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特許7436449抗Aベータ抗体、その抗原結合フラグメントおよびそれらの用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】抗Aベータ抗体、その抗原結合フラグメントおよびそれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K1/16
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P35/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021500547
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 CN2019096159
(87)【国際公開番号】W WO2020015637
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】201810782196.2
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】イン ファ
(72)【発明者】
【氏名】チャン リン
(72)【発明者】
【氏名】シ チンピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】スン チャーカン
(72)【発明者】
【氏名】フ キユウ
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウェイカン
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524023(JP,A)
【文献】特表2006-519762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-16/46
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、当該抗Aベータ抗体はヒトAベータに特異的に結合し、かつ抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域と抗体軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3領域とを含み、
前記HCDR1は配列番号:17に示され、前記HCDR2は配列番号:18または52に示され、前記HCDR3は配列番号:27に示され、前記LCDR1は配列番号:20に示され、前記LCDR2は配列番号:21に示され、前記LCDR3は配列番号:22に示される、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体は、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体はマウス抗体であり、前記抗体は、配列番号:9に示されるか、またはそれに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;および/または
配列番号:10に示されるか、またはそれに対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項2に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体は、配列番号:9に示した重鎖可変領域と配列番号:10に示した軽鎖可変領域とを含む、請求項3に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体は、配列番号:50に示されるか、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号:51に示されるか、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む、請求項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体は定常領域を含む、請求項1に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記定常領域は重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号:42に示したとおりであるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ前記軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号:43に示したとおりであるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体は、配列番号:40に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、および/または、配列番号:41に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖を含む、請求項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体は、配列番号:40に示した重鎖と配列番号:41に示した軽鎖とを含む、請求項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項1に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ダイアボディ、dsFv、および請求項1に記載のCDRを含むペプチドの抗原結合フラグメントからなる群から選択される、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子を含む、組換えベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の組換えベクターを含む宿主細胞であって、前記宿主細胞は、原核細胞および真核細胞からなる群から選択される、宿主細胞。
【請求項14】
真核細胞である、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記真核細胞は哺乳動物細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
以下のステップを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法:培養培地中で請求項1315のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養するステップと、その後に前記抗体を精製および回収するステップ。
【請求項17】
以下を含む医薬組成物:
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント、および
1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤。
【請求項18】
Aベータ媒介性の疾患または障害の治療または予防のための薬剤の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗Aベータ抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは請求項17に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
前記疾患は、アルツハイマー病、軽度認知障害、前頭側頭型認知症、レビー小体病、パーキンソン病、ピック病、ベバック病(Bevac’s disease)、コンゴ親和性アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、ダウン症、多発性梗塞性認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、エイズ認知症症候群、うつ病、不安障害、恐怖症、ベル麻痺、てんかん、脳炎、多発性硬化症、神経筋障害、神経腫瘍障害、脳腫瘍、脳卒中による神経血管障害、神経免疫障害、神経障害性耳科学疾患、脊髄損傷による神経外傷、神経障害性疼痛による痛み、小児の神経および神経精神障害、睡眠障害、トゥレット症候群、軽度認知障害、血管性認知症、多発性梗塞性認知症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、ならびにその他の中枢神経系の運動障害および疾患からなる群から選択される神経変性疾患である、請求項18に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオテクノロジーの分野に属する。より具体的には、本開示は、抗β-アミロイド抗体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本記載は、本発明に関する背景情報を提供するだけであり、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0003】
β-アミロイド(アミロイド-ベータ(Amyloid-beta)、アミロイド-ベータ(amyloid-beta)、Aベータ(Abeta)、Aβ)は、β-およびγ-セクレターゼタンパク質分解によってアミロイド前駆体タンパク質(APP)から産生される39~43アミノ酸を含むポリペプチドである。β-アミロイドは、さまざまな細胞によって産生され、血液、脳脊髄液および脳間質液を循環している。ほとんどのβ-アミロイドはシャペロン分子に結合し、少数が遊離状態で存在する。Aβは神経毒性である。Aβの含有量が増加すると、細胞によって代謝することができなくなる。代わりに、Aβは細胞内に大量に蓄積されてAβ老人斑を形成し、その結果、ニューロンの損傷または死を促進する。人体におけるAβの最も一般的なサブタイプはAβ1-40とAβ1-42であり、これらのうちAβ1-42がより毒性が高く、凝集してAβ斑のコアを形成し、神経毒性作用を引き起こしやすい(“Medical Review”、2009年、15(23):3575-3577頁)。
【0004】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease、Alzheimer disease、AD)は、1906年にドイツ人の精神科医および神経内科医Alzheimer Aloisによって最初に発見され、彼の名前にちなんで命名された。アルツハイマー病は老人性痴呆としても知られており、慢性神経変性疾患である。ADの主な臨床症状には、段階的な記憶喪失、認知障害、異常行動、および社会不安が含まれる。研究によると、AD患者は主に以下の病理学的特徴を有する:大脳皮質と海馬におけるβ-アミロイドの凝集によって形成された老人斑、タウタンパク質の異常な凝集によって形成された神経原線維変化、および皮質と海馬における神経細胞の減少。Aβの沈着は、ニューロンの変性変化に関連しているだけでなく、星状細胞およびミクログリア細胞の活性化、血液脳関門の破壊、および微小循環の変化などを含む一連の病理学的事象を活性化することもできる。Aβの沈着は、脳内の老人斑周辺の神経変性とAD患者の死亡の主な原因である(Oh, E.S., Troncoso, J.C. & Fangmark Tucker, S.M. Neuromol Med(2008年)10:195頁)。
【0005】
Aβの沈着は、アルツハイマー病の老人斑だけでなく、脳アミロイド血管症など(CAA、コンゴ親和性アミロイド血管症とも呼ばれる)の他の脳アミロイド疾患でも大量に見出された。CAAに見られるAβの沈着は主に短い形態のAβ(Aβ1-40)から構成されており、少量のAβ1-42も含まれている(Wilcock et al., Journal of Neuroinflammation 1(24):1-11頁(2004年))。
【0006】
ADの病因におけるAβの重要な役割と、Aβの毒性がその量、凝集の程度およびクリアランス速度に依存することとに基づいて、研究者は、Aβの産生を減少させること、Aβの蓄積と沈着を防ぐこと、およびAβの毒性を妨げることによってADの進行を遅延および阻止することを試みて、Aβ疾患を妨げるためのさまざまな方法を継続的に開発してきた。Aβに対するさまざまな抗体が公開されており、これには、アデュカヌマブ(Biogen)、バピネオズマブ(Janssen、Elan、Pfizer)、ソラネズマブ(Eli Lilly)、ガンテネルマブ(Hoffman-LaRoche)、および特許出願WO1994017197A1、WO1998044955A1、WO2003016466A3、WO2003070760A3、WO2004071408A3、WO2006081171A1、WO2007108756A1、WO2008011348A3、WO2008081008A1、WO2012051498A3などに開示されている抗Aβ抗体が含まれる。しかしながら、バピネオズマブおよびソラネズマブを含むほとんどの抗体は失敗に終わった。バピネオズマブおよびソラネズマブは大きな期待を寄せられたが、第III相臨床試験で失敗した。現在、アデュカヌマブのみがまだ第III相臨床試験中であり、AD治療の承認が見込まれる唯一の新しい抗Aβ抗体であると考えられているが、販売に適格かどうかを確認するには、さらなる臨床試験の結果が依然として必要である。
【0007】
したがって、β-アミロイドによって引き起こされる疾患または障害(ADなど)の治療のために、新規な構造を有する抗Aベータ抗体を開発することが依然として緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、広範な実験的研究の後に、完全に新規な構造を有する抗Aベータ抗体およびその抗原結合フラグメントを開発した。該抗Aベータ抗体およびその抗原結合フラグメントは、ヒトAベータに高い親和性で特異的に結合することができ、優れた効率を示す。それらは、Aベータによって引き起こされる疾患または障害(例えば、アルツハイマー病)の治療または予防に有用であることが期待される。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトAベータに特異的に結合する抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体は、以下のアミノ酸配列から選択されるかまたはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも1つのCDR領域を含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する:
(1)配列番号:11、17または23に示した重鎖HCDR1領域のアミノ酸配列;
(2)配列番号:12、18、24または52に示した重鎖HCDR2領域のアミノ酸配列;
(3)配列番号:13、19、25または27に示した重鎖HCDR3領域のアミノ酸配列;
(4)配列番号:14または20に示した軽鎖LCDR1領域のアミノ酸配列;
(5)配列番号:15または21に示した軽鎖LCDR2領域のアミノ酸配列;および
(6)配列番号:16、22、26または53に示した軽鎖LCDR3領域のアミノ酸配列。
【0010】
上記のように少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列については、当該配列は、好ましくは、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し;より好ましくは、当該配列は、90%超、95%超または99%超の配列同一性を有し、最も好ましくは、当該配列は少なくとも95%の配列同一性を有する。少なくとも85%の配列同一性を有する上記のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換によって得ることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体は、約10-7Mまたはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAβ1-42フィブリルおよび/またはAβ1-42モノマーに結合し;好ましくは、約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満、またはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合する。KD値は、Biacore T200装置の表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定され得る。
【0012】
好ましくは、前記ヒトAベータは、Aβ1-42フィブリルおよびAβ1-42モノマーである。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のうちのいずれか1つに示されるようなHCDR1-3領域またはLDCR1-3領域を含む:
(i)配列番号:11、12および13のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域;
(ii)配列番号:17、18および19のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域;
(iii)配列番号:23、24および25のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域;
(iv)配列番号:17、18および27のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域;
(v)配列番号:17、52および19のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域;
(vi)配列番号:17、52および27のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3領域;
および/または
(vii)配列番号:14、15および16のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3領域;
(viii)配列番号:20、21および22のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3領域;
(viiii)配列番号:20、21および26のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3領域;または
(x)配列番号:20、21および53のアミノ酸配列にそれぞれ示される抗体軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3領域。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のA~Dから選択されるいずれかの抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである:
A)配列番号:11のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR1領域、配列番号:12のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR2領域および配列番号:13のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR3領域、ならびに配列番号:14のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR1領域、配列番号:15のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR2領域および配列番号:16のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR3領域を含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
B)配列番号:17のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR1領域、配列番号:18または52のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR2領域および配列番号:19のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR3領域、ならびに配列番号:20のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR1領域、配列番号:21のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR2領域および配列番号:22のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR3領域を含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
C)配列番号:23のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR1領域、配列番号:24のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR2領域および配列番号:25のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR3領域、ならびに配列番号:20のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR1領域、配列番号:21のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR2領域および配列番号:26または53のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR3領域を含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;および
D)配列番号:17のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR1領域、配列番号:18または52のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR2領域および配列番号:27のアミノ酸配列に示した重鎖HCDR3領域、ならびに配列番号:20のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR1領域、配列番号:21のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR2領域および配列番号:22のアミノ酸配列に示した軽鎖LCDR3領域を含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントはマウス抗体であり、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号:3、5、7もしくは9に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有し;かつ/または
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:4、6、8もしくは10に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0017】
上記のように少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列については、当該配列は、好ましくは、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し;より好ましくは、当該配列は、90%超、95%超または99%超の配列同一性を有し、最も好ましくは、当該配列は少なくとも95%の配列同一性を有する。少なくとも85%の配列同一性を有する上記のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換によって得ることができる。好ましくは、前記抗体は、約10-7Mまたはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満、またはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合し、KD値は、Biacore T200装置の表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定され得る。好ましくは、前記ヒトAベータは、Aβ1-42フィブリルおよびAβ1-42モノマーである。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のE~Hから選択されるいずれかの抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである:
E)配列番号:3のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と配列番号:4のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
F)配列番号:5のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と配列番号:6のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
G)配列番号:7のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と配列番号:8のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;および
H)配列番号:9のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と配列番号:10のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0019】
本開示の上記の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントのいくつかの実施形態では、前記抗体はヒト化抗体である。好ましくは、前記抗体の前記FR領域配列はヒト生殖細胞系列抗体のFR領域配列またはそのバリアントに由来する。好ましくは、必要に応じて、前記バリアントは、1つ以上のアミノ酸欠失、挿入または置換を含み;より好ましくは、前記FR領域のバリアントは、ヒト抗体の前記軽鎖フレームワーク領域および/または前記重鎖フレームワーク領域にそれぞれ最大10個のアミノ酸復帰突然変異を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号:44、46、48または50に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有し;かつ/または、
前記抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号:45、47、49または51に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0021】
上記のように少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列については、当該配列は、好ましくは、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し;より好ましくは、当該配列は、90%超、95%超または99%超の配列同一性を有し、最も好ましくは、当該配列は少なくとも95%の配列同一性を有する。少なくとも85%の配列同一性を有する上記のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換によって得ることができる。好ましくは、前記抗体は、約10-7Mまたはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満、またはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合し、KD値は、Biacore T200装置の表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定され得る。好ましくは、前記ヒトAベータは、Aβ1-42フィブリルおよびAβ1-42モノマーである。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、以下のa)~d)のうちのいずれかの抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントから選択されるヒト化抗体である:
a)抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、当該抗体の重鎖可変領域は、配列番号:44に示した重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号:45に示した軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
b)抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、当該抗体の重鎖可変領域は、配列番号:46に示した重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号:47に示した軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
c)抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、当該抗体の重鎖可変領域は、配列番号:48に示した重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号:49に示した軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;および
d)抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、当該抗体の重鎖可変領域は、配列番号:50に示した重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、当該抗体の軽鎖可変領域は、配列番号:51に示した軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。ここで、上記の少なくとも90%の配列同一性には、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性が含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、以下のうちのいずれかに示した可変領域を含むヒト化抗体である:
a)配列番号:11、配列番号:12および配列番号:13にそれぞれ示したHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに1E、71Aおよび94Rからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含有するFR領域を含む抗体重鎖可変領域;および、配列番号:14、配列番号:15および配列番号:16にそれぞれ示したLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む抗体軽鎖可変領域;
b)配列番号:17および配列番号:19にそれぞれ示したHCDR1およびHCDR3と配列番号:18または52に示したHCDR2、ならびに28Aおよび82B Tからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含有するFR領域を含む抗体重鎖可変領域;および、配列番号:20、配列番号:21および配列番号:22にそれぞれ示したLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む抗体軽鎖可変領域;
c)配列番号:23、配列番号:24および配列番号:25にそれぞれ示したHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む抗体重鎖可変領域;および、配列番号:20および配列番号:21にそれぞれ示したLCDR1およびLCDR2と配列番号:26または53に示したLCDR3、ならびに2Vおよび45Kからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含有するFR領域を含む抗体軽鎖可変領域;および
d)配列番号:17および配列番号:27にそれぞれ示したHCDR1およびHCDR3と配列番号:18または52に示したHCDR2とを含む抗体重鎖可変領域;および、配列番号:20、配列番号:21および配列番号:22にそれぞれ示したLCDR1、LCDR2およびLCDR3、ならびに2Vのアミノ酸復帰突然変異を含有するFR領域を含む抗体軽鎖可変領域。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、以下のうちのいずれかに示した可変領域を含むヒト化抗体である:
a)配列番号:66のアミノ酸配列に示した抗体重鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;および、配列番号:67のアミノ酸配列に示した抗体軽鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;
b)配列番号:68のアミノ酸配列に示した抗体重鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;および、配列番号:69のアミノ酸配列に示した抗体軽鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;
c)配列番号:70のアミノ酸配列に示した抗体重鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;および、配列番号:71のアミノ酸配列に示した抗体軽鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;および
d)配列番号:72のアミノ酸配列に示した抗体重鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;および、配列番号:73のアミノ酸配列に示した抗体軽鎖可変領域またはそのFR領域バリアント;ここで、前記FR領域バリアントは、軽鎖フレームワーク領域および/または重鎖フレームワーク領域に別々に最大10個のアミノ酸復帰変異を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示の上記の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のM~Pから選択されるいずれかの抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである:
M)配列番号:44のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と、配列番号:45のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
N)配列番号:46のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と、配列番号:47のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
O)配列番号:48のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と、配列番号:49のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
P)配列番号:50のアミノ酸配列に示した重鎖可変領域と、配列番号:51のアミノ酸配列に示した軽鎖可変領域とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、定常領域をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1定常領域であり、好ましくは、前記抗体重鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号:42に示されるとおりであるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有し;前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトカッパ(κ)定常領域から選択され、最も好ましくは、前記抗体軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号:43に示されるとおりであるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0028】
上記のように少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列については、当該配列は、好ましくは、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し;より好ましくは、当該配列は、90%超、95%超または99%超の配列同一性を有し、最も好ましくは、当該配列は少なくとも95%の配列同一性を有する。少なくとも85%の配列同一性を有する上記のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換によって得ることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体の重鎖アミノ酸配列は、配列番号:30、34、38または40に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ/または
前記抗体の軽鎖アミノ酸配列は、配列番号:31、35、39または41に示されるか、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0030】
上記のように少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列については、当該配列は、好ましくは、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し;より好ましくは、当該配列は、90%超、95%超または99%超の配列同一性を有し、最も好ましくは、当該配列は少なくとも95%の配列同一性を有する。少なくとも85%の配列同一性を有する上記のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換によって得ることができる。好ましくは、前記抗体は、約10-7Mまたはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満、またはそれ以下の解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合し、KD値は、Biacore T200装置の表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定され得る。好ましくは、前記ヒトAベータは、Aβ1-42フィブリルおよびAβ1-42モノマーである。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のQ~Tから選択されるいずれかの抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントである:
Q)配列番号:30のアミノ酸配列に示した重鎖と配列番号:31のアミノ酸配列に示した軽鎖とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
R)配列番号:34のアミノ酸配列に示した重鎖と配列番号:35のアミノ酸配列に示した軽鎖とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;
S)配列番号:38のアミノ酸配列に示した重鎖と配列番号:39のアミノ酸配列に示した軽鎖とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント;および
T)配列番号:40のアミノ酸配列に示した重鎖と配列番号:41のアミノ酸配列に示した軽鎖とを含む、抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示の抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ダイアボディ、dsFv、およびCDRを含むペプチドの抗原結合フラグメントからなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、ヒトAベータへの結合について上記の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合するか、または同じAベータ抗原エピトープへの結合について上記の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合する、抗Aベータ抗体が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、本開示は、上述したいずれかの抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子も提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記核酸分子は、以下のU~Zから選択されるいずれかの核酸分子である:
U)配列番号:52に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ/または、配列番号:53に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子;
V)配列番号:54に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ/または、配列番号:55に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子;
W)配列番号:56に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ/または、配列番号:57に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子;および
Z)配列番号:58に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ/または、配列番号:59に示したヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【0036】
一態様では、本開示は、上記の核酸分子を含む組換えベクターも提供する。
【0037】
一態様では、本開示は、上記の組換えベクターで形質転換することによって得られる宿主細胞も提供し;前記宿主細胞は、原核細胞および真核細胞からなる群から選択され、好ましくは真核細胞であり、より好ましくはCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)およびNS0細胞を含む哺乳動物細胞である。
【0038】
別の態様では、本開示は、以下のステップを含む、上記の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法を提供する:培養培地中で上記の宿主細胞を培養するステップと、その後に前記抗体を精製および回収するステップ。
【0039】
別の態様では、本開示は、以下を含む医薬組成物も提供する:上記の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメント、および1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤。
【0040】
別の態様では、本開示は、Aベータによって引き起こされる疾患または障害の治療または予防のための薬剤の調製における、上記の抗Aベータ抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは上記の医薬組成物の使用も提供する。
【0041】
別の態様では、本開示は、Aベータによって引き起こされる疾患または障害を治療または予防するための方法であって、治療有効量の上記の抗Aベータ抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは上記の医薬組成物を、前記疾患または障害を有する患者に投与することを含む、方法も提供する。
【0042】
別の態様では、本開示は、Aベータ媒介性の疾患または障害の治療用の薬剤として使用するための、上記の抗Aベータ抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは上記の医薬組成物も提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記の疾患または障害は、アルツハイマー病、軽度認知障害、前頭側頭型認知症、レビー小体病、パーキンソン病、ピック病、ベバック病(Bevac’s disease)、コンゴ親和性アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、ダウン症、多発性梗塞性認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、エイズ認知症症候群、うつ病、不安障害、恐怖症、ベル麻痺、てんかん、脳炎、多発性硬化症、神経筋障害、神経腫瘍障害、脳腫瘍、脳卒中による神経血管障害、神経免疫障害、神経障害性耳科学疾患、脊髄損傷による神経外傷、神経障害性疼痛による痛み、小児の神経および神経精神障害、睡眠障害、トゥレット症候群、軽度認知障害、血管性認知症、多発性梗塞性認知症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、ならびにその他の中枢神経系の運動障害および疾患からなる群から選択される神経変性疾患である。いくつかの実施形態では、前記疾患はアルツハイマー病である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の上記の抗Aベータ抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは上記の医薬組成物を患者に投与することを含む、アルツハイマー病を治療または予防するための方法も提供する。
【0045】
本開示の抗Aベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、生化学的試験およびin vivo薬力学的アッセイの両方において良好な効率を示す。例えば、親和性検出アッセイにおいて、本開示の抗Aベータ抗体(HAB-2401、HAB-5101、HAB-3601およびHAB-9001)は、10-8M未満、さらには10-10M未満のAβ1-42フィブリルに対する親和性と、10-7M未満~10-8MのAβ1-42モノマーに対する親和性とを示す。特に、抗体HAB-9001は、現在最も優れた抗Aベータ抗体として知られているアデュカヌマブのほぼ100倍の親和性を示す。
【0046】
さらに、Aβ1-42モノマーのAβ1-42フィブリルへの凝集をブロッキングすることに対する抗体の効果のアッセイにおいて、その結果は、本開示の抗体HAB-2401、HAB-5101およびHAB-9001がAβ1-42モノマーのAβ1-42フィブリルへの凝集を効果的に阻害することができるが、アデュカヌマブは阻害できないことを示している。
【0047】
生化学的試験において、その結果は、本開示の抗Aベータ抗体HAB-2401およびHAB-3601がラット初代ニューロンの保護に対する効果を有し、初代ミクログリア細胞によるAβフィブリルの食作用を促進できることを示している。
【0048】
さらに、動物の薬力学的アッセイにおいて、その結果は、本開示の抗体HAB-2401、HAB-5101およびHAB-9001が、5×FADアルツハイマー病マウスの空間記憶および認知能力を有意に改善できることを示している。さらに、本開示の抗体は、陽性抗体アデュカヌマブと比較した場合、脳組織におけるサイトカイン(TNFα、IFN-γ、IL1β、IL2、IL6、IL12p70、IL4、IL10、MCP-1およびKCなど)の放出に対する影響が低く、本開示の抗体が安全性リスクの観点から制御可能であることを示している。本開示の抗Aベータ抗体は、将来、Aベータによって引き起こされる疾患または障害(アルツハイマー病など)の治療または予防に有用であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】チオフラビン(ThT)蛍光アッセイを示す図であり、Aβ1-42モノマーのAβ1-42フィブリルへの凝集に対する抗Aベータ抗体のブロッキング効果の実験結果を示している。
図2】初代皮質ニューロンに対する保護のアッセイを示す図であり、ラット初代ニューロンに対する抗Aベータ抗体の保護効果の実験結果を示している。
図3】BV2食作用アッセイを示す図であり、BV2細胞によるAβフィブリルの食作用を促進する抗Aベータ抗体の実験結果を示している。
図4】ラット初代ミクログリア細胞によるAβフィブリルの食作用に対する抗Aベータ抗体の効果の実験結果を示す図である。
図5】マウスの巣作り能力をスコアリングするための代表的な写真である。
図6】巣作り実験を示す図であり、棒グラフは、5×FADトランスジェニックマウスの社会的行動の改善に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。
図7】巣作り実験を示す図であり、散布図は、5×FADトランスジェニックマウスの社会的行動の改善に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。
図8】水迷路の概略図である。実線の円と点線の円は、それぞれプラットフォームとプラットフォームゾーンの位置を表す。
図9】水迷路実験の学習曲線を示す図である;隠れたプラットフォーム訓練および学習の曲線の結果を示している。二元ANOVAは二元配置分散分析を指す;分析結果は以下のとおりである:
図10】水迷路実験の結果を示す図である(図10A-10G):横軸は薬物投与群を示す;図10Aは、プラットフォームに到達するまでの潜時の結果を示し、図10Bは、プラットフォームゾーンに到達するまでの潜時の結果を示し、図10Cは、プラットフォームを通過した回数の結果を示し、図10Dは、プラットフォームゾーンを通過した回数の結果を示し、図10Eは、プラットフォーム上での継続時間の結果を示し、図10Fは、プラットフォームゾーンでの継続時間の結果を示し、図10Gは、プラットフォームの通過インデックスの結果を示す(通過インデックス=標的領域を通過した回数-(他の3つの象限内の対応する領域を通過した回数の合計)/3)。図10B-10Gのレジェンドは図10Aのレジェンドと同じである(詳細については、図10Aのレジェンドを参照のこと)。一元ANOVAは一元配置分散分析を指す(図12および図13についても同じ)、対ビヒクル、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001;群間で有意差は検出されなかった。
図11】Aβ沈着のELISAアッセイの結果を示す図である(図11A-11D)。図11Aは海馬に存在する不溶性Aβ1-40の含有量を示し、図11Bは海馬に存在する不溶性Aβ1-42の含有量を示し(図11Bのレジェンドは図11Aのレジェンドと同じある。詳細については図11Aを参照のこと)、図11Cは皮質に存在する不溶性Aβ1-40の含有量を示し、図11Dは皮質に存在する不溶性Aβ1-42の含有量を示す(図11Dのレジェンドは図11Cのレジェンドと同じある。詳細については図11Cを参照のこと)。
図12】海馬におけるAβを示すグラフであり、Aβ沈着(皮質)のIHC検出の結果を示している。一元ANOVA、対ビヒクル、***p<0.001。
図13】皮質におけるAβを示すグラフであり、Aβ沈着(海馬)のIHC検出の結果を示している。
図14図14Aは、脳組織におけるサイトカインTNFαの放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図14Bは、脳組織におけるサイトカインIFN-γの放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図14Cは、脳組織におけるMCP-1の放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図14Dは、脳組織におけるKCの放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。
図15図15Aは、脳組織におけるサイトカインIL1βの放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図15Bは、脳組織におけるサイトカインIL2の放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図15Cは、脳組織におけるサイトカインIL6の放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図15Dは、脳組織におけるサイトカインIL12p70の放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図15Eは、脳組織におけるサイトカインIL4の放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。図15Fは、脳組織におけるサイトカインIL10の放出に対する抗Aベータ抗体の効果を示している。
【0050】
図面の簡単な説明:図9の補足
[図9]水迷路実験の学習曲線を示す図である;隠れたプラットフォーム訓練および学習の曲線の結果を示している。二元ANOVAは二元配置分散分析を指す;分析結果は以下のとおりである:
【0051】
・用語
本開示をより容易に理解するために、特定の技術的および科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書で明示的に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0052】
本開示で使用されるアミノ酸の3文字コードおよび1文字コードは、J. biol. chem,243,3558頁(1968年)に記載されているとおりである。
【0053】
本開示において、「a XXX」は、1つ以上のその物質を指す;例えば、「抗Aベータ抗体(an anti-Abeta antibody)」は、Aベータに特異的に結合する1つ以上の抗体として理解されるべきである。したがって、「a」、「1つ以上(1つまたは複数)(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0054】
「アミロイドβ」、「β-アミロイド」、「Aβ」および「Aベータ」という用語は、本明細書において互換的に使用され得、β-セクレターゼ1(BACE1)を使用してアミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断することによって生成されるセグメント、またはその任意の改変体もしくはその任意の機能的同等物を指し、Aβ1-40およびAβ1-42を含むがこれらに限定されない。Aβはモノマーの形態で存在し、それらが組み合わさってオリゴマーとプロトフィブリル構造を形成することが知られている。そのようなAβペプチドの構造および配列は当業者に周知であり、該ペプチドを生成するための、または脳および他の組織から該ペプチドを抽出するための方法もまた周知である(例えば、Glenner and Wong, Biochem Biophys Res. Comm. 129:885-890頁(1984年))。さらに、Aβペプチドは市販されてもいる。ヒトAβのアミノ酸配列の例として、配列番号:1はAβ1-40のアミノ酸配列を表し、配列番号:2はAβ1-42のアミノ酸配列を表す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖の間のジスルフィド結合によって一緒に接続された4本のペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指す。異なる免疫グロブリン重鎖定常領域は、異なるアミノ酸組成および配列を示し、したがって、異なる抗原性を示す。したがって、免疫グロブリンは5つのタイプに分類され得るか、免疫グロブリンアイソタイプ、即ちIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと命名され得、それぞれ重鎖μ、δ、γ、αおよびεに対応する。ヒンジ領域のアミノ酸組成と重鎖ジスルフィド結合の数および位置に応じて、同じタイプのIgはさらに異なるサブタイプに分類され得る。例えば、IgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に分類され得る。軽鎖は、異なる定常領域に基づいて、κ鎖またはλ鎖に分類され得る。5種類のIgのそれぞれが、κ鎖またはλ鎖を有する。
【0056】
本開示において、抗体軽鎖は、ヒトまたはマウスのκ、λ鎖またはそれらのバリアントを含む軽鎖定常領域をさらに含み得る;抗体重鎖は、ヒトまたはマウスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントを含む重鎖定常領域をさらに含み得る。
【0057】
抗体の重鎖および軽鎖のN末端に隣接する約110のアミノ酸配列は非常に可変的であり、軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)を含む可変領域(Fv領域)として知られている;C末端に近い残りのアミノ酸配列は比較的安定であり、定常領域として知られている。可変領域には、3つの超可変領域(HVR)と4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)が含まれる。抗体の特異性を決定する3つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)としても知られている。各軽鎖可変領域(VL)および各重鎖可変領域(VH)は、3つのCDR領域と4つのFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシル末端への順序は次のとおりである:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2およびLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2およびHCDR3を指す。本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントのCDRアミノ酸残基の番号および位置は、既知のKabatナンバーリング基準および/またはChothiaナンバーリング基準((1983年)米国保健社会福祉省、“Sequence of Proteins of Immunological Interest”)に準拠している。
【0058】
本開示の抗体には、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、好ましくはヒト化抗体が含まれる。
【0059】
本開示に記載される「マウス抗体」という用語は、当分野の知識及び技術に従って調製されたヒトAベータ結合モノクローナル抗体を指す。調製中、試験対象にAベータ抗原を注射し、その後、所望の配列または機能的特徴を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。本開示の一実施形態では、マウスAベータ抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウスκ、λ鎖またはそのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含み、かつ/またはマウスIgG1、IgG2、IgG3またはそのバリアントの重鎖定常領域をさらに含む。
【0060】
本明細書に記載の用語「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合させることによる抗体であり、キメラ抗体はマウス抗体によって誘導される免疫応答を緩和することができる。キメラ抗体を確立するためには、最初に、特定のマウスモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを確立し、可変領域遺伝子をマウスハイブリドーマからクローニングする。次に、必要に応じて、ヒト抗体から定常領域遺伝子をクローニングする。マウス可変領域遺伝子をヒト定常領域遺伝子に接続してキメラ遺伝子を形成し、該キメラ遺伝子をその後、発現ベクターに挿入することができる。最後に、キメラ抗体分子は真核生物系または原核生物系で発現される。本開示の一実施形態では、キメラ抗体の軽鎖は、ヒトκ、λ鎖またはそれらのバリアントに由来する軽鎖定常領域をさらに含む。キメラ抗体の重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントに由来する重鎖定常領域をさらに含み、好ましくはヒトIgG1、IgG2もしくはIgG4またはアミノ酸突然変異(YTE突然変異または復帰突然変異など)を有するIgG1、IgG2もしくはIgG4バリアントに由来する重鎖定常領域を含む。
【0061】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、CDR移植抗体としても知られ、マウスCDR配列をヒト抗体可変領域フレームワークに移植することによって生成される抗体、即ち、異なるタイプのヒト生殖細胞系列抗体フレームワーク配列において産生される抗体を指す。ヒト化抗体は、多数のマウスタンパク質成分を有するキメラ抗体によって誘導される異種応答を克服することができる。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列をカバーする公共のDNAデータベースまたは公開された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(www.mrccpe.com.ac.uk/vbase)、ならびに、Kabat, EAら,1991年 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版に見出すことができる。免疫原性の低下によって引き起こされる活性の低下を回避するために、ヒト抗体の可変領域中のフレームワーク配列は最小限の逆突然変異(reverse mutation)または復帰突然変異(back mutation)を受けて、活性を維持することができる。本開示のヒト化抗体は、ファージディスプレイによってCDR親和性成熟が行われるヒト化抗体も含む。本開示の一実施形態では、Aベータヒト化抗体のCDR配列は、配列番号:11~27から選択される。ヒト抗体可変領域フレームワークについては、設計およびセレクションの後、抗体重鎖FR領域配列は、ヒト生殖細胞系列IGHV1-24*01およびhjh6.3、IGHV3-30*01およびhjh6.3またはIGHV2-70D*04およびhjh6.1、またはそれらの変異体配列のFR1、FR2、FR3およびJH6領域から選択される;軽鎖FR領域配列は、ヒト生殖細胞系列IGKV1-27*01およびhjk4.1、IGKV1-39*01およびhjk4.1、IGKV2-40*01およびhjk4.1、IGKV2-40*01およびhjk2.1、またはそれらの変異体配列のFR1、FR2、FR3およびJK4、JK2領域から選択される。
【0062】
CDRの移植は、抗原と接触したフレームワーク残基のために、得られるAベータ抗体またはその抗原結合フラグメントの抗原に対する親和性の低下をもたらす可能性がある。このような相互作用は、体細胞超突然変異に起因する可能性がある。したがって、ドナーフレームワークのアミノ酸をヒト化抗体フレームワークに移植することが依然として必要な場合がある。抗原結合に関与する非ヒトAベータ抗体またはその抗原結合フラグメントに由来するアミノ酸残基は、マウスモノクローナル抗体可変領域の配列および構造を調べることによって同定することができる。ドナーCDRフレームワークと生殖細胞系列の間で異なるアミノ酸残基は、関連していると見なすことができる。最も密接に関連する生殖細胞系列を決定することが不可能な場合、その配列は、サブタイプによって共有される共通配列または高い類似性パーセンテージを有するマウス配列と比較され得る。まれなフレームワーク残基は、体細胞の超突然変異の結果であると考えられ、結合において重要な役割を果たす。
【0063】
本明細書で使用される場合、「抗原結合フラグメント」または「機能的フラグメント」は、抗原への結合能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。全長抗体のフラグメントを用いて、特定の抗原に結合するという機能を達成できることが示されている。「抗原結合フラグメント」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、以下が含まれる:(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから構成される一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド結合によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)片腕のVHおよびVLドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインから構成される単一ドメインまたはdAbフラグメント(Wardら、(1989年)Nature341:544-546頁);および(vi)個別の相補性決定領域(CDR)または(vii)合成リンカーによって任意に連結された2つ以上の個別のCDRの組み合わせ。さらに、FvフラグメントのVLドメインとVHドメインは2つの別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を使用することによりそれらを合成リンカーによって連結して、一本のタンパク質鎖を生成することができ、該一本のタンパク質鎖では、VLドメインとVHドメインをペアにすることによって一価分子が形成されている(一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる;Birdら(1988年)423-426頁;Science 242;および、Hustonら(1988年) Proc. Natl. Acad. Sci USA 85:5879-5883頁を参照)。そのような一本鎖抗体はまた、「抗原結合フラグメント」という用語に含まれることも意図されている。そのような抗体は、当該分野で公知の従来技術を使用して得られ、インタクト抗体の場合と同じ方法を使用することによって機能的フラグメントについてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、またはインタクト免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的破壊によって生成され得る。抗体は、異なるアイソタイプ、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体の形態であり得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、Fabは、IgG抗体分子を(H鎖の224位のアミノ酸残基を切断する)パパインで処理することにより得られる抗体フラグメントである。Fabフラグメントは、約50,000の分子量を有し、抗原結合活性を有し、H鎖のN末端側の約半分とL鎖全体がジスルフィド結合を介して結合している。本開示のFabは、(ヒトAベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する)本発明のモノクローナル抗体をパパインで処理することにより生成され得る。さらに、Fabは、抗体のFabをコードするDNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物に導入してFabを発現させることによって生成され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、F(ab’)2は、約100,000の分子量を有し、抗原結合活性を有し、ヒンジ位置で結合されている2つのFab領域を含む抗体フラグメントであり、IgGのヒンジ領域にある2つのジスルフィド結合の下流の部分をペプシンで消化することによって生成され得る。本開示のF(ab’)2は、(ヒトAベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する)本発明のモノクローナル抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。また、F(ab’)2は、下記のFab’をチオエーテル結合またはジスルフィド結合を介して結合することによって生成され得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、Fab’は、約50,000の分子量を有し、抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。Fab’は、上記のF(ab’)2のヒンジ領域でジスルフィド結合を切断することにより得られる。本開示のFab’は、(Aベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する)本開示のF(ab’)2を、ジチオトレイトールなどの還元剤で処理することによって生成され得る。さらに、Fab’は、抗体のFab’をコードするDNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物に導入してFab’を発現させることによって生成され得る。
【0067】
「一本鎖抗体」、「一本鎖Fv」または「scFv」は、リンカーによって抗体軽鎖可変ドメイン(または領域;VL)に接続された抗体重鎖可変ドメイン(または領域;VH)を含む分子を指す。そのようなscFv分子は、NH-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH-VH-リンカー-VL-COOHの一般構造を有する。従来技術における適切なリンカーは、繰り返されるGGGGSアミノ酸配列またはそのバリアント、例えば1~4回の繰り返しを有するバリアントからなる(Holligerら、(1993年), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448頁)。本開示で使用され得る他のリンカーは、Alfthanら(1995年), Protein Eng. 8:725-731頁、Choiら(2001年), Eur. J. Immunol. 31:94-106頁、Huら(1996年), Cancer Res. 56:3055-3061頁、Kipriyanovら(1999年), J. Mol. Biol. 293:41-56頁、およびRooversら(2001年), Cancer Immunolに記載されている。本開示のscFvは、以下のステップによって生成することができる:ヒトAベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを得るステップ、scFvをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、およびその後該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してscFvを発現させるステップ。
【0068】
本明細書で使用される場合、ダイアボディは、scFvが二量体化した抗体フラグメントであり、二価の抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。その二価抗原結合活性において、2つの抗原は同じでも異なっていてもよい。本開示のダイアボディは、以下のステップによって生成することができる:ヒトAベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを得るステップ、リンカーペプチドの長さが8アミノ酸残基以下になるようにscFvをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、およびその後該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してダイアボディを発現させるステップ。
【0069】
本明細書で使用される場合、dsFvは、VHおよびVLのそれぞれの1アミノ酸残基をシステイン残基で置換し、該2つのシステイン残基間のジスルフィド結合を介して置換されたポリペプチドを接続することによって得られる。システイン残基で置換されるアミノ酸残基は、既知の方法に従って抗体の三次元構造予測に基づいて選択することができる(Protein Engineering, 7, 697頁(1994年))。本開示のdsFvは、以下のステップによって生成することができる:ヒトAベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを得るステップ、dsFvをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、およびその後該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してdsFvを発現させるステップ。
【0070】
本明細書で使用される場合、CDR含有ペプチドは、VHまたはVLのCDRの1つ以上の領域から構築される。いくつかのCDRを含むペプチドを、直接的にまたは適切なペプチドリンカーを介して接続することができる。本開示のCDR含有ペプチドは、以下のステップによって生成することができる:ヒトAベータを特異的に認識し、その細胞外領域または三次元構造に結合する本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするDNAを構築するステップ、該DNAを原核生物発現ベクターまたは真核生物発現ベクターに挿入するステップ、およびその後該発現ベクターを原核生物または真核生物に導入してペプチドを発現させるステップ。CDR含有ペプチドは、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によっても生成され得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「CDR」は、主に抗原結合に寄与する抗体の可変ドメインに存在する6つの超可変領域のうちの1つを指す。6つのCDRの最も一般的に使用される定義の1つは、Kabat E.A. et al.((1991年)Sequences of proteins of immunological interest. NIH Publication 91-3242)によって与えられている。本明細書で使用される場合、CDRについてのKabatの定義は、軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3(CDRL1、CDRL2、CDRL3またはL1、L2、L3)、ならびに重鎖可変ドメインのCDR2およびCDR3(CDRH2、CDRH3またはH2、H3)に適用される。
【0072】
本明細書で使用される場合、「抗体フレームワーク」は可変ドメインVLまたはVHのいずれかの一部を指し、これらは、この可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)のスキャフォールドとして機能する。基本的に、「抗体フレームワーク」は、CDRのない可変ドメインである。
【0073】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」または「抗原決定基」または「抗原エピトープ」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位(例えば、Aベータ分子上の特定の部位)を指す。エピトープは、典型的には、固有の三次元コンフォメーション中に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続なアミノ酸を含む(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻、G. E. Morris編(1996年)を参照)。
【0074】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する(specifically bind to)」、「選択的に結合する(selectively bind to)」、「選択的に結合する(selectively binds to)」または「特異的に結合する(specifically binds)」は、抗原上の所定のエピトープへの抗体の結合を指す。典型的には、抗体は、約10-7M未満、例えば、約10-8M、10-9Mもしくは10-10M未満またはそれより低い親和性(KD)で結合する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「KD」または「Kd」は、特定の抗体‐抗原相互作用についての解離平衡定数を指す。典型的には、本開示の抗体は、例えば、BIACORE T200装置において表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した場合、約10-7M未満、例えば約10-8M、10-9Mもしくは10-10M未満またはそれより小さい解離平衡定数(KD)でヒトAベータに結合する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「競合的結合」および「競合的に結合する」は、抗体が本発明のモノクローナル抗体と同じヒトAベータ上のエピトープ(抗原決定基としても知られる)またはその一部を認識して結合することを指す。本発明のモノクローナル抗体と同じエピトープに結合する抗体とは、本発明のモノクローナル抗体によって認識されるヒトAベータのアミノ酸配列を認識して結合する抗体を指す。
【0077】
「競合」という用語が、同じエピトープに対して競合する抗原結合タンパク質(例えば、中和抗原結合タンパク質または中和抗体)の文脈で使用される場合、抗原結合タンパク質間で競合が起こることを意味する。これは、試験される抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的な機能的フラグメント)が、共通の抗原(例えば、PD-L1抗原またはそのフラグメント)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的結合を防止または阻害(例えば、低減)するアッセイによって決定される。抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを判断するために、数多くの種類の競合結合アッセイが利用できる。これらのアッセイは、例えば、以下である:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahliら、1983年、Methods in Enzymology 9:242-253頁を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirklandら、1986年、J. Immunol. 137:3614-3619頁を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane、1988年、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照);I-125標識を用いた固相直接標識RIA(例えば、Morelら、1988年、Molec. Immunol. 25:7-15頁を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheungら、1990年、Virology 176:546-552頁を参照);および直接標識RIA(Moldenhauerら、1990年、Scand. J. Immunol. 32:77-82頁を参照)。典型的には、アッセイは、非標識試験抗原結合タンパク質および標識参照抗原結合タンパク質の両方がロードされた固体表面または細胞に結合することができる精製された抗原の使用を含む。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で、固体表面または細胞に結合した標識の量を測定することによって決定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイ(抗原結合タンパク質と競合する)によって同定される抗原結合タンパク質には、次のものが含まれる:参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質;および、参照抗原結合タンパク質が結合するエピトープに十分に近いエピトープに結合する抗原結合タンパク質(ここで、2つのエピトープは、空間的に互いに干渉して結合を妨害する)。競合的結合を測定するための方法に関する追加の詳細は、本明細書の実施例に提供されている。典型的には、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、それは、共通抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的結合の少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%または75%またはそれ以上を阻害する(例えば、減少させる)。場合によっては、結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%または97%またはそれ以上阻害される。
【0078】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を指す。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれると、「作動可能に連結」される。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を与える場合、該コード配列に作動可能に連結されている。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。一実施形態では、ベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループを指す。別の実施形態では、ベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。本明細書で開示されるベクターは、それらが導入される宿主細胞で自己複製することができ(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)、または宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよく、それにより、宿主ゲノム(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)とともに複製される。
【0080】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、発現ベクターが導入されている細胞を指す。宿主細胞には、細菌、微生物、植物または動物の細胞が含まれ得る。形質転換されやすい細菌には、大腸菌やサルモネラ菌株などの腸内細菌科;枯草菌などのバチルス科;肺炎球菌;連鎖球菌およびインフルエンザ菌のメンバーが含まれる。適切な微生物には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。適切な動物宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)およびNS0細胞が含まれる。
【0081】
抗体および抗原結合フラグメントを生成および精製するための方法は、A Laboratory Manualfor for Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 5-8章および15章など、当技術分野で周知である。例えば、マウスをヒトAベータまたはそのフラグメントで免疫化することができ、次いで、得られた抗体を、当技術分野で周知の従来の方法を使用することにより、再生し、精製し、アミノ酸配列を配列決定することができる。抗原結合フラグメントはまた、従来の方法によって調製することができる。本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、1つ以上のヒトフレームワーク領域および非ヒト抗体に由来するCDRを含むように設計されている。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)のウェブサイト(http://imgt.cines.fr)またはThe Immunoglobulin Facts Book,2001年,ISBN 012441351から、IMGTヒト抗体可変生殖細胞系列遺伝子データベースに対するアラインメントおよびMOEソフトウェアの使用によって取得することができる。
【0082】
本開示の操作された抗体または抗原結合フラグメントは、公知の方法を用いて調製および精製され得る。例えば、重鎖および軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングし、GS発現ベクターに組み込むことができる。次に、組換え免疫グロブリンを発現するベクターを、CHO細胞に安定的にトランスフェクトすることができる。当技術分野で周知のより推奨される方法として、哺乳動物の発現系は、典型的にはFc領域の高度に保存されたN末端部位で、グリコシル化をもたらす。ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体を発現する安定したクローンが得られた。陽性クローンは、抗体産生のためにバイオリアクター内の無血清培地で増殖させることができる。抗体が分泌された培地は、従来の技術により精製することができる。例えば、バッファーで平衡化したプロテインAまたはGセファロースFFカラムで精製を行うことができる。非特異的結合成分を洗浄により除去する。結合した抗体をpH勾配で溶出し、抗体フラグメントをSDS-PAGEで検出し、その後回収する。抗体は、一般的な技術を用いてろ過および濃縮することができる。サイズ排除またはイオン交換などの一般的な手法により、可溶性の凝集体および多量体を除去することができる。得られた生成物は、その後、例えば-70℃で直ちに凍結されるか、または凍結乾燥され得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「突然変異」には、「復帰突然変異(back-mutation)」、「保存的改変(conservative modification)」または「保存的置換または置換(conservative substitution or replacement)」が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「保存的改変」または「保存的置換または置換」は、タンパク質の生物学的活性を変えることなくその変化が頻繁に起こり得るように、タンパク質中のアミノ酸を類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖のコンフォメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを指す。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watson et al. (1987年) Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co.,224頁(第4版)を参照)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。
【0084】
本開示で言及される「変異配列」は、適切な置換、挿入または欠失によって本開示のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を改変した後、本開示のものに対してさまざまなパーセンテージの配列同一性を有するヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を指す。本開示に記載される配列同一性は、少なくとも85%、90%または95%、好ましくは少なくとも95%であり得る。非限定的な例には、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%が含まれる。配列比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、米国国立生物工学情報センターのWebサイトで利用可能なBLASTN/BLASTPアルゴリズムをデフォルト設定で使用して実行され得る。
【0085】
本明細書で使用される場合、「相同性」または「同一性」または「一致性」は、2つのポリヌクレオチド配列間または2つのポリペプチド配列間の配列類似性を指す。比較される2つの配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットで占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンで占められている場合、分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性パーセントは、2つの配列で共有される一致または相同な位置の数を、比較する位置の数で割って100倍した関数である。例えば、配列を最適にアラインメントしたとき、2つの配列の10個の位置のうち6個が一致または相同であるならば、2つの配列は60%の相同性を有する;2つの配列の100個の位置のうち95個が一致または相同であるならば、2つの配列は95%の相同性を有する。一般に、比較は、2つの配列が最大の相同性パーセントを与えるようにアラインメントされたときに実行される。
【0086】
本開示で言及される「外因性」とは、状況に応じて、生物、細胞、またはヒトの外部で産生される物質を指す。「内因性」とは、状況に応じて、細胞、生物、またはヒトの内部で産生される物質を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」は互換的に使用され、そのようなすべての名称は子孫を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転換された細胞」という言葉には、継代数に関係なく、初代対象細胞およびそれに由来する培養物が含まれる。意図的またはランダムな突然変異のために、すべての子孫がDNAの内容において正確に同一であるとは限らないことも理解されたい。最初に形質転換された細胞と同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。異なる名称が意図されている場合、それは文脈から明確に理解されるであろう。
【0088】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、例えば米国特許第4,683,195号に記載されるように、微量の核酸、RNAおよび/またはDNAの特定の部分が増幅される手順または技術を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーを設計できるように、関心領域の末端または関心領域を超える配列情報を入手できる必要がある;これらのプライマーは、増幅されるテンプレートの反対側の鎖と配列が同一または類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と一致していることがある。PCRを用いて、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列および全細胞RNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列などから転写されたcDNAを増幅することができる。一般的には、Mullisら、(1987年) Cold Spring Harbor Symp. Ouant. Biol. 51:263頁; Erlich編、(1989年) PCR TECHNOLOGY (Stockton Press, N.Y.)を参照されたい。本開示で使用されるPCR試験は、核酸試験サンプルを増幅するためのポリメラーゼ反応法の唯一ではないが1つの例であると考えられる。該方法は、核酸の特定の部分を増幅または生成するための、プライマーとしての既知の核酸配列および核酸ポリメラーゼの使用を含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本開示による1つ以上の化合物またはその生理学的/薬学的に許容される塩またはプロドラッグ、ならびに生理学的/薬学的に許容される担体及および賦形剤などの他の化学成分を含む混合物を指す。医薬組成物は、生物への投与を促進し、有効成分の吸収を促進し、それにより生物学的効果を発揮させることを目的とする。
【0090】
「治療する」とは、本開示の結合化合物のいずれかを含む組成物などの治療薬を、該治療薬が既知の治療活性を有する1つ以上の疾患症状を有する患者に、内部的にまたは外部的に投与することを意味する。典型的には、該薬剤は、臨床的に測定可能な程度でそのような症状の退行を誘導するかまたは進行を阻害することにより、治療される患者または集団における1つ以上の疾患症状を緩和するのに有効な量で投与される。特定の疾患症状を緩和するのに有効な治療薬の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の病状、年齢および体重、ならびに患者において所望の反応を誘発する薬物の能力などのさまざまな要因によって変動する可能性がある。疾患の症状が緩和されたかどうかは、その症状の重症度または進行状況を評価するために医師または他の熟練した医療提供者が通常使用する臨床測定によって評価できる。本開示の実施形態(例えば、治療方法または製品)は、全ての患者の標的疾患症状を緩和するのに効果的ではないかもしれないが、スチューデントのt検定、カイ2乗検定、マンおよびホイットニー(Mann and Whitney)によるU検定、クラスカル-ウォリス(Kruskal-Wallis)検定(H検定)、ヨンクヒール-タプストラ(Jonckheere-Terpstra)検定、およびウィルコクソン検定などの当該技術分野で既知の任意の統計的試験によって決定されるように、統計的に有意な数の患者における標的疾患症状を緩和するはずである。
【0091】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、疾病の症状または徴候を改善または予防するのに十分な量を包含する。有効量は、診断を可能または容易にするのに十分な量も意味する。特定の患者または獣医学的対象に対する有効量は、治療される状態、患者の全体的な健康状態、投与経路および投与量、ならびに副作用の重症度などの要因に応じて変化し得る。有効量は、重大な副作用または毒性作用を回避する、最大用量または投与プロトコルであり得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「投与」または「治療」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器、または体液に適用される場合、外因性の医薬品、治療薬、診断薬、または組成物を動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器、または体液と接触させることを指す。「投与」または「治療」は、例えば、治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法および実験方法を指すことができる。細胞の治療は、試薬を細胞と接触させること、ならびに試薬を流体と接触させることを含み、ここで、該流体は細胞と接触している。「投与」または「治療」は、例えば細胞の、試薬、診断、結合組成物または別の細胞による、in vitroまたはex vivoでの治療も意味する。「治療」は、ヒト、獣医、または研究対象に適用される場合、治療的処置、予防的または予防的措置(prophylactic or preventative measures)、研究および診断への適用を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「Aベータによって引き起こされる疾患または障害」とは、β-アミロイドによって引き起こされる、またはβ-アミロイドに関連する疾患または障害を指し、Aベータモノマー、またはプロトフィブリル、またはポリマー、またはそれらの任意の組み合わせからなるβ-アミロイドの存在または活性によって引き起こされる疾患および障害(例えば、神経変性疾患(例:アルツハイマー病、軽度認知障害、前頭側頭型認知症、レビー小体病、パーキンソン病、ピック病、ベバック病(Bevac’s disease)など)、β-アミロイド沈着によって引き起こされるさまざまな眼疾患(例:黄斑変性、ドルーゼン関連視神経障害(drusen-associated optic neuropathy)、緑内障、白内障など))を含むが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書で使用される場合、「神経変性疾患」には、以下が含まれるが、これらに限定されない:アルツハイマー病、軽度認知障害、前頭側頭型認知症、レビー小体病、パーキンソン病、ピック病、ベバック病(Bevac’s disease)、コンゴ親和性アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、ダウン症、多発性梗塞性認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、エイズ認知症症候群、うつ病、不安障害、恐怖症、ベル麻痺、てんかん、脳炎、多発性硬化症、神経筋障害、神経腫瘍障害、脳腫瘍、脳卒中を含む神経血管障害、神経免疫障害、神経障害性耳科学疾患、脊髄損傷を含む神経外傷、神経障害性疼痛を含む痛み、小児の神経および神経精神障害、睡眠障害、トゥレット症候群、軽度認知障害、血管性認知症、多発性梗塞性認知症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、ならびにその他の中枢神経系の運動障害および疾患。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下の例は、本開示をさらに説明するために提供されているが、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示の例において特定の条件が示されていない実験方法は、一般に、Sambrook et al., Antibodies, Molecular Cloning, Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratoryなどの通常の条件に従って;またはメーカーが推奨する条件に従って実施される。供給源が明記されていない試薬は市販の試薬である。
【実施例
【0096】
(実施例1.Aベータ抗原の調製)
本開示の実施例および試験例で使用されるAベータ抗原は、GL Biochem、GenScriptまたはSigmaによって合成され、その後in vitroで調製された(詳細については表1を参照)。免疫化に使用するためのAベータ抗原は、Aβ1-42プロトフィブリルおよびAβ1-40KLHであった;スクリーニングに使用するためのAベータ抗原は、Aβ1-40-BSAフィブリル、Aβ1-40DMSO懸濁液、Aβ1-42-ビオチンDMSO懸濁液、Aβ1-42プロトフィブリルおよびAβ1-42フィブリルであった;検出に使用するためのAベータ抗原は、Aβ1-42モノマーおよびAβ1-42フィブリルであった。
【0097】
Aβ1-40のアミノ酸配列は、以下の(配列番号:1)に示されている:
【化1】
【0098】
Aβ1-42のアミノ酸配列は、以下の(配列番号:2)に示されている:
【化2】
【0099】
Aβ1-40KLHおよびAβ1-40-BSAは、それぞれKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)およびBSA(ウシ血清アルブミン)と結合した合成Aβ1-40ポリペプチドを指し、使用したAβ1-40は、結合および検出の便宜のために、N末端にアミノ酸Cysが組み込まれている。
【0100】
Aβ1-42プロトフィブリルとは、in vitroでプロトフィブリルの形態で調製されたAβ1-42ポリペプチドを指す。
【0101】
Aβ1-40-BSAフィブリルとは、in vitroでフィブリルの形態で調製されたBSAと結合したAβ1-42ポリペプチドを指す。
【0102】
Aβ1-40DMSO懸濁液とは、Aβ1-42ポリペプチドをDMSO(ジメチルスルホキシド)に直接溶解して調製した透明な溶液を指す。
【0103】
Aβ1-42-ビオチンDMSO懸濁液とは、ビオチンタグ付きAβ1-42ポリペプチドをDMSO(ジメチルスルホキシド)に直接溶解して調製した透明な溶液を指す。
【0104】
Aβ1-42フィブリルとは、in vitroでフィブリルの形態で調製されたAβ1-42ポリペプチドを指す。
【0105】
Aβ1-42モノマーとは、Aβ1-42モノマーを指す。
【表1】
【0106】
(実施例2.抗ヒトAベータハイブリドーマモノクローナル抗体の調製)
1.免疫化
抗ヒトAベータモノクローナル抗体は、マウスを免疫化することによって生成された。SJL白色マウス、雌、6~8週齢を実験に使用した(Beijing Vital River Experimental Animal Technology株式会社、動物生産ライセンス番号:SCXK(北京)2012-0001)。給餌環境:SPFレベル。購入後、マウスを温度20~25℃、湿度40~60%、12/12時間の明/暗サイクルで1週間、実験室環境に保管した。次に、以下のスキームに従ってマウスを免疫した。免疫化のための抗原は、Aβ1-40-KLHおよびAβ1-42プロトフィブリルであった。
【0107】
免疫化スキーム1:免疫化に使用したアジュバントはQuickAntibody-Mouse3W(Beijing Kangbiquan Biotechnology株式会社、カタログ番号KX0210042)であった。抗原とアジュバント(QuickAntibody-Mouse3W)の比率は1:1で、10μg/マウス/時間であった。抗原とアジュバントを完全に混合し、0、7、14、21、28、35および42日目に接種に使用した。0日目に、マウスの後肢に10μg/マウスの混合抗原を筋肉内(IM)注射した。最初の免疫化を7、14、21、28、35および42日目に繰り返し、同様にマウスの後肢に10μg/マウスの混合抗原を筋肉内(IM)注射した。19、40および55日目に血液サンプルを採取し、ELISA法によりマウス血清中の抗体価を測定した。7回目から8回目の免疫化の後、プラトーに達する傾向のある血清抗体価が高いマウスを脾細胞融合用に選択した。脾細胞融合の3日前に、生理食塩水で調製した抗原溶液を、追加免疫化のために、20μg/マウスで腹腔内注射(IP)した。
【0108】
免疫化スキーム2:免疫化に使用したアジュバントはQuickAntibody-Mouse5W(Beijing Kangbiquan Biotechnology株式会社、カタログ番号KX021004)であった。抗原とアジュバント(QuickAntibody-Mouse5W)の比率は1:1で、25μg/マウス/時間(最初の免疫化)および25μg/マウス/時間(追加免疫化)であった。抗原とアジュバントを完全に混合し、0、14、28、42および56日目に接種に使用した。0日目に、マウスの後肢に25μg/マウスの混合抗原を筋肉内(IM)注射した。最初の免疫化を14、28、42および56日目に繰り返し、同様にマウスの後肢に25μg/マウスの混合抗原を筋肉内(IM)注射した。20日目および49日目に血液サンプルを採取し、ELISA法によりマウス血清中の抗体価を測定した。5回目の免疫化の後、プラトーに達する傾向のある血清抗体価が高いマウスを脾細胞融合のために選択した。脾細胞融合の3日前に、生理食塩水で調製した抗原溶液を、追加免疫化のために、50μg/マウスで腹腔内注射(IP)した。
【0109】
2.脾細胞融合
ハイブリドーマ細胞は、最適化されたPEGを介した融合手順を使用して、脾臓リンパ球を骨髄腫Sp2/0細胞(ATCC(登録商標)CRL-8287(商標))と融合させることによって得られた。融合したハイブリドーマ細胞を0.5~1×10/mlの密度で完全培地(20%FBS、1×HAT、1×OPIを含むDMEM培地)に再懸濁し、100μl/ウェルで96ウェルプレートに播種し、37℃および5%COで3~4日間インキュベートし、100μl/ウェルのHAT完全培地を補充し、ピン状のクローン(pin-like clones)が形成されるまで3~4日間培養した。上清を除去し、200μl/ウェルのHT完全培地(20%FBS、1×HTおよび1×OPIを含むRPMI-1640培地)を添加し、37℃、5%COで3日間インキュベートした後、ELISA検出に供した。
【0110】
3.ハイブリドーマ細胞のスクリーニング
細胞増殖密度に応じて融合の10~11日後に、予備スクリーニングのために、さまざまな形態のAβポリペプチドを用いてELISA結合アッセイ(酵素免疫測定法としても知られる)をクローン培養上清に対して実施し、得られたハイブリドーマクローンのサブタイプを分類した。免疫原としてAβ1-40-KLHを用いたハイブリドーマ細胞をスクリーニングするために、Aβ1-40-BSAフィブリル、Aβ1-42ビオチンDMSO懸濁液およびAβ1-40DMSO懸濁液を使用した;免疫原としてAβ1-42プロトフィブリルを用いたハイブリドーマ細胞をスクリーニングするために、Aβ1-42プロトフィブリル、Aβ1-42フィブリルおよびAβ1-42-ビオチンDMSO懸濁液を使用した。陽性ウェルについては、細胞密度に応じて培地を交換し、24ウェルプレートに拡張した。24ウェルプレートに移した細胞株を再度試験した後、初めてサブクローニングした。最初のサブクローニングでスクリーニングした陽性細胞のいくつかを保存し、2回目のサブクローニングのために使用した。2回目のサブクローニングでスクリーニングした陽性細胞のいくつかを保存し、タンパク質発現のために使用した。Aβポリペプチドに特異的に結合することができるハイブリドーマ細胞は、複数の融合から生じた。チオフラビン(ThTとも呼ばれる)蛍光アッセイ、神経保護アッセイ、マクロファージ食作用アッセイの後、ハイブリドーマクローンmAb-2401、mAb-3601、mAb-5101およびmAb-9001が得られ、無血清細胞培養による抗体の調製に使用された。得られた抗体を精製例に従って精製し、精製した抗体を試験例で使用した。
【0111】
4.ハイブリドーマ抗体および組換え抗体の精製
細胞によって発現された上清サンプルを高速遠心分離して不純物を除去し、ハイブリドーマによって発現された上清をプロテインGカラムで精製し、組換え抗体によって発現された上清をプロテインAカラムで精製した。A280の読み取り値がベースラインに低下するまで、カラムをPBS(pH7.4)で洗浄した。標的タンパク質を100mM酢酸、pH3.0で溶出し、1M Tris-HCl、pH8.0で中和した。溶出したサンプルを適切に濃縮してから、PBSで事前に平衡化したゲルクロマトグラフィーSuperdex200(GE)でさらに精製して、凝集体を除去した。モノマーのピークを収集し、使用のために分注した。
【0112】
5.陽性ハイブリドーマクローンの配列決定
陽性ハイブリドーマ由来の配列をクローニングする手順は以下のとおりであった。対数増殖期のハイブリドーマ細胞を採取した。キットの指示に従ってTrizol(Invitrogen、カタログ番号15596-018)を用いてRNAを抽出し、PrimeScrip(商標)Reverse Transcription kit(Takara、カタログ番号2680A)を用いて逆転写した。得られたcDNAをマウスIg-Primer Set(Novagen、TB326 Rev. B 0503)を用いたPCRによって増幅し、会社によって配列決定した。ハイブリドーマクローンmAb-2401、mAb-3601、mAb-5101およびmAb-9001のマウス抗体重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、以下のように決定された:
【化3】
【0113】
注:上記の抗体の可変領域アミノ酸配列は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4として表されている。イタリック体の文字はFR配列を示し、下線付きの文字はCDR配列を示している。
【0114】
抗体mAb-2401、mAb-3601、mAb-5101およびmAb-9001のCDR領域のアミノ酸配列を表2に示した。
【表2】
【0115】
(実施例3.抗ヒトAベータハイブリドーマモノクローナル抗体のヒト化)
カノニカル構造(canonical structure)は、マウス抗体の軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列に従って決定された。同じ構造を有するヒト生殖細胞系列配列の中で、マウスの非CDR領域(フレームワーク領域)に最も類似した配列が、ヒト化のためのテンプレートとして選択された。次に、マウス抗体のCDR領域を、選択されたヒト化のためのテンプレートに移植して、ヒトのCDR領域を置換した。必要に応じて、一部のFR領域配列で復帰突然変異または点突然変異が行われた。次に、可変領域をヒト定常領域(ヒトIgG1定常領域など)と組み合わせて、ヒト化抗Aベータ抗体を作製した。
【0116】
1.mAb-2401のヒト化
mAb-2401抗体重鎖のヒト化のためのテンプレートは、IGHV1-24*01およびhjh6.3であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV1-24からFR1、FR2およびFR3領域が選択され、hjh6.3のJH6領域がFR4領域として選択された。軽鎖のためのテンプレートはIGKV1-27*01およびhjk4.1であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV1-27からFR1、FR2およびFR3が選択され、hjk4.1のJK4領域がFR4領域として選択された。
【0117】
ヒト生殖細胞系列(IGHV1-24*01)重鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:28)に示した:
【化4】
【0118】
ヒト生殖細胞系列(IGKV1-27*01)軽鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:29)に示した:
【化5】
【0119】
ヒト化重鎖および軽鎖の可変領域は以下のとおりであった:
HAB-2401の移植されたVH(配列番号:66):
【化6】
HAB-2401の移植されたVL(配列番号:67):
【化7】
【0120】
選択されたヒト化テンプレートにマウス抗体CDR領域を移植して、ヒトテンプレートのCDR領域を置換し、重鎖の1位、72位および98位(天然配列ナンバーリング、Kabatナンバーリングによるとそれぞれ1位、71位および94位に対応する)で復帰突然変異を行ってから(Q1E、E72AおよびT98R;KabatナンバーリングによるとQ1E、E71A、T94R)、ヒトIgG1の定常領域と組み合わせてヒト化抗体HAB-2401を作製した。
【0121】
HAB-2401の重鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:30)に示した:
【化8】
【0122】
HAB-2401の軽鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:31)に示した:
【化9-1】
【化9-2】
【0123】
注: 上記のHAB-2401の軽鎖および重鎖アミノ酸配列において、イタリック体の文字はFR配列を示し、下線付きの文字はCDR配列を示し、二重下線付きの文字は定常領域配列を示している。
【0124】
2.mAb-3601のヒト化
mAb-3601抗体重鎖のヒト化のためのテンプレートは、IGHV3-30*01およびhjh6.3であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV3-30からFR1、FR2およびFR3領域が選択され、hjh6.3のJH6領域がFR4領域として選択された。軽鎖のためのテンプレートはIGKV1-39*01/hjk4.1であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV1-39からFR1、FR2およびFR3が選択され、hjk4.1のJK4領域がFR4領域として選択された。
【0125】
ヒト生殖細胞系列(IGHV3-30*01)重鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:32)に示した:
【化10】
【0126】
ヒト生殖細胞系列(IGKV1-39*01)軽鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:33)に示した:
【化11】
【0127】
ヒト化重鎖および軽鎖の可変領域は以下のとおりであった:
HAB-3601の移植されたVH(配列番号:68):
【化12】

HAB-3601の移植されたVL(配列番号:69):
【化13】
【0128】
選択されたヒト化テンプレートにマウス抗体CDR領域を移植して、テンプレートのヒトCDR領域を置換し、重鎖の28位および86位(天然配列ナンバーリング、Kabatナンバーリングによるとそれぞれ28位および82B位に対応する)で復帰突然変異を行い(T28AおよびS86T;KabatナンバーリングによるとT28AおよびS82B T)、潜在的なアスパラギン酸の異性化を排除するために重鎖の58位(天然配列ナンバーリング)で点突然変異を行ってから(D58N)、ヒトIgG1の定常領域と組み合わせてヒト化抗体HAB-3601を作製した。
【0129】
HAB-3601の重鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:34)に示した:
【化14-1】

【化14-2】
【0130】
HAB-3601の軽鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:35)に示した:
【化15】
【0131】
注: 上記のHAB-3601の軽鎖および重鎖アミノ酸配列において、イタリック体の文字はFR配列を示し、下線付きの文字はCDR配列を示し、二重下線付きの文字は定常領域配列を示している。
【0132】
3.mAb-5101のヒト化
mAb-5101抗体重鎖のヒト化のためのテンプレートは、IGHV2-70D*04およびhjh6.1であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV2-70DからFR1、FR2およびFR3が選択され、hjh6.1のJH6領域がFR4領域として選択された。軽鎖のためのテンプレートはIGKV2-40*01およびhjk4.1であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV2-40からFR1、FR2およびFR3が選択され、hjk4.1のJK4領域がFR4領域として選択された。
【0133】
ヒト生殖細胞系列(IGHV2-70D*04)重鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:36)に示した:
【化16】
【0134】
ヒト生殖細胞系列(IGKV2-40*01)軽鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:37)に示した:
【化17】
【0135】
ヒト化可変領域は以下のとおりであった:
HAB-5101の移植されたVH(配列番号:70):
【化18】

HAB-5101の移植されたVL(配列番号:71):
【化19】
【0136】
選択されたヒト化テンプレートにマウス抗体CDR領域を移植して、テンプレートのヒトCDR領域を置換し、軽鎖の2位および50位(天然配列ナンバーリング、Kabatナンバーリングによるとそれぞれ2位および45位に対応する)で復帰突然変異を行い(I2VおよびQ50K;KabatナンバーリングによるとI2VおよびQ45K)、潜在的なジスルフィド結合のミスマッチを排除するために軽鎖の94位(天然配列ナンバーリング)で点突然変異を行ってから(C94S)、ヒトIgG1の定常領域と組み合わせてヒト化抗体HAB-5101を作製した。
【0137】
HAB-5101の重鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:38)に示した:
【化20-1】

【化20-2】
【0138】
HAB-5101の軽鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:39)に示した:
【化21】
【0139】
注: 上記のHAB-5101の軽鎖および重鎖アミノ酸配列において、イタリック体の文字はFR配列を示し、下線付きの文字はCDR配列を示し、二重下線付きの文字は定常領域配列を示している。
【0140】
4.mAb-9001のヒト化
mAb-9001抗体重鎖のヒト化のためのテンプレートは、IGHV2-70D*04およびhjh6.1であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列重鎖IGHV2-70からFR1、FR2およびFR3が選択され、hjh6.1のJH6領域がFR4領域として選択された。軽鎖のためのテンプレートはIGKV2-40*01およびhjk2.1であった。すなわち、ヒト生殖細胞系列軽鎖IGKV2-40からFR1、FR2およびFR3が選択され、hjk2.1のJK2領域がFR4領域として選択された。
【0141】
ヒト生殖細胞系列(IGHV2-70D*04)重鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:36)に示した:
【化22】
【0142】
ヒト生殖細胞系列(IGKV2-40*01)軽鎖テンプレートのアミノ酸配列を以下の(配列番号:37)に示した:
【化23】
【0143】
ヒト化可変領域は以下のとおりであった:
HAB-9001の移植されたVH(配列番号:72):
【化24】

HAB-9001の移植されたVL(配列番号:73):
【化25】
【0144】
選択されたヒト化テンプレートにマウス抗体CDR領域を移植して、テンプレートのヒトCDR領域を置換し、軽鎖の2位(天然配列ナンバーリング、Kabatナンバーリングによると2位に対応する)で復帰突然変異を行い(I2V)、潜在的なアスパラギン酸の異性化を排除するために重鎖の58位(天然配列ナンバーリング)で点突然変異を行ってから(D58N)、ヒトIgG1の定常領域と組み合わせてヒト化抗体HAB-9001を作製した。
【0145】
HAB-9001の重鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:40)に示した:
【化26】
【0146】
HAB-9001の軽鎖アミノ酸配列を以下の(配列番号:41)に示した:
【化27】
【0147】
注: 上記のHAB-9001の軽鎖および重鎖アミノ酸配列において、イタリック体の文字はFR配列を示し、下線付きの文字はCDR配列を示し、二重下線付きの文字は定常領域配列を示している。
【0148】
さらに、抗体HAB-2401、HAB-3601、HAB-5101およびHAB-9001の定常領域配列について、重鎖定常領域のアミノ酸配列を配列番号:42に示し、軽鎖定常領域のアミノ酸配列を配列番号:43に示し、可変領域のアミノ酸配列と全長のアミノ酸配列を次の表に示した:
【表3】
【0149】
(実施例4.ヒト化抗体の調製)
1.ヒト化抗体の分子クローニング
設計されたヒト化抗体配列に対してコドン最適化を実施して、ヒトコドン優先コーディング遺伝子配列を得た。各抗体のVH/VK遺伝子フラグメントは、設計されたPCRプライマーを用いて構築され、その後、相同組換えによって(シグナルペプチドと定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを含む)発現ベクターpHrに導入され、全長のヒト化抗体を発現するプラスミドVH-CH1-FC-pHr/VK-CL-pHrが構築された。正しいクローンを配列決定によって確認し、HAB-2401については、重鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:54に示し、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:55に示した;HAB-3601については、重鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:56に示し、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:57に示した;HAB-5101については、重鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:58に示し、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:59に示した;および、HAB-9001については、重鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:60に示し、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を配列番号:61に示した。
【0150】
2.ヒト化抗体の発現および精製
HEK293E細胞に、抗体の重鎖および軽鎖をそれぞれ1:1.5の比率で発現するプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの6日後、発現上清を回収し、高速遠心分離して不純物を除去し、プロテインAカラムで精製した。A280の読み取り値がベースラインに低下するまで、カラムをPBSで洗浄した。標的タンパク質を100mM酢酸、pH3.0で溶出し、1M Tris-HCl、pH8.0で中和した。溶出したサンプルを適切に濃縮してから、PBSで事前に平衡化したゲルクロマトグラフィーSuperdex200(GE)でさらに精製して、凝集体を除去した。モノマーのピークを収集し、使用のために分注した。
【0151】
本開示の性能および効果は、以下の生化学的試験またはin vivo薬理学的試験によって検証された:
【0152】
(試験例1.BIAcoreアッセイによって検出されたAベータ抗体の親和性)
Aβ1-42フィブリルに対する抗体の親和性は、アミノカップリングの方法によって検出された。Aβ1-42フィブリルをCM5バイオセンシングチップ(200 RU)に結合させた後、抗体分子を該チップの表面に流した。反応シグナルはBiacore T200装置でリアルタイムに検出され、結合および解離曲線を生成した。各実験サイクルの終わりに、解離が完了した後、バイオセンサーチップを洗浄し、10mMグリシン-HCl(pH1.5)で再生した。陽性抗体であるアデュカヌマブは、WHOが発表したアデュカヌマブの配列情報に従って調製し(WHO医薬品情報、Vol.28、No.3、2014年を参照)、その調製方法を本開示の実施例4に記載した。
【0153】
Aβ1-42モノマーに対する抗体の親和性は、チップ上に抗体を捕捉することによって検出された。IgGをプロテインAバイオセンシングチップ上に親和性捕捉し、次に抗原Aβ1-42モノマーを該チップの表面に流した。反応シグナルはBiacore T200装置でリアルタイムに検出され、結合および解離曲線を生成した。各実験サイクルの終わりに、解離が完了した後、バイオセンサーチップを洗浄し、10mMグリシン-HCl(pH1.5)で再生した。
【0154】
実験結果を表4に示した。HAB-2401、HAB-5101、HAB-3601およびHAB-9001は、10-8~10-10Mの範囲のAβ1-42フィブリルに対する親和性を有し、そのうちHAB-9001が最も強い親和性を有し、アデュカヌマブのそれより2桁強い。HAB-2401、HAB-5101、HAB-3601およびHAB-9001は、10-7~10-8Mの範囲のAβ1-42モノマーに対する親和性を有し、そのうちHAB-9001が最も強い親和性を有し、アデュカヌマブのそれより2桁強い。4つの試験抗体はすべて、陽性抗体であるアデュカヌマブよりも強い親和性を有する。
【表4】
【0155】
(試験例2.Aβ1-42モノマーのAβ1-42フィブリルへの凝集のブロッキングに対する抗Aベータ抗体の効果)
Aβ1-42モノマーのAβ1-42フィブリルへの凝集の阻害に対する抗Aベータ抗体の効果は、ThTアッセイによって検出された。ThT(チオフラビンT、チオフラビン)は蛍光色素の一種であり、(Aベータ沈着物のような)βシートに富むタンパク質と結合すると、励起波長450nmおよび発光波長482nmでの蛍光シグナルが大幅に増強されるため、通常、Aβフィブリルのin vitro同定に使用される。ThTアッセイの具体的な実験手順を以下に示した。0.5mgのヒトAβ1-42(GenScript、カタログ番号RP10017)を250μlの10mM NaOHに加え、完全に溶解してから、中和のために等量の予冷した2×PBSに加えた。1mg/mlの濃度のAβ1-42モノマー溶液を調製し、ddHOで0.25mg/mlに希釈した。Aβ1-42モノマー(10μl/ウェル、0.25mg/ml)を20μMのThT(sigma、カタログ番号T3516)と混合し、黒色の384ウェルプレート(Corning、カタログ番号4514)に添加し、またAβ1-42モノマーを添加していないウェルをネガティブコントロールとして使用した。次に、段階希釈した抗体(1mg/mlから開始して2倍ずつ段階希釈、10μl/ウェル)を上記の混合物に添加し、37℃で24時間インキュベートした。FlexStation3マイクロプレートリーダー(Molecular devices)を使用して、440nmの励起波長と485nmの発光波長で蛍光シグナルを読み取った。
【0156】
実験結果を図1に示した。HAB-2401、HAB-5101およびHAB-9001はすべて、Aβ1-42モノマーのAβ1-42フィブリルへの凝集を効果的に阻害することができる。一方、HAB-3601とアデュカヌマブは、そのような機能を持たない。
【0157】
(試験例3.ラット初代ニューロンに対する抗Aベータ抗体の保護)
在胎週数16~18日のSD胎児ラットから大脳皮質を解剖し、トリプシン(Gibco、カタログ番号25200-072)で消化し、ピペッティングおよびろ過して単細胞懸濁液にし、遠心分離して、カウントした。10%FBS(Gibco、カタログ番号10099-141)を含むDMEM(Gibco、カタログ番号10564-029)で細胞を1ウェルあたり1E4(1×10/ウェル)に希釈し、PDL(ポリ-D-リジン、ポリリジン)(Sigma、カタログ番号P0899)でコーティングした96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903)に播種した。インキュベーター(37℃、5%CO)で一晩インキュベートした後、培地をNeurobasal(Gibco、カタログ番号21103049)+2%B27(Gibco、カタログ番号17504044)と交換し、培地の半分を3~4日ごとに交換した。8日目に、10μMのAβ1-42フィブリル(GL biochem、カタログ番号53819)およびさまざまな濃度の試験抗体を添加した。3日間インキュベートした後、30μl/ウェルのCell Titer-Glo(Promega、カタログ番号G7571)を添加し、化学発光法を用いてマイクロプレートリーダー(PerkinElmer、Vector3)でプレートを読み取った。
【0158】
実験結果を図2に示した。HAB-2401、HAB-5101、HAB-3601、HAB-9001および陽性抗体のアデュカヌマブは、初代神経細胞をAβフィブリルの毒性から保護することができ、10~100μg/mlの濃度範囲で用量依存的な効果が観察された。
【0159】
(試験例4.抗Aベータ抗体はBV2細胞によるAβフィブリルの食作用を促進する)
対数増殖期のBV2細胞(FuDan IBS Cell Center、FH0366)を採取し、トリプシンで消化し、800rpmで5分間遠心分離した。24ウェルプレートにおける細胞密度をRPMI1640(10%FBSを含む)で1.2×10細胞/ウェル/500μlに調整し、単層の細胞が形成されるまで十分に振とうし、37℃、5%COのインキュベーターに一晩入れた。16時間後、100μlの段階希釈Aベータ抗体またはネガティブコントロール(無関係な標的に対する抗トロンビン抗体をネガティブコントロールとして使用し、該抗トロンビン抗体はWO2017133673A1に記載されているH1601-008の調製方法に従って製造した)を(100μlのF-12K基本培地で希釈した)10μMの蛍光標識Aベータフィブリルと完全に混合し、37℃で1時間インキュベートし、500μlの培地を除去した24ウェルプレートに加え、37℃、5%COで1時間インキュベートした。上清を除去し、細胞を4℃に予冷したPBSで3回穏やかに洗浄した。次に、0.25%の予冷したトリプシン-EDTA(1×)を200μl/ウェルで添加し、4℃で20分間置いた。10%FBSを含むF-12K培地でトリプシンを中和し、遠心分離した後、細胞を予冷したPBSで3回洗浄し、100μlの細胞を収集してフローサイトメーターにアプライし、FITC蛍光強度を読み取った。
【0160】
実験結果を図3に示した。HAB-2401とHAB-3601はどちらも、陽性抗体のアデュカヌマブと同様に、BV2細胞によるAβフィブリルの食作用を促進することができる。0.03~0.3μg/mlの濃度範囲で用量依存的な効果が観察された。
【0161】
(試験例5.ラット初代ミクログリアによるAβフィブリルの食作用に対する抗Aベータ抗体の効果)
大脳皮質を新生児SDラットから解剖し、粉砕し、ろ過して細胞懸濁液を得た。20%FBSを含有するDMEM(Gibco、カタログ番号10099-141)に細胞を再懸濁し、PDL(Sigma、カタログ番号P0899)でプレコートされたT75培養フラスコ(Corning、カタログ番号3473)に移し、インキュベーターに入れた(37℃、5%CO)。培地は3日に1回交換した。8日目に、培養フラスコをシェーカー上に置き、200rpmで1時間振とうした。上清を収集し、遠心分離し、カウントし、10%FBSを含有するDMEM/F12(GE、カタログ番号SH30023.01)培地で5E4/ウェル(5×10/ウェル)に希釈し、24ウェルプレートにプレーティングした。6時間後、培地を無血清DMEM/F12培地に交換し、一晩インキュベートした。9日目に、さまざまな濃度の抗体またはネガティブコントロール(無関係な標的に対する抗トロンビン抗体をネガティブコントロールとして使用し、該抗トロンビン抗体は、WO2017133673A1に記載されているH1601-008の調製方法に従って産生された)をそれぞれ10μMのFITC標識(Thermo、カタログ番号A30006)Aベータ1-42(GL biochem、カタログ番号53819)と混合し、37℃で30分間インキュベートし、余分な抗体を洗い流すために遠心分離した。抗体とAベータの混合物を細胞に添加し、37℃で30分間インキュベートした。細胞をPBS(Hyclone、カタログ番号SH30256.01)で2回洗浄し、トリプシン(Gibco、カタログ番号25200-072)を加え、細胞を消化するために4℃の冷蔵庫に10分間入れた。その後、血清を加えて反応を停止し、遠心分離により上清を除去した後、細胞を回収し、予冷しておいたPBSを加え、遠心分離により上清を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。FITC蛍光強度をフローサイトメーター(BD、Verse)で読み取った。
【0162】
実験結果を図4に示した。ラット初代ミクログリアによる食作用の実験では、HAB-2401およびHAB-3601は、陽性抗体のアデュカヌマブと同様に、初代ミクログリアによるAβフィブリルの食作用を促進することができる。0.03~0.3μg/mlの濃度範囲で用量依存的な効果が観察された。
【0163】
(試験例6.抗Aβ抗体のin vivo薬理試験)
5×FAD(5つの家族性AD突然変異((Five Familial AD mutations))アルツハイマー病マウスモデルを使用して、抗Aβ抗体のinvivoでの有効性を評価した。APP遺伝子の3つの突然変異(すなわち、スウェーデン突然変異(K670N、M671L)、フロリダ突然変異(I716V)およびロンドン突然変異(V717I))とPS1遺伝子の2つの突然変異(すなわち、M146LおよびL286V)とを含む、APPおよびPS1遺伝子の5つの家族性遺伝子突然変異)を5×FADマウスで過剰発現させた。したがって、野生型マウス(WT)と比較して、5×FADマウスは認知機能および記憶に明らかな障害を示し、脳組織における有意なAβ斑沈着を示した。この試験例は、巣作り能力および空間記憶(モリス水迷路における空間記憶)を含むマウスの行動の改善を試験することによって、ならびに脳組織におけるAβ斑の含有量の変化を試験することによって、マウスの認知能力を改善し、Aβ斑沈着を減少させる試験抗体の効率を評価するために設計された。
【0164】
5×FADマウスは、ShanghaiChemPartner株式会社から提供された。生後3か月のマウスを選択し、23±2℃の室温、12/12時間の明暗サイクルで、餌と水を自由に摂取させた。試験抗体はすべてヒト-マウスキメラ型であった。すなわち、抗体の長期投与によって引き起こされるADA(抗薬物抗体)を回避するために、重鎖および軽鎖の定常領域をマウスの定常領域に置換した。6群(1群あたりn=15)が実験に含まれ、試験対象の抗体の4つの群、ポジティブコントロールとしてのアデュカヌマブの1つの群、ネガティブコントロールとしてのPBSの1つの群が含まれていた。HAB-2401およびHAB-3601はmIgG1キメラ型であったのに対し、HAB-5101、HAB-9001およびアデュカヌマブはmIgG2aキメラ型であり、それらは、それぞれ、HAB-2401-Ch、HAB-3601-Ch、HAB-5101-Ch、HAB-9001-Ch、およびアデュカヌマブ-Chと呼ばれた。HAB-2401-ChおよびHAB-3601-Chは、HAB-2401およびHAB-3601の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、それぞれ、mIgG1の重鎖定常領域(mIgG1の重鎖定常領域のアミノ酸は配列番号:62に示されている)およびmIgG1の軽鎖定常領域(mIgG1の軽鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号:63に示されている)に融合することによって生成された;HAB-5101-Ch、HAB-9001-Chおよびアデュカヌマブ-Chは、HAB-5101、HAB-9001およびアデュカヌマブの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、それぞれ、mIgG2aの重鎖定常領域(mIgG2aの重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号:64に示されている)およびmIgG2aの軽鎖定常領域(mIgG2aの軽鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号:65に示されている)に融合することによって生成された。抗体の調製方法は、本開示の実施例4に記載されている。抗体は週1回、15mpk(mg/kg、体重1kgあたりのミリグラム)で腹腔内投与され、投与は合計12週間、13:00~16:00に行われた。
【0165】
行動試験(試験例8)の後に、すべての5×FADマウスに対応する抗体を追加注射した。マウスを、各群に5匹のマウスで3つのバッチに分けた。抗体治療後のさまざまな時点でBBBに浸透する抗体の含有量を定量的に検出するために、追加投与の24時間後、72時間後および7日後にサンプルを採取した。Aβ沈着(試験例9)およびサイトカイン(試験例10)の検出に関して、同じ抗体の群について、追加投与後のさまざまな時点で採取されたすべてのサンプルは、データ処理のために一緒にプールされた。
【0166】
(試験例7.マウスの巣作り能力の試験)
巣作りはマウスの本能であり、通常、マウスの社会的行動を測定するための実験的方法として使用される。Tg2576、APPswe/PS1、3×Tg-AD、5×FAD(Transl Psychiatry. 2015年5月5日;5:e562)などのAPPを過剰発現するトランスジェニックマウスは、さまざまな程度で巣作りの能力に障害を示したことが報告されている。この試験例は、複数のパラメーターを用いてマウスの巣作り能力をスコアリングすることにより、5×FADトランスジェニックマウスの社会的行動の改善に対する試験抗体の効果を評価する。
【0167】
マウスの巣作りの具体的な手順は以下のとおりであった。実験初日の16:00頃に、各ケージに圧縮綿を入れ、各マウスを別々のケージに入れた。ケージに入れる前に圧縮綿を計量し(重量1)、繁殖環境は変わらなかった。翌朝10時にマウスを取り出し、元のケージに戻した。巣の形および綿片の位置は変更されなかった。まず、デジタルカメラを使ってマウスが作った巣の写真を撮った(巣の本当の形および高さを反映した正面図と側面図)。細かく引き裂かれていない綿を拾い上げて計量した(重量2)。残った綿の割合を計算した。写真に基づいて、巣の形、巣の高さ、および綿が引き裂かれた程度に応じて、各動物についての平均スコアが、スコアリング基準に従って、並行して提供された3つの独立したスコアから得られ、ここで該スコアは特定の状況に基づいて適切に調整され得る。スコアリング基準を表5に示した。
【表5】
【0168】
Photoshop CS4ソフトウェアパッケージのなげなわツールを使用して各動物の写真を分析し、巣の面積比(散らばった綿片の総面積に対する巣の面積の割合)を計算した。3つのパラメーターの総合スコア(3次スコア)は、次の式に従って計算された:
【0169】
3つのパラメーターの総合スコア=残った綿の割合×巣の面積の割合×平均スコア
【0170】
試験結果を図6図7に示した。ビヒクル(溶媒ブランクコントロール)とWT(野生型)の間にはいくつかの違いがあり、これは試験の実験ウィンドウを反映している。アデュカヌマブ-Ch、HAB-2401-ChおよびHAB-9001-Ch群は、ビヒクル群と比較していくらかの改善傾向を示した。
【0171】
(試験例8.水迷路行動試験(モリス水迷路))
水迷路実験は、げっ歯類の空間学習と記憶能力を評価するために神経生物学の分野で一般的に使用される行動試験である。そのような実験では、げっ歯類がトレーニングによってプールの水の下に隠れた脱出プラットフォームを見つけて覚えるように導くために、スイミングプールの周りの空間的な手がかりが使用された。
【0172】
モリス水迷路は、直径120cm、高さ50cmの白色、無毒、無臭のプラスチック製の円形プールと透明なパースペックスプラットフォームからなっていた。プラットフォームの高さは31cmで、プラットフォームの上面の直径は8.5cmであった。水面がプラットフォームから1cm上になるまでプールを水で満たした。プールは、NE、SE、SWおよびNWの4つの象限に均等に分割され、N、NE、E、SE、S、SW、WおよびNWが、円形プールの外側の円に均等に分割された8つのポイントでマークされた。プラットフォームはSW象限の中心に位置し、円の中心まで30cmの距離、プールの壁まで30cmの距離であった(水迷路の概略図を図8に示した)。インストールされたカメラデバイスを、コンピューターとモニターに接続した。円形プールは明るい実験室内に置かれた。明らかな視覚的手がかりが、NE、SE、SWおよびNWマーカーで装飾された。実験前に、適量の白いプラスチック粒子を水にまき散らして水面を均一に覆い、水温を23.0±2.0℃に保った。水は5日ごとに交換された。
【0173】
次のモジュールが水迷路実験に含まれていた:フラグ訓練、隠れたプラットフォーム、およびプローブ試験。
【0174】
8.1.フラグ訓練
動物をガイドするために、水面上のフラグがプラットフォームに置かれた。各実験動物をNポイントで水に入れ(プールの壁に向けて)、60秒間のビデオの追跡および記録を同時に開始した。動物が60秒以内にプラットフォームに乗ることができなかった場合は、動物は手動でプラットフォームにガイドされ、迷路から外される前に20秒間留まることを許される;動物が60秒以内にプラットフォームを見つけたが、プラットフォームに20秒未満留まった場合は、60秒の訓練が終了した後、動物は迷路から外される前に20秒間プラットフォームに強制的に留まらされる;動物が60秒以内にプラットフォームを見つけ、20秒間プラットフォームに留まった場合、動物は迷路から外される。訓練後、各動物をタオルで乾かし、ケージに戻した。すべての動物を訓練した後、同じ訓練の新しいラウンドを再開した。このようにして、各動物は1日で4回訓練された。
【0175】
8.2.隠れたプラットフォーム
プラットフォームは水面下約1cmに隠れていた。動物は1日4回、合計12日間訓練された。マウスを水中に入れた場所を図8に示した。各訓練中、動物はプールの壁に面して配置され、ビデオの追跡および記録が同時に開始された。各訓練は60秒間続いた。動物が60秒以内にプラットフォームに見つけることができなかった場合は、動物は手動でプラットフォームにガイドされ、迷路から外される前に15秒間留まることを許される;動物が60秒以内にプラットフォームを見つけたが、プラットフォームに15秒未満留まった場合は、60秒の訓練が終了した後、動物は迷路から外される前に15秒間プラットフォームに強制的に留まらされる;動物が60秒以内にプラットフォームを見つけ、15秒間プラットフォームに留まった場合、動物は迷路から外される。訓練後、各動物をタオルで乾かし、ケージに戻した。すべての動物を訓練した後、動物を水中に入れる場所を変えて、訓練の新しいラウンドを再開した。
【0176】
8.3.プローブ試験
12日目の最後の訓練から24時間後、プローブ試験のために水中のプラットフォームを除去した。実験動物をNEポイントで水に入れ(プールの壁に向けて)、ビデオの追跡および記録を同時に開始した。60秒後、追跡は終了した。動物をプールから取り出し、タオルで乾かし、ケージに戻した。動物の軌跡は、Noldus Ethovisionソフトウェアで分析された。
【0177】
8.4.水迷路実験の結果
隠れたプラットフォーム訓練の学習曲線を図9に示した。結果は、5×FAD Tgマウスビヒクル(溶媒ブランクコントロール)群とWT群との間で、6日目に有意差が観察され、隠れたプラットフォーム訓練の10日目と11日目に非常に有意な差が観察されたことを示し、そのような差は安定する傾向があり、行動試験において5×FADトランスジェニックマウスと野生型マウスとの間で空間記憶能力に差があることを示している。このような差は、試験薬の試験の基礎である;1日目から、ポジティブコントロール薬アデュカヌマブ-Chの群は常にビヒクル群よりもプラットフォームまでの潜時が短く、11日目に有意差が観察され、アデュカヌマブ-Chがこの実験で優れた有効性を示したことを示している;アデュカヌマブ-Ch群と同様に、HAB-2401-Ch、HAB-5101-ChおよびHAB-9001-Chは、11日目と12日目に有意差を示し、アデュカヌマブ-Chと同様に、これら3つの薬剤がマウスの空間記憶と認知能力を大幅に改善できることを示している。
【0178】
プローブ試験では、プラットフォームまでの潜時、プラットフォームゾーンまでの潜時、プラットフォームまたはプラットフォームゾーンを通過した回数、プラットフォーム上での継続時間とプラットフォームゾーン上での継続時間、およびACIインデックスなど、いくつかの実験パラメーターを評価した。
【0179】
プラットフォームまでの潜時の結果を図10Aに示した。WTと実験ウィンドウ(experimental window)であるビヒクル群の間には一定の差があった。(WT群について、プローブ試験におけるプラットフォームまでの潜時は、フラグ訓練におけるそれよりも長かった。これは、プローブ試験では1回の試験しか実行されなかったのに対し、フラグ訓練では4回の試験が実行されたため、実験のばらつきが原因である可能性がある)。HAB-2401-Ch、HAB-5101-ChおよびHAB-9001-Chの結果は、アデュカヌマブ-Ch群の結果と同等であり、ビヒクル群よりも短い期間を示した。
【0180】
プラットフォームゾーンまでの潜時の結果を図10Bに示した。WT群は、ビヒクル群と比較した場合、約3倍の有意差を示した。アデュカヌマブ-Ch群はビヒクル群と比較して有意差を示したが、アデュカヌマブ-Ch群の結果はWT群の結果に近く、陽性分子が5×FADマウスの記憶を有意に改善できることを示している。ビヒクル群と比較した場合、4つの試験抗体すべてが有意差を示し、その中でHAB-9001-Chはアデュカヌマブ-Chよりもさらに優れた有効性を示した。
【0181】
プラットフォームまたはプラットフォームゾーンを通過した回数の実験結果を図10Cおよび図10Dに示し、プラットフォーム上での継続時間およびプラットフォームゾーン上での継続時間の実験結果を図10Eおよび図10Fに示し、ACIインデックスの実験結果を図10Gに示した。プローブテストでは、プラットフォームが除去されており、プラットフォームのマウスの記憶は理論的にこれらのパラメーターと正の相関がある。これらの5つのパラメーターについては、WT群とビヒクル群の間に一定の差があり、実験結果の実験ウィンドウを示している。ビヒクル群と比較して、アデュカヌマブ-Chは改善傾向を示した。ビヒクル群と比較して、HAB-2401-Ch、HAB-5101-ChおよびHAB-9001-Chはすべて異なる程度の改善を示し、HAB-9001-Chは最高のパフォーマンスを示した。
【0182】
要約すると、プローブ試験では、ビヒクル群と比較して、HAB-2401-Ch、HAB-5101-ChおよびHAB-9001-Chが、プラットフォームまでの潜時、プラットフォームゾーンまでの潜時、プラットフォーム上での継続時間、プラットフォームゾーン上での継続時間、プラットフォームを通過した回数、プラットフォームゾーンを通過した回数、およびACIインデックスにおいて、さまざまな程度の改善を示し、これら3つの試験抗体が5×FADアルツハイマーマウスモデルの空間記憶と認知能力を大幅に改善できることを示唆している。
【0183】
(試験例9.Aβ沈着の検出)
すべてのサンプルは、行動試験(試験例8)に使用したマウスから採取された。各マウスをPBS(pH7.4)で灌流させ、脳を採取した。左半球を直ちに4%PFAに浸し、72時間固定し、右半球を氷上で解剖して前頭皮質と海馬を収集し、別々に秤量し、液体窒素で急速凍結し、その後のサンプル処理のために-80℃の冷蔵庫に保管した。
【0184】
右半球をホモジナイズする具体的な手順は次のとおりある:試験組織の重さを量り、ホモジナイズチューブに移し、10倍量のジエチルアミンライセート(プロテアーゼ阻害剤を含有する50mM NaCl、0.2%DEA)を添加した。すなわち、10mgの組織を100μlの溶解溶液に加え、ホモジナイザーでホモジナイズし、氷水中で15~20秒間超音波処理した。ホモジネートを遠心分離管に移し、100,000×g、4℃で30分間遠心分離した。得られた可溶性Aβを含む上清を収集し、-80℃で保存した。10倍量の塩酸グアニジン溶解溶液(PBS中の5M GuHCl)を遠心分離管に加え、ペレットを再懸濁し、氷水中で15~20秒間超音波処理した。サンプルを100,000×g、4℃で30分間遠心分離した。得られた不溶性Aβを含む上清を収集し、-80℃で保存した。
【0185】
脳組織ホモジネート中のAβ沈着はELISA法により検出された(ヒトアミロイドベータ(aa 1-40)Quantikine ELISAキット:R&D systems、DAB140B;ヒトアミロイドベータ(aa 1-42)Quantikine ELISAキット:R&D systems、DAB142)。まず、脳ホモジネート中の不溶性成分(つまり、試験対象のサンプル)とスタンダードを希釈液で希釈した;プレコートプレートを洗浄バッファーで洗浄した;希釈したスタンダードとサンプルを添加した;プレートを密封し、4℃で2時間インキュベートした;プレートを洗浄バッファーで3~4回洗浄した;予冷しておいた二次抗体を添加した;プレートを密封し、4℃で2時間インキュベートした;プレートを洗浄バッファーで3~4回洗浄した;基質発色溶液を加え、室温で30分間インキュベートした;停止溶液を加え、OD450をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0186】
ELISA試験の結果を図11A-11Dに示した。ビヒクル(溶媒ブランクコントロール)群はWT群と比較して有意なAβ1-40およびAβ1-42沈着を示し、Aβ沈着物が5×FADマウス脳組織において過剰発現したことを示している。ビヒクル群と比較して、Aβ1-40およびAβ1-42が減少する傾向がアデュカヌマブ-Chで観察された。試験した4つの抗体の中で、HAB-3601-Chが最高のパフォーマンスを示し、ビヒクルと比較して不溶性Aβ1-40(海馬不溶性Aβ1-40)および不溶性Aβ1-42(海馬不溶性Aβ1-42)が減少する傾向を示した。
【0187】
左半球組織の免疫組織化学的染色の手順は以下のとおりであった。単離された脳の脱水:脳を4%PFAで72時間固定し、次に脱水のために30%ショ糖溶液に入れ、4℃の冷蔵庫に一晩入れ、この脱水手順を1回繰り返した;組織の包埋:イソペンタンをドライアイスに数分間入れて、イソペンタン中の液体を-70℃に到達させた;脳組織を吸い取り紙で乾燥させ、余分な部分を取り除いた後、イソペンタンに入れて数秒間凍結させてから、脳組織をイソペンタンから取り出し、乾燥させ、OTC(包埋剤)を用いて包埋ボックスに包埋し、次に、包埋ボックスをドライアイス上に置いて、OTCを固化した。包埋された脳組織を-80℃の冷蔵庫に保存した;セクショニング:脳組織をクライオスタット中で矢状断面にスライスあたり20μmで切断した;内因性ペルオキシダーゼの不活化:脳スライスをPBSで3回、各回5分間すすぎ、0.3%H(PBSで調製)とともに10分間インキュベートした;透過処理:脳スライスをPBSで3回、各回5分間すすぎ、TBST(0.25%Triton X-100を含むTBS)で3回、各回5分間インキュベートした;ブロッキング:PBS中の0.3%Triton X-100および5%BSAと1時間インキュベートした;一次抗体とのインキュベーション:一次抗体3D6をTBST中の2%BSAで10μg/mlの作業濃度に希釈し、脳スライスを該一次抗体の作業溶液に入れ、4℃で一晩インキュベートした;二次抗体とのインキュベーション:脳スライスをTBSTで3回、各回5分間すすぎ、2%BSAを含むTBSTで二次抗体を希釈して、5μg/mlの作業濃度を得、脳スライスを該二次抗体の作業溶液中で1時間インキュベートした;発色:脳スライスをTBSTで3回、各回5分間すすぎ、暗所で5分間発色溶液に入れ、純水に2回浸して発色反応を停止した;マウント:脳スライスをPBSに出し入れし、乾燥させ、純水に浸して塩を除去し、乾燥させ、段階濃度のエタノール(75%、95%、無水エタノール)で固定し、樹脂でマウントし、乾燥させた;スキャンと定量分析:スライスをデジタルスライススキャナー(Hamamatsu Nanozoomer S210)でスキャンして、スライスのスキャン画像を生成した。各脳スライス画像について、皮質および海馬の領域が最初にマウスの脳座標に従って示され、次にAβ陽性シグナル領域がBIOTOPIX(商標)分析システムソフトウェアによって示された。最後に、陽性シグナルの比率が、それぞれ皮質と海馬について計算された。すなわち、皮質におけるAβ陽性シグナルの比率=皮質におけるAβ陽性シグナルの面積/皮質の総面積;海馬におけるAβ陽性シグナルの比率=海馬におけるAβ陽性シグナルの面積/海馬の総面積。
【0188】
IHC検出の実験結果を図12図13に示した。野生型(WT)群と比較して、ビヒクル群はAβ1-40およびAβ1-42の明らかな沈着を示し、これはELISAアッセイと一致している。ビヒクル群と比較して、HAB-3601-Ch、HAB-9001-Chおよびアデュカヌマブ-ChはAβ沈着を大幅に減らすことができ、HAB-3601-ChおよびHAB-9001-Chが、アデュカヌマブ-Chと同様にAβ沈着を大幅に減らすことができることを示唆している。
【0189】
(試験例10.脳組織におけるサイトカイン放出に対する抗体の効果)
この試験例で使用したサンプルは、試験例9の脳ホモジネートからの可溶性成分であり、使用した検出方法は、高感度エレクトロケミルミネッセンスアナライザーMSD(メソスケールディスカバリー)であった。具体的な実験手順は、製品マニュアル(U-PLEX Biomarker Group(マウス)Multiplexアッセイキット:MSD、N05235A-1)に記載されている。簡単に説明すると、各サイトカインについてのビオチン化捕捉抗体をU-PLEXの各リンカーに結合させ、室温で30分間反応させた後、反応を停止させた;調製したU-PLEX結合抗体溶液を混合してU-PLEXプレートにコーティングし、室温で振とうしながら1時間または4℃で一晩インキュベートした;スタンダードと試験サンプル(即ち、脳組織ホモジネート中の可溶性成分)は、マニュアルに従って希釈された;コーティングされたプレートをPBSTまたは1×MSD洗浄バッファー(1×MSD洗浄試薬)で3回洗浄し、25μlのサンプル希釈液、25μlの希釈したスタンダードおよび試験対象サンプルを添加し、プレートを密封して振とうしながら室温で1時間インキュベートした。コーティングしたプレートをPBSTまたは1×MSD洗浄バッファーで3回洗浄し、50μlの希釈した検出抗体混合物を加え、プレートを密封し、室温で1時間振とうしながらインキュベートした。コーティングされたプレートをPBSTまたは1×MSD洗浄バッファーで3回洗浄し、次に2×Readバッファー試薬を添加した。最後に、プレートをMSD機器で読み取った。
【0190】
実験結果を図14A図14Dおよび図15A図15Fに示した。TNFα、IFN-γ、IL1β、IL2、IL6、IL12p70、IL4、IL10、MCP-1およびKCなどのすべてのサイトカインのレベルは非常に低く、検出方法の下限にほぼ達した。個々のマウス間に明らかな違いがあったので、群間に有意差はなかった。要約すると、4つの試験抗体群はポジティブコントロールのアデュカヌマブと比較して高レベルのサイトカインを示さず、試験抗体が安全であることを示していた。
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