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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

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  • 特許-抗VEGF抗体及び使用の方法 図1
  • 特許-抗VEGF抗体及び使用の方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】抗VEGF抗体及び使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/24
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020536066
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018086465
(87)【国際公開番号】W WO2019129677
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】17211032.2
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デングル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ,ギー
(72)【発明者】
【氏名】モルケン,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ロス,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒスベルガー,エステール
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522210(JP,A)
【文献】特表2002-543093(JP,A)
【文献】特表2011-502503(JP,A)
【文献】特表2014-504498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列、
(b)配列番号09のVH配列及び配列番号02のVL配列、
(c)配列番号11のVH配列及び配列番号02のVL配列、
(d)配列番号33のVH配列及び配列番号02のVL配列、
(e)配列番号42のVH配列及び配列番号02のVL配列、又は
(f)配列番号44のVH配列及び配列番号02のVL配列
を含む、VEGFに結合する抗体であって、前記VEGFに結合する抗体は、25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合及び37℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合し、及び
VEGFへの抗体の結合が、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害する、前記抗体。
【請求項2】
Fabフラグメントである、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の抗体をコードする、単離核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項5】
請求項4に記載の宿主細胞を、抗体の発現に適切な条件下で培養することを含む、VEGFに結合する抗体を産生する方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
追加の治療的薬剤を更に含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬としての使用のための、請求項1又は2記載の抗体又は請求項6又は7記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管新生を阻害する抗体(より詳細には、抗VEGF抗体)及びそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、VEGF-R1へのVEGF結合よりはむしろ、VEGF-R2へのVEGF結合を優先的に阻害する抗VEGF抗体を提供する。血管新生を阻害しながら、そのような抗体は、それらの特異的遮断特性に起因して、改善された安全性を有する。
【0003】
血管新生は、既存の血管及び/又は循環内皮幹細胞からの新たな血管構造の発生である(非特許文献1~3)。多くの生理学的過程において重要な役割を果たしながら、血管新生はまた、種々の障害(固形腫瘍、眼内血管新生症候群(例えば、増殖性網膜症又は加齢性黄斑変性症(AMD))、関節リウマチ、及び乾癬を含む)の病態形成において関係している(非特許文献4~6)。
【0004】
血管新生は、正常組織及び悪性組織において、標的組織中で及び離れた部位で産生される血管新生刺激及び血管新生阻害物質のバランスにより調節される(非特許文献7,8)。血管内皮成長因子A(VEGF、血管透過性因子、VPFとしても公知である)は、血管新生の主要な刺激物質である。ヒトVEGF(配列番号29)は、例えば、非特許文献9において記載されている。VEGFは、腫瘍及び眼内障害に関連付けられる正常及び異常な血管新生並びに新血管新生の調節に関与している(非特許文献10~15)。VEGFは、いくつかの供給源から単離されたホモ二量体糖タンパク質である。VEGFは、内皮細胞について高度に特異的な分裂促進活性を示す。VEGFは、胚の脈管形成の間での新たな血管の形成において、及び成人期の間での血管新生において、重要な調節機能を有する(非特許文献16,17;非特許文献18において概説されている)。
【0005】
複数の障害の病態形成における血管新生の重要な刺激としてのVEGFの同定によって、例えば、抗VEGF受容体抗体、可溶性受容体構築物、アンチセンスストラテジー、VEGFに対するRNAアプタマー、及び低分子量VEGF受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤により、VEGF活性を遮断するための種々の試みがもたらされた(非特許文献19)。抗VEGF抗体は、マウスにおける種々のヒト腫瘍細胞株の成長を抑制することが記載されている(非特許文献20~23)。特許文献1~4には、VEGFに対する抗体が言及されている。ヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(商品名アバスチン(登録商標)の下で販売されている)は、腫瘍治療特許文献5において使用されている抗VEGF抗体である。ラニビズマブ(商品名ルセンティス(登録商標))は、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))と同じ親マウス抗体に由来するモノクローナル抗体フラグメントである。それは、親分子よりもずっと小さく、VEGF-Aへのより強い結合を提供するために親和性成熟されている(特許文献6)。それは、加齢性黄斑変性症の「ウェット」型(wAMD)(加齢性視力喪失の一般の形態)を処置するために承認されている抗血管新生化合物である。
【0006】
アバスチン(登録商標)及びルセンティス(登録商標)などの臨床適用のために承認されている抗VEGF抗体は、VEGF-R1(FLT-1、fms様チロシンキナーゼ)及びVEGF-R2(KDR/FLK-1、胎児肝キナーゼ)の両方の受容体へのVEGF結合を阻害する。VEGF-R1及びVEGF-R2は、密接に関連する受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。VEGF-R2は、主にVEGF媒介性の血管新生について関与すると仮定されているが(非特許文献24)、VEGF-R1は、例えば、破骨細胞分化において、血管新生に関連しない他の重要な生物学的役割を有することが公知である(非特許文献25)。
【0007】
VEGF-R2へのVEGF結合を優先的に阻害するがVEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害しないいくつかの抗VEGF抗体が報告されている(「2C3」と呼ばれる抗体を記載している特許文献7、「r84」と呼ばれる抗体を記載している特許文献8、「L3H6」と呼ばれる抗体を記載している特許文献9、並びに「HF2-1」、「HF2-5」、「HF2-9」、及び「HF2-11」と呼ばれる抗体を記載している特許文献10)。VEGF-R2(しかし、VEGF-R1ではない)へのVEGF結合を遮断することにより、抗体は、改善された安全性プロファイルを有し、抗VEGF療法に関連する一般の毒性関連副作用を示さないと記載されている(非特許文献26,27)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第94/10202号
【文献】国際公開第98/45332号
【文献】国際公開第2005/00900号
【文献】国際公開第00/35956号
【文献】国際公開第98/45331号
【文献】国際公開第98/45331号
【文献】国際公開第2000/64946号
【文献】国際公開第2009/060198号
【文献】国際公開第2012/089176号
【文献】欧州特許出願公開第3006465号明細書
【非特許文献】
【0009】
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【文献】Folkman and Shing, J. Biol. Chem., 267:10931-10934, 1992
【文献】Folkman, J., et al., J. Biol. Chem. 267 (1992) 10931-10934
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【文献】Sullivan, L.A., et al., PLoS One, 2010 Aug 6;5(8):e12031
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この有利な挙動を提供し、同時に、臨床適用のために適切にするための、要求される特性及び十分な親和性を示す抗体の開発は、容易なアプローチではないため、改善されたVEGF阻害剤についての必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、抗VEGF抗体及びそれを使用する方法を提供する。
【0012】
本発明の一局面は、VEGFへの抗体の結合が、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害する、VEGFに結合する抗体である。
【0013】
本発明の別の局面は、VEGFへの抗体の結合が、VEGF-R2へのVEGFの結合を選択的に阻害する、VEGFに結合する抗体である。
【0014】
本発明の別の局面は、VEGFへの抗体の結合が、VEGF-R2へのVEGFの結合を完全に阻害し、かつ、VEGFへの抗体の結合が、VEGF-R1へのVEGFの結合を完全には阻害しない、VEGFに結合する抗体である。
【0015】
本発明の別の局面は、25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合し、かつ、37℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、より高い又はほぼ同じ親和性でVEGFに結合する、VEGFに結合する抗体である。
【0016】
本発明の別の局面は、配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む抗体と同じエピトープに結合する、VEGFに結合する抗体である。
【0017】
本発明の別の局面は、
(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(b)配列番号04、配列番号10、及び配列番号12の群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、並びに
(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)
を含み、
(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、VEGFに結合する抗体である。
【0018】
一実施態様では、抗体は、配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号09のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号11のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号33のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号42のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号44のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む。
【0019】
本発明の別の局面は、配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体である。本発明の別の局面は、配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を有する抗体の親和性成熟変異体である抗体である。本発明の別の局面は、配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を有する抗体と同じエピトープに結合する、VEGFに結合する抗体である。
【0020】
本発明の別の局面は、配列番号09のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体である。
【0021】
本発明の別の局面は、配列番号11のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体である。
【0022】
本発明の別の局面は、配列番号33のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体である。
【0023】
本発明の別の局面は、配列番号42のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体である。
【0024】
本発明の別の局面は、配列番号44のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体である。
【0025】
本発明の別の局面は、本発明の抗体をコードする単離核酸である。
【0026】
本発明の別の局面は、本発明の核酸を含む宿主細胞である。
【0027】
本発明の別の局面は、VEGFに結合する抗体を産生する方法であって、該抗体の発現のために適切な条件下で本発明の宿主細胞を培養することを含む、方法である。本発明の別の局面は、前記方法により産生された抗体である。
【0028】
本発明の別の局面は、本発明の抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。
【0029】
本発明の別の局面は、医薬としての使用のための本発明の抗体又は本発明の医薬組成物である。
【0030】
本発明の別の局面は、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)の処置に使用するための本発明の抗体又は本発明の医薬組成物である。
【0031】
本発明の別の局面は、医薬の製造における本発明の抗体又は本発明の医薬組成物の使用である。
【0032】
本発明の別の局面は、血管新生を阻害するための医薬の製造における本発明の抗体又は本発明の医薬組成物の使用である。
【0033】
本発明の別の局面は、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)を有する個体を処置する方法であって、有効量の本発明の抗体又は本発明の医薬組成物を該個体に投与することを含む、方法である。
【0034】
本発明の別の局面は、個体において血管新生を阻害する方法であって、血管新生を阻害するために有効な量の本発明の抗体又は本発明の医薬組成物を該個体に投与することを含む、方法である。
【0035】
本発明は、例えばVEGF-R1を通じたVEGFシグナル伝達を遮断することにより起こされる副作用を回避することによって、高い親和性、高い安定性、及び改善された安全性プロファイルのような、特に価値のある特性を示す新規の抗VEGF抗体を提供する。本発明により提供される抗体は、抗体フラグメントの治療的適用を可能にする高い親和性を示す。本発明の抗体は、VEGF関連疾患、例えば癌、血管疾患、又は眼疾患(例えば、加齢性黄斑変性症)などに罹患している患者のために利益を起こす価値ある特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】VEGF-R1ドメイン2(赤)を伴う、並びにVEGF-R2ドメイン2及び3(青)を伴う複合体中のVEGF二量体(紫)の結晶構造。
図2】実施例2において記載するとおりの、抗体Fabフラグメントの存在におけるVEGF-R1及びVEGF-R2へのVEGF結合の阻害(VEGF:VEGF-R2/R1阻害ELISA)。
図3】実施例4において記載するとおりの、ELISAにより決定された抗VEGF抗体のVEGF結合。
図4A】実施例6において記載するとおりの、本発明の抗VEGF抗体VEGF-0089、VEGF-0113、VEGF-0114並びにラニビズマブ及びL3H6 Fab(0.4nM VEGF)の存在におけるVEGF-R2へのVEGF結合の阻害。
図4B】実施例6において記載するとおりの、本発明の抗VEGF抗体VEGF-0089並びに先行技術の抗体2C3、r84、及びL3H6(0.7nM VEGF)の存在におけるVEGF-R2へのVEGF結合の阻害。
図5】実施例6において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.7nM VEGF)の存在におけるVEGF-R1へのVEGF結合の阻害。
図6】実施例6において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.34nM VEGF)の存在におけるVEGF-R1へのVEGF結合の阻害。
図7】実施例6において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.34nM VEGF)の存在におけるVEGF-R2へのVEGF結合の阻害。
図8】実施例11において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.34nM VEGF)の存在におけるVEGF-R1へのVEGF結合の阻害。
図9】実施例11において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.7nM VEGF)の存在におけるVEGF-R1へのVEGF結合の阻害。
図10】実施例11において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.34nM VEGF)の存在におけるVEGF-R2へのVEGF結合の阻害。
図11】実施例11において記載するとおりの、抗VEGF抗体(0.7nM VEGF)の存在におけるVEGF-R2へのVEGF結合の阻害。
図12】実施例13に従ってX線結晶学により決定された、抗VEGF抗体VEGF-0089を伴う複合体中のVEGF二量体(紫)の結晶構造。
図13】実施例13に従ってX線結晶学により決定された、VEGF-A121(配列番号45)の二量体中のVEGF-0089Fabフラグメントにより結合されたエピトープアミノ酸。5Aの距離内でVEGF-0089 Fabフラグメントと接触しているVEGF-A121分子の各々の1つにおいて含まれるアミノ酸位置を黒で強調している。
【0037】
発明の詳細な説明
【0038】
1.定義
【0039】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味において使用されており、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、種々の抗体構造(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含むが、これらに限定しない)を包含する。
【0040】
「天然抗体」は、変動する構造を伴う天然免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各々の重鎖は、可変ドメイン(VH)(可変重ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる)、それに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各々の軽鎖は、可変ドメイン(VL)(可変軽ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる)、それに続く定常軽(CL)ドメインを有する。
【0041】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」は、本明細書において互換的に使用し、天然抗体構造に実質的に類似している構造を有する、又は本明細書において定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0042】
「単離」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。一部の実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)方法により決定されるとおり、95%又は99%を上回る純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照のこと。
【0043】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞により産生される、あるいはヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト供給源から由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保持するものである。ヒト抗体のこの定義では、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が除外される。
【0044】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。
【0045】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメインからなる:FR1、FR2、FR3、及びFR4。したがって、HVR配列及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)中の以下の配列において現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0046】
本明細書において使用する用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列(「相補性決定領域」又は「CDR」)において超可変である、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触部」)を含む、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般的に、抗体は6つのHVRを含む:VH中の3つ(H1、H2、H3)、及びVL中の3つ(L1、L2、L3)。本明細書における例示的なHVRは、以下を含む:
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3)で生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)、及び93-101(H3)で生じる抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));並びに
(d)HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)、及び94-102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0047】
他に示さない場合、可変ドメイン中のHVR(例えば、CDR)残基及び他の残基(例えば、FR残基)を、本明細書において、Kabat et al.(上記)に従ってナンバリングする。
【0048】
抗体の「クラス」は、その重鎖により保持される定常ドメイン又は定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラスがある(IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)、これらのいくつかをサブクラス(アイソタイプ)中に更に分けうる(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgA)。特定の実施態様では、抗体はIgGアイソタイプである。特定の実施態様では、抗体は、Fc領域エフェクター機能を低下させるためのP329G、L234A、及びL235A変異を伴うIgGアイソタイプである。他の実施態様では、抗体はIgGアイソタイプである。特定の実施態様では、抗体は、IgG抗体の安定性を改善するためにヒンジ領域においてS228P変異を伴うIgGアイソタイプである。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、2つの型(カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる)の1つに割り当てられうる。
【0049】
本明細書における用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用する。この用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで伸長する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても、又はしなくてもよい。本明細書において他に指定しない場合、Fc領域又は定常領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従い、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991において記載されるとおりである。
【0050】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因しうるそれらの生物学的活性を指し、それは、抗体アイソタイプに伴って変動する。抗体エフェクター機能の例は以下を含む:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;及びB細胞活性化。
【0051】
用語「VEGF」は、本明細書において使用するように、他に示さない場合、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などを含む、任意の脊椎動物の供給源からの任意の天然VEGFを指す。この用語は、「全長」、未処理VEGF並びに細胞におけるプロセシングからもたらされる、VEGFの任意の形態を包含する。この用語はまた、VEGFの天然変異体(例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体)を包含する。例示的なヒトVEGFのアミノ酸配列を配列番号29において示す。
【0052】
用語「抗VEGF抗体」及び「VEGFに結合する抗体」は、抗体が、VEGFを標的とする際に、診断的及び/又は治療的薬剤として有用であるように、十分な親和性でVEGFに結合することが可能である抗体を指す。一実施態様では、無関係の、非VEGFタンパク質への抗VEGF抗体の結合の程度は、例えば、表面共鳴プラズモン(SPR)により測定されるように、VEGFへの抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、VEGFに結合する抗体は、解離定数(Kd)≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M又はそれ以下、例えば、10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13M)を有する。抗体は、抗体が1μM又はそれ以下のKdを有する場合、VEGFに「特異的に結合」すると言う。
【0053】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位及びその結合パートナー(例えば、抗原)の間での非共有結合的な相互作用の合計の強度を指す。他に示さない場合、本明細書において使用するように、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)の間での1:1の相互作用を反映する内因性の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYについての親和性は、一般的に、解離定数(Kd)により表わすことができる。親和性は、当技術分野において公知の一般の方法(本明細書において記載するものを含む)により測定することができる。結合親和性を測定するための特定の例証的及び例示的な実施態様を、以下において記載する。
【0054】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。
【0055】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗原への抗体の結合において含まれる抗体重又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変ドメインは、一般的に、同様の構造を有し、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む各々のドメインを伴う(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照のこと)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分でありうる。更に、特定の抗原に結合する抗体は、相補的VL又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングするために、抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを使用して単離されうる(例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと)。
【0056】
本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、その集団を含む個々の抗体は、可能な変異体抗体(例えば、天然変異を含む、又はモノクローナル抗体調製物の産生の間に生じる)を除き、同一である、及び/又は同じエピトープに結合し、そのような変異体は、一般的に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。このように、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求すると解釈すべきではない。例えば、本発明に従ったモノクローナル抗体は、種々の技術(ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は部分を含むトランスジェニック動物を利用した方法を含むが、これらに限定しない)により作製されうるが、そのような方法及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法を本明細書において記載する。
【0057】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を含むが、これらに限定しない。
【0058】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、ギャップを導入し(必要な場合)、最高パーセント配列同一性を達成した後(整列化の目的のために、任意の保存的置換を配列同一性の部分として考慮せず)、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義する。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列化は、当技術分野内にある種々の方法において、例えば、公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージなどを使用して達成することができる。当業者は、配列を整列させるための適当なパラメーター(比較されている配列の全長にわたる最高の整列化を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む)を決定することができる。本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性の値(%)を、BLOSUM50比較マトリックスを伴うFASTAパッケージバージョン36.3.8c以降のggsearchプログラムを使用して生成する。FASTAプログラムパッケージは、W. R. Pearson and D. J. Lipman (1988), “Improved Tools for Biological Sequence Analysis”, PNAS 85:2444-2448;W. R. Pearson (1996) “Effective protein sequence comparison” Meth. Enzymol. 266:227- 258;及びPearson et. al. (1997) Genomics 46:24-36により作成されており、www.fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml又はwww.ebi.ac.uk/Tools/sss/fastaから公的に利用可能である。あるいは、fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公的サーバーを使用し、ggsearch(包括的タンパク質:タンパク質)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;オープン:-10;ext:-2;Ktup=2)を使用して配列を比較し、(ローカルよりはむしろ)包括的な整列化が実施されることを確実にすることができる。パーセントアミノ酸同一性は、出力整列化ヘッダーにおいて与えられる。
【0059】
「親和性成熟」抗体は、1つ又は複数の超可変領域(HVR)における1つ又は複数の変化(そのような変化を保持しない親抗体と比較して)を伴う抗体を指し、そのような変化は、抗原についての抗体の親和性における改善をもたらす。
【0060】
用語「エピトープ」は、抗VEGF抗体が結合する、タンパク質性又は非タンパク質性のいずれかの抗原上の部位を意味する。エピトープは、近接アミノ酸ストレッチ(線状エピトープ)から形成されること、又は非近接アミノ酸(立体構造エピトープ)を含むこと(例えば、抗原の折り畳みに起因して、即ち、タンパク質性抗原の三次折り畳みにより空間的に接近する)の両方ができる。線形エピトープは、典型的には、変性薬剤へのタンパク質性抗原の曝露後、抗VEGF抗体により依然として結合されているのに対し、立体構造エピトープは、典型的には、変性薬剤を用いた処理時に破壊される。エピトープは、独特の空間的な立体構造において少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、又は8~10のアミノ酸を含む。
【0061】
特定のエピトープに結合する抗体(即ち、同じエピトープに結合する抗体)についてのスクリーニングは、当技術分野において慣用の方法、例えば、限定しないが、アラニンスキャニング、ペプチドブロット(Meth. Mol. Biol. 248 (2004) 443-463を参照のこと)、ペプチド切断分析、エピトープ切り出し、エピトープ抽出、抗原の化学修飾(Prot. Sci. 9 (2000) 487-496を参照のこと)、及び交差遮断(“Antibodies”, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)を参照のこと)などを使用して行うことができる。
【0062】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)は、修飾支援プロファイリング(MAP)としても公知であり、多数から化学的又は酵素的に修飾された抗原表面までの抗体の各々の結合プロファイルに基づき、VEGFに特異的に結合する多数のモノクローナル抗体にビンする(例えば、米国特許出願公開第2004/0101920号明細書を参照のこと)。各々のビンにおける抗体は、別のビンにより表されるエピトープとは明確に異なる、又は部分的に重複している独特のエピトープでありうる同じエピトープに結合する。
【0063】
一部の実施態様では、2つの抗体は、1つの抗体の結合を低下又は排除する、抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異がまた、他の結合を低下又は排除する場合、同じエピトープに結合すると見なす。2つの抗体は、1つの抗体の結合を低下又は排除するアミノ酸変異のサブセットだけが、他の抗体の結合を低下又は排除する場合、「重複エピトープ」を有すると見なす。
【0064】
「免疫複合体」は、1つ又は複数の異種分子(細胞傷害性薬剤を含むが、これに限定しない)に共役された抗体である。
【0065】
用語「核酸」、「核酸分子」、又は「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの重合体を含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各々のヌクレオチドは、塩基、具体的にはプリン塩基又はピリミジン塩基(即ち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)、又はウラシル(U))、糖(即ち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。しばしば、核酸分子は、塩基の配列により記載され、それにより、前記塩基は、核酸分子の一次構造(線形構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’で表す。本明細書において、用語「核酸分子」は、例えば、相補的DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ又はそれ以上を含む混合多量体を含むデオキシリボ核酸(DNA)を包含する。核酸分子は線状又は環状でありうる。また、用語「核酸分子」は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方、並びに一本鎖及び二本鎖の形態を含む。更に、本明細書において記載する核酸分子は、天然又は非天然ヌクレオチドを含みうる。非天然ヌクレオチドの例は、誘導体化された糖又はリン酸骨格連結又は化学的に修飾された残基を伴う修飾ヌクレオチド塩基を含む。核酸分子はまた、インビトロ及び/又はインビボでの、例えば、宿主又は患者における本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適切であるDNA及びRNA分子を包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、未修飾又は修飾であることができる。例えば、mRNAを化学的に修飾し、RNAベクターの安定性及び/又はコードされる分子の発現を増強することができ、mRNAを被験体中に注射し、インビボで抗体を生成することができる(例えば、Stadler ert al, Nature Medicine 2017、2017年6月12日にオンラインで公開、doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2101823号明細書を参照のこと)。
【0066】
「単離」核酸は、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸は、核酸分子を通常含む細胞中に含まれる核酸分子を含むが、しかし、核酸分子は、染色体外に、又はその自然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0067】
「抗VEGF抗体をコードする単離核酸」は、単一のベクター又は別々のプラスミド中にそのような核酸分子を含む、抗体の重鎖及び軽鎖(又はそのフラグメント)をコードする1つ又は複数の核酸分子を指し、そのような核酸分子は、宿主細胞中の1つ又は複数の位置に存在する。
【0068】
用語「ベクター」は、本明細書において使用するように、それが連結されている別の核酸を伝播することが可能な核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられたベクターを含む。特定のベクターは、それらが操作的に連結された核酸の発現を方向付けることが可能である。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」として言及する。
【0069】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞(そのような細胞の後代を含む)を指す。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、それらは、継代の数に関係なく、一次形質転換細胞及びそれから由来する後代を含む。後代は、核酸含量において親細胞と完全に同一ではないであろうが、しかし、変異を含みうる。本来形質転換されていた細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体後代が、本明細書において含まれる。
【0070】
用語「医薬組成物」又は「医薬製剤」は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になることを許すような形態であり、医薬組成物が投与されうる被験体に非許容可能に有毒である追加成分を含まない調製物を指す。
【0071】
薬剤(例えば、医薬組成物)の「有効量」は、所望の治療的又は予防的結果を達成するために必要な投与量で、及び期間にわたり有効な量を指す。
【0072】
「個体」又は「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサルなど)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定しない。特定の実施態様では、個体又は被験体はヒトである。
【0073】
「医薬的に許容可能な担体」は、被験体に非毒性である、活性成分以外の医薬組成物又は製剤中の成分を指す。医薬的に許容可能な担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含むが、これらに限定しない。
【0074】
用語「添付文書」を使用し、治療的産物の商業的パッケージにおいて習慣的に含まれる指示を指し、それには、そのような治療的産物の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、併用治療、禁忌、及び/又は警告についての情報が含まれる。
【0075】
本明細書において使用するように、「処置」(及びその文法的変形、例えば「処置する」又は「処置すること」など)は、処置されている個体において疾患の自然経過を変化させる試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理学の経過の間のいずれかで実施することができる。処置の望ましい効果は、疾患の発生又は再発を防止すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的転帰の減弱、転移を防止すること、疾患進行の速度を減少させること、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後を含むが、これらに限定しない。一部の実施態様では、本発明の抗体を使用し、疾患の発生を遅延させる、又は疾患の進行を遅らせる。
【0076】
2.発明の実施態様の詳細な説明
【0077】
一局面では、本発明は、部分的には、抗VEGF抗体を使用した血管新生の阻害に基づく。特定の実施態様では、VEGFに結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、例えば、VEGF関連疾患、例えば癌又は眼疾患などの診断又は処置のために有用である。
【0078】
A.例示的な抗VEGF抗体
【0079】
一局面では、本発明は、VEGFに結合する抗体を提供する。一局面では、VEGFに結合する単離抗体を提供する。一局面では、本発明は、VEGFに特異的に結合する抗体を提供する。特定の実施態様では、抗VEGF抗体は、
a)それにおいて、VEGFへの抗体の結合は、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害する、及び/又は
b)それにおいて、抗体は、25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合し、及び、それにおいて、抗体は、37℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、より高い又はほぼ同じ親和性でVEGFに結合する。
【0080】
一局面では、本発明は、(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号04のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3より選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含む抗VEGF抗体を提供する。CDRアミノ酸配列のこの組を含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0089」として言及する抗体である。
【0081】
一局面では、本発明は、(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号04のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全ての3つのVH CDR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。別の実施態様では、抗体は、配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3及び配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。更なる実施態様では、抗体は、配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3、及びアミノ酸配列の配列番号04を含むCDR-H2を含む。更なる実施態様では、抗体は、(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号04のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0082】
別の局面では、本発明は、(a)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(c)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全ての3つのVL CDR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、(a)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(c)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0083】
別の局面では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号04のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3より選択されるCDR配列より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全ての3つのVH CDR配列を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全ての3つのVL CDR配列を含むVLドメインを含む。
【0084】
別の局面では、本発明の抗体は、(a)(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン;並びに(b)(c)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(d)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(e)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。
【0085】
別の局面では、本発明は、(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号04のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体を提供する。CDRアミノ酸配列のこの組を含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0089」として言及する抗体である。
【0086】
特定の実施態様では、上で提供する抗VEGF抗体の任意の1つ又は複数のアミノ酸は、CDR H2(配列番号04)中の以下のCDR位置で変異している:位置4、6、7、及び8。
【0087】
特定の実施態様では、置換は、本明細書において提供するように、保存的置換又は欠失である。特定の実施態様では、以下の置換又は欠失の任意の1つ又は複数を、任意の組み合わせにおいて作製してもよい:CDR-H2(配列番号04)中:位置N4S、G6P、位置7でのアミノ酸Gの欠失、及びI8F。
【0088】
別の局面では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号04のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するCDR-H2;及び(iii)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。
【0089】
別の局面では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。本発明のこの局面に従った抗体において、CDR-H2は、以下のコンセンサス配列である、配列番号30のアミノ酸を含み:SIGX1GX2X3X4YTYYADSVKG(配列番号30)、それにおいて、X1、X2、及びX4は、任意の天然アミノ酸より互いに独立して選択され、及び、それにおいて、X3は、任意の天然アミノ酸又はギャップ(アミノ酸なし)より選択される。
【0090】
別の局面では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。本発明のこの局面に従った抗体において、CDR-H2は、以下のコンセンサス配列である、配列番号31のアミノ酸を含み:SIGX1GX2X3X4YTYYADSVKG(配列番号31)、それにおいて、X1はN又はSより選択され、X2はG又はPより選択され、X3はギャップ(アミノ酸なし)又はGのいずれかであり;及びX4はI又はFより選択される。
【0091】
別の局面では、本発明は、(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体を提供する。CDRアミノ酸配列のこの組を含む例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0113」及び「VEGF-P1AE3520」として言及する抗体である。
【0092】
別の局面では、本発明は、(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む抗体を提供する。CDRアミノ酸配列のこの組を含む例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0114」及び「VEGF-P1AE3521」として言及する抗体である。
【0093】
一実施態様では、抗VEGF抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを更に含む。
【0094】
別の局面では、抗VEGF抗体は、配列番号01のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗VEGF抗体は、VEGFに結合する能力を保持する。特定の実施態様では、合計1から10のアミノ酸が、配列番号01において置換、挿入、及び/又は欠失されている。特定の実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。場合により、抗VEGF抗体は、配列番号01中にVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施態様では、VHは、以下より選択される1つ、2つ、又は3つのCDRCDRを含む:(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDRCDR-H1、(b)配列番号04のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3。
【0095】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、配列番号02のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗VEGF抗体は、VEGFに結合する能力を保持する。特定の実施態様では、合計1から10のアミノ酸が、配列番号02において置換、挿入、及び/又は欠失されている。特定の実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。場合により、抗VEGF抗体は、配列番号02中にVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施態様では、VLは、(a)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(c)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3より選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む。
【0096】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それぞれ配列番号01及び配列番号02中にVH及びVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号01のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む。前記VH及びVLドメインを含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0089」として言及する抗体である。
【0097】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それぞれ配列番号33及び配列番号02中にVH及びVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号33のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む。前記VH及びVLドメインを含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-P1AD8675」として言及する抗体である。
【0098】
別の局面では、抗VEGF抗体は、配列番号09のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗VEGF抗体は、VEGFに結合する能力を保持する。特定の実施態様では、合計1から10のアミノ酸が、配列番号09において置換、挿入、及び/又は欠失されている。特定の実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。場合により、抗VEGF抗体は、配列番号09中にVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施態様では、VHは、以下より選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む:(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3。
【0099】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それぞれ配列番号09及び配列番号02中にVH及びVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号09のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む。前記VH及びVLドメインを含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0113」として言及する抗体である。
【0100】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それぞれ配列番号43及び配列番号02中にVH及びVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号43のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む。前記VH及びVLドメインを含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-P1AE3520」として言及する抗体である。別の局面では、抗VEGF抗体は、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗VEGF抗体は、VEGFに結合する能力を保持する。特定の実施態様では、合計1から10のアミノ酸が、配列番号11において置換、挿入、及び/又は欠失されている。特定の実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。場合により、抗VEGF抗体は、配列番号11中にVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施態様では、VHは、以下より選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む:(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3。
【0101】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それぞれ配列番号11及び配列番号02中にVH及びVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号11のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む。前記VH及びVLドメインを含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-0114」として言及する抗体である。
【0102】
別の局面では、抗VEGF抗体を提供し、それにおいて、抗体は、上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVH配列、及び上に提供する実施態様のいずれかにおけるようなVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それぞれ配列番号45及び配列番号02中にVH及びVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。一実施態様では、抗体は、配列番号45のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む。前記VH及びVLドメインを含む1つの例示的な抗体は、本明細書において「VEGF-P1AE3521」として言及する抗体である。
【0103】
全ての局面の一実施態様では、抗体は、配列番号04、配列番号10、及び配列番号12の群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2を含む。
【0104】
全ての局面の一実施態様では、抗体は、配列番号46及び配列番号47の群より選択されるアミノ酸配列を含むH-FR3を含む。
【0105】
更なる局面では、本発明は、本明細書において提供する抗VEGF抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、特定の実施態様では、配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む抗VEGF抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。一実施態様では、前記抗VEGF抗体は、X線結晶学により測定されるように、本明細書において記載する抗体VEGF-0089と同じエピトープに結合する。一実施態様では、前記抗VEGF抗体は、実施例13において記載するように、X線結晶学により測定されるように、本明細書において記載する抗体VEGF-0089と同じエピトープに結合する。一実施態様では、VEGF-A121の二量体上の立体構造エピトープに結合する抗体を提供し、それにおいて、VEGF-A121は配列番号45のアミノ酸配列を含み、それにおいて、エピトープは、VEGF二量体内の個々のVEGF-A121分子の1つにおいてアミノ酸F17、M18、D19、Y21、Q22、R23、Y25、H27、P28、I29、E30、M55、N62、L66、N100、K101、C102、E103、C104、R105、及びP106;並びに、VEGF二量体内の個々のVEGF-A121分子の他の1つにおいてアミノ酸E30、K48、M81、及びQ87を含む。ナンバリングは、配列番号45において示すVEGF-A121のアミノ酸配列中のアミノ酸の位置に従っている(図13も参照のこと)。一実施態様では、エピトープは、X線結晶学により測定する。
【0106】
本発明の更なる局面では、上の実施態様のいずれかに従った抗VEGF抗体は、モノクローナル抗体(ヒト抗体を含む)である。一実施態様では、抗VEGF抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)2フラグメントである。一実施態様では、抗VEGF抗体はFabフラグメントである。別の実施態様では、抗体は、全長抗体、例えば、インタクトなIgG抗体又は本明細書において定義するような他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0107】
更なる局面では、上の実施態様のいずれかに従った抗VEGF抗体は、下のセクション1~6において記載するような特色のいずれかを、単独で又は組み合わせにおいて組み入れてもよい。
【0108】
1.抗体親和性
【0109】
特定の実施態様では、本明細書において提供する抗体は、解離定数(Kd)≦1μM、≦100nM、≦10nM、又は≦1nM(例えば、10-8M又はそれ以下、例えば、10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13M)を有する。
【0110】
一実施態様では、本明細書において提供する抗体は、≦150pMの親和性でVEGFに結合する(即ち、≦150pMの解離定数(Kd)を有する)。
【0111】
一実施態様では、本明細書において提供する抗体のFabフラグメントは、≦150pMの親和性でVEGFに結合する(即ち、≦150pMの解離定数(Kd)を有する)。一実施態様では、本明細書において提供する抗体は、25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合する。一実施態様では、本明細書において提供する抗体は、37℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合する。一実施態様では、本明細書において提供する抗体は、25℃及び37℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合する。
【0112】
一実施態様では、本明細書において提供する抗体は、25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合し、抗体は、表面プラズモン共鳴により測定した場合、37℃の温度でより高い又はほぼ同じ親和性でVEGFに結合する。「ほぼ同じ親和性」を伴いは、37℃での抗体の親和性(即ち、Kd)が、25℃での抗体の親和性(即ち、Kd)の+/-5%の範囲内であることを意味する。
【0113】
一実施態様では、Kdを、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定する。一実施態様では、Kdは、実施例2において記載するように、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定する。
【0114】
例えば、BIACORE(登録商標)-T-200 a BIACORE(登録商標)-8k(BIAcore, Inc.、ウプサラ)を使用したアッセイを、およそ10応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で実施する。一実施態様では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示に従い、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化する。抗原を、流速5μL/分での注射前に10mM酢酸ナトリウム(pH 4.8)を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)まで希釈し、約10応答単位(RU)の共役タンパク質を達成する。抗原の注射に続き、1Mエタノールアミンを注射し、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nMから500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を伴うPBS中で、25℃で、流速約25μL/分で注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用し、会合及び解離センサーグラムを同時に適合させることにより算出する。平衡解離定数(Kd)を比率koff/konとして算出する。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293: 865-881 (1999)を参照のこと。オン速度が、上の表面プラズモン共鳴アッセイにより106M-1 s-1を超える場合、次に、オン速度を、25℃で、PBS(pH 7.2)中の20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)における増加又は減少を測定する蛍光クエンチング技術を、分光計、例えばストップフロー装備分光光度計(Aviv Instruments)又は8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などにおいて撹拌キュベットを用いて測定されるように、増加濃度の抗原の存在において使用することにより決定することができる。
【0115】
2.抗体フラグメント
【0116】
特定の実施態様では、本明細書において提供する抗体は、ヒト抗体である。用語「抗体フラグメント」は、抗原に特異的に結合する能力を保持するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、一本鎖Fab(scFab);一本鎖可変フラグメント(scFv)及び単一ドメイン抗体(dAbs)を含むが、これらに限定しない。特定の抗体フラグメントの概説については、Holliger and Hudson, Nature Biotechnology 23:1126-1136 (2005)を参照のこと。
【0117】
一実施態様では、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、又はF(ab’)2フラグメント、特にFabフラグメントである。インタクトな抗体のパパイン消化によって、2つの同一の抗原結合フラグメントが産生され、各々が重及び軽鎖可変ドメイン(それぞれVH及びVL)並びに、また、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む「Fab」フラグメントと呼ぶ。用語「Fabフラグメント」は、このように、VLドメイン及びCLドメインを含む軽鎖、並びにVHドメイン及びCH1ドメインを含む重鎖フラグメントを含む抗体フラグメントを指す。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端での残基の追加によりFabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab’フラグメントである。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位(2つのFabフラグメント)及びFc領域の一部を有するF(ab’)2フラグメントがもたらされる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)2フラグメントの考察については、米国特許第5,869,046号明細書を参照のこと。
【0118】
別の実施態様では、抗体フラグメントは、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。ダイアボディは、2価又は二重特異性でありうる2つの抗原結合部位を伴う抗体フラグメントである。例えば、欧州特許出願公開第404,097号明細書;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)において記載されている。
【0119】
更なる実施態様では、抗体フラグメントは一本鎖Fabフラグメントである。「一本鎖Fabフラグメント」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体重鎖定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)、及びリンカーからなるポリペプチドであって、それにおいて、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端の方向における以下の順序の1つを有する:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CL。特に、前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸、好ましくは32及び50アミノ酸の間のポリペプチドである。前記一本鎖Fabフラグメントは、CLドメイン及びCH1ドメインの間の天然ジスルフィド結合を介して安定化される。また、これらの一本鎖Fabフラグメントは、システイン残基の挿入を介した鎖間ジスルフィド結合の生成により更に安定化されうる(例えば、Kabatナンバリングに従った可変重鎖における位置44及び可変軽鎖における位置100)。
【0120】
別の実施態様では、抗体フラグメントは一本鎖可変フラグメント(scFv)である。「一本鎖可変フラグメント」又は「scFv」は、リンカーにより接続された、抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変ドメインの融合タンパク質である。特に、リンカーは10から25アミノ酸の短いポリペプチドであり、通常は可動性のためのグリシン、並びに溶解性のためのセリン又はスレオニンに富み、VHのN末端をVLのC末端に、又はその逆のいずれかで接続することができる。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、本来の抗体の特異性を保持する。sFvフラグメントの概説については、例えば、Pluuckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照のこと;また、国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5,571,894号明細書及び同第5,587,458号明細書を参照のこと。
【0121】
抗体フラグメントは、本明細書において記載するように、種々の技術(インタクトな抗体のタンパク質分解消化並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌)による組換え産生を含むが、これらに限定しない)により作製することができる。
【0122】
3.ヒト抗体
【0123】
特定の実施態様では、本明細書において提供する抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体を、当技術分野において公知の種々の技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001)及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)において記載されている。
【0124】
4.多重特異性抗体
【0125】
特定の実施態様では、本明細書において提供する抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位(即ち、異なる抗原上の異なるエピトープ又は同じ抗原上の異なるエピトープ)について結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、多重特異性抗体は3つ又はそれ以上の結合特異性を有する。特定の実施態様では、結合特異性の1つは、VEGFについてであり、他の(2つ又はそれ以上の)特異性は、任意の他の抗原についてである。特定の実施態様では、二重特異性抗体は、VEGFの2つ(又はそれ以上)の異なるエピトープに結合しうる。多重特異性(例えば、二重特異性)抗体はまた、VEGFを発現する細胞に細胞傷害薬剤又は細胞を局在化させるために使用されうる。多重特異性抗体は、全長抗体又は抗体フラグメントとして調製することができる。
【0126】
多重特異性抗体を作製するための技術は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)を参照のこと)及び「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号明細書、及びAtwell et al., J. Mol. Biol. 270:26 (1997)を参照のこと)を含むが、これらに限定しない。多重特異性抗体はまた、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(例えば、国際公開第2009/089004号を参照のこと);2つ又はそれ以上の抗体又はフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号明細書、及びBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照のこと);ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)及び国際公開第2011/034605号を参照のこと);軽鎖の誤対合問題を回避するために一般の軽鎖技術を使用すること(例えば、国際公開第98/50431号を参照のこと);二重特異性抗体フラグメントを作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照のこと);及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照のこと);及び、例えば、Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)において記載されているように三重特異性抗体を調製することにより作製してもよい。
【0127】
例えば、「Octopus抗体」、又はDVD-Igを含む、3つ又はそれ以上の抗原結合部位を伴う操作抗体がまた、本明細書において含まれる(例えば、国際公開第2001/77342号及び国際公開第2008/024715号を参照のこと)。3つ又はそれ以上の抗原結合部位を伴う多重特異性抗体の他の例を、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号、及び国際公開第2013/026831号において見出すことができる。
【0128】
多重特異性抗体はまた、同じ抗原特異性の1つ又は複数の結合アームにおいてドメインクロスオーバーを伴う非対称形態において、即ち、VH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号を参照のこと)、CH1/CLドメイン(例えば、国際公開第2009/080253号を参照のこと)又は完全なFabアーム(例えば、国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号を参照のこと、また、Schaefer et al, PNAS, 108 (2011) 1187-1191、及びKlein at al., MAbs 8 (2016) 1010-20を参照のこと)を交換することにより提供してもよい。一実施態様では、多重特異性抗体はクロスFabフラグメントを含む。用語「クロスFabフラグメント」又は「クロスオーバーFabフラグメント」は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されているFabフラグメントを指す。クロスFabフラグメントは、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域1(CH1)で構成されるポリペプチド鎖、並びに重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)で構成されるポリペプチド鎖を含む。非対称Fabアームはまた、荷電又は非荷電アミノ酸変異をドメイン界面中に導入し、正しいFab対合に向けることにより操作することができる。例えば、国際公開第2016/172485号を参照のこと。
【0129】
多重特異性抗体についての種々の更なる分子フォーマットが当技術分野において公知であり、本明細書中に含まれる(例えば、Spiess et al., Mol Immunol 67 (2015) 95-106を参照のこと)。
【0130】
5.抗体変異体
【0131】
特定の実施態様では、本明細書において提供する抗体のアミノ酸配列変異体を熟慮する。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を変えることが望まれうる。抗体のアミノ酸配列変異体を、抗体をコードするヌクレオチド配列中へ適当な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により調製してもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はその中への挿入、及び/又はその置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを作製し、最終的な構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合)を保持するという条件で、最終的な構築物に達することができる。
【0132】
a)置換、挿入、及び欠失変異体
【0133】
特定の実施態様では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体を提供する。置換変異誘発のための目的の部位は、HVR(例えば、CDR)及びFRを含む。保存的置換を表Iにおいて「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変化を、表Iにおいて「例示的な置換」の見出しの下に提供し、アミノ酸側鎖クラスを参照して下に更に記載するとおりである。アミノ酸置換を目的の抗体中に導入し、産物を、所望の活性(例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCCもしくはCDC)についてスクリーニングしてもよい。
【表1】

アミノ酸は、一般の側鎖の特性に従ってグループ化されうる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の方向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0134】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのメンバーについて交換することを伴いうる。
【0135】
置換変異体の1つの型は、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域の残基を置換することを含む。一般的には、更なる試験のために選択された、結果として得られる変異体は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性(例えば、増加した親和性、低下した免疫原性)における修飾(例えば、改善)を有するであろう、及び/又は、親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換変異体は親和性成熟抗体であり、それは、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術(例えば、本明細書において記載するものなど)を使用して便利に生成されうる。簡単には、1つ又は複数のHVR(例えば、CDR)残基を変異させ、変異体抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0136】
変化(例えば、置換)は、例えば、抗体の親和性を改善させるために、HVR(例えば、CDR)において作製してもよい。そのような変化は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を受けるコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照のこと)、及び/又は抗原に接触する残基において作製してもよく、結果として得られる変異体VHもしくはVLを結合親和性についてテストする。二次ライブラリーを構築し、それより再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001))において記載されている。親和性成熟の一部の実施態様では、多様性を、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド特異的変異誘発)のいずれかによる成熟のために選ばれた可変遺伝子中に導入する。二次ライブラリーを次に作る。ライブラリーを次にスクリーニングし、所望の親和性を伴う任意の抗体変異体を同定する。多様性を導入するための別の方法は、HVR(例えば、CDR)特異的アプローチを含み、それにおいて、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化する。抗原結合において含まれるHVR(例えば、CDR)残基を、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して特異的に同定しうる。CDR-H3及びCDR-L3を特にしばしば標的にする。
【0137】
特定の実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、そのような変化によって、抗原に結合する抗体の能力が実質的に低下しない限り、1つ又は複数のHVR(例えば、CDR)内で生じうる。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例えば、本明細書において提供する保存的置換)を、HVR(例えば、CDR)において作製しうる。そのような変化は、例えば、HVR(例えば、CDR)における抗原接触残基の外側でありうる。上に提供する、変異体VH及びVL配列の特定の実施態様では、各々のHVRを変化させない、あるいは、1つ、2つ、又は3つ未満のアミノ酸置換を含む。
【0138】
変異誘発のために標的にされうる抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれ、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されるとおりである。この方法において、標的残基の残基又は基(例えば、荷電残基、例えばarg、asp、his、lys、及びgluなど)を同定し、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)により置換され、抗体と抗原との相互作用が影響されるか否かを決定する。更なる置換をアミノ酸位置に導入し、初期置換への機能的感受性を実証してもよい。あるいは、又は加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して抗体及び抗原の間での接触点を同定してもよい。そのような接触残基及び隣接残基は、置換のための候補として標的にしてもよい又は排除してもよい。変異体をスクリーニングし、それらが所望の特性を含むか否かを決定してもよい。
【0139】
アミノ酸配列の挿入は、1つの残基から100又はそれ以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合体、並びに単一の又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、酵素(例えば、ADEPTについて(抗体特異的酵素プロドラッグ治療))又は抗体の血清中半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN又はC末端への融合体を含む。
【0140】
b)グリコシル化変異体
【0141】
特定の実施態様では、本明細書において提供する抗体を変化させ、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させる。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、便利には、1つ又は複数のグリコシル化部位が作られる又は除去されるように、アミノ酸配列を変化させることにより達成してもよい。
【0142】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着されたオリゴ糖は変化されうる。哺乳動物細胞により産生される天然抗体は、典型的には、N連結により、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に一般的に付着される分枝、二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照のこと。オリゴ糖は、種々の糖質、例えば、マンノース、Nアセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」においてGlcNAcに付着されたフコースを含みうる。一部の実施態様では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾を、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作るために作製してもよい。
【0143】
一実施態様では、非フコシル化オリゴ糖、即ち、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着されたフコースを欠くオリゴ質構造を有する抗体変異体を提供する。そのような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖としても言及する)は、特に、二分岐オリゴ糖構造のステムにおいて第1のGlcNAcに付着されたフコース残基を欠くN連結オリゴ糖である。一実施態様では、天然又は親抗体と比較し、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の増加した割合を有する抗体変異体を提供する。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は更に約100%(即ち、フコシル化オリゴ糖は存在しない)でありうる。非フコシル化オリゴ糖のパーセンテージは、例えば、国際公開第2006/082515号において記載されているように、MALDI-TOF質量分析法により測定されるように、Asn 297に付着された全てのオリゴ糖(例:複雑、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計と比べた、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域におけるおよそ位置297(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置付けられるアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297はまた、抗体における小さな配列変動に起因して、位置297の上流又は下流の約±3アミノ酸、即ち、位置294及び300の間に位置付けられうる。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の増加した割合を有するそのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合及び/又は改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;米国特許出願公開第2004/0093621号明細書を参照のこと。
【0144】
低下したフコシル化を伴う抗体を産生することが可能である細胞株の例は、タンパク質フコシル化において欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11で)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8ノックアウトCHO細胞など(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87:614-622 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照のこと)、又はGDP-フコース合成もしくはトランスポータータンパク質の低下もしくは消失した活性を伴う細胞(例えば、米国特許出願公開第2004/259150号明細書、米国特許出願公開第2005/031613号明細書、米国特許出願公開第2004/132140号明細書、米国特許出願公開第2004/110282号明細書を参照のこと)を含む。
【0145】
更なる実施態様では、二分されたオリゴ糖を伴う抗体変異体を提供し、例えば、それにおいて、抗体のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖は、GlcNAcにより二分されている。そのような抗体変異体は、上に記載するように、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。そのような抗体変異体の例は、例えば、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999);Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006);国際公開第99/54342号;国際公開第2004/065540号、国際公開第2003/011878号において記載されている。
【0146】
Fc領域に付着されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を伴う抗体変異体も提供する。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体変異体は、例えば、国際公開第1997/30087号;国際公開第1998/58964号;及び国際公開第1999/22764号において記載されている。
【0147】
c)Fc領域変異体
【0148】
特定の実施態様では、1つ又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書において提供する抗体のFc領域中に導入し、それにより、Fc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG、IgG、IgG、又はIgG Fc領域)を含みうる。
【0149】
特定の実施態様では、本発明によって、一部(しかし、全てではない)のエフェクター機能を保持する抗体変異体が熟慮され、それによって、それは、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、しかし、特定のエフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)など)が不要又は有害である適用のための望ましい候補となる。インビトロ及び/又はインビボの細胞傷害性アッセイを行い、CDC及び/又はADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行い、抗体がFcγR結合を欠くが(それ故に、ADCC活性を欠く可能性が高い)、しかし、FcRn結合能力は保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞がFcγRIIIだけを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFc発現が、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464頁の表3において要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例が、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom, I. et al. Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986))及びHellstrom, I et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);5,821,337(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照のこと)において記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー;及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マジソン))を参照のこと)。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核球細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は加えて、目的の分子のADCC活性を、インビボで、例えば、動物モデル、例えばClynes et al. Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)において開示されているものなどにおいて評価しうる。C1q結合アッセイも行い、抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照のこと)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定を、当技術分野において公知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova, S.B. et al., Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006);国際公開第2013/120929号を参照のこと)。
【0150】
低下したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329の1つ又は複数の置換を伴う抗体を含む(米国特許第6,737,056号明細書)。そのようなFc変異体は、アラニンへの残基265及び297の置換を伴う、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327の2つ又はそれ以上で置換を伴うFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号明細書)。
【0151】
FcRへの改善又は減弱された結合を伴う特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号明細書;国際公開第2004/056312号、及びShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照のこと)。
【0152】
特定の実施態様では、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334(残基のEUナンバリング)での置換を伴うFc領域を含む。
【0153】
特定の実施態様では、抗体変異体は、FcγR結合を減弱させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置234及び/又は235(残基のEUナンバリング)での置換を伴うFc領域を含む。一実施態様では、置換はL234A及びL235A(LALA)である。特定の実施態様では、抗体変異体は、ヒトIgG Fc領域から由来するFc領域におけるD265A及び/又はP329Gを更に含む。一実施態様では、置換は、ヒトIgG Fc領域から由来するFc領域におけるL234A、L235A、及びP329G(LALA-PG)である。(例えば、国際公開第2012/130831号を参照のこと)。別の実施態様では、置換は、ヒトIgG Fc領域から由来するFc領域におけるL234A、L235A、及びD265A(LALA-DA)である。
【0154】
一部の実施態様では、変化した(即ち、改善又は減弱された)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変化をFc領域において作製し、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)において記載されるとおりである。
【0155】
増加した半減期及び新生児Fc受容体(FcRn)への改善した結合を伴う抗体は、それらは、胎児への母体IgGの移行に関与し(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))、米国特許出願公開第2005/0014934号明細書(Hinton et al.)において記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善させる1つ又は複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。そのようなFc変異体は、Fc領域残基:238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434の1つ又は複数での置換、例えば、Fc領域残基434の置換(例えば、米国特許第7,371,826号明細書;Dall’Acqua, W.F., et al. J. Biol. Chem. 281 (2006) 23514-23524を参照のこと)を伴うものを含む。
【0156】
マウスFcマウスFcRn相互作用に決定的なFc領域残基が、部位特異的変異誘発により同定されている(例えば、Dall’Acqua, W.F., et al. J. Immunol 169 (2002) 5171-5180を参照のこと)。残基I253、H310、H433、N434、及びH435(Kabatに従ったEUナンバリング)が相互作用において含まれる(Medesan, C., et al., Eur. J. Immunol. 26 (1996) 2533;Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993;Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 24 (1994) 542)。残基I253、H310、及びH435が、ヒトFcとマウスFcRnとの相互作用のために決定的であることが見いだされた(Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819)。ヒトFc-ヒトFcRn複合体の試験では、残基I253、S254、H435、及びY436が、相互作用のために重大であることが示されている(Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993;Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)。Yeung, Y.A., et al.(J. Immunol. 182 (2009) 7667-7671)において、残基248から259及び301から317及び376から382及び424から437の種々の変異体が、報告及び検証されている。
【0157】
特定の実施態様では、抗体変異体は、FcRn結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置253、及び/又は310、及び/又は435(残基のEUナンバリング)での置換を伴うFc領域を含む。特定の実施態様では、抗体変異体は、位置253、310、及び435でのアミノ酸置換を伴うFc領域を含む。一実施態様では、置換は、ヒトIgG Fc領域から由来するFc領域中のI253A、H310A、及びH435Aである。例えば、Grevys, A., et al., J. Immunol. 194 (2015) 5497-5508を参照のこと。
【0158】
特定の実施態様では、抗体変異体は、FcRn結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置310、及び/又は433、及び/又は436(残基のEUナンバリング)での置換を伴うFc領域を含む。特定の実施態様では、抗体変異体は、位置310、433、及び436でのアミノ酸置換を伴うFc領域を含む。一実施態様では、置換は、ヒトIgG Fc領域から由来するFc領域中のH310A、H433A、及びY436Aである。(例えば、国際公開第2014/177460号を参照のこと)。
【0159】
特定の実施態様では、抗体変異体は、FcRn結合を増加させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置252、及び/又は254、及び/又は256(残基のEUナンバリング)での置換を伴うFc領域を含む。特定の実施態様では、抗体変異体は、位置252、254、及び256でのアミノ酸置換を伴うFc領域を含む。一実施態様では、置換は、ヒトIgG Fc領域から由来するFc領域中のM252Y、S254T、及びT256Eである。
【0160】
Fc領域変異体の他の例に関する、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0161】
d)システイン操作抗体変異体
【0162】
特定の実施態様では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基を用いて置換されているシステイン操作抗体(例えば、THIOMAB(商標)抗体)を作ることが望ましいであろう。特定の実施態様では、置換残基は、抗体の接近可能な部位で生じる。それらの残基を、システインを用いて置換することにより、反応性チオール基は、それにより、抗体の接近可能な部位に位置付けられ、抗体を、他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分などに共役させるために使用し、本明細書において更に記載するように、免疫複合体を作ってもよい。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号明細書、同第8,30,930号明細書、同第7,855,275号明細書、同第9,000,130号明細書、又は国際公開第2016/040856号において記載されているように生成してもよい。
【0163】
6.免疫複合体
【0164】
本発明はまた、1つ又は複数の治療的薬剤、例えば細胞傷害性薬剤、化学療法薬剤、薬物、成長阻害薬剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、又はそれらのフラグメント)、又は放射性同位体などに共役(化学結合)された本明細書における抗VEGF抗体を含む免疫複合体を提供する。
【0165】
一実施態様では、免疫複合体は、抗体が上で言及する治療的薬剤の1つ又は複数に共役されている抗体-薬物複合体(ADC)である。抗体は、典型的には、リンカーを使用し、治療的薬剤の1つ又は複数に接続される。治療的薬剤及び薬物並びにリンカーの例を含むADC技術の概要が、Pharmacol Review 68:3-19 (2016)において示されている。
【0166】
別の実施態様では、免疫複合体は、酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント(ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアチンタンパク質、フィトラカアメリカーナタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカカランティア阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリアオフィシナリス阻害剤、ゲロニン、ミトジェリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むが、これらに限定しない)に共役された、本明細書において記載する抗体を含む。
【0167】
別の実施態様では、免疫複合体は、放射性原子に共役されて放射性複合体を形成する、本明細書において記載する抗体を含む。種々の放射性同位体を放射性複合体の産生のために利用可能である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が含まれる。放射性複合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー試験用の放射性原子、例えば、Ttc-99mもしくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても公知である)用のスピンラベル、例えば再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、又は鉄などを含みうる。
【0168】
抗体及び細胞傷害性薬剤の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング薬剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオン酸(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCLなど)、活性エステル類(例えばスベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)を使用して作製しうる。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)において記載されているように調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナートベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドの共役のための例示的なキレート薬剤である。国際公開第94/11026号を参照のこと。リンカーは、細胞における細胞傷害性薬物の放出を促進する「切断可能なリンカー」でありうる。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号明細書)を使用してもよい。
【0169】
本明細書における免疫複合体又はADCは、限定しないが、架橋試薬を用いて調製されるそのような複合体(BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホEMCS、スルホGMBS、スルホKMUS、スルホMBS、スルホSIAB、スルホSMCC、及びスルホSMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸)を含むが、これらに限定しない。これらは商業的に利用可能である(例えば、Pierce Biotechnology、Inc.、米国イリノイ州ロックフォードから))を明示的に熟慮する。
【0170】
B.組み換え方法及び組成物
【0171】
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書において記載されるように、組換え方法及び組成物を使用して産生しうる。これらの方法のために、抗体をコードする1つ又は複数の単離核酸を提供する。
【0172】
天然抗体又は天然抗体フラグメントの場合では、2つの核酸が要求され、1つは軽鎖又はそのフラグメント用であり、1つは重鎖又はそのフラグメント用である。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードする。これらの核酸は、同じ発現ベクター上又は異なる発現ベクター上にあることができる。
【0173】
ヘテロ二量体重鎖を伴う二重特異性抗体の場合では、4つの核酸が要求され、1つは第1の軽鎖用であり、1つは第1のヘテロ単量体Fc領域ポリペプチドを含む第1の重鎖用であり、1つは第2の軽鎖用であり、及び1つは第2のヘテロ単量体Fc領域ポリペプチドを含む第2の重鎖用である。4つの核酸は、1つ又は複数の核酸分子又は発現ベクター中に含まれることができる。そのような核酸は、抗体の第1のVLを含むアミノ酸配列及び/又は第1のヘテロ単量体Fc領域を含む第1のVHを含むアミノ酸配列及び/又は第2のVLを含むアミノ酸配列及び/又は第2のヘテロ単量体Fc領域を含む第2のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の第1及び/又は第2の軽鎖並びに/あるいは第1及び/又は第2の重鎖)をコードする。これらの核酸は、同じ発現ベクター上又は異なる発現ベクター上にあることができ、通常、これらの核酸は2つ又は3つの発現ベクター上に位置付けられ、即ち、1つのベクターが1を上回るこれらの核酸を含むことができる。これらの二重特異性抗体の例は、CrossMabである(例えば、Schaefer, W. et al, PNAS, 108 (2011) 11187-1191を参照のこと)。例えば、ヘテロ単量体重鎖の1つは、いわゆる「ノブ変異」(T366W及び、場合により、S354C又はY349Cの1つ)を含み、他は、いわゆる「ホール変異」(T366S、L368A、及びY407V並びに、場合により、Y349C又はS354C)(Kabat EUナンバリングに従う)(例えば、Carter, P. et al., Immunotechnol. 2 (1996) 73を参照のこと)を含む。
【0174】
一実施態様では、本明細書中で報告する方法において使用される抗体をコードする単離核酸を提供する。
【0175】
一実施態様では、抗VEGF抗体を作製する方法を提供し、それにおいて、方法は、上に提供するように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現のために適切な条件下で培養すること、及び、場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することを含む。
【0176】
抗VEGF抗体の組換え産生のために、抗体をコードする核酸(例えば、上に記載する)を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために、1つ又は複数のベクター中に挿入する。そのような核酸は、従来の手順(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を使用して容易に単離及び配列決定されうる、又は組換え方法により産生されうる、又は化学合成により得られうる。
【0177】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現のための適切な宿主細胞は、本明細書において記載する原核細胞又は真核細胞を含む。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、細菌中で産生されうる。細菌における抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号明細書、米国特許第5,789,199号明細書、及び米国特許第5,840,523号明細書を参照のこと(また、大腸菌における抗体フラグメントの発現を記載する、Charlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp. 245-254を参考のこと)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離してもよく、更に精製することができる。
【0178】
原核生物に加えて、真核微生物(例えば糸状菌又は酵母など)が、抗体をコードするベクターのために適切なクローニング又は発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されている真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414;及びLi, H. et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照のこと。
【0179】
(グリコシル化)抗体の発現のための適切な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から由来する。無脊椎動物細胞の例は、植物細胞及び昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株が同定されており、それらは、特にスポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用されうる。
【0180】
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号明細書、米国特許第6,040,498号明細書、米国特許第6,420,548号明細書、米国特許第7,125,978号明細書、及び米国特許第6,417,429号明細書(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術が記載されている)を参照のこと。
【0181】
脊椎動物細胞も宿主として使用してもよい。例えば、懸濁液中で成長するように適合されている哺乳動物細胞株が有用でありうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚腎臓株(例えば、Graham, F.L. et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74において記載されている293又は293T細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252において記載されているTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳癌(MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68において記載されている);MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR-CHO細胞を含む)(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220);及び骨髄腫細胞株(例えばY0、NS0、及びSP2/0など)を含む。抗体産生のために適切な特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2004), pp. 255-268を参照のこと。
【0182】
一実施態様では、宿主細胞は真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0183】
C.結合アッセイ
【0184】
本明細書において提供する抗VEGF抗体を、当技術分野において公知の種々のアッセイにより、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性について同定しうる、スクリーニングしうる、又は特徴付けうる。
【0185】
一局面では、本発明の抗体は、例えば、公知の方法(例えばELISA、ウエスタンブロットなど)により、その抗原結合活性について試験する。
【0186】
別の局面では、競合アッセイを使用し、VEGFへの結合について、配列番号01のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む抗体と競合する抗体を同定しうる。
【0187】
例示的な競合アッセイでは、固定化VEGFを、配列番号01のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む、VEGFに結合する第1の標識抗体(例えば、抗VEGF-0089)並びにVEGFへの結合について第1の抗体と競合するその能力についてテストされている第2の非標識抗体を含む溶液中でインキュベートする。第2の抗体はハイブリドーマ上清中に存在しうる。対照として、固定化VEGFを、第1の標識抗体を含むが、しかし、第2の非標識抗体は含まない溶液中でインキュベートする。VEGFへの第1の抗体の結合について許容的な条件下でのインキュベーション後、過剰な未結合抗体を除去し、固定化VEGFに関連付けられる標識の量を測定する。固定化VEGFに関連付けられる標識の量が、対照サンプルと比べて、テストサンプル中で実質的に低下している場合、次に、それは、第2の抗体がVEGFへの結合について第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0188】
D.医薬組成物
【0189】
更なる局面では、例えば、下の治療的方法のいずれかにおける使用のために、本明細書において提供する抗体のいずれかを含む医薬組成物を提供する。一局面では、医薬組成物は、本明細書において提供する抗体のいずれか及び医薬的に許容可能な担体を含む。別の局面では、医薬組成物は、例えば、下に記載するように、本明細書において提供する抗体のいずれか及び少なくとも1つの追加の治療的薬剤を含む。
【0190】
本明細書において記載する抗VEGF抗体の医薬組成物は、所望の程度の純度を有するそのような抗体を、1つ又は複数の任意の医薬的に許容可能な担体と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、凍結乾燥組成物又は水溶液の形態において調製する。医薬的に許容可能な担体は、一般的に、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、緩衝剤、例えばヒスチジン、リン酸、クエン酸、酢酸、及び他の有機酸など;抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニンを含む);保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなど;単糖類、二糖類、及び他の糖質(グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む);キレート薬剤(例えばEDTAなど);糖(例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなど);塩形成対イオン(例えばナトリウムなど);金属複合体(例えば、Znタンパク質複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤(例えばポリエチレングリコール(PEG)など)を含むが、これらに限定しない。例示的な医薬的に許容可能な担体は、本明細書において、侵入型薬物分散薬剤、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Halozyme, Inc.)などを更に含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用の方法(rHuPH20を含む)が、米国特許公開第2005/0260186号明細書及び同第2006/0104968号明細書において記載されている。一局面では、sHASEGPは、1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼ(例えばコンドロイチナーゼなど)と組み合わせる。
【0191】
例示的な凍結乾燥された抗体組成物が、米国特許第6,267,958号明細書において記載されている。水性抗体組成物は、米国特許第6,171,586号明細書及び国際公開第2006/044908に号おいて記載されている組成物を含み、後者の組成物はヒスチジン-酢酸緩衝剤を含む。
【0192】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術により、又は界面重合により調製されたマイクロカプセル中に封入してもよく、例えば、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中の又はマクロエマルジョン中のそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル)である。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)において開示されている。
【0193】
徐放用の医薬組成物を調製しうる。徐放調製物の適切な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形品の形態(例えば、フィルム、又はマイクロカプセル)である。
【0194】
インビボ投与のために使用される医薬組成物は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば、無菌濾過膜を通じた濾過により容易に達成されうる。
【0195】
E.治療的方法及び投与の経路
【0196】
本明細書において提供する抗VEGF抗体のいずれかを、治療的方法において使用してもよい。
【0197】
一局面では、医薬としての使用のための抗VEGF抗体を提供する。更なる局面では、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)の処置に使用するための抗VEGF抗体を提供する。特定の実施態様では、処置の方法における使用のための抗VEGF抗体を提供する。特定の実施態様では、本発明は、個体に有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)を有する個体を処置する方法における使用のための抗VEGF抗体を提供する。1つのそのような実施態様において、方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療的薬剤(例えば、1、2、3、4、5、又は6つの追加の治療的薬剤)を個体に投与することを更に含む(例えば、下に記載するとおり)。更なる実施態様では、本発明は、血管新生の阻害に使用するための抗VEGF抗体を提供する。特定の実施態様では、本発明は、血管新生を阻害するための有効量の抗VEGF抗体を個体に投与することを含む、個体において血管新生を阻害する方法における使用のための抗VEGF抗体を提供する。上の実施態様のいずれかに従った「個体」は、好ましくはヒトである。
【0198】
更なる局面では、本発明は、医薬の製造又は調製における抗VEGF抗体の使用を提供する。一実施態様では、医薬は、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)の処置のためである。更なる実施態様では、医薬は、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)を有する個体に有効量の医薬を投与することを含む、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)を処置する方法における使用のためである。1つのそのような実施態様では、方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療的薬剤を個体に投与することを更に含む(例えば、下に記載するとおり)。更なる実施態様では、医薬は、血管新生を阻害するためである。更なる実施態様では、医薬は、血管新生を阻害するために、個体に有効量の医薬を投与することを含む、個体において血管新生を阻害する方法における使用のためである。上の実施態様のいずれかに従った「個体」は、ヒトでありうる。
【0199】
更なる局面では、本発明は、VEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)を処置するための方法を提供する。一実施態様では、方法は、そのようなVEGF関連疾患(例えば、癌又は眼疾患)を有する個体に、有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む。1つのそのような実施態様では、方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療的薬剤を個体に投与することを更に含む(例えば、下に記載するとおり)。上の実施態様のいずれかに従った「個体」は、ヒトでありうる。
【0200】
更なる局面では、本発明は、個体において血管新生を阻害するための方法を提供する。一実施態様では、方法は、血管新生を阻害するために、有効量の抗VEGF抗体を個体に投与することを含む。一実施態様では、「個体」はヒトである。
【0201】
更なる局面では、本発明は、例えば、上の治療的方法のいずれかにおける使用のための、本明細書において提供する抗VEGF抗体のいずれかを含む医薬組成物を提供する。一実施態様では、医薬組成物は、本明細書において提供する抗VEGF抗体のいずれか及び医薬的に許容可能な担体を含む。別の実施態様では、医薬組成物は、本明細書において提供する抗VEGF抗体のいずれか及び少なくとも1つの追加の治療的薬剤を含む(例えば、下に記載するとおり)。
【0202】
本発明の抗体は、治療において、単独で、又は他の薬剤との組み合わせにおいて使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療的薬剤と同時投与してもよい。
【0203】
本発明の抗体(及び任意の追加の治療的薬剤)は、任意の適切な手段(非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに、局所処置が望ましい場合、病巣内投与を含む)により投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、任意の適切な経路により、例えば、注射(例えば静脈内注射又は皮下注射など)によることができる(投与が短時間又は長時間であるかに部分的に依存する)。種々の投薬スケジュール(種々の時間点にわたる単一又は複数投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定しない)を本明細書において熟慮する。
【0204】
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致する様式において、製剤化、投薬、及び投与されうる。この文脈における考慮のための因子は、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与の方法、投与のスケジュール、及び医療従事者に公知の他の因子を含む。抗体は、問題の障害を防止又は処置するために現在使用される1つ又は複数の薬剤を用いて製剤化する必要はないが、しかし、場合により、製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、医薬組成物中に存在する抗体の量、障害又は処置の型、及び上で考察する他の因子に依存する。これらは、一般的に、本明細書において記載するのと同じ投与量で、及び投与経路を用いて、又は本明細書において記載する投与量の約1から99%で、又は任意の投与量で、及び適当であると経験的/臨床的に決定される任意の経路により使用される。
【0205】
疾患の防止又は処置のために、本発明の抗体の適当な投与量(単独で、あるいは1つ又は複数の他の追加の治療的薬剤との組み合わせにおいて使用した場合)は、処置される疾患の型、抗体の型、疾患の重症度及び経過(抗体が予防的又は治療的な目的のために投与されるか否かにかかわらず)、過去の治療、患者の臨床歴及び抗体への応答、並びに主治医の判断に依存しうる。抗体は、1回で、又は一連の処置にわたり患者に適切に投与する。疾患の型及び重症度に依存して、抗体の約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)は、例えば、1つ又は複数の別々の投与による、あるいは連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初期候補投与量でありうる。1つの典型的な1日投与量は、上に言及する因子に依存して、約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲でありうる。数日又はそれより長くにわたる反復投与のために、状態に依存し、処置は、一般的に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されうる。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲にありうる。このように、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1つ又は複数の用量を患者に投与してもよい。そのような用量は、間欠的に、例えば、1週間毎又は3週間毎に投与してもよい(例えば、患者が、抗体の約2から約20まで、又は、例えば、6用量を受けるようにする)。初回のより高い負荷用量、それに続く1つ又は複数のより低い用量を投与してもよい。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイにより簡単にモニターされる。
【0206】
F.製造品
【0207】
本発明の別の局面では、上に記載する障害の処置、防止、及び/又は診断のために有用な材料を含む製造品を提供する。製造品は、容器及び容器上の又はそれに関連付けられるラベル又は添付文書を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV用溶液バッグなどを含む。容器は、種々の材料(例えばガラス又はプラスチックなど)から形成されうる。容器は、それ自体で、あるいは状態を処置、防止、及び/又は診断するために有効な別の組成物と組み合わせた組成物を保持し、無菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選ばれた状態を処置するために使用されることを示す。更に、製造品は、(a)その中に含まれる組成物を伴う第1の容器(それにおいて、組成物は本発明の抗体を含む);及び(b)その中に含まれる組成物を伴う第2の容器(それにおいて、組成物は、更なる細胞傷害性薬剤又は他の治療的薬剤を含む)を含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、組成物を、特定の状態を処置するために使用することができることを示す添付文書を更に含みうる。あるいは、又は加えて、製造品は、医薬的に許容可能な緩衝液、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液などを含む第2(又は第3)の容器を更に含みうる。それは、商業的な及び使用者の観点から望ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む)を更に含みうる。
【0208】
3.本発明の特定の実施態様
以下では、本発明の特定の実施態様を列挙する。
1.VEGFへの抗体の結合が、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害する、VEGFに結合する抗体。
2.表面プラズモン共鳴により測定した場合、25℃の温度で≦150pMの親和性でVEGFに結合し、かつ、表面プラズモン共鳴により測定した場合、37℃の温度でより高い又はほぼ同じ親和性でVEGFに結合する、VEGFに結合する抗体。
3.a)VEGFへの抗体の結合が、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害し;及び/又は
b)表面プラズモン共鳴により測定した場合、25℃の温度で≦150pMの親和性でVEGFに結合し、かつ、表面プラズモン共鳴により測定した場合、37℃の温度でより高い又はほぼ同じ親和性でVEGFに結合する、
VEGFに結合する抗体。
4.抗体のFabフラグメントの結合が、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害する、実施態様1~3の1つの抗体。
5.抗体抗体のFabフラグメントが、25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合及び37℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合する、実施態様1~4の1つの抗体。
6.(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(b)配列番号04、配列番号10、及び配列番号12の群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、並びに
(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含み、
(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、
VEGFに結合する抗体。
7.(a)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(b)配列番号04、配列番号10、及び配列番号12の群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2、並びに
(c)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含み、
(d)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(e)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び
(f)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、
実施態様1~5の1つの抗体。
8.モノクローナル抗体である、実施態様1~7のいずれかの抗体。
9.ヒト抗体である、実施態様1~8のいずれか1つの抗体。
10.VEGFに結合する抗体フラグメントである、実施態様1~9のいずれか1つの抗体。
11.配列番号01のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;及び配列番号02のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列を含む、実施態様1~10のいずれかの抗体。
12.配列番号01のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~11のいずれかの抗体。
13.配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~12のいずれかの抗体。
14.配列番号09のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~12のいずれかの抗体。
15.配列番号11のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~12のいずれかの抗体。
16.配列番号33のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~12のいずれかの抗体。
17.配列番号42のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~12のいずれかの抗体。
18.配列番号44のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、実施態様1~12のいずれかの抗体。
19.配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体。
20.配列番号09のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体。
21.配列番号11のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体。
22.配列番号33のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体。
23.配列番号42のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体。
24.配列番号44のVH配列及び配列番号02のVL配列を含む、VEGFに特異的に結合する抗体。
25.全長IgG1抗体である、実施態様1~24のいずれかの抗体。
26.Fabフラグメントである、実施態様1~24のいずれか1つの抗体。
27.25℃の温度で表面プラズモン共鳴により測定した場合、≦150pMの親和性でVEGFに結合する、実施態様1~26のいずれかの抗体。
28.多重特異性抗体である、実施態様1~27のいずれかの抗体。
29.(a)配列番号13、配列番号15、配列番号16、配列番号32、配列番号41、及び配列番号43の群より選択されるアミノ酸配列の重鎖;及び
(b)配列番号14の軽鎖
を含む、実施態様1~28のいずれかの抗体。
30.配列番号13の重鎖及び配列番号14の軽鎖を含む、実施態様1~28のいずれかの抗体。
31.配列番号15の重鎖及び配列番号14の軽鎖を含む、実施態様1~28のいずれかの抗体。
32.配列番号16の重鎖及び配列番号14の軽鎖を含む、実施態様1~28のいずれかの抗体。
33.配列番号32の重鎖及び配列番号14の軽鎖を含む、実施態様1~28のいずれかの抗体。
34.(a)(i)配列番号03のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号04のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するCDR-H2;及び(iii)配列番号05のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む、VHドメイン;並びに(b)(i)配列番号06のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号07のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(iii)配列番号08のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、VLドメインを含む、実施態様1~28のいずれかの抗体。
35.配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を有する抗体の親和性成熟変異体である、VEGFに結合する抗体。
36.配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を有する抗体の変異体であり、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害することを伴わずに、VEGF受容体VEGF-R2へのVEGF結合を有意に阻害する、VEGFに結合する抗体。
37.配列番号01のVH配列及び配列番号02のVL配列を有する抗体と同じエピトープに結合する、VEGFに結合する抗体。
38.配列番号04、配列番号10、及び配列番号12の群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H2を含む、先行する実施態様の1つの抗体。
39.配列番号46及び配列番号47の群より選択されるアミノ酸配列を含むH-FR3を含む、先行する実施態様の1つの抗体。
40.実施態様1~37のいずれかの抗体をコードする、単離核酸。
41.実施態様36の核酸を含む、宿主細胞。
42.VEGFに結合する抗体の発現のための適切な条件下で、実施態様37の宿主細胞を培養することを含む、VEGFに結合する抗体を産生する方法。
43.宿主細胞から抗体を回収することを更に含む、実施態様38の方法。
44.実施態様38又は39の方法により産生された抗体。
45.実施態様1~35のいずれかの抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
46.医薬としての使用のための、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41の医薬組成物。
47.VEGF関連疾患の処置に使用するための、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41のいずれかの医薬組成物。
48.癌の処置に使用するための、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41のいずれかの医薬組成物。
49.眼疾患の処置に使用するための、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41のいずれかの医薬組成物。
50.VEGF関連疾患の処置のための医薬の製造における、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41の医薬組成物の使用。
51.癌の処置のための医薬の製造における、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41の医薬組成物の使用。
52.眼疾患の処置のための医薬の製造における、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41の医薬組成物の使用。
53.血管新生を阻害するための医薬の製造における、実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41の医薬組成物の使用。
54.VEGF関連疾患を有する個体を処置する方法であって、有効量の実施態様1~35のいずれか1つの抗体又は実施態様41の医薬組成物を、該個体に投与することを含む、方法。
55.個体において血管新生を阻害する方法であって、血管新生を阻害するために有効な量の実施態様1~35のいずれかの抗体又は実施態様41の医薬組成物を、該個体に投与することを含む、方法。
【表2】



【0209】
以下では、抗VEGF抗体VEGF-0089、VEGF-0113、及びVEGF-0114の印がつけられたHVR(太字の下線付き文字のHVR)を含むVH及びVLドメインのアミノ酸配列を列挙する:
【0210】
・抗体VEGF-0089:
VHドメイン(配列番号01)
【化1】

VLドメイン(配列番号02)
【化2】
【0211】
・抗体VEGF-0113:
VHドメイン(配列番号09)
【化3】

VLドメイン(配列番号02)
【化4】
【0212】
・抗体VEGF-0114:
VHドメイン(配列番号11)
【化5】

VLドメイン(配列番号02)
【化6】
【0213】
・抗体VEGF-P1AD8675:
VHドメイン(配列番号33)
【化7】

VLドメイン(配列番号02)
【化8】
【0214】
・抗体VEGF-P1AE3520:
VHドメイン(配列番号42)
【化9】

VLドメイン(配列番号02)
【化10】
【0215】
・抗体VEGF-P1AE3521:
VHドメイン(配列番号44)
【化11】

VLドメイン(配列番号02)
【化12】
【実施例
【0216】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。種々の他の実施態様を、上に提供する一般的な記載を仮定し、実行してもよいことが理解される。
【0217】
実施例1:
【0218】
ヒト抗VEGF抗体(抗体VEGF-0089)の生成。
【0219】
VEGF-R1ドメイン2並びにVEGF-R3ドメイン2及び3との複合体におけるヒトVEGF二量体の結晶構造のオーバーレイを図1に描写する。この重ね合わせは、両方のVEGF受容体がVEGF二量体上の高度に類似する領域に結合すること、及び、従って、両方の受容体、VEGF-R1及びVEGF-R2へのVEGF結合を同じ様式において阻害しない、VEGFに結合する抗体を生成することが高度に困難であると思われることを例証する。これに沿って、当技術分野において公知の複数の抗VEGF抗体のうち、少数の抗体だけが、VEGF-R1へのVEGF結合よりはむしろ、VEGF-R2へのVEGF結合を選択的に遮断することが報告された。
【0220】
本明細書において記載する抗体VEGF-0089は、VEGF由来抗原を用いた免疫化時に、ヒト化抗体レパートリーを発現する、Roche独自のトランスジェニックウサギから由来した。ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックウサギが、国際公開第2000/46251号、国際公開第2002/12437号、国際公開第2005/007696号、国際公開第2006/047367号、米国特許出願公開第2007/0033661号明細書、及び国際公開第2008/027986号において報告されている。動物を、AAALAC認定の動物施設において、付録A「動物の収容及び飼育についてのガイドライン」に従って収容した。全ての動物の免疫化プロトコール及び実験を、オーバーバイエルン州政府により承認され(許可番号55.2-1-54-2532-90-14)、ドイツ動物福祉法並びに欧州議会及び理事会の指令2010/63に従って実施した。
【0221】
トランスジェニックウサギの免疫化
【0222】
簡単には、ウサギ(n=3)(12~16週齢)を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に共役された組換えヒトVEGF-121タンパク質(自社で産生)を用いて免疫化した。全ての動物を、0日目での、皮内適用による、完全フロイントアジュバント(CFA)を用いて乳化された400μgタンパク質、それに続く筋肉内注射及び皮下注射を交互に繰り返すことによる、1、2、6、11、及び14週目での200ugタンパク質エマルジョンを用いて免疫化した。血液を、4回目の免疫化以降から開始し、4、5、及び6日目に採取した。血清を、ELISAによる免疫原特異的ウサギ及びヒト特異的免疫グロブリン力価決定のために調製し、末梢単核細胞を単離し、それを、B細胞クローニング過程において抗原特異的B細胞の供給源として使用した。
【0223】
トランスジェニックウサギからのB細胞クローニング
【0224】
ウサギ末梢血単核細胞(PBMC)の単離:免疫化ウサギの血液サンプルを採取した。EDTAを含む全血を、製造業者の仕様に従って、リンパ液哺乳動物(Cedarlane Laboratories)を使用した密度遠心分離の前に、1×PBS(PAA)を用いて2倍希釈した。PBMCを、1×PBSを用いて2回洗浄した。
【0225】
EL-4 B5培地:10%FCS(Pan Biotech)、2mMグルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco)、2mMピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES(PAN Biotech)、及び 0.05mM b-メルカプトエタノール(Invitrogen)を用いて補充したRPMI 1640(Pan Biotech)を使用した。
【0226】
プレートのコーティング:無菌細胞培養6ウェルプレートを、炭酸緩衝液(0.1M重炭酸ナトリウム、34mM炭酸水素二ナトリウム、pH 9,55)中の2μg/ml KLHを用いて4℃で一晩コーティングした。プレートを、使用前に、無菌PBS中で3回洗浄した。
【0227】
マクロファージ/単球の又はヒトFc結合剤の枯渇:PBMCを無菌6ウェルプレート(細胞培養グレード)上に播種し、非特異的な接着を通じてマクロファージ及び単球を枯渇させた。各々のウェルを、最大で4mlの培地及び免疫化ウサギからの6×10e6個までのPBMCを用いて満たし、インキュベーター中で、37℃で1時間にわたり結合させた。上清中の細胞(末梢血リンパ球(PBL))を、抗原パニング工程のために使用した。
【0228】
免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー:抗IgG FITC(AbD Serotec)及び抗huCk PE(Dianova)抗体を単一細胞選別のために使用した。表面染色のために、枯渇及び濃縮工程からの細胞を、PBS中の抗IgG FITC及び抗huCk PE抗体を用いてインキュベートし、4℃の暗所において45分間にわたりインキュベートした。染色後、PBMCを、氷冷PBSを用いて2回洗浄した。最後に、PBMCを氷冷PBS中に再懸濁し、直ぐにFACS分析に供した。5μg/mlの濃度におけるヨウ化プロピジウム(BD Pharmingen)をFACS分析に先立ち加え、死細胞及び生細胞の間で区別した。コンピューター及びFACSDiva(商標)ソフトウェア(BD Biosciences)を備えたBecton Dickinson FACSAria(商標)を単一細胞選別のために使用した。
【0229】
B細胞培養:ウサギB細胞の培養を、Seeber et al.(S Seeber et al. PLoS One 9 (2), e86184. 2014 Feb 04)により記載されている方法により実施した。簡単には、単一の選別されたウサギB細胞を、インキュベーター中で、37℃で7日間にわたり、Pansorbin(登録商標)細胞(1:100000)(Calbiochem)、5%ウサギ胸腺細胞上清(MicroCoat)、及びガンマ線照射マウスEL-4 B5胸腺腫細胞(5×10e5個細胞/ウェル)を含む200μl/ウェルEL-4 B5培地を伴う96ウェルプレート中でインキュベートした。B細胞培養の上清をスクリーニングのために除去し、残りの細胞を直ぐに回収し、100μlのRLT緩衝液(Qiagen)中で、-80℃で凍結した。
【0230】
抗体のVドメインをコードするRNAを単離した。抗体の組換え発現のために、VH又はVLについてコードするPCR産物をcDNAとして発現ベクター中にクローニングし、HEK-293細胞中に一過性に形質転換した。
【0231】
スクリーニングから、配列番号01のVHドメイン及び配列番号02のVLドメインを含む抗体を選択した。この抗体は、本明細書において、抗体「VEGF-0089」としても言及する。その後の分析のために、抗体VEGF-0089を、ヒトVH及びVLドメイン並びに軽鎖(CLカッパ)及び重鎖(CH1)のウサギ由来定常ドメインを有するFabフラグメント(本明細書において「VEGF-0089 Fabフラグメント」又は単に「VEGF-0089 Fab」として言及する)として生成した。VEGF-0089 Fabフラグメントの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号13である。VEGF-0089 Fabフラグメントの軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号14である。
【0232】
実施例2:
【0233】
生成されたヒト抗VEGF抗体(抗体VEGF-0089)の特徴付け
【0234】
抗体VEGF-0089 FabフラグメントのVEGF結合を、下に記載するように、表面プラズモン共鳴(SPR)により評価した。
【0235】
表面プラズモン共鳴(SPR)による抗体結合親和性の決定
【0236】
抗His捕捉抗体(GE Healthcare 28995056)を、標準的なアミンカップリング化学を使用してSeries S Sensor Chip C1(GE Healthcare 29104990)に固定化し、500~1000共鳴単位(RU)の表面密度をもたらした。泳動緩衝液及び希釈緩衝液として、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH 7.4、0.05%Surfactant P20)を使用し、測定温度をそれぞれ25℃及び37℃に設定した。hVEGF-A121を表面に捕捉させ、結果として得られる5から35RUの範囲の捕捉レベルを伴った。抗VEGF抗体の希釈系列(0.37~30nM)を120秒間にわたり注入し、解離を30μl/分の流速で少なくとも600秒間にわたりモニターした。表面を、10mMグリシン(pH 1.5)を60秒間にわたり注入することにより再生した。バルク屈折率差を、ブランク注入を差し引くことにより、及び捕捉hVEGF-A121を伴わない対照フローセルから得られた応答を差し引くことにより修正した。速度定数を、Biacore(登録商標)Evaluationソフトウェア内のラングミュア1:1結合モデルを使用して算出した。
【0237】
結果として、VEGF-0089 FabフラグメントのKDは、134pM(25℃の温度で)と決定した。
【0238】
抗体の更なる特徴付けのために、VEGF-0089 Fabフラグメントの存在におけるその受容体VEGF-R1及びVEGF-R2へのVEGF結合の阻害を、下に記載するように評価した:
【0239】
抗体Fabフラグメントの存在におけるVEGF-R1及びVEGF-R2へのVEGF結合の阻害(VEGF:VEGF-R2/R1阻害ELISA)
【0240】
384ウェルストレプトアビジンプレート(Nunc/Microcoat#11974998001)を、0.25μg/mlビオチン化VEGF-R1又は0.5μg/mlビオチン化VEGF-R2(自社産生、DPBS(1×)(PAN、#P04-36500)中の各々25μl/ウェル)を用いてコーティングした。プレートを室温で1時間にわたりインキュベートした。並行して、0.7nMの濃度のVEGF-121-His(自社産生)を、異なる希釈(12×1:2希釈工程、500nMの濃度から開始する)における抗体を用いてインキュベートした。このプレインキュベーション工程は、384ウェルPPプレート(Weidmannメディカルテクノロジー、#23490-101)において1×OSEP緩衝液(ビデスト水、10×、Roche、#11 666 789 001 + 0.5%ウシ血清アルブミン画分V、脂肪酸不含、Roche、#10 735 086 001 + 0,05%Tween 20)中で行った。プレートを室温で1時間にわたりインキュベートした。VEGF-R1/VEGF-R2コーティングされたストレプトアビジンプレートを、90μl/ウェルのPBST緩衝液(ビデスト水、10×PBS Roche#11666789001 + 0.1%Tween 20)を用いて3回洗浄した後、VEGF抗体プレインキュベーションプレートからの25μlのサンプルを、コーティングされたストレプトアビジンプレートに移し、それを、その後、室温で1時間にわたりインキュベートした。90μl/ウェルのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した後、1×OSEP中の25μl/ウェルの検出抗体(抗His POD、Bethyl、#A190-114P、1:12000)を加えた。室温での1時間にわたるインキュベーション後、プレートを、90μlのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した。25μlのTMB(Roche、#11 835 033 001)を全てのウェルに同時に加えた。室温で10分間のインキュベーション後、シグナルを、Tecan Safire 2 Readerで、370nm/492nmで検出した。
【0241】
診療所において使用される先行技術の抗VEGF抗体についての対照及び代表として、ルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ、配列番号23の重鎖アミノ酸配列、配列番号24の軽鎖アミノ酸配列)を同じ条件下で評価する。結果を図2中に示す。
【0242】
結果は、VEGF-0089 Fabフラグメントが、VEGF-VEGF-R2への結合を完全に遮断することが可能であることを示す。VEGF-0089 Fabフラグメントは、VEGF-R1へのVEGF結合を完全には遮断しなかった。結果的に、VEGF-0089 Fabフラグメントは、VEGF-R2を通じて(しかし、VEGF-R1を通じてではない)VEGFシグナル伝達を選択的に遮断すると考えられる。図2中に示すように、先行技術の抗体ルセンティス(登録商標)は、両方の受容体、VEGF-R2及びVEGF R1へのVEGF結合を完全に遮断することが可能である。
【0243】
実施例3:
【0244】
ヒト抗VEGF抗体VEGF-0089の改善
【0245】
抗体VEGF-0089の抗体変異体を、抗体の特徴を更に改善するために作成した。
【0246】
種々の抗体候補から、2つの抗体を選択し、それにおいて、H-CDR2ループ中では、H-CDR2ループ内のトリグリシンストレッチの中間におけるグリシンが置換又は欠失された。
【0247】
VEGF-0113抗体
【0248】
VEGF-0089抗体の第1の変異体は、配列番号09の重鎖可変ドメイン及び配列番号02の軽鎖可変ドメインを含む抗体である。この抗体は、本明細書において「VEGF-0113」抗体として、並びに、ウサギ由来のCLカッパ及びCH1ドメインを伴うFabフラグメントとして提供される場合、「VEGF-0113 Fabフラグメント」又は単に「VEGF-0113 Fab」として言及する。本明細書において使用するVEGF-0113 Fabフラグメントは、配列番号15の重鎖及び配列番号14の軽鎖を含む。VEGF-0113抗体は、H-CDR2のアミノ酸配列においてだけ抗体VEGF-0089とは異なり、なぜなら、VEGF-0089抗体のH-CDR2の位置6でのグリシン残基が、プロリン残基により置換されているためである:
VEGF-0089のH-CDR2
SIGNGGGIYTYYADSVKG(配列番号04)
VEGF-0113のH-CDR2
SIGNGGIYTYYADSVKG(配列番号10)
【0249】
VEGF-0113のH-CDR2において実現されるアミノ酸モチーフ「GPG」によって、VEGF-0089のH-CDR2におけるトリグリシンストレッチ「GGG」と比較した場合、H-CDR2ループにずっと少ない立体構造の自由度が付与される。
【0250】
VEGF-0114抗体
【0251】
VEGF-0089抗体の第2の変異体は、配列番号11の重鎖可変ドメイン及び配列番号02の軽鎖可変ドメインを含む抗体である。この抗体は、本明細書において「VEGF-0114」抗体として、並びに、ウサギ由来のCLカッパ及びCH1ドメインを伴うFabフラグメントとして提供される場合、「VEGF-0114 Fabフラグメント」又は単に「VEGF-0114 Fab」として言及する。本明細書において使用するVEGF-0114 Fabフラグメントは、配列番号16の重鎖及び配列番号14の軽鎖を含む。VEGF-0114抗体は、H-CDR2のアミノ酸配列においてだけ抗体VEGF-0089とは異なり、なぜなら、VEGF-0089抗体のH-CDR2の位置4でのアスパラギン残基が、セリン残基により置換されており、VEGF-0089抗体のH-CDR2の位置7でのグリシン残基が除去され、及び位置8でのイソロイシン残基がフェニルアラニン残基により置き換えられたためである:
VEGF-0089のH-CDR2
SIGNGGGIYTYYADSVKG(配列番号04)
VEGF-0114のH-CDR2
SIGGG-FYTYYADSVKG(配列番号12)
【0252】
抗体VEGF-0114を生成するために、VEGF-0089のH-CDR2におけるトリグリシンストレッチ「GGG」中の第3のグリシン残基を除去した。また、フェニルアラニンを導入し、トリグリシンストレッチに続くイソリジン残基を置き換えた。
【0253】
実施例4:
【0254】
直接ELISAにより評価される、抗VEGF抗体のVEGF結合
【0255】
以下のように直接ELISAを介して評価される、VEGFへの先行技術の抗体2C3及びr84の結合:
【0256】
VEGF結合ELISA
【0257】
Nunc(登録商標)MaxiSorp(商標)384ウェルμclearプレート(#464718)を、1μg/ml VEGF-121-His(自社産生)を用いてコーティングし、室温で1時間インキュベートした。90μl/ウェルのPBST緩衝液(ビデスト水、10×PBS Roche#11666789001 + 0.1%Tween(登録商標)20)を用いて3回洗浄した後、遮断緩衝液(ビデスト水、10×PBS Roche#11666789001 + 2%ウシ血清アルブミン画分V、脂肪酸不含、Roche、#10735078001 + 0.05%Tween(登録商標)20)を90μl/ウェルで加え、室温で1時間にわたりインキュベートした。90μl/ウェルのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した後、濃度60nMで開始する25μlの抗体希釈系列(16×1:2希釈工程)をVEGFコーティングウェルに加えた。室温での1時間にわたるインキュベーション後、プレートを再び90μl/ウェルのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した。25μl/ウェルの検出抗体(抗c-myc POD(Bethyl、#A190-104P、1:16000)又は抗huラムダLC(Bethyl、#A80-116P、1:15000)又はF(ab’)2フラグメントヤギ抗hu IgG Fcyフラグメント特異的(JIR、#109-036-098、1:2000)又はヤギ抗hu IgカッパLC(Millipore、#AP502P、1:2000)(1×PBS(10×、Roche、#11 666 789 001)+ 0.5%ウシ血清アルブミン画分V、脂肪酸不含、Roche、#10 735 086 001 + 0,05%Tween 20中)を加え、プレートを室温で1時間にわたりインキュベートした。90μlのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した後、25μlのTMB(Roche、#11 835 033 001)を各々のウェルに加えた。RTでの3分間のインキュベーション後、シグナルを、Tecan Safire 2リーダーで、370nm/492nmで検出した。
【0258】
本発明の抗体のFabフラグメントをそれぞれテストした。以下の抗体をテストした(表1を参照のこと):
【0259】
【表3】
【0260】
先行技術の抗体を、実施例1において記載するのと同じ方法(HEK-293細胞の一過性形質転換)を使用して生成した。以下の先行技術の抗体Fabフラグメントを並行して分析した:ラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))、先行技術の抗体2C3(国際公開第2000/64946号において開示されている)、r84(国際公開第2009/060198号において開示されている)、及びL3H6(国際公開第2012/089176号において開示されている)のFabフラグメント。また、抗体2C3及びr84を全長IgG抗体として分析した。
【0261】
使用した先行技術の抗体のアミノ酸配列を表2に列挙する。
【0262】
【表4】
【0263】
結果を図3中に示す。VEGF結合は、抗体2C3について使用したアッセイ条件下では観察することはできなかったが、VEGF結合は、先行技術の抗体r84及びL3H6について確認された。抗体r84による抗原結合は、結合力の欠如に起因して、全長IgGよりはむしろ、Fabフラグメントとして使用した場合に顕著に低下することが実証されている。VEGF結合は、本発明の全てのテスト抗体について確認された。
【0264】
実施例5:
【0265】
本発明の抗体の結合親和性
【0266】
抗体の親和性を、実施例2において記載するのと同じ方法を使用してSPRにより決定した。表1及び表2中に列挙する全てのFabフラグメントをテストした。
【0267】
本発明の抗体並びに先行技術の抗体の親和性を、上に記載するように評価した。結果を表3中に示す。
【0268】
【表5】
【0269】
実施例6:
【0270】
抗VEGF抗体の存在におけるVEGF-R2へのVEGF結合の阻害
【0271】
本発明の抗体Fabフラグメントの存在における、それぞれVEGF-R2及びVEGF-R1へのVEGFの結合を、以下のようにテストした。
【0272】
抗体Fabフラグメントの存在におけるVEGF-R1及びVEGF-R2へのVEGF結合の阻害(VEGF:VEGF-R2/R1阻害ELISA)
【0273】
384ウェルストレプトアビジンプレート(Nunc/Microcoat#11974998001)を、0.25μg/mlビオチン化VEGF-R1又は0.5μg/mlビオチン化VEGF-R2(自社産生、DPBS(1×)(PAN、#P04-36500)中で各々25μl/ウェル)を用いてコーティングした。プレートを室温で1時間にわたりインキュベートした。並行して、濃度0.7nMでのVEGF-121-His(自社産生)を、異なる希釈(12×1:2希釈工程、濃度500nMで開始する)における抗体を用いてインキュベートした。このプレインキュベーション工程は、384ウェルPPプレート(Weidmannメディカルテクノロジー、#23490-101)において、1×OSEP緩衝液(ビデスト水、10×、Roche、#11 666 789 001 + 0.5%ウシ血清アルブミン画分V、脂肪酸不含、Roche、#10 735 086 001 + 0,05%Tween 20)中で行った。プレートを室温で1時間にわたりインキュベートした。VEGF-R1/VEGF-R2コーティングされたストレプトアビジンプレートを、90μl/ウェルのPBST緩衝液(二重蒸留水、10×PBS Roche#11666789001 + 0.1%Tween(登録商標)20)を用いて3回洗浄した後、VEGF抗体プレインキュベーションプレートからの25μlのサンプルを、コーティングされたストレプトアビジンプレートに移し、それを、その後、室温で1時間にわたりインキュベートした。90μl/ウェルのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した後、25μl/ウェルの検出抗体(抗His POD、Bethyl、#A190-114P、1:12000)(1×OSEP中)を加えた。室温での1時間にわたるインキュベーション後、プレートを、90μlのPBST緩衝液を用いて3回洗浄した。25μl TMB(Roche、#11 835 033 001)を全てのウェルに同時に加えた。室温での10分間のインキュベーション後、シグナルを、Tecan Safire 2リーダーで、370nm/492nmで検出した。
【0274】
第1の実験では、本発明の抗体VEGF-0089、VEGF-0113、及びVEGF-0114をテストし(表1を参照のこと)、先行技術の抗体L3H6 Fab及びラニビズマブ(表2を参照のこと)を0.4nM VEGFの存在において分析した。陰性対照として、ラニビズマブをVEGFの非存在においても分析した(グラフ中で「ラニビズマブw/o his VEGF」として示す)。結果を図4A中に示す。
【0275】
第2の実験では、表1及び表2中に列挙する全ての抗体を、0.7nMのVEGFの存在において、実施例2において記載するように分析した。結果を図4B中に示す。
【0276】
VEGF-R2へのVEGF結合の阻害は、テストした先行技術の抗体について使用した実験設定において評価しなかった。実験を、上に記載するのと同じ条件下で繰り返したが、しかし、0.7nMの代わりに0.34nMのVEGF-121-Hisを使用した。結果を図7中に示す。
【0277】
この実験設定では、VEGF-R2へのVEGF結合の阻害が、高濃度での先行技術の抗体r84 IgG、r84 Fab、及びL3H6 Fabについて観察された。本発明の抗体VEGF-0089 Fab、VEGF-0113 Fab、及びVEGR-0114 Fabは、全てのテストした濃度において、VEGF-R2へのVEGF結合を阻害した。
【0278】
実施例7:
【0279】
抗VEGF抗体の存在におけるVEGF-R1へのVEGF結合の阻害
【0280】
本発明の抗体Fabフラグメントの存在におけるVEGF-R1へのVEGFの結合を、実施例6において記載するようにテストした。表1及び表2中に列挙する全ての抗体をテストした。結果を図5中に示す。
【0281】
VEGF-R1へのVEGF結合の阻害は、テストした先行技術の抗体2C3、r84、及びL3H6について使用した実験設定において評価しなかった。
【0282】
実験を、上に記載するのと同じ条件下で繰り返したが、しかし、0.7nMの代わりに0.34nMのVEGF-121-Hisを使用した。結果を図5中に示す。
【0283】
実施例8:
【0284】
レポーター遺伝子アッセイ(RGA)を介した抗VEGF抗体のIC50の評価
【0285】
本発明の抗VEGF抗体(表1を参照のこと)を、20nMから0.02nMの範囲の9つの濃度においてテストした。先行技術の抗体ラニビズマブ(表2を参照のこと)を対照としてテストした。
【0286】
簡単には、白色の96ウェルマルチタイタープレートのウェル当たり、37,5μlの抗体溶液/ウェルを、37,5μlのVEGF-A121:25ng/ml/ウェルを用いて混合し、室温で30分間にわたりインキュベートした。その後、40000個細胞/ウェル当たり75μl/ウェルのHEK293-NFAT-RE-Luc2P/KDR_Suspensionを加え、37℃、5%CO2で5時間にわたりインキュベートした。最後に、100μl/ウェルのBio-Glo(商標)試薬を加え、発光を、Tecan infinite Readerを使用して決定した。結果を表4中に示す。
【0287】
【表6】
【0288】
データによって、全てのテストした抗体によるVEGFへの拮抗的結合が確認される。
【0289】
実施例9:
【0290】
ヒト抗VEGF抗体VEGF-0089の改善された変異体の提供
【0291】
抗体VEGF-0089の追加の改善された抗体変異体を生成し、特に、VEGF-R1へのVEGF結合よりはむしろ、VEGF-R2へのVEGF結合を阻害する優先度を改善させた。種々の抗体候補から、表5中に列挙する3つの候補を選択した。表5中に列挙する抗体Fabフラグメントを、実施例1において記載するのと同じ方法(HEK-293細胞の一過性形質転換)を使用して生成した。
【0292】
【表7】
【0293】
実施例10:
【0294】
本発明の抗体の結合親和性
【0295】
抗体の親和性を、実施例2において記載するのと同じ方法を使用してSPRにより決定した。表1及び表5中に列挙する、本発明の抗体の全てのFabフラグメントをテストした。また、追加の先行技術の抗体HF2-1、HF2-5、HF2-9、及びHF2-11(欧州特許出願公開第3006465号明細書において開示されている)を、上に記載するように評価した。それらの追加の先行技術の抗体のアミノ酸配列を表6中に示す。
【0296】
【表8】
【0297】
結果を表7中に示す。
【0298】
【表9】
【0299】
実施例11:
【0300】
抗VEGF抗体の存在におけるVEGF-R2又はVEGF-R1へのVEGF結合の阻害
【0301】
本発明の抗体Fabフラグメントの存在におけるVEGF-R2及びVEGF-R2へのVEGFの結合を、実施例2において記載するようにテストした。
【0302】
これらの実験では、本発明の抗体VEGF-0089、VEGF-0113、VEGF-0114、VEGF-P1AD8675、VEGF-P1AE3520、及びVEGF-P1AE3521をテストし(表1及び表5を参照のこと)、先行技術の抗体HF2-1、HF2-5、HF2-9、及びHF2-11(表6を参照のこと)並びにラニビズマブ(表2を参照のこと)をVEGFの存在において分析した。結果を図8及び図10(0.34nM VEGFの存在における)並びに図9及び図11(0.7nm VEGFの存在における)中に示す。
【0303】
テストした先行技術の抗体は、VEGF受容体VEGF-R1へのVEGF結合を有意に阻害しなかった。本発明の全てのテストした抗体は、VEGF-R1へのVEGF結合よりはむしろ、VEGF-R2へのVEGF結合を優先的に阻害した。
【0304】
実施例12:
【0305】
本発明の例示的な抗体の化学的安定性
【0306】
本発明の例示的な抗体Fabフラグメントの化学的安定性を、以下のようにテストした:
【0307】
化学分解テスト:
【0308】
抗体サンプルを、20mM His/HisCl、140mM NaCl(pH 6.0)中に製剤化し、3つの一定分量中に分けた:1つの一定分量をそれぞれPBS中に再緩衝化し、2つの一定分量を本来の製剤中に保った。PBSの一定分量及び1つのHis/HisCl一定分量を、2週間(2w)にわたり、40℃(His/NaCl)又は37℃(PBS)で1mg/mlにおいてインキュベートし、PBSサンプルを更に合計4週間(4w)にわたりインキュベートした。第3の対照の一定分量サンプルを-80℃で保存した。インキュベーションが終了した後、サンプルを、相対活性濃度(Biacore;各々の結合剤での両方のストレスを加えた一定分量の活性濃度を、ストレスを加えていない4℃の一定分量に対して標準化する)、凝集(SEC)、及び断片化(キャピラリー電気泳動又はSDS-PAGE)について分析し、未処理の対照と比較した。
【0309】
サイズ排除UHPLC(=SEC)について、タンパク質を、TSKgel UP-SW3000のようなクロマトグラフィーゲルを使用し、溶液中のそれらの分子サイズに依存して分離した。この方法を用いて、タンパク質溶液を、単量体、高分子種(例えば、凝集体、二量体、不純物)、及び低分子種(例えば、分解産物、不純物)のそれらの相対含量に関して分析した。0.2Mリン酸カリウム、0.25M KCl(pH 6.2)を移動相として使用した。タンパク質溶液を希釈し、約50μのタンパク質を5μlの容量中で注入するようにし、25℃で0.3ml/分の流量を用いて分析した。タンパク質の検出を280nmで行った。ピークの定義及びピーク積分を、製品固有の情報文書中の典型的なクロマトグラムにおいて実証されているように実施した。
【0310】
抗体VEGF-0089、VEGF-0113、VEGF-0114、VEGF-P1AD8675、VEGF-P1AE3520、及びVEGF-P1AE3521のFabフラグメント(表1及び表5を参照のこと)を分析した。結果を表8及び表9中に示す。
【0311】
【表10】
【0312】
【表11】
【0313】
実施例13:
【0314】
VEGF二量体との複合体における生成された抗体VEGF-0089のX線結晶学及びエピトープ決定
【0315】
上に記載するようなVEGF-0089 Fabフラグメントの結晶構造を、当技術分野において公知の標準的な方法に従って分析した。
【0316】
VEGF-A121との複合体におけるVEGF-0089 FabフラグメントのX線結晶学を、以下のように実施した:
【0317】
二量体複合体VEGF-A121-VEGF-0089 Fabの複合体形成及び精製。複合体形成のために、VEGF-0089 Fabフラグメント及びヒトVEGF-A121(Peprotech)を1.1:1のモル比において混合した。4℃で16時間にわたる一晩のインキュベーション後、複合体を、20mM MES、150mM NaCl(pH6.5)中のSuperdex200(16/600)カラムでのゲル濾過クロマトグラフィーを介して精製した。二量体複合体を含む画分をプールし、1.44mg/mlに濃縮した。
【0318】
二量体VEGF-A121-VEGF-0089 Fab複合体の結晶化。最初の結晶化試験を、21℃で、11.5mg/mlのタンパク質濃度での、シッティングドロップ蒸気拡散設定において実施した。結晶が、0.1M Tris pH 8.5、0.2M LiSO、1.26M(NHSOから1日以内に現れた。プレート状結晶が、1週間で150×100×30μmの最終サイズまで成長した。結晶を、スクリーニングプレートから直接回収したが、任意の更なる最適化工程を伴わなかった。
【0319】
データ収集及び構造決定。データ収集のために、結晶を、凍結防止剤として15%のエチレングリコールの添加を伴う沈殿剤溶液中で、100Kで瞬間冷却した。回折データを、Swiss Light Source(スイス、フィリゲン)のビームラインX10SAでPILATUS 6M検出器を使用し、1.0000Aの波長で収集した。データを、XDS(Kabsch, W. Acta Cryst. D66, 133-144 (2010))を用いて処理し、SADABS(BRUKER)を用いて縮尺している。結晶は、a=227.61A、b=66.97A、c=218.31A、β=104.54°のセル軸を伴う空間群C2に属し、2.17Aの分解能で回折する。構造を、検索モデルとして、Fabフラグメント及びVEGFの関連する自社構造の配位を使用し、PHASER(McCoy, A.J, Grosse-Kunstleve, R.W., Adams, P.D., Storoni, L.C., and Read, R.J. J. Appl. Cryst. 40, 658-674 (2007))を用いた分子置換により決定した。CCP4スイートからのプログラム(Collaborative Computational Project, Number 4 Acta Cryst. D50, 760-763 (1994))及びBuster(Bricogne, G., Blanc, E., Brandl, M., Flensburg, C., Keller, P., Paciorek, W., Roversi, P., Sharff, A., Smart, O.S., Vonrhein, C., Womack, T.O . (2011). Buster version 2.9.5 Cambridge, United Kingdom : Global Phasing Ltd)を使用し、その後にデータを精密化している。異なる電子密度を使用したタンパク質の手動再構築を、COOTを用いて行った(Emsley, P., Lohkamp, B., Scott, W.G. and Cowtan, K. Acta Cryst D66, 486-501 (2010))。両方の構造についてのデータ収集及び精密化の統計を表10中に要約する。全てのグラフ表示を、PYMOL(DeLano Scientific、カリフォルニア州パロアルト、2002年)を用いて作成した。
【0320】
【表12】

【0321】
ヒトVEGF-A121二量体との複合体における2つのVEGF-0089 Fabフラグメントの結晶構造の模式図を図12中に示す。5A以内の距離で抗体VEGF- 0089 Fabフラグメントと接触しているVEGF-A121二量体中のアミノ酸残基によって、VEGF-A121二量体上のVEGF-0089 Fabにより結合された立体構造エピトープが形成される。VEGF-A121のアミノ酸配列は配列番号45である。VEGF二量体中の両方のVEGF-A121分子上のエピトープ中に含まれるアミノ酸の図示を、図13中に強調表示する。
【0322】
抗体VEGF-0089 Fabは、VEGF-A121二量体上の以下のエピトープに結合する:
- VEGF二量体のアミノ酸F17、M18、D19、Y21、Q22、R23、Y25、H27、P28、I29、E30、M55、N62、L66、N100、K101、C102、E103、C104、R105、及びP106内の個々のVEGF-A121分子の1つにおいて;並びに
- VEGF二量体のアミノ酸E30、K48、M81、及びQ87内の個々のVEGF-A121分子の他の1つにおいて。
【0323】
上述の発明を、理解を明確にする目的のための例証及び実施例によりある程度詳細に記載してきたが、記載及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。本明細書において引用する全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に援用される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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