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特許7436377ゲートされたCWおよび短パルスレーザーを使用したレーザー穿孔および機械加工の強化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ゲートされたCWおよび短パルスレーザーを使用したレーザー穿孔および機械加工の強化
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/0622 20140101AFI20240214BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20240214BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240214BHJP
   H01S 3/23 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
B23K26/0622
B23K26/382
B23K26/00 N
H01S3/23
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020550838
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019023523
(87)【国際公開番号】W WO2019183445
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】62/647,544
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520222092
【氏名又は名称】ローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ソニー・エス
(72)【発明者】
【氏名】ビュード,ジェフリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ガス,ゲイブ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ウェズリー・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ネグレス,ラルーカ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ルーベンチク,アレグザンダー
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ナン
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04870244(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0372445(US,A1)
【文献】米国特許第07173212(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を処理するためのレーザーシステムであって、
処理されている材料の表面のスポットで、第1の持続時間および第1の平均パワーの第1のレーザーパルスと、スポットに向けられており、第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスとを断続的に発生するように構成されたレーザーであって、第2の持続時間は、第1の持続時間よりも少なくとも1000倍短く、第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスが発生された後に発生される、レーザーを備え、
第1の持続時間がマイクロ秒以上であり、
第2のピークパワーが第1の平均パワーよりも1000倍以上大きく、第2のレーザーパルスが第1のレーザーパルスよりも低いエネルギーを有し、
レーザーからの第1のレーザーパルスは、材料の表面のスポットを少なくとも加熱して溶融プールを形成するように構成されており、第2のレーザーパルスは、溶融プールのキャビテーションを開始し、スポットからの材料排出を誘発する
レーザーシステム。
【請求項2】
レーザーは、
第1のレーザーパルスを発生するためのゲートされた連続波(CW)レーザーと、
第2のレーザーパルスを発生するためのパルスレーザーと
を備える、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項3】
レーザーを制御するためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項4】
CWレーザーおよびパルスレーザーを制御するためのコントローラをさらに備える、請求項2に記載のレーザーシステム。
【請求項5】
第1の持続時間は、10μsから500μsの持続時間を備える、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項6】
第2のレーザーパルスは、1psから100psの持続時間を有する、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項7】
第1のレーザーパルスは、第2のレーザーパルスが印加される前に溶融プールを形成するのに十分にスポットを加熱する、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項8】
材料を処理するためのレーザーシステムであって、
処理されている材料の表面のスポットで、第1の持続時間および第1の平均パワーの第1のレーザーパルスと、スポットに向けられており、第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスとを断続的に発生するように構成されたレーザーであって、第2の持続時間は、第1の持続時間よりも少なくとも1000倍短く、第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスがスポットで溶融プールを形成する前に発生される、レーザーを備え、
第1の持続時間がマイクロ秒以上であり、
第2のピークパワーが第1の平均パワーよりも1000倍以上大きく、第2のレーザーパルスが第1のレーザーパルスよりも低いエネルギーを有し、
レーザーからの第1のレーザーパルスは、材料の表面のスポットを少なくとも加熱して溶融プールを形成するように構成されており、第2のレーザーパルスは、溶融プールのキャビテーションを開始し、スポットからの材料排出を誘発し、第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスがスポットで溶融プールを形成する前に印加される、レーザーシステム。
【請求項9】
レーザーは単一のパルスレーザー増幅器を備える、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項10】
第1のレーザーパルスおよび第2のレーザーパルスを受信し、第2のレーザーパルスの波長を短縮するように修正するための周波数変換クリスタルをさらに備える、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項11】
第2のレーザーパルスのパルス長はナノ秒以下であり、第1のレーザーパルスのパルス長はマイクロ秒以上である、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項12】
第2のレーザーパルスのピークパワーは、第1のレーザーパルスの平均パワーよりも少なくとも1000倍高い、請求項1に記載のレーザーシステム。
【請求項13】
材料を処理するためのレーザーシステムであって、
処理されている材料の表面のスポットで、マイクロ秒範囲の第1の持続時間の第1のレーザーパルスを生成し、第1の平均パワーを有するゲートされた連続波(CW)レーザー、
第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスを生成するための短パルスレーザーであって、第2の持続時間は、第1の持続時間よりも少なくとも10倍短く、スポットに向けられており、第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスが発生された後に発生される、短パルスレーザーを備え、
第2のピークパワーが第1の平均パワーよりも10倍大きく、第2のレーザーパルスによって提供されるエネルギーが第のレーザーパルスによって提供されるエネルギーよりも低く、
ゲートされた連続波(CW)レーザーからの第1のレーザーパルスは、スポットで溶融プール形成まで材料を少なくとも加熱するように構成されており、短パルスレーザーは、溶融プール上のキャビテーションおよびスポットからの材料排出を誘発する
レーザーシステム。
【請求項14】
第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスを終了すると直ちに形成される、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項15】
第2のレーザーパルスは、第1および第2のレーザーパルスが重複するように、第1のレーザーパルスの終了前に形成される、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項16】
第1および第2のレーザーパルスは同じスポットサイズを有する、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項17】
第1の持続時間は、10μsから500μsのパルス持続時間を備える、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項18】
第2のレーザーパルスは、1psから100psのパルスを備える、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項19】
CWレーザーは、250Wから1500Wのレーザーパワーを備える、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項20】
第2のピークパワーは、1GWを超えるパワーを備える、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項21】
第2のレーザーパルスのパルス長はナノ秒以下であり、第1のレーザーパルスのパルス長はマイクロ秒以上である、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項22】
ゲートされた連続波(CW)レーザーおよび短パルスレーザーの各々は、所定周波数で動作する、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項23】
所定周波数は、少なくとも10Hzの周波数を含む、請求項22に記載のレーザーシステム。
【請求項24】
所定周波数は、50Hz以下の周波数を含む、請求項22に記載のレーザーシステム。
【請求項25】
ゲートされた連続波(CW)レーザーおよび短パルスレーザーのためのコントローラをさらに備える、請求項13に記載のレーザーシステム。
【請求項26】
材料を処理するためのレーザーに基づく方法であって、
レーザーを使用して、処理されている材料の表面のスポットで、第1の持続時間および第1の平均パワーの第1のレーザーパルスと、スポットに向けられており、第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスとを断続的に発生することであって、第2の持続時間が1psと100psの間であり、第2のピークパワーが第1の平均パワーよりも少なくとも1000倍大きく、第2のレーザーパルスが第1のレーザーパルスよりも低いエネルギーを有し、第1のレーザーパルスが発生された後に発生される、ことと、
第1のレーザーパルスを使用して、溶融プール形成まで材料の表面のスポットを少なくとも加熱することと、
第2のレーザーパルスを使用して、溶融プール上のキャビテーションおよび処理されている材料からの材料排出を誘発することと
を含む、レーザーに基づく方法。
【請求項27】
第1のレーザーパルスは、材料の表面のスポットに溶融プールを形成し、第2のレーザーパルスは、溶融プールからの溶融材料の排出を誘発する、請求項26に記載のレーザーに基づく方法。
【請求項28】
レーザーを使用することは、
ゲートされた連続波(CW)レーザーを使用して、第1のレーザーパルスを生成することと、
パルスレーザーを使用して、第2のレーザーパルスを生成することと
を含む、請求項26に記載のレーザーに基づく方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月23日に出願された米国特許仮出願第62/647,544号明細書の利益を主張する。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利に関する声明
米国政府は、米国エネルギー省と、ローレンスリバモア国立研究所の運営のためのローレンスリバモアナショナルセキュリティLLCとの間の契約番号DE-AC52-07NA27344にしたがって、本発明の権利を有する。
【0003】
本開示は、レーザー材料処理のためのシステムおよび方法に関し、より具体的には、レーザー加工効率を増加させるためにゲートされた(gated)連続波(CW)および短パルスレーザーの組み合わせを利用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
このセクションは、必ずしも従来技術ではない、本開示に関する背景情報を提供する。
【0005】
材料、特に金属の切断および穿孔は、業界において十分に確立されている。レーザー処理は通常、従来の処理よりも低速でコストがかかるので、通常は精度が要求される高価な用途で使用される。これはまた、短パルスレーザーのコストとスループットの両方の向上を動機づける、レーザー源開発の重要な推進力でもある。レーザー穿孔および切断の効率を向上させる願望はまた、アブレーションプロセス自体に含まれるレーザー材料相互作用を最適化する新しいアプローチの探求も推進する。レーザーパルスが金属表面と相互作用するとき、これは材料の薄い(10から100nm)層を蒸発させ、溶融層を残す。レーザーパルスのエネルギーの大部分は蒸気の加熱に使用されるので、蒸気として材料を除去するエネルギーコストは高い。短パルス(ピコ秒からフェムト秒)では、このより深い溶融層も通常は非常に浅い;これは臨界点を超えて加熱されたときの爆発沸騰によって放出されることが多いが、特にレーザーフルエンスが高い場合には、これはキャビテーションによって放出されることが可能である。爆発沸騰による材料除去もまた、1立方センチメートルの材料を除去するのに最大10ジュールかかり(η=10J/cm)、非効率的である。より短いパルスよりもレーザー強度がはるかに低い、より長いパルス(ナノ秒以上)では、蒸発および爆発沸騰が最小限に抑えられることができ、より多くのエネルギーがより深い溶融層を作り出すことに回される。溶融物の除去は、効率的なアブレーションをもたらす。しかしながら、溶融物は、表面張力によって周囲の材料にしっかりと保持され、高アスペクト比の穿孔によって作り出された深いチャネル内では、溶融物が除去されるのは非常に困難であり得る。この制限は、高圧ガスの使用を通じていくつかの工業プロセスで克服されることが可能であるが、このアプローチの有効性は、高アスペクト比チャネルで、超高速穿孔または切断で、厚い材料で、あるいはレーザーが表面に近接しないように何らかの隔離が要求される場合に、減少する。
【0006】
研究者は、ガスアシストを使用する代わりに、溶融物を放出するための第2のレーザーパルスの使用-初期二重パルス(double pulse)の概念を調査した。2パルス方式の使用は、C.Lehane,H.Kwok.“Enhanced drilling using a dual-pulse Nd:YAG laser”,Appl.Phys.A73.45.2001で提案された。この研究では、調整可能なタイミングで2つのパルスを生成するためにデュアルヘッドQスイッチNd:YAGレーザーが使用され:ほとんどまたは全く蒸発のないステンレス鋼(SS)に深い溶融物を作り出すために22.5Jms長レーザーパルスが使用され、最大溶融深度が到達された後に溶融表面と相互作用するために、第2の2.5J100μs長レーザーパルスがタイミング調整された。彼らは、この二重パルスの組み合わせが最大10倍まで除去を増加させられることを見いだした;彼らが報告したデータに基づいて、我々は、SSの直径550μm、深さ1mmのチャネルで、ηの1.5x10J/cmへの減少を推定する。また、パラメータの最適化および排出メカニズムは議論されなかった。これまで、このアイデアの実際の実装は、パルスレーザーの低効率、それらの比較的大きいサイズ、および関連する高コストにより、複雑である。これらの欠点は、このようなシステムの実用的応用を工業用途で実装することを困難にする。
【0007】
以前に提案された別のレーザー処理方式は、レーザーパルスのバーストまたはトレインを使用し、前のパルスからの残留熱を利用しようとした。Forsman et al.“Double-pulse machining as a technique for the enhancement of material removal rates in laser machining of metals”,Journal of Applied Physics 98.(2005)は、同じ532nm、3nsレーザー(最大150nsのパルス分離)からの二重パルスを使用する、SSおよびアルミニウム(Al)における除去プロセスを調査し、やはりパルスあたりの除去の向上を見いだした。報告されたデータに基づいて、我々は、2.4mJのパルス(~100J/cm)を使用して、深さ900μm、直径40μmのチャネルで、SSではη=7.5x10J/cm、Alでは2.4x10J/cmの効率を推定する。向上の一部は溶融物排出によるものであった可能性があるが、増加された効率は、第2のパルスと最初のパルスからの噴出物柱(ejecta plume)との相互作用に起因するプロセスによるものである。このタイプのシステムでは、通常、除去レートにおける利得は大きくない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】C.Lehane,H.Kwok.“Enhanced drilling using a dual-pulse Nd:YAG laser”,Appl.Phys.A73.45.2001
【文献】Forsman et al.“Double-pulse machining as a technique for the enhancement of material removal rates in laser machining of metals”,Journal of Applied Physics 98.(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、レーザーベースの加工システムの除去効率および浸透レートを増加させること、ならびにこのようなレーザーベースのシステムの効率に影響を及ぼす流体力学的溶融不安定性のよりよい理解を得ることに、強い関心が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その全ての範囲またはその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0011】
一態様では、本開示は、材料を処理するためのレーザーシステムに関する。レーザーシステムは、処理されている材料の表面のスポットで、第1の持続時間および第1の平均パワーの第1のレーザーパルスと、第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスとを断続的に発生するように構成された、レーザーを備え得る。第2の持続時間は、第1の持続時間よりも少なくとも1000倍短く、スポットに向けられており、第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスが発生された後に発生される。レーザーからの第1のレーザーパルスは、材料の表面のスポットを加熱するように構成されており、第2のレーザーパルスは、スポットから材料を排出する。
【0012】
別の態様では、本開示は、材料を処理するためのレーザーシステムに関する。レーザーシステムは、処理されている材料の表面のスポットで、第1の持続時間および第1の平均パワーの第1のレーザーパルスを生成するゲートされた連続波(CW)レーザーを備え得る。システムは、第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスを生成するための短パルスレーザーをさらに含むことができ、第2の持続時間は、第1の持続時間よりも少なくとも1000倍短く、スポットに向けられている。第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスが発生された後に発生される。CWレーザーからの第1のレーザーパルスは、材料の表面のスポットを少なくとも加熱するように構成されており、短パルスレーザーは、スポットから排出する。
【0013】
さらに別の態様では、本開示は、材料を処理するためのレーザーベースの方法に関する。方法は、処理されている材料の表面のスポットで、レーザーを使用して、第1の持続時間および第1の平均パワーの第1のレーザーパルスを断続的に発生することを含み得る。方法は、第2の持続時間および第2のピークパワーを有する第2のレーザーパルスを使用することであって、第2の持続時間は、第1の持続時間よりも少なくとも1000倍短く、スポットに向けられている、ことをさらに含み得る。短パルスのパルス長は約ナノ秒以下であり、長パルスのパルス長は約マイクロ秒以上でなければならない。短パルス部分のピークパワーは、長パルス部分の平均パワーよりも少なくとも1000倍高くなければならない。第2のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスが発生された後に発生される。方法は、第1のレーザーパルスを使用して、スポットの材料を少なくとも加熱することと、第2のレーザーパルスを使用して、スポットの材料の排出を誘発することとをさらに含み得る。
【0014】
さらなる適用分野は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。この概要における説明および具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0015】
本明細書で説明される図面は、全ての可能な実装ではなく、選択された実施形態の例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】材料処理のためにゲートされたCWレーザーおよび短パルスレーザーを採用する、本開示によるレーザー加工システムの一実施形態の高レベルブロック図である。
図1a】CWレーザーおよびパルスレーザーのパルスからの光が、材料サンプルの厚さを徐々に通過する際にどのようにして検出されるかを例示する、図1に示される2つのダイオードの信号パワー対時間のグラフである。
図2a】この例では100μsの周期を有するものとして示される、図1のゲートされたCWレーザーによって発生されたパルスを示すタイミング図である。
図2b】CWレーザーによって生成された各パルスの終わりにゲートされ、この例ではわずか28psの周期を有する、図1のパルスレーザーによって発生された短持続時間パルスを例示するタイミング図である。
図3a】316Lステンレス鋼の除去について、本開示によって生成された、除去レート対パルスレーザーフルエンスを例示するグラフを示す。
図3b】アルミニウム合金6061ステンレス鋼の除去について、本開示によって生成された、除去レート対パルスレーザーフルエンスを例示するグラフを示す。
図4a】アルミニウム合金6061の除去について、本開示によって生成された、除去レート対厚さを例示するグラフを示す。
図4b】316Lステンレス鋼の除去について、本開示によって生成された、除去レート対厚さを例示するグラフを示す。
図5】本開示のシステムを使用する処理サイクル中の5つの異なる時点で生じる溶融物排出を示す。上段は溶融層のキャビテーションを示し、中段は溶融液滴の破壊を示し、下段は溶融液ジェットの排出を示す。
図6a】レーザー穿孔チャネルを検査するために使用されるX線コンピューター断層撮影を例示する。
図6b】レーザー穿孔チャネルを検査するために使用されるX線コンピューター断層撮影を例示する。
図6c】レーザー穿孔チャネルを検査するために使用されるX線コンピューター断層撮影を例示する。
図7a】所望のパルス形状が単一のパルスレーザー増幅器によって生成される本発明の好適な実施形態を示す。
図7b】本発明の好適な実施形態によって生成されるパルス形状のクラスを示す。これらのパルスは、CWレーザーおよびパルスレーザーの組み合わせによって、または単一のレーザーによって生成されることが可能である。
図7c】所望の成形パルスの短パルス部分が短波長(<1μm)に周波数変換され、長パルス部分の波長は変換されずに1μmのままとなるように、増幅器の出力に周波数変換器を装備する単一のパルスレーザーを示す。
図7d】所望のパルス形状の長パルス部分および短パルス部分の両方がより短い波長に周波数変換され得るパルス形状を例示しており;ここで長パルス部分は、所望の長パルス部分と同じ平均パワーおよび短パルス部分と同様のピークパワーを有する超短パルスのパルストレインから成り;超短パルスのパルス長は、短パルス部分よりも短く、より低いパルスエネルギーを有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図にわたって対応する部分を示す。
【0018】
ここで、添付図面を参照して、例示的な実施形態がより完全に説明される。
【0019】
金属の溶融エンタルピーは、普通、蒸発エンタルピーよりも数倍小さい。パルスレーザーは普通、蒸発によって材料を除去し、それらの効率は本質的に低い。連続波(「CW」)レーザーは、材料を溶融するが、溶融物を除去することは、広範な蒸発によって生成される反跳運動量を要求する。表面張力を克服するために、蒸発は集中的でなければならず、作用を受けているスポットの大部分を専有する必要がある。この状況で、レーザー光は蒸気柱と相互作用し始め、これは金属表面を遮蔽し、材料除去の効率の低下につながる。また、蒸気柱内の屈折および散乱は、処理の効率および精度を悪化させる。
【0020】
本開示は広範に、様々なタイプの材料、特にアルミニウムおよびステンレス鋼のような金属に穴をさらに効率的に切削および/またはレーザー加工するための、長い低平均パワーパルスを提供するゲートされたCWレーザーと、短い高ピークパワーパルスを提供する短パルス(ナノ秒-ピコ秒)レーザーとの組み合わせの使用に関するが、その使用はこれらの材料に限定されない。本開示はまた、今説明されたゲートされたCWレーザーおよび短パルスレーザー方式の組み合わせによって生成されたパルスの組み合わせと実質的に同様の、成形パルスを生成するように構成された単一レーザーの使用にも関する:パルスは、長く低い平均パワーの第1の部分と、短くて高いピークパワーを有する第2の部分とを有する。両方の実施形態において、長パルスは通常、約1μsよりも長く、短パルスは通常、ナノ秒レジーム以下である。特に、短パルス部分のピークパワーは、長パルス部分の平均パワーの少なくとも1000倍であり得、短パルス部分の持続時間は長パルス部分の持続時間よりも少なくとも約1000倍短い可能性がある。好適な実施形態では、長パルス部分の持続時間は1μsを超え、短パルス部分の持続時間は1ns未満である。さらに、短パルス部分のピークパワーは、パルスの長い部分の平均パワーの約10倍であり得、持続時間は長パルス部分の持続時間よりも約10倍短い可能性がある。これらの目標強度および関連するパルス長は、長パルスおよび短パルスによって生成される物理プロセスによって設定される。たとえば、一実装では、長パルス部分の平均パワーは、サンプルを溶融するのに十分な、処理されているサンプルに集束したときの放射照度を提供するには十分だが、著しいプラズマを生成するほど高くはない;サンプル上の放射照度が約1MW/cm未満となるように、サンプル上の焦点スポット(focused spot)サイズが約200μmのとき、長パルスのパワーの典型値は、約250Wから1500W、より好ましくは約500Wから1kWであり得る。短パルス部分のピークパワーは、著しい量の溶融物がサンプルから放出されるように、長パルスによって生成された溶融物における不安定性を励起するのに十分な、処理されているサンプル上の放射照度を提供するのに十分でなければならず;短パルス部分のピークパワーの典型値は、サンプル上の放射照度が約100GW/cmより大きいように、サンプル上の焦点スポットサイズが約200μmのときに約1GWである。サンプル上の焦点スポットサイズが大きいときに両方のパルスに要求されるパワーがより大きいことは、当業者にとって明らかである。短パルスに要求されるピークパワーは、スポットサイズとスケールしない。この例では、短パルスのピークパワーは、長パルスの平均パワーの好ましくは少なくとも1000倍である。短パルスは長パルスの直後に続くことが好ましいが、必須ではない。長パルス部分と短パルス部分との間に短い遅延がある場合でも、本発明の所望の利点は依然として得られることが可能である。しかしながら、この遅延は、短パルス部分の到着前に長パルスによって実現される溶融が大幅に冷却しない程度に短くなくてはならない。スポットが大きいほど、この遅延は長くなる可能性がある。
【0021】
図1を参照すると、本開示の一実施形態によるシステム10が示されている。システム10は、ゲートされた連続波(CW)レーザー12および短パルスレーザー14を含むことができ、これらは両方とも、レーザー12および14の「オン」および「オフ」動作が所望の所定周波数で同期されるように、コントローラ16によって制御される。所定周波数は、かなり変化し得るが、一例では、非限定的に、約10Hzから約50Hzであり得る。この例のCWレーザー12は、約10μsから500μsの間、より好ましくは約100μsの持続時間を有するパルス12aを生成するように構成されているが、パルス持続時間は、特定の材料からの材料除去を最適化するために変化され得る。この例の短パルスレーザー14は、20psの持続時間を有するパルス14aを生成し、このパルス持続時間もまた、特定の用途の必要性に合うように変化され得る。両方のレーザーの波長は近IR領域(一般的な選択は1μm付近)であり得るが、短パルスレーザーでは、たとえば500nm付近の可視領域または355nm付近の紫外領域のより短い波長を使用して、しばしばよりよい性能が達成されることが可能である。我々は、より短い波長が、より強い衝撃を生成し、溶融不安定性をより良好に開始して、より容易に溶融層を除去することを見いだした。CWレーザーもまた、処理されている材料によってより簡単に吸収される、より短い波長を使用し得る;しかしながら、現在の技術を考えると、可視領域またはUV領域で動作する真のCWレーザーは、通常、IRで動作するものよりも低パワーであり、金属などの一般的な材料を溶融するのに適していない可能性がある。
【0022】
CWレーザーによって生成された溶融物の深度は、レーザーパワーおよび照射時間とともに増加する。最適なCWパルス持続時間が存在することは、明らかである。短いCWレーザー持続時間では、溶融深度が浅すぎて、全ての方式の利点を使用することができない。長パルスでは、溶融深度は短パルスレーザーが排出できるよりも深く、プロセス効率が落ちる。プロセスパラメータの最適な選択は、処理される材料および使用されるレーザーに依存する。我々の実験で使用したパラメータは、完全に最適ではないとしても、伝統的な単一レーザー方式と比較して大きな効率強化を提供する。
【0023】
任意選択的に、長パルス部分および短パルス部分を有する成形パルスを生成するために、単一のCWレーザーが使用されることが可能である。CWレーザービームを個別に短パルスビームにアラインする必要がないので、単一レーザーの使用が望ましい場合がある。単一レーザーソリューションのこの態様は、レーザーとサンプルとの間の隔離距離が広がるとき、または処理されているサンプルがより厚いときに、特に有用である。この場合、そのパルス幅は、連続するパルス対を生成するように制御され、一方は約10μsから500μs、より好ましくは約100μsの持続時間を有し、他方は約1psから100ps、より好ましくは約20psの持続時間を有し、これは100μsパルスの終了時に直ちに生成され、2つのパルスは所定周波数で繰り返される。しかしながら、実際には、ゲートされたCWレーザーを使用して第2のパルスからサンプル上で必須の目標パワーおよび放射照度を得ることは非常に困難である。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態は、図7aに示されるように、要求される持続時間およびパワーを有する長パルス部分100aおよび短パルス部分100bを有する成形パルスを生成するために、単一のパルスレーザー増幅器13を使用する。図7bは、長パルスのパルス長が短パルス部分のパルス長100aよりも少なくとも1000倍長く、短パルス部分のピークパワーが長パルス部分の平均パワーよりも少なくとも1000倍を超える場合を例示している。このような方式は、上記で説明された2レーザーアプローチと同じ利点を有する。たとえば、単一のパルスレーザーは、サンプル上の放射照度が約1MW/cm未満となるような、約10μsから500μsの持続時間、より好ましくは100μsの持続時間の低平均パワーを有する第1の長パルス部分に続いて、たとえば1psから100psの持続時間、より好ましくは20psの持続時間の高強度部分、およびサンプル上の放射照度が約100GW/cmとなるようなピークパワーを有する短持続時間高強度パルスを生成するように、構成されることが可能である。任意選択的に、周波数変換器13aは、図7cに示されるように、パルスの高ピークパワー短持続時間部分を増幅された光の高調波に変換するように、増幅器出力の後に含まれてもよい。一般的な例は、公称1μmの波長を有する光を生成するNdドープガラス増幅器の使用である。パルスの長い低平均パワー部は変換されず、1μm光として変換器を通過することになるが、パルスの高パワー部は、500nm付近の第2高調波または355nm付近の第3高調波のいずれかに変換されることが可能である。前述のように、より短い波長の光は、溶融不安定性を励起するのに1μm光よりも効果的であることがわかっている。加えて、任意選択的な周波数変換器13aを用いて構成されたシステムは、溶融物を作り出すために使用されたパルスの低平均パワー部を短波長に変換するためにも使用されることが可能である。これは、図7dに示されるように、所望の長パルス部分と同じ平均パワーを有し、短パルス部分402とピークパワーを有する超短パルス400aのパルストレインから成るように、パルスの低平均パワー部400を構成して、それが周波数変換されることによって実現され得る。超短パルス400aのパルス長は、各超短パルス400aが短パルス部分402のパルスエネルギーよりも低いエネルギーを含有するように、短パルス部分402よりも短くなければならない;このようにして、超短パルス400aは、平均的な意味でのみ作用し、加熱を生成するが、溶融不安定性を開始するのに十分な圧力は作り出さない。
【0025】
パルス繰り返し周波数が高い場合、残留温度の増大は、溶融スポットの周りに亀裂および熱影響ゾーンを引き起こす可能性がある。周波数が低い場合、パルスのトレイン間の相互作用は独立している。2つのレジーム間の遷移は、処理されている材料のタイプ、印加されている2つのパルスのスポットサイズ、および印加されているレーザーフルエンスの合計に依存する。所定のパルス繰り返し周波数はやはり、約10Hzから約50Hzの間であり得る。10Hzから50Hzの周波数の使用において、穿孔レートは影響を受けなかった。
【0026】
デュアルレーザーおよび単一レーザーの両方の実装が、本開示によって企図されている。図1をさらに参照すると、ゲートされたCWレーザー12からのパルス12aは、適切な第1の光学素子(たとえば、レンズ)18を使用して集束され、次いでミラー20またはその他の適切な光学素子を使用して、ステージ24上に支持された材料サンプル22に反射されてもよい。ステージ24は、XおよびY平面内で移動可能であってもよく、その移動は、コントローラ16および/または別個のコントローラによって制御される。適切な第2の光学素子(たとえば、別個のレンズ)26は、パルス14aをサンプル22に向けるために追加のミラーまたは適切な光学素子28を使用する前に、パルスレーザー14からのパルス14aを集束するために使用され得る。光学素子28は、パルス14aの向きを変えながら、パルス12aがそれを通過することを可能にする。ビームスプリッタ31は、CWレーザーおよび短パルスレーザーからの信号を分離するために使用される。任意選択的に、パルスが材料サンプル22の厚さを通して働く際にパルス12aを提供しているビームの強度を検出するために、ダイオード30が使用されてもよい。任意選択的に、同様の方法で、パルス14aが材料サンプル22の厚さを通して働く際にパルス14aを生成しているビームの強度を検出するために、ダイオード32が使用されてもよい。図1aは、曲線30aおよび32aを例示し、曲線30aはダイオード30からの出力を表し、曲線32aはダイオード32からの出力を表す。曲線30aおよび32aは、実質的に同じ強度対時間プロファイルを有し、パルスが材料サンプル22を穿孔する際のパルス12aおよび14aの強度を示す。セクション34aおよび34bは、パルス12aおよび14aが材料サンプル22を完全に通過したことを示しており、したがってパルス12およびパルス14aについて、最大測定強度が到達されている。
【0027】
システム10の重要な態様は、短持続時間パルス14aが各パルス12aの持続時間の終わりに生成されるように、ゲートされたCWレーザー12およびパルスレーザー14によって発生したパルスのタイミングをコントローラ16が制御することである。これは、図2aおよび図2bに示されている。より好ましくは、短持続時間パルス14aは、パルス12a終了時に直ちに、または各パルス12aの終了のすぐ前に存在するように、発生される。これに関して、最初のパルス12aが終了する直前に、2つのパルス12aおよび14aのわずかな程度の重複が存在し得る。パルス12aおよび14aを生成するために使用されたビームのスポットサイズは変化し得るが、パルス12aおよび14aに対して同じスポットサイズを使用することは、システム10の実装を簡素化し得ると期待されるが、本開示は同じスポットサイズの使用に限定されるものではない。一例では、スポットサイズは、パルス12aおよび14aの両方で直径150μmであり得る。ここでの実験で使用されたスポットサイズは、両方とも150um1/e2で同様であるが、2つのビームスポットサイズの間の最適な関係は、材料および材料厚に依存する。ゲートされたCWレーザー12からのパルス12aは、サンプル22の表面に溶融プールを作り出す。溶融温度および深度は、CWレーザー12のパワーおよびCWパルス12aのスポットサイズによって制御される。パルスレーザー14からのパルス14aは、衝撃を作り出して溶融プール上でキャビテーションを開始し、これにより、パルス14aおよび12aが衝突しているスポットから(すなわち、溶融プールから)溶融材料の粒子を排出するように動作する。
【0028】
特定の実験では、約100μsのCW持続時間が使用された。短パルス14aが到着したときに所望の程度の溶融プールを実現するように、CWレーザー12パワーが選択された。金属の薄層の蒸発は、溶融物を排出する反跳運動量を生成する。溶融物の粘度は低く、溶融動力学には影響を及ぼさない。材料を排出する短パルス14aのエネルギーは、CWレーザーパルス12aのエネルギーと比較すると小さい。たとえば、持続時間100usで450WのCWレーザーは45mJであり、短パルスエネルギーは3mJである。複数の二重パルス(すなわち、1つのパルス12aの直後に1つのパルス14aが続く)を印加することにより、高アスペクト比(>10)の穴を穿孔することができ、アスペクト比は、穴の深度対直径の比率として定義される。直径150μmの穴加工の実験データは、アルミニウム(Al)およびステンレス鋼の穴の深度に応じての除去レートを示す、図2に提示されている。
【0029】
図3は、様々なCWレーザーパワー12のレベルのパルスレーザーフルエンス14に応じての材料の除去レート(μm/パルス)をグラフで例示している。図3aに示される例はAl合金6061を表し、図3bはSS316Lステンレス鋼を表す。溶融を生じるために必要なCWレーザーのパワーは、サンプル材料に依存する。100μsのCWパルスの溶融プール形成の閾値は、SSでは~50W、Alでは~300Wと推定される。CWレーザーパワーが溶融閾値の上であると、穿孔の平均除去レートは大幅に向上する。450WのCWレーザーパワーを使用してSSを穿孔する場合は>10x、Alでは>5xの強化が観察される。
【0030】
図4aから図4bは、CWパルス(450W)だけを使用したとき(曲線100)、パルスレーザーからのパルス(30J/cm)だけを使用したとき(曲線102)、ならびにCWレーザー12およびパルスレーザー14の両方を使用したとき(曲線104)の、Al合金6061の材料厚に応じての材料の除去レート(図4a)をグラフで例示する。図4bは、316Lステンレス鋼の材料除去レートを例示しており、ここで曲線110はCWレーザーのみによって生成された除去だけであり、曲線112はパルスレーザーだけによって行われた除去を表し、曲線114は、本明細書に説明されるようなCWレーザー12およびパルスレーザー14の両方を使用した材料除去を表す。より長い持続時間の、より低パワーの短パルスレーザーが使用されるとき、除去強化は減少および/または消失することに留意するのが重要である。たとえば、我々は、20psの短パルスレーザーが、同じ波長および目標に対する平均インフルエンスを有する7nsのパルスレーザーに置き換えられると、約250μmよりも厚い金属サンプルの除去強化が消失することを見いだした。20psパルスでのピークパワーは1GWを超えており、ゲートされたCWレーザー12からの平均パワーの10倍よりも高い。対照的に、7nsのパルスレーザーによって生成されたパルスでのピークパワーは1MW程度であり、ゲートされたCWレーザーからの平均パワーの約2000倍に過ぎない。7nsレーザーのピークパワーは、250μm厚までのサンプルの除去を強化することがわかっているが、前述のように250μmよりも厚いサンプルの除去は強化しなかったので、有用性の境界にある。明らかに、短パルス部分のピークパワーが高いほど、除去効率は高くなる。所望の長パルス平均パワーおよび持続時間では、これは、長パルス部分の平均パワーに対する短パルス部分のピークパワーの比率が高いほど、除去が高くなることを意味する。我々は、この比率が少なくとも1000倍であると判断した。したがって、上記を要約すると、短パルスのパルス長はおよそナノ秒以下であり、長パルスのパルス長はおよそマイクロ秒以上でなければならない。短パルスのピークパワーは、長パルス部分の平均パワーよりも少なくとも1000倍高くなければならない。
【0031】
図5は、6つの異なる時点で生じる溶融物排出を詳細に示す、ハイスピードビデオからのフレームを例示する。本質的に、パルス12aは急速に溶融プールを形成し、パルス14aは、溶融プールから溶融材料の少なくとも一部を排出するために「ハンマー」のように作用する。トップのタイムシーケンスに示されるように、シートが空中でひっくり返る際に、材料がサンプル表面から排出されるのが見られる。これは、溶融層のキャビテーションの結果である。レーザーアブレーションクレーターの縁にクラウンを形成し、後に液滴へと破壊するキャピラリー波(surface capillary wave)励起(中央のパネル)によって、溶融物を排出させることも可能である。次に別のパルス12aが生成されると、材料サンプル22の表面下のより深いところに溶融プールが形成され、パルス14aは再び溶融プールから材料の一部を排出する。後のレーザーショットでの部分的に穿孔されたチャネルの内部からの材料除去は、普通、1つまたは2つの形態の組み合わせで出現する。1つは、最初のショットでも時々見られるクラウンの形成および破壊である。もう1つは、底部のタイムシーケンスに示される、キャピラリー波動力学による可能性が高い、チャネルから排出された液体のジェットである。このプロセスは、パルス12aおよび14aが交互に印加(またはわずかな程度の重複で印加)されると継続し、材料サンプル22内の非常に深い深度で溶融プールが形成されるが、その間パルス14aは、溶融プールに印加されるたびに溶融プールから材料を排出し続ける。最終的に、溶融プールからの溶融材料が完全に排出された、材料サンプル22の厚さ全体を通して穴が形成される。
【0032】
図6aから図6cは、レーザー穿孔チャネルを検査するために使用されるX線コンピューター断層撮影を例示する。ゲートされたCW+短パルスレーザーアプローチ(図6a1および図6a2)、短パルスのみ(図6b)、およびゲートされたCWのみ(図6c)を使用して生成された2mm厚SSプレートの典型的なチャネルの3Dレンダリングおよび側面図が示されている。ゲートされたCW+短パルスレーザーアプローチは、平滑であって穴の内部および外周の周りに亀裂および粗さがほとんど見られないチャネル壁を穿孔した。平均除去レートが桁違いに遅いので、このサンプルでは部分的穿孔チャネルのみが生成されるが、短パルスレーザーのみで生成されたチャネルも全体的に良好な品質である。ゲートされたCWレーザー穿孔チャネルの方が非常に粗く、著しい付随的損傷を伴う。異なる厚さのサンプルにおいておよびAlにおいても生成されたチャネルは、同様のモルフォロジーおよび品質を有するように見える。
【0033】
上記の説明の一部は、短パルスレーザー14からの短パルスが到着する前に材料が溶融して、第1のCWレーザー12によって溶融プールを形成すると説明しているが、これは全ての用途で必要とされる訳ではないことも、理解されるだろう。たとえば、金属以外の特定の材料では、CWレーザー12は材料を加熱し得るがその材料の実際の融点まで加熱できない可能性があり、その後短パルスが印加され得る。言い換えると、金属を除く特定の材料では、必ずしも第2のパルスを印加する前に溶融プールを作り出す必要はない。
【0034】
したがって、本開示は、レーザー加工における溶融除去の新規で効率的な方法を提供する。周期的に変調されたCWレーザーおよび短パルスレーザーを使用することは、溶融物排出を実現するために表面波を励起および増幅させる。本明細書に開示される方法は、材料の排出で吸収されるエネルギーがかなり少ない従来の穿孔および切断レーザーシステムよりも低い温度で動作し得る。CWレーザー12の使用は、伝統的に材料除去で使用されてきた、以前使用されていたパルスレーザーよりも桁違いに効率的である。加えて、CWレーザーは、パルスレーザーよりもコンパクトであり、容易にパワー/エネルギーがスケールされることができる。パルスレーザーからの適時の短持続時間パルスによって機械加工プロセスを増強することで、CWレーザーだけを使用してできるよりもさらに効率的かつクリーンに、キャピラリー波、および溶融プールからの材料の排出を励起する。本明細書に開示される方法は、ハイスピードアスペクト比穴加工のために、およびレーザー切断動作における切断効率をさらに増加するために、適用されることが可能である。
【0035】
したがって、本開示は、ゲートされたCWレーザーおよびパルスレーザーの使用を組み合わせたレーザーシステムに関する。パルスレーザーは、反跳運動量を生成し、溶融物排出を開始する。溶融運動のエネルギーは、溶融熱エンタルピーよりもはるかに小さい。ほとんど全てのエネルギーは、高い処理効率を提供するゲートされたCWレーザーによって供給される。本開示は、単一のパルスレーザーシステムによって達成可能なものと比較して、最大100倍、または可能であればさらにそれ以上の除去レートの増加を提供し得る。
【0036】
実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的のために提供されてきた。包括的であること、または本開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されるものではなく、特別に図示または説明されていなくても、適用可能であれば、置き換え可能であり、選択された実施形態で使用されることが可能である。同じことが、多くの方法で変更されてもよい。このような変形例は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、このような全ての修正は、本開示の範囲に含まれることが意図される。
【0037】
例示的な実施形態は、本開示が徹底的になり、その範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。本開示の実施形態の徹底的な理解を提供するために、特定の構成要素、装置、および方法の例など、多数の特定の詳細が明記されている。特定の詳細が採用される必要はないこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具現化され得ること、およびどちらも本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことは、当業者にとって明らかとなるだろう。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は、詳細に説明されていない。
【0038】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される際に、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形も含むように意図され得る。用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」、および「有している(having)」は、包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。本明細書に説明される方法ステップ、プロセス、および動作は、実行の順序として具体的に識別されない限り、必ずしも議論または例示された特定の順序でのこれらの実行を要求するように解釈されるべきではない。追加または代替のステップが採用され得ることもまた、理解されるべきである。
【0039】
要素または層が別の要素または層に対して「上に(on)」、「係合されて(engaged to)」、「接続されて(connected to)」、または「結合されて(coupled to)」いると呼ばれるとき、これは直接その別の要素または層の上に、係合されて、接続されて、結合されていてもよく、または介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、要素が別の要素または層に対して「直接的に上に(directly on)」、「直接的に係合されて(directly engaged to」、「直接的に接続されて(directly connected to)」、または「直接的に結合されて(directly coupled to)」いると呼ばれるとき、介在する要素または層が存在してはならない。要素間の関係を説明するために使用される他の単語も、同様に解釈されるべきである(たとえば、「間(between)」に対して「直接的に間(directly between)」、「隣接(adjacent)」に対して「直接的に隣接(directly adjacent)」など)。本明細書で使用される際に、用語「および/または(and/or)」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0040】
本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために第1、第2、第3などの用語が使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、またはセクションを別の領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用され得る。「第1(first)」、「第2(second)」、およびその他の数値の用語などの用語は、本明細書で使用される際に、文脈によって明確に示されない限り、シーケンスまたは順序を意味するものではない。したがって、以下で論じられる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと呼ばれることが可能である。
【0041】
「内側(inner)」、「外側(outer)」、「下方(beneath)」、「下(below)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示されるように、別の要素または特徴に対する1つの要素または特徴の関係を説明するための説明の簡素化のために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示される配向に加えて、使用中または動作中の装置の異なる配向を包含するように意図され得る。たとえば、図中の装置がひっくり返された場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として説明された要素は、他の要素または特徴の「上」に配向されることになる。したがって、例示的な用語「下」は、上と下の両方の配向を包含することができる。装置は、別途配向されてもよく(90度回転またはその他の配向)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は相応に解釈され得る。
図1
図1a
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d