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特許7436370第四級アンモニウム塩系化合物およびその調製方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】第四級アンモニウム塩系化合物およびその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/60 20060101AFI20240214BHJP
   C07D 225/02 20060101ALI20240214BHJP
   C07D 223/06 20060101ALI20240214BHJP
   C07D 205/04 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/397 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/205 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/223 20060101ALI20240214BHJP
   C07C 237/04 20060101ALN20240214BHJP
   C07C 327/22 20060101ALN20240214BHJP
   C07C 321/14 20060101ALN20240214BHJP
   C07C 231/12 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07D211/60 CSP
C07D225/02
C07D223/06
C07D205/04
A61K31/445
A61P25/02
A61K31/397
A61K31/55
A61K31/205
A61K31/223
C07C237/04 Z
C07C327/22
C07C321/14
C07C231/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020542661
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2019074275
(87)【国際公開番号】W WO2019154287
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】201810144661.X
(32)【優先日】2018-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516175537
【氏名又は名称】ウェストチャイナホスピタル、スーチョワンユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】クァー ボウェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウェンシォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】タン レイ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-510669(JP,A)
【文献】特表2017-523175(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103601650(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物が式IIに示す通りであり、
式II
式中、
X、Yがそれぞれ独立してO、NR10から選択され、R10がH、重水素またはCアルキル基から選択され、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してC1~4のアルキル基から選択可能であり、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してC、C、Cのアルキル基から選択可能であり、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してC3~4のアルキル基から選択可能であり、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してCのアルキル基から選択可能であり、
11、R11’がそれぞれ独立して重水素、C1~3のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、エステル基から選択され、
、n’がそれぞれ独立して2~3の整数から選択され、
がC3~14のアルキレン基から選択され、
前記アルキレン基の主鎖に0~2個のヘテロ原子が含まれ、前記ヘテロ原子がO、S、NR12から選択され、前記R12が水素、重水素から選択され、
が置換または未置換のC2~6のアルキレン基から選択され、置換基がメチル基、メトキシ基であることを特徴とする、式IIに示す化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物であって、
前記化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物が以下の化合物の1つであることを特徴とする、式IIに示す化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四級アンモニウム塩系化合物およびその調製方法と使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
局所麻酔薬(Local anesthetics)は、投与された局所において感覚神経インパルスの発生と伝達を可逆的に遮断する薬物であり、動物またはヒトが意識のある状態で、局所において感覚神経インパルスの生成と信号伝導を可逆的に遮断し、神経が支配する部位に一時的な感覚喪失を出現させることにより、局所組織の痛覚を可逆的に消失させることができる薬物である。通常、局所麻酔薬の作用は投与された部位に限られ、薬物が投与部位から拡散するにつれて急速に消失する。局所麻酔薬は、神経細胞と線維膜における関連のイオンチャネルを直接阻害し、活動電位の発生と神経インパルスの伝導を遮断することにより、局所麻酔の作用を生じさせる。現在一般に認められている局所麻酔薬の作用機序は、神経細胞膜の電位依存性Na+チャネルをブロックし、神経インパルスの伝導を遮断することにより、局所麻酔の作用を生じさせるというものである。
【0003】
目下、臨床で使用されている局所麻酔薬は、いずれも電荷を持たない疎水性化合物であるため、拡散や浸透により容易に細胞膜を通過して神経細胞に進入し、ナトリウムチャネルのブロック部位に到達する。これらの麻酔薬は、ナトリウムチャネルをブロックすることにより、ニューロンの興奮を遮断する。実際、これらの局所麻酔薬の分子は、拡散により容易に神経細胞に進入して効果を発揮するが、同時に拡散によって投与部位から急速に広がり、神経細胞から遊離するため、局所麻酔の作用を長時間持続させることができない。たとえ投与量を増やしても、局所麻酔の時間をある程度延長させることしかできないため、これらの局所麻酔薬物によって理想的な長時間の局所麻酔作用を得ることはできない。現在臨床で常用されているほとんどの局所麻酔薬物は、作用時間が4時間未満である。従来の局所麻酔薬は作用の持続時間が比較的短いため、鎮痛用のポンプを用いて神経の遮断を維持しなければならず、脊柱管内や神経根、皮下等の部位にチューブを配置することにより、医療コストおよび感染の発生率が上昇してしまう。
【0004】
また、従来の局所麻酔薬物は、神経の遮断に対して特異的な選択性を有していないため、使用中は幅広く複数種の神経繊維を遮断し、感覚、痛覚、運動および交感神経系などの複数種の神経機能に影響を及ぼす。この薬理学的特徴により、局所麻酔薬は、臨床において非常に限定的な使用となっている。例えば、膝関節置換の手術後の患者にとっては、早期に機能訓練やリハビリを行うことが特に重要であるが、現在使用されている局所麻酔薬には、痛覚を選択的に遮断する薬物がなく、術後の患者の大多数は、局所麻酔薬の使用によって運動神経が遮断され、運動機能が回復しないことにより、術後のリバビリが制限されてしまっている。そのため、局所麻酔薬の研究においては、新たな研究構想を導入して、選択的に感覚機能を遮断することで運動機能に影響を与えない長時間作用型局所麻酔の薬物を開発し、臨床のニーズを満たすことが急務である。
【0005】
従来の局所麻酔薬物の化学構造には、通常、少なくとも1つ以上の非アミド第三級N原子が含まれている。このN原子が置換されると、対応する第四級アンモニウム塩化合物が得られる。第四級アンモニウム塩化合物は、1つの正電荷を有する分子構造であるため、細胞膜を通過する能力が著しく低い。例えば、リドカインの第三級アミンN原子に対してエチル基置換を行うと、QX-314という第四級アンモニウム塩化合物(式II)が得られる。QX-222(式III)も、QX-314と構造が類似する別の第四級アンモニウム塩である。特殊な条件の下では、QX-314とQX-222は局所麻酔の効果をもたらす可能性がある。QX-314とQX-222の構造は正電荷を有し、通常の状況では細胞膜を通過できないため、迅速に局所麻酔作用を生じさせることができない。しかし、一旦細胞膜を通過すると、神経細胞内でナトリウムチャネルを著しく阻害することができるため、持続的な局所麻酔作用が生じる(Courtney KR.J Pharmacol Exp Ther.1975,195:225-236)。現在の研究により、QX-314は、カプサイシン(一過性受容体電位チャネルバニロイド1アゴニスト、即ちTRPV1 Agonist)の助けにより、TRPV1チャネルを活性化して、スムーズに神経細胞に進入し、長時間の神経遮断を生じさせることがわかった(Craig R. Ries. Anesthesiology .2009; 111:122-126)。しかし、カプサイシンは強い刺激性を有するため、応用においては有望とはいえない。
【0006】
研究により、QX314と、臨床で使用されているブピバカイン、リドカインなどの局所麻酔薬物とを併用することで、迅速に麻酔作用を生じさせることができ、カプサイシンの刺激性を避けられることがわかっている。しかしながら、上記の薬物を併用しても、依然、理想的な局所麻酔の効果を得ることはできない。界面活性剤を加える場合においても、QX314の細胞膜への進入を助けて、8時間を超える局所麻酔作用を生じさせることができる(Daniel S. Kohane,PNAS. 2010;107: 3745-3750)。現在の研究により、QX314の安全性に関する問題点は、主に局所的な神経障害にあり、くも膜下腔内注射で実験動物が死亡するなどの可能性のあることがわかった。QX-314をベースに、界面活性剤の構造を有する一連の長鎖化合物の開発が進んでいる。これらの化合物によって、ある程度長時間の局所麻酔作用を得ることができるが、上記化合物は、界面活性剤に類似する構造を有することによって、ある程度長期間持続する作用は得られても、局所注射する部位に、重度の筋肉および神経の障害を生じさせる可能性があり、安全性が低い。同時に、現在報告されている類似の化合物も、選択性局所麻酔の作用を有しておらず、臨床のニーズを満たせていない。そのため、QX314の単独使用や、QX314とその他の活性薬物との併用、および界面活性剤の構造の特徴を有するQX314長鎖化合物のいずれにおいても、安全性および局所麻酔の選択性が低いという欠陥が存在する。
【発明の概要】
【0007】
上記の技術的課題に対し、本発明は、長時間作用型局所麻酔と選択性局所麻酔の作用を兼ね備え(感覚神経の遮断時間が運動神経の遮断時間よりも長い)、従来のQX314、QX314組成物および界面活性剤の構造の特徴を有する長鎖化合物と比較して、局所麻酔の作用時間が長く、局所麻酔の選択性が良好で、神経障害がより少なく、安全性が高いという利点を有する新たな第四級アンモニウム塩化合物を提供する。
【0008】
本発明は、式Iに示す化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物、またはその薬物前駆体、またはその代謝産物を提供し、
【0009】
式中、
X、Yがそれぞれ独立してO、SまたはNR10から選択され、R10がH、重水素またはC1~4のアルキル基から選択され、
が薬学的に許容可能なアニオンであり、
がn個のR11置換のアリール基から選択され、
がn’個のR11’置換のアリール基から選択され、
、n’がそれぞれ独立して0~5の整数から選択され、R11、R11’がそれぞれ独立して重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、エステル基から選択され、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してC1~4のアルキル基から選択可能であり、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してC、C、Cのアルキル基から選択可能であり、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してC3~4のアルキル基から選択可能であり、
とRのうちの1つがCのアルキル基である場合、もう1つは独立してCのアルキル基から選択可能であり、
が置換または未置換のC1~14のアルキレン基から選択され、前記アルキレン基の主鎖に0~4個のヘテロ原子が含まれ、前記ヘテロ原子がO、S、NR12から選択され、前記R12が水素、重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基から選択され、前記置換基が重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲンであり、
式Iにおいて破線がない場合、Lが水素、重水素、置換または未置換のC1~8のアルキル基、置換または未置換のC1~8のアルコキシ基から選択され、前記置換基が重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲンであり、
式Iにおいて破線が結合である場合、Lが置換または未置換のC1~8のアルキレン基から選択され、前記置換基が重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲンである。
【0010】
さらに、前記薬学的に許容可能なアニオンZがハロゲンアニオン、硫酸イオン、酢酸イオン、酒石酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、クエン酸イオンである。
【0011】
さらに、前記薬学的に許容可能なアニオンZがハロゲンアニオンである。
【0012】
さらに、前記薬学的に許容可能なアニオンZがBrである。
【0013】
さらに、前記化合物の薬学的に許容可能な塩が、式Iに示す化合物と、薬学的に許容可能な無機酸または有機酸とで形成される。
【0014】
さらに、前記無機酸または有機酸が塩酸、臭化水素酸、酢酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、炭酸、酒石酸、ラウリン酸、マレイン酸、クエン酸または安息香酸である。
【0015】
さらに、X、Yがそれぞれ独立してO、SまたはNR10から選択され、R10がH、重水素またはC1~2のアルキル基から選択される。
【0016】
さらに、Rがn個のR11置換のアリール基から選択され、
がn’個のR11’置換のアリール基から選択され、
、n’がそれぞれ独立して0~5の整数から選択され、R11、R11’がそれぞれ独立して重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、エステル基から選択され、
がCのアルキル基である場合、Rが独立してC1~2のアルキル基から選択可能である。
【0017】
さらに、Rがn個のR11置換のアリール基から選択され、
がn’個のR11’置換のアリール基から選択され、
、n’がそれぞれ独立して0~5の整数から選択され、R11、R11’がそれぞれ独立して重水素、C1~3のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、エステル基から選択される。
【0018】
さらに、Lが置換または未置換のC2~14のアルキレン基から選択され、
前記アルキレン基の主鎖に0~3個のヘテロ原子が含まれ、前記ヘテロ原子がO、S、NR12から選択され、前記R12が水素、重水素、C1~2のアルキル基から選択され、前記置換基が重水素、C1~2のアルキル基、C1~2のアルコキシ基であり、
式Iにおいて破線がない場合、Lが水素、重水素、置換または未置換のC1~8のアルキル基から選択され、前記置換基が重水素、C1~2のアルキル基であり、
式Iにおいて破線が結合である場合、Lが置換また未置換のC2~6のアルキレン基から選択され、前記置換基が重水素、C1~2のアルキル基、C1~2のアルコキシ基である。
【0019】
さらに、Lが置換または未置換のC2~14のアルキレン基から選択され、
前記アルキレン基の主鎖に0~2個のヘテロ原子が含まれ、前記ヘテロ原子がO、S、NR12から選択され、前記R12が水素、重水素から選択され、前記置換基が重水素、C1~2のアルキル基であり、
式Iにおいて破線がない場合、Lが水素、重水素、C1~8のアルキル基から選択され、
式Iにおいて破線が結合である場合、Lが置換また未置換のC2~6のアルキレン基から選択され、前記置換基が重水素、メチル基、メトキシ基である。
【0020】
さらに、前記化合物が式IIに示す通りであり、
式II
【0021】
式中、
X、Yがそれぞれ独立してO、NR10から選択され、R10がH、重水素またはCアルキル基から選択され、
11、R11’がそれぞれ独立して重水素、C1~3のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、エステル基から選択され、
、n’がそれぞれ独立して2~3の整数から選択され、
がC3~14のアルキレン基から選択され、
前記アルキレン基の主鎖に0~2個のヘテロ原子が含まれ、前記ヘテロ原子がO、S、NR12から選択され、前記R12が水素、重水素から選択され、
が置換または未置換のC2~6のアルキレン基から選択され、前記置換基がメチル基、メトキシ基である。
【0022】
さらに、前記化合物が式IIIに示す通りであり、
式III
【0023】
式中、
X、Yがそれぞれ独立してO、S、NR10から選択され、R10がH、重水素またはC1~4アルキル基から選択され、
11、R11’がそれぞれ独立して重水素、Cアルキル基、メトキシ基、ハロゲンから選択され、
、n’がそれぞれ独立して2~5の整数から選択され、
がC2~10のアルキレン基から選択され、
前記アルキレン基の主鎖に0~2個のヘテロ原子が含まれ、前記ヘテロ原子がO、S、NR12から選択され、前記R12が水素、重水素から選択され、
が水素、重水素、C1~8のアルキレン基から選択される。
【0024】
本発明はまた、以下のステップを含み、
【0025】
式(II)に示す第四級アンモニウム塩化合物と、式(III)に示すアミン系化合物とが、塩基の存在下で反応し、式(I)に示す標的化合物を得る、前記化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物、またはその薬物前駆体、またはその代謝産物の調製方法を提供する。
【0026】
さらに、前記有機塩基がトリエチルアミンまたは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンである。
【0027】
さらに、前記反応が極性プロトン性溶媒中で行われる。
【0028】
さらに、前記溶媒がアルコール系溶媒であり、好ましくは前記溶媒がメタノールまたはエタノールである。
【0029】
本発明はまた、前記化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物、またはその薬物前駆体、またはその代謝産物の、局所麻酔の薬物の調製における使用を提供する。
【0030】
さらに、前記局所麻酔の薬物により、感覚神経の遮断時間が運動神経の遮断時間よりも長くなる。
【0031】
さらに、前記局所麻酔が、長時間作用型局所麻酔および/または選択性局所麻酔である。
【0032】
さらに、前記局所麻酔の時間が24時間を超える。
【0033】
本発明はまた、前記化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体、またはその溶媒和物、またはその薬物前駆体、またはその代謝産物に、薬学的に許容可能な補助材料を加えて調製した製剤である薬物を提供する。
【0034】
本発明が提供する化合物および誘導体は、IUPAC(国際純正・応用化学連合)またはCAS(ケミカル・アブストラクツ・サービス、Columbus, OH)の命名システムによって命名することができる。
【0035】
本発明において使用する用語の定義は以下のとおりである。特に説明がない限り、本文中の基(group、radical)または用語によって提供される最初の定義は、明細書全編にわたって当該の基または用語に適用され、また、本文中で具体的に定義されていない用語については、開示内容および文脈に基づいて、当業者が考え得る意味を表すものとする。
【0036】
「置換」とは、分子に含まれる水素原子が他の異なる原子または分子によって置き換えられることを指す。
【0037】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0038】
「アルキル基」とは、アルカンの分子から水素原子を1個抜くことによって形成される炭化水素基であり、例えば、メチル基-CH、エチル基-CHCHなどが挙げられる。C1~4アルキル基とは、1個から4個の炭素原子を含む直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。
【0039】
「アルキレン基」とは、アルカンの分子から水素原子を2個抜くことによって形成される炭化水素基であり、例えば、メチレン基-CH-、エチレン基-CHCH-などが挙げられる。「C1~4アルキレン基」とは、1個から4個の炭素原子を含む直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。
【0040】
「置換または未置換のC1~12アルキル基」とは、C1~12アルキル基が置換されていても、置換基されていなくても良いことを指す。
【0041】
「Lが置換または未置換のC1~12のアルキレン基から選択され、アルキレン基の主鎖に0~4個のヘテロ原子が含まれ」とは、1個から12個の炭素原子が含まれる直鎖または分岐の炭化水素鎖を指し、該炭化水素鎖が置換されていても、置換されていなくても良く、該炭化水素鎖の主鎖にヘテロ原子が含まれ、ヘテロ原子はO、S、または置換のNであることを指す。
【0042】
「式Iにおいて破線がない場合」とは、式I中に破線が存在しないことを指す。即ち、この場合、Lは環の形成に関与しないことを指し、この場合Lは水素、重水素、置換または未置換のC1~8のアルキル基、置換または未置換のC1~8のアルコキシ基から選択され、前記置換基は重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲンである。
【0043】
「式Iにおいて破線が結合である場合」とは、LおよびN原子と、カルボニル基と結合した炭素原子とで環を形成し、この場合Lは置換または未置換のC1~8のアルキレン基から選択され、前記置換の置換基は重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲンであり、この場合、式Iに示す化合物の構造式が以下の通りであることを指す。
【0044】
「アリール基」とは、共役のπ電子系を有する全炭素単環または縮合多環(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を指し、例えば、フェニル基およびナフチル基が挙げられる。前記アリール基の環は、他の環状基に縮合してもよいが(飽和および不飽和の環を含む)、窒素、酸素または硫黄のようなヘテロ原子を含有できず、同時に、母体と結合する点は、共役のπ電子系を有する環における炭素原子上になければならない。アリール基は置換または未置換であって良く、即ち、0~4個の重水素、C1~4のアルキル基、C1~4のアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基によって置換されて良い。
【0045】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、本発明の化合物と薬学的に許容可能な無機酸および有機酸により形成される塩を指し、対象(例えば、ヒト)の組織との接触に適し、不快な副作用を引き起こさない塩である。好ましい無機酸は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸が含まれる(これらに限定されない)。好ましい有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン二酸、ナフタレンジスルホン酸(1,5)、アシアチン酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ペンタン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ピメリン酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸およびアミノ酸が含まれる(これらに限定されない)。
【0046】
用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物と薬学的に許容可能な溶媒により形成される溶媒和物を指し、前記薬学的に許容可能な溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンが含まれる(これらに限定されない)。
【0047】
用語「立体異性体」とは、本発明の化合物に関するキラル炭素原子が、R立体配置であってよく、S立体配置、またはそれらの組み合わせであっても良いことを指す。
【0048】
本発明は、新規な構造を有する第四級アンモニウム塩系化合物およびその調製方法と使用を提供し、該化合物は、作用の発現が早く、単回投与後に長時間の局所麻酔効果をもたらし、感覚神経の遮断時間が運動神経の遮断時間よりも長く、長時間作用型局所麻酔と選択性局所麻酔の作用を兼ね備え、QX314、QX314組成物、および界面活性剤の構造の特徴を有する第四級アンモニウム塩化合物の副作用を著しく低下させ、より良好な安全性を有する。即ち、本発明の式Iの化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、安全で、長時間の局所麻酔と選択性局所麻酔の作用を有する薬物の調製に使用することができ、局所麻酔の作用時間が長く、選択性が良好で、神経障害がより少なく、安全性が高い、という利点を有する。
【0049】
当然ながら、本発明の上記内容に基づき、当分野の一般的な技術的知識や慣用的手段に照らし、本発明の上記基本的な技術的思想を逸脱しないという前提において、他の様々な形態の修正、置換または変更を行うことができる。
【0050】
以下、実施例という形の具体的な実施形態によって、本発明の上記内容をさらに詳細に説明する。但し、これをもって、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解してはならない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の具体的な実施形態に使用される原料、装置はすべて従来の製品であり、市販の製品を購入したものである。
【0052】
実施例1 本発明の化合物の調製
【0053】
化合物1a(10.0g、45.39mmol)を15mLの1,3-ジブロモプロパンに溶解させ、75℃に加熱して40h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1,R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加えて、粘稠なシロップ状の物質を生成し、上清液を注ぎ出し、残った粗生成物15gを30mLのメタノールで溶解させた後、シリカゲルと混ぜ合わせ、乾燥充填の後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して粗生成物7.0gを得た。酢酸エチルとジクロロメタンにより再結晶させ、6.6gの類白色の固体粉末(中間体1b)を得た。収率:34.4%。次の反応に使用した。
【0054】
上記調製により得た中間体1b(1.00g,2.37mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(0.604g、2.61mmol、CAS:15883-20-2)を10mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.99g、0.78mL、4.74mmol)を加え、80℃に昇温し、40時間加熱し、溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して600mgの白色の固体(1)を得た。収率:44.15%。
【0055】
H NMR(300MHz,CDC1)δ(ppm):10.35(s,1H),7.84(s,1H),7.11-7.01(m,6H),4.89(s,2H),3.80-3.45(m,6H),3.20(s,3H),2.71-2.57(m,2H),2.28-2.17(m,14H),2.02(m,1H),1.90-1.63(m,6H),1.60-1.27(m,3H)。
【0056】
実施例2 本発明の化合物の調製
【0057】
化合物2a(10.0g、40.32mmol)を20mLの1,3-ジブロモブタンに溶解させ、75℃に加熱して24h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1、R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加え、反応液の固化により白色の固体が生成され、濾過により16.0gの白色の固体である粗生成物を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=20:1。溶離液を収集し、濃縮して5.9gの白色の固体(中間体2b)を得た。収率:31.5%。次の反応に使用した。
【0058】
上記調製により得た中間体2b(1.0g,2.16mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(0.55g、2.37mmol、CAS:15883-20-2)を15mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.53g、0.68mL、4.12mol)を加え、30℃で10日間反応させ、溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して995mgの白色の粉末状の固体(2)を得た。収率:75.1%。
【0059】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):9.79(s,1H),7.60(s,1H),7.02-6.90(m,5H),4.33(s,2H),3.63-3.41(m,6H),3.25-3.01(m,2H),2.94(s,2H),2.08(s,6H),2.07(s,6H),1.89-1.74(m,12H),1.60-1.40(m,1H),1.40-1.20(m,6H)。
【0060】
実施例3 本発明の化合物の調製
【0061】
化合物3a(2.0g、8.06mmol)を4mLの1,5-ジブロモペンタンに溶解させ、70℃に加熱して24h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=20:1、R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加え、反応液の固化により白色の固体が生成され、濾過により1.6gの白色の固体である粗生成物を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=20:1。溶離液を収集し、濃縮して1.8gの白色の粉末状の固体(中間体3b)を得た。収率:46.7%。次の反応に使用した。
【0062】
上記調製により得た中間体3b(1.8g、3.77mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(0.96g、4.14mmol、CAS:15883-20-2)を30mlのエタノールと5mlのメタノールとの混合溶媒に溶解させ、DIPEA(0.97g、1.24ml、7.54mmol)を加え、30℃で18日間反応させた。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して白色の粉末状の固体生成物500mg(3)を得た。収率:20.1%。
【0063】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.24(s,1H),8.39(s,1H),7.05-6.87(m,5H),4.68(s,2H),3.60-3.50(m,6H),3.30-3.05(m,2H),2.90-2.70(m,1H),2.35(s,1H),2.17-2.14(m,12H),2.05-1.55(m,10H),1.49-1.31(m,11H)。
【0064】
実施例4 本発明の化合物の調製
【0065】
化合物4a(10.0g、40.3mmol)を15mLの1,8-ジブロモオクタンに溶解させ、75℃に加熱して40h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1)を行った。適量の酢酸エチルを加え、粘稠なシロップ状の物質を生成し、上清液を注ぎ出し、残った固体を溶解させて混ぜ合わせ、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して粗生成物7.4gを得た。酢酸エチルとジクロロメタンにより再結晶させ、6.9gの類白色の固体粉末(中間体4b)を調製して、直接次の反応に使用した。
【0066】
上記調製により得た中間体4b(1.00g、1.92mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(498mg、2.11mmol、CAS:15883-20-2)を10mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.63mL、3.84mmol)を加え、80℃に昇温し、40時間加熱した。溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して600mgの白色の固体(4)を得た。収率:46.6%。
【0067】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.50(s,1H),8.13(s,1H),7.11-7.01(m,5H),4.88(s,2H),3.64-3.61(d,J=7.02Hz,4H),3.48(s,2H),2.96(s,1H),2.86-2.79(m,2H),2.27(s,6H),2.23(s,6H),2.17-1.96(m,4H),1.76(s,10H),1.60-1.42(m,14H)。
【0068】
実施例5 本発明の化合物の調製
【0069】
化合物5a(1.0g、3.8mmol)を1mLのビス(2-ブロモエチル)エーテルに溶解させ、ゆっくりと1.5mlのビス(2-ブロモエチル)エーテルに滴下し、70℃に加熱して反応させ、TLCで反応をモニタリングした(DCM:MeOH=10:1)。反応終了後、溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=20:1。溶離液を収集し、濃縮して暗褐色の化合物1.3g(中間体5b)を得た。収率:69.0%。次の反応に進んだ。
【0070】
上記調製により得た中間体5b(1.3g、2.6mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(0.67g、2.89mmol、CAS:15883-20-2)を15mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.86mL、5.2mmol)を加え、30℃で13日間反応させ、TLCで反応をモニタリングした(DCM:MeOH=10:1)。反応終了後、溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して500mgの白色の固体(5)を得た。収率:29.4%。
【0071】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.09(s,1H),9.81(s,m),8.69(s,1H),7.06-6.90(m,6H),4.73(s,2H),4.67-3.97(d,J=4.05Hz,2H),3.85-3.63(m,8H),3.28-3.16(m,2H),3.07-2.95(m,1H),2.65-2.56(m,1H),2.30-1.95(m,13H),1.80-1.60(m,4H),1.60-1.12(m,11H)。
【0072】
実施例6 本発明の化合物の調製
【0073】
化合物6a(10.0g、39.4mmol)を15mLの1,3-ジブロモプロパンに溶解させ、75℃に加熱して40h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1、R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加え、粘稠なシロップ状の物質を生成し、上清液を注ぎ出し、残った粗生成物14gを30mLのメタノールで溶解させた後、シリカゲルと混ぜ合わせ、乾燥充填後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して粗生成物8.0gを得た。酢酸エチルとジクロロメタンにより再結晶させ、7.6gの類白色の固体粉末(中間体6b)を得た。収率:42.3%。次の反応に使用した。
【0074】
上記調製により得た中間体6b(1.00g、2.19mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(0.559g、2.4mmol、CAS:15883-20-2)を10mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.57g、0.72mL、4.38mmol)を加え、80℃に昇温し、40時間加熱した。溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して500mgの白色の固体(6)を得た。収率:37.6%。
【0075】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.35(s,1H),7.84(s,1H),7.11-7.01(m,5H),4.89(s,2H),3.80-3.45(m,6H),3.20(s,3H),2.71-2.57(m,2H),2.28-2.17(m,14H),2.02(m,1H),1.90-1.63(m,6H),1.60-1.27(m,3H)。
【0076】
実施例7 本発明の化合物の調製
【0077】
化合物7a(10.0g, 37.88mmol)を15mLの1,8-ジブロモオクタンに溶解させ、75℃に加熱して40h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1)を行った。適量の酢酸エチルを加え、粘稠なシロップ状の物質を生成し、上清液を注ぎ出し、残った固体を溶解させて混ぜ合わせ、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して粗生成物8.4gを得た。酢酸エチルとジクロロメタンにより再結晶させ、7.4gの類白色の固体粉末(中間体7b)を得て、直接次の反応に使用した。
【0078】
上記調製により得た中間体7b(1.00g、1.87mmol)、N-(2,6ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミド(475mg、2.05mmol、CAS:15883-20-2)を10mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.62mL、3.74mmol)を加え、80℃に昇温し、40時間加熱した。溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して500mgの白色の固体(7)を得た。収率:38.8%。
【0079】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.50(s,1H),8.13(s,1H),7.11-7.01(m,6H),4.88(s,2H),3.64-3.61(d,J=7.02Hz,4H),3.86(s,3H),3.48(s,2H),2.96(s,1H),2.86-2.79(m,2H),2.27(s,6H),2.23(s,3H),2.17-1.96(m,4H),1.76(s,10H),1.60-1.42(m,14H)。
【0080】
実施例8 本発明の化合物の調製
【0081】
化合物8a(2.0g、8.54mmol)を4mLの1,5-ジブロモペンタンに溶解させ、70℃に加熱して24h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=20:1、R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加え、反応液の固化により白色の固体が生成され、濾過により1.8gの白色の固体である粗生成物を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=20:1。溶離液を収集し、濃縮して1.6gの白色の粉末状の固体(中間体8b)を得た。収率:39.2%。次の反応に使用した。
【0082】
上記調製により得た中間体8b(1.5g、3.23mmol)と、8c(0.91g、3.55mmol)を、30mlのエタノールと5mlのメタノールとの混合溶媒に溶解させ、DIPEA(0.83g、1.06ml、6.46mmol)を加え、30℃で18日間反応させた。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して白色の粉末状の固体生成物600mg(8)を得た。収率:29.0%。
【0083】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.24(s,1H),8.39(s,1H),7.05-6.87(m,5H),4.68(s,2H),3.60-3.50(m,6H),3.33(s,3H),2.90-2.70(m,1H),2.35(s,1H),2.17-2.14(m,12H),2.05-1.55(m,10H),1.49-1.31(m,11H)。
【0084】
実施例9 本発明の化合物の調製
【0085】
化合物9a(10.0g、45.45mmol)を15mLの1,3-ジブロモプロパンに溶解させ、75℃に加熱して40h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1、R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加え、粘稠なシロップ状の物質を生成し、上清液を注ぎ出し、残った粗生成物14gを30mLのメタノールで溶解させた後、シリカゲルと混ぜ合わせ、乾燥充填後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して粗生成物8gを得た。酢酸エチルとジクロロメタンにより再結晶させ、7.2gの類白色の固体粉末(中間体9b)を得た。収率:37.5%。次の反応に使用した。
【0086】
上記調製により得た中間体9b(1.00g、2.37mmol)と、9c(0.504g、2.61mmol)を、10mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.99g、0.78mL、4.74mmol)を加え、80℃に昇温し、40時間加熱した。溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して500mgの白色の固体(9)を得た。収率:39.6%。
【0087】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):10.35(s,1H),7.84(s,1H),7.11-7.01(m,6H),4.89(s,2H),3.80-3.45(m,6H),3.20(s,3H),2.71-2.57(m,2H),2.32(s,3H)2.28-2.17(m,11H),2.02(m,1H),1.90-1.63(m,2H),1.60-1.27(m,3H)。
【0088】
実施例10 本発明の化合物の調製
【0089】
化合物10a(10.0g、37.59mmol)を20mLの1,3-ジブロモブタンに溶解させ、75℃に加熱して24h反応させ、TLCでモニタリング(DCM:MeOH=10:1、R=0.3)を行った。適量の酢酸エチルを加え、反応液の固化により白色の固体が生成され、濾過により15.0gの白色の固体である粗生成物を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=20:1。溶離液を収集し、濃縮して6.5gの白色の固体(中間体10b)を得た。収率:35.9%。次の反応に使用した。
【0090】
上記調製により得られた中間体10b(1.0g、2.07mmol)と、10c(0.47g、2.28mmol)を、15mLのエタノールに溶解させ、DIPEA(0.54g、0.69ml、4.14mol)を加え、30℃で10日間反応させた。溶媒を蒸発乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。溶離剤:CHCl:MeOH=10:1。溶離液を収集し、濃縮して900mgの白色の粉末状の固体(10)を得た。収率:71.6%。
【0091】
H NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):9.79(s,1H),7.60(s,1H),7.02-6.90(m,5H),4.33(s,2H),3.26-3.06(m,6H),2.64-2.42(m,4H),2.10(s,6H),2.09(s,6H),1.89-1.74(m,8H),1.40-1.20(m,9H)。
【0092】
実施例11 本発明の化合物の調製
【0093】
実施例4の生成物200mgをジクロロメタン10mLに溶解させ、氷浴下で等物質量濃度の0.1mol/Lの塩酸-メタノール溶液を滴下し、乾燥するまで減圧濃縮した。真空乾燥し、淡黄色の固体(11)を得た。
【0094】
実施例12 本発明の化合物の調製
【0095】
実施例10の生成物200mgをジクロロメタン10mLに溶解させ、1eqのp-トルエンスルホン酸を加え、乾燥するまで減圧濃縮した。真空乾燥し、淡黄色の固体(12)を得た。
【0096】
実施例13 本発明の化合物の調製
【0097】
実施例8の生成物200mgをジクロロメタン10mLに溶解させ、0.5epのD-酒石酸を加え、乾燥するまで減圧濃縮した。真空乾燥し、淡黄色の固体(13)を得た。
【0098】
上記実施例の調製方法に従って、以下の実施例化合物14~77を得た。

【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
以下、本発明における化合物の有益な効果を、実験例によって説明する。
【0103】
実験例1 本発明の化合物の局所麻酔における効果の研究
実施例1~77の化合物を選択し、リドカイン陽性対照群、レボブピバカイン陽性対照群のそれぞれに、完全に実験環境に適応した被験ラットを8群設け、各群8匹とした。
【0104】
投与量は次の通り。リドカイン群の濃度を2%水溶液とし、レボブピバカイン群の濃度を0.75%水溶液とし、被験薬物濃度をいずれも20mmol/mLの蒸留水溶液とした。
【0105】
各ラットに対する投薬または対照の注入体積を0.5mlとし、神経ロケータによって位置決めし、ラットの坐骨神経近傍に注射した。Von Frey刺激装置で、ラットの身体の薬物が注射された側の足裏を刺激し、局所麻酔の効果を観察した。同時に、姿勢性伸筋突伸反応(Postural Extensor Thrust、PET)によって、ラットの運動機能の状況を評価した。ラットを垂直に持ち上げ、注射した側の後肢を電子天秤のテーブル面に立たせた。脚で踏んでいる天秤が示す数値がラットの後肢筋力を表している。脚が完全に麻痺している場合、読み取り数値は脚自体の重さであり、約20gとなる。測定値が、基準ラインと脚の重量との差の半分を超えると、運動機能が回復したと見なし、半分以下であれば、運動機能が消失していると見なした。
【0106】
【表1】
【0107】
実験結果からわかるように、これらの薬物は、坐骨神経遮断モデルにおいて、24時間を超える局所麻酔作用を生じさせることができるとともに、感覚神経の遮断時間が運動神経の遮断時間よりも著しく長く、時間の差は5時間以上であった。
【0108】
実験例2 本発明の化合物の局所麻酔における効果の研究
体重が250~300gのラットの背部を剃毛して消毒した後、裸の背部に、直径約1.5cmの円を描き、該円を6等分した。中心部の皮膚に、本発明の実施例1~13の化合物を含有する溶液0.5mLを皮下注射した(生理食塩水を溶媒とし、ブピバカインの濃度は23mmol/Lとし、本発明特許の前記化合物の濃度範囲を6mmol/Lとした)。Von Freyフィラメントの100g強度のフィラメントを針に結びつけ、皮膚を局所的に刺激した。薬物を注射して1min後、上記方法を用いて、6つの区画の範囲内で刺激を与え、同じ1つの等分範囲内で、連続3回刺激を与えても背部の皮膚に収縮がなければ、薬効は陽性であると見なし、背部の皮膚に収縮が発生すれば、局所麻酔の効果が消失したと見なした。6つの等分範囲のうち、4つまたは4つ以上のエリアで局所麻酔が陽性であると示されれば、薬物の局所麻酔は効果ありと見なし、6つの等分範囲のうち、4つ未満のエリアで陽性が示されれば、局所麻酔は効果なしと見なした。各化合物にラット10匹を用いて実験を行った。
【0109】
【表2】
【0110】
実験結果からわかるように、これらの薬物は、ラットの皮下浸潤モデルにおいて、24時間を超える局所麻酔作用を生じさせることができる。
【0111】
実験例3 本発明の化合物による神経病理学的障害に関する研究
実施例1~13の化合物を選択し、リドカイン陽性対照群、レボブピバカイン陽性対照群のそれぞれに、完全に実験環境に適応した被験ラットを8群設け、各群8匹ずつとした。
【0112】
投与量は次の通り。リドカイン群の濃度を2%水溶液とし、レボブピバカイン群の濃度を0.75%水溶液とし、被験薬物濃度をいずれも20mmol/mLの蒸留水溶液とした。各ラットに対する投薬または対照の注入体積を0.5mlとし、ラットの坐骨神経近傍に注射した。坐骨神経に注射した後の7日目と14日目に、実験ラットをイソフルラン麻酔下で心臓にブピバカインを注射し、安楽死させた。注射部位の坐骨神経を約1.5cm採取し、10%のホルムアルデヒド溶液に48h保存し、HE染色して、厚さ5μmの切片を切り取った。
【0113】
投与量は次の通り。リドカイン群の濃度を2%水溶液とし、レボブピバカイン群の濃度を0.75%水溶液とし、被験薬物濃度をいずれも6mmol/mLの蒸留水溶液とした。各ラットに対する投薬または対照の注入体積を0.5mlとし、ラットの背部の皮下に注射した。皮下注射後の7日目と14日目に、実験ラットをイソフルラン麻酔下で心臓にブピバカインを注射し、安楽死させた。注射部位の皮膚組織を採取し、10%のホルムアルデヒド溶液に48h保存し、HE染色して、厚さ5μmの切片を切り取った。
【0114】
神経病理学的障害に対する評価から、実施例1~13の化合物は、リドカイン陽性対照群、レボブピバカイン陽性対照群と比較して、神経障害、血管増殖、脱髄の程度、筋肉の炎症、結合組織の炎症の程度において、有意な差はなく、良好な安全性を有していることがわかった。
【0115】
以上のように、本発明は、新規な構造を有する第四級アンモニウム塩系化合物およびその調製方法と使用を提供し、該化合物は作用の発現が早く、単回投与後に長時間の局所麻酔(24時間を超える)作用を生じさせ、神経遮断の選択性を有し(感覚神経の遮断時間が運動神経の遮断時間よりも長く、時間の差が5時間以上)、長時間作用型局所麻酔と選択性局所麻酔の作用を兼ね備え、QX314、QX314組成物、および界面活性剤の構造の特徴を有する第四級アンモニウム塩系化合物の副作用を著しく低下させ、より良好な安全性を有する。即ち、本発明の式Iの化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、安全で、長時間の局所麻酔と選択性局所麻酔の作用を有する薬物の調製に使用することができ、局所麻酔の作用時間が長く、選択性が良好で、神経障害がより少なく、安全性が高い、という利点を有する。