(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】母乳成分増強用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/745 20150101AFI20240214BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240214BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240214BHJP
A23C 9/152 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K35/745
A61P37/08
A61P37/02
A61K9/20
A61K47/42
A61K47/26
A23L33/135
A23C9/152
A61K47/46
(21)【出願番号】P 2020507964
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2019012602
(87)【国際公開番号】W WO2019182160
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2018056597
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-02621
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-02622
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 裕久
(72)【発明者】
【氏名】江原 達弥
(72)【発明者】
【氏名】平工 明里
(72)【発明者】
【氏名】村田 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 紀介
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/096272(WO,A1)
【文献】特表2010-528093(JP,A)
【文献】特開2013-245174(JP,A)
【文献】Nutrients,2016年,8(11),E677
【文献】Int. J. Food Microbiol.,1999年,46(3),p.193-197
【文献】Allergy,2012年,67(3),p.343-352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を有効成分として含有する、母乳成
分増強用組成物であって、
前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及
びビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)であり、
前記母乳成分が
、CCL8、CCL21、
およびIFN-
γから選択される少なくとも1種の成分で
ある、組成
物。
【請求項2】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536(NITE BP-02621)である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
ビフィドバクテリウム・ブレーベ
(Bifidobacterium breve)を有効成分として含有す
る、母乳成分増強用組成物であって、
前記母乳成分が
、CCL2
8である、組成物(ただし、乳腺炎又は感染症の治療及び/若し
くは予防のために用いられる態様を除く)。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)である、請求項1または
3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、プレバイオティクスを含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記プレバイオティクスが、オリゴ糖である、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記プレバイオティクスが、フラクトオリゴ糖である、請求項
5または
6に記載の組成物。
【請求項8】
妊産婦または授乳婦に投与される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
第1の対象の母乳が投与される第2の対象における下記(1)~(3)のいずれかを目的として第1の対象に投与して用いられる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物:
(1)アレルギーの予防および/または治療;
(2)感染症の予防および/または治療;
(3)腸内細菌叢の調
整。
【請求項10】
前記第1の対象が妊産婦または授乳婦であり、前記第2の対象が乳児である、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
飲食品組成物である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
下記工程(A)~(C)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法であって、
前記母乳成分が
、CCL8、CCL21、
およびIFN-
γから選択される少なくとも1種の成分で
ある方法:
(A)乳成分を含有する培地でビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を培養
し、培養物を得る工程であって、前記ビフィドバクテリウム属細菌がビフィドバクテリウム・ロンガム及
びビフィドバクテリウム・ブレーベである工程;
(B)前記培養物を噴霧乾燥および/または凍結乾燥に供し、菌体粉末を得る工程;
(C)前記菌体粉末とプレバイオティクスを混合し、母乳成分増強用の粉乳を得る工
程。
【請求項13】
下記工程(A)~(C)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法であって、
前記母乳成分
がCCL2
8である方法:
(A)乳成分を含有する培地でビフィドバクテリウム・ブレーベを培養し、培養物を得る工程;
(B)前記培養物を噴霧乾燥および/または凍結乾燥に供し、菌体粉末を得る工程;
(C)前記菌体粉末とプレバイオティクスを混合し、母乳成分増強用の粉乳を得る工程
(ただし、前記母乳成分増強用粉乳から乳腺炎又は感染症の治療及び/若しくは予防のために用いられる態様を除く)。
【請求項14】
下記工程(A)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法であって、
前記母乳成分が
、CCL8、CCL21、
およびIFN-
γから選択される少なくとも1種の成分で
ある方法:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および
乳成分を混合し、粉乳を得る工程であって、前記ビフィドバクテリウム属細菌がビフィドバクテリウム・ロンガム及
びビフィドバクテリウム・ブレーベである工
程。
【請求項15】
下記工程(A)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法であって、
前記母乳成分が
、CCL2
8である方法:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、および乳成分を混合し、粉乳を得る工程(ただし、前記母乳成分増強用粉乳から乳腺炎又は感染症の治療及び/若しくは予防のために用いられる態様を除く)。
【請求項16】
前記乳成分が、乳タンパク質である、請求項
12~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記乳タンパク質が、ホエイ、ホエイ加水分解物、カゼインからなる群より選択される少なくとも1つの成分である、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
下記工程(A)および(B)を含む、母乳成分増強用サプリメントの製造方法であって、
前記母乳成分が
、CCL8、CCL21、
およびIFN-
γから選択される少なくとも1種の成分で
ある方法:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および
賦形剤を混合し、混合物を得る工程であって、前記ビフィドバクテリウム属細菌がビフィドバクテリウム・ロンガム及
びビフィドバクテリウム・ブレーベである工程;
(B)前記混合物を打錠する工
程。
【請求項19】
下記工程(A)および(B)を含む、母乳成分増強用サプリメントの製造方法であって、
前記母乳成分が
、CCL2
8である方法:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、および賦形剤を混合し、混合物を得る工程;
(B)前記混合物を打錠する工程
(ただし、前記母乳成分増強用サプリメントから乳腺炎又は感染症の治療及び/若しくは予防のために用いられる態様を除く)。
【請求項20】
前記プレバイオティクスが、フラクトオリゴ糖である、請求項
12~
19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記粉乳または前記サプリメントが、妊産婦または授乳婦に投与して用いられる、請求項
12~
20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳成分増強用組成物等の特定の用途に利用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)やビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)等のいわゆるビフィズス菌は、プロバイオティクスとして知られている。例えば、ビフィズス菌を対象に投与することにより、当該対象の母乳において免疫関連マイクロRNA(miRNA)や免疫関連遺伝子のmRNAの量が増減し、以て母乳の免疫調節作用に影響することが報告されている(特許文献1~2)。また、ビフィズス菌を含むプロバイオティクスを対象に投与することにより、当該対象の母乳においてIL-10やTGF-β等の子のアレルギー発症を抑制する成分の量が増大することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
フラクトオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖は、プレバイオティクスとして知られている。例えば、難消化性オリゴ糖は、ビフィズス菌等の有益な細菌の増殖を促進することが知られている。また、フラクトオリゴ糖を対象に投与することにより、当該対象の母乳においてインターロイキン27(IL-27)の量が増大し、以て当該母乳を摂取した新生児のアレルギー発症を予防できることが報告されている(特許文献3)。
【0004】
CCL28はCCケモカインの一種であり、大腸、唾液腺、乳腺、気管支の粘膜組織の上皮細胞にて恒常的に発現している。CCL28はCCR10を介してIgA産生細胞の遊走を引き起こすことによりIgA産生を促すことや抗菌活性を有することから、粘膜組織における自然免疫および獲得免疫において重要な役割を担っていると考えられる(非特許文献2)。また、CCL28遺伝子欠損マウスの腸内細菌叢は野生型マウスの腸内細菌叢と構成が異なることから、CCL28は腸内細菌叢の形成にも関与していると考えられる(非特許文献3)。したがって、CCL28は、病原菌やウイルスの感染を予防する効果や腸内細菌叢を整える効果を示すと考えられる。これまでに、動物実験において、バチルス属細菌やエシェリヒア・コリの摂取により小腸でのCCL28の発現が促進されることが報告されている(非特許文献4~5)。また、CCL28は母乳中にも分泌されており、乳房炎の予防に寄与していると考えられる(非特許文献6)。さらに、HIV感染した乳児において、摂取する母乳中のCCL28の濃度が高いほど生存率が高まるとの報告がある(非特許文献7)。このことから、母乳中に含まれるCCL28の増加は、乳児における感染の予防にもつながると考えられる。
【0005】
Galectin-9は、β-ガラクトシドに親和性が高いレクチンファミリーに属するタンパク質の一つであり、アレルギー発症を抑制する効果があることが知られている(非特許文献8)。また、プロバイオティクスを含む粉ミルクの摂取により血清中のGalectin-9濃度が上昇することが知られている(非特許文献9)。しかし、プロバイオティクスの摂取により母乳中のGalectin-9濃度が上昇することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2011/007815
【文献】WO2012/096272
【文献】特開2013-245174号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Baldassarre ME et al. Nutrients 8(11). (2016)
【文献】Mohan T et al. Int Immunopharmacol. 51:165-170. (2017)
【文献】Matsuo K et al. J Immunol. 200(2):800-809. (2018)
【文献】Yang GY et al. Vet Res. 47(1):71 (2016)
【文献】Meurens F et al. PLoS One. 2(7):e677. (2007)
【文献】Pallister KB et al. PLoS One. 10(9):e0138084. (2015)
【文献】Castelletti E et al. PLoS One. 2(10):e969. (2007)
【文献】Seki M et al. Clin Immunol. 127(1):78-88. (2008)
【文献】de Kivit S et al. Allergy. 67(3):343-52. (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、母乳成分増強用組成物等の特定の用途に利用できる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)およびビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)をフラクトオリゴ糖等のプレバイオティクスと組み合わせて対象に経口投与することにより母乳中の特定の成分の量が増大することを見出した。また、本発明者らは、ビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィドバクテリウム属細菌を対象に経口投与することにより母乳中のGalectin-9の量が増大することを見出した。また、本発明者らは、ビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィドバクテリウム属細菌を対象に経口投与することによりCCL28の分泌が促進されることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通り例示できる。
本発明の一態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を有効成分として含有する、母乳成分増強用組成物である。
前記組成物は、前記母乳成分が、熱ショックタンパク質、ケモカイン、インターフェロン、およびレクチンから選択される少なくとも1種の成分であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記母乳成分が、HSP70、CCL8、CCL21、CCL28、IFN-γ、およびガレクチン9から選択される少なくとも1種の成分であることを好ましい態様としている。
本発明の一態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を有効成分として含有する、母乳中のガレクチン9増強用組成物である。
本発明の一態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を有効成分として含有する、CCL28分泌促進用組成物である。
前記組成物は、さらに、プレバイオティクスを含有することを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記プレバイオティクスが、オリゴ糖であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記プレバイオティクスが、フラクトオリゴ糖であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)および/またはビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベであることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベであることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536(NITE BP-02621)であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、妊産婦または授乳婦に投与されることを好ましい態様としている。
前記組成物は、第1の対象の母乳が投与される第2の対象における下記(1)~(3)のいずれかを目的として第1の対象に投与して用いられることを好ましい態様としている:
(1)アレルギーの予防および/または治療;
(2)感染症の予防および/または治療;
(3)腸内細菌叢の調整。
前記組成物は、前記第1の対象が妊産婦または授乳婦であり、前記第2の対象が乳児であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、飲食品組成物であることを好ましい態様としている。
本発明の一態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を対象に投与する工程を含む、母乳成分を増強する方法である。
前記方法は、前記母乳成分が、熱ショックタンパク質、ケモカイン、インターフェロン、およびレクチンから選択される少なくとも1種の成分であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記母乳成分が、HSP70、CCL8、CCL21、CCL28、IFN-γ、およびガレクチン9から選択される少なくとも1種の成分であることを好ましい態様としている。
本発明の一態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を対象に投与する工程を含む、母乳中のガレクチン9を増強する方法である。
本発明の一態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を対象に投与する工程を含む、CCL28の分泌を促進する方法である。
前記方法は、さらに、プレバイオティクスを対象に投与する工程を含むことを好ましい態様としている。
前記方法は、前記プレバイオティクスが、オリゴ糖であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記プレバイオティクスが、フラクトオリゴ糖であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)および/またはビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベであることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ブレーベであることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記ビフィドバクテリウム・ロンガムが、ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536(NITE BP-02621)であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V(NITE BP-02622)であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記対象が、妊産婦または授乳婦であることを好ましい態様としている。
本発明の一態様は、下記工程(A)~(C)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法である:
(A)乳成分を含有する培地でビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を培養し、培養物を得る工程;
(B)前記培養物を噴霧乾燥および/または凍結乾燥に供し、菌体粉末を得る工程;
(C)前記菌体粉末とプレバイオティクスを混合し、母乳成分増強用の粉乳を得る工程。
本発明の一態様は、下記工程(A)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法である:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および乳成分を混合し、粉乳を得る工程。
前記方法は、前記乳成分が、乳タンパク質であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記乳タンパク質が、ホエイ、ホエイ加水分解物、カゼインからなる群より選択される少なくとも1つの成分であることを好ましい態様としている。
本発明の一態様は、下記工程(A)および(B)を含む、母乳成分増強用サプリメントの製造方法である:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および賦形剤を混合し、混合物を得る工程;
(B)前記混合物を打錠する工程。
前記方法は、前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)および/またはビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記プレバイオティクスが、フラクトオリゴ糖であることを好ましい態様としている。
前記方法は、前記粉乳または前記サプリメントが、妊産婦または授乳婦に投与して用いられることを好ましい態様としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Bifidobacterium breve M-16V株の摂取が母乳中のCCL28濃度に与える影響を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
<1>有効成分
本発明においては、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を有効成分として利用する。
【0014】
本発明においては、さらに、プレバイオティクスを有効成分として利用してもよい。
【0015】
すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌とプレバイオティクス(プレバイオティクスについては有効成分として利用される場合のみ)を総称して、「有効成分」ともいう。
【0016】
有効成分は、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、及びプレバイオティクスの組み合わせであってもよい。
【0017】
一態様においては、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、当該対象において母乳中の特定の成分の含有量を増大させることができる。すなわち、一態様においては、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、当該対象において母乳中の特定の成分の含有量が増大する効果が得られる。同効果を、「母乳成分増強効果」ともいう。また、母乳中の特定の成分の含有量が増大することを、「母乳成分の増強」ともいう。このようにして特定の成分の含有量が増大した母乳を、「本発明の母乳」ともいう。本発明の母乳は、具体的には、有効成分を投与された対象の母乳、すなわち、有効成分を投与された対象が産生する母乳である。有効成分は、具体的には、後述する「本発明の方法」に記載されている態様で対象に投与することができる。
【0018】
特定の成分(増強される母乳成分)としては、タンパク質が挙げられる。タンパク質としては、熱ショックタンパク質、ケモカイン、インターフェロン、レクチンが挙げられる。熱ショックタンパク質としては、HSP70が挙げられる。ケモカインとしては、CCケモカインが挙げられる。CCケモカインとしては、CCL8(「MCP-2」ともいう)、CCL21(「6Ckine」ともいう)、CCL28(「MEC」ともいう)が挙げられる。インターフェロンとしては、インターフェロンγ(IFN-γ)が挙げられる。レクチンとしては、ガレクチンが挙げられる。ガレクチンとしては、ガレクチン9(Galectin-9)が挙げられる。すなわち、特定の成分として、具体的には、HSP70、CCL8、CCL21、CCL28、IFN-γ、Galectin-9が挙げられる。一態様において、特定の成分としては、特に、熱ショックタンパク質、ケモカイン、インターフェロンが挙げられる。また、一態様において、特定の成分として、さらに特には、HSP70、CCL8、CCL21、IFN-γが挙げられる。例えば、有効成分がビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスの組み合わせである場合に、特定の成分としては、特に、熱ショックタンパク質、ケモカイン、インターフェロンが挙げられる。また、例えば、有効成分がビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスの組み合わせである場合に、特定の成分として、さらに特には、HSP70、CCL8、CCL21、IFN-γが挙げられる。また、一態様において、特定の成分としては、特に、CCL28が挙げられる。また、一態様において、特定の成分としては、特に、Galectin-9が挙げられる。特定の成分としては、1種の成分の含有量が増大してもよく、2種またはそれ以上の成分の含有量が増大してもよい。なお、一態様において、本発明からは、特定の成分がインターロイキンである場合、特にインターロイキン27(IL-27)またはインターロイキン10(IL-10)である場合、が除かれてもよい。また、一態様において、本発明からは、特定の成分がRNAである場合が除かれてもよい。例えば、有効成分がビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスの組み合わせではない場合に、本発明からは、特定の成分がRNAである場合が除かれてもよい。
【0019】
また、一態様においては、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、CCL28の分泌を促進することができる。すなわち、一態様においては、有効成分を利用することにより、具体的には有効成分を対象に投与することにより、CCL28の分泌を促進する効果が得られる。同効果を、「CCL28分泌促進効果」ともいう。分泌としては、粘膜組織での分泌、乳腺での分泌、母乳中への分泌が挙げられる。粘膜組織でのCCL28分泌促進により、例えば、抗菌効果、抗ウイルス効果、免疫機能の活性化等の効果が得られ得る。免疫機能の活性化としては、IgA分泌促進が挙げられる。抗菌効果、抗ウイルス効果、または免疫機能の活性化により、例えば、感染症を予防および/または治療することができ得る。感染症としては、感染性胃腸炎、上気道感染症、口腔感染症、子宮感染症、乳房炎が挙げられる。また、粘膜組織でのCCL28分泌促進により、例えば、腸内細菌叢を調整することができ得る。また、乳腺でのCCL28分泌促進により、例えば、乳房炎を予防および/または治療することができ得る。一態様において、本発明からは、ビフィドバクテリウム属細菌が乳腺に移行することにより乳房炎が予防および/または治療される場合が除かれてもよい。また、母乳中へのCCL28分泌促進により、母乳中のCCL28含有量を増大させることができる。このような母乳中のCCL28含有量の増大は、母乳成分の増強の一例でもある。また、このようにしてCCL28含有量の増大した母乳は、本発明の母乳の一例でもある。
【0020】
また、本発明の母乳を利用することにより、具体的には本発明の母乳を対象に投与することにより、当該対象において種々の効果が得られ得る。そのような効果を、「本発明の母乳の効果」ともいう。なお、説明の便宜上、有効成分が投与される対象を「第1の対象」、本発明の母乳が投与される対象を「第2の対象」ともいう。すなわち、本発明の母乳は有効成分の投与後の第1の対象の母乳であり、本発明の母乳の効果は第2の対象において得られる効果である。本発明の母乳の効果は、増強される母乳成分の種類や含有量に応じた効果であってよい。例えば、HSP70等の熱ショックタンパク質が増強される場合に期待される効果としては、消化管の発達の促進、消化管のタイトジャンクションの形成の促進、消化管のバリア機能の維持が挙げられる(Liedel JL. et al., Mother's milk-induced Hsp70 expression preserves intestinal epithelial barrier function in an immature rat pup model. Pediatr Res. 2011 May;69(5 Pt 1):395-400.)。また、例えば、CCL8、CCL21、CCL28等のケモカインが増強される場合に期待される効果としては、抗菌効果、抗ウイルス効果、免疫機能の活性化が挙げられる(Gong W. et al., Monocyte chemotactic protein-2 activates CCR5 and blocks CD4/CCR5-mediated HIV-1 entry/replication. J Biol Chem. 1998 Feb 20;273(8):4289-92.;Yang D. et al., Many chemokines including CCL20/MIP-3alpha display antimicrobial activity. J Leukoc Biol. 2003 Sep;74(3):448-55.;Yuan Lin et al., CCL21 Cancer Immunotherapy. Cancers (Basel). 2014 Jun; 6(2): 1098-1110.)。免疫機能の活性化としては、IgA分泌促進が挙げられる。抗菌効果、抗ウイルス効果、または免疫機能の活性化により、例えば、感染症を予防および/または治療することができ得る。感染症としては、感染性胃腸炎、上気道感染症、口腔感染症、子宮感染症、乳房炎が挙げられる。また、CCL8、CCL21、CCL28等のケモカインが増強される場合に期待される効果としては、腸内細菌叢の調整も挙げられる。また、例えば、IFN-γ等のインターフェロンが増強される場合に期待される効果としては、Th1型免疫応答の誘導やアレルギーの抑制が挙げられる。また、例えば、Galectin-9等のレクチンが増強される場合に期待される効果としては、アレルギーの抑制が挙げられる。アレルギーの抑制としては、アレルギーの予防や治療が挙げられる。本発明の母乳は、具体的には、後述する「本発明の母乳の利用」に記載されている態様で対象に投与することができる。
【0021】
母乳成分増強効果は、有効成分の投与時における母乳中の特定の成分の含有量を測定することにより確認できる。母乳成分増強効果は、具体的には、有効成分の非投与時と有効成分の投与時における母乳中の特定の成分の含有量を測定し比較することにより確認できる。すなわち、有効成分の非投与時と比較して、有効成分の投与時に母乳中の特定の成分の含有量が増大している場合に、母乳成分増強効果が得られたと判断できる。特定の成分の含有量は、例えば、化合物の定量に用いられる公知の手法により確認することができる。そのような手法としては、例えば、GC/MS、NMR、ELISA、多項目同時検出系(Multiplex)等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の母乳の効果は、本発明の母乳の投与時における当該効果に対応する現象の有無または程度を測定することにより確認できる。本発明の母乳の効果は、具体的には、本発明の母乳の非投与時と本発明の母乳の投与時における当該効果に対応する現象の有無または程度を測定し比較することにより確認できる。
【0023】
また、CCL28分泌促進効果またはそれにより得られる効果は、母乳成分増強効果または本発明の母乳の効果と同様に確認することができる。
【0024】
また、本発明は、母乳成分増強効果やCCL28分泌促進効果に伴う用途での有効成分の使用を提供する。すなわち、本発明は、例えば、母乳成分の増強のための有効成分の使用、CCL28の分泌促進のための有効成分の使用、CCL28の分泌促進により得られる効果を得るための有効成分の使用、本発明の母乳の効果を得るための有効成分の使用、本発明の母乳の製造のための有効成分の使用、および母乳成分増強用の組成物やCCL28分泌促進用の組成物等の本発明の組成物の製造のための有効成分の使用を提供する。また、本発明は、母乳成分増強効果やCCL28分泌促進効果に伴う用途に用いるための有効成分を提供する。すなわち、本発明は、例えば、母乳成分の増強に用いるための有効成分、CCL28の分泌促進に用いるための有効成分、CCL28の分泌促進により得られる効果を得るために用いるための有効成分、本発明の母乳の効果を得るために用いるための有効成分、本発明の母乳の製造に用いるための有効成分、および母乳成分増強用の組成物やCCL28分泌促進用の組成物等の本発明の組成物の製造に用いるための有効成分を提供する。
【0025】
また、有効成分として複数成分を組み合わせて用いる場合、本発明は、他の有効成分との併用するための各有効成分の使用を提供する。また、有効成分として複数成分を組み合わせて用いる場合、本発明は、他の有効成分との併用するための各有効成分を提供する。各有効成分は、母乳成分増強効果やCCL28分泌促進効果に伴う用途のために、他の有効成分と併用されてよい。
【0026】
有効成分および本発明の母乳は、いずれも、治療目的で利用されてもよく、非治療目的で利用されてもよい。すなわち、上記例示したような効果は、いずれも、特記しない限り、治療目的で得られてもよく、非治療目的で得られてもよい。非治療目的の場合、本明細書において言及する「治療」とは、「改善」と解釈してもよい。「治療目的」とは、例えば、治療のための人体への処置行為を含むことを意味してよく、特に、医療行為として実施されることを意味してもよい。「非治療目的」とは、例えば、治療のための人体への処置行為を含まないことを意味してよく、特に、非医療行為として実施されることを意味してもよい。非治療目的としては、健康増進や美容等の目的が挙げられる。
【0027】
<ビフィドバクテリウム属細菌>
ビフィドバクテリウム属細菌は、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌は、単独で、あるいは他の有効成分との併用により、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。ビフィドバクテリウム属細菌としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(Bifidobacterium thermophilum)が挙げられる。ビフィドバクテリウム属細菌としては、特に、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)やビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)が挙げられる。ビフィドバクテリウム属細菌として、さらに特には、ビフィドバクテリウム・ブレーベが挙げられる。ビフィドバクテリウム属細菌としては、1種の細菌を用いてもよく、2種またはそれ以上の細菌を組み合わせて用いてもよい。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよび/またはビフィドバクテリウム・ブレーベを用いてもよい。一態様において、ビフィドバクテリウム属細菌としては、特に、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ビフィドバクテリウム・ロンガムには、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(B. longum subsp. longum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(B. longum subsp. infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・スイス(B. longum subsp. suis)等の、ビフィドバクテリウム・ロンガムのいずれの亜種に分類される株も包含される。ビフィドバクテリウム・アニマリスには、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス(B. animalis subsp. lactis)等の、ビフィドバクテリウム・アニマリスのいずれの亜種に分類される株も包含される。ビフィドバクテリウム・シュードロンガムには、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・グロボッサム(B. pseudolongum subsp. globosum)やビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・シュードロンガム(B. pseudolongum subsp. pseudolongum)等の、ビフィドバクテリウム・シュードロンガムのいずれの亜種に分類される株も包含される。
【0029】
ビフィドバクテリウム・ロンガムは、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガムは、単独で、あるいは他の有効成分との併用により、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。ビフィドバクテリウム・ロンガムとして、具体的には、BB536(BAA-999, NITE BP-02621)、ATCC 15697、ATCC 15707、ATCC 25962、ATCC 15702、ATCC 27533、M-63、BG7、DSM 24736、SBT 2928、NCC 490(CNCM I-2170)、NCC 2705(CNCM I-2618)が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ロンガムとしては、特に、BB536が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ロンガムとしては、1種の株を用いてもよく、2種またはそれ以上の株を用いてもよい。
【0030】
ビフィドバクテリウム・ブレーベは、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。具体的には、ビフィドバクテリウム・ブレーベは、単独で、あるいは他の有効成分との併用により、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。ビフィドバクテリウム・ブレーベとして、具体的には、M-16V(NITE BP-02622)、 MCC1274(B-3, FERM BP-11175)、ATCC 15700、B632(DSM 24706)、Bb99(DSM 13692)、ATCC 15698、DSM 24732、UCC2003、YIT4010、YIT4064、BBG-001、BR-03、C50、R0070が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、特に、M-16V、DSM 24732、BBG-01が挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、さらに特には、M-16Vが挙げられる。ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、1種の株を用いてもよく、2種またはそれ以上の株を用いてもよい。
【0031】
ビフィドバクテリウム・ビフィダムとして、具体的には、ATCC 29521、OLB6378、BF-1が挙げられる。ビフィドバクテリウム・アドレセンティスとして、具体的には、ATCC 15703が挙げられる。ビフィドバクテリウム・デンティウムとして、具体的には、DSM 20436が挙げられる。ビフィドバクテリウム・アニマリスとして、具体的には、DSM 10140、Bb-12、DN-173 010、GCL2505、CNCM I-3446が挙げられる。ビフィドバクテリウム・シュードロンガムとして、具体的には、JCM 5820やATCC 25526が挙げられる。ビフィドバクテリウム・サーモフィラムとして、具体的には、ATCC 25525が挙げられる。
【0032】
ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536は、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02621の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0033】
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vは、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02622の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされている。
【0034】
これらの菌株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC, Address: 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)、Belgian Coordinated Collections of Microorganisms(BCCM, Address: Rue de la Science 8, 1000 Brussels, Belgium)、または各菌株が寄託された寄託機関から入手することができる。
【0035】
なお、上記例示した菌株名で特定される菌株には、当該菌株名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、例えば、「ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536」には、BB536の寄託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。各菌株について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、単独で、あるいは他の有効成分との併用により、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られ、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託株の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは99.86%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有し、且つ、好ましくは上記寄託株と同一の菌学的性質を有する株をいう。各菌株について、上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。育種方法としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。寄託株から自然に生じた株としては、寄託株の使用の際に自然に生じた株が挙げられる。そのような株としては、寄託株の培養(例えば継代培養)により自然に生じた変異株が挙げられる。派生株は、1種の改変により構築されてもよく、2種またはそれ以上の改変により構築されてもよい。
【0036】
ビフィドバクテリウム属細菌としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。市販品としては、例えば、森永乳業社製のビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガムBB536やビフィドバクテリウム・ブレーベM-16Vが挙げられる。また、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体は、ビフィドバクテリウム属細菌を培養することにより容易に取得することができる。培養方法は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培養方法としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。培養温度は、例えば、25~50℃であってよく、35~42℃であることが好ましい。培養は、好ましくは嫌気条件下で実施することができ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら実施することができる。また、培養は、液体静置培養等の微好気条件下で実施することもできる。培養は、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌が所望の程度に増殖するまで実施することができる。
【0037】
培養に用いる培地は、ビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り、特に制限されない。培地としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩類や硝酸塩類を用いることができる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、培地成分としては、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、培地成分としては、乳成分を用いてもよい。乳成分としては、乳タンパク質が挙げられる。乳タンパク質としては、カゼイン、ホエイ、それらの分解物が挙げられる。これらの成分は、単独で、あるいは適宜組み合わせて利用してよい。また、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地として、具体的には、強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial medium)、MRS培地(de Man, Rogosa, and Sharpe medium)、mMRS培地(modified MRS medium)、TOSP培地(TOS propionate medium)、TOSP Mup培地(TOS propionate mupirocin medium)が挙げられる。
【0038】
ビフィドバクテリウム属細菌としては、ビフィドバクテリウム属細菌の菌体またはそれを含有する画分を、特に制限されず用いることができる。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌としては、例えば、培養により得られた培養物をそのまま用いてもよく、培養物を希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、母乳成分増強効果等の所望の効果を損なわない限り、加熱や凍結乾燥等の種々の追加操作を培養後に行うことができる。追加操作は、菌体の生残性が高いものであるのが好ましい。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌として、具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌の培養物、同培養物から回収した菌体、それらの希釈物、濃縮物、乾燥物等の処理物が挙げられる。菌体は、生菌体であってもよく、死菌体であってもよい。菌体は、例えば、生菌体からなるものであってもよく、死菌体からなるものであってもよく、生菌体と死菌体の混合物であってもよい。一態様において、菌体は、生菌体を含有する形態で使用されてもよい。一態様において、菌体は、例えば、生菌体からなるものであってもよく、生菌体と死菌体の混合物であってもよい。例えば、有効成分がビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、及びプレバイオティクスの組み合わせである場合に、菌体は生菌体を含有する形態で使用されてもよい。
【0039】
生菌体を利用する場合に利用できる処理としては、菌液凍結法、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、凍結乾燥法、オイルドロップ法が挙げられる。死菌体は、例えば、生菌体を殺菌処理に供することにより調製することができる。殺菌処理としては、加熱処理、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、レトルト殺菌法、凍結乾燥法、UHT殺菌法、加圧殺菌法、高圧蒸気滅菌法、乾熱滅菌法、流通蒸気消毒法、電磁波殺菌法、電子線滅菌法、高周波滅菌法、放射線滅菌法、紫外線殺菌法、酸化エチレンガス滅菌法、過酸化水素ガスプラズマ滅菌法、アルコール殺菌法、ホルマリン固定法、電解水処理法が挙げられる。加熱処理としては、70~100℃で10~60分の加熱が挙げられる。
【0040】
<プレバイオティクス>
「プレバイオティクス」とは、腸管内で有益な細菌を選択的に増殖させることを可能にする難消化性の食品成分を意味してよい。有益な細菌としては、ビフィドバクテリウム属細菌が挙げられる。すなわち、プレバイオティクスとしては、特に、ビフィドバクテリウム属細菌を選択的に増殖させる成分が好ましい。プレバイオティクスとしては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
プレバイオティクスは、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、具体的にはビフィドバクテリウム属細菌(例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよび/またはビフィドバクテリウム・ブレーベ)との併用により母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。プレバイオティクスとしては、オリゴ糖、食物繊維、グルコン酸が挙げられる。オリゴ糖としては、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、ラクトスクロース、大豆オリゴ糖、コーヒーオリゴ糖が挙げられる。また、オリゴ糖としては、ヒトミルクオリゴ糖が挙げられる。ヒトミルクオリゴ糖としては、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、2’,3-ジフコシルラクトース、ラクト-N-トリオースII、ラクト-N-テトラオース、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ネオフコペンタオース、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ネオフコペンタオースV、ラクト-N-ジフコヘキサオースI、ラクト-N-ジフコヘキサオースII、6’-ガラクトシルラクトース、3’-ガラクトシルラクトース、ラクト-N-ヘキサオースおよびラクト-N-ネオヘキサオース等の中性ヒトミルクオリゴ糖や、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、ジシアリル-ラクト-N-テトラオース等の酸性ヒトミルクオリゴ糖が挙げられる。オリゴ糖の長さは、例えば、3~10残基、3~7残基、または3~5残基であってよい。フラクトオリゴ糖としては、スクロースのフルクトース残基に1つまたはそれ以上のフルクトース残基がβ(2→1)結合で結合しているものが挙げられる。フラクトオリゴ糖として、具体的には、1-ケストース(1-kestose;「GF2」ともいう)、ニストース(nystose;「GF3」ともいう)、1F-β-フラクトフラノシルニストース(1F-beta-fructofuranosylnystose;「GF4」ともいう)が挙げられる。フラクトオリゴ糖は、例えば、GF2、GF3、およびGF4から選択される1種、2種、または3種全ての成分を含んでいてよい。食物繊維としては、ポリデキストロースやイヌリンが挙げられる。プレバイオティクスとしては、特に、オリゴ糖が挙げられる。プレバイオティクスとして、さらに特には、フラクトオリゴ糖が挙げられる。
【0042】
プレバイオティクスとしては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。プレバイオティクスの製造方法は特に制限されない。プレバイオティクスは、例えば、化学合成、酵素反応、発酵法、抽出法、またはそれらの組み合わせにより製造することができる。プレバイオティクスは、所望の程度に精製されていてもよい。すなわち、プレバイオティクスとしては、精製品を用いてもよいし、プレバイオティクスを含有する素材を用いてもよい。プレバイオティクスとしては、例えば、純度が50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上のものを用いてもよい。
【0043】
<2>本発明の組成物
本発明の組成物は、上記の有効成分を含有する組成物である。
【0044】
すなわち、本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を含有する組成物である。
【0045】
本発明の組成物は、さらに、プレバイオティクスを含有していてもよい。
【0046】
本発明の組成物は、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、及びプレバイオティクスを含有する組成物であってもよい。
【0047】
本発明の組成物は、対象に投与して利用できる。本発明の組成物は、具体的には、後述する「本発明の方法」に記載されている態様で対象に投与することができる。本発明の組成物が投与される対象は、第1の対象(有効成分が投与される対象)の一例である。本発明の組成物は、例えば、上記例示したような効果を得るために利用することができる。
【0048】
一態様においては、本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、当該対象において母乳中の特定の成分の含有量を増大させることができる、すなわち、母乳成分増強効果が得られる。すなわち、本発明の組成物は、母乳成分増強用組成物であってよい。一態様において、本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスを含有する母乳成分増強用組成物であってもよい。また、一態様において、本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌を含有する母乳中のGalectin-9増強用組成物であってもよい。
【0049】
また、一態様においては、本発明の組成物を利用することにより、具体的には本発明の組成物を対象に投与することにより、当該対象においてCCL28の分泌を促進することができる、すなわち、CCL28分泌促進効果が得られる。すなわち、本発明の組成物は、CCL28分泌促進用組成物であってよい。すなわち、一態様において、本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌を含有するCCL28分泌促進用組成物であってもよい。また、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)は、CCL28の分泌促進により得られる効果を得るために用いられる組成物であってもよい。すなわち、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)は、例えば、抗菌用、抗ウイルス用、または免疫機能活性化用の組成物であってもよい。また、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)は、例えば、IgA分泌促進用組成物であってもよい。また、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)は、例えば、感染症の予防および/または治療用組成物であってもよい。また、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)は、例えば、乳房炎の予防および/または治療用組成物であってもよい。なお、一態様において、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)からは、ビフィドバクテリウム属細菌が乳腺に移行することにより乳房炎が予防および/または治療される場合が除かれてもよい。また、本発明の組成物(具体的には、CCL28分泌促進用組成物)は、例えば、母乳中のCCL28増強用組成物であってもよい。
【0050】
また、本発明の母乳を利用することにより、具体的には本発明の母乳を対象に投与することにより、当該対象において本発明の母乳の効果が得られ得る。すなわち、本発明の組成物は、本発明の母乳の利用を介して本発明の母乳の効果を得るために用いられる組成物であってもよい。言い換えると、本発明の組成物は、第1の対象の母乳(本発明の母乳)が投与される第2の対象において本発明の母乳の効果を得ることを目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、第2の対象における消化管の発達の促進、消化管のタイトジャンクションの形成の促進、または消化管のバリア機能の維持を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、例えば、第2の対象における抗菌効果、抗ウイルス効果、または免疫機能の活性化を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、例えば、第2の対象におけるIgA分泌促進を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、例えば、第2の対象における感染症の予防および/または治療を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、例えば、第2の対象における腸内細菌叢の調整を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、例えば、第2の対象におけるTh1型免疫応答の誘導を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、例えば、第2の対象におけるアレルギーの抑制を目的として第1の対象に投与して用いられる組成物であってもよい。
【0051】
本発明の組成物が投与される対象については、「本発明の方法」における有効成分が投与される対象についての記載を準用できる。すなわち、本発明の組成物が投与される対象としては、ヒト(すなわちヒトの女性)等のメスの哺乳動物が挙げられる。また、本発明の組成物が投与される対象としては、ヒトの場合、妊産婦や授乳婦が挙げられる。
【0052】
本発明の母乳が投与される対象については、「本発明の母乳の利用」における本発明の母乳が投与される対象についての記載を準用できる。すなわち、本発明の母乳が投与される対象としては、ヒト等の哺乳動物が挙げられる。また、本発明の母乳が投与される対象としては、ヒトの場合、乳児や幼児が挙げられる。
【0053】
また、有効成分として複数成分を組み合わせて用いる場合、上述のとおり、各有効成分は他の有効成分と併用するために用いることができる。すなわち、本発明の組成物の別の態様は、有効成分から選択される少なくとも1つの成分(「選択成分」ともいう)を含有する組成物であって、且つ、有効成分から選択される残りの成分(「残余成分」ともいう)と併用される組成物であってよい。本発明の組成物の別の態様は、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスから選択される少なくとも1つの成分を含有する組成物であって、且つ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスから選択される残りの成分と併用される組成物であってもよい。本発明の組成物の別の態様については、選択成分を含有し、且つ残余成分と併用されること以外は、上述した本発明の組成物の記載を準用できる。本発明の組成物の別の態様は、例えば、上記例示したような効果を得るために利用することができる。残余成分は、組成物の投与前に対象に投与されてもよく、組成物と同時に対象に投与されてもよく、組成物の投与後に対象に投与されてもよい。併用のタイミングについては、「本発明の方法」における有効成分の投与についての記載を準用できる。
【0054】
本発明の組成物は、例えば、飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物であってよい。すなわち、本発明は、例えば、母乳成分増強用やCCL28分泌促進用等の上記例示した用途に用いるための飲食品組成物、母乳成分増強用やCCL28分泌促進用等の上記例示した用途に用いるための医薬組成物、または母乳成分増強用やCCL28分泌促進用等の上記例示した用途に用いるための飼料組成物を提供することができる。これらの組成物を、それぞれ、「本発明の飲食品組成物」、「本発明の医薬組成物」、および「本発明の飼料組成物」ともいう。
【0055】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含有していてもよい。
【0056】
有効成分以外の成分は、母乳成分増強効果等の所望の効果を損なわない限り、特に制限されない。有効成分以外の成分としては、本発明の組成物の利用態様に応じて許容可能なものを利用できる。有効成分以外の成分としては、例えば、飲食品、医薬品、または飼料に配合して利用される成分を利用できる。有効成分以外の成分として、具体的には、後述する飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物について例示するような成分が挙げられる。有効成分以外の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明の組成物における各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)の含有量や含有量比は、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物における各成分の含有量や含有量比は、有効成分の種類、その他の成分の種類、組成物の種類、形状(剤形)、および用法、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0058】
本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、例えば、1×104cfu/g以上、1×105cfu/g以上、1×106cfu/g以上、または1×107cfu/g以上であってもよく、1013cfu/g以下、1012cfu/g以下、または1×1011cfu/g以下であってもよく、それらの組み合わせの範囲であってもよい。また、本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、例えば、1×104cfu/mL以上、1×105cfu/mL以上、1×106cfu/mL以上、または1×107cfu/mL以上であってもよく、1013cfu/mL以下、1012cfu/mL以下、または1×1011cfu/mL以下であってもよく、それらの組み合わせの範囲であってもよい。本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、具体的には、例えば、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlであってもよく、1×106~1×1012cfu/gまたは1×106~1×1012cfu/mlであってもよく、1×107~1×1011cfu/gまたは1×107~1×1011cfu/mlであってもよい。また、組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、例えば、本発明の組成物が飲食品組成物である場合に、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlであることが好ましく、1×107~1×1011cfu/gまたは1×107~1×1011cfu/mlであることがより好ましい。また、本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、例えば、本発明の組成物が医薬組成物である場合に、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlであることが好ましく、1×107~1×1011cfu/gまたは1×107~1×1011cfu/mlであることがより好ましい。また、本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、例えば、本発明の組成物が飼料組成物である場合に、1×106~1×1012cfu/gまたは1×106~1×1012cfu/mlであることが好ましく、1×107~1×1011cfu/gまたは1×107~1×1011cfu/mlであることがより好ましい。なお、2種またはそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を用いる場合、上記例示した本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、それら2種またはそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌の総含有量であってもよく、それぞれの含有量であってもよい。すなわち、具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌としてビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベを組み合わせて用いる場合、本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベの含有量は、それぞれ、例えば、上記例示した本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム属細菌の含有量の範囲であってもよい。「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。有効成分が死菌体である場合、「cfu」は「cells」と読み替えてもよい。
【0059】
本発明の組成物におけるプレバイオティクスの含有量は、例えば、1%(w/w)以上、5%(w/w)以上、または10%(w/w)以上であってもよく、90%(w/w)以下、70%(w/w)以下、50%(w/w)以下、30%(w/w)以下、20%(w/w)以下、10%(w/w)以下、または5%(w/w)以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。本発明の組成物におけるプレバイオティクスの含有量は、具体的には、例えば、1%(w/w)~90%(w/w)であってもよく、1%(w/w)~70%(w/w)であってもよく、1%(w/w)~50%(w/w)であってもよく、1%(w/w)~20%(w/w)であってもよい。また、本発明の組成物におけるプレバイオティクスの含有量は、例えば、本発明の組成物が飲食品組成物である場合に、1~70%(w/w)であることが好ましい。また、本発明の組成物におけるプレバイオティクスの含有量は、例えば、本発明の組成物が医薬組成物である場合に、1~70%(w/w)であることが好ましい。また、本発明の組成物におけるプレバイオティクスの含有量は、例えば、本発明の組成物が飼料組成物である場合に、1~70%(w/w)であることが好ましい。なお、2種またはそれ以上のプレバイオティクスを用いる場合、上記例示した本発明の組成物におけるプレバイオティクスの含有量は、それら2種またはそれ以上のプレバイオティクスの総含有量であってよい。また、プレバイオティクスの含有量は、プレバイオティクスを含有する素材を用いる場合にあっては、特記しない限り、当該素材中のプレバイオティクスそのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0060】
また、本発明の組成物における各有効成分の含有量は、例えば、後述するような各有効成分の投与量が得られるように設定することができる。
【0061】
本発明の組成物の形状は特に制限されない。本発明の組成物の形状としては、本発明の組成物の利用態様に応じて許容可能なものを採用できる。本発明の組成物の形状として、具体的には、後述する飲食品組成物、医薬組成物、または飼料組成物について例示するような形状が挙げられる。
【0062】
有効成分およびその他の成分は、互いに混合されて本発明の組成物に含まれていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の組成物に含まれていてもよい。例えば、本発明の組成物が複数の有効成分(例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクス)を含有する場合、本発明の組成物は、それぞれ別個にパッケージングされた、当該複数の有効成分のセットとして提供されてもよい。このような場合、当該複数の有効成分は、適宜組み合わせて対象に投与すればよい。
【0063】
<飲食品組成物>
本発明の飲食品組成物は、有効成分を含有する限り特に制限されない。本発明の飲食品組成物は、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の任意の形状で提供されてよい。
【0064】
飲食品組成物は、例えば、飲食品そのものであってもよく、飲食品の製造に利用される素材であってもよい。そのような素材としては、調味料、食品添加物、その他の飲食品原料が挙げられる。飲食品組成物として、具体的には、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、グミ、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、錠菓、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、流動食、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食品;特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品);栄養補助食品等が挙げられる。また、飲食品組成物は、サプリメントであってもよく、例えばタブレット状のサプリメントであってもよい。飲食品組成物がサプリメントである場合には、一日当りの食事量及び摂取カロリーについて他の食品に影響されることなく、有効成分を摂取できる。
【0065】
本発明の飲食品組成物は、有効成分を他の成分と組み合わせることにより製造できる。有効成分を他の成分と組み合わせる操作を、「有効成分の添加」ともいう。本発明の飲食品組成物の製造方法は、特に制限されない。本発明の飲食品組成物は、有効成分を添加すること以外は、例えば、通常の飲食品と同様の原料を用いて通常の飲食品と同様の方法により製造することができる。本発明の飲食品組成物が、調味料、食品添加物、その他の飲食品原料等の飲食品の製造に利用される素材として製造される場合も同様である。有効成分の添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で実施してもよい。有効成分の添加は、例えば、飲食品組成物の製造途中または製造後に実施してよい。すなわち、例えば、予め調製された飲食品に有効成分を添加して本発明の飲食品組成物としてもよい。また、添加した有効成分(特にビフィドバクテリウム属細菌)による発酵工程を経て、飲食品組成物が製造されてもよい。発酵工程を経て製造される飲食品組成物としては、乳酸菌飲料や発酵乳等の発酵製品が挙げられる。すなわち、有効成分(特にビフィドバクテリウム属細菌)は、例えば、発酵製品の製造用のスターターとして使用してもよい。また、有効成分は、製造された発酵製品に後から添加することもできる。
【0066】
また、本発明の飲食品組成物を用いて、さらに別の飲食品組成物を製造することもできる。すなわち、例えば、本発明の飲食品組成物が、調味料、食品添加物、その他の飲食品原料等の飲食品の製造に利用される素材として提供される場合、飲食品の原料に本発明の飲食品組成物を添加することにより別の飲食品組成物を製造することができる。このようにして製造される別の飲食品組成物も、本発明の飲食品組成物の一態様である。本発明の飲食品組成物の添加については、飲食品組成物の製造における有効成分の添加についての記載を準用できる。
【0067】
本発明の飲食品組成物は、母乳成分増強用等の上記例示したような用途が表示された飲食品組成物(例えば飲食品やその素材)として販売することができる。言い換えると、本発明の飲食品組成物には、「母乳成分増強用」等の文言を表示することができる。なお、表示する文言は、母乳成分増強用等の上記例示したような用途を示す文言には限られず、上記例示したような用途での組成物の利用によって生じる効果を表す文言であってもよい。例えば、母乳成分増強用という用途での組成物の利用によって生じる効果としては、本発明の母乳の効果が挙げられる。
【0068】
前記「表示」とは、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為を意味し、上記用途を想起または類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」に該当する。しかしながら、表示は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現によりなされることが好ましい。
【0069】
表示として、具体的には、本発明の飲食品組成物に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為、商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が例示でき、特に包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等への表示が好ましい。
【0070】
また、表示としては、行政等によって許可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)が好ましい。そのような表示としては、保健機能食品、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養補助食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができ、その他消費者庁によって認可される表示も例示できる。消費者庁によって認可される表示としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。消費者庁によって認可される表示として、具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を例示することができる。消費者庁によって認可される表示として、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示等を例示することができる。
【0071】
本発明の食品組成物は、具体的には、例えば、母乳成分増強用粉乳であってよい。母乳成分増強用粉乳は、例えば、以下の方法により製造できる。
【0072】
すなわち、本発明は、下記工程(A)~(C)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法を提供する:
(A)乳成分を含有する培地でビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を培養し、培養物を得る工程;
(B)前記培養物を噴霧乾燥および/または凍結乾燥に供し、菌体粉末を得る工程;
(C)前記菌体粉末とプレバイオティクスを混合し、母乳成分増強用の粉乳を得る工程。
【0073】
また、本発明は、下記工程(A)を含む、母乳成分増強用粉乳の製造方法を提供する:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および乳成分を混合し、粉乳を得る工程。
【0074】
また、本発明の食品組成物は、具体的には、例えば、母乳成分増強用サプリメントであってよい。母乳成分増強用サプリメントは、例えば、以下の方法により製造できる。
【0075】
すなわち、本発明は、下記工程(A)および(B)を含む、母乳成分増強用サプリメントの製造方法を提供する:
(A)プレバイオティクス、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌、および賦形剤を混合し、混合物を得る工程;
(B)前記混合物を打錠する工程。
【0076】
上記いずれの製造方法においても、適宜、上記工程で言及した成分以外の成分を併用してよい。
【0077】
<医薬組成物>
本発明の医薬組成物は、有効成分を含有する限り特に制限されない。本発明の医薬組成物としては、例えば、有効成分をそのまま使用してもよく、有効成分を適宜製剤化して使用してもよい。
【0078】
本発明の医薬組成物の剤形は、特に制限されない。剤形として、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、及び坐剤等が挙げられる。また、製剤化にあたっては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、及び溶剤等の生理的に許容される添加剤を使用することができる。これら添加剤は、剤形等の諸条件に応じて適宜選択できる。添加剤としては、各種の有機成分および無機成分が挙げられる。
【0079】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α‐デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0080】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0081】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0082】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0083】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0084】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
【0085】
<飼料組成物>
本発明の飼料組成物は、有効成分を含有する限り特に制限されない。飼料組成物としては、ペットフードや家畜飼料が挙げられる。本発明の飼料は、粉末状、顆粒状、クランブル状、ペレット状、キューブ状、ペースト状、液状等の任意の形状で提供されてよい。
【0086】
本発明の飼料組成物は、有効成分を他の成分と組み合わせることにより製造できる。有効成分を他の成分と組み合わせる操作を、「有効成分の添加」ともいう。本発明の飼料組成物の製造方法は、特に制限されない。本発明の飼料組成物は、有効成分を添加すること以外は、例えば、通常の飼料と同様の原料を用いて通常の飼料と同様の方法により製造することができる。有効成分の添加は、飼料組成物の製造工程のいずれの段階で実施してもよい。有効成分の添加は、例えば、飼料組成物の製造途中または製造後に実施してよい。すなわち、例えば、予め調製された飼料に有効成分を添加して本発明の飼料組成物としてもよい。また、添加した有効成分(特にビフィドバクテリウム属細菌)による発酵工程を経て、飼料組成物が製造されてもよい。発酵工程を経て製造される飼料組成物としては、サイレージが挙げられる。
【0087】
<3>本発明の方法
本発明の方法は、上記の有効成分を対象に投与する工程を含む方法である。同工程を、「投与工程」ともいう。
【0088】
すなわち、本発明の方法は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属細菌を対象に投与する工程を含む方法である。
【0089】
本発明の方法は、さらに、プレバイオティクスを対象に投与する工程を含んでいてもよい。
【0090】
本発明の方法は、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、及びプレバイオティクスを対象に投与する工程を含む方法であってもよい。
【0091】
一態様においては、本発明の方法により、具体的には有効成分を対象に投与することにより、当該対象において母乳中の特定の成分の含有量を増大させることができる、すなわち、母乳成分増強効果が得られる。すなわち、本発明の方法は、母乳成分(母乳中の特定の成分)を増強する方法であってよい。一態様において、本発明の方法は、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、及びプレバイオティクスを対象に投与する工程を含む、母乳成分を増強する方法であってもよい。また、一態様において、本発明の方法は、ビフィドバクテリウム属細菌を対象に投与する工程を含む、母乳中のGalectin-9を増強する方法であってもよい。
【0092】
また、一態様においては、本発明の方法により、具体的には有効成分を対象に投与することにより、当該対象においてCCL28の分泌を促進することができる、すなわち、CCL28分泌促進効果が得られる。すなわち、本発明の方法は、CCL28の分泌を促進する方法であってよい。すなわち、一態様において、本発明の方法は、ビフィドバクテリウム属細菌を対象に投与する工程を含む、CCL28の分泌を促進する方法であってもよい。また、本発明の方法(具体的には、CCL28の分泌を促進する方法)は、CCL28の分泌促進により得られる効果を得るために実施される方法であってもよい。すなわち、本発明の方法(具体的には、CCL28の分泌を促進する方法)は、例えば、抗菌効果を得る方法、抗ウイルス効果を得る方法、または免疫機能を活性化する方法であってもよい。また、本発明の方法(具体的には、CCL28の分泌を促進する方法)は、例えば、IgAの分泌を促進する方法であってもよい。また、本発明の方法(具体的には、CCL28の分泌を促進する方法)は、例えば、感染症を予防および/または治療する方法であってもよい。また、本発明の方法(具体的には、CCL28の分泌を促進する方法)は、例えば、乳房炎を予防および/または治療する方法であってもよい。なお、一態様において、乳房炎を予防および/または治療する方法からは、ビフィドバクテリウム属細菌が乳腺に移行することにより乳房炎が予防および/または治療される場合が除かれてもよい。また、本発明の方法(具体的には、CCL28の分泌を促進する方法)は、例えば、母乳中のCCL28を増強する方法であってもよい。
【0093】
また、本発明の母乳を利用することにより、具体的には本発明の母乳を対象に投与することにより、当該対象において本発明の母乳の効果が得られ得る。すなわち、本発明の方法は、本発明の母乳の利用を介して本発明の母乳の効果を得るために実施される方法であってもよい。言い換えると、本発明の方法は、第1の対象の母乳(本発明の母乳)が投与される第2の対象において本発明の母乳の効果を得ることを目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、第2の対象における消化管の発達の促進、消化管のタイトジャンクションの形成の促進、または消化管のバリア機能の維持を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、第2の対象における抗菌効果、抗ウイルス効果、または免疫機能の活性化を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、第2の対象におけるIgA分泌促進を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、第2の対象における感染症の予防および/または治療を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、第2の対象における腸内細菌叢の調整を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、第2の対象におけるTh1型免疫応答の誘導を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、第2の対象におけるアレルギーの抑制を目的として第1の対象に実施される方法であってもよい。
【0094】
なお、「有効成分を対象に投与すること」は、「対象に有効成分を摂取させること」と同義であってよい。摂取は、自発的なもの(自由摂取)であってもよく、強制的なもの(強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、具体的には、例えば、有効成分を飲食品や飼料に配合して対象に供給し、以て対象に有効成分を自由摂取させる工程であってもよい。投与は、経口投与であってもよく、非経口投与であってもよい。投与は、通常は、経口投与であってよい。非経口投与としては、経管投与や直腸内投与が挙げられる。
【0095】
有効成分の投与態様(例えば、投与対象、投与時期、投与期間、投与回数、投与量、その他投与に係る条件)は、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分の投与態様は、有効成分の種類や、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0096】
有効成分が投与される対象は、母乳成分増強効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分が投与される対象としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、トナカイ、ロバ、ラクダ、イヌ、ネコ、ブタ、ウマが挙げられる。哺乳動物としては、特に、ヒトが挙げられる。哺乳動物は、オスであってもよく、メスであってもよい。哺乳動物は、特に、メスであってよい。すなわち、哺乳動物として、さらに特には、ヒトの女性が挙げられる。少なくとも、母乳成分増強効果等の母乳に関連する効果を得ることを目的とする場合には、有効成分が投与される対象としては、母乳を産生できるもの(すなわちメスの哺乳動物)が選択される。
【0097】
有効成分は、例えば、日常的に投与してもよく、特定の期間に投与してもよい。有効成分は、例えば、母乳が産生される前の期間に予め投与してもよく、母乳が産生されている期間に投与してもよく、これらの両方の期間に投与してもよい。母乳が産生される前の期間に有効成分を予め投与した場合、その後の母乳が産生されている期間に母乳成分増強効果が得られ得る。特定の期間としては、妊娠前の期間、妊娠期、産後期、授乳期が挙げられる。特定の期間として、特に、妊娠期、産後期、授乳期が挙げられる。すなわち、有効成分が投与される対象としては、ヒトの場合、妊産婦や授乳婦が挙げられる。「妊産婦」とは、妊娠開始から産後1年までの期間にある女性をいう。「授乳婦」とは、母乳育児を行っている女性をいう。有効成分は、例えば、妊娠前に投与を開始してもよいが、少なくとも妊娠期、産後期、または授乳期に投与することが望ましい。ヒトの場合、有効成分は、具体的には、例えば、妊娠前の時点から授乳終了までの期間、妊娠が開始または判明した時点から授乳終了までの期間、妊娠第26週から授乳終了までの期間、または妊娠第26週から産後1ヶ月までの期間に投与されてもよい。有効成分は、例えば、母乳成分増強効果等の母乳に関連する効果を得ることを目的とする場合に上記のような期間に投与されてよい。また、有効成分は、例えば、母乳成分増強効果等の母乳に関連する効果を得ることを目的とする場合以外に上記のような期間に投与されてもよい。また、有効成分は、例えば、有効成分の投与による効果が得られることを希望する期間に投与してもよい。また、有効成分は、上記例示した期間の全期間において継続して投与されてもよく、一部の期間にのみ投与されてもよい。「一部の期間」とは、例えば、上記例示した期間の全期間の10%以上、20%以上、30%以上、50%以上、70%以上、または90%以上の期間であってよい。有効成分は、例えば、1日当たり1回投与してもよく、1日当たり複数回に分けて投与してもよい。また、有効成分は、例えば、毎日投与してもよく、数日又は数週間に1回投与してもよい。各投与時の有効成分の投与量は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。
【0098】
ビフィドバクテリウム属細菌の投与量は、例えば、2×106cfu/kg/日以上、2×107cfu/kg/日以上、または2×108cfu/kg/日以上であってもよく、1×1012cfu/kg/日以下、1×1011cfu/kg/日以下、1×1010cfu/kg/日以下、または1×109cfu/kg/日以下であってもよく、それらの組み合わせの範囲であってもよい。一態様において、ビフィドバクテリウム属細菌の投与量は、例えば、2×106cfu/kg/日~1×1012cfu/kg/日であることが好ましく、2×107cfu/kg/日~1×1011cfu/kg/日であることがより好ましく、2×108cfu/kg/日~1×1010cfu/kg/日であることがさらに好ましい。また、一態様において、ビフィドバクテリウム属細菌の投与量は、例えば、2×106cfu/kg/日~1×1011cfu/kg/日であることが好ましく、2×107cfu/kg/日~1×1010cfu/kg/日であることがより好ましく、2×107cfu/kg/日~1×109cfu/kg/日であることがさらに好ましい。有効成分が死菌体である場合、「cfu」は「cells」と読み替えてもよい。なお、2種またはそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌を用いる場合、上記例示したビフィドバクテリウム属細菌の投与量は、それら2種またはそれ以上のビフィドバクテリウム属細菌の総投与量であってもよく、それぞれの投与量であってもよい。すなわち、具体的には、ビフィドバクテリウム属細菌としてビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベを組み合わせて用いる場合、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・ブレーベの投与量は、それぞれ、例えば、上記例示したビフィドバクテリウム属細菌の投与量の範囲であってもよい。
【0099】
また、プレバイオティクスの投与量は、例えば、0.02g/kg/日以上、0.05g/kg/日以上、または0.1g/kg/日以上であってもよく、0.6g/kg/日以下、0.4g/kg/日以下、または0.2g/kg/日以下であってもよく、それらの組み合わせの範囲であってもよい。プレバイオティクスの投与量は、例えば、0.02g/kg/日~0.6g/kg/日であることが好ましく、0.05g/kg/日~0.4g/kg/日であることがより好ましい。なお、2種またはそれ以上のプレバイオティクスを用いる場合、上記例示したプレバイオティクスの投与量は、それら2種またはそれ以上のプレバイオティクスの総投与量であってよい。また、プレバイオティクスの投与量は、プレバイオティクスを含有する素材を用いる場合にあっては、特記しない限り、当該素材中のプレバイオティクスそのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0100】
有効成分は、例えば、そのまま対象に投与されてもよく、有効成分を含有する、飲食品組成物、医薬組成物、飼料組成物等の組成物として調製され、対象に投与されてもよい。有効成分を含有する組成物については、本発明の組成物の記載を準用できる。複数の有効成分を用いる場合、それら有効成分は、予め混合された状態で対象に投与されてもよく、それぞれ別個に対象に投与されてもよい。有効成分をそれぞれ別個に対象に投与する場合、有効成分は同時に対象に投与されてもよく、そうでなくてもよい。有効成分が同時に対象に投与されない場合、有効成分の投与の順序(例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の投与とプレバイオティクスの投与の順序)は特に制限されない。有効成分が同時に対象に投与されない場合、有効成分の一部の投与と有効成分の残部の投与との間隔(例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の投与とプレバイオティクスの投与との間隔)は、母乳成分増強効果の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分の一部の投与と有効成分の残部の投与との間隔(例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の投与とプレバイオティクスの投与との間隔)は、例えば、6時間以内、3時間以内、または1時間以内であってよい。また、有効成分は、単独で投与されてもよく、他の成分と併用投与されてもよい。他の成分としては、医薬や医薬組成物、飲食品や飲食品組成物、飼料や飼料組成物が挙げられる。これら他の成分は、母乳成分増強用やCCL28分泌促進用等の上記例示した用途に用いるためのものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0101】
有効成分は、例えば、本発明の組成物を利用して(すなわち本発明の組成物を投与することにより)、対象に投与することもできる。すなわち、本発明の方法の一態様は、本発明の組成物を対象に投与する工程を含む方法であってよい。「有効成分の添加」には、本発明の組成物の添加も包含される。本発明の組成物の投与態様(例えば、投与対象、投与時期、投与期間、投与回数、投与量、その他投与に係る条件)は、母乳成分増強効果の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物の投与態様は、有効成分の種類や含有量、その他の成分の種類や含有量、組成物の種類や形状(剤形)、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。上述したような有効成分の投与態様に関する記載は、本発明の組成物を対象に投与する場合にも準用できる。すなわち、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような対象に投与することができる。また、本発明の組成物の投与量は、例えば、上記例示したような有効成分の投与量が得られるように設定することができる。また、複数の有効成分を用いる場合であって、それら有効成分がそれぞれ別個に本発明の組成物に含まれる場合、それら有効成分は、互いに混合してから対象に投与されてもよく、それぞれ別個に対象に投与されてもよい。また、本発明の組成物は、単独で投与されてもよく、医薬や医薬組成物、飲食品や飲食品組成物、飼料や飼料組成物等の、他の成分と併用投与されてもよい。
【0102】
なお、本発明の方法により、本発明の母乳が得られてもよい。よって、本発明の方法の一態様は、本発明の母乳を製造する方法であってもよい。本発明の方法の一態様は、より具体的には、有効成分を対象に投与する工程、および本発明の母乳を取得する工程を含む、本発明の母乳を製造する方法であってもよい。本発明の母乳は、例えば、搾乳等の、母乳を回収するために用いられる通常の方法により対象から取得することができる。
【0103】
<4>本発明の母乳の利用
本発明の母乳は、対象に投与して利用できる。本発明の母乳は、例えば、本発明の母乳の効果を得るために利用することができる。
【0104】
本発明の母乳は、例えば、そのまま、あるいは適宜、濃縮、希釈、分画、加熱、凍結、乾燥等の処理に供してから、対象に投与されてよい。これらの処理は、本発明の母乳の効果を損なわない限り、特に制限されない。例えば、分画する場合、本発明の母乳の効果が得られる画分を取得し対象に投与すればよい。そのような画分としては、増強された母乳成分を含有する画分が挙げられる。また、本発明の母乳は、例えば、本発明の母乳を含有する、飲食品組成物、医薬組成物、飼料組成物等の組成物として調製され、対象に投与されてもよい。本発明の母乳を含有する組成物は、本発明の母乳からなるものであってもよく、本発明の母乳以外の成分を含有していてもよい。本発明の母乳以外の成分は、本発明の母乳の効果を損なわない限り、特に制限されない。また、本発明の母乳を含有する組成物における各成分(すなわち、本発明の母乳および任意でその他の成分)の含有量や含有量比は、本発明の母乳の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の母乳を含有する組成物における各成分の含有量や含有量比は、増強された母乳成分の種類の種類、その他の成分の種類、組成物の種類、形状(剤形)、および用法、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。その他、本発明の母乳を含有する組成物については、例えば、上記の有効成分に代えて、あるいは上記の有効成分に加えて、本発明の母乳を含有すること以外は、本発明の組成物の記載を準用できる。
【0105】
本発明の母乳が投与される対象は、特に制限されない。本発明の母乳が投与される対象としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物については、上述した通りである。本発明の母乳が投与される対象は、例えば、成熟個体であってもよく、未成熟個体であってよい。本発明の母乳が投与される対象は、特に、未成熟個体であってよい。本発明の母乳が投与される対象は、具体的には、出生から離乳までの期間にある個体であってもよい。本発明の母乳が投与される対象としては、ヒトの場合、乳児や幼児が挙げられる。本発明の母乳が投与される対象としては、ヒトの場合、特に、乳児が挙げられる。「乳児」とは、生後1年未満の子供をいう。「幼児」とは、生後1年から小学校就学までの子供をいう。また、本発明の母乳が投与される対象としては、ヒトの場合、生後7年未満、6年未満、5年未満、4年未満、3年未満、2年未満、または1年未満の子供が挙げられる。本発明の母乳が投与される対象は、本発明の母乳を産生した個体と同一の種に属するもの(例えば、当該個体の子)であってもよく、そうでなくてもよい。例えば、ヒトから得た母乳をヒトに投与してもよい。すなわち、具体的には、例えば、ヒトに本発明の方法を実施し、当該ヒトが子に授乳することにより、当該子において本発明の母乳の効果が得られ得る。また、例えば、ウシ等のヒト以外の哺乳類から得た母乳をヒトに投与してもよい。
【0106】
本発明の母乳の投与態様(例えば、投与量、投与時期、投与期間、投与回数、その他投与に係る条件)は、本発明の母乳の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の母乳の投与態様は、増強された母乳成分の種類や、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の母乳の投与量は、例えば、投与対象が乳を通常摂取する量に設定することができる。本発明の母乳は、例えば、日常的に投与してもよく、特定の期間に投与してもよい。特定の期間としては、出生から離乳までの期間が挙げられる。その他、本発明の母乳の投与については、例えば、上記の有効成分に代えて、あるいは上記の有効成分に加えて、本発明の母乳を投与すること以外は、本発明の方法における有効成分の投与の記載を準用できる。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〕
Bifidobacterium longum BB536株(NITE BP-02621;以下、「BB536」ともいう)およびBifidobacterium breve M-16V株(NITE BP-02622;以下、「M-16V」ともいう)を、MRSブロスに0.05%システイン塩酸塩を加えた培地で12時間、嫌気的に37℃でそれぞれ培養した。両株の菌体を回収し、共に5×109 cfu/mlとなるように滅菌PBSに懸濁し、菌体懸濁液(BB536+M-16V含有PBS)を調製した。
【0109】
フラクトオリゴ糖(FOS)(和光純薬社製)の5%水溶液を調製し、0.22 μmのフィルター濾過により滅菌した。
【0110】
11週齢の無菌ICRマウス(オス・メス)を三協ラボ株式会社より購入した。
【0111】
1週間の馴化飼育後、マウス(12週齢)のメスを2グループ(シンバイオティクス群および無菌群)に区分した。シンバイオティクス群には、BB536+M-16V含有PBSを200 μl経口投与(菌数として1×109cfuずつ、合計で2×109 cfu)し、投与後に滅菌済5%FOS溶液を自由摂取させることで投与した細菌を定着させた。無菌群には、BB536+M-16V含有PBSを投与せず、滅菌水道水を自由摂取させた。14週齢時点で交配をかけ、出産させた。出産14日後に1 I.U.オキシトシン(Sigma社製)を腹腔内に投与し、15分後にイソフルラン麻酔下で搾乳を行い、乳サンプルを得た。得られた乳サンプルから遠心により細胞と脂質を除き、脱脂乳を得た。得られた脱脂乳中のHSP70(Heat Shock Protein 70)濃度、IFN-γ濃度、CCL8濃度、CCL21濃度をELISA法あるいは多項目同時検出系(Multiplex)(全てR&D Systems社製)を用いて測定した。
【0112】
結果を表1~4に示す。シンバイオティクス群では、無菌群と比較して、母乳中のHSP70、IFN-γ、CCL8、およびCCL21の濃度が増加した。すなわち、上記細菌とフラクトオリゴ糖の併用により母乳成分を増強できることが明らかとなった。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
〔製造例1〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株およびビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株を、それぞれ、MRS液体培地3 mLに植菌し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥し、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate;WPC)と、フラクトオリゴ糖を均一に混合して組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶解し、母乳成分増強用の組成物等の特定の用途に利用できる組成物を得る。当該組成物を妊産婦または授乳婦等の対象に投与することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0118】
〔製造例2〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株およびビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株を、それぞれ、MRS液体培地3 mLに植菌し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥し、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と、乳タンパク質濃縮物の乾燥粉末(MPC480、フォンテラ社製、タンパク質含量80質量%、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質=約8:2)と、フラクトオリゴ糖を均一に混合して、組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶解し、母乳成分増強用の組成物等の特定の用途に利用できる組成物を得る。当該組成物を妊産婦または授乳婦等の対象に投与することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0119】
〔製造例3〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株およびビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株を、それぞれ、MRS液体培地3 mLに植菌し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥し、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。次に、菌末と、フラクトオリゴ糖と、結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加えて造粒し、造粒物を乾燥し、細菌、プレバイオティクス、および賦形剤を含有してなる造粒物の形態で母乳成分増強用の組成物等の特定の用途に利用できる組成物を得る。当該組成物を妊産婦または授乳婦等の対象に投与することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0120】
[製造例4]
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株およびビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株を添加した発酵乳の製造法の一例を下記に示す。
【0121】
まず、乳原料に必要に応じて水やその他の成分を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理を行い、殺菌調乳液を得る。均質化処理および加熱殺菌処理は、常法により行うことができる。
【0122】
次いで、殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させる。発酵によりカードが形成される。乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵乳を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
【0123】
次いで、発酵乳を加熱処理して加熱後発酵乳(加熱処理された発酵乳)を得る。発酵乳を適度に加熱することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。これによって、その後の製造工程中および/またはビフィズス菌及びプレバイオティクス入り濃縮発酵乳の保存中のpHの低下を抑制することができ、その結果、ビフィズス菌の生残性を向上させることができる。
【0124】
次いで、加熱後発酵乳に、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株、ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株、及びフラクトオリゴ糖を添加し、ビフィズス菌及びプレバイオティクス入り発酵乳を得る。ビフビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株及びビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株の添加量は、それぞれ、加熱後発酵乳に対して、1×107~1×1011CFU/mlが好ましく、1×108~1×1010CFU/mlがより好ましい。
【0125】
次いで、ビフィズス菌及びプレバイオティクス入り発酵乳の濃縮を行い、ビフィズス菌及びプレバイオティクス入り濃縮発酵乳を得る。濃縮は、公知の濃縮方法により行うことができる。濃縮方法としては、遠心分離法や膜分離法が挙げられる。例えば、遠心分離法では、被濃縮物(ビフィズス菌及びプレバイオティクス入り発酵乳)中のホエイが除去されて、固形分濃度が高められたビフィズス菌及びプレバイオティクス入り濃縮発酵乳が得られる。上述のようにして得られた濃縮発酵乳を妊産婦または授乳婦等の対象が摂取することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0126】
[製造例5]
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株およびビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株を添加した調製粉乳の製造法の一例を下記に示す。
【0127】
脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6kg、乳糖(ミライ社製)48kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、ビタミン混合物(田辺製薬社製)32g、並びにプレバイオティクス成分である、フラクトオリゴ糖(ヤクルト薬品工業社製)900g、ラクチュロース(森永乳業社製)500g、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)500g、及びガラクトオリゴ糖液糖(ヤクルト薬品工業社製)900gを温水300kgに溶解し、さらに90℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28kgを添加して均質化する。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、オリゴ糖配合調製粉乳約95kgを調製する。これに、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株およびビフィドバクテリウム・ロンガムBB536株の2株をMRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養し、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行った後にでん粉で倍散して得た菌末(2株の合計で1.8×1011cfu/g)100gを加えてビフィズス菌・オリゴ糖配合調製粉乳約95kgを調製する。ビフィズス菌・オリゴ糖配合調製粉乳を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14%(w/v)の調乳液としたとき、調乳液中のビフィズス菌数は2株の合計で2.7×109cfu/100mlとなる。上述のようにして得られたビフィズス菌・オリゴ糖配合調製粉乳を妊産婦または授乳婦等の対象が摂取することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0128】
〔実施例2〕
本実施例では、授乳婦によるビフィドバクテリウム属細菌の摂取が、その授乳婦から採取される母乳中のCCL28濃度に与える影響を調べた。
【0129】
<対象と方法>
産後1ヶ月目~6ヵ月目の期間中の任意の2ヶ月間、Bifidobacterium breve M-16V株(赤ちゃんのビフィズス、森永乳業;以下、「M-16V」ともいう)5×109~1×1010個を継続的に毎日摂取していた授乳婦を摂取群(n=11)とした。また、M-16Vの摂取習慣のない授乳婦を対照群(n=11)とした。摂取群において、M-16Vの摂取開始の2日前から前日に母乳を採取し「摂取0ヶ月目」とした。摂取群において、さらに、M-16Vの摂取開始から1ヶ月目および2ヶ月目に母乳を採取した。また、対照群において、摂取群の場合と概ね一致するタイミングで産後に母乳を採取した。摂取群および対照群間で被験者背景に大きな差は見られなかった(表5)。
【0130】
【0131】
母乳を12,000G、30分、4℃で遠心し、脂肪層と沈殿物以外を乳清として回収して、CCL28の測定に用いた。CCL28の測定は、Human CCL28 DuoSet ELISA (R&D System)とDuoSet ELISA Ancillary Reagent Kit 2(R&D System)を用いて実施した。
【0132】
<結果>
結果を
図1に示す。「摂取0ヶ月目」では摂取群および対照群間でCCL28濃度の差は認められなかった。一方、「摂取1ヶ月目」および「摂取2ヶ月目」では、摂取群のCCL28濃度は、対照群のCCL28濃度と比較して有意に高値であった。よって、M-16V等のビフィドバクテリウム属細菌の摂取により、母乳中のCCL28濃度が増加することが示唆された。
【0133】
また、母乳中でのCCL28濃度の増加は、乳腺に存在する粘膜上皮細胞からのCCL28分泌が促進されたことによると考えられる。ここで、CCL28を分泌する粘膜上皮細胞は乳腺に限られず全身に存在する。よって、ビフィドバクテリウム属細菌の摂取は、乳腺でのCCL28分泌促進に限られず、広くCCL28の分泌促進を引き起こすと考えられる。
【0134】
〔実施例3〕
本実施例では、授乳婦によるビフィドバクテリウム属細菌の摂取が、その授乳婦から採取される母乳中のGalectin-9濃度に与える影響を調べた。
【0135】
<対象と方法>
産後1ヶ月目~6ヵ月目の期間中の任意の2ヶ月間、Bifidobacterium breve M-16V株(赤ちゃんのビフィズス、森永乳業;以下、「M-16V」ともいう)5×109~1×1010個を継続的に毎日摂取していた授乳婦を摂取群(n=11)とした。また、M-16Vの摂取習慣のない授乳婦を対照群(n=11)とした。摂取群において、M-16Vの摂取開始の2日前から前日に母乳を採取し「摂取0ヶ月目」とした。摂取群において、さらに、M-16Vの摂取開始から1ヶ月目および2ヶ月目に母乳を採取した。また、対照群において、摂取群の場合と概ね一致するタイミングで産後に母乳を採取した。摂取群および対照群間で被験者背景に大きな差は見られなかった(表6)。
【0136】
【0137】
母乳を12,000G、30分、4℃で遠心し、脂肪層と沈殿物以外を乳清として回収して、Galectin-9の測定に用いた。Galectin-9の測定は、Human Magnetic Luminex Assay (R&D System)を用いて実施した。摂取0ヶ月目の母乳中のGalectin-9濃度を基準とし、摂取1ヶ月目および2ヶ月目の母乳中のGalectin-9濃度の変化率を算出した。変化率について、摂取群と対照群で群間比較を行った。
【0138】
<結果>
変化率の算出結果を表7に示す。摂取2ヶ月目のGalectin-9濃度が、摂取0ヶ月目時のGalectin-9濃度よりも顕著に(変化率として150%以上)高くなった被験者数について、χ2乗検定により摂取群と対照群で比較した。その結果を表8に示す。Galectin-9濃度が顕著に(変化率として150%以上)増加した被験者数は、摂取群と対照群で有意に相違した。よって、M-16V等のビフィドバクテリウム属細菌の摂取により、母乳中のGalectin-9濃度が増加することが示唆された。
【0139】
【0140】
【0141】
〔製造例6〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株をMRS液体培地3 mLに植菌し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥し、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末とホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate;WPC)を均一に混合して組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶解し、母乳成分増強用の組成物等の特定の用途に利用できる組成物を得る。当該組成物を妊産婦または授乳婦等の対象に投与することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0142】
〔製造例7〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株をMRS液体培地3 mLに植菌し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥し、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と乳タンパク質濃縮物の乾燥粉末(MPC480、フォンテラ社製、タンパク質含量80質量%、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質=約8:2)を均一に混合して、組成物を得る。当該組成物20 gを200 gの水に溶解し、母乳成分増強用の組成物等の特定の用途に利用できる組成物を得る。当該組成物を妊産婦または授乳婦等の対象に投与することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0143】
〔製造例8〕
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株をMRS液体培地3 mLに植菌し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥し、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。次に、菌末と結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加えて造粒し、造粒物を乾燥し、細菌および賦形剤を含有してなる造粒物の形態で母乳成分増強用の組成物等の特定の用途に利用できる組成物を得る。当該組成物を妊産婦または授乳婦等の対象に投与することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0144】
[製造例9]
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株を添加した発酵乳の製造法の一例を下記に示す。
【0145】
まず、乳原料に必要に応じて水やその他の成分を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理を行い、殺菌調乳液を得る。均質化処理および加熱殺菌処理は、常法により行うことができる。
【0146】
次いで、殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させる。発酵によりカードが形成される。乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵乳を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
【0147】
次いで、発酵乳を加熱処理して加熱後発酵乳(加熱処理された発酵乳)を得る。発酵乳を適度に加熱することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。これによって、その後の製造工程中および/またはビフィズス菌入り濃縮発酵乳の保存中のpHの低下を抑制することができ、その結果、ビフィズス菌の生残性を向上させることができる。
【0148】
次いで、加熱後発酵乳に、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株を添加し、ビフィズス菌入り発酵乳を得る。ビフビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株の添加量は、加熱後発酵乳に対して、1×107~1×1011CFU/mlが好ましく、1×108~1×1010CFU/mlがより好ましい。
【0149】
次いで、ビフィズス菌入り発酵乳の濃縮を行い、ビフィズス菌入り濃縮発酵乳を得る。濃縮は、公知の濃縮方法により行うことができる。濃縮方法としては、遠心分離法や膜分離法が挙げられる。例えば、遠心分離法では、被濃縮物(ビフィズス菌入り発酵乳)中のホエイが除去されて、固形分濃度が高められたビフィズス菌入り濃縮発酵乳が得られる。上述のようにして得られた濃縮発酵乳を妊産婦または授乳婦等の対象が摂取することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【0150】
[製造例10]
ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株を添加した調製粉乳の製造法の一例を下記に示す。
【0151】
脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6kg、乳糖(ミライ社製)48kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、およびビタミン混合物(田辺製薬社製)32gを温水300kgに溶解し、さらに90℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28kgを添加して均質化する。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、調製粉乳約92kgを調製する。これに、ビフィドバクテリウム・ブレーベM-16V株をMRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養し、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行った後にでん粉で倍散して得た菌末(0.9×1011cfu/g)100gを加えてビフィズス菌配合調製粉乳約92kgを調製する。ビフィズス菌配合調製粉乳を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14%(w/v)の調乳液としたとき、調乳液中のビフィズス菌数は1.35×109cfu/100mlとなる。上述のようにして得られたビフィズス菌配合調製粉乳を妊産婦または授乳婦等の対象が摂取することにより、母乳成分の量が増加する等の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明によれば、母乳成分増強用組成物等の特定の用途に利用できる組成物を提供できる。