(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】細胞中でタンパク質を発現するための方法および生成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240214BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N9/16 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021027831
(22)【出願日】2021-02-24
(62)【分割の表示】P 2018073676の分割
【原出願日】2013-11-01
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2012-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514141673
【氏名又は名称】ファクター バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ローデ,クリストファー
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/021632(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/154393(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/071931(WO,A2)
【文献】特表2012-509072(JP,A)
【文献】国際公開第2011/159684(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/115454(WO,A2)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2012年10月,Vol.109, No.43,p.17484-17489
【文献】PLOS Genetics,2012年08月,Vol.8, No.8,e1002861
【文献】Molecular Therapy,2008年,Vol.16, No.11,p.1833-1840
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子編集及び脱分化された細胞を作製するためのインビトロの方法であって、
(a)分化細胞を培養することと、
(b)分化細胞を脱分化することができる二以上の合成RNA分子で前記分化細胞をトランスフェクトすることと、
を含み、
前記二以上の合成RNA分子が、
(i)Oct4タンパク質、Sox2タンパク質、Klf4タンパク質、c-Mycタンパク質、及びLin28タンパク質から選択される一又は複数のリプログラミング因子をコードする少なくとも一つの合成RNA分子と、
(ii)前記細胞のDNAに一本鎖切断又は二本鎖切断を生じさせる遺伝子編集タンパク質をコードする少なくとも一つの合成RNA分子と、
を含み、
前記トランスフェクトによって、前記細胞において前記一又は複数のリプログラミング因子及び前記遺伝子編集タンパク質が発現し、遺伝子編集及び脱分化された細胞となり、
ステップ(b)が、フィーダー細胞を用いずに実施され、前記細胞を分化の程度が低い状態にリプログラミングすることを支持する成分を含む培地の存在下で生じ、前記培地が、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン、セレン、及び塩基性線維芽細胞増殖因子を含み、前記培地が条件付けされていない、
方法。
【請求項2】
前記分化細胞が、生検由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生検が、皮膚パンチ生検である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分化細胞が、ヒト皮膚細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト皮膚細胞が、線維芽細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分化細胞を細胞接着分子に接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞接着分子が、フィブロネクチン及びビトロネクチンの一方又は両方である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞接着分子が、組換え体である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記二以上の合成RNA分子が、少なくとも一つの非標準ヌクレオチドを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの非標準ヌクレオチドが、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-メチルシチジン、5-メチルプソイドウリジン、5-メチルウリジン、7-デアザグアノシン、又はプソイドウリジンの一又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記培地が、免疫抑制剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
連続5日間に少なくとも2回、前記一又は複数のリプログラミング因子をコードする少なくとも一つの合成RNA分子で前記分化細胞をトランスフェクトすることを繰り返し、より後の1回以上の遺伝子導入において遺伝子導入される前記一又は複数のリプログラミング因子をコードする少なくとも一つの合成RNA分子の量が、より前の1回以上の遺伝子導入において遺伝子導入された量よりも大きい、請求項1から1
1のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2012年11月1日出願の米国仮出願第61/721,302号、2013年3月14日出願の米国仮出願第61/785,404号、および2013年7月3日出願の米国仮出願第61/842,874号に対する優先権を主張するものであり、これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願は、2012年5月7日出願の米国出願第13/465,490号、2012年12月5日出願の国際出願第PCT/US2012/067966号、および2013年6月28日出願の米国出願第13/931,251号に関連し、これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、一つには、タンパク質をコードする核酸と、タンパク質をコードする核酸を含む治療薬と、核酸を使用し、細胞を誘導してタンパク質を発現させるための方法と、細胞の遺伝子導入、遺伝子編集、およびリプログラミングのための方法、キット、およびデバイスと、これらの方法、キット、およびデバイスを使用して生成される細胞、生物、ならびに治療薬と、に関する。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読フォーマットコピー(A computer readable format copy of the Sequence Listing)(ファイル名:FABI_005_02WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2013年10月30日、ファイルサイズ:255KB)。
【背景技術】
【0003】
合成RNAおよびRNA治療薬
リボ核酸(RNA)は、原核細胞および真核細胞の両方において偏在し、ここで、メッセンジャーRNAの形態で遺伝情報をコードし、トランスファーRNAの形態でアミノ酸を結合および輸送し、リボソームRNAの形態でアミノ酸をタンパク質に構築し、そして、ミクロRNAおよび長い非コードRNAの形態での遺伝子発現調節を含む、多数の他の機能を実施する。RNAは、直接化学合成および生体外転写を含む方法によって合成的に生成され得、治療用途のために患者に投与され得る。
【0004】
細胞リプログラミングおよび細胞療法
細胞は、特異的な細胞外の合図への曝露、および/または特異タンパク質、ミクロRNAなどの異所性発現によってリプログラムされ得る。いくつかのリプログラミング方法が以前に説明されているが、異所性発現に依存するほとんどのものは、外来DNAの導入を必要とし、これは変異の危険性を有し得る。リプログラミングタンパク質の直接送達に基づく、DNAを含まないリプログラミング方法が報告されている。しかしながら、これらの方法は商業用途には非効率的かつ不確か過ぎる。さらに、RNAベースのリプログラミング方法が説明されている(例えば、Angel.MIT Thesis.2008.1-56、Angel et al.PLoS ONE.2010.5,107、Warren et al.Cell Stem Cell.2010.7,618-630、Angel.MIT Thesis.2011.1-89、およびLee et al.Cell.2012.151,547-558を参照のこと(これら全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる))。しかしながら、既存のRNAベースのリプログラミング方法は、成熟細胞に実施される際に緩慢、不確か、かつ非効率的であり、多くの遺伝子導入を必要とし(著しい出費およびエラーの機会をもたらす)、限定数の細胞型しかリプログラムすることができず、限定数の細胞型にしか細胞をリプログラムすることができず、免疫抑制剤の使用を必要とし、血液由来HSAおよびヒト線維芽細胞フィーダーを含む複数のヒト由来成分の使用を必要とする。以前に開示されたRNAベースのリプログラミング方法の多くの欠点は、それらを研究および治療用途の両方にとって望ましくないものにする。
【0005】
遺伝子編集
いくつかの自然発生タンパク質は、特異的DNA配列を認識することができるDNA結合ドメイン、例えば、亜鉛フィンガー(ZF)および転写活性化因子様エフェクター(TALE)を含有する。FokIエンドヌクレアーゼのこれらのDNA結合ドメインおよび開裂ドメインのうちの1つ以上を含有する融合タンパク質を使用して、細胞中のDNAの所望の領域内に二本鎖切断を作ることができる(例えば、米国特許出願公開第US2012/0064620号、米国特許出願公開第US2011/0239315号、米国特許第8,470,973号、米国特許出願公開第US2013/0217119号、米国特許第8,420,782号、米国特許出願公開第US2011/0301073号、米国特許出願公開第US2011/0145940号、米国特許第8,450,471号、米国特許第8,440,431号、米国特許第8,440,432号、および米国特許出願公開第2013/0122581号を参照のこと(これら全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる))。しかしながら、細胞を遺伝子編集するための現在の方法は非効率的であり、制御されていない変異誘発の危険性を有し、これはそれらを研究および治療用途の両方にとって望ましくないものにする。体細胞のDNAを含まない遺伝子編集のための方法も、体細胞の同時または順次の遺伝子編集およびリプログラミングのための方法も、以前に調査されていない。さらに、患者内の(すなわち、生体内の)細胞を直接的に遺伝子編集するための方法は以前に調査されておらず、かかる方法の開発は、FokI開裂ドメインの無向二量体形成、およびDNA結合ドメインの乏しい特異性、ならびに他の要因にある程度起因する、乏しいDNA結合ドメインの結合、過剰なオフターゲット効果にある程度起因する、許容可能な標的の欠如、非効率的な送達、遺伝子編集タンパク質/タンパク質(複数)の非効率的な発現、発現された遺伝子編集タンパク質/タンパク質(複数)による非効率的な遺伝子編集によって制限されてきた。最後に、抗菌、抗ウイルス、および抗癌治療における遺伝子編集の使用は、以前に調査されていない。
【0006】
したがって、細胞中のタンパク質の発現のための改善された組成物および方法の必要性が残る。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一つには、細胞を誘導してタンパク質を発現させるための組成物、方法、物品、およびデバイスと、これらの組成物、方法、物品、およびデバイスを生成するための方法、物品、およびデバイスと、これらの組成物、方法、物品、およびデバイスを使用して生成される細胞、生物、ならびに治療薬を含む組成物および物品と、を提供する。以前に報告された方法とは異なり、本発明の特定の実施形態は、外来DNA、または同種もしくは動物由来の材料に細胞を曝露することを含まず、これは本発明の方法に従って生成される生成物を治療用途に有用にする。
【0008】
いくつかの態様において、低い毒性および高い翻訳効率を有する合成RNA分子を提供する。一態様において、細胞の高効率の遺伝子導入、リプログラミング、および遺伝子編集のための細胞培養培地を提供する。他の態様は、リプログラミングタンパク質をコードする合成RNA分子を生成するための方法に関する。さらなる態様は、遺伝子編集タンパク質をコードする合成RNA分子を生成するための方法に関する。
【0009】
一態様において、本発明は、改変ヌクレアーゼ開裂ドメインを含む高効率遺伝子編集タンパク質を提供する。別の態様において、本発明は、改変ヌクレアーゼ開裂ドメインを含む高忠実度遺伝子編集タンパク質を提供する。他の態様は、改変DNA結合ドメインを含む高効率遺伝子編集タンパク質に関する。さらなる態様は、改変DNA結合ドメインを含む高忠実度遺伝子編集タンパク質に関する。さらなる態様は、改変反復配列を含む遺伝子編集タンパク質に関する。いくつかの態様は、細胞に遺伝子編集タンパク質を遺伝子導入すること、または細胞を誘導して遺伝子編集タンパク質を発現させることによって、細胞のDNA配列を変更するための方法に関する。他の態様は、生体外の培養液中に存在する細胞のDNA配列を変更するための方法に関する。さらなる態様は、生体内に存在する細胞のDNA配列を変更するための方法に関する。
【0010】
いくつかの態様において、本発明は、癌を治療するための方法であって、患者に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸の治療有効量を投与することを含む、方法を提供する。一態様において、該遺伝子編集タンパク質は、癌関連遺伝子のDNA配列を変更することができる。別の態様において、該癌関連遺伝子は、BIRC5遺伝子である。さらに他の態様は、核酸および/または細胞を含む治療薬、ならびに、例えば、1型糖尿病、虚血性および拡張型心筋症を含む心臓疾患、黄斑変性症、パーキンソン病、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、地中海貧血症、ファンコニ貧血、重症複合免疫不全症、遺伝性感覚性ニューロパチー、色素性乾皮症、ハンチントン病、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、癌、ならびに肝炎およびHIV/AIDSを含む感染性疾患の治療のために、核酸および/または細胞を含む治療薬を使用する方法に関する。いくつかの態様において、本核酸は合成RNAを含む。他の態様において、本核酸はウイルスを使用して細胞に送達される。いくつかの態様において、該ウイルスは複製可能ウイルスである。他の態様において、該ウイルスは複製不全ウイルスである。
【0011】
本発明の詳細を、以下の付随する説明に記載する。本明細書で説明されるものと同様または等価である方法および材料を本発明の実践または試験において使用することができるが、例示的方法および材料をこれから説明する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、この説明ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈が別段に明記しない限り、単数形は複数形も含む。別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】指示されるタンパク質をコードし、変性ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離されたアデノシン、50%のグアノシン、50%の7-デアザグアノシン、70%のウリジン、30%の5-メチルウリジン、および5-メチルシチジンを含有するRNAを表す図である。
【
図1B】指示されるタンパク質をコードし、変性ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離されたアデノシン、50%のグアノシン、50%の7-デアザグアノシン、50%のウリジン、50%の5-メチルウリジン、および5-メチルシチジンを含有するRNAを表す図である。
【
図2】リプログラミングタンパク質をコードするRNAの5回の遺伝子導入によりリプログラムされた、初代ヒト新生児線維芽細胞を表す図である。細胞を固定し、Oct4タンパク質を染色した。核をHoechst 33342で対比染色した。
【
図3B】リプログラミングタンパク質をコードするRNAの7回の遺伝子導入によりリプログラムされた、
図3Aに示す初代ヒト成熟線維芽細胞を表す図である。矢印は、リプログラムされた細胞のコロニーを示す。
【
図3C】リプログラムされた初代ヒト成熟線維芽細胞の大きなコロニーを表す図である。
【
図4A】ヒトCCR5遺伝子を標的にするTALENペアの位置を表す図である。単線はTALEN結合部位を示す。二重線はΔ32変異の位置を示す。
【
図4B】変性ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離された、
図4AのTALENペアをコードする合成RNAを表す図である。
【
図4C】ヒト皮膚線維芽細胞(GM00609)に対する
図4BのRNAの機能性を試験するSURVEYORアッセイの結果を表す図である。RNAを遺伝子導入された細胞から産生された試料中の、760bpおよび200bpのバンドの出現は、成功裏の遺伝子編集を示す。各レーン下の割合は、遺伝子編集の効率(編集された対立遺伝子の割合)を示す。
【
図4D】
図4Cの「陰性」および「TALEN」レーンの線形状グラフを表す図である。数字は、総統合強度と比較した3つのバンドの統合強度を示す。
【
図4E】RNAを2回遺伝子導入された細胞から産生された試料(「2×」と表示されるレーン)も含む、
図4Cに示すように実施されたSURVEYORアッセイの結果を表す図である。
【
図4F】合成RNAを使用する初代ヒト細胞(GM00609)の同時遺伝子編集およびリプログラミングを表す図である。画像は、リプログラムされた細胞の代表的なコロニーを示す。
【
図4G】
図4Fに示すように産生された、遺伝子編集かつリプログラムされた細胞中のCCR5遺伝子の直接配列決定の結果を表す図である。試験した9つの線のうちの4つは、TALEN結合部位の間に欠失を含み、これは効率的な遺伝子編集を示す。
【
図5】標準ヌクレオチド(「A、G、U、C」)または非標準ヌクレオチド(「A、7dG、5mU、5mC」)のいずれかを含有する、ヒトMYC遺伝子を標的にするRNAを使用したことを除いては
図4Cに示すように実施されたSURVEYORアッセイの結果を表す図である。470bpおよび500bpにおける暗色のバンドは高効率遺伝子編集を示す。
【
図6】標準ヌクレオチド(「A、G、U、C」)または非標準ヌクレオチド(「A、7dG、5mU、5mC」)のいずれかを含有する、ヒトBIRC5遺伝子を標的にするRNAを使用したことを除いては
図4Cに示すように実施されたSURVEYORアッセイの結果を表す図である。710bpにおける暗色のバンドは高効率遺伝子編集を示す。
【
図7A】ヒトBIRC5遺伝子を標的にするRNA(RiboSlice)を遺伝子導入されたHeLa細胞(子宮頸癌)を表す図である。細胞は、単一のRNA(「2×サバイビンL」)または等量のRNAペアの各メンバー(「サバイビンL+R」)のいずれかを遺伝子導入され、それぞれの場合において同一の総量のRNAが送達された。右のパネルに示すように、RNAペアを遺伝子導入された細胞は拡大され、断片化核および際立って低減した増殖を示し、これは、RiboSliceの強力な抗癌活性を実証する。
【
図7B】
図7Aに示すようにヒトBIRC5遺伝子を標的にするRNAを遺伝子導入されたHeLa細胞を表す図である。細胞をその後固定し、サバイビンタンパク質を染色した。核をHoechst 33342で対比染色した。RiboSliceを遺伝子導入された大きな断片化細胞核を矢印で示す。
【
図8】合成RNAを使用してリプログラムされた初代ヒト成熟線維芽細胞を表す図である。矢印は、リプログラミングを示唆する形態を示す細胞の緻密なコロニーを示す。
【
図9】変性ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離された、指示される遺伝子編集タンパク質をコードする合成RNAを表す図である。
【
図10A】ヒト皮膚線維芽細胞に対する
図9のRNAの有効性を試験するSURVEYORアッセイの結果を表す図である。細胞は、遺伝子導入のおよそ48時間後に溶解された。成功裏の遺伝子編集からもたらされる消化生成物に対応するバンドをアスタリスクで示す。レーン表示は「X.Y」形態のものであり、XはそれからDNAが増幅されたエクソンを意味し、Yは遺伝子編集タンパク質ペアを意味する。例えば、「1.1」は、開始コドンに最も近いエクソン1の領域を標的にする遺伝子編集タンパク質ペアを意味する。「X.N」は、非遺伝子導入細胞を意味する。
【
図10B】ヒト皮膚線維芽細胞に対する
図9のRNAの毒性を試験するSURVEYORアッセイの結果を表す図である。細胞は、遺伝子導入の11日後に溶解された。レーンおよびバンドを
図10Aに示すように表示する。アスタリスクで示すバンドの出現は、遺伝子導入された細胞が高生存率を保持したことを示す。
【
図11】生体内の遺伝子編集タンパク質をコードするRNAの安全性を試験するように設計された研究の結果を表す図である。このグラフは、未処置の1グループ、媒体のみの1グループ、腫瘍内注入を介してRiboSliceで処置した1グループ、および静脈内注入を介してRiboSliceで処置した1グループを含む、マウスの4つのグループ(各グループにつき10匹の動物)の平均体重を示す。処置したグループの全てに対して、動物は、1日おきに、1日目から9日目まで、5回の投与を与えられた。動物を17日目まで観察した。4つのグループの平均体重の間に統計的に著しい差がないことは、RiboSliceの生体内の安全性を実証する。
【
図12A】様々な36アミノ酸長の反復配列を含む遺伝子編集タンパク質の有効性を試験するSURVEYORアッセイの結果を表す図である。ヒト皮膚線維芽細胞は、指示される反復配列を含有する遺伝子編集タンパク質をコードするRNAの遺伝子導入のおよそ48時間後に溶解された。成功裏の遺伝子編集からもたらされる消化生成物に対応するバンドをアスタリスクで示す。レーン表示は、反復配列のC末端におけるアミノ酸を意味する。「陰性」は、非遺伝子導入細胞を意味する。
【
図12B】1つおきの反復配列が36アミノ酸長である遺伝子編集タンパク質の有効性を試験するSURVEYORアッセイの結果を表す図である。ヒト皮膚線維芽細胞は、指示される反復配列を含有する遺伝子編集タンパク質をコードするRNAの遺伝子導入のおよそ48時間後に溶解された。成功裏の遺伝子編集からもたらされる消化生成物に対応するバンドをアスタリスクで示す。レーン表示は、反復配列のC末端におけるアミノ酸を意味する。「陰性」は、非遺伝子導入細胞を意味する。
【
図13A】生体内の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を有するRiboSlice AAV複製不全ウイルスの安全性および効力を試験するように設計された研究の結果を表す図である。このグラフは、未処置の1グループ(処置なしの対照、「NTC」、n=6)、腫瘍内注入を介してGFPをコードするAAVで処置した1グループ(「GFP」、n=2)、および腫瘍内注入を介してBIRC5遺伝子を標的にする遺伝子編集タンパク質をコードするRiboSlice AAVで処置した1グループ(「RiboSlice」、n=2)を含む、ヒト神経膠腫細胞を含む皮下腫瘍を有するマウスの3つのグループの平均体重を示す。動物は、GFPグループについては1日目に、そしてRiboSliceグループについては1日目および15日目に投薬された。動物を25日目まで観察した。3つのグループの平均体重の間に統計的に著しい差がないことは、生体内のRiboSlice AAVの安全性を実証する。
【
図13B】
図13Aに示す研究における動物の正規化された腫瘍体積を表す図である。NTCおよびGFPグループの両方と比較して、RiboSlice AAVで処置したグループの正規化された腫瘍体積のより緩徐な増加は、RiboSlice AAVの生体内の効力を実証する。
【
図14】
図12Bに示すように遺伝子編集タンパク質の有効性を試験するSURVEYORアッセイの結果を表す図である。「RiboSlice」は、1つおきの反復配列が36アミノ酸長である遺伝子編集タンパク質を意味する。「野生型」は、非遺伝子導入細胞を意味する。
【
図15】指示されるタンパク質をコードし、変性ホルムアルデヒド-アガロースゲル上で分離されたアデノシン、50%のグアノシン、50%の7-デアザグアノシン、60%のウリジン、40%の5-メチルウリジン、および5-メチルシチジンを含有するRNAを表す図である。
【
図16】APP遺伝子内への修復鋳型の統合を試験するアッセイの結果を表す図である。RNAおよび修復鋳型を遺伝子導入された細胞から産生される試料中の、562bpおよび385bpのバンドの出現は、PstI制限部位の成功裏の統合を示す。「-」は、未消化の試料を意味し、「+」は、PstI制限ヌクレアーゼで処置された試料を意味する。
【0013】
定義
「分子」は、分子実体(分子、イオン、複合体など)を意味する。
【0014】
「RNA分子」は、RNAを含む分子を意味する。
【0015】
「合成RNA分子」は、生物工学を使用して細胞の外で生成されるか、または細胞の中で生成されるRNA分子を意味し、非限定例を挙げると、生体外転写反応において生成されるRNA分子、直接化学合成によって生成されるRNA分子、または遺伝子改変された大腸菌(E.coli)細胞中で生成されるRNA分子である。
【0016】
「遺伝子導入」は、細胞を分子と接触させることを意味し、この分子は細胞によって内部移行される。
【0017】
「遺伝子導入すると」は、遺伝子導入の間またはその後を意味する。
【0018】
「遺伝子導入試薬」は、分子と会合し、細胞への分子の送達、および/または細胞による分子の内部移行を促進する物質または物質の混合物を意味し、非限定例を挙げると、陽イオン性脂質、荷電ポリマー、または細胞透過性ペプチドである。
【0019】
「試薬ベースの遺伝子導入」は、遺伝子導入試薬を使用する遺伝子導入を意味する。
【0020】
「細胞培養培地」は、細胞培養に使用することができる培地を意味し、非限定例を挙げると、ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)またはDMEM+10%のウシ胎仔血清(FBS)である。
【0021】
「複合体形成培地」は、それに対して遺伝子導入試薬および遺伝子導入される分子が添加され、その中で遺伝子導入試薬が遺伝子導入される分子と会合する、培地を意味する。
【0022】
「遺伝子導入培地」は、遺伝子導入に使用することができる培地を意味し、非限定例を挙げると、ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)またはDMEM/F12である。
【0023】
「組換えタンパク質」は、動物またはヒトの中で生成されないタンパク質もしくはペプチドを意味する。非限定例としては、細菌中で生成されるヒトトランスフェリン、マウス細胞の生体外培養において生成されるヒトフィブロネクチン、およびイネ中で生成されるヒト血清アルブミンが挙げられる。
【0024】
「脂質担体」は、水溶液中の脂質または脂質溶解性分子の溶解性を増加させることができる物質を意味し、非限定例を挙げると、ヒト血清アルブミンまたはメチル-ベータ-シクロデキストリンである。
【0025】
「Oct4タンパク質」は、POU5F1遺伝子によりコードされるタンパク質、またはその自然もしくは改変変異体、ファミリーメンバー、相同分子種、断片、もしくは融合構築物を意味し、非限定例を挙げると、ヒトOct4タンパク質(配列番号8)、マウスOct4タンパク質、Oct1タンパク質、POU5F1偽遺伝子2でコードされるタンパク質、Oct4タンパク質のDNA結合ドメイン、またはOct4-GFP融合タンパク質である。Oct4タンパク質は、いくつかの実施形態において、配列番号8との少なくとも70%の同一性、または他の実施形態において、配列番号8との少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Oct4タンパク質は、配列番号8に対して1~20のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。または他の実施形態において、Oct4タンパク質は、配列番号8に対して1~15または1~10のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。
【0026】
「Sox2タンパク質」は、SOX2遺伝子によりコードされるタンパク質、またはその自然もしくは改変変異体、ファミリーメンバー、相同分子種、断片、もしくは融合構築物を意味し、非限定例を挙げると、ヒトSox2タンパク質(配列番号9)、マウスSox2タンパク質、Sox2タンパク質のDNA結合ドメイン、またはSox2-GFP融合タンパク質である。Sox2タンパク質は、いくつかの実施形態において、配列番号9との少なくとも70%の同一性、または他の実施形態において、配列番号9との少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Sox2タンパク質は、配列番号9に対して1~20のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。また
は他の実施形態において、Sox2タンパク質は、配列番号9に対して1~15または1~10のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
「Klf4タンパク質」は、KLF4遺伝子によりコードされるタンパク質、またはその自然もしくは改変変異体、ファミリーメンバー、相同分子種、断片、もしくは融合構築物を意味し、非限定例を挙げると、ヒトKlf4タンパク質(配列番号10)、マウスKlf4タンパク質、Klf4タンパク質のDNA結合ドメイン、またはKlf4-GFP融合タンパク質である。Klf4タンパク質は、いくつかの実施形態において、配列番号10との少なくとも70%の同一性、または他の実施形態において、配列番号10との少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Klf4タンパク質は、配列番号10に対して1~20のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。または他の実施形態において、Klf4タンパク質は、配列番号10に対して1~15または1~10のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
「c-Mycタンパク質」は、MYC遺伝子によりコードされるタンパク質、またはその自然もしくは改変変異体、ファミリーメンバー、相同分子種、断片、もしくは融合構築物を意味し、非限定例を挙げると、ヒトc-Mycタンパク質(配列番号11)、マウスc-Mycタンパク質、l-Mycタンパク質、c-Myc(T58A)タンパク質、c-Mycタンパク質のDNA結合ドメイン、またはc-Myc-GFP融合タンパク質である。c-Mycタンパク質は、いくつかの実施形態において、配列番号11との少なくとも70%の同一性、または他の実施形態において、配列番号11との少なくとも75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、c-Mycタンパク質は、配列番号11に対して1~20のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸を含む。または他の実施形態において、c-Mycタンパク質は、配列番号11に対して1~15または1~10のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(集団的に)を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
「リプログラミング」は、細胞の表現型における変化を引き起こすことを意味し、非限定例を挙げると、β細胞前駆体を成熟β細胞に分化させること、線維芽細胞を多能性幹細胞に脱分化させること、ケラチノサイトを心筋幹細胞に分化形質転換させること、またはニューロン軸索を成長させることである。
【0030】
「リプログラミング因子」は、細胞が分子と接触されるとき、および/または細胞が分子を発現するとき、単独または他の分子との組み合わせのいずれかで、リプログラミングを引き起こすことができる分子を意味し、非限定例を挙げると、Oct4タンパク質である。
【0031】
「フィーダー」は、培地を条件付けるか、あるいは培養液中の他の細胞の成長を支持することができる細胞を意味する。
【0032】
「条件付け」は、1つ以上のフィーダーを培地と接触させることを意味する。
【0033】
「脂肪酸」は、少なくとも2個の炭素原子の脂肪族鎖を含む分子を意味し、非限定例を挙げると、リノール酸、α-リノレン酸、オクタン酸、ロイコトリエン、プロスタグランジン、コレステロール、グルココルチコイド、レゾルビン、プロテクチン、トロンボキサン、リポキシン、マレシン、スフィンゴ脂質、トリプトファン、N-アセチルトリプトファン、またはこれらの塩、メチルエステル、もしくは誘導体である。
【0034】
「短鎖脂肪酸」は、2~30個の炭素原子の脂肪族鎖を含む脂肪酸を意味する。
【0035】
「アルブミン」は、水中で高度に溶解性であるタンパク質を意味し、非限定例を挙げると、ヒト血清アルブミンである。
【0036】
「会合分子」は、別の分子に非共有結合される分子を意味する。
【0037】
「アルブミンの会合分子成分」は、アルブミンポリペプチドに結合される1つ以上の分子を意味し、非限定例を挙げると、アルブミンポリペプチドに結合される脂質、ホルモン、コレステロール、カルシウムイオンなどである。
【0038】
「処置済アルブミン」は、アルブミンの会合分子成分を低減、除去、置換、あるいは不活性化するように処置されるアルブミンを意味し、非限定例を挙げると、昇温でインキュベートされるヒト血清アルブミン、ナトリウムオクタノエートと接触されるヒト血清アルブミン、または多孔質材料と接触されるヒト血清アルブミンである。
【0039】
「イオン交換樹脂」は、イオンを含有する溶液と接触されるとき、そのイオンのうちの1つ以上を1つ以上の異なるイオンで置換することができる材料を意味し、非限定例を挙げると、1つ以上のカルシウムイオンを1つ以上のナトリウムイオンで置換することができる材料である。
「生殖細胞」は、精細胞または卵細胞を意味する。
【0040】
「多能性幹細胞」は、生体内で3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)全ての細胞に分化することができる細胞を意味する。
【0041】
「体細胞」は、多能性幹細胞または生殖細胞ではない細胞を意味し、非限定例を挙げると、皮膚細胞である。
【0042】
「グルコース反応性インスリン生成細胞」は、グルコースの特定の濃度に曝露されると、その細胞が異なる濃度のグルコースに曝露されるときにその細胞が生成および/または分泌することができるインスリンの量とは異なる(それ未満またはそれを超える)量のインスリンを生成および/または分泌することができる細胞を意味し、非限定例を挙げると、β細胞である。
【0043】
「造血細胞」は、血球細胞または血球細胞に分化することができる細胞を意味し、非限定例を挙げると、造血幹細胞または白血球細胞である。
【0044】
「心臓細胞」は、心臓の細胞または心臓の細胞に分化することができる細胞を意味し、非限定例を挙げると、心筋幹細胞または心筋細胞である。
【0045】
「網膜細胞」は、網膜の細胞または網膜の細胞に分化することができる細胞を意味し、非限定例を挙げると、網膜色素上皮細胞である。
【0046】
「皮膚細胞」は、皮膚中に通常見られる細胞を意味し、非限定例を挙げると、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、脂肪細胞、間葉系幹細胞、脂肪性幹細胞、または血球細胞である。
【0047】
「Wntシグナル伝達刺激剤」は、タンパク質のWntファミリーの1つ以上のメンバーの生物学的機能のうちの1つ以上を実施することができる分子を意味し、非限定例を挙げると、Wnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt3a、または2-アミノ-4-[3,4
-(メチレンジオキシ)ベンジルアミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジンである。
【0048】
「IL-6シグナル伝達刺激剤」は、IL-6タンパク質の生物学的機能のうちの1つ以上を実施することができる分子を意味し、非限定例を挙げると、IL-6タンパク質またはIL-6受容体(別称、溶解性IL-6受容体、IL-6R、IL-6Rアルファなど)である。
【0049】
「TGF-βシグナル伝達刺激剤」は、タンパク質のTGF-βスーパーファミリーの1つ以上のメンバーの生物学的機能のうちの1つ以上を実施することができる分子を意味し、非限定例を挙げると、TGF-β1、TGF-β3、アクチビンA、BMP-4、またはNodalである。
【0050】
「免疫抑制剤」は、免疫系の1つ以上の態様を抑制することができ、哺乳動物の中に通常は存在しない物質を意味し、非限定例を挙げると、B18Rまたはデキサメタゾンである。
【0051】
「一本鎖切断」は、ヌクレオチドを結合する共有結合のうちの1つ以上が一本鎖または二本鎖のうちの1つにおいて切断されている、一本鎖または二本鎖DNAの領域を意味する。
【0052】
「二本鎖切断」は、ヌクレオチドを結合する共有結合のうちの1つ以上が二本鎖のそれぞれにおいて切断されている、二本鎖DNAの領域を意味する。
【0053】
「ヌクレオチド」は、ヌクレオチドまたはその断片もしくは誘導体を意味し、非限定例を挙げると、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド-トリフォスフェートなどである。
【0054】
「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドまたはその断片もしくは誘導体を意味し、非限定例を挙げると、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド-トリフォスフェートなどである。
【0055】
「遺伝子編集」は、細胞のDNA配列を変更することを意味し、非限定例を挙げると、細胞に、その細胞のDNAにおける変異を引き起こすタンパク質を遺伝子導入することによるものである。
【0056】
「遺伝子編集タンパク質」は、単独または1つ以上の他の分子との組み合わせのいずれかで、細胞のDNA配列を変更することができるタンパク質を意味し、非限定例を挙げると、ヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ニッカーゼ、クラスター化された等間隔の単鎖回文反復配列(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)(CRISPR)関連タンパク質、またはこれらの自然もしくは改変変異体、ファミリーメンバー、相同分子種、断片、もしくは融合構築物である。
【0057】
「修復鋳型」は、遺伝子編集タンパク質の標的部位の10kb以内にある配列との少なくとも約70%の相同性を有する領域を含有する核酸を意味する。
【0058】
「反復配列」は、少なくとも約10%以内の相同性で、タンパク質中の1つ以上のコピー内に存在するアミノ酸配列を意味し、非限定例を挙げると、転写活性化因子様エフェクターのモノマー反復である。
【0059】
「DNA結合ドメイン」は、DNA分子に結合することができる分子の領域を意味し、非限定例を挙げると、1つ以上の亜鉛フィンガーを含むタンパク質ドメイン、1つ以上の転写活性化因子様(TAL)エフェクター反復配列を含むタンパク質ドメイン、またはDNA分子に結合することができる小分子の結合ポケットである。
【0060】
「結合部位」は、遺伝子編集タンパク質、DNA結合性タンパク質、DNA結合ドメイン、またはこれらの生物活性断片もしくは変異体によって認識されることができる核酸配列、または、それに対して遺伝子編集タンパク質、DNA結合性タンパク質、DNA結合ドメイン、またはこれらの生物活性断片もしくは変異体が高親和性を有する核酸配列を意味し、非限定例を挙げると、ヒトBIRC5遺伝子のエクソン1中のDNAの約20個の塩基ペア配列である。
【0061】
「標的」は、結合部位を含有する核酸を意味する。
【0062】
他の定義は、米国出願第13/465,490号、米国仮出願第61/664,494号、米国仮出願第61/721,302号、国際出願第PCT/US12/67966号、米国仮出願第61/785,404号、および米国仮出願第61/842,874号に記載されており、これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
5-メチルシチジン脱メチル化経路の非標準ヌクレオチドメンバーは、合成RNA内に組み込まれると、合成RNAがタンパク質に翻訳され得る効率を上昇させ、合成RNAの毒性を低下させ得ることが、今回発見された。これらの非標準ヌクレオチドとしては、例えば、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ホルミルシチジン、および5-カルボキシシチジン(別称「シチジン-5-カルボン酸」)が挙げられる。したがって、特定の実施形態は核酸を対象とする。一実施形態において、本核酸は合成RNA分子である。別の実施形態において、本核酸は1つ以上の非標準ヌクレオチドを含む。一実施形態において、本核酸は、5-メチルシチジン脱メチル化経路の1つ以上の非標準ヌクレオチドメンバーを含む。別の実施形態において、本核酸は、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ホルミルシチジン、および5-カルボキシシチジンまたはこれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含む。さらなる実施形態において、本核酸は、プソイドウリジン、5-メチルプソイドウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、N4-メチルシチジン、N-アセチルシチジン、および7-デアザグアノシンまたはこれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0064】
5-メチルシチジン脱メチル化経路
【化1】
特定の実施形態はタンパク質を対象とする。他の実施形態は、タンパク質をコードする核酸を対象とする。一実施形態において、該タンパク質は対象のタンパク質である。別の実施形態において、該タンパク質は、リプログラミングタンパク質および遺伝子編集タンパク質から選択される。一実施形態において、本核酸はプラスミドである。別の実施形態において、本核酸はウイルスまたはウイルスベクター中に存在する。さらなる実施形態において、該ウイルスまたはウイルスベクターは、複製不全である。さらなる実施形態において、該ウイルスまたはウイルスベクターは、複製可能である。一実施形態において、該ウイルスまたはウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはこれらの自然もしくは改変変異体、および改変ウイルスのうちの少なくとも1つを含む。
【0065】
非標準ヌクレオチドの特定の組み合わせが、合成RNAがタンパク質に翻訳され得る効率を上昇させ、合成RNAの毒性を低下させるに当たって特に有効である場合があることも発見されており、例えば、その組み合わせは、5-メチルウリジンおよび5-メチルシチジン、5-メチルウリジンおよび7-デアザグアノシン、5-メチルシチジンおよび7-デアザグアノシン、5-メチルウリジン、5-メチルシチジン、および7-デアザグアノシン、ならびに5-メチルウリジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、および7-デアザグアノシンである。したがって、特定の実施形態は、5-メチルウリジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、および7-デアザグアノシン、またはこれらの1つ以上の誘導体のうちの少なくとも2つを含む核酸を対象とする。他の実施形態は、5-メチルウリジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、および7-デアザグアノシン、またはこれらの1つ以上の誘導体のうちの少なくとも3つを含む核酸を対象とする。他の実施形態は、5-メチルウリジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、および7-デアザグアノシン、またはこれらの1つ以上の誘導体のうちの全てを含む核酸を対象とする。一実施形態において、本核酸は、1つ以上の5-メチルウリジン残基、1つ以上の5-メチルシチジン残基、および1つ以上の7-デアザグアノシン残基、または1つ以上の5-メチルウリジン残基、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン残基、および1つ以上の7-デアザグアノシン残基を含む。
【0066】
特定の非標準ヌクレオチドの特定の画分およびこれらの組み合わせを含有する合成RNA分子は、特に高い翻訳効率ならびに低い毒性を示し得ることがさらに発見された。したがって、特定の実施形態は、1つ以上のウリジン残基、1つ以上のシチジン残基、および1つ以上のグアノシン残基のうちの少なくとも1つを含み、1つ以上の非標準ヌクレオチドを含む核酸を対象とする。一実施形態において、ウリジン残基の約20%~約80%は5-メチルウリジン残基である。別の実施形態において、ウリジン残基の約30%~約50%は5-メチルウリジン残基である。さらなる実施形態において、ウリジン残基の約40%は5-メチルウリジン残基である。一実施形態において、シチジン残基の約60%~約80%は5-メチルシチジン残基である。別の実施形態において、シチジン残基の約80%~約100%は5-メチルシチジン残基である。さらなる実施形態において、シチジン残基の約100%は5-メチルシチジン残基である。さらなる実施形態において、シチジン残基の約20%~約100%は5-ヒドロキシメチルシチジン残基である。一実施形態において、グアノシン残基の約20%~約80%は7-デアザグアノシン残基である。別の実施形態において、グアノシン残基の約40%~約60%は7-デアザグアノシン残基である。さらなる実施形態において、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。一実施形態において、シチジン残基の約20%~約80%、または約30%~約60%、または約40%はN4-メチルシチジンおよび/またはN4-アセチルシチジン残基である。別の実施形態において、各シチジン残基は5-メチルシチジン残基である。さらなる実施形態において、シチジン残基の約100%は、5-メチルシチジン残基、および/または5-ヒドロキシメチルシチジン残基、および/またはN4-メチルシ
チジン残基、および/またはN4-アセチルシチジン残基、および/またはこれらの1つ以上の誘導体である。さらなる実施形態において、ウリジン残基の約40%は5-メチルウリジン残基であり、シチジン残基の約20%~約100%はN4-メチルシチジンおよび/またはN4-アセチルシチジン残基であり、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。一実施形態において、ウリジン残基の約40%は5-メチルウリジン残基であり、シチジン残基の約100%は5-メチルシチジン残基である。別の実施形態において、ウリジン残基の約40%は5-メチルウリジン残基であり、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。さらなる実施形態において、シチジン残基の約100%は5-メチルシチジン残基であり、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。一実施形態において、ウリジン残基の約40%は5-メチルウリジン残基であり、シチジン残基の約100%は5-メチルシチジン残基であり、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。別の実施形態において、ウリジン残基の約40%は5-メチルウリジン残基であり、シチジン残基の約20%~約100%は5-ヒドロキシメチルシチジン残基であり、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。いくつかの実施形態において、シチジン残基の100%未満は5-メチルシチジン残基である。他の実施形態において、シチジン残基の100%未満は5-ヒドロキシメチルシチジン残基である。一実施形態において、合成RNA分子内の各ウリジン残基は、プソイドウリジン残基または5-メチルプソイドウリジン残基である。別の実施形態において、ウリジン残基の約100%はプソイドウリジン残基および/または5-メチルプソイドウリジン残基である。さらなる実施形態において、ウリジン残基の約100%はプソイドウリジン残基および/または5-メチルプソイドウリジン残基であり、シチジン残基の約100%は5-メチルシチジン残基であり、グアノシン残基の約50%は7-デアザグアノシン残基である。
【0067】
5-メチルウリジンの代わりに、またはそれと組み合わせて使用することができる他の非標準ヌクレオチドは、プソイドウリジンおよび5-メチルプソイドウリジン(別称「1-メチルプソイドウリジン」、別称「N1-メチルプソイドウリジン」)またはこれらの1つ以上の誘導体を含むがこれらに限定されない。5-メチルシチジンおよび/または5-ヒドロキシメチルシチジンの代わりに、またはそれと組み合わせて使用することができる他の非標準ヌクレオチドは、プソイドイソシチジン、5-メチルプソイドイソシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ホルミルシチジン、5-カルボキシシチジン、N4-メチルシチジン、N4-アセチルシチジン、またはこれらの1つ以上の誘導体を含むがこれらに限定されない。特定の実施形態において、例えば、単一の遺伝子導入のみを実施するとき、または遺伝子導入されている細胞が、特に遺伝子導入関連毒性もしくは自然免疫シグナル伝達に対して感受性でないとき、非標準ヌクレオチドの画分は低減され得る。非標準ヌクレオチドの画分を低減することにより核酸のコストを低減することができるため、非標準ヌクレオチドの画分を低減することは、ある程度有益であり得る。特定の状況において、例えば、核酸の最小の免疫原性が所望されるとき、非標準ヌクレオチドの画分は増加され得る。
【0068】
T7 RNAポリメラーゼなどの酵素は、標準および非標準ヌクレオチドの両方を含有する生体外転写反応において、標準ヌクレオチドを優先的に組み込むことができる。結果として、非標準ヌクレオチドの特定の画分を含有する生体外転写反応は、非標準ヌクレオチドが反応中に存在した画分と異なる、しばしばそれよりも低い、非標準ヌクレオチド画分を含有するRNAをもたらすことができる。したがって、特定の実施形態において、ヌクレオチド組み込み画分(例えば、「50%の5-メチルウリジン」)への参照は、ヌクレオチドの規定の画分を含有する核酸、およびヌクレオチド(またはヌクレオチド誘導体、例えば、ヌクレオチド-トリフォスフェート)の規定の画分を含有する反応物中に合成される核酸の両方を意味し得る(ただし、かかる反応は、非標準ヌクレオチドが反応物中に存在した画分と異なるヌクレオチドの画分を含有する核酸をもたらし得る)。さらに、
異なるヌクレオチド配列は、代替のコドンを利用することによって同一のタンパク質をコードすることができる。したがって、特定の実施形態において、ヌクレオチド組み込み画分への参照は、ヌクレオチドの規定の画分を含有する核酸、および同一のタンパク質を異なる核酸としてコードする核酸の両方を意味し得、該異なる核酸は、ヌクレオチドの規定の画分を含有する。
【0069】
細胞のDNA配列は、細胞を遺伝子編集タンパク質と接触させること、または細胞を誘導して遺伝子編集タンパク質を発現させることによって変更することができる。しかしながら、以前に開示された遺伝子編集タンパク質には、低い結合効率および過剰なオフターゲット活性という弱点があり、これは、細胞のDNA中に望ましくない変異を導入し、患者の細胞への望ましくない変異の導入が癌の発達につながり得る治療用途において、その使用を大幅に制限し得る。StsIエンドヌクレアーゼ開裂ドメイン(配列番号1)を含む遺伝子編集タンパク質が、高レベルのオンターゲット活性を維持しながら、以前に開示された遺伝子編集タンパク質よりも実質的に低いオフターゲット活性を示し得ることが、今回発見された。遺伝子編集タンパク質:StsI-HA(配列番号2)、StsI-HA2(配列番号3)、StsI-UHA(配列番号4)、StsI-UHA2(配列番号5)、StsI-HF(配列番号6)、およびStsI-UHF(配列番号7)のヌクレアーゼドメインとして使用される際に、高いオンターゲット活性、低いオフターゲット活性、小さなサイズ、溶解性、ならびに他の望ましい特性を示すことができる、他の新型の改変タンパク質も発見された。StsI-HF(高忠実度)およびStsI-UHF(超高忠実度)は、141および152位置におけるC末端領域内の特異アミノ酸置換にある程度起因して、野生型StsIおよび野生型FokIの両方よりも低いオフターゲット活性を示し得る一方、StsI-HA、StsI-HA2(高活性)、StsI-UHA、およびStsI-UHA2(超高活性)は、34および61位置におけるN末端領域内の特異アミノ酸置換にある程度起因して、野生型StsIおよび野生型FokIの両方よりも高いオンターゲット活性を示し得る。したがって、特定の実施形態は、ヌクレアーゼドメインを含むタンパク質を対象とする。一実施形態において、ヌクレアーゼドメインは、FokIエンドヌクレアーゼ(配列番号53)の開裂ドメイン、StsIエンドヌクレアーゼ(配列番号1)、StsI-HA(配列番号2)、StsI-HA2(配列番号3)、StsI-UHA(配列番号4)、StsI-UHA2(配列番号5)、StsI-HF(配列番号6)、およびStsI-UHF(配列番号7)の開裂ドメイン、またはこれらの生物活性断片もしくは変異体のうちの1つ以上を含む。
【0070】
特定の新型の反復配列を含むDNA結合ドメインを含む改変遺伝子編集タンパク質が、高レベルのオンターゲット活性を維持しながら、以前に開示された遺伝子編集タンパク質よりも低いオフターゲット活性を示し得ることも、今回発見された。これらの改変遺伝子編集タンパク質の特定のものは、例えば、反復配列を接続するリンカー領域の向上した可動性を含む、以前に開示された遺伝子編集タンパク質に勝るいくつかの利点を提供することができ、これは、向上した結合効率をもたらし得る。したがって、特定の実施形態は、複数の反復配列を含むタンパク質を対象とする。一実施形態において、反復配列のうちの少なくとも1つは、アミノ酸配列:GabGを含有し、「a」および「b」はそれぞれ任意のアミノ酸を表す。一実施形態において、該タンパク質は遺伝子編集タンパク質である。別の実施形態において、反復配列のうちの1つ以上は、DNA結合ドメイン内に存在する。さらなる実施形態において、「a」および「b」はそれぞれ、HおよびGグループから独立して選択される。さらなる実施形態において、「a」および「b」は、それぞれHおよびGである。一実施形態において、アミノ酸配列は、反復配列のC末端の約5つのアミノ酸内に存在する。別の実施形態において、アミノ酸配列は、反復配列のC末端において存在する。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列GabG中の1つ以上のGは、G以外の1つ以上のアミノ酸、例えばA、H、またはGGで置換される。一実施形態において、反復配列は、約32~約40のアミノ酸、または約33~約39のアミノ酸、また
は約34~38のアミノ酸、または約35~約37のアミノ酸、または約36のアミノ酸、または約32を上回るアミノ酸、または約33を上回るアミノ酸、または約34を上回るアミノ酸、または約35を上回るアミノ酸の長さを有する。他の実施形態は、1つ以上の転写活性化因子様エフェクタードメインを含むタンパク質を対象とする。一実施形態において、転写活性化因子様エフェクタードメインのうちの少なくとも1つは、反復配列を含む。他の実施形態は、転写活性化因子様エフェクタードメインの反復配列のうちの少なくとも2つの間に、1つ以上のアミノ酸を挿入することによって産生される、複数の反復配列を含むタンパク質を対象とする。一実施形態において、1つ以上のアミノ酸は、少なくとも1つの反復配列のC末端から約1または約2または約3または約4または約5のアミノ酸に挿入される。さらに他の実施形態は、複数の反復配列を含むタンパク質を対象とし、およそ1つおきの反復配列は、その反復配列の直前または直後の反復配列と異なる長さを有する。一実施形態において、1つおきの反復配列は約36アミノ酸長である。別の実施形態において、1つおきの反復配列は36アミノ酸長である。さらに他の実施形態は、複数の反復配列を含むタンパク質を対象とし、該複数の反復配列は、それぞれ少なくとも36アミノ酸長である少なくとも2つの反復配列を含み、少なくとも36アミノ酸長である該反復配列のうちの少なくとも2つは、36未満のアミノ酸長である少なくとも1つの反復配列によって分離されている。いくつかの実施形態は、例えば、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、および配列番号60から選択される1つ以上の配列を含むタンパク質を対象とする。
【0071】
他の実施形態は、DNA結合ドメインを含むタンパク質を対象とする。いくつかの実施形態において、DNA結合ドメインは、複数の反復配列を含む。一実施形態において、該複数の反復配列は、標的DNA分子内の結合部位の高特異性認識を可能にする。別の実施形態において、反復配列のうちの少なくとも2つは、互いに対して少なくとも約50%、約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約98%、または約99%の相同性を有する。さらなる実施形態において、反復配列のうちの少なくとも1つは、標的DNA分子内の結合部位に結合することができる1つ以上の領域を含む。さらなる実施形態において、結合部位は、約1~約5塩基長の定義された配列を含む。一実施形態において、DNA結合ドメインは、亜鉛フィンガーを含む。別の実施形態において、DNA結合ドメインは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)を含む。さらなる実施形態において、該複数の反復配列は、TALEに対して少なくとも約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約98%、または約99%の相同性を有する少なくとも1つの反復配列を含む。さらなる実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、クラスター化された等間隔の単鎖回文反復配列(CRISPR)関連タンパク質を含む。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、核局在化配列を含む。別の実施形態において、核局在化配列は、アミノ酸配列:PKKKRKVを含む。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、ミトコンドリア局在化配列を含む。別の実施形態において、ミトコンドリア局在化配列は、アミノ酸配列:LGRVIPRKIASRASLMを含む。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質はリンカーを含む。別の実施形態において、リンカーは、DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに接続させる。さらなる実施形態において、リンカーは、約1~約10アミノ酸長である。いくつかの実施形態において、リンカーは、約1、約2、または約3、または約4、または約5、または約6、または約7、または約8、または約9、または約10アミノ酸長である。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、標的DNA分子内にニックまたは二本鎖切断を生み出すことができる。
【0072】
特定の実施形態は、細胞のゲノムを変性するための方法であって、該細胞中に核酸分子を導入することであって、36アミノ酸長の1つ以上の反復単位およびエンドヌクレアーゼドメインを含む、人工転写活性化因子様(TAL)エフェクター反復ドメインを含む、非自然発生融合タンパク質をコードする核酸分子を導入することを含み、該反復ドメイン
が、所定のヌクレオチド配列の認識のために改変され、該融合タンパク質が、該所定のヌクレオチド配列を認識する、方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は真核細胞である。別の実施形態において、該細胞は動物細胞である。さらなる実施形態において、該細胞は哺乳類細胞である。さらなる実施形態において、該細胞はヒト細胞である。一実施形態において、該細胞は植物細胞である。別の実施形態において、該細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、該細胞の核酸内にエンドヌクレアーゼ的開裂を導入し、それによって該細胞のゲノムが変性される。
【0073】
他の実施形態は、非自然発生融合タンパク質をコードする核酸分子であって、36アミノ酸長の1つ以上の反復単位および制限エンドヌクレアーゼ活性を含む、人工転写活性化因子様(TAL)エフェクター反復ドメインを含み、該反復ドメインが、所定のヌクレオチド配列の認識のために改変され、該融合タンパク質が、該所定のヌクレオチド配列を認識する、核酸分子を対象とする。一実施形態において、反復単位は、約7つ以下のアミノ酸によって異なる。別の実施形態において、反復単位のそれぞれは、アミノ酸配列:LTPXQVVAIASを含有し、XはEまたはQのいずれかであり得、アミノ酸配列:LTPXQVVAIASは、アデニン、シトシン、グアニン、またはチミンのうちの1つの認識を判定する、1つまたは2つのいずれかのアミノ酸による、カルボキシル末端の後に続く。一実施形態において、本核酸は、約1.5~約28.5の反復単位をコードする。別の実施形態において、本核酸は、約11.5、約14.5、約17.5、または約18.5の反復単位をコードする。さらなる実施形態において、該所定のヌクレオチド配列は、プロモーター領域である。いくつかの実施形態は、核酸分子または配列を含むベクターを対象とする。一実施形態において、該ベクターはウイルスベクターである。別の実施形態において、該ウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはこれらの自然もしくは改変変異体、および改変ウイルスのうちの1つ以上を含む。
【0074】
特定の実施形態は、非自然発生融合タンパク質をコードする核酸分子であって、所定のヌクレオチド配列を認識する第1の領域と、エンドヌクレアーゼ活性を有する第2の領域と、を含み、該第1の領域は、7つ以下のアミノ酸によって互いと異なる、約36アミノ酸長の1つ以上の反復単位を含む人工TALエフェクター反復ドメインを含有し、該反復ドメインは、該所定のヌクレオチド配列の認識のために改変される、核酸分子を対象とする。一実施形態において、該第1の領域は、アミノ酸配列:LTPXQVVAIASを含有し、XはEまたはQのいずれかであり得る。別の実施形態において、コードされる非自然発生融合タンパク質のアミノ酸配列LTPXQVVAIASの直後に、HD、NG、NS、NI、NN、およびNから選択されるアミノ酸配列が続く。さらなる実施形態において、該融合タンパク質は制限エンドヌクレアーゼ活性を含む。いくつかの実施形態は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60から選択される1つ以上の配列を含むタンパク質をコードする核酸分子を対象とする。
【0075】
一実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はN、H、またはIであり、「y」は任意のアミノ酸またはアミノ酸の不在であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はN、H、またはIであり、「y」はD、A、I、N、H、K、S、およびGから選択され、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVL
CQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はN、H、およびI以外の任意のアミノ酸であり、「y」は任意のアミノ酸またはアミノ酸の不在であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwIyzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「y」はG以外の任意のアミノ酸であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwIAzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQであり、「y」は任意のアミノ酸またはアミノ酸の不在であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzHGを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQであり、「y」はD、A、I、N、H、K、S、およびGから選択され、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQDHG、GGKQALETVQRLLPVLCQAHG、GKQALETVQRLLPVLCQDHG、またはGKQALETVQRLLPVLCQAHGである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyを含み、「v」はDまたはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQであり、「y」はD、A、I、N、H、K、S、およびGから選択される。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzGHGGを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はN、H、またはIであり、「y」は任意のアミノ酸またはアミノ酸の不在であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzGHGGを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はN、H、またはIであり、「y」はD、A、I、N、H、K、S、およびGから選択され、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzGHGGであり、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はN、H、およびI以外の任意のアミノ酸であり、「y」は任意のアミノ酸またはアミノ酸の不在であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAI
AwIyzGHGGであり、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「y」はG以外の任意のアミノ酸であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwIAzGHGGを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzGHGGを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQであり、「y」は任意のアミノ酸またはアミノ酸の不在であり、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyzGHGGを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQであり、「y」はD、A、I、N、H、K、S、およびGから選択され、「z」はGGRPALE、GGKQALE、GGKQALETVQRLLPVLCQD、GGKQALETVQRLLPVLCQA、GKQALETVQRLLPVLCQD、またはGKQALETVQRLLPVLCQAである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQである。さらに別の実施形態において、反復配列は、LTPvQVVAIAwxyを含み、「v」はQ、D、またはEであり、「w」はSまたはNであり、「x」はS、T、またはQであり、「y」はD、A、I、N、H、K、S、およびGから選択される。
【0076】
N末端において短縮される断片、C末端において短縮される断片、内部欠失を有する断片、ならびにN末端、C末端、および/または内部欠失を組み合わせる断片を含む、エンドヌクレアーゼ開裂ドメインの特定の断片は、完全なエンドヌクレアーゼ開裂ドメインの触媒活性の一部または全体を維持することができる。断片が完全なドメインの触媒活性の一部または全体を維持することができるかの判定は、例えば、本発明の方法に従う断片を含有する遺伝子編集タンパク質を合成すること、細胞を誘導して本発明の方法に従う遺伝子編集タンパク質を発現させること、および遺伝子編集の効率を測定することによって達成することができる。このように、遺伝子編集効率の測定を使用して、任意の特異的断片が完全なエンドヌクレアーゼ開裂ドメインの触媒活性の一部または全体を維持することができるかを確認することができる。したがって、特定の実施形態は、エンドヌクレアーゼ開裂ドメインの生物活性断片を対象とする。一実施形態において、エンドヌクレアーゼ開裂ドメインは、FokI、StsI、StsI-HA、StsI-HA2、StsI-UHA、StsI-UHA2、StsI-HF、およびStsI-UHF、またはこれらの自然もしくは改変変異体または生物活性断片から選択される。
【0077】
N末端において短縮される断片、C末端において短縮される断片、内部欠失を有する断片、ならびにN末端、C末端、および/または内部欠失を組み合わせる断片を含む、DNA結合ドメインまたは反復配列の特定の断片は、完全なDNA結合ドメインまたは反復配列の結合活性の一部または全体を維持することができる。完全な反復配列の結合活性の一部または全体を維持することができるDNA結合ドメインまたは反復配列の断片の例としては、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)TALE様タンパク質(RTL)が挙げられる。断片が完全なDNA結合ドメインまたは反復配列の結合活性の一部または全体を維持することができるかの判定は、例えば、本発明の方法に従う断片を含有する遺伝子編集タンパク質を合成すること、細胞を誘導して本発明の方法に従う遺
伝子編集タンパク質を発現させること、および遺伝子編集の効率を測定することによって達成することができる。このように、遺伝子編集効率の測定を使用して、任意の特異的断片が完全なDNA結合ドメインまたは反復配列の結合活性の一部または全体を維持することができるかを確認することができる。したがって、特定の実施形態は、DNA結合ドメインまたは反復配列の生物活性断片を対象とする。一実施形態において、該断片は、標的DNA分子内の結合部位の高特異性認識を可能にする。別の実施形態において、該断片は、青枯病菌TALE様タンパク質またはその生物活性断片をコードする配列を含む。
【0078】
特定の実施形態は、核酸を含む細胞のDNA配列を変更するための組成物を対象とし、本核酸は遺伝子編集タンパク質をコードする。他の実施形態は、核酸混合物を含む細胞のDNA配列を変更するための組成物を対象とし、該核酸混合物は、第1の遺伝子編集タンパク質をコードする第1の核酸と、第2の遺伝子編集タンパク質をコードする第2の核酸と、を含む。一実施形態において、第1の遺伝子編集タンパク質の結合部位、および第2の遺伝子編集タンパク質の結合部位は、同一の標的DNA分子内に存在する。別の実施形態において、第1の遺伝子編集タンパク質の結合部位、および第2の遺伝子編集タンパク質の結合部位は、約50個未満の塩基、約40個未満の塩基、または約30個未満の塩基もしくは約20個未満の塩基、または約10個未満の塩基、または約10個~約25個の塩基、または約15個の塩基によって分離される。一実施形態において、第1の遺伝子編集タンパク質のヌクレアーゼドメイン、および第2の遺伝子編集タンパク質のヌクレアーゼドメインは、二量体を形成することができる。別の実施形態において、該二量体は、標的DNA分子内にニックまたは二本鎖切断を生み出すことができる。一実施形態において、本組成物は治療用組成物である。別の実施形態において、本組成物は修復鋳型を含む。さらなる実施形態において、該修復鋳型は一本鎖DNA分子または二本鎖DNA分子である。
【0079】
他の実施形態は、タンパク質またはタンパク質をコードする核酸を合成するための製造物品を対象とする。一実施形態において、本物品は核酸である。別の実施形態において、該タンパク質はDNA結合ドメインを含む。さらなる実施形態において、本核酸はDNA結合ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、該タンパク質はヌクレアーゼドメインを含む。別の実施形態において、本核酸はヌクレアーゼドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、該タンパク質は、複数の反復配列を含む。別の実施形態において、本核酸は複数の反復配列をコードする。さらなる実施形態において、ヌクレアーゼドメインは、FokI、StsImStsI-HA、StsI-HA2、StsI-UHA、StsI-UHA2、StsI-HF、およびStsI-UHF、またはこれらの自然もしくは改変変異体または生物活性断片から選択される。一実施形態において、本核酸はRNAポリメラーゼプロモーターを含む。別の実施形態において、該RNAポリメラーゼプロモーターは、T7プロモーターまたはSP6プロモーターである。さらなる実施形態において、本核酸はウイルスプロモーターを含む。一実施形態において、本核酸は非翻訳領域を含む。別の実施形態において、本核酸は生体外転写鋳型である。
【0080】
特定の実施形態は、細胞を誘導してタンパク質を発現させるための方法を対象とする。他の実施形態は、細胞のDNA配列を変更するための方法であって、該細胞に遺伝子編集タンパク質を遺伝子導入すること、または該細胞を誘導して遺伝子編集タンパク質を発現させることを含む、方法を対象とする。さらに他の実施形態は、細胞中の対象のタンパク質の発現を低減するための方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、誘導されて遺伝子編集タンパク質を発現し、該遺伝子編集タンパク質は、標的DNA分子内にニックまたは二本鎖切断を作ることができる。別の実施形態において、ニックまたは二本鎖切断は、遺伝子の不活性化をもたらす。さらに他の実施形態は、タンパク質の不活性、活性低下、またはドミナントネガティブ型を産生するための方法を対象とする。一実施形態に
おいて、該タンパク質はサバイビンである。さらに他の実施形態は、細胞中の1つ以上の変異を修復するための方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、修復鋳型と接触される。別の実施形態において、該修復鋳型はDNA分子である。さらなる実施形態において、該修復鋳型は、遺伝子編集タンパク質の結合部位を含有しない。さらなる実施形態において、該修復鋳型は、遺伝子編集タンパク質の結合部位を含むDNA配列によってコードされるアミノ酸配列をコードする。
【0081】
他の実施形態は、患者を治療するための方法であって、患者に、タンパク質またはタンパク質をコードする核酸の治療有効量を投与することを含む、方法を対象とする。一実施形態において、該治療は、1つ以上の患者の症状の寛解をもたらす。特定の実施形態は、患者を治療するための方法であって、a.該患者から細胞を除去することと、b.該細胞に遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を遺伝子導入することによって、該細胞を誘導して遺伝子編集タンパク質を発現させることと、c.該細胞をリプログラミングすることと、e.該細胞を該患者に導入することと、を含む、方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、より分化されていない状態にリプログラムされる。別の実施形態において、該細胞は、該細胞に、1つ以上のリプログラミングタンパク質をコードする1つ以上の合成RNA分子を遺伝子導入することによって、リプログラムされる。さらなる実施形態において、該細胞は分化される。さらなる実施形態において、該細胞は、皮膚細胞、グルコース反応性インスリン生成細胞、造血細胞、心臓細胞、網膜細胞、腎細胞、神経系細胞、間質細胞、脂肪細胞、骨細胞、筋細胞、卵母細胞、および精細胞のうちの1つに分化される。他の実施形態は、患者を治療するための方法であって、a.該患者から造血細胞または幹細胞を除去することと、b.該細胞に遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を遺伝子導入することによって、該細胞を誘導して遺伝子編集タンパク質を発現させることと、c.該細胞を該患者に導入することと、を含む、方法を対象とする。
【0082】
DMEM/F12、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、エタノールアミン、塩基性線維芽細胞成長因子、および形質転換成長因子ベータから本質的に成る、またはこれらを含む細胞培養培地は、生体外のヒト多能性幹細胞を含む多能性幹細胞を維持するのに十分であることが、今回発見された。したがって、特定の実施形態は、DMEM/F12、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、エタノールアミン、塩基性線維芽細胞成長因子、および形質転換成長因子ベータから本質的に成る、またはこれらを含む細胞培養培地を対象とする。一実施形態において、アスコルビン酸は、約50μg/mLで存在する。別の実施形態において、インスリンは、約10μg/mLで存在する。さらなる実施形態において、トランスフェリンは、約5.5μg/mLで存在する。さらなる実施形態において、亜セレン酸ナトリウムは、約6.7ng/mLで存在する。さらなる実施形態において、エタノールアミンは、約2μg/mLで存在する。さらなる実施形態において、塩基性線維芽細胞成長因子は、約20ng/mLで存在する。さらなる実施形態において、形質転換成長因子ベータは、約2ng/mLで存在する。一実施形態において、アスコルビン酸は、アスコルビン酸-2-フォスフェートである。別の実施形態において、形質転換成長因子ベータは、形質転換成長因子ベータ1または形質転換成長因子ベータ3である。一実施形態において、細胞培養培地は、多能性幹細胞の培養のために使用される。別の実施形態において、多能性幹細胞は、ヒト多能性幹細胞である。さらなる実施形態において、細胞培養培地は、リプログラミングの間またはその後の細胞の培養のために使用される。一実施形態において、細胞培養培地は、動物由来成分を含有しない。別の実施形態において、細胞培養培地は、製造規格に従って製造される。さらなる実施形態において、該製造規格はGMPである。一実施形態において、該細胞は、細胞接着分子と接触される。別の実施形態において、細胞接着分子は、フィブロネクチンおよびビトロネクチンまたはこれらの生物活性断片から選択される。さらなる実施形態において、該細胞は、フィブロネクチンおよびビトロネクチンと接触される。さらなる実施形態において、細胞接着分子は組換え体である。
【0083】
特定の状況において、例えば、治療薬を生成する際、一つには、ウイルスおよび/または他の動物由来の病原体による汚染の危険性を低減するために、動物由来成分を非動物由来成分で置換することが有益な場合がある。遺伝子導入効率を低下させるか、または遺伝子導入関連の毒性を上昇させることなく、半合成の植物由来コレステロールを含む合成コレステロールを遺伝子導入培地中の動物由来コレステロールと置換できることが、今回発見された。したがって、特定の実施形態は、合成または半合成コレステロールを含有する遺伝子導入培地を対象とする。一実施形態において、半合成コレステロールは植物由来である。別の実施形態において、遺伝子導入培地は、動物由来コレステロールを含有しない。さらなる実施形態において、遺伝子導入培地は、リプログラミング培地である。他の実施形態は、複合体形成培地を対象とする。一実施形態において、複合体形成培地は、約7超、または約7.2超、または約7.4超、または約7.6超、または約7.8超、または約8.0超、または約8.2超、または約8.4超、または約8.6超、または約8.8超、または約9.0超のpHを有する。別の実施形態において、複合体形成培地は、トランスフェリンを含む。さらなる実施形態において、複合体形成培地は、DMEMを含む。さらなる実施形態において、複合体形成培地は、DMEM/F12を含む。さらに他の実施形態は、核酸遺伝子導入試薬の複合体を形成するための方法を対象とする。一実施形態において、遺伝子導入試薬は、複合体形成培地でインキュベートされる。別の実施形態において、インキュベーションは、混合ステップの前に発生する。さらなる実施形態において、インキュベーションステップは、約5秒~約5分、または約10秒~約2分、または約15秒~約1分、または約30秒~約45秒である。一実施形態において、遺伝子導入試薬は、表1から選択される。別の実施形態において、遺伝子導入試薬は、脂質または脂質様物質(lipidoid)である。さらなる実施形態において、遺伝子導入試薬は、陽イオンを含む。さらなる実施形態において、該陽イオンは、多価陽イオンである。さらなる実施形態において、遺伝子導入試薬は、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(別称MVL5)またはその誘導体である。
【0084】
特定の実施形態は、細胞を核酸と接触させることによって、細胞を誘導してタンパク質を発現させるための方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は哺乳類細胞である。別の実施形態において、該細胞は、ヒト細胞またはげっ歯類細胞である。他の実施形態は、本発明の方法のうちの1つ以上を使用して生成される細胞を対象とする。一実施形態において、該細胞は、患者内に存在する。別の実施形態において、該細胞は、患者から単離される。他の実施形態は、本発明の方法のうちの1つ以上を使用して生成される細胞を含むスクリーニングライブラリを対象とする。一実施形態において、スクリーニングライブラリは、心毒性スクリーニング、神経毒性スクリーニング、および肝毒性スクリーニングを含む毒性スクリーニング、効力スクリーニング、高処理スクリーニング、高含量スクリーニング、ならびに他のスクリーニングのうちの少なくとも1つのために使用される。
【0085】
他の実施形態は、核酸を含有するキットを対象とする。一実施形態において、本キットは、送達試薬(別称「遺伝子導入試薬」)を含有する。別の実施形態において、本キットは、リプログラミングキットである。さらなる実施形態において、本キットは、遺伝子編集キットである。他の実施形態は、核酸を生成するためのキットを対象とする。一実施形態において、本キットは、プソイドウリジン-トリフォスフェート、5-メチルウリジントリフォスフェート、5-メチルシチジントリフォスフェート、5-ヒドロキシメチルシチジントリフォスフェート、N4-メチルシチジントリフォスフェート、N4-アセチルシチジントリフォスフェート、および7-デアザグアノシントリフォスフェート、またはこれらの1つ以上の誘導体のうちの少なくとも2つを含有する。他の実施形態は、核酸を含む治療薬を対象とする。一実施形態において、該治療薬は、医薬組成物である。別の実
施形態において、該医薬組成物は配合される。さらなる実施形態において、該配合物は、リポソームの水性懸濁液を含む。リポソーム成分の例は表1に記載され、制限ではなく、例として提示されるものである。一実施形態において、リポソームは、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む。別の実施形態において、PEGは、PEG2000である。さらなる実施形態において、リポソームは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-フォスフォエタノールアミン(DSPE)またはその誘導体を含む。一実施形態において、該治療薬は、1つ以上のリガンドを含む。別の実施形態において、該治療薬は、アンドロゲン、CD30(TNFRSF8)、細胞透過性ペプチド、CXCR、エストロゲン、上皮成長因子、EGFR、HER2、葉酸、インスリン、インスリン様成長因子I、インターロイキン-13、インテグリン、プロゲステロン、間質由来因子1、トロンビン、ビタミンD、およびトランスフェリン、またはこれらの生物活性断片もしくは変異体のうちの少なくとも1つを含む。さらに他の実施形態は、本発明の方法のうちの1つ以上を使用して産生される細胞を含む治療薬を対象とする。一実施形態において、該治療薬は、1型糖尿病、虚血性および拡張型心筋症を含む心臓疾患、黄斑変性症、パーキンソン病、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、地中海貧血症、ファンコニ貧血、重症複合免疫不全症、遺伝性感覚性ニューロパチー、色素性乾皮症、ハンチントン病、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、癌、ならびに肝炎およびHIV/AIDSを含む感染性疾患のうちの少なくとも1つの治療のために、患者に投与される。
【表1】
【0086】
特定の実施形態は、キャップ0、キャップ1、キャップ2、およびキャップ3、またはこれらの誘導体から選択される5′キャップ構造を含む核酸を対象とする。一実施形態において、本核酸は1つ以上のUTRを含む。別の実施形態において、該1つ以上のUTRは、本核酸の安定性を上昇させる。さらなる実施形態において、該1つ以上のUTRは、アルファグロビンまたはベータグロビン5′-UTRを含む。さらなる実施形態において、該1つ以上のUTRは、アルファグロビンまたはベータグロビン3′-UTRを含む。さらなる実施形態において、合成RNA分子は、アルファグロビンまたはベータグロビン5′-UTR、およびアルファグロビンまたはベータグロビン3′-UTRを含む。一実施形態において、該5′-UTRは、コザック(Kozak)共通配列と実質的に同様であるコザック配列を含む。別の実施形態において、本核酸は、3′ポリ(A)尾部を含む
。さらなる実施形態において、該3′ポリ(A)尾部は、約20nt~約250nt、または約120nt~約150ntの長さである。さらなる実施形態において、該3′ポリ(A)尾部は、約20nt、または約30nt、または約40nt、または約50nt、または約60nt、または約70nt、または約80nt、または約90nt、または約100nt、または約110nt、または約120nt、または約130nt、または約140nt、または約150nt、または約160nt、または約170nt、または約180nt、または約190nt、または約200nt、または約210nt、または約220nt、または約230nt、または約240nt、または約250ntの長さである。
【0087】
他の実施形態は、細胞をリプログラミングするための方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、該細胞を1つ以上の核酸と接触させることによってリプログラムされる。一実施形態において、該細胞は、Oct4タンパク質、Sox2タンパク質、Klf4タンパク質、c-Mycタンパク質、Lin28タンパク質、またはこれらの生物活性断片、変異体、もしくは誘導体のうちの少なくとも1つをコードする複数の核酸と接触される。別の実施形態において、該細胞は、Oct4タンパク質、Sox2タンパク質、Klf4タンパク質、およびc-Mycタンパク質、またはこれらの1つ以上の生物活性断片、変異体、もしくは誘導体を含む複数のタンパク質をコードする複数の核酸と接触される。さらに他の実施形態は、細胞を遺伝子編集するための方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、該細胞を1つ以上の核酸と接触させることによって遺伝子編集される。
【0088】
動物モデルは、生物学的過程の効果を研究するために日常的に使用される。特定の状況において、例えば、ヒト疾患を研究する際、変性ゲノムを含有する動物モデルが有益である場合があり、これは、一つには、かかる動物モデルはヒト疾患の表現型をより綿密に模倣し得るからである。したがって、特定の実施形態は、1つ以上の遺伝子変異(別称「変異」、別称「遺伝子編集」)を含有する生物を作製するための方法を対象とする。一実施形態において、該1つ以上の遺伝子変異は、細胞に、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする1つ以上の核酸を遺伝子導入することによって産生される。別の実施形態において、該1つ以上の核酸は、合成RNA分子を含む。一実施形態において、該1つ以上の遺伝子編集タンパク質は、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALEN、クラスター化された等間隔の単鎖回文反復配列(CRISPR)関連タンパク質、ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびニッカーゼ、またはこれらの生物活性断片もしくは変異体のうちの少なくとも1つを含む。一実施形態において、該細胞は多能性細胞である。別の実施形態において、該細胞は胚性幹細胞である。さらなる実施形態において、該細胞は胚である。さらなる実施形態において、該細胞は、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、および細菌細胞のメンバーである。一実施形態において、該細胞はげっ歯類細胞である。別の実施形態において、該細胞はヒト細胞である。特定の実施形態において、該細胞は、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする1つ以上の核酸、および1つ以上の修復鋳型をコードする1つ以上の核酸を遺伝子導入される。一実施形態において、該細胞は、胚盤胞内に導入される。別の実施形態において、該細胞は、偽妊娠の雌中に導入される。さらなる実施形態において、その子孫中の遺伝子変異の存在または不在が判定される。さらなる実施形態において、該判定は、直接配列決定によるものである。一実施形態において、該生物は、家畜、例えば、ブタ、ウシなどである。別の実施形態において、該生物は、ペット、例えば、イヌ、ネコ、魚などである。
【0089】
特定の状況において、例えば、核酸配列の付加によって標的細胞のゲノムを変更する際、一つには、ランダム挿入に関連する危険性を低減するために、安全港(safe-harbor)位置内に該核酸配列を挿入することが好都合である場合がある。したがって、特定の実施形態は、安全港位置内に核酸配列を挿入するための方法を対象とする。一実施
形態において、該細胞はヒト細胞であり、該安全港位置はAAVS1遺伝子座である。別の実施形態において、該細胞はげっ歯類細胞であり、該安全港位置はRosa26遺伝子座である。一実施形態において、該細胞は、1つ以上の修復鋳型をコードする1つ以上の核酸にさらと接触される。他の実施形態は、細胞のDNA配列を変更するためのキットを対象とする。一実施形態において、該細胞はヒト細胞であり、標的DNA分子は、AAVS1遺伝子座をコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、該細胞はげっ歯類細胞であり、標的DNA分子は、Rosa26遺伝子座をコードするヌクレオチド配列を含む。他の実施形態は、レポーター細胞を産生するための方法であって、該細胞を、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする1つ以上の核酸、および1つ以上の修復鋳型をコードする1つ以上の核酸と接触させることによる方法を対象とする。一実施形態において、該1つ以上の修復鋳型は、DNAを含む。別の実施形態において、該1つ以上の修復鋳型は、1つ以上の蛍光タンパク質をコードする。さらなる実施形態において、該1つ以上の修復鋳型は、遺伝子のプロモーター領域の少なくとも一部をコードする。
【0090】
特定の状況において、例えば、遺伝子編集された細胞のライブラリを産生する際、一つには、細胞の特徴決定のコストを低減するために、遺伝子編集の効率を上昇させることが有益な場合がある。細胞を、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする合成RNAに繰り返し接触させることによって、遺伝子編集効率を上昇させられることが、今回発見された。したがって、特定の実施形態は、細胞を遺伝子編集するための方法であって、該細胞を、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする1つ以上の核酸に繰り返し接触させることによる方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、連続5日間に少なくとも2回接触される。別の実施形態において、該細胞は、約24時間~約48時間の間隔で2回接触される。
【0091】
癌において、悪性細胞の生存および増殖は、患者内に一般的には存在しない特異遺伝子異常の存在にある程度起因し得る。遺伝子編集タンパク質を使用して、生存および増殖関連経路を標的にし得ること、ならびに、このように使用されると、遺伝子編集タンパク質および遺伝子編集タンパク質をコードする核酸は、強力な抗癌治療薬を構成し得ることが、今回発見された。したがって、特定の実施形態は、抗癌治療薬を対象とする。一実施形態において、該治療薬は、細胞の生存を阻害する、および/または細胞の増殖を防止、緩徐化、あるいは制限する治療用組成物である。別の実施形態において、該細胞は癌細胞である。さらなる実施形態において、該治療薬は、1つ以上の遺伝子編集タンパク質または1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を含む。さらなる実施形態において、該1つ以上の遺伝子編集タンパク質は、細胞の生存および/または増殖を促進する1つ以上の配列を標的にする。かかる配列は、例えばBIRC5などの、アポトーシス(IAP)ファミリーの阻害剤の遺伝子を含む、アポトーシス関連遺伝子(例えば、表2、および米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2を参照のこと)と、例えば遺伝子テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)およびテロメラーゼRNA成分(TERC)などの、テロメア維持に関連する配列と、例えば遺伝子VEGFなどの、血管新生に影響する配列と、BRAF、BRCA1、BRCA2、CDKN2A、CTNNB1、EGFR、MYCファミリー、RASファミリー、PIK3CA、PIK3R1、PKN3、TP53、PTEN、RET、SMAD4、KIT、MET、APC、RB1、VEGFファミリー、TNF、およびリボヌクレオチド還元酵素ファミリーの遺伝子を含む、他の癌関連遺伝子と、を含むがこれらに限定されない。BIRC5に対する遺伝子編集タンパク質標的配列の例は、表3、および米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表3に記載されており、制限ではなく、例として提示されるものである。一実施形態において、該1つ以上の配列のうちの少なくとも1つは、悪性細胞および非悪性細胞の両方の中に存在する。別の実施形態において、該1つ以上の配列のうちの少なくとも1つは、悪性細胞中で濃縮される。さらなる実施形態において、該1つ以上の配列のうちの少なくとも1つは、非悪性細
胞中で濃縮される。一実施形態において、該治療用組成物は、1つ以上の修復鋳型をコードする核酸をさらに含む。別の実施形態において、該1つ以上の遺伝子編集タンパク質は、該細胞を誘導してタンパク質の不活性またはドミナントネガティブ型を発現させる。さらなる実施形態において、該タンパク質はIAPファミリーのメンバーである。さらなる実施形態において、該タンパク質はサバイビンである。
【表2】
【表3】
【0092】
他の実施形態は、癌を治療するための方法であって、患者に、遺伝子編集タンパク質または1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸の治療有効量を投与することを含む、方法を対象とする。一実施形態において、該治療は、患者内の癌細胞の成長の低減または停止をもたらす。別の実施形態において、該治療は、癌の進行の遅延または緩解をもたらす。一実施形態において、標的DNA分子は、BIRC5遺伝子を含む。別の実施形態において、標的DNA分子は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15から選択される配列を含む。さらなる実施形態において、複数の隣接する結合部位は、表3、表4、米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表3、米国仮出願第61/785,404号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表1、または米国仮出願第61/842,874号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表1に記載される1つ以上の配列に対して、少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%相同性である。特定の状況において、短縮されたN末端ドメインを有する遺伝子編集タンパク質を使用して、結合部位配列上の第1の塩基T制限を排除することができる。いくつかの実施形態において、癌は神経膠腫である。一実施形態において、患者は、手術および/もしくは放射線療法を以前に経験している、ならびに/または、手術および/もしくは放射線療法を同時に経験する。別の実施形態において、該投与は、くも膜下腔内注入、頭蓋内注入、静脈内注入、灌流、皮下注入、腹腔内注入、門脈内注入、および局所送達のうちの1つ以上による。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0093】
特定の実施形態は、癌を治療するための方法であって、a.1つ以上の癌性細胞を含有する生検試料を、患者から除去することと、b.該1つ以上の癌性細胞中の、癌関連遺伝子マーカーの配列を判定することと、c.該患者に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸の治療有効量を投与することと、を含み、該標的DNA分子の配列が、該癌関連遺伝子マーカーの配列に対して少なくとも約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約98%、または約99%相同性である、方法を対象とする。一実施形態において、本方法は、該1つ以上の癌性細胞中の1つ以上の癌関連遺伝子マーカーの配列を、1つ以上の非癌性細胞中の同一の癌関連遺伝子マーカーの配列と比較することと、該1つ以上の癌性細胞および該1つ以上の非癌性細胞中で異なる配列を有する癌関連遺伝子マーカーを選択することと、をさらに含み、該標的DNA分子または結合部位の配列が、該選択された癌関連遺伝子マーカーの配列に対して少なくとも約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約98%、または約99%相同性である。
【0094】
多くの癌細胞は、ヒトにおいてはBIRC5遺伝子によってコードされる、アポトーシス(IAP)タンパク質ファミリーの阻害剤のメンバーである、サバイビンを発現する。RNA干渉を使用してサバイビンmRNAを含む特定のmRNA分子の発現を低減し、特定の癌細胞の成長を一時的に阻害することができる。しかしながら、RNA干渉を使用してサバイビンmRNAの発現を低減する以前の方法は、一時的な効果をもたらし、動物モデルにおける平均の死亡までの時間(TTD)の短い増加しかもたらさない。細胞を誘導して、BIRC5遺伝子を標的にする1つ以上の遺伝子編集タンパク質を発現させることは、BIRC5遺伝子の破壊をもたらし得、細胞を誘導して、サバイビンタンパク質の非機能性変異体を発現および/または分泌させ得、細胞を誘導して、サバイビンタンパク質のドミナントネガティブ型変異体を発現および/または分泌させ得、該細胞および付近の細胞中の1つ以上のアポトーシス経路の活性化を引き起こし得、該細胞および付近の細胞の成長を緩徐化または停止させ得、該細胞および付近の細胞の死亡をもたらし得、癌の進行を阻害し得、癌患者の緩解をもたらし得ることが、今回発見された。したがって、特定の実施形態は、BIRC5遺伝子を標的にする遺伝子編集タンパク質を対象とする。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、BIRC5遺伝子内の1つ以上の領域に結合する。別の実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15から選択される配列の1つ以上の領域に結合する。さらなる実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、および配列番号27から選択される1つ以上の配列に結合する。さらなる実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、配列番号34をコードする1つ以上の核酸配列、またはその生物活性断片、変異体、もしくは類似体に結合する。さらなる実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、表3、表4、米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表3、米国仮出願第61/785,404号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表1、もしくは米国仮出願第61/842,874号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表1から選択される1つ以上の配列、または、表3、表4、米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表3、米国仮出願第61/785,404号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表1、もしくは米国仮出願第61/842,874号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表1から選択される1つ以上の配列に対して少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または約99%相同性である1つ以上の配列に結合する。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、該細胞のDNA内に1つ以上のニックまたは二本鎖切断を作る。別の実施形態において、該1つ以上のニックまたは二本鎖切断は、BIRC5遺伝子内に作られる。さらなる実施形態において、該1つ以上のニックまたは二本鎖切断は、BIRC5遺伝子の1つ以上のエクソン内に作られる。さらなる実施形態において、該1つ以上のニックまたは二本鎖切断は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15から選択される配列内に作られる。さらなる実施形態において、該1つ以上のニックまたは二本鎖切断は、アポトーシスドメイン(別称「IAP」、「IAPドメイン」、「IAP反復」、「アポトーシスタンパク質反復のバキュロウイルス阻害剤」、「BIR」など)の阻害剤をコードする配列内に作られる。さらなる実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、表5、米国仮出願第61/785,404号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2、もしくは米国仮出願第61/842,874号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2から選択される1つ以上の配列、または、表5、米国仮出願第61/785,404号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2、もしくは米国仮出願第61/842,874号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2から選択される1つ以上の配列に対して少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%相同性である1つ以上の配列に結合する。さらに別の実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、表2、表5、表6、表7、米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表4、米国仮出願第61/785,404号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2、または米国仮出願第61/842,874号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表2から選択される1つ以上の遺伝子をコードする配列に結合する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【0095】
いくつかの実施形態において、標的DNA分子は、癌中で過剰発現される遺伝子を含む。癌中で過剰発現される遺伝子例としては、ABL1、BIRC5、BLK、BTK、CDKファミリーメンバー、EGFR、ERBB2、FAS、FGR、FLT4、FRK、FYN、HCK、HIF1A、HRAS、HSP90AA1、HSP90AA1、HSPA4、KDR、KIF11、KIF11、KIF20A、KIF21A、KIF25、KIT、KRAS、LCK、LYN、MAPK1、MET、MYC、MYH1、MYO1G、NRAS、NTRK1、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PKN3、PLK1、RAF1、RB1、RET、RRM1、RRM2、SRC、TNF、TPM2、TYRO3、VEGFA、VEGFB、VEGFC、YES1、およびZAP70が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、標的DNA分子は、ABL1、BIRC5、BLK、BTK、CDKファミリーメンバー、EGFR、ERBB2、FAS、FGR、FLT4、FRK、FYN、HCK、HIF1A、HRAS、HSP90AA1、HSP90AA1、HSPA4、KDR、KIF11、KIF11、KIF20A、KIF21A、KIF25、KIT、KRAS、LCK、LYN、MAPK1、MET、MYC、MYH1、MYO1G、NRAS、NTRK1、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PKN3、PLK1、RAF1、RB1、RET、RRM1、RRM2、SRC、TNF、TPM2、TYRO3、VEGFA、VEGFB、VEGFC、YES1、およびZAP70、またはこれらの断片もしくは変異体から選択される遺伝子を含む。他の実施形態において、標的DNA分子は、癌中で変異される遺伝子を含む。癌中で変異される遺伝子例としては、AIM1、APC、BRCA1、BRCA2、CDKN1B、CDKN2A、FAS、FZDファミリーメンバー、HNF1A、HOPX、KLF6、MEN1、MLH1、NTRK1、PTEN、RARRES1、RB1、SDHB、SDHD、SFRP1、STファミリーメンバー、TNF、TP53、TP63、TP73、VBP1、VHL、Wntファミリーメンバー、BRAF、CTNNB1、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、およびYPEL3が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、標的DNA分子は、AIM1、APC、BRCA1、BRCA2、CDKN1B、CDKN2A、FAS、FZDファミリーメンバー、HNF1A、HOPX、KLF6、MEN1、MLH1、NTRK1、PTEN、RARRES1、RB1、SDHB、SDHD、SFRP1、STファミリーメンバー、TNF、TP53、TP63、TP73、VBP1、VHL、Wntファミリーメンバー、BRAF、CTNNB1、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、およびYPEL3、またはこれらの断片もしくは変異体から選択される遺伝子を含む。一実施形態において、本方法は、患者に、修復鋳型の治療有効量を投与することをさらに含む。
【0096】
特定の遺伝子内の変異は、細胞が癌性になる可能性を増加させ得る。しかしながら、特定の状況において、例えば、癌関連遺伝子の非変異形態が有益である場合、非癌性細胞中の癌関連遺伝子を不活性化させることは有害であり得る。遺伝子編集タンパク質を使用して、遺伝子の部分的または完全な変異形態を特異的に不活性化できることが、今回発見された。癌関連変異の例としては、ALK(F1174、R1275)、APC(R876、Q1378、R1450)、BRAF (V600)、CDKN2A(R58、R80、H83、D84、E88、D108G、W110、P114)、CTNNB1(D32、S33、G34、S37、T41、またはS45)、EGFR(G719、T790、L858)、EZH2(Y646)、FGFR3(S249、Y373)、FLT3(D835)、GNAS(R201)、HRAS(G12、G13、Q61)、IDH1(R132)、JAK2(V617)、KIT(D816)、KRAS(G12、G13)、NRAS(G12、G13、Q61)、PDGFRA(D842)、PIK3CA(E542、E545、H1047)、PTEN(R130)、およびTP53(R175、H179、G245、R248、R249、R273、W282)が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、特定の実施形態は、疾患に関連する変異に結合する遺伝子編集タンパク質を対象とする。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、変異を含有しないDNAよりも高い親和性を有する、特異的変異を含有するDNAに結合する。別の実施形態において、該疾患は癌である。
【0097】
レビー小体を伴うアルツハイマー病、パーキンソン病、および認知症を含む神経変性疾患は、中枢神経系および/または末梢神経系の細胞の機能の進行性消失および/または死亡を特徴とする。疾患の進行には、タンパク質α-シヌクレイン(コードされた、ヒト内の、SNCA遺伝子による)を含み得るタンパク質に富んだプラークの蓄積が同伴し得る。結果として、研究者は、例えば、プラークに結合し、免疫系による破壊のためにそれにタグをつける抗体の手段によって、これらのプラークを解体することができる治療薬を開発しようとしてきた。しかしながら、多くの場合、プラークの解体は、疾患の患者症状もしくは進行に対して、ほとんどまたは全く効果を有さない。神経変性疾患関連プラークを標的にする既存の療法の失敗は、プラーク形成の初期段階の間に発生する細胞への損傷を修復する能力が神経系にないことにある程度起因することが、今回発見された。細胞を誘導して、SNCA遺伝子を標的にする1つ以上の遺伝子編集タンパク質を発現させることは、SNCA遺伝子の破壊をもたらし得、細胞を誘導して、α-シヌクレインタンパク質の耐プラーク性変異体を発現させ得、神経変性疾患関連プラークの成長を緩徐化または停止させ得、神経変性疾患関連プラークの損傷効果から該細胞および付近の細胞を保護し得、レビー小体を伴うアルツハイマー病、パーキンソン病、および認知症を含む神経変性疾患の進行を緩徐化および/または停止させ得、レビー小体を伴うアルツハイマー病、パーキンソン病、および認知症を含む神経変性疾患を有する患者における症状の低減および/または機能の増加をもたらし得ることが、今回発見された。他の神経変性疾患としては、例えば、失明を含む視力損失、難聴を含む聴力損失、平衡障害、味覚および/または嗅覚損失、ならびに他の感覚障害が挙げられる。したがって、特定の実施形態は、SNCA遺伝子を標的にする遺伝子編集タンパク質を対象とする。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、SNCA遺伝子内の1つ以上の領域に結合する。別の実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、配列番号51をコードする1つ以上の核酸配列、またはその生物活性断片、変異体、もしくは類似体に結合する。他の実施形態は、神経変性疾患を治療するための方法であって、患者に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸の治療有効量を投与することであって、該遺伝子編集タンパク質は、疾患に関連するプラークを形成するタンパク質をコードするヌクレオチド配列に結合することができる、投与することと、結果として該患者の疾患に関連するプラークの低減、および/または該疾患の進行の遅延または停止をもたらすことと、を含む、方法を対象とする。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、SNCA遺伝子を含む。別の実施形態において、ヌクレオチド配列は、α-シヌクレインをコードする。さらなる実施形態において、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、および認知症から選択される。
【0098】
特定の実施形態は、病原性毒物を識別するための方法であって、細胞に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を遺伝子導入して、該細胞のDNA配列を変更することであって、該変更されたDNA配列が疾患に対する感受性を与える、変更することと、該細胞を、疑わしい病原性毒物と接触させることと、該細胞が該疾患に関連する表現型を示す程度を査定することと、を含む、方法を対象とする。一実施形態において、該疾患は、神経変性疾患、自己免疫疾患、呼吸器疾患、生殖器疾患、または癌である。他の実施形態は、治療用物質の安全性を査定するための方法であって、細胞に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を遺伝子導入して、該細胞のDNA配列を変更することであって、該変更されたDNA配列が該治療用物質の1つ以上の毒性効果に対する感受性を与える、変更することと、該細胞に対する該治療用物質の1つ以上の毒性効果を測定することと、を含む、方法を対象とする。さらに他の実施形態は、治療用物質の有効性を査定するための方法であって、細胞に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を遺伝子導入して、該細胞のDNA配列を変更することであって、該変更されたDNA配列が、該細胞に1つ以上の疾患に関連する表現型を示させる、変更することと、該細胞を、該治療用物質と接触させることと、該1つ以上の疾患に関連する表現型が低減される程度を測定することと、を含む、方法を対象とする。
【0099】
いくつかの実施形態において、該患者は、プロテオパチー(proteopathy)と診断される。プロテオパチーおよびプロテオパチー関連遺伝子の例は表6に提示され、制限ではなく、例として含まれるものである。一実施形態において、プロテオパチーは、AA(続発性)アミロイド症、アレキサンダー病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、大動脈内アミロイド症、ApoAIアミロイド症、ApoAIIアミロイド症、ApoAIVアミロイド症、ビブリノゲンアミロイド症、心臓性心房性アミロイド症、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、脳β-アミロイド血管症、透析アミロイド症、家族性アミロイド心筋症、家族性アミロイド多発ニューロパチー、家族性アミロイド症(フィンランド型)、家族性イギリス型認知症、家族性デンマーク型認知症、前頭側頭葉変性症、遺伝性脳アミロイド血管症、遺伝性格子状角膜ジストロフィー、ハンチントン病、封入体筋炎/筋症、リゾチームアミロイド症、甲状腺髄様癌、歯原性(Pindborg)腫瘍アミロイド、パーキンソン病、下垂体プロラクチノーマ、プリオン病、肺胞タンパク症、緑内障における網膜神経節細胞変性、ロドプシン変異を伴う網膜色素変性症、老人性全身性アミロイド症、セルピノパチー(serpinopathy)、シヌクレイン病、タウオパチー、II型糖尿病、パンチドランカー(dementia pugilistica)(慢性外傷性脳症)、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、神経節細胞腫、神経節膠腫、ハラーホルデン-スパッツ症候群、鉛脳症、リポフスチン沈着症、Lytico-Bodig病、髄膜血管腫症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングル優性認知症、および結節性硬化症から選択される。別の実施形態において、標的DNA分子は、APOA1、APOA2、APOA4、APP、B2M、CALCA、CST3、FGA、FGB、FGG、FUS、GFAP、GSN、HTT、IAPP、ITM2B、LYZ、MAPT、MFGE8、NOTCH3、NPPA、ODAM、PRL、PRNP、RHO、SAAファミリーメンバー、SERPINファミリーメンバー、SFTPC、SNCA、SODファミリーメンバー、TARDBP、TGFBI、およびTRR、またはこれらの断片もしくは変異体から選択される遺伝子を含む。さらなる実施形態において、標的DNA分子は、表6から選択される遺伝子またはその断片をコードし、該患者は、表6に記載される対応する疾患と診断される。
【表6】
【0100】
タウオパチーの例としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病が挙げられるがこれらに限定されない。タウオパチーの他の例としては、パンチドランカー(慢性外傷性脳症)、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、神経節細胞腫、神経節膠腫、ハラーホルデン-スパッツ症候群、鉛脳症、リポフスチン沈着症、Lytico-Bodig病、髄膜血管腫症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングル優性認知症、および結節性硬化症が挙げられる。いくつかの実施形態において、該患者は、タウオパチーと診断される。一実施形態において、タウオパチーは、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病から選択される。別の実施形態において、タウオパチーは、パンチドランカー(慢性外傷性脳症)、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、神経節細胞腫、神経節膠腫、ハラーホルデン-スパッツ症候群、鉛脳症、リポフスチン沈着症、Lytico-Bodig病、髄膜血管腫症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングル優性認知症、および結節性硬化症から選択される。
【0101】
ループス、多発性硬化(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および移植片拒絶を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患は、非感染性かつ非癌性の同質遺伝子的細胞および/または組織を攻撃する免疫系の1つ以上の要素によって、ある程度引き起こされる症状を特徴とする。したがって、特定の実施形態は、自己免疫疾患を治療するための方法を対象とする。一実施形態において、自己免疫疾患は、ループス、多発性硬化(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および移植片拒絶から選択される。別の実施形態において、標的DNA分子は、宿主免疫系によって認識され得るポリペプチド配列をコードする。
【0102】
感染病原体は、宿主生物中に存在しない核酸配列を含有し得る。遺伝子編集タンパク質を使用して、感染病原体および/または感染症の効果の全体または一部を排除、低減、あるいは変更し得ること、ならびに、このように使用されると、遺伝子編集タンパク質および遺伝子編集タンパク質をコードする核酸は、強力な抗感染症治療薬を構成し得ることが、今回発見された。このように治療され得る感染病原体としては、ウイルス、細菌、真菌、酵母、および寄生体が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、特定の実施形態は、細胞を誘導して、1つ以上の感染病原体関連配列を標的にする遺伝子編集タンパク質を発現させるための方法を対象とする。一実施形態において、該細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、および寄生細胞のうちの1つである。別の実施形態において、該細胞は哺乳類細胞である。さらなる実施形態において、該細胞はヒト細胞である。他の実施形態は、1つ以上の感染病原体関連配列を標的にする1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を含む、治療用組成物を対象とする。特定の実施形態は、細胞を誘導して、感染症への感受性または抵抗性に関連する1つ以上の配列を標的にする遺伝子編集タンパク質を発現させるための方法を対象とする。他の実施形態は、感染症への感受性または抵抗性に関連する1つ以上の配列を標的にする1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を含む、治療用組成物を対象とする。一実施形態において、該細胞は、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸、および1つ以上の修復鋳型をコードする核酸を遺伝子導入される。別の実施形態において、該修復鋳型は、抵抗性遺伝子またはその生物活性断片もしくは変異体を含有する。さらなる実施形態において、該修復鋳型は、RNAi配列を含有する。さらなる実施形態において、該RNAi配列は、shRNAである。他の実施形態は、感染性疾患を治療するための方法であって、患者に、遺伝子編集タンパク質または遺伝子編集タンパク質をコードする核酸の治療有効量を投与することを含み、該遺伝子編集タンパク質が、該感染病原体内に存在する1つ以上のヌクレオチド配列に結合することができる、方法を対象とする。
【0103】
DNA修復経路の1つ以上の構成要素の発現および/または機能を変更することによって、非相同末端結合現象の相同組換え現象に対する比率を変更できることが、今回発見された。DNA修復経路の構成要素をコードする遺伝子の非限定例としては、Artemis、BLM、CtIP、DNA-PK、DNA-PKcs、EXOl、FEN1、Ku70、Ku86、LIGIII、LIGIV、MRE11、NBS1、PARP1、RAD50、RAD54B、XLF、XRCC1、XRCC3、およびXRCC4が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、特定の実施形態は、DNA修復経路の1つ以上の構成要素の発現および/または機能を変更するための方法を対象とする。特定の実施形態において、該発現および/または機能は増加される。他の実施形態において、該発現および/または機能は減少される。DNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA-PK)は、非相同末端結合DNA修復経路の構成要素である。DNA-PKの発現を変更することによって、相同組換えを介する修復が増加され得ることが、今回発見された。一実施形態において、細胞は、DNA-PK阻害剤と接触される。DNA-PK阻害剤の例としては、化合物401(2-(4-モルフォリニル)-4H-ピリミド[2,1-a]イソキノリン-4-オン)、DMNB、IC87361、LY294002、NU7026、NU7441、OK-1035、PI 103ヒドロクロライド、バニリン、およびワートマニンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0104】
遺伝子変異は、例えば、終止コドンを導入すること、および/または読み取り枠を破壊することによって、タンパク質生成物の長さに影響し得る。デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィーを含む特定の疾患は、短縮および/またはフレームシフト型タンパク質の生成によって引き起こされ得る。遺伝子編集タンパク質を使用して、1つ以上の短縮および/またはフレームシフト型タンパク質の生成に関連する疾患を治療できることが、今回発見された。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、疾患の要因となる変異を含有するエクソンの約1kb、または約0.5kb、または約0.1kb内に二本鎖切断を作る。別の実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、1つ以上の野生型配列を含むDNA配列と同時発現する。特定の実施形態において、該DNAは一本鎖である。他の実施形態において、該DNAは二本鎖である。短縮タンパク質の発現によって引き起こされる疾患は、エクソンスキッピングによって治療され得る。遺伝子編集タンパク質を使用して、エクソンスキッピングを誘導できることが、今回発見された。一実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、スキップされるエクソンの約1kb、または約0.5kb、または約0.1kb内に二本鎖切断を作る。別の実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、スキップされるエクソンのイントロン上流の約1kb、または約0.5kb、または約0.1kb内に二本鎖切断を作る。別の実施形態において、遺伝子編集タンパク質は、スキップされるエクソンのイントロン上流のスプライス受容部位の約1kb、または約0.5kb、または約0.1kb内に二本鎖切断を作る。
【0105】
核酸を含有するリポソーム配合物を含む核酸は、生体内に送達されると、肝臓および/または脾臓内に蓄積し得る。遺伝子編集タンパク質をコードする核酸は、肝臓および脾臓内の遺伝子発現を調節し得ること、ならびに、このように使用される核酸は、肝臓および脾臓疾患の治療のための強力な治療薬を構成し得ることが、今回発見された。したがって、特定の実施形態は、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を患者に送達することによって、肝臓および/または脾臓疾患を治療するための方法を対象とする。他の実施形態は、肝臓および/または脾臓疾患の治療のための、1つ以上の遺伝子編集タンパク質をコードする核酸を含む、治療用組成物を対象とする。治療され得る肝臓および/または脾臓の疾患ならびに条件としては、肝炎、アルコール誘発性肝疾患、薬剤誘発性肝疾患、エプスタインバーウイルス感染症、アデノウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、トキソプラズマ症、ロッキー山紅斑熱、非アルコール性脂肪性肝疾患、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、ジルベール病、ならびに肝臓および/または脾臓の癌が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法を使用して遺伝子編集タンパク質によって標的にされ得る配列(遺伝子、遺伝子ファミリー、および座位を含む)の他の例は、表7に記載され、制限ではなく、例として提示されるものである。
【表7】
【0106】
特定の実施形態は、本発明の治療用組成物のうちの1つ以上、および1つ以上のアジュバント療法を含む併用療法を対象とする。アジュバント療法の例は、表8、および米国仮出願第61/721,302号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の表5に記載されており、制限ではなく、例として提示されるものである。
【表8-1】
【表8-2】
【0107】
医薬品は、送達試薬(別称「遺伝子導入試薬」)および/または賦形剤をさらに含み得る。薬学的に許容される送達試薬、賦形剤、ならびにこれらの調製および使用方法(医薬品を調製し、患者(別称「被験体」)に投与するための方法を含む)は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許出願公開第US2008/0213377号(この全体は参照により本明細書に組み込まれる)を含む多数の出版物に記載されている。
【0108】
例えば、本組成物は、形態薬学的に許容される塩であり得る。かかる塩としては、例えば、J.Pharma.Sci.66,2-19(1977)、およびThe Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection,and Use.P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Verlag,Zurich(Switzerland)2002に記載されているものが挙げられ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。薬学的に許容される塩の非限定例としては、スルフェート、シトレート、アセテート、オキサレート、クロライド、ブロミド、ヨウ化物、ニトレート、ビスルフェート、フォスフェート、酸性フォスフェート、イソニコチネート、ラクテート、サリシレート、クエン酸、タートレート、オレート、タンニン酸、パントテネート、ビタートレート、アスコルベート、スクシネート、マレート、ゲンチシネート、フマレート、グルコネート、グルカロネート、サッカレート、ギ酸、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネート、カンフルスルホネート、パモエート、フェニルアセテート、トリフルオロアセテート、アクリレート、クロロベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、メチルベンゾエート、o-アセトキシベンゾエート、ナフタレン-2-ベンゾエート、イソブチレート、フェニルブチレート、α-ヒドロキシブチレート、ブチン-1,4-ジカルボキシレート、ヘキシン-1,4-ジカルボキシレート、カプレート、カプリレート、シナメート、グリコレート、ヘプタノエート、馬尿酸塩、リンゴ酸、ヒドロキシマレート、マロネート、マンデレート、メシレート、ニコチネート、フタレート、テラフタレート、プロピオレート、プロピオネート、フェニルプロピオネート、セバケート、スベレート、p-ブロモベンゼンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、エチルスルホネート、2-ヒドロキシエチルスルホネート、メチルスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、ナフタレン-1,5-スルホネート、キシレンスルホネート、タータレート(tartarate)塩、例えばナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物と、例えばカルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物と、例えばアルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物と、アンモニア、および、例えば未置換またはヒドロキシ置換モノ-、ジ-、もしくはトリ-アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機アミンと、トリブチルアミンと、ピリジンと、N-メチル、N-エチルアミンと、ジエチルアミンと、トリエチルアミンと、例えばモノ-、ビス-、もしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのモノ-、ビス-、もしくはトリス-(2-OH-低級アルキルアミン)と、例えばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシル-低級アルキル)-アミンと、N-メチル-D-グルカミンと、例えばアルギニン、リジン、および同類のものなどのアミノ酸と、が挙げられる。
【0109】
本医薬組成物は、水および油(石油、動物、植物由来のもの、または、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油、および同類のものなどの合成起源のものを含む)などの液体を含む賦形剤を含み得る。医薬品賦形剤は、例えば、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、滑石、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素、および同類のものであり得る。さらに、助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を使用してもよい。一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、被験体に投与されるとき無菌である。適切な医薬品賦形剤はまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセロールモノステアレート、滑石、ナトリウムクロライド、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、ならびに同類のものを含む。所望の場合、本明細書で説明される任意の薬剤は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。
【0110】
様々な実施形態において、本明細書で説明される本組成物は、例えば、約1mg/kg~約100mg/kg、約2.5mg/kg~約50mg/kg、または約5mg/kg~約25mg/kgの有効用量で投与され得る。何が有効用量と見なされるかの正確な判定は、サイズ、年齢、および疾患の種類を含む、各患者個人の要因に基づき得る。投薬量は、本開示および当技術分野における知識から、当業者によって容易に確認され得る。例えば、用量は、Physicians’ Desk Reference,66th Edition,PDR Network;2012 Edition(December 27,2011)を参照して判定され得、この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
本発明の活性組成物は、伝統的な医薬品を含み得る。本発明に従うこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的な経路を介してよい。これは、経口、経鼻、または頬側を含む。あるいは、投与は、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、もしくは静脈内注入によるもの、または癌組織中への直接注入によるものでもよい。本明細書において開示される薬剤は、カテーテル系によって投与されてもよい。かかる組成物は、本明細書で説明される通り、薬学的に許容される組成物として通常は投与される。
【0112】
配合後、溶液は、投薬配合物と相溶性があるように、かつ治療的に有効であるような量で投与され得る。配合物は、例えば注入可能な溶液、薬物放出カプセル、ならびに同類のものなどの多様な投薬形態で容易に投与され得る。例えば、水溶液中の非経口投与のために、溶液は一般的に適切に緩衝され、希釈液は、例えば、十分な生理食塩水またはグルコースを用いて、まず等張性にされる。かかる水溶液は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与のために使用可能である。好適には、特に本開示を踏まえて当業者に周知であるように、無菌の水性媒体が採用される。
【0113】
例示的な被験体または患者は、ヒトおよび他の霊長類(例えば、チンパンジーおよび他の類人猿ならびにサル種)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ)、家庭用哺乳類(例えば、イヌおよびネコ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、およびモルモットなどのげっ歯類)、ならびに鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、および他の家禽鳥、アヒル、ガチョウなどの家庭用、野生、および狩猟用の鳥、ならびに同類のもの)を制限なく含む、任意の脊椎動物を意味する。いくつかの実施形態において、該被験体は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、該被験体はヒトである。
【0114】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0115】
実施例1 RNA合成
ヒトタンパク質Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc-2(T58A)、およびLin28をコードするRNA、またはヒト遺伝子XPA、CCR5、TERT、MYC、およびBIRC5を標的にし、かつ標準および非標準ヌクレオチドの様々な組み合わせを含むTALENを、mRNAキャップ2′-O-メチルトランスフェラーゼと共に、T7 High Yield RNA Synthesis KitおよびVaccinia Capping Systemキット(全てNew England Biolabs,Inc.製)を使用して、製造者の指示、ならびに本発明者の以前に開示された発明(米国出願第13/465,490号(現在は米国特許第8,497,124号)、米国仮出願第61/637,570号、米国仮出願第61/664,494号、国際出願第PCT/US12/67966号、米国仮出願第61/785,404号、米国出願第13/931,251号、および米国仮出願第61/842,874号、これら全ての内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、DNA鋳型から合成した(表9、
図1A、
図1B、および
図15)。このRNAを次に、ヌクレアーゼを含まない水で、100ng/μL~200ng/μLまで希釈した。特定の実験のために、1μL/100μgのRNAの濃度でリボヌクレアーゼ阻害剤(Superase・In、Life Technologies Corporation)を添加した。RNA溶液を4℃で保管した。リプログラミング実験のために、Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc-2(T58A)、およびLin28をコードするRNAを、3:1:1:1:1のモル比で混合した。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【0116】
実施例2 合成RNAを用いる細胞の遺伝子導入
6ウェルプレート内での遺伝子導入のために、2μgのRNAおよび6μLの遺伝子導入試薬(Lipofectamine RNAiMAX、Life Technologies Corporation)を、複合体形成培地(Opti-MEM、Life Technologies Corporation、またはDMEM/F12+10μg/mLのインスリン+5.5μg/mLのトランスフェリン+6.7ng/mLの亜セレン酸ナトリウム+2μg/mLのエタノールアミン)中で、まず別々に希釈して、それぞれ60μLの総体積にした。遺伝子導入試薬の製造者の指示に従って、希釈したRNAおよび遺伝子導入試薬を、次に混合し、15分かけて室温にてインキュベートした。次に、複合体を培養液中の細胞に添加した。30μL~240μLの複合体を、1ウェル当たり2mLの遺伝子導入培地を既に含有した6ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを穏やかに振盪し、この複合体をウェル全体に分布させた。細胞を、4時間から一晩かけて複合体と共にインキュベートし、培地を新鮮な遺伝子導入培地(2mL/ウェル)と交換した。24ウェルおよび96ウェルプレート内での遺伝子導入のために、体積を計った。あるいは、0.5μg~5μgのRNA、およびRNA1μg当たり2~3μLの遺伝子導入試薬(Lipofectamine 2000、Life Technologies Corporation)を、複合体形成培地(Opti-MEM、Life Technologies Corporation、またはDMEM/F12+10μg/mLのインスリン+5.5μg/mLのトランスフェリン+6.7ng/mLの亜セレン酸ナトリウム+2μg/mLのエタノールアミン)中で、まず別々に希釈して、それぞれ5μL~100μLの総体積にした。希釈したRNAおよび遺伝子導入試薬を、次に混合し、10分かけて室温にてインキュベートした。次に、複合体を培養液中の細胞に添加した。10μL~200μLの複合体を、1ウェル当たり2mLの遺伝子導入培地を既に含有した6ウェルプレートの各ウェルに添加した。特定の実験において、DMEM+10%のFBS、またはDMEM+50%のFBSを、遺伝子導入培地の代わりに使用した。プレートを穏やかに振盪し、この複合体をウェル全体に分布させた。細胞を、4時間から一晩かけて複合体と共にインキュベートした。特定の実験において、遺伝子導入の4時間または24時間後に、培地を新鮮な遺伝子導入培地(2mL/ウェル)と交換した。
【0117】
実施例3 非標準ヌクレオチドを含有する合成RNAの毒性およびそのタンパク質翻訳
初代ヒト線維芽細胞を、実施例1に従って合成したRNAを使用して、実施例2に従って遺伝子導入した。細胞を固定し、遺伝子導入の20~24時間後に、Oct4に対する抗体を使用して染色した。固定化時の細胞密度を査定することによって、RNAの相対的な毒性を判定した。
【0118】
実施例4 遺伝子導入培地の配合
細胞培養培地を発達させ、核酸を用いる細胞の効率的な遺伝子導入および効率的なリプログラミングを支持した(「遺伝子導入培地」):
DMEM/F12+15mMのHEPES+2mMのL-アラニル-L-グルタミン+10μg/mLのインスリン+5.5μg/mLのトランスフェリン+6.7ng/mLの亜セレン酸ナトリウム+2μg/mLのエタノールアミン+50μg/mLのL-アスコルビン酸2-フォスフェートセスキマグネシウム塩水和物+4μg/mLのコレステロール+1μMのヒドロコルチゾン+25μg/mLのポリオキシエチレンソルビタンモノオレート+2μg/mLのD-アルファ-トコフェロールアセテート+20ng/mLのbFGF+5mg/mLの処置済ヒト血清アルブミン。
【0119】
この培地の変異体を発達させ、多能性幹細胞を含む多様な細胞型のしっかりした長期間培養を支持した(「維持培地」):
DMEM/F12+2mMのL-アラニル-L-グルタミン+10μg/mLのインスリン+5.5μg/mLのトランスフェリン+6.7ng/mLの亜セレン酸ナトリウム+2μg/mLのエタノールアミン+50μg/mLのL-アスコルビン酸2-フォスフェートセスキマグネシウム塩水和物+20ng/mLのbFGF+2ng/mLのTGF-β1。
【0120】
遺伝子導入培地中で、処置済ヒト血清アルブミンを、32mMのナトリウムオクタノエートの添加によって処置し、続いて60℃にて4時間かけて加熱し、続いてイオン交換樹脂(AG501-X8(D)、Bio-Rad Laboratories,Inc.)で6時間かけて室温にて処置し、続いてデキストランでコーティングした活性炭(C6241、Sigma-Aldrich Co.LLC.)で一晩かけて室温にて処置し、続いて遠心分離し、濾過し、ヌクレアーゼを含まない水で10%の溶液に調節し、続いて培地のその他の成分に添加し、これを、別段の記載がない限り本明細書で説明される全ての実施例において、遺伝子導入培地として使用した。リプログラミング実験のために、別段の記載がない限り、DMEM+10%~20%の血清中のコーティング無しのプレート、または遺伝子導入培地中のフィブロネクチンおよびビトロネクチンでコーティングしたプレートのいずれかの上に、細胞をプレーティングした。この遺伝子導入培地は、別段の記載がない限り、条件付けしなかった。遺伝子導入培地の配合は、培養される特異的な細胞型の必要性を満たすように調節され得ることが認識される。処置済ヒト血清アルブミンを、他の処置済アルブミン、例えば、処置済ウシ血清アルブミンと、培地の性能に悪影響を与えることなく交換できることが、さらに認識される。L-アラニル-L-グルタミンの代わりに、またはそれに加えて、他のグルタミン供給源、例えば、L-グルタミンを使用してもよいこと、HEPESの代わりに、またはそれに加えて、他の緩衝系、例えば、フォスフェート、ビカーボネートなどを使用してもよいこと、亜セレン酸ナトリウムの代わりに、またはそれに加えて、他の形態のセレン、例えば、亜セレン酸を提供してもよいこと、L-アスコルビン酸2-フォスフェートセスキマグネシウム塩水和物および/またはD-アルファ-トコフェロールアセテートの代わりに、またはそれに加えて、他の抗酸化剤、例えば、L-アスコルビン酸を使用してもよいこと、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートの代わりに、またはそれに加えて、他の界面活性剤、例えば、Pluronic F-68および/またはPluronic F-127を使用してもよいこと、DMEM/F12の代わりに、またはそれに加えて、他の基本培地、例えば、MEM、DMEMなどを使用してもよいこと、ならびに、例えば、0日目~5日目はTGF-βを含まない培地を使用し、次に、5日目以降は2ng/mLのTGF-βを含有する培地を使用することによって、培地の性能に悪影響を与えることなく、培養培地の成分を経時的に変更し得ることが、さらに認識される。他の成分、例えば、脂肪酸、リゾフォスファチジン酸、リゾスフィンゴミエリン、スフィンゴシン-1-フォスフェート、他のスフィンゴ脂質、Y-27632およびチアゾビビンを含むROCK阻害剤、タンパク質のTGF-β/NODALファミリーのメンバー、IL-6、タンパク質のWntファミリーのメンバーなどを、適当な濃度で、培地の性能に悪影響を与えることなく添加できること、ならびに、特異的な細胞型の成長を促進または阻害することが知られる成分、および/もしくはタンパク質の刺激剤および/もしくは拮抗剤、または特異的な細胞型の成長を促進または阻害することが知られるその他の分子、例えば、スフィンゴシン-1-フォスフェートおよび多能性幹細胞を、適当な濃度で、これらの細胞型と共に使用される際に培地の性能に悪影響を与えることなく培地に添加できることが、さらに認識される。本発明は、精製化合物として添加される成分、詳細に明らかにされた混合物の部分として添加される成分、複合体または未決定の混合物、例えば、動物もしくは植物油の部分として添加される成分、および生物学的過程、例えば、条件付けによって添加される成分に、等しく関する。成分の濃度は、当業者にとって明白となる範囲内で、培地の性能に悪影響を与えることなく、記載される値から変動し得る。全てのタンパク質成分の組換え版、および、半合成植物由来コレステロール(Avanti Polar Lipids,Inc.)を含む、全ての他の成分の非動物由来版を使用して、培地の無動物成分版を生成した。
【0121】
実施例5 非標準ヌクレオチドを含有する合成RNAを使用するヒト線維芽細胞のリプログラミング
初代ヒト新生児線維芽細胞を、組換えヒトフィブロネクチンおよび組換えヒトビトロネクチン(それぞれDMEM/F12内で1μg/mL、1mL/ウェルの濃度まで希釈し、室温にて1時間かけてインキュベートした)でコーティングした6ウェルプレート内に、遺伝子導入培地中で10,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。翌日、この細胞を、実施例2に示すように、A、0.5の7dG、0.5の5mU、および5mCを含有するRNA、ならびに、1日目に0.5μg/ウェル、2日目に0.5μg/ウェル、3日目に2μg/ウェル、4日目に2μg/ウェル、そして5日目に4μg/ウェルのRNA用量を使用して遺伝子導入した。リプログラミングと一致する形態を示す細胞の小さなコロニーが、早ければ5日目に目に見えるようになった。この培地を、6日目に維持培地と交換した。細胞を、Oct4に対する抗体を使用して染色した。リプログラミングと一致する形態を示す細胞のOct4陽性コロニーは、ウェル全体で目に見えた。(
図2)。
【0122】
実施例6 フィーダーを含まない、継代を含まない、免疫抑制剤を含まない、条件付けを含まない、合成RNAを使用する初代成熟ヒト線維芽細胞のリプログラミング
6ウェルプレートのウェルを、組換えヒトフィブロネクチンと組換えヒトビトロネクチンの混合物(DMEM/F12、1mL/ウェル中1μg/mL)で、1時間かけて室温にてコーティングした。初代成熟ヒト線維芽細胞を、このコーティングしたウェル内に、遺伝子導入培地中で10,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を、37℃、5%のCO
2、および5%のO
2に維持した。翌日から、細胞に、実施例1に従って合成したRNAを、実施例2に従い、5日間かけて遺伝子導入した。この5日間の各日に遺伝子導入したRNAの総量は、それぞれ、0.5μg、0.5μg、2μg、2μg、および4μgであった。4回目の遺伝子導入から、培地を1日に2回交換した。最終の遺伝子導入の翌日に、この培地を、10μMのY-27632を補充した遺伝子導入培地と交換した。リプログラムした形態を有する細胞の緻密なコロニーは、4日目までには、それぞれの遺伝子導入したウェル内で目に見えた(
図8)。
【0123】
実施例7 成熟ヒト皮膚生検組織由来の細胞の、効率的かつ急速な誘導およびリプログラミング
全層皮膚パンチ生検を、許可されたプロトコルに従って、健康な31歳のボランティアに実施した。一時的に、2.5%のリドカインの局所適用によって、左上腕の皮膚の一部を麻酔した。この部分を70%のイソプロパノールで消毒し、直径1.5mmのパンチを使用して全層皮膚生検を実施した。この組織を、フォスフェート緩衝生理食塩水(PBS)中で濯ぎ、250μLのTrypLE Select CTS(Life Technologies Corporation)を含む1.5mLのチューブ内に配置し、37℃にて30分かけてインキュベートした。この組織を次に、250μLのDMEM/F12-CTS(Life Technologies Corporation)+5mg/mLのコラゲナーゼを含む1.5mLのチューブに移し、37℃にて2時間かけてインキュベートした。ピンセットを使用して表皮を除去し、この組織を機械的に解離した。細胞をDMEM/F12-CTS中で2回濯いだ。同一のボランティアに静脈切開術も実施し、静脈血をVacutainer SSTチューブ(Becton,Dickinson and Company)内に採取した。製造者の指示に従って、血清を単離した。DMEM/F12-CTS+2mMのL-アラニル-L-グルタミン(Sigma-Aldrich Co.LLC.)+20%のヒト血清を混合することによって、同質遺伝子プレーティング培地を調製した。皮膚組織試料由来の細胞を、同質遺伝子プレーティング培地中の、6ウェルプレートのフィブロネクチンでコーティングしたウェル内にプレーティングした。線維芽細胞形態を有する多くの細胞は、2日目までには付着して拡散し始めた(
図3A)。細胞を膨張させ、Synth-a-Freeze(Life Technologies Corporation)内で凍結させた。
【0124】
細胞を、6ウェルプレート内に、5,000細胞/ウェルの密度で継代した。翌日、この培地を遺伝子導入培地と交換し、この細胞を、実施例2に示すように、A、0.5の7dG、0.4の5mU、および5mCを含有するRNA、ならびに、1日目に0.5μg/ウェル、2日目に0.5μg/ウェル、3日目に2μg/ウェル、4日目に2μg/ウェル、そして5日目に2μg/ウェルのRNA用量を使用して遺伝子導入した。6日目および7日目に、特定の細胞に追加の2μg/ウェルの遺伝子導入を与えた。さらに、4日目以降、特定のウェルに2ng/mLのTGF-β1を与えた。この培地を、6日目に維持培地と交換した。リプログラミングと一致する形態を示す細胞のコロニーが、5日目~10日目に目に見えるようになった(
図3B)。コロニーは急速に成長し、多くが胚性幹細胞コロニーのものと同様の形態を示した(
図3C)。コロニーを採集し、組換えヒトフィブロネクチンおよび組換えヒトビトロネクチン(それぞれDMEM/F12内で1μg/mL、1mL/ウェルの濃度まで希釈し、室温にて1時間かけてインキュベートした)でコーティングしたウェル内にプレーティングした。細胞は急速に成長し、継代されて株を確立した。
【0125】
実施例8 CCR5を標的にするRiboSliceの合成
以下の配列、L1:TCATTTTCCATACAGTCAGT、L2:TTTTCCATACAGTCAGTATC、R1:TGACTATCTTTAATGTCTGG、およびR2:TATCTTTAATGTCTGGAAATを標的にするRiboSliceペアを、実施例1に従って合成した(
図4Aおよび
図4B)。これらのペアは、センス(L1およびL2)またはアンチセンス鎖(R1およびR2)上のヒトCCR5遺伝子内の20-bp部位を標的にする。以下のペア:L1&R1、L1&R2、L2&R1、およびL2&R2を調製した。
【0126】
実施例9 ミスマッチ検出ヌクレアーゼを使用するCCR5遺伝子編集効率の測定
初代ヒト線維芽細胞を、組換えヒトフィブロネクチンおよび組換えヒトビトロネクチン(それぞれDMEM/F12内で1μg/mL、1mL/ウェルの濃度まで希釈し、室温にて1時間かけてインキュベートした)でコーティングした6ウェルプレート内に、遺伝子導入培地中で10,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。翌日、この細胞に、実施例8に従って合成したRNAを、実施例2に示すように遺伝子導入した。遺伝子導入の2日後、ゲノムDNAを単離および精製した。CCR5遺伝子内の一領域を、プライマーF:AGCTAGCAGCAAACCTTCCCTTCAおよびR:AAGGACAATGTTGTAGGGAGCCCAを使用するPCRによって増幅した。150ngの増幅したPCR生成物を、10mMのトリス-Cl+50mMのKCl+1.5mMのMgCl
2内で、150ngの参照DNAと交雑した。交雑したDNAを、ミスマッチ検出エンドヌクレアーゼ(SURVEYORヌクレアーゼ、Transgenomic,Inc.)で処置し、結果として生じる生成物を、アガロースゲル電気泳動によって分析した(
図4Cおよび
図4D)。
【0127】
実施例10 RiboSliceの繰り返される遺伝子導入による高効率遺伝子編集
初代ヒト線維芽細胞を、実施例9に示すようにプレーティングした。翌日、この細胞に、実施例8に従って合成したRNAを、実施例2に示すように遺伝子導入した。翌日、ウェルのうちの1つの中の細胞に、2度目の遺伝子導入をした。第2の遺伝子導入の2日後、遺伝子編集の効率を、実施例9に示すように測定した(
図4E)。
【0128】
実施例11 RiboSliceを使用するCCR5の遺伝子編集、および、ヒト線維芽細胞の、DNAを含まない、フィーダーを含まない、免疫抑制剤を含まない、条件付けを含まないリプログラミング
初代ヒト線維芽細胞を、実施例9に示すようにプレーティングした。翌日、この細胞に、実施例8に従って合成したRNAを、実施例2に示すように遺伝子導入した。およそ48時間後、実施例1に従って合成したRNAを使用して、実施例5に従い、この細胞をリプログラムした。リプログラミングの特徴を示す形態を有する細胞の大きなコロニーが、実施例5に示すように目に見えるようになった(
図4F)。コロニーを採集し、株を確立した。細胞株に直接配列決定を受けさせ、成功裏の遺伝子編集を確認した(
図4G)。
【0129】
実施例12 遺伝子編集かつリプログラムされた細胞を含むHIV/AIDSの個別化細胞置換療法
本発明者の以前に開示された発明(米国出願第13/465,490号、米国仮出願第61/637,570号、および米国仮出願第61/664,494号)、ならびに/または実施例11に従って、患者の皮膚細胞を遺伝子編集し、造血細胞中にリプログラムする。細胞を次に培養容器から酵素的に解離し、CD34+/CD90+/LinまたはCD34+/CD49f+/Lin細胞を単離する。約1×103~約1×105の細胞を、患者の大静脈内に輸注する。造血細胞は髄腔に帰巣して生着する。
【0130】
実施例13 APP不活性化ラット胚性幹細胞の生成
ラット胚性幹細胞を、6ウェルプレート内に、ラット幹細胞培地中で10,000細胞/ウェルの密度でプレーティングする。翌日、この細胞に、実施例1に従って合成した、以下の配列、L:TTCTGTGGTAAACTCAACATおよびR:TCTGACTCCCATTTTCCATT(0.25μgのLおよび0.25μgのR)を標的にする0.5μg/ウェルのRiboSliceを、実施例2に示すように遺伝子導入した。
【0131】
実施例14 APP不活性化ラット胚性幹細胞を使用するAPP遺伝子欠損ラットの生成
ラット胚性幹細胞を、実施例13に従って遺伝子編集し、ラット胚盤胞内に微量注入する。この微量注入された胚盤胞を、次に偽妊娠の雌ラットに移植する。
【0132】
実施例15 遺伝子欠損ラットの産生のためのAPP不活性化胚の生成
以下の配列、L:TTCTGTGGTAAACTCAACATおよびR:TCTGACTCCCATTTTCCATTを標的にするRiboSliceペアを、実施例1に従って合成する。5μg/μLの濃度のRiboSliceを、1細胞期のラット胚の前核または細胞質内に注入する。この胚を、次に偽妊娠の雌ラットに移植する。
【0133】
実施例16 非標準ヌクレオチドおよび修復鋳型をコードするDNAを含有する合成RNAの細胞への遺伝子導入
6ウェルプレート内での遺伝子導入のために、ヒトAPP遺伝子のエクソン16を標的にする遺伝子編集タンパク質をコードする1μgのRNA、標的細胞中に存在しなかったPstI制限部位を含有する1μgの一本鎖修復鋳型DNA、および6μLの遺伝子導入試薬(Lipofectamine RNAiMAX、Life Technologies Corporation)を、複合体形成培地(Opti-MEM、Life Technologies Corporation)中で、まず別々に希釈して、120μLの総体積にした。遺伝子導入試薬の製造者の指示に従って、希釈したRNA、修復鋳型、および遺伝子導入試薬を、次に混合し、15分かけて室温にてインキュベートした。複合体を培養液中の細胞に添加した。およそ120μLの複合体を、1ウェル当たり2mLの遺伝子導入培地を既に含有した6ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを穏やかに振盪し、この複合体をウェル全体に分布させた。細胞を、4時間から一晩かけて複合体と共にインキュベートし、培地を新鮮な遺伝子導入培地(2mL/ウェル)と交換した。翌日、この培地をDMEM+10%のFBSに変えた。遺伝子導入の2日後、ゲノムDNAを単離および精製した。APP遺伝子内の一領域を、PCRによって増幅し、この増幅した生成物をPstIで消化し、ゲル電気泳動によって分析した(
図16)。
【0134】
実施例17 安全港位置におけるラット胚性幹細胞中への導入遺伝子の挿入
ラット胚性幹細胞を、6ウェルプレート内に、ラット幹細胞培地中で10,000細胞/ウェルの密度でプレーティングする。翌日、この細胞に、実施例1に従って合成した、以下の配列、L:TATCTTCCAGAAAGACTCCAおよびR:TTCCCTTCCCCCTTCTTCCCを標的にするRiboSlice、ならびに、ラットRosa26遺伝子座を包囲する領域に対して相同性である、およそ400個の塩基をそれぞれ含有する2つの領域に隣接する、導入遺伝子を含有する修復鋳型を、実施例13に示すように遺伝子導入した。
【0135】
実施例18 ヒト化LRRK2ラット
ラット胚性幹細胞を、実施例13に示すように、プレーティングし、これに、実施例1に従って合成した、以下の配列、L:TTGAAGGCAAAAATGTCCACおよびR:TCTCATGTAGGAGTCCAGGAを標的にするRiboSliceを遺伝子導入する。遺伝子導入の2日後、この細胞を、実施例17に従って遺伝子導入し、この導入遺伝子は、ヒトLRRK2遺伝子、および随意にヒトLRRK2プロモーター領域の一部または全体を含有する。
【0136】
実施例19 安全港位置におけるヒト線維芽細胞中への導入遺伝子の挿入
初代ヒト線維芽細胞を、実施例9に示すようにプレーティングする。翌日、この細胞に、実施例1に従って合成した、以下の配列、L:TTATCTGTCCCCTCCACCCCおよびR:TTTTCTGTCACCAATCCTGTを標的にするRiboSlice、ならびに、ヒトAAVS1遺伝子座を包囲する領域に対して相同性である、およそ400個の塩基をそれぞれ含有する2つの領域に隣接する、導入遺伝子を含有する修復鋳型を、実施例2に示すように遺伝子導入した。
【0137】
実施例20 安全港位置へのRNAi配列の挿入
初代ヒト線維芽細胞を、実施例19に従って、プレーティングおよび遺伝子導入し、この導入遺伝子は、PolIIIプロモーターが先行する、shRNAをコードする配列を含有する。
【0138】
実施例21 RiboSliceを使用するMycの遺伝子編集
初代ヒト線維芽細胞を、6ウェルプレート内に、DMEM+10%のFBS中で50,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。2日後、この培地を遺伝子導入培地に変えた。4時間後、この細胞に、実施例1に従って合成した、以下の配列、L:TCGGCCGCCGCCAAGCTCGTおよびR:TGCGCGCAGCCTGGTAGGAGを標的にする1μg/ウェルのRiboSliceを、実施例2に示すように遺伝子導入した。翌日、遺伝子編集効率を、以下のプライマー、F:TAACTCAAGACTGCCTCCCGCTTTおよびR:AGCCCAAGGTTTCAGAGGTGATGAを使用して、実施例9に示すように測定した(
図5)。
【0139】
実施例22 Mycを標的にするRiboSliceを含む癌療法
HeLa子宮頸癌細胞を、6ウェルプレート内に、葉酸を含まないDMEM+2mMのL-アラニル-L-グルタミン+10%のFBS中で50,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。翌日、この培地を遺伝子導入培地に変えた。翌日、この細胞を、実施例21に示すように遺伝子導入した。
【0140】
実施例23 RiboSliceを使用するBIRC5の遺伝子編集
初代ヒト線維芽細胞を、6ウェルプレート内に、DMEM+10%のFBS中で50,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。2日後、この培地を遺伝子導入培地に変えた。4時間後、この細胞に、実施例1に従って合成した、以下の配列、L:TTGCCCCCTGCCTGGCAGCCおよびR:TTCTTGAATGTAGAGATGCGを標的にする1μg/ウェルのRiboSliceを、実施例2に示すように遺伝子導入した。翌日、遺伝子編集効率を、以下のプライマー、F:GCGCCATTAACCGCCAGATTTGAAおよびR:TGGGAGTTCACAACAACAGGGTCTを使用して、実施例9に示すように測定した(
図6)。
【0141】
実施例24 BIRC5を標的にするRiboSliceを含む癌療法
HeLa子宮頸癌細胞を、6ウェルプレート内に、葉酸を含まないDMEM+2mMのL-アラニル-L-グルタミン+10%のFBS中で50,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。翌日、この培地を遺伝子導入培地に変えた。翌日、この細胞を、実施例23に示すように遺伝子導入した(
図7Aおよび
図7B)。
【0142】
実施例25 癌細胞株の培養
HeLa(子宮頸癌)、MDA-MB-231(乳房)、HCT 116(結腸)、U87 MG(神経膠腫)、およびU-251(神経膠腫)の癌細胞株を、培養液中で繁殖させた。細胞を、DMEM+10%のFBSまたはDMEM+50%のFBS中で培養し、37℃、5%のCO2、および周囲O2または5%のO2のいずれかに維持した。細胞は、全条件下で急速に成長し、HBSS中のトリプシンの溶液を使用して、2~5日おきに定期的に継代された。
【0143】
実施例26 RiboSlice遺伝子編集RNA設計プロセスおよびアルゴリズム
BIRC5遺伝子の注釈付けしたDNA配列を、eFetchユーティリティおよびpythonスクリプトを使用して、NCBIから回収した。同一のpythonスクリプトを使用し、BIRC5遺伝子の4つのエクソンのそれぞれの中のタンパク質をコードするDNA配列を識別した。このスクリプトは次に、以下の条件を満たす配列要素のために、これらの配列、および両側に隣接する40個の塩基を検索した:(i)1つの要素は主要鎖上に、その他は相補鎖上に存在する、(ii)各要素はTで始まる、ならびに(iii)要素は12個以上の塩基および20個以下の塩基によって分離されている。次に、各要素に、Qblast(NCBI)を使用してそのヒトゲノム内の他の要素に結合する可能性を表すスコアを割り当てた。このスコアを、標的配列に対するマッチを除く9つの最低E値の逆数の合計として計算した。ペアのスコアを、個別の要素のスコアを加算することによって計算した。
【0144】
実施例27 遺伝子編集タンパク質をコードするRNA(RiboSlice)の合成
遺伝子編集タンパク質をコードするRNAを、実施例26に従って設計し、実施例1に従って合成した(表10、
図9)。このRNAを、ヌクレアーゼを含まない水で、200ng/μL~500ng/μLまで希釈し、4℃で保管した。
【表10】
【0145】
実施例28 BIRC5を標的にするRiboSliceの活性分析
初代成熟ヒト線維芽細胞に、実施例26に従って設計し、実施例27に従って合成した、BIRC5を標的にする6つのRiboSliceペアを、実施例2に従って遺伝子導入した。遺伝子導入の2日後、ゲノムDNAを単離および精製した。遺伝子編集効率を測定するために、150ngの増幅したPCR生成物を、10mMのトリス-Cl+50mMのKCl+1.5mMのMgCl
2内で、150ngの参照DNAと交雑した。交雑したDNAを、SURVEYORミスマッチ特異性エンドヌクレアーゼ(Transgenomic,Inc.)で処置し、結果として生じる生成物を、アガロースゲル電気泳動によって分析した(
図10A)。予期されたサイズのバンド(
図10A中のアスタリスク)の出現に実証される通り、6つの試験したRiboSliceペアの全てが、BIRC5遺伝子を効率的に編集した。
【0146】
実施例29 BIRC5を標的にするRiboSliceの有糸分裂阻害分析
初代成熟ヒト線維芽細胞を、実施例28に従って遺伝子編集し、次に培養液中で繁殖させた。11日後、ゲノムDNAを単離および精製し、遺伝子編集効率を、実施例28に示すように測定した(
図10B)。増殖する細胞から単離したゲノムDNAにおける、予期されたサイズのバンド(
図10B中のアスタリスク)の出現が示す通り、試験したRiboSliceペアの全てが、線維芽細胞の増殖を阻害せず、これは、正常な線維芽細胞に対する、これらRiboSliceペアの低い毒性を実証する。
【0147】
実施例30 BIRC5を標的にするRiboSliceの抗癌活性分析 実施例25に従って培養した、初代成熟ヒト線維芽細胞およびHeLa子宮頸癌細胞に、RiboSliceペアを、実施例28に従って遺伝子導入した。線維芽細胞の増殖は、遺伝子導入試薬関連毒性が原因で一時的に緩徐化したが、遺伝子導入の2日以内に回復した。対照的に、HeLa細胞の増殖は際立って緩徐化し、断片化核を有する多くの巨細胞が、遺伝子導入されたウェル内に観察された。2~3日後、多くの細胞はアポトーシスを示唆する形態を示し、これは、BIRC5を標的にするRiboSliceの強力な抗癌活性を実証する。
【0148】
実施例31 生体内のRiboSliceの安全性の研究
40匹の雌のNCr nu/nuマウスに、50%のMatrigel(BD Biosciences)中の、5×10
6のMDA-MB-231腫瘍細胞を皮下注入した。細胞注入体積は、0.2mL/マウスであった。研究開始時のマウスの年齢は、8~12週であった。ペアマッチを行い、腫瘍が100~150mm
3の平均サイズに達したとき、動物をそれぞれ10匹ずつ、4つのグループに分け、治療を開始した。初めの5日間は毎日、次に研究の終了まで隔週で、体重を測定した。治療は、媒体(Lipofectamine 2000、Life Technologies Corporation)と複合したRiboSlice BIRC5-1.2から成った。各グループについて投与する溶液を調製するため、308μLの複合体形成緩衝液(Opti-MEM、Life Technologies Corporation)を、2つの無菌かつリボヌクレアーゼを含まない1.5mLのチューブのそれぞれにピペットで入れた。22μLのRiboSlice BIRC5-1.2(500ng/μL)を、2つのチューブのうちの1つに添加し、チューブの内容物をピペット操作で混合した。22μLの媒体を、第2のチューブに添加した。第2のチューブの内容物を混合し、次に第1のチューブに移し、ピペット操作によって第1のチューブの内容物と混合し、複合体を形成した。複合体を、室温にて10分かけてインキュベートした。インキュベーションの間、シリンジを装填した。動物に、60μLの総体積/動物中、1μgのRNA/動物の総用量を、静脈内または腫瘍内注入した。注入を1日おきに実施し、合計5回の治療を与えた。用量は体重に対して調節されなかった。動物を17日間観察した。平均体重の著しい低減は観察されず(
図11、RiboSlice BIRC5-1.2は「ZK1」と表示される)、これは、RiboSlice遺伝子編集RNAの生体内の安全性を実証する。
【0149】
実施例32 神経膠腫モデルにおけるBIRC5を標的にするRiboSliceの抗癌活性分析
実施例25に従って培養した、U-251神経膠腫細胞株に、RiboSliceペアを、実施例28に従って遺伝子導入した。神経膠腫細胞は、HeLa細胞と同様に治療に反応した:増殖は際立って緩徐化し、断片化核を有する多くの巨細胞が、遺伝子導入されたウェル内に観察された。2~3日後、多くの細胞はアポトーシスを示唆する形態を示し、これは、神経膠腫モデルにおけるBIRC5を標的にするRiboSliceの強力な抗癌活性を実証する。
【0150】
実施例33 細胞への核酸の送達のための試薬のスクリーニング
ポリエチレンイミン(PEI)、様々な商用の脂質系遺伝子導入試薬、ペプチド系遺伝子導入試薬(N-TER、Sigma-Aldrich Co.LLC.)、ならびにいくつかの脂質系およびステロール系送達試薬を含む送達試薬を、生体外の遺伝子導入効率および毒性についてスクリーニングした。送達試薬をRiboSlice BIRC5-1.2と複合し、実施例25に従って培養したHeLa細胞に、複合体を送達した。遺伝子導入の24時間後に細胞密度を分析することによって、毒性を査定した。実施例30で説明したように形態変化を分析することによって、遺伝子導入効率を査定した。試験した試薬は、広範囲の毒性および遺伝子導入効率を示した。より高い割合のエステル結合を含有する試薬は、より低い割合のエステル結合を含有する試薬、またはエステル結合を含有しない試薬よりも低い毒性を示した。
【0151】
実施例34 高濃度リポソームRiboSlice
1μgのRNAを500ng/μLで3μLの複合体形成培地(Opti-MEM、Life Technologies Corporation)と、そして1μgのRNA当たり2.5μLの遺伝子導入試薬(Lipofectamine 2000、Life Technologies Corporation)を2.5μLの複合体形成培地と混合することによって、高濃度リポソームRiboSliceを調製した。希釈したRNAおよび遺伝子導入試薬を、次に混合し、10分かけて室温にてインキュベートし、高濃度リポソームRiboSliceを形成した。あるいは、DOSPAまたはDOSPERを含有する遺伝子導入試薬が使用される。
【0152】
実施例35 生体内RiboSlice効力研究-皮下神経膠腫モデル
40匹の雌のNCr nu/nuマウスに、1×107のU-251腫瘍細胞を皮下注入した。細胞注入体積は、0.2mL/マウスであった。研究開始時のマウスの年齢は、8~12週であった。ペアマッチを行い、腫瘍が35~50mm3の平均サイズに達したとき、動物をそれぞれ10匹ずつ、4つのグループに分け、治療を開始した。初めの5日間は毎日、次に研究の終了まで隔週で、体重を測定した。キャリパー測定を隔週で行い、腫瘍サイズを算出した。治療は、媒体(Lipofectamine 2000、Life Technologies Corporation)と複合したRiboSlice BIRC5-2.1から成った。投与する溶液を調製するため、294μLの複合体形成緩衝液(Opti-MEM、Life Technologies Corporation)を、196μLのRiboSlice BIRC5-1.2(500ng/μL)を含むチューブにピペットで入れ、チューブの内容物をピペット操作で混合した。245μLの複合体形成緩衝液を、245μLの媒体を含むチューブにピペットで入れた。第2のチューブの内容物を混合し、次に第1のチューブに移し、ピペット操作によって第1のチューブの内容物と混合し、複合体を形成した。複合体を、室温にて10分かけてインキュベートした。インキュベーションの間、シリンジを装填した。動物に、20μLまたは50μLの総体積/動物のいずれかで、2μgまたは5μgのRNA/動物のいずれかの総容量を、腫瘍内注入した。注入を1日おきに実施し、合計5回の治療を与えた。用量は体重に対して調節されなかった。動物を25日間観察した。
【0153】
実施例36 高活性/高忠実度RiboSlice生体外転写鋳型の合成
T7バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、5′非翻訳領域、強いコザック配列、TALE N末端ドメイン、実施例26に従って設計した18の反復配列、TALE C末端ドメイン、および、StsI配列(配列番号1)、StsI-HA配列(配列番号2)、StsI-HA2配列(配列番号3)、StsI-UHA配列(配列番号4)、StsI-UHA2配列(配列番号5)、StsI-HF配列(配列番号6)、またはStsI-HF2配列(配列番号7)を含むヌクレアーゼドメインをコードする生体外転写鋳型を、標準のクローニングおよび分子生物学技術を使用して合成する、あるいは、例えば、遺伝子断片構築技術(例えば、gBlocks、Integrated DNA Technologies,Inc.)を使用する直接化学合成によって合成する。
【0154】
実施例37 高活性/高忠実度RiboSlice遺伝子編集RNAの合成
高活性RiboSliceおよび高忠実度RiboSliceを、実施例36に従って合成した生体外転写鋳型を使用して、実施例27に従って合成する。
【0155】
実施例38 プロテオパチーの治療のためのRiboSliceをコードする複製不全ウイルスの産生
プラーク形成タンパク質配列をコードするDNA配列を標的にするRiboSliceを含むヌクレオチド配列を、複製不全ウイルスゲノムを含む哺乳類発現ベクター内に組み込み、パッケージング細胞株に遺伝子導入し、複製不全ウイルスを生成する。培養液上清を採取し、0.45μmのフィルターを使用して濾過し、デブリを除去する。
【0156】
実施例39 癌の治療のためのRiboSliceをコードする複製可能腫瘍退縮ウイルスの産生
BIRC5遺伝子を標的にするRiboSliceを含むヌクレオチド配列を、複製可能ウイルスゲノムを含む哺乳類発現ベクター内に組み込み、パッケージング細胞株に遺伝子導入し、複製可能ウイルスを生成する。実施例38に従って、培養液上清を採取および濾過する。
【0157】
実施例40 生体内のRiboSliceの効力の研究-同所性神経膠腫モデル、投与のくも膜下腔内経路
40匹の雌のNCr nu/nuマウスに、1×105のU-251腫瘍細胞を頭蓋内注入した。細胞注入体積は、0.02mL/マウスである。研究開始時のマウスの年齢は、8~12週である。10日後、動物をそれぞれ10匹ずつ、4つのグループに分け、治療を開始する。初めの5日間は毎日、次に研究の終了まで隔週で、体重を測定する。治療は、媒体(Lipofectamine 2000、Life Technologies Corporation)と複合したRiboSlice BIRC5-2.1から成る。投与する溶液を調製するため、294μLの複合体形成緩衝液(Opti-MEM、Life Technologies Corporation)を、196μLのRiboSlice BIRC5-1.2(500ng/μL)を含むチューブにピペットで入れ、チューブの内容物をピペット操作で混合する。245μLの複合体形成緩衝液を、245μLの媒体を含むチューブにピペットで入れる。第2のチューブの内容物を混合し、次に第1のチューブに移し、ピペット操作によって第1のチューブの内容物と混合し、複合体を形成する。複合体を、室温にて10分かけてインキュベートする。インキュベーションの間、シリンジを装填する。動物に、10~20μLの総体積/動物中、1~2μgのRNA/動物の総容量を、くも膜下腔内注入する。注入を1日おきに実施し、合計5回の治療を与える。用量は体重に対して調節されていない。動物を60日間観察する。
【0158】
実施例41 RiboSliceを用いる神経膠腫の治療-IV灌流
神経膠腫と診断された患者に、実施例34に従って調製した1mgの高濃度リポソームRiboSlice BIRC5-2.1を、1時間、1週間につき3回の、4週間にわたるIV輸注によって投与する。500mm3を上回る初期腫瘍体積に対して、外科的ならびに随意に放射線療法および/または化学療法によって腫瘍を減量し、RiboSlice治療を開始する。併用療法として標準投与計画を使用して、患者にTNF-αおよび/または5-FUを随意に投与する。
【0159】
実施例42 RiboSliceを用いる神経膠腫の治療-複製可能腫瘍退縮ウイルス
患者に、実施例39に従って調製した1mLの複製ウイルス粒子(1000CFU/mL)を、くも膜下腔内または頭蓋内注入によって投与する。
【0160】
実施例43 SNCAを標的にするRiboSliceを用いるパーキンソン病の治療
パーキンソン病と診断された患者に、SNCA遺伝子を標的にする50μgのRiboSliceを、くも膜下腔内または頭蓋内注入によって投与する。
【0161】
実施例44 APPを標的にするRiboSliceを用いるアルツハイマー病の治療
アルツハイマー病と診断された患者に、APP遺伝子を標的にする50μgのRiboSliceを、くも膜下腔内または頭蓋内注入によって投与する。
【0162】
実施例45 IAPPを標的にするRiboSliceを用いるII型糖尿病の治療
II型糖尿病と診断された患者に、IAPP遺伝子を標的にする5mgのRiboSliceを、静脈内、腹腔内、または門脈内注入によって投与する。
【0163】
実施例46 iRiboSlice個別化癌療法
癌と診断された患者から生検試料を取る。この生検試料からゲノムDNAを単離および精製し、DNAの配列(全ゲノム配列、エクソーム配列、または1つ以上の癌関連遺伝子の配列のいずれか)を判定する。患者の個別の癌配列を標的にするRiboSliceペア(iRiboSlice)を、実施例26に従って設計し、実施例27に従って合成する。癌の位置および種類に適当な投与経路を使用して、患者に個別化iRiboSliceを投与する。
【0164】
実施例47 遺伝的多様性/治療抵抗性癌のためのRiboSlice混合物
遺伝的多様性および/または治療抵抗性癌と診断された患者に、1つ以上の癌関連遺伝子内の複数の癌関連遺伝子および/または多配列を標的にするRiboSliceペアの混合物を投与する。
【0165】
実施例48 ミトコンドリア病のためのMito-RiboSlice
ミトコンドリア病と診断された患者に、疾患に関連する配列を標的にし、ミトコンドリア局在化配列を含む、2mgのRiboSliceを、筋肉内注入によって投与する。
【0166】
実施例49 RiboSlice点眼薬を用いる眼疾患の治療
角膜疾患または結膜疾患と診断された患者に、0.5%の等張液として配合したRiboSliceを投与する。
【0167】
実施例50 RiboSlice局所配合物を用いる皮膚疾患の治療
皮膚疾患と診断された患者に、RNAの分解を防止する1つ以上の安定剤を含有する1%の局所クリーム/軟膏として配合したRiboSliceを投与する。
【0168】
実施例51 RiboSliceエアロゾル配合物を用いる肺または呼吸器疾患の治療
肺または呼吸器疾患と診断された患者に、0.5%のエアロゾルスプレーとして配合したRiboSliceを投与する。
【0169】
実施例52 感染病原体内に存在するDNA配列を標的にするRiboSliceを用いる感染性疾患の治療
感染症の位置および種類に適当な投与経路、ならびに投与経路および感染症の重症度に適当な用量を使用して、感染性疾患と診断された患者に、患者が感染している特異的感染病原体内に存在する配列を標的にするRiboSliceを投与する。
【0170】
実施例53 生体外受精のための遺伝子編集されたヒト接合子
ヒト生殖細胞、接合子、または初期段階の胚盤胞に、疾患に関連する変異もしくは望ましくない体質に関連する変異をコードする遺伝子を標的にするRiboSliceを遺伝子導入する。ゲノムを特徴付け、細胞を生体外受精のために調製する。
【0171】
実施例54 遺伝子編集タンパク質の活性、忠実度向上のための開裂ドメインスクリーン
それぞれが異なる開裂ドメインを含むRiboSliceペアのパネルを、実施例26に従って設計し、実施例27に従って合成する。RiboSliceペアの活性を、実施例28に示すように判定する。
【0172】
実施例55 パーキンソン病原性毒物のスクリーニングのための遺伝子編集された細胞 初代ヒト成熟線維芽細胞を、SNCAを標的にするRiboSlice(表11)および修復鋳型を使用して、実施例28に従って遺伝子編集し、SNCA A30P、E46K、およびA53T変異を有する細胞を産生する。細胞をリプログラムし、ドーパミン作動性ニューロンに分化する。このニューロンを、高処理α-シヌクレイン凝集毒物スクリーニングアッセイにおいて使用し、パーキンソン病の要因となり得る毒物を識別する。
【表11】
【0173】
実施例56 癌原性毒物のスクリーニングのための遺伝子編集された細胞
初代ヒト成熟線維芽細胞を、TP53を標的にするRiboSlice(表12)および修復鋳型を使用して、実施例28に従って遺伝子編集し、TP53 P47S、R72P、およびV217M変異を有する細胞を産生する。細胞をリプログラムし、肝細胞に分化する。この肝細胞を、高処理生体外形質転換毒物スクリーニングアッセイにおいて使用し、癌の要因となり得る毒物を識別する。
【表12】
【0174】
実施例57 改変遺伝子編集タンパク質をコードするRNA(RiboSlice)の設計および合成
実施例26に従って設計した遺伝子編集タンパク質をコードするRNAを、実施例27に従って合成した(表13)。表13に示す通り、各遺伝子編集タンパク質は、35~36アミノ酸長の反復配列を含む転写活性化因子様(TAL)エフェクター反復ドメインを含むDNA結合ドメインを含んだ。36アミノ酸長の反復配列に、配列識別番号が与えられている。鋳型名の表示「18」は、18番目の反復配列が36アミノ酸長であったことを示す。鋳型名の表示「EO」は、1つおきの反復配列が36アミノ酸長であったことを示す。表示「18」または「EO」の後に続くアミノ酸は、36アミノ酸長の反復配列(複数可)のC末端におけるアミノ酸を示す。表示「StsI」は、ヌクレアーゼドメインがStsI開裂ドメインを含有したことを示す。「StsI」の表示がない鋳型は、FokI開裂ドメインを含有した。
【表13-1】
【表13-2】
【0175】
実施例58 BIRC5を標的にするRiboSliceの活性分析
実施例57に従って合成したRiboSlice分子の活性を、実施例28に従って分析した(
図12A、
図12B、および
図14)。1つ以上の36アミノ酸長の反復配列を含有する遺伝子編集タンパク質を発現する細胞中で、高効率遺伝子編集を観察した。遺伝子編集効率は、アミノ酸配列:GHGGを含有する1つ以上の反復配列を含有する遺伝子編集タンパク質を発現する細胞中で最高であった。
【0176】
実施例59 生体内のRiboSlice AAVの安全性および効力の研究-皮下神経膠腫モデル、送達の腫瘍内経路
動物に、実施例35に従って、U-251ヒト神経膠腫細胞を含む腫瘍を植え付けた。GFP、BIRC5-2.1L RiboSlice、およびBIRC5-2.1R RiboSliceをコードするAAV血清型2を、標準技術(AAV-2 Helper Free Expression System、Cell Biolabs,Inc.)に従って調製した。ウイルスストックを4℃(短期間)または-80℃(長期間)で保管した。動物に、1日目に160μLのGFP AAVか、または1日目および15日目に80μLのBIRC5-2.1L RiboSlice AAV+80μLのBIRC5-2.1R RiboSlice AAVのいずれかの腫瘍内注入を与えた。動物を25日間観察した。平均体重の著しい低減は観察されず(
図13A)、これは、RiboSlice AAVの生体内の安全性を実証する。腫瘍の成長は、RiboSlice AAVグループ内で阻害され(
図13B)、これは、RiboSlice AAVの生体内の効力を実証する。
【0177】
実施例60 RiboSlice AAVを用いる癌の治療
患者に、実施例59に従って調製した1mLのRiboSlice AAVウイルス粒子を、くも膜下腔内または頭蓋内注入によって投与する。投与を必要に応じて繰り返す。500mm3を上回る初期腫瘍体積を有する患者に対して、外科的ならびに随意に放射線療法および/または化学療法によって腫瘍を減量し、RiboSlice AAV治療を開始する。併用療法として標準投与計画を使用して、患者にTNF-αおよび/または5-FUを随意に投与する。
【0178】
実施例61 iRiboSlice AAV個別化癌療法
癌と診断された患者から生検試料を取る。この生検試料からゲノムDNAを単離および精製し、DNAの配列(全ゲノム配列、エクソーム配列、または1つ以上の癌関連遺伝子の配列のいずれか)を判定する。患者の個別の癌配列を標的にするRiboSliceペア(iRiboSlice)を、実施例26に従って設計し、実施例59に従って合成する。癌の位置および種類に適当な投与経路を使用して、患者に個別化iRiboSlice AAVを投与する。
【0179】
実施例62 リポソーム配合物および核酸のカプセル封入
以下の配合を使用してリポソームを調製する:3.2mg/mLのN-(カルボニル-エトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-フォスフォエタノールアミン(MPEG2000-DSPE)、9.6mg/mLの完全水素化フォスファチジルコリン、3.2mg/mLのコレステロール、2mg/mLのアンモニウムスルフェート、および緩衝液としてのヒスチジン。水酸化ナトリウムを使用してpHを制御し、スクロースを使用して等張性を維持する。リポソームを形成するため、脂質を有機溶媒中で混合し、乾燥させ、撹拌を用いて水和し、800nmの平均細孔サイズを有するポリカーボネートフィルターを通す押出によってサイズ分類する。1μgの核酸当たり10μgのリポソーム配合物を組み合わせ、室温にて5分かけてインキュベートすることによって、核酸をカプセル封入する。
【0180】
実施例63 葉酸標的リポソーム配合物
0.27mg/mLの1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-フォスフォエタノールアミン-N-[葉酸(ポリエチレングリコール)-5000](FA-MPEG5000-DSPE)を脂質混合物に添加することを除いては実施例62に従って、リポソームを調製する。
【0181】
実施例64 BIRC5を標的にするリポソームRiboSliceを含む癌療法
実施例23に従って合成したRiboSliceペアをカプセル封入するリポソームを、実施例62または実施例63に従って調製する。このリポソームを、注入または静脈内輸注によって投与し、腫瘍反応およびインターフェロン血漿レベルを毎日監視する。
【0182】
実施例65 癌関連遺伝子を標的にするリポソームRiboSliceを含む癌療法
実施例1に従って合成した癌関連遺伝子を標的にするRiboSliceをカプセル封入するリポソームを、実施例62または実施例63に従って調製する。このリポソームを、注入または静脈内輸注によって投与し、腫瘍反応およびインターフェロン血漿レベルを毎日監視する。
【0183】
実施例66 リポソームのタンパク質をコードするRNAを含む療法
実施例1に従って合成した治療用タンパク質をコードする合成RNAをカプセル封入するリポソームを、実施例62または実施例63に従って調製する。このリポソームを、注入または静脈内輸注によって投与する。
【0184】
実施例67 BIRC5を標的にするRiboSliceおよびTNF-αを含む併用癌療法
患者に、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)およびBIRC5を標的にするRiboSliceをカプセル封入するリポソーム(実施例64を参照のこと)を用いる分離式肢灌流(ILP)を投与する。肢の加温に続いて、およそ5分にわたってリポソームを体外ILP回路の動脈ライン中に注入し、灌流をさらに85分間続行する。1~2日後、3~5分にわたってTNF-αを体外ILP回路の動脈ライン中に注入するILPを繰り返し、灌流をさらに60分間続行する。腫瘍反応およびインターフェロン血漿レベルを毎日監視する。
【0185】
実施例68 BIRC5を標的にするRiboSliceおよびフルオロウラシル(5-FU)を含む併用癌療法
1日目、患者に、BIRC5を標的にするRiboSliceをカプセル封入するリポソーム(実施例64を参照のこと)の60分間の静脈内輸注を与え、続いて2日目および3日目に5-FUの46時間の静脈内輸注を与える。腫瘍反応およびインターフェロン血漿レベルを毎日監視する。
【0186】
均等物
当業者であれば、ほんの日常的な実験を使用して、本明細書に具体的に記載される具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識するか、または確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0187】
参照による組み込み
本明細書において参照される全ての特許および出版物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【配列表】