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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ベルト取付治具及びベルトの取付方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/24 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F16H7/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021102348
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2022008196
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020110383
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】伊東 武彦
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-115150(JP,A)
【文献】特開2014-031881(JP,A)
【文献】特開2007-120678(JP,A)
【文献】特開2008-164053(JP,A)
【文献】特開2009-222101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプーリ間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻き掛ける際に用いるベルト取付治具であって、
本体部と、
前記本体部に設けられており、当該ベルト取付治具が取付対象のプーリに取り付けられた状態で、前記プーリの外周上に配置され、前記ベルトが掛けられて、当該ベルトの張力によって前記プーリの外周側に押圧される、巻掛部と、
前記巻掛部に巻き掛けられた前記ベルトの側面を案内するガイド部と、
当該ベルト取付治具が前記プーリに取り付けられた状態で、前記プーリの外周に対して対向するように配置され、前記プーリに巻き掛けられる前記ベルトを前記プーリの外周側に押圧する、押え部と、
前記プーリの側面を覆うカバー部と、を備え、
前記巻掛部及び前記カバー部は、前記プーリの外周に沿わされた前記ベルトを、前記プーリの径方向外側に案内し、前記プーリの径方向外側に案内された前記ベルトを、前記プーリの軸方向外側に屈曲させつつ、前記プーリの径方向内側にも屈曲させて、前記プーリの側面に沿わせるように案内し、且つ、案内される過程で屈曲する前記ベルトの内周面から、均一に圧力がかかるように接触する、3次元曲面を有し、
前記押え部は、前記プーリの軸方向外側から軸方向内側へ突出する長さが、前記巻掛部の、前記プーリの軸方向外側から軸方向内側へ突出する長さよりも小さい、ベルト取付治具。
【請求項2】
前記取付対象のプーリに固定する補助具を有し、
前記補助具は、
径方向に伸縮可能な輪状部分を有する、有端形状をしており、
前記輪状部分の外径は、外力が掛かっていない状態で、前記プーリの側面に設けられた、有底の円筒状の凹部の内径よりも大きく、
前記輪状部分は、径方向に収縮した状態で、前記凹部の底部に当接した状態で前記凹部の内壁を押圧可能とし、
一方側の端には、前記本体部が取付可能とされている、請求項1に記載のベルト取付治具。
【請求項3】
前記プーリの外周には、前記ベルトの内周面に設けられた複数のリブが嵌合する、複数の嵌合溝が形成されており、
前記巻掛部は、前記プーリの外周に対向する面に、前記プーリの軸方向外側から軸方向内側にかけて、複数の前記嵌合溝に嵌合する、複数のリブ嵌合部が設けられており、
前記押え部の突出長さは、少なくとも前記リブ嵌合部2つ分以上の長さであり、且つ、前記巻掛部の突出長さよりも、少なくとも前記リブ嵌合部1つ分以上小さい、請求項1又は2に記載のベルト取付治具。
【請求項4】
請求項1に記載のベルト取付治具を使用して、複数のプーリ間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻き掛ける、ベルトの取付方法であって、
前記取付対象のプーリ以外の他のプーリに前記ベルトを巻き掛ける手順と、
前記押え部が前記ベルトの外周に対向し、前記巻掛部が前記ベルトの内周に対向させた状態の、前記ベルトを、前記巻掛部の表面から前記ガイド部で案内しつつ前記カバー部の表面に沿わせて、前記ベルトの内周面が前記プーリの側面に対向した状態で当該プーリに仮掛けする手順と、
を含む、ベルトの取付方法。
【請求項5】
請求項2に記載の補助具を有するベルト取付治具を使用して、複数のプーリ間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻き掛ける、ベルトの取付方法であって、
前記輪状部分を収縮させた状態で、前記取付対象のプーリの側面に設けられた、有底の円筒状の凹部の底部に当接させた後、前記輪状部分の収縮を開放することにより、当該輪状部分を前記凹部の内壁に押圧させ、前記巻掛部を前記プーリの外周に沿わせた状態で固定する手順と、
前記取付対象のプーリ以外の他のプーリに前記ベルトを巻き掛ける手順と、
前記ベルトの内周面を前記プーリの側面に向けた状態で、前記ベルトを前記プーリの側面から前記カバー部へ沿わせ、更に、前記ベルトを前記ガイド部で案内しつつ前記巻掛部に沿わせ、前記押え部と前記プーリの外周との間を通すことで前記ベルトを仮掛けする手順と、
前記プーリを回転させる手順と、
を含む、ベルトの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプーリ間に巻き掛ける周長方向に伸縮可能なベルトをプーリに巻き掛ける際に、プーリに固定する補助具を有するベルト取付治具及びベルトの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のプーリ間にベルトを巻き掛けて使用されるベルト伝動機構において、例えばプーリの軸心位置を調整可能なテンションプーリ等がなく、複数のプーリの互いの軸間距離が全て固定された状態のレイアウトがある。そのようなベルトの伝動機構は、一般に、プーリ間で確実に動力を伝達させるために、装着対象であるプーリ間のレイアウト周長よりもベルト周長を短くして、ベルトに強い張力がかかるような仕様になっている。
【0003】
上記のような複数のプーリ間にレイアウト周長よりも短い周長のベルトを取り付ける方法として、例えば次の方法が用いられている。まず、1つのプーリを最後に残して、他のプーリにベルトを先に巻き掛け、次に、ベルト取付治具を用いて、他のプーリに巻き掛けたベルトに張力を付与しつつ、最後に残したプーリを回転させながら、最後に残したプーリの外周面にベルトを取り付ける。
【0004】
上記ベルト取付治具に関して、主として、2つのプーリ間にベルトを巻き掛ける、2軸レイアウトの場合や、3つのプーリ間にベルトを巻き掛ける、3軸レイアウトの場合に有効なベルト取付治具が提案されている。
【0005】
ここで、2軸レイアウトの場合(図19参照)と、3軸レイアウト(図20参照)とでは、ベルト取付治具を使ったベルト取付作業において、作業性の観点で以下の相違点がある。
【0006】
[相違点1]
図19及び図20に示すように、2軸レイアウトと3軸レイアウトとでは、ベルトと第2プーリとの巻付角度の違いにより、2軸レイアウトに比べて3軸レイアウトでは、第2プーリにおいて、プーリ径方向内側へのベルトの押し付ける力が小さいために、第1プーリと第2プーリとの間で、例えばベルトが捩れた場合などには、第2プーリ(図20のポイントX2)からベルトが外れやすくなる。
【0007】
[相違点2]
図19及び図20に示すように、2軸レイアウトと3軸レイアウトとでは、ベルト取付治具の第1プーリへの取り付け時において、ベルト取付治具の後方における、第1プーリとベルトとの接触領域(図19のポイントY1及び図20のポイントY2参照)の違い(第1プーリへのベルト取付治具の取り付け位置の自由度の違い)により、2軸レイアウトに比べて3軸レイアウトでは、第1プーリにベルトを巻き掛け始めた状態では、第1プーリとベルトとの接触領域が充分に確保できない場合がある(接触領域がゼロの場合もある)。この場合、第1プーリにベルトを巻き掛け始めた状態では、ベルトにはほとんど張力が掛からない状態であるので、ベルト取付治具のすぐ後方側(第1プーリの回転方向と反対側)の部位が第1プーリから浮き上がり易く、ベルトが第1プーリのフランジを乗り越えて外れやすくなる。
【0008】
そこで、例えば、上記の[相違点1]で記載した第2プーリからのベルト外れを防止するためには、第2プーリの側面部に外れ止め防止治具を設けたり、或いは、第1プーリと第2プーリとのベルトスパン間に外れ止め防止用のガイドレールを設けたりするなどの、所謂「第二の治具」を用いることが考えられる。「第二の治具」を用いない方法としては、特許文献1に記載されているように、ベルト取付作業中の、第1プーリと第2プーリとの間のベルトにおいて、ベルトの内周面が第1プーリ側面を向くような姿勢を保持することで、第2プーリ上に巻き掛かったベルトは、第2プーリの手前側を特に強く第2プーリ外周面上に押し当てる力が作用することにより、ベルトは第2プーリのフランジから外れにくくなる効果を奏する。
【0009】
しかしながら、特許文献1のベルト取付治具を3軸レイアウトに使用した場合には、[相違点2]で記載したように、ベルト取付治具のすぐ後方側の部位が第1プーリから浮き上がり易く、ベルトが第1プーリのフランジを乗り越えて外れやすい。
【0010】
一方、ベルトの「ベルト取付治具のすぐ後方側の部位の第1プーリからの浮き上がり」を防止する手段として、ベルト取付治具のすぐ後方側の部位において、ベルトの背面を第1プーリ外周面に向かって押さえる働きをする「ベルト押さえ部」を備えたベルト取付治具が、特許文献2に開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2のベルト取付治具では、ベルトをベルト幅方向に無理に曲げる力が作用するため、ベルトに過度な張力が掛かり、ベルトに永久歪みを発生させる虞がある。また、段落[0042]に記載の、『クランクプーリ2を回転させると、プーリ押圧部7がVリブドベルト4とクランクプーリ2の外周によって挟持される関係から消失し、更にクランクプーリ2を回転させると、ベルト取付治具6は、図14に示すように、Vリブドベルト4にぶら下がった状態でクランクプーリ2からオルタネータプーリ3へ向かって吐き出される』構成となっていることは、ベルト取付完了直後に、ベルト取付治具がプーリのスパン間から落下したり飛び出したりする虞もあり、作業性に課題がある。
【0012】
そこで、特許文献3には、ベルト取付治具の後方のベルト浮き上がりを防止しつつ、且つベルト幅方向への無理な屈曲を発生させないようなベルト取付治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO2011/158505公報
【文献】特開2010-249312公報
【文献】特開2014-031881公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献3のベルト取付治具には、下記3つの面で問題がある。
【0015】
(問題1)
巻き掛かったベルトの内周面と接する部位(保持面8、導入面9)が、巻き掛かって屈曲したベルトが沿うような曲面状ではなく、角部(保持面8と導入面9の境界)がある形状になっている。そうすると、ベルトが保持面8や導入面9を通る時には、ベルトはこの角部で屈折する状態になる。また、保持面8や導入面9を通るベルトは、プーリとベルト取付治具との嵌合が外れないように、ベルトがベルト取付治具を押える役割もしている。
しかし、ベルトの内周面が保持面8や導入面9と沿うような全面接触ができない場合は、ベルトがベルト取付治具を押える効果が小さくなり、ベルト取付治具の嵌合が外れる虞がある。そのため、ベルト取付治具が外れないように強く押えるには、ベルトに過度の張力を掛けて、無理な曲げを与える必要がある。
【0016】
(問題2)
押え部19は、その突き出し長さが、プーリ溝5に嵌ったベルト4を押え部19で確実に抑えるよう、突出片18aよりも長く設定されています(段落[0056]参照)。このように押え部の突き出し長さが長いと、ベルトを確実に押えられる反面、ベルトの巻き掛け動作が完了する状態になっても、ベルトが押え部と干渉しすぎる余り、ベルトとベルト取付治具とが離れにくくなる。あるいは、作業者がプーリからベルト取付治具を取り外す場合にも、押え部が邪魔になって取り外し難くなるなど、作業性に課題が生じる。
【0017】
(問題3)
このベルト取付治具を、3軸レイアウトに使用した場合には、前述のように、ベルト取付治具の直ぐ後方の部位が、プーリ外周面の外側に向かって浮き上がる距離(離間距離)が大きくなる。そのとき、ベルトに強力な浮き上がりの力が作用すると、ベルト取付治具の押え部が押し上げられてしまい、その結果、ベルト取付治具本体の後方が浮き上がってしまう。そうすると、ベルト取付治具の押え部によるベルトをプーリに押さえ付ける機能が発揮されず、ベルトがプーリのフランジに乗り上げたり、ベルト取付治具がプーリから外れ落ちたりする虞がある。
【0018】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、3軸レイアウトでのベルト取付作業でも、ベルトに過度の負荷をかけずに、スムーズにベルト取付作業を行うことができる、ベルト取付治具及びベルトの取付方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための発明の1つは、複数のプーリ間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻き掛ける際に用いるベルト取付治具であって、
本体部と、
前記本体部に設けられており、当該ベルト取付治具が取付対象のプーリに取り付けられた状態で、前記プーリの外周上に配置され、前記ベルトが掛けられて、当該ベルトの張力によって前記プーリの外周側に押圧される、巻掛部と、
前記巻掛部に巻き掛けられた前記ベルトの側面を案内するガイド部と、
当該ベルト取付治具が前記プーリに取り付けられた状態で、前記プーリの外周に対して対向するように配置され、前記プーリに巻き掛けられる前記ベルトを前記プーリの外周側に押圧する、押え部と、
前記プーリの側面を覆うカバー部と、
を備え、
前記巻掛部及び前記カバー部は、前記プーリの外周に沿わされた前記ベルトを、前記プーリの径方向外側に案内し、前記プーリの径方向外側に案内された前記ベルトを、前記プーリの軸方向外側に屈曲させつつ、前記プーリの径方向内側にも屈曲させて、前記プーリの側面に沿わせるように案内し、且つ、案内される過程で屈曲する前記ベルトの内周面から、均一に圧力がかかるように接触する、3次元曲面を有し、
前記押え部は、前記プーリの軸方向外側から軸方向内側へ突出する長さが、前記巻掛部の、前記プーリの軸方向外側から軸方向内側へ突出する長さよりも小さいことを特徴としている。
【0020】
上記ベルト取付治具の巻掛部及びカバー部は、3次元曲面を有していることから、取付対象のプーリの外周に沿わされたベルトが、プーリの径方向外側に案内され、プーリの径方向外側に案内されたベルトが、プーリの軸方向外側に屈曲しつつ、プーリの径方向内側にも屈曲して、プーリの側面に沿う過程で屈曲したベルトの内周面から、ベルト取付治具の巻掛部及びカバー部が受ける圧力を均一にすることができる。これにより、ベルトに過度な張力を掛けなくても、ベルト取付治具をプーリに無理なく押えることができ、ベルト取付治具とプーリとの嵌合を確実にすることができる。
また、押え部がベルトをプーリの外周側に押圧することで、ベルトをプーリに巻き掛け始めた状態での、ベルト取付治具のすぐ後方側(プーリ回転方向と反対側)の部位がプーリから浮き上がり、ベルトがプーリの縁(フランジ部分)を乗り越えて外れることを防止することができる。
また、押え部の突出長さが、巻掛部の突出長さより小さくしていることにより、ベルトのプーリへの巻き掛け動作が完了する状態で、ベルト取付治具がベルトから離れやすくすることができる。あるいは、作業者がプーリからベルト取付治具を取り外す場合にも、取り外しやすくなる。
【0021】
また、本発明は、上記ベルト取付治具において、更に、前記取付対象のプーリに固定する補助具を有し、
前記補助具は、
径方向に伸縮可能な輪状部分を有する、有端形状をしており、
前記輪状部分の外径は、外力が掛かっていない状態で、前記プーリの側面に設けられた、有底の円筒状の凹部の内径よりも大きく、
前記輪状部分は、径方向に収縮した状態で、前記凹部の底部に当接した状態で前記凹部の内壁を押圧可能とし、
一方側の端には、前記本体部が取付可能とされていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、複数のプーリ間にベルトを巻き掛ける際に、ベルトにプーリの縁(フランジ部分)を乗り越えるような、強力な浮き上がりの力が作用すると、ベルト取付治具の押え部までもが押し上げられてしまう場合がある。そこで、補助具の輪状部分を収縮させた状態で、プーリの側面に設けられた、有底の円筒状の凹部の内壁に当接させた後、輪状部分の収縮を開放することにより、凹部の内壁に補助具の輪状部分を押圧させることにより、一方側の端にベルト取付治具が取付られた補助具をプーリに強固に固定する。これにより、上記ベルトに強力な浮き上がりの力が作用してもベルト取付治具が押し上げられないようにすることができる(外れないようにすることができる)。
【0023】
また、本発明は、上記ベルト取付治具において、
前記プーリの外周には、前記ベルトの内周面に設けられた複数のリブが嵌合する、複数の嵌合溝が形成されており、
前記巻掛部は、前記プーリの外周に対向する面に、前記プーリの軸方向外側から軸方向内側にかけて、複数の前記嵌合溝に嵌合する、複数のリブ嵌合部が設けられており、
前記押え部の突出長さは、少なくとも前記リブ嵌合部2つ分以上の長さであり、且つ、前記巻掛部の突出長さよりも、少なくとも前記リブ嵌合部1つ分以上小さくしてもよい。
【0024】
押え部の突出長さを、少なくともリブ嵌合部2つ分以上の長さにすることにより、押え部がベルトをプーリの外周側に押圧する部位を最低限確保することができる。また、押え部の突出長さを、巻掛部の突出長さよりも、少なくとも前記リブ嵌合部1つ分以上小さくすることにより、ベルト取付治具がベルトに引っかからずに、スムーズに離れやすくすることができる。また、設計上、押え部の突出長さを、ベルトに設けられたリブの幅に基づいて設計することができる。
【0025】
また、本発明は、上記補助具を有しないベルト取付治具を使用して、複数のプーリ間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻き掛ける、ベルトの取付方法であって、
前記取付対象のプーリ以外の他のプーリに前記ベルトを巻き掛ける手順と、
前記押え部が前記ベルトの外周に対向し、前記巻掛部が前記ベルトの内周に対向させた状態の、前記ベルトを、前記巻掛部の表面から前記ガイド部で案内しつつ前記カバー部の表面に沿わせて、前記ベルトの内周面が前記プーリの側面に対向した状態で当該プーリに仮掛けする手順と、
を含むことを特徴としている。
【0026】
上記方法によれば、ベルトに過度な張力を掛けなくても、ベルト取付治具をプーリに無理なく押えこむことができ、ベルト取付治具をプーリに確実に固定することができる。また、ベルトがプーリの縁(フランジ部分)を乗り越えて外れることを防止することができる。更に、ベルトのプーリへの巻き掛け動作が完了する状態で、ベルト取付治具がベルトから離れやすくすることができる。
【0027】
また、本発明は、上記の補助具を有するベルト取付治具を使用して、複数のプーリ間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻き掛ける、ベルトの取付方法であって、
前記輪状部分を収縮させた状態で、前記取付対象のプーリの側面に設けられた、有底の円筒状の凹部の底部に当接させた後、前記輪状部分の収縮を開放することにより、当該輪状部分を前記凹部の内壁に押圧させ、前記巻掛部を前記プーリの外周に沿わせた状態で固定する手順と、
前記取付対象のプーリ以外の他のプーリに前記ベルトを巻き掛ける手順と、
前記ベルトの内周面を前記プーリの側面に向けた状態で、前記ベルトを前記プーリの側面から前記カバー部へ沿わせ、更に、前記ベルトを前記ガイド部で案内しつつ前記巻掛部に沿わせ、前記押え部と前記プーリの外周との間を通すことで前記ベルトを仮り掛けする手順と、
前記プーリを回転させる手順とを含むことを特徴としている。
【0028】
上記方法によれば、ベルトを複数のプーリに巻き掛ける一連の作業において、補助具を有するベルト取付治具を使用することで、取付対象のプーリにベルト取付治具を確実に固定することができる。さらに、ベルトの取付作業中にベルトがプーリにしっかりと押圧された状態を維持しながら、ベルトに過度な張力が掛からず無理なく曲げられた形態で作業ができる。その結果、ベルトの取付作業の確実性と安全性を大きく改善することができる。
【発明の効果】
【0029】
3軸レイアウトでのベルト取付作業でも、ベルトに過度の負荷をかけずに、スムーズにベルト取付作業を行うことができる、ベルト取付治具及びベルトの取付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係るベルト取付治具の六面図である。
図2】本実施形態に係るベルト取付治具の説明図である。
図3】第1実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図4】第1実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図5】第1実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図6】第1実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図7】第1実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図8】第2実施形態に係る、補助具を取り付けたベルト取付治具の斜視図である。
図9】第1プーリ、第2プーリ、及び、第3プーリのレイアウトである。
図10】第1プーリの説明図である。
図11】ベルト取付治具に係る巻掛部及びカバー部の3次元曲面の説明図である。
図12】ベルト取付治具に係る押え部の説明図である。
図13】第2実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図14】第2実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図15】第2実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図16】第2実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図17】第2実施形態に係る補助具を取り付けたベルト取付治具の使用方法の説明図である。
図18】その他の実施形態に係る、2つの凹部がプーリ軸方向に階段状に形成されたプーリの説明図である。
図19】2軸レイアウトの説明図である。
図20】3軸レイアウトの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態に係る、ベルト取付治具6(補助具は使用しない)は、図3に示す、互いの軸間距離が全て固定された状態の、第1プーリ1(取付対象のプーリに相当)と、第2プーリ2と、第3プーリ3との間(3軸レイアウト)に、周長方向に伸縮可能なVリブドベルト4を巻き掛ける際に使用する。
【0032】
自動車のエンジンレイアウトでは、図3に示されるように、エンジン等のクランク軸に連結される第1プーリ1(クランクプーリ)と、ウォーターポンプを駆動させる第2プーリ2(ウォータポンプ用プーリ)と、エアコン等のコンプレッサーのシャフトに連結される第3プーリ3(エアコン用プーリ)とが、互いの軸間距離が全て固定された状態で回転自在に支持されている。そして、第1プーリ1と第2プーリ2と第3プーリ3との間には、Vリブドベルト4が巻き掛けされ、エンジン等のクランク軸の動力が、第1プーリ1及び第2プーリ2を介してウォーターポンプのシャフトに伝動され、ウォーターポンプを駆動させている。また、エンジン等のクランク軸の動力が、第1プーリ1、第2プーリ2、第3プーリ3を介してコンプレッサーのシャフトに伝動され、コンプレッサーを駆動させている。なお、本実施形態では、第1プーリ1、第2プーリ2、及び、第3プーリ3のそれぞれの軸間距離は固定(変更不能)されている。また、Vリブドベルト4に対して張力を付与する張力付与手段(テンションプーリやオートテンショナ)は搭載していない。
【0033】
(第1プーリ1、第2プーリ2、及び、第3プーリ3の構造)
第1プーリ1は、図10に示すように、外周に、後述するVリブドベルト4の内周面に形成された4つのリブ4a(不図示)と嵌合可能な4つのプーリ溝(第1プーリ1の外周に設けられた嵌合溝:不図示)と、このプーリ溝を第1プーリ1の軸方向で挟む一対のフランジ13とを有している。
【0034】
また、第1プーリ1の軸1cには、エンジン等のクランク軸が挿入されるボス部11が形成されている(なお、このボス部11にはクランクが装着可能である)。また、第1プーリ1の側面には、有底の円筒状の凹部12が設けられている。この凹部12は、第1プーリ1の軸1cに垂直な底面12a(円形状)と、第1プーリ1の軸1cを中心軸とした円筒状の内壁12bと、底面12aに、第1プーリ1の軸1cを囲うように形成された(肉抜きされた)、半円形(丸みを帯びた形)の6つの貫通孔12cとを有している。なお、凹部12の内径φは、円筒状の内壁12bの直径である。
【0035】
第2プーリ2は、第1プーリ1同様に、Vリブドベルト4の内周面に形成された複数のリブ4aと嵌合可能なプーリ溝(第2プーリ2の外周部に設けられた溝)を有している。また、第2プーリ2の中心部に形成されたボス部21には、ウォーターポンプに連動するシャフトが挿入されている。
【0036】
第3プーリ3は、第2プーリ2同様に、Vリブドベルト4の内周面に形成された複数のリブ4aと嵌合可能なプーリ溝(第3プーリ3の外周部に設けられた溝)を有している。また、第3プーリ3の中心部に形成されたボス部31には、コンプレッサーに連動するシャフトが挿入されている。
【0037】
(Vリブドベルト4)
Vリブドベルト4は、その周長方向において若干伸縮可能な所謂低モジュラスベルトである。低モジュラスベルトは、心線にポリアミド繊維を用いることで、弾性率を比較的低くしたものであり、高弾性率のもの(所謂高モジュラスベルト)と比較して急激な張力低下が抑制される。また、Vリブドベルト4の内周面には、周長方向に延在する、幅方向断面V形状のリブ4aが複数設けられている。この複数のリブ4aが、第1プーリ1、第2プーリ2、及び第3プーリ3のそれぞれの外周部に設けられたプーリ溝に嵌合可能とされる。
【0038】
また、図7の太線矢印VはVリブドベルト4の走行方向を示し、この走行方向にVリブドベルト4が走行するときの第1プーリ1の回転方向を回転方向A(図7参照)、この回転方向Aと反対の方向を逆回転方向Bと、定義する。
【0039】
(ベルト取付治具6の構成)
次に、本実施形態で使用するベルト取付治具6の構成を説明する。
【0040】
図1及び図2に示されるように、ベルト取付治具6は、本体部61と、ベルト取付治具6を第1プーリ1に装着した状態で、第1プーリ1の外周上に配置される、巻掛部62と、Vリブドベルト4の側面を案内するガイド部63と、Vリブドベルト4の背面を第1プーリの外周側に押圧する、押え部64と、第1プーリ1のフランジ13の側面(第1プーリ1の側面の一部)を覆う、カバー部65とを主たる構成として備えている。
【0041】
以下では、ベルト取付治具6を第1プーリ1に装着した状態で方向を定義している。具体的には、図10に示す、第1プーリ1の軸1cの向きをプーリ軸方向とし、図10の手前側をプーリ軸方向外側、図10の奥側をプーリ軸方向内側と定義する。また、第1プーリ1の外周から、第1プーリ1の軸1cに向かう方向をプーリ径方向内側、第1プーリ1の軸1cから第1プーリ1の外周に向かう方向をプーリ径方向外側と定義する。
【0042】
本体部61の後方側(逆回転方向B側)には、第2実施形態で後述する補助具7の嵌合部72が圧入可能な、嵌合孔66が設けられている。嵌合孔66の直径は、後述する補助具7の棒状の嵌合部72の直径よりも若干小さく形成されている。ベルト取付治具6が第1プーリ1に装着された際に、本体部61の底部(プーリ軸方向内側)の一部は、第1プーリ1のフランジ13の側面に当接する。なお、第1実施形態では、補助具7は使用しないことから、本体部61には嵌合孔66は設けなくてもよい。
【0043】
巻掛部62は、本体部61の底部から、プーリ軸方向内側へ突出して設けられており、巻掛部62の裏面(プーリ径方向内側)には、プーリ軸方向外側からプーリ軸方向内側にかけて、第1プーリ1の外周部に設けられたプーリ溝に嵌合する、3つのリブ67(リブ嵌合部に相当)が設けられている。即ち、巻掛部62がプーリ軸方向内側に突出する長さは、第1プーリ1の幅(一対のフランジ13間の長さ)よりも短くなっている。また、巻掛部62の裏面において、3つのリブ67とカバー部65の裏面(プーリ軸方向内側)との間に、第1プーリ1のフランジ13が係合する係合溝68が形成されている。また、巻掛部62の裏面は、第1プーリ1のプーリ溝に沿うように円弧状に湾曲されている。一方、巻掛部62の表面(プーリ径方向外側)は、3次元曲面を有している(詳細は後述)。Vリブドベルト4の第1プーリ1への巻き掛け時には、この巻掛部62の表面にVリブドベルト4が掛けられて、Vリブドベルト4の張力によって第1プーリ1の外周側に押圧される。
【0044】
ガイド部63は、本体部61の前方側(回転方向A側)に設けられ、巻掛部62の表面よりもプーリ径方向外側に張り出している。このガイド部63は、Vリブドベルト4が巻掛部62に巻き掛けられた際に、Vリブドベルト4の側面に当接して、Vリブドベルト4がズレないように規制し、カバー部65側へ案内する役割を果たす。
【0045】
押え部64は、ベルト取付治具6が第1プーリ1に装着された状態で、第1プーリ1の外周に対して対向するように、本体部61の底部から、プーリ軸方向内側へ突出している。ここで、押え部64の、プーリ軸方向内側へ突出する長さは、巻掛部62のプーリ軸方向内側へ突出する長さよりも短く(小さく)している。
【0046】
より詳細には、押え部64のプーリ軸方向内側へ突出する長さは、リブ67の幅の2倍以上の長さであり(少なくともリブ67の幅、2個分の長さ)、且つ、巻掛部62のプーリ軸方向内側へ突出する長さよりも、リブ67の幅以上短くしている(少なくともリブ67の幅、1個分以上短い)。本実施形態では、巻掛部62の裏面には、3つのリブ67を設けていることから、押え部64のプーリ軸方向内側へ突出する長さは、リブ67の幅の2倍の長さにしている(リブ67の幅、2個分の長さ)。このように、押え部64のプーリ軸方向内側へ突出する長さを、少なくともリブ67の幅2つ分以上の長さにすることにより、押え部64がVリブドベルト4を第1プーリ1の外周側に押圧する部位を最低限確保することができる。また、押え部64のプーリ軸方向内側へ突出する長さを、巻掛部62のプーリ軸方向内側へ突出する長さよりも、リブ67の幅1つ分以上短くすることにより、Vリブドベルト4の第1プーリ1への取付作業において、ベルト取付治具6がVリブドベルト4に引っかからずに、スムーズに離れやすくすることができる。また、設計上、押え部64の突出長さを、リブ67の幅に基づいて設計することができる。
【0047】
この押え部64は、図12図12から補助具7を省いた状態)に示すように、巻掛部62に巻き掛かったVリブドベルト4において、第1プーリ1の外周上に沿わせている部分(図12のポイントP参照)を、第1プーリ1の外周に対してVリブドベルト4が密着するように押圧する役割を果たす。
【0048】
カバー部65は、ベルト取付治具6が第1プーリ1に装着された状態で、本体部61から、フランジ13の側面に沿って、回転方向Aに、Vリブドベルト4の幅に相当する長さ分延在しており、カバー部65の裏面(プーリ軸方向内側)が、第1プーリ1のフランジ13の側面に当接する。また、カバー部65の表面(プーリ軸方向外側)は、3次元曲面を有している。このカバー部65は、巻き掛けられたVリブドベルト4の内周面が第1プーリ1のフランジ13の側面などと直接接触して損傷するのを防ぐ役割を果たす。なお、カバー部65の長さに関しては、カバー部65は、Vリブドベルト4が巻き掛けれた際に、Vリブドベルト4の内周面を保護する役割を果たせばよいので、コンパクト化の要請から、Vリブドベルト4の幅分の大きさが好ましい。
【0049】
ここで、巻掛部62の表面及びカバー部65の表面は、一体的な3次元曲面をしている。具体的には、第1プーリ1の外周に沿わされたVリブドベルト4を、一旦プーリ径方向外側に案内し、プーリ径方向外側に案内されたVリブドベルト4を、プーリ軸方向外側に屈曲(略90°回転)させつつ、プーリ径方向内側にも屈曲させて、Vリブドベルト4の内周面が第1プーリ1の側面に沿うように案内し、且つ、Vリブドベルト4が案内される過程で屈曲するVリブドベルト4の内周面から均一に圧力がかかるように接触するような3次元曲面である。
【0050】
換言すれば、巻掛部62の表面及びカバー部65の表面における、一体的な3次元曲面は、図11に示すように、短冊状の用紙の一端を水平に固定して、他端を一旦上方に浮かし、水平面上でおよそ90°屈曲させつつ、下方にも屈曲させた場合に、用紙に過度な張力が掛からず無理なく曲げられる形態である。
【0051】
(ベルト取付治具6の使用方法)
次に、図3図7を参照しつつ、ベルト取付治具6を使用したVリブドベルト4の取付方法を説明する。なお、第1プーリ1のボス部11にクランクを連結し、第1プーリ1を手動で自由に回転できるようにしている。
【0052】
<手順(1a)>
まず、Vリブドベルト4を第2プーリ2及び第3プーリ3に巻掛ける。そして、図3に示すように、第2プーリ2及び第3プーリ3に巻掛けられた状態のVリブドベルト4を手作業で引張り、Vリブドベルト4が第1プーリ1の側面上から外周上に掛け渡されるように配置し、この状態を維持する。
【0053】
<手順(1b)>
次に、図3に示すように、Vリブドベルト4の内周面が第1プーリ1の外周に対向した状態で、ベルト取付治具6の押え部64がVリブドベルト4の外周に対向し、巻掛部62がVリブドベルト4の内周に対向するように、ベルト取付治具6をVリブドベルト4の側面から差し入れる。
【0054】
<手順(1c)>
そして、図4に示すように、Vリブドベルト4の側面に差し入れたベルト取付治具6を、第1プーリ1の外周に沿って回転方向Aにスライドさせる。これにより、ベルト取付治具6は、Vリブドベルト4の張力により、第1プーリ1の外周とVリブドベルト4との間に挟まれた状態で固定される。即ち、ベルト取付治具6が第1プーリ1に固定された状態で、Vリブドベルト4が第1プーリ1に仮掛けされた状態になる。
【0055】
この際、Vリブドベルト4は、ベルト取付治具6の巻掛部62の表面からガイド部63で案内されつつカバー部65の表面に沿わされ、Vリブドベルト4の内周面が第1プーリ1の側面に対向した状態で第1プーリ1に仮掛けされている。
【0056】
ここで、巻掛部62の表面及びカバー部65の表面が3次元曲面を有していることから、屈曲したVリブドベルト4の内周面から、ベルト取付治具6の巻掛部62及びカバー部65が受ける圧力を均一にすることができる。これにより、Vリブドベルト4に過度な張力を掛けなくても、ベルト取付治具6を第1プーリ1に無理なく押えることができ、ベルト取付治具6と第1プーリ1との嵌合を確実にすることができる。
【0057】
また、Vリブドベルト4の内周面を第1プーリ1の側面に向けた状態で巻き掛けることにより、第2プーリ2に巻き掛かったVリブドベルト4(第2プーリ2の手前側)が強く第2プーリ2の外周上に押し当たる力を作用させて、Vリブドベルト4が第2プーリ2のフランジから外れにくくしている。
【0058】
<手順(1d)>
次に、第1プーリ1のボス部11にクランクを連結し(不図示)、図4の状態から図5の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させる。すると、Vリブドベルト4には、伸張されることにより高い張力が発生する。上記Vリブドベルト4の張力は、巻掛部62を第1プーリ1の外周に対して押圧する押圧作用として働き、巻掛部62の裏面に設けられた3つのリブ67と第1プーリ1の外周に設けられたプーリ溝との嵌合をより強固にする。これにより、ベルト取付治具6と第1プーリ1との密着が安定する。
【0059】
この際、ベルト取付治具6のすぐ後方側(逆回転方向B側)のVリブドベルト4は、押え部64による押圧によって、Vリブドベルト4の内周面のリブ4aが、第1プーリ1の外周面に設けられたプーリ溝に嵌合密着した状態となる。これにより、Vリブドベルト4を第1プーリ1に巻き掛け始めた状態での、ベルト取付治具6のすぐ後方側のVリブドベルト4が第1プーリ1から浮き上がり、Vリブドベルト4が第1プーリ1のフランジ13を乗り越えて外れることを防止することができる。
【0060】
継続して、図5の状態から図6の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させる。すると、第1プーリ1の側面上にあったVリブドベルト4が、フランジ13を乗り越えて、巻掛部62の表面に移動する。
【0061】
この際も、Vリブドベルト4が押え部64によって第1プーリ1の外周側に押圧されているため、ベルト取付治具6のすぐ後方側(逆回転方向B側)のVリブドベルト4が、第1プーリ1のフランジ13を乗り越えて外れてしまうことを防止することができる。
【0062】
更に、図6の状態から図7の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させる。すると、Vリブドベルト4がベルト取付治具6を離れて第1プーリ1の外周へと移動する。この際、押え部64の、プーリ軸方向内側へ突出する長さが、巻掛部62のプーリ軸方向内側へ突出する長さよりも短く、Vリブドベルト4の押圧機能を維持する最小限の長さ(本実施形態では、リブ67の幅の2倍の長さに設定)であることから、Vリブドベルト4は、押え部64から比較的無理なく離脱することができる。
【0063】
その後、ベルト取付治具6を回収する。
【0064】
以上の手順を経ることにより、図7に示すように、第1プーリ1と第2プーリ2と第3プーリ3との間にVリブドベルト4を巻き掛けることができる。
【0065】
上記方法によれば、Vリブドベルト4に過度な張力を掛けなくても、ベルト取付治具6を第1プーリ1に無理なく押えこむことができ、ベルト取付治具6を第1プーリ1に確実に固定することができる。また、Vリブドベルト4が第1プーリ1の縁(フランジ13)を乗り越えて外れることを防止することができる。更に、Vリブドベルト4の第1プーリ1への巻き掛け動作が完了する状態で、ベルト取付治具6がVリブドベルト4から離れやすくすることができる。
【0066】
(第2実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、図8に示すように、第1実施形態に係るベルト取付治具6に補助具7を取り付けた治具であり、第1実施形態同様に、図9に示す、互いの軸間距離が全て固定された状態の、第1プーリ1と、第2プーリ2と、第3プーリ3との間(3軸レイアウト)に、周長方向に伸縮可能なVリブドベルト4を巻き掛ける際に使用する。なお、第1プーリ1と、第2プーリ2と、第3プーリ3によって構成される3軸レイアウトの構成は第1実施形態と同じである。
【0067】
(ベルト取付治具6の構成)
次に、第2実施形態で使用するベルト取付治具6の構成を説明する。このベルト取付治具6は、後述する補助具7に装着される以外の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0068】
なお、第2実施形態に係るベルト取付治具6の本体部61の後方側(逆回転方向B側)には、後述する補助具7の嵌合部72が圧入される、嵌合孔66が設けられている。嵌合孔66の直径は、後述する補助具7の棒状の嵌合部72の直径よりも若干小さく形成されている。
【0069】
(補助具7の構成)
補助具7は、図13に示すように、第2プーリ2及び第3プーリ3に巻き掛けた状態のVリブドベルト4を、最後に残した第1プーリ1に、第1プーリ1の回転を利用して巻き掛ける際に使用する、ベルト取付治具6を、第1プーリ1に固定するために使用する。
【0070】
具体的には、図8及び図9に示すように、補助具7は、鉄製の丸棒素形材を加工して形成した、径方向に伸縮可能な輪状部分71を有する、有端形状をしている。輪状部分71は、第1プーリ1の凹部12の内壁12bに沿った円形状をしており、輪状部分71の外径は、収縮を開放した無負荷状態(輪状部分71に対して外力がかかっていない状態:図9参照)で、第1プーリ1の側面に設けられた凹部12の内径φよりも若干大きくなるように設計されている。このため、輪状部分71は、収縮状態(輪状部分71の外径が弾性変形して小さくなるような負荷を与えた状態)で、第1プーリ1の側面に設けられた凹部12の底面12a(底部)に当接した状態で内壁12bを押圧可能となる。
【0071】
また、補助具7の一方側の端には、輪状部分71よりも径方向外側に張り出し、ベルト取付治具6の本体部61の側面に設けられた嵌合孔66の直径よりも若干大きい断面形状をした、棒状の嵌合部72が加工形成されている。この嵌合部72が、嵌合孔66に圧入されることにより、補助具7にベルト取付治具6が取り付けられる。
【0072】
また、補助具7の他方側の端には、第1プーリ1の凹部12の底面12aに設けられた、6つの貫通孔12cの何れかに係合する、L字状の係合部73が加工形成されている。この係合部73のL字状の先端は、軸(軸1c)方向に突き出ていることから、係合部73のL字状の先端を、第1プーリ1の貫通孔12cの縁に係合させることができる。これにより、Vリブドベルト4を、第1プーリ1に、巻き掛ける際に、補助具7自体の第1プーリ1の回転方向の動きを拘束することができるため、Vリブドベルト4の取付動作の途中で、ベルト取付治具6に対してVリブドベルト4から反力が作用した場合でも、ベルト取付治具6が第1プーリ1からズレたり、スリップしたりすることを防止することができる。
【0073】
上記のように、本実施形態の補助具7は、輪状部分71、嵌合部72、及び、係合部73のそれぞれの構成が、一本の鉄鋼製の棒状素材を曲げ加工することにより形成されている。これにより、補助具7の製造に関してコストパフォーマンスを向上させることができる。
【0074】
本実施形態の補助具7の材質は鉄であるが、ばね弾性による変形(伸縮)が得られる程度に、輪状部分71の外径が可変する材質であれば、鉄に限らず、ステンレス製でもよく、樹脂製であっても良い。なお、補助具7を第1プーリ1の凹部12に堅実に嵌合するために高度なばね弾性が必要な場合や、補助具7に高度な耐久寿命が必要な場合などは、補助具7の材質としては鉄が好ましい。
【0075】
また、補助具7の形状としては、本実施形態のように丸棒に限定されるものではなく、例えば、断面が多角形の棒状素材であってもよい。また、輪状部分71の形状はたとえ真円(円状)ではなくても、第1プーリ1の凹部12に嵌合して、且つ、ばね弾性によって第1プーリ1の径方向に伸縮可能な形状であればよい(半円、楕円など)。また、補助具7の係合部73のL字状の先端は、第1プーリ1の奥側に載置される周辺装置(部品)に干渉することがない程度に、貫通孔12cの裏側に突き出ていてもよい。
【0076】
(補助具7を有するベルト取付治具6の使用方法)
次に、図9図13図17を参照しつつ、補助具7を有するベルト取付治具6を使用したVリブドベルト4の取付方法を説明する。なお、第1プーリ1のボス部11にクランクを連結し、第1プーリ1を手動で自由に回転できるようにしている。
【0077】
<手順(2a)>
まず、図9に示すように、補助具7の棒状の嵌合部72を、ベルト取付治具6の嵌合孔66に圧入して、ベルト取付治具6を補助具7に取り付ける。
【0078】
<手順(2b)>
次に、図9に示すように、補助具7の輪状部分71を径方向に収縮させた状態(輪状部分71の外径が弾性変形して小さくなるような負荷を与えた状態)で、L字状の係合部73の先端を、第1プーリ1の貫通孔12cの縁に係合させる。そして、収縮させた輪状部分71を、第1プーリ1の凹部12の底面12aに当接させた後、輪状部分71の収縮を開放することにより、輪状部分71を凹部12に嵌合させて、輪状部分71によって凹部12の内壁12bを押圧させる。その結果、補助具7は、第1プーリ1の凹部12の底面12aに接したまま内壁12bに強く当接した状態となり、第1プーリ1に強固に嵌合される(固定される)。また、補助具7に取り付けられたベルト取付治具6は、第1プーリ1の外周に当接された状態で配置される。即ち、ベルト取付治具6の巻掛部62の裏面に設けられた3つのリブ67が、第1プーリ1の外周に設けられたプーリ溝に嵌合した状態になる。
【0079】
なお、本実施形態では、ベルト取付治具6を補助具7に取り付けた後、補助具7を第1プーリ1に固定させているが、補助具7を第1プーリ1に固定させた後に、ベルト取付治具6を補助具7に取り付けてもよい。
【0080】
上記補助具7を使用することにより、ベルト取付治具6が取付られた補助具7を第1プーリ1に強固に固定することができる。即ち、補助具7を介してベルト取付治具6を第1プーリ1に強固に固定することができる。
また、第1プーリ1の凹部12の底面12aに輪状部分71を当接させることで、嵌合部72に取り付けられたベルト取付治具6の、軸(軸1c)方向への移動も拘束することができる。これによりベルト取付治具6の、軸(軸1c)方向の適切な位置決めが可能となる。
また、L字状の係合部73の先端を、第1プーリ1の貫通孔12cの縁に係合させることにより、補助具7自体の第1プーリ1の回転方向の動きを拘束することができるため、後述のVリブドベルト4の取付動作の途中で、ベルト取付治具6に対してVリブドベルト4から反力が作用した場合でも、ベルト取付治具6が第1プーリ1からズレたり、スリップしたりすることを防止することができる。
【0081】
<手順(2c)>
次に、ベルト取付治具6が取付られた補助具7が、第1プーリ1に固定された状態で、Vリブドベルト4を第2プーリ2及び第3プーリ3に巻掛ける。
【0082】
<手順(2d)>
次に、図13に示すように、Vリブドベルト4の内周面を第1プーリ1の側面に向けた状態で、Vリブドベルト4を第1プーリ1の側面から、ベルト取付治具6のカバー部65の表面へ沿わせ、更に、Vリブドベルト4をガイド部63で案内しつつ巻掛部62の表面に沿わせ、押え部64と第1プーリ1の外周との間を通すことでVリブドベルト4を第1プーリ1に仮掛けする。この時点では、Vリブドベルト4には張力がほとんど掛かっていないが、補助具7を介してベルト取付治具6が第1プーリ1に強固に固定されているため、Vリブドベルト4をベルト取付治具6に仮掛けする場合でも、ベルト取付治具6が第1プーリ1から脱落することなく、Vリブドベルト4をベルト取付治具6に確実に仮掛けすることができる。
【0083】
なお、Vリブドベルト4を第1プーリ1に仮掛けする手順としては、まず、Vリブドベルト4を、押え部64と第1プーリ1の外周との間を通し、Vリブドベルト4をガイド部63で案内しつつ巻掛部62の表面に沿わせ、更に、Vリブドベルト4をカバー部65の表面へ沿わせ、Vリブドベルト4をカバー部65の表面から、Vリブドベルト4の内周面が第1プーリ1の側面に向いた状態で、第1プーリ1の側面に沿わせてもよい。
【0084】
また、上記手順(2a)~(2d)の順番は一例に過ぎず、その順番は問わない。また、Vリブドベルト4をベルト取付治具6に取り付けた状態(この時、補助具7も装着されていてもよい)で、ベルト取付治具6を第1プーリ1に取り付けてもよい。
【0085】
ここで、巻掛部62の表面及びカバー部65の表面が3次元曲面を有していることから、Vリブドベルト4を第1プーリ1の側面から、ベルト取付治具6のカバー部65の表面へ沿わせ、更に、Vリブドベルト4をガイド部63で案内しつつ巻掛部62の表面に沿わせた際に、屈曲したVリブドベルト4の内周面から、ベルト取付治具6の巻掛部62及びカバー部65が受ける圧力を均一にすることができる。これにより、Vリブドベルト4に過度な張力を掛けなくても、ベルト取付治具6を第1プーリ1に無理なく押えることができ、ベルト取付治具6と第1プーリ1との嵌合を確実にすることができる。
【0086】
また、Vリブドベルト4の内周面を第1プーリ1の側面に向けた状態で巻き掛けることにより、第2プーリ2に巻き掛かったVリブドベルト4(第2プーリ2の手前側)が強く第2プーリ2の外周上に押し当たる力を作用させて、Vリブドベルト4が第2プーリ2のフランジから外れにくくしている。
【0087】
<手順(2e)>
次に、第1プーリ1のボス部11にクランクを連結し(不図示)、図13の状態から図14の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させる。すると、Vリブドベルト4には、伸張されることにより高い張力が発生する。上記Vリブドベルト4の張力は、巻掛部62を第1プーリ1の外周に対して押圧する押圧作用として働き、巻掛部62の裏面に設けられた3つのリブ67と第1プーリ1の外周に設けられたプーリ溝との嵌合をより強固にする。これにより、ベルト取付治具6と第1プーリ1との密着が安定する。
【0088】
この際、補助具7の嵌合部72(ベルト取付治具6が装着された側)が、逆回転方向B、すなわち、補助具7の輪状部分71の外径が拡大する方向に引き戻される作用を受けることにより、補助具7の輪状部分71が第1プーリ1の凹部12の内壁12bにさらに強く押し付けられる。そのため、Vリブドベルト4の取付動作の途中でも、補助具7並びにベルト取付治具6が、第1プーリ1との間でスリップしないうえに、第1プーリ1から脱落することもなく、より安定したVリブドベルト4のシフト動作を行なうことができる。
【0089】
また、ベルト取付治具6のすぐ後方側(逆回転方向B側)のVリブドベルト4は、押え部64による押圧によって、Vリブドベルト4の内周面のリブ4aが、第1プーリ1の外周面に設けられたプーリ溝に嵌合密着した状態となる。これにより、Vリブドベルト4を第1プーリ1に巻き掛け始めた状態での、ベルト取付治具6のすぐ後方側のVリブドベルト4が第1プーリ1から浮き上がり、Vリブドベルト4が第1プーリ1のフランジ13を乗り越えて外れることを防止することができる。さらに、ベルト取付治具6は補助具7に取り付けられていることによって、ベルト取付治具6自体が浮き上がることなく、第1プーリ1に強固に装着することができる。
【0090】
継続して、図14の状態から図15の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させる。すると、第1プーリ1の側面上にあったVリブドベルト4が、フランジ13を乗り越えて、巻掛部62の表面に移動する。
【0091】
この際も、Vリブドベルト4が押え部64によって第1プーリ1の外周側に押圧されているため、ベルト取付治具6のすぐ後方側(逆回転方向B側)のVリブドベルト4が、第1プーリ1のフランジ13を乗り越えて外れてしまうことを防止することができる。更に、この段階では、押え部64は、Vリブドベルト4からの押上げ力を最も強く受ける状況であるが、ベルト取付治具6に取り付けられた補助具7が第1プーリ1に固定されていることによって、ベルト取付治具6のすぐ後方側(逆回転方向B側)の浮き上がりを防止することができる。
【0092】
更に、図15の状態から図16の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させる。すると、Vリブドベルト4がベルト取付治具6を離れて第1プーリ1の外周へと移動する。この際、押え部64の、プーリ軸方向内側へ突出する長さが、巻掛部62のプーリ軸方向内側へ突出する長さよりも短く、Vリブドベルト4の押圧機能を維持する最小限の長さ(本実施形態では、リブ67の幅の2倍の長さに設定)であることから、Vリブドベルト4は、押え部64から比較的無理なく離脱することができる。
【0093】
また、Vリブドベルト4の第1プーリ1へのシフト動作が完了すると、ベルト取付治具6に対するVリブドベルト4からの押圧作用が取り除かれることから、その瞬間に、これまで強固に第1プーリ1に固定されていた補助具7の、第1プーリ1に対する密着力が若干弱まる。これにより、ベルト取付治具6が補助具7と共に、プーリ軸方向外側かつプーリ径方向外側の斜め上へ向かって僅かに浮き上がる、ポップアップ動作が生じる。このポップアップ動作によって、Vリブドベルト4は、押え部64からよりスムーズに離脱することができ、且つ、ベルト取付治具6は補助具7に取り付けられているために、第1プーリ1から落下することはない。
【0094】
その後、図16の状態から図17の状態となるように、第1プーリ1を、回転方向Aに回転させ、ベルト取付治具6が取り付けられた補助具7を、第1プーリ1から取り外して回収する。
【0095】
以上の手順を経ることにより、図17に示すように、第1プーリ1と第2プーリ2と第3プーリ3との間にVリブドベルト4を巻き掛けることができる。
【0096】
上記方法によれば、Vリブドベルト4を第1プーリ1と第2プーリ2と第3プーリ3との間に巻き掛ける一連の作業において、補助具7を有するベルト取付治具6を使用することで、第1プーリ1にベルト取付治具6を確実に固定することができる。さらに、Vリブドベルト4の取付作業中にVリブドベルト4が第1プーリ1にしっかりと押圧された状態を維持しながら、Vリブドベルト4に過度な張力が掛からず無理なく曲げられた形態で作業ができる。その結果、Vリブドベルト4の取付作業の確実性と安全性を大きく改善することができる。
【0097】
(その他の実施形態)
第2実施形態の補助具7は、一本の鉄鋼製の棒状素材を曲げ加工することにより、輪状部分71、嵌合部72、及び、係合部73のそれぞれの構成を形成しているが、輪状部分71、嵌合部72、及び、係合部73のそれぞれの構成を別の部材として、組み合わせることにより補助具7を製造してもよい。
【0098】
また、第2実施形態では、ベルト取付治具6が装着された補助具7を取り付けて、Vリブドベルト4を最後に巻き掛けるプーリとして、最もその直径が大きい第1プーリ1(クランクプーリ)を例示したが、これに限らず、補助具7が適用可能な(プーリの側面に、輪状部分71を嵌合可能な凹部や、補助具7の係合部73を係合できる貫通孔を有する)プーリであれば適用できる。従って、第1プーリ1よりもその直径が小さい、第2プーリ2(ウォータポンプ用プーリ)や第3プーリ3(エアコン用プーリ)にも適用できる。
【0099】
また、補助具7の輪状部分71を嵌合する凹部12について、第2実施形態では、1つの凹部12が形成された第1プーリ1を例示して説明したが、プーリの側面に、複数の凹部がプーリ軸方向に階段状に形成されている場合には、補助具7の輪状部分71を嵌合する凹部は適時選択してもよい。例えば、図18に示すように、プーリの側面に、2つの凹部(第1凹部及び第2凹部)がプーリ軸方向に階段状に形成されている場合には、補助具7の輪状部分71を、最も浅い場所に形成された第1凹部に嵌合するように設計してもよいし、最も深い場所に形成された第2凹部に嵌合するように設計してもよい(図18参照)。
【0100】
また、第1実施形態・第2実施形態では、互いの軸間距離が全て固定された状態の、第1プーリ1と、第2プーリ2と、第3プーリ3とで構成された3軸のプーリレイアウトへの適用例を示したが、3軸以外のプーリレイアウトに適用してもよい(2軸のプーリレイアウトでも、4軸以上のプーリレイアウトでもよい)。
【0101】
また、第1実施形態・第2実施形態では、プーリに巻き掛けるベルトとしてVリブドベルト4を使用したベルトの取付方法として説明したが、ベルト種としては、Vリブドベルトに限らず、例えば平ベルトやVベルトなどをプーリへ取り付ける際にも適用することができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【符号の説明】
【0103】
1 第1プーリ
11 ボス部
12 凹部
12a 底面
12b 内壁
12c 貫通孔
13 フランジ
2 第2プーリ
3 第3プーリ
4 Vリブドベルト
6 ベルト取付治具
61 本体部
62 巻掛部
63 ガイド部
64 押え部
65 カバー部
66 嵌合孔
67 リブ
68 係合溝
7 補助具
71 輪状部分
72 嵌合部
73 係合部
A 回転方向
B 逆回転方向
図1
図2
図3
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