(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】凝集されたエンドウ豆タンパク質を有する食品又は飲料製品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240214BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240214BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20240214BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240214BHJP
A23C 11/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A23L5/00 M
A23L2/00 E
A23L23/00
A23J3/14
A23C11/06
(21)【出願番号】P 2021518719
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081947
(87)【国際公開番号】W WO2020114776
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, クリストフ, ジョセフ, エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】アマグリアニ, ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ランゲレイト, テッサ, マリアンネ
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516439(JP,A)
【文献】特開平03-206850(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23J、A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は飲料製品を製造する方法であって、
エンドウ豆タンパク質を1.0~6重量%の濃度で含む水性原材料組成物を用意する工程と、
前記原材料組成物に、前記エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンを4.0~20mM添加する工程と、
続いて、前記原材料組成物を6.6~7.3のpHにて熱処理して、エンドウ豆タンパク質を含む凝集体を形成する工程であって、前記熱処理は、80℃~125℃の温度で30秒間~20分間、又は125℃を超える温度で3~45秒間実施される、工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記凝集体が、レーザー回折によって測定したときに2~50μmのD[4,3]平均径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原材料組成物が、均質化に供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンドウ豆タンパク質が、エンドウ豆タンパク質分離物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記二価カチオンが、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記二価カチオンが、塩化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、リンゴ酸塩、グリセロリン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、フマル酸塩及びグルコン酸塩からなる群から選択される、アニオンとの塩として提供される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱処理後の前記原材料組成物が、2~35%の総固形分含量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
最終製品中の可溶性タンパク質の含量が、総タンパク質含量に対して80重量%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理された原材料組成物が、凍結乾燥、噴霧乾燥、又はロール乾燥によって粉末に乾燥される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カルシウム又はマグネシウムと、凝集されたエンドウ豆タンパク質と、を含む食品又は飲料製品であって、
前記凝集されたエンドウ豆タンパク質が、レーザー回折によって測定したときに2~50μmのD[4,3]平均径、及び0.1~10の粒度分布スパン(D
v0.9-D
v0.1)/D
v0.5を有する、食品又は飲料製品。
【請求項11】
前記食品又は飲料製品が、液体であり、且つ、エンドウ豆タンパク質を1.0~6重量%の濃度で含む、請求項
10に記載の食品又は飲料製品。
【請求項12】
クリーマーである、請求項10
又は11に記載の食品又は飲料製品。
【請求項13】
レディ・トゥ・ドリンク飲料製品である、請求項10~
12のいずれか一項に記載の食品又は飲料製品。
【請求項14】
調理用ソースである、請求項10
又は11に記載の食品又は飲料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品又は飲料製品を製造する方法に関し、特に、原材料組成物中に凝集された(agglomerated)エンドウ豆タンパク質を形成する方法に関する。本発明はまた、凝集されたエンドウ豆タンパク質を含む食品又は飲料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製品に含まれる合成添加物又は人工添加物について懸念する消費者が増えている。したがって、合成成分又は消費者が合成物として認識し得る成分を使用することなく、食品及び飲料製品に食感及び口当たりを提供する必要がある。優れた味わい及び食感をもたらしながら主要栄養素に関し栄養バランスを示す食品及び飲料製品も必要とされている。
【0003】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、係る先行技術が周知であること、又は当分野で共通の一般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを目的としている。
【0004】
[発明の概要]
本発明の目的は、現況技術を改良し、改善された解決策を提供すること、又は少なくとも、有用な代替物を提供すること、である。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開するものである。
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の濃度でエンドウ豆タンパク質及び二価カチオンを使用し、続いて熱処理することにより、滑らかな口当たりと共に粘度増加を提供する凝集体を生成できることを見出した。凝集体は、最適な感覚特性を提供しながら、製品中の総脂肪含量を低減することを可能にする。加えて、本発明は、追加の安定剤又はハイドロコロイドを使用することなく、食感付与された製品の配合を可能にする。
【0006】
したがって、本発明は、第1の態様では、食品又は飲料製品を製造する方法であって、エンドウ豆タンパク質を1.0~6重量%の濃度で含む水性原材料組成物を用意する工程と、上記原材料組成物に、エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンを4.0~20mM添加する工程と、続いて、原材料組成物を6.6~7.3のpHにて熱処理して、エンドウ豆タンパク質を含む凝集体を形成する工程であって、熱処理は、80℃~125℃の温度で30秒間~20分間、又は125℃を超える温度で3~45秒間実施される工程と、を含む、方法を提供する。
【0007】
第2の態様では、本発明は、凝集されたエンドウ豆タンパク質を含む食品又は飲料製品に関し、この凝集されたエンドウ豆タンパク質は、レーザー回折によって測定したときに2~50μmのD[4,3]平均径を有し、10未満の粒度分布スパン(Dv0.9-Dv0.1)/Dv0.5を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】Ca
2+の量が異なる3.5重量%エンドウ豆タンパク質溶液の熱処理後の写真を示す。
【
図2】熱処理後の3.5重量%エンドウ豆タンパク質溶液の可溶性タンパク質含量(SPC)に対するCa
2+濃度の影響を示すグラフである。
【
図3】熱処理後の3.5重量%エンドウ豆タンパク質溶液の粒度分布に対するCa
2+の影響を、異なる濃度のカルシウムに対する、D[4,3](棒)及びスパン(黒四角)によって表す。
【
図4】3.5重量%エンドウ豆タンパク質溶液に異なる量のカルシウムを添加し、熱処理したときの、結合したCa
2+の量を示す。
【
図5】Ca
2+の量が異なる3.5重量%エンドウ豆タンパク質溶液の熱処理後の共焦点レーザー走査型顕微鏡写真を示す。タンパク質はファストグリーンFCFで標識した。
【
図6】13.9s
-1の剪断速度で測定した粘度[mPa.s]を、熱処理後の3.5重量%エンドウ豆タンパク質溶液のCa
2+濃度に対する関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
二価カチオン、特にカルシウムの添加が、エンドウ豆タンパク質のアグリゲーション(aggregation)、及び粘度の上昇に対して示す効果について実験を行なったところ、驚くべきことに、二価カチオンの添加には、加熱により、形成されたアグリゲート(aggregates)の沈殿又はゲル化を生じることなく最適なタンパク質アグリゲーションをもたらし、かつ大幅な粘度上昇をもたらす、臨界範囲が存在することが見出された。この最適なカルシウム濃度を超えると、系が過剰なアグリゲーションを示すようになり、沈殿、ゲル化、又は粘度の低下を生じる。
【0010】
したがって、本発明は、一部には食品又は飲料製品を製造する方法に関し、該方法は、エンドウ豆タンパク質を1.0~6重量%(例えば、1.5~5重量%、例えば2~4.5重量%、更なる例では3~4重量%)の濃度で含む水性原材料組成物を用意する工程と、上記原材料組成物に、エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンを、4.0~20mM(例えば5~15mM、例えば5~12mM、例えば6~10mM、例えば7~9mM、更なる例では7.5~8.5mM)添加する工程と、続いて、原材料組成物を6.6~7.3(例えば6.8~7.2)のpHにて熱処理して、エンドウ豆タンパク質を含む凝集体を形成する工程であって、上記熱処理は、80℃~125℃の温度で30秒間~20分間、又は125℃超の温度で3秒間~45秒間実施される、工程と、を含む。上記の添加二価カチオンの濃度は、金属味又は石鹸っぽさなどの感覚的欠陥を生じることなく、所望の粘度上昇をもたらす。
【0011】
エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンは、例えば、かかる水性原材料組成物の別の成分との複合体を形成していない二価カチオンである。エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンの量は、原材料組成物のエンドウ豆タンパク質以外の全ての成分を合わせ、測定される二価カチオンの量を、例えば10mMの濃度に加えることによって求めてもよい。次いで、原材料組成物の遊離二価カチオン濃度をイオン選択性電極で測定して、結合した二価カチオンの量を計算することができる。本発明の方法の実施において、エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンの量は、添加した総量から、エンドウ豆タンパク質の非存在下で結合が観察された量を減算したものである。
【0012】
pHは、二価カチオンを原材料組成物に添加する前に調整しても添加後に調整してもよい。二価カチオンを添加する前にpHを調整する場合、二価カチオンを添加した後の原材料組成物のpHが、二価カチオンの結合によるpH低下により6.6~7.3になることを見込むものとすべきである。したがって、本発明の一実施形態では、本方法は、エンドウ豆タンパク質を1.0~6重量%の濃度で含む水性原材料組成物を用意する工程と、原材料組成物に、エンドウ豆タンパク質と複合体形成できる二価カチオンを4.0~20mM添加する工程と、pHを調整する工程と、続いて、原材料組成物を6.6~7.3のpHにて熱処理して、エンドウ豆タンパク質を含む凝集体を形成する工程であって、熱処理は、80℃~125℃の温度で30秒間~20分間、又は125℃を超える温度で3秒間~45秒間実施される、工程と、を含む。
【0013】
本文脈において、特に指示がない限り、成分の%は、組成物の重量に基づく重量%、すなわち重量/重量%を意味する。
【0014】
一実施形態では、凝集体は、レーザー回折によって測定したときに2~50μmのD[4,3]平均径を有し、例えば、レーザー回折によって測定したときに4~40μm、例えば5~30μm、例えば6~20μm、更なる例では8~12μmのD[4,3]平均径を有する。凝集体の粒度分布は、例えば、Mastersizer 3000(Malvern Intruments,UK)又は同等の測定システムを使用して測定され得る。測定のために、試料を、例えば、9~10%の遮蔽率(obscuration rate)が得られるまでHydro SM測定セルに分散し、次いでMastersizerで分析してもよい。本発明において、D[4,3]という用語は、De Brouckere平均径と呼ばれる場合もある、粒度分布の体積加重平均径を指して使用される。本発明の方法が、比較的小さい粒子を生成できることは有利である。比較的小さい粒子は口内で容易に知覚されにくいため、アグリゲートがざらつきを生じることなく、滑らかな口当たりを伴う粘度増加をもたらすからである。
【0015】
本発明の方法に従って生成される凝集体は、狭いサイズ範囲を有する。この狭いサイズ範囲は、小さな粒径と併せて、滑らかな口当たりを伴った粘度の増加をもたらす。一実施形態では、凝集体の粒度分布スパンは、0.1~10、例えば0.5~5である。スパンは、(Dv0.9-Dv0.1)/Dv0.5に等しい。Dv0.5は、体積分布のメジアン粒径であり、母集団の50%はこの値を下回る。Dv0.9及びDv0.1は、それぞれ母集団の90%及び10%が下回る値である。
【0016】
一実施形態では、原材料組成物は均質化に供され、例えば、エンドウ豆タンパク質を含む原材料組成物は、タンパク質を確実に完全に可溶化させるために、二価カチオンを添加する前に均質化に供されてもよい。
【0017】
本発明によるエンドウ豆タンパク質は、緑色、黄色、又は紫色エンドウ豆(Pisum sativum)から分離した又は抽出したエンドウ豆タンパク質であってもよい。エンドウ豆タンパク質は、エンドウ豆タンパク質画分であってもよい。エンドウ豆タンパク質は、緑色エンドウ豆の種由来のものであってもよい。例えば、エンドウ豆タンパク質は、エンドウ豆から分離した、乾燥重量基準で80%超のタンパク質含量を有する植物性タンパク質材料であってもよい。本発明による方法では、エンドウ豆タンパク質の溶解度は、物理的処理(例えば、加熱、均質化)により改良されていてもよい。一実施形態では、エンドウ豆タンパク質は、エンドウ豆タンパク質濃縮物又はエンドウ豆タンパク質分離物である。
【0018】
本発明の一実施形態では、二価カチオンは、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。これらの二価カチオンは食品グレードであり、脂肪の酸化を容易に引き起こさない。例えば、本発明による二価カチオンは、カルシウムカチオンであってもよい。
【0019】
二価カチオンは、ミネラル塩の形態で添加されてもよい。一実施形態では、二価カチオンは、塩化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、リンゴ酸塩、グリセロリン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、フマル酸塩及びグルコン酸塩からなる群から選択される、アニオンとの塩として用意される。例えば、二価カチオンは、塩化物、乳酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、アニオンとの塩として用意され得る。塩は塩化カルシウムであってもよい。天然資源由来のカルシウムを用意するにあたって、カルシウムは、牛乳からタンパク質、脂肪、及びラクトースを、例えば膜分画によって分離した後、ミネラル濃縮物から得ることができる。
【0020】
一実施形態では、熱処理後の原材料組成物は、2~35%の総固形分含量を有する。すなわち、全ての非水成分の質量は、総質量の2~35%である。総固形分の増加は、アグリゲーションを促進する。例えば、総固形分含量は、2~10%、更なる例では6~8%であってもよい。総固形分は高すぎてはならず、高すぎるとタンパク質のゲル化及び沈殿が生じ得る。理論に束縛されるものではないが、これは、タンパク質間の間隔が減少することによるものと考えられる。総固形分は、スクロース、ラクトース、イヌリン、フルクトオリゴ糖、デンプンなどの炭水化物、又はマルトデキストリン及びグルコースシロップなどの加水分解デンプン製品を導入することによって増加させることができる。
【0021】
一実施形態では、食品又は飲料製品中の可溶性タンパク質の含量は、総タンパク質含量に対して80重量%以下、例えば、総タンパク質含量に対して60、40、30又は20重量%以下である。本発明の方法により、ほとんどのタンパク質は、アグリゲート構造/凝集構造部分を形成する。例えば、食品又は飲料製品中の可溶性エンドウ豆タンパク質の含量は、総エンドウ豆タンパク質含量に対して30重量%以下であってもよい。一実施形態では、熱処理された原材料組成物中の可溶性タンパク質の含量は、熱処理された原材料組成物の総タンパク質含量に対して30重量%以下であってもよい。例えば、熱処理された原材料組成物中の可溶性エンドウ豆タンパク質の含量は、熱処理された原材料組成物の総エンドウ豆タンパク質含量に対して30重量%以下であってもよい。
【0022】
一実施形態では、熱処理された原材料組成物は、凍結乾燥、噴霧乾燥、又はロール乾燥によって粉末に乾燥される。本発明の方法は、粉末形態の食品又は飲料製品、例えば、水(又は他の水性液体)により、良好な食感特性(滑らかな口当たりを伴う粘度など)を有する製品へと再構成される粉末を、提供できることが有利である。
【0023】
本発明の一実施形態では、原材料組成物は、0~36重量%の脂肪、例えば1.0~20重量%、例えば3.0~15重量%、更なる例では5~10重量%の脂肪を含む。少量の脂肪であっても、製品内に形成された凝集により、製品の食感はクリーミーなものであることが判明している。
【0024】
本発明の文脈において、用語「脂肪」は、主にトリグリセリドから構成される物質を指す。脂肪は、動物の脂肪組織及び多くの植物種子の主成分である。一般的に液状で存在する脂肪は、総じて油と呼ばれる。本発明において、油及び脂肪という用語は互換可能である。
【0025】
一実施形態では、原材料組成物は、パーム核油、キャノーラ油、大豆油、ひまわり油、ベニバナ油、綿実油、パーム油、乳脂肪、コーン油、ココナッツ油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される脂肪を含んでもよい。
【0026】
本発明の一実施形態では、更なる成分が、製品の種類に適した原材料組成物に添加される。これらの更なる成分は、ハイドロコロイド、乳化剤、緩衝剤、甘味料、及び/又は風味料を含んでもよく、所望であれば、融解した脂肪を添加しながら、撹拌下で水和してもよい(例えば、40℃~90℃において)。本発明の方法が均質化を含む場合、このような更なる成分は均質化の前に添加される。均質化の前に液状の脂肪を添加することにより、微細な油滴のエマルションを形成することができる。
【0027】
本発明の一態様は、例えば、本発明の方法によって得られる、例えば得られた、食品又は飲料製品を提供する。
【0028】
本発明の一態様は、カルシウム又はマグネシウムと、凝集されたエンドウ豆タンパク質と、を含む食品又は飲料製品を提供し、この凝集されたエンドウ豆タンパク質は、レーザー回折によって測定したときに2~50μm、例えば4~40μm、例えば5~30μm、例えば6~20μm、更なる例では8~12μmのD[4,3]平均径、及び0.1~10、例えば0.5~5の粒度分布スパンを有する。
【0029】
一実施形態では、本発明の食品又は飲料製品は、菜食主義者又はビーガンに好適であり得る。
【0030】
本発明の製品は、風味料、甘味料、着色剤、酸化防止剤(例えば、脂質酸化防止剤)、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。
【0031】
一実施形態では、食品又は飲料製品は液体であり、且つ、エンドウ豆タンパク質を、1.0~6重量%(例えば、1.5~5重量%、例えば2~4.5重量%、更なる実施例では3~4重量%)の濃度で含む。食品又は飲料製品は、6.6~7.3、例えば6.8~7.2のpHを有し得る。
【0032】
一実施形態では、食品又は飲料製品は液体であり、且つ、二価カチオンを4.0~20mM(例えば、5~15mM、例えば5~12mM、例えば6~10mM、例えば7~9mM、更なる例では7.5~8.5mM)の濃度で含む。例えば、食品又は飲料製品は、液体であってもよく、且つ、エンドウ豆タンパク質と複合体を形成した二価カチオンを含み、二価カチオンは、4.0~20mM(例えば、5~15mM、例えば5~12mM、例えば6~10mM、例えば7~9mM、更なる例では7.5~8.5mM)の濃度で存在する。
【0033】
一実施形態では、食品又は飲料製品は粉末であり、且つ、エンドウ豆タンパク質を、0.5~70重量%、例えば1~50重量%、更なる例では2~20重量%の濃度で含む。
【0034】
本発明によるエンドウ豆タンパク質凝集体の形成は、食品又は飲料の食感/口当たりを改善し、還元糖及び/又は還元脂肪を含む食品又は飲料に関しても、心地よい滑らかでクリーミーな味わいをもたらす。低温で保管又は提供された液体飲料におけるハイドロコロイド増粘剤の欠点は、ハイドロコロイドが、冷蔵庫内温度で長期間保管されたときに粘稠になりすぎること、又は室温では適切な食感を提供するが、提供前に冷却されたときに過度に粘稠になることである。本発明による凝集体は、温度が変動する条件下で安定な食感を提供することに関して、多くのハイドロコロイドよりも良好に働く。飲料製品を安定化させるために、複雑なハイドロコロイドがしばしば使用されるが、複雑なハイドロコロイドは消費者にはなじみがなく、したがって望ましくない。本発明の食品又は飲料製品は、消費者から良好に受け入れられる、ペクチン、アカシアガム、グアーガム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、多糖類ハイドロコロイド増粘剤を含んでよく、例えばペクチンを含んでもよい。一実施形態では、食品又は飲料製品が含有するペクチン以外の多糖類は0.001重量%未満であり、例えば0.001重量%未満の多糖類を含有する。本発明の文脈において、多糖類という用語は、10個超の単糖類単位からなる糖ポリマーを指す。
【0035】
本発明の食品又は飲料製品は、合成乳化剤を含まなくてもよい。例えば、本発明の製品は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステル、アセチル化モノグリセリド、ソルビタントリオレエート、グリセロールジオレエート、ソルビタントリステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート及びモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、グリセロールソルビタンモノパルミテート、モノグリセリド及びジグリセリドのコハク酸エステル、モノグリセリド及びジグリセリドの乳酸エステル、並びに脂肪酸のスクロースエステルが添加されていなくてもよい。
【0036】
一実施形態では、本発明の食品又は飲料製品は、脂肪を含む。例えば、脂肪は、ココナッツ油、高オレイン酸キャノーラ油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ひまわり油、高オレイン酸ベニバナ油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。脂肪は、4℃で1%未満の固形脂肪含量を有し得る。脂肪の凝固は沈殿につながる可能性があるため、このような固形脂肪含量は冷蔵庫において暴露される可能性のある温度下での良好な安定性を液体製品にもたらす。固形脂肪含量は、パルスNMR法によって、例えば、特別な熱前処理を伴わない方法であるIUPAC Method 2.150(a)[International Union of Pure and Applied Chemistry,Standard Methods for the Analysis of Oils,Fats and Derivatives,7th Revised and Enlarged Edition(1987)]に従って、測定することができる。脂肪は、最大で約20重量%の量で存在してもよく、本発明の製品中の脂肪量は、例えば、約0重量%~約20重量%、例えば6重量%~12重量%であってもよい。一実施形態では、本発明の食品又は飲料製品は、100g当たり3g未満の脂肪を有する。
【0037】
本発明による食品又は飲料製品は、緩衝剤を含んでもよい。クリーマーなどの製品の場合、緩衝剤は、コーヒーなどの高温酸性環境に添加されたときに、製品の望ましくないクリーミング又は沈殿を防止することができる。レディ・トゥ・ドリンク飲料などの製品の場合、緩衝剤は、製品の保存可能期間にわたって酸性度の変化を防ぐように働く。緩衝剤は、例えば、一リン酸塩、二リン酸塩、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び重炭酸カリウム、又はこれらの組み合わせであり得る。緩衝剤は、食品又は飲料製品の0.1~3重量%の量で存在してもよい。本発明の製品に含まれる緩衝剤は、消費者に馴染みがあり、それ故受け入れられ易い、クエン酸塩及び重炭酸塩であってもよい。本発明の液体製品は、重炭酸塩を0.02~1重量%、例えば0.05~0.5重量%、更なる例では0.07~0.15重量%の濃度で含み得る。本発明の液体製品は、0.05~2.5重量%、例えば0.13~1.25重量%、更なる例では0.18~0.38重量%の濃度で存在するクエン酸塩を含み得る。本発明の粉末製品は、重炭酸塩を0.01~0.4重量%、例えば0.02~0.2重量%、更なる例では0.03~0.06重量%の濃度で含み得る。本発明の粉末製品は、クエン酸塩を0.02~1重量%、例えば0.05~0.5重量%、更なる例では0.07~0.15重量%の濃度で含み得る。クエン酸塩は、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される塩の形態で提供され得る。クエン酸は、例えばレモンジュースなどの柑橘類の果汁に含まれるクエン酸の形態で提供され得る。重炭酸塩は、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される塩の形態で提供され得る。本発明の製品に含まれる緩衝剤は、例えば、クエン酸カリウムの形態で提供されるクエン酸塩及び重炭酸水素ナトリウム(重曹)の形態で提供される重炭酸塩であってよい。
【0038】
本発明による液体飲料は物理的に安定であり、冷蔵温度(例えば、約4℃)、室温(例えば、約20℃)及び高温(例えば、約30~38℃)での保管中の相分離の問題(例えば、クリーミング、ゲル化、又は沈降)が低減されている。液体飲料は、4℃及び/又は20℃で少なくとも6ヶ月間、30℃で6ヶ月間、及び38℃で1ヶ月間などの保存可能期間安定性を有することができる。安定性は、保管後の製品の目視検査によって評価され得る。
【0039】
一実施形態では、食品又は飲料製品はクリーマーである。クリーマーは、例えば、コーヒー、ココア、及び茶などの高温飲料及び低温飲料と共に白色付与剤として広く使用されている。これらは、乳及び/又は乳クリームの代わりに一般的に使用される。クリーマーは、様々な異なる風味をもたらすことができ、口当たり、ボディ、及びより滑らかな食感を提供し得る。本発明によるクリーマーは、液体状又は粉末状であり得る。液体クリーマーは、周囲温度での又は冷蔵での保管を意図されるものであり得、保管中に、相分離、クリーミング、ゲル化及び沈降せずに安定なものでなければならない。クリーマーはまた、長期間にわたって一定の粘度を保持しなければならない。コーヒー又は茶などの低温又は高温飲料に添加されると、クリーマーは速やかに分散し、良好な白色付与能力を提供し、優れた味わい及び口当たりを提供しながら、フェザーリング及び/又は沈降を伴わずに安定を保つ。クリーマーはまた、スープなどの料理製品にも含まれ得る。
【0040】
本発明によるクリーマーは、スクロース、乳化剤、安定剤、緩衝塩、甘味料、及びアロマを含んでもよい。加えて、クリーマーは、凝集体の形態ではないタンパク質である乳化剤を有利に含んでもよい。
【0041】
一実施形態では、食品又は飲料製品は、レディ・トゥ・ドリンク飲料製品、例えば、常温保存可能なレディ・トゥ・ドリンク飲料である。「レディ・トゥ・ドリンク飲料」は、液体を更に追加せずともすぐに飲用できる液体形態の飲料を意味する。
【0042】
レディ・トゥ・ドリンク飲料は、保存可能期間又は製品を増強する熱処理、UHT(超高温)処理、HTST(高温短時間)殺菌、バッチ低温殺菌、又は加熱式充填に供されてもよい。
【0043】
本発明による食品又は飲料製品(例えば、クリーマー又はレディ・トゥ・ドリンク飲料)は、甘味料(無糖甘味料を含む)、アロマ/風味料、ミルク、安定剤、着色剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分など、当該技術分野において既知の任意の他の好適な成分を含んでもよい。甘味料は、例えばショ糖、フルクトース(fructose)、ブドウ糖、麦芽糖、デキストリン、レブロース(levulose)、タガトース、ガラクトース、固形コーンシロップ並びに他の天然若しくは人工甘味料を含み得る。無糖甘味料は、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、水素添加デンプン加水分解物などの糖アルコールを単独で又は組み合わせて含み得る。甘味料は、食品又は飲料製品の5~90重量%、例えば、20~90%、更なる例では20~70%存在してもよい。一実施形態では、食品製品又は飲料製品は、1食当たり0.5g未満の糖を有する。食品又は飲料製品は、例えば、100g当たり0.5g未満の糖を有してもよい。
【0044】
一実施形態では、食品製品又は飲料製品は、アイスクリーム又は冷凍菓子、乳濃縮物又はデザートなどの乳製品である。食品製品又は飲料製品は、伝統的には乳製品である製品であって乳成分を含まないもの、例えば、植物性タンパク質による非乳製品アイスクリーム、植物性タンパク質による非乳製品冷凍菓子、植物性タンパク質による乳製品風(dairy-style)濃縮物又は植物タンパク質による乳製品風デザートであってもよい。
【0045】
一実施形態では、食品又は飲料製品は、非乳製品である植物性ミルクである。
【0046】
一実施形態では、食品又は飲料製品は、調理用ソースである。
【0047】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解されたい。特に、本発明の製品のために記載された特徴を本発明の方法と組み合わせてよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているものとして組み込める。
【0048】
本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定例から明らかである。
【実施例】
【0049】
材料
エンドウ豆タンパク質分離物(NUTRALYS(登録商標)S85F;バッチ#620126)は、Roquette(Lestrem,France)から購入した。塩化カルシウム二水和物(CaCl2)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から購入した。NaOH及びHCl溶液は、Merck KGaA(Darmstadt,Germany)から購入した。Bradfordアッセイに使用したタンパク質アッセイ染料試薬濃縮物(Cat.#500-0006)は、Bio-Rad Laboratories GmbH(Munich,Germany)から購入した。
【0050】
CaCl2の存在下でのタンパク質分散体の調製及び熱処理
タンパク質原液分散体は、タンパク質粉末をMilli-Q水(8重量%、タンパク質)中に、磁気撹拌下、20℃で2時間分散させることにより調製した。続いて、原液分散体を、PandaPlus Homogenius 2000(GEA Westfalia Separator Group GmbH(Oelde,Germany))を使用して、それぞれ50バール及び250バールの第1及び第2段階圧力で均質化した(ダブルパス)。次いで、原液分散体を分割して、分割した分散体に異なる量のMilli-Q水及びCaCl2を添加した。次いで、必要に応じて、0.1M NaOH又はHClを使用してこれらの分散体のpHを7.0に調整し、3.5重量%のタンパク質及び必要な濃度のCaCl2(0~10mM)に達するようにMilli-Q水を加えた。これらの分散体(250mL)を250mLの密閉ガラス瓶に移し、水浴中に置いて、磁気撹拌下、95℃で15分間加熱し、その後氷上で20℃まで冷却した。
【0051】
共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)による微細構造
熱処理後のタンパク質ベースの分散体の微細構造を、Airyscan検出器(Carl Zeiss(Oberkochen,Germany)でアップグレードしたLSM 710共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)を使用して分析した。10μLの1%(w/v)ファストグリーンFCF(Sigma-Aldrich(Saint Louis,MO,USA))のエタノール溶液をそれぞれ1mLの加熱分散体に添加することによって、タンパク質を蛍光標識した。蛍光標識された試料(100μL)を、深さ1mmのプラスチックチャンバ内に置き、アーチファクトの圧縮及び乾燥を防止するためにガラススライドカバースリップで閉じた。タンパク質の撮像は、633nmの励起波長及び645nmの発光波長(ロングパスフィルター)で実施した。画像の取得及び処理は、Zen 2.1ソフトウェア(Carl Zeiss(Oberkochen,Germany))を使用して実施した。
【0052】
レーザー回折による粒径
熱処理後のタンパク質ベースの分散体の粒径を、300mmの有効共焦点長さを有する逆フーリエレンズ、He-Ne赤色光源(633nm)、及びLED青色光源(470nm)を備えたMastersizer 3000(Malvern Instruments(Malvern,Worcestershire,United Kingdom))を使用して、静的光散乱によって分析した。粒子及び分散剤の屈折率は、それぞれ1.47(ひまわり油)及び1.33(水)を選択した。Milli-Q水を入れたHydro SM試料分散ユニットに、レーザー遮蔽率が10%(±0.5%)に達するまで分散体を滴加した。結果は、Mie理論を用い計算し、D[4,3]及びスパンとして表した。スパンは、以下のように計算された分布の幅の尺度である。
【0053】
【0054】
Bradfordアッセイによる可溶性タンパク質含量定量
熱処理後の試料の可溶性タンパク質含量(SPC)を測定するため、Bradfordタンパク質アッセイを実施した。このアッセイを行うために、試料のアリコート(2mL)を2mLエッペンドルフチューブ(Eppendorf(Hamburg,Gbermany))に移し、Centrifuge 5418(Eppendorf(Hamburg,Germany))を使用して、室温、12,000gで、20分間遠心分離した。タンパク質分布の変換係数(CF)を計算するために、試料及び上清の重量を記録した。CFは、以下のように計算できる。
【0055】
【0056】
式中、Msupernatantは上清の質量(g)であり、Msampleは、エッペンドルフチューブ内の試料の総質量(g)である。
【0057】
熱処理されたタンパク質ベースの分散体の上清を異なる程度に希釈して、それらの吸光度が確実に検量線に適合にするようにした。希釈した上清のアリコート(40μL)を、2mLの5x希釈タンパク質アッセイ染料試薬濃縮物(Cat.#500-0006,Bio-Rad Laboratories GmbH(Munich,Germany))を入れた4mLキュベットに移した。これを、希釈した全ての上清について2連で実施した。
【0058】
検量線を作成するために使用した標準溶液は、以下のように調製した:原液は、エンドウ豆タンパク質をMilli-Q水に溶解して、タンパク質濃度を0.25重量%にすることによって調製した。この原液を異なる程度(すなわち、0.20、0.15、0.10及び0.05重量%、タンパク質)に希釈した。これらの溶液の各々のアリコート(40μL)を、5倍に希釈した染料濃縮物を2mL入れた4mLキュベットに移した。ブランクは、5倍希釈した染料濃縮物を2mL入れた4mlキュベットにMilli-Q水(40μL)を添加することによって調製した。
【0059】
分析の前に、試料を含むキュベット、標準溶液又はブランクを蓋で密封し、手動で振盪した。全ての分光光度測定には、UV-可視分光光度計(Nicolet Evolution 100,Thermo Electron Corporation(Walthan,MA,USA))を使用して、試料を調製した20分後に、ブランクと対照して595nmで実施した。
【0060】
標準の吸光度値を使用して検量線を計算した。標準溶液の吸光度値を使用して検量線を作成し、これを使用して、上清のタンパク質含量(PCsupernatent)を求め、重量%で表した。
【0061】
可溶性タンパク質含量(PCsoluble)は、以下のように計算し、重量%で表した。
【0062】
【0063】
式中、PCsampleは、遠心分離前の試料の初期タンパク質含量[重量%]である。
【0064】
遊離カルシウムの測定
カルシウム存在下で熱処理したタンパク質ベースの分散体の、カルシウムイオン活性又は遊離カルシウムイオン濃度を、磁気撹拌下で、カルシウムイオン選択性電極(692pH/イオンメーター、Metrohm(Herisau、Switzerland))を使用して20℃で測定し、1~10mMの範囲のCaCl2溶液による検量線から計算した。エンドウ豆タンパク質成分中に存在する塩に由来するイオン強度が遊離カルシウム濃度に及ぼす影響は、無視できる程度であった。結果は、「添加したカルシウム-遊離カルシウムイオン」として計算した結合カルシウムとして示される。
【0065】
制御された剪断応力レレオメーター測定による粘度
熱処理されたタンパク質ベースの分散体に対し、制御された剪断応力レオメーター(Physica MCR 501 Anton Paar GmbH(Graz,Austria))を使用して、流量曲線測定を実施した。壁面スリップ防止のための粗い(サンドブラスト処理された)表面を有し、外側のカップ(C-CC27/T200/SS/S、Anton Paar GmbH(Graz、Austria))との間隙が1.13mmである共軸円筒型(CC27/S、Anton Paar GmbH(Graz,Austria))を測定に使用した。試料(25mL)を手動で振盪して均質化し、カップ内に注いだ。ペルチエプレート(C-PTD200、Anton Paar GmbH,Graz、Austria)を使用して、測定中に25℃の一定温度を維持した。
【0066】
分散体を最初に100s-1の剪断速度で5分間剪断し、その後、測定を実施した。この測定は、剪断速度を0.1s-1から100s-1に増加し、見かけ粘度を30秒毎に7.5分間測定し、15のデータ点を得ることによって実施した。試料を比較するために、13.9s-1における見かけ粘度を記録した。各測定は、2連で実施した。
【0067】
実施例1:熱誘導性アグリゲーションに対するCa
2+添加の影響
荷電している共溶質が、得られるタンパク質ベースの系の物理化学的特性及び機能特性に、どのように及びどの程度影響するかを理解するために、エンドウ豆タンパク質の熱誘導性アグリゲーションに対するCa
2+添加の影響を調査した。3.5重量%のタンパク質濃度におけるCa
2+添加(0~10mM)の影響として、ゲル化点のスクリーニングを実施した(
図1)。ゲル化を促進する臨界Ca
2+濃度は、10mMであった。この系では、Ca
2+との複合体形成に競合する成分が存在しないため、添加したCa
2+は全てエンドウ豆タンパク質と複合体形成できた。
【0068】
次の工程では、ゲル化の閾値よりも低いエンドウ豆タンパク質ベースの系について、可溶性タンパク質含量(SPC)及び粒度分布(PSD)などの物理化学的特性を調査した。SPCは、アグリゲートした状態のタンパク質の量に関する情報を与え、例えば、高SPCの試料は、タンパク質アグリゲートの量が少なく、逆もまた同様である。SPCに対するCa
2+の影響に関する情報を得るために、熱処理したエンドウ豆タンパク質試料に対してBradfordアッセイを実施した(
図2)。カルシウム添加は、5mMの濃度までタンパク質溶解度に影響しなかったが、5mMを超えると、Ca
2+濃度の上昇に伴って溶解度が最低で9%まで低下した。
【0069】
カルシウムの存在下で熱処理したエンドウ豆タンパク質ベースの系の粒度分布(PSD)をレーザー回折により測定し、結果をD[4,3]として報告する。この結果は試料の体積の大半を構成する粒子のサイズを反映するものであり、大きな粒子の存在、及びスパンの影響をより受けやすく、粒度分布の幅に関して本質的な情報が得られる(
図3)。カルシウム添加は、カルシウム濃度7mMまではD[4,3](5~7μm)に対して大きな影響はなかったが、8mM及び9mMでは、D[4,3]はそれぞれ11及び23μmに増加し、スパンは急激な減少を示した(<3)。試料は、7mMまでは二峰性分布を有したが、8及び9mMの試料は単峰性の粒度分布を有した。
【0070】
遊離Ca
2+量から、結合Ca
2+量を計算した。
図4は、添加したCa
2+の濃度が7mMまでであると全てのCa
2+が結合したこと、それ以上になると、遊離Ca
2+がいくらか存在したことを示す。すなわち、タンパク質の表面がカルシウムイオンで完全に飽和されており、電荷の中和が達成されたことを示す。
【0071】
共焦点レーザー光顕微鏡画像(
図5)により、8mM及び9mMの添加Ca
2+の存在下で加熱したエンドウ豆タンパク質分散体にはアグリゲートが存在することが確認され、特に8mMのCa
2+の存在下で加熱したものでは非常に均質な分布が確認された。これらの結果は、粒径測定値と相関する。
【0072】
13.9s
-1における試料の粘度の結果を
図6に示す。8mMの添加Ca
2+の存在下では、3.5重量%のタンパク質で粘度のかなりの増加、すなわち3mPa.sから43mPa.sへの増加が観察されたが、これは9mMの添加Ca
2+の存在下では8mPa.sまで低下した。
【0073】
8mMの添加Ca2+の存在下での3.5重量%のエンドウ豆タンパク質の熱処理により形成されたアグリゲートのこの興味深い特性により、3週間の安定性試験を実施した。その結果、4℃での保管中にPSD及び粘度の変化がなかったこと、それによってアグリゲートが経時的に安定していることが示された。
【0074】
これらの結果は、驚くべきことに、劇的な粘度上昇を得ることができる最適な二価カチオン添加濃度が存在することを示す。この最適な濃度で形成されるアグリゲートは、比較的小さい平均粒径及び単分散の狭い分布を有する。これらの物理的パラメータは、凝集体が、ざらざらした食感につながる粒度分布を有することなく、食品又は飲料製品を増粘する優れた手段を提供することを実証する。