(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光学デバイスにおける改善された写像性のための直接結合積層
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20240214BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20240214BHJP
G02B 1/11 20150101ALN20240214BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G02B6/00 331
G02B1/11
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020550769
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 US2019016652
(87)【国際公開番号】W WO2019182690
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-01
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518065991
【氏名又は名称】アデイア セミコンダクター ボンディング テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121979
【氏名又は名称】岩崎 吉信
(72)【発明者】
【氏名】ハーバ ベルガセム
(72)【発明者】
【氏名】カトカール ラジェッシュ
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド イリヤス
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-276940(JP,A)
【文献】米国特許第05818631(US,A)
【文献】特開2017-177519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 - 7/16
G02B 7/18 - 7/24
G02B 5/00 - 5/136
G02B 5/18
G02B 5/30 - 5/32
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/245 - 6/25
G02B 6/46 - 6/54
G02B 1/10 - 1/18
G02B 27/00 - 30/60
B29C 63/00 - 63/48
B29C 65/00 - 65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学的透明基板の第1の表面を平坦化することと、
第2の光学的透明基板の第2の表面を平坦化することと、
室温で前記第1の表面と前記第2の表面との間に直接結合を形成するために、前記第1の光学的透明基板の前記第1の表面及び前記第2の光学的透明基板の前記第2の表面を互いに接触させて配置して結合された構造体を形成することと、
前記第1の表面及び第2の表面上の1つ以上の反射コーティングの垂直に対して斜めの角度で
、前記結合された構造体を
六面体状に切断することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の光学的透明基板及び前記第2の光学的透明基板が、ガラス、石英ガラス、石英、サファイア、ホウケイ酸塩、プラスチック、又はセラミックからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の光学的透明基板及び前記第2の光学的透明基板が、光導波路、プリズム、コリメータ、レンズ、反射体、鏡、コンバイナ、ビームスプリッタ、及び回折格子からなる群から選択される光学デバイスの各層である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の光学的透明基板の前記第1の表面及び前記第2の光学的透明基板の前記第2の表面が、周囲室温で互いに接触して、前記第1の表面と前記第2の表面との間に自発的結合を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記自発的結合を形成した後、任意に、前記第1の光学的透明基板及び前記第2の光学的透明基板を約150℃の温度に加熱して、化学結合を強化することと、
前記第1の光学的透明基板及び前記第2の光学的透明基板を室温に冷却することと、を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の表面と前記第2の表面との間に前記直接結合を形成することが、前記第1の表面と前記第2の表面との間に耐熱界面を形成することを更に含み、前記直接結合が、前記第1の表面又は前記第2の表面と同じ熱膨張係数を有する前記耐熱界面を含み、前記直接結合が、高い耐熱性及び高い耐高温性を有する前記耐熱界面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の光学的透明基板の前記第1の表面及び前記第2の光学的透明基板の前記第2の表面を低い表面粗度まで平坦化することが、前記第1及び第2の表面を化学機械研磨(CMP)ツールで研磨することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化学結合の自発的形成に備えて、前記第1の表面及び前記第2の表面をプラズマプロセスで活性化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマプロセスが、窒素系エッチングプロセス又は反応性イオンエッチングプロセスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の表面又は前記第2の表面の一方又は両方の上に反射コーティングを堆積させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反射コーティングが、部分的に反射性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アルミニウム、銀、金、白金、水銀、フッ化マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、硫化亜鉛、五酸化タンタル、反射誘電体、及びブラッグミラーからなる群から選択される1つ以上の反射コーティングを堆積させることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記反射コーティングを酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素の薄層で被覆すること、及び前記第1の光学的透明基板及び前記第2の光学的透明基板上で、前記酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素のそれぞれの層間に自発的化学結合を形成することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記反射コーティングを、1つ以上の光学的透明誘電体の1つ以上の層で被覆することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記方法を繰り返して、光導波路を含む光学的透明基板のスタックを作製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
反射コーティングを前記スタックの少なくともいくつかの前記光学的透明基板に追加して、複数の埋め込まれた鏡面のアレイを有する導波路を作製することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1の平坦表面を含む第1の光学的透明基板と、
第2の平坦表面を含む第2の光学的透明基板と、
前記第1の光学的透明基板の前記第1の平坦表面の材料と前記第2の光学的透明基板の前記第2の平坦表面の材料との間の直接結合と、を含む、装置であって、
前記装置は、前記第1の平坦表面の垂直に対して斜めの形状を有し、斜めに
六面体状に切断された表面を含む、装置。
【請求項18】
前記第1の平坦表面の前記材料及び前記第2の平坦表面の前記材料が、前記直接結合にわたってそれ自体に結合された同じ材料を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記直接結合が、前記第1の平坦表面と前記第2の平坦表面との間に、直接酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素結合を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記直接結合が、室温で自発的に形成された固体-固体共有結合を含む、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスにおける直接結合積層に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)(1)の下、2018年10月31日に出願された米国非仮出願第16/176,191号、及び2018年3月20日に出願された米国仮出願第62/645,633号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光学構成要素は、ガラス、反射金属、透明ポリマー、誘電体、及び接着剤の様々な積層された組み合わせの光学層を含むことが多い。接合層又は積層体層の間の接着剤は、それ自体が光学的目的を果たさないが、それらの存在は、それらが光路内に追加材料を有害に導入するにもかかわらず当然と考えられている。光路内の材料の各追加的な変化は、輝度の損失又は解像度の損失など、何らかの種類の画像損失をもたらす。この画質の損失は、各新しい界面における光の単純な散乱によるもの、若しくは接着剤材料による光の部分的吸収によるものであり得るか、又は材料間の屈折角の変化によるものであり得るか、あるいはその両方によるものであり得る。
【0003】
所与の材料中で光が減速する量は、その屈折率によって説明される。材料の屈折率は、真空中の光の速度cを、材料を通る光の速度で割ったものによって定義される。光学的に高密度の媒体は、大きい屈折率を有する。光学装置では、異なるタイプのガラス、ポリマー、透明スピネルなどのセラミック、及び光学接着剤は、わずかに異なる屈折率を有し得る。したがって、光が1つの材料から別の材料へと通過する際に加速するとき、又はその逆で光が材料間で減速するとき、屈折角は、入射角よりも大きく(又は小さく)、光路に沿っていくらかの画像損失又は歪みを引き起こす。光学デバイス内の透明材料間の接着層は薄いが、ヒト観察者に対して画像が有していた可能性がある完全性をある程度を奪う。
【0004】
拡張現実(AR)及び仮想現実(VR)デバイス用のスマートグラス及びヘッドアップディスプレイ(HUD)は、導波管、プリズム、コリメータ、凸レンズ、反射体、凹面鏡、コンバイナ、及びビームスプリッタなどの多数の光学構成要素に依存して、スマートグラスにおけるニアアイオプティクス及びヘッドアップディスプレイにおける視覚的融合を実現する。光路は多くの積層光学構成要素を通過するため、従来の接着層の有害な効果が組み合わされる。
【発明の概要】
【0005】
スマートグラス及び他の光学デバイスにおける改善された写像性のための直接接合積層が提供される。例示的なプロセスは、光学面を一緒に積層するように平坦化及びプラズマ活性化し、次いで接着剤又は接着層なしに2つの表面間に直接接合を形成する。このプロセスは、より高い画像輝度、より低い光散乱、より良好な解像度、及びより高い画像忠実度を有する、改善された光学素子を提供する。直接結合はまた、従来の光学接着剤よりもはるかに高い温度に耐える耐熱界面も提供する。スマートグラス及びヘッドアップディスプレイ(HUD)のための改善された積層レンズ、鏡、ビームスプリッタ、コリメータ、プリズムシステム、光導管、及び鏡面導波管などの多くのタイプの改善された光学構成要素を製造するために、例示的なプロセスが使用され得、これらは、より良好な画質、及び従来の接着剤が従来の積層で使用されるときに、ヒト観察者に明らかである暗い視線の排除を提供する。
【0006】
この概要は、特許請求される主題の重要な又は必須の特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
以下、本開示の特定の実施形態を添付の図面を参照して説明するが、同様の参照番号は同様の要素を意味する。しかしながら、添付の図面は、本明細書に記載される様々な実装を示し、本明細書に記載される様々な技術の範囲を限定することを意味するものではないということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】接着層によって接合された従来の構成要素と比較して、光学的明瞭度のために直接結合光学層を有する例示的な構成要素を示す、接合光学構成要素の図である。
【
図2】従来の接着剤で接合された表面の代わりに光学層間の直接結合表面を有する、改善され得る例示的な鏡面光導波路の図である。
【
図3】接着剤材料で一緒に接着する代わりに一緒に直接結合された表面を有する光学構成要素を使用して、鏡面光導波路を作製する例示的な方法である。
【
図4】光学的に高密度の従来の接着剤の代わりに直接結合された表面を有する光学層を接合又は積層する例示的な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、光学デバイスにおける改善された明瞭度のための直接結合積層について記載する。一実装では、例示的な直接結合技術は、光学デバイスにおける画質の損失を引き起こす可能性がある光学層間の光学接着剤及び糊を最小限に抑えるか、又は排除することを目的とする。
一実装では、酸化ケイ素-酸化ケイ素結合などの表面間の直接酸化物結合、又は他の半導体-非金属の組み合わせを用いた表面間の直接結合が使用されて、光学的精度のために、ガラス又は他の材料で作製された光学層を接合又は積層する。二酸化ケイ素以外に、窒化ケイ素(ShN4)、酸窒化ケイ素(SiON)、炭窒化ケイ素(SiCN)、及び他の化合物などの他の材料が、直接結合に使用されてもよい。光学層の表面間の別個の接着剤又は接着層の排除は、光透過のより高い忠実度など、光学性能を改善する。光学面間の直接結合はまた、光学構成要素全体のサーマルバジェットを改善する、第1の光学面と第2の光学面との間の耐熱界面も提供する。2つのガラス片を一緒に取り付けるために従来使用されている糊及び接着剤は、例えば、より高い温度で、又は特定の光波長、特定の光強度のために、かつ高出力レーザで使用されるときに劣化し、したがって、従来の接着剤を含むこれらの従来の光学構成要素は、より低い動作温度及び低出力レーザに限定される。ZiBond(登録商標)ブランドの直接結合など、本明細書に記載される直接結合プロセスは、この従来の制約を排除する。耐熱界面を付随的に提供する直接結合は、平坦な光学面の一方又は両方が互いに接合されるのと同じ熱膨張係数を有し、耐熱界面を提供する直接結合はまた、従来の光学糊及び接着剤よりもはるかに高い耐熱性及びより高い耐高温性も有する。
【0009】
例示的な結合技術は、同じ材料で作製された2つの向かい合った表面間の分子が互いに直接結合されたときに、光学層間に最小限の界面を残すか、又は場合によっては界面を全く残さないことが可能である。接着剤の排除は、わずか数ミクロンの厚さであっても、従来のニアアイオプティクスのユーザに見える垂直線の隆起などのいくつかのデバイスの使用中の視覚的アーチファクトを低減し得る。例えば、例示的な方法は、導波路内に間隔をおいて反射鏡面を有する、スマートグラス及びHUDにおけるニアアイオプティクスに使用される様々な基本的な導波路を改善するために、直接結合を適用する。
【0010】
図1は、互いにセメント結合される代わりに一緒に直接結合された表面を有する、例示的な光学構成要素を示す。2つの光学ブランク50及び52は、従来、接着剤又は介在接着層54で一緒に接着される。直接結合界面100は、従来の接合されたブランク50及び52に見られる干渉し、光学的に有害な接着層54がないため、改善された光学特性を提供する、同等の光学ブランク102及び104を接合し得る。
【0011】
凸状要素58及び凹状要素60からなる色消しダブレット56などの色消しレンズは、従来、セメント62で一緒に接着される。色消しレンズは、青色及び赤色などの2つの波長を同じ平面上の焦点に合わせるように補正される。色消しダブレットにおける凸状要素58及び凹状要素60は、通常、クラウンガラス及びフリントガラスなどの異なる分散体を有する異なるガラスから作製される。1つのレンズ58の色収差は、もう1つのレンズ60の色収差によって相殺される。従来の設計は、セメント層を可能な限り薄く保持することによって、かつクラウンガラス及びフリントガラスに適合する屈折特性で、色収差及び球面収差の補正の計算に対する従来のセメント62の存在の影響を最小限に抑えようとしている。
【0012】
接合されている光学素子のガラス材料が、分子的に異なる材料(クラウンガラス及びフリングガラス)で作製されるにもかかわらず、直接結合界面100は、介在する従来のセメント62なしで、同等の色消しレンズ素子106及び108を接合し得る。直接結合界面100は、従来のセメント62を用いて作製されたものよりも良好な色消しダブレットを提供する。
【0013】
同様に、入射光も部分的に透過する部分的に鏡面の部分的反射表面64は、ビームスプリッタ、ニアアイオプティクス、及び干渉計などの多くの他のデバイスで使用される。ビームスプリッタは、エポキシ、ポリエステル、又はウレタン系接着剤で一緒に接着された2つの三角ガラスプリズムであり得る。接着層66の厚さは、入射光の半分を反射し、入射光の残りの半分を異なる方向に透過させるように計算され得る。いくつかのビームスプリッタは、半透鏡コーティングとして、蒸気からスパッタリングされたアルミニウム又は銀を有するガラス又はプラスチックを使用してもよい。ダイクロイック光学コーティングはまた、レーザ出力のために、又はある特定の波長を分離するために、ビームスプリッタで使用されてもよい。光の反射率対透過率の比は、入射光の波長に依存する。従来の設計は、部分的反射表面64に接着層66の特性を組み込もうと試みる場合がある。例示的な直接結合界面100は、いくつかの状況において、接着層66によってもたらされる障害物を除去することができる。例示的な直接結合界面100は、ビームスプリッタ及び他の光学デバイスのためのより単純かつより正確な部分的反射表面110を提供し得、これは製造を単純化し、従来の接着層66による光の不要な吸収を排除することができる。直接結合界面100は、直接結合界面100により光学的に純粋な界面を有する部分的反射表面110と共に含むことによって、積層鏡面を使用する光学デバイスにおける帯又は暗い線の知覚を排除することができる。
【0014】
双眼鏡における対のポロプリズム、又はシュミットペシャンプリズム68などのルーフプリズムなどのプリズム系は、従来、接着剤界面70を使用してもよく、又は空気界面を使用して、従来の接着剤界面70の使用を回避してもよい。例示的な直接結合界面100は、比較すると、同じガラス材料の直接結合表面間に、真に透明な界面を有するか、又は界面を全く有しない、プリズム12のより良好な組み合わせを提供することができる。
【0015】
直接結合界面100はまた、層状光学構成要素内の他のタイプの層及びコーティングを実装するために使用されてもよい。多くの場合、入光面及び出光面は、光損失を最小限に抑えるために光学的にコーティングされ、所与のコーティングは、良好な反射防止特性又は良好な反射特性を有し得る。例示的な直接結合界面100は、コーティングされた素子のガラス層と積層体スタックとの間に実装される内部反射(鏡面)コーティング及び反射防止コーティングに特に有用である。
【0016】
例示的な直接結合界面100はまた、金属ミラーコーティングではなく、誘電体コーティングが用いられるときにより優れた光学素子を提供する。例示的な直接結合界面100は、複数の誘電体ミラーの積層体スタックを提供し、アルミニウム又は銀金属コーティングのいずれよりもはるかに良好な可視光の反射率を提供することができる。
【0017】
例示的な直接結合接合及び積層方法は、多くの一般的及び特殊な光学素子及びデバイスに適用されて、ポリエステル、エポキシ、ウレタン、樹脂接着剤、カナダバルサム、並びに光学素子を結合するための他の1つ及び2つの構成要素接着剤54及び62及び66及び70などの、光学素子を一緒に結合するための従来の技術及び従来の材料に取って代わり、置き換えることができる。
【0018】
図2は、ユーザがレンズを通して観察するものと並んで、又はそれに加えて情報を追加する、ウェアラブルコンピュータグラス200を示す。そのようなスマートグラス200は、本明細書に記載される例示的な直接結合界面100を組み込む光学素子から利益を得ることができる。例示的な従来のスマートグラス又はそれらの従来の鏡面導波路は、Lumus(Rechovot,Israel)、Optinvent(Rennes,France)、及びJourney Technologies(Beijing,China)などの企業によって作製される。例示的な導波管アセンブリ202は、米国特許第6,829,095号及び同第8,432,614号(それらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、投影画像を映すために、一連の部分的反射表面204を使用し得る。部分的反射表面204は、外部のリアルタイム画像206が、スマートグラス200のレンズを通過しながら、同時に投影画像208をヒト観察者に反射することを可能にする。光学部品の寸法が比較的小さいため、レンズ及び複数のガラス層を一緒に積層するために使用される従来の光学接着剤は、画質を低減する光路内の余分な材料層を示す。従来の接着剤を用いたこの積層は、特に反射鏡面204の界面において、観察者にとって望ましくない視野内の知覚される可視線を作り出す可能性がある。直接結合界面100を作製するための本明細書に記載される例示的な積層プロセスは、従来の接着剤なしで光学層を一緒に積層し、より正確な画像及び視野内の人工的な線の排除をもたらすことができる。本明細書に記載される例示的な直接結合界面100は、透過(pass-through)画像206、及び部分的反射鏡面204のアレイからヒト観察者に反射された投影画像208の両方について、より良好な明瞭度を可能にする。
【0019】
ニアアイオプティクス用の反射鏡面204のアレイを使用する鏡面導波路202を作製するための例示的なプロセスでは、複数のガラス層又は部品210は、少なくとも部分的に反射性である層でコーティングされ、次いでスタック212に一緒に直接結合される。直接結合界面100は、各層210間に反射表面204を作り出すことができる。次いで、積層スタック212は、反射表面204の垂直に対して斜めの角度でダイスカットされて、投影画像208をヒトの眼に誘導するために有用な角度で置かれた反射表面204を有する、鏡面導波路202を生成する。
【0020】
図3は、直接酸化結合された反射表面を有する例示的な鏡面導波路202を作製する例示的なプロセスを示す。一実装では、完全又は部分的に反射性のミラーコーティング204の薄層を、ガラスウェハ又はパネル210上に堆積させる。次いで、厚さ約0.01~5.00pmである酸化ケイ素(例えば、S
1O
2)の薄層304を、ガラスウェハ又はパネル210上の薄いミラーコーティング204の上に堆積させる。ガラスパネル210を、それぞれの酸化物層304を介して次のガラスパネル210に直接酸化結合する。
【0021】
別の実装では、窒化ケイ素(ShN4)、酸窒化ケイ素(SiON)、又は炭窒化ケイ素(SiCN)の薄層を、S1O2層304の代替として堆積させることができる。別の実装では、上記層(S1O2、Si3N4、SiON、及び/又はSiCN)の組み合わせを、ガラスウェハ又はパネル210上の薄いミラーコーティング204の上に堆積させることができる。
【0022】
上記のコーティング及び結合工程を繰り返すことにより、マルチウェハ又はマルチパネルスタック212を作り出す。積層が垂直である場合、スタック212を、示されるように角度306で垂直にダイスカット又は個片化して、個々の鏡面導波路202を生成する。
【0023】
様々な実装では、例示的な装置は、第1の平坦表面を含む第1の光学的透明基板、第2の平坦表面を含む第2の光学的透明基板、及び第1の光学的透明基板の第1の平坦表面の材料と第2の光学的透明基板の第2の平坦表面の材料との間の直接化学結合を含んでもよい。
【0024】
第1の平坦表面の材料及び第2の平坦表面の材料は、直接結合にわたってそれ自体に結合された同じ材料を含んでもよい。直接結合自体は、第1の平坦表面と第2の平坦表面との間に直接酸化ケイ素-酸化ケイ素結合を含んでもよい。取付具又は導体などの金属構成要素が直接結合界面に関与している場合、直接結合は、ZiBond(登録商標)ブランドの直接結合又はDBI(登録商標)ブランドのハイブリッド直接結合などの室温で自発的に形成される接触結合であってもよく、両方の結合技術は、Invensas Bonding Technologies,Inc.(旧Ziptronix,Inc.)、Xperi companyから入手可能である(例えば、米国特許第6,864,585号及び同第7,485,968号(それらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0025】
直接結合プロセスの一部として、第1の平坦表面及び第2の平坦表面を、化学機械研磨(CMP)ツールによって平坦に研磨し得る。次いで、第1の平坦表面及び第2の平坦表面を、窒素系プラズマエッチングプロセス又は反応性イオンプラズマエッチングプロセスなど、直接化学結合の形成に備えてプラズマプロセスによって活性化し得る。
【0026】
直接結合は室温で形成され、次いで形成後、約150℃以上の高温でアニーリングすることによって強化することができる。
【0027】
鏡面導波路202として、例示的な装置は、第1の平坦表面及び第2の平坦表面の一方又は両方の上に少なくとも部分的に反射性のコーティング204を有する。完全又は部分的反射コーティングは、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、水銀、フッ化マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、硫化亜鉛、五酸化タンタル、反射誘電体、若しくはブラッグミラー、又は2つ以上のそのようなコーティングの組み合わせであり得る。上記リストに含まれない他の部分的又は完全反射コーティングもまた使用され得る。
【0028】
光学面間の積層結合は、直接酸化物結合又は直接酸化物-酸化物結合の前に、各反射コーティング204を被覆する酸化ケイ素又はShN4、SiON、及び/又はSiCNの1つ以上の薄層を含んでもよい。酸化物層(複数可)は、約0.01~5.00pmと超薄型であるため、得られる結合は、光学的に透明であると考えられ得るか、又は従来使用されているような光学的に高密度な接着剤のはるかにより厚い層に比べて大きい改善と考えられ得る。所与の装置はまた、所与の用途に望ましいように、各反射コーティング204を被覆する1つ以上の光学的に透明な誘電体の1つ以上の層を有してもよい。鏡面導波路202として、他の光学素子及びディスプレイ構成要素を追加して、スマートグラス、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、又は他の光学デバイスを作り出すことができる。
【0029】
図4は、従来の光学的に高密度な接着剤のより厚い層の代わりに直接結合を有する積層光学層を作製する例示的な方法400を示す。
図4では、個々の動作が別個のブロックとして示されている。
【0030】
ブロック402において、第1の光学的透明基板の第1の表面を低い表面粗度まで平坦化する。
【0031】
ブロック404において、第2の光学的透明基板の第2の表面も低い表面粗度まで平坦化する。
【0032】
ブロック406において、第1の光学的透明基板の第1の表面及び第2の光学的透明基板の第2の表面を互いに接触させて配置して、第1の表面と第2の表面との間に直接結合を形成する。
【0033】
例示的な方法400では、第1の光学的透明基板及び第2の光学的透明基板は、ガラス(例えば、石英、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、クラウンガラス、フリントガラスなど)であってもよいが、ポリマー、セラミック、及び他の材料でもあり得る。第1の光学的透明基板及び第2の光学的透明基板は、光導波路、プリズム、コリメータ、レンズ、反射体、鏡、コンバイナ、ビームスプリッタ、及び回折格子などの光学デバイスの各層であり得る。
【0034】
第1の光学的透明基板の第1の表面及び第2の光学的透明基板の第2の表面を、周囲室温で互いに接触させて、室温で第1の表面と第2の表面との間に結合を形成し、結合の形成後、プロセスは、任意に、第1の光学的透明基板及び第2の光学的透明基板、又はそれらの結合表面を、約150℃の温度に加熱して、結合を強化することを含んでもよい。その後のアニーリングプロセス又は時間の経過により、低い結合歪み、最小限の結合応力、及び増加した結合密閉性(水密性及び気密性)を伴い、結合を強化する。次いで、アニーリングが使用される場合、第1の光学的透明基板及び第2の光学的透明基板を室温に冷却する。
【0035】
例示的な方法400は、非透明又は不透明でさえある基板及び材料にも機能する。
【0036】
第1の光学的透明基板の第1の表面及び第2の光学的透明基板の第2の表面を低い表面粗度まで平坦化することは、第1及び第2の表面を化学機械研磨(CMP)ツールで研磨することを伴ってもよい。又は、表面を、それらの形成又は製造中に十分に平坦に作製してもよい。
【0037】
例示的な方法400はまた、室温における2つの表面間の結合の自発的形成に備えて、第1の表面及び第2の表面をプラズマプロセスで活性化することを含んでもよい。プラズマプロセスは、窒素系エッチングプロセス又は反応性イオンエッチングプロセスであってもよい。その後の熱処理及び時間は、結合強度を改善する。
【0038】
鏡面導波路を作製するために、方法400は、第1の表面又は第2の表面の一方又は両方の上に反射コーティングを堆積させることを含む。反射コーティングは、透過又はHUD用途のために部分的に反射性であってもよい。反射コーティングは、アルミニウム、銀、金、白金、又は水銀であってもよく、またフッ化マグネシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、硫化亜鉛、五酸化タンタル、反射誘電体、若しくはブラッグミラー、又は2つ以上のそのようなコーティングの組み合わせを層として使用してもよい。
【0039】
反射コーティングを、酸化物又は窒化物の薄層(厚さ0.01~5.00pm)によって被覆してもよい。自発的化学結合の形成は、第1の光学的透明基板及び第2の光学的透明基板上の薄い酸化物又は窒化物のそれぞれの層の直接酸化物-酸化物結合からなり得る。また、反射コーティング(複数可)を、1つ以上の光学的に透明な誘電体の1つ以上の層で被覆してもよい。
【0040】
このプロセスを繰り返して、光導波路又は鏡面光導波路を含む光学的透明基板のスタックを作製する。反射コーティングをスタックの少なくともいくつかの光学的透明基板に追加して、複数の埋め込まれた鏡面のアレイを有する導波路を作製する。
【0041】
直接結合、直接酸化物結合、又は直接酸化物-酸化物結合は、DBI(登録商標)ブランドの結合又はZiBond(登録商標)ブランドの直接酸化物結合であってもよく、いずれも、Invensas Bonding Technologies,Inc.(旧Ziptronix,Inc.)、Xperi companyから入手可能である(例えば、米国特許第6,864,585号及び同第7,485,968号(それらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照)。例えば、ZiBond(登録商標)ブランドの直接結合は、低温の均質(酸化物-酸化物)直接結合技術を使用して、同じ又は異なる熱膨張係数(CTE)を有するウェハ又はダイ間の低温ウェハ-ウェハ又はダイ-ウェハ又はダイ-ダイ結合技術である。ZiBond直接結合は、接着剤、陽極結合、共晶結合、及びガラスフリットなどの従来の結合技術に勝る複数の利点を提供する。結合を室温で実施し、これは、膨張係数(CTE)ミスマッチ、反り、及び歪みに関連する悪影響を排除することによって、全体的な収率及び確実性を強化する。より高いスループット及びより低い保有コストは、業界標準のウェハ位置合わせ及び結合機器を使用することによって実現される。結合中に高温又は高圧を必要とすることなく、ZiBondの直接結合製造プロセスのハイスループットは、大量の市場用途のための大量生産中の製造コストを最小限に抑える。ZiBondの直接結合処理中、従来の化学機械研磨(CMP)ツールを使用して、二酸化ケイ素又は炭窒化ケイ素など業界標準の誘電体表面を低い表面粗度まで研磨し、窒素系化学物質を、従来のプラズマエッチング処理を通して適用する。次いで、調製したウェハ表面を単純に整列させ、一緒に配置し、ダイ及び/又はウェハ間の化学結合の自発的な形成をもたらす。ケイ素の強度の約半分の結合強度を有する非常に協力で、歪みが低い結合を室温で得ることができ、例えば、ケイ素よりも強い確実な密閉結合を、位置合わせ及び配置ツールの外側で、バッチプロセスにおいて約150℃まで適度に加熱した後に得ることができる。
【0042】
明細書及び以下の特許請求の範囲において、「接続する(connect)」、「接続(connection)」、「接続された(connected)」、「接続して(in connection with)」及び「接続している(connecting)」という用語は、「直接接続している(in direct connection with)」又は「1つ以上の要素を介して、接続している(in connection with, via one or more elements)」ことを意味するために使用される。「結合(couple)」、「結合している(coupling)」、「結合された(coupled)」、「共に結合された(coupled together)」及び「結合された(coupled with)」という用語は、「共に直接結合される(directly coupled together)」又は「1つ以上の要素を介して共に結合される(coupled together via one or more elements)」ことを意味するために使用される。
【0043】
本開示は、限定された数の実施形態に関して開示されているが、本開示の利益を有する当業者は、所与の説明で可能な多くの修正及び変形を理解するであろう。添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に含まれるようなかかる修正及び変形を包含することが意図される。