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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】永久又は軟磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/24 20060101AFI20240214BHJP
   H01F 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   H01F 1/03 20060101ALI20240214BHJP
   H01F 1/04 20060101ALI20240214BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240214BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20240214BHJP
   B82Y 25/00 20110101ALI20240214BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240214BHJP
【FI】
H01F41/24
H01F1/00 172
H01F1/03 111
H01F1/04
H01F41/02 G
B81C1/00 ZNM
B81B7/02
B82Y25/00
B82Y40/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021532902
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 FR2019053046
(87)【国際公開番号】W WO2020120913
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】18/72920
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519429406
【氏名又は名称】アンスティテュート ナショナル デ サイエンス アプリーク ド トゥールーズ(アイエヌエスエーティー)
(73)【特許権者】
【識別番号】510139564
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・トゥールーズ・トロワ-ポール・サバティエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE TOULOUSE III-PAUL SABATIER
(73)【特許権者】
【識別番号】508071375
【氏名又は名称】ソントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラクロワ リーズマリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヨー ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ライシュラ ティエリ
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ ピエール
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0172085(US,A1)
【文献】国際公開第2004/088695(WO,A1)
【文献】特開2007-128607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00-1/44、10/00-10/32
H01F 41/02、41/24
B81C 1/00
B81B 7/02
B82Y 25/00、40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久(3a、3b)又は軟(3c)磁石の製造方法であって、少なくとも以下のステップ
a)以下を準備し、
- 永久磁気モーメントを有する物体の組が分散した、少なくとも1つの溶媒を含む溶液;
基板(1a、1b、1c、1d、1e、1f)であって、該基板が有し得る表面又はキャビティ(4d、4e)内に、強磁性材料で構成された少なくとも1つの第1パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)及び1つの第2パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)が固定され、前記第1パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)は前記第2パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)が含む面に対面する面を有し、対面する前記面は互いに平行である、基板(1a、1b、1c、1d、1e、1f);
b)前記第1及び第2パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)を、少なくとも部分的に前記溶液に浸漬させるように、前記溶液を、前記基板(1a、1b、1c、1f)の前記表面に、又は場合によってはそのキャビティ(4d、4e)内に、堆積させ
c)前記基板(1a、1b、1c、1d、1e、1f)を、互いに対面して平行である前記第1パッドの前記面及び前記第2パッド(2a、2b、2c、2d、2nd、2f)の前記面に垂直な方向を向いた磁場(B)中に配置し、前記物体の組の少なくとも一部を、互いに対面して平行である前記第1パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)の前記面と前記第2パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)の前記面との間で、ともにグループ化させ、これらの物体の各々を、印加された前記磁場(B)の方向に沿って配向させ、永久(3a、3b)又は軟(3c)磁石を形成させ
d)必要に応じて、少なくとも1つの溶媒で前記基板(1a、1b、1c、1d、1e、1f)の少なくとも1回の洗浄を行い、
e)必要に応じて、少なくとも1つの分散溶媒を、前記物体の組から、場合によっては、少なくとも1つの洗浄溶媒から、完全に又は部分的に蒸発させる
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
永久磁気モーメントを有する前記物体は、コバルト、鉄、ニッケル又は白金から選択される金属、これらの金属の炭化物、これらの金属の窒化物の、単独又は混合物から構成されている、ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法において、前記物体がナノ物体であることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法において、
前記物体はコバルトナノロッドであり、前記磁石は永久磁石であることを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の製造方法において、
前記物体は球状の炭化鉄のナノ粒子であり、前記磁石は軟磁石であることを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法において、
永久磁気モーメントを有する前記物体の組が分散した前記溶媒は、アニソール、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン及びメシチレンの、単独又は混合物から選択されることを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記溶液中の永久磁気モーメントを有する物体の濃度は、体積1Lあたりの前記物体の数が5×10 15 ~1×10 18 である濃度であることを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記基板(1a、1b、1c、1d、1e、1f)は、シリコン、ガラス、有機溶媒不溶性ポリマー、金属及びシリカから選択される材料で構成されていることを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法において、
パッド(2a、2b、2c、2d、2e、2f)は、ニッケル、コバルト、スチール、ニッケル及び鉄の合金、鉄及びコバルトの合金、鉄及び白金の合金、コバルト及び白金の合金、ニッケル及び鉄の合金並びにニッケル、コバルト、マンガン及びリンの合金の、単独又は混合物から選択される、強磁性材料から構成されていることを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法において、
パッド(2a、2b、2c)を前記基板(1a、1b、1c)の表面に取り付けること及び
- 前記基板(1a、1b、1c)は、面積が4mm~2,500cmであるベースを有し、このベースから測定した高さは10μm~10cmであり、
- 前記パッド(2a、2b、2c)は、前記基板(1a、1b、1c)の前記表面に固定されその面積が50μm~1cmであるベースを有し、このベースから測定した高さは10μm~1mmであり、
- 2つの前記パッド(2a、2b、2c)の互いに平行で対面する2つの面は、10μm~1cmの距離の間隔を空けていること、
を特徴とする、製造方法
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法において、
前記基板(1a、1b、1c)は、2~100個のパッド(2a、2b、2c)を有し、各パッドは他のパッド(2a、2b、2c)の面に対面する少なくとも1つの面を有し、対面する前記面はすべて互いに平行である、ことを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法において、
パッドは、前記基板(1d)が有するキャビティ(4d)内に固定されること及び
- 前記基板(1d)は、面積が1mm~100cmであるベースを有し、このベースから測定した高さは1mm~10cmであり、
- 前記基板(1d)は、体積が1mm~500cmであり深さが1mm~10cmである少なくとも1つのキャビティ(4d)を有し、
- 前記パッド(2d)は、前記基板(1d)と接しその面積が0.01~1000mmであるベースを有し、このベースから測定した高さは100μm~5mmであり、
- 2つの前記パッド(2d)の互いに対面し平行である2つの前記面は、100μm~10mmの距離の間隔を空けていること、
を特徴とする、製造方法
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法において、
前記基板(1d)はポリテトラフルオロエチレンから構成されており、前記パッド(2d)は、円筒形状を有し、そのキャビティ(4d)内で前記基板(1d)に固定されたディスクの形状を有するベースを有し、前記パッド(2d)はスチールで構成されている、製造方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法において、
パッド(2e)は、前記基板(1e)が有するキャビティ(4e)内に固定されること及び
- 前記基板(1e)は、面積が4mm~2,500cmであるベースを有し、該ベースから測定した高さが10μm~10cmであり、
- 前記基板(1e)は、体積が500μm~100mmであり深さが10μm~1mmである少なくとも1つのキャビティ(4e)を有し、
- 前記キャビティ(4e)の第1の面(5e)に固定された少なくとも1つの第1パッド(2e)は、前記キャビティ(4e)の第2の面(6e)に固定された第2パッド(2e)の1つの面に平行で対面する面を有し、
- 前記パッド(2e)は、その面積が50μm~1cmである、前記基板(1e)と接するベースを有し、このベースから測定した高さは10μm~1mmであり、
- 2つの前記パッド(2e)の、対面し互いに平行な2つの前記面は、10μm~1cmの距離の間隔を空けていること、
を特徴とする、製造方法
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記製造方法の最後に得られる永久磁石の高さは、10μm~1mmであることを特徴とする、製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の製造方法において、
ステップc)において、磁場強度(B)は100mT~1Tであることを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久又は軟磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石は、強磁性体で構成された物体である。それは、外部磁場なしで存在する自然磁化、並びに高い保磁力(coercive field)及び残留磁気(remanence)を有する。
【0003】
以下で「MEMS」と呼ばれる、多くの微小電気機械システムは、永久磁石を備え、その全体が、以下で「MAGMEMS」という略語で呼ばれる、磁気微小電気機械システムを形成する。
【0004】
MAGMEMSは、電磁変換を備えたあらゆるタイプのMEMSセンサ及びアクチュエータであり得る。例えば、それは、磁場センサ、エネルギーコレクタ又は継電器(a relay)であり得る。
【0005】
これらのMAGMEMSは、広く様々な用途で使用される:
- 微生物学、特に磁気マイクロ流体分離(例えばバイオセンサ)、
- 電気通信(例えば、ラジオ周波数微小スイッチ)、
- 自動車用センサ。
【0006】
さらに、永久磁石は以下のような光磁気デバイスで使用し得る:
- 磁気光学センサ(例えば、ファイバー光学センサ、回転センサ、偏光センサ);
- デフレクタ;
- 変調器(例えば、マイクロ波変調器);
- 非相反コンポーネント(例えば、絶縁体及びサーキュレータ)。
【0007】
多数の用途があることを考えてみると、永久磁石は日常生活に欠かせないものとなっており、将来性のある重要な市場となっている。
【0008】
最近まで、永久磁石材料の主な供給源は、より優れた磁気性能を提供するという利点を有する希土類ベースの合金(例えば、スカンジウム、イットリウム及びネオジムやサマリウムなどの15種類のランタノイド)であった。希土類永久磁石のよく知られた例は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)及びホウ素(B)の合金から構成された「ネオ磁石」としても知られるNdFeB磁石である。
【発明の概要】
【0009】
しかし、希土類の抽出は難しく、環境問題を引き起こす。これが、現在の傾向がこれらの材料から離れて、効率も良い代替材料を探す理由である。
【0010】
さらに、希土類から永久磁石を製造する方法は複雑である。例えば、NdFeB磁石の製造には、以下のステップが必要である:原材料を溶融し、次いで粉砕するか又は水素でデクリピテーション(decrepitation)を行い、磁場中で成形し焼結する。次いで、そのマグネットブランク(the magnet blanks)を機械加工し、所望のサイズ及び形状に研磨する必要がある。最後に、磁石が酸化して粉塵に分解するのを防ぐため、例えば、磁石をニッケル-銅-ニッケル層でコーティングするために、電気を流すことによる表面処理が必要である。また、機械加工性能の制限により、微小電子機器用途に適した永久磁石サイズを得ることはできない。
【0011】
さらに、この製造方法では、MEMS製造ステップと両立できない1000℃の温度及び高圧が必要である。そして、磁石を残りのMEMSとは別に製造し、次いでそれをMEMSに組み込む必要があり、これは、製造ラインでの実施に手間がかかり、磁石に巨視的な寸法が必要となる。実際には、微視的寸法の磁石は、この方法ではMEMSに簡単に組み込めない:それは、非常に複雑な処理手順を必要とする。
【0012】
さらに、バリウム及びストロンチウムのヘキサフェライトは、永久磁石材料の最も安価な供給源である。しかし、それらは磁化が弱いため、希土類永久磁石のようには磁気的に機能しない。
【0013】
このため、我々は常に新たな、以下の永久磁石材料を探求している:
- 希土類を含まず、さらに
- 優れた磁気特性を有し、
- 低コストで且つ製造ラインで簡単に製造でき、そして、
- これらのMEMS及びデバイスの製造中に、前記のようにMEMS又は磁気光学デバイスに組み込み得る。これには、それらの組込を、低温で、大量生産と両立できる方法で行う必要がある、
- MEMS及び磁気光学デバイスの製造中に製造ラインに統合できるように、適切な寸法(すなわち、特に微視的スケール)を有する。
【0014】
マイクロテクノロジーの分野では、永久磁石を基板上における磁性層の形態で製造する様々な技術が知られている。
【0015】
これらの技術の中で、我々は以下に言及できる:
- レーザーアブレーションによる蒸着(「パルスレーザー蒸着」とも呼ばれ、最大厚さ10~20μm、磁気エネルギーBHmaxが130kJ/mの磁性層を得ることができる。しかし、この技術を行うための温度は700℃であり;これはMEMSと両立できない。
【0016】
- スパッタリングは、400kJ/mの磁気エネルギーBHmaxの量を有する磁性層を得ることができるが、MEMSと両立できない400℃~700℃のアニーリング温度を必要とし、達成可能な厚さが数マイクロメートルの範囲で、最大50μmという制限がある。したがって、例えば100~1000μmのより大きな厚さは、MEMSにとって、例えばディフレクション(a deflection)生成のために非常に望ましいことであるが、この技術では考えられないない。
【0017】
- ポリマーマトリックスにおける等方性粉末の封止。得られるポリマーは、次いで、モールディング、紡糸又はスクリーン印刷により成形し得る。これにより、最大厚さ400μm、磁気エネルギーBHmaxが53kJ/mの磁性層を得ることができる。しかし、ポリマー中の磁性粉末の著しい希釈は、得られる磁石の巨視的特性の大幅な低下につながる。また、従来使用されてきたスクリーン印刷蒸着法は、大規模な工業化には問題がある。さらに、マトリックス内の磁性粉末の均一性に問題が生じ得る。したがって、これらすべての欠点がこの技術の価値を制限する。
【0018】
- 物理蒸着(「物理蒸着(Physical Vaper Deposition)」の頭字語「PVD」で知られている)は、最大厚さ10μm、磁気エネルギーBHmaxが120kJ/mの磁性層を得ることができる。この技術は、磁性層の厚さがわずか10μmに制限されているため、特定の用途には十分に満足いくものではない。
【0019】
- 電着は、MEMSと両立できる技術であるものの、微細構造が永久磁石用に最適化されておらず、BHmaxが30kJ/mに制限された、材料を生成する。
【0020】
このように、これらの様々な技術は、それらのいくつか(特にスパッタリング)について、実施に費用が高い場合があるという事実を切り離しても、得られる磁性層の厚さ及び/又はマイクロテクノロジーでの様々な用途のためのそれらの磁気特性に関して、並びに、場合によっては、MEMSを得る方法と両立できないことにより、必ずしも完全に満足できるものではない。
【0021】
軟磁石は、強い飽和磁化を有しながら保磁力が弱いという点で、永久磁石とは区別される。
【0022】
軟磁石は、インダクタ、コモンモードフィルタ、さらには高周波変換器(radiofrequency transformers)などの、一般に磁性材料を含む、高周波部品における、微小電子機器で使用できる。
【0023】
球状ナノ粒子に基づき軟磁石を形成する利点は、とりわけ、直径がスキンの厚さ(周波数が高くなるにつれて小さくなる)よりも小さいため、高周波数領域(>GHz)の特性を有する材料を有する可能性にある。
【0024】
軟材料(Fe、FeCo、FeNi、FeC、FeN、…)から構成された球状ナノ粒子の密な集合体は、マイクロ波領域での強い磁化(粒子の性質及び集合体での体積分率に関連)及び強い磁化率の両方を示すため、興味深い。
【0025】
本出願の目的のために、「軟材料」という用語は、所望の周波数での高い磁化率及び飽和での強い磁化を有する強磁性材料から構成された物体を意味する。
【0026】
このように、永久磁石と同様に、軟磁石は日常生活に欠かせないものとなり、将来性のある重要な市場である。
【0027】
既知の軟磁石製造技術は、スパッタリング又は電着により複合材料を薄層で堆積させる技術である。それにもかかわらず、この技術は、特にフーコー電流による損失、熱及び圧力の制約、低磁性含有量及びそれらの伝達のために、通常はピックアンドプレース技術によって行われるという大きな制限がある。
【0028】
このように、既知の軟磁石製造技術は、得られる磁性材料の密度に関して及び/又は微小製造技術とそれらとの両立性に関して、常に満足できるものではない。
【0029】
本発明の発明者らは、特に微小技術における用途のための永久磁石又は軟磁石の製造に関し、前記で詳述したこれらすべての欠点を克服した。彼らは実際、永久磁石又は軟磁石の製造方法を開発した。それは:
- 室温で簡単に実行でき;
- 原材料が経済的であり;
- 様々なサイズを提供し:そうして得られる磁石のサイズは、マイクロメートル~ミリメートルスケールである。
【0030】
- 永久磁石の場合、MAGMEMSを得るためのMEMSと、前記の磁気光学デバイスとの両方に統合でき、同様に磁気機能を備えたバイオチップ及び流体チップに統合できる。
【0031】
- 永久磁石の場合、MEMS若しくは磁気光学デバイスの製造中に、又は磁気機能を備えたバイオチップ及び流体チップに、実装でき、又は、必要に応じて、MEMS又は磁気光学デバイス又は磁気機能を備えたバイオチップ及び流体チップの、残りの部分とは独立して製造でき、そして、MEMS又は磁気光学デバイス又は磁気機能を備えたバイオチップ及び流体チップ内に組み込める。
【0032】
- 軟磁石の場合、得られる磁性材料の密度を高めることができ、微小製造技術と両立できる。
【0033】
さらに、本製造方法で得られた永久磁石は、前記のような、磁気光学用途、微生物学、電気通信及び自動車用センサに完全に適した磁気特性を示す。本製造方法で得られた軟磁石は、前記の微小電子機器用途に完全に適した磁気特性を示す。
【0034】
本発明の主題は、したがって、永久又は軟磁石の製造方法であって、少なくとも以下のステップを含むことを特徴とする、製造方法である:
a)以下を準備する:
- 永久磁気モーメントを有する物体の組が分散した、少なくとも1つの溶媒を含む溶液;
- それが有し得る表面又はキャビティ内に、強磁性材料で構成された少なくとも1つの第1パッド及び1つの第2パッドが固定され、前記第1パッドは前記第2パッドが含む面に対面する面を有し、対面する前記面は互いに平行である、基板;
b)前記第1及び第2パッドを、少なくとも部分的に前記溶液に浸漬させるように、前記溶液を、前記基板の前記表面に、又は場合によってはそのキャビティ内に堆積させ、
c)前記基板を、互いに対面して平行である前記第1パッドの前記面及び前記第2パッドの前記面に垂直な方向を向いた磁場中に配置し、前記物体の組の少なくとも一部を、互いに対面して平行である前記第1パッドの前記面と前記第2パッドの前記面との間で、ともにグループ化させ(grouped together)、これらの物体の各々を、印加された前記磁場の方向に沿って配向させ、永久磁石又は軟磁石を形成させ;
d)必要に応じて、少なくとも1つの溶媒で前記基板の少なくとも1回の洗浄を行い、
e)必要に応じて、少なくとも1つの分散溶媒を、前記物体の組から、場合によっては、少なくとも1つの洗浄溶媒から、完全に又は部分的に蒸発させる。
【0035】
したがって、本製造方法において、各々が永久磁気モーメントを有する物体の組の少なくとも一部は、互いに対面して平行な第1パッドの面と第2パッドの面との間の磁気泳動により、これらの2つのパッド間に永久又は軟質の巨視的な磁石を得るように、ともにグループ化される。
【0036】
磁気泳動で方向づけられる集合の原理は、不均一な磁場の存在下でのコロイド懸濁液内の磁性物体の変位に基づく。物体は正の磁場勾配に引き付けられ、溶媒が蒸発するにつれて集合し圧縮される。それゆえ、磁場の印加には2つの効果がある。磁場は、物体が保持する磁気モーメントにトルクを発生させ、物体を磁場の方向に整列させ、支持体上の強磁性パッドにより生成される正の磁場勾配により、これらの物体を変位させ、密に配置することを可能にする。
【0037】
強磁性材料で構成された2つのパッドにより、永久磁気モーメントを有する物体の組の少なくとも一部は、ステップc)の間にこれらの2つのパッド間で構造化され、物体の組のこの部分は永久又は軟磁石を形成する。言い換えれば、本製造方法の最後に得られる永久又は軟磁石は、磁気モーメントを有する物体の組の少なくとも一部の空間的構造化から生じる。この空間構造は、互いに対面し平行な2つの面を有する強磁性材料から構成された2つのパッドと、これらの2つの面に垂直な方向に向けられた磁場の印加によって得られる。
【0038】
本発明の一実施形態では、ステップc)において、物体の組は、互いに対面し平行な第1パッドの前記面と第2パッドの前記面との間でともにグループ化され、これらの物体の各々は、永久又は軟磁石を形成するように、印加された磁場の方向沿って配向する。
【0039】
本発明に係る製造方法は、製造中にデバイス内で実行でき、前記デバイスは、以下から選択できる:
- MAGMEMS(例えば、前記の用途)、
- 磁気光学デバイス(例えば、前記のもの)、
- 磁気機能を備えたバイオチップ及び流体チップ(例えば、細胞の選別、生物学的物体の分離、細胞及び分子の捕捉)。
【0040】
本発明の他の可能な実施形態では、永久又は軟磁石は、それが次に組み込まれるデバイスの残りの部分とは独立して製造される。永久磁石が組み込まれるデバイスは、前記のもののいずれか1つであり得る。
【0041】
このように、本発明に係る製造方法は、その実行に関して柔軟であるという利点を有し、それゆえ、永久若しくは軟磁石をそれが組み込まれるデバイス内で製造する必要がある場合に、又は逆に、永久若しくは軟磁石を製造後にデバイスに組み込む必要がある場合に、完全に適合させ得る。この実装の柔軟性は、前記で想起された従来技術の永久又は軟磁石を製造するための技術により常に提供されるわけではない。
【0042】
永久磁気モーメントを有する物体は、様々な物体から選択できる。
【0043】
それらの材料特性に関して、それらは、コバルト、鉄、ニッケル又は白金から選択される金属、これらの金属の炭化物、これらの金属の窒化物の、単独又は混合物か(例えば、鉄及び白金、又はコバルト及び白金の混合物であってもよく、これらの金属の混合物の炭化物又は窒化物)から構成されていてもよい。
【0044】
例えば、永久磁石の製造のために、コバルト、鉄、ニッケル又は白金の、単独又はそれらの混合物(例えば、鉄及び白金の混合物又はコバルト及び白金の混合物)から構成された物体を選択することが好ましい。
【0045】
例えば、軟磁石の製造には、鉄、鉄及びコバルトの混合物(FeCo)、鉄及びニッケルの混合物(FeNi)、炭化鉄(FeC)、窒化鉄(FeN)の、単独又はそれらの混合物である軟磁性材料から構成された物体を選択することが好ましい。
【0046】
それらの寸法特性に関して、好ましくは、前記物体はナノ物体である。これは、それらがナノスケールサイズであることを意味する。例えば、ナノ物体は、5~100nmの直径を有する等方性粒子などのナノロッド又はナノ粒子であり得る。
【0047】
一実施形態では、前記物体は、コバルトナノロッドであり、前記磁石は永久磁石である。
【0048】
例えば、コバルトナノロッドは、Soumareらによる、「Kinetically controlled synthesis of hexagonally close-packed cobalt nanorods with high magnetic coercivity」という題目の2009年からの刊行物Advanced Functional Materials、19、1971-1977に記載されている合成方法から得ることができた。この合成は、水酸化ナトリウムを含有する1,2-ブタンジオールの溶液中で、ルテニウムの存在下、170℃の温度で15分間、カルボン酸コバルトを還元することを含む。
【0049】
このように、コバルトナノロッドの合成は、完全に当業者が到達できる範囲のものである。
【0050】
他の実施形態では、前記物体は球状の炭化鉄のナノ粒子であり、磁石は軟磁石である。
【0051】
例えば、炭化鉄ナノ粒子は、S.S.Kaleらによる、「Iron carbide or iron carbide/cobalt nanoparticles for magnetically-induced CO2 hydrogenation over Ni/SiRAlOx catalysts」という題目の刊行物、Catal.Sci.Technol.,Vol.9,no.10,pp.2601-2607,2019に記載されている合成方法から得ることができた。
【0052】
このように、炭化鉄のナノ粒子の合成は、完全に当業者が到達できる範囲のものである。
【0053】
溶液中に分散する前に、有利には、永久磁気モーメントを有する物体(例えば、ナノ物体)を洗浄して、あらゆる残留物、特にそれらの合成の残留物(例えば、余剰試薬又は二次反応生成物)を除去する。これにより、永久又は軟磁石が組み込まれているデバイスに悪影響を与える可能性のある不純物のない永久磁気モーメントを有する物体が得られる。永久磁気モーメントを有するこれらの物体を洗浄するステップは、当業者が到達できる範囲のものである。
【0054】
本発明の一実施形態では、前記物体が、Soumareらによる前記の刊行物に詳述された合成方法の最後に得られたコバルトナノロッドである場合、それらは、有利には、合成残留物及び余剰の配位子を除去するために洗浄する。これを行うために、1つ又は複数の連続した洗浄を溶媒、例えばエタノール又はクロロホルムで行ってもよい。このようにして得られた溶液を機械的に攪拌し、次いで超音波浴に入れて、粒子を再分散させる。次いで、前記粒子は磁気的に引き付けられ、上澄みは除去される。
【0055】
例として、本発明の一実施形態では、120mLの1,2-ブタンジオールに分散された540mgのコバルトナノロッドが、Soumareらによる前記の刊行物に記載された合成方法から得られた。これは、コバルトのモル濃度0.08mol/Lに相当する。次いで、コバルトナノロッドのこの溶液4~10mLの容量を取り、以下のように洗浄する:体積10mLの溶媒(エタノール又はクロロホルム)をそれに加える。得られた溶液を機械的に20秒間撹拌し、次いで超音波浴に5分間入れる。粒子は磁気的に引き付けられ、上澄みは除去される。これらのステップを、4~6回、例えばエタノールにより2~3回、クロロホルムにより2~3回繰り返す。
【0056】
永久磁気モーメントを有する物体は、少なくとも1つの溶媒を含む溶液に分散される。
【0057】
分散溶媒は、有利には、以下の特性を示すものの単独又はそれらの組み合わせから、選択される:
- 永久磁気モーメントを有する物体の良好な分散能力;
- 以下の蒸発特性:最長で約1時間後、周囲温度及び大気圧下での全蒸発、又は真空下及び/若しくは中程度の温度(すなわち約100℃未満)での全蒸発。
【0058】
さらに、分散溶媒は、好ましくは、MEMS又は磁気光学デバイス、磁気機能を備えたバイオチップ及び流体チップの製造中に、それらを劣化させるリスクなしに実装できる溶媒から選択される。
【0059】
この分散溶媒は、特に、アニソール、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン及びメシチレンの単独又はそれらの混合物から、選択できる。
【0060】
溶液中に永久磁気モーメントを有する物体の濃度は、5.1015~1018物体/L、好ましくは5.1016~2.1017物体/Lであってもよい。
【0061】
本発明の一実施形態では、永久磁気モーメントを有する前記物体が長さ100nm及び直径15nmの円筒形状である場合、溶液中の前記物体の体積分率は、0.01~10%であり、好ましくは0.1~2%である。
【0062】
前記のコバルトナノロッドの例では、分散溶媒の体積は300μL~2.5mLであってもよい。これにより、溶液中のコバルトのモル濃度0.13~2.7mol/Lが得られる。本発明のこの実施形態では、溶媒は好ましくはアニソールである。
【0063】
基板は、形状、サイズ及び材料が広く様々なものであり得る。
【0064】
一実施形態では、基板は、本発明に係る方法の最後に得られた永久磁石が組み込まれているデバイスの一部であり得る。したがって、それは、MAGMEMS、磁気光学デバイス、磁気機能を備えたバイオチップ又は流体チップの一部であり得る。
【0065】
以下に説明するように、パッドは、電着により基板上に固定し得る。それゆえ、本発明の実施形態では、基板は、電着に適した基板から選択される。
【0066】
基板は、永久磁気モーメントを有する物体の組が分散した溶媒と両立できる非強磁性材料で構成されている。
【0067】
基板は、シリコン(必要に応じて、オクタデシルトリクロロシラン又はパーフルオロデシルトリクロロシランなどの分子で官能化されている)、ガラス、有機溶媒不溶性ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、以下「PTFE」と略す)、金属及びシリカから選択される材料から構成されていてもよい。
【0068】
少なくとも2つのパッドが基板に固定されている。前記の説明のように、2つのパッドは、基板の表面に、又は前記基板が有し得るキャビティ内に固定されていてもよい。
【0069】
本発明の一実施形態では、複数のパッドが基板に固定され、各パッドは、少なくとも1つの他のパッドの面に対面する少なくとも1つの面を有し、対面するこれらの面はすべて互いに平行である。これには、同時に複数の永久磁石を作製できるという利点がある。
【0070】
2つのパッドの2つの対面する面は、10μm~1cm、好ましくは50μm~1mmの距離の間隔を空けていてもよい。
【0071】
パッドは強磁性材料で構成されている。この強磁性材料は、ニッケル、コバルト、スチール、ニッケル及び鉄の合金(例えば、パーマロイ)、鉄及びコバルトの合金、鉄及び白金の合金、コバルト及び白金の合金、ニッケル及び鉄の合金、並びにニッケル、コバルト、マンガン及びリンの合金の、単独又は混合物から、選択できる。
【0072】
本発明の第1実施形態では、パッドは基板の表面に固定されている。例えば、それらは電着、カソードスパッタリング又は原子層堆積により固定できる。
【0073】
本発明のこの第1実施形態では、パッドは、結合層(a tie layer)により基板の表面に固定できる。この結合層は、特にパッドが基板の表面に電着により固定されている場合に、実装され得る。例えば、この結合層は、チタン層に銅層を積層して構成されている。
【0074】
本発明の、パッドが基板の表面に固定されているこの第1実施形態では、以下である:
- 基板はあらゆる3次元形状を有し得る。例えば、基板は、面積が4mm~2,500cm、好ましくは4~100cmであるベースを有していてもよく、このベースから測定した高さは10μm~10cm、好ましくは250μm~1mmであり、
- パッドはあらゆる3次元形状を有し得る。例えば、パッドは、基板の表面に固定されその面積が50μm~1cm、好ましく2500μm~1mmであるベースを有していてもよく、このベースから測定した高さは10μm~1mm、好ましくは50~500μmであり、
- 2つのパッドの互いに平行で対面する2つの面は、有利には、10μm~1cm、好ましくは50μm~1mmの距離の間隔が空けられている。
【0075】
本発明のこの第1実施形態では、基板は、その基板に固定された2~100、好ましくは2~10の、パッドを有し、各パッドは、他のパッドの面に対面する少なくとも1つの面を有し、前記対面する面は、互いに平行である。これにより、いくつかの永久磁石を同時に作製できる。
【0076】
本発明のこの第1実施形態の例として、基板は、円筒形状のウエハ(前記の材料、例えばシリコンから構成されている)であり得、その直径は4mm~50cmであり、高さは50μm~1mmである。パッドは強磁性材料(例えば、前記のものの1つ、特にニッケル)から構成されており、高さが200μm、幅が500μm、長さが100~1000μmの平行六面体形状を有し得る。
【0077】
本発明の第2実施形態では、パッドは、基板が有するキャビティ内に固定されている。
【0078】
この第2実施形態の第1変形例では、以下である:
- 基板はあらゆる3次元形状を有し得る。例えば、基板は、面積が1mm~100cm、好ましくは25mm~4cmであるベースを有していてもよく、このベースから測定した高さは1mm~10cm、好ましくは5mm~2cmであり、
- 基板は、体積が1mm~500cm、好ましくは125mm~8cmであり、深さが1mm~10cm、好ましくは5mm~2cmである少なくとも1つのキャビティを有していてもよく、
- 基板のキャビティ内に固定されたパッドは、あらゆる3次元形状を有し得る。例えば、パッドは、基板と接し、面積が0.01~1000mm、好ましくは0.05~50mmであるベースを有していてもよく、このベースから測定した高さは100μm~5mm、好ましくは500μm~1mmであり、
- 2つのパッドの互いに対面し平行である2つの面は、有利には、100μm~10mm、好ましくは500μm~1mmの距離の間隔が空いている。
【0079】
第2実施形態のこの第1変形例では、パッドは基板の壁に埋め込み得る。
【0080】
前記の本発明のこれらの実施形態では、永久又は軟磁石は、それが組み込まれるデバイスの外側で製造される。
【0081】
例として、第2実施形態のこの第1変形例では、基板は、PTFEから構成されていてもよく、パッドは、円筒形状を有し、そのキャビティ内で基板に固定されたディスクの形状を有するベースを有し得る。前記パッドはスチールで構成されていてもよい。したがって、2つのパッドの2つの対面する互いに平行な面は、ディスクの形状を有する。
【0082】
本発明のこれらの実施形態では、キャビティは、第2の面に対面する第1の面を有し得、複数のパッドが、キャビティの第1の面に固定され、その各々が複数のパッドのパッドのうちの1つの、キャビティの第2の面に固定された面に対面する面を有し、パッドの対向する前記面はすべて互いに平行である。これには、複数の永久又は軟磁石を同時に作製できるという利点がある。
【0083】
パッドが基板にあるキャビティ内に固定された、この第2実施形態の第2変形例では、以下である:
- 基板はあらゆる3次元形状を有し得る。例えば、基板は、面積が4mm~2,500cm、好ましくは4cm~100cmであるベースを有していてもよく、このベースから測定した高さは10μm~10cm、好ましくは250~500μmであり、
- 基板は、体積が500μm~100mm、好ましくは125,000μm~0.5mmであり深さが10μm~1mm、好ましくは50~500μmである少なくとも1つのキャビティを有していてもよく、
- キャビティの第1の面に固定された少なくとも1つの第1パッドは、キャビティの第2の面に固定された第2パッドの1つの面に平行で対面する面を有し、
- 前記パッドは、その面積が50μm~1cm、好ましくは2500μm~1mmである、基板と接するベースを有していてもよく、このベースから測定した高さは10μm~1mm、好ましくは50~500μmであり、
- 2つのパッドの対面し互いに平行な2つの面は、有利には、10μm~1cm、好ましくは50μm~1mmの距離だけ間隔を空けている。
【0084】
本発明の第2実施形態のこの第2変形例では、複数のパッドをキャビティの第1の面に固定でき、これらのパッドの各々は、キャビティの第2の面に固定された複数のパッドのパッドのうちの1つの面に対面する面を有し、パッドの対面する前記面はすべて互いに平行である。
【0085】
本発明の第2実施形態のこの第2変形例では、パッドは、前記のものから選択される強磁性材料で構成されていてもよい。基板は、有利には、基板について前記で説明したものから選択される材料から構成されていてもよい。
【0086】
本発明の第2実施形態のこの第2変形例では、パッドは、電着、カソードスパッタリング又は原子層堆積により、キャビティの第1の面及び第2の面に固定できた。
【0087】
本発明のこれらの実施形態では、強磁性材料から構成された連続層が、キャビティの第1の面の少なくとも一部及び第1の面に対面して平行なキャビティの第2の面の少なくとも一部、並びにキャビティのこれらの第1及び第2の面を接続するキャビティの底部の1つの面に電着できた。
【0088】
本発明に係る方法のステップb)では、パッドが少なくとも部分的に浸漬されるように、溶液を、基板の表面に、又は場合によってはそのキャビティ内に堆積する。例えば、溶液は、決まった量の溶液を堆積させるように、ディスペンサー、ピペット又はマイクロピペットを用いて堆積し得る。
【0089】
本発明に係る製造方法の最後に得られる永久又は軟磁石が到達できる最大の高さは、溶液に浸漬されたパッドの部分の高さである。言い換えると、ステップb)でパッドが溶液に完全に浸漬される場合、永久又は軟磁石の磁石が到達できる最大の高さはパッドの高さである。
【0090】
実際には、本発明に係る製造方法の最後に得られる永久又は軟磁石の高さは、特に、以下でより正確に記載するステップb)~d)が実行された方法、特に、それらが繰り返される回数に依存する。もちろん、永久又は軟磁石の所望の高さを得るためにこれらのステップを実行することは、当業者の能力の範囲内である。
【0091】
本発明に係る製造方法で得られる永久又は軟磁石の高さは、10μm~1mmであり得る。
【0092】
本発明に係る方法のステップc)では、基板は磁場に配置され、物体の組の少なくとも一部が、正の磁場の勾配に向かって2つのパッドに対面する2つの面の間でともにグループ化され、磁場の方向に沿い、永久磁石を形成する。このように、磁場を基板全体に印加し、基板のパッドを磁化する。
【0093】
ステップc)では、磁場強度は、100mT~1T、好ましくは400mT~1Tであり得る。最も好ましくは、磁場強度は1Tである。
【0094】
ステップc)の間、磁場は、時間について一定であってもよく時間とともに変化してもよい。例えば、磁場は、時間の経過とともに段階的でもよく(stages)及び/又は傾斜(ramps)を示してもよい。
【0095】
磁場の強さが時間経過に対して一定でない場合、例えば段階的である場合、これには、製造中に永久又は軟磁石をより高密度にするという利点がある。
【0096】
例えば、磁場強度は、50mT/sの傾斜であり、20秒で0Tから1Tに変化してもよい。
【0097】
他の例では、磁場強度は400秒で0Tから1Tに変化し、20の連続するステップが20秒間続き、各ステップ間で強度が50mT増加してもよい。
【0098】
磁場は、電磁石(例えば、電子常磁性共鳴実験で用いられる電磁石)により生成させ得る。
【0099】
基板は、1分~10時間、好ましくは5分~1時間、一定時間磁場内に配置し得る。
【0100】
ステップc)の間、溶液中の溶媒の少なくとも一部が蒸発する。好ましくは、ステップc)では、磁場を、溶媒が溶液から完全に蒸発するまで維持する。
【0101】
そして、ステップc)の終わりに、磁場が停止したとき、必要に応じて、少なくとも1つの溶媒を用いて、本発明に係る方法のステップd)中に、1回又は複数回の洗浄を行い得る。溶媒は、クロロホルム、トルエン、アニソール、メシチレン及びクロロベンゼンから選択できる。これにより、ステップc)の終わりにまだ存在する分散溶媒、言い換えれば、ステップc)中に蒸発しなかった分散溶媒の除去が可能となる。
【0102】
ステップb)~c)は、又は場合によって本方法が洗浄ステップd)を含む場合には前記のステップb)~d)は、数回繰り返してもよい。例えば、それらは1~50回、好ましくは1~10回、繰り返し得る。
【0103】
好ましくは、ステップb)による溶液の各新たな堆積の前に、磁場は、製造中に永久又は軟磁石の磁気特性を低下させないように、停止するか又は10mT未満の強度に減少させる。
【0104】
ステップc)の終わりに、又は場合によってはステップd)の終わりに、必要に応じて、溶媒(すなわち、溶液の溶媒及びあらゆる洗浄溶媒)の完全な蒸発を含むステップe)を行ってもよい。
【0105】
蒸発のステップe)は、強度が100mT~1T、好ましくは400mT~1Tの磁場を、1分~10時間、好ましくは1分~1時間、印加することにより行い得る。蒸発時間は、蒸発させる溶媒によって異なる。蒸発させる溶媒がクロロホルムである本発明の一実施形態では、磁場強度は1Tであり得、時間は5分であり得る。
【0106】
蒸発のステップe)は以下のように制御してもよい:
- 基板の温度に作用することにより(特にペルチェモジュールで調整可能)、
- 周囲圧力を制御することにより(例えば、ダイアフラムポンプで部分的な真空を設けることにより)。
【0107】
さらに、分散溶媒の沸点が低いほど、すなわちステップc)又は洗浄溶媒を用いるステップe)で、それを蒸発させることがより容易になる。
【0108】
本発明の実施形態では、永久又は軟磁石が、2つのパッド間でキャビティ内に生成され、これらのパッドは、各々、基板と接しその面積が0.01~1000mm(好ましくは、0.05~50mm)であるベースを有し、このベースから測定した高さが100μm~5mm(好ましくは500μm~1mm)であり、本発明に係る製造方法の最後に永久又は軟磁石を問題なく回収できる。前記の説明のように、本発明のこれらの実施形態では、永久又は軟磁石は、それが組み込まれるデバイスの外側で製造される。
【0109】
永久又は軟磁石が基板に組み込まれたままであることが意図される本発明の実施形態では(例えば、MEMSの一部又は永久磁石に関して磁気光学デバイスの一部)、パッドを除去するステップを行い得る。例えば、このステップは、特にパッドが電着により固定されている場合、化学エッチングすることを含み得る。
【0110】
もちろん、パッドの除去は必須ではない。実際には、永久磁石がMEMS又は磁気光学デバイス内に組み込まれる場合、パッドは、適切な機能を妨げることなくこれらのタイプの基板に取り付けたままにしてもよい。
【0111】
本発明に係る永久磁石を製造するための方法は、従来の微小電気技術方法に、特に製造中に、そしてMAGMEMS、磁気光学デバイス、磁気機能を備えたバイオチップ又は流体チップ内に、完全に組み込み得ることに留意することが重要である。
【0112】
本発明の主題はまた、MAGMEMS、磁気光学デバイス、微小電子部品、高周波部品、磁気機能を備えたバイオチップ又は流体チップから選択されるデバイスであり、以下を備えることを特徴とする:
- 前記の本発明に係る製造方法にしたがって得られた少なくとも1つの永久又は軟磁石;
- 少なくとも1つの基板;
- 強磁性材料から構成され、前記基板が有し得る表面又はキャビティ内に固定された、少なくとも1つの第1パッド及び1つの第2パッドであって、前記第1パッドは、第2パッドが有する面に、平行に対面する面を有し、
前記永久又は軟磁石は、第1及び第2パッドの、対面し且つ互いに平行な面の間に配置される。
【0113】
基板、第1及び第2のパッドの特性は、本発明に係る製造方法の第1実施形態及び第2実施形態の第2変形例についての、前記のものであり得る。
【0114】
MAGMEMSは、電磁変換を備えたあらゆるタイプのMEMSセンサ及びアクチュエータから選択できる。例えば、それは、磁場センサ、エネルギーコレクタ又は継電器であってもよい。
【0115】
これらのMAGMEMSは、微生物学、特にマイクロ流体磁気分離(例えばバイオセンサ)、電気通信(例えばラジオ周波数微小スイッチ)及び自動車用センサなど、広く様々な用途で使用できる。
【0116】
磁気光学デバイスは、磁気光学センサ(例えば、ファイバー光学センサ、回転センサ及び偏光センサ)、バッフル、変調器(例えば、マイクロ波変調器)及び非相反コンポ-ネント(例えば、絶縁体及びサーキュレータ)から選択できる。
【0117】
本発明は、本発明に係る製造方法に関連する実験データの結果を示す添付の図面を参照して、以下に記載する実験の詳細な説明により、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1図1は、2つのニッケルパッドが取り付けられたシリコン基板の概略斜視図である。
図2図2は、本発明に係る製造方法の第1実施の最後に撮影された第1の「ニッケルパッド/コバルト永久磁石/ニッケルパッド」構造の走査型電子顕微鏡(以下「SEM」と略す)撮影写真である。
図3図3は、この第1の構造のニッケル及びコバルトのプロフィロメトリック測定(profilometric measurements)のグラフである。
図4図4は、本発明に係る製造方法の第2実施の最後に撮影された、第2の「ニッケルパッド/コバルト永久磁石/ニッケルパッド」構造のSEM撮影写真である。
図5図5は、この第2の構造のニッケル及びコバルトのプロフィロメトリック測定のグラフである。
図6図6は、これらの第1及び第2の構造並びに参照永久磁石のヒステリシス曲線を表すグラフである。
図7図7は、第1の構造のMEMS共振器の磁気誘導及び振動振幅の変化のグラフである。
図8図8は、第2の構造のMEMS共振器の磁気誘導及び振動振幅の変化のグラフである。
図9図9は、ニッケルパッドが取り付けられたシリコン基板の概略斜視図である。
図10図10は、本発明に係る製造方法の第3実施の後における、永久磁石中のコバルトのSEM撮影写真である。
図11図11は、本発明に係る製造方法のこの第3実施の最後に得られた第3の「ニッケルパッド/コバルト永久磁石/ニッケルパッド」構造のニッケル及びコバルトのプロフィロメトリック測定のグラフである。
図12図12は、キャビティが生成さられ、その中に2つのスチールパッドが固定された、PTFE基板の概略斜視図である。
図13図13は、参照永久磁石と同様に、本発明に係る製造方法の第4実施により得られたコバルト永久磁石の減磁曲線を表すグラフである。
図14図14は、本発明に係る製造方法のこの第4実施にしたがって得られたコバルト永久磁石のMEMS共振器の磁気誘導及び振動振幅の変化のグラフである。
図15図15は、パッドが取り付けられたキャビティを有する基板の概略斜視図である。
図16図16は、基板の図15の平面Pに沿った断面図である。
図17図17は、本発明に係る製造方法の第5実施の最後における「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」構造のSEM撮影写真である。
図18図18は、本発明に係る製造方法の第5実施の最後における軟磁石の炭化鉄ナノ粒子のSEM撮影写真である。
図19図19は、本発明に係る製造方法の第5実施の最後に得られた軟磁石のヒステリシス曲線を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0119】
実験部
A:実験の第1シリーズ
A-I-本発明に係る製造方法のステップa)の実行:
コバルトナノロッドの準備:
120mLの1,2-ブタンジオールに分散した540mgのコバルトナノロッドを、前記刊行物に記載されている合成方法から得た:「Kinetically controlled synthesis of hexagonally close-packed cobalt nanorods with high magnetic coercivity」、Advanced Functional Materials、19,1971-1977。これは、コバルトのモル濃度0.08mol/Lに相当する。
【0120】
溶液10mLを採取し、次いで合成残留物及び余剰リガンドを除去するために洗浄した。
【0121】
より正確には、洗浄は以下のように行った:体積10mlの溶媒(エタノール又はクロロホルム)を加えた。得られた溶液を20秒間機械的に攪拌し、次いで超音波浴に5分間入れた。粒子は磁気的に引き付けられ、上澄みを除去した。これらのステップを4回繰り返した:エタノールで2回、次いでクロロホルムで2回。
【0122】
洗浄後、コバルトナノロッドを300μLのアニソールに再分散させ、モル濃度2.7mol/Lのコバルトナノロッドを含有するアニソール溶液を得た。
【0123】
基板上のパッドの製造及び固定:
幅1cm、厚さ500μmの正方形のシリコンウエハである2つの基板が利用可能であった。
【0124】
第1実施形態にしたがい、第1のシリコンウエハに2つのニッケルパッドを固定した。
【0125】
第2実施形態にしたがい、第2のシリコンウエハに2つのニッケルパッドを固定した。
【0126】
パッドの第1実施形態:
第1実施形態に係る、ニッケルパッドのシリコンウエハへの固定は、以下のように行った。
【0127】
厚さ50nmのチタン層、次いで400nmの銅層を、スパッタリングによりシリコンウエハ上に堆積した。
【0128】
次いで、フォトレジスト樹脂である、WBRTM2100という製品名でデュポン社から販売されている樹脂の厚さ約200μmの層を、銅層上にラミネ-トして堆積した。
【0129】
この樹脂をフォトリソグラフィーで露光し、2つの長方形に対応するウェル(wells)を得た:
- 幅「l」は500μm、
- 長さ「L」は100μm、
- 間隔の距離「d」は500μm。
【0130】
次いで、ニッケルをこれらの2つの長方形内に、樹脂と同じ厚さで電着した。
【0131】
樹脂をアセトン浴で除去した。
【0132】
2つの長方形の外側にある銅及びチタンを、過酸化水素(脱イオン水で1体積%に希釈)及び脱イオン水で1体積%に希釈した硫酸の混合物でエッチングした。
【0133】
このようにして、厚さ50nmのチタン層と400nmの銅層との積層体である結合層により、平行六面体形状の2つのニッケルパッドが固定された、シリコンウエハ(すなわち基板)を得た。
【0134】
図1は、幅「l」:500μm、長さL:100μm及び高さ「h1」:168μmの、距離「d」500μmの間隔を空けた平行六面体形状の2つのニッケルパッド2aが固定された、このシリコンウエハ1aの概略斜視図である。チタン及び銅で構成された結合層は、図1には示されていない。
【0135】
図1が示すように、磁場Bの方向は、第1及び第2パッド2aの対面する面に垂直である。
【0136】
パッドの第2実施形態:
パッドの第2実施形態は、長さ「L」が1000μmであり、高さ「h2」が193μmであったことを除き、第1実施形態と同様に製造した。
【0137】
このようにして、厚さ50nmのチタン層と400nmの銅層との積層体である結合層により、平行六面体形状の2つのニッケルパッドが固定された、シリコンウエハ(すなわち基板)を得た。
【0138】
A-II-本発明に係る製造方法のステップb)~e)の実行:
このようにして得たパッドの第1実施形態を有するシリコンウエハを、エタノール及びアセトンで洗浄し、窒素流で乾燥させ、次いで、PTFE型(a PTFE mold)の底に堆積した。
【0139】
その型を、電子常磁性共鳴実験に使用され、強度が0~1Tの間で変化し得る静磁場を発生できる電磁石に配置した。
【0140】
次いで、製造方法のステップb)~d)のシーケンスを、以下のように、8回連続して繰り返した。
【0141】
- ステップb)で、モル濃度2.7mol/Lのコバルトナノロッドを含有するアニソール溶液10μLをシリコンウエハ上に堆積した。
【0142】
- ステップc)で、長さLに平行な方向に配向した1Tの磁場を5分間印加した。このステップc)の間に、アニソールの一部が蒸発した。
【0143】
- ステップd)で、シリコンウエハを、横方向に流して型に注入したクロロホルム1mLで洗浄し、ステップc)で蒸発しなかった余剰アニソール及び2つのニッケルパッド間で整列していないナノロッドを除去した。
【0144】
各々の新たな繰り返しの前に(つまり、ステップb各々の新たな実行の前に)、磁場の強度を0Tに減少させた。
【0145】
次いで、これらのステップb)~d)の8回の繰り返しの終わりに、すべてのアニソールを蒸発させるために、長さLに平行な方向に配向した1Tの磁場を1時間印加した。
【0146】
以下で説明する操作は、ステップb)~d)のシーケンスを7回繰り返したことを除き、第2実施形態に係るパッドが固定された第2のシリコンウエハと同様に行った。
【0147】
すなわち、本発明による製造方法は、以下のように行った。
【0148】
- 2つのニッケルパッドで囲まれたコバルトの第1の永久磁石から構成された第1の構造をもたらした第1実施にしたがった;
- 2つのニッケルパッドで囲まれた第2の永久コバルト磁石から構成された第2の構造をもたらした第2実施にしたがった。
【0149】
これらの第1及び第2の構造の物理的特性を調べた。これを以下に記載する。
【0150】
A-III-写真及びプロフィロメトリック測定:
図2及び図4は、前記の第1及び第2の構造のSEM撮影写真である。すなわち、これらの写真は、本発明に係る製造方法の第1及び第2実施の最後に撮影された。
【0151】
図2の写真は150倍の倍率で撮影され、図4の写真は43倍の倍率でされたものであり、JEOL社により製品名JSM-7800Fで販売されているSEMで撮影された。
【0152】
図2では、第1のシリコンウエハ1a、ニッケルパッド2a、及び距離「d」の間隔を空けたこれら2つのパッド2a間のコバルトナノロッドのグループ化から生じる第1の永久磁石3aの一部が識別される。
【0153】
図4では、第2のシリコンウエハ1b、ニッケルパッド2b、及び距離「d」の間隔を空けたこれら2つのパッド2b間のコバルトナノロッドのグループ化から生じる第2の永久磁石3bの一部が識別される。
【0154】
プロフィロメトリック測定は、KLA TENCOR社から製品名P-17で販売されている機械的プロフィロメータを使用して行った。
【0155】
プロフィロメトリック測定を、以下において行った:
図2の連続線で示される位置にあるニッケルパッド2aの1つ;
図2の点線で示される位置にある第1の永久磁石3a;
図4の連続線で示される位置にあるニッケルパッド2bの1つ;
図4の点線で示される位置にある第2の永久磁石3b。
【0156】
このように、これらの測定は、ニッケルパッドの幅と、製造方法の最後に得られた2つの永久磁石の幅とで行った。
【0157】
図3は、以下の変化を表すグラフである:
- 前記パッド2aの端部より300μmの距離から測定された距離の関数としてのニッケルパッド2aの高さ(連続曲線);
- 前記磁石3aの端部より300μmの距離から測定された距離の関数としての第1の永久磁石3aの高さ(点曲線)。
【0158】
図5は、以下の変化を表すグラフである:
- 前記パッド2bの端部より220μmの距離から測定された距離の関数としてのニッケルパッド2bの高さ(連続曲線);
- 前記磁石3bの端部より220μmの距離から測定された距離の関数としての第2の永久磁石3bの高さ(点曲線)。
【0159】
図3及び図5を考慮すると、第1及び第2の永久磁石3a、3bのプロファイルの形状は、それぞれニッケルパッド2a及び2bのプロファイルの形状に類似していることに留意されたい。
【0160】
実際は、2つの永久磁石3a、3bについては、以下を留意されたい:
- それらの幅(430μm)が、ニッケルパッドの幅500μmと比較してわずかに小さい、
- 第1の永久磁石3aの高さ144μmが、ニッケルパッド2aの高さ168μmに近い、
- 第2の永久磁石3bの高さは140μmが、ニッケルパッド2bの高さ193μmに近い。
【0161】
A-IV-第1及び第2の「ニッケルパッド/コバルトにおける永久磁石/ニッケルパッド」構造の磁気特性:
前記のように、第1及び第2の「ニッケルパッド/コバルトにおける永久磁石/ニッケルパッド」構造の周囲温度での磁気特性を決定するために、磁気測定を行った。
【0162】
図6は、以下のヒステリシスサイクルを表す:
- 第1の構造(非常にタイトな点曲線);
- 第2の構造(点曲線);
- いわゆる「参照」磁石(連続曲線)。
【0163】
参照磁石は、前記の合成にしたがって生成されたコバルトナノロッド2mgのクロロホルム300μLへの分散からPTFE型において得られ、次いでPTFE型において電磁石により生成された1Tの磁場中で室温乾燥された。
【0164】
第1及び第2の構造の永久磁石とは異なり、この参照磁石は空間的に構造化されていなかった。コバルトナノロッドは、単に、型の表面全体に広がり、印加された磁場の方向に沿って整列した。したがって、本発明に係る製造方法の場合のように、構造化された塊(a structured volume)を形成するようなナノロッドの構造化はなかった。すなわち、参照磁石のヒステリシスサイクルは、コバルトナノロッドの固有の磁気特性に対応する。
【0165】
以下の表1は、第1及び第2の構造、並びに参照磁石についての、保磁力H(kA/m)及び残留磁化μ(mT)の決定された値の詳細を示す。
【0166】
【表1】
【0167】
表1は、第1及び第2の構造及び参照磁石の磁気特性の詳細を示す。
【0168】
表1及び図6に示される第1及び第2の構造間の磁気特性の大きな違いは、主にこれらの構造に存在するニッケルの量の違いにより、説明される。ニッケルは、保磁力が非常に小さく(0.1kA/m)、軟質の強磁性体である。第2の永久磁石3bの製造に使用されたパッド2bは、パッド2aの10倍の体積を有していた;これは、この第2の永久磁石3bの磁気特性の大幅な低下に寄与した。
【0169】
したがって、そのような構造の磁気特性を最適化するためには、ニッケルパッドの長さLを最小化するべきである。電着に関連する技術的理由により、長さ「L」の最小値はニッケルパッドの高さ「h」の4分の1に対応する。すなわち、この実験の第1シリーズの場合では、厚さ約200μm:最小長さ50μmである。
【0170】
このようにして得られた第1及び第2の構造の磁気特性は、特に、それらがMAGMEMS及び磁気光学デバイスなどのデバイス内に含む永久磁石の組込については、非常に満足のいくものである。
【0171】
確かに、本発明に係る製造方法の最後に得られた第1及び第2の構造の磁気特性は、コバルトナノロッド固有の特性に対応する参照磁石の磁気特性よりも弱いことに留意されたい。
【0172】
これらの構造の磁気特性を改善し、それらが参照磁石の磁気特性に近づくようにするために、例えばニッケル及び鉄の合金(例えば、パーマロイ)又はコバルト、ニッケル、マンガン及びリンの合金を用いて、パッドの強磁性材料の性質を変えてもよい。これにより、パッドの磁化及び保磁力により、放射磁気誘導を変調することが可能となる。
【0173】
さらに、これらの第1及び第2の構造の磁気特性はニッケルパッドの存在によって低下したので、それをエッチングすることで、ニッケルを欠いて永久磁石を有するようにしそれゆえ、磁気特性を改善することを可能にする。
【0174】
最後に、参照磁石の磁気特性と比較して、第1及び第2の構造の磁気特性が低いことも、形状の違いにより説明されることにも留意されたい。
【0175】
実際は、基準磁石のヒステリシスサイクルは、その横方向の寸法を考慮すると薄層に対応する。したがって、反磁場、つまりその内部の磁石によって生成される磁場はゼロと見なせる。そして、材料の固有の特性が得られる。一方、このタイプの薄いフィルムは、フィルムの外側に磁場が放射されないため、磁石とは見なされない。
【0176】
本発明に係る製造方法の最後に得られた第1及び第2の構造の場合、サンプルは、磁力計によって印加される磁場だけでなく、それ自体の反磁場にも影響を受ける。これにより、構造内の磁化が減少するが、外部磁場も生成される;これは、MAGMEMS及び光磁気デバイスに完全に適し、利用可能である。
【0177】
A-V-本発明に係る製造方法で得られた永久磁石の磁気性能の評価
A-V-a-ホールマイクロプローブによる磁気誘導測定
第1及び第2の構造により生成された磁気誘導は、磁場センサを用いて測定した。
【0178】
具体的には、ホール効果マイクロプローブは、電子機器アセンブリとNI-6341取得ボード(acquisition board)とを備えていた。この磁場センサは、ホール効果によりこのように機能する。一対の電極は連続的に分極されている。ホール交差(the Hall cross)の表面と垂直な磁場の存在は、電荷の一部を偏向させ、電極の第2の対で測定される電位差を生じさせる。ホール交差は幅10μmで、永久磁石によって生成される磁気誘導の局所的な測定を可能にする。
【0179】
行った測定は、磁気誘導プロファイルである。すなわち、永久磁石の中心のレベルで、つまり、磁気誘導が最大になる位置で、変位プレートを用い、磁石をマイクロプローブに接近させた(100マイクロメートルまで)。次いで、サンプルをマイクロプローブから遠ざけた。磁気誘導の値は、各位置に対してLabViewプログラムを用いてリカバーした。
【0180】
A-V-b-MEMS共振デバイスの作動
第1及び第2の構造の性能も、MEMSデバイスを作動させる能力により測定した。これらはレバーアームの形をした共振器であり、静磁場に垂直な交流電流の通過により生成されるローレンツ力により振動する。これを行うために、磁石をこのMEMSに最大距離約100マイクロメートルまで近づけた(損傷のリスクを回避するため)。
【0181】
用いたMEMSは、幅285μm及び長さ1430μmのレバーアームから構成されていた。
【0182】
MEMS共振振幅は、その構造に埋め込まれたピエゾ抵抗を用いて測定した。
【0183】
レバーアームのたわみは、この位置で最大の拘束変動を生成する。これにより、ピエゾ抵抗の抵抗が変化し、これは電圧に変換され、電子回路と取得カード(an acquisition card)とを用いて測定される。
【0184】
A-V-c-数値シミュレーション
さらに、これらの第1及び第2の構造の磁気誘導を、Comsol(登録商標) Multiphysicsソフトウェアを用いて、25%、30%及び50%のコバルト体積分率をパラメータとして考慮してシミュレートした。
【0185】
第1及び第2の構造でホール効果マイクロプローブを用いて実験的に得られた磁気誘導の曲線の変化を、コバルトの様々な体積分率で得られたシミュレーションそれと比較することで、考慮された構造の永久磁石におけるコバルトの体積分率を推定できる。実際は、構造から実験的に得られた磁気誘導の曲線が、コバルトの体積分率の所定の値でシミュレートされた磁気誘導の曲線に近い場合、これは、この構造の永久磁石のコバルトの体積分率が、この所定の値に近いことを意味する。
【0186】
また、コバルトの体積分率が大きいほど、構造の永久磁石の磁気特性がよくなる。特に、50%のコバルト体積分率は非常に有利である。したがって、磁気誘導をシミュレートするために、25%、30%及び50%のコバルト体積分率の値を選択した。
【0187】
A-V-d-結果
図7に示されるのは以下のとおりである:
- 永久磁石3aの中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての第1の構造の磁気誘導の変化(「黒で塗りつぶされた四角」);
- コバルトの25%の体積分率を考慮に入れることによる、永久磁石3aの中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、第1の構造の磁気誘導のシミュレートされた変化(「連続曲線」);
- コバルトの50%の体積分率を考慮に入れることによる、永久磁石3aの中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、第1の構造の磁気誘導のシミュレートされた変化(「点曲線」);
- 永久磁石3aの中心とMEMSとの間の距離の関数としての、第1の構造のMEMS共振器の振動振幅の変化(「黒い輪郭の四角形」)。
【0188】
図8に示されるのは以下である:
- 永久磁石3bの中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、第2の構造の磁気誘導の変化(「黒で塗りつぶされた四角形」)。
【0189】
- コバルトの30%の体積分率を考慮に入れることによる、永久磁石3bの中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、第2の構造の磁気誘導のシミュレートされた変化(「連続曲線」)。
【0190】
- コバルトの体積分率50%を考慮に入れることによる、永久磁石3aの中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、第2の構造の磁気誘導のシミュレートされた変化(「点曲線」)。
【0191】
- 永久磁石3bの中心とMEMSとの間の距離の関数としての、第2の構造を有するMEMS共振器の振動振幅の変化(「黒い輪郭の四角形」)。
【0192】
図7及び図8を見ると、磁石の中心から130μmで測定された磁気誘導は、第2の構造に比べて第1の構造の方が明らかに大きく(26mT対16mT)、これは減少して500μmで同様の値(4mTに対して5.5mT)となることに留意されたい。
【0193】
さらに、これらの値は、体積分率が50%の磁石に期待される値よりも低い。これは、本発明に係る製造方法の最後に、ある量のアニソールが完全に蒸発せず、その結果、乾燥中に内部多孔性が生じたという事実により説明できる。これは、他のより揮発性の高い溶媒を使用し、例えば圧力及び温度のパラメータにより永久磁石の緻密化を制御することにより解決し得る。
【0194】
さらに、MEMS共振器の振動振幅は、測定された磁気誘導と同じように減少することに留意されたい。これにより、これらの第1及び第2の構造のコバルト永久磁石がMEMSデバイスを作動させるのに十分なエネルギーを提供することを確実にする。
【0195】
磁気誘導曲線(黒で塗りつぶされた四角形)と振動振幅(黒い輪郭の四角形)の重ね合わせは、永久磁石の存在により作動が実際に生成されていることを検証できる。
【0196】
B:実験の第2シリーズ:
B-I-本発明に係る製造方法のステップa)の実行:
コバルトナノロッドの準備:
ナノロッドは、実験の第1シリーズに関連するパートA-Iと同じ方法で調製した。
【0197】
懸濁液3mLを採取した。洗浄後、モル濃度0.66mol/Lのコバルトナノロッドを含有するアニソール溶液を得るために、コバルトナノロッドをアニソール360μLに再分散した。
【0198】
基板上のパッドの作製及び固定:
幅1cm及び厚さ500μmの正方形のシリコンウエハである基板が利用できた。
【0199】
160個のニッケルパッドを、電着によりシリコンウエハ上に固定した。厚さ50nmのチタンの層、次に厚さ400nmの銅の層を、スパッタリングによりシリコンウエハ上に堆積した。
【0200】
次いで、フォトレジスト樹脂であるMicroChemicals GmbH社からAZ40XTの製品名で販売されている樹脂の厚さ約30μmの層を、銅層上に回転させて堆積した。
【0201】
樹脂をフォトリソグラフィーで露光し、現像して、2つの長方形に対応するウェルを得た:
- 幅「l」100μm、
- 長さ「L」100μm、
- 距離「d」100μmの間隔。
【0202】
次いで、ニッケルをこれらの2つの長方形内に、樹脂と同じ厚さに電着した。
【0203】
樹脂をアセトン浴で除去した。
【0204】
2つの長方形の外側にある銅及びチタンを、過酸化水素(脱イオン水で1体積%に希釈)及び脱イオン水で1体積%に希釈した硫酸の混合物でエッチングした。
【0205】
このようにして、厚さ50nmのチタン層と400nmの銅層との積層体から構成された結合層により平行六面体形状のニッケルパッド160個が固定されたシリコンウエハ(すなわち基板)を得た。
【0206】
各パッドは平行六面体の形状であり、サイド100μm及び厚さ24μmの正方形のベースを有していた。
【0207】
図9は、160個のニッケルパッド2cが固定されたシリコンウエハ1cの概略斜視図である。
【0208】
より正確には、パッド2cは、互いに500μm離れた2つの列でシリコンウエハ上に分布している。各列は、各列100μmで互いに間隔を空けて配置された10個のパッド2cの8列で構成されている。パッドの各列は500μm間隔で配置されている。
【0209】
B-II-本発明に係る製造方法のステップb)~e)の実行:
ステップb)~e)は、前記のパートA-IIで詳述した実験の第1シリーズと同様に実行し、2回繰り返した。
【0210】
このようにして、ニッケルパッド間に、印加した磁場の方向に沿った、永久磁石を得た。
【0211】
B-III-写真及びプロフィロメトリック測定:
図10は、本発明に係る製造方法の最後に、前記と同じ装置を用いて、このようにして得た永久磁石の1つのレベルで撮影した50,000倍の倍率でのSEM撮影写真である。
【0212】
この写真では、コバルトナノロッドが識別され、正しく整列していることに留意されたい。
【0213】
プロフィロメトリック測定は、実験の第1シリーズで説明したように、機械的プロフィロメータを用いて行った。
【0214】
すなわち、これらの測定は、2つの連続した列の2つのニッケルパッドの幅、及びこれらの2つのパッドから製造方法の最後に得た2つの永久磁石の幅にわたって行った。
【0215】
図11は、以下の変化を表すグラフである:
- これらのパッドの1つの端より50μmの距離から測定した距離の関数としての、2つのニッケルパッドの高さ(連続曲線);
- これらの磁石の1つの端より50μmの距離から測定した距離の関数としての、2つの永久磁石の高さ(点曲線)。
【0216】
図11より、2つの永久磁石のプロファイルの形状がニッケルパッドのそれの形状と類似していることに留意されたい。ニッケルパッドに比べて2つの永久磁石の幅はわずかに小さいが(90μm対100μm)、永久磁石の厚さはニッケルパッドの厚さとほぼ同じである(23μm対24μm)。
【0217】
C:実験の第3シリーズ:
C-I-本発明に係る製造方法のステップa)の実行:
コバルトナノロッドの準備:
ナノロッドは、実験の第1シリーズに関連するパートA-Iと同様に調整した。
【0218】
洗浄後、モル濃度0.13mol/Lのコバルトナノロッドを含有するクロロホルム溶液を得るために、コバルトナノロッドを2.5mLのクロロホルムに再分散させた。
【0219】
基板上のパッドの製造及び固定:
図12に概略斜視図として示すように、中央にキャビティ4dが形成されたPTFE型である基板1dがあった。
【0220】
基板1dは、長さ2cm、幅2cm及び高さ2cmの一般的な平行六面体形状を有し、その中央に、長さ1cm、幅1cm及び高さ1cmの一般的な平行六面体形状のキャビティ4dが形成されている。
【0221】
キャビティ4dは、第2の面6dに対面する第1の面5dを有する。
【0222】
第1の面5dには、直径1500μm及び長さ6mmの円筒形状鋼棒の形態である第1パッド2dが固定されている。
【0223】
第2の面6dには、直径1500μm及び長さ6mmの円筒形状鋼棒の形態である第2のパッド2dが固定されている。
【0224】
2つのパッド2dの自由端は2mm離れている。
【0225】
2本の鋼棒は、基板1dに埋め込まれている。
【0226】
C-II-本発明に係る製造方法のステップb)~e)の実行:
2本の棒鋼2dを有する基板1d(すなわち、PTFE型)を電磁石に配置した。
【0227】
モル濃度0.13mol/Lのコバルトナノロッドを含有するクロロホルム溶液1.2mLをキャビティ4d内に堆積し、2本の棒鋼2dを完全に浸漬した。
【0228】
次いで、1Tの磁場を印加した。2分後、磁場下で、シリンジにより余剰のクロロホルムを除去した。
【0229】
1時間後に磁場を停止させ、クロロホルム残留物を完全に蒸発させた。
【0230】
このようにして得た永久磁石は、予め鋼棒の1つが取り除かれ、ペンチを用いて回収した。
【0231】
それは長さ2mmの円筒形状を有していた。その直径は、永久磁石の端部では1.3mmで中央では1.1mmであり、ほぼ一定である。
【0232】
C-III-永久磁石の磁気特性:
本発明に係る製造方法で得られた永久磁石の室温での磁気特性を決定するために、磁気測定を行った。
【0233】
図13は、以下の減磁曲線を表す:
- 本発明に係る製造方法で得た永久磁石(連続曲線)。
【0234】
- 実験の第1シリーズで説明した参照磁石(点曲線)。
【0235】
以下の表2は、これら2つの磁石各々の保磁力H(kA/m)及び残留磁化μ(mT)の決定された値の詳細を示す。
【0236】
【表2】
【0237】
表2は、本発明に係る磁石及び参照磁石の磁気特性を示している。
【0238】
基準磁石の保磁力H(kA/m)及び残留磁化μ(mT)の値は、実験の第1シリーズの参照磁石の値とわずかに異なる。これは、実装されたコバルトナノロッドの性質の本質的な変化、並びにこれらの実験の第1及び第2シリーズ中の参照磁石を得るためのそれらの配列の変化により、説明される。
【0239】
参照磁石と本発明に係る製造方法で得た永久磁石との間の残留磁化(768mTから745mT)及び保磁力(400kA/mから382kA/m)の低下は小さい。それは、その磁化を低下させるが、その外側に磁場を生成することを可能にする、本発明に係る永久磁石の反磁場を考慮に入れることによってのみ説明できる。
【0240】
C-IV-本発明に係る製造方法で得た永久磁石の磁気性能の評価
図14には、以下のことが示されている:
- 永久磁石の中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、永久磁石の磁気誘導の変化(「黒で塗りつぶされた四角形」);
- 永久磁石の中心とマイクロプローブとの間の距離の関数としての、永久磁石の磁気誘導のシミュレートされた変化(「連続曲線」);
- 永久磁石の中心とMEMSとの間の距離の関数としての、永久磁石を備えたMEMS共振器の振動振幅の変化(「黒い輪郭の四角形」)。
【0241】
図14から、永久磁石は70μmで155mT及び560μmで52mTに達する磁気誘導を示すことがわかる。
【0242】
これらの値は、実験の第1シリーズの第1及び第2の構造で得た値よりも大きい。実際は、永久磁石のサイズを大きくすると、磁石の出口での磁気誘導の減少を抑えることができる。
【0243】
さらに、第1及び第2の構造とは異なり、この永久磁石の測定は、永久磁石の磁化を減少させる軟質の強磁性要素(つまりパッド)がない状態で、行った。
【0244】
磁気誘導曲線(黒で塗りつぶされた四角形)と振動振幅(黒い輪郭の四角形)との重ね合わせにより、永久磁石の存在により実際に作動が生成されたことを検証できる。
【0245】
図15は、平行六面体形状のシリコンウエハである基板1eの概略斜視図である。このプレート1e内にはキャビティ4eが形成されている。
【0246】
図16は、基板1eの図15の平面Pに沿った断面図である。図16には、第1の面5e及び第2の面6e、キャビティ4eの底面7e、並びに2つのニッケルパッド2eが示されている。2つのニッケルパッド2eは、キャビティ4eの第1の面5e、第2の面6e及び底面7eにニッケルの層を電着して得た。
【0247】
本発明に係る製造方法はまた、2つのパッド2eが固定されたキャビティを有するこの基板1eを用いて実行できる。これを行うために、磁気モーメントを有する物体の組を含む溶液を、対面する2つの面を有する2つのパッド2eを完全に又は部分的に浸漬するように、キャビティ内に堆積させ得る。次いで、これらの2つのパッド2e間に磁気モーメントを有する物体をともにグループ化し、それらが磁場の方向に沿って配向するように、均一な磁場を印加する。
【0248】
D:実験の第4シリーズ:
D-I-本発明に係る製造方法のステップa)の実行:
球状炭化鉄ナノ粒子の準備
炭化鉄ナノ粒子Fe2.2Cは、[S.S.Kaleらによる、「Iron carbide or iron carbide/cobalt nanoparticles for magnetically-induced CO2 hydrogenation over Ni/SiRAlOx catalysts」、Catal.Sci.Technol.,Vol.9,no.10,pp.2601-2607,2019]に報告されたように合成した。それらは球形で、直径は15nmであった。
【0249】
その合成法から80mgの炭化鉄ナノ粒子を得た。20mgをスパチュラでとり、1mLのアニソールに分散させた。これはモル濃度約3mol/Lに相当する。
【0250】
パッドの第1実施形態:
パッドのこの第1の実施形態では、ニッケルパッドのアレイを有するシリコンウエハがあった。各パッドは、以下の寸法の平行六面体形状を有していた:幅100μm、長さ100μm及び高さ25μm;パッドは距離100μmの間隔を空けて配置した。
【0251】
シリコンウエハをエタノール及びアセトンで洗浄し、窒素流で乾燥させた後、PTFE型の底に配置した。
【0252】
パッドの第2実施形態:
パッドのこの第2の実施形態では、2つの対面するニッケルパッドを有するシリコンウエハがあった。2つのパッドは各々、以下の寸法の平行六面体形状を有していた。幅500μm、長さ200μm及び高さ150μm;2つのパッドは、距離100μmの間隔を空けて配置した。
【0253】
シリコンウエハをエタノール及びアセトンで洗浄し、窒素流で乾燥させた後、PTFE型の底に配置した。
【0254】
D-II-本発明に係る製造方法のステップb)~e)の実行:
パッドの第1実施形態を保持するシリコンウエハを備えたPTFE型を、電子常磁性共鳴実験に使用され、強度が0~1Tで変化し得る静磁場を生成できる、電磁石中に配置した。
【0255】
次いで、製造方法のステップb)~d)のシーケンスを、以下のように2回連続して繰り返した:
- ステップb)では、モル濃度3mol/Lの炭化鉄ナノ粒子を含有するアニソール溶液10μLをシリコンウエハ上に堆積した。
【0256】
- ステップc)では、パッドの長さに平行な方向に沿った1Tの磁場を5分間印加した。このステップc)中に、アニソールの一部が蒸発した。
【0257】
- ステップd)では、シリコンウエハを、クロロホルム500μLを横方向に流して型に注入して洗浄し、ステップc)で蒸発しなかった余剰アニソール、及び2つのニッケルパッド間で整列していない炭化鉄ナノ粒子を除去した。
【0258】
各々の新たな繰り返しの前に(つまり、ステップbの各々の新たな実行の前に)、磁場の強さを0Tに減少させた。
【0259】
次いで、ステップb)~d)のこれらの2回の繰り返しの終わりに、すべてのアニソールを蒸発させるために、1Tの磁場を15分間印加した。
【0260】
このようにして、「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」ネットワークの第1の構造を得る。
【0261】
前記の操作を、パッドの第2実施形態を有するシリコンウエハに対して同様に実行したが、製造方法のステップb)~d)のシーケンスを8回連続して繰り返した点が異なっていた。
【0262】
このようにして、第2の「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」構造を得た。
【0263】
D-III-第1の「ニッケルパッド/軟質の炭化鉄磁石/ニッケルパッド」ネットワーク構造のショット
図17は、前記の本発明に係る製造方法の最後に得られた第1の「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」ネットワーク構造のSEM撮影写真である。この写真は、JEOL社からJSM-7800Fの製品名で販売されているSEMを用いて160倍の倍率で撮影した。
【0264】
この図には、高さ25μm、幅100μm及び距離100μm離れた、ニッケルパッド2fに対応する通常の平行六面体、シリコンウエハ1fが示されている。また、パッド間スペース全体が、炭化鉄ナノ粒子で構成された軟磁石3cで充填され、各軟磁石3cは、高さがニッケルパッド2fの高さに相当していることがわかる。
【0265】
図18は、図17の第1の「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」ネットワーク構造の2つのニッケルパッド間に配置された軟磁石3cのSEM撮影写真である。この写真は、JEOL社からJSM-7800Fの製品名で販売されているSEMにより30万倍の倍率で撮影したものである。
【0266】
この写真は、炭化鉄ナノ粒子の組織化及びその高い緻密さを示している。
【0267】
D-IV-第2の「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」構造の磁気特性
前記のように、本発明に係る製造方法の最後に得られた第2の「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」構造の周囲温度(300℃)での磁気特性を決定するために、磁気測定を行った。
【0268】
図19は、パッドの端部に残っている堆積物を除去した後の、この第2の「ニッケルパッド/炭化鉄軟磁石/ニッケルパッド」構造の磁化ヒステリシスサイクルを示す。
【0269】
この磁石の軟質の特性を示す、17kA/mの保磁力Hが得られた。
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