(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コンパクトな偏光ベースのマルチパス光アーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240214BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240214BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02F1/13 505
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2021523887
(86)(22)【出願日】2019-11-03
(86)【国際出願番号】 US2019059571
(87)【国際公開番号】W WO2020093032
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】シャープ、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】マクゲッティガン、アンソニー
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0242278(US,A1)
【文献】特表2018-500584(JP,A)
【文献】特表2009-534692(JP,A)
【文献】特表2010-526321(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168626(WO,A1)
【文献】特開2014-056911(JP,A)
【文献】特開2012-208202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0267361(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0322653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02B 27/28
G02F 1/13
G02F 1/1335,1/13363
G02F 1/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸上光学システムであって、
直線偏光子と、
光スイッチであって、選択的に、第1の光スイッチ状態において、その偏光状態を変換することなく光を通過させるか、または、第2の光スイッチ状態において、第1の直線偏光状態を、前記第1の直線偏光状態に直交する第2の直線偏光状態に変換するように制御することが可能な、光スイッチと、
1つの直線偏光状態の光を反射させ、直交する直線偏光状態の光を透過させる第1の反射型偏光子であって、前記第1の反射型偏光子が曲率半径R1を
備える形状を有する、第1の反射型偏光子と、
前記直交する直線偏光状態の光を反射させ、前記1つの直線偏光状態の光を透過させる
第2の反射型偏光子であって、前記第2の反射型偏光子が曲率半径R2を備える形状を有する、第2の反射型偏光子と
を備え、
前記直線偏光子、前記光スイッチ
、前記第1の反射型偏光子および前記第2の反射型偏光
子が、
光の放出側からこの順に、かつ同軸に位置決めされる、
軸上光学システム。
【請求項2】
前記第1の反射型偏光子の焦点距離および前記第2の反射型偏光子の焦点距離の両方の範囲内に位置する観察者は、切替可能な倍率で自己像を観測する、請求項1記載の軸上
光学システム。
【請求項3】
軸外光学システムであって、
直線偏光子と、
第1の光スイッチであって、選択的に、第1の光スイッチ状態において、その偏光状態を変換することなく光を通過させるか、または、第2の光スイッチ状態において、第1の直線偏光状態を、前記第1の直線偏光状態に直交する第2の直線偏光状態に変換するように制御することが可能な、第1の光スイッチと、
1つの直線偏光状態の光を反射させ、直交する直線偏光状態の光を透過させる第1の反射型偏光子であって、前記第1の反射型偏光子が、曲率半径R1を備える形状を有する、第1の反射型偏光子と、
前記直交する直線偏光状態の光を反射させ、前記1つの直線偏光状態の光を透過させる第2の反射型偏光子であって、前記第2の反射型偏光子が曲率半径R2を備える形状を有する、第2の反射型偏光子と、
第2の光スイッチであって、選択的に、第1の光スイッチ状態において、その偏光状態を変換することなく光を通過させるか、または、第2の光スイッチ状態において、第1の直線偏光状態を、前記第1の直線偏光状態に直交する第2の直線偏光状態に変換するように制御することが可能な、第2の光スイッチと、
1つの直線偏光状態の光を反射させ、直交する直線偏光状態の光を透過させる第3の反射型偏光子であって、前記第3の反射型偏光子が、曲率半径R3を備える形状を有する、第3の反射型偏光子と、
前記直交する直線偏光状態の光を反射させ、前記1つの直線偏光状態の光を透過させる第4の反射型偏光子であって、前記第4の反射型偏光子が曲率半径R4を備える形状を有する、第4の反射型偏光子と
を備え、
前記直線偏光子、前記第1の光スイッチ、前記第1の反射型偏光子、前記第2の反射型偏光子、前記第2の光スイッチ、前記第3の反射型偏光子、および前記第4の反射型偏光子が、光の放出側からこの順に位置決めされ、
前記第1の反射型偏光子および前記第2の反射型偏光子は、互いに隣接し、整列した形態で位置決めされ、前記第3の反射型偏光子および前記第4の反射型偏光子は、互いに対して隣接し、整列した形態で位置決めされることで、それらに当たる光の偏光状態に応じて、前記第1の反射型偏光子および前記第2の反射型偏光子のうちの1つが、光を
折り畳むように反射させ、前記第3の反射型偏光子および前記第4の反射型偏光子のうちの1つが、光を
折り畳むように反射させ、
前記第1の光スイッチおよび前記第2の光スイッチはそれぞれ、前記
軸外光学システムにより、4つの異なる光
出力のうちの1つを実現することが可能であるように、制御することが可能であり、4つの出力は、R1+R3、R1+R4、R2+R3、およびR2+R4である、
軸外光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年11月2日付で出願された米国仮出願第62/755,345号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
偏光は、部分リフレクタおよび偏光スプリッタによって形成される光キャビティのさらなる往復を導入するために使用される(たとえば、米国特許第6,075,651号明細書)。これらの構造は、コンパクトな広角レンズおよび増加する光路長を導入するために使用され得る。従来技術は、光がキャビティの単一パスまたはキャビティのさらなる往復のいずれかを実行することを可能にするようなレンズに先行する強誘電性液晶スイッチを記載している(たとえば、米国特許第8,767,284号明細書)。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において、軸上光学システムであって、直線偏光子と、光スイッチであって、選択的に、第1の光スイッチ状態において、その偏光状態を変換することなく光を通過させるか、または、第2の光スイッチ状態において、第1の直線偏光状態を、第1の直線偏光状態に直交する第2の直線偏光状態に変換するように制御することが可能な、光スイッチと、1つの直線偏光状態の光を反射させ、直交する直線偏光状態の光を透過させる第1の反射型偏光子であって、第1の反射型偏光子が曲率半径R1を有する形状を有する、第1の反射型偏光子と、直交する直線偏光状態の光を反射させ、1つの直線偏光状態の光を透過させる反射型偏光子であって、第2の反射型偏光子が曲率半径R2を備える形状を有する、第2の反射型偏光子とを備え、直線偏光子、光スイッチ、ならびに、第1の反射型偏光子および第2の反射型偏光子のそれぞれが、同軸に位置決めされる、軸上光学システムが開示される。
【0004】
第1の反射型偏光子の焦点距離および第2の反射型偏光子の焦点距離の両方の範囲内に位置する観察者は、切替可能な倍率で自己像を観測し得る。
【0005】
また、直線偏光子と、第1の光スイッチであって、選択的に、第1の光スイッチ状態において、その偏光状態を変換することなく光を通過させるか、または、第2の光スイッチ状態において、第1の直線偏光状態を、第1の直線偏光状態に直交する第2の直線偏光状態に変換するように制御することが可能な、第1の光スイッチと、1つの直線偏光状態の光を反射させ、直交する直線偏光状態の光を透過させる第1の反射型偏光子であって、第1の反射型偏光子が、曲率半径R1を備える形状を有する、第1の反射型偏光子と、直交する直線偏光状態の光を反射させ、1つの直線偏光状態の光を透過させる第2の反射型偏光子であって、第2の反射型偏光子が曲率半径R2を備える形状を有する、第2の反射型偏光子と、第2の光スイッチであって、選択的に、第1の光スイッチ状態において、その偏光状態を変換することなく光を通過させるか、または、第2の光スイッチ状態において、第1の直線偏光状態を、第1の直線偏光状態に直交する第2の直線偏光状態に変換するように制御することが可能な、第2の光スイッチと、1つの直線偏光状態の光を反射させ、直交する直線偏光状態の光を透過させる第3の反射型偏光子であって、第3の反射型偏光子が、曲率半径R3を備える形状を有する、第3の反射型偏光子と、直交する直線偏光状態の光を反射させ、1つの直線偏光状態の光を透過させる第4の反射型偏光子であって、第4の反射型偏光子が曲率半径R4を備える形状を有する、第4の反射型偏光子とを備える軸外光学システムが開示される。第1の反射型偏光子および第2の反射型偏光子は、互いに隣接し、整列した形態で位置決めされ、第3の反射型偏光子および第4の反射型偏光子は、互いに対して隣接し、整列した形態で位置決めされることで、それらに当たる光の偏光状態に応じて、第1の反射型偏光子および第2の反射型偏光子のうちの1つが、折り返しの形態で光を反射させ、第3の反射型偏光子および第4の反射型偏光子のうちの1つが、折り返しの形態で光を反射させる。第1の光スイッチおよび第2の光スイッチはそれぞれ、システムにより、4つの異なる光パワーのうちの1つを実現することが可能であるように、制御することが可能であり、4つの出力は、R1+R3、R1+R4、R2+R3、およびR2+R4である。
【0006】
また、観察者によって観測することが可能なディスプレイからの光を制御するための光学システムであって、円偏光状態を透過させるディスプレイ装置と、共有される中央部分リフレクタを有する第1のキャビティおよび第2のキャビティを含み、第1の反射型偏光子および第2の反射型偏光子のそれぞれにより、両端部で画定される一対の光キャビティであって、第1の光キャビティおよび第2の光キャビティのそれぞれが、別個の1/4波長位相子を含む、一対の光キャビティと、出力偏光子とを備える、光学システムが開示される。システムによって通過される観察者に対する光は、第1のキャビティを透過し、第2のキャビティ内を再循環する第1の光成分と、第1のキャビティ内を再循環し、第2のキャビティを透過する第2の光成分とを含む。
【0007】
第1の反射型偏光子および第2の反射型偏光子の幾何学的形状は、同じである。第1のキャビティを使用して形成される像および第2のキャビティを使用して形成される像は、観察者において重ね合わせられる。
【0008】
さらに、観察者に対して、表示される像の選択的な量の倍率を提供する光学システムであって、システムに入る光の偏光状態を制御するディスプレイに隣接する第1のデジタル偏光スイッチと、共有される中央の偏光スプリッタを有する第1のキャビティおよび第2のキャビティを含み、曲率半径R1を備える第1の反射型偏光子および曲率半径R2を備える第2の反射型偏光子それぞれにより、両端部で画定される一対の光キャビティであって、第1の光キャビティおよび第2の光キャビティのそれぞれが、別個の1/4波長位相子を含む、一対の光キャビティと、観察者に隣接する第2のデジタル偏光スイッチであって、第2のデジタル偏光スイッチが、第2のデジタル偏光スイッチに当たる光の偏光状態に基づいて、どの光がシステムを出るかを制御する、第2のデジタル偏光スイッチとを備える、光学システムが開示される。システムから観察者に通過する光は、第1のキャビティを一回、第2のキャビティを一回、通過する第1の光成分と、第1のキャビティを三回、第2のキャビティを一回、通過する第2の光成分と、第1のキャビティを一回、第2のキャビティを三回、通過する第3の光成分と、第1のキャビティを三回、第2のキャビティを三回、通過する第4の光成分とを含む。第1のデジタル偏光スイッチおよび第2のデジタル偏光スイッチのそれぞれが2つの状態を有し、これによって、2つのスイッチの組み合わせが4つの可能な状態を有し、組み合わせの状態のそれぞれ1つが、システムから通過する光の第1の成分、第2の成分、第3の成分、および第4の成分のうちの1つに対応する。光の4つの成分それぞれは、表示される像の倍率であり、倍率の量は、各光成分が第1の反射型偏光子から反射される回数と、各光成分が第2の反射型偏光子から反射される回数とによって決定される。
【0009】
第1のデジタル偏光スイッチは、直線偏光子、光スイッチ、および1/4波長位相子を含み得る。第2のデジタル偏光スイッチは、1/4波長位相子、光スイッチ、および直線偏光子を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】第1の状態における、切替可能な軸上デジタル式反射型光学素子である。
【
図1B】第2の状態における。切替可能な軸上デジタル式反射型光学素子である。
【
図2】4つの状態を切替可能な非垂直デジタル式反射型光学素子である。
【
図3】25%効率の信号路を有する、従来技術の偏光ベースの広角コリメータである。
【
図4A】信号路の50%効率をもたらす、対称性の一対の新規な光キャビティである。
【
図4B】阻止される(ゴースト)経路の光路を示す、
図4Aの配置である。
【
図5A】単一パスの光路に対応する、第1の出力を示す、一対の二重パスの光キャビティである。
【
図5B】第1の光キャビティ(R1)のさらなる往復に対応する、第2の出力を示す、
図5Aの配置である。
【
図5C】第2の光キャビティ(R2)のさらなる往復に対応する、第3の出力を示す、
図5Aの配置である。
【
図5D】第1の光キャビティ(R1)および第2の光キャビティ(R2)のさらなる往復に対応する、第4の出力を示す、
図5Aの配置である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
偏光スプリッタまたは反射型偏光子は、ワイヤグリッド型偏光子(WGP)、多層型延伸フィルム(たとえば、スリーエム社(3M)のDBEF)、およびコレステリック液晶を含む。これらの偏光スプリッタは、傾斜インタフェースに依存するスプリッタ(たとえば、マクニール(McNeille)型PBS)と違って、一偏光を再帰反射することができる。そうした素子の単軸の曲率は、(たとえば、反射における円柱度数を可能にする)応力なしで実現することが可能であり、ワイヤグリッド型偏光子が、(たとえば、反射における球面度数を可能にする)熱成形により、複合曲率を有し得ることが示されている。熱成形された複数のWGPは、(たとえば)凹状、または凸状ミラーとして使用され得る反射型素子を作製するために使用され得る。それらは基本的には、偏光感受性を有するというさらなる特性を有する、任意の所望の反射型素子に形成され得る。特定の直線偏光状態(SOP)の光は、WGPへ導入されると、従来の反射型光学素子からのものとして反射され得る。直交するSOPの光がWGPへ導入されると、全透過され得る。
【0012】
一配置では、一対のWGP層は、直列に配置され、偏光スイッチは、一対の光学的に反射された別個の出力を生成し得る。偏光スイッチの一状態では、第1のWGPが光を反射し、偏光スイッチの第2の状態では、第2のWGPが光を反射する。偏光スイッチは、直線偏光子、およびそれに続く液晶スイッチであり得る。一例では、一方のWGPが平面型であり、他方が凹状湾曲を有する。観察者は、LC装置に対する電圧の印加により、従来のミラーとしても、凹状拡大鏡としても、動作させることが可能なミラーを観ることになる。別の例では、交差WGPのそれぞれは、別個の曲率を有しており、2つの焦点距離間のスイッチングを可能にする。第3の実施形態では、いずれのリフレクタも平面型であり、スイッチングが、経路長の変更を生成するために使用され、これは、(たとえば)非機械的ズームレンズに有用であり得る。
【0013】
別の配置では、切替可能な反射型素子は、非垂直で動作する。WGP配置を入力光線に対して(たとえば)45度で傾斜させることにより、入力光および出力光は、別個の経路に沿って進行し得る。前述と同様に、これは、2つの反射型光学素子間のスイッチングを可能にする。それはさらに、複数段のカスケード接続を可能にする。たとえば、二対の反射型WGPと組み合わせた一対のデジタル偏光スイッチは、4つの出力焦点距離を生成し得る。
【0014】
別の配置では、複数対の光キャビティを使用するアーキテクチャは、特有の利点を産出し得る。光キャビティは、二重パスで、偏光した入力を、直交する偏光状態(SOP)に変換する光学素子を挟むように配置される、非偏光部分リフレクタおよび偏光スプリッタを含み得る。これらのアーキテクチャは、特定の機能的対称性を有し得る一対のキャビティを作製するために、共有の光学素子を使用され得る。一構成では、同じ光パワーを有する一対の(たとえば、凹状の)偏光スプリッタは、共有の中央の平面型部分リフレクタを有する構造の外側素子を形成する。上記アーキテクチャは、理論上の25%から50%に、単一キャビティのコンパクトな広角コリメータ(wide-angle collimator:WAC)の効率を2倍にし得る。
【0015】
別の構成では、偏光非感受性の部分リフレクタは、共有の中央の偏光スプリッタを有する構造の外側素子を形成する。1つまたは複数の波長非感受性の偏光スイッチと組み合わせると、透過のために選択される複合光路が、電気的に構成され得る。共有の偏光スプリッタに対して対称配置される一対のデジタル偏光スイッチは、コンパクトなユニットで4つの光学状態を生成し得る。
【0016】
図1Aおよび1Bは、切替可能なミラーの例を示す。その状況は、液晶(LC)スイッチの偏光状態に関して、
図1Aおよび1Bとは異なる。ランダムに偏光した光は、通常の直視型LCDにおいて使用されるように、直線偏光子に入射する。偏光子は、反射防止コーティングされるか、またはマット仕上げ(もしくはアンチグレア)を有し得る。これは、ねじれネマティック(twisted-nematic)、アンチパラレルラビングネマティック(anti-parallel rubbed nematic)、垂直配向ネマティック(vertically-aligned (VA) nematic)、平行配向ネマティック(parallel-aligned nematic:πセル)、または面内スイッチ(IPSネマティック(IPS nematic)もしくは強誘電性液晶(ferroelectric liquid crystal))などの液晶スイッチに対して積層される。LCスイッチは通常、一電圧状態(通常、大半の場合に励起されている(energized)が、VAの場合に励起されていない(unenergized))における垂直入射において等方性を有しているように見え、非励起状態において偏光状態(SOP)を最大に操作する。軸外性能を向上させるために補償層を導入されることがある。広角無彩色スイッチ(自己補償スイッチ、たとえば、内容を本明細書において参照により援用する、Sharpによる米国特許出願第62/588,095号明細書)は、任意の波長または光線角度に対して、2つの状態間のクロストークを回避するために、特に魅力的である。上記例は、直列であって近接した2つのWGP層を示す。いずれも熱成形され、層1は曲率R1を有し、および層2は曲率R2を有する。
【0017】
偏光していない入力光は、吸収軸に対して直交して、偏光子に当たり、その後に、通過した光は、LC装置に当たる。例示的なLC装置の場合、偏光は、非励起状態において、直交するSOPに変換され(
図1A)、第1のWGP(R1)を通過し、第2のWGP(R2)から反射する。反射光は戻され、再び、第1のWGP、LC装置、および直線偏光子を(すなわち、逆順に)通過する。励起されると(
図1B)、LC装置は、偏光子から入射したSOPを通過させる。この光は第1のWGP(R1)から反射し、前述と同様に、LC装置および偏光子を逆順に通過する。2つのWGP層が曲率R1およびR2を有する凹状ミラーを表し、観察者がそれぞれの焦点距離内に存在している場合、それらは、切替可能な倍率で自己像を観ることになる。
【0018】
図2は、複数対のWGPがフォールドミラーとしても使用される軸外配置を示す。上述のようなLC装置(LC1)が第1の対のWGPの上流に挿入され、および第2のLC装置が第1の組のWGPと第2の組のWGPとの間に挿入される(LC2)。これらの素子は、前述と同様に、1ビットの切替モードにおいて動作させられる。この例では、第1の組のWGPは任意の曲率R1およびR2を有し、ならびに、第2の組のWGPは任意の曲率R3およびR4を有する。上記対のスイッチは、表1に示される、4つの焦点距離を生成し得る。
【0019】
【0020】
切替可能な光学素子は、コンパクトであり、軽量であり、非機械的なスイッチングの恩恵を受け得る、任意の光学システムにおいて、使用され得る潜在性を有する。形成された偏光選択性装置は、種々の形態の光パワー(球状、非球状、円柱状、トロイダルなど)を提供し得る。任意の反射型素子が、局所面法線分布を所定に修正するようにWGPを形成することによって製造され得ると考えられる。
【0021】
さらなる機械的支持体を設けることにより、各WGPの所望の表面を堅牢に実現することが必要とされ得る。機能的なWGPは、キャリア基板に対して極めて薄くなり得る。同時に、キャリア基板は、それが放出された後に鋳型の形状を保つのに十分には強固でないことがあり得る。一構成では、薄いキャリア基板上のWGPは、自由構成要素として、鋳型からの除去後に十分に保持されないことがある(たとえば)2つの曲率を提供するように形成される。その後、2つの薄いWGP層が、所望の曲率を有する鋳型キャビティ内に挿入される。次いで、鋳型からの開放後に所望の形状が保たれるように、樹脂がキャビティ内に注入され得る。この樹脂は、非常に低い複屈折性を有するポリマーを有し得る。
【0022】
図3は、観察者22がWACレンズを介して電子ディスプレイ(この場合、有機発光ディスプレイ(OLED))を観る、従来技術の広角コリメータ(WAC)20を示す。光学要素の挿入損失(たとえば、偏光子およびリフレクタの吸収)は、この解析に含まれていない。ディスプレイの後には、バックプレーン電極から反射される周囲光を吸収するように全体として機能する広帯域1/4波長(QW)位相子24および直線偏光子26が続く。この光は、広帯域QW位相子28(QW2)により、(丸で囲んだLとして示される)左旋円に変換され、その50%が部分リフレクタ30により、キャビティ内に透過される。(たとえば、第1のものと交差する)第2の広帯域QW位相子32(QW3)は、光を入力直線SOPに変換して戻す。反射型偏光子34は、(一直線偏光状態の)光すべてをキャビティ内に戻すように方向付けされている。この素子は、平坦であってもよく、または光パワーを付与するように形成されてもよい。QW3は、直線偏光をLH円光に変換し、その後に(丸で囲んだRとして示される)右旋円偏光をもたらす、部分リフレクタ30での利き手の変更を受け、さらに反射時にさらなる50%の損失を被る。半分は、リフレクタ30を通過し、半分は、これを通過する。したがって、キャビティのさらなる往復は、光は、直交するSOPに変換され、それは、反射型偏光子34によって効率的に透過される。この光は、その後に、クリーンアップ偏光子36を通過し得る。したがって、従来技術のWACレンズは、25%の最大効率を有することがあり、(よく見ても)残りの75%は、システム内の偏光子によって吸収される。この光の一部は、像のコントラストおよび全体品質を劣化させる迷光およびゴーストに寄与し得る。キャビティのさらなる往復は、キャビティを通る再循環と呼ばれ得る。
【0023】
図4Aは、本明細書において開示するような高効率拡大鏡(またはWAC)46を介して、観察者42が電子ディスプレイ44を観る、光学システム40を示す。示される拡大鏡は、共有の中央の部分リフレクタを有する、一対の光キャビティを有する。この例に示される外部光学素子は、同一に形成される凹状反射型偏光子である。この例では、前述のような「ゴーストバスター」(GB)円偏光子ととともに、像源として示される。ゴーストバスターは、吸収軸が図の平面に対して垂直である偏光子P1に対して、±π/4で方向付けられる光軸を有する広帯域1/4波長位相子(QW1)を含む。GBは、ディスプレイから反射する、環境からの任意の後方進行光を消滅させる。なお、ディスプレイは、代替的に、液晶ディスプレイであり得る。
【0024】
説明の目的のため、構成要素は、ゼロ挿入損失を有すると仮定する。反射型偏光子48(WGP1)は、図の平面内で偏光する、ディスプレイからの光をキャビティ1内に透過する。この例での広帯域1/4波長位相子50(QW2)は、この偏光を左旋円に変換する。理想的な50:50の部分リフレクタ52は、入射光の半分を透過する(経路1)。その他の50%(経路2)は、部分リフレクタから反射し、右旋円に変換される。以下の段落は、光学システムの2つの「信号路」を辿る。
【0025】
経路1は、キャビティ2内に、部分リフレクタ52によって透過される50%である。この例での1/4波長位相子54(QW3)は、QW2の低速軸に対して垂直である低速軸を有するので、QW3の第1のパス後に、元の直線SOPが回復される。反射型偏光子56は、図の平面内に反射軸を有するので、光は反射され、(この例において)凹状ミラーと関連付けられる光パワーを受け取る。QW3の第2のパス後、光は、再び左旋円となる。この光の半分(25%)は、部分リフレクタから右旋円偏光で反射される。QW3の第3のパスの後、SOPは、図に対して垂直に偏光する直線である。この光は、キャビティ2を抜け、図の平面内に吸収軸を有する偏光子58を通過し、経路1の25%効率を与える。
【0026】
経路2は、(上述のような)部分リフレクタ52によって最初に反射される50%である。QW2の第2のパスは、SOPを、図に対して垂直に偏光する直線に変換する。この光は、偏光スプリッタ48から反射し、(この例において)凹状ミラーと関連付けられる光パワーを受け取る。QW2の第3のパス後、SOPは、再び右旋円偏光となる。この光の半分(25%)は、部分リフレクタ52を通ってキャビティ2内に進む。ここから、経路2の光は、観察者に対する経路1の光を辿る。偏光スプリッタの幾何学的形状がよく一致している場合、観察者は、経路1および経路2の重ね合わせを表す画像光を受け取り、よって、効率は、単一キャビティシステムの効率の2倍となる。
【0027】
2つの信号路に加えて、部分リフレクタは、
図4Bにおいて描かれる、一対の等振幅ゴーストを生じさせる。経路3の光は、部分リフレクタ52によって二回透過されるので、それは、キャビティ1およびキャビティ2を二回通過する。そのため、25%は、元のSOPへ戻され、偏光スプリッタ48を通過してディスプレイアセンブリ内に進む。この構成では、ディスプレイからの鏡面戻り(specular return)は、GBによって消滅する。この経路は、偏光スプリッタ56と関連付けられる光パワーを受け取る。
【0028】
経路4の光は、部分リフレクタ52により、二度反射され、したがって、二往復の間、キャビティ1内に留まる。経路3の場合と同様に、25%が、元のSOPへ戻され、偏光スプリッタ48を通過してディスプレイアセンブリ内に進む。この経路は、偏光スプリッタ48と関連付けられる光パワーを受け取る。
【0029】
信号光およびゴースト光が、名目上同じ振幅で拡大鏡アセンブリを出るものと仮定すると、信号対ゴーストのコントラストは、2つの要因、すなわち、後方進行光の消滅によるディスプレイアセンブリの効果、およびディスプレイアセンブリによって消滅しない残留前方進行ゴースト光と関連付けられる、さらなる損失によって影響され得る。後者は、図の平面において偏光してキャビティ1に入ることがあり、したがって、観察者への信号路を辿り得る。挿入損失がない状態で、これは、ゴーストが、観察者に到達するために、さらなる50%損失を最小限に受け取ることを意味する。
【0030】
図5A~5Dは、偏光スイッチングに基づく、再構成可能な拡大鏡の例を示す。ここでもまた、拡大鏡は、一対のキャビティを含む。この例では、外部の偏光非感受性の部分リフレクタと、共有の中央の偏光スプリッタとが存在している。部分リフレクタおよび偏光スプリッタはともに、任意の幾何学的形状(または局所面法線分布)を有し得る。偏光スイッチングアセンブリは、拡大鏡アセンブリのいずれの側にも対称に配置される。そのため、入力側のスイッチは、拡大鏡アセンブリを通って信号光が取る経路を決定することが可能であり、出力側のスイッチは、観察者への透過のために、どの信号成分が選択されるかを決定することが可能である。一対の広帯域(たとえば、液晶)デジタル式スイッチを使用して、入力直線SOPは、不変状態であるままにされるか、または、直交するSOPに切り替えられ、合計で4つの別個の信号路が付与され得る。以下の段落は、観察者への透過のために選択され得る4つの出力信号経路を辿る。
【0031】
この例の光学システム60は、ディスプレイアセンブリ64と、一対のデジタル偏光スイッチ68および70と、共有の中央の偏光スプリッタ76を有する一対の二重パスキャビティとを含む。観察者62は、再構成可能な拡大鏡アセンブリ66を介して、ディスプレイ64から画像光を受け取る。キャビティ1は、部分リフレクタ72および偏光スプリッタ76によって形成され、キャビティ2は、偏光スプリッタ76および部分リフレクタ80によって形成される。観察者への透過のために選択される具体的な信号路は、入力偏光スイッチ68および出力偏光スイッチ70の論理状態によって決定され得る。この例では、偏光スイッチは、直線偏光子と、入力を不変状態であるままにするか、または直交する直線SOPに、すべての関連する波長を切り換えることが可能な広帯域スイッチと、直線SOPから円SOPに、すべての関連する波長を変換することが可能な広帯域QW位相子とを含む。偏光スイッチ素子は、全体として、広帯域円偏光「利き手スイッチ」(HS)として機能し得る。
【0032】
同じ4つの出力を生成する光学的構成要素の相対的な方位について、多くの配置が存在するので、以下は、そうした配置の一例を示す。入力利き手スイッチ(HS1)および出力利き手(HS2)は、ミラー配置で示される。直線偏光スイッチ(SW1)のゼロ位相差状態では、1/4波長位相子(QW1)は、直線偏光子1からの光を左旋円に変換する。SW1の半波長位相差状態では、QW1は、右旋円偏光を透過する。同様に、直線偏光スイッチSW2のゼロ位相差状態では、1/4波長位相子(QW4)は、左旋円偏光を、偏光子2の吸収軸に直交する直線偏光に変換する。SW2の半波長位相差状態では、QW4は、右旋円偏光を、偏光子2の吸収軸に直交する直線偏光に変換する。
【0033】
図5Aは、観察者への最も直接的な経路であるか、または「単一パス」経路を示す。この出力は、複数の部分リフレクタのいずれからも反射されないので、反射パワーを受け取らないことがある。したがって、いずれの光パワーも、すべての出力状態に共通し得る、光路内に任意に配置される、(図示しない)屈折素子からのものであることがある。前述と同様に、説明の目的のため、効率は、理想的であるとし、構成要素の挿入損失を無視している。入力利き手スイッチ(HS1)68のゼロ位相差状態では、光は、50%効率で部分リフレクタ72によって透過される。(図示しない)部分リフレクタ72によって反射される右旋円の光は、ディスプレイアセンブリへ戻される。この光は、好ましくは、不要なゴースト像を回避するためのいかなる手段によっても消滅させ得る。この例では、1/4波長位相子74(QW2)は、符号68が左旋円を透過すると、図の平面内に偏光する光が透過されるように、QW1に対して方向付けされる。偏光スプリッタ76は、図の平面内に偏光する光を透過するように方向付けされる。第3の1/4波長位相子78(QW3)は、光軸がQW2の光軸と交差した状態で方向付けされるので、元の左旋円SOPが回復される。この光の半分(25%)は、部分リフレクタ80によって透過される。第2の利き手スイッチ(HS2)70のゼロ位相差状態では、左旋円偏光が透過のために選択され、これは、図の平面内に偏光する光に変換されて観察者に与えられる。
【0034】
図5Bは、キャビティ1のさらなる往復を行う信号路を示す。HS1が半波長位相差状態にあると、右旋円(RHC)が透過され、QW2は、SOPを、図に垂直に方向付けられる直線に変換する。この光は、偏光スプリッタ76によって反射され、QW2 74を通る第2のパスの後に、RHCに変換される。この光の半分(25%)は、LHCとして部分リフレクタ72によって反射され、R1と関連付けられる光パワーを受け取る。それはまた、キャビティ1の往復と関連付けられる、さらなる光路長を受け取り得る。QW2を通る第3のパスの後、光は、図の平面内に偏光し、偏光スプリッタ76によって透過される。これは、QW3 78によってLHCに変換され、この光の半分(12.5%)は、部分リフレクタ80によって透過される。前述と同様に、HS2がゼロ位相差状態では、受光するLHCは、観察者の平面内に偏光する光への変換により、観察者への透過のために選択される。
【0035】
図5Cは、キャビティ2の二重パスを行う信号路を示す。HS1がゼロ位相差状態であると、左旋円(LHC)が透過され、QW2は、SOPを、図の平面内に方向付けられる直線に変換する。この光は、偏光スプリッタ76によって透過され、QW3によってLHCに変換される。この光の半分(25%)は、RHCとして部分リフレクタ80によって反射され、R2と関連付けられる光パワーを受け取る。QW3の第2のパスの後、SOPは、図に垂直に方向付けられる直線となる。この光は、偏光スプリッタ76によって反射される。QWの第3のパスの後、SOPは、再びRHCとなり、この光の半分(12.5%)は、部分リフレクタ80によって透過される。半波長状態では、スイッチ70は、図の平面内に偏光する光に変換することにより、観察者に向かうRHC光を通過させる。
【0036】
図5Dは、キャビティ1およびキャビティ2の両方の二重パスを行う信号路を示す。それは、
図5Bおよび5Cの信号路に従うため、詳細な光跡は繰り返さない。この場合、HS1は、キャビティ1のさらなる往復を付与するために、半波長状態にあり、HS2は、続けてキャビティ2のさらなる往復を辿るように選択するために、半波長状態にある。それぞれのさらなる往復は、さらなる50%損失を生じるので、この経路の全体効率は、6.3%となり得る。
【0037】
上述した同じ4つの信号路を生成する、偏光子と、QW位相子と、偏光スイッチと、偏光スプリッタとの方位について多くの配置が存在する。
図5に示される例は、そうした多くの構成の1つに過ぎない。さらに、平面状、凹状、凸状などを含む、偏光スプリッタを含む反射型素子の幾何学的形状は、任意である。単一パス状態において光パワーを偏光させるために、レンズによる屈折力が導入され得る。屈折力は、4つの有用な光パワー状態を生成するために、反射により導入されるものと連携して作用し得る。
図5A~5Dの配置はまた、4つの別個の光路長を作製するために使用され得る。
【0038】
一構成では、偏光スプリッタは、キャビティ1を横切る光に対しては凹状リフレクタとして見え、キャビティ2を横切る光に対しては、凸状リフレクタとして見えるような複合曲率を有する。曲面偏光スプリッタが3つの出力状態を分離することが可能であるということは、特に興味深い。すなわち、それは、キャビティ1およびキャビティ2に反対符号であるパワーを導入することが可能であり、それは、キャビティ1およびキャビティ2の両方を横切る状態内に実行パワー(net power)を実質的に導入しない場合がある。表2は、そうした構成の例を示す。
【0039】
【0040】
図5に示されるような光キャビティの単一パス透過率は、50%であることがあり、キャビティ1およびキャビティ2の両方でのさらなる往復に対応する状態は、6.3%に過ぎないことがある。一構成によれば、全体スループットは、光学システムの各状態に対する開口絞りと関連付けられ得る損失を考慮に入れることにより、ある程度、バランスがとられ得る。具体的には、最も劣悪な集光を有する最小開口状態を、レンズの最高効率状態(25%)と一致するように選択し得る。逆に、最も良好な集光を有し得る最大開口状態を、レンズの最低効率状態(6.3%)と一致するように選択し得る。