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特許7436427電動弁用ステータ、電動弁および冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電動弁用ステータ、電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20240214BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20240214BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20240214BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240214BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20240214BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K5/00 A
H02K5/24 A
H02K5/04
H02K7/14 Z
F16K31/04 A
F25B41/35
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021105540
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023004067
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】土井 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106750(JP,A)
【文献】特開2007-147013(JP,A)
【文献】特開2021-055710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 5/24
H02K 5/04
H02K 7/14
F16K 31/04
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部の駆動により作動する弁装置に対して装着され、コイルを内装し、前記弁装置側のマグネットロータと共に前記モータ部を構成する電動弁用ステータであって、
軸線方向に前記弁装置を挿入する嵌挿孔が形成されると共に、前記嵌挿孔の軸線回りにおける開口部の外周であり、前記コイルの前記軸線方向の端部より外側となる位置に固定ブロックが形成され、
前記嵌挿孔に挿入された前記弁装置を固定するブラケットを備え、
前記ブラケットは、
前記弁装置と係合する弾性片と、
前記固定ブロックに固定される基部と、を有し、
前記基部は、
前記固定ブロックを前記嵌挿孔の軸線に直交する直交面における内外方向に挟み込む内側板および外側板と、
前記内側板および外側板を連結して一体に保持する連結板と、
前記連結板における前記嵌挿孔の前記内外方向に対して水平方向に直交する直交方向の両端部からそれぞれ曲折して形成され、前記固定ブロックを前記直交方向に挟み込む一対の曲げ部と、を有し、
前記一対の曲げ部は、
前記固定ブロックに対する前記基部の前記直交方向への移動を規制する、電動弁用ステータ。
【請求項2】
前記一対の曲げ部は、
前記連結板に対して直角に曲折された第一側板および第二側板によって構成されている、請求項1に記載の電動弁用ステータ。
【請求項3】
前記第一側板および第二側板は、前記固定ブロックの前記直交方向の面を挟み込む、請求項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項4】
前記第一側板と第二側板との前記直交方向の距離は、前記内側板と外側板との前記内外方向の距離の0.8倍以上である、請求項2または3に記載の電動弁用ステータ。
【請求項5】
前記第一側板および第二側板のそれぞれの前記内外方向の幅寸法は、前記内側板と外側板との前記内外方向の距離の0.3倍以上である、請求項~4のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項6】
前記第一側板および第二側板のそれぞれの前記内外方向の幅寸法は、前記外側板の前記直交方向の幅寸法以上である、請求項~5のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項7】
前記固定ブロックは、前記基部の前記内外方向への移動を規制する規制部を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁用ステータを前記弁装置に備えてなる電動弁。
【請求項9】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、
請求項8に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられている冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁用ステータ、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機などの冷凍サイクルに設けられる電動弁として、弁本体と、非磁性体で構成された円筒形状のキャンおよび電動弁用ステータによって構成されるモータ部と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。弁本体には、キャンが溶接などによって一体的に組み付けられており、これら弁本体とキャンとにより弁装置が構成される。電動弁は、電動弁用ステータに設けられたコイルからの電磁力により、キャンの内部に設けられたマグネットロータが回転駆動され、弁本体内部の弁部材を作動させる。
【0003】
このような構成の電動弁では、電動弁用ステータが嵌合孔を有しており、当該嵌合孔に挿入された弁装置がブラケットを介して電動弁用ステータと固定されている。電動弁用ステータには、固定ブロックが設けられており、当該固定ブロックには、ブラケットの一方の端部に形成された基部が固定される。ブラケットは、他方の端部に弁装置と係合する弾性片が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-88931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された電動弁の場合、ブラケットは、固定ブロックを嵌合孔の径方向に挟みつける外側板と内側板とが連結板を介して一体に形成された基部を備えている。従って、かかるブラケットでは、基部が外側板と内側板とによって固定ブロックを嵌合孔の径方向に挟みつけることで、固定ブロックに対する基部の当該嵌合孔の径方向への移動を規制し、当該基部の固定ブロックに対するズレや外れの発生を防止していた。
【0006】
しかしながら、電動弁が冷凍サイクル内で圧縮機付近に取り付けられた場合、配管の過剰な振動またはそれに伴う衝撃により、固定ブロックに対してブラケットの基部がズレたり、外れたりする虞があった。つまり、基部が外側板と内側板とによって固定ブロックを嵌合孔の径方向に挟みつけるだけでは、固定状態が不十分であるという問題があった。また、このように、固定ブロックに対するブラケットの固定状態にズレや外れが生じることに起因して、振動音が発生するという懸念もあった。
【0007】
本発明の目的は、配管の振動または衝撃に起因した固定ブロックに対するブラケットのズレや外れを防止でき、振動音の発生を抑制できる電動弁用ステータ、電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁用ステータは、モータ部の駆動により作動する弁装置に対して装着され、コイルを内装し、前記弁装置側のマグネットロータと共に前記モータ部を構成する電動弁用ステータであって、軸線方向に前記弁装置を挿入する嵌挿孔が形成されると共に、前記嵌挿孔の軸線回りにおける開口部の外周であり、前記コイルの前記軸線方向の端部より外側となる位置に固定ブロックが形成され、前記嵌挿孔に挿入された前記弁装置を固定するブラケットを備え、前記ブラケットは、前記弁装置と係合する弾性片と、前記固定ブロックに固定される基部と、を有し、前記基部は、前記固定ブロックを前記嵌挿孔の軸線に直交する直交面における内外方向に挟み込む内側板および外側板と、前記内側板および外側板を連結して一体に保持する連結板と、前記連結板における前記嵌挿孔の前記内外方向に対して水平方向に直交する直交方向の両端部からそれぞれ曲折して形成され、前記固定ブロックを前記直交方向に挟み込む一対の曲げ部と、を有し、前記一対の曲げ部は、前記固定ブロックに対する前記基部の前記直交方向への移動を規制するものである。
【0009】
このような本発明によれば、固定ブロックに固定されるブラケットの基部が、固定ブロックを嵌挿孔の軸線に直交する直交面における内外方向に挟み込む内側板および外側板と、これら内側板および外側板を連結して一体に保持する連結板と、連結板における嵌挿孔の内外方向に対して水平方向に直交する直交方向の両端部からそれぞれ曲折して形成され、固定ブロックを直交方向に挟み込む一対の曲げ部と、を有して構成される。そして、内側板および外側板は、固定ブロックに対する基部の内外方向への移動を規制する。また、一対の曲げ部は、固定ブロックに対する基部の直交方向への移動を規制する。これにより、ブラケットの基部は、固定ブロックに対する直交面の水平方向における全方向への移動を規制できる。かくして、本発明に係る電動弁用ステータによれば、配管の振動または衝撃に起因した固定ブロックに対するブラケットのズレや外れを防止でき、振動音の発生を抑制できる。
【0010】
この際、前記一対の曲げ部は、前記連結板に対して直角に曲折された第一側板および第二側板によって構成されていることが好ましい。また、前記第一側板および第二側板は、前記固定ブロックの前記直交方向の面を挟み込むことが好ましい。さらに、前記第一側板と第二側板との前記直交方向の距離は、前記内側板と外側板との前記内外方向の距離の0.8倍以上であることが好ましい。さらに、前記第一側板および第二側板のそれぞれの前記内外方向の幅寸法は、前記内側板と外側板との前記内外方向の距離の0.3倍以上であることが好ましい。これらの構成によれば、一対の曲げ部は、第一側板および第二側板によって、固定ブロックの直交方向の面を挟み込むことによって、当該固定ブロックに対する基部の直交方向への移動を十分に規制できる。
【0011】
また、前記第一側板および第二側板のそれぞれの前記内外方向の幅寸法は、前記外側板の前記直交方向の幅寸法以上であることが好ましい。この構成によれば、第一側板および第二側板は、固定ブロックを直交方向に挟み込むことによって、当該固定ブロックに対する基部の直交方向への移動を十分に規制できる。とりわけ、大型コイルを用いた電動弁用ステータにおいて、内側板と外側板との内外方向の距離が内側板の直交方向の幅寸法の1.5倍以上である場合に有効である。
【0012】
さらに、前記固定ブロックは、前記基部の前記内外方向への移動を規制する規制部を更に備えることが好ましい。これらの構成によれば、内側板および外側板によって、固定ブロックに対する基部の内外方向への移動を規制することに加え、更に固定ブロックに設けられる規制部によって、ブラケットの基部の内外方向への移動を規制される。そのため、固定ブロックに対する基部の内外方向への移動を確実に規制できる。
【0013】
本発明の電動弁は、前記いずれかの電動弁用ステータを前記弁装置に備えてなる。
【0014】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動弁用ステータ、電動弁および冷凍サイクルシステムによれば、配管の振動または衝撃に起因した固定ブロックに対するブラケットのズレや外れを防止でき、振動音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る電動弁を部分的に断面で示す側面図である。
図2図1のA-A矢視図であり、第1実施形態に係る電動弁用ステータの底面図を示し、(a)はブラケットとキャンとの係合状態を示す図、(b)はブラケットにキャンが係合していない状態を示す図である。
図3図2のB-B断面図であり、第1実施形態に係る電動弁用ステータの縦断面図である。
図4図2の電動弁用ステータに用いられるブラケットを示し、(a)は上面図、(b)は(a)のX矢視図、(c)は(a)のY矢視図である。
図5】第1実施形態に係るブラケットを固定ブロックに組み付けた状態を示す図であり、(a)は図2における要部Cの拡大図、(b)は(a)のE矢視図、(c)は(a)のF-F断面図、(d)は(a)のG矢視図である。
図6】第2実施形態に係る電動弁用ステータの底面図である。
図7】第2実施形態に係る電動弁用ステータに用いられるブラケットを示し、(a)は上面図、(b)は(a)のX矢視図、(c)は(a)のY矢視図である。
図8】第2実施形態に係るブラケットを固定ブロックに組み付けた状態を示す図であり、(a)は図6における要部Cの拡大図、(b)は(a)のE矢視図、(c)は(a)のF-F断面図、(d)は(a)のG矢視図である。
図9】実施形態に係る冷凍サイクルシステムを示す概略構成図である。
図10】変形例に係るブラケットを固定ブロックに組み付けた状態を示す図であり、図5(a)におけるF-F断面と同一方向の断面図である。
図11】他の変形例に係るブラケットを固定ブロックに組み付けた状態を示す図であり、図5(a)におけるF-F断面と同一方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る電動弁用ステータ、電動弁および冷凍サイクルシステムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の紙面における上下方向に対応する。よって、以下の説明における「底部」は図1の紙面における下方向に位置する。また、図1図3図5図6および図8は、説明の便宜上、モールド成型(注型)前、または、モールド材を図示しないものとする。
【0018】
<第1実施形態>
図1図3に示すように、本実施形態に係る電動弁10は、ブラケット1と、「モータ部」としてのステッピングモータ20と、「弁装置」としての弁本体30、および、非磁性体で形成される円筒形状のキャン40と、を備えている。ステッピングモータ20は、キャン40の外周に取り付けられた後述する「電動弁用ステータ」としてのステータ21と、キャン40の内部に回転可能に配置されたマグネットロータ22と、を有して構成されている。なお、マグネットロータ22の外周面とキャン40の内周面との間には所定の隙間が設けられている。また、図2(a)において、弁装置部分の断面としては、キャン40のみの断面を示し、キャン40の内部部品は、便宜上、省略している。
【0019】
弁本体30はステンレスなどのハウジング310を有し、このハウジング310の内部に弁部材などを内蔵している。そして、この弁本体30は、ステッピングモータ20の駆動(マグネットロータ22の回転)により作動し、第1継手管31から第2継手管32へ流れる流体の流量、または第2継手管32から第1継手管31へ流れる流体の流量を制御する。
【0020】
弁本体30のハウジング310の上端には、キャン40が溶接などによって気密に組み付けられ、これにより、弁本体30およびキャン40は「弁装置」を構成している。
【0021】
ステータ21は、樹脂製のボビン21aにコイル21b,21bを巻装することで、軸線L方向に一対のコイル部を積層して構成されている。また、ボビン21aには、磁極歯21dを持つ継鉄(ヨーク)21cがモールド成形により一体に組み付けられている。さらに、ステータ21は、中央に軸線Lを中心とする円柱形状の嵌挿孔21Hを有しており、この嵌挿孔21Hの内周面の一部に継鉄21cの磁極歯21dが配置されている。そして、この磁極歯21dはキャン40の外周面に対向配置されている。
【0022】
以上の構成により、ステッピングモータ20では、コイル21bへのパルス出力の印加によりコイル21bが磁力線を発生する。これにより、磁極歯21dの磁極(N極、S極)が交互に変化し、マグネットロータ22に対して磁気吸引力および磁気反発力を発生させ、マグネットロータ22が回転する。このように、弁本体30内部の弁部材が作動して弁口の開度が可変に制御されることで、前述のように第1継手管31から第2継手管32へ、あるいは第2継手管32から第1継手管31へ流れる冷媒の流量が制御される。
【0023】
ステータ21のボビン21aの弁本体30側の底部には、嵌挿孔21Hの開口部21H1から弁本体30側に拡径された袴部21Kを有している。また、キャン40は軸線Lを中心軸とし、マグネットロータ22の外周に対向する小径部40Aと、小径部40Aから弁本体30側に拡径された大径部40Bと、を有して構成されている。そして、ステータ21の嵌挿孔21H内にキャン40の小径部40Aが嵌め込まれ、キャン40の大径部40Bが、開口部21H1の弁本体30側に位置する状態で、ステータ21の袴部21K内に、その一部が収容されている。これにより、ステータ21が弁装置に装着されている。
【0024】
ステータ21の袴部21Kの一部には、ボビン21aによって略直方体状の固定ブロック21Bが形成されている。すなわち、この固定ブロック21Bは、嵌挿孔21Hの軸線L回りの開口部21H1の外周に凹部21B3を有して形成されると共に、ボビン21aにおいてコイル21bの軸線L方向の端部より外側(弁本体30側)に形成されている。ステータ21の底部には、嵌挿孔21Hに挿入された弁装置としてのキャン40を固定するブラケット1が取り付けられている。なお、固定ブロック21Bには、図1図3および図5等のように凹部21B3を設けなくてもよい。
【0025】
具体的に、ブラケット1は、図4および図5に示すように、金属板のプレス加工などを用いて形成され、キャン40と係合する弾性片12と、固定ブロック21Bに固定される基部11と、を有して構成される。基部11は、固定ブロック21Bを嵌挿孔21Hの軸線Lに直交する直交面における内外方向Mに挟み込む内側板11bおよび外側板11aと、これら内側板11bおよび外側板11aを連結して一体に保持する連結板11cと、を備えている。内側板11bは、外側板11aと対向しており、弾性片12が延設された部位である。連結板11cは、固定ブロック21Bにおける凹部21B3の開口を塞ぐように配置される。
【0026】
ブラケット1において、外側板11aは、図4(b)および図5(d)に示すように、軸線Lと平行な両側に、軸線Lと交差する方向(すなわち、軸線L回りの周方向のうちの嵌挿孔21Hの内外方向に対して水平方向に直交する直交方向N)に突出する一対の係止アーム11a1,11a1を有している。また、各係止アーム11a1の付け根部には、それぞれ円弧状の切り欠き11a2が形成されている。さらに、内側板11bは、基部11の内側に切り出された爪11b1を有している。弾性片12は、この弾性片12と一体に形成された凸部12aと、弾性片12の基部11とは反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部12bと、支点部12cと、を有している。
【0027】
図2図5(a)および図5(b)に示すように、固定ブロック21Bを構成するボビン21aにおいて、固定ブロック21Bの内側(軸線L側)にはスリット51が形成され、固定ブロック21Bの外側(軸線Lと反対側の側部)には嵌め込み溝52が形成されている。また、固定ブロック21Bの外側には、テーパ面53aを有する一対の突起53,53が形成されており、この一対の突起53,53の間には、ブラケット1の外側板11aが嵌合する凹部54が形成されている。そして、固定ブロック21Bにブラケット1が取り付けられている。なお、ボビン21aにおいて嵌め込み溝52と、一対の突起53,53とで構成された縦長の穴部(図5(a)に破線を付した部分)は、ブラケット取り付け後も穴として残る。このように、ボビン21aは穴部を有することで、モールド材を充填する際に気泡が穴から抜けやすく、充填部分においてモールド材が流れ易くなるという効果を奏する。
【0028】
図5に示すように、固定ブロック21Bに対するブラケット1の取り付け時には、固定ブロック21Bの内側のスリット51にブラケット1の内側板11bと爪11b1とを嵌め込む。また、同取り付け時には、固定ブロック21Bの外側の嵌め込み溝52にブラケット1の外側板11aを嵌め込む。このとき、基部11の弾性力に抗して外側板11aと内側板11bとが僅かに開き、外側板11aの係止アーム11a1,11a1が突起53,53のテーパ面53a,53a上を摺動する。そして、係止アーム11a1,11a1が突起53,53を乗り越えるようにして、基部11の弾性回復力により、外側板11aを凹部54内に嵌合させると共に、係止アーム11a1,11a1を突起53,53の係合端53b,53bに係合させる。
【0029】
このように、係止アーム11a1,11a1は、突起53,53の係合端53b,53bと係合することで外側板11aの軸線L方向への移動を規制し、基部11が固定ブロック21Bから離間するのを抑止する。なお、ブラケット1の自然状態において、外側板11aと連結板11cとの内角αは、α<90°の関係に設定されている(図4(c))。また、固定ブロック21Bは、凹部21B3を有し上面21B1が開口した四角形状の有底筒状体であり(図5(c))、固定ブロック21Bの上面21B1と固定ブロック21Bの側面(凹部54)とは略直角となっている。これにより、ブラケット1の取り付け状態では、その基部11の弾性力により外側板11aと内側板11bが固定ブロック21Bを挟み付けるように作用している。また、ボビン21aは樹脂製であり、ブラケット1の取り付け状態では、内側板11bの爪11b1が固定ブロック21Bの内側壁面(スリット51の壁面)に食い込むように取り付けられる。これにより、ブラケット1は、固定ブロック21Bから軸線L方向の抜けが防止されると共に、固定ブロック21Bに堅牢に固定される。このように、ブラケット1は、外側板11aの係止アーム11a1が、固定ブロック21Bの突起53と係合する「固定構造」を有している。
【0030】
以上のように、ブラケット1は、ステータ21に取り付けられた状態で、弾性片12がステータ21の嵌挿孔21Hにおける開口部21H1の周囲の外側にある袴部21K内において、開口部21H1を臨む位置に配置される。また、図2に示すように、弾性片12の凸部12aは、ステータ21の袴部21Kの中心側(軸線L側)に突出している。さらに、図1に示すように、キャン40は大径部40Bの外周に、ブラケット1の凸部12aに係合する形状をした凹部40aが複数形成されている。この実施形態では5つ形成されている。
【0031】
ここで、本実施形態の場合、基部11は、連結板11cにおける嵌挿孔21Hの内外方向Mに対して水平方向に直交する直交方向Nの両端部からそれぞれ軸線Lにおける下方に向けて曲折して形成された一対の曲げ部11d,11eを有している。一対の曲げ部11d,11eは、固定ブロック21Bを直交方向Nから挟み込み、固定ブロック21Bに対する基部11の直交方向Nへの移動を規制するものである。
【0032】
一対の曲げ部11d,11eは、連結板11cに対して直角に曲折された第一側板および第二側板(すなわち、平面)によって構成されていることが好ましい。この場合、曲げ部11d,11eと固定ブロック21Bとの間には、それぞれ直交方向Nの隙間が形成されているが、当該隙間が形成されることなく、曲げ部11d,11eと固定ブロック21Bとが当接するように構成されてもよい。なお、以下において第一側板を曲げ部11dと同じ符号で、また、第二側板を曲げ部11eと同じ符号で説明する。
【0033】
第一側板11dおよび第二側板11eは、固定ブロック21Bの直交方向Nの面を挟み込む。図4に示すように、第一側板11dと第二側板11eとの直交方向Nの距離WCは、内側板11bおよび外側板11aとの内外方向Mの距離L1の0.8倍以上(WC≧0.8L1)であることが好ましい。また、第一側板11dおよび第二側板11eのそれぞれの内外方向Mの幅寸法DA,DBは、内側板11bと外側板11aとの内外方向Mの距離L1の0.3倍以上(DA≧0.3L1、DB≧0.3L1)であることが好ましい。これらの構成によれば、一対の曲げ部11d,11eは、第一側板11dおよび第二側板11eによって、固定ブロック21Bの直交方向Nの面を挟み込むことにより、当該固定ブロック21Bに対する基部11の直交方向Nへの移動を十分に規制できる。
【0034】
また、本実施形態では、特許文献1における固定ブロック21Bへの基部11の挟み付け部(本実施形態における内外方向Mの内側板11bおよび外側板11aに相当)に加え、直交方向Nの挟み付け部(第一側板11dおよび第二側板11e)を追加した。これにより、内外方向Mおよび直交方向Nへ力を受ける場合と共に、直交方向Nに対して角度を持った方向から受ける振動力などに対しても、内外方向Mズレ、直交方向Nズレを抑制できる。特に、前述したように、WC≧0.8L1とすると、基部11の連結板11cを軸線Lに対する回転方向に捩じる力が働き難くなり、ズレ難くなる。また、DA≧0.3L1、DB≧0.3L1とすることで、WC≧0.8L1の構成よりも更に、基部11の連結板11cを軸線Lに対する回転方向に捩じる力が働き難くなり、ズレ難くなる。
【0035】
さらに、固定ブロック21Bは、基部11の第二側板11eと対向する位置に、基部11の内外方向Mへの移動を規制する規制部として機能する凹部21B2が形成されている。これにより、内側板11bと外側板11aによって、固定ブロック21Bに対する基部11の内外方向Mへの移動を規制することに加え、更に固定ブロック21Bに設けられる凹部21B2によって、ブラケット1の基部11の内外方向Mへの移動を規制される。そのため、固定ブロック21Bに対する基部11の内外方向Mへの移動を確実に規制できる。
【0036】
なお、図2に示すような、ブラケット1とキャン40との係合状態において、キャン40のブラケット1の凸部12aと対向する部位に凹部40aを形成し、ステータ21が弁装置に組み付けた状態で係合するようにしている。これにより、キャン40に対して、ステータ21の軸線L回りの位置決めがなされると共に、軸線L方向の抜けを防止した状態でステータ21をキャン40に取り付けることが可能となる。
【0037】
また、弾性片12は、押圧部12bをキャン40の外周に当接させた状態で、支点部12cを袴部21Kの内周に当接される。これにより、弾性片12は、この弾性片12の自己の弾性力により、支点部12cを支点としてキャン40を押圧している。これにより、弾性片12と開口部21H1の弾性片12とは反対側の対向内壁とでキャン40を挟み付けた状態となっている。
【0038】
以上のように、第1実施形態では、固定ブロック21Bに固定されるブラケット1の基部11が、固定ブロック21Bを嵌挿孔21Hの軸線Lに直交する直交面における内外方向Mに挟み込む内側板11bおよび外側板11aを備えている。また、基部11は、内側板11bおよび外側板11aを連結して一体に保持する連結板11cを備えている。さらに、基部11は、連結板11cにおける嵌挿孔21Hの内外方向Mに対して水平方向に直交する直交方向Nの両端部からそれぞれ曲折して形成され、固定ブロック21Bを直交方向Nに挟み込む一対の曲げ部11d,11e、を有して構成される。そして、内側板11bおよび外側板11aは、固定ブロック21Bに対する基部11の内外方向Mへの移動を規制する。また、一対の曲げ部11d,11eは、固定ブロック21Bに対する基部11の直交方向Nへの移動を規制する。これにより、ブラケット1の基部11は、固定ブロック21Bに対する直交面の水平方向における全方向への移動を規制できる。かくして、本発明に係る電動弁用ステータ21およびこれを用いた電動弁10によれば、配管の振動または衝撃に起因した固定ブロックに対するブラケット1のズレや外れを防止でき、振動音の発生を抑制できる。
【0039】
なお、この実施形態では、図4に示すように、ブラケット1において係止アーム11a1の付け根部には円弧状の切り欠き11a2が形成されている。これにより係止アーム11a1の水平なストレート部を突起53,53の係合端53b,53bに対して確実に当接させることができる。また、外側板11aの係止アーム11a1を含む端部は、切り欠き11a2の中程において外側に僅かに折り曲げられている。これにより、係止アーム11a1をテーパ面53a,53a上でスムースに摺動させることができる。
【0040】
<第2実施形態>
図6図8は、第2実施形態の電動弁用ステータおよびそれに用いられるブラケットを示す図であり、図2図4および図5に示した第1実施形態と同様の構成である。また、第1実施形態と同様な要素は同様な作用効果を奏するものであり、図2図4および図5と同一符号を付して重複する説明は適宜省略する。なお、第2実施形態では、第1実施形態よりも大型の電動弁を適用する場合について述べるため、ステータ21およびブラケット1も同様に大型の電動弁に対応する。すなわち、第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、ブラケット1の基部11における外側板11a、内側板11b、第一側板11dおよび第二側板11eのそれぞれの寸法である。
【0041】
具体的に、第2実施形態では、第一側板11dおよび第二側板11eのそれぞれの内外方向Mの幅寸法DA、DBは、外側板11aの直交方向Nの幅寸法WB以上(DA≧WB、DB≧WB)であることが好ましい。
【0042】
以上のように、第2実施形態によれば、第一側板11dおよび第二側板11eは、固定ブロック21Bを直交方向Nに挟み込むことによって、当該固定ブロック21Bに対する基部11の直交方向Nへの移動を十分に規制できる。とりわけ、大型コイルを用いた電動弁用ステータ21において、内側板11bと外側板11aとの内外方向Mの距離L1が内側板11bの直交方向Nの幅寸法WAの1.5倍以上(L1≧WA)である場合には、内側板11bと外側板11aとの内外方向Mの距離L1が長くなり、たわみ易くズレ易かったので有効である。また、DA≧WB、DB≧WBとすることで、第1実施形態に記載のWC≧0.8L1、DA≧0.3L1、および、DB≧0.3L1を合わせた構成よりも更に、基部11の連結板11cを軸線Lに対する回転方向に捩じる力が働き難くなり、ズレ難くなる。
【0043】
なお、以上の実施形態におけるブラケット1ではその弾性片12の一部に切除部分12Aが形成されている。前述の第1、第2実施形態では、凸部12aと緩衝しない部分に切除部分12Aを設けることで、弾性片12の弾性力を調整することができるため、ステータの弁装置への保持固定強度を維持しつつも、軽く挿入できるようになり、組立性が向上する。特に、切除部分は、ブラケットの折り曲げ部である支点部12cや折り曲げ部12dを跨ぐように設けると効果的である。また、折り曲げ部である押圧部12bの部分にも開口を設けることで切除部分12Aとした。さらに、切除部分の幅や高さや数を変えることで、弾性力を自在に調整可能である。
【0044】
次に、図9に基づいて、本発明に係る冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステム90は、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前述した第1および第2実施形態の電動弁10は、空気調和機の室外側熱交換器(凝縮器または蒸発器)91と室内側熱交換器(凝縮器または蒸発器)92との間に設けられる膨張弁であり、圧縮機93、四方弁94と共に、ヒートポンプ式冷凍サイクルを構成している。室内側熱交換器92は室内(すなわち室内機)に設置され、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器91および電動弁10は室外(すなわち室外機)に設置されていて冷暖房装置を構成している。このような冷凍サイクルシステム90によれば、第1および第2本実施形態における電動弁10による効果と同様に、配管の振動または衝撃に起因した固定ブロック21Bに対するブラケット1のズレや外れを防止でき、振動音の発生を抑制できる。したがって、より円滑に冷凍サイクルシステム90を稼働することができる。
【0045】
特に、前述の冷凍サイクルシステム90の場合、室外機に設置される電動弁10は、圧縮機93付近に取り付けられる。このため、かかる冷凍サイクルシステム90では、圧縮機93の振動による配管の過剰な振動またはそれに伴う衝撃に起因した固定ブロック21Bに対するブラケット1のズレや外れが起き易い。しかし、本発明に係る電動弁10を用いた冷凍サイクルシステム90によれば、配管の振動または衝撃に起因した固定ブロック21Bに対するブラケット1のズレや外れを防止できるため、より円滑に冷凍サイクルシステム90を稼働することができる。また、ブラケット1がズレ難いことから振動音の発生を抑制できるため、冷凍サイクルシステム90の静音化を図ることができる。
【0046】
また、前述とは異なり電動弁10が室内機に設置される場合には、電動弁10が圧縮機93付近には取り付けられないため、圧縮機93の振動による要因はないものの、他の要因による振動や衝撃に対し、同様の有効な効果が得られる。
【0047】
以上、本発明に係る実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は前述した第1および第2実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0048】
例えば、図5(c)および図8(c)との対応部分に同一符号を付した図10に示すように、第二側板11eの曲げ角度を90°より大きく曲げ、第二側板11eと連結板11cとのなす角度θを90°未満とするように構成してもよい。この場合、第二側板11eを固定ブロック21Bの第二側板11e側壁面に対して第二側板11eの先端側にテンションを持って当接させることで、第一側板11dと固定ブロック21Bとの間も隙間が形成されない。よって、第一側板11dおよび第二側板11eと固定ブロック21Bとの間に隙間が形成される場合と比較して、第一側板11dおよび第二側板11eを固定ブロック21Bに対して強固に取り付けることができる。つまり、固定ブロック21Bに対するブラケット1の基部11(第一側板11dおよび第二側板11e)の動きの抑制を強化できる。したがって、ステータ21が振動や衝撃等を受けた際の振動音の発生も防止できる。
【0049】
さらに、図5(c)および図8(c)との対応部分に同一符号を付した図11に示すように、第二側板11eの曲げ角度を90°より大きく曲げ、第二側板11eと連結板11cとのなす角度θを90°未満とし、更に第二側板11eを軸線L方向における中央付近で固定ブロック21Bとは反対側に折り返して曲げた形状とするように構成してもよい。この場合、第二側板11eは、軸線L方向における中央付近に、くびれ部11e1が形成され、当該くびれ部11e1が固定ブロック21Bに対して当接する。このように、第二側板11eのくびれ部11e1を固定ブロック21Bの第二側板11e側壁面に対して、テンションを持って当接させることで、第一側板11dと固定ブロック21Bとの間も隙間が形成されない。よって、第一側板11dおよび第二側板11eと固定ブロック21Bとの間に隙間が形成される場合と比較して、第一側板11dおよび第二側板11eを固定ブロック21Bに対してより強固に取り付けることができる。つまり、固定ブロック21Bに対するブラケット1の基部11(第一側板11dおよび第二側板11e)の動きの抑制を更に強化できる。したがって、ステータ21が振動や衝撃等を受けた際の振動音の発生も防止できる。また、本変形例で説明した第一側板11dおよび第二側板11eの構成の方が、図10で示す前述した変形例における第一側板11dおよび第二側板11eの構成よりも、第二側板11eに折り返して曲げたくびれ部11e1があるため、ブラケット1の基部11を固定ブロック21Bに嵌め込み易く、固定し易い。
【0050】
なお、前述した第1および第2実施形態では、曲げ部である第一側板11dの軸線L方向の長さは、曲げ部である第二側板11eの軸線L方向の長さに対し短いが、例えば、第一側板11dの軸線L方向の長さは、第二側板11eと同等の長さでもよい。また、両側板(第一側板11dおよび第二側板11e)の軸線L方向の長さは、適宜、設計変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ブラケット(弾性部材)
10 電動弁
11 基部
11a 外側板
11b 内側板
11c 連結板
11d 曲げ部(第一側板)
11e 曲げ部(第二側板)
11a1 係止アーム(係止片)
11e1 くびれ部
12 弾性片
12a 凸部
51 スリット
52 嵌め込み溝
53 突起(突部)
53a テーパ面
53b 係合端
54 凹部
20 ステッピングモータ(モータ部)
21 ステータ(電動弁用ステータ)
21a ボビン
21b コイル
21H 嵌挿孔
21H1 開口部
21K 袴部
21B 固定ブロック
21B2 切り欠き部(規制部)
21B3 凹部
22 マグネットロータ
30 弁本体(弁装置)
40 キャン(弁装置、円筒部)
40A 小径部
40B 大径部
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11