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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20240214BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020565965
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019064149
(87)【国際公開番号】W WO2019229217
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】1808844.3
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519340400
【氏名又は名称】インペリアル・カレッジ・イノベーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】ラン、 リンシン
(72)【発明者】
【氏名】ミチソン、 ポール
(72)【発明者】
【氏名】イェイツ、 ディビッド
(72)【発明者】
【氏名】アルダハー、 サマー
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500505(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/147293(JP,A1)
【文献】特表2011-507481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在を識別する方法であって、前記方法は、
前記ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するステップと、
前記ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる波形を測定するステップと、
前記波形をデジタル化して波形ベクトルを生成するステップと、
前記波形ベクトルに分類子適用するステップと、
前記分類子の数値出力に基づいて、前記ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップと、
を含み、
前記波形は、前記ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタのドレインで測定されるドレイン-ソース波形であり、
前記トランジスタは、前記ワイヤレス電力伝送デバイスのインバータの一部であり、前記インバータは、前記ワイヤレス電力伝送デバイスに交流電流「AC」電力を供給する、方法。
【請求項2】
前記数値出力は、前記波形ベクトルと重みベクトルとの内積を求め、前記波形ベクトルと前記重みベクトルの前記内積にバイアス値を加算することによって算出される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、前記数値出力の兆候に基づく、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記波形ベクトル及び前記重みベクトルはそれぞれ、少なくとも2次元である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記波形ベクトルは、前記波形の第1のピークの値に対応する第1の成分、及び前記第1のピークに隣接する前記波形の第2のピークの値に対応する第2の成分を含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、前記ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を低減するステップを更に含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
電子受信機デバイスに電力をワイヤレス伝送するためのワイヤレス電力伝送デバイスと、
前記ワイヤレス電力伝送デバイスに交流電流「AC」電力を供給するように構成されたインバータであって、トランジスタを含むインバータと、
アナログ-デジタルコンバータ「ADC」及びプロセッサを含むデジタルサブシステムと、
を備える、ワイヤレス電力伝送システムであって、
前記ADCは、前記トランジスタのドレインで測定されるドレイン-ソース波形をデジタル化して波形ベクトルを生成するように構成されており、
前記プロセッサは、
前記波形ベクトルに分類子適用し、
前記分類子の数値出力に基づいて、前記ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定する
ように構成されている、
ワイヤレス電力伝送システム。
【請求項8】
前記ワイヤレス電力伝送デバイスは、前記電子受信機デバイスに電力を誘導伝送するための誘導電力伝送デバイスである、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記デジタルサブシステムは、前記ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、前記ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を低減するように更に構成されている、請求項7または8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤレス電力伝送システム、及びワイヤレス電力伝送システムと共に使用する方法に関する。特に、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在を高精度で識別することが可能な方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力を電子デバイスにワイヤレス転送するためのワイヤレス電力伝送(Wireless Power transmission:WPT)デバイスが知られている。WPTデバイスと電子デバイスの間に物理的な接続は必要ない。WPTは便利であり、ある特定のケースでは必要になることもある。近くのデバイスに電流を誘導するために磁界を使用する磁気誘導WPTデバイスが知られている。
【0003】
WPTデバイスの課題は、ワイヤレス電力伝送範囲内に位置する外部物体において不要な誘導加熱を引き起こし得ることである。外部物体は、WPTシステムから電力を引き出し、有用な出力なしにシステムの性能を劣化させる物体として定義される。したがって、外部物体内で誘導された電流は、有用な出力なしに(例えば、ジュール加熱を通じて電力を消費することによって)システムの効率が低減するため、外部物体は寄生物体と呼ばれることがある。
【0004】
例えば、コインがワイヤレス電力転送デバイスに置かれた場合、コイン内の誘導された渦電流は、コインの加熱を引き起こす。この加熱効果は、電力(他の場合には、例えば電子デバイスを充電するために使用され得る)を引き出し、また、コインを取り扱う場合の火傷の原因となることがある。実際、WPTシステムには、2つの安全上の問題、すなわち、比吸収率(SAR)、及び例えばコイン内の発生した磁界及び電界の誘導加熱効果がある。
【0005】
したがって、ワイヤレス電力転送の効率、安全性、及び回路保護を共に向上させるために、外部物体への電力転送を防止することが可能なWPTシステムを提供することが望ましい。
【0006】
外部物体の存在を検出するための追加のセンサを含むWPTシステムが知られている。しかし、これは、システムのコストと複雑性の両方を増大させる洗練されていない解決策である。
【0007】
特許文献1は、送信機デバイスの電力負荷を測定するシステムを提供する。このシステムでは、システムの受容電力をシステムの伝送電力と比較する。受容電力と伝送電力の差が既定のしきい値を超えた場合、電力を遮断することができる。本発明の発明者らは、特許文献1のシステムの外部物体検出の精度は低いことを提供することを発見した。
【0008】
したがって、外部物体を高精度で検出することができる、簡潔で低コストのWPTシステムを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第9735585号
【文献】米国特許出願公開第2017/0324277号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明者らは、ワイヤレス電力転送デバイスに関連付けられる電圧波形を観察することによって、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力転送範囲内に外部物体が存在するか否かを判定できることを発見した。更に、発明者らは電圧波形を解析することによって、そのような判定の精度及び信頼性のレベルを高くすることが可能であることを発見した。
【0011】
このため、一般的に、本開示は、ワイヤレス電力転送デバイスに関連付けられる電圧波形の解析に基づいて、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力転送範囲内の外部物体の存在を検出する方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様において、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在を識別する方法であって、ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するステップと、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる波形を測定するステップと、この波形に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップと、を含む、方法が提供される。
【0013】
波形は、電圧波形であり得る。しかし、当業者には理解されるように、波形は同様に、電流波形であり得る。したがって、本開示は、いずれのタイプの波形も包含する。ただし、簡潔かつ明確にするために、電圧波形について以下に説明する。しかし、読者に理解されるように、電圧について言及する場合、電圧は同様に、電流と置換され得る。
【0014】
本方法は、ワイヤレス電力受信機とワイヤレス電力送信機との間のフィードバックループの参照を必要としない。したがって、本方法は、簡潔性が向上した、すなわち、設計の複雑性を低減したものである。送信機と受信機と間のフィードバックループは必要ない。
【0015】
第1の態様の任意選択の特徴は以下の通りである。
【0016】
上述したように、外部物体は、代替的に、寄生物体、例えば寄生電流が内部で誘導され得る物体と呼ばれることもある。
【0017】
ワイヤレス電力伝送デバイスは、例えば電子受信機デバイスに電力を誘導伝送するための誘導電力伝送デバイスであり得る。
【0018】
電圧波形は、ソース-ドレインのドレイン電圧波形であり得る。ソース-ドレイン電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタのドレインで測定され得る。トランジスタは、ワイヤレス電力伝送デバイスに交流電流「AC」を供給するインバータ、例えば、ワイヤレス電力伝送デバイスの誘導コイルにAC電力を供給するインバータの一部であり得る。当業者には理解されるように、電圧波形は、インバータ内の(トランジスタドレイン以外の)他のポイントで測定され得る。
【0019】
代替的には、電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたインバータ内で、例えば、インバータ内の任意の場所で測定され得る。インバータは、EFクラスのインバータであり得る。代替的には、Eクラスのインバータであり得る。
【0020】
電圧波形をデジタル化して電圧波形ベクトル(例えば、電圧波形がソース-ドレイン波形ベクトルの場合には、ソース-ドレイン電圧波形ベクトル)を生成してもよく、電圧波形ベクトルに分類子を適用され得る。したがって、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、分類子の数値出力に基づき得る。換言すると、本方法は、(電圧波形に対応する)数値出力に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定され得る。例えば機械学習プロセス(例えば、第3の態様の機械学習プロセス)を通じて、分類子を事前定義され得る。代替的には、「現場で(in the field)」算出/較正/再較正され得る。したがって、分類子は、機械学習分類子であり得る。分類子は、線形であり得る。
【0021】
いくつかの実施例では、電圧波形の基本周波数の少なくとも2倍のサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化され得る。このようにすると、電圧波形の各サイクルについてのデジタルデータポイントは少なくとも2つとなる。
【0022】
他の実施例では、(電圧波形の周波数と正確には等しくないと過程すると)電圧波形の基本周波数の2倍よりも低いサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化され得る。例えば、電圧波形の基本周波数よりも高い又はそれよりも低いサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化され得る。そのような実施例では、電圧波形の各サイクルについてのデジタルデータポイントは、1つ以下となり得る。
【0023】
分類子が、第1の態様において電圧波形をデジタル化する同じタイミングを使用して、得られる(又は「学習される」)と仮定すると、電圧波形ベクトルに分類子を適用することによって、外部物体が存在するか否かを正確に判定することが可能になる。
【0024】
数値出力は、電圧波形ベクトルと重みベクトルとの内積を求め、電圧波形ベクトルと重みベクトルとの内積にバイアス値を加算することによって算出されてもよい。重みベクトルとバイアス値とは、まとめて分類子とみなされ得る。
【0025】
本明細書で使用すると、(線形)分類子は、データのセットを2つのグループに分ける(2次元における)線、(3次元以上における)平面、又は(3次元以上における)超平面である。線/平面/超平面の第1側のデータポイントは、第1のグループに属し、直線/平面/超平面の第2側のデータポイントは、第2のグループに属する。線の第1側のポイントは「外部物体が存在しない」と分類され得、線の第2側のポイントは「外部物体が存在する」と分類され得る。線/平面/超平面は、例えば機械学習プロセスを通じて、電圧波形ベクトルのトレーニングセットに従って事前定義され得る。代替的には、例えば機械学習プロセスを使用して、「現場で」算出/較正/再較正され得る。
【0026】
重みベクトルは、データポイントを第1のグループ(例えば「外部物体が存在しない」グループ)と、第2のグループ(例えば「外部物体が存在する」グループ)とに分ける線/平面/超平面を定義することができる。重みベクトルは、例えば機械学習プロセスを通じて、電圧波形ベクトルのトレーニングセットに従って事前定義され得る。代替的には、例えば機械学習プロセスを使用して、「現場で」算出/較正/再較正され得る。
【0027】
バイアス値はスカラーであり、ベクトル空間(すなわち、重みベクトル及び/又は電圧波形ベクトルに対応するベクトル空間)の原点から直線/平面/超平面のオフセットを定義する。バイアス値は、例えば機械学習プロセスを通じて、電圧波形ベクトルのトレーニングセットに従って事前定義され得る。代替的には、例えば機械学習プロセスを使用して、「現場で」算出/較正/再較正され得る。
【0028】
ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、数値出力の兆候に基づき得る。換言すると、本方法は、(電圧波形に関する)数値出力の兆候に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定され得る。例えば、分類子の数値出力が正である場合は、外部物体が存在すると判定され得る。分類子の数値出力が負である場合は、外部物体が存在しないと判定され得る。
【0029】
実際には、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、対応するベクトル空間(すなわち、電圧波形ベクトルと同じ次元数を有するベクトル空間)上に電圧波形ベクトルをプロットするステップと、電圧波形ベクトルがベクトル空間の事前定義された線/平面/超平面の第1側にある場合に、外部物体が存在すると識別するステップと、含み得る。
【0030】
電圧波形ベクトルは、少なくとも1次元であり得るか、又は少なくとも2次元であり得る。重みベクトルは、少なくとも1次元であり得るか、又は少なくとも2次元であり得る。電圧波形ベクトルは、重みベクトルと同じ次元数を有し得る。
【0031】
電圧波形ベクトルは、電圧波形の第1のピークの値に対応する第1の成分、及び第1のピークに隣接する電圧波形の第2のピークの値に対応する第2の成分を含み得る。
【0032】
ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、本方法は、ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を低減することができる。代替的には、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、本方法は、ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を実質的に低減(アイドル状態まで低減)され得る。代替的には、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、本方法は、ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を遮断してもよい(例えばスイッチを切ってもよい)。
【0033】
第2の態様において、第1の態様の方法を実行するワイヤレス電力伝送システムが提供される。本ワイヤレス電力伝送システムは、電子受信機デバイスに電力をワイヤレス伝送するためのワイヤレス電力伝送デバイスと、第1の態様の方法を実行するように構成された(デジタル)サブシステムとを備える。
【0034】
特に、第2の態様では、受信機デバイスに電力をワイヤレス伝送するためのワイヤレス電力伝送デバイスと、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる波形を測定し、この波形に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するように構成されたデジタルサブシステムと、を備える、ワイヤレス電力伝送システムが提供される。
【0035】
第1の態様と同様に、波形は、電圧波形又は電流波形であり得る。しかし、明確かつ簡潔にするために、電圧波形についてのみ以下に説明する。
【0036】
第2の態様の任意選択の特徴は以下の通りである。
【0037】
デジタルサブシステムは、電圧波形をデジタル化して電圧波形ベクトルを生成するように構成されたアナログ-デジタルコンバータ「ADC」と、電圧波形ベクトルに分類子を適用するように構成されたプロセッサ(すなわち、計算を実行することが可能なデバイス/構成要素、例えばコンピュータ)と、を備えることができ、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、(電圧波形に対応する)分類子の数値出力に基づく。
【0038】
いくつかの実施例では、ADCは、電圧波形の基本周波数の少なくとも2倍のサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化され得る。このようにすると、電圧波形の各サイクルについてのデジタルデータポイントは少なくとも2つとなる。
【0039】
他の実施例では、ADCは、(各サンプリングポイント間の間隔が、電圧信号の周期又は周期の整数倍と等しくないと仮定すると)電圧信号の基本周波数の2倍未満のサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化され得る。例えば、電圧波形の基本周波数よりも高い又はそれよりも低いサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化され得る。ADCが電圧波形の基本周波数の波形よりも低いサンプリング周波数で電圧波形をデジタル化する実施例では、電圧波形のサイクルの各サイクルについて、デジタルデータポイントが1つ未満となる。高いサンプルレートで動作するADCは高価なので、これは有利である。したがって、ADCが動作すべきサンプルレートを低減すると、ワイヤレス電力伝送システムのユニットコストが低減される。
【0040】
分類子が、第1の態様において電圧波形をデジタル化する同じタイミングを使用して、得られる(又は「学習される」)と仮定すると、電圧波形ベクトルに分類子を適用することによって、外部物体が存在するか否かを正確に判定することが可能になる。
【0041】
プロセッサは、第1の態様の方法ステップを実行するように構成され得る。
【0042】
第2の態様のプロセッサは、電圧波形ベクトルと重みベクトルとの内積を算出し、電圧波形ベクトルと重みベクトルとの内積にバイアス値を加算することによって、数値出力を算出するように構成され得る。
【0043】
ワイヤレス電力伝送デバイスは、電子受信機デバイスに電力を誘導伝送するための誘導電力伝送デバイスであり得る。
【0044】
電圧波形は、ソース-ドレイン電圧波形であり得る。本システムは、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタを更に備えてもよく、ソース-ドレイン電圧波形は、トランジスタのドレインで測定される。この場合、ADCは、ドレイン-ソース電圧波形をデジタル化してドレイン-ソース電圧波形ベクトルを生成するように構成され得る。
【0045】
インバータは、ワイヤレス電力伝送デバイスに電源(例えば、AC電力)を供給するように構成され得る。インバータは、トランジスタを含み得る。インバータは、EFクラスのインバータであり得る。代替的には、Eクラスのインバータであり得る。
【0046】
代替的には、電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたインバータ内で、例えば、インバータ内の(インバータ内のトランジスタのドレインであっても、ドレインでなくてもよい)任意の場所で測定され得る。
【0047】
サブシステム(つまり、コンピュータ)は、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、ワイヤレス電力伝送デバイスに供給される電力を(例えば、インバータによって)低減するように更に構成され得る。代替的には、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、供給される電力を実質的に低減しても(例えば、アイドル状態まで低減しても)よい。代替的には、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、供給される電力を完全に遮断しても(例えば、スイッチを切っても)よい。
【0048】
第3の態様において、第1又は第2の態様で使用するための分類子(例えば、事前定義された分類子)を取得する方法が提供される。更に、第3の態様は、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在を識別する際に使用するための分類子(例えば、事前定義された分類子)を取得する方法を提供し、この方法は、a)電圧波形ベクトル(例えば、ソース-ドレイン波形ベクトル)のトレーニングセットを取得するステップであって、各電圧波形ベクトルは電圧波形に対応し、各電圧波形ベクトルは、外部物体が存在する又は外部物体が存在しないと適宜分類される、トレーニングセットを取得するステップと、b)トレーニングセットに対応するベクトル空間を第1のグループ及び第2のグループを分ける線/平面/超平面を定義するステップと、を含む。換言すると、線/平面/超平面は、トレーニングセットに従って定義される。
【0049】
別の態様では、電圧波形ではなく、電流波形が使用される。
【0050】
第3の態様の任意選択の特徴は以下の通りである。
【0051】
ベクトル空間は、電圧波形ベクトル(単数又は複数)及び重みベクトルと同じ次元数を有してもよ。
【0052】
電圧波形ベクトルのトレーニングセットを取得するステップは、a1)ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するステップと、a2)ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内、又はワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲外のいずれかに外部物体を置くステップと、a3)ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる電圧波形を測定するステップと、a4)電圧波形を電圧波形ベクトルに変換し、その電圧波形ベクトルを外部物体が存在する、又は外部物体が存在しないに適宜分類するステップと、a5)ステップa1)~a4)を複数回繰り返して、電圧波形ベクトルのトレーニングセットを取得するステップと、を含み得る。
【0053】
本方法は、電圧波形をデジタル化して電圧波形ベクトルを形成するステップを更に含み得る。電圧波形ベクトルは、それぞれ対応するグループのコンピュータに記憶され得る。換言すると、外部物体がワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲外に配置された場合の電圧波形を、「外部物体が存在しない」と分類される電圧波形ベクトルへとデジタル化し、第1のグループとして記憶され得る。同様に、外部物体がワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲外に配置された場合の電圧波形を、「外部物体が存在する」と分類される電圧波形ベクトルへとデジタル化し、第2のグループとして記憶され得る。
【0054】
電圧波形は、ドレイン電圧波形であり得る。ドレイン電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタのドレインで測定され得る。トランジスタは、ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するインバータの一部であり得る。
【0055】
代替的には、電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたインバータ内で、例えば、インバータ内の任意の場所で測定され得る。
【0056】
本方法は、線/平面/超平面を示す、重みベクトル及びバイアス値を定義するステップを更に含み得る。
【0057】
重みベクトルは、データポイントを第1のグループ(「外部物体が存在しない」グループ)と、第2のグループ(「外部物体が存在する」グループ)とに分ける線/平面/超平面である。換言すると、重みベクトルは、トレーニングセットに従って定義され得る。
【0058】
バイアス値はスカラーであり、ベクトル空間の原点からの線/平面/超平面のオフセットを定義する。換言すると、バイアス値は、トレーニングセットに従って定義され得る。
【0059】
電圧波形ベクトルは、少なくとも1次元であり得るか、又は少なくとも2次元であり得る。重みベクトルは、少なくとも1次元であり得るか、又は少なくとも2次元であり得る。電圧波形ベクトルは、重みベクトルと同じ次元数を有し得る。
【0060】
各電圧波形ベクトルは、対応する電圧波形の第1のピークの値に対応する第1の成分、及び第1のピークに隣接する対応する電圧波形の第2のピークの値に対応する第2の成分を含み得る。
【0061】
電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタのドレインで測定され得る。トランジスタは、ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するインバータの一部であり得る。
【0062】
トレーニングセットを取得する方法は自動化され得る。換言すると、ステップa1)~a5)は自動化され得る。
【0063】
第4の態様において、コンピュータにより実行されると、当該コンピュータに、第1の態様及び/又は第3の態様を実行させる命令を備える、コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0064】
添付の図面を参照して、好ましい実施形態について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】ワイヤレス電力伝送システム及び近くの電子受信機デバイスの回路図である。
図2】外部物体が存在する場合のオシロスコープで見たソース-ドレイン波形のサンプルを示す。
図3】外部物体が存在する場合のオシロスコープで見たソース-ドレイン波形のサンプルと、外部物体が存在しない場合のオシロスコープで見たソース-ドレイン波形のサンプルを示す。
図4】n個のソース-ドレイン波形ベクトルからなるトレーニングデータセットを示す。
図5】分類子の判定/算出に関与するステップのフローチャートを示す。
図6】外部物体が存在するかどうかの判定に関与するステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本明細書で使用する場合、「コンピュータ」は広範な定義を有するように意図される。デスクトップPC、ラップトップPC、集積回路基板、プリント回路基板、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロチップ、又は計算を実行することが可能な任意の他の構成要素が含まれる。
【0067】
図1は、本発明のワイヤレス電力伝送システム100及び近くの電子受信機デバイス102の回路図である。
【0068】
ワイヤレス電力伝送システム100は、DC電源104、インバータ106、及びQi誘導ワイヤレス電力伝送デバイス108を含む。例示を目的として、Qi誘導ワイヤレス電力伝送デバイスは、単純な誘導ループとして示されている。当業者には理解されるように、本発明は、任意の誘導ワイヤレス電力伝送デバイスと共に使用するのに適している。Qiデバイスは、本発明の背景を説明するために特定されているに過ぎない。
【0069】
電子受信機デバイス102は、ワイヤレス電力転送デバイス108のワイヤレス電力転送範囲内に示されている。
【0070】
電子受信機デバイス102は、負荷Zに連結されたインダクタコイルLとして示されている。同様に外部物体を示すことができるが、外部物体内の負荷のインピーダンスは、電子受信機デバイスの負荷のインピーダンスとは異なる。このインピーダンスの違いにより、外部物体を検出することができる。
【0071】
実際に、チューニングされた電子受信機デバイスのインピーダンスは抵抗負荷として挙動する一方で、(ワイヤレス電力伝送デバイス/システムに対してチューニングされていない)外部物体は、容量性負荷又は誘導負荷のいずれかとして挙動することがある。ソース-ドレイン波形は、これらの異なる負荷タイプに対して異なって応答する。
【0072】
DC電源104とワイヤレス電力伝送デバイス108との間に、インバータの構成要素が並列に連結される。インバータは、第1のインダクタL、ドレイン112を有するトランジスタ110、例えばMOSFETトランジスタ、第1のコンデンサC、第2のコンデンサC、第2のインダクタL、及び第3のコンデンサCを備えている。インバータ106は、EFクラスのインバータであり、負荷条件に関わりなく、ワイヤレス電力転送デバイスへの安定したAC電力供給を行うように構成されている。詳細は、特許文献2により完全に説明されており、その内容は本明細書に全体として組み込まれる。インバータは、13.56MHzで動作し、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作を維持し、受信機が13.56MHzにチューニングされている場合、電流振幅と位相を本質的にチューニングする、すなわち、抵抗負荷を反映する。Eクラスのインバータを代替的に使用してもよい。当業者には理解されるように、様々な異なるインバータが代替的に使用され得る。
【0073】
発明者らは、ドレイン112において観察されたソース-ドレイン電圧波形が、電力が伝送される物体のタイプ(例えば、負荷Zのタイプ)の信頼性の高い高精度のインジケーションを提供することを発見した。したがって、ドレイン電圧波形の特性を観察することによって、外部物体に電力が供給されているかどうかを判定することが可能である。
【0074】
したがって、ソース-ドレイン電圧波形を測定するために、トランジスタ110(例えば、MOSFETトランジスタ)のドレイン112にオシロスコープ、例えば、Lecroy HD4096オシロスコープ(図示せず)を接続してもよく、そのオシロスコープに、ソース-ドレイン電圧波形をデジタル化するためにアナログ-デジタル(ADC)コンバータ(図示せず)を接続してもよい。このソース-ドレイン電圧波形は、次いで、更なる処理及び解析のためにコンピュータ(図示せず)に送信される。オシロスコープはなくてもよく、波形(単数又は複数)を観察するために必要であるに過ぎない。オシロスコープを使用せずに信号をデジタル化してもよい。
【0075】
ADCは、ソース-ドレイン電圧波形の周波数よりも低い周波数で電圧波形をサンプリングすることができる。特に、トランジスタ110からのスイッチング信号は、マイクロプロセッサにパスされる前にクロック分周器(例えば、「4分割」クロック分周器)を通過してもよく、それにより、低速バージョンのスイッチング信号が生成される。それによって、マイクロプロセッサは、スイッチング信号の周波数よりも低い周波数を有するサンプルレートでソース-ドレイン波形をサンプリングするように、ADCを制御する。例えば、スイッチング信号が20Hzであり、4分割クロック分周器が使用される場合、ADCは、5Hzの周波数でソース-ドレイン電圧をサンプリングする。
【0076】
所与のソース-ドレイン電圧波形が、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力転送範囲内に外部物体が存在することを示しているか否かを正確に判定するために、発明者らは線形サポートベクターマシン(SVM)機械学習を使用する。
【0077】
線形SVMは、データの母集団が、ベクトル空間において直線によって分けられている2つのグループに分類される状況において使用することができる。(詳細については後述する)図4に示すように、発明者らは、このケースにおける「外部物体が存在しない」ソース-ドレイン波形ベクトル及び「外部物体が存在する」ソース-ドレイン波形ベクトルが、直線によって2つの別個のグループに分けられることを発見した。したがって、線形SVMをこのケースにおいて採用することができる。
【0078】
線形SVMを使用できると判定した第1のステップは、分類子、すなわち、(上述の)第1、第2、第3及び第4の態様で論じた分類子を判定する。
【0079】
以下、使用されるベクトルが2次元である実施例に焦点を絞って論じる。しかしながら、当業者には理解されるように、本発明は、1次元ベクトル又はより高い次元のピークを用いて実装され得る。
【0080】
図5に、分類子の判定/算出に関与するステップを示す。
【0081】
ステップ500において、DV電源104及びインバータ106を使用して、ワイヤレス電力伝送デバイス108にAC電力を供給する。
【0082】
ステップ502において、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内、又はワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲外のいずれかに外部物体を置く。
【0083】
ステップ504において、トランジスタ110のドレイン112におけるソース-ドレイン電圧波形を、オシロスコープ(図示せず)で測定する。図2は、単一のソース-ドレイン電圧波形のオシロスコープトレースを示している。図3は、複数の重なり合ったオシロスコープトレースを含むオシロスコープトレースを示している。図を見ると明確に分かるように、各オシロスコープトレースには、2つの異なるピークがある。
【0084】
ステップ506において、ADC(図示せず)及びコンピュータ(図示せず)によって、ソース-ドレイン電圧波形をソース-ドレイン波形ベクトルに変換する。当業者には理解されるように、ソース-ドレイン波形ベクトルは、2次元、3次元、又はより高い次元とすることができる。この例示的な実施例では、説明と図示を簡潔にするために、ソース-ドレイン波形ベクトルは2次元である。ADCの出力は、オシロスコープトレースの電圧値に対応する、クロノラジカルな数のストリームである。ソース-ドレイン波形ベクトルの各成分は、必要に応じてコンピュータが選択した、ADCからの単一の電圧値出力を含む。本実施例では、2次元ベクトルの各成分は、オシロスコープトレースのそれぞれ対応するピークの電圧値に対応する。
【0085】
ステップ506において、各ソース-ドレイン波形ベクトルはまた、外部物体が存在する又は外部物体が存在しないと適宜分類される。次いで、ソース-ドレイン波形ベクトルを2つのグループで記憶媒体に記憶する。
【0086】
十分な数の分類されたソース-ドレイン波形ベクトルを含むトレーニングセットが取得されるまで、ステップ500~506をn回繰り返す。
【0087】
ステップ508において、分類されたソース-ドレイン波形ベクトルをベクトル空間にプロットする。図4は、2次元ベクトル空間にプロットされたn個のソース-ドレイン波形ベクトルを示している。「外部物体が存在しない」ベクトルと「外部物体が存在する」ベクトルとの明確なグループ化が分かる。ベクトル空間にプロットされると、コンピュータは、2つのグループを分ける線を定義する。
【0088】
最後に、ステップ512において、コンピュータは、線の勾配に対して直角(つまり、垂直)な方向のベクトルである重みベクトルを算出する。また、コンピュータは、ベクトル空間の原点からの線のオフセットの値であるバイアス値を算出する。
【0089】
重みベクトル及びオフセット値は、記憶媒体に記憶される。未分類のソース-ドレイン電圧波形のリアルタイム分類に使用される重みベクトル及びバイアス値である。当業者には理解されるように、重みベクトル及びバイアス値は、ワイヤレス電力伝送デバイスのタイプ(Qiデバイスは、ワイヤレス電力伝送デバイスの1つのタイプを表す)に応じて変動する。これらは通常、工場で決定/算出され、次いで、通常はワイヤレス電力伝送デバイスのタイプに固有の事前定義された重みベクトル及びバイアス値として記憶媒体に提供される。いくつかのデバイスタイプについて、分類子の特性が同じであり得る。
【0090】
いくつかの状況では、分類子(例えば、重みベクトル及びバイアス値)を現場で較正/再構成してもよい。
【0091】
例えば第1及び第2の態様において論じたようなリアルタイムの外部物体検出/判定について、図6を参照して以下に説明する。
【0092】
ステップ600において、DC電源104及びインバータ106によって、ワイヤレス電力伝送デバイス108に電力を供給する。
【0093】
ステップ602において、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられるソース-ドレイン電圧波形を測定する。
【0094】
ステップ604において、ADC及びコンピュータを使用して(ステップ506について説明したのと同じ技法をして)、ソース-ドレイン電圧波形を2次元のソース-ドレイン波形ベクトルに変換する。
【0095】
ステップ606において、コンピュータは、ソース-ドレイン波形ベクトルと重みベクトルとの内積(スカラー積又はドット積と呼ばれることもある)を算出することによって、ソース-ドレイン波形ベクトルに分類子を適用し、次いで、内積をバイアス値に加算して、スカラー数値出力値を求める。
【0096】
ステップ608において、コンピュータは、数値出力値に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するか否かを判定する。数値出力値が+1(又はそれ以上)である場合、外部物体が存在すると判定される。
【0097】
ステップ610において、外部物体が存在すると判定された場合、コンピュータは、ワイヤレス電力伝送デバイス108への電力を遮断する/スイッチを切る。
【0098】
発明者らは、図5の機械学習プロセス及び図6の分類プロセスを使用して、79%の外部物体検出精度を達成した。より高い次元の解析を使用して、90%以上の精度を達成した。
【0099】
本開示の更なる実施例を、次の番号を付した項に提供した。
【0100】
項1.ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在を識別する方法であって、本方法は、ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するステップと、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる電圧波形を測定するステップと、当該電圧波形に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップと、を含む、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在を識別する方法。
【0101】
項2.電圧波形は、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタのドレインで測定される、項1に記載の方法。
【0102】
項3.電圧波形をデジタル化してドレイン波形ベクトルを生成するステップと、ドレイン波形ベクトルに分類子を適用するステップとを更に含み、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、分類子の数値出力に基づく、項2の項1に記載の方法。
【0103】
項4.数値出力は、ドレイン波形ベクトルと重みベクトルとの内積を求め、ドレイン波形ベクトルと重みベクトルとの内積にバイアス値を加算することによって算出される、項3に記載の方法。
【0104】
項5.ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するステップは、数値出力の兆候の兆候に基づく、項3又は項4に記載の方法。
【0105】
項6.ドレイン波形ベクトル及び重みベクトルはそれぞれ、少なくとも2次元である、項4に記載の方法。
【0106】
項7.ドレイン波形ベクトルは、電圧波形の第1のピークの電圧値に対応する第1の成分、及び第1のピークに隣接する電圧波形の第2のピークの電圧値に対応する第2の成分を含む、項3~6のいずれかに記載の方法。
【0107】
項8.ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を低減するステップを更に含む、項1~7のいずれかに記載の方法。
【0108】
項9.電子受信機デバイスに電力をワイヤレス伝送するためのワイヤレス電力伝送デバイスと、ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる電圧波形を測定し、当該電圧波形に基づいて、ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在するかどうかを判定するように構成されたサブシステムと、を備える、ワイヤレス電力伝送システム。
【0109】
項10.デジタルサブシステムは、電圧波形をデジタル化してドレイン波形ベクトルを生成するように構成されたアナログ-デジタルコンバータ「ADC」と、ドレイン波形ベクトルに分類子を適用するように構成されたコンピュータとを備え、分類子の数値出力は、インジケーションを提供する、項9に記載のシステム。
【0110】
項11.ワイヤレス電力伝送デバイスは、電子受信機デバイスに電力を誘導伝送するための誘導電力伝送デバイスである、項9又は項10に記載のシステム。
【0111】
項12.ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられたトランジスタを更に備え、電圧波形は、トランジスタのドレインで測定される、項9~11のいずれかに記載のシステム。
【0112】
項13.ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するように構成されたインバータを更に備え、インバータはトランジスタを含む、項12に記載のシステム。
【0113】
項14.サブシステムは、ワイヤレス電力転送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内に外部物体が存在すると判定したことに応じて、ワイヤレス電力伝送デバイスへの電力供給を低減するように更に構成されている、項項9~13のいずれかに記載のシステム。
【0114】
項15.ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内の外部物体の存在の識別する際に使用するための分類子を取得する方法であって、前記方法は、
a)ドレイン波形ベクトルのトレーニングセットを取得するステップであって、各ドレイン波形ベクトルは電圧波形に対応し、各ドレイン波形ベクトルは、外部物体が存在する又は外部物体が存在しないと適宜分類される、ドレイン波形ベクトルのトレーニングセットを取得するステップと、
b)トレーニングセットに対応するベクトル空間において、第1のグループと第2のグループとを分ける線/平面/超平面を定義するステップと、
を含む、分類子を取得する方法。
【0115】
項16.ドレイン波形ベクトルのトレーニングセットを取得するステップは、
a1)ワイヤレス電力伝送デバイスに電力を供給するステップと、
a2)ワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲内、又はワイヤレス電力伝送デバイスのワイヤレス電力伝送範囲外のいずれかに外部物体を置くステップと、
a3)ワイヤレス電力伝送デバイスに関連付けられる電圧波形を測定するステップと、
a4)電圧波形をドレイン電圧波形ベクトルに変換し、当該ドレイン電圧波形ベクトルを外部物体が存在する、又は外部物体が存在しないに適宜分類するステップと、
a5)ステップa1)~a4)を複数回繰り返して、ドレイン電圧波形ベクトルのトレーニングセットを取得するステップと、
を含む、節15に記載の方法。
【0116】
項17.本方法は、電圧波形をデジタル化してドレイン電圧波形ベクトルを形成するステップを更に含む、項15又は項16に記載の方法。
【0117】
項18.線/平面/超平面を示す、重みベクトル及びバイアス値を定義するステップを更に含む、項16又は項17に記載の方法。
【0118】
項19.トレーニングセットを取得する方法が自動化されている、項15~18のいずれか1つに記載の方法の条項の方法。
【0119】
項20.コンピュータにより実行されると、当該コンピュータに、項1~7及び項15~19のいずれかのステップを実行させる命令を備える、コンピュータ可読記憶媒体。
【0120】
当業者には、変形形態又は修正形態が明らかになるであろう。そのような変形形態又は修正形態は、均等物、並びに、既知であり、かつ本明細書に記載された特徴の代わりに、又はそれに加えて使用され得る他の特徴を包含し得る。別個の実施例の文脈において記載されている特徴を、単一の実施形態において組み合わせて提供することができる。逆に、単一の実施例の文脈において記載されている特徴を、別々に、あるいは任意の好適なサブコンビネーションで提供され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6