(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】AAVベクター及びプロモーターの単一細胞トランスクリプトームベースの開発のための方法及び材料
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240214BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240214BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240214BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240214BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240214BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C40B40/06
C12N15/11 Z
C12N15/10 200Z
C12Q1/70
C12Q1/02
C12Q1/68
C12N7/01
C12N5/10
C12N15/35
(21)【出願番号】P 2021537720
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 US2019068489
(87)【国際公開番号】W WO2020139892
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-10
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501102988
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ -オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh PA 15260,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーン,リー
(72)【発明者】
【氏名】スタウファー,ウィリアム アール.
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0282720(US,A1)
【文献】国際公開第2017/197355(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/071831(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/164936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C40B 40/06
C12Q 1/00- 3/00
C12N 7/01
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)AAV変異体のライブラリーを作製するステップであって、ライブラリー内の各AAVが特有のDNAバーコードを含む、ステップ、
(b)AAV変異体を、二重トランスフェクション手順を用いて、パッケージング細胞株中にパッケージングするステップ、
(c)AAV変異体のライブラリーを動物宿主の1つ以上の組織に送達するステップであって、前記動物宿主が、ホモ属ではない霊長類であるステップ、
(d)AAV変異体のライブラリーを送達した動物宿主の1つ以上の組織内で、AAV変異体のライブラリー内のAAVベクターが互いに競合するのに適切な期間、AAV変異体のライブラリーをインビボで維持するステップであって、前記期間が少なくとも1週間であるステップ
、
(e)
AAV変異体のライブラリーを送達した組織を動物宿主から得るステップ、
(f)動物宿主から得た組織を分離して単一細胞を得るステップ、及び
(g)前記AAV変異体の特有のDNAバーコードに基づいて単一細胞のトランスクリプトームプロファイルを分析し、(i)単一細胞の細胞型及び(ii)単一細胞に感染したAAV変異体を特定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記動物宿主の1つ以上の組織が神経組織を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
神経組織が中枢神経系組織を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
中枢神経系組織が脳組織である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
神経組織が末梢神経系組織を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
前記動物宿主の1つ以上の組織が網膜組織を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記動物宿主の1つ以上の組織が筋肉組織を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
筋肉組織が横紋筋を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
筋肉組織が心筋を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
筋肉組織が平滑筋を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
霊長類が旧世界ザルである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
旧世界ザルがアカゲザル(Macaca mulatta)である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
霊長類が、テナガザル科又はヒト科の類人猿である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
霊長類がパン属ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
AAV変異体のライブラリーの送達が組織への注入を介するものである、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
インビボで所望の細胞型に感染し、少なくとも1週間前記細胞型内にインビボで維持される能力を有するAAV変異体を得る方法であって、
(a)前記細胞型を含む動物宿主にAAV変異体のライブラリーを導入するステップであり、前記ライブラリー内の各AAVが特有のDNAバーコードを含み、前記動物宿主が、ホモ属ではない霊長類である、ステップ、
(b)
AAV変異体のライブラリー内のAAVベクターが互いに競合するのに適切な期間、AAV変異体のライブラリーをインビボで維持するステップであって、前記期間が少なくとも1週間であるステップ、
(c)前記細胞型を含む組織を動物宿主から得るステップ、
(f)動物宿主から得た組織を分離して単一細胞を得るステップ、及び
(g)前記AAV変異体の特有のDNAバーコードに基づいて単一細胞のトランスクリプトームプロファイルを分析し、(i)単一細胞及び(ii)単一細胞に感染したAAV変異体を特定するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
前記細胞型が、中枢神経系細胞型又は末梢神経系細胞型である、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞型が、網膜細胞型、横紋筋細胞型、心筋細胞型又は平滑筋細胞型である、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記霊長類が旧世界ザルである、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
前記霊長類がアカゲザル(Macaca mulatta)である、請求項
16に記載の方法。
【請求項21】
前記霊長類が、テナガザル科又はヒト科の類人猿である、請求項
16に記載の方法。
【請求項22】
前記霊長類がパン属ではない、請求項
16に記載の方法
【請求項23】
前記ライブラリーが、前記細胞型を含む組織への注入を介して前記動物宿主に導入される、請求項
16から
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1週間が、1週間から12週間である、請求項
16から
23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月28日に出願された、米国特許出願第62/785,818号の利益を主張する。先願の開示は、本出願の開示の一部(であり、参照により本出願に組み込まれる)と考えられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により付与されたMH113095の下で政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1. 技術分野
本明細書は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びプロモーターの単一細胞トランスクリプトームベースの開発のための方法及び材料に関する。例えば本明細書は、有効なAAVベクターを作製するための効率的及びハイスループットな方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
2. 背景情報
効率的な標的化した遺伝子送達は、遺伝子療法及び回路ベースのツール、例えば光遺伝学の成功にとって根本的なものである。所望の細胞型における十分なレベルの遺伝子発現は必須であり、オフターゲット発現は、正確に標的化した療法、患者安全性及び回路特異的操作のために理想的には最小化されているべきである。
【発明の概要】
【0005】
遺伝子療法のための魅力的なベクターシステムは、遺伝的に操作及び改変したアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づいている。しかしながら、AAVを作製するための既存のスクリーニング方法は、多数の細胞を必要とし、一度に1つの細胞型のみに着目し多数回の選択を使用する。これらはまた、DNAスクリーニングに基づいている。そのため、遺伝子療法用のAAVベクターを作製するためのより効率的でありハイスループットな方法が必要とされている。
【0006】
本明細書は、多数の細胞型に対する高い効率及び/又は特異性を有するAAVベクター及びプロモーター配列を作製するためのハイスループットな方法を提供する。第1に、いくつかの実施形態において、多数のバリアント(約20又は約50又は約100又は約1000又は約10,000又は約10,000又は約1,000,000から最大約106又は約107のバリアント)を含むAAV変異体のライブラリーを作製し、動物、典型的には霊長類の組織(例えば網膜、脳、筋肉等)に注入又は他の方法で導入する。いくつかの場合において、本明細書中に示すAAVライブラリーは、所望の組織に直接注入しても(例えば硝子体内注入)又は全身注入してもよい。
【0007】
培養中の特定の組織、例えば網膜オルガノイドへの注入(又は他の方法による導入若しくは感染/トランスフェクション)もまた、インビボスクリーニングの代わりに使用し得る。これらのライブラリーは、ライブラリー内の各AAVバリアントが、特有の「DNAバーコード」(すなわち、AAVゲノムの一部であって、ウイルスバリアントの同一性を示す特有のDNA配列)を含むように作製され、これによりAAVキャプシド又は合成上流プロモーターのいずれかの追跡が可能になる。
【0008】
第2に、いくつかの実施形態において、注入後、AAVベクターはインビボ(又は培養中の組織内)で互いに競合し、その結果、より強いAAVベクター又はプロモーターがDNAバーコードのより強い発現レベルをもたらし、より特異的なAAVベクター又はプロモーターが、1つ以上の細胞型において他の全ての細胞型と比較して上昇した発現レベルをもたらす。その後、単一細胞又は単一核マイクロ流体技術(企業、例えば10X GENOMICS又はDOLOMITE BIOからの)を使用して、個々の細胞(又は核)のcDNAライブラリーを作製する。
【0009】
その後分析を行い、並行する多数の異なる細胞型からのトランスクリプトーム中のDNAバーコードの有無及び量に基づいて、特異性、発現レベル及び/又は他の所望の特徴によって最適なベクターを特定する。選択は、2つのレベルで行うことができる:(a)高度に多様なウイルスキャプシドライブラリーを効率的かつ特異的な指向性を有するベクターについてスクリーニングすることができ、(b)エンハンサー/プロモーターコンストラクトを、特定の細胞集団における発現の駆動能について評価できる。
【0010】
いくつかの場合において、ウイルスキャプシドの性能は、DNAよりもmRNAの転写レベルに基づいて評価される。RNAは、単に細胞に侵入する能力よりもタンパク質ペイロードの発現を駆動するベクターの能力を反映するので、ウイルス機能の指標として使用することができる。また、本明細書中に記載するように、本明細書中に示す方法は、排他的ではないが、典型的にはインビボで多数の細胞型を使用することを伴うことができ、これは、一度にバルク組織又は1つの細胞型を伴う、多数回の選択を使用する、典型的な方法に対する改善である。
【0011】
いくつかの場合において、本明細書中に示す方法は、多くの組織、例えば霊長類の網膜、脳、筋肉又は他の組織において行い、結果として得られるベクターの潜在翻訳能力を最大化し得る。いくつかの場合において、本明細書中に示すハイスループットスクリーニングアプローチにより、所望の性質、例えば広範の指向性及び特異性を有するウイルスバリアント及びプロモーターの特定及び特性評価が可能になり得る。
【0012】
一般的に、本明細書の一態様は、(a)AAV変異体又はプロモーターのライブラリーを作製するステップであって、ライブラリー内の各AAVが特有のDNAバーコードを含むか、又は各プロモーターコンストラクトが特有のDNAバーコードを含む、ステップ、(b)AAV変異体又はプロモーターを、二重(キャプシドライブラリーについて)又は三重(いくつかのキャプシド又はプロモーターライブラリーについて)トランスフェクション手順を用いてパッケージング細胞株中にパッケージングするステップ、(c)AAV変異体のライブラリーを動物宿主の1つ以上の組織に送達するか、又は培養中の組織に感染させるステップ、(d)AAV変異体のライブラリーを送達した動物宿主の1つ以上の組織又は培養組織内で、AAV変異体のライブラリー内のAAVベクターが互いに競合するのに適切な期間、AAV変異体のライブラリーをインビボで維持するか、又は培養中の組織におけるウイルスのライブラリーを培養するステップ、及び(e)単一細胞又は単一核マイクロ流体方法を使用して、AAV変異体のライブラリーを送達した動物宿主の1つ以上の組織内の細胞から単一細胞又は単一核cDNAライブラリーを作製するステップ、を含む方法を特徴とする。ステップ(e)は、単一細胞マイクロ流体技術を使用し得る。ステップ(e)は、単一核マイクロ流体技術を使用し得る。動物宿主の1つ以上の組織は、神経組織を含み得る。神経組織は、中枢神経系組織を含み得る。中枢神経系組織は、脳組織でもよい。神経組織は、末梢神経系組織を含み得る。動物宿主の1つ以上の組織は、網膜組織を含み得る。動物宿主の1つ以上の組織は、筋肉組織を含み得る。筋肉組織は、横紋筋を含み得る。筋肉組織は心筋を含み得る。筋肉組織は、平滑筋を含み得る。動物宿主は、霊長類でもよい。霊長類は、旧世界ザルでもよい。旧世界ザルは、アカゲザル(Macaca mulatta)でもよい。霊長類は、テナガザル科(Hylobatidae)又はヒト科(Hominidae)の類人猿でもよい。霊長類は、ホモ属(Homo)ではない霊長類でもよい。霊長類は、パン属(Pan)ではない霊長類でもよい。AAV変異体のライブラリーの送達は、組織への注入を介するものでもよい。
【0013】
他の態様において、本明細書は、インビボで所望の細胞型に感染し、少なくとも1週間細胞型内にインビボで維持される能力を有するAAV変異体を得る方法を特徴とする。方法は、(a)前記細胞型を含む動物宿主にAAV変異体のライブラリーを導入するステップであって、ライブラリー内の各AAVが特有のDNAバーコードを含む、ステップ、及び(b)1つ以上のAAV変異体についてのバーコードに基づいて、1つ以上のAAV変異体を前記細胞型の細胞内に存在するものとして特定するステップであって、前記細胞がライブラリーを動物宿主に導入した後少なくとも1週間動物宿主内にあった、ステップを含む(又は実質的にこれらからなるか又はこれらからなる)。細胞型は、中枢神経系細胞型又は末梢神経系細胞型でもよい。細胞型は、網膜細胞型、横紋筋細胞型、心筋細胞型又は平滑筋細胞型でもよい。動物宿主は、霊長類でもよい。霊長類は、旧世界ザルでもよい。霊長類は、アカゲザル(Macaca mulatta)でもよい。霊長類は、テナガザル科又はヒト科の類人猿でもよい。霊長類は、ホモ属ではない霊長類でもよい。霊長類は、パン属ではない霊長類でもよい。ライブラリーは、前記細胞型を含む組織への注入を介して動物宿主に導入し得る。少なくとも1週間は、1週間から12週間でもよい。
【0014】
他の態様において、本明細書は、AAVウイルスのライブラリーからプロモーター配列を得る方法を特徴とする。方法は、(a)ある細胞型を含む動物宿主にライブラリーを導入するステップであって、ライブラリー内の各AAVが蛍光ポリペプチドの発現を駆動するように構成された特有のプロモーター配列を含む、ステップ、及び(b)蛍光ポリペプチドの発現に基づいて、1つ以上のプロモーター配列を前記細胞型の細胞内に存在するものとして特定するステップであって、前記細胞がライブラリーを動物宿主に導入した後少なくとも1週間動物宿主内にあった、ステップを含む(又は本質的にこれらからなるか又はこれらからなる)。細胞型は、中枢神経系細胞型又は末梢神経系細胞型でもよい。細胞型は、網膜細胞型、横紋筋細胞型、心筋細胞型又は平滑筋細胞型でもよい。動物宿主は、霊長類でもよい。霊長類は、旧世界ザルでもよい。霊長類は、アカゲザル(Macaca mulatta)でもよい。霊長類は、テナガザル科又はヒト科の類人猿でもよい。霊長類は、ホモ属ではない霊長類でもよい。霊長類は、パン属ではない霊長類でもよい。ライブラリーは、前記細胞型を含む組織への注入を介して動物宿主に導入し得る。少なくとも1週間は、1週間から12週間でもよい。
【0015】
他の態様において、本明細書は、AAV repポリペプチドをコードする核酸、AAV capポリペプチドをコードする核酸及び核酸カセットを含む(又は本質的にこれらからなるか又はこれらからなる)単離された核酸を特徴とし、核酸カセットはプロモーター配列、ペプチドタグをコードする核酸、核酸バーコード及びポリAテール配列を含む。AAV repポリペプチドをコードする核酸、AAV capポリペプチドをコードする核酸及び核酸カセットは、2つの逆位末端反復配列の間に位置し得る。核酸バーコードは20から30ヌクレオチドの長さでもよい。単離された核酸はプラスミドでもよい。
【0016】
他の態様において、本明細書は、AAV capポリペプチドをコードする核酸及び核酸カセットを含む(又は本質的にこれらからなるか又はこれらからなる)単離された核酸を特徴とし、核酸カセットはプロモーター配列、蛍光ポリペプチドをコードする核酸及びポリAテール配列を含み、単離された核酸は全長repポリペプチドをコードする核酸を欠く。AAV capポリペプチドをコードする核酸及び核酸カセットは、2つの逆位末端反復配列の間に位置し得る。単離された核酸は、全長repポリペプチドのアミノ酸配列の25%以下、50%以下、75%以下又は85%以下のrepポリペプチドアミノ酸配列をコードする核酸を含み得る。
【0017】
特にことわらない限り、本明細書中で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書中に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施に使用することができるが、適切な方法及び材料は以下に記載する。本明細書中で言及する全ての出版物、特許出願、特許及び他の参照文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法及び例は例示のためのものに過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【0019】
本特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許又は特許出願公開の複写は、要望及び必要な費用の支払いに応じて特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による、単一細胞AAVキャプシド及びプロモーターライブラリースクリーニングのための戦略及びパッケージングコンストラクトのマップを示す。
【
図2-1】
図2は、いくつかの実施形態による、AAVキャプシド及びプロモーターの単一細胞スクリーニングを伴う方法を示す。本方法は、例として、網膜組織において示す。パネルA:バーコード付加したAAVのライブラリーを組織に注入する。ライブラリーからのウイルスバリアントは、異なる効率で異なる細胞に感染する。パネルB:効率的なウイルスは細胞に侵入し、核へと移動してmRNAの発現をもたらす。パネルC:組織を単一細胞へと分離し、個々の細胞からのmRNAを、細胞特異的なDNAバーコードによりタグ付加する。パネルD:個々の細胞のトランスクリプトームプロファイルを分析して細胞型並びに、どのAAVが細胞に感染したか並びにAAV特異性及び効率を決定する。パネルE:エンハンサー/プロモーターライブラリーについて、ライブラリーを広範の指向性を有する単一AAVキャプシドにパッケージングする。パネルF:異なるプロモーターは、個々の細胞型内で異なるレベルの遺伝子発現を駆動する。パネルG:単一細胞懸濁液を作製し、個々の細胞からのmRNAに細胞特異的DNAバーコードによりタグ付加する。パネルH:個々の細胞のトランスクリプトームプロファイルを分析し、細胞型を特定し、プロモーター特異性及び効率を決定する。
【
図3】
図3は、霊長類の網膜及び脳でインビボスクリーニングしたAAV血清型のライブラリー構築の例を示す。23のAAVのライブラリーを、特有のDNAに融合した緑色蛍光ペプチド(GFP)の発現を駆動する汎用プロモーターを含むゲノムで個々にパッケージングした。
【
図4】
図4は、
図3に記載するようにAAVライブラリーを注入した後の霊長類の網膜及び脳におけるGFP発現を示す。これらのバリアントをパッケージングし、プールし、アカゲザルの網膜、前頭前皮質(PFC)及び線条体に注入した。ライブラリーの注入により、網膜及び脳におけるGFP発現が引き起こされた。
【
図5】
図5は、アカゲザル(Rhesus)の網膜中の内因性光感受性網膜神経節細胞(RGC)の特定及び特異的なAAV血清型からのバーコードの回収に関するデータを示す。各円は個々の細胞である。パネルAは、OPN4
+/-細胞がICA空間においてクラスター化することを示す。パネルBは、OPN4
+/-及びPOU4F2
+/-RGC細胞の特定を表す。より大きな円は、AAVゲノム(バーコードにより特定される)が回収された細胞を示す。
【
図6】
図6は、細胞型にわたるAAV指向性のヒートマップである。23の既存の血清型の定量により、予期されるように網膜において感染性について進化したAAV(K916、K94、7m8、K912、NHP26)は、他のバリアントより優れていることが明らかになっている。対照的に、AAV9ベースのベクターは、被殻における最高性能のバリアントであり、アプローチを実証している。分析した細胞型に感染しなかったAAVバリアントは、ヒートマップには示されていない。
【
図7A】
図7Aは、最小プロモーターと小ペプチド配列との間に介在配列(IVS)がない本明細書中に示すライブラリーのAAVベクターのマップである。
【
図7B】
図7Bは、最小プロモーターと小ペプチド配列との間にIVSを有する、本明細書中に示すライブラリーのAAVベクターのマップである。
【
図8】
図8は、cap発現を駆動するためのAAVプロモーター(P40又はP19+P40)、次いでITR内の導入遺伝子(例えば、CAG-GFP、CAG-GFP11又は膜シグナルペプチドを有するCAG-スプリットGFP)を駆動するためのプロモーター(例えばCAGプロモーター)を含むライブラリーのAAVベクターのマップである。
【
図9】
図9は、ITRを持たない、全長rep配列を含むrepイントランスのプラスミドのマップである。
【
図10】
図10は、マーモセット黄斑scATAC-seqデータ(SnapATACを使用)から作成し、次いで同一サンプルからのscRNA-seqデータと統合したクラスターのグラフを含む。細胞型を、統合したscRNA-seqデータ(Seuratを使用)からの遺伝子発現に基づいて予測した。RHO=杆体特異的遺伝子、RGR=ミュラーグリア細胞特異的遺伝子及びGRIK1=オフ型双極細胞特異的遺伝子。
【
図11-1】
図11A~Cは、それぞれ、RS1(レチノスキシン)、USH2A(ウシェリン)及びABCA4(ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4)について決定した、疾患遺伝子プロファイルを含む(左上=アカゲザル黄斑、左下=マーモセット黄斑、右上=マーモセット上部、右下=マーモセット下部)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書は、(a)AAV変異体のライブラリーを作製するステップであって、ライブラリー内の各AAVが、追跡してウイルス性能を評価することができる特有のDNA配列(バーコード)を含む、ステップ、(b)AAVバリアント又はプロモーターを、二重(キャプシドライブラリーについて)又は三重(いくつかのキャプシド及びプロモーターライブラリーについて)トランスフェクション手順を用いてパッケージング細胞株中にパッケージングするステップ、(c)AAV変異体のライブラリーを動物宿主の1つ以上の組織又は培養組織に注入又は他の方法で導入するステップ、(d)AAV変異体のライブラリーについて、AAV変異体のライブラリー内のAAVベクターがインビボ(又は培養組織内)で互いに競合し、AAV変異体のライブラリーを注入又は他の方法で導入した動物宿主の1つ以上の組織に感染するのに十分な期間を許容するステップ、(e)単一細胞又は単一若しくは核マイクロ流体方法を使用して、AAV変異体のライブラリーを注入した動物宿主の1つ以上の組織内の細胞から単一細胞又は単一若しくは核cDNAライブラリーを作製するステップを含む、方法を提供する。
【0022】
一実施形態において、本明細書中に示す方法において使用するライブラリーは、AAV変異体の高度に複雑な(すなわち1つ以上の)ライブラリーである。高度に複雑なライブラリーを作製するための1つのマップ及びクローニング計画を
図1に示す。
【0023】
したがって、ライブラリーがバリアントAAVキャプシドを含む場合、本明細書中に示す方法は、標的化した又は多数の細胞型への感染に関して高い効率及び/又は特異性を有するAAVベクターを作製するハイスループットな方法をもたらし得る。同様に、ライブラリーが遺伝子コード配列に操作可能に連結したバリアント上流プロモーターを備えたAAVを含む場合、本明細書中に示す方法は、標的化した又は多数の細胞型の遺伝子発現に関して高い効率及び/又は特異性を有するAAVベクターを作製するハイスループットな方法をもたらし得る。
【0024】
AAV変異体のライブラリーは、AAV変異体のライブラリー内の各AAVが、例えば
図1に示すように特有のDNAバーコードを有するように構築することができる。いくつかの場合において、Cap遺伝子又はプロモーター/エンハンサーのいずれか、並びにバーコードを合成し、骨格中にクローニングした後、付加的な配列をcap遺伝子とバーコードとの間にクローニングし、パッケージングプラスミドを完成させる。バーコードは、cap遺伝子と同一のプラスミドと同様にサンプルプラスミド中にクローニングされる。AAVバリアントとバーコード又はプロモーターとバーコードとの間の対形成は、インシリコで設計し、次いで合成し得る。各AAVバリアント又はプロモーターは、1つ以上の特有のバーコードによって表し得る。次いで、これらの合成したコンストラクトをAAVパッケージング骨格中にクローニングする。AAVキャプシドライブラリーについては、骨格はrep及びcap配列(ITR配列内には含まれていない)を、rep及びcap遺伝子がAAVキャプシド中にパッケージングされないように含み得る。同一プラスミド上において、特有のDNAバーコードに融合された導入遺伝子、例えばGFP又は他の蛍光ポリペプチドをコードする核酸の発現を駆動するプロモーターを含むAAVゲノムを、ITRパッケージングシグナル間に配置し得る。従って、単一のプラスミドが、AAVキャプシドを産生するための遺伝子及びウイルス指向性及び感染性を評価するために追跡することができる特有のDNA配列タグ(バーコード)を含むウイルスゲノムを含み得る。次いでウイルスを、例えば2つのプラスミド:(1)rep/cap/導入遺伝子-バーコード及び(2)アデノウイルスヘルパー機能をもたらすヘルパープラスミドによりパッケージング細胞をトランスフェクションする二重トランスフェクション方法を使用してパッケージングし得る。いくつかの場合において、3つのプラスミド((1)repプラスミド、(2)プロモーター/cap/導入遺伝子-バーコードプラスミド及び(3)アデノウイルスヘルパー機能をもたらすヘルパープラスミド)によりパッケージング細胞をトランスフェクションする三重トランスフェクション方法を使用し得る。キャプシドライブラリーは、AAVの任意の血清型に基づいていてよく、これについては、天然の親血清型も、それに対するAAVバリアントの効率及び特異性を測定し得るベースラインとしてライブラリーに含まれている。プロモーターライブラリーについては、ライブラリーコンストラクトは、それによりプロモーターの強度及び特異性を評価し得る特有のDNA配列(バーコード)に融合した導入遺伝子の発現を駆動する特有のプロモーターを含み得る。プロモーターライブラリーの場合、rep/cap遺伝子は、別のプラスミド上にトランスで与え得る。いくつかの場合において、AAVは、3つのプラスミド:(1)rep/capプラスミド、(2)プロモーターライブラリー-バーコードコンストラクト及び(3)ヘルパープラスミドによりパッケージング細胞株をトランスフェクションする三重トランスフェクション方法を使用してパッケージングし得る。プロモーターライブラリーについては、汎用(ubiquitous)CAG及びCMVプロモーターを合成し、それに対するプロモーターの効率及び特異性を測定し得るベースラインとして使用することができる。
【0025】
本明細書中に示すAAV変異体のライブラリーは、構築した後、パッケージング細胞株中にパッケージングし得る。例えば、AAVバリアント又はプロモーターは、二重(キャプシドライブラリーについて)又は三重(いくつかのキャプシド及びプロモーターライブラリーについて)トランスフェクション手順を用いてパッケージングし得る。任意の適切なパッケージング細胞株、制限するものではないが、例えばHEK-293細胞、HEK293T細胞及びAAV293細胞を使用することができる。
【0026】
AAV変異体のライブラリーは、構築した後、動物宿主の1つ以上の組織又はインビトロ培養組織/オルガノイドに注入又は他の方法で導入し得る。動物宿主は、AAVベクターが感染し得る任意の所望の動物種、例えば霊長類でもよい。本明細書中に記載する動物宿主として使用し得る霊長類の例としては、限定するものではないが、新世界ザル、旧世界ザル(例えばアカゲザル(Macaca mulatta))、大型類人猿及び小型類人猿(例えばテナガザル科(テナガザル)又はヒト科(ボノボ、チンパンジー、ヒト、ゴリラ、オランウータン))が挙げられる。いくつかの場合において、宿主動物は、ホモ属(ヒト(Homo sapiens sapiens))又はパン属ではない。
【0027】
本明細書中に示すAAV変異体のライブラリーを注入又は他の方法で導入する組織は、任意の所望の組織、例えば中枢神経系(CNS)組織(例えば脳及び脊髄)、末梢神経系組織、網膜組織及び任意の種類の筋肉組織(例えば、横紋筋、心筋、平滑筋組織等)でもよい。言うまでもないことであるが、本明細書中に示すAAV変異体のライブラリーは、他の組織/器官、例えば任意の内部及び外部の組織又は器官(例えば、特に副腎、膀胱、結腸、食道、外部バリア組織(皮膚、皮下組織、粘液産生組織等)、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、直腸、小腸、脾臓、胃、精巣、胸腺、尿管)に適切に注入し得る。いくつかの場合において、培養増殖している組織、例えば網膜オルガノイドを本明細書中に記載するように使用することができる。
【0028】
いくつかの場合において、本明細書中に示す方法は、AAV変異体のライブラリー内のAAVベクターが、互いに競合し、AAV変異体のライブラリーを注入又は他の方法で導入した動物宿主の1つ以上の組織(又は培養組織内)に感染するのに十分な期間を許容するステップを含み得る。この期間は、宿主動物の組織及び種又はインビトロの組織源により変動する。いくつかの場合において、期間は生存生物においては約1週間から約12週間の間並びに、培養組織においては約1から14日間であってもよい。例えば、AAV変異体のライブラリーを生存動物宿主に注入又は他の方法で導入した後、生存動物宿主を、分析する前に1から12週間(例えば1から8週間、1から5週間、1から3週間、3から10週間、5から10週間又は3から6週間)維持し得る。
【0029】
その後分析を行って、例えば並行する多数の異なる細胞型由来のトランスクリプトーム中のDNAバーコードの有無及び量に基づいて、特異性、発現レベル及び/又は他の所望の特徴(限定されるものではないが、例えば感染性の上昇、1つ以上の細胞型についての特異性の上昇、免疫応答の低下等)によって、最適なベクターを特定することができる。いくつかの場合において、ウイルスの効率は、特定の種類の細胞から回収したGFPバーコードの数に基づいて決定し得る。いくつかの場合において、次いでベクターを導入遺伝子発現のレベルによってランク付けし得る。特定の細胞型について、最も近縁の親血清型と比較して、最高レベルの導入遺伝子発現を示すウイルスバリアントをその細胞型についての最も効率的なウイルス(最高性能のもの)として指定することができる。特定の細胞型について最も近縁の親血清型と比較して最高レベルの導入遺伝子発現及び全ての他の細胞型における最低レベルの発現を示すウイルスバリアントを、その細胞型についての最も特異的なウイルス(最高性能のもの)として指定することができる。
【0030】
選択は2つのレベルで行うことができる:(1)高度に多様なウイルスキャプシドライブラリーを効率的かつ特異的な指向性を有するベクターについてスクリーニングすることができ、(2)エンハンサー/プロモーターコンストラクトを、特定の細胞集団における発現の駆動能について評価できる。本文脈において、「効率的」は、あるウイルスの1つ以上の細胞型の感染性が第2のウイルスと比較してより高いことを指す。さらに本文脈において、「特異的」は、あるウイルスの1つ以上の細胞型の感染性が第2のウイルスと比較してより高いことと共に、他の全ての細胞型の感染性又は発現が低下していることを指す。いくつかの場合において、ウイルスキャプシドの性能は、DNAよりもmRNA転写レベルに基づいて評価することができるが、これは、単に細胞に侵入する能力よりもタンパク質ペイロードの発現を駆動するベクターの能力を反映する。これらのステップを任意の種、例えば霊長類の網膜、脳又は他の組織において行い、結果として得られるベクターの潜在翻訳能力を最大化し得る。いくつかの場合において、本明細書中に示すハイスループットスクリーニングアプローチにより、所望の性質、例えば広範な指向性及び特異性を有するウイルスバリアント及びプロモーターの特定及び特徴付けが可能になり得る。
【0031】
本発明を以下の実施例においてさらに記載するが、これらは特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0032】
[実施例]
[実施例1]AAVベクター及びプロモーターの単一細胞トランスクリプトームベースの開発方法
材料及び方法
ライブラリー合成
(a)キャプシド又は(b)プロモーター/エンハンサーのいずれかを有するAAVのライブラリーを、特有のDNAバーコードを含むように操作する。特有のコンストラクトそれぞれについて複数のバーコードが存在する。キャプシドライブラリーは、表面露出位置にわたってランダム変異、セミランダムペプチドモチーフ及びランダムアミノ酸モチーフを有するキャプシドを含み、天然の血清型、天然の血清型の混合物又は合成配列に基づいている。エンハンサー/プロモーターライブラリーは、単一細胞ATAC-Seq試験から得られたモチーフ及び配列、合成配列並びに既存のプロモーターの変異バージョンを含む。
【0033】
AAVキャプシドバリアントとそのバーコードとの間の直接的な相関を達成するために、cap配列及びAAVゲノムは単一プラスミド上にコードされている。特有のバーコードの直上流の変異cap遺伝子を有するライブラリーを合成し、変異cap遺伝子とバーコードとの間の配列を2つの間にクローニングする (
図1)。バリアント-バーコード対形成は、パッケージングの前後にディープシークエンシング(ハイスループットシークエンシング、例えばILLUMINAシークエンシング)により再確認する。
【0034】
例えば
図1は、単一細胞AAVキャプシド及びプロモーターライブラリースクリーニングのための戦略及びパッケージングコンストラクトのマップを示す。Cap遺伝子又はエンハンサーのいずれか並びにバーコードを合成し、骨格中にクローニングした後、付加的な配列をcap遺伝子とバーコードとの間にクローニングし、パッケージングプラスミドを完成させる。
【0035】
AAVキャプシドライブラリーについては、この方法でライブラリーを合成することにより、ウイルスのキャプシド及びゲノムの両方を同一のプラスミドにコードすることが可能になる。プラスミドによりトランスフェクションした各HEK293パッケージング細胞は、その特有のキャプシドを指定するバーコードを含むウイルスをパッケージングする。十分なパッケージングに必要なライブラリープラスミドDNAの最少量(E+12vg/mL超のAAV力価を産生するのに必要なDNAの量)を決定することにより、最適なトランスフェクションMOIを、各パッケージングに先立って決定し、交差パッケージングを最小化又は防止する。各血清型について複数のバーコードが含まれ、任意の可能性のある交差パッケージングによる背景ノイズが確実に低減するようにする。エンハンサーを、異なるレベルの発現を駆動することが知られている最小プロモーター(限定するものではないが、例えば最小サイトメガロウイルス(CMV)、熱ショックタンパク質68(HSP68)、GATA結合因子2(GATA2)及びステロール担体タンパク質(SCP2))又は特定したエンハンサーに関連することがコンピューターにより判定されたプロモーター配列を含む骨格中にクローニングする。異なる最小プロモーターを、骨格中に存在するさらなる3塩基対タグにより特定する。
【0036】
AAVキャプシド及びプロモーターの単一細胞選択
キャプシド及びプロモーターライブラリーの各メンバーの性能を評価するために、
図2に示すようにscRNA-Seqを使用して細胞型を特定し、ベクター及びプロモーターの効率及び特異性を定量する。
【0037】
各キャプシドについての特有のバーコードを含むキャプシドライブラリーを注入し、ベクターは異なる指向性、効率及び特異性で細胞に感染する。単一細胞懸濁液を注入した組織から作製し、細胞をそのトランスクリプトームプロファイルにより特定する。同時に、キャプシド性能を、バリアントから回収したGFP-バーコード転写物の数により定量的に評価する。プロモーターライブラリーを広範の指向性を有する単一のバリアント中にパッケージングし、各プロモーターを特有のバーコードと対形成する。エンハンサーライブラリーメンバーを用いてパッケージングしたウイルスを細胞に感染させ、次いでscRNA-Seqの後、特異性及び効率を細胞型にわたってGFP-バーコード転写物をカウントすることにより定量する。
【0038】
図2は、例として、網膜組織を使用したAAVキャプシド及びプロモーターの単一細胞スクリーニングを伴う、本明細書中に示す例示的な方法を概略する。パネルAについては、バーコード付加したAAVのライブラリーを組織に注入する。ライブラリーからのウイルスバリアントは、異なる効率で異なる細胞に感染する。パネルBについては、効率的なウイルスは細胞に侵入し、核へと移動してmRNAの発現をもたらす。パネルCについては、組織を単一細胞に分離し、個々の細胞からのmRNAを細胞特異的なDNAバーコードによりタグ付加する。パネルDについては、個々の細胞のトランスクリプトームプロファイルを分析して、細胞型並びにどのAAVが細胞に感染したか、並びにAAV特異性及び効率を決定する。パネルEについては、エンハンサー/プロモーターライブラリーのために、ライブラリーを広範な指向性で単一のAAVキャプシドにパッケージングする。パネルFについては、異なるプロモーターは、個々の細胞型において異なるレベルの遺伝子発現を駆動する。パネルGについては、単一細胞懸濁液を作製し、個々の細胞からのmRNAを細胞特異的なDNAバーコードによりタグ付加する。パネルHについては、個々の細胞のトランスクリプトームプロファイルを分析して細胞型を特定し、プロモーターの特異性及び効率を決定する。
【0039】
最高性能のキャプシド及びプロモーターのサブセットの定量的比較
最上位候補のキャプシド及びエンハンサーの性能を検証するために、二次的な評価ラウンドを行うことができる。特定の細胞型を標的とする最上位のベクター(親血清型と比較して最高レベルの導入遺伝子発現を示すウイルス、又は親血清型と比較して最高レベルの導入遺伝子発現及び他の全ての細胞型において最低レベルの導入遺伝子発現を示すウイルス)を選択する。最も効率的なウイルス(細胞1個当たりの転写物の総数で正規化して、最大コピー数のバーコード転写物を駆動するバリアント)及び最も特異的かつ効率的な発現を駆動するバリアント(最大コピー数のオンターゲットのバーコード転写物及び最小コピー数のオフターゲットの転写物を駆動するバリアント)及び疾患原因遺伝子の発現の野生型パターンに最もよく適合する遺伝子発現のパターンを駆動するバリアントを各細胞型又は遺伝子について選択する。異なるレベルのオフターゲット発現を示すバリアントをオフターゲットリード数の最適な閾値を決定するための二次スクリーニングのために選択する。これらを再び、特有のバーコード(例えば、限定されるものではないがGFP融合バーコード)を用いてそれぞれパッケージングし、プールし、組織に注入して、再びscRNA-Seqによってスクリーニングして全体の最高性能のベクターを決定する。
【0040】
最高性能のキャプシド及びプロモーターを次いで対形成し、個々に検証する。最上位候補のベクター及びプロモーターの性能を定量及びランク付けし、各細胞型について全体的に最高性能のものを特定する。網膜及び脳において、発現プロファイルをインビボイメージング、組織学、qRTPCR及びscRNA-Seqによりさらに評価する。
【0041】
したがって、本明細書中に示す実験に従って、本明細書中に記載するAAVスクリーニングの単一細胞方法を使用して、異なる細胞型におけるAAVベクターの性能を評価した。網膜において、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)をRGCのサブセットとして特定し、バーコードをこれらの細胞から回収した(
図5)。網膜及び脳の細胞からのAAV血清型の単一細胞RNA配列解析により、予期する通り網膜進化血清型が網膜において最高の性能を示し、一方、AAV9及びAAV92YFが被殻神経細胞において最高の性能を示すことが明らかになった(
図6)。
【0042】
本明細書中に引用される全ての参照文献、例えば出版物、特許出願及び特許は、各参照文献が個々に及び具体的に参照により組み込まれることが示され、本明細書中にその全体が示されている場合と同程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0043】
本発明を記載する文脈(特に下記の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」並びに同様の指示物の使用は、本明細書中で特にことわらないか、又は明確に文脈に矛盾していない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解されるべきである。1つ以上の項目のリストが後ろに続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書中で特にことわらないか、又は明確に文脈に矛盾していない限り、リスト化した項目から選択される1つの項目(A又はB)又はリスト化した項目の2つ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味するものと解されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、そうでないと記載されていない限り、開放式の用語(すなわち、「含むが、それに限定されるものではない」を意味する)として解されるべきである。本明細書中で特にことわらない限り、本明細書中における値の範囲の記載は、単に範囲内にあるそれぞれの別個の値を個々に記載する簡略表記方法として機能することを意図しているに過ぎず、それぞれの別個の値は、個々に本明細書中に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中で特にことわらないか、又はさもなければ明確に文脈に矛盾していない限り、本明細書中に記載する全ての方法は、任意の適当な順序で行うことができる。本明細書中に示す任意及び全ての例又は例示的な語(例えば「例えば(such as)」)の使用は、本発明をよりよく明確にすることを意図しているに過ぎず、そうでないと特許請求の範囲に記載しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる語も、本発明の実施に必須な、任意の特許請求されていない要素を示すものと解されるべきではない。
【0044】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載され、本発明者らが知っている本明細書の実施に最良の形態が含まれる。それらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の記載を読む際に当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中で特に記載するのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法が許可するように、添付する特許請求の範囲に記載する主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、本明細書中で特にことわらないか、又はさもなければ明確に文脈に矛盾していない限り、全ての可能なその変形形態における上述の要素の任意の組合せが本発明により包含される。
【0045】
[実施例2]AAVライブラリー
AAVライブラリーのさらなるバージョンを、AAVが、ゲノム中に位置するさらなる小ペプチドと共に、AAVゲノムの天然のコンフォメーションを使用するように構築する(
図7A及び7B)。端的には、野生型AAVゲノムが、ITRパッケージングシグナル内に保持される。小さい汎用プロモーター(例えば小CMVプロモーター)により駆動される小ペプチドタグ及び小さい最小pAシグナル(例えば48bpのポリAシグナル)を、capオープン・リーディング・フレームの後ろかつITR間に付加する(
図7A)。このライブラリーは、最小プロモーターと小ペプチド配列との間に介在配列(IVS)を含んでいてもよい(
図7B)。
【0046】
[実施例3]AAVライブラリー
AAVライブラリーのさらなるバージョンを、大きく強い汎用プロモーターが、GFP又はスプリットGFP(スプリットGFPは、細胞表面に提示されるか、又は細胞の細胞質内に保持され得る)の発現を駆動し、そして、cap遺伝子がITR内にパッケージングされるように構築する(
図8)。これらの場合において、ライブラリーは、repイントランス(rep in trans)のシステムにより作製する(
図9)。これは、ヘルパーウイルス感染を保持し得る動物における安全性の上昇のために、複製不全ライブラリーを産生するという追加の利点を有するが、capが内在性AAVプロモーターにより駆動され、capが、cap遺伝子中のアミノ酸挿入を示す一連のバーコードと共にウイルス内にパッケージングされることを可能にするものである。端的には、これらのライブラリーは、AAV P40プロモーター、AAV P19+P40プロモーター、又はAAV P19+P40プロモーターのより長いバージョンを含み得る。コンストラクトはまた、プロモーター、例えばGFP、GFP11(例えばスプリットGFP)又は細胞表面に発現するGFP11のようなフルオロフォアの発現を駆動する汎用CAGプロモーターを含み得る。
【0047】
[実施例4]scATAC-Seqデータを使用した細胞型特異的プロモーターについてのライブラリーの設計
プロモーターライブラリーは、scATACデータセット、例えば
図10に示すように単一細胞をクラスター化させるのに使用したものから構築する。単一細胞ATACseqは、分離した網膜細胞においてオープンクロマチンの領域を決定するのに使用する。クラスターは、マーモセット黄斑scATAC-seqデータ(SnapATACを使用)から作成した後、同一サンプルからのscRNA-seqデータと統合する。統合したscRNA-seqデータからの遺伝子発現に基づいて細胞型を予測する(Seuratを使用)。プロモーターライブラリーを、特定の細胞型からの多数のDNA配列を共に対形成することにより構築する。
【0048】
[実施例5]疾患特異的なAAVについてのAAV選択
疾患遺伝子のプロファイルは、単一細胞RNA-Seqによって決定することができ、次いで所望のAAV(遺伝子の野生型コピーの発現の天然のパターン及びレベルを与える)を、疾患遺伝子プロファイルにAAVプロファイルを適合させることにより決定し得る。疾患遺伝子プロファイルは、RS1、USH2A及びABCA4について決定した(それぞれ
図11A、11B及び11C)。
【0049】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と併せて説明されているが、上述の説明は、本発明を説明することを意図するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲により定義されるものであることは、理解されるべきことである。他の態様、利点及び改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
(付記)
(付記1)
(a)AAV変異体又はプロモーターのライブラリーを作製するステップであって、ライブラリー内の各AAVが特有のDNAバーコードを含むか、又は各プロモーターコンストラクトが特有のDNAバーコードを含む、ステップ、
(b)AAV変異体又はプロモーターを、二重(キャプシドライブラリーについて)又は三重(プロモーターライブラリーについて)トランスフェクション手順を用いて、パッケージング細胞株中にパッケージングするステップ、
(c)AAV変異体のライブラリーを動物宿主の1つ以上の組織に送達するか、又は培養中の組織に感染させるステップ、
(d)AAV変異体のライブラリーを送達した動物宿主の1つ以上の組織又は培養組織内で、AAV変異体のライブラリー内のAAVベクターが互いに競合するのに適切な期間、AAV変異体のライブラリーをインビボで維持するか、又は培養中の組織におけるウイルスのライブラリーを培養するステップ、及び
(e)単一細胞又は単一核マイクロ流体方法を使用して、AAV変異体のライブラリーを送達した動物宿主の1つ以上の組織内の細胞から単一細胞又は単一核cDNAライブラリーを作製するステップ
を含む方法。
(付記2)
ステップ(e)が単一細胞マイクロ流体技術を使用する、付記1に記載の方法。
(付記3)
ステップ(e)が単一核マイクロ流体技術を使用する、付記1に記載の方法。
(付記4)
動物宿主の1つ以上の組織が神経組織を含む、付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
神経組織が中枢神経系組織を含む、付記4に記載の方法。
(付記6)
中枢神経系組織が脳組織である、付記5に記載の方法。
(付記7)
神経組織が末梢神経系組織を含む、付記5に記載の方法。
(付記8)
動物宿主の1つ以上の組織が網膜組織を含む、付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
動物宿主の1つ以上の組織が筋肉組織を含む、付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
筋肉組織が横紋筋を含む、付記9に記載の方法。
(付記11)
筋肉組織が心筋を含む、付記9に記載の方法。
(付記12)
筋肉組織が平滑筋を含む、付記9に記載の方法。
(付記13)
動物宿主が霊長類である、付記1から12のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
霊長類が旧世界ザルである、付記13に記載の方法。
(付記15)
旧世界ザルがアカゲザル(Macaca mulatta)である、付記13に記載の方法。
(付記16)
霊長類が、テナガザル科又はヒト科の類人猿である、付記13に記載の方法。
(付記17)
霊長類がホモ属ではない、付記16に記載の方法。
(付記18)
霊長類がパン属ではない、付記16に記載の方法。
(付記19)
AAV変異体のライブラリーの送達が組織への注入を介するものである、付記1から18のいずれか一項に記載の方法。
(付記20)
インビボで所望の細胞型に感染し、少なくとも1週間前記細胞型内にインビボで維持される能力を有するAAV変異体を得る方法であって、
(a)前記細胞型を含む動物宿主にAAV変異体のライブラリーを導入するステップであり、前記ライブラリー内の各AAVが特有のDNAバーコードを含む、ステップ、及び
(b)1つ以上のAAV変異体についての前記バーコードに基づいて、前記1つ以上のAAV変異体を前記細胞型の細胞内に存在するものとして特定するステップであり、前記細胞が、前記ライブラリーを前記動物宿主に導入した後少なくとも1週間前記動物宿主内にあった、ステップ
を含む、方法。
(付記21)
前記細胞型が、中枢神経系細胞型又は末梢神経系細胞型である、付記20に記載の方法。
(付記22)
前記細胞型が、網膜細胞型、横紋筋細胞型、心筋細胞型又は平滑筋細胞型である、付記20に記載の方法。
(付記23)
前記動物宿主が霊長類である、付記20から22のいずれか一項に記載の方法。
(付記24)
前記霊長類が旧世界ザルである、付記23に記載の方法。
(付記25)
前記霊長類がアカゲザル(Macaca mulatta)である、付記23に記載の方法。
(付記26)
前記霊長類が、テナガザル科又はヒト科の類人猿である、付記23に記載の方法。
(付記27)
前記霊長類がホモ属ではない、付記26に記載の方法。
(付記28)
前記霊長類がパン属ではない、付記26に記載の方法
(付記29)
前記ライブラリーが、前記細胞型を含む組織への注入を介して前記動物宿主に導入される、付記20から28のいずれか一項に記載の方法。
(付記30)
前記少なくとも1週間が、1週間から12週間である、付記20から28のいずれか一項に記載の方法。
(付記31)
AAVウイルスのライブラリーからプロモーター配列を得る方法であって、
(a)細胞型を含む動物宿主に前記ライブラリーを導入するステップであり、前記ライブラリー内の各AAVが、蛍光ポリペプチドの発現を駆動するように構成された特有のプロモーター配列を含む、ステップ、及び
(b)前記蛍光ポリペプチドの前記発現に基づいて、1つ以上のプロモーター配列を前記細胞型の細胞内に存在するものとして特定するステップであり、前記細胞が、前記ライブラリーを前記動物宿主に導入した後少なくとも1週間前記動物宿主内にあった、ステップ
を含む方法。
(付記32)
前記細胞型が中枢神経系細胞型又は末梢神経系細胞型である、付記21に記載の方法。
(付記33)
前記細胞型が、網膜細胞型、横紋筋細胞型、心筋細胞型又は平滑筋細胞型である、付記21に記載の方法。
(付記34)
前記動物宿主が霊長類である、付記31から33のいずれか一項に記載の方法。
(付記35)
前記霊長類が旧世界ザルである、付記34に記載の方法。
(付記36)
前記霊長類がアカゲザル(Macaca mulatta)である、付記34に記載の方法。
(付記37)
前記霊長類が、テナガザル科又はヒト科の類人猿である、付記34に記載の方法。
(付記38)
前記霊長類がホモ属ではない、付記37に記載の方法。
(付記39)
前記霊長類がパン属ではない、付記37に記載の方法。
(付記40)
前記ライブラリーが、前記細胞型を含む組織への注入を介して前記動物宿主に導入される、付記31から39のいずれか一項に記載の方法。
(付記41)
前記少なくとも1週間が、1週間から12週間である、付記31から40のいずれか一項に記載の方法。
(付記42)
AAV repポリペプチドをコードする核酸、AAV capポリペプチドをコードする核酸、及び核酸カセットを含む単離された核酸であって、前記核酸カセットが、プロモーター配列、ペプチドタグをコードする核酸、核酸バーコード及びポリAテール配列を含む、単離された核酸。
(付記43)
前記AAV repポリペプチドをコードする前記核酸、前記AAV capポリペプチドをコードする前記核酸、及び前記核酸カセットが、2つの逆位末端反復配列の間に位置する、付記42に記載の単離された核酸。
(付記44)
前記核酸バーコードが20から30ヌクレオチドの長さである、付記42から43のいずれか一項に記載の単離された核酸。
(付記45)
前記単離された核酸がプラスミドである、付記42から44のいずれか一項に記載の単離された核酸。
(付記46)
AAV capポリペプチドをコードする核酸及び核酸カセットを含む単離された核酸であって、前記核酸カセットがプロモーター配列、蛍光ポリペプチドをコードする核酸及びポリAテール配列を含み、前記単離された核酸が全長repポリペプチドをコードする核酸を欠く、単離された核酸。
(付記47)
前記AAV capポリペプチドをコードする前記核酸及び前記核酸カセットが、2つの逆位末端反復配列の間に位置する、付記46に記載の単離された核酸。
(付記48)
全長repポリペプチドのアミノ酸配列の25%以下、50%以下、75%以下、又は85%以下である、repポリペプチドアミノ酸配列をコードする核酸を含む、付記46から47のいずれか一項に記載の単離された核酸。