設等に対しては、IMES(Indoor MEssaging System)等の屋内測位技術により取得された絶対位置情報を位置情報に利用してもよい。また、無線通信品質情報は、例えばLTEの受信電力を示すRSRP(Reference Signal Received Power)である。
【0040】
位置無線品質基地局情報は、日付や曜日や時間帯やイベントごとに、それぞれ設けられてもよい。例えば、平日(月曜から金曜まで)の位置無線品質基地局情報と、休日(土曜、日曜及び祝日)の位置無線品質基地局情報とがそれぞれ設けられてもよい。例えば、昼間の時間帯の位置無線品質基地局情報と、夜間の時間帯の位置無線品質基地局情報とがそれぞれ設けられてもよい。例えば、お正月やゴールデンウィークやお盆の期間の位置無線品質基地局情報が設けられてもよい。
【0041】
図2は、本実施形態に係る位置・無線品質・基地局ID格納部403の構成例を示す図である。図2の例では、位置・無線品質・基地局ID格納部403は、無線通信方式「LTE」について、無線周波数帯_LTE_aの位置無線品質基地局情報4031や無線周波数帯_LTE_bの位置無線品質基地局情報4032等を格納している。また、位置・無線品質・基地局ID格納部403は、無線通信方式「5G」について、無線周波数帯_5G_aの位置無線品質基地局情報4033や無線周波数帯_5G_bの位置無線品質基地局情報4034等を格納している。
【0042】
なお、例えばLTEの無線周波数帯として、Band1(2.1GHz)やBand18(800MHz)等が利用される。また、5Gの無線周波数帯として、例えば28GHz帯等が利用される。
【0043】
例えば、位置無線品質基地局情報4031は、無線通信方式「LTE」の無線周波数帯_LTE_aの各位置_a,位置_b,・・・における無線通信品質及び基地局IDが関連付けて記録された情報である。例えば、位置無線品質基地局情報4033は、無線通信方式「5G」の無線周波数帯_5G_aの各位置_a,位置_b,・・・における無線通信品質及び基地局IDが関連付けて記録された情報である。
【0044】
また、位置無線品質基地局情報4032は、無線通信方式「LTE」の無線周波数帯_LTE_bの各位置_a,位置_b,・・・における無線通信品質及び基地局IDが関連付けて記録された情報である。なお、位置無線品質基地局情報4032において、位置_a及び位置_bには同じ基地局ID_LTE_b_abが関連付けて記録されている。これは、無線通信方式「LTE」の無線周波数帯_LTE_bでは、位置_a及び位置_bにおける無線通信品質の測定時点において、基地局ID_LTE_b_abの基地局が位置_a及び位置_bにおける無線通信接続を提供していたからである。
【0045】
位置無線品質基地局情報において、基地局IDは、当該基地局IDに関連付けられた位置における無線通信接続を提供する基地局を識別する情報である。さらには、位置無線品質基地局情報において、基地局IDは、当該基地局IDに関連付けられた位置における無線通信品質の測定時点において、当該位置における無線通信接続を提供していた基地局を識別する情報である。
【0046】
なお、位置無線品質基地局情報において、位置に関連付けて記録される無線通信品質及び基地局IDは、当該位置において最良の無線通信品質が得られた基地局の基地局IDであってもよい。さらには、位置無線品質基地局情報において、位置に関連付けて記録される無線通信品質及び基地局IDは、当該位置において無線通信品質が得られた全ての基地局の基地局ID及びその無線通信品質であってもよい。
【0047】
本実施形態では、位置・無線品質・基地局ID格納部403は、少なくとも本配送サービスシステムのサービス対象エリアを含む地域の位置無線品質基地局情報を格納する。本配送サービスシステムのサービス対象エリアは、ナビゲーション装置4が経路情報を提供する対象の地域(対象地域)である。本実施形態に係る位置・無線品質・基地局ID格納部403は、ナビゲーション装置4が経路情報を提供する対象地域で無線通信サービスが提供されている無線通信方式(LTEや5G等)及び無線周波数帯(無線周波数帯_LTE_a,無線周波数帯_LTE_bや無線周波数帯_5G_a,無線周波数帯_5G_b等)ごとに、当該対象地域に含まれる位置と当該位置における無線通信品質及び基地局IDとが関連付けて記録された位置無線品質基地局情報を格納する。
【0048】
地図情報格納部404は、全国の道路地図データや、それに付随する各種施設や店舗等の施設データ等を格納する。道路地図データは、例えば、交差点等をノードとして地図上の道路を複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有の識別子(リンクID)、リンク長、リンクの始点・終点(ノード)の位置情報(経度、緯度)、角度(方向)データ、道路幅、道路種別などのデータを含んで構成される。道路地図データは、移動ロボット2が通行可能なレーンを示すレーン情報を含んでもよい。また、地図情報格納部404は、さらに屋内地図データを格納してもよい。
【0049】
無線品質移動コスト変換部405は、位置・無線品質・基地局ID格納部403に無線通信方式及び無線周波数帯ごとに格納されている各位置無線品質基地局情報に基づいて、無線通信方式及び無線周波数帯ごとに、各道路に該当する位置情報に関連付けて記録されている無線通信品質情報を無線品質リンクコストに変換する。
【0050】
無線品質移動コスト変換部405は、無線通信品質情報を無線品質リンクコストに変換する無線品質リンクコスト変換処理を所定のタイミングで実行する。例えば、無線品質移動コスト変換部405は、定期的に、無線品質リンクコスト変換処理を実行する。例えば、無線品質移動コスト変換部405は、位置・無線品質・基地局ID格納部403において位置無線品質基地局情報が追加されたり変更されたりすると、当該位置無線品質基地局情報に対する無線品質リンクコスト変換処理を実行する。
【0051】
無線品質移動コスト変換部405によって求められた無線品質リンクコストは、地図情報格納部404の道路地図データ内の該当するリンクデータに関連付けて地図情報格納部404に格納される。
【0052】
無線品質移動コスト変換部405は、例えば、無線品質リンクコストの値を3段階に分けて、無線通信品質が十分に良い場合は無線品質リンクコスト「0」、無線通信が切断される程ではないが無線通信品質が悪い場合は無線品質リンクコスト「大」、無線通信が切断される可能性がある場合は無線品質リンクコスト「∞」、とする。
【0053】
なお、ある程度以上に良好な無線通信品質である場合、無線通信が切断される可能性が十分に低くなる。このことから、無線通信が切断される可能性が十分に低いと判断することができる所定の無線通信品質を満たす場合には(例えば受信電力が所定値以上である場合には)無線品質リンクコストを小さくし(例えば無線品質リンクコスト「0」とし)、そうではない場合には無線品質リンクコストを大きくする(例えば無線品質リンクコスト「大」又は「∞」とする)ようにしてもよい。
【0054】
無線品質移動コスト変換部405は、例えば、各リンクデータに対応する無線通信品質情報群の中から、無線通信品質情報の最低値や外れ値を考慮した無線通信品質情報の最低値付近の値を無線品質リンクコストの変換の対象にしてもよい。これは、移動ロボット2が当該リンクデータの道路を走行した際に、無線通信が切断される可能性をリスクとして算出するためである。
【0055】
なお、後述する経路探索部411では、出発地から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)のコストの計算(積算)を順次行なっていき、出発地から目的地までが最小コストとなる経路を選択する。したがって、道路に小さな無線品質リンクコストの値を設定すると、その道路は経路として選択され易くなる。
【0056】
携帯端末位置情報格納部406は、各携帯端末3の位置情報の履歴を格納する。例えば、各携帯端末3のGPS座標を時刻に関連付けて格納する。
【0057】
屋外人口密度推計部407は、携帯端末位置情報格納部406に格納されている位置情報の履歴に基づいて各々の携帯端末3が屋内にいたか又は屋外にいたかを判定し、この判定結果に基づいて、予め設定されたエリアごとに屋外人口密度を推計する。屋外人口密度は、屋外に存在する人の単位面積あたりの人数である。屋外人口密度推計部407によって求められた屋外人口密度は、地図情報格納部404の道路地図データ内の該当するリンクデータに関連付けて地図情報格納部404に格納される。
【0058】
屋外人口密度推計部407は、例えば、ある携帯端末3について、位置情報の変化が一定未満であってほとんど変化がないと判断される場合には屋内にいたと判定し、当該位置情報の変化が一定以上であってある程度変化していると判断される場合には屋外にいたと判定する。
【0059】
また、屋外人口密度推計部407は、各々の携帯端末3の位置情報と、地図情報格納部404に格納されている道路地図データとを比較してマップマッチングを行い、携帯端末3が道路を利用していたと推定してもよい。マップマッチングは、GPSによって得られた、誤差を含んでいる可能性のある位置情報を、地図情報を用いて道路上になるように補正する処理である。マップマッチングは、例えばカーナビゲーションシステムなどで利用されている。
【0060】
また、屋外人口密度推計部407は、携帯端末3の移動速度に基づいて、当該携帯端末3の移動手段が歩行であるか又は車両であるかを判定してもよい。
【0061】
なお、屋外人口密度推計部407は、月や曜日や時間帯ごとに、それぞれの屋外人口密度を推計してもよい。これは、同じエリアであっても、月や曜日や時間帯等によって屋外人口密度が大きく変化する場合があるからである。
【0062】
また、屋外人口密度推計部407は、携帯端末3の位置情報を用いる方法とは異なる他の方法によって、屋外人口密度を推計してもよい。屋外人口密度推計部407は、例えば、移動ロボット2が撮影した映像を利用し、撮影された映像に対する人の画像認識結果に基づいて屋外人口密度を推計してもよい。
【0063】
移動コスト算出部408は、定期的に、地図情報格納部404に格納されている情報を使用して、各道路の各リンクに対して、無線通信方式及び無線周波数帯ごとに総合リンクコストを算出する。移動コスト算出部408は、少なくとも無線品質リンクコストを使用して総合リンクコストを算出する。移動コスト算出部408によって求められた総合リンクコストは、地図情報格納部404の道路地図データ内の該当するリンクデータに関連付けて地図情報格納部404に格納される。
【0064】
移動コスト算出部408は、無線品質リンクコストに基づいて、無線通信品質が悪いと低評価になるように、各道路の各リンクに対して重み付けを行う。例えば、移動コスト算出部408は、無線品質リンクコストに基づいて、無線通信が切断される可能性が高いと判断される道路のリンクに対して、総合リンクコストが最も大きくなるように重み付けを行ってもよい。これにより、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図る。
【0065】
また、移動コスト算出部408は、屋外人口密度に基づいて総合リンクコストを算出してもよい。移動コスト算出部408は、屋外人口密度が閾値以上である道路のリンクに対して、総合リンクコストが大きくなるように重み付けを行ってもよい。これにより、移動ロボット2が人が少ない道路を走行することを図る。
【0066】
また、移動コスト算出部408は、移動ロボット2の種類と移動ロボット2による配送の内容とのうち少なくとも一方と、各道路の各リンクの道路状態とに基づいて、総合リンクコストを算出してもよい。移動ロボット2の種類は、移動ロボット2のサイズや構造等によって分類される。また、移動ロボット2の種類は、移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯によって分類される。移動ロボット2による配送の内容は、例えば、移動ロボット2が配送する荷物の種類や積載見込み量等である。
【0067】
例えば、移動コスト算出部408は、閾値未満の道幅の道路のリンクに対して、小型の移動ロボット2の場合には安全に走行することができるので総合リンクコストを大きくしないが、大型の移動ロボット2の場合には総合リンクコストを大きくする。また、移動コスト算出部408は、移動ロボット2の構造によっては道路の段差を乗り越えることが困難である場合が想定されるので、該当する種類の移動ロボット2には、段差が存在する道路のリンクに対して、総合リンクコストを大きくする。また、移動コスト算出部408は、移動ロボット2が配送する荷物の種類が割れ物である場合には、凸凹が少ない道路を走行することが好ましいので、凸凹が少ない道路のリンクの総合リンクコストを小さくする一方、凸凹が多い道路のリンクの総合リンクコストを大きくする。
【0068】
また、移動コスト算出部408は、総合リンクコストの算出に使用する情報として、公知のナビゲーションシステムで使用されている評価要素を使用してもよい。公知のナビゲーションシステムで使用されている評価要素は、例えば、リンクの所要距離、移動にかかる所要時間、道路状況や道幅による重み付け、信号頻度による重み付け、渋滞傾向による重み付け等である。
【0069】
オーダー情報格納部409は、利用者端末1から商品発注のオーダー情報を受信し、受信したオーダー情報を格納する。オーダー情報格納部409は、購買システム(図示せず)と連携して購買処理を行い、商品配送計画を策定する。オーダー情報格納部409は、策定した商品配送計画により、移動ロボット2が商品を配送する出発地や目的地や時間帯等の予定配送情報を格納する。目的地取得部410は、オーダー情報格納部409に格納されたオーダー情報又は予定配送情報から目的地情報を取得する。
【0070】
経路探索部411は、移動コスト算出部408が算出した総合リンクコストに基づいて、移動ロボット2が走行する予定の経路として、移動ロボット2の出発地から目的地に到達する経路を探索する。移動ロボット2の目的地は、目的地取得部410が取得した目的地情報が示す場所である。移動ロボット2の出発地は、予め設定される。例えば、商品の配送拠点(例えば、商品が貯蔵されている物流倉庫や目的地の最寄りの配送取り扱い店舗等)が、移動ロボット2の出発地として予め設定される。また、移動ロボット2が車両により目的地付近まで運送される場合には、当該移動ロボット2の運送先の場所が当該移動ロボット2の出発地として予め設定される。
【0071】
経路探索部411が利用する経路探索方法として、例えば、ダイクストラ法やA*アルゴリズムや遺伝的アルゴリズム等が利用可能である。
【0072】
経路配信部412は、経路探索部411が探索した結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。
【0073】
ここで、図3を参照して本実施形態に係る経路探索方法を説明する。図3は、本実施形態に係る経路探索方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0074】
(ステップS1) 経路探索部411は、移動ロボット2が走行を開始する出発地と、当該移動ロボット2が走行する行先である目的地とを取得する。
【0075】
(ステップS2) 経路探索部411は、移動ロボット2の種類及び配送の内容を取得する。
【0076】
(ステップS3) 経路探索部411は、ステップS2で取得した移動ロボット2の種類から、当該移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯を認識する。移動ロボット2の種類と、利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯との対応関係は、予め、ナビゲーション装置4に設定される。
【0077】
(ステップS4) 経路探索部411は、移動コスト算出部408に対して、ステップS1で取得した移動ロボット2の出発地及び目的地を含む探索範囲と、リンクコスト算出条件とを指定し、当該探索範囲内の各道路の各リンクの総合リンクコストを算出するように指示する。リンクコスト算出条件は、移動ロボット2の種類や配送の内容等である。リンクコスト算出条件は、少なくとも移動ロボット2の利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯を示す情報を含む。
【0078】
移動コスト算出部408は、経路探索部411からの総合リンクコスト算出指示に応じて、探索範囲内の各道路の各リンクに対して、無線通信方式及び無線周波数帯ごとに総合リンクコストを算出する。この総合リンクコストの算出では、無線通信品質が悪いと低評価になるように、各道路の各リンクに対して重み付けが行われる。移動コスト算出部408は、算出結果の総合リンクコストを、地図情報格納部404の道路地図データ内の該当するリンクデータに関連付けて地図情報格納部404に格納する。なお、移動コスト算出部408は、移動ロボット2が利用可能な無線通信方式及び無線周波数帯が複数存在する場合には、各道路の各リンクに対して、最良の無線通信品質が得られる無線通信方式及び無線周波数帯についての総合リンクコストを該当するリンクデータに関連付けて地図情報格納部404に格納してもよい。
【0079】
移動コスト算出部408は、総合リンクコストの算出完了を経路探索部411へ応答する。
【0080】
(ステップS5) 経路探索部411は、ステップS1で取得した移動ロボット2の出発地及び目的地に対して、ステップS4で移動コスト算出部408により算出した総合リンクコストに基づいて、出発地から目的地に到達する経路を探索する。この経路探索では、出発地から目的地に到達するまでに通る各リンクの総合リンクコストの合計が最小になる経路の探索が行われる。
【0081】
(ステップS6) 経路配信部412は、ステップS5の探索結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信する。
【0082】
図4は、経路探索方法の一例を説明するための説明図である。図5は、本実施形態に係る経路探索方法を説明するための説明図である。図4及び図5において、丸印がノードを示し、ノード間を結ぶ線がリンクを示す。また、出発地のノードがSであり、目的地のノードがGである。また、リンク上に記された数字がリンクコストを示す。図4には、無線通信品質が考慮されない場合のリンクコストが示される。一方、図5には、無線通信品質が考慮される場合であって本実施形態に係る総合リンクコストが示される。また、ここでは、リンクL2は、無線通信品質が悪く、無線通信が切断される可能性が高いとする。
【0083】
図4のリンクコストの場合、経路探索の結果、出発地「ノードS」から目的地「ノードG」に到達する経路として、リンクコストの合計が最小になる経路である「L1→L2→L3」が選択される。図4のリンクコストでは、無線通信品質が考慮されていないので、無線通信が切断される可能性が高いリンクL2が経路として選択されてしまう。この結果、当該選択された経路において、移動ロボット2とナビゲーション装置4との間の無線通信が切断されてしまうと、移動ロボット2が遠隔監視不能になる可能性がある。
【0084】
一方、図5では、リンクL2に対して、無線品質リンクコスト「∞」が図4のリンクコスト「4」に加算された総合リンクコスト「4+∞」が設定される。これにより、図5の総合リンクコストによれば、無線通信が切断される可能性が高いリンクL2が経路として選択されない。そして、図5のリンクコストの場合、経路探索の結果、出発地「ノードS」から目的地「ノードG」に到達する経路として、リンクコストの合計が最小になる経路である「L4→L5」が選択される。この選択された経路「L4→L5」によれば、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図ることができる。これにより、無線通信により安定して移動ロボット2を遠隔で監視することができる。
【0085】
説明を図1に戻す。
無線品質新旧比較部413は、運用監視部401が監視している移動ロボット2の現在位置における現在の無線通信品質と、位置・無線品質・基地局ID格納部403に格納されている位置無線品質基地局情報の当該現在位置に対応する位置の無線通信品質とを比較する。この比較のタイミングは、移動ロボット2が目的地に向けて移動するタイミングである。移動ロボット2が目的地に向けて移動するタイミングは、移動ロボット2が配送を開始するタイミングや、移動ロボット2が配送のために移動しているタイミングなどである。つまり、無線品質新旧比較部413は、移動ロボット2が配送を行う地域における、位置無線品質基地局情報に記録されている過去の無線通信品質と、移動ロボット2が実際に配送を行うタイミングにおける無線通信品質とを比較する。これにより、過去の無線通信品質に対して、移動ロボット2が実際に配送を行うタイミングでの無線通信品質が悪化しているのか否かを判断することができる。
【0086】
無線品質悪化量補正部414は、無線品質新旧比較部413の比較結果に基づいて、位置・無線品質・基地局ID格納部403に格納されている位置無線品質基地局情報の無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量の補正を行う。無線通信品質悪化量は、移動ロボット2が実際に配送を行うタイミングにおける無線通信品質が、位置無線品質基地局情報に記録された過去の無線通信品質よりも悪化している量である。
【0087】
無線品質悪化量補正部414は、無線品質新旧比較部413による比較の結果、無線通信品質が悪化したと判定した場合に、無線通信品質悪化量補正処理を実行する。例えば、無線品質悪化量補正部414は、無線品質新旧比較部413による比較の結果、ある位置において無線通信品質悪化量が一定期間継続して一定値を超える場合に、無線通信品質悪化量補正処理を実行してもよい。
【0088】
無線通信品質悪化量補正処理を実行する対象について説明する。無線品質新旧比較部413による比較の結果、無線通信品質悪化量が悪化したと判定された位置を悪化位置と称する。悪化位置は、例えば、無線品質新旧比較部413による比較の結果、無線通信品質悪化量が一定期間継続して一定値を超えた位置である。
【0089】
移動ロボット2が目的地まで移動する経路において、移動ロボット2が無線通信接続する基地局は、設置場所が各々異なる複数の基地局の間でハンドオーバすることがある。このとき、各基地局の設置場所が異なることから、無線通信品質の悪化は、同一基地局に無線通信接続するエリア内に限定されることが考えられる。
【0090】
したがって、移動ロボット2が悪化位置で無線通信接続する基地局が提供する無線通信接続範囲に限定して、無線通信品質悪化量の補正を行うことは好ましい。このため、無線品質悪化量補正部414は、位置無線品質基地局情報において、悪化位置に関連付けられている基地局IDを補正対象基地局IDとする。無線品質悪化量補正部414は、位置無線品質基地局情報において、補正対象基地局IDに関連付けられている無線通信品質を補正対象無線通信品質とする。
【0091】
無線通信品質悪化量補正処理について説明する。ここでは、無線通信品質の一例としてRSRPを挙げて説明する。
無線品質悪化量補正部414は、悪化位置において、移動ロボット2から報告された現在のRSRPがRc(dBm)であり、位置無線品質基地局情報のRSRPがRp(dBm)である場合、補正対象無線通信品質のRSRPのうち最悪値Rw(dBm)に対して「Rw-(Rp-Rc)」に更新する補正を行う。
【0092】
なお、最悪値Rw(dBm)に対して、単純に、「-(Rp-Rc)」を無線通信品質悪化量の補正量とする補正を行うのではなく、無線周波数帯と、無線環境区分と、無線通信品質の測定地点及び最悪値地点から基地局までの距離とのうちの少なくともいずれかに基づいて、無線通信品質悪化量の補正量を変えてもよい。
【0093】
例えば、5Gの無線周波数帯として用いられている28GHz帯等の直進性が強い高周波数帯と、LTEの無線周波数帯として用いられている800MHZ帯とでは、無線通信品質悪化量の補正量を変えてもよい。
【0094】
例えば、基地局の設置場所が属する無線環境区分として、開放地、郊外、中小都市及び大都市を設定し、補正対象基地局IDが開放地、郊外、中小都市及び大都市のいずれに属するかによって無線通信品質悪化量の補正量を変えてもよい。
【0095】
例えば、位置無線品質基地局情報において、各補正対象無線通信品質に関連付けられた位置(測定地点)から補正対象基地局IDの基地局までの距離と、最悪値の位置(最悪値地点)から基地局までの距離との関係(例えば大小比率等)によって、無線通信品質悪化量の補正量を変えてもよい。
【0096】
また、無線通信品質悪化量の補正量の決定方法の一例として、機械学習を用いてもよい。具体的には、実際に測定地点で無線通信品質が悪化した時に最悪値地点の無線通信品質がどのように変化したかを実測する。そして、当該実測データを使用して機械学習を行うことによって機械学習モデルを生成し、当該機械学習モデルを使用して無線通信品質悪化量の補正量を決定する。
【0097】
また、補正対象基地局IDについて、現在の無線通信品質と過去の無線通信品質との差分が一定以上大きい場合には、無線通信品質悪化量の補正量を、補正対象無線通信品質が無線通信の切断が発生すると判定される閾値(切断判定閾値)よりも悪くなる量にしてもよい。これは、そのような場合には、基地局のチルト角が変更されている等、基地局の通信エリア(カバレッジ)の過去の無線通信品質の実績や傾向を信用することができなくなるような大きな無線環境の変化が起きた可能性があるからである。
【0098】
また、無線品質悪化量補正部414は、無線通信品質悪化量の補正後に補正対象無線通信品質が切断判定閾値よりも悪くなった位置に対して、位置無線品質基地局情報の基地局ID及び無線通信品質を、別の基地局ID及び無線通信品質で置き換えてもよい。これにより、無線品質悪化量補正部414は、当該位置について、移動ロボット2が別の基地局と無線通信接続することにより、無線通信の切断を回避することができるか否かを判定する。
【0099】
なお、無線品質悪化量補正部414は、無線通信品質悪化量の補正後に補正対象無線通信品質が切断判定閾値よりも悪くなった位置に対して、位置無線品質基地局情報の基地局ID及び無線通信品質を、別の基地局ID及び無線通信品質であって切断判定閾値よりも良い無線通信品質及びその基地局IDで置き換えてもよい。
【0100】
以上が無線通信品質悪化量補正処理についての説明である。
【0101】
無線品質悪化量補正部414は、位置無線品質基地局情報の補正対象無線通信品質に対して無線通信品質悪化量補正処理を実行した後に、無線通信品質悪化量の補正後の補正対象無線通信品質を切断判定閾値により判定する。この判定では、無線通信品質悪化量の補正後の補正対象無線通信品質が切断判定閾値よりも悪い場合に、当該補正対象無線通信品質に関連付けられた位置で無線通信の切断が発生すると判定される。一方、無線通信品質悪化量の補正後の補正対象無線通信品質が切断判定閾値よりも良い場合には、当該補正対象無線通信品質に関連付けられた位置で無線通信の切断が発生しないと判定される。
【0102】
別経路探索指示部415は、無線品質悪化量補正部414による無線通信品質悪化量の補正の結果、無線通信の切断が発生すると判定された場合、補正対象基地局IDに関連付けられた各位置の無線品質リンクコストについて、無線品質移動コスト変換部405により無線通信品質悪化量の補正後の補正対象無線通信品質から変換された無線品質リンクコストに更新する。次いで、別経路探索指示部415は、当該更新後の無線品質リンクコストを使用した経路の再探索を経路探索部411に指示する。
【0103】
経路探索部411は、別経路探索指示部415からの経路の再探索の指示に応じて、移動ロボット2の目的地までの経路を再度探索する。この経路の再探索時において、移動ロボット2が配送に出発する前であるときは、配送の出発地から目的地に到達する経路が探索される。一方、経路の再探索時において、移動ロボット2が既に配送のために移動しているときは、移動ロボット2の現在位置から目的地までの経路が探索される。経路の再探索における経路探索方法は上述した方法と同様である。
【0104】
経路配信部412は、経路探索部411が再探索した結果の経路を示す経路情報を移動ロボット2へ送信し、移動ロボット2が保持する経路情報を再探索結果の経路情報に更新するように移動ロボット2に指示する。移動ロボット2は、ナビゲーション装置4の経路配信部412から送信された再探索結果の経路情報を受信し、経路情報格納部206内の経路情報を再探索結果の経路情報に更新する。
【0105】
本実施形態では、ナビゲーション装置4が、移動ロボット2が今後移動する経路において無線通信の切断が発生するか否かをあらかじめ予測し、無線通信の切断が発生すると予測された場合には別経路を探索する。これにより、移動ロボット2が無線通信の切断が発生してから経路を引き返すという状況を未然に防ぐことができる。
【0106】
図6は、本実施形態に係る効果を説明するための説明図である。図6において、C1及びC1aは基地局B1の通信エリアである。通信エリアC1は移動ロボット2の最初の経路探索時における位置無線品質基地局情報に記録されている通信エリアである。一方、通信エリアC1aは、実際に移動ロボット2が目的地Gに向けて移動するタイミングにおける通信エリアである。C2は基地局B2の通信エリアである。通信エリアC2は、移動ロボット2の最初の経路探索時および実際に移動ロボット2が目的地Gに向けて移動するタイミングにおいて同じである。
【0107】
移動ロボット2の最初の経路探索の結果、出発地Sから目的地Gに到達する経路として、経路R1(図中、実線で示す)と経路R2(図中、破線で示す)とから成る経路が決定される。経路R1は、移動ロボット2が基地局B1に無線通信接続する部分である。経路R2は、移動ロボット2が基地局B2に無線通信接続する部分である。
【0108】
移動ロボット2の最初の経路探索時点では、位置無線品質基地局情報において経路R1及び経路R2が基地局B1,B2の通信エリアC1,C2内に存在するので、移動ロボット2が出発地Sから経路R1と経路R2とを経由して目的地Gまで移動しても、無線通信の切断が発生しないと予測されていた。しかし、実際に移動ロボット2が目的地Gに向けて移動するタイミングにおいて、基地局B1の通信エリアが通信エリアC1から通信エリアC1aに縮小されているために、経路R1のうちの部分R1bが通信エリアC1aの範囲外になっている。このため、移動ロボット2が経路R1を移動すると、経路R1の部分R1bで無線通信の切断が発生して移動ロボット2が経路R1を引き返す状況が起こり得る。
【0109】
本実施形態によれば、移動ロボット2が目的地Gに向けて移動するタイミングにおいて、現在の無線通信品質と位置無線品質基地局情報の過去の無線通信品質との比較結果に基づいて、経路R1において無線通信の切断が発生することが予測される。そして、現在の無線通信品質に基づいて、移動ロボット2の目的地Gまでの経路が再探索される。この再探索の結果、目的地Gまでの別経路が探索されることにより、移動ロボット2が経路R1の部分R1bで無線通信の切断が発生してから経路R1を引き返すという状況を未然に防ぐことができる。
【0110】
なお、現在の無線通信品質が過去の無線通信品質よりも悪化する要因としては、建造物等の電波伝搬障害物の設置や基地局の負荷の増大等が挙げられる。
【0111】
図7を参照して本実施形態に係るナビゲーション方法を説明する。図7は、本実施形態に係るナビゲーション方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0112】
(ステップS101) 無線品質新旧比較部413は、運用監視部401が監視している移動ロボット2の現在位置における現在の無線通信品質と、位置・無線品質・基地局ID格納部403に格納されている位置無線品質基地局情報の当該現在位置に対応する位置の無線通信品質とを比較する。
【0113】
(ステップS102) ステップS101の比較の結果、無線通信品質が悪化したか否かを判定する。例えば、ある位置において無線通信品質悪化量が一定期間継続して一定値を超える場合に無線通信品質が悪化したと判定し、そうではない場合には、無線通信が切断される程の深刻な悪化ではないことから、無線通信品質が悪化していないと判定する。なお、無線通信品質の一例としてRSRPである場合、一定期間は例えば30秒間であり、一定値は例えば-20dBである。
【0114】
ステップS102の判定の結果、無線通信品質が悪化した場合にはステップS103に進む。一方、無線通信品質が悪化していない場合には図7の処理を終了する。
【0115】
(ステップS103) 無線品質悪化量補正部414は、位置無線品質基地局情報において、悪化位置に関連付けられている基地局IDを補正対象基地局IDとする。位置無線品質基地局情報において補正対象基地局IDに関連付けられている各位置が補正対象基地局IDに係る無線通信接続範囲を示す情報になる。
【0116】
(ステップS104) 無線品質悪化量補正部414は、位置無線品質基地局情報において、ステップS103で抽出された補正対象基地局IDに係る無線通信接続範囲における補正対象無線通信品質に対して、無線通信品質悪化量補正処理を実行する。
【0117】
(ステップS105) 無線品質悪化量補正部414は、ステップS104の無線通信品質悪化量補正処理の実行の結果、補正対象基地局IDに係る無線通信接続範囲における補正対象無線通信品質の最悪値が切断判定閾値よりも悪いか否かを判定する。この判定の結果、切断判定閾値よりも悪い場合にはステップS106に進む。一方、切断判定閾値よりも悪くない場合には図7の処理を終了する。
【0118】
(ステップS106) 無線品質悪化量補正部414は、補正対象基地局IDに係る無線通信接続範囲における補正対象無線通信品質が切断判定閾値よりも悪い位置に対して、位置無線品質基地局情報の基地局ID及び無線通信品質を、別の基地局ID及び無線通信品質で置き換える。次いで、無線品質悪化量補正部414は、当該位置について、移動ロボット2が当該別の基地局と無線通信接続することにより、無線通信の切断を回避することができるか否かを判定する。この判定の結果、無線通信の切断を回避することができる場合には、図7の処理を終了する。一方、移動ロボット2が当該別の基地局と無線通信接続することができない場合や、移動ロボット2が当該別の基地局と無線通信接続しても無線通信品質が切断判定閾値よりも悪くて無線通信の切断を回避することができない場合には、ステップS107へ進む。
【0119】
(ステップS107) 別経路探索指示部415は、補正対象基地局IDに関連付けられた各位置の無線品質リンクコストについて、無線品質移動コスト変換部405により無線通信品質悪化量の補正後の補正対象無線通信品質から変換された無線品質リンクコストに更新する。次いで、別経路探索指示部415は、当該更新後の無線品質リンクコストを使用した経路の再探索を経路探索部411に指示する。経路探索部411は、別経路探索指示部415からの経路の再探索の指示に応じて、移動ロボット2の目的地までの経路を再度探索する。
【0120】
(ステップS108) 経路配信部412は、移動ロボット2に対して、経路探索部411が再探索した結果の経路を示す経路情報を送信し、移動ロボット2が保持する経路情報を再探索結果の経路情報に更新させる。
【0121】
上述した図7の処理は、位置無線品質基地局情報の無線通信品質が更新される毎に実行されてもよい。これは、移動ロボット2における無線通信の切断の可能性を早期に発見するためである。
【0122】
なお、経路の再探索の結果においても、無線通信が切断される可能性が高いリンクを通過しなければ出発地から目的地に到達することができない場合、当該リンクを、出発地から目的地に到達する経路として選択してもよい。経路探索部411は、探索結果の経路の中に無線通信が切断される可能性が高いリンクが存在する場合、当該リンクを示す無線切断アラート情報を出力する。遠隔で監視する監視者は、当該無線切断アラート情報によって、移動ロボット2とナビゲーション装置4との間の無線通信が切断される可能性が高い箇所を事前に認識することができる。
【0123】
上述した実施形態によれば、移動ロボット2における安定的な無線通信の実現を図るための経路情報を提供することができる。また、移動ロボット2における無線通信が不安定になってナビゲーション装置4との間の通信が途絶える前に、安定的な無線通信が得られる経路に移動ロボット2の経路を変更することができる。これにより、無線通信により遠隔で移動ロボット2を監視する際に安定的な無線通信の実現を図ることができるという効果が得られる。また、移動ロボット2が無線通信の切断が発生してから経路を引き返すという状況を未然に防ぐことができるという効果が得られる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0125】
上述した実施形態では、ナビゲーションシステムを、配送サービスシステムに適用したが、配送サービスシステム以外の他のシステムに適用してもよい。例えば、移動ロボットにより道路を検査する道路検査サービスシステムに、上述した実施形態に係るナビゲーションシステムを適用してもよい。
【0126】
また、上述した実施形態では、移動体として移動ロボットを例に挙げたが、これに限定されない。移動体として、自動運転を行う車両(自動運転車両)や、自律的に飛行する飛行体等を適用してもよい。
【0127】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0128】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0129】
1…利用者端末、2…移動ロボット、3…携帯端末、4…ナビゲーション装置、10…ナビゲーションシステム、401…運用監視部、402…運用情報格納部、403…位置・無線品質・基地局ID格納部、404…地図情報格納部、405…無線品質移動コスト変換部、406…携帯端末位置情報格納部、407…屋外人口密度推計部、408…移動コスト算出部、409…オーダー情報格納部、410…目的地取得部、411…経路探索部、412…経路配信部、413…無線品質新旧比較部、414…無線品質悪化量補正部、415…別経路探索指示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7