(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20240214BHJP
F16K 1/18 20060101ALI20240214BHJP
F01N 1/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F01N13/08 B
F16K1/18 B
F01N1/08 A
F01N1/08 F
(21)【出願番号】P 2021163637
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金住 紘志
(72)【発明者】
【氏名】都築 裕介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大智
(72)【発明者】
【氏名】三浦 岳広
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-009602(JP,A)
【文献】特開平11-303619(JP,A)
【文献】特開2011-069251(JP,A)
【文献】特表2008-515717(JP,A)
【文献】特開2009-144915(JP,A)
【文献】特開2003-166661(JP,A)
【文献】米国特許第04706706(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0112326(KR,A)
【文献】特表2013-515884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F01N 1/00- 1/24
F01N 5/00- 5/04
F01N 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流路に配置される弁装置であって、
排気流路と連通する開口部を有する弁座と、
前記開口部の少なくとも一部を
、前記開口部の周囲の一方向に配置された弁軸を中心に開閉可能に構成された弁体と、
前記弁座及び前記弁体の間に配置され、前記弁座よりも柔軟性を有するように構成された緩衝材と、
を備え、
前記弁体が閉じた状態において、前記弁体の外周の少なくとも一部には、前記弁座と前記弁体とが前記弁体の開閉方向において重なることがないように構成された非オーバーラップ部、
及び、
前記弁体が閉じた状態において、前記開口部の周囲のうちの前記弁軸側の部位には、前記弁座と前記弁体とが前記弁体の開閉方向において重なるように構成されたオーバーラップ部、
を備える弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置であって、
前記緩衝材は、前記弁座又は前記弁体から、前記非オーバーラップ部側にせり出して配置される
ように構成された弁装置。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載の弁装置であって、
前記開口部は、四角形に構成され、
前記弁軸は、前記四角形を構成する一辺に沿って配置され、
前記非オーバーラップ部は、少なくとも前記四角形のうちの前記弁軸に最も近い辺に隣接する両側の辺のうち少なくとも一方の辺に沿って備えられる
ように構成された弁装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の弁装置であって、
前記緩衝材の厚みは、前記非オーバーラップ部の幅以上である
ように構成された弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気流路に配置される弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、排気流路を構成するパイプの側面に配置される弁装置であって、開口部及び弁体を備える弁装置が開示されている。この弁装置は、開口部及び弁体の間に、緩衝材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、緩衝材によって、弁体とパイプとが衝突する際の異音を抑制する。しかしながら、経年劣化により緩衝材のクッション性が低下すると、弁体が緩衝材を介してパイプに衝突する際の異音が大きくなるという課題がある。本開示の1つの局面は、弁装置において、弁体の開閉に伴う異音を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、排気流路に配置される弁装置である。弁装置は、弁座と、弁体と、緩衝材と、を備える。弁座は、排気流路と連通する開口部を有する。弁体は、開口部の少なくとも一部を開閉可能に構成される。
【0006】
緩衝材は、弁座及び弁体の間に配置され、弁座よりも柔軟性を有するように構成される。弁装置は、弁体が閉じた状態において、弁体の外周の少なくとも一部には、弁座と弁体とが弁体の開閉方向において重なることがないように構成された非オーバーラップ部を備える。
【0007】
このような構成によれば、非オーバーラップ部を備えるので、弁体が弁座に衝突しにくくなるように構成することができる。また、緩衝材が弁体の開閉時の衝撃を緩和することができる。よって、弁体の開閉に伴う異音を抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、緩衝材は、弁座又は弁体から、非オーバーラップ部側にせり出して配置されてもよい。
このような構成によれば、非オーバーラップ部の少なくとも一部を緩衝材が閉塞することができるので、非オーバーラップ部における気密性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様では、弁体は開口部の周囲の一方向に配置された弁軸を中心に開閉されるように構成されてもよい。弁体が閉じた状態において、開口部の周囲のうちの弁軸側の部位には、弁座と弁体とが弁体の開閉方向において重なるように構成されたオーバーラップ部、がさらに形成されてもよい。
【0010】
このような構成によれば、開口部の周囲のうちの弁軸側の部位にオーバーラップ部を備えるので、オーバーラップ部が弁体の過剰な移動を抑制することができる。また、オーバーラップ部は、弁体に加わるモーメントが比較的小さな弁軸側の部位に設定されるので、大きな異音が発生することを抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、開口部は、四角形に構成され、弁軸は、四角形を構成する一辺に沿って配置されてもよい。非オーバーラップ部は、少なくとも四角形のうちの弁軸に最も近い辺に隣接する両側の辺のうち少なくとも一方の辺に沿って備えられてもよい。
【0012】
なお、四角形には、平面視における四角形、及び略四角形を含む。平面視は、物体を一方向から見た平面図とする際の視線である。また、略四角形は、概ね四角形に見える形状である。
【0013】
このような構成によれば、非オーバーラップ部が弁体の側方部位に沿って備えられるので、弁体の側方部位から生じる異音を抑制することができる。
【0014】
本開示の一態様では、緩衝材の厚みは、非オーバーラップ部の幅以上に設定されてもよい。
このような構成によれば、緩衝材のクッション性を確保し、かつ非オーバーラップ部を緩衝材によって良好に閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】加速時における内燃機関の回転数と騒音レベルとの関係を示すグラフである。
【
図6】減速時における内燃機関の回転数と騒音レベルとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1及び
図2に示す実施形態の弁装置100は、エンジン等の内燃機関から排出される排気の排気流路1Aに設けられる。内燃機関は、車両、航空機、発電機等に搭載されることができる。弁装置100は、例えば、マフラを構成するパイプ1の側面に取り付けられる。パイプ1の側面には、バイパス流路への接続口である開口部100Aが形成されており、弁装置100は、パイプ1の外側から開口部100Aを開閉するように構成される。
【0017】
弁装置100は、パイプ1と、弁体2と、支持体3と、緩衝材41と、スプリング5と、シャフト6と、を備える。パイプ1は、筒状に構成され、内部にマフラ内の排気流路1Aを形成し、パイプ1に流入した排気を下流側へ排出する機能を有する。パイプ1は、
図1及び
図3に示すように、開口部100Aと、弁座100Bと、を有する。
【0018】
開口部100Aは、パイプ1の側面に形成され、パイプ1の内外を連通するように構成された開口である。弁座100Bは、パイプ1における開口部100Aの周囲の領域であって、弁体2がパイプ1を閉塞した際に弁体2に覆われる領域、及び弁体2に覆われない領域のうちの、緩衝材41が配置される領域を示す。開口部100Aは、平面視で四角形、特に長方形状に形成されている。
【0019】
なお、開口部100Aの形状は、四角形の角を丸めたり、面取り等の加工を施したりした形状である略四角形であってもよい。開口部100Aの形状は、四角形に限らず、任意の形状を採用できる。開口部100Aの形状としては、略三角形、円形、楕円形等を採用できる。
【0020】
弁体2は、パイプ1の外面形状に対応する曲面形状を有する部材である。弁体2には、シャフト6を挿入するための図示しない孔が形成されている。弁体2は、シャフト6を支持する支持体3とは別体に構成されており、弁体2は、シャフト6を中心に、支持体3に対して回転移動可能に支持される。なお、シャフト6は、弁軸として機能する。
【0021】
弁装置100は、弁体2の開閉作動によって、開口部100Aの少なくとも一部を開閉可能に構成される。この構成によって、弁装置100は、パイプ1の下流側へ流れる排気の流量を調整可能となる。
【0022】
弁体2は、開口部100Aの周囲の任意の一方向に配置されたシャフト6を中心に開閉されるように構成される。
支持体3は、開口部100Aに近接して設けられ、シャフト6をパイプ1の軸方向に沿うように支持し、前述したようにシャフト6を介して弁体2を回転移動可能に支持する。支持体3には、シャフト6を挿入するためのシャフト孔3Aが形成される。
【0023】
シャフト6は、開口部100Aの一辺、つまり、前述の四角形を構成する一辺に平行に配置される。本実施形態では、シャフト6は、開口部100Aの周囲のうちの一方向にある開口辺100Nに沿って配置され、シャフト6の長手方向が排気流路1Aの排気の流れ方向と平行になる方向に配置される。
【0024】
なお、開口部100Aを構成する四角形の4辺を、以下では開口辺100N,100F,100R,100Lと表記する。開口辺100Nは、開口部100Aを構成する4辺のうち、シャフト6に最も近い辺であり、開口辺100Fは、シャフト6から最も遠い辺である。開口辺100Rは、シャフト6から開口部100Aを見たときに、右側に位置する辺であり、開口辺100Lは、同様に左側に位置する辺である。
【0025】
スプリング5は、シャフト6の周囲にてシャフト6が挿入された状態で設けられ、一端がパイプ1及び支持体3のうち少なくとも一方に当接し、他端が弁体2に当接しており、開口部100Aを閉塞する方向へ弁体2を付勢する。
【0026】
緩衝材41は、
図3に示すように、弁座100B上に設けられている。なお、緩衝材41は、パイプ1の外周面であって、開口部100Aの外周部分に配置される。この構成では、組み付け作業の際に、緩衝材41を引っ張りながらパイプ1の外周側に沿って配置できる。このため、緩衝材41をパイプ1の内周側に沿って配置する場合よりも、作業性を向上させることができる。
【0027】
緩衝材41は、弁座100B及び弁体2の間に配置され、厚みが一定のシート状に形成される。緩衝材41は、弁座100Bよりも柔軟性を有するように構成される。柔軟性を有するとは、弁体2が弁座100Bに直接触れる場合の衝撃よりも、弁体2が緩衝材41を介して弁座100Bに触れる場合の衝撃の方が小さくなるように、緩衝材41が構成されていることを意味する。
【0028】
例えば、緩衝材41は、緩衝材41を構成する材料自体が、弁座100B(例えばパイプ1)よりも低い硬度の材料で構成されていてもよい。また、緩衝材41は、材料自体の硬度が高いとしても、クッション性を有するように加工されていることによって衝撃を吸収できるように構成されていてもよい。
【0029】
具体的には、緩衝材41は、例えば金属製であり、ワイヤメッシュ等のメッシュ部材として構成される。クッション性と耐久性とを備えるためである。例えば、弁座100BはSUS、緩衝材41はSUSメッシュが採用できる。また、緩衝材41の厚みは、例えば、1mm~4mm程度に構成される。緩衝材41は、緩衝材41付近を排気が通過する際に、流路の距離を稼いで抵抗を増やすことができるように、厚み及びメッシュ形状が設定されるとよい。
【0030】
緩衝材41は、例えば、弁座100Bにスポット溶接等で接合される。緩衝材41は、
図1及び
図3に示すように、開口部100Aをパイプ1の軸方向において両側から挟むように配置された第1の緩衝シート41A及び第2の緩衝シート41Bを備える。また、緩衝材41は、開口部100Aをパイプ1の軸方向と直交する方向において両側から挟むように配置された第3の緩衝シート41C及び第4の緩衝シート41D、を備える。
【0031】
第3の緩衝シート41Cは、シャフト6に近い側の開口辺100Nに沿って配置され、第4の緩衝シート41Dは、シャフト6から遠い側の開口辺100Fに沿って配置される。
緩衝材41のうちの、第1の緩衝シート41A、第2の緩衝シート41B、及び第4の緩衝シート41Dは、
図3に示すように、弁座100Bから開口部100A側にせり出して配置される。換言すれば、後述する非オーバーラップ部30A側にせり出して配置される。第3の緩衝シート41Cは、開口部100A側にせり出すことなく配置される。すなわち、第3の緩衝シート41Cは、平面視で弁座100Bに重なって配置される。
【0032】
弁装置100は、非オーバーラップ部30A及びオーバーラップ部30Bを備える。非オーバーラップ部30Aは、
図1及び
図4に示すように、弁座100Bと弁体2とが弁体2の開閉方向において重なることがないように構成された部位である。
【0033】
非オーバーラップ部30Aは、弁体2における弁座100B側の面の外周に沿って形成される。つまり、非オーバーラップ部30Aは、開口部100Aの縁に沿って延びる隙間である。換言すれば、非オーバーラップ部30Aは、弁体2が閉じた状態の平面視において、弁座100Bと弁体2とが離間している領域である。
【0034】
図4に示すように、この隙間の幅ΔLは、0mm~4mm程度に設定される。また、緩衝材41の厚みΔTは、非オーバーラップ部30Aの幅ΔL以上に設定される。なお、非オーバーラップ部30Aの幅ΔLとは、開口部100Aのうちの1つの開口辺100N,100R,100Lから、対向する開口辺100F,100L,100Rに向かう方向における長さを表す。
【0035】
非オーバーラップ部30Aは、開口部100Aのうちの、弁体2の先端部位、及び側方部位に沿って形成される。詳細には、非オーバーラップ部30Aは、シャフト6から遠い側の開口辺100F、その両側の開口辺100R,100Lの3辺に沿って形成される。
【0036】
ここで、従来構成の弁装置では、弁体と弁座とが弁体の全周においてオーバーラップするよう構成されたが、本実施形態の弁装置100では、弁体2と弁座100Bとが少なくとも一部を除いてオーバーラップしない非オーバーラップ部30Aとして構成される。
【0037】
非オーバーラップ部30Aでは、弁体2の移動方向に弁座100Bが存在することなく、開口部100Aにせり出して配置された緩衝材41が存在する。換言すれば、非オーバーラップ部30Aでは、弁体2と弁座100Bとはオーバーラップしないが、弁体2と緩衝材41とがオーバーラップする。
【0038】
このような構成によって、弁体2は、弁体2のみでは開口部100Aの全域を閉塞することがないものの、弁体2と緩衝材41とが協働することで、概ね開口部100Aの全域を閉塞するように構成される。
【0039】
なお、
図2に示すように、弁体2は、弁体2の先端部2Eがシャフト6から遠い側の開口辺100Fに到達しないように、シャフト6から先端部2Eまでの長さが設定される。また、弁体2は、両側の開口辺100R,100Lを覆うことがないように、その幅(すなわち、
図1における紙面左右方向の長さ)が設定される。
【0040】
なお、弁体2の先端部2E及び弁体2の側方部位(すなわち、
図1の弁体2における紙面左右方向の両端部)は、第1の緩衝シート41A等の緩衝材41に触れる位置にて、弁体2が閉じる方向への移動が抑制される。
【0041】
オーバーラップ部30Bは、
図2に示すように、弁座100Bと弁体2とが弁体2の開閉方向において重なるように構成された部位である。オーバーラップ部30Bは、シャフト6に近い側の開口辺100Nに沿って構成される。
【0042】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、排気流路1Aに配置される弁装置100である。弁装置100は、弁座100Bと、弁体2と、緩衝材41と、を備える。弁座100Bは、排気流路1Aと連通する開口部100Aを有する。弁体2は、開口部100Aの少なくとも一部を開閉可能に構成される。緩衝材41は、弁座100B及び弁体2の間に配置され、弁座100Bよりも柔軟性を有するように構成される。
【0043】
弁装置100は、弁体2が閉じた状態において、弁体2の外周の一部には、弁座100Bと弁体2とが弁体2の開閉方向において重なることがないように構成された非オーバーラップ部30Aを備える。
【0044】
このような構成によれば、非オーバーラップ部30Aを備えるので、弁体2が弁座100Bに衝突しにくくなるように構成することができる。また、緩衝材41が弁体2の開閉時の衝撃を緩和することができる。よって、弁体2の開閉に伴う異音を抑制することができる。
【0045】
(1b)上記効果を説明する実験結果を
図5及び
図6に示す。なお、
図5及び
図6では、開口部100Aの全周において非オーバーラップ部30Aを備える構成の弁装置を「本構成」として採用している。また、非オーバーラップ部30Aを備えない構成の弁装置であって、経年劣化後の緩衝材を利用した弁装置を「従来構成」として採用している。
【0046】
図5では、時間と共に内燃機関の回転数を増加させる場合の騒音レベルの測定結果を表し、
図6では、時間と共に内燃機関の回転数を減少させる場合の騒音レベルの測定結果を表す。
図5及び
図6によれば、何れの場合においても、本構成は、従来構成と比較して、全体的に騒音レベルを低下させられていることが分かる。
【0047】
(1c)本開示の一態様では、緩衝材41は、弁座100B又は弁体2に配置され、非オーバーラップ部30A側にせり出して配置されている。
このような構成によれば、非オーバーラップ部30Aの少なくとも一部を緩衝材41が閉塞することができるので、非オーバーラップ部30Aにおける気密性を向上させることができる。
【0048】
(1d)本開示の一態様では、弁体2は開口部100Aの周囲の一方向に配置されたシャフト6を中心に開閉されるように構成されている。弁体2が閉じた状態において、開口部100Aの周囲のうちのシャフト6側の部位には、弁座100Bと弁体2とが弁体2の開閉方向において重なるように構成されたオーバーラップ部30B、がさらに形成されている。
【0049】
このような構成によれば、開口部100Aの周囲のうちのシャフト6側の部位にオーバーラップ部30Bを備えるので、オーバーラップ部30Bが弁体2の過剰な移動を抑制することができる。また、オーバーラップ部30Bは、弁体2に加わるモーメントが比較的小さなシャフト6側の部位に設定されるので、大きな異音が発生することを抑制することができる。なお、弁体2の過剰な移動とは、弁体2が緩衝材41を移動方向に押し込みすぎることで緩衝材41を劣化させる等、緩衝材41の耐久性や弁体2の開閉に何らかの悪影響を与える虞があることを示す。
【0050】
(1e)本開示の一態様では、開口部100Aは、四角形に構成され、シャフト6は、四角形を構成する一辺に沿って配置されている。非オーバーラップ部30Aは、少なくとも四角形のうちのシャフト6に最も近い辺に隣接する両側の辺のうち少なくとも一方の辺に沿って備えられている。
【0051】
このような構成によれば、非オーバーラップ部30Aが弁体2の側方部位に沿って備えられるので、弁体2の側方部位から生じる異音を抑制することができる。
【0052】
(1f)本開示の一態様では、緩衝材41は、弁座100Bに配置されている。
このような構成によれば、緩衝材41を排気流路1Aの外周側に沿って配置できるため、緩衝材41を引っ張りながら緩衝材41を弁座100Bに組み付けることができる。よって、緩衝材41を排気流路1Aの内周側に沿って配置する場合よりも、組み付け作業を容易に行うことができる。また、このような構成によれば、排気が開口部100A付近を通過する際に、緩衝材41が排気の流速を抑制する。また、排気の流れによって緩衝材41が変形する際に、緩衝材41が排気の流れを妨げるように構成することができる。よって、排気の流れによって生じる異音を抑制することができる。
【0053】
(1g)本開示の一態様では、緩衝材41の厚みは、非オーバーラップ部30Aの幅以上になるように構成される。
このような構成によれば、緩衝材41のクッション性を確保し、かつ非オーバーラップ部30Aを緩衝材41によって良好に閉塞することができる。
【0054】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0055】
(2a)上記実施形態では、本開示を、パイプ1の中心軸の側方に配置されたサイドバルブとしての弁装置100に適用したがこの構成に限られない。例えば本開示は、
図7に示すようにパイプ1の中心軸上に配置されるエンドバルブとしての弁装置100Dに適用することができる。
【0056】
図7に示す弁装置100Dは、パイプ1Dの端部の開口部1Eに配置されるエンドバルブである。弁装置100Dは、弁体2と、支持体3Dと、シャフト6Dと、緩衝材41Eと、を備える。開口部1Eは、弁座として機能する。弁体2は、シャフト6Dを介して支持体3Dに対して回転可能に構成され、弁体2の作動によって開口部1Eが開閉される。
【0057】
緩衝材41Eは、環状に形成され、開口部1Eの全周に渡って配置され、開口部1Eに固定される。
弁装置100Dにおいても、非オーバーラップ部30Dを備える。非オーバーラップ部30Dは、弁体2Dが閉じた状態において、弁体2Dの外周の一部にて、弁座100Bと弁体2(例えば、弁体2のうちの緩衝材41Eと当接する側の面である当接面2F)とが弁体2の開閉方向において重なることがないように構成された部位である。
【0058】
緩衝材41Eは、非オーバーラップ部30Dにせり出して配置され、弁体2は、緩衝材41Eに触れることで開閉方向の移動が抑制される。
このように本開示の構成は、エンドバルブとしても良好に適用することができる。
【0059】
(2b)上記実施形態の弁装置100においては、非オーバーラップ部30Aを弁体2の先端部位及び側方部位に沿って配置したが、この構成に限られない。例えば、非オーバーラップ部30Aは、弁体2の先端部位のみ、側方部位のみ等、少なくとも弁体2の周囲の少なくとも一部において備えられていればよい。
【0060】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0061】
(2d)前述した弁装置100,100Dの他、当該弁装置100,100Dを構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1,1D…パイプ、1A…排気流路、1E…開口部、2,2D…弁体、2E…先端部、3,3D…支持体、3A…シャフト孔、5…スプリング、6,6D…シャフト、30A,30D…非オーバーラップ部、30B…オーバーラップ部、41,41E…緩衝材、41A,41B,41C,41D…緩衝シート、100,100D…弁装置、100A…開口部、100B…弁座、100F,100L,100N,100R…開口辺。