(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】防汚保護のための銅キレート錯体組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/20 20060101AFI20240214BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240214BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240214BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240214BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20240214BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240214BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
A01N59/20 Z
A01P17/00
A01N59/16 Z
A01N25/10
C09D5/16
C09D201/00
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2021531970
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2019084097
(87)【国際公開番号】W WO2020115323
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520346882
【氏名又は名称】アークサーダ・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中江 隆
(72)【発明者】
【氏名】カポック,ポール
(72)【発明者】
【氏名】岩▲瀬▼ 吉幸
(72)【発明者】
【氏名】シュレーア,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】リーグラー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・アーケン,ペーテル
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-331207(JP,A)
【文献】特開2000-248207(JP,A)
【文献】特開2014-224066(JP,A)
【文献】特表2003-523474(JP,A)
【文献】特開2018-109146(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109796828(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu(ETFAA)
2と1種以上の
殺生物剤とを含む防汚組成物であって、前記1種以上の
殺生物剤が、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド(銅ピリチオン、CuPT)、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド(亜鉛ピリチオン、ZnPT)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、酸化第一銅(Cu
2O)、酸化亜鉛(ZnO)、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(トラロピリル)、亜鉛エタン-1,2-ジイルビス(ジチオカルバメート)(ジネブ)、亜鉛N,N-ジメチルカルバモジチオエート(ジラム)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、チオシアン酸銅(I)(CuSCN)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(メデトミジン)、トリアジン、
N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド(トリルフルアニド)及び2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)からなる群から選択される、防汚組成物。
【請求項2】
前記1種以上の殺生物剤が、CuPT、ZnPT、DCOIT、Cu
2O、及びトラロピリルからなる群から選択される、請求項1に記載の防汚組成物。
【請求項3】
前記1種以上の殺生物剤がCuPT及びCu
2Oからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の防汚組成物。
【請求項4】
前記殺生物剤がCuPTである、請求項1~3のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項5】
前記殺生物剤がCu
2Oである、請求項1~3のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項6】
前記殺生物剤がCuPT及びCu
2Oである、請求項3に記載の防汚組成物。
【請求項7】
Cu(ETFAA)
2(重量%)とCuPT(重量%)との比、及び/又は、Cu(ETFAA)
2(重量%)とCu
2O(重量%)との比が、100:1~1:100である、請求項3~6のいずれか一項に記載の防汚組成物。
【請求項8】
Cu(ETFAA)
2(重量%)とCuPT(重量%)との比、及び/又は、Cu(ETFAA)
2(重量%)とCu
2O(重量%)との比が、10:1~1:10である、請求項7に記載の防汚組成物。
【請求項9】
Cu(ETFAA)
2(重量%)とCuPT(重量%)との比、及び/又は、Cu(ETFAA)
2(重量%)とCu
2O(重量%)との比が、5:1~1:5である、請求項8に記載の防汚組成物。
【請求項10】
固体表面上の海洋生物付着を抑制するための防汚組成物の使用であって、該防汚組成物がCu(ETFAA)
2を含む、使用。
【請求項11】
前記防汚組成物が、Cu(ETFAA)
2及び1種以上の殺生物剤を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記防汚組成物が、請求項1~9のいずれか一項に記載の防汚組成物である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記防汚組成物をCu(ETFAA)
2の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーと組み合わせて使用する、請求項10~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の防汚組成物及びCu(ETFAA)
2の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーを含む防汚塗料。
【請求項15】
Cu(ETFAA)
2の含有量が、1~25重量%である、請求項14に記載の防汚塗料。
【請求項16】
Cu(ETFAA)
2の含有量が、3~20重量%である、請求項15に記載の防汚染料。
【請求項17】
Cu(ETFAA)
2の含有量が、4~18重量%である、請求項16に記載の防汚染料。
【請求項18】
Cu(ETFAA)
2の含有量が、5~15重量%である、請求項17に記載の防汚染料。
【請求項19】
前記1種以上の殺生物剤の合計含有量が30重量%未満である、請求項14~18のいずれか一項に記載の防汚塗料。
【請求項20】
前記1種以上の殺生物剤の合計含有量が25重量%未満である、請求項19に記載の防汚塗料。
【請求項21】
前記1種以上の殺生物剤の合計含有量が20重量%未満である、請求項20に記載の防汚塗料。
【請求項22】
前記1種以上の殺生物剤の合計含有量が18重量%未満である、請求項21に記載の防汚塗料。
【請求項23】
CuPTの合計含有量が10重量%未満であり、及び/又はCu
2Oの合計含有量が20重量%未満である、請求項14~22のいずれか一項に記載の防汚塗料。
【請求項24】
CuPTの合計含有量が8重量%未満である、請求項23に記載の防汚塗料。
【請求項25】
CuPTの合計含有量が7重量%未満である、請求項23に記載の防汚塗料。
【請求項26】
Cu
2Oの合計含有量が15重量%未満である、請求項23に記載の防汚塗料。
【請求項27】
Cu
2Oの合計含有量が12重量%未満である、請求項23に記載の防汚塗料。
【請求項28】
固体表面上の海洋生物付着を抑制する方法であって、請求項14~27のいずれか一項に記載の防汚塗料を前記表面に塗布することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶及び海洋構造の表面の海洋生物付着に対して非常に効果的な銅ジ(エチル4,4,4-トリフルオロアセトアセテート)(Cu(ETFAA)2)を含む防汚組成物、海洋生物付着を抑制するためのそれらの使用、及び前記組成物を含む防汚塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、水産養殖漁網、水中構造物及び装置は、フジツボ、コケムシ、ヒドロ虫、イガイ、藻類等の海洋生物に攻撃される傾向がある。生物は成長して増殖し、最終的には重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、船体の場合、船体上の海洋生物の増殖により、船体と水の摩擦抵抗が増大して、燃料消費量が増大し、かつ船速が低下することがある。燃料効率を最大にするために船体を清潔で滑らかに保つために、船体を海洋生物の増殖から守る必要がある。また、外来生物がその土地本来の生態を破壊する可能性もあり、海洋生物を世界のある地域から別の地域へ輸送することも懸念されている。したがって、海洋生物付着からの適切な保護が水中部分には必要であり、これは典型的には防汚塗料で達成される。
【0003】
このような防汚塗料に使用されるバインダー系は、典型的には、摩滅性バインダーから構成される。塗膜の摩滅は、経時による塗膜からの防汚剤(殺生物剤)を放出し、これにより汚損生物の付着を妨げることによって、汚損を防止するのに役立つ。摩滅性防汚塗膜には主に2種類あり、業界により「自己研磨」及び「アブレーティブ」と表現されている。
【0004】
アブレーティブ塗膜のバインダー系は、大部分が、海水と反応して水溶性となり、摩滅するロジンから構成される。あるいは、ロジン又はロジン誘導体は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ゴム樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、又はポリアミド樹脂などの非摩滅性バインダーとの混合物においても使用される。
【0005】
「自己研磨防汚塗膜」では、バインダー系は加水分解性アクリレートポリマーをベースにしている。加水分解可能な官能性は、金属カルボキシレートアクリレートモノマー又はシリルアクリレートモノマーのいずれかによってポリマーに一般に提供される。侵食性ポリエステルバインダーも使用され、低コストの防汚塗料となる。アブレーティブ塗膜と自己研磨型塗膜の相違は、主に溶脱層の厚さ及び自己研磨塗膜の経時的な侵食速度がより線形であることである。
【0006】
「ハイブリッド塗膜」も存在し、そのバインダー系は、自己研磨塗料のような侵食性アクリレート、及びロジンから構成される。溶脱層の厚さは、アブレーティブ塗膜よりも薄いが、真の自己研磨型塗膜よりも厚い。
【0007】
ほとんどの市販の防汚塗料は、その中に殺生物剤として使用される高濃度、すなわち、適切な防汚保護のために必要とされる典型的には約40重量%の酸化第一銅(Cu2O)ために、高い金属含有率を含有する。酸化第一銅は多くの生物に有害な可能性がある。防汚塗料からの溶脱は、水、堆積物及び周辺環境の銅濃度上昇の一因となり得る。人工的に高濃度の銅は、生態学的に重大な影響を及ぼす可能性がある。Cu2Oは防汚塗料における防汚剤として非常に広く使用されているが、防汚塗料は、Cu2O単独ではフジツボのような硬い汚損生物に対してのみ有効であるので、追加の殺生物剤を含有することもある。
【0008】
さらなる欠点として、酸化第一銅は、典型的に、防汚塗料フィルムに濃い赤褐色を付与し、また、大気中の二酸化炭素及び海水からの塩化物と反応して、塗膜の表面に不均一な線条を形成することがある。これは美しくない外観であり、例えば、船が海に進水した直後に起こることがある。ヨットの持ち主及びクルーズの運転手の中には、酸化第一銅を含む塗料では達成できない鮮やかな色及び均一な外観を好む者もいる。
【0009】
市販の防汚塗料において酸化第一銅を代替しようとする試みにより、白色のチオシアン酸銅、及びフジツボに効力をもつ農薬のトラロピリルなどの酸化第一銅に代わるものが開発された。しかし、これらの代替品は、さらに費用が高く、また酸化第一銅をベースにした防汚塗料ほどの効果はない。
【0010】
したがって、銅含有量が減少した生態学的及び経済的に改良された海洋防汚塗料、又は従来使用されている防汚塗料中の酸化第一銅を完全に置換さえする生態学的及び経済的に改良された海洋防汚塗料が必要である。
【発明の概要】
【0011】
Cu(ETFAA)2を含む本発明の防汚組成物は、この必要性を満たす。本発明者らは、驚くべきことに、Cu(ETFAA)2が、アブレーティブ塗料又は自己研磨塗料のような全ての種類の防汚塗料の防汚性能を高める非常に効果的で汎用性のある薬剤であり、また、単純な接触浸出塗膜にも使用できることを見出した。
【0012】
したがって、防汚塗料中のCu2Oを部分的に又は完全に置換し、これにより適切な防汚性能を残しながら、防汚塗料中の金属含量を劇的に減少させることが可能である。また、Cu(ETFAA)2を含む本発明の防汚組成物は、本質的に無色であり、したがって船体に所望されることが多い明るい色を邪魔しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2の表1の防汚塗料で被覆したパネルを示し、すすぎのない状態及びすすいだ後の海水中における24ヶ月後のパネルの外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関連する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書では、以下の略語及び用語を使用する。
AIBN:アゾビス(イソブチロニトリル)
AMBN:アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)
A630-20X:脂肪酸アミド
BA:アクリル酸ブチル
クロロタロニル:2,4,5,6-テトラクロロベンゼン-1,3-ジカルボニトリル
銅Omadine(R)、CuPT、銅ピリチオン:銅2-ピリジンチオール-1-オキシド
Cu2O:酸化第一銅
Cu(ETFAA)2:銅ジ(エチル4,4,4-トリフルオロアセトアセテート)
CuSCN:チオシアン酸銅(I)
DCOIT:4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン
ジウロン:3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素
ETFAA:エチル4,4,4-トリフルオロアセトアセテート
2MEA:2-メトキシエチルアクリレートモノマー
メデトミジン:4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール
MMA:メタクリル酸メチルモノマー
MIBK:メチルイソブチルケトン
MPM:メトキシプロピレンモノマー
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
TIPX:トリイソプロピルシリルアクリレートモノマー
トラロピリル:4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル
VAGH:塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコールコポリマー(市販品)
ジネブ:亜鉛エタン-1,2-ジイルビス(ジチオカルバメート)
ジラム:亜鉛N,N-ジメチルカルバモジチオエート
ZnO:酸化亜鉛
ZnPT、亜鉛ピリチオン:亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの両方を示す総称である。「メタクリレート」又は「メタ-アクリレート」という用語は、メタクリレートモノマーのみを示す。
【0015】
Bentone SD2は沈降防止特性のために添加された有機粘土であり、Bentone #38はクオタニウム18-ヘクトライト粘土であり、Minex 4はネフェリン・閃長岩粘土である。Disparlon 6900-20x(A630-20Xポリアミドワックス)は、レオロジー改質剤として使用されるキシレン中のポリアミドワックスの20%分散液であり、Disperbyk 161は分散添加剤である。樹脂は、本発明の防汚塗料に使用されるバインダーの原料となる可能性のある全てのプレポリマー又はポリマーを指す。ロジン又はガムロジンはコロフォニー(CAS:8050-09-7、https://www.megaglori.com/what-is-gum-rosin/も参照)を指す。
【0016】
「殺生物剤」とは、表面への海洋生物の定着を妨げ、及び/又は表面での海洋生物の増殖を妨げ、及び/又は表面からの海洋生物の除去を促進するあらゆる化合物を意味する。
【0017】
「防汚塗料」、「防汚塗膜」及び「防汚配合物」という用語は本明細書では互換的に使用される。
【0018】
本発明は、船体又は他の任意の海洋構造物のような水中の物体の表面の汚損を抑制するための新たな取り組みを提供する。具体的には、本発明はCu(ETFAA)2を含む防汚組成物を提供する。驚くべきことに、Cu(ETFAA)2は、フジツボ、コケムシ、ヒドロ虫、イガイ(mussle)、藻類などの海洋生物の定着に対する防汚組成物の防汚効果を大幅に高めることが見出された。
【0019】
ETFAAは、農業及び医薬品に使用される化合物の製造の中間体として知られている化合物である。ETFAAの銅キレート錯体は、水酸化銅(Cu(OH)2)を1:2モル比でETFAAに加えることによって形成することができる。この錯体は室温において速やかに高収率で形成される。
2ETFAA+Cu(OH)2→Cu(ETFAA)2+2H2O。
【0020】
本発明の防汚組成物は、さらに、物体の表面上の汚れを防止することができる1種以上の殺生物剤を含むことができる。
【0021】
このような殺生物剤は、無機殺生物剤、有機金属殺生物剤又は有機殺生物剤であることができる。
【0022】
無機殺生物剤の例は、銅、及び銅化合物、例えば、酸化第一銅及び酸化第二銅のような酸化銅;銅合金、例えば、銅-ニッケル合金;銅塩、例えば、チオシアン酸銅(CuSCN)、硫化銅;又はメタホウ酸バリウムである。
【0023】
有機金属殺生物剤の例は、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド[ZnPT、亜鉛ピリチオン]、有機銅化合物、例えば、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド[CuPT、銅ピリチオン]、酢酸銅、ナフテン酸銅、8-ウイノリノエート(uinolinonate)[オキシン-銅]、ノニルフェノールスルホン酸銅、銅ビス(エチレンジアミン)ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)及び銅ビス(ペンタクロロフェノレート)、ジチオカルバメート化合物、例えば、亜鉛N,N-ジメチルカルバモジチオエート[ジラム]、亜鉛エタン-1,2-ジイルビス(ジチオカルバメート)[ジネブ]、マンガンエチレンビス(ジチオカルバメート)[マネブ]又は亜鉛塩と錯体を形成したマンガンエチレンビス(ジチオカルバメート)[マンコゼブ]である。
【0024】
有機殺生物剤の例は、複素環化合物、例えば、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミン)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン[BIT]、2-(チオシアナトメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール[ベンチアゾール]、3-ベンゾ[b]チエン-2-イル-5,6-ジヒドロ-1,4,2-オキサチアジン-4-オキシド[ベトキサジン]及び2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、尿素誘導体、例えば、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素[ジウロン]、カルボン酸、スルホン酸及びスルフェン酸のアミド及びイミド、例えば、N-(ジクロロフルオロメチルチオ)フタルイミド、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]及びN-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、他の有機化合物、例えば、ピリジントリフェニルボラン、アミントリフェニルボラン、3-ヨード-2-プロピニル-N-ブチルカルバメート[ヨードカルブ]、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル[クロロタロニル]、p-((ジヨードメチル)スルホニル)トルエン又は4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]である。
【0025】
殺生物剤の他の例は、テトラ-アルキルホスホニウムハロゲン化物、グアニジン誘導体、イミダゾール含有化合物、例えば、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]及び誘導体、アベルメクチンを含む大環状ラクトン及びその誘導体、例えば、イベルメクチン、スピノシン及びその誘導体、例えば、スピノサド、又は酵素、例えば、酸化酵素、若しくは蛋白分解的、ヘミセルロース分解的、セルロース分解的、脂肪分解的又はアミロース分解的に活性な酵素である。
【0026】
一実施形態において、本発明の防汚組成物は、Cu(ETFAA)2と、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド(CuPT、銅ピリチオン)、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド(ZnPT、亜鉛ピリチオン)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、酸化第一銅(Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(トラロピリル)、亜鉛エタン-1,2-ジイルビス(ジチオカルバメート)(ジネブ)、亜鉛N,N-ジメチルカルバモジチオエート(ジラム)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、チオシアン酸銅(I)(CuSCN)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(メデトミジン)、トリアジン、フルアニド、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)からなる群から選択されるさらに1種以上の殺生物剤とを含む。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明の防汚組成物は、Cu(ETFAA)2と、CuPT、ZnPT、DCOIT、Cu2O及びトラロピリルからなる群から選択される1種以上の殺生物剤とを含む。
【0028】
より好ましい実施形態において、本発明の防汚組成物は、Cu(ETFAA)2と、CuPT及びCu2Oからなる群から選択される1種以上の殺生物剤とを含む。Cu(ETFAA)2(重量%)とCuPT(重量%)との比、及び/又はCu(ETFAA)2(重量%)とCu2O(重量%)との比は、有利には100:1~1:100、好ましくは10:1~1:10、最も好ましくは5:1~1:5である。
【0029】
具体的な実施形態において、本発明の防汚組成物はCu(ETFAA)2及びCuPTを含む。Cu(ETFAA)2(重量%)とCuPT(重量%)との比は、有利には100:1~1:100、好ましくは10:1~1:10、最も好ましくは5:1~1:5である。
【0030】
別の具体的な実施形態において、本発明の防汚組成物はCu(ETFAA)2及びCu2Oを含む。Cu(ETFAA)2(重量%)とCu2O(重量%)との比は、有利には100:1~1:100、好ましくは10:1~1:10、最も好ましくは5:1~1:5である。
【0031】
より具体的な実施形態において、本発明の防汚組成物はCu(ETFAA)2、CuPT及びCu2Oを含み、Cu(ETFAA)2(重量%)とCuPT(重量%)との比は5:1~2:1であり、Cu(ETFAA)2(重量%)とCu2O(重量%)との比は5:1~1:5である。
【0032】
別の具体的な実施形態において、本発明の防汚組成物はCu(ETFAA)2及びCuPTを含み、Cu2Oを含まず、Cu(ETFAA)2(重量%)とCuPT(重量%)との比は5:1~2:1である。
【0033】
Cu(ETFAA)2を含む本発明の防汚組成物は、優れた防汚特性を提供するだけでなく、本質的に無色であり、したがって船体に望まれることが多い明るい色を邪魔しない。
【0034】
本発明はさらに、固体表面上の海洋生物付着の抑制のための本発明の防汚組成物の使用を提供する。固体表面は、船舶、水産養殖漁網、水中構造物及び装置、水槽、沖合建築物、パイプ、網、ピア、杭又は柱などの水中の物体の任意の固体表面であることができる。
【0035】
本発明の防汚組成物は、さらに、Cu(ETFAA)2の制御された放出及びもし存在する場合にはその中に含まれる1種以上の殺生物剤の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーと組み合わせて、例えば、自己研磨塗膜又はアブレーティブ塗膜の場合と同様に、経時的に防汚塗膜からこれらの薬剤を放出することによって使用することができる。
【0036】
本発明者らは、驚くべきことに、Cu(ETFAA)2が、全ての種類の防汚塗膜、すなわち、防汚被覆組成物のためのバインダーとして典型的に使用される種々の異なるポリマー及び/又はコポリマーをベースとする防汚塗膜において使用され得る汎用性のある薬剤であることを見出した。したがって、Cu(ETFAA)2の制御された放出及びもし存在する場合にはその中に含まれる1種以上の殺生物剤の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーは、防汚塗膜におけるバインダーとして典型的に使用される任意のポリマー及び/又はコポリマーであることができる。その目的に適したポリマー及び/又はコポリマーは当業者に知られている。使用されるバインダーの量及び種類に応じて、Cu(ETFAA)2及び1種以上の殺生物剤は、例えば、船舶の航海パターンに適切な、所定の所望の速度で制御された方法で放出される。
【0037】
例えば、Cu(ETFAA)2及び前記1種以上の殺生物剤の制御された放出を可能にする、「自己研磨防汚塗膜」においてバインダーとして使用されるポリマー及び/又はコポリマーは、(メタ)アクリレート系ポリマー及び/又はコポリマーのような加水分解性アクリレートポリマーであることができる。(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマー中の(メタ)アクリレートモノマー部分は、アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソ-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートだけでなく、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、又はアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブトキシブチルジグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、又はヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートであることができる。
【0038】
(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマー中の(メタ)アクリレートモノマー部分は、さらに、シリル(メタ)アクリレート、例えば、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-イソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-イソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート又はトリフェニルシリル(メタ)アクリレートであることができる。
【0039】
(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマーは、ここでは「金属塩(メタ)アクリレート」と称するアクリル酸又はメタクリル酸の金属塩部分を含むこともできる。金属は、当業者に知られた任意の適切な金属、例えば、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、リチウム、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、バリウム及びビスマスであることができる。
【0040】
Cu(ETFAA)2の制御された放出及び及びもし存在する場合には前記1種以上の殺生物剤の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーは、VAGHコポリマーであることができる。VAGHコポリマーを2:3のキシレン:MIBKに溶解してもよい。
【0041】
したがって、一実施形態において、Cu(ETFAA)2の制御された放出及びもし存在する場合には前記1種以上の殺生物剤の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーは、(メタ)アクリレートポリマー及び/若しくはコポリマー、又はVAGHコポリマーを含む。(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、亜鉛(メタ)アクリレート、及びシリル-(メタ)アクリレートからなる群から選択されるモノマー部分のポリマー又はコポリマーであることができ、(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマーは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、亜鉛メタクリレート及びトリイソプロピルシリルアクリレートからなる群から選択されるモノマー部分のポリマー又はコポリマーであることができ、好ましくは(メタ)アクリレートポリマー及び/又はコポリマーは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及び亜鉛メタクリレートからなる群から選択されるモノマー部分のコポリマーであり、より好ましくは(メタ)アクリレートポリマーポリマー及び/又はコポリマーは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート及び亜鉛メタクリレートからなる群から選択されるモノマー部分のコポリマーであり、最も好ましくは(メタ)アクリレートポリマーポリマー及び/又はコポリマーは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート及びトリ-イソプロピルシリルアクリレートからなる群から選択されるモノマー部分のコポリマーである。
【0042】
その結果、本発明はさらに、本発明の防汚組成物と、Cu(ETFAA)2の制御された放出及びもし存在する場合には前記1種以上の殺生物剤の制御された放出を可能にするポリマー及び/又はコポリマーとを含む防汚塗料を提供する。
【0043】
本発明の防汚塗料中のCu(ETFAA)2の含有量は、約1~約25重量%、好ましくは約3~約20重量%、より好ましくは約4~約18重量%、最も好ましくは約5~約15重量%である。
【0044】
Cu(ETFAA)2の優れた増強特性のために、本発明の防汚塗料では、前記1種以上の殺生物剤の低量のみが必要である。本発明の防汚塗料中の1種以上の殺生物剤の合計含有量は、約30重量%未満、好ましくは約25重量%未満、より好ましくは約20重量%未満、最も好ましくは約18重量%未満である。
【0045】
本発明の防汚塗料中のCuPTの合計含有量は、約10重量%未満、より好ましくは約8重量%未満、最も好ましくは約7重量%未満である。
【0046】
本発明の防汚塗料中のCu2Oの合計含有量は、約20重量%未満、より好ましくは約15重量%未満、最も好ましくは約12重量%未満である。
【0047】
このように、毒性のある金属化合物、特にCu2Oの含有量は非常に低レベルに保たれており、回避さえ可能である。
【0048】
本発明はさらに、固体表面の海洋生物付着を抑制する方法であって、本発明の防汚組成物を含む防汚塗料を前記表面に塗布することを特徴とする方法を提供する。固体表面は、船舶、水産養殖漁網、水中構造物及び装置、水槽、沖合建築物、パイプ、網、ピア、杭又は柱などの水中の物体の任意の固体表面であってよい。
【0049】
以下では、実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に決して限定されるものではないと解釈すべきである。
【実施例】
【0050】
[実施例1:防汚塗料用のポリマーをベースとする例示的なバインダーの調製]
以下に概説するように、自己研磨防汚塗料又はハイブリッド塗膜に使用することができる様々なポリマーをベースとする例示的なバインダーを調製した。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
[例2:防汚塗料中のCu2O及びCu(ETFAA)2の有効性の比較]
Cu(ETFAA)2が防汚塗料に存在する場合、Cu2O量を大幅に減少させ、回避さえできることを確認するために、一組の自己研磨防汚塗料の有効性を試験いかだ上の海水に実験的塗装パネルを浸漬することにより評価した。この目的のために、シリルアクリレートポリマーをバインダー成分として含有し、Cu(ETFAA)2及びCuPT(「実験的塗料」)又はCu2O及びCuPT(「対照塗料」)のいずれかを含有する2つの自己研磨防汚塗料を調製した(表1参照)。これらの塗料に使用されるシリルアクリレートポリマー成分の合成は、上記の実施例1Eに提供される。
【0058】
【0059】
酸化第一銅はCu(ETFAA)2よりも約3倍高密度であるため、2.5gのタルクの添加を用いて、塗料中の酸化第一銅の体積にタルク及びCu(ETFAA)2の体積がほぼ同じになるようにした。タルクは酸化第一銅よりもバインダー要求量(表面積/グラム)が高いため、酸化第一銅の体積を完全に補うためにより多くのタルクを添加すると、遊離バインダーの量に影響を及ぼすであろう。
【0060】
結果:2015年9月から2017年9月まで海水に24ヶ月間浸漬した後の結果を
図1に示し、すすいでない状態及びすすぎ後のパネルの写真を示す。低圧の水流でパネルをすすぎ、ボートのゆっくりした動きをシミュレートする。ボートの動きによって、ゆるく付着した汚れはどれもばらばらにされ、取り除かれる。Cu(ETFAA)
2及び銅ピリチオンを含む「実験的塗料」は海洋生物の成長を効果的に阻害し、この点で40重量%の酸化第一銅及び銅ピリチオンを含む対照塗料より強力であった。実験的塗料は対照塗料よりもわずかに速く摩滅した。これは、シリルアクリレートポリマーの摩滅速度を低下させる酸化第一銅の既知の特性に起因して予想されていた。
【0061】
[実施例3:防汚塗料の調製]
異なる種類の海洋防汚塗料に用いられるバインダー技術に基づいて3組の防汚塗料を調製した。自己研磨バインダー型、すなわち、2つの異なる量の機能性モノマー(亜鉛アクリレートモノマー又はシリルアクリレートモノマー)中の亜鉛アクリレートポリマー及びシリルアクリレートポリマーをベースとするもの、又はロジンと非摩滅性VAGHポリマーをベースとするアブレーティブバインダー型のいずれかを含む例示的塗料を調製した。塗料を作るための材料の体積は乾燥フィルムの厚さ、及び乾燥フィルム中の防汚剤の量のような塗料の特性に影響するので、防汚性能に及ぼす材料の影響を観察するために意図的に変化させた場合を除いて、各クラスの塗膜においてこれらの配合物中の材料の体積固形分を基本的に一定に保った。
【0062】
<「亜鉛アクリレートポリマーベースのバインダー」をベースとする自己研磨防汚塗料>
実験的塗料No.4、11、12及び対照塗料69、いずれもバインダー成分として実施例1Dに従って本明細書で「Zn-Ac(AV=100)」と称する亜鉛アクリレートポリマーを用いる
【0063】
【0064】
実験的塗料No.22、25、20、23及び26、いずれもバインダー成分として実施例1Cに従って本明細書で「Zn-Ac(AV=100-)」と称する亜鉛アクリレートポリマーを用いる
【0065】
【0066】
<アブレーティブ防汚塗料>
実験的塗料No.32、36、37、108A、108B及び108C並びに対照塗料70、いずれもバインダー成分として市販のVAGHポリマーを用いる
【0067】
【0068】
実験的塗料108A:実験的塗料101及び104の1:1混合物
【0069】
実験的塗料108B:実験的塗料101及び104の5:3混合物
【0070】
実験的塗料108C:実験的塗料101及び104の3:5混合物
【0071】
<「シリルアクリレート」ポリマーベースのバインダーをベースとする自己研磨防汚塗料>
実験的塗料No.53、60、61、63、64、66、67及び111、いずれもバインダー成分として実施例1E及び1Fに従った「Si-Ac」又は「Si-Ac(TIPX-L)」と称されるシリルアクリレートポリマーを用いる
【0072】
【0073】
各クラスの防汚塗料(すなわち、異なるバインダー種類をベースとする)は、材料がどのように相互作用し、適用性及び粘度のような特性に影響するかの違いにより、使用する特定の材料の比率にある程度の変動を示す可能性がある。当業者は、塗膜の塗布及び粘度に対する材料の影響のために、体積固形分のような異なるクラスの塗膜間で等価な特性を持たないことが時折必要であることを理解する。また、防汚剤の予想浸出率を説明するために、組成のばらつきも許容される(及び許可される)。例えば、防汚剤は、シリルアクリレートベースのバインダーをベースとする塗料から、アブレーティブバインダー又は亜鉛アクリレートベースのバインダーをベースとする塗料からよりも遅い速度で浸出する。したがって、静止したいかだの試験では、汚れ防止のために防汚剤の比較的高い浸出率を必要とするため、シリルアクリレートベースのバインダーをベースにした塗料では、より多量の防汚剤を使用する。
【0074】
<実施例5:防汚実験>
上記実施例4の防汚塗料を防汚性に関して評価した。ファイバーガラス(FRP)パネルをこれらの塗料で被覆した。乾燥フィルムの厚さは防汚性能に影響を及ぼすため、塗料の各コートを乾燥させた後、FRPパネルを秤量し、乾燥塗料の密度に対して塗布した塗料の重量を調整して、目標乾燥フィルム厚さを150μmとすることにより、これを注意深く制御した。塗装パネルは全て、150μmの乾燥フィルム厚さの10μm以内である。
【0075】
試験パネルの寸法は457mm×102mm×3.33mmであった。したがって、150μmの乾燥フィルム厚さに必要なパネルの前面の乾燥塗膜の体積は6.992mlである。背面側及び縁部に必要な体積は6.992+0.533=7.525mlである。塗布した塗料の体積は測定せず、乾燥塗料の密度及び塗布した乾燥塗料の重量で算出した。
a) パネルの前面に塗布した乾燥塗料の重量=6.992ml×塗料固形分の密度(g/ml)
b) パネルの背面及び縁部に塗布した乾燥塗料の重量=7.525ml×塗料固形分の密度
【0076】
試験パネルを海水に曝露させた。2、4、6及び8ヵ月の浸漬後の結果は以下の表2のとおりである。本発明による防汚塗料はいずれも優れた防汚特性を示した。
【0077】
【0078】
結果に適用したカテゴリーの詳細を以下に説明する。
【0079】
<藻類に関する防汚特性>
大変良い(4):藻類なし。
良い(3):薄く、粘液で覆われている。
普通(2):厚く、粘液で覆われている。
悪い(1):厚く、粘液で覆われており、及び/又は少数の藻類で覆われている。
大変悪い(0):厚く、粘液及び/又は多くの藻類で覆われている。
【0080】
<フジツボ、コケムシ、ヒドロ虫、イガイなどの動物に関する防汚特性>
大変良い(4):動物なし。
良い(3):小型でごく少数の動物で覆われている。
普通(2):小さくて少数の動物で覆われている。
悪い(1):小さい/大きい少数の動物で覆われている。
大変悪い(0):小さい/大きい多くの動物で覆われている。