(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エラクリダールの重水素化類似体
(51)【国際特許分類】
C07D 401/12 20060101AFI20240214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K45/00
A61K31/473
A61K31/337
A61K31/4745
A61K31/506
A61K31/5377
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020549695
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 US2019023443
(87)【国際公開番号】W WO2019183403
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515270884
【氏名又は名称】イズミ テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バント,アントニウス マルティヌス ギュスターヴ
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523400(JP,A)
【文献】特表平09-510717(JP,A)
【文献】特表2005-511742(JP,A)
【文献】Journal of High Technology Law,2009年,p.22-74
【文献】J. Pharm. Sci.,1975年,64,367-391
【文献】Nature,2009年05月19日,458,269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される構造を有する
化合物、
【化1】
または、その薬学的に許容される塩であって
、
式中、
各Yおよび各Wは、独立して、水素または重水素から選択され
、
Y14およびY15がそれぞれ重水素からなり
、
R1、R2およびR3がそれぞれCD
3からな
る、
化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
残りのY、およびWがそれぞれ重水素を含まない、請求項1に記載の
化合物。
【請求項3】
前記
化合物が、1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのうちの少なく
とも1つの投与量レベルで、ヒト、ラット、またはマウスのうちの少なくとも1つに経
口投与された場合、非置換エラクリダールと比較して、AUC0-∞が少なくとも20
%増加する、請求項1
又は2に記載の
化合物。
【請求項4】
前記AUC0-∞の増加が、少なくとも40%である、請求項
3に記載の
化合物。
【請求項5】
前記
化合物が、1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのうちの少なく
とも1つの投与量レベルで、ヒト、ラット、またはマウスのうちの少なくとも1つに経
口投与された場合、非置換エラクリダールと比較して、血漿半減期が少なくとも20%
増加する、請求項1
又は2に記載の
化合物。
【請求項6】
前記血漿半減期の増加が、少なくとも40%である、請求項
5に記載の
化合物。
【請求項7】
1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのうちの少なくとも1つの投与
量レベルで、ヒト、ラット、またはマウスのうちの少なくとも1つに経口投与され、か
つエルロチニブが20mg/kgで経口的に共投与された場合、前記投与が、エルロチ
ニブのKp、脳において、少なくとも20%の増加をもたらす、請求項1
又は2に記載
の
化合物。
【請求項8】
前記Kp、脳の増加が、少なくとも40%である、請求項
7に記載の
化合物。
【請求項9】
請求項1
~8のいずれか一項に記載の
化合物を含む医薬組成物であって、前記
化合物
が、80%超の同位体純度を有する、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の
化合物および薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の
化合物および1つ以上の治療剤を含む、医薬組
成物。
【請求項12】
治療を必要とする患者の治療における治療量の治療剤との共投与に使用するための、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の
化合物。
【請求項13】
前記治療剤が、チロシンキナーゼ阻害剤、抗悪性腫瘍剤、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、
抗レトロウイルス薬、およびオピオイド受容体アゴニストのうちの1つ以上である、請
求項
12に記載の
化合物。
【請求項14】
前記治療剤が、パクリタキセル、トポテカン、ダサチニブ、ゲフィチニブ、イマチニ
ブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、エルロチニブ、クリゾチ
ニブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、イミダゾテトラジン、イスピネシブ、パクリタ
キセル、タゼメトスタット、テモゾロミド、トポテカン、ビンカアルカロイド、アント
ラサイクリン、タキソール、タキソール誘導体、ポドフィロトキシン、ミトキサントロ
ン、アクチノマイシン、コルヒチン、グラミシジンD、アムサクリン、アバカビル、ア
ンプレナビル、ラミブジン、リトナビル、ジドブジン、ロペラミド、モルヒネ、n-デ
スメチルロペラミド、およびパゾパニブのうちの1つ以上である、請求項
13に記載の
化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重水素化活性医薬成分および排出阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エラクリダールは、以前、GF120918と呼ばれ、9,10-ジヒドロ-5-メトキシ-9-オキソ-N-[4-[2-(1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジメトキシ-2-イソキノリニル)エチル]フェニル]-4-アクリジン-カルボキサミド、または、時に、N-4-[2-(1,2,3,4-テトラヒドロ-6、7-ジメトキシ-2-イソキノリニル)エチル]-フェニル)-9,10-ジヒドロ-5-メトキシ-9-オキソ-4-アクリジンカルボキサミドと書かれる構造を有する化合物である。エラクリダールは、最初、P-gp選択的阻害剤として記載されたが、現在、デュアルP-gp/BCRP阻害剤として認識されている(Matsson P,Pedersen JM,Norinder U,Bergstrom CA,and Artursson P 2009 Identification of novel specific and general inhibitors of the three major human ATP-binding cassette transporters P-gp,BCRP and MRP2 among registered drugs.Pharm Res 26:1816-1831)。
【0003】
エラクリダールは、インビトロとインビボの両方で試験され、P-gpおよびBCRP阻害剤として、一応の成功を収めている。例として、癌患者では、パクリタキセル(P-gp基質)およびトポテカン(BCRP基質)のような治療剤とのエラクリダールの共投与は、おそらく消化管中に位置するP-gp/BCRPポンプによって腸内腔への排出を防止することによって、その経口吸収を改善した。同様に、げっ歯類において、エラクリダールは、モルヒネ、アンプレナビル、イマチニブ、ダサチニブ、ゲフィチニブ、ソラフェニブ、およびスニチニブのようなポンプ基質と共投与され、一応の成功を伴って、脳内の薬物レベルを増加させた(血液脳関門におけるP-gpおよびBCRPにより媒介される排出を遮断することによって)。これらの研究のいくつかの概要は、Saneらによる研究報告に見出すことができる(Drug Metabolism And Disposition 40:1612-1619,2012)。
【0004】
エラクリダールの投与には、いくつかの制限がある。例として、エラクリダールは好ましくない物理化学的性質を有し、水に実質的に不溶であり、例えば、注射用または経口投与の剤形のいずれかとして処方することが困難である。エラクリダールの溶解度が低く、親油性が高いことから、腸管内腔からの溶解速度律速吸収が生じる。
【0005】
エラクリダールの有効性を高めるために、様々なアプローチが探究されてきた。例えば、米国特許出願公開第2014/0235631号は、経口の生物学的利用率を高めるためのナノ粒子製剤を開示している。
【0006】
Saneらは(Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.102,1343-1354(2013))、その溶解速度律速の生物学的利用率を試して克服するために、エラクリダールのマイクロエマルジョン製剤を報告している。
【0007】
Sawickiらは(Drug Development and Industrial Pharmacy,2017 VOL.43,NO.4,584-594)、凍結乾燥エラクリダール塩酸塩-ポビドンK30-ドデシル硫酸ナトリウムの非晶質固体分散製剤を記載している。しかし、健康なヒトのボランティアで試験した場合、326ng/mlのCmaxを達成するためには、非常に高い用量(例えば、1000mg)が必要であった(Sawicki et al.Drug Deliv.and Transl.Res.Published online 18 Nov 2016)。
【0008】
Montesinosらは(Mol Pharm.2015 Nov 2;12(11):3829-38)、エラクリダールのいくつかのPEG化リポソーム製剤を試みたところ、半減期の部分的な増加はもたらされたが、治療剤と共投与された場合、有効性の増大はみられなかった。
【0009】
当該技術分野における多大な予測不可能性、および多くの場合での動物とヒトのデータ間の乏しい相関から、このような製剤の価値は臨床試験を待つことになる。
【0010】
静脈注射後の11Cエラクリダールの微量投与の全身分布の研究により、肝臓における高レベルの蓄積が示された(Bauer et al.J Nucl Med.2016;57:1265-1268)。これにより、エラクリダールの全身レベルも、肝臓内のクリアランスによって実質的に制限されると示唆する人もいる。
【0011】
いくつかの薬物の代謝安定性を改善するための潜在的に魅力的な方法は、重水素修飾であるこのアプローチでは、1つ以上の水素原子を重水素原子に置換することにより、薬物のCYP媒介代謝を遅らせるか、または不活性な代謝物の形成速度を低下させることが試みられている。重水素は、水素の安全で安定な非放射性同位体である。水素と比較して、重水素は炭素とより強い結合を形成する。一部の場合では、重水素によって付与された増加した結合強度は、薬物の吸収、分布、代謝、排泄および/または毒性(「ADMET」)特性にプラスの影響を与え、改善された薬物有効性、安全性および/または耐容性の可能性を作り出す。同時に、重水素のサイズおよび形状は、水素のものと本質的に同一であるため、重水素による水素の置換は、水素のみを含有する元の化学物質と比較して、薬物の生化学的な効力および選択性に影響を及ぼすことは期待されない。
【0012】
過去35年にわたって、代謝速度に対する重水素置換の効果は、非常に少ない割合の承認された薬物について報告されている(例えば、Blake,M I et al,J Pharm Sci,1975,64:367-91、Foster,A B,Adv Drug Res 1985,14:1-40(「Foster」)、Kushner,D J et al,Can J Physiol Pharmacol 1999,79-88、Fisher,M B et al,Curr Opin Drug Discov Devel,2006,9:101-09(「Fisher」)を参照のこと)。結果は、可変的でかつ予測不可能である。いくつかの化合物については、重水素化は、実際に、インビボで代謝クリアランスを減少させた。他については、代謝における変化は観察されなかった。さらに他のものは、増加した代謝クリアランスを示した。重水素効果における大きな予測不可能性および可変性のため、代謝を阻害するための実行可能な薬物設計戦略として、重水素修飾を疑問視するまたは放棄する専門家が出てきた(Foster at p.35 and Fisher at p.101を参照のこと)。
【0013】
重水素原子が代謝の既知の部位に組み込まれている場合であっても、薬物の代謝特性に対する重水素修飾の効果は予測可能ではない。実際に重水素化された薬物を調製して試験することによってのみ、代謝の速度がその非重水素化された対応物の速度と異なるかどうか、およびどのように異なるのかを決定することができる。例えば、FukutoらJ.Med.Chem.1991,34,2871-76)を参照のこと。多くの薬物は、代謝が可能な複数の部位を有する。重水素置換が必要とされる部位(複数可)、および代謝に対する効果を見るのに必要な重水素化の程度は、もしあれば、各薬物について異なるであろう。
【0014】
最近の処方の進歩にもかかわらず、ヒトにおけるエラクリダールの課題である物理化学的およびADMET特性を考慮すると、全身循環、血液脳関門、および他の場所において、より高いレベルかつ可変性がより少ないレベルを達成して、排出阻害を最適化することができるエラクリダール類似体に対する当該技術分野における必要性が残されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、エラクリダールの重水素化類似体を提供する。一つの実施形態では、本発明の重水素化類似体は、水素原子が置換された1個、または2個、または3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個、または11個、または12個、または13個、または14個、または15個、または16個、または17個、または18個、または19個、または20個、またはそれ以上の重水素原子を含むエラクリダールを含み、まとめると、これらの置換は、
図1で指定される1つ以上のロカント2~4、7~19、23~39、および41~43に位置している。他の実施形態では、本類似体は、1~4個の重水素置換を含み、まとめると、これらの置換は、1つ以上のロカント5および6に位置し、ならびに1つ以上のロカント2~4、7~19、23~39、および41~43での重水素置換を有する。本発明はまた、本類似体を含む組成物およびその使用方法を含有する。
【0016】
式1で表される、エラクリダールの種々の本重水素化類似体:
【化1】
または、その薬学的に許容される塩であって、少なくとも1つの重水素原子を含み、式中:
各Yおよび各Wは、独立して、水素または重水素から選択され、
各Rは、独立して、CH
3、CH
2D
1、CH
1D
2、およびCD
3から選択され、
ただし、各YはHであり、かつ、各RがCH
3である場合、少なくとも1つのWはHである。読者の便宜のために、本明細書では「条件A」と呼ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ロカント番号を付したエラクリダールを示す。
【
図2】エラクリダール合成の代表的な方法を示す。
図2は、
図2A~
図2Dと表示された4枚のシートに分割されている。
【
図3】エラクリダールおよびエラクリダール類似体の合成のための反応化合物を示す。ロカント番号は、
図1に示される最終的なエラクリダール産物を参照する。
【
図4】EE60の合成の第1のステップの代表的な方法を示す。
【
図5】EE60の合成の最後のステップの代表的な方法を示す。
【
図7】
図2の複製であり、
図7は、
図7のより小さな縮尺図であり、
図2の部分図によって形成される全体を示し、示された特徴の位置を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、以下の定義および略語が適用される。
【0019】
「AUC」または「AUC0-∞」は、0時間から無限時間まで外挿した曲線下面積である。
【0020】
「共投与された」(または「併用療法」または「併用して」)は、治療薬(複数可)を伴う本類似体または組成物に関して、同時に、単一の剤形で、別々の剤形で、または、異なる時間に、別々の剤形で、そのような類似体または組成物の投与を含むことを意味する。任意選択的に、エラクリダール類似体と同時に、第2の治療剤が対象に提示される任意の方法で、共投与を提供することができる。
【0021】
「DMF」は、N,N-ジメチルホルムアミドを意味する。
【0022】
「重水素原子置換の」または「重水素原子が置換された」、本明細書で使用される場合、水素原子と置換された重水素原子を意味する。
【0023】
「エラクリダール」は、9,10-ジヒドロ-5-メトキシ-9-オキソ-N-[4-[2-(1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジメトキシ-2-イソキノリニル)エチル]フェニル]-4-アクリジン-カルボキサミド、または、N-(4-(2-(1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジメトキシ-2-イソキノリニル)エチル)フェニル)-9,10-ジヒドロ-5-メトキシ-9-オキソ-4-アクリジンカルボキサミドを意味する。また、用語「エラクリダール」は、重水素で置換された1つ以上の水素を除いて、上に記載の同じ構造の化合物を包含することを意味し、このような化合物は、エラクリダールの重水素化類似体またはエラクリダール類似体とも呼ばれる。文脈で明らかでない限り、用語「エラクリダール」は、非置換エラクリダールを意味する。
【0024】
「エラクリダール類似体(複数可)」または「本類似体」は、本発明のエラクリダール類似体を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「同位体置換体」は、化学構造が、本発明の特定の化合物と、その同位体組成においてのみ異なる種をいう。
【0026】
本明細書で使用される「同位体濃縮係数」は、本類似体中の同位体存在度と特定の同位体(例えば、重水素)の天然存在度との比を意味する。
【0027】
本明細書で使用される「同位体純度」は、指定された重水素化部位に、指定された数の重水素原子を含有する、組成物中の類似体分子のパーセンテージである。
【0028】
本明細書で使用される、「Kp、脳」は、例えば、Sane et al.Drug Metabolism And Disposition vol.40 no.8 1612-1619に記載されているように、測定された脳対血漿の分配係数である。
【0029】
「通常の原子価」とは、本類似体に関して使用される場合、水素原子と重水素原子の数によって測定される元素の結合力をいい、それは、置換または結合することができる。明確にするために、炭素の通常の原子価は4であり、酸素は2であり、窒素は3である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して使用するのに好適であり、任意選択的に過度の毒性、刺激、または免疫原性を有さず、妥当な利益/リスク比に見合う成分を意味する。
【0031】
「薬学的に許容される塩」とは、レシピエントへの投与の際に、直接的または間接的に、本発明の類似体を提供することができる任意の無毒性の塩を意味する。
【0032】
「TBTU」は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレートを意味する。
【0033】
「非置換エラクリダール」は、各原子が天然同位体存在度を有するエラクリダールを意味する。
【0034】
本発明者の知性の洞察を通して、胃腸(Gl)管および肝臓ならびに前および後の全身の生体内変換(または除去)において、体循環中のエラクリダールの治療レベルを達成することは、前全身クリアランス(初回通過代謝としても知られる)によって大きく阻害されることが判明した。このような生体内変換は、本発明者の洞察によれば、胃腸管および肝臓における特異的な酵素的修飾、例えば、シトクロムモノオキシゲナーゼおよびオキシドレダクターゼを介して、不活性な代謝物をもたらす。したがって、一定のいくつかのある種の特定の重水素化エラクリダール類似体は、経口または静脈内または他の経路での投与後に、代謝分解を阻止し、全身およびCNSレベルを実質的に増加させるように設計されてきた。本発明者の知性により、ある種のエラクリダール代謝物が毒性の原因となり得ることも発見された。したがって、本発明のエラクリダール類似体は、より安全であり、毒性がより少ないはずである。
【0035】
エラクリダール類似体の命名法
読者の便宜上、エラクリダールおよびエラクリダール類似体は、
図1に示される構造を参考に名付けられる。各潜在的な重水素化部位には、ロカント番号が割り当てられる。各環には、文字が割り当てられる。それには、2つのリンカー、すなわち、環Cと環Dとの間のカルボキサミドリンカー(リンカー1)、および環Dと環Eとの間のエチルリンカーがある。さらに明確にするために、リンカーの一部ではない環の成分は、環の一部であるとみなされる。
【0036】
特定の実施形態
例えば、本発明は、以下に挙げるそれぞれの例示的な実施形態(「EE」)を考慮する。各EEは、本発明の本類似体である。ロカントが特定されていない場合、それが水素または重水素であってもよいと理解されるべきである。
【0037】
EE1.条件Aのもとで、1つ以上の重水素原子で置換された(すなわち、1つ以上の水素原子が、それぞれ重水素原子で置換されている)エラクリダールを含む類似体。各原子の通常の原子価が維持されつつ、そのような置換が提供され得る。
【0038】
EE2.環E内で、1、2、3、4、5、または6個の重水素原子が置換されている、EE1に記載の類似体。
【0039】
EE3.環F内で、1、または2個の重水素原子が置換されている、EE1またはEE2に記載の類似体。
【0040】
EE3.1環A内で、1、2、または3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE3のいずれか一つに記載の類似体。
【0041】
EE3.2環C内で、1、2、または3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE3.1のいずれか一つに記載の類似体。
【0042】
EE3.3環D内で、1、2、3、または4個の重水素原子が置換されている、EE1~EE3.2のいずれか一つに記載の類似体。
【0043】
EE3.3ロカント4で、1、2、または3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE3.3のいずれか一つに記載の類似体。
【0044】
EE4.ロカント32で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE3.3のいずれか一つに記載の類似体。
【0045】
EE5.ロカント32で、2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE44のいずれか一つに記載の類似体。
【0046】
EE6.ロカント31で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE5のいずれか一つに記載の類似体。
【0047】
EE7.ロカント31で、2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE5のいずれか一つに記載の類似体。
【0048】
EE8.ロカント29で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE7のいずれか一つに記載の類似体。
【0049】
EE9.ロカント29で、2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE7のいずれか一つに記載の類似体。
【0050】
EE10.ロカント5で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE9のいずれか一つに記載の類似体。
【0051】
EE11.ロカント5で、2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE9のいずれか一つに記載の類似体。
【0052】
EE12.ロカント6で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE11のいずれか一つに記載の類似体。
【0053】
EE13.ロカント6で、2個の重水素原子が置換されている、EE1~EE11のいずれか一つに記載の類似体。
【0054】
EE14.ロカント2で、1または2または3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE11のいずれか一つに記載の類似体。
【0055】
EE15.ロカント2で、3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE11のいずれか一つに記載の類似体。
【0056】
EE16.ロカント3で、1または2または3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE15のいずれか一つに記載の類似体。
【0057】
EE17.ロカント3で、3個の重水素原子が置換されている、EE1~EE15のいずれか一つに記載の類似体。
【0058】
EE18.ロカント5、6、29、31、および32で、それぞれ2個の重水素原子が置換され、ロカント2および3で、それぞれ3個の重水素原子が置換されている、EE1に記載の類似体。
【0059】
EE19.置換を含む当該ロカント(複数可)で、当該ロカント(複数可)のすべての水素原子が、それぞれ重水素原子によって置換されている、EE1~EE18のいずれか一つに記載の類似体。
【0060】
EE20.ロカント2で、1、2、または3個の重水素原子が置換され、ロカント3で、1、2、または3個の重水素原子が置換されている、EE1に記載の類似体。
【0061】
EE21.ロカント2で3個の重水素原子が置換され、ロカント3で3個の重水素原子が置換されている、EE1に記載の類似体。
【0062】
EE22.ロカント4で、1、2、または3個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE21のいずれか一つに記載の類似体。
【0063】
EE23.ロカント4で、3個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE21のいずれか一つに記載の類似体。
【0064】
EE24.ロカント23、25、26、または28のうちの少なくとも1つで、1個の重水素原子が置換されている(すなわち、ロカント23、25、26、および28のうちの1つ以上が、重水素置換を含有する)、EE1およびEE20~EE23のいずれか一つに記載の類似体。
【0065】
EE25.ロカント23および25で、それぞれ1個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE23のいずれか一つに記載の類似体。
【0066】
EE26.ロカント26および28で、それぞれ1個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE23のいずれか一つに記載の類似体。
【0067】
EE27.ロカント23、25、26および28で、それぞれ1個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE23のいずれか一つに記載の類似体。
【0068】
EE28.ロカント32で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE27のいずれか一つに記載の類似体。
【0069】
EE29.ロカント32で、2個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE27のいずれか一つに記載の類似体。
【0070】
EE30.ロカント31もしくは29または31および29で、1または2個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE29のいずれか一つに記載の類似体。
【0071】
EE31.ロカント31および29で、それぞれ2個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE29のいずれか一つに記載の類似体。
【0072】
EE32.ロカント10、41、42、16、17、および18のうちの1つ以上で、1個の重水素原子が置換されている、EE1およびEE20~EE31のいずれか一つに記載の類似体。
【0073】
EE33.炭素原子で、1~31個の重水素原子が置換されている、EE1に記載の類似体。
【0074】
EE34.ロカント2、3、5、6、10、16、17、18、23、25、26、28、29、31、32、41、および42で、または複数のまたはすべての炭素原子が重水素化されている、EE1に記載の類似体。
【0075】
EE35.
I.ロカント10、41、および42のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、および32のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のうちの1つ以上で置換された1または2または3個の重水素原子、のうちの少なくとも1つを含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0076】
EE36.
I.ロカント10、41、および42のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、および32のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のうちの1つ以上で置換された1または2または3個の重水素原子、のうちの少なくとも2つを含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0077】
EE37.
I.ロカント10、41、および42のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、および32のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のうちの1つ以上で置換された1または2または3個の重水素原子、のうちの少なくとも3つを含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0078】
EE38.
I.ロカント10、41、および42のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、および32のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のうちの1つ以上で置換された1または2または3個の重水素原子、のうちの少なくとも4つを含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0079】
EE39.
I.ロカント10、41、および42のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの1つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、および32のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のうちの1つ以上で置換された1または2または3個の重水素原子、を含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0080】
EE40.
I.ロカント10、41、および42のうちの2つ以上で置換された1個の重水素原子(すなわち、これらのロカントの2つが、それぞれ1つの置換を含有する)、
II.ロカント16、17、および18のうちの2つ以上で置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの2つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、および32のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のうちの1つ以上で置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のそれぞれで置換された1または2または3個の重水素原子、を含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0081】
EE41.
I.ロカント10、41、および42のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちの3つ以上で置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、32のうちの2つ以上で置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のそれぞれで置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のそれぞれで置換された1または2または3個の重水素原子、を含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0082】
EE42.
I.ロカント10、41、および42のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のうちのそれぞれで置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、32のうちのそれぞれで置換された1または2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のそれぞれで置換された1または2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のそれぞれで置換された1または2または3個の重水素原子、を含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0083】
EE45.
I.ロカント10、41、および42のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
III.ロカント23、25、26、および28のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
IV.ロカント29、31、32のそれぞれで置換された2個の重水素原子、
V.ロカント5および6のそれぞれで置換された2個の重水素原子、および
VI.ロカント2および3のそれぞれで置換された2または3個の重水素原子、を含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0084】
EE46.
I.ロカント10、41、および42のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
II.ロカント16、17、および18のそれぞれで置換された1個の重水素原子、
III.ロカント29、31、32のそれぞれで置換された2個の重水素原子、
IV.ロカント5および6のそれぞれで置換された2個の重水素原子、および
V.ロカント2および3のそれぞれで置換された3個の重水素原子、を含むEE1またはEE33に記載の類似体。
【0085】
EE47.ロカント4で置換された1または2または3個の重水素原子を含む、EE1~EE46に記載の類似体。
【0086】
EE48.少なくとも1つの重水素原子を含む式1の類似体であって、条件Aのもとで、各Yおよび各Wは、独立して、水素または重水素から選択され、各Rは、独立して、CH3、CH2D1、CH1D2、およびCD3から選択される、類似体。
【0087】
本出願人は、肝臓およびおそらく他の場所によるエラクリダールの代謝を解明するために、インビボおよびインビトロで一連の実験を行った。そのような代謝に対する様々な部位での重水素化の効果を調査するために、他の研究が行われた。これらの結果は、合理的な設計と組み合わされて、本出願人が、本出願人の知性における創造的な洞察を介して、非置換の親と比較して、以下の亜属を著しく安定にすることを考案することを可能にした。さらに、本発明者の知性では、これらの類似体は、部分的に、非置換の親分子の毒性に関与する代謝産物の形成を阻止する。
【0088】
EE49.Y14およびY15がそれぞれ重水素からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48に記載の類似体。
【0089】
EE50.W3およびW4がそれぞれ重水素からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48に記載の類似体。
【0090】
EE51.W1~W4がそれぞれ重水素からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48に記載の類似体。
【0091】
EE52.R2およびR3がそれぞれCD3であり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0092】
EE53.R2およびR3がそれぞれCD3からなり、Y14およびY15がそれぞれ重水素からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0093】
EE54.Y2が重水素であり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0094】
EE55.Y2が重水素であり、R2およびR3がそれぞれCD3からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0095】
EE56.R1がCD3であり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0096】
EE57.Y9およびY18がそれぞれ重水素からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0097】
EE58.Y2、Y9、Y18、およびW1~W4がそれぞれ重水素からなり、R1~R3がそれぞれCD3からなり、任意選択的に、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48~EE51のいずれか一つに記載の類似体。
【0098】
EE59.R1、R2、およびR3がそれぞれCD3からなり、Y14およびY15がそれぞれ重水素からなり、残りのY、W、およびRがそれぞれ重水素を含まない、EE48に記載の類似体。
【0099】
EE60.Y7およびY20を除くYがそれぞれ重水素からなり、Wがそれぞれ重水素からなり、R1~R3がそれぞれCD3からなる、EE48に記載の類似体。
【0100】
EE61.類似体が50%超の同位体純度で存在する、EE1~EE60のいずれか一つに記載の類似体。
【0101】
EE62.類似体が70%超の同位体純度で存在する、EE1~EE61のいずれか一つに記載の類似体。
【0102】
EE63.類似体が90%超の同位体純度で存在する、EE1~EE61のいずれか一つに記載の類似体。
【0103】
EE64.非置換エラクリダールと比較した場合に、ヒトにおけるインビボ血漿半減期、インビトロ半減期、AUC0-∞、およびCmaxのうちの1つ以上について、少なくとも20%の増加を示す、EE1~EE63のいずれか一つに記載の類似体。
【0104】
EE65.非置換エラクリダールと比較した場合に、ヒトにおけるインビボ血漿半減期、インビトロ半減期、AUC0-∞、およびCmaxのうちの1つ以上について、少なくとも40%の増加を示す、EE1~EE64のいずれか一つに記載の類似体。
【0105】
EE66.ヒトに投与された場合のインビボ血漿半減期、インビトロ半減期、AUC0-∞、およびCmaxのうちの1つ以上について、非置換エラクリダールと比較して、少なくとも40%の増加を示す、EE1~EE65のいずれか一つに記載の類似体
【0106】
EE67 ヒトにおけるインビボ血漿半減期、インビトロ半減期、AUC0-∞、およびCmaxのうちの1つ以上について、非置換エラクリダールと比較して、少なくとも60%の増加を示す、EE1~EE66のいずれか一つに記載の類似体。
【0107】
EE68.非置換エラクリダールと比較した場合に、ヒトにおけるインビボ血漿半減期、インビトロ半減期、AUC0-∞、およびCmaxのうちの1つ以上について、少なくとも100%の増加を示す、EE1~EE67のいずれか一つに記載の類似体。
【0108】
EE69.EE1~EE68に記載の類似体のいずれか一つの類似体を含む組成物であって、さらに治療剤を含む、組成物。
【0109】
EE70.EE69に記載の組成物であって、治療剤が、パクリタキセル、トポテカン、ダサチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、イミダゾテトラジン、イスピネシブ、パクリタキセル、タゼメトスタット、テモゾロミド、トポテカン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、タキソール、タキソール誘導体、ポドフィロトキシン、ミトキサントロン、アクチノマイシン、コルヒチン、グラミシジンD、アムサクリン、アバカビル、アンプレナビル、ラミブジン、リトナビル、ジドブジン、ロペラミド、モルヒネ、n-デスメチルロペラミド、およびパゾパニブからなる群から選択される、組成物。
【0110】
EE71.EE1~EE68のいずれか一つに記載の類似体であって、1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのうちの少なくとも1つの投与量レベルで、ヒト、ラット、またはマウスのうちの少なくとも1つに経口投与され、かつ、20mg/kgのEE78に記載の治療剤と経口的に共投与された場合、当該投与が、治療剤のKp、脳において、少なくとも20%の増加をもたらす、類似体。
【0111】
EE72.EE1~EE68のいずれか一つに記載の類似体であって、1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのうちの少なくとも1つの投与量レベルで、ヒト、ラット、またはマウスのうちの少なくとも1つに経口投与され、かつ、20mg/kgのエルロチニブと経口的に共投与された場合、当該投与が、エルロチニブのKp、脳において、少なくとも20%の増加をもたらす、類似体。
【0112】
重水素化の指定および濃縮および化学命名法
特に明記しない限り、位置が「D」または「重水素」として特定的に指定されている場合、その位置は、重水素の天然存在度(0.015%である)よりも少なくとも3000倍大きい存在度(すなわち、少なくとも45%の重水素の取り込み)で重水素を有することが理解される。
【0113】
本明細書で教示される本類似体は、本質的に、少量の同位体置換体を含むことになる(例えば、本明細書で置換されたとして教示されたもの以外のロカントで、それらの天然同位体存在度で存在する同位体を有する)。
【0114】
他の実施形態では、本発明の化合物は、少なくとも3500(指定された重水素原子で、それぞれ52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素取り込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素取り込み)、または、少なくとも6633.3(99.5%の重水素取り込み)の各指定された重水素原子に対する同位体濃縮係数を有する。
【0115】
本発明の類似体において、特定の同位体として明確に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すことを意味する。特に明記しない限り、位置が、明確に「H」または「水素」として指定されている場合、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素を有することが理解される。
【0116】
本発明の組成物は、分子の構成原子間で同位体変動が存在し得ることを除いて、任意選択的に、同一の化学構造を有する分子の集合体であってもよい。したがって、示された重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物が当業者には明らかであろうし、また、その構造中の指定された重水素の位置のうちの1つ以上で水素原子を有している、より少ない量の同位体置換体を含有するであろう。本発明の化合物におけるそのような同位体置換体の相対量は、化合物を製造するために使用される重水素化試薬の同位体純度および化合物を調製するために使用される種々の合成ス工程における重水素の取り込みの効率を含む多くの要因に依存するであろう。しかしながら、上記のように、全体として、そのような同位体置換体の相対量は、化合物の55%未満であろう。他の実施形態では、全体として、そのような同位体置換体の相対量は、化合物の50%未満、47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満であろう。
【0117】
特に明記しない限り、開示された化合物が立体化学を特定せずに構造によって命名または描写され、1つ以上のキラル中心を有する場合、化合物のすべての可能な立体異性体を表すことが理解される。
【0118】
本発明の類似体は、例えば、重水素置換またはその他の結果として、不斉炭素原子を含んでもよい。そのため、本発明の類似体は、個々の鏡像異性体、または二つの鏡像異性体の混合物として存在することができる。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物またはスカレミック混合物のいずれかとして、または、別の可能な立体異性体を実質的に含まない個々のそれぞれの立体異性体として存在することができる。本明細書で使用される「他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、他の立体異性体の25%未満、好ましくは他の立体異性体の10%未満、より好ましくは他の立体異性体の5%未満、そして最も好ましくは他の立体異性体の2%未満、が存在することを意味する。所与の化合物の個々の鏡像異性体を得る、または合成する方法は、当該技術分野で既知であり、最終的な類似体に、または出発物質もしくは中間体に実施可能なものとして適用することができる。
【0119】
エラクリダール合成
エラクリダールは、米国特許第6,248,891号に記載されているように合成することができる。当業者は、本発明の重水素化類似体が、適切な位置で重水素化された出発化合物を用いて開始することによって作製され得ることを容易に認識するであろう。
【0120】
本類似体の合成のための別の有用な方法は、一般に、Dornerらの方法(J Med Chem.2009 Oct 8;52(19):6073-6082)に従い、反応物は、適切な重水素置換で合成される。
【0121】
別の有用な合成方法は、Berndらによって記載されている(“Synthesis and Small-Animal Positron Emission Tomography Evaluation of [11C]-Elacridar as a Radiotracer to Assess the Distribution of P-Glycoprotein at the Blood-Brain Barrier.”Journal of medicinal chemistry 52.19(2009):6073-6082.PMC.Web.6 Mar.2018)。
[01]
本類似体の別の有用な合成方法は、一般に、
図2に示される方法に従うことである。
図3に示される反応物(例えば、化合物1、2、5、および6)は、
図1に示されるような最終的なエラクリダール類似体のものに従って番号付けされたロカントを有する。この方法は、実施例1の例によってさらに詳細に記載される。この方法を使用して、本明細書中に教示される任意のエラクリダール類似体は、適切に重水素化された化合物1、2、5、および6を選択することによって合成することができる。適切に重水素化された反応物の選択を助けるために、反応物中の原子は、エラクリダール中のロカント番号に従って番号付けされる(完成した合成生成物中のそれらの位置を示す)。
[02]
重水素は、また、当該技術分野で既知のプロトン-重水素交換法を用いて、選択的にまたは非選択的に、様々な位置に取り込まれ得る。
【0122】
医薬塩
本発明の類似体および組成物は、薬学的に許容される塩として調製することができる。
【0123】
薬学的に許容される塩を形成するために一般に使用される酸は、無機酸、例えば、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸、ならびに有機酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸、ならびに関連する無機酸および有機酸が挙げられる。そのような薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、および他の塩が挙げられる。一つの実施形態では、薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸のような鉱酸で形成されたものが挙げられ、特に、マレイン酸のような有機酸で形成されたものが挙げられる。
【0124】
薬学的に許容される塩は、本発明の化合物と塩基との塩であってもよい。例示的な塩基としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、およびリチウムを含むアルカリ金属の水酸化物、カルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物、アルミニウムおよび亜鉛のような他の金属の水酸化物、アンモニア、非置換またはヒドロキシ置換モノ-、ジ-またはトリ-アルキルアミンのような有機アミン、ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N-メチルアミン、N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ-、ビス-、またはトリス-(2-OH-(C1-C6)-アルキルアミン);N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、N-メチル-D-グルカミン、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジンおよびアルギニン、リジンなどのようなアミノ酸が挙げられる。
【0125】
組成物、剤形および担体
また、本発明は、有効量の本発明の化合物(例えば、本類似体)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。また、製剤の他の成分と適合性があるという意味で、担体(複数可)も許容される。
【0126】
本発明の医薬組成物に使用することができる薬学的に許容される担体、アジュバントおよび媒体としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムのような緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、プロタミン硫酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウム三ケイ酸、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、羊毛脂が挙げられる。必要であれば、医薬組成物中の本発明の類似体の溶解性および生物学的利用率は、当該技術分野で既知の方法によって増強され得る。1つの方法は、製剤中の脂質賦形剤の使用を含む。Oral Lipid-Based Formulations:Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),David J.Hauss,ed.Informa Healthcare,2007、およびRole of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery:Basic Principles and Biological Examples,Kishor M.Wasan,ed.Wiley-lnterscience,2006を参照されたい。
【0127】
任意選択的に、本組成物は、固体または液体の形態である。例えば、固体形態は、経口投与のために処方される錠剤または粒子含有カプセルを含む。別の例として、液体形態は、懸濁液またはエマルジョン、例えば、乳化剤またはポリソルベートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのような界面活性剤を含む(Sane R,Agarwal S,Elmquist WF.Brain Distribution and Bioavailability of Elacridar after Different Routes of Administration in the Mouse.Drug Metabolism and Disposition.2012;40(8):1612-1619.doi:10.1124/dmd.112.045930)。
【0128】
任意選択的に、本組成物は、約10mg~約20000mgのエラクリダール類似体、例えば、約25mg~約1000mgを含む。他の考慮される組成物は、本明細書に教示される投薬を提供するものである。
【0129】
任意選択的に、本組成物は、容器中に提供される。例えば、容器は、密封容器、シリンジ(例えば、IV投与用に構成された)、IVバッグ(例えば、化学療法剤と混合される)、ピル用に構成された薬局用バイアル(例えば、子供に安全な蓋(child-proof lid)を有する)、または液剤用に構成された薬局用バイアル(例えば、注射器による穿刺用に構成された密封された蓋を有する)であってもよい。
【0130】
任意選択的に、本組成物は、アッセイ型容器以外の(例えば、NMRチューブまたはキュベット以外の)容器内に提供される液体組成物である。
【0131】
一つの実施形態では、本組成物は、エラクリダール類似体および第2の治療剤、例えば、エラクリダール類似体との共投与のための、本明細書に教示される任意の第2の治療剤を含む。
【0132】
一つの実施形態では、本組成物は、本明細書で教示される任意の投与経路用に構成される。
【0133】
投与経路
当業者は、本明細書の教示により、本発明の類似体および組成物の投与経路を容易に認識するであろう。
【0134】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に好適なものを含む。特定の実施形態では、エラクリダール類似体は、経皮的に(例えば、経皮パッチまたはイオントフォレーシス技術を使用して)投与される。他の製剤は、錠剤、徐放性カプセル、およびリポソームなどの単位剤形で好都合に提示することができ、薬学分野で既知の任意の方法によって調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins,Baltimore,Md.(20th ed.2000)を参照のこと。
【0135】
特定の実施形態では、化合物は経口投与される。経口投与に好適な本発明の組成物は、所定量の有効成分を含有するカプセル、サシェ、または錠剤、散剤または顆粒剤、水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液、水中油滴型液体エマルジョン、油中水滴型液体エマルジョン、リポソーム内充填、またはボーラス等として提供されてもよい。ソフトゼラチンカプセルは、そのような懸濁液を含有するのに有用であり得、化合物の吸収速度を有益に増加させることができる。
【0136】
経口用の錠剤の場合、通常使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も添加することができる。カプセル形態での経口投与のため、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口投与される場合、活性成分は、任意選択的に、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。必要であれば、特定の甘味剤および/または香料および/または着色剤を添加してもよい。
【0137】
経口投与に適した組成物としては、風味付けされた基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント中に成分を含むロゼンジ(lozenge)、ならびにゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含むパスティル(pastille)が挙げられる。
【0138】
非経口投与に適した組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されたレシピエントの血液と等張化する溶質を含み得る水性および非水性の無菌注射溶液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数回投与容器、例えば密封アンプルおよびバイアルに提供され得、そして使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用の水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態に保存され得る。即時注射(extemporaneous injection)溶液および懸濁液は、無菌粉末剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0139】
このような注射溶液は、例えば、無菌注射用の水性または油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁剤を使用して、当技術分野で既知の技法に従って処方することができる。無菌の注射用調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射用溶液または懸濁液であり得る。使用することができる許容可能な媒体および溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発油は、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発油を使用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にポリオキシエチル化バージョンのオリーブ油またはヒマシ油などの薬学的に許容される天然油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、また、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含み得る。
【0140】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与用の坐剤の形態で投与してもよい。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固体だが直腸温度では液体であり、したがって直腸で融解して活性成分を放出する、好適な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような材料には、カカオバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入により投与され得る。そのような組成物は、医薬製剤の当該技術分野で既知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、生物学的利用率を増強する吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の当該技術分野で既知の可溶化剤または分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz J DおよびZaffaroni A Cの米国特許第6,803,031号を参照のこと。
【0142】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が局所適用によって容易に到達可能な領域または器官を含む場合に特に有用である。皮膚への局所適用のために、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解された活性成分を含む好適な軟膏で処方されるべきである。本発明の類似体の局所投与用の担体には、鉱油、液化石油、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解された活性化合物を含有する好適なローションまたはクリームを用いて処方することができる。好適な担体には、鉱油、ソルビタンモノステアリン酸、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物は、また、直腸坐剤製剤によって、または好適な浣腸製剤で、下部腸管に局所的に適用され得る。局所経皮パッチおよびイオントフォレーシス投与もまた、本発明に含まれる。
【0143】
本エラクリダール類似体の適用は、目的の部位で投与されるように局所的であり得る。目的の部位で、対象に組成物を提供するために、注射、カテーテル、トロカール、発射体、プルロニックゲル、ステント、徐放性薬物放出ポリマー、または内部アクセスを提供する他のデバイスの使用など、様々な技術を使用することができる。
【0144】
投薬
エラクリダール類似体は、特定の用量で提供され得る。投与量は、とりわけ、投与経路に依存する。日常的な方法論を使用して、当業者は、得られる血漿レベルに基づいて投薬量を容易に決定することができる。これを踏まえて、投薬は、10ng/mL超、または20ng/ml超、または40ng/ml超の、標的血漿Cmaxであるべきである。本発明により、これらの血漿レベルは、2gm未満または1gm未満または0.5gms未満のエラクリダール類似体の経口投与によって、達成することができる。
【0145】
共投与
本明細書の教示により、当業者は、本発明の類似体および組成物を第2の治療剤または薬剤と組み合わせることの価値を容易に認識するであろう。
【0146】
P-gpおよび/またはBCRP型のポンプは、ポンプで保護されていない非標的組織で許容曝露を超えていても、ポンプで保護された標的組織では、特定の治療薬(ポンプ基質であるものなど)の蓄積(または治療的曝露)を減少させることが知られている。そのような標的の非限定的な例として、脳および固形腫瘍がある。したがって、本発明の類似体および組成物は、そのような1つ以上の治療剤と共投与される場合に有用である。
【0147】
本類似体または組成物との組み合わせで有用な治療薬の例は、例えば、ダサチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、エルロチニブ、およびバンデタニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0148】
本発明の類似体または組成物との組み合わせで有用な治療薬の他の例は、例えば、クリゾチニブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、イミダゾテトラジン、イスピネシブ、パクリタキセル、タゼメトスタット、テモゾロミド、およびトポテカンなどの他の抗悪性腫瘍薬である。
【0149】
任意選択的に、第2の治療剤は抗腫瘍薬である。抗腫瘍薬の例としては、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、タキソールおよびその誘導体、ポドフィロトキシン、ミトキサントロン、アクチノマイシン、コルヒチン、グラミシジンD、アムサクリン、またはいわゆる多剤耐性(「MDR」)表現型を特徴とする上記の薬物と交差耐性を有する任意の薬物が挙げられる。
【0150】
本類似体または組成物との組み合わせで有用な治療薬の他の例は、アバカビル、アンプレナビル、ラミブジン、リトナビル、およびジドブジンなどの抗ウイルス薬および抗レトロウイルス薬である。
【0151】
本類似体または組成物との組み合わせで有用な治療薬の他の例は、例えば、ロペラミド、モルヒネ、およびn-デスメチルロペラミドなどのオピオイド受容体アゴニストである。
【0152】
別の実施形態では、本発明は、本発明のエラクリダール類似体および1つ以上の上に記載の第2の治療剤または治療剤のクラスの別個の剤形を提供し、ここで、エラクリダール類似体および第2の治療薬は、互いに関連している。本明細書で使用される「互いに関連する」という用語は、別々の剤形が一緒に包装されるか、さもなければ互いに取り付けられて、別々の剤形が一緒に販売および投与(24時間以内に、互いに、逐次的に、または同時に)されることが意図されているものと容易に分かるようにする。
【0153】
本発明によれば、1つ以上の治療剤およびエラクリダール類似体を、すべての薬物が対象において同時に存在するように、第2または第3または第4の薬物と共投与することができる。例えば、エラクリダール類似体は、第2の薬物の前、後、または同時に投与することができる。
【0154】
使用方法
一つの実施形態では、本発明は、本エラクリダール類似体を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0155】
別の一つの実施形態では、本発明は、本エラクリダール類似体と治療剤を共投与することを含む治療剤の有効性を高める方法を提供し、治療剤は、任意選択的に、P-gpポンプまたはBCRPポンプの基質である。
【0156】
例えば、本エラクリダール類似体は、多剤耐性癌細胞を化学療法剤に対して感作させるために使用することができる。
【0157】
任意選択的に、対象は哺乳動物またはヒトである。
【0158】
任意選択的に、投与は経口または注射である。
【0159】
任意選択的に、本エラクリダール類似体は、本明細書で教示される薬学的に許容される組成物の形態で投与される。
【0160】
任意選択的に、その方法は、第2の治療剤、例えば、本明細書で教示される第2の治療剤を共投与することを含む。
【0161】
優れた意外な特性
固形腫瘍や中枢神経系の部位などのポンプで保護された特定の標的組織への薬物の蓄積または分布を増加させる手段を提供する必要性が長く認識されてきたが、満たされていない。そのような蓄積または分布を制限するメカニズムはよく知られており、つまり、自然にみられる、または上方制御される特定の排出ポンプが存在し(特に特定の病状や薬物曝露によって誘発される)、そのような薬物を望ましい標的から排出する。発明者の知性により、今や、本類似体および組成物が、既知のポンプ阻害剤または以前に使用されたエラクリダール化合物および組成物よりも、著しく優れた特性を提供することを発見した。現在、ポンプで保護された標的領域への治療剤の蓄積または分布を増加させる様式で、本類似体および組成物を使用することが可能である。
【0162】
活性医薬成分の重水素化から得られる前述の予測不可能な結果により、本発明のエラクリダール類似体が、非置換エラクリダールと比較して、全身曝露および薬力学的プロファイルを改善できることは非常に驚くべきことである。エラクリダールの重水素化類似体の薬物動態の改善は、インビボでの半減期の改善、AUCとCmaxの増加、胃腸管と肝臓での初回通過代謝の減少、およびインビボまたはインビトロで示される代謝の減少(例、ミクロソームまたはスーパーソームアッセイ)のいずれかによって実証され得る。重水素化されたエラクリダールの類似体は、重水素化されていないエラクリダールと比較した場合に、ポンプで保護された組織における治療剤の曝露を増加させて、治療反応を改善することによって、共投与された治療剤の薬力学を改善することができる。
【0163】
したがって、ポンプで保護された組織における治療剤の治療レベルを達成および維持し、同時に、体循環およびポンプで保護されていない組織における治療剤のレベルを低下させることが可能になり、その結果、毒性および他の有害事象の減少がもたらされる。これは、低用量の治療剤を投与する一方で、標的組織で治療レベルを達成する能力による(さもなくば、毒性が高すぎて有用ではなくなる)。言い換えると、特定の治療剤の治療ウィンドウは存在しない。標的組織における治療レベルを得るためには、毒性レベルの治療剤を投与することが必要であろう。本エラクリダール類似体の優れた特性により、治療指数が大幅に向上する。
【0164】
一部の実施形態では、本類似体は、20%または40%を超える血清半減期の増加をもたらし得る(類似の用量の投与、および非置換エラクリダールの組成と比較した場合)。同様に、本類似体のAUCは、20%または40%以上増加する可能性がある。同様に、本類似体および組成物が、P-gpまたはBCRP様ポンプの基質である治療剤と共投与される場合、脳や固形腫瘍などのポンプで保護された組織におけるそのような治療剤のレベルを、20%または40%以上増加させることができる。
【0165】
例として、以下の化合物の脳内レベルの増加は、本類似体および組成物と共投与した場合、(同様の用量、投与、および組成の非置換エラクリダールとの共投与と比較した場合)、著しく増加し得る:ダサチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、およびバンデタニブ、クリゾチニブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、イミダゾテトラジン、イスピネシブ、パクリタキセル、タゼメトスタット、テモゾロミド、およびトポテカン、アバカビル、アンプレナビル、ラミブジン、リトナビル、ジドブジン、ロペラミド、モルヒネ、およびn-デスメチルロペラミド。
【0166】
上で考察したように、発明者の知性により、特定のエラクリダール代謝物が、エラクリダール投与の毒性作用の原因であり、本類似体はより安全で毒性が少ないことも発見された。
【実施例】
【0167】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、本発明を限定するものではない。さらに、データから収集された基礎となるメカニズムに関する以下の科学的考察も、本明細書に記載される発明の限定として意図されたものではない。
【0168】
実施例1:本類似体および組成物の合成
この例は、出発化合物の重水素化に基づいて、エラクリダール類似体、重水素置換体を製造するための合成方法を示している。合成と類似体番号は、
図4を参照のこと。
【0169】
ステップ1
12L三口フラスコに、化合物1(270.5g、1.618mol)、化合物2(357.8g、1.78mol、1.1当量)、K2CO3(447g、3.236mol、2.0当量)、Cu(20.6g、0.324mol、0.2当量)およびエタノール(2.7L)を入れ、得られた混合物を窒素下で1時間加熱還流した。反応の進行をLC-MSで確認した後、反応混合物を室温に冷却した。水(2.7L)を加えて、混合物をセライトパッドを通してろ過した。セライトを水(1.35L)で洗浄し、合わせたろ液を、15分かけて濃塩酸(約410mL)を添加して約pH2に調整した。得られた懸濁液を、10℃で1.5時間撹拌し、固体をろ過し、水(2.7L)で洗浄し、真空オーブンを使用して45℃で2日間乾燥させ、黄色の固体として化合物3(465g、約100%)を得た。
【0170】
ステップ2
アセトニトリル(4.0L)中の化合物3(498g、1.734mol)の懸濁液を撹拌しながら加熱還流した。懸濁液にPOCl3(355.5mL、3.814mol、2.2当量)を2時間かけて滴下した。混合物を2.5時間加熱還流し、次いで30℃に冷却した。混合物に水(3.0L)をゆっくり加え、得られた濃厚なスラリーを1.5時間加熱還流した。スラリーを、10℃に冷却し、ろ過した。固体を水(1.0L、2回)、アセトニトリル(1.0L、2回)で洗浄し、真空オーブンを用いて45℃で一晩乾燥させ、黄色の固体として化合物4(426g、91.3%)を得た。
【0171】
ステップ3:
12L三口フラスコに、化合物5(475g、2.065mol)、化合物6(474.8g、2.065mol)、K2CO3(314g、2.273mol)、KI(68.6g、0.413mol)およびDMF(2.5L)を入れ、得られた混合物を、70℃に加熱し、2.5時間撹拌した。LC-MSで反応の完了を確認した後、混合物を50℃に冷却し、メタノール(620mL)を加えた。次いで、混合物を30℃に冷却し、水(4.75L)を加えた。得られた懸濁液を10℃で1時間冷却した。固体をろ過し、水(2.5L、2回)で洗浄し、2日間風乾して、黄色の固体として化合物7(630g、89.1%)を得た。
【0172】
ステップ4
THF/エタノール(1:1で8L)中の化合物7(630g、1.84mol)の溶液に、Pd/C(10%、50%湿重量、30g)を加えた。混合物を15~20℃で4時間、水素(1気圧、バルーン)雰囲気下で撹拌した。反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、パッドをTHF(1.0L)で洗浄した。ろ液を真空下で3容量に濃縮し、ヘキサン(4.0L)を加えた。得られたスラリーを0℃に冷却し、1時間撹拌した。固体をろ過し、ヘキサン(500mL、2回)で洗浄し、一晩風乾して、オフホワイトの固体として化合物8(522g、90.8%)を得た。
【0173】
ステップ5
5L三口フラスコに、化合物4(250g、0.929mol、1当量)、化合物8(290g、0.929mol、1当量)およびDMF(2.5L)を入れ、得られた混合物を、それが透明な溶液になるまで、室温で攪拌した。溶液にTBTU(328g、1.021mol、1.1当量)、続いてトリエチルアミン(272mL、1.95mol、2.1当量)を加え、得られた混合物を窒素下、室温で一晩攪拌した。混合物を撹拌しながら水(7.5L)にゆっくり注ぎ、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌した。固体をろ過し、水(7L、2回)で洗浄した。こうして得られた固体を、真空オーブンを用いて50℃で2日間乾燥し、黄色の固体として509.0gの化合物9(97.3%)を得た。
【0174】
ステップ6
300.0g(0.532mol)の化合物9を酢酸(1.2L)に懸濁し、70℃に加熱した。得られた溶液を熱ろ過し、再び70℃に加熱した。次いで、予熱したエタノール(70℃、3.6L)を加えた。この溶液に、濃HCl(66.0mL、0.792mol、1.5当量)を30分かけて滴下した。得られた溶液を、結晶化が始まるまで(約20分)、70℃で撹拌した。懸濁液を、3時間かけて室温に冷却し、ろ過し、エタノール(1.8L、2回)で洗浄し、真空オーブンを使用して、60℃で週末の間乾燥させ、褐色の固体として化合物10(253.0g、79.2%)を得た。
【0175】
実施例2:重水素化エラクリダール類似体EE60の製造
EE60は、
図4に示される手順(
図5に続く)で合成される。
EE60の構造は次のように確認される:UltiMate3000LCシステム(Dionex、Sunnyvale、CA)と2996UVダイオードアレイ検出器(Waters)を備えるLCシステムを使用して、5μlのサンプルを測定する。サンプルを100x2mm(ID)3.5μmZORBAX Extend-C18カラム(Agilent、Santa Clara、CA)に注入する。溶出は、20%から95%Bまでの5分間の勾配を使用して、0.4mL/minの流速で行われる(移動相Aは水中0.1%のHCOOH(v/v)、移動相Bはメタノール)。95%Bを1分間維持した後、20%Bで再平衡化する。データ収集とピーク処理には、Chromeleon(v6.8)を使用する。
【0176】
実施例3:重水素化エラクリダール類似体EE59の製造
EE59は、
図6に示される手順で合成された。
得られた黄褐色の沈殿物をろ過によって除去し、ろ過ケーキを一晩乾燥させた(72mg)。LCMSによるろ過ケーキの分析は、複数の波長(215nm、220nm、254nm、280nm)で単一のピークの存在を示し、各ピークから、目的の生成物の存在が確認された(LC保持時間、5.3分、m/z=575[(M+H)+])。
【0177】
EE598の1H NMRにより、1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ12.3(s、1H)、10.6(s、1H)、8.51-8.46(m、2H)、7.80(d、J=8.8Hz、1H)、7.66(d、J=7.6Hz、2H)、7.45-7.38(m、2H)、7.32-7.25(m、3H)、6.66(d、J=6.8Hz、2H)、3.62(s、2H)、2.86(t、J=6.8Hz、2H)、2.66(m、4H)が明らかにされた。
【0178】
実施例4:本類似体および組成物の優れた特性の実証:インビボADMET
薬理試験は、Ward KWら(2001 Xenobiotica 31:783-797)およびWardとAzzarano(JPET 310:703-709、2004)に従って行われる。簡単に、本類似体は、1%ジメチルスルホキシドを含む10%水性ポリエチレングリコール-300(PEG-300)もしくは6%Cavitronの溶液で、または1%Tween80を含む0.5%水性HPMCの粉砕懸濁液で投与される。薬物投与後48時間までの様々な時間に血液サンプルを採取し、血漿サンプルを調製し、分析まで「70℃」で保存する。
【0179】
マウス本類似体は、4つのグループの動物に強制経口投与(10ml/kg投与量)によって投与される。3つのグループは3、30、または300mg/kgの懸濁液として本類似体を受け、4番目のグループは3mg/kgのCavitron中の溶液として本類似体を受ける。マウスでの採血は、投与後0.5、1、2、4、8、24、および32時間に、尾静脈を介して行う。
【0180】
ラット合計7グループの動物は、強制経口投与(10ml/kg)により本類似体を受ける。3つのグループは3、30、または300mg/kgの懸濁液として本類似体を受け、4番目と5番目のグループはそれぞれ3mg/kgのCavitron中またはPEG-300中の溶液として本類似体を受ける。肝門脈カテーテルが留置されているラットの6番目と7番目のグループは、それぞれ3または30mg/kgの懸濁液として、強制経口投与(10ml/kg)によって本類似体を受ける。ラットでの採血は、外側尾静脈を介して行われ、また、肝門脈カテーテルからもサンプルを採取する。血液サンプルは、投薬前と、投薬後5、15、30、および45分、ならびに1、1.5、2、3、4、6、8、10、24、および32時間に、取得する。
【0181】
イヌイヌは、本類似体を、懸濁液として3および30mg/kgの投与量で、ならびにCavitron中の溶液として3mg/kgの投与量で、3回の別々の機会に、洗浄(4ml/kg)により受ける。血液サンプルは、投与前と、投与後5、15、30、および、45分、ならびに1、1.5、2、3、4、6、8、10、24、32、および48時間に、橈側皮静脈から、および肝門脈カテーテルから得られる。
【0182】
サルサルは、本類似体を、懸濁液として3および30mg/kgの投与量で、ならびにCavitron中の溶液として3mg/kgの投与量で、3回の別々の機会に、強制経口投与(8ml/kg投与量)により受ける。血液サンプルは、投与前と、投与後5、15、および30分、ならびに1、1.5、2、4、6、8、10、24、32、および48時間に、留置カテーテルを介して大腿静脈から、および肝門脈の血管アクセスポートから得られる。
【0183】
ヒト健康なボランティアは、25mgから1000mgの範囲の用量で、本類似体を経口投与で受ける。血液サンプルを得て、投与後0、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、および48時間における類似体濃度を分析する。
【0184】
分析方法
本類似体は、アセトニトリルによる沈殿によってサンプルから単離され、大気圧化学イオン化インターフェース(475℃)と組み合わせたLC/MS/MSによって定量される。内部標準[アセトニトリル/10mMギ酸アンモニウム、pH3.0、95:5(v/v)中]を50μlのサンプルに加え、ボルテックスし、4000rpmで30分間遠心分離した。フォーカスモードで乱流技術(Cohesive Technologies、Franklin、MA)を用いた、HTS PALオートサンプラー(CTC Analytics、Zwingen、Switzerland)と組み合わされたAria TX2ハイスループット液体クロマトグラフィーシステムを使用して、上澄みを、LC/MS/MSシステムに注入した。移動相は、水中の0.1%ギ酸とアセトニトリル中の0.1%ギ酸の混合物からなる。乱流カラムは、0.5X50mm Cyclone Pカラム(Cohesive Technologies)と2X20mm、4μm Polar RP(Phenomenex、Torrance、CA)分析カラムを連結したものである。陽イオン多重反応モニタリングは、本類似体と内部標準の検出に使用され、選択されたプリカーサーイオンとプロダクトイオンのm/zは、それぞれ564と252である。検量線の(1/x)加重線形回帰分析を使用すると、2から10,000ng/mlの範囲の本類似体濃度について、分析物/内部標準のピーク面積比の線形応答が観察される。
【0185】
あるいは、本エラクリダール類似体の驚くべき優れた特性を実証するための有用な分析方法は、Stokvis et al,J Mass Spectr 2004:39:1122-1130に記載されている方法である。
【0186】
薬物動態データ分析
各動物の各分析物について濃度対時間のプロファイルを取得し、WinNonlin Professional version 3.3(Pharsight、Mountain View、CA)を使用して、非コンパートメント解析を実行し、曲線下面積(AUC)、Cmax、および他のパラメーターを回収する。用量正規化AUC(DNAUC)(分Xキログラム/リットル)は、AUCを用量(ミリグラム/キログラム)で割り、1000を掛けて求めらる。門脈と全身の両方のデータが利用可能な研究では、吸収と初回通過肝抽出は(Ward et al.,2001(Dug Metab Dispos 29:82-88.)に記載の通り推定される。
【0187】
結果
マウス、ラット、イヌ、サル、およびヒトの間には、かなりの種間変動がみられる。それにもかかわらず、発明者の知性の洞察によれば、本類似体は、同じ用量の(非置換)エラクリダールと比較した場合、1つ以上の以下の優れた特性を有する:(1)AUCの増加、(2)DNAUCの増加、(3)前全身クリアランスの低下、(4)Cmaxの増加、(5)Tmaxの増加、(6)半減期の増加、および(7)吸収率の増加。
【0188】
実施例5:本類似体および組成物の優れた特性の実証:インビトロ代謝
この研究は、肝代謝モデルにおけるエラクリダールの生体内変換を予測し、それを本類似体と比較することを目的としている。さらに、リトナビルなどのCYP450阻害剤が代謝変換に及ぼす影響を調べる。
【0189】
ある研究では、ヒト肝ミクロソーム系が使用されており、ミクロソームは商業的供給源(Thermo Scientific)から得られる。さらに、野生型、Cyp3aノックアウト、およびCyp3a KO由来の肝ミクロソーム、ならびにCYP3A4トランスジェニックマウスが準備される。
【0190】
Chengら(Nat Protoc 2009;4:1258-1261)およびHendrikxら(Int J Cancer 2013;132:2439-2447)に記載されているように、種々の濃度でのエラクリダールおよび本類似体の生物変換では、NADPH再生系においてミクロソームとともにインキュベートされる。
【0191】
エラクリダールおよび本類似体は、液体クロマトグラフィーと連結された紫外フォトダイオードアレイ(LC-UV-PDA)、蛍光検出(FD)およびLC質量分析を使用して、または実施例2に記載されているようにモニターされる。
【0192】
インビトロ代謝試験は、CYP3A4、リトナビル、ケトコナゾール、CYP3A4/CYP2C19、フルコナゾール、CYP2C19/CYP2A6、フルオキセチン、CYP2C8、クロピドグレルなどの阻害剤の非存在下および存在下で行われ、生物変換に関与する酵素を間接的に同定する。
【0193】
結果
結果は、発明者の知性の洞察を通して、次のことを示す:本類似体(例えば、特にEE49~60)は、非置換のエラクリダール親分子と比較して、1つ以上の以下の優れた特性を有する:(1)類似体の半減期が増加する、(2)1つ以上のマイナーな代謝物が本エラクリダール類似体のインキュベーション時に現れるが、割合と存在量は大幅に減少する、(3)エラクリダールサンプルのインキュベーション時に存在する特定の代謝産物は、本エラクリダール類似体サンプルには存在しないか、またはほとんど存在しない。エラクリダール類似体を様々なCYP阻害剤の存在下でインキュベートした場合の結果は、生体内変換が酵素プロセスに起因し、そのようなプロセスが、本明細書で教示される重水素化によって、防止または低減され得ることを示唆する。
【0194】
実施例6:本類似体および組成物の優れた特性の実証:ポンプで保護された標的部位への、共投与された治療剤の蓄積/分配の促進
この例では、P-gpおよびBCRPのデュアル基質であるエルロチニブと本類似体(非置換のエラクリダールとの比較した)の共投与を使用する。血液脳関門にP-gpとBCRPが存在することで、脳内のエルロチニブの生物学的利用率が大幅に制限されることがよく知られている。本エラクリダール類似体および非置換エラクリダールは、野生型ラットにエルロチニブとともに20mg/kgでそれぞれ経口投与される。ラットは、(1)本類似体、または(2)非置換エラクリダールのいずれかで、さまざまな用量(例えば、10mg/kg)で前処理される。エルロチニブの血漿および脳内濃度は、さまざまな時間に測定される(例えば、投与後30分、1、2、4、8、および12時間)。
【0195】
本発明者の知性の洞察により、本類似体は(例えば、特にEE49~EE60)、非置換エラクリダールの同様の投与と比較した場合、エルロチニブの脳濃度の顕著な増加を提供する。さらに、無置換のエラクリダールと比較した場合、毒性も本類似体とともに低下する。