(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】浮体構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B63B 73/30 20200101AFI20240214BHJP
B63B 73/10 20200101ALI20240214BHJP
B63B 75/00 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
B63B73/30
B63B73/10
B63B75/00
(21)【出願番号】P 2020185289
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】三谷 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山岡 稔幸
(72)【発明者】
【氏名】古堅 光夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 博貴
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-219189(JP,A)
【文献】特公昭47-033873(JP,B2)
【文献】特開2010-179757(JP,A)
【文献】特開昭53-145295(JP,A)
【文献】特開昭61-135886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 73/30
B63B 73/10
B63B 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物の製造方法であって、
a)所定の幅を有する浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
b)前記浮体構造物の他の一部である第2ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
c)前記第1ブロックを海上輸送して、前記浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させる工程と、
d)前記第1ブロックのバラストタンクに注水することにより前記第1ブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
e)前記第2ブロックを海上輸送して前記大型ドックに入渠させる工程と、
f)前記d)工程よりも後に、前記第2ブロックを下降させ、前記第2ブロックの接合部である第2接合部を前記第1ブロックの接合部である第1接合部に位置合わせしつつ、前記大型ドックの前記渠底に前記第2ブロックを着底させる工程と、
g)前記f)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とを接合して前記浮体構造物を製造する工程と、
h)前記大型ドックに注水して前記浮体構造物を浮上させて出渠させる工程と、
を備え
、
前記d)工程は、前記e)工程よりも前に行われることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項2】
浮体構造物の製造方法であって、
a)所定の幅を有する浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
b)前記浮体構造物の他の一部である第2ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
c)前記第1ブロックを海上輸送して、前記浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させる工程と、
d)前記第1ブロックのバラストタンクに注水することにより前記第1ブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
e)前記第2ブロックを海上輸送して前記大型ドックに入渠させる工程と、
f)前記d)工程よりも後に、前記第2ブロックを下降させ、前記第2ブロックの接合部である第2接合部を前記第1ブロックの接合部である第1接合部に位置合わせしつつ、前記大型ドックの前記渠底に前記第2ブロックを着底させる工程と、
g)前記f)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とを接合して前記浮体構造物を製造する工程と、
h)前記大型ドックに注水して前記浮体構造物を浮上させて出渠させる工程と、
を備え、
i)所定の幅を有する他の浮体構造物の一部である第3ブロックを、前記他の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
j)前記他の浮体構造物の他の一部である第4ブロックを、前記他の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
k)前記第3ブロックを海上輸送して、前記他の浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する前記大型ドックに入渠させる工程と、
l)前記第3ブロックのバラストタンクに注水することにより前記第3ブロックを沈降させて前記大型ドックの前記渠底に着底させる工程と、
m)前記第4ブロックを海上輸送して前記大型ドックに入渠させる工程と、
n)前記l)工程よりも後に、前記第4ブロックを下降させ、前記第4ブロックの接合部である第4接合部を前記第3ブロックの接合部である第3接合部に位置合わせしつつ、前記大型ドックの前記渠底に前記第4ブロックを着底させる工程と、
o)前記n)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第3ブロックと前記第4ブロックとを接合して前記他の浮体構造物を製造する工程と、
p)前記大型ドックに注水して前記他の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程と、
をさらに備え、
前記k)工程および前記m)工程における前記第3ブロックおよび前記第4ブロックの前記大型ドックへの入渠は、前記d)工程よりも後に行われることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記f)工程において、前記大型ドックを排水することにより前記第2ブロックを下降させることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記f)工程において、前記第2ブロックの底部に予め設けられている上嵌合部と、前記大型ドックの前記渠底に配置された前記第2ブロック用の盤木に予め設けられている下嵌合部とが嵌合することにより、前記第2ブロックの前記第2接合部が前記第1ブロックの前記第1接合部に位置合わせされることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記f)工程において、前記第2ブロックの前記第2接合部に予め設けられている第2嵌合部と、前記第1ブロックの前記第1接合部に予め設けられている第1嵌合部とが嵌合することにより、前記第2ブロックの前記第2接合部が前記第1ブロックの前記第1接合部に位置合わせされることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記第1ブロックの前記第1接合部は、前記第2ブロックに接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁を備え、
前記第2ブロックの前記第2接合部は、前記第1ブロックに接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁を備えることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記第1ブロックの前記第1接合部および前記第2ブロックの前記第2接合部は、前記浮体構造物のうち断面形状が長手方向において一定である部位に設けられた前記長手方向に垂直な断面の両側の部位であることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記c)工程において、前記第1ブロックが海面に浮いた状態でタグボートにより曳航されて海上輸送され、
前記e)工程において、前記第2ブロックが海面に浮いた状態でタグボートにより曳航されて海上輸送されることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項9】
浮体構造物の製造方法であって、
a)所定の幅を有する第1の浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記第1の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
b)前記第1の浮体構造物の他の一部である第2ブロックを、前記第1の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
c)所定の幅を有する第2の浮体構造物の一部である第3ブロックを、前記第2の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
d)前記第2の浮体構造物の他の一部である第4ブロックを、前記第2の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
e)前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックを海上輸送して、前記第1の浮体構造物および前記第2の浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
f)前記e)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックと前記第2ブロックとを接合して前記第1の浮体構造物を製造し、前記第3ブロックと前記第4ブロックとを接合して前記第2の浮体構造物を製造する工程と、
g)前記大型ドックに注水して、前記第1の浮体構造物および前記第2の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程と、
を備え、
前記e)工程は、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち、一のブロックが前記大型ドックの渠底に着底した状態で、水面に浮いている他の一のブロックを前記大型ドックの渠底に着底させる工程を備えることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記e)工程は、
e1)前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち1番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記1番目のブロックのバラストタンクに注水することにより前記1番目のブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
e2)前記e1)工程よりも後に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち2番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記2番目のブロックのバラストタンクに注水することにより前記2番目のブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
e3)前記e2)工程よりも後に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち3番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記3番目のブロックのバラストタンクに注水することにより前記3番目のブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
e4)前記e3)工程よりも後に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち4番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記4番目のブロックを下降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
を備えることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項11】
請求項
9または
10に記載の浮体構造物の製造方法であって、
前記g)工程は、
h)前記大型ドックに注水して、前記第1の浮体構造物および前記第2の浮体構造物のうち一方の浮体構造物を浮上させ、他方の浮体構造物が着底している状態で前記一方の浮体構造物を出渠させる工程と、
i)前記h)工程よりも後に、前記他方の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程と、
を備えることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【請求項12】
浮体構造物の製造方法であって、
a)所定の幅を有する浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、
b)前記浮体構造物の他の一部である第2ブロックを前記小型ドックにて製造する工程と、
c)前記第1ブロックの接合部である第1接合部と前記第2ブロックの接合部である第2接合部とが本接合時とは異なる向きにて互いに近接するように、前記第2ブロックを前記第1ブロックに隣接させて配置する工程と、
d)前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とをヒンジ接合治具にて仮接合して仮接合構造体を製造する工程と、
e)前記仮接合構造体を海上輸送して、前記浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させる工程と、
f)前記第2ブロックを前記第1ブロックに対して相対移動することにより、前記第2ブロックの前記第2接合部を前記第1ブロックの前記第1接合部に位置合わせする工程と、
g)前記第1ブロックおよび前記第2ブロックを下降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、
h)前記f)工程および前記g)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とを本接合して前記浮体構造物を製造する工程と、
i)前記大型ドックに注水して前記浮体構造物を浮上させて出渠させる工程と、
を備えることを特徴とする浮体構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浮体式の洋上風力発電設備が実用化されており、発電容量の増大が求められている。例えば、10MW以上の発電容量を有する洋上風力発電設備では、風車を搭載する浮体構造物が非常に大型になる。このため、当該浮体構造物は、通常の舶用ドックでは、超大型原油タンカー (ULCC)や超大型コンテナ船等の貨物船を建造するためのドック(例えば、幅75m以下の舶用ドック)であっても入出渠ができず、海洋構造物建造用の大型ドックで建造する必要がある。ただし、海洋構造物建造用の大型ドックの数は少ないため、上記浮体構造物の量産化に限界がある。
【0003】
このような大型海洋構造物の建造に関して、特許文献1では、大型海洋構造物を分割した複数の分割構造物を比較的小型のドックで建造し、当該複数の分割構造物を組み立て用の大型のドックで組み立てる技術が提案されている。具体的には、それぞれ建造された複数の分割構造物は、組み立て用ドックまで曳航され、組み立て用ドック内にて浮上した状態で仮接合される。その後、組み立て用ドックが排水され、仮接合状態の複数の分割構造物は、着底後に本接合されて大型海洋構造物の組み立てが終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の建造方法では、浮上状態の複数の分割構造物を仮接合する際に、分割構造物を移動させて分割構造物同士の位置合わせが必要になる。しかしながら、水面に浮いている大型の分割構造物は、一旦動き出すと慣性により容易に停止させることができないため、上記位置合わせは難しく、位置合わせに長時間を要する。また、複数の分割構造物がドック内で浮遊しているため、分割構造物同士が衝突する懸念もある。さらに、組み立て用ドックを排水して、仮接合された複数の分割構造物を着底させる際には、一部の分割構造物が先に着底することにより仮接合部に過剰な応力が働かないように、複数の分割構造物の着底のタイミングを揃える必要がある。このため、当該複数の分割構造物の着底を迅速に行うことはできず、着底作業にも長時間を要する。したがって、大型海洋構造物の建造において、大型の組み立て用ドックにおける工事期間が増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、浮体構造物の製造において、大型ドックにおける工事期間を短くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、浮体構造物の製造方法であって、a)所定の幅を有する浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、b)前記浮体構造物の他の一部である第2ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、c)前記第1ブロックを海上輸送して、前記浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させる工程と、d)前記第1ブロックのバラストタンクに注水することにより前記第1ブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、e)前記第2ブロックを海上輸送して前記大型ドックに入渠させる工程と、f)前記d)工程よりも後に、前記第2ブロックを下降させ、前記第2ブロックの接合部である第2接合部を前記第1ブロックの接合部である第1接合部に位置合わせしつつ、前記大型ドックの前記渠底に前記第2ブロックを着底させる工程と、g)前記f)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とを接合して前記浮体構造物を製造する工程と、h)前記大型ドックに注水して前記浮体構造物を浮上させて出渠させる工程とを備え、前記d)工程は、前記e)工程よりも前に行われる。
請求項2に記載の発明は、浮体構造物の製造方法であって、a)所定の幅を有する浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、b)前記浮体構造物の他の一部である第2ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、c)前記第1ブロックを海上輸送して、前記浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させる工程と、d)前記第1ブロックのバラストタンクに注水することにより前記第1ブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、e)前記第2ブロックを海上輸送して前記大型ドックに入渠させる工程と、f)前記d)工程よりも後に、前記第2ブロックを下降させ、前記第2ブロックの接合部である第2接合部を前記第1ブロックの接合部である第1接合部に位置合わせしつつ、前記大型ドックの前記渠底に前記第2ブロックを着底させる工程と、g)前記f)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とを接合して前記浮体構造物を製造する工程と、h)前記大型ドックに注水して前記浮体構造物を浮上させて出渠させる工程とを備え、i)所定の幅を有する他の浮体構造物の一部である第3ブロックを、前記他の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、j)前記他の浮体構造物の他の一部である第4ブロックを、前記他の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、k)前記第3ブロックを海上輸送して、前記他の浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する前記大型ドックに入渠させる工程と、l)前記第3ブロックのバラストタンクに注水することにより前記第3ブロックを沈降させて前記大型ドックの前記渠底に着底させる工程と、m)前記第4ブロックを海上輸送して前記大型ドックに入渠させる工程と、n)前記l)工程よりも後に、前記第4ブロックを下降させ、前記第4ブロックの接合部である第4接合部を前記第3ブロックの接合部である第3接合部に位置合わせしつつ、前記大型ドックの前記渠底に前記第4ブロックを着底させる工程と、o)前記n)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第3ブロックと前記第4ブロックとを接合して前記他の浮体構造物を製造する工程と、p)前記大型ドックに注水して前記他の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程とをさらに備え、前記k)工程および前記m)工程における前記第3ブロックおよび前記第4ブロックの前記大型ドックへの入渠は、前記d)工程よりも後に行われる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の浮体構造物の製造方法であって、前記f)工程において、前記大型ドックを排水することにより前記第2ブロックを下降させる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、前記f)工程において、前記第2ブロックの底部に予め設けられている上嵌合部と、前記大型ドックの前記渠底に配置された前記第2ブロック用の盤木に予め設けられている下嵌合部とが嵌合することにより、前記第2ブロックの前記第2接合部が前記第1ブロックの前記第1接合部に位置合わせされる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、前記f)工程において、前記第2ブロックの前記第2接合部に予め設けられている第2嵌合部と、前記第1ブロックの前記第1接合部に予め設けられている第1嵌合部とが嵌合することにより、前記第2ブロックの前記第2接合部が前記第1ブロックの前記第1接合部に位置合わせされる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、前記第1ブロックの前記第1接合部は、前記第2ブロックに接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁を備え、前記第2ブロックの前記第2接合部は、前記第1ブロックに接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁を備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、前記第1ブロックの前記第1接合部および前記第2ブロックの前記第2接合部は、前記浮体構造物のうち断面形状が長手方向において一定である部位に設けられた前記長手方向に垂直な断面の両側の部位である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の浮体構造物の製造方法であって、前記c)工程において、前記第1ブロックが海面に浮いた状態でタグボートにより曳航されて海上輸送され、前記e)工程において、前記第2ブロックが海面に浮いた状態でタグボートにより曳航されて海上輸送される。
【0016】
請求項9に記載の発明は、浮体構造物の製造方法であって、a)所定の幅を有する第1の浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記第1の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、b)前記第1の浮体構造物の他の一部である第2ブロックを、前記第1の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、c)所定の幅を有する第2の浮体構造物の一部である第3ブロックを、前記第2の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、d)前記第2の浮体構造物の他の一部である第4ブロックを、前記第2の浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、e)前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックを海上輸送して、前記第1の浮体構造物および前記第2の浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、f)前記e)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックと前記第2ブロックとを接合して前記第1の浮体構造物を製造し、前記第3ブロックと前記第4ブロックとを接合して前記第2の浮体構造物を製造する工程と、g)前記大型ドックに注水して、前記第1の浮体構造物および前記第2の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程とを備え、前記e)工程は、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち、一のブロックが前記大型ドックの渠底に着底した状態で、水面に浮いている他の一のブロックを前記大型ドックの渠底に着底させる工程を備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の浮体構造物の製造方法であって、前記e)工程は、e1)前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち1番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記1番目のブロックのバラストタンクに注水することにより前記1番目のブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、e2)前記e1)工程よりも後に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち2番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記2番目のブロックのバラストタンクに注水することにより前記2番目のブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、e3)前記e2)工程よりも後に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち3番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記3番目のブロックのバラストタンクに注水することにより前記3番目のブロックを沈降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、e4)前記e3)工程よりも後に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックのうち4番目のブロックを前記大型ドックに入渠させ、前記4番目のブロックを下降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程とを備える。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載の浮体構造物の製造方法であって、前記g)工程は、h)前記大型ドックに注水して、前記第1の浮体構造物および前記第2の浮体構造物のうち一方の浮体構造物を浮上させ、他方の浮体構造物が着底している状態で前記一方の浮体構造物を出渠させる工程と、i)前記h)工程よりも後に、前記他方の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程とを備える。
【0019】
請求項12に記載の発明は、浮体構造物の製造方法であって、a)所定の幅を有する浮体構造物の一部である第1ブロックを、前記浮体構造物の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程と、b)前記浮体構造物の他の一部である第2ブロックを前記小型ドックにて製造する工程と、c)前記第1ブロックの接合部である第1接合部と前記第2ブロックの接合部である第2接合部とが本接合時とは異なる向きにて互いに近接するように、前記第2ブロックを前記第1ブロックに隣接させて配置する工程と、d)前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とをヒンジ接合治具にて仮接合して仮接合構造体を製造する工程と、e)前記仮接合構造体を海上輸送して、前記浮体構造物の入出渠が可能な幅を有する大型ドックに入渠させる工程と、f)前記第2ブロックを前記第1ブロックに対して相対移動することにより、前記第2ブロックの前記第2接合部を前記第1ブロックの前記第1接合部に位置合わせする工程と、g)前記第1ブロックおよび前記第2ブロックを下降させて前記大型ドックの渠底に着底させる工程と、h)前記f)工程および前記g)工程よりも後に、排水状態の前記大型ドックにおいて前記第1ブロックの前記第1接合部と前記第2ブロックの前記第2接合部とを本接合して前記浮体構造物を製造する工程と、i)前記大型ドックに注水して前記浮体構造物を浮上させて出渠させる工程とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、大型ドックにおける工事期間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施の形態に係る浮体構造物の斜視図である。
【
図2】第1ブロックおよび第2ブロックの平面図である。
【
図5】小型ドック内の第1ブロックおよび第2ブロックを示す平面図である。
【
図6】大型ドック内の第1ブロックを示す平面図である。
【
図8】第1ブロックおよび盤木を示す断面図である。
【
図9】大型ドック内の第1ブロックおよび第2ブロックを示す平面図である。
【
図10】第1ブロックおよび第2ブロックを示す側面図である。
【
図11】第1ブロックおよび第2ブロックを示す側面図である。
【
図12】第2ブロックおよび盤木を示す断面図である。
【
図13】第1接合部および第2接合部を示す斜視図である。
【
図14】第1接合部および第2接合部を示す側面図である。
【
図16A】浮体構造物の製造の流れを示す図である。
【
図16B】浮体構造物の製造の流れを示す図である。
【
図17】大型ドック内の第1ブロック、第2ブロックおよび第3ブロックを示す平面図である。
【
図18】大型ドック内の第1ブロック、第2ブロック、第3ブロックおよび第4ブロックを示す平面図である。
【
図19】大型ドック内の2つの浮体構造物を示す平面図である。
【
図20】第2の実施の形態に係る浮体構造物の製造の流れを示す図である。
【
図21】小型ドック内の第1ブロックおよび第2ブロックを示す平面図である。
【
図22】小型ドック内の第1ブロックおよび第2ブロックを示す平面図である。
【
図23】第1接合部および第2接合部を拡大して示す平面図である。
【
図24】大型ドック内の仮接合構造体を示す平面図である。
【
図25】大型ドック内の仮接合構造体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る浮体構造物の製造方法について説明する。以下では、
図1に斜視図にて示す浮体構造物1を例として、その製造方法を説明する。浮体構造物1は、浮体式の洋上風力発電システムにおいて、海面に浮いた状態で発電用風車を下方から支持する大型浮体である。
【0023】
図1に例示する浮体構造物1は、ロワーハル型の半潜水型(セミサブ型)の浮体である。浮体構造物1は、コラム11と、ロワーハル12とを備える。コラム11は、略上下方向に略直線状に延びて海面を貫通する略柱状の部材である。換言すれば、浮体構造物1の喫水は、コラム11の上端と下端との間に位置する。
図1に示す例では、コラム11は、略円柱状の部材である。コラム11の形状は、四角柱状等、様々に変更されてよい。上述の発電用風車(図示省略)の支柱(タワーとも呼ばれる。)は、コラム11の上端部に立設される。
【0024】
ロワーハル12は、コラム11の下部に接続される部材である。ロワーハル12は、その略全体が海中に配置され、浮力によりコラム11の重量を支持する。ロワーハル12の内部には、図示省略のバラストタンクが設けられており、当該バラストタンク内部の水量が調節されることにより、海中におけるロワーハル12の上下方向の位置(すなわち、コラム11の海面からの突出高さ)が調節される。
【0025】
図1に示す例では、ロワーハル12は、コラム11の下端部から略水平に放射状に延びる3つのハル部121を備える。3つのハル部121は、略同形状であり、コラム11の中心軸を中心とする周方向において略等角度間隔に配置される。各ハル部121は、例えば、略直線状に延びる略柱状の部位である。
図1に示す例では、各ハル部121は、略四角柱状の部位である。各ハル部121の形状は、円柱状等、様々に変更されてよい。
【0026】
ハル部121の長手方向(すなわち、コラム11の中心軸を中心とする径方向)に垂直な断面の形状は、長手方向の両端部を除いて略同じである。以下の説明では、ハル部121の長手方向に垂直な断面を、「縦断面」とも呼ぶ。また、ハル部121の両端部のうち、コラム11から最も離れている端部を「先端部」とも呼び、コラム11に最も近い端部を「根元部」とも呼ぶ。ハル部121の先端部では、ハル部121の幅方向(すなわち、長手方向および上下方向に垂直な方向)の幅が、コラム11から離れるに従って漸次減少し、ハル部121の縦断面の面積も漸次減少する。ハル部121の根元部では、ハル部121の幅方向の幅が、上記先端部から離れるに従って漸次増大し、ハル部121の縦断面の面積も漸次増大する。
【0027】
図1に示す例では、浮体構造物1の上下方向の高さ(以下、単に「高さ」ともいう。)は、約33mである。また、ロワーハル12の高さは約10mであり、コラム11の高さは約23mである。コラム11の直径は、約11mである。コラム11上に取り付けられる発電用風車は、発電容量が10MW級の風車である。ロワーハル12のハル部121の幅方向の幅は約10mであり、長手方向の長さ(すなわち、ハル部121の先端からコラム11の外側面までの最短距離)は約45mである。以下の説明では、
図1中においてコラム11から右側に延びる1つのハル部121の長手方向および幅方向を、浮体構造物1の長手方向および幅方向と呼ぶ。浮体構造物1の長手方向の長さは約74mであり、幅方向の幅(すなわち、コラム11の左側に位置する2つのハル部121の先端間の最短距離)は約85mである。浮体構造物1の各部位の長さ、幅および高さは、様々に変更されてよい。
【0028】
浮体構造物1が製造される際には、大まかには、浮体構造物1の一部となる予定の複数のブロックが小型ドックにて製造され、当該複数のブロックが海上輸送されて大型ドックに搬入される。そして、大型ドックにおいて、当該複数のブロックが接合されて(すなわち、組み立てられて)浮体構造物1が製造される。後述する製造方法の具体例では、
図2(平面図)に示すように、浮体構造物1は、第1ブロック21および第2ブロック22に分割された状態で製造される。そして、
図3(平面図)に示すように、第1ブロック21と第2ブロック22とが接合されることにより浮体構造物1となる。なお、
図2では、
図2中の左側のブロックを第1ブロック21と呼び、右側のブロックを第2ブロック22と呼んでいるが、当該呼称は説明を容易にするための便宜的なものであり、
図2中の右側のブロックが第1ブロック21と呼ばれ、左側のブロックが第2ブロック22と呼ばれてもよい。後述する浮体構造物1aの第3ブロック23および第4ブロック24についても同様である。
【0029】
上述の小型ドックとは、原油タンカー やコンテナ船等の貨物船を建造するためのドックであり、例えば、75m以下の幅(すなわち、ゲート幅)を有する通常の舶用ドックである。また、大型ドックとは、大型海洋構造物等を建造可能なドックであり、例えば、75mよりも大きい幅(すなわち、ゲート幅)を有する乾ドックまたはフローティングドックである。なお、大型ドックには船台は含まれない。小型ドックは、乾ドック、フローティングドック、船台等を含む。上述のように、
図1に例示する浮体構造物1の幅は約85mであるため、浮体構造物1の小型ドックへの入渠および小型ドックからの出渠は不能である。なお、浮体構造物1の長さは約74mであるが、ドック側壁と浮体構造物1との間のマージンを考慮すると、仮に浮体構造物1の向きを変更したとしても、小型ドックへの浮体構造物1の入出渠は不能である。
【0030】
次に、浮体構造物1の製造方法の流れについて具体的に説明する。
図4は、浮体構造物1の製造の流れを示す図である。
図5~
図14は、製造途上の浮体構造物1、および、浮体構造物1の製造に係る設備を示す図である。
【0031】
浮体構造物1が製造される際には、まず、
図5(平面図)に示すように、浮体構造物1の一部である第1ブロック21が、ゲート711が閉鎖されて排水された状態(すなわち、ドライな状態であり、以下、「排水状態」とも呼ぶ。)の小型ドック71において製造される(ステップS11)。また、浮体構造物1の他の一部である第2ブロック22も、排水状態の小型ドック71において製造される(ステップS12)。
図5では、図の理解を容易にするために、小型ドック71のゲート711の外側に存在する海水に平行斜線を付す。以下の同様の図においても、海水に平行斜線を付す。上述のように、浮体構造物1は所定の幅を有しており、小型ドック71は、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する。小型ドック71の幅は、例えば75mである。
【0032】
図2に示す状態では、第2ブロック22は、浮体構造物1のうち、コラム11の右側に位置する1つのハル部121の左側の一部を除く部位である。第2ブロック22の長手方向(すなわち、
図2中の左右方向)の長さは、約39mである。第1ブロック21は、浮体構造物1から第2ブロック22を除いた残りの部位である。換言すれば、第1ブロック21は、コラム11と、ロワーハル12のうちコラム11の左側に位置する2つのハル部121、コラム11の下方に位置する部位、および、コラム11の右側に位置するハル部121の一部と、を備える。第1ブロック21の幅方向(すなわち、
図2中の上下方向)の幅は、上述のように、約85mである。第1ブロック21の長手方向(すなわち、
図2中の左右方向)の長さは、約35mである。
【0033】
第2ブロック22のうち、ハル部121の先端部とは反対側の端部(すなわち、
図2中の左端部)は、第1ブロック21と接合される予定の接合部(以下、「第2接合部221」とも呼ぶ。)である。第1ブロック21のうち、コラム11の右側に位置するハル部121の右端部は、第2ブロック22と接合される予定の接合部(以下、「第1接合部211」とも呼ぶ。)である。
【0034】
第1接合部211および第2接合部221は、コラム11の右側のハル部121のうち、縦断面の形状が長手方向において一定である部位(すなわち、縦断面の輪郭が長手方向のいずれの位置においても略同じである部位であり、
図1中において符号13を付して示す。)に設けられた1つの縦断面の両側の部位である。したがって、第1接合部211の長手方向の各位置における縦断面の形状、および、第2接合部221の長手方向の各位置における縦断面の形状は略同じである。第1ブロック21の第1接合部211には、第2ブロック22に接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁212が設けられる。第2ブロック22の第2接合部221には、第1ブロック21に接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁222が設けられる。
【0035】
第2ブロック22の内部には、水密隔壁により仕切られたバラストタンク223が設けられる。
図2に示す例では、第2ブロック22は、第2接合部221からハル部121の先端部に向かって並ぶ3つのバラストタンク223を備える。第2ブロック22に設けられるバラストタンク223の数および配置は、様々に変更されてよい。バラストタンク223の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0036】
第1ブロック21のうち、ロワーハル12になる予定の部位の内部には、水密隔壁により仕切られたバラストタンク213が設けられる。
図2に示す例では、第1ブロック21のうち、コラム11の左側に位置する2つのハル部121において、各ハル部121の延びる方向に沿って並ぶ3つのバラストタンク213がそれぞれ設けられる。第1ブロック21に設けられるバラストタンク213の数および配置は、様々に変更されてよい。第1ブロック21の上記2つのハル部121にそれぞれ設けられるバラストタンク213の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0037】
図5に示す例では、第1ブロック21が、
図2に示す向きから水平に約90°回転した状態で小型ドック71内に配置されている。浮体構造物1の製造期間の短縮という観点からは、ステップS11およびステップS12は並行して行われることが好ましい。なお、ステップS11およびステップS12は、いずれか一方が先に行われ、他方が後に行われてもよい。また、第2ブロック22の製造は、第1ブロック21の製造が行われる小型ドック71とは別の小型ドックで行われてもよい。
【0038】
第1ブロック21および第2ブロック22の製造が終了すると、小型ドック71に対する注水が行われ、第1ブロック21および第2ブロック22が浮上する。そして、第1ブロック21および第2ブロック22が、開放されたゲート711を通過して小型ドック71から順次出渠する。第1ブロック21および第2ブロック22の小型ドック71からの出渠は、例えば、タグボートにより行われる。第1ブロック21および第2ブロック22の小型ドック71からの出渠は、他の様々な方法(例えば、第1ブロック21および第2ブロック22に仮設したウォータージェット推進ユニット)により行われてもよい。
【0039】
図5に示す例では、例えば、第2ブロック22が出渠した後、第1ブロック21が出渠する。この場合、小型ドック71への注水時に、第1ブロック21のバラストタンク213(
図2参照)内の水量、および、第2ブロック22のバラストタンク223(
図2参照)内の水量が調節されることにより、第2ブロック22のみが浮上し、第1ブロック21は着底状態(「着床状態」ともいう。)で維持されることが好ましい。これにより、浮上した第1ブロック21および第2ブロック22が水面上で揺動して互いに接触することを防止することができる。また、揺動した第1ブロック21が小型ドック71の側壁に接触することも防止することができる。そして、第2ブロック22が出渠すると、第1ブロック21のバラストタンク213内の水量を減少させることにより、第1ブロック21を浮上させる。第1ブロック21は、第2ブロック22の後から出渠する。なお、上述の「着底状態」とは、第1ブロック21が小型ドック71の渠底、または、当該渠底に配置された盤木等の支持部材上に載置され、第1ブロック21の重量の少なくとも一部が、当該渠底または支持部材により直接的に支持されている状態を意味する。他のブロックについても同様であり、他のドックにおいても同様である。
【0040】
小型ドック71から出渠した第1ブロック21は、海上輸送され、
図6(平面図)に示すように、ゲート721が開放された貯水状態の大型ドック72に入渠する(ステップS13)。上述のように、大型ドック72は、浮体構造物1の入出渠が可能な幅を有する。大型ドック72の幅は、例えば180mである。第1ブロック21の海上輸送は、例えば、第1ブロック21を海面上に浮かせた状態でタグボートにより曳航することにより行われる。第1ブロック21の海上輸送時には、バラストタンク213(
図2参照)内の水量が調節されることにより、第1ブロック21の姿勢が曳航に適した姿勢に調節される。第1ブロック21の海上輸送は、他の様々な方法により行われてもよい。例えば、第1ブロック21は、自航可能な台船に積載されて海上輸送されてもよく、非自航台船に積載された状態でタグボートにより曳航されてもよい。第1ブロック21の大型ドック72への入渠は、例えば、タグボートにより行われる。第1ブロック21の大型ドック72への入渠は、他の様々な方法(例えば、上述のウォータージェット推進ユニット、または、大型ドック72に設置されているウインチ)により行われてもよい。
【0041】
第1ブロック21が大型ドック72に入渠すると、第1ブロック21が大型ドック72内のおよその所定位置に位置する状態で、第1ブロック21のバラストタンク213に注水が行われる。これにより、
図7(側面図)に示すように、第1ブロック21が沈降して大型ドック72の渠底726に着底する(ステップS14)。具体的には、第1ブロック21は、大型ドック72の渠底726において予め所定の位置に配置されている第1ブロック21用の複数の盤木(架台とも呼ばれる。)722上に載置される。盤木722は、例えば、鋼製、コンクリート製または木製である。
【0042】
なお、上述の第1ブロック21の「沈降」とは、大型ドック72の水面の上下方向における位置がほぼ一定の状態で、第1ブロック21の上下方向の位置が下方へと移動して(すなわち、第1ブロック21が下降して)水中に沈んでいく動作を意味し、第1ブロック21の「下降」の一の形態である。他のブロックについても同様である。
【0043】
図8は、1つの盤木722の上部を拡大して示す断面図である。
図8では、当該盤木722上に載置される第1ブロック21の底部の一部も併せて示す。盤木722の上部には、下嵌合部723が予め設けられている。下嵌合部723は、例えば、盤木722の上面から下方へと凹む凹部である。当該凹部は、例えば、盤木722の上面を横断する溝部であってもよく、盤木722の上面の外縁から離間して設けられた穴部または貫通孔であってもよい。第1ブロック21の底部には、上嵌合部215が予め設けられている。上嵌合部215は、例えば、第1ブロック21の底面から下方へと突出する凸部である。当該凸部の形状は、盤木722の下嵌合部723の形状に合わせて適宜決定される。例えば、上嵌合部215は、平面視において略正方形状の凸部である。
【0044】
第1ブロック21が着底する際には、第1ブロック21の上嵌合部215と盤木722の下嵌合部723とが嵌合することにより、大型ドック72の渠底726における第1ブロック21の位置(すなわち、第1ブロック21の着底位置)が精度良く決定される。大型ドック72では、第1ブロック21用の複数の盤木722のうち、1つ以上の盤木722に下嵌合部723が設けられる。また、第1ブロック21の底部には、当該1つ以上の盤木722の下嵌合部723に対応する位置に、1つ以上の上嵌合部215が設けられる。
【0045】
なお、上嵌合部215および下嵌合部723の形状、構造および配置は様々に変更されてよい。例えば、上嵌合部215が凹部であり、下嵌合部723が当該凹部に嵌合する凸部であってもよい。あるいは、上嵌合部215が凸部および凹部を有し、下嵌合部723が当該凸部および凹部にそれぞれ嵌合する凹部および凸部を有していてもよい。また、下嵌合部723は、必ずしも盤木722の上面に設けられる必要はなく、例えば、盤木722の上部から側方へと略水平に突出する略平板状の板材、および、当該板材を上下方向に貫通する貫通孔であってもよい。
【0046】
一方、小型ドック71から出渠した第2ブロック22も、第1ブロック21と同様に海上輸送され、
図9(平面図)に示すように、貯水状態の大型ドック72に入渠する(ステップS15)。
図9では、着底状態であることを示すために、第1ブロック21に平行斜線を付す。以下の同様の図においても、着底状態のブロックに平行斜線を付す。なお、本実施の形態では、着底状態の第1ブロック21のハル部121の上面は、
図7に示すように、水面よりも上側に位置するが、水面よりも下側に位置していてもよい。
【0047】
第2ブロック22の海上輸送は、第1ブロック21と同様に、例えば、第2ブロック22を海面上に浮かせた状態でタグボートにより曳航することにより行われる。第2ブロック22の海上輸送時には、バラストタンク223(
図2参照)内の水量が調節されることにより、第2ブロック22の姿勢が曳航に適した姿勢に調節される。第2ブロック22の海上輸送は、他の様々な方法により行われてもよい。例えば、第2ブロック22は、自航可能な台船に積載されて海上輸送されてもよく、非自航台船に積載された状態でタグボートにより曳航されてもよい。
【0048】
第2ブロック22の大型ドック72への入渠は、例えば、タグボートにより行われる。第2ブロック22の大型ドック72への入渠は、第1ブロック21の着底前であっても、着底後であってもよい。好ましくは、第2ブロック22の大型ドック72への入渠は、第1ブロック21が着底した状態で行われる。換言すれば、第1ブロック21の着底(ステップS14)は、第2ブロック22の入渠(ステップS15)よりも前に行われることが好ましい。これにより、第2ブロック22の入渠時における波等によって第1ブロック21が水面上で揺動して第2ブロック22や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。第2ブロック22の大型ドック72への入渠は、他の様々な方法(例えば、上述のウォータージェット推進ユニット、または、大型ドック72に設置されているウインチ)により行われてもよい。
【0049】
図10は、第1ブロック21および第2ブロック22を示す側面図である。
図9および
図10に示すように、大型ドック72内では、第2ブロック22は、第1ブロック21に隣接するおよその所定位置に配置される。第2ブロック22の第2接合部221は、平面視において、第1ブロック21の第1接合部211と、第2ブロック22の長手方向にて対向する。上述のように、第1ブロック21は着底しているため、第1ブロック21の底面は第2ブロック22の底面よりも下側に位置する。第2ブロック22の底面の下方には、第2ブロック22用の複数の盤木724が、大型ドック72の渠底726において予め所定の位置に配置されている。盤木724は、例えば、鋼製、コンクリート製または木製である。
図10では、第2ブロック22用の盤木724の数を、実際よりも少なく描いている。第1ブロック21用の盤木722についても同様である。
【0050】
続いて、大型ドック72のゲート721が閉鎖され、大型ドック72の排水が開始される。これにより、水面に浮いている第2ブロック22が、水面の低下と共に下降し、
図11(側面図)に示すように、大型ドック72の渠底726に着底する(ステップS16)。具体的には、第2ブロック22は、上述の第2ブロック22用の複数の盤木724上に載置される。なお、ステップS16における第2ブロック22の下降は、必ずしも大型ドック72の排水により行われる必要はない。例えば、第1ブロック21の場合(ステップS14)と同様に、第2ブロック22のバラストタンク223(
図2参照)に注水が行われることにより、第2ブロック22が沈降して大型ドック72の渠底726に着底してもよい。あるいは、バラストタンク223への注水および大型ドック72の排水が並行して行われることにより、第2ブロック22が下降してもよい。いずれの場合も、ステップS16は、第2ブロック22の第2接合部221を第1ブロック21の第1接合部211に位置合わせしつつ行われる。
【0051】
図12は、1つの盤木724の上部を拡大して示す断面図である。
図12では、当該盤木724上に載置される第2ブロック22の底部の一部も併せて示す。盤木724の上部には、下嵌合部725が予め設けられている。下嵌合部725は、例えば、盤木724の上面から下方へと凹む凹部である。当該凹部は、例えば、盤木724の上面を横断する溝部であってもよく、盤木724の上面の外縁から離間して設けられた穴部または貫通孔であってもよい。第2ブロック22の底部には、上嵌合部225が予め設けられている。上嵌合部225は、例えば、第2ブロック22の底面から下方へと突出する凸部である。当該凸部の形状は、盤木724の下嵌合部725の形状に合わせて適宜決定される。例えば、上嵌合部225は、平面視において略正方形状の凸部である。大型ドック72では、第2ブロック22用の複数の盤木724のうち、1つ以上の盤木724に下嵌合部725が設けられる。また、第2ブロック22の底部には、当該1つ以上の盤木724の下嵌合部725に対応する位置に、1つ以上の上嵌合部225が設けられる。
【0052】
なお、上嵌合部225および下嵌合部725の形状、構造および配置は様々に変更されてよい。例えば、上嵌合部225が凹部であり、下嵌合部725が当該凹部に嵌合する凸部であってもよい。あるいは、上嵌合部225が凸部および凹部を有し、下嵌合部725が当該凸部および凹部にそれぞれ嵌合する凹部および凸部を有していてもよい。また、下嵌合部725は、必ずしも盤木724の上面に設けられる必要はなく、例えば、盤木724の上部から側方へと略水平に突出する略平板状の板材、および、当該板材を上下方向に貫通する貫通孔であってもよい。
【0053】
第2ブロック22が着底する際には、第2ブロック22の上嵌合部225と盤木724の下嵌合部725とが嵌合することにより、大型ドック72の渠底726における第2ブロック22の位置(すなわち、第2ブロック22の着底位置)が精度良く決定される。大型ドック72の渠底726において、
図11に示す第2ブロック22用の盤木724は、第1ブロック21用の盤木724に対して精度良く位置決めされて予め配置されている。このため、第2ブロック22が着底することにより、第1ブロック21に対する第2ブロック22の位置決め(すなわち、相対位置の決定)が精度良く行われ、第2接合部221が第1接合部211に対して精度良く位置合わせされる。
【0054】
ステップS16では、第2接合部221の第1接合部211に対する位置合わせは、上記と異なる方法により行われてもよい。例えば、第1ブロック21の第1接合部211に設けられた第1嵌合部と、第2ブロック22の第2接合部221に設けられた第2嵌合部とが嵌合することにより、第2接合部221の第1接合部211に対する位置合わせが行われてもよい。また、第2接合部221の第1接合部211に対する位置合わせは、第1嵌合部と第2嵌合部との嵌合、および、上述の上嵌合部225と下嵌合部725との嵌合の双方により行われてもよい。
【0055】
図13および
図14は、第1嵌合部および第2嵌合部を用いた第1接合部211と第2接合部221との位置合わせの例を示す図である。
図13は、第1接合部211および第2接合部221を拡大して示す斜視図である。
図13では、ステップS16における下降途中の(すなわち、着底前の)第2ブロック22を描いている。なお、第1ブロック21は既に着底している。第1接合部211には、第1嵌合部214が予め設けられており、第2接合部221には、第2嵌合部224が予め設けられている。
図13に示す例では、第1嵌合部214は、第1接合部211の上面から上方へと突出する複数(例えば、2つ)の凸部である。当該凸部は、例えば、上下方向に延びる略円柱状である。第2嵌合部224は、第2接合部221の上面から第1接合部211に向かって側方へと略水平に突出する略平板状の板材である。当該板材には、第1嵌合部214の2つの凸部が嵌合する2つの貫通孔が設けられる。ステップS16では、
図13に示す位置よりも第2ブロック22がさらに下降して、第1嵌合部214の2つの凸部が第2嵌合部224の2つの貫通孔に下側から挿入されることにより、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが容易に、かつ、精度良く行われる。
【0056】
図14は、第1接合部211および第2接合部221を拡大して示す側面図である。
図14では、ステップS16における着底直前の第2ブロック22を描いている。なお、第1ブロック21は既に着底している。第1接合部211には、第1嵌合部214aが予め設けられており、第2接合部221には、第2嵌合部224aが予め設けられている。
図14に示す例では、第1嵌合部214aは、第1接合部211の上面において紙面に垂直な方向(すなわち、第2ブロック22の幅方向)に延びる略円柱状の部材である。第2嵌合部224aは、第2接合部221の上面から第1接合部211に向かって側方へと略水平に突出する略平板状の板材である。当該板材には、紙面に垂直な方向に延びる溝部が設けられる。当該溝部は、当該板材の紙面に垂直な断面において、板材の下面から上方へと略円弧状に凹む。
図14に示すように、第2嵌合部224aの当該溝部は、第1嵌合部214aの略円柱状の部材の上部に嵌合する。これにより、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが容易に、かつ、精度良く行われる。
【0057】
なお、
図14に例示する第1嵌合部214aおよび第2嵌合部224aが設けられる場合、ステップS16において、着底直前の第2ブロック22は、図中において二点鎖線にて示すように、第2接合部221が第2ブロック22の先端部よりも少し沈むように僅かに傾いていてもよい。この場合であっても、第1嵌合部214aに嵌合した第2嵌合部224aを支点として、第2ブロック22が僅かに旋回しつつ着底することにより、当該傾きがなくなり、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが容易に、かつ、精度良く行われる。
図14に示す例では、第1嵌合部214aは、第1接合部211の上面において紙面に垂直な方向に配列された略球状の複数の部材であってもよい。この場合も、上記と同様に、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが容易に、かつ、精度良く行われる。
【0058】
第2ブロック22が着底し、大型ドック72の排水が完了すると、排水状態の大型ドック72において、第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とが接合され、
図1に示す浮体構造物1が製造される(ステップS17)。第1接合部211と第2接合部221との接合は、例えば、溶接により行われる。第1接合部211と第2接合部221との接合は、他の様々な方法(例えば、ボルト締めによる接合)により行われてもよい。
【0059】
浮体構造物1が製造されると、大型ドック72への注水が開始される。これにより、浮体構造物1が、水面の上昇と共に浮上し、大型ドック72の渠底726から上方へと離間する。浮上した浮体構造物1は、開放されたゲート721を通過して大型ドック72から出渠する(ステップS18)。浮体構造物1の大型ドック72からの出渠は、例えば、タグボートにより行われる。浮体構造物1の大型ドック72からの出渠は、他の様々な方法(例えば、上述のウォータージェット推進ユニット)により行われてもよい。
【0060】
小型ドック71および大型ドック72において、上述のステップS11~S18が繰り返し行われることにより、複数の浮体構造物1の迅速な量産が実現される。本実施の形態に係る製造方法では、小型ドック71における第1ブロック21および第2ブロック22の製造期間、および、第1ブロック21および第2ブロック22の海上輸送期間の合計は、大型ドック72における工事期間よりも長くなる可能性が高い。したがって、複数の小型ドック71において複数組の第1ブロック21および第2ブロック22が並行して製造され、大型ドック72における複数の浮体構造物1の製造が、連続して行われることが好ましい。
【0061】
なお、発電用風車等の他の構造物の浮体構造物1に対する取り付けや艤装工事等、水面よりも上側における工事は、大型ドック72から出渠した浮体構造物1を他の場所(例えば、工場の岸壁)へと搬送した後に行われることが好ましい。これにより、1つの浮体構造物1の製造に大型ドック72が使用される期間を短くすることができる。
【0062】
以上に説明したように、浮体構造物1の製造方法は、所定の幅を有する浮体構造物1の一部である第1ブロック21を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS11)と、浮体構造物1の他の一部である第2ブロック22を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS12)と、第1ブロック21を海上輸送して、浮体構造物1の入出渠が可能な幅を有する大型ドック72に入渠させる工程(ステップS13)と、第1ブロック21のバラストタンク213に注水することにより第1ブロック21を沈降させて大型ドック72の渠底726に着底させる工程(ステップS14)と、第2ブロック22を海上輸送して大型ドック72に入渠させる工程(ステップS15)と、ステップS14よりも後に、第2ブロック22を下降させ、第2ブロック22の接合部である第2接合部221を第1ブロック21の接合部である第1接合部211に位置合わせしつつ、大型ドック72の渠底726に第2ブロック22を着底させる工程(ステップS16)と、ステップS16よりも後に、排水状態の大型ドック72において第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とを接合して浮体構造物1を製造する工程(ステップS17)と、大型ドック72に注水して浮体構造物1を浮上させて出渠させる工程(ステップS18)と、を備える。
【0063】
このように、浮体構造物1の一部である第1ブロック21および第2ブロック22を、小型ドックにて製造して大型ドック72にて接合することにより、大型ドック72において浮体構造物1を最初から製造する場合と比べて、大型ドック72における工事期間を短縮することができる。その結果、複数の浮体構造物1を連続的に製造する際の総工期を短縮し、浮体構造物1の量産を迅速に行うことができる。また、大型ドック72において、第2ブロック22を第1ブロック21に対して位置合わせしつつ着底させることにより、第2ブロック22を着底させた後にドーリー等により第2ブロック22を大型ドック72内にて搬送して第1ブロック21と位置合わせする場合に比べて、大型ドック72における工事期間をさらに短くすることができる。その結果、浮体構造物1の量産をさらに迅速に行うことができる。
【0064】
上述のように、ステップS14(すなわち、第1ブロック21の着底)は、ステップS15(すなわち、第2ブロック22の入渠)よりも前に行われることが好ましい。これにより、第2ブロック22の入渠時における波等により第1ブロック21が水面上で揺動して第2ブロック22や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。
【0065】
上述のように、ステップS16では、大型ドック72を排水することにより第2ブロック22を下降させることが好ましい。これにより、第2ブロック22のバラストタンク223に注水を行うことにより第2ブロック22を沈降させて着底させる場合に比べて、第2ブロック22の着底から大型ドック72が排水状態になるまで(すなわち、第1ブロック21および第2ブロック22の接合が可能な状態となるまで)の時間を短縮することができる。その結果、大型ドック72における工事期間をさらに短くすることができる。
【0066】
上述のように、ステップS16では、第2ブロック22の底部に予め設けられている上嵌合部225と、大型ドック72の渠底726に配置された第2ブロック22用の盤木724に予め設けられている下嵌合部725とが嵌合することにより、第2ブロック22の第2接合部221が第1ブロック21の第1接合部211に位置合わせされることが好ましい。これにより、第1ブロック21に対する第2ブロック22の位置合わせを、簡単な構成で容易に、かつ、精度良く行うことができる。
【0067】
上述のように、ステップS16では、第2ブロック22の第2接合部221に予め設けられている第2嵌合部224と、第1ブロック21の第1接合部211に予め設けられている第1嵌合部214とが嵌合することにより、第2ブロック22の第2接合部221が第1ブロック21の第1接合部211に位置合わせされることも好ましい。これにより、第1ブロック21に対する第2ブロック22の位置合わせを、簡単な構成で容易に、かつ、精度良く行うことができる。
【0068】
上述のように、第1ブロック21の第1接合部211は、第2ブロック22に接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁212を備え、第2ブロック22の第2接合部221は、第1ブロック21に接触する接合面の開口を閉鎖する水密隔壁222を備えることが好ましい。これにより、浮体構造物1において、第1ブロック21と第2ブロック22との間(すなわち、第1ブロック21と第2ブロック22との接合部)に仮に海水が侵入した場合であっても、第1ブロック21の内部および第2ブロック22の内部への海水の浸入を防止することができる。その結果、浮体構造物1の浮力減少を防止することができる。また、ステップS13における第1ブロック21の海上輸送の際に、第1ブロック21が海面上に浮いた状態で曳航される場合、第1ブロック21の浮力確保を容易とすることができる。ステップS15における第2ブロック22の海上輸送の際にも同様に、第2ブロック22が海面上に浮いた状態で曳航される場合、第2ブロック22の浮力確保を容易とすることができる。
【0069】
上述のように、第1ブロック21の第1接合部211および第2ブロック22の第2接合部221は、浮体構造物1のうち断面形状が長手方向において一定である部位に設けられた当該長手方向に垂直な断面の両側の部位であることが好ましい。このように、第1接合部211および第2接合部221の縦断面の形状を長手方向において略一定とすることにより、接合時の熱膨張や荷重による変形等について、第1接合部211と第2接合部221との差を小さくすることができる。その結果、第1接合部211と第2接合部221との接合を容易とすることができる。
【0070】
上述のように、ステップS13では、第1ブロック21が海面に浮いた状態でタグボートにより曳航されて海上輸送され、ステップS15では、第2ブロック22が海面に浮いた状態でタグボートにより曳航されて海上輸送されることが好ましい。これにより、第1ブロック21および第2ブロック22を台船等に積載して搬送する場合に比べて、第1ブロック21および第2ブロック22の海上輸送に要するコストを低減することができる。その結果、浮体構造物1の製造コストを低減することができる。
【0071】
上述の説明では、大型ドック72において1つの浮体構造物1が製造される場合について述べたが、大型ドック72では、浮体構造物1の製造と並行して、1つまたは2つ以上の他の浮体構造物が製造されてもよい。以下、浮体構造物1と、他の1つの浮体構造物とが、大型ドック72において並行して製造される場合について説明する。なお、3つ以上の浮体構造物が並行して製造される場合についても、以下の説明と略同様である。当該他の浮体構造物は、
図15に示すように、上述の浮体構造物1と同形状であり、以下、「浮体構造物1a」と呼ぶ。浮体構造物1aは、コラム11と、3つのハル部121を有するロワーハル12とを備える。なお、浮体構造物1aは、浮体構造物1とは異なる形状を有していてもよい。
【0072】
浮体構造物1aは、浮体構造物1と同様に、2つのブロックに分割された状態で小型ドックにて製造され、大型ドック72へと海上輸送されて、大型ドック72にて当該2つのブロックが接合されることにより製造される。浮体構造物1aの当該2つのブロックのうち、浮体構造物1の第1ブロック21に対応するブロックを「第3ブロック23」と呼び、浮体構造物1の第2ブロック22に対応するブロックを「第4ブロック24」と呼ぶ。第3ブロック23および第4ブロック24はそれぞれ、第1ブロック21および第2ブロック22と同形状である。
【0073】
図16Aおよび
図16Bは、浮体構造物1,1aの製造の流れを示す図である。
図17~
図19は、製造途上の浮体構造物1,1a、および、浮体構造物1,1aの製造に係る設備を示す図である。
【0074】
浮体構造物1,1aが製造される際には、まず、ステップS11,S12と同様に、第1ブロック21および第2ブロック22が小型ドック71(
図5参照)において製造される(ステップS21,S22)。また、第3ブロック23および第4ブロック24が、第1ブロック21および第2ブロック22と同様に、浮体構造物1aの入出渠が不能な幅を有する小型ドックにおいて製造される(ステップS23,S24)。第3ブロック23および第4ブロック24が製造される小型ドックは、例えば、第1ブロック21および第2ブロック22が製造される小型ドック71とは異なるドックである。なお、第4ブロック24は、第3ブロック23が製造される小型ドックとは異なる小型ドックにおいて製造されてもよい。あるいは、第3ブロック23および第4ブロック24は、第1ブロック21および第2ブロック22が製造される小型ドック71において製造されてもよい。
【0075】
浮体構造物1,1aの製造期間の短縮という観点からは、ステップS21とステップS22とは並行して行われることが好ましく、ステップS23とステップS24とは並行して行われることが好ましい。また、ステップS21,S22と、ステップS23,S24とは並行して行われることが好ましい。なお、ステップS21およびステップS22は、いずれか一方が先に行われ、他方が後に行われてもよい。ステップS23,S24についても同様である。また、第2ブロック22の製造は、第1ブロック21の製造が行われる小型ドック71とは別の小型ドックで行われてもよく、第4ブロック24の製造は、第3ブロック23の製造が行われる小型ドックとは別の小型ドックで行われてもよい。
【0076】
ステップS21~S24が終了すると、ステップS13~S15と同様に、第1ブロック21および第2ブロック22を小型ドック71から出渠させ、大型ドック72へと海上輸送する。そして、
図6に示すように、貯水状態の大型ドック72に第1ブロック21を入渠させ、バラストタンク213(
図2参照)に注水することにより着底させる(ステップS25,S26)。大型ドック72における第1ブロック21の着底位置は、上記と同様に、上嵌合部215および下嵌合部723(
図8参照)により精度良く決定される。続いて、
図9に示すように、第2ブロック22も大型ドック72へと入渠させる(ステップS27)。第2ブロック22は、上述のように、第1ブロック21に隣接するおよその所定位置に配置される。
【0077】
次に、第2ブロック22のバラストタンク223(
図2参照)に注水が行われることにより、第2ブロック22が沈降して着底する(ステップS28)。ステップS28は、ステップS16と同様に、第2ブロック22の第2接合部221(
図11参照)を第1ブロック21の第1接合部211(
図11参照)に位置合わせしつつ行われる。第1接合部211と第2接合部221との位置合わせは、上述のように、上嵌合部225と下嵌合部725(
図12参照)との嵌合により行われてもよく、第1嵌合部214,214aと第2嵌合部224,224a(
図13および
図14参照)との嵌合により行われてもよい。あるいは、上嵌合部225および下嵌合部725の嵌合、並びに、第1嵌合部214,214aおよび第2嵌合部224,224aの嵌合の双方により、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが行われてもよい。
【0078】
一方、第3ブロック23および第4ブロック24も小型ドックから出渠され、大型ドック72へと海上輸送される。第3ブロック23および第4ブロック24の小型ドックからの出渠、および、海上輸送は、上述の第1ブロック21および第2ブロック22の場合と同様に行われる。そして、
図17に示すように、第1ブロック21および第2ブロック22が着底している状態で(すなわち、ステップS28よりも後に)、第3ブロック23を大型ドック72に入渠させる(ステップS29)。これにより、第3ブロック23の入渠時における波等によって第1ブロック21および第2ブロック22が水面上で揺動し、互いにあるいは大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。また、第1ブロック21および第2ブロック22が揺動して第3ブロック23に接触することを防止することもできる。第3ブロック23の大型ドック72への入渠は、上述の第1ブロック21および第2ブロック22の場合と同様に行われる。
【0079】
第3ブロック23が大型ドック72に入渠すると、第3ブロック23が大型ドック72内のおよその所定位置に位置する状態で、第3ブロック23のバラストタンク233に注水が行われる。これにより、第3ブロック23が沈降して、
図7に示す第1ブロック21と略同様に、大型ドック72の渠底726に着底する(ステップS30)。第3ブロック23は、大型ドック72の渠底726において予め所定の位置に配置されている第3ブロック23用の複数の盤木(図示省略)上に載置される。大型ドック72における第3ブロック23の着底位置は、第1ブロック21の場合と同様に、第3ブロック23に予め設けられている上嵌合部(図示省略)、および、盤木に予め設けられている下嵌合部により精度良く決定される。
【0080】
第3ブロック23が着底すると、
図18に示すように、第4ブロック24を大型ドック72へと入渠させる(ステップS31)。第4ブロック24は、第1ブロック21および第2ブロック22の場合と同様に、第3ブロック23に隣接するおよその所定位置に配置される。第4ブロック24の入渠が、第1ブロック21、第2ブロック22および第3ブロック23が着底した状態で行われることにより、第4ブロック24の入渠時における波等によって第1ブロック21および第2ブロック22が水面上で揺動し、互いにあるいは大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。また、第1ブロック21および第2ブロック22が揺動して第4ブロック24に接触することを防止することもできる。さらに、第3ブロック23が揺動して第4ブロック24や大型ドック72の側壁に接触することを防止することもできる。第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、上述の第1ブロック21、第2ブロック22および第3ブロック23の場合と同様に行われる。
【0081】
第4ブロック24が大型ドック72に入渠すると、大型ドック72のゲート721が閉鎖され、大型ドック72の排水が開始される。これにより、水面に浮いている第4ブロック24が、水面の低下と共に下降し、
図11に示す第2ブロック22と略同様に、大型ドック72の渠底726に着底する(ステップS32)。第4ブロック24は、大型ドック72の渠底726において予め所定の位置に配置されている第4ブロック24用の複数の盤木(図示省略)上に載置される。
【0082】
ステップS32は、ステップS28における第1ブロック21および第2ブロック22の場合と同様に、第4ブロック24の接合部である第4接合部241を、第3ブロック23の接合部である第3接合部231に位置合わせしつつ行われる。第3接合部231と第4接合部241との位置合わせは、上述の第1接合部211と第2接合部221との位置合わせと同様に、例えば、第4ブロック24に予め設けられている上嵌合部(図示省略)と、第4ブロック24用の盤木に予め設けられている下嵌合部との嵌合により行われる。あるいは、第1嵌合部214,214aおよび第2嵌合部224,224a(
図13および
図14参照)と略同様の構造を有する第3嵌合部および第4嵌合部が、第3接合部231および第4接合部241にそれぞれ設けられ、第3嵌合部と第4嵌合部との嵌合により、第3接合部231と第4接合部241との位置合わせが行われてもよい。また、あるいは、第3接合部231と第4接合部241との位置合わせは、上述の上嵌合部および下嵌合部の嵌合、並びに、第3嵌合部および第4嵌合部の嵌合の双方により行われてもよい。
【0083】
なお、ステップS32における第4ブロック24の下降は、必ずしも大型ドック72の排水により行われる必要はない。例えば、第3ブロック23の場合(ステップS31)と同様に、第4ブロック24のバラストタンク243に注水が行われることにより、第4ブロック24が沈降して大型ドック72の渠底726に着底してもよい。あるいは、第4ブロック24は、バラストタンク243への注水および大型ドック72の排水が並行して行われることにより下降してもよい。
【0084】
第4ブロック24が着底し、大型ドック72の排水が完了すると、排水状態の大型ドック72において、ステップS17と同様に、第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とが接合され、浮体構造物1が製造される(ステップS33)。また、第3ブロック23の第3接合部231と第4ブロック24の第4接合部241とが接合され、浮体構造物1aが製造される(ステップS34)。第1接合部211と第2接合部221との接合は、上述のように、溶接やボルト締め等の様々な方法により行われてよい。第3接合部231と第4接合部241との接合についても同様である。
【0085】
浮体構造物1,1aが製造されると、大型ドック72への注水が開始されるとともに、浮体構造物1において、バラストタンク213,223(
図2参照)に注水が行われる。これにより、
図19に示すように、浮体構造物1aは水面の上昇と共に浮上し、大型ドック72の渠底726から上方へと離間する。一方、浮体構造物1は、着底した状態が維持される。そして、浮上した浮体構造物1aを、開放されたゲート721を通過させて大型ドック72から出渠させる(ステップS35)。浮体構造物1aが出渠すると、浮体構造物1のバラストタンク213,223内の水量を減少させ、浮体構造物1を浮上させる、そして、ステップS18と同様に、浮上した浮体構造物1を大型ドック72から出渠させる(ステップS36)。浮体構造物1,1aの大型ドック72からの出渠は、上記と同様に、タグボートやウォータージェット推進ユニット等の様々な方法により行われてよい。
【0086】
なお、ステップS35では、浮体構造物1aが着底している状態で、浮体構造物1を大型ドック72から出渠させてもよい。この場合、ステップS36において浮体構造物1aを浮上させて大型ドック72から出渠させる。あるいは、ステップS35,S36では、浮体構造物1,1aの双方が水面に浮いている状態で、浮体構造物1,1aが順次出渠してもよい。また、浮体構造物1の大型ドック72からの出渠と浮体構造物1aの大型ドック72からの出渠とは、並行して行われてもよい。
【0087】
浮体構造物1,1aの製造では、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24の大型ドック72への入渠順序、および、大型ドック72における着底順序は様々に変更されてよい。例えば、第3ブロック23および/または第4ブロック24の大型ドック72への入渠(ステップS29および/またはステップS31)は、第2ブロック22の大型ドック72への入渠(ステップS27)よりも前に行われてもよい。また、例えば、第2ブロック22の大型ドック72への入渠(ステップS27)は、第1ブロックの大型ドック72への入渠後、かつ、第1ブロックの着底よりも前(ステップS25とステップS26との間)に行われてもよい。すなわち、浮体構造物1,1aの製造では、大型ドック72において、一のブロックの着底前に他の一のブロックを入渠させて、当該他の一のブロックが水面に浮いている状態(例えば、大型ドック72の隅に退避して水面に浮いている状態)で、当該一のブロックの着底が行われてもよい。あるいは、第2ブロック22が大型ドック72に入渠して水面に浮いている状態で、第1ブロック21が大型ドック72に入渠して着底してもよい。
【0088】
また、第3ブロック23の大型ドック72への入渠および着底(ステップS29,S30)は、第2ブロック22の大型ドック72への入渠後、かつ、第2ブロック22の着底よりも前(ステップS27とステップS28との間)に行われてもよい。また、第4ブロック24の大型ドック72への入渠(ステップS31)も、第2ブロック22の大型ドック72への入渠後、かつ、第2ブロック22の着底よりも前(ステップS27とステップS28との間)に行われてもよい。この場合、第1ブロック21および第3ブロック23が着底している状態で、大型ドック72の排水が行われ、当該排水により第2ブロック22および第4ブロック24が下降して着底(ステップS28,S32)してもよい。あるいは、第1ブロック21および第3ブロック23が着底している状態で、第2ブロック22のバラストタンク223および第4ブロック24のバラストタンク243に注水が行われ、第2ブロック22および第4ブロック24が沈降して着底してもよい。
【0089】
以上に説明したように、浮体構造物1,1aの製造では、上述のステップS11~S18と略同様のステップS21~S22,S25~S28,S33,S36により浮体構造物1が製造される。すなわち、浮体構造物1,1aの製造方法は、所定の幅を有する浮体構造物1の一部である第1ブロック21を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS21)と、浮体構造物1の他の一部である第2ブロック22を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS22)と、第1ブロック21を海上輸送して、浮体構造物1の入出渠が可能な幅を有する大型ドック72に入渠させる工程(ステップS25)と、第1ブロック21のバラストタンク213に注水することにより第1ブロック21を沈降させて大型ドック72の渠底726に着底させる工程(ステップS26)と、第2ブロック22を海上輸送して大型ドック72に入渠させる工程(ステップS27)と、ステップS26よりも後に、第2ブロック22を下降させ、第2ブロック22の接合部である第2接合部221を第1ブロック21の接合部である第1接合部211に位置合わせしつつ、大型ドック72の渠底726に第2ブロック22を着底させる工程(ステップS28)と、ステップS28よりも後に、排水状態の大型ドック72において第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とを接合して浮体構造物1を製造する工程(ステップS33)と、大型ドック72に注水して浮体構造物1を浮上させて出渠させる工程(ステップS36)と、を備える。
【0090】
また、当該製造方法は、所定の幅を有する他の浮体構造物1aの一部である第3ブロック23を、当該他の浮体構造物1aの入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS23)と、当該他の浮体構造物1aの他の一部である第4ブロック24を、当該他の浮体構造物1aの入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS24)と、第3ブロック23を海上輸送して、当該他の浮体構造物1aの入出渠が可能な幅を有する大型ドック72に入渠させる工程(ステップS29)と、第3ブロック23のバラストタンク233に注水することにより第3ブロック23を沈降させて大型ドック72の渠底726に着底させる工程(ステップS30)と、第4ブロック24を海上輸送して大型ドック72に入渠させる工程(ステップS31)と、ステップS30よりも後に、第4ブロック24を下降させ、第4ブロック24の接合部である第4接合部241を第3ブロック23の接合部である第3接合部231に位置合わせしつつ、大型ドック72の渠底に第4ブロック24を着底させる工程(ステップS32)と、ステップS32よりも後に、排水状態の大型ドック72において第3ブロック23と第4ブロック24とを接合して他の浮体構造物1aを製造する工程(ステップS34)と、大型ドック72に注水して当該他の浮体構造物1aを浮上させて出渠させる工程(ステップS35)と、をさらに備える。
【0091】
このように、大型ドック72にて浮体構造物1,1aを並行して製造することにより、浮体構造物1,1aの量産を、より迅速に行うことができる。また、浮体構造物1,1aの一部である第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24を、小型ドックにて製造して大型ドック72にて接合することにより、大型ドック72において浮体構造物1,1aを最初から製造する場合と比べて、大型ドック72における工事期間を短縮することができる。その結果、浮体構造物1,1aの量産をさらに迅速に行うことができる。さらに、大型ドック72において、第4ブロック24を第3ブロック23に対して位置合わせしつつ着底させることにより、第4ブロック24を着底させた後にドーリー等により第4ブロック24を大型ドック72内にて搬送して第3ブロック23と位置合わせする場合に比べて、大型ドック72における工事期間を短くすることができる。その結果、浮体構造物1,1aの量産を、より一層迅速に行うことができる。
【0092】
上述のように、浮体構造物1,1aの製造方法では、ステップS29およびステップS31における第3ブロック23および第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、ステップS26(すなわち、第1ブロック21の着底)よりも後に行われることが好ましい。これにより、第3ブロック23および第4ブロック24の入渠時における波等により第1ブロック21が水面上で揺動し、第2ブロック22や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。また、第1ブロック21が第3ブロック23および第4ブロック24に接触することも防止することができる。
【0093】
上述のように、ステップS29およびステップS31における第3ブロック23および第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、ステップS28(すなわち、第2ブロック22の着底)よりも後に行われることが好ましい。これにより、第3ブロック23および第4ブロック24の入渠時における波等により第2ブロック22が水面上で揺動し、第1ブロック21や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。また、第2ブロック22が第3ブロック23および第4ブロック24に接触することも防止することができる。
【0094】
上述のように、ステップS31における第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、ステップS30(すなわち、第3ブロック23の着底)よりも後に行われることが好ましい。これにより、第4ブロック24の入渠時における波等により第3ブロック23が水面上で揺動し、第4ブロック24や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。また、第3ブロック23が第1ブロック21および第2ブロック22に接触することも防止することができる。
【0095】
上述のように、ステップS32では、大型ドック72を排水することにより第4ブロック24(すなわち、浮体構造物1,1aを構成する複数のブロックのうち、最後に着底させるブロック)を下降させることが好ましい。これにより、第4ブロック24のバラストタンク243に注水を行うことにより第4ブロック24を沈降させて着底させる場合に比べて、第4ブロック24の着底から大型ドック72が排水状態になるまで(すなわち、第1ブロック21および第2ブロック22の接合、並びに、第3ブロック23および第4ブロック24の接合が可能な状態となるまで)の時間を短縮することができる。その結果、大型ドック72における工事期間をさらに短くすることができる。なお、大型ドック72において3つ以上の浮体構造物が並行して製造される場合も略同様に、当該3つ以上の浮体構造物を構成する複数のブロックのうち、最後に着底させるブロック(上述の第4ブロック24に相当)は、大型ドック72を排水することにより下降させることが好ましい。これにより、上述のように、大型ドック72における工事期間をさらに短くすることができる。
【0096】
上述のように、浮体構造物1,1aの大型ドック72からの出渠(ステップS35,S36)では、浮体構造物1,1aのうち一方の浮体構造物が着底している状態で、他方の浮体構造物を大型ドック72から出渠させることが好ましい。これにより、一方の浮体構造物の出渠時における波等により他方の浮体構造物が水面上で揺動し、当該一方の浮体構造物や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。
【0097】
上述のように、大型ドック72において2つの浮体構造物1,1aが並行して製造される場合、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせは、必ずしも第2ブロック22の着底時(ステップS28)に行われる必要はない。また、第3接合部231と第4接合部241との位置合わせも、必ずしも第4ブロック24の着底時(ステップS32)に行われる必要はない。例えば、第2ブロック22の着底後、大型ドック72が排水された状態で、第2ブロック22がドーリー等により大型ドック72内にて第1ブロック21近傍へと搬送されて、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが行われてもよい。また、第4ブロック24の着底後、大型ドック72が排水された状態で、第4ブロック24がドーリー等により大型ドック72内にて第3ブロック23近傍へと搬送されて、第3接合部231と第4接合部241との位置合わせが行われてもよい。さらに、上述のように、浮体構造物1,1aの製造では、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24の大型ドック72への入渠順序、および、大型ドック72における着底順序は様々に変更されてよい。
【0098】
この場合、浮体構造物1,1aの製造方法は、所定の幅を有する第1の浮体構造物(すなわち、浮体構造物1)の一部である第1ブロック21を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS21)と、浮体構造物1の他の一部である第2ブロック22を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS22)と、所定の幅を有する第2の浮体構造物(すなわち、浮体構造物1a)の一部である第3ブロック23を、浮体構造物1aの入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS23)と、浮体構造物1aの他の一部である第4ブロック24を、浮体構造物1aの入出渠が不能な幅を有する小型ドックにて製造する工程(ステップS24)と、を備える。
【0099】
また、当該製造方法は、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24を海上輸送して、浮体構造物1および浮体構造物1aの入出渠が可能な幅を有する大型ドック72に入渠させて大型ドック72の渠底に着底させる工程(ステップS25~S32)と、ステップS25~S32よりも後に、排水状態の大型ドック72において第1ブロック21と第2ブロック22とを接合して浮体構造物1を製造し、第3ブロック23と第4ブロック24とを接合して浮体構造物1aを製造する工程(ステップS33,S34)と、大型ドック72に注水して浮体構造物1および浮体構造物1aを浮上させて出渠させる工程(ステップS35,S36)と、をさらに備える。
【0100】
そして、ステップS25~S32は、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24のうち、一のブロックが大型ドック72の渠底に着底した状態で、水面に浮いている他の一のブロックを大型ドック72の渠底に着底させる工程を備える。これにより、当該他の一のブロックの水面から渠底への下降時における波等により、当該一のブロックが水面上で揺動してブロック同士が接触することや当該一のブロックが大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。上述の例では、第1ブロック21が大型ドック72の渠底に着底している状態で、第2ブロック22を大型ドック72の渠底に着底させている。また、第1ブロック21および第2ブロック22が着底している状態で、第3ブロック23を大型ドック72の渠底に着底させている。さらに第1ブロック21、第2ブロック22および第3ブロック23が着底している状態で、第4ブロック24を大型ドック72の渠底に着底させている。
【0101】
好ましくは、ステップS25~S32は、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24のうち、一のブロックが大型ドック72の渠底に着底した状態で、他の一のブロックを大型ドック72に入渠させて大型ドック72の渠底に着底させる工程を備える。これにより、当該他の一のブロックの入渠時における波等により、当該一のブロックが水面上で揺動してブロック同士が接触することや当該一のブロックが大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。上述の例では、第1ブロック21が大型ドック72の渠底に着底している状態で、第2ブロック22を大型ドック72に入渠させて大型ドック72の渠底に着底させている。また、第1ブロック21および第2ブロック22が着底している状態で、第3ブロック23を大型ドック72に入渠させて着底させている。さらに第1ブロック21、第2ブロック22および第3ブロック23が着底している状態で、第4ブロック24を大型ドック72に入渠させて着底させている。
【0102】
さらに好ましくは、ステップS25~S32は、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24のうち1番目のブロック(上記例では、第1ブロック21)を大型ドック72に入渠させ、当該1番目のブロックのバラストタンクに注水することにより当該1番目のブロックを沈降させて大型ドック72の渠底に着底させる工程(上記例では、ステップS25,S26)と、当該1番目のブロックの入渠および着底よりも後に、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24のうち2番目のブロック(上記例では、第2ブロック22)を大型ドック72に入渠させ、当該2番目のブロックのバラストタンクに注水することにより当該2番目のブロックを沈降させて大型ドック72の渠底に着底させる工程(上記例では、ステップS27,S28)と、当該2番目のブロックの入渠および着底よりも後に、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24のうち3番目のブロック(上記例では、第3ブロック23)を大型ドック72に入渠させ、当該3番目のブロックのバラストタンクに注水することにより当該3番目のブロックを沈降させて大型ドック72の渠底に着底させる工程(上記例では、ステップS29,S30)と、当該3番目のブロックの入渠および着底よりも後に、第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24のうち4番目のブロックを大型ドック72に入渠させ、当該4番目のブロックを下降させて大型ドック72の渠底に着底させる工程(上記例では、ステップS31,S32)と、を備える。
【0103】
このように、上述の2番目のブロックの入渠が、1番目のブロックの着底よりも後に行われることにより、2番目のブロックの入渠時における波等により1番目のブロックが水面上で揺動し、2番目のブロックや大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。
【0104】
また、3番目のブロックの入渠が、1番目のブロックの着底および2番目のブロックの着底よりも後に行われることにより、3番目のブロックの入渠時における波等により1番目のブロックおよび2番目のブロックが水面上で揺動し、1番目のブロック、2番目のブロックおよび3番目のブロックが互いに、あるいは、大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。
【0105】
さらに、4番目のブロックの入渠が、1番目のブロックの着底、2番目のブロックの着底および3番目のブロックの着底よりも後に行われることにより、4番目のブロックの入渠時における波等により1番目のブロック、2番目のブロックおよび3番目のブロックが水面上で揺動し、1番目のブロック、2番目のブロック、3番目のブロックおよび4番目のブロックが互いに、あるいは、大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。
【0106】
上述の浮体構造物1,1aの出渠工程は、好ましくは、大型ドック72に注水して、浮体構造物1,1aのうち一方の浮体構造物を浮上させ、他方の浮体構造物が着底している状態で当該一方の浮体構造物を出渠させる工程(ステップS35)と、ステップS35よりも後に、当該他方の浮体構造物を浮上させて出渠させる工程(ステップS36)と、を備える。これにより、一方の浮体構造物の出渠時における波等により他方の浮体構造物が水面上で揺動し、当該一方の浮体構造物や大型ドック72の側壁に接触することを防止することができる。
【0107】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る浮体構造物1の製造方法について説明する。
図20は、浮体構造物1の製造の流れを示す図である。
図21~
図25は、製造途上の浮体構造物1、および、浮体構造物1の製造に係る設備を示す図である。
【0108】
当該製造方法では、まず、ステップS11,S12と同様に、浮体構造物1の一部である第1ブロック21および第2ブロック22が、
図21(平面図)に示す排水状態の小型ドック71において製造される(ステップS41,S42)。上述のように、小型ドック71は、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する。
【0109】
続いて、図示省略のドーリー等により第1ブロック21または第2ブロック22が小型ドック71内において搬送され、
図22(平面図)に示すように、第1ブロック21と第2ブロック22とが隣接するように配置される(ステップS43)。ステップS43では、第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とは、大型ドック72における本接合時(後述するステップS48)とは異なる向きにて互いに近接する。
図22に示す例では、第1ブロック21の一方のハル部121と第2ブロック22とが略平行となるように、第1ブロック21および第2ブロック22が配置される。なお、小型ドック71において、第1ブロック21および第2ブロック22が互いに隣接するように配置された状態で製造された場合、上述のドーリー等による第1ブロック21または第2ブロック22の搬送は省略されてよい。
【0110】
次に、
図23(平面図)に示すように、第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とが、ヒンジ接合治具25にて仮接合される(ステップS44)。以下の説明では、ヒンジ接合治具25により仮接合された第1ブロック21および第2ブロック22を「仮接合構造体26」とも呼ぶ。すなわち、ステップS44では、仮接合構造体26が製造される。仮接合構造体26では、第1ブロック21と第2ブロック22との相対位置が変動しないように、図示省略の形鋼や緩衝材を用いて、第2ブロック22の第1ブロック21に対する相対移動が制限される。
【0111】
ヒンジ接合治具25は、略上下方向(すなわち、
図23中の紙面に略垂直な方向)に延びる略円柱状のピン251と、ピン251を中心とする周方向に独立して回転可能な2枚のプレート252と、を備える。一方のプレート252は、第1ブロック21の第1接合部211の側面216(すなわち、第1接合部211の上下方向に略平行な側面のうち水密隔壁212ではない面)に、溶接やボルト締め等により接合される。他方のプレート252は、第2ブロック22の第2接合部221の側面226(すなわち、第2接合部221の上下方向に略平行な側面のうち水密隔壁222ではない面)に、溶接やボルト締め等により接合される。これにより、第1接合部211と第2接合部221とが、ヒンジ接合治具25を介して間接的に仮接合される。なお、ヒンジ接合治具25の形状は様々に変更されてよい。
【0112】
第1ブロック21と第2ブロック22とが仮接合されると、小型ドック71に対する注水が行われ、仮接合構造体26が浮上する。そして、浮上した仮接合構造体26を、小型ドック71から出渠させる。小型ドック71は、仮接合構造体26の入出渠が可能な幅を有する。仮接合構造体26の小型ドック71からの出渠は、例えば、タグボートにより行われる。仮接合構造体26の小型ドック71からの出渠は、他の様々な方法(例えば、仮接合構造体26に仮設したウォータージェット推進ユニット)により行われてもよい。
【0113】
なお、ステップS44における第1ブロック21と第2ブロック22との仮接合は、第1ブロック21および第2ブロック22を小型ドック71からそれぞれ独立して出渠させた後、小型ドック71の外部(例えば、他の小型ドックや洋上)において行われてもよい。
【0114】
小型ドック71から出渠した仮接合構造体26は、海上輸送され、
図24(平面図)に示すように、ゲート721が開放された貯水状態の大型ドック72に入渠する(ステップS45)。上述のように、大型ドック72は、浮体構造物1の入出渠が可能な幅を有する。仮接合構造体26の海上輸送は、例えば、仮接合構造体26を海面上に浮かせた状態でタグボートにより曳航することにより行われる。仮接合構造体26の海上輸送時には、バラストタンク213,223(
図2参照))内の水量が調節されることにより、仮接合構造体26の姿勢が曳航に適した姿勢に調節される。仮接合構造体26の海上輸送は、他の様々な方法により行われてもよい。例えば、仮接合構造体26は、自航可能な台船に積載されて海上輸送されてもよく、非自航台船に積載された状態でタグボートにより曳航されてもよい。仮接合構造体26の大型ドック72への入渠は、例えば、タグボートにより行われる。仮接合構造体26の大型ドック72への入渠は、他の様々な方法(例えば、上述のウォータージェット推進ユニット、または、大型ドック72に設置されているウインチ)により行われてもよい。
【0115】
仮接合構造体26が大型ドック72に入渠すると、上述の形鋼や緩衝材が取り外され、第2ブロック22が第1ブロック21に対して相対的に移動可能とされる。続いて、水面に浮いている仮接合構造体26において、第2ブロック22を第1ブロック21に対して相対移動する。例えば、タグボート等により第2ブロック22の先端部に略水平方向の力を加え、ヒンジ接合治具25のピン251(
図23参照)を中心として、第2ブロック22を
図24中における反時計回り方向に回転させる。これにより、
図25(平面図)に示すように、第2ブロック22の第2接合部221が、第1ブロック21の第1接合部211に位置合わせされる(ステップS46)。なお、第2ブロック22の移動は、タグボート以外の様々な方法(例えば、大型ドック72に設置されているウインチ)により行われてもよい。また、ステップS46では、第1ブロック21が移動されることにより、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが行われてもよい。
【0116】
次に、大型ドック72のゲート721が閉鎖され、大型ドック72の排水が開始される。これにより、水面に浮いている仮接合構造体26(すなわち、位置合わせされた第1ブロック21および第2ブロック22)が、水面の低下と共に下降し、大型ドック72の渠底726に着底する(ステップS47)。具体的には、仮接合構造体26は、図示省略の複数の盤木上に載置される。
【0117】
なお、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせ(ステップS46)は、仮接合構造体26の着底(ステップS47)よりも後に行われてもよい。この場合、排水状態の大型ドック72の渠底726において、ドーリー等により、第1ブロック21または第2ブロック22をピン251を中心として回転移動させることにより、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが行われる。
【0118】
仮接合構造体26が着底し、大型ドック72の排水が完了すると、排水状態の大型ドック72において、第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とが接合され、
図1に示す浮体構造物1が製造される(ステップS48)。第1接合部211と第2接合部221との接合は、例えば、溶接により行われる。第1接合部211と第2接合部221との接合は、他の様々な方法(例えば、ボルト締めによる接合)により行われてもよい。ステップS48における第1接合部211と第2接合部221との接合は、ステップS44における仮接合に対して、本接合と捉えられる。第1接合部211と第2接合部221との接合の際には、ヒンジ接合治具25は除去されてもよく、残置されてもよい。
【0119】
浮体構造物1が製造されると、大型ドック72への注水が開始される。これにより、浮体構造物1が、水面の上昇と共に浮上し、大型ドック72の渠底726から上方へと離間する。浮上した浮体構造物1は、開放されたゲート721を通過して大型ドック72から出渠する(ステップS49)。浮体構造物1の大型ドック72からの出渠は、例えば、タグボートにより行われる。浮体構造物1の大型ドック72からの出渠は、他の様々な方法(例えば、上述のウォータージェット推進ユニット)により行われてもよい。
【0120】
小型ドック71および大型ドック72において、上述のステップS41~S49が繰り返し行われることにより、複数の浮体構造物1の迅速な量産が実現される。本実施の形態に係る製造方法では、小型ドック71における浮体構造物1の製造期間、および、仮接合構造体26の海上輸送期間の合計は、大型ドック72における工事期間よりも長くなる可能性が高い。したがって、複数の小型ドック71において複数の仮接合構造体26が並行して製造され、大型ドック72における複数の浮体構造物1の製造が、連続して行われることが好ましい。
【0121】
なお、発電用風車等の他の構造物の浮体構造物1に対する取り付けや艤装工事等、水面よりも上側における工事は、大型ドック72から出渠した浮体構造物1を他の場所(例えば、工場の岸壁)へと搬送した後に行われることが好ましい。これにより、1つの浮体構造物1の製造に大型ドック72が使用される期間を短くすることができる。
【0122】
以上に説明したように、第2の実施の形態に係る浮体構造物1の製造方法は、所定の幅を有する浮体構造物1の一部である第1ブロック21を、浮体構造物1の入出渠が不能な幅を有する小型ドック71にて製造する工程(ステップS41)と、浮体構造物1の他の一部である第2ブロック22を小型ドック71にて製造する工程(ステップS42)と、第1ブロック21の接合部である第1接合部211と第2ブロック22の接合部である第2接合部221とが本接合時とは異なる向きにて互いに近接するように、第2ブロック22を第1ブロック21に隣接させて配置する工程(ステップS43)と、第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とをヒンジ接合治具25にて仮接合して仮接合構造体26を製造する工程(ステップS44)と、仮接合構造体26を海上輸送して、浮体構造物1の入出渠が可能な幅を有する大型ドック72に入渠させる工程(ステップS45)と、第2ブロック22を第1ブロック21に対して相対移動することにより、第2ブロック22の第2接合部221を第1ブロック21の第1接合部211に位置合わせする工程(ステップS46)と、第1ブロック21および第2ブロック22を下降させて大型ドック72の渠底726に着底させる工程(ステップS47)と、ステップS46およびステップS47よりも後に、排水状態の大型ドック72において第1ブロック21の第1接合部211と第2ブロック22の第2接合部221とを本接合して浮体構造物1を製造する工程(ステップS48)と、大型ドック72に注水して浮体構造物1を浮上させて出渠させる工程(ステップS49)と、を備える。
【0123】
これにより、第1ブロック21および第2ブロック22の海上輸送および大型ドック72への入渠を同時に行うことができる。その結果、第1ブロック21および第2ブロック22の海上輸送期間を短縮することができる。また、ヒンジ接合治具25により第2ブロック22の第1ブロック21に対する相対移動方向が制限されているため、大型ドック72における第1接合部211と第2接合部221との位置合わせを容易とすることができる。その結果、大型ドック72における工事期間を短くすることができ、浮体構造物1の量産を迅速に行うことができる。
【0124】
上述の浮体構造物1,1aの製造方法では、様々な変更が可能である。
【0125】
例えば、浮体構造物1では、第1接合部211と第2接合部221との境界は、必ずしも、断面形状が長手方向において一定である部位に設けられる必要はなく、断面形状が長手方向において変化している部位に設けられてもよい。浮体構造物1aにおける第3接合部231と第4接合部241との境界についても同様である。
【0126】
第1ブロック21では、第1接合部211の第2ブロック22に接触する接合面に、水密隔壁212は設けられなくてもよい。第2ブロック22では、第2接合部221の第1ブロック21に接触する接合面に、水密隔壁222は設けられなくてもよい。第3ブロック23および第4ブロック24についても同様である。
【0127】
浮体構造物1では、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせに利用された上嵌合部215,225、第1嵌合部214,214aおよび第2嵌合部224,224aは、浮体構造物1の製造後に除去されてもよく、残置されてもよい。浮体構造物1aにおいても同様である。
【0128】
浮体構造物1の第1接合部211と第2接合部221との位置合わせは、必ずしも、上述のような嵌合部やヒンジ接合治具25を利用して行われる必要はなく、様々に変更されてよい。例えば、第1ブロック21および第2ブロック22が水面に浮いた状態で、大型ドック72に設置されているウインチ等により第2ブロック22を第1ブロック21に向けて移動させる。そして、第2接合部221を第1接合部211に対して位置合わせしつつ、砂嚢等の緩衝材を挟んで第2接合部221を第1接合部211に間接的に接触させる。その後、砂嚢等を除去して第2接合部221を第1接合部211に直接的に接触させることにより、第1接合部211と第2接合部221との位置合わせが完了する。
【0129】
図4に示す浮体構造物1の製造では、第2ブロック22の大型ドック72への入渠(ステップS15)は、第1ブロック21の着底(ステップS14)よりも前に行われてもよい。この場合、第2ブロック22の入渠は、第1ブロック21の大型ドック72への入渠(ステップS13)と並行して行われてもよく、第1ブロック21の入渠よりも前または後に行われてもよい。
【0130】
また、ステップS17では、ステップS16にて位置合わせが行われた第1接合部211と第2接合部221とが接合される前に、ドーリー等により、第1ブロック21に対する第2ブロック22の相対位置の微調整が行われてもよい。
【0131】
図16Aおよび
図16Bに示す浮体構造物1,1aの製造では、第3ブロック23および第4ブロック24の製造(ステップS23,S24)は、第1ブロック21および第2ブロック22の製造(ステップS21,S22)よりも前に行われてもよい。また、ステップS23,S24は、ステップS29よりも前に行われるのであれば、ステップS25~S28と並行して行われてもよく、ステップS28よりも後に行われてもよい。
【0132】
浮体構造物1,1aの製造では、大型ドック72への第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24の入渠順序は、適宜変更されてよい。また、第2ブロック22、第3ブロック23および第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、第1ブロック21の着底(ステップS26)よりも前に行われてもよい。第3ブロック23および第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、第2ブロック22の着底(ステップS28)よりも前に行われてもよい。第4ブロック24の大型ドック72への入渠は、第3ブロック23の着底(ステップS30)よりも前に行われてもよい。
【0133】
ステップS33では、ステップS28にて位置合わせが行われた第1接合部211と第2接合部221とが接合される前に、ドーリー等により、第1ブロック21に対する第2ブロック22の相対位置の微調整が行われてもよい。また、ステップS34では、ステップS32にて位置合わせが行われた第3接合部231と第4接合部241とが接合される前に、ドーリー等により、第3接合部231に対する第4接合部241の相対位置の微調整が行われてもよい。
【0134】
上述の説明では、浮体構造物1の第1ブロック21にはコラム11が含まれているが、第1ブロック21および第2ブロック22はそれぞれ、ロワーハル12の一部のみを含んでいてもよい。この場合、大型ドック72では、浮体構造物1としてロワーハル12が製造される。ロワーハル12は、大型ドック72を出渠した後、他の場所(例えば、工場の岸壁)へと搬送され、当該他の場所において、ロワーハル12に対するコラム11や発電用風車等の取り付けが行われる。浮体構造物1aについても同様である。
【0135】
上述の説明では、浮体構造物1は2つのブロックに分割されて小型ドックにて製造されるが、3つ以上のブロックに分割されて小型ドックにて製造されてもよい。この場合、当該3つ以上のブロックが、大型ドック72へと海上輸送され、ステップS17等において大型ドック72にて接合されることにより浮体構造物1が製造される。浮体構造物1aについても同様である。
【0136】
浮体構造物1,1aの形状や構造等は、
図1および
図15に例示するものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、コラム11は、ロワーハル12の中央部に加えて、各ロワーハル12の先端部にも設けられてもよい。あるいは、コラム11は、ロワーハル12の中央部に代えて、各ロワーハル12の先端部に設けられてもよい。いずれの場合も、発電用風車は、複数のコラム11のうちいずれかのコラム11の上端部に立設される。また、浮体構造物1,1aは、ロワーハルを有しない半潜水型(セミサブ型)の浮体構造物であってもよい。浮体構造物1,1aは、半潜水型以外の形式(例えば、バージ型、TLP型、スパー型等)の浮体構造物であってもよい。
【0137】
浮体構造物1,1aは、洋上風力発電システム以外の用途に利用されてもよい。
【0138】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0139】
1,1a 浮体構造物
21 第1ブロック
22 第2ブロック
23 第3ブロック
24 第4ブロック
25 ヒンジ接合治具
26 仮接合構造体
71 小型ドック
72 大型ドック
211 第1接合部
212,222 水密隔壁
213,223,233,243 バラストタンク
214,214a 第1嵌合部
215,225 上嵌合部
221 第2接合部
224,224a 第2嵌合部
231 第3接合部
241 第4接合部
722,724 盤木
723,725 下嵌合部
726 渠底
S11~S18,S21~S36,S41~S49 ステップ