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特許7436477TGF-β受容体融合タンパク質医薬組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】TGF-β受容体融合タンパク質医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240214BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240214BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240214BHJP
   C07K 14/715 20060101ALN20240214BHJP
   A61K 47/65 20170101ALN20240214BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P35/00 ZNA
A61P35/04
A61P35/02
A61K9/08
A61K47/30
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/10
A61K39/395 N
A61K9/19
A61K39/395 T
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/715
A61K47/65
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021523471
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2019116593
(87)【国際公開番号】W WO2020094122
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】201811328326.1
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ティアン チェンミン
(72)【発明者】
【氏名】リー ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シュン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/129331(WO,A1)
【文献】特表2016-528295(JP,A)
【文献】国際公開第2017/084495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/16
A61P 35/00
A61K 9/08
A61K 47/30
A61K 47/18
A61K 47/12
A61K 47/26
A61K 47/10
A61K 39/395
A61K 9/19
A61K 47/65
C07K 19/00
C07K 16/28
C07K 14/715
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TGF-β受容体融合タンパク質、および
緩衝液
を含む医薬組成物であって、
前記TGF-β受容体融合タンパク質は、
PD-L1抗体の重鎖およびTGF-βRII ECDによって形成される融合ペプチドであって、その配列は配列番号23として示されるか、または配列番号23として示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有する、融合ペプチドと、
PD-L1抗体の軽鎖であって、その配列は配列番号13として示されるか、または配列番号13として示される配列に対して少なくとも85%の同一性を有する、軽鎖
とを含み、
前記緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液であり、
前記緩衝液の濃度は約5mM~約20mMであり、前記TGF-β受容体融合タンパク質の濃度は約0.5mg/ml~約100mg/mlであり、前記医薬組成物のpHは約6.0~約6.5であり、
前記医薬組成物はスクロースを更に含み、前記スクロースの濃度は約60mg/ml~約90mg/mlであり、
前記医薬組成物はポリソルベート80を更に含み、前記ポリソルベート80の濃度は約0.4mg/ml~約0.8mg/mlである、医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝液の濃度は約10mMである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記TGF-β受容体融合タンパク質の濃度は約30mg/ml~約70mg/mlである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記TGF-β受容体融合タンパク質の濃度は約50mg/mlである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物のpHは約6.2である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記スクロースの濃度は約80mg/mlである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ポリソルベート80の濃度は約0.4mg/mlである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
30mg/ml~約70mg/mlの前記TGF-β受容体融合タンパク質、
約5mM~約20mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、
約60mg/ml~約90mg/mlのスクロース、および
約0.4mg/ml~約0.8mg/mlのポリソルベート80
を含み、
Hは約6.0~約6.5である、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項9】
約50mg/mlの前記TGF-β受容体融合タンパク質、
約10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、
約80mg/mlのスクロース、および
約0.4mg/mlのポリソルベート80
を含み、
Hは約6.2である、請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物の調製方法であって、前記TGF-β受容体融合タンパク質を前記緩衝液と接触させるステップを含む、調製方法;
記緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液であり、
記緩衝液の濃度は約5mM~約20mMであり、前記緩衝液のpHは約6.0~約6.5である。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物凍結乾燥形態である、TGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物。
【請求項12】
再構成されて請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物を形成することができる、TGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の凍結乾燥調製物再構成形態である、TGF-β受容体融合タンパク質を含む再構成溶液。
【請求項14】
1つ以上の容器を含む製造品であって、前記容器は、
請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物、または
請求項11もしくは12に記載のTGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物、または
請求項13に記載のTGF-β受容体融合タンパク質を含む再構成溶液
を含む、製造品。
【請求項15】
医薬品の調製における、以下から選択されるいずれか1つの使用:
請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項11もしくは12に記載のTGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物、または請求項13に記載のTGF-β受容体融合タンパク質を含む再構成溶液、または請求項14に記載の製造品;
記医薬品は、腫瘍細胞増殖または腫瘍細胞転移に関連する疾患または障害を処置または抑制するために使用される。
【請求項16】
記疾患または障害は腫瘍である、請求項15に記載の使用
【請求項17】
腫瘍は、頭頸部癌、膠芽腫、神経膠腫、上咽頭癌、甲状腺癌、肺癌、骨髄腫癌、骨髄異形成症候群、神経内分泌癌、リンパ腫、白血病、黒色腫、基底細胞皮膚癌、扁平上皮癌(squamous cell cutaneous carcinoma)、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、肉腫、中皮腫、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸直腸癌、乳癌、子宮内膜癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌および精巣癌からなる群から選択され前記肺癌は、小細胞肺癌および非小細胞肺癌からなる群から選択される、請求項16に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本出願は、2018年11月9日に出願された特許出願201811328326.1の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は医薬調製物の分野に属し、特に、PD-L1抗体/TGF-βRII細胞外領域融合タンパク質を含む医薬組成物、および医薬品としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書の記載は、本開示に関連する背景情報を提供するに過ぎず、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0004】
腫瘍処置中は化学療法による毒性が高いことが認識されており、化学療法は薬剤耐性の癌細胞の生成につながる可能性がある。腫瘍の生存および成長に関連する過剰発現または過剰活性化されたタンパク質を標的とする標的療法を用いたとしても、該標的療法の標的となる経路への依存性を減少または回避するように変異した癌細胞が依然として存在し、それらの癌細胞は他の経路を介して生存する。
【0005】
近年、腫瘍免疫療法が注目されており、腫瘍処置の分野で注目されている。このような治療法の際立った利点は、薬剤耐性を生み出すことがますます困難になることである。腫瘍免疫療法は、主に免疫学的原理および方法を用いて、腫瘍細胞の免疫原性とエフェクター細胞殺傷に対する感受性を向上させ、生物における抗腫瘍免疫応答を刺激および増強する。腫瘍免疫療法は、免疫細胞およびエフェクター分子を宿主に注入することを含み、これら2つは免疫系と協力して腫瘍を殺し、生物における腫瘍成長を抑制する。
【0006】
Programmed death receptor 1(PD-1)は、CD28スーパーファミリーのメンバーである。PD-1は、活性化T細胞、B細胞および骨髄細胞に発現している。PD-1には、programmed death ligand 1(PD‐L1)とPD‐L2の2つのリガンドがある。PD-L1はT細胞上の受容体PD-1と相互作用し、免疫応答の負の調節に重要な役割を果たしている。PD-L1タンパク質の発現は、多くのヒト腫瘍組織で検出することができる。腫瘍部位の微小環境は腫瘍細胞上のPD-L1の発現を誘導することができ、発現したPD-L1は腫瘍形成および成長に寄与し、抗腫瘍T細胞のアポトーシスを誘導する。PD-1/PD-L1経路の阻害剤はPD-1のPD-L1への結合をブロックし、負の調節シグナルをブロックし、T細胞活性を回復させ、免疫応答を増強する。したがって、PD-1/PD-L1を標的とした免疫調節は、腫瘍抑制にとって非常に重要である。
【0007】
トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)は、細胞の増殖および分化を調節するTGF-βスーパーファミリーに属する。TGF-βは、2つのタイプIおよび2つのタイプII膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼ受容体からなるヘテロ四量体受容体複合体を介してシグナルを伝達する。
【0008】
TGF-βは多機能サイトカインであり、細胞依存的またはバックグラウンド依存的に腫瘍抑制効果または腫瘍促進効果を発揮する。TGF-βの腫瘍抑制効果は、複数の遺伝子の発現を誘導する能力に依存する。腫瘍の発生中に変異またはエピジェネティックな修飾が導入されると、癌細胞はTGF-βの抑制効果に徐々に耐性を示し、最終的に腫瘍の発生につながる。
【0009】
TGF-βシグナル伝達経路をブロックすることで、腫瘍転移を減少させることができることが研究で明らかになっている。乳癌細胞株のTGF-βシグナル伝達経路がトランケートされたSmad2/3陰性変異体によって抑制されると、腫瘍細胞の転移能力が抑制されることが見出された。結腸癌マイクロサテライトの不安定性の研究から、TGF-βRIIの不活性変異は転移を減少させ、患者の術後生存率を増加させることが明らかになった。しかしながら、一般的に、臨床処置においてTGF-βシグナル伝達経路の抑制物質を単独で投与した場合、その効果は弱い。これは、おそらく、TGF-βが主に腫瘍細胞で異常発現しているのに対し、TGF-βシグナル伝達経路の抑制物質のみでは腫瘍を標的にすることは困難であり、その結果、抑制物質の有効性またはバイオアベイラビリティが低いためである。
【0010】
したがって、腫瘍微小環境におけるTGF-βの標的化および中和化に基づいて、PD-1/PD-L1経路を抑制することで、T細胞の活性を回復させ、免疫応答を増強し、腫瘍形成および発生の抑制効果をより効果的に向上させることができる。
【0011】
本出願人の以前のPCT出願であるPCT/CN2016/104320(公開番号WO2017084495)は、PD-L1抗体を提供する。抗体/TGF-β受容体融合タンパク質は、WO2006074451A2、WO2009152610A1、WO2011109789A2、WO2013164694A1、WO2014164427A1、WO2015077540A2、WO9309228A1、WO9409815A1、WO2015077540A2、WO2015118175A2などで現在公開されている。これらの中で、メルク社(Merck)は、PD-L1/TGF-β二機能性融合タンパク質Bintrafusp Alfa(WO2015118175、M7824、FP17022としても知られている)を開示している。現在、Bintrafusp Alfaは、胃癌、肺癌、食道癌、NSCLC、胆道癌などの腫瘍性疾患の臨床段階にある。しかしながら、先行技術における抗体医薬品は、高分子量、複雑な構造のために不安定になり、劣化、重合または望ましくない化学修飾の発生を受けやすくなる。投与に適した抗体を作製し、保管およびその後の使用の間の安定性を維持し、より良好な効果を発揮するために、抗体医薬品の安定した調製に関する研究は特に重要である。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、PD-L1/TGF-βRII融合タンパク質を含む医薬組成物を提供し、これは、製造および投与をより助長し、性能においてより安定している;該医薬組成物は、
TGF-β受容体融合タンパク質、および
緩衝液
を含み、
前記緩衝液は、ヒスチジン塩緩衝液、コハク酸緩衝液、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記緩衝液はクエン酸緩衝液である。いくつかの実施形態では、前記ヒスチジン塩緩衝液はヒスチジン-塩酸緩衝液であり、前記コハク酸緩衝液はコハク酸-コハク酸ナトリウム緩衝液であり、前記クエン酸緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液である;いくつかの実施形態では、前記緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0014】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記TGF-β受容体融合タンパク質の濃度は、約0.5mg/ml~約100mg/ml、好ましくは約30mg/ml~約70mg/mlである。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物中の前記TGF-β受容体融合タンパク質の濃度は、0.5mg/ml~100mg/ml、好ましくは30mg/ml~70mg/mlである。TGF-β受容体融合タンパク質の濃度の非限定的な例は、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、好ましくは約50mg/mlを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物中の前記TGF-β受容体融合タンパク質の濃度は、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、55mg/ml、60mg/ml、65mg/ml、70mg/ml、より好ましくは50mg/mlである。
【0017】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記緩衝液のpH値は、約5.0~約7.5、好ましくは約6.0~約6.5、任意に約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、より好ましくは約6.2である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記緩衝液のpH値は、5.0~7.5、または6.0~6.5、好ましくは6.0、6.1、6.2、6.3、6.4または6.5、より好ましくは6.2である。
【0019】
代替の実施形態では、前記緩衝液の濃度は、約5mM~約30mM、好ましくは約5mM~約20mMである;その非限定的な例は、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、12mM、14mM、16mM、18mM、20mM、より好ましくは10mMを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記緩衝液の濃度は、5mM~30mM、好ましくは5mM~20mMである;いくつかの実施形態では、前記緩衝液の濃度は、約10mM、約12mM、約14mM、約16mM、約18mM、約20mM、より好ましくは約10mMである。
【0021】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物は糖類も含む。本開示における「糖類」は、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖類、非還元糖類などを含む、従来の化合物/組成物(CHO)またはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、前記糖類は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、デキストラン、グリセロール、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、メリトリオース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロースなどからなる群から選択される。好ましい糖類は非還元二糖類であり、より好ましくはトレハロースまたはスクロースであり、最も好ましくはスクロースである。
【0022】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記糖類の濃度は、約50mg/ml~約100mg/ml、好ましくは約60mg/ml~約90mg/mlである;非限定的な例は、60mg/ml、65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、最も好ましくは80mg/mlを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記糖類の濃度は、50mg/ml~100mg/ml、好ましくは60mg/ml~90mg/mlである;いくつかの実施形態では、前記糖類の濃度は、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/mlまたは約90mg/mlである。
【0024】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物は界面活性剤をさらに含み、当該界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリヒドロキシアルキレン、トリトン(Triton)、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウレルアミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアリルアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルマミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ナトリウムメチルココイル、ナトリウムメチルオレイルタウレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンとプロピレングリコールの共重合体等からなる群から選択され得る。好ましい界面活性剤はポリソルベート80またはポリソルベート20であり、より好ましくはポリソルベート80である。
【0025】
別の代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記界面活性剤の濃度は、約0.1mg/ml~約0.8mg/ml、より好ましくは約0.4mg/ml~約0.8mg/mlである。いくつかの実施形態では、前記界面活性剤の濃度は、0.1mg/ml~0.8mg/ml、好ましくは0.4mg/ml~0.8mg/ml、より好ましくは約0.4mg/ml、約0.45mg/ml、約0.5mg/ml、約0.55mg/ml、約0.6mg/ml、約0.7mg/ml、約0.8mg/mlである。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記界面活性剤の濃度は、0.4mg/ml、0.45mg/ml、0.5mg/ml、0.55mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/mlまたは0.8mg/ml、より具体的には0.4mg/mlである。
【0027】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物は、
(a)約0.5mg/ml~約100mg/mlの前記TGF-β受容体融合タンパク質、(b)約5mM~約30mMのクエン酸緩衝液、(c)約50mg/ml~約100mg/mlのスクロース、および(d)約0.1mg/ml~約0.8mg/mlのポリソルベート80
を含み、好ましくは前記医薬組成物のpHは約5.0~約7.5であり、より好ましくは約6.0~約6.5である。
【0028】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物は、
0.5mg/ml~100mg/mlのTGF-β受容体融合タンパク質、
5mM~30mMのクエン酸緩衝液、
50mg/ml~100mg/mlのスクロース、および
0.1mg/ml~0.8mg/mlのポリソルベート80
を含む;
好ましくは、前記医薬組成物のpHは5.0~7.5、より好ましくは6.0~6.5である。
【0029】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物は、
(a)約30mg/ml~約70mg/mlのTGF-β受容体融合タンパク質、(b)約5mM~約20mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、(c)約60mg/ml~約90mg/mlのスクロース、および(d)約0.4mg/ml~約0.8mg/mlのポリソルベート80を含む;
好ましくは、前記医薬組成物のpHは約6.0~約6.5である。
【0030】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物は、
30mg/ml~70mg/mlのTGF-β受容体融合タンパク質、
5mM~20mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、
60mg/ml~90mg/mlのスクロース、および
0.4mg/ml~0.8mg/mlのポリソルベート80
を含む;
前記医薬組成物のpHは約6.0~約6.5である。
【0031】
代替の実施形態では、前記医薬組成物は、
(a)約50mg/mlのTGF-β受容体融合タンパク質、(b)約10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、(c)約80mg/mlのスクロース、および(d)約0.4mg/mlのポリソルベート80を含み、前記医薬組成物のpHは好ましくは約6.2である。
【0032】
代替の実施形態では、前記医薬組成物は、
50mg/mlのTGF-β受容体融合タンパク質、
10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、
80mg/mlのスクロース、および
0.4mg/mlのポリソルベート80
を含む;
好ましくは、前記医薬組成物のpHは約6.2である。
【0033】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記TGF-β受容体融合タンパク質は、一般式(I):
【化1】
として示される。
(式中、
TGF-βRII ECDは、TGF-βRIIの細胞外領域のトランケート型であり、
Abは、PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントであり、
Lは、リンカー配列である。)
【0034】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物における前記リンカー配列は、(GS)Gであり、ここで、xは3~6の整数である。代替の実施形態では、xは、3、4、5または6、好ましくは4である。
【0035】
代替の実施形態では、前記TGF-βRIIの細胞外領域のトランケート型は、アミノ末端(N末端とも呼ばれる)に最大26個の連続するアミノ酸残基の欠失を有するTGF-βRII細胞外ドメイン(配列番号14として示される)の配列である。いくつかの実施形態では、前記TGF-βRIIの細胞外領域のトランケート型は、N末端に14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26個の連続するアミノ酸残基の欠失を有するTGF-βRII細胞外ドメインの配列である。いくつかの実施形態では、上記の医薬組成物中の前記TGF-βRII ECDの配列は、配列番号14、15、16または17として示され、好ましくは配列番号15として示されるる。
【0036】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、
配列番号1、配列番号2および配列番号3としてそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3;ならびに
配列番号4、配列番号5および配列番号6としてそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3
を含む。
【0037】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、
配列番号1、配列番号10および配列番号3としてそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3;ならびに
配列番号4、配列番号5および配列番号6としてそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3
を含む。
【0038】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、
配列番号7として示される重鎖可変領域、および
配列番号8として示される軽鎖可変領域;
を含むか、または
配列番号9として示される重鎖可変領域、および
配列番号11として示される軽鎖可変領域
を含む。
【0039】
代替の実施形態では、上記の医薬組成物中の前記PD-L1抗体の重鎖アミノ酸配列は、配列番号12として示されるか、または配列番号12として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有し;前記PD-L1抗体の軽鎖アミノ酸配列は、配列番号13として示されるか、または配列番号13として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有する。
【0040】
上記の医薬組成物の代替の実施形態では、前記TGF-β受容体融合タンパク質において、前記TGF-βRII ECDは、リンカー配列を介して前記PD-L1抗体の重鎖のカルボキシル末端に融合している。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記TGF-β受容体融合タンパク質は、
・TGF-βRII ECDに融合した前記PD-L1抗体の重鎖によって形成される融合ペプチドであって、その配列は配列番号23として示されるか、または配列番号23として示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有する、融合ペプチドと、
・前記PD-L1抗体の軽鎖であって、その配列は配列番号13として示されるか、または配列番号13として示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有する、軽鎖
を含む。
【0042】
他の実施形態では、前記TGF-β受容体融合タンパク質は、
・TGF-βRII ECDに融合した前記PD-L1抗体の重鎖によって形成される融合ペプチドであって、その配列は配列番号24として示されるか、または配列番号24として示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有する、融合ペプチドと、
・前記PD-L1抗体の軽鎖であって、その配列は配列番号13として示されるか、または配列番号13として示される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有する、軽鎖
を含む。
【0043】
本開示はまた、上記の医薬組成物の調製方法であって、TGF-β受容体融合タンパク質を緩衝液と接触させるステップ、例えば、TGF-β受容体融合タンパク質のストック溶液に対して緩衝液置換を行うステップ、を含む調製方法を提供し、前記緩衝液は好ましくはクエン酸緩衝液であり、より好ましくはクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液であり、前記緩衝液の濃度は好ましくは約5mM~約20mMであり、その非限定的な例は、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、12mM、14mM、16mM、18mM、20mM、より好ましくは10mMを含み、前記緩衝液のpHは約6.0~約6.5であり、その非限定的な例は、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、好ましくは6.2を含む。代替の実施形態では、前記緩衝液の濃度は5mM~20mMであり、その非限定的な例は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約12mM、約14mM、約16mM、約18mM、約20mM、より好ましくは約10mMを含む;前記緩衝液のpHは6.0~6.5であり、その非限定的な例は、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、好ましくは約6.2を含む。
【0044】
本開示はまた、上記の医薬組成物の調製方法であって、前記TGF-β受容体融合タンパク質を緩衝液と接触させるステップの後に、得られた溶液にスクロースおよびポリソルベート80を添加するステップ(2つの間に優先順位はない)と、次いで前記緩衝液で体積を調整するステップとをさらに含む、調製方法を提供し、前記緩衝液溶液の濃度は好ましくは約5mM~約20mM、より好ましくは5mM~20mMであり、その非限定的な例は、5mM、8mM、10mM、12mM、14mM、16mM、18mM、20mMを含み、前記緩衝液のpHは約6.0~約6.5であり、その非限定的な例は、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5を含む。
【0045】
本開示はまた、上記の医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む、TGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物の調製方法を提供する。
【0046】
代替の実施形態では、上記のTGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物の調製方法であって、前記凍結乾燥は当技術分野で既知の方法、例えば、限定されるものではないが予備凍結、一次乾燥および二次乾燥を含むステップに従って行われる。当業者は、本開示における医薬組成物から水を除去するための任意の方法が本開示に適用可能であることを理解する。
【0047】
本開示はまた、上記の凍結乾燥調製物を調製するための方法によって調製される、TGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物を提供する。
【0048】
本開示はまた、再構成されて上記の医薬組成物を形成することができる、TGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記凍結乾燥調製物は2℃~8℃で、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、または少なくとも24ヶ月間安定であり得る。いくつかの実施形態では、前記凍結乾燥調製物は40℃で、少なくとも7日間、少なくとも14日間、または少なくとも28日間安定であり得る。
【0050】
本開示はまた、上記のTGF-β受容体融合タンパク質を含む凍結乾燥調製物を再構成することによって得られる、TGF-β受容体融合タンパク質を含む再構成溶液を提供する。
【0051】
本開示はまた、上記のTGF-β受容体融合タンパク質を含む再構成溶液の調製方法であって、上記の凍結乾燥調製物を再構成するステップを含み、再構成に使用される溶液は、限定されるものではないが、注射用水、生理食塩水またはグルコース溶液、好ましくは注射用水を含む。
【0052】
本開示はさらに、本開示による医薬組成物と、容器とを含む、製造品またはキットを提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記容器は、ガラス瓶、例えば限定されるものではないが中性ホウケイ酸ガラスバイアルで作られた注入瓶である。
【0054】
本開示はまた、容器を含む製造品であって、当該容器は上記の医薬組成物、またはその凍結乾燥調製物、またはその凍結乾燥調製物の再構成溶液を含む、製造品を提供する。
【0055】
本開示はまた、医薬品の調製における、以下から選択されるいずれか1つの使用を提供する:上記の医薬組成物、またはその凍結乾燥調製物、またはその凍結乾燥調製物の再構成溶液、または製造品;前記医薬品は、腫瘍細胞の増殖または転移の疾患または障害を処置または抑制するために使用される。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は腫瘍である。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、前立腺癌、腎臓癌、子宮頸癌、骨髄腫、リンパ腫、白血病、甲状腺癌、子宮内膜癌、子宮癌、膀胱癌、神経内分泌癌、頭頸部癌、肝臓癌、上咽頭癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、基底細胞皮膚癌、扁平上皮癌(squamous cell cutaneous carcinoma)、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群からなる群から選択される。
【0058】
本開示はまた、癌細胞の増殖または転移に関連する疾患または障害を処置または抑制するための方法であって、治療有効量の上記の医薬組成物、または凍結乾燥調製物、または再構成溶液、または製造品を、必要とする対象に与えることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法は、0.1mg~3000mgの上記のTGF-β受容体融合タンパク質、医薬組成物、または凍結乾燥調製物、または再構成溶液、または製造品を含む、単位用量の組成物を前記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は腫瘍である。いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、前立腺癌、腎臓癌、子宮頸癌、骨髄腫、リンパ腫、白血病、甲状腺癌、子宮内膜癌、子宮癌、膀胱癌、神経内分泌癌、頭頸部癌、肝臓癌、上咽頭癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、基底細胞皮膚癌、扁平上皮癌(squamous cell cutaneous carcinoma)、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群からなる群から選択される。
【0059】
本発明はまた、癌細胞の増殖または転移に関連する疾患または障害を処置または抑制するための、上記のTGF-β受容体融合タンパク質、医薬組成物、または凍結乾燥調製物、または再構成溶液、または製造品を提供する。いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は腫瘍である。いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、前立腺癌、腎臓癌、子宮頸癌、骨髄腫、リンパ腫、白血病、甲状腺癌、子宮内膜癌、子宮癌、膀胱癌、神経内分泌癌、頭頸部癌、肝臓癌、上咽頭癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、基底細胞皮膚癌、扁平上皮癌(squamous cell cutaneous carcinoma)、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群からなる群から選択される。
【0060】
当業者には周知のように、本開示に記載されているさまざまな実施形態の特徴の1つ、いくつか、またはすべてをさらに組み合わせて、本開示の他の実施形態を形成することができる。本開示の上記の実施形態および組み合わせによって得られる他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】融合タンパク質の構造を示す概略図。
図2】in vitroでのヒトTGF-β1への融合タンパク質の結合を示す結果。
図3】in vitroでのヒトTGF-β1への融合タンパク質の結合を示す結果。
図4】in vitroでのヒトPD-L1への融合タンパク質の結合を示す結果。
図5】in vitroでの融合タンパク質によるPD-1/PD-L1経路ブロッキングの検出を示す結果。
図6】融合タンパク質は、用量依存的にpSMAD3レポーターのTGFβ誘導活性を抑制する。
図7】融合タンパク質のすべてのサンプルは、活性化Tリンパ球によるサイトカインIFN-γの分泌を増強する。
図8】腫瘍保持マウスの腫瘍重量に対する融合タンパク質の効果。
【発明を実施するための形態】
【0062】
用語
【0063】
本開示をより容易に理解するために、特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書で特に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0064】
「緩衝液」とは、酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化に耐えられる溶液を指す。pHを適切な範囲内に制御することができる緩衝液の例には、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩およびグリシルグリシンが含まれる。
【0065】
「ヒスチジン塩緩衝液」とは、ヒスチジンラジカルイオンを含む緩衝液である。ヒスチジン塩緩衝液の例には、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩など、好ましくはヒスチジン-塩酸塩緩衝液が含まれる。ヒスチジン-塩酸塩緩衝液は、ヒスチジンおよび塩酸から調製される。
【0066】
「クエン酸緩衝液」とは、クエン酸ラジカルイオンを含む緩衝液である。クエン酸緩衝液の例には、クエン酸-クエン酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸カリウム、クエン酸-クエン酸カルシウム、クエン酸-クエン酸マグネシウムなどが含まれる。好ましいクエン酸緩衝液は、クエン酸-クエン酸ナトリウムである。
【0067】
「コハク酸緩衝液」とは、コハク酸ラジカルイオンを含む緩衝液である。コハク酸緩衝液の例には、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウムなどが含まれる。好ましいコハク酸緩衝液は、コハク酸-コハク酸ナトリウムである。
【0068】
「リン酸緩衝液」とは、リン酸ラジカルイオンを含む緩衝液である。リン酸緩衝液の例には、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウムなどが含まれる。好ましいリン酸緩衝液は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウムである。
【0069】
「酢酸緩衝液」とは、酢酸ラジカルイオンを含む緩衝液である。酢酸緩衝液の例には、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどが含まれる。好ましい酢酸緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウムである。
【0070】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の1つ以上の化合物またはその生理学的/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を指す。医薬組成物の目的は、活性成分抗体の安定性を維持し、生物への投与を促進し、生物学的活性を発揮するように活性成分の吸収を促進することである。本明細書で使用される「医薬組成物」および「調製物」は、相互に排他的ではない。
【0071】
特に明記しない限り、本開示に記載の医薬組成物の溶液形態に言及する場合、その中の溶媒は水である。
【0072】
「凍結乾燥調製物」とは、液体または溶液形態の医薬組成物を凍結乾燥するステップ(例えば、真空凍結乾燥ステップ)、または液体または溶液形態の調製物を凍結乾燥するステップの後に得られる調製物または医薬組成物を指す。
【0073】
本開示で使用される「約」または「およそ」という用語は、その値が当技術分野の当業者によって決定された特定の値の許容誤差範囲内にあり、その値はどのように測定または決定されるか(すなわち、測定システムの限界)に部分的に依存することを意味する。例えば、当技術分野における「約」または「およそ」は、1未満または1超の標準偏差を指す。あるいは、「約」または「およそ」または「実質的に含む」は、最大20%の範囲を指す。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスの場合、この用語は、その値の最大10倍または最大5倍を意味する。特に明記しない限り、本開示で使用される「約XX」または「およそXX」または「実質的にXXを含む」の意味は、特定の値「XX」の許容誤差範囲内の値(値「XX」自体、ならびに当技術分野の一般的な当業者によって決定されたその値の許容誤差範囲内の値を含む)を指す。
【0074】
本開示に記載の医薬組成物は、安定した効果を達成することができる:TGF-β受容体融合タンパク質またはその医薬組成物は、保管後、物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を実質的に保持する;好ましくは、医薬組成物は、保管後、物理的および化学的安定性ならびにその生物学的活性を実質的に保持する。保管寿命は、一般に、医薬組成物の所定の保管寿命に基づいて決定される。現在、活性成分の安定性を測定するための多くの分析技術が存在し、所与の温度で所与の期間保管した後の安定性を測定することができる。
【0075】
抗体またはタンパク質の安定な医薬調製物は、以下の条件下で有意な変化が観察されない調製物である:冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間、さらにより好ましくは最大2年の保管。さらに、安定な液体調製物には、ある温度(25℃を含む)で1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間保管した後、または40℃で28日間保管した後に所望の特性を示す液体調製物が含まれる。
【0076】
安定性の典型的な許容基準は次のとおりである:SEC-HPLCで測定した場合、通常は約10%以下、好ましくは約5%以下の活性成分(タンパク質、抗体など)が劣化される。目視検査により、医薬調製物は、淡黄色のほぼ無色、透明または無色の液体、または透明からわずかに乳白色、または淡黄色のほぼ無色の透明な液体である。調製物の濃度、pHおよび浸透圧の変化は±10%以下である。約10%以下、好ましくは約5%以下のトランケーションが一般に観察される。通常約10%以下、好ましくは約5%以下の凝集体が形成される。
【0077】
抗体が、色および/または透明度の目視検査、またはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および動的光散乱(DLS)によって、凝集、沈殿および/または変性の有意な増加を示さない場合、医薬調製物中の活性成分は、「その物理的安定性を保持している」と見なされる。タンパク質のコンホメーションの変化は、(タンパク質の三次構造を決定する)蛍光分光法および(タンパク質の二次構造を決定する)FTIR分光法によって評価することができる。
【0078】
医薬調製物中の活性成分(例えば、タンパク質または抗体)は、その活性成分(例えば、タンパク質または抗体)が有意な化学変化を示さない場合、「その化学的安定性を保持している」と見なされる。化学的に変化した形態のタンパク質または抗体を検出および定量化することによって、化学的安定性を評価することができる。タンパク質の化学構造の変化をしばしばもたらす劣化プロセスには、加水分解またはトランケーション(サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEなどの方法によって評価される)、酸化(質量分析またはMALDI/TOF/MSと組み合わせたペプチドマッピングなどの方法によって評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸含有量の測定などの方法によって評価される)、および異性化(イソアスパラギン酸含有量の測定、ペプチドマッピングなどによって評価される)が含まれる。
【0079】
活性成分(例えば、タンパク質または抗体)が、所与の期間、医薬製剤が調製されるときの生物学的活性の所定の範囲内の生物学的活性を示す場合、該活性成分(例えば、タンパク質または抗体)は、医薬調製物中で「その生物学的安定性を保持している」。活性成分(例えば、タンパク質または抗体)の生物学的活性は、例えば、抗原結合アッセイによって決定することができる。
【0080】
本開示で使用される場合、アミノ酸の3文字コードおよび1文字コードは、J. Biol. Chem, 243, 3558頁(1968年)に記載されているとおりである。
【0081】
本開示で使用される場合、「抗体」とは、免疫グロブリン、すなわち、鎖間ジスルフィド結合によって接続された2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖によって形成される4ペプチド鎖構造を指す。
【0082】
本開示において、本開示に記載される抗体軽鎖は、ヒトまたはマウスのκ、λ鎖またはそれらのバリアントを含む軽鎖定常領域をさらに含む。
【0083】
本開示において、本開示に記載される抗体重鎖は、ヒトまたはマウスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントを含む重鎖定常領域をさらに含む。
【0084】
抗体の重鎖および軽鎖のN末端では、約110アミノ酸の領域が大きく異なり、可変領域(Fv領域)として知られている;C末端のアミノ酸配列は比較的安定であり、定常領域として知られている。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、比較的保存された配列を有する4つのFR領域(FR)を含む。3つの超可変領域は相補性決定領域(CDR)としても知られ、抗体の特異性を決定する。各軽鎖可変領域(LCVRまたはVL)および各重鎖可変領域(HCVRまたはVH)は、3つのCDR領域と4つのFR領域から構成され、アミノ末端からカルボキシル末端に次のように配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。3つの軽鎖CDR領域は、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を指す;3つの重鎖CDR領域は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を指す。本明細書の抗体または抗原結合フラグメントのLCVRおよびHCVR領域におけるCDR領域アミノ酸残基の番号および位置は、既知のKabat番号付け基準(LCDR1-3、HCDR1-3)に準拠するか、またはKabatおよびChothia番号付け基準に準拠する;Kabat番号付け基準(Kabat et al(1991年)、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ公衆衛生局、米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州を参照)、およびChothia番号付け基準(Al-Lazikani et al(1997年)JMB 273:927-948頁を参照)。
【0085】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体、好ましくはヒト化抗体を含む。
【0086】
本開示で使用される場合、「抗体またはその結合フラグメント」または「機能的フラグメント」とは、抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、ならびに抗原に結合するFvフラグメント、scFvフラグメントを指す。Fvフラグメントはすべての抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントであり、Fvフラグメントは重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むが、定常領域を含まない。一般に、Fv抗体は、抗原結合に必要な構造を形成するために、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。また、異なるリンカーを使用して、2つの抗体の可変領域を接続して、一本鎖抗体または一本鎖Fv(sFv)と呼ばれるポリペプチド鎖を形成することができる。本開示で使用される場合、「PD-L1との結合」という用語は、ヒトPD-L1と相互作用する能力を意味する。本開示で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、標的抗原を認識して該抗原に特異的に結合する、抗体上またはその抗原結合フラグメント上の不連続または連続した三次元部位を指す。
【0087】
本開示における「マウス抗体」という用語は、当該分野の知識および技能に従って調製された抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体を指す。調製中に、試験対象はPD-L1抗原を注入され、次いで、所望の配列または機能的特徴を有する抗体を発現するハイブリドーマが単離される。
【0088】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト(マウスなど)抗体によって誘導される免疫応答を軽減するために、非ヒト(マウスなど)抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合することによって形成される抗体である。キメラ抗体を確立するために、特定のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを最初に確立し、次いで、可変領域の遺伝子をハイブリドーマ細胞からクローニングし、次いで、ヒト抗体の定常領域の遺伝子を必要に応じてクローニングし、非ヒト(マウスなど)抗体可変領域の遺伝子をヒト定常領域の遺伝子とライゲーションして、ヒトベクターに挿入することができるキメラ遺伝子を形成し、キメラ抗体分子を最終的に真核生物または原核生物の産業システムで発現させる。本開示の好ましい実施形態では、PD-L1キメラ抗体の軽鎖は、ヒトκ、λ鎖またはそのバリアントに由来する軽鎖定常領域をさらに含む。PD-L1キメラ抗体の重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントに由来する重鎖定常領域をさらに含む。ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらのバリアントに由来する重鎖定常領域から選択され得、好ましくは、ヒトIgG2もしくはIgG4、またはアミノ酸変異によりADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害)を伴わないIgG4に由来する重鎖定常領域を含む。
【0089】
CDR移植抗体としても知られる「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体可変領域フレームワークに移植された非ヒト(マウスなど)CDR配列によって生成される抗体、すなわち、ヒト生殖細胞系列抗体フレームワークの異なるタイプの配列から生成される抗体を指す。ヒト化抗体は、大量の非ヒト(マウスなど)成分を有するキメラ抗体によって誘導される強力な抗抗体応答(anti-antibody response)を克服する。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列をカバーする公開されたDNAデータベースまたは公開された参考文献から入手することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(www.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで利用可能)、およびKabat, EA et al. 1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版において見出すことができる。免疫原性の低下によって引き起こされる活性の低下を回避するために、ヒト抗体の可変領域フレームワークは、活性を維持するための最小限の復帰変異に供される。本開示のヒト化抗体は、CDR親和性成熟の目的でファージディスプレイによってさらに得られるヒト化抗体も指す。
【0090】
本開示で使用される場合、「ADCC」という用語、すなわち抗体依存性細胞介在性細胞傷害は、抗体によってコーティングされた標的細胞を、その抗体のFcセグメントを認識することによって直接殺傷するFc受容体を発現する細胞を指す。抗体のADCCエフェクター機能は、IgGのFcセグメントを改変(修飾)することによって低減または排除され得る。改変(修飾)とは、抗体重鎖定常領域の変異、例えば、IgG1におけるN297A、L234A、L235A;IgG2/4キメラ;またはIgG4におけるF234A/L235A変異からなる群から選択される変異を指す。
【0091】
本開示で使用される場合、「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの配列間の類似性の程度を示す。本開示における配列同一性は、少なくとも85%、90%または95%であり、好ましくは少なくとも95%である。非限定的な例には、限定されるものではないが、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が含まれる。2つの配列間の同一性パーセントの比較および決定は、アメリカ国立生物工学情報センターのウェブサイトから利用可能なBLASTN/BLASTPアルゴリズムのデフォルト設定を使用して達成することができる。
【0092】
「TGF-β受容体II」または「TGFβRII」または「トランスフォーミング成長因子β受容体II」という用語は、細胞表面受容体がそれを介して細胞内シグナル伝達経路を誘発する結合リガンド(TGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3を含むが、これらに限定されない)を指す。
【0093】
「PD-L1」という用語は、CD274およびB7H1としても知られるprogrammed death ligand 1を指す。PD-L1は、290アミノ酸のタンパク質であり、細胞外IgV様およびIgC様ドメイン(全長PD-L1のアミノ酸19~239)、膜貫通ドメイン、および約30アミノ酸の細胞内ドメインを有する。PD-L1は、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞など)、ならびに造血および非造血細胞(血管内皮細胞、膵島、免疫特権部位など)などの多くの細胞で恒常的に発現している。PD-L1は、さまざまな腫瘍およびウイルス感染細胞にも発現しており、免疫抑制環境におけるメンバーである(Ribas 2012年、NEJM 366:2517-2519頁)。PD-L1は、2つのT細胞共抑制物質(PD-1およびB7-1)の一方に結合する。
【0094】
本開示の「PD-L1抗体またはその抗原結合タンパク質」は、当技術分野において記載されている任意の抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。抗PD-L1抗体は、市販されているPD-L1抗体であり得るか、または文献に開示されており、限定されるものではないが、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C(US2014341917、US20130034559、US8779108を参照)などを含む。抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る。抗体フラグメントには、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、抗原結合活性を有するF(ab’)フラグメント、ならびに抗原に結合するFvフラグメントおよびscFvフラグメントが含まれる。
【0095】
本開示のPD-L1抗体の例示的な調製プロセスとして、PCT出願PCT/CN2016/104320(公開番号WO2017084495)において公開されており、PD-L1抗体は、以下に記載されるような重鎖可変領域中のCDRの配列を含む:
【化2】
【0096】
代替の実施形態では、XはHまたはGから選択され、XはGまたはFから選択される。
【0097】
別の実施形態では、本開示の例示的なPD-L1抗体は、以下に記載されるような軽鎖可変領域のCDR配列をさらに含む:
【化3】
【0098】
別の実施形態では、上記のCDR領域はCDR移植戦略によってヒト化され、ヒト化軽鎖テンプレートのFRはIGKV7-3*01およびhjk2.1であり、ヒト化重鎖テンプレートのFRはIGHV1-46*01およびhjh6.1であり、ヒト化可変領域配列は以下のとおりである:
【0099】
ヒト化PD-L1抗体の重鎖可変領域:
【化4】

配列番号7、ここでXはHまたはGから選択され、XはGまたはFから選択される。
【0100】
ヒト化PD-L1抗体の軽鎖可変領域:
【化5】
【0101】
注:順序はFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック部分はFR配列を表し、下線部分はCDR配列を表す(CDRのアミノ酸残基は、Kabat番号付け基準に基づいて決定および表示される)。
【0102】
別の実施形態では、本開示のヒト化抗体の復帰変異の設計が行われ、設計された復帰変異が以下の表1に示されている:
【0103】
表1.復帰変異の設計
【表1】
【0104】
注:例えば、Y91Fは、天然番号付けに従って、位置91におけるYからFへの復帰変異を示す。「移植された」は、マウス抗体CDRがヒト生殖細胞系列FR配列に移植されることを示す。
【0105】
表1に示す重鎖および軽鎖のさまざまな変異の組み合わせによって、新しいヒト化抗体を得ることができる。
【0106】
本開示の別の態様において、ヒト化クローンを構築するための実施形態は、以下のように提供される:
【0107】
プライマーを設計し、各ヒト化抗体のVH/VK遺伝子フラグメントをPCRにより構築した後、(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-Fc/CL)フラグメントを有する)発現ベクターpHrに挿入して相同組換えを行い、全長抗体発現ベクターVH-CH1-Fc-pHr/VK-CL-pHrを構築した。
【0108】
1.プライマー設計
オンラインソフトウェアDNAWorks(v3.2.2)(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を用いて、組換えに必要な遺伝子フラグメントを含むVH/VK(5’-30bp シグナルペプチド+VH/VK+30bp CH1/CL-3’)の合成用の複数のプライマーを設計した。
【0109】
2.フラグメントスプライシング
TaKaRaのPrimer STAR GXL DNA polymeraseのマニュアルに従って、上記で設計したプライマーを使用して、組換えに必要な遺伝子フラグメントを含むVH/VKを、2ステップPCR増幅によって得た。
【0110】
3.(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを有する)発現ベクターpHrの構築および酵素消化
配列と制限部位との間の特有の特徴を認識するBsmBIなどのいくつかの特別な制限エンドヌクレアーゼを使用して、(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを有する)発現ベクターpHrを設計および構築した。ベクターをBsmBIを使用して消化した後、消化したフラグメントをゲルを用いて抽出し、使用のために保存した。
【0111】
4.発現ベクターVH-CH1-Fc-pHr/VK-CL-pHrの組換え構築
組換えに必要な遺伝子フラグメントを含むVH/VKと、BsmBIで消化された(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-Fc/CL)フラグメントを有する)発現ベクターpHrを、3:1の比率でDH5Hコンピテント細胞に添加し、氷上にて0℃で30分間インキュベートし、42℃で90秒間熱ショックを与え、5倍量のLB培地を添加し、37℃で45分間インキュベートした後、LB-Ampプレート上にプレーティングし、37度で一晩培養した。配列決定のために単一のクローンを拾い上げ、目的のクローンを得た。
【0112】
5.本実施例の設計に従ってプラスミドを構築した後、精製タンパク質を発現させ、得られたタンパク質の親和性をSPR実施例に記載の検出により測定した。
【0113】
6.最後に、ヒトPD-L1-hisに対するヒト化復帰変異変異体またはハイブリドーマ抗体の親和性をBIACOREによって測定した。ヒト化復帰変異部位およびスクリーニングから得られた配列の組み合わせは以下のとおりである:
【0114】
PD-L1抗体の重鎖可変領域:
【化6】
ここで、HCDR2はRIGPNSGFTSYNEKFKN(配列番号10)に示すとおりである。すなわち、配列番号7のXはGであり、配列番号7のXはFである;
【0115】
PD-L1抗体の軽鎖可変領域:
【化7】
配列番号11
【0116】
注:順序はFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック部分はFR配列を表し、下線部分はCDR配列を表す(CDRのアミノ酸残基は、Kabat番号付け基準に基づいて決定および表示される)。
【0117】
本開示の別の態様において、抗PD-L1ヒトIgG4タイプ抗体を構築および発現するための実施形態が提供され、さらに、融合タンパク質の構築に使用されるPD-L1抗体が提供される。PD-L1抗体はまた、本開示の試験例においてコントロール分子として使用され得る。
【0118】
PD-L1は活性化T細胞でも発現されるので、野生型IgG1定常領域の使用は、(ADCCおよびCDCなどの)Fc媒介性効果を引き起こすことができ、その結果、活性化T細胞が減少する可能性がある。本開示は、ADCCおよびCDCなしの抗体を得るために変異IgG4を選択した。親和性成熟によって得られたクローンはIgG4タイプに変換され、IgG4のコアヒンジ領域はS228P変異(配列番号12の天然配列における位置227に対応する)を含む。F234A(配列番号12の天然配列における位置233に対応する)およびL235A変異(配列番号12の天然配列における位置234に対応する)がさらに導入された(mAbs 4:3, 310-318頁;2012年5月/6月)。同時に、(TGF-βRII細胞外ドメインを連結するために使用される)リンカーペプチドが導入されたときに抗体重鎖のC末端で生じる切断を回避するために、PD-L1抗体重鎖の末端位置のKが、融合タンパク質の安定性を高めるようにA(配列番号12の天然配列におけるの最後の位置に対応する)にさらに変異された。融合タンパク質の構築に使用される本開示のPD-L1抗体の配列は、以下のとおりである:
【0119】
PD-L1抗体重鎖:IgG4(AA)(S228P)
【化8】
【0120】
注:下線部分は重鎖可変領域配列であり、下線なし部分は重鎖定常領域配列である(イタリック体の部分は変異部位である);
【0121】
PD-L1抗体軽鎖:
【化9】
【0122】
注:下線部分は軽鎖可変領域配列であり、下線なし部分は軽鎖定常領域配列である。
【0123】
本開示で使用される場合、本開示に記載される融合タンパク質は、DNA組換え技術を介して2つの遺伝子を共発現することによって得られるタンパク質産物である。抗体および抗原結合フラグメントを産生および精製するための方法は当技術分野で周知であり、(例えば、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor、第5-8章および第15章において)見出すことができる。例えば、マウスをヒトPD-L1またはそのフラグメントで免疫化し、次いで、得られた抗体を当技術分野で周知の従来の方法を使用することによって、再生し、精製し、そしてアミノ酸配列について配列決定することができる。抗原結合フラグメントはまた、従来の方法によって調製することができる。本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、非ヒト抗体に由来するCDRを1つ以上のヒトFRに移植するように操作される。MOEソフトウェアを用いてIMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系列のデータベースに対してアラインメントすることにより、ヒトフレームワーク生殖細胞系列配列をImMunoGeneTics(IMGT)ウェブサイト(http://imgt.cines.fr)から、またはThe Immunoglobulin Facts Book、2001年、ISBN012441351から入手することができる。
【0124】
本開示の操作された抗体または抗原結合フラグメントは、既知の方法を使用して調製および精製することができる。例えば、重鎖および軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングして、GS発現ベクターに組み込むことができる。次いで、操作された免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞に安定的にトランスフェクトすることができる。当技術分野で知られているより推奨される方法として、哺乳動物発現系は、典型的にはFc領域の高度に保存されたN末端部位において、抗体のグリコシル化をもたらす。安定なクローンは、ヒトPD-L1に特異的に結合する抗体の発現によって得ることができる。陽性クローンは、バイオリアクターでの抗体産生のために無血清培養培地で増殖させることができる。抗体が分泌された培養培地は、従来の技術によって精製することができる。例えば、該培地は、適合性のある緩衝液で平衡化されたProtein AまたはGセファロースFFカラムにロードされ得る。カラムは洗浄され、非特異的結合成分が除去される。結合した抗体をpHグラジエントによって溶出し、抗体画分をSDS-PAGEによって検出して収集する。抗体は、一般的な技術を使用して濾過および濃縮することができる。可溶性の凝集体および多量体は、サイズ排除またはイオン交換を含む一般的な技術によって効果的に除去することができる。生成物は、例えば-70℃で直ちに凍結するか、または凍結乾燥することができる。
【0125】
本開示の「免疫調節分子」は、癌細胞の免疫寛容を弱めるために使用され得る。本開示は、融合タンパク質における免疫調節分子として、TGF-βRII細胞外ドメインのトランケート型を使用する。「TGF-β受容体II(TGF-βRII)」は、リガンドTGF-β1およびTGF-β3に高い親和性で結合する。TGF-βRII/TGF-β複合体はTGF-βRIを動員して、シグナル伝達複合体を形成する(Won et al, Cancer Res. 1999年;59:1273-7頁)。TGF-βRII細胞外ドメインは、TGF-βRII細胞外のN末端からの136アミノ酸残基のペプチドであり、その例示的な例が配列番号14に示されている。TGF-β1およびTGF-β3に結合することができる、約136アミノ酸の長さで、ヒトTGF-βRII細胞外ドメインに由来する他のバリアントも、本開示のTGF-βRII細胞外ドメインに属する。本開示は、TGF-βRII細胞外ドメインのN末端連続トランケート型の構造および機能がトランケートされていない分子のそれよりも安定であることを見出した。TGF-βRII細胞外ドメインのN末端非トランケート型(配列番号14のアミノ酸1~136として示されるポリペプチド)を含む融合タンパク質は破壊されやすい。特に、N末端から26個未満の連続したアミノ酸がトランケートされたTGF-βRII細胞外ドメインはより安定である;好ましくはN末端から14~26個、より好ましくはN末端から14~21個の連続したアミノ酸がトランケートされたTGF-βRII細胞外ドメインはより高い発現レベルを有する;最も好ましくは19または21個の連続したアミノ酸がトランケートされる。
【0126】
「TGF-β受容体融合タンパク質」という用語は、TGF-β受容体を含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示のTGF-β受容体融合タンパク質は、国際特許出願PCT/CN2018/086451(WO2018205985A1)に記載のTGF-β受容体融合タンパク質である。WO2018205985A1の全内容は、本開示に完全に組み込まれる。いくつかの実施形態では、TGF-β受容体融合タンパク質は、PD-L1抗体/TGF-βRII細胞外ドメイン融合タンパク質(PD-L1/TGF-βトラップ)であり、TGF-βRII細胞外ドメインは融合タンパク質の免疫調節分子部分として機能し、PD-L1抗体は融合タンパク質の標的化部分として機能し、TGF-βRII細胞外ドメイン(例えば、配列番号14、15、16または17として示される)は、リンカー配列(例えば、(GS)G、xは3~6である)によってPD-L1抗体の重鎖のC末端(カルボキシル末端としても知られる)に接続されて融合配列を形成し、当該融合配列は鎖間ジスルフィド結合を介してPD-L1抗体の軽鎖に接続されて、最終的にPD-L1/TGF-βトラップ融合タンパク質を形成し、その構造が図1に示されている。いくつかの実施形態では、TGF-β受容体融合タンパク質は、本開示の実施例1の表2に記載されている融合タンパク質である。
【0127】
「リンカー」または「リンカー配列」という用語は、通常はある程度の柔軟性を有し、タンパク質ドメインを接続するために使用される接続ペプチド配列を指し、リンカーの使用はタンパク質ドメインの本来の機能の喪失をもたらさない。本開示のいくつかの実施形態では、リンカー配列は(GS)Gであり、ここでxは3~6であり、例えば、リンカー配列は(GS)G、(GS)G、(GS)Gまたは(GS)Gなどのポリペプチドである。
【0128】
「保存的改変(修飾)」または「保存的置換(conservative replacement or substitution)」とは、タンパク質中のアミノ酸を類似の特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖コンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを指し、そのような変更はタンパク質の生物学的活性を変えることなく頻繁に行うことができる。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watson et al.(1987年)Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., 224頁(第4版)を参照)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換が生物学的活性を破壊する可能性は低い。
【0129】
「任意の」または「任意に」とは、後に続く出来事または状況が発生する可能性があるが、必ずしも発生するとは限らないことを意味し、その記載には、出来事または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれる。例えば、「任意に、1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列を有する抗体重鎖可変領域が存在し得るが、必ずしも存在するとは限らないことを意味する。
【0130】
「投与」、「投与すること」および「処置」とは、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、臓器、または生体液に適用される場合、外因性の医薬品、治療用薬剤、診断用薬剤または組成物の動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器または生体液への接触を指す。「投与」、「投与すること」および「処置」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究、および実験方法を指すことができる。細胞の処置(処理)は、試薬を細胞と接触させること、ならびに流体が細胞と接触している場合に試薬を該流体と接触させることを包含する。「投与」、「投与すること」および「処置」は、例えば、試薬、診断、結合組成物による、または別の細胞による、細胞のin vitroでの処置およびex vivoでの処置も意味する。「投与」または「処置」は、ヒト、獣医、または研究対象に適用される場合、研究および診断用途に対する治療的処置、予防的または予防的手段(prophylactic or preventative measures)を指す。
【0131】
「処置する」とは、本開示の組成物などの治療用薬剤を、該薬剤が既知の治療活性を有する1つ以上の疾患症状を有する対象に、内部的にまたは外部的に投与することを意味する。典型的には、薬剤は、処置される対象または集団における1つ以上の疾患症状を軽減するのに有効な量で投与され、臨床的に測定可能な程度で、そのような症状の退行を誘発するか、そのような症状の進行を予防する。任意の特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療用薬剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、対象の病状、年齢および体重、ならびに対象において所望の反応を誘発する薬剤の能力などの因子に応じて変動し得る。疾患症状が軽減されたかどうかは、その症状の重症度または進行状況を評価するために医師または他の熟練した医療提供者が通常使用する任意の臨床測定によって評価することができる。本開示の一実施形態(例えば、処置方法または製造品)は、すべての対象において標的疾患症状を軽減するのに有効ではないかもしれないが、スチューデントのt検定、カイ2乗検定、マンおよびホイットニー(Mann and Whitney)によるU検定、クラスカル-ウォリス(Kruskal-Wallis)検定(H検定)、ヨンクヒール-タプストラ(Jonckheere-Terpstra)検定、およびウィルコクソン検定などの当技術分野で既知の任意の統計的試験によって決定される統計的に有意な数の対象において、標的疾患症状を軽減するはずである。
【0132】
「有効量」とは、医学的状態の症状または徴候を改善または予防するのに十分な量を包含する。有効量は、診断を可能または容易にするのに十分な量も意味する。特定の対象または獣医学的対象についての有効量は、処置される状態、対象の総合的な健康状態、投与の経路および用量、ならびに副作用の重症度などの因子に応じて変化し得る。有効量は、重大な副作用または毒性効果を回避する最大投与量または投与プロトコルであり得る。
【0133】
「Tm値」とは、タンパク質に熱変性が起こる温度、すなわち、タンパク質の半分がアンフォールドする(unfolded)温度を指す。このとき、タンパク質の空間構造は破壊される。したがって、Tm値が高いほど、タンパク質の熱安定性が高い。
【0134】
「置換」とは、抗体タンパク質を溶解する溶媒系の置換を指す。例えば、抗体タンパク質を含む高塩または高張溶媒系は、安定な調製物用の緩衝系に対する物理的操作を使用して置換され、その結果、抗体タンパク質は安定な調製物中に存在することができる。物理的操作には、限定されるものではないが、限外濾過、透析、または遠心分離後の再構成が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【0135】
以下、実施例、試験例または調製例を参照して、本開示をさらに説明する。しかしながら、実施例、試験例または調製例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲はそれに限定されない。
【0136】
本開示の実施例、試験例または調製例において、特定の条件が記載されていない場合、それらは、一般に、従来の条件下で、または材料もしくは製品の製造業者によって提案された条件下で行われる。試薬の供給源が具体的に示されていない場合、その試薬は市販の従来の試薬である。
【実施例
【0137】
実施例1:融合タンパク質PD-L1/TGF-βトラップのクローニングおよび発現
【0138】
TGF-βRII細胞外ドメイン(配列番号14の全長またはトランケート型)を融合タンパク質における免疫調節分子の部分として使用し、PD-L1抗体を融合タンパク質の標的化部分として使用して、PD-L1抗体/TGF-βRII細胞外ドメイン融合タンパク質(PD-L1/TGF-βトラップ)を形成した。
【0139】
驚くべきことに、TGF-βRII細胞外ドメインのトランケート型は比較的安定であり、特にそのN末端から26アミノ酸未満をトランケーションした後はより安定であり、好ましくは、より高い発現レベルおよびより安定な構造が、N末端から14~26個のアミノ酸をトランケーションした後に、より好ましくはN末端から14~21個の連続したアミノ酸をトランケーションした後に、より好ましくはN末端から14、19または21個の連続したアミノ酸をトランケーションした後に得られることが見出された。
【0140】
本開示におけるTGF-βRII細胞外ドメインおよびそのトランケート型の非限定的な例の配列は、以下のとおりである:
【0141】
TGF-βRII細胞外ドメインの配列:ECD(1-136)
【化10】
【0142】
N末端に19アミノ酸のトランケーションまたは欠失を有するTGF-β RII細胞外ドメインの配列:ECD(20-136)
【化11】
【0143】
N末端に21アミノ酸のトランケーションまたは欠失を有するTGF-β RII細胞外ドメインの配列:ECD(22-136)
【化12】
配列番号16
【0144】
N末端に14アミノ酸のトランケーションまたは欠失を有するTGF-β RII細胞外ドメインの配列:ECD(15-136)
【化13】
【0145】
一例として、本開示のPD-L1抗体(重鎖が配列番号12に示され、軽鎖が配列番号13に示されるPD-L1抗体)の重鎖C末端アミノ酸を、相同組換え技術によって、リンカー(GS)G(xは3~6である)により、さまざまな長さのTGF-βRII細胞外ドメインにライゲーションし、PD-L1抗体の軽鎖と一緒に293発現系で従来の方法で発現させ、そして得られた融合タンパク質を表2に示す:
【0146】
表2.PD-L1抗体/TGF-βRII細胞外ドメインの融合タンパク質
【表2】
【0147】
注:Abは、本開示のPD-L1抗体(配列番号12として示され重鎖、および配列番号13として示される軽鎖)を表す;配列説明中のECD(n-136)は、TGF-βRII細胞外ドメインの全長またはトランケート型を表す;nは、TGF-βRII細胞外ドメインのトランケーション後のアミノ酸の開始番号を表す。本開示の融合タンパク質の構造を図1に示す;N19Aは、全長TGF-βRII細胞外ドメイン(配列番号14)の位置19のアミノ酸がNからAに変異していることを示す。
【0148】
PD-L1抗体をコードするヌクレオチド配列、TGF-βRII細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列、およびリンカータンパク質フラグメント((GS)G)のヌクレオチド配列は、当技術分野における従来の技術によって得られた。PD-L1抗体のC末端ヌクレオチドを相同組換え技術によって、リンカータンパク質を介して、長さの異なるTGF-βRII細胞外ドメインのN末端ヌクレオチドにライゲーションし、次いで、Phr-BsmbIベクターにクローニングした。組換えPD-L1/TGF-βトラップを293細胞で発現させ、実施例2に記載のように精製した。精製したタンパク質は、以下の例の実験において使用することができる。
【0149】
実施例2:PD-L1/TGF-βトラップ融合タンパク質の精製
【0150】
細胞培養培地を高速遠心分離し、上清を回収し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製の第1ステップを行った。クロマトグラフィー媒体は、Protein AまたはFcと相互作用する誘導フィラー(例えば、GEのMabselect)である。平衡化緩衝液は、1×PBS(137mmol/L NaCl、2.7mmol/L KCl、10mmol/L NaHPO、2mmol/L KHPO、pH7.4)であった。5×カラム容量で平衡化した後、細胞上清を結合のためにロードし、サンプルが1分間以上カラム上に残るように流速を制御した。サンプルをロードした後、A280 UV吸収がベースラインに低下するまで、カラムを1×PBS(pH7.4)で洗浄した。次いで、カラムを0.1Mグリシン(pH3.0)溶出緩衝液で洗浄し、A280 UV吸収ピークに従って溶出ピークを回収し、回収した溶出サンプルを1M Tris(pH8.5)で中性化した。
【0151】
中性化した溶出サンプルを限外濾過により濃縮し、次いでサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。緩衝液は1×PBSであり、カラムはXK26/60 Superdex 200 (GE)であった。流速を4ml/分に制御し、ロード量を5ml未満とし、標的タンパク質のピークをA280のUV吸収に従ってプールした。収集したタンパク質の純度は、SEC-HPLCによって同定した場合95%超であり、LC-MSで確認された。確認したサンプルを、使用のために分注した。PD-L1/TGF-βトラップが得られた。
【0152】
本開示におけるPD-L1/TGF-βトラップ融合タンパク質の性能および有益な効果は、以下に示すような生化学的試験方法によって検証される。
【0153】
試験例(in vivo、in vitroでの生物学的評価)
【0154】
試験例1:TGF-β1に結合するPD-L1/TGF-βトラップのin vitro ELISA検出
【0155】
検出プロセスは次のとおりである:
a.96ウェルプレートを、1μg/mlの濃度のヒトTGF-β1(8915LC、CST)100μl/ウェルで、4℃で一晩コーティングした。
b.250μlの1×PBSTで3回洗浄し、250μlの5%ミルクPBSを添加して、37℃で2時間ブロッキングした。
c.250μlの1×PBSTで3回洗浄し、PD-L1/TGF-βトラップの勾配希釈液を添加し、TGF-βトラップをポジティブコントロールとして使用し、37℃で1時間インキュベートした。
d.250μlの1×PBSTで3回洗浄した。
e.100μlの抗ヒトFc抗体-HRP(1:4000)を各ウェルに添加し、37℃で40分間インキュベートした。
f.100μlのTMBを各ウェルに添加し、室温で10分間インキュベートし、100μlの1M HSOを添加することによって反応を停止させた。
g.450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、データをGraphpad Prism 5によって分析した。
【0156】
融合タンパク質のヒトTGF-β1へのin vitroでの結合の結果を図2および3に示す。ELISAは、表2中の融合タンパク質1がヒトTGF-β1への結合活性を保持しないことを示した。質量分析は、融合タンパク質1(すなわち、TGF-βRII細胞外ドメイン(1-136)の非トランケート型)が不安定であり、重鎖TGF-βRIIにおいて容易に破壊され、ポジティブコントロールが同じ欠陥を有することを示した。TGFβRIIの細胞外ドメインのN末端トランケート型を含む融合タンパク質、例えば、融合タンパク質7、9、10、12~15は、ヒトTGF-β1に特異的に結合する。
【0157】
試験例2:PD-L1に結合するPD-L1/TGF-βトラップのin vitro ELISA検出
【0158】
検出に用いた抗原:PD-L1-His
【化14】
【0159】
検出プロセスは次のとおりである:
a.96ウェルプレートを、5μg/mlの濃度のヒトPD-L1-His(配列番号18)100μl/ウェルで、4℃で一晩コーティングした。
b.250μlの1×PBSTで3回洗浄し、250μlの5%ミルクPBSを添加して、37℃で2時間ブロッキングした。
c.250μlの1×PBSTで3回洗浄し、PD-L1/TGF-βトラップの勾配希釈液とポジティブコントロールとしてのPD-L1抗体を添加し、37℃で1時間インキュベートした。
d.250μlの1×PBSTで3回洗浄した。
e.100μlの抗ヒトFc抗体-HRP(1:4000)を各ウェルに添加し、37℃で40分間インキュベートした。
f.100μlのTMBを各ウェルに添加し、室温で10分間インキュベートし、100μlの1M HSOを添加することによって反応を停止させた。
g.450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、データをGraphpad Prism 5によって分析した。
【0160】
本開示の融合タンパク質のヒトPD-L1へのin vitroでの結合の結果を図4に示す。ELISAは、すべての融合タンパク質がヒトPD-L1への結合活性を保持していることを示した。
【0161】
試験例3:in vitroにおけるPD-1/PD-L1経路のブロッキング検出
【0162】
1.試験目的:
【0163】
PD-1/PD-L1シグナル伝達経路に対するPD-L1/TGF-βトラップのブロッキング効果を調べるために、細胞ベースの抗体ブロッキング実験が、Promegaによって構築されたヒトPD-1およびPD-L1受容体分子をそれぞれ保持する細胞で行われた。
【0164】
2.試験サンプル
【0165】
(1)配列番号12として示される重鎖および配列番号13として示される軽鎖を有するPD-L1抗体;
【0166】
(2)コントロール1(20T-Fc):ECD(20-136)-Fc(トランケートされたTGF-βRII細胞外ドメインフラグメントECD(20-136)およびFcを含む融合タンパク質)。その配列は以下のとおりである:
【化15】
【0167】
(3)コントロール2(22T-Fc):ECD(22-136)-Fc(トランケートされたTGF-βRII細胞外ドメインフラグメントECD(22-136)とFcの融合タンパク質)。その配列は以下のとおりである:
【化16】
【0168】
(4)本開示の実施例1で調製したTGF-β受容体融合タンパク質:融合タンパク質9、融合タンパク質15:
【0169】
融合タンパク質9において、PD-L1抗体重鎖-(GS)G-TGF-βRII ECD(20-136)の融合ペプチド配列は、以下のとおりである:
【化17】
【0170】
注:通常のフォントはPD-L1抗体の重鎖の配列であり、イタリック体はリンカー配列であり、下線はTGF-βRII細胞外領域のトランケートされたフラグメントECD(20-136)の配列である。
【0171】
融合タンパク質9におけるPD-L1抗体の軽鎖配列は、以下のとおりである:
【化18】
【0172】
融合タンパク質15におけるPD-L1抗体重鎖-(GS)G-TGF-βRII ECD(22-136)の融合ペプチド配列は、以下のとおりである:
【化19】
【0173】
注:通常のフォントはPD-L1抗体の重鎖の配列であり、イタリック体はリンカー配列であり、下線はTGF-βRII細胞外領域のトランケートされたフラグメントECD(22-136)の配列である。
【0174】
融合タンパク質15におけるPD-L1抗体の軽鎖配列は、以下のとおりである:
【化20】
【0175】
(5)ヒトIgG:ブランクコントロール、Protein Aなどの従来のアフィニティークロマトグラフィー法を用いた精製によって混合正常ヒト血清から得られたヒト免疫グロブリン;
【0176】
(6)ポジティブコントロール(FP17022):PD-L1抗体2/TGF-βRII細胞外ドメインの融合タンパク質;
【0177】
FP17022融合タンパク質におけるPD-L1抗体2軽鎖のアミノ酸配列:
【化21】
【0178】
FP17022融合タンパク質におけるPD-L1抗体2重鎖/TGF-βRII細胞外ドメイン(1-136)の融合ペプチドのアミノ酸配列:
【化22】
【0179】
3.試験プロセス
【0180】
CHO/PD-L1細胞(CS187108、Promega)を消化し、F-12 Nutrient Mixture(Ham)完全培地に再懸濁した。細胞計数の結果に従って、完全培地を用いて細胞密度を4×10/mLに調整した。細胞懸濁液をローディングタンクに移し、マルチチャネルピペットを用いて100μL/ウェルで96ウェルプレートに添加し、37℃、5%COのインキュベーターで20~24時間インキュベートした;翌日、Jurkat/PD-1(CS187102、Promega)細胞懸濁液を調製し、アッセイ培地を使用して細胞計数の結果に従って細胞を再懸濁し、細胞密度を1.25×10/mLに調整した;インキュベーターからCHO/PD-L1細胞を含む細胞培養プレートを取り出し、マルチチャネルピペットを用いてウェル当たり95μLの培養液を取り出し、勾配希釈した融合タンパク質、PD-L1抗体およびポジティブコントロール(FP17022)をそれぞれ40μL/ウェルで添加した。次いで、Jurkat/PD-1細胞懸濁液をローディングタンクに移し、40μL/ウェルで細胞培養プレートに添加し、37℃、5%COで5~6時間インキュベートした。タンパク質とのインキュベーション中に、Bio-Glo(商標)試薬を取り出し、室温に戻した。細胞培養プレートを取り出し、室温で5~10分間置いた。次に、40μLのBio-Glo(商標)試薬を各ウェルに添加し、安全キャビネット内で5~10分間インキュベートし、多機能マイクロプレートリーダーを使用して化学発光シグナル値を読み取った。
【0181】
4.結果
【0182】
図5に示すように、ポジティブコントロール分子と同様に、本開示の融合タンパク質9は、PD-1発現Jurkat細胞のCHO/PD-L1細胞への結合を効果的にブロックすることができ、薬物濃度および用量依存的効果があった。融合タンパク質15は、融合タンパク質9と同じブロッキング能力を有する。
【0183】
試験例4:Biacoreによるin vitroでの結合親和性および動態検出
【0184】
ヒトもしくはマウスTGF-β1またはヒトPD-L1タンパク質に対する試験分子の親和性を、Biacore T200(GE)によって決定した。実験手順は以下のとおりである:
【0185】
一定量のPD-L1/TGF-βトラップをProtein Aチップで捕捉した後、ヒトもしくはマウスTGF-β1(8915LC、CST)またはヒトPD-L1(Sino Biological)をチップの表面に流した。反応シグナルを、Biacoreを用いてリアルタイムで検出し、会合および解離曲線を得た。次に、バイオチップを洗浄し、グリシン-塩酸(pH1.5、GE)で再生した。実験に使用した緩衝溶液は、HBS-EP緩衝液(GE)であった。BIAevaluation version 4.1ソフトウェア(GE)を使用して、実験データを(1:1)Langmuirモデルにフィッティングし、親和性値を取得し、表3に示した。
【0186】
表3:in vitroにおける本開示の融合タンパク質のTGF-β1またはヒトPD-L1に対する親和性
【表3】
【0187】
融合タンパク質の結合活性を表3に示す。結果は、本開示の融合タンパク質9および融合タンパク質15がヒト、マウスTGF-β1およびヒトPD-L1に対して極めて高い親和性を有することを示している。
【0188】
試験例5:SMAD3レポーター遺伝子抑制アッセイ
【0189】
1.試験目的:
【0190】
この実験では、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を有するSmad3結合エレメント(SBE)をHepG2細胞で発現させ、TGF-β1誘導Smad3活性化に対するPD-L1/TGF-βトラップの抑制効果を検討し、in vitroでのPD-L1/TGF-βトラップの活性をIC50値に従って評価した。
【0191】
2.試験サンプル:融合タンパク質9、ポジティブコントロール(FP17022)。
【0192】
3.試験プロセス
【0193】
HepG2細胞を、10%FBSを含むMEM完全培地(GE、SH30243.01)中で培養し、3日毎に継代培養した。実験の初日に、1ウェルあたり25,000個の細胞を96ウェルプレート(Corning、3903)に播種し、37℃、5%COで24時間培養した。翌日、細胞培養プレートの培地を廃棄し、1ウェルあたり100ngの3TP-Luxプラスミドをトランスフェクトした。細胞を37℃、5%COで24時間さらに培養した。試験サンプルの添加の6時間前に、96ウェルプレートの完全培地を廃棄し、80μLの不完全培地(MEM+0.5%FBS)を各ウェルに添加した。6時間後、不完全培地で調製した10μLのヒトTGF-β1(R&D、240-B-010)溶液(最終濃度2ng/mL)と、10μLの試験サンプル(最終濃度は500、50、5、0.5、0.05、0.005、0.0005および0nM)を添加し、ヒトTGF-β1溶媒をコントロールとして使用し、細胞を37℃、5%COでさらに18時間培養した。次に、調製したルシフェラーゼ基質ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(promega、E6110)100μLを各ウェルに添加し、室温にて10分間暗所でインキュベートした後、Victor 3マルチプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して発光シグナル値を読み取った。試験サンプルのIC50値は、データソフトウェアGraphpad Prism 5.0を用いて計算することによって取得された。
【0194】
図6は、融合タンパク質9がTGFβ誘導pSMAD3レポーター活性を用量依存的に抑制し、ポジティブコントロールFP17022と同等の有効性およびIC50(最大活性の50%を抑制するのに必要な濃度)を有することを示した。PD-L1抗体の試験結果は、それが抑制効果を有さないことを示した(IC50>500nM)。
【0195】
試験例6:ツベルクリン(TB)刺激によるPBMCによるIFNγ分泌のin vitro検出
【0196】
1.試験目的
【0197】
PD-L1/TGF-βトラップによるTリンパ球の活性化を調べるために、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を収集および精製し、ツベルクリン(TB)でin vitroで5日間刺激して、IFNγサイトカインの分泌レベルを検出した。
【0198】
2.サンプル
(1)ヒトIgG;
(2)PD-L1抗体;
(3)融合タンパク質9;
(4)コントロール1(20T-Fc):ECD(20-136)-Fc;
(5)PD-L1抗体+コントロール1(20T-Fc)。
【0199】
3.試験プロセス
【0200】
20μLのツベルクリンを、新たに単離および精製したPBMC(15mL、約3×10)に添加し、インキュベーター内で、37℃、5%COで5日間培養した。6日目に、培養細胞を回収および遠心分離し、PBSで1回洗浄し、新鮮な培地に再懸濁して密度を1×10細胞/mlに調整し、90μlの再懸濁細胞を96ウェルプレートに加えた。10μL/ウェルの異なる濃度の抗体を、上記の96ウェル細胞培養プレートの対応するウェルに別々に添加し、10μLのPBSをコントロール群およびブランク群にそれぞれ添加した。次いで、細胞培養プレートをインキュベーター内で、37℃、5%COで3日間インキュベートした。細胞培養プレートを取り出し、遠心分離(4000rpm、10分)後、各ウェルから上清を採取した。10倍希釈後、特定の操作に関する試薬の指示に従って、IFN-γの分泌をELISA(ヒトIFN-γ検出キット、NEOBIOSCIENCE、EHC 102g.96)によって検出した。表4に示すように、すべてのPD-L1/TGF-βトラップ融合タンパク質サンプルは、活性化Tリンパ球によるサイトカインIFN-γの分泌を増強することができ、薬物濃度用量効果が認められた。
【0201】
表4.サイトカインIFN-γの分泌結果
【表4】
【0202】
4.結果
【0203】
図7および表4に示すように、融合タンパク質9は活性化Tリンパ球を増強してサイトカインIFN-γを用量依存的に分泌させることができ、PD-L1抗体および20T-FCよりも強い活性化効果を有していた。
【0204】
試験例7:薬物動態評価
【0205】
雌のSDラット3匹をJie Si Jie Laboratory Animal Co., Ltd.から購入し、12/12時間の明暗サイクル(温度は24±3℃、相対湿度は50~60%)で維持し、ラットは水および食餌を自由に摂取できた。実験当日、SDラットに6mg/kgの用量および5ml/kgの注射量で尾静脈に融合タンパク質を注射した。
【0206】
投与後15分、7時間(1日目)、24時間(2日目)、3日目、4日目、6日目、8日目、10日目および15日目の時点で採血し、200μlの血液(100μlの血清に相当)をラットの眼底静脈から採取した。血液サンプルを室温で30分間置いて凝集させた後、10000gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を採取し、直ちに-80℃で保存した。血清中の融合タンパク質の濃度をELISAによって測定した。
【0207】
測定プロセスは次のとおりである:
a.96ウェルプレートを、2μg/mlの濃度のヒトPD-L1-His(100μl/ウェル)で、4℃で一晩コーティングした。
b.250μlの1×PBSTで4回洗浄し、250μlの5%ミルクPBSを添加して、37℃で3時間ブロッキングした。
c.250μlの1×PBSTで4回洗浄し、100μlの勾配希釈血清サンプルを添加し、37℃で1時間インキュベートし、融合タンパク質9をポジティブコントロールとして使用した。
d.250μlの1×PBSTで5回洗浄した。
e.100μl/ウェルのビオチン化抗ヒトTGF-βRII抗体(R&D)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。
f.250μlの1×PBSTで5回洗浄した。
g.100μl/ウェルのTMBを添加し、室温で10分間インキュベートし、100μlの1M HSOを添加することによって反応を停止させた。
h.450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、データをGraphpad Prism 5によって分析した。
【0208】
表5:SDラットにおける融合タンパク質のT1/2
【表5】
【0209】
PK分析の結果は、ラットにおける本開示の融合タンパク質9の半減期が約236時間(9.8日)であることを示した(表5参照)。
【0210】
試験例8:ヒト乳癌MDA-MB-231のマウス皮下異種移植片に対するPD-L1/TGF-βトラップの効果
【0211】
この実験で使用したマウス系統は、NOD/SCID雌マウス(Cavens)であった。実験に用いたヒト末梢血単核細胞は、採取したばかりの血液から抽出したもので、抽出方法は以下のとおりであった:ヘパリン抗凝固静脈血を2%FBSを含有する同量のPBSと混合し、混合後、25mlの希釈血液を15mlのリンパ球分離溶液を含有する遠心分離管にゆっくりと添加し、1200gで10分間、室温で遠心分離した。リンパ球層を別の遠心分離管にピペットで移した;細胞をPBSで洗浄し、300gで8分間室温で遠心分離した。1回繰り返した後、細胞を10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁し、CD3抗体(OKT3、40ng/ml)でプレコーティングした6ウェルプレートに細胞を2×10細胞/ウェル(2ml)で添加した後、37℃のインキュベーターに4日間置いた。
【0212】
試験サンプル:
(1)ブランクコントロール:PBS;
(2)融合タンパク質9:4.8mpk;
(3)融合タンパク質9:24mpk;
(4)PD-L1抗体:4mpk;
(5)PD-L1抗体:20mpk;
(6)PD-L1抗体4mpk+コントロール1(20T-Fc)2.14mpk;
(7)コントロール1(20T-Fc):2.14mpk。
【0213】
MDA-MB-231細胞を無血清RPMI-1640培地に再懸濁し、等量のマトリゲル(Matrigel)と混合し、100μl(2.3×10)をNOD/SCIDマウスの右側腹部に皮下接種した。11日後、過大または過小サイズの腫瘍を有する動物を除外し、マウスをランダムに群化し、各群9匹とした。5×10の刺激されたPBMC(60μL)を腫瘍組織に注入し、残りのPBMCを刺激なしでさらに培養した。1週間後、1ラウンド目の注入として、5×10のPBMC(100μL)を腫瘍保持マウスに腹腔内注入した。実験期間中、2ラウンド半(2 and a half-round)、合計5回のPBMC注入が行われた。1回目の腫瘍内注入の日に腹腔内投与を行い、週に3回、計14回の投与を行った。投与レジメンを表6に示した。腫瘍体積および体重を週に2回測定した。実験結果を表7に示す。実験の終わりに、腫瘍保持マウスを安楽死させ、腫瘍を取り出して秤量した。
【0214】
表6:試験の群化および投与
【表6】
【0215】
表7:MDA-MB-231のマウス皮下異種移植片に対する融合タンパク質9の効果
【表7】
【0216】
結果を図8に示す。抗体融合タンパク質9(4.8mg/kg、24mg/kg)はヒト乳癌MDA-MB-231のマウス皮下異種移植片の成長を有意に抑制することができる。高用量と低用量の間には用量依存的な関係があり、それぞれ等モル用量で、参照薬物PD-L1抗体(4mg/kg、20mg/kg)、TGF-βRIIコントロール分子20T-FC(2.14mg/kg)および併用群(PD-L1抗体(4mg/kg)+20T-FC(2.14mg/kg))より優れていた。融合タンパク質9の各用量は、投与後14日目以降、所望の抗腫瘍効果を維持した;PD-L1抗体(20mpk)と比較した場合、高用量の融合タンパク質9は明らかな利点を有していた(p<0.05)。投与後25日目に、各抗体の抗腫瘍効果は最適レベルに達した。融合タンパク質9およびPDL-1抗体の低用量および高用量ならびに併用群の抗腫瘍率は、それぞれ37.24%、52.38%、30.24%、28.01%および31.38%であった。投与後32日目でも、融合タンパク質9の抗腫瘍効果は依然として非常に有意であった。低用量群および高用量群の%TGIはそれぞれ36.68%および50.76%であり、腫瘍体積はコントロール群と比較すると統計学的に異なっていた(p<0.05)。
【0217】
試験例9:PD-L1/TGF-βトラップの物理的安定性
【0218】
この試験例は、融合タンパク質9および融合タンパク質15の安定性を検出するために使用された。
【0219】
DSC(示差走査熱量測定)を用いて、さまざまな抗体の熱安定性を検出し、さまざまな緩衝液系における安定性を比較した。緩衝液系は、10mM酢酸塩/135mM NaCl(pH5.5)、および10mM酢酸塩/9%トレハロース(pH5.5)などを含む。
【0220】
サンプルを対応する緩衝液に溶解し、濃度を約50mg/mlに制御した。検出は、MicroCal* VP-Capillary DSC(Malvern)によって行われた。試験前に、真空脱気装置を用いて、各サンプルおよびブランク緩衝液を1~2分間脱気した。プレートの各ウェルに400μlのサンプルまたはブランク緩衝液を添加した(ローディング量は300μlであった)。最後に、2対のウェルプレートにそれぞれ14%Decon90とddHOを添加し、洗浄の準備をした。サンプルをプレートにロードし、次いでプレートをプラスチックカバーで密封した。走査は25℃の温度で開始し、100℃で終了し、走査速度は60℃/時間である。結果は表8に示され、融合タンパク質9および融合タンパク質15の両方が、これらの2つの試験系において良好な熱安定性を示すことを示している。
【0221】
表8.熱安定性試験
【表8】
【0222】
SEC-HPLCを介して純度をモニターすることによって、特定の濃度での周期的安定性を調べた。例示的な条件では、例えば、サンプルの濃度は10mM酢酸塩/135mM NaCl(pH5.5)中で約50mg/mlに制御され、安定性は、-80℃での5サイクルの凍結および解凍などの条件下と、40℃での1ヶ月間の保管後とで比較された。検出のために、Xbridge protein BEH SEC 200A(Waters)HPLCカラムを使用した。結果を以下の表9に示す。これら2つの融合タンパク質は良好な安定性を示した。
【0223】
表9.安定性
【表9】
【0224】
試験例10:融合タンパク質の化学的安定性
【0225】
脱アミド化は、後の段階での抗体の安定性に影響を与える一般的な化学修飾であり、特に、CDR領域中のいくつかのアミノ酸の高度に脱アミド化された修飾を変異によって可能な限り回避または低減することが一般的に選択される。試験対象の抗体1600μgを200μlの10mM酢酸塩/135mM NaCl(pH5.5)に溶解し、40℃のインキュベーターに入れた。酵素加水分解アッセイのために、0、14および28日目にサンプルを採取した。異なる時点で採取した各サンプル100μgを100μlの0.2M His-HCl、8M Gua-HCl溶液(pH6.0)に溶解し、3μlの0.1g/mL DTTを添加し、次いでサンプルを50℃の水浴中で1時間インキュベートした。次いで、サンプルを0.02M His-HCl(pH6.0)で2回限外濾過し、3μLの0.25mg/mLトリプシンを添加することによって37℃の水浴中で一晩消化した。Agilent 6530 Q-TOF LC-MSを用いて脱アミド化修飾を調べた。その結果を以下の表10に示す。
【0226】
表10.脱アミド化修飾
【表10】
【0227】
注:Nは検出可能な修飾されたアスパラギンを表し、数字はN末端からの軽鎖または重鎖中の位置を表す。パーセント含有量は、その部位におけるすべてのペプチドのシグナルに対するLC-MSによって検出された脱アミド化修飾の比率を表す。
【0228】
質量分析の結果は、2つの融合タンパク質が明らかな脱アミド化修飾部位を有さないことを示しており、融合タンパク質が良好な化学的安定性を有することを示唆していた。
【0229】
調製例
【0230】
融合タンパク質医薬組成物(調製物)の例示的な調製プロセス
【0231】
第1ステップ:一定量の精製TGF-β受容体融合タンパク質のストック溶液を採取し、限外濾過膜を少なくとも6倍量通過させることによって、無タンパク質緩衝液(例えば、10mM、pH6.2のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液)を用いて溶媒置換(好ましくは限外濾過による)を行い、次いで、タンパク質を約70mg/mLに濃縮した。一定量のスクロースストック溶液を添加および混合して、スクロースの最終濃度を80mg/mLにした。一定量のTween-80ストック溶液を添加および混合して、Tween-80の最終濃度を0.4mg/mLにした。50mg/mLのタンパク質濃度が得られるように、pH6.2の10mMクエン酸緩衝液を指定された容量に達するまで添加した(試験される他の調製物または安定な調製物は、同様のステップに従って調製された)。
【0232】
濾過された後、製品は培地コントロールの目的で無菌試験のためにサンプリングされた。ストック溶液は0.22μmのPVDFフィルターに通され、濾液が回収された。
【0233】
第2ステップ:充填容量を6.3mlに調整し、濾液を6mlバイアルに充填し、次いでバイアルにストッパーで蓋をし、培地コントロールの目的で、充填容量の差を検出するために充填の開始時、中間時、および終了時にサンプルを採取した。
【0234】
第3ステップ:キャッピングマシンが起動され、アルミニウムキャップがキャップされた。
【0235】
第4ステップ:目視検査を行って、製品に不正確な充填などの欠陥がないことを確認した。ラベルを印刷し、バイアルにラベルを貼った;カートンラベルを印刷し、カートンを折りたたみ、カートンにバイアルをロードしてし、ラベルを貼った。
【0236】
調製例1.TGF-β受容体融合タンパク質の調製緩衝液系のpH値のスクリーニング
【0237】
TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)調製物は、以下の緩衝液を使用して、50mg/mlのタンパク質濃度で調製された:
1)10mMヒスチジン-酢酸、pH5.0;
2)10mMヒスチジン-酢酸、pH6.0;
3)10mMヒスチジン-酢酸、pH6.5;
4)10mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH7.0;
5)10mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH7.5。
【0238】
各調製物を濾過し、中性ホウケイ酸ガラス製の2mL注射バイアルに1.2mL/バイアルで添加した。注射バイアルにストッパーを設け、蓋をして、密封した。サンプルを採取し、40℃の高温および振盪実験に供した。実験結果を表11に示す。結果は、TGF-β受容体融合タンパク質がpH6.0~6.5でより良好な安定性を有することを示している。
【0239】
表11.強制劣化実験のスクリーニング結果
【表11】
【0240】
調製例2.TGF-β受容体融合タンパク質調製物のための緩衝液系のスクリーニング
【0241】
TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)調製物は、以下の緩衝液を使用して、50mg/mlのタンパク質濃度で調製された:
1)10mMコハク酸-コハク酸ナトリウム、pH6.0;
2)10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、pH6.0;
3)10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、pH6.5;
4)10mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH6.5;
5)10mMヒスチジン-塩酸塩、pH6.5。
【0242】
各調製物を濾過し、中性ホウケイ酸ガラス製の2mL注射バイアルに1.2mL/バイアルで添加した。注射バイアルにストッパーを設け、蓋をして、密封した。振盪(25℃、300rpm)実験のためにサンプルを採取した。実験結果を表12に示す。結果は、振盪下で6日目にリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムの群で大量の小さな粒子が観察され、凝集体がSECによって検出された1.8%に達したことを示している。しかしながら、他の群では、時々小さな粒子のみが観察された。クエン酸、ヒスチジンおよびコハク酸緩衝液系におけるTGF-β受容体融合タンパク質の安定性は、リン酸緩衝液系における安定性よりも優れていることが分かる。
【0243】
表12.緩衝液系およびpH値のスクリーニング実験結果
【表12】
【0244】
調製例3.TGF-β受容体融合タンパク質調製物のための緩衝液系のさらなるスクリーニング
【0245】
10mMヒスチジン-塩酸塩または10mMクエン酸-クエン酸ナトリウムを含むpH6.2の緩衝液を使用して、80mg/mlスクロース、0.4mg/mlポリソルベート80、50mg/mlの濃度のTGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)を含む調製物を調製した。
【0246】
各調製物を濾過し、中性ホウケイ酸ガラス製の2mL注射バイアルに1.2mL/バイアルで添加した。注射バイアルにストッパーを設け、蓋をして、密封した。安定性分析、6ヶ月SECまたは非還元CE-SDS検出のために、サンプルを25℃で保存した。
【0247】
実験結果を表13に示す。結果は、クエン酸-クエン酸ナトリウム系がヒスチジン-塩酸塩系より優れていることを示している(M6 SEC凝集体:1.8%対2.2%;非還元CE-SDS:94.5%対92.2%);したがって、クエン酸系がTGF-β受容体融合タンパク質の緩衝液系として選択され得る。
【0248】
表13.25℃での緩衝液系スクリーニングの加速安定性試験結果
【表13】
【0249】
調製例4.TGF-β受容体融合タンパク質調製物の安定化剤のスクリーニング
【0250】
TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)調製物は、以下の異なる糖類の緩衝液を使用して、50mg/mlのタンパク質濃度で調製された:
1)10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、80mg/mlスクロース、pH6.2;
2)10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、80mg/ml α,α-トレハロース二水和物、pH6.2。
【0251】
各調製物を濾過し、中性ホウケイ酸ガラス製の2mL注射バイアルに1.2mL/バイアルで添加した。注射バイアルにストッパーを設け、蓋をして、密封した。サンプルは、25℃の室温および2~8℃の低温での長期保管実験のために採取された。
【0252】
実験の結果を表14に示す。結果は、スクロースおよびトレハロースがTGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)の安定性に対して同様の効果を有することを示している。スクロースが、TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)の安定化剤として選択された。スクロース濃度が80mg/mlの場合、浸透圧は約300mosm/kgであって等張に近いため、スクロース濃度は80mg/mlであり得る。
【0253】
表14.糖類の種類についてのスクリーニング実験の結果
【表14】
【0254】
調製例5.TGF-β受容体融合タンパク質調製物の界面活性剤のスクリーニング
【0255】
TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)調製物は、以下の異なる濃度の異なる種類の界面活性剤の緩衝液を使用して、50mg/mlのタンパク質濃度で調製された:
1)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.1mg/mlポリソルベート20、pH6.2;
2)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.2mg/mlポリソルベート20、pH6.2;
3)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.4mg/mlポリソルベート20、pH6.2;
4)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.6mg/mlポリソルベート20、pH6.2;
5)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.8mg/mlポリソルベート20、pH6.2;
6)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.1mg/mlポリソルベート80、pH6.2;
7)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.2mg/mlポリソルベート80、pH6.2;
8)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.4mg/mlポリソルベート80、pH6.2;
9)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.6mg/mlポリソルベート80、pH6.2;
10)10mMヒスチジン-塩酸塩、0.8mg/mlポリソルベート80、pH6.2。
【0256】
各調製物を濾過し、0.5mLの調製物を50mLの生理食塩水注射液または5%グルコース注射液に注入し、希釈後に0.5mg/mLのタンパク質濃度に到達させた。希釈後のサンプルの安定性を観察した。実験結果を表15に示す。結果は、調製物中のポリソルベート20の濃度が0.2mg/mlを超えると、不溶性粒子が希釈後に大幅に減少し、ポリソルベート80については、塩化ナトリウム希釈により生成される不溶性粒子がポリソルベート80濃度の増加とともに減少したことを示している。ポリソルベート80が0.4mg/ml以上に達すると、10μmを超える粒子は10粒子/ml未満に減少した。
【0257】
表15.ポリソルベートスクリーニング-希釈および振盪実験の結果
【表15】
【0258】
調製例6.TGF-β受容体融合タンパク質調製物のための界面活性剤のさらなるスクリーニング
【0259】
TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)調製物は、以下の異なる種類の界面活性剤の緩衝液を使用して、50mg/mlのタンパク質濃度で調製された:
1)10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、0.4mg/mlポリソルベート80、pH6.2;
2)10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、0.6mg/mlポリソルベート20、pH6.2。
【0260】
各調製物を濾過し、中性ホウケイ酸ガラス製の2mL注射バイアルに1.2mL/バイアルで添加した。注射バイアルにストッパーを設け、蓋をして、密封した。サンプルは、2~8℃の低温での長期保管実験のために採取された。
【0261】
実験結果を表16に示す。結果は、ポリソルベート80がTGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)に対してより優れた安定性効果を有することを示している。したがって、ポリソルベート80がTGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)の界面活性剤として選択された。
【0262】
表16.ポリソルベートをスクリーニングするための2~8℃での長期安定性実験の結果
【表16】
【0263】
調製例7.TGF-β受容体融合タンパク質調製物のフィルター膜適合性試験
【0264】
TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)は、10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、80mg/mlスクロース、0.4mg/mlポリソルベート80(pH6.2)中に、50mg/mlで調製された。調製物はそれぞれ0.22μmのPESフィルター膜およびPVDFフィルター膜を通過し、試験の開始時、途中、および終了時にサンプルが採取された。
【0265】
実験結果を表17に示す。タンパク質含有量、外観および純度分析は、TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)がフィルター膜との接触中に安定であり、調製物がPESおよびPVDFフィルター膜の両方と適合性であったことを示している。
【0266】
表17.フィルター膜との適合性試験結果
【表17】
【0267】
調製例8.TGF-β受容体融合タンパク質調製物の凍結乾燥
【0268】
50mg/mlのTGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)、80mg/mlのスクロース、および0.4mg/mlのポリソルベート80を含むTGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)調製物は、10mMクエン酸-クエン酸ナトリウムを含むpH6.2の緩衝液を用いて調製された。抗体を6.3mL/バイアルで20mLバイアルに添加し、凍結乾燥のためにディープフリーザーに入れた。
【0269】
凍結乾燥手順には、予備凍結、一次乾燥および二次乾燥が含まれる。凍結乾燥プロセスが終了したら、バイアルに真空下で栓をした。サンプルを再構成し、凍結乾燥の前後で比較を行った。結果は、再構成溶液が溶液調製物のそれと同様に良好な性能を維持できることを示す。
【0270】
表18.調製物の凍結乾燥のステップ
【表18】
【0271】
調製例9.他の任意の調製組成物
【0272】
さらに、本開示は、TGF-β受容体融合タンパク質(融合タンパク質9)医薬調製物の他の調製物も提供する:
(1)70mg/ml融合タンパク質9、75mg/mlスクロース、0.4mg/mlポリソルベート80、および20mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.4である;
(2)80mg/ml融合タンパク質9、85mg/mlスクロース、0.5mg/mlポリソルベート80、および15mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.2である;
(3)60mg/ml融合タンパク質9、90mg/mlスクロース、0.6mg/mlポリソルベート80、および5mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.2である;
(4)30mg/ml融合タンパク質9、60mg/mlスクロース、0.3mg/mlポリソルベート80、および30mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.3である;
(5)90mg/ml融合タンパク質9、95mg/mlスクロース、0.2mg/mlポリソルベート80、および10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.0である;
(6)100mg/ml融合タンパク質9、70mg/mlスクロース、0.1mg/mlポリソルベート80、および25mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.5である;
(7)50mg/ml融合タンパク質9、80mg/mlスクロース、0.4mg/mlポリソルベート80、および10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは7.0である;
(8)50mg/ml融合タンパク質9、80mg/mlスクロース、0.4mg/mlポリソルベート80、および10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは7.5である;
(9)50mg/ml融合タンパク質9、80mg/mlスクロース、0.4mg/mlポリソルベート80、および10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは5.0である;
(10)60mg/ml融合タンパク質9、70mg/mlスクロース、0.5mg/mlポリソルベート80、および15mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは5.5である;
(11)40mg/ml融合タンパク質9、80mg/mlスクロース、0.5mg/mlポリソルベート80、および10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.2である;
(12)55mg/ml融合タンパク質9、75mg/mlスクロース、0.3mg/mlポリソルベート80、および5mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは6.0である;
(13)65mg/ml融合タンパク質9、90mg/mlスクロース、0.7mg/mlポリソルベート80、および30mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは7.5である;
(14)70mg/ml融合タンパク質9、75mg/mlスクロース、0.8mg/mlポリソルベート80、および30mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは7.0である;
(15)50mg/ml融合タンパク質9、80mg/mlスクロース、0.8mg/mlポリソルベート80、および10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pHは7.0である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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