(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ランバート分布を有する光をバットウィング分布に変換するマイクロ構造
(51)【国際特許分類】
F21V 5/02 20060101AFI20240214BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240214BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240214BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20240214BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240214BHJP
【FI】
F21V5/02 100
F21S2/00 482
F21V5/00 530
H01L33/58
F21S2/00 481
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020540327
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 US2019015600
(87)【国際公開番号】W WO2019152382
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519455380
【氏名又は名称】ブライト ヴュー テクノロジーズ インク
【氏名又は名称原語表記】BrightView Technologies,Inc.
【住所又は居所原語表記】4022 Stirrup Creek Drive,Suite 301 Durham,NC United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】シェン ビン
(72)【発明者】
【氏名】パーチェス ケン ジー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート トーマス エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ジョン ダブリュー
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0376220(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0247172(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/02
F21S 2/00
F21V 5/00
H01L 33/58
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランバート光分布をバットウィング光分布に変換する光透過性基板であって、
複数のマイクロ構造を含む第1の表面と、
前記第1の表面と反対の前記基板の面上の第2の表面であって、前記複数のマイクロ構造がそれぞれ
、70°
~95°のルーフ角を有し前記第2の表面から離れる方向に延びたピラミッドの形状を有し、前記複数のマイクロ構造の少なくとも1つは、屈折率
が1.5の材料で構成される、第2の表面と、
を備え、
光源からのランバート分布の光を前記第1の表面で受光するとともに、X軸およびY軸か
ら±30°
~±60°におけるピーク強度ならびに天頂における最小強度を有するバットウィング分布へと前記光を変換して前記第2の表面から出射するように構成された、光透過性基板。
【請求項2】
各ピラミッドが、基部と、前記基部に接続され、前記ピラミッドの先端を含み、前記基部の側面と異なる角度で配設された側面を有する頂部とを有する、請求項1に記載の光透過性基板。
【請求項3】
前記基部の前記側面が、前記第2の表面
と平行な平面に対し
て55°の角度で配設され、前記頂部が
、85°
~90°のルーフ角を有する、請求項2に記載の光透過性基板。
【請求項4】
ランバート光分布をバットウィング光分布に変換する光透過性基板であって、
複数のマイクロ構造を含む第1の表面であって、前記複数のマイクロ構造がそれぞれ、ピラミッドの錐台および逆ピラミッドの形状の凹部の形状を有する、第1の表面と、
前記第1の表面と反対の前記基板の面上の第2の表面と、
を備え、
光源からのランバート分布の光を前記第1の表面で受光するとともに、X軸およびY軸か
ら±30°
~±60°におけるピーク強度ならびに天頂における最小強度を有するバットウィング分布へと前記光を変換して前記第2の表面から出射するように構成された、
光透過性基板。
【請求項5】
少なくとも前記マイクロ構造が、屈折率
が1.5の材料で構成され、前記錐台の側面が、前記第2の表面
と平行な平面に対し
て55°の角度で配設され、前記逆ピラミッドが
、85°
~90°のルーフ角を有する、請求項4に記載の光透過性基板。
【請求項6】
前記第2の表面が
、平面状である、請求項1又は4に記載の光透過性基板。
【請求項7】
前記第2の表面が、テクスチャを含む、請求項1又は4に記載の光透過性基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年1月30日に出願された米国仮特許出願第62/623,894号「MICROSTRUCTURES FOR TRANSFORMING LIGHT HAVING LAMBERTIAN DISTRIBUTION INTO BATWING DISTRIBUTIONS」に優先権を依拠するものであり、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、ランバート分布を有する光をバットウィング分布に変換して大きなエリアを均一に照射するマイクロ光透過光学素子およびマイクロ構造に関する。
【背景技術】
【0003】
発光ダイオード(LED)は、現在の用途に対して急速に、最重要な光生成デバイスとなった。LEDは本質的に、放出方向(ゼロ度すなわち「天頂」)の最大強度を特徴とするランバート分布の光を放出する。
図1に示すように、光強度は、ゼロ度(天頂)放出方向から離れる角度の余弦関数に従って低下し、角度が天頂から90°に達したらゼロになる。平坦面対象の照射にLEDが用いられる場合、光進行経路長は、対象の場所が異なれば変動する。通常、経路長は、LEDが最高の光強度を放出するゼロ度方向において最も短く、設計者は、光源密度を増大させて良好な照射均一性を実現せざるを得ない。
【0004】
ディスプレイのバック・ライト・ユニットまたは大面積の照明プロジェクタ等、低い光源密度で平面の所望のエリア全体に均一または一様な照射を必要とする用途の場合、光源は、ランバート分布と逆に光エネルギーを送達した方が良い。すなわち、たとえば
図2に示すように、ゼロ度(天頂)で強度を低くし、天頂から離れた角度で強度を高くする。このような分布プロファイル(
図2に示す)は、「バットウィング」分布と称することが多く、均一な照射を実現するのにより望ましい。
【0005】
たとえばLED光源により放出されたランバート分布のバットウィング分布への変換は、形状が特別設計のかさ高な光学レンズを用いることにより、一部の用途(一部の照明用途等)に対して効率的に実現され得る。このような構造は、このようなソリューションを埋め込む構造のかさ高さのため、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップ・コンピュータ等のディスプレイのようにLEDが用いられる多くの用途においては、実現可能とならない可能性がある。現行の光学レンズよりもコンパクトな構造によって、ランバート分布をバットウィング分布に変換することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LED光源のサイズに対して大きなエリアが実質的に均一に照射され得るように、所望の変換機能を実行してランバート分布を所望のバットウィング分布へと変換するのに、光透過性基板上に作製されたマイクロ光透過構造を使用可能であることが分かっている。本発明の実施形態を以下に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ランバート光分布をバットウィング光分布に変換する光透過性基板が提供される。この光透過性基板は、複数のマイクロ構造を含む第1の表面と、第1の表面と反対の基板の面上の第2の表面と、を備える。この基板は、光源からのランバート分布の光を第1の表面で受光するとともに、バットウィング分布へと光を変換して第2の表面から出射するように構成されている。バットウィング分布は、X軸およびY軸からおよそ±30°~およそ±60°におけるピーク強度ならびに天頂における最小強度を有する。
【0008】
一実施形態において、複数のマイクロ構造はそれぞれ、第2の表面から離れる方向に延びたピラミッドの形状を有する。一実施形態において、少なくともマイクロ構造は、屈折率がおよそ1.5の材料で構成され、ピラミッドは、およそ70°~およそ95°のルーフ角を有する。
【0009】
一実施形態において、各ピラミッドは、基部と、基部に接続された頂部と、を有する。頂部は、ピラミッドの先端を含み、基部の側面と異なる角度で配設された側面を有する。
【0010】
一実施形態において、少なくともマイクロ構造は、屈折率がおよそ1.5の材料で構成され、基部の側面は、第2の表面と実質的に平行な平面に対しておよそ55°の角度で配設され、頂部は、およそ85°~およそ90°のルーフ角を有する。
【0011】
一実施形態において、複数のマイクロ構造はそれぞれ、ピラミッドの錐台および逆ピラミッドの形状の凹部の形状を有する。一実施形態において、少なくともマイクロ構造は、屈折率がおよそ1.5の材料で構成され、錐台の側面は、第2の表面と実質的に平行な平面に対しておよそ55°の角度で配設され、逆ピラミッドは、およそ85°~およそ90°のルーフ角を有する。
【0012】
一実施形態において、複数のマイクロ構造はそれぞれ、コーナー・キューブの形状を有する。
【0013】
一実施形態において、第2の表面は、実質的に平面状である。
【0014】
一実施形態において、第2の表面は、テクスチャを含む。
【0015】
本発明の上記および他の態様、特徴、および特性のほか、関連する構造要素の動作方法および機能ならびに製造の部品および費用の組合せについては、添付の図面を参照しつつ、以下の説明および添付の特許請求の範囲を考慮することによって、より明らかとなるであろうが、これらはすべて、本明細書の一部を構成する。ただし、図面は例示および説明を目的としたものに過ぎず、本発明の限定の定義付けの意図ではないことが明示的に了解されるものとする。本明細書および特許請求の範囲で使用する「a」、「an」、および「the」といった単数形には、文脈上の別段の明確な指示のない限り、複数の対象物を含む。
【0016】
以下の図面の構成要素は、本開示の一般原理を強調するように示しており、必ずしも原寸に比例して描かれてはいないが、図面のうちの少なくとも1つは、原寸に比例して描かれている可能性がある。対応する構成要素を指定する参照文字は、一貫性および明瞭性のため、必要に応じて図面全体を通して繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ランバート強度分布の2次元極座標図である。
【
図2】バットウィング型強度分布の2次元極座標図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、光透過性基板の模式側面図である。
【
図4A】LED光源およびマイクロ構造を有する一対の光透過性基板の等角模式図である。
【
図4B】
図4Aの基板の単一のマイクロ構造の等角模式図である。
【
図5A】ルーフ角が90°のマイクロ構造を有する
図4Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図5C】ルーフ角が90°のマイクロ構造を有する
図4Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図5D】ルーフ角が85°のマイクロ構造を有する
図4Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図5E】屈折率が1.5かつルーフ角が85°のマイクロ構造を有する
図4Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図5F】屈折率が1.6かつルーフ角が85°のマイクロ構造を有する
図4Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る、LED光源およびマイクロ構造を有する単一の光透過性基板の等角模式図である。
【
図6B】
図6Aの基板の単一のマイクロ構造の等角模式図である。
【
図7A】ルーフ角が90°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図7C】屈折率が1.5かつルーフ角が90°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図7D】屈折率が1.6かつルーフ角が90°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図7E】ルーフ角が80°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図7F】ルーフ角が80°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図7G】ルーフ角が70°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図7H】ルーフ角が70°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図7I】ルーフ角が60°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図7J】ルーフ角が60°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図7K】ルーフ角が100°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図7L】ルーフ角が100°のマイクロ構造を有する
図6Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る、LED光源およびマイクロ構造を有する単一の光透過性基板の等角模式図である。
【
図8B】
図8Aの基板の単一のマイクロ構造の等角模式図である。
【
図9A】
図8Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図9C】屈折率が1.5のマイクロ構造を有する
図8Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図9D】屈折率が1.6のマイクロ構造を有する
図8Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る、マイクロ構造の等角模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る、マイクロ構造の等角模式図である。
【
図12A】本発明の一実施形態に係る、LED光源およびマイクロ構造を有する単一の光透過性基板を示した図である。
【
図13A】
図12Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図13C】
図12Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図14A】本発明の一実施形態に係る、マイクロ構造を有する光透過性基板の等角図である。
【
図14B】
図14Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図14C】
図14Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図15A】本発明の一実施形態に係る、マイクロ構造を有する光透過性基板の等角図である。
【
図15B】
図15Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の3次元極座標図の等角図である。
【
図15C】屈折率が1.5のマイクロ構造を有する
図15Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【
図15D】屈折率が1.6のマイクロ構造を有する
図15Aの実施形態の場合の伝播バットウィング強度分布の2次元極座標図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、LED等の光源から受光したランバート強度分布を、天頂から離れてX軸およびY軸からおよそ±30°~およそ±60°における最大強度ならびに天頂における最小強度を有するバットウィング強度分布へと変換する所望の効果をもたらし得るマイクロ構造を有する光透過性基板を提供する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係る、ランバート光分布をバットウィング光分布に変換する光透過性基板100の模式図である。基板100は、複数のマイクロ構造112を含む第1の表面110と、第1の表面110と反対の基板100の面上の第2の表面120と、を備える。
【0020】
以下により詳しく論じる通り、基板100は、光源からのランバート分布の光を第1の表面110で受光するとともに、バットウィング分布へと光を変換して第2の表面120から出射するように構成されている。得られるバットウィング分布は、X軸およびY軸からおよそ±30°~およそ±60°の範囲におけるピーク強度ならびに天頂における最小強度を有するのが望ましい。一実施形態において、光透過性基板100は、X軸およびY軸からおよそ±45°におけるピーク強度ならびに天頂における最小(ほぼゼロ)強度を有するバットウィング分布を与えてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも光透過性マイクロ構造は、屈折率がおよそ1.5の材料で構成されるが、所望の効果が実現され得る限りは、異なる屈折率の材料が用いられてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、基板のその他の部分は、屈折率が同様におよそ1.5であるか、または、屈折率がマイクロ構造の屈折率と整合もしくは実質的に整合する材料で構成された膜である。赤外線を放出する光源の場合は、可視光域において透明となり得ない赤外透過材料が用いられてもよい。本発明の種々実施形態を以下により詳しく説明する。
【0021】
図4Aは、互いに直交配向した複数のマイクロ構造412を第1の表面410A、410B上にそれぞれ有し、ランバート分布の光を出力する光源430の上方に配置された2つの光透過性基板400A、400Bを示している。光透過性基板400A、400Bの第1の表面410A、410Bは、光源430側に向き、基板400A、400Bの第2の表面420A、420Bは、光源430の反対側を向いている。
図4Bは、単一のマイクロ構造412をさらに詳しく示している。図示のように、マイクロ構造412は、いわゆるルーフ角すなわち頂点α(
図3参照)が90°のリッジの形態である。
【0022】
光源430から放出された光は、光源430に最も近い第1の基板400Aにその第1の表面410Aを介して入射し、第1の基板400Aからその第2の表面420Aで出射し、第2の基板400Bにその第1の表面410Bで入射し、第2の基板400Bからその第2の表面420Bで出射する。マイクロ構造412の異なる配向(すなわち、互いに実質的に垂直である)により、光が2つの異なる方向に曲がって拡がるため、光透過性基板400A、400Bの一方のみが用いられる場合よりも正味の拡散が強く、X軸およびY軸に対して異なる方向となる。
【0023】
図5A~
図5Cは、屈折率が1.5で、
図4Aに示すように配置された2つの光透過性基板400の組合せにより与えられる光分布の3次元および2次元表現を示している。図示のように、光エネルギーは、ゼロ度(天頂)放出方向から逸れるのみならず、
図5Aおよび
図5Bに示すように、基本となるX軸およびY軸から約45°の4つの方向に押しやられる。光は通常、これらの方向に沿って、より高い強度が望まれる対象エリアに達する最も長い経路長を進行する。このような分布は、バック・ライト・ディスプレイまたは(倉庫を照らす場合のような)大面積照明用途等、複数の光源が実質的な正方形アレイに配置された場合に望ましいと考えられる。
図5Cは、
図5Aおよび
図5Bにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
【0024】
両基板400上のプリズム角αは、出力分布を最適化するように調整されていてもよい。たとえば、一実施形態において、基板400上のリッジ412のルーフ角αは、85°であってもよい。
図5Dは、屈折率が1.5で、リッジ412のルーフ角が85°であり、
図4Aに示すように配置された2つの光透過性基板400の組合せにより与えられる光分布の3次元表現を示している。
図5Eは、
図5Dにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
図5Fは、屈折率が1.6で、リッジ412のルーフ角が85°であり、
図4Aに示すように配置された2つの光透過性基板400の組合せにより与えられる光強度分布の2D極座標プロットである。
図5Eおよび
図5Fの比較により、屈折率が基板のバットウィング拡散性能に及ぼす影響が示される。
【0025】
一方または両方の基板の第2の表面420へのテクスチャの追加によって、分布プロファイルを微調節するとともに、光透過効率を向上させるようにしてもよい。
【0026】
図6Aは、第1の表面610上に複数のマイクロ構造612を有する光透過性基板600の一実施形態を示している。本実施形態において、マイクロ構造612は、それぞれが4つの面を有し、ランバート分布の光を出力するLED光源630の上方に配置されたマイクロピラミッドのアレイの形態である。
図6Aに示すように、光は、マイクロピラミッド612のアレイを有する第1の表面610を介して基板600に入射し、第1の表面610と反対の基板600の面上の第2の表面620から出射する。マイクロ構造612はそれぞれ、ルーフ角α(
図3参照)が90°であり、
図6B(斜視図)および
図6C(上面図)においてさらに詳しく示している。出力分布を最適化するようにピラミッドのルーフ角が調整されてもよく、また、基板600の第2の表面620へのテクスチャの追加によって、分布プロファイルを微調節するとともに、光透過効率を向上させるようにしてもよい。
【0027】
屈折率が1.5の基板600により与えられる光分布の3次元変換の表現を
図7Aおよび
図7Bに示す。本実施形態において、光エネルギーは、ゼロ度放出方向から逸れるのみならず、図示のように、基本となるX軸およびY軸から約45°の4つの方向に押しやられる。光は通常、これらの方向に沿って、より高い強度が望まれる対象エリアに達する最も長い経路長を進行する。
図7Cは、
図7Aおよび
図7Bにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
【0028】
図7Dは、屈折率が1.6で、マイクロピラミッドのルーフ角αが90°である基板600により与えられる光強度分布の表現の2D極座標プロットである。
図7Cおよび
図7Dの比較により、屈折率が基板600のバットウィング拡散性能に及ぼす影響が示される。
【0029】
図7A~
図7Cおよび
図7E~
図7Lにより示すように、マイクロピラミッド612のルーフ角αは、屈折率が1.5の基板600により与えられる光分布に影響を及ぼす。図示のように、(
図7Eおよび
図7Fにより表される)80°ならびに(
図7Gおよび
図7Hにより表される)70°というルーフ角αは、(
図7A~
図7Cにより表される)90°と比較して、ゼロ度光強度のほか、バットウィング分布の形状が異なる。(
図7Iおよび
図7Jにより表される)60°ならびに(
図7Kおよび
図7Lにより表される)100°というルーフ角αは、ゼロ度光強度が異なる一方、バットウィング分布は与えない。本発明の実施形態によれば、マイクロピラミッド612のルーフ角αは、屈折率が1.5の基板に対して、70°~95°の範囲にある。
【0030】
図8Aは、第1の表面810上にマイクロ構造812のアレイを有する光透過性基板800を示している。本実施形態において、マイクロ構造812は、ランバート分布の光を出力するLED光源830の上方に配置されたハイブリッド・マイクロピラミッドのアレイの形態である。
図8Aに示すように、光は、ハイブリッド・マイクロピラミッド812のアレイを有する第1の表面810を介して基板800に入射し、第1の表面810と反対の基板800の面上の第2の表面820から出射する。
図8Bおよび
図8Cは、ハイブリッド・マイクロピラミッド812をさらに詳しく示している。図示のように、ハイブリッド・マイクロピラミッド812の頂部814のルーフ角α(
図3参照)が85°であり、ハイブリッド・マイクロピラミッド812の底部(錐台)816のルーフ角αが70°であってもよい。底部816のルーフ角αが70°である実施形態において、底部816の側面818はそれぞれ、角度β(
図3参照)が55°で配設されている。一実施形態において、頂部814は、ルーフ角αが85°~90°であってもよい。
【0031】
屈折率が1.5の基板800により与えられる光分布の3次元変換の表現を
図9Aおよび
図9Bに示す。図示のように、ハイブリッド・マイクロピラミッドは、上述のピラミッド612等の「単純」なピラミッドと比較して、性能が向上し得る。本実施形態において、光エネルギーは、ゼロ度放出方向からさらに逸れるのみならず、図示のように、基本となるX軸およびY軸から約45°の4つの方向に押しやられる。光は通常、これらの方向に沿って、より高い強度が望まれる対象エリアに達する最も長い経路長を進行する。
図9Cは、
図9Aおよび
図9Bにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
【0032】
図9Dは、屈折率が1.6で、ハイブリッド・マイクロピラミッド812の頂部814のルーフ角α(
図3参照)が85°かつ底部816のルーフ角αが70°である基板800により与えられる光強度分布の表現の2D極座標プロットである。
図9Cおよび
図9Dの比較により、屈折率が基板600のバットウィング拡散性能に及ぼす影響が示される。
【0033】
ピラミッドのルーフ角αは、頂部814および底部816に対して、出力分布を最適化するように調整されてもよい。基板800の第2の表面820へのテクスチャの追加によって、分布プロファイルを微調節するとともに、光透過効率を向上させるようにしてもよい。
図9A~
図9Cは、2つの部分および鋭いエッジならびに2つの部分間の遷移部を有するハイブリッド・ピラミッドを示すものの、ハイブリッド・ピラミッドが3つ以上の部分を有することおよび/またはハイブリッド・ピラミッドのファセットが湾曲することによって、変換のさらなる微調節および性能の最適化のための柔軟性が付加されてもよいことが考えられる。たとえば、
図10は、
図8Aのマイクロ構造812に使用可能な3分割ハイブリッド・マイクロピラミッド1000を示しており、
図11は、
図8Aのマイクロ構造812に使用可能な湾曲ファセット・ハイブリッド・マイクロピラミッド1100を示している。
【0034】
図12Aは、第1の表面1210上にマイクロ構造1212のアレイを有する光透過性基板1200を示している。本実施形態において、マイクロ構造1212は、ランバート分布の光を出力するLED光源1230の上方に配置された「折り畳み」マイクロピラミッドのアレイの形態である。
図12Aに示すように、光は、折り畳みマイクロピラミッド1212のアレイを有する第1の表面1210を介して基板1200に入射し、第1の表面1210と反対の基板1200の面上の第2の表面1220から出射する。
図12Bは、折り畳みマイクロピラミッド1212をさらに詳しく示している。図示のように、折り畳みマイクロピラミッドは、錐台または基部1214と、マイクロピラミッドの形状を基部1214に有する凹部1216と、を有するため、単純なピラミッドの先端の下方および基部1214中への押し込み、すなわち基部1214中への「折り畳み」が行われたように見える構成となっている。基部1214および凹部1216ともに、ルーフ角α(
図3参照)は、90°であってもよい。
【0035】
折り畳みピラミッドは、光透過性基板の製造可能性を向上させて、多くのマイクロ構造作製プロセスに関するZ方向のマイクロ構造の高さ(
図3において「h」により表される)の制約を克服し得る。また、折り畳みピラミッドは、作製プロセスが許可し得るよりも大きな高さ(
図3のh)の構造の機能の実現可能性を与える。一実施形態において、マイクロ構造の高さhは、およそ10マイクロメートル~およそ50マイクロメートルの範囲であってもよい。ピラミッドのルーフ角は、出力分布を最適化するように調整されてもよい。基板1200の第2の表面1220へのテクスチャの追加によって、分布プロファイルを微調節するとともに、光透過効率を向上させるようにしてもよい。
【0036】
基板1200により与えられる光分布の3次元変換の表現を
図13Aおよび
図13Bに示す。本実施形態において、光エネルギーは、ゼロ度放出方向から逸れるのみならず、図示のように、基本となるX軸およびY軸から約45°の4つの方向に押しやられる。光は通常、これらの方向に沿って、より高い強度が望まれる対象エリアに達する最も長い経路長を進行する。
図13Cは、
図13Aおよび
図13Bにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
【0037】
図14Aは、上述の光透過性基板の代わりに使用可能な正方形状面を有するコーナー・キューブの形態のマイクロ構造1412のアレイを備えた光透過性基板1400の一実施形態を示している。屈折率が1.5の基板およびマイクロ構造1412により与えられる光分布の3次元変換の表現を
図14Bに示す。
図14Cは、
図14Bにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
【0038】
図15Aは、三角形状面を有するコーナー・キューブの形態のマイクロ構造1512のアレイを備えた光透過性基板1500の一実施形態を示している。屈折率が1.5のマイクロ構造1512により与えられる光分布の3次元変換の表現を
図15Bに示す。
図15Cは、
図15Bにより表される光強度分布の2D極座標プロットである。
【0039】
図15Dは、屈折率が1.6のマイクロ構造1512により与えられる光強度分布の表現の2D極座標プロットである。
図15Cおよび
図15Dの比較により、屈折率が基板1500のバットウィング拡散性能に及ぼす影響が示される。
【0040】
本明細書に記載の実施形態のいずれかに係る光透過性構造は、当技術分野において既知の多くの技術を用いて形成されてもよい。たとえば、一実施形態において、マイクロ構造の形状は、好適なマスター型ならびに熱硬化性ポリマーもしくは紫外(UV)光硬化性ポリマーを用いた基板上への成型であってもよいし、圧縮成形等の成形による熱可塑性基板への型押しであってもよいし、押出しエンボス加工または射出成形を用いた基板との同時形成であってもよい。マイクロ構造は、マスターの複製により生成されてもよい。たとえば、Rinehartらに付与された米国特許第7,190,387B2号「Systems And Methods for Fabricating Optical Microstructures Using a Cylindrical Platform and a Rastered Radiation Beam」、Freeseらに付与された米国特許第7,867,695B2号「Methods for Mastering Microstructures Through a Substrate Using Negative Photoresist」、および/またはWoodらに付与された米国特許第7,192,692B2号「Methods for Fabricating Microstructures by Imaging a Radiation Sensitive Layer Sandwiched Between Outer Layers」(本発明の譲受人に譲渡)に記載されているような所望の形状を含むマスターの複製により光拡散器が構成されてもよく、本明細書にすべてが明記されるかの如く、これらの全開示内容を本明細書に援用する。マスター自体は、これらの特許に記載のレーザ走査技術を用いて作製されてもよく、また、これらの特許に記載の複製技術を用いた複製によって拡散器を提供するようにしてもよい。
【0041】
一実施形態においては、所望のマイクロ構造を感光性材料に形成するホログラム・パターンの生成に、当技術分野において既知のレーザ・ホログラフィが用いられてもよい。一実施形態においては、半導体、ディスプレイ、配線板等に用いられる投影もしくは接触フォトリソグラフィ、ならびに当技術分野において既知の他の共通技術の使用によって、マイクロ構造を感光性材料へと感光させてもよい。一実施形態においては、マスクを用いたまたは集束および変調レーザ光を用いたレーザ・アブレーションの使用によって、印を含むマイクロ構造を材料中に形成するようにしてもよい。一実施形態においては、当技術分野において既知のマイクロマシニング(ダイヤモンド加工としても知られる)の使用により、固形材料から所望のマイクロ構造を形成するようにしてもよい。一実施形態においては、当技術分野において既知の積層造形(3D印刷としても知られる)の使用により、固形材料中に所望のマイクロ構造を形成するようにしてもよい。
【0042】
本明細書に記載の光透過性基板の実施形態のいずれかについて、マイクロ構造のルーフ角の調整および/または基板の第2の表面へのテクスチャの追加によって、分布プロファイルを微調節するとともに、光透過効率を向上させるようにしてもよい。また、上述の通り、マイクロ構造の屈折率は、バットウィング拡散性能に影響を及ぼすため、性能を最適化するように調整されてもよい。
【0043】
本明細書に記載の実施形態は、多くの考え得る実施態様および実施例を表すものであり、必ずしも本開示を任意特定の実施形態に限定する意図はない。代替として、明示的な記載がないとしても、当業者による理解の通り、これら実施形態の種々改良が可能であるとともに、本明細書に記載の種々実施形態の異なる組合せを本発明の一部として使用可能である。
【0044】
たとえば、側面が4つのピラミッドを記載したが、側面が3つ、5つ、もしくは6つのマイクロ構造等の他の形状または円形(円錐形)の形状も使用可能と考えられる。また、マイクロ構造の表面がパターンもしくはランダム、またはその組合せの変化を有し得ると考えられる。いくつかの実施形態において、マイクロ構造は、対称ではなく非対称の形状を有していてもよく、また、マイクロ構造のアレイは、パターンもしくはランダム、またはその組合せで変化する異なる形状および/またはサイズを有するマイクロ構造を含んでいてもよい。このような如何なる改良も、本開示の主旨および範囲に含まれ、以下の特許請求の範囲による保護が意図される。