(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】リレーアタック防止装置
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20240214BHJP
B60R 25/00 20130101ALI20240214BHJP
H04B 1/3827 20150101ALI20240214BHJP
H04B 1/3888 20150101ALI20240214BHJP
【FI】
E05B19/00 Z
E05B19/00 J
E05B19/00 F
B60R25/00
H04B1/3827 110
H04B1/3888
(21)【出願番号】P 2021550384
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029408
(87)【国際公開番号】W WO2021070457
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019199364
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019240231
(32)【優先日】2019-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】394007388
【氏名又は名称】有限会社ワールドオート企画
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】青木 吾朗
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特許第6376717(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3222741(JP,U)
【文献】特開2000-083720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/00
B60R 25/24
H04B 1/3827 ー1/3888
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーレスエントリーシステムにおけるリクエスト信号の通信電波を受信するスマートキー(1)に用いられる装置であって、
導電材料からなるコイル(2)と、
このコイルに電気的に接続される発振器(3)と、
前記発振器から前記コイルに前記リクエスト信号の通信電波と同一もしくは近接する周波数の交流電流を供給することにより、前記コイルの周囲に形成される電磁場(G)と、
前記電磁場に前記スマートキーを保持するための保持体(4,7)と、を備えることを特徴とするリレーアタック防止装置。
【請求項2】
請求項1記載のリレーアタック防止装置であって、
前記スマートキーを挿入可能な筒内空間を有する前記保持体としての筒形ケース(4)と、
前記筒形ケースの筒面方向に連なる螺旋状の前記コイル(2)と、
前記螺旋状のコイルの螺旋内側であって前記筒内空間に形成される前記電磁場(G)と、を備える、リレーアタック防止装置。
【請求項3】
請求項1記載のリレーアタック防止装置であって、
前記スマートキーを載置可能な台面を有する前記保持体としてのプレート台(7)と、
前記プレート台の台面方向に連なる渦巻状の前記コイル(2)と、
前記渦巻状のコイルの片面側であって前記台面の上方空間に形成される前記電磁場(G)と、を備える、リレーアタック防止装置。
【請求項4】
請求項1~3記載のいずれか一項記載のリレーアタック防止装置において、
前記発振器の周波数が、前記リクエスト信号の通信電波と同一もしくは近接する周波数以外の周波数であって、前記スマートキーの受信回路を前記電磁場によって抑圧可能な周波数に設定される、リレーアタック防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーレスエントリーシステムにおけるリレーアタック防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアの解錠等を行う技術として利用されるキーレスエントリーシステムは、携帯するスマートキーと車両等に設置された装置(以下、車載機という。)とによって構成される。
車載機から送出されたリクエスト信号を通信によってスマートキーが受け取ると、スマートキーは識別情報を含むアンサー信号を送信する。送信された識別情報が車載機で確認されると、ドアの解錠が行われる。また、車両等においては、スマートキーの識別情報が車載機で確認されるとエンジンの始動が可能になる。
【0003】
このようなキーレスエントリーシステムでは、スマートキーの物理的存在を確認している訳ではなく、スマートキーの識別情報を確認しているだけであるため、スマートキーの識別情報を不正に得て車載機に通信すれば、スマートキーそのものがなくても車載機はドアの解錠を行う。この行為はリレーアタックと呼ばれ、このような不正な解錠行為が実現され車両等の盗難にも使われている。
【0004】
リレーアタックは、車載機の通信範囲内にスマートキーが存在しない場合であっても、中継器を介してスマートキーと車載機との通信を行う技術である。
リレーアタックの典型例としては、車載機を備えた車両と、住居などに保管されたスマートキーの各通信範囲にそれぞれ中継器を配置する。この状態で車両のドアロック解除ボタン・ノブに人が触れると、これがトリガーとなって車載機から車両側の中継器にリクエスト信号が送信される。このリクエスト信号は、車両側の中継器で増幅されてスマートキー側の中継器に届き、この中継器からスマートキーに再送信される。すると、これを受信したスマートキーが両中継器を介して車載機にアンサー信号を返すことになる。このようなリレーアタックが実行されると、スマートキーが車載機の通信範囲外であっても、ドアが不正に解錠されてしまう。
【0005】
従来、このようなリレーアタックによる不正な解錠行為を防止することを目的として、スマートキーの通信電波を遮蔽するための容器、例えば金属の箱などが使用されている。このような容器にスマートキーを保管することで、中継器とスマートキーとの間の不正な通信を遮断することができる。通信電波の遮蔽効果を目的として、特殊繊維を編み込んだポーチが使用されることもある。
【0006】
一方、従来のリレーアタック防止装置としては、車載機とスマートキーとの通信電波の強度を解析することにより、通信電波が中継された不正信号か否かの判別をする技術(特許文献1)などが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したような電波遮蔽用の容器にスマートキーを保管する場合、容器の一部が開放されていると効果が激減するため、保管時には容器の蓋を確実に閉めなければならない。つまりスマートキーの使用と保管の度に容器の開閉が必要となり、日常生活に取り入れるのには利便性が悪い。特に、帰宅時で疲れているときや、忙しい朝の出勤時には容器の開け閉めが面倒でリレーアックの防止対策が疎かになりがちである。
【0009】
また、特許文献1のように、通信電波を解析する装置については、スマートキーと車載機に特殊な通信電波を発信させるための改良が必要となるため構造が複雑になる。このため、既設のシステムに採用することはコストも含め困難である。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、容器等にスマートキーを密閉しなくても、リレーアタックによる不正な解錠行為を効果的に阻止することができ、しかも、シンプルな構造で既設のシステムにそのまま使用することができるリレーアタック防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決するために、本発明者らは、スマートキー周囲の空間で受信電波を抑圧する対策を検討した。リレーアタックにおいて送り手(中継器)側から発射される電波は強力でも、受け手(スマートキー)側に届くときには、距離による減衰の影響で電波強度は大幅に低下する。つまり、キー周囲の空間の減衰した受信電波であれば、比較的弱い電磁界(電磁場)によってもこれを抑圧し、その通信を遮断することができる。
そして、このような対策を実現するための研究・試作を繰り返す中で、コイルによって形成される電磁場が、スマートキーの受信を効果的に抑圧して通信を遮断する作用を示すことを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明のリレーアタック防止装置は、
キーレスエントリーシステムにおけるリクエスト信号の通信電波を受信するスマートキー(1)に用いられる装置であって、
導電材料からなるコイル(2)と、
このコイルに電気的に接続される発振器(3)と、
前記発振器から前記コイルに前記リクエスト信号の通信電波と同一もしくは近接する周波数の交流電流を供給することにより、前記コイルの周囲に形成される電磁場(G)と、
前記電磁場に前記スマートキーを保持するための保持体(4,7)と、を備える構成とした。
【0013】
[作用]
第1発明の構成において、コイルの周囲に形成される電磁場にスマートキーを保持すると、スマートキーの受信回路が電磁場によって抑圧される。
この結果、コイル周囲の空間(電磁場)にスマートキーを保持するだけでリレーアタックによる不正な解錠行為を阻止することができる。
なお、コイルに交流電流を発生させたときに生じる磁界はその範囲から外れるとその強度が急激に小さくなる特性がある。この点で距離に応じて次第に減衰する通信電波とは異なるものである。スマートキーの周囲に限定的に電磁界(電磁場)を形成することができるため、他の通信装置等に影響を与えることはない。
【0014】
[第1発明の効果]
第1発明の構成によれば、コイル周囲の空間(電磁場)にスマートキーを保持するだけで、不正なリクエスト信号の通信を遮断することができる。したがって、容器等にスマートキーを密閉しなくても、リレーアタックによる不正な解錠行為を効果的に阻止することができる。
また、本発明のリレーアタック防止装置は、コイルと発振器とを組み合わせた極めてシンプルで消費電力を抑えた装置となる。スマートキーや車載機の改良の必要はなく、既設のシステムに対してもそのまま使用することができる。つまり、本発明によれば簡単な構成でありながらリレーアタックによる不正行為を防止することができる。
【0015】
さらに、本発明による装置は、コイルと発振器とを電気的に接続する構成であるため、電気的なONとOFFの制御を簡単に行うことができる。このため、スイッチやセンサなどによってスマートキーを検知して発振器を起動するといった使い方も容易になる。
【0016】
[第2発明]
第2発明のリレーアタック防止装置は、第1発明の構成を備え、さらに、
前記スマートキーを挿入可能な筒内空間を有する前記保持体としての筒形ケース(4)と、
前記筒形ケースの筒面方向に連なる螺旋状の前記コイル(2)と、
前記螺旋状のコイルの螺旋内側であって前記筒内空間に形成される前記電磁場(G)と、を備える構成とした。
【0017】
[第2発明の効果]
第2発明の構成によれば、第1発明の効果に加え、筒形ケースの筒内空間に電磁場が形成されるため、この筒内空間にスマートキーを入れることで、リクエスト信号の通信電波を抑圧することができる。スマートキーの保管時に筒形ケースを密閉する必要はなく、開放したまま使用することができるため、日常生活に取り入れる際の利便性が良好になる。
また、筒形ケースの筒内空間にスマートキーを入れることにより、電磁場に確実にスマートキーを保持することができる。電磁場からスマートキーがはみ出るような不具合がなくなるため、安心してスマートキーを保管することができる。
【0018】
[第3発明]
第3発明のリレーアタック防止装置は、第1発明の構成を備え、さらに、
前記スマートキーを載置可能な台面を有する前記保持体としてのプレート台(7)と、
前記プレート台の台面方向に連なる渦巻状の前記コイル(2)と、
前記渦巻状のコイルの片面側であって前記台面の上方空間に形成される前記電磁場(G)と、を備える構成とした。
【0019】
[第3発明の効果]
第3発明の構成によれば、第1発明の効果に加え、プレート台の上方空間に電磁場が形成されるため、この上方空間にスマートキーを置くことで、リクエスト信号の通信を遮断することができる。プレート台にスマートキーを置くだけで保管することができるため、その利便性がさらに良好になる。
また、プレート台に置かれたスマートキーの保管状況を目視でチェックすることができる。スマートキーを使用する際には直ぐに見つけることができ、探す手間が省ける。
【0020】
[第4発明]
第1~3発明において、発振器の周波数は、スマートキーの受信可能な周波数(リクエスト信号の通信電波と同一もしくは近接する周波数)であることが望ましいが、発明者らの試験したところでは、スマートキーが受信不能な周波数であっても、発振器の出力を上げることにより、コイルの周囲に形成される電磁場がスマートキーの受信回路を抑圧し、スマートキーの通信を遮断することが確認された。すなわち、「リクエスト信号の通信電波と同一もしくは近接する周波数」以外でも、スマートキーの受信回路を抑圧するまでの強さの電磁場を作成すれば前述した課題を解決することができる。
なお、受信回路を抑圧する電磁場の強さは、コイルと受信回路との距離によっても変動するため、実際の運用を適用し決めることができる。
【0021】
第4発明のリレーアタック防止装置は、第1~第3発明のいずれか一の構成において、前記発振器の周波数が、前記リクエスト信号の通信電波と同一もしくは近接する周波数以外の周波数であって、前記スマートキーの受信回路を前記電磁場によって抑圧可能な周波数に設定される構成とした。
【0022】
[第4発明の効果]
第4発明の構成によれば、第1~3発明と同様に、コイル周囲の空間(電磁場)にスマートキーを保持するだけで、スマートキーの受信回路を抑圧し、不正なリクエスト信号の通信を遮断することができる。したがって、容器等にスマートキーを密閉しなくても、リレーアタックによる不正な解錠行為を効果的に阻止することができる。
また、コイルと発振器とを組み合わせた極めてシンプルな構成となるため、スマートキーや車載機の改良の必要はなく、既設のシステムに対してもそのまま使用することができる。
[第1~4発明]
【0023】
第1~4発明において、「スマートキー」は、リレーアタック行為の対象となりうるものであればその名称は問わない。本発明が適用可能であれば、リモコンキー、イモビライザーキー等も含まれる。
スマートキーの用途は、必ずしも車両用である必要はなく、住宅のドアなどに使用されるものであってよい。スマートキーが通信機能(リクエスト信号およびアンサー信号)を備えるものであれば、スマートキーの用途は限定されない。
スマートキーの構造・形状についても特に限定されず、矩形型、長円型、カード型等の各種タイプのスマートキーに本発明を適用することができる。
【0024】
なお、第1~4発明には本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の構成要素との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態のリレーアタック防止装置を示すもので、コイルと発振器を示す概略構成図である。
【
図2】同リレーアタック防止装置を示すもので、コイルにスマートキーを入れた様子を示す概略構成図である。
【
図3】同リレーアタック防止装置を示すもので、コイルと発振器を内蔵した筒形ケースを示す斜視図である。
【
図4】同リレーアタック防止装置を示すもので、コイルと発振器を内蔵した筒形ケースにスマートキーを保管する様子を示す斜視図である。
【
図5】同リレーアタック防止装置を示す模式断面図である。
【
図6】第2実施形態のリレーアタック防止装置を示すもので、コイルと発振器を示す概略構成図である。
【
図7】同リレーアタック防止装置を示すもので、コイルと発振器を内蔵したプレート台にスマートキーを保管する様子を示す斜視図である。
【
図8】同リレーアタック防止装置を示す模式断面図である。
【
図9】試作品による試験例を説明するもので、(A)は電波強度試験の試験室を示す模式図、(B)は同試験結果を示す図である。
【
図10】リレーアタック防止装置の変形例を示すもので、コイルと発振器を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態は、車両用キーレスエントリーシステムのスマートキー1(
図1参照)に本発明を適用したものである。スマートキー1は車載機(図示省略)から送られるリクエスト信号を受信すると、識別情報を含むアンサー信号を車載機に送信する。送信された識別情報が車載機で確認されると、車両のドアが解錠されるとともにエンジンの始動が可能になる。
リレーアタック防止装置は、このスマートキー1を自宅等に保管する際に中継器を介した通信電波を遮断し、不正な解錠行為を阻止するために用いられる。
【0027】
[第1実施形態]
第1実施形態によるリレーアタック防止装置10を
図1~
図5に示した。
リレーアタック防止装置10は、主要な構成として、導電材料からなる螺旋状のコイル2と、このコイル2に電気的に接続される発振器3とを備えている。これらが
図3に示す筒形ケース4に内蔵されている。筒形ケース4は、後述する電磁場Gにスマートキー1を保持する保持体となる。
発振器3からコイル2に交流電流を供給することによりコイル2の周囲に電磁場Gが形成されるようになっている(
図2参照)。
【0028】
コイル2は、電気伝導性に優れた金属等(導電材料)からなるもので、コイル2の大きさは、その螺旋内側にスマートキーを挿入可能なスペースを確保できる程度である。例えば、コイル内径40~80mm程度、巻き数500~1000程度、コイル長さ(螺旋軸長さ)50~100mm程度のコイルが選択される。
【0029】
発振器3は目的の周波数を得られるものであればよく、周波数固定型または可変型いずれでも構わない。
発振器3の周波数は、リクエスト信号の通信電波(スマートキー1の受信電波)の周波数と同一または近接する周波数に設定される。
【0030】
なお、発振器3の周波数は、スマートキーの受信回路を抑圧できる強さの電磁場を作成すればリクエスト信号の通信電波の周波数と同一または近接する周波数でなくてもよい。すなわち、発振器3の出力を上げることにより、スマートキーの受信回路を抑圧できる強さの電磁場を作成できれば、上記周波数以外の周波数を適宜採用することができる。リレーアタック防止装置10の消費電力を抑える場合には、リクエスト信号の通信電波の周波数と同一または近接する周波数を採用するのが効果的である。
【0031】
発振器3からコイル2に交流電流が供給されると、
図2に示すように、コイル2の周囲の空間に電磁場Gが形成される。この電磁場Gは、螺旋状のコイル2に電流を流したときに表れるもので、コイル2の螺旋内側から外側に環状に連なる。電磁場Gの形成された場所から離れると電磁界強度は急激に小さくなる。
【0032】
図3に示すように、筒形ケース4は、有底円筒状のもので、円盤形の底部4bに筒部4aが立ち上げられている。筒部4aにはその筒面方向に連なるように螺旋状のコイル2が内蔵されている(
図5参照)。
【0033】
底部4bには発振器3が設けられている(
図5参照)。発振器3の端子には、筒部4aから底部4bに配線されたコイル2の両端が接続されている。発振器3からコイル2に交流電流が供給されると、筒形ケース4の筒内空間Sに電磁場Gが形成されることになる。
【0034】
筒形ケース4の所定位置には、スマートキー1の存在を検知するためのセンサ5が設けられる。筒形ケース4の筒内空間Sにスマートキー1が入ると、センサ5がこれを検知し、発振器3にON信号を送る。筒内空間Sからスマートキー1が取り出されると、センサ5がこれを検知して発振器3にOFF信号を送る。
発振器3はON信号を受けると、コイル2に交流電流を供給し、OFF信号を受けると、コイル2への交流電流の供給を停止する。つまり、筒形ケース4にスマートキー1を入れたときのみ発振器3を作動させることで、発振器3の消費電力を抑えるように構成される。
なお、センサ5の構成としては、スマートキー1の存在を検知するものであればよく、例えば赤外線センサや重量センサ等を採用することができる。
【0035】
筒形ケース4の上部にはインジケータランプ6が設けられている。インジケータランプ6は、センサ5のON・OFF信号に応じて点灯状態と消灯状態に切り替わる。つまり、筒形ケース4にスマートキー1が入っているときにはインジケータランプ6が点灯し、スマートキー1が取り出されると、インジケータランプ6が消灯する。
このように筒形ケース4にインジケータランプ6を設けることで、筒形ケース4の外からスマートキー1の存在を確認することができるようになっている。
ここで、上記のようなセンサ5やインジケータランプ6の構成は、必要に応じて省略してもよい。たとえば発振器3を作動し続ける場合の消費電力がセンサ5やインジケータランプ6を使用する場合の消費電力よりも小さい場合には、節電を図るためにセンサ5やインジケータランプ6を省略することが望ましい。
【0036】
リレーアタック防止装置10を使用する場合、自宅の玄関や居間などの保管場所に筒形ケース4を置いておく。スマートキー1の保管時には筒形ケース4にスマートキー1を入れると、発振器3が作動してコイル2に交流電流が供給され、筒内空間Sに電磁場Gが形成される
スマートキー1の使用時には、筒形ケース4の上方からスマートキー1を取り出すと、発振器3からコイル2への交流電流の供給が停止され、筒内空間Sの電磁場Gが消失する。
【0037】
スマートキー1の保管時には電磁場Gがスマートキーの受信回路を抑圧する。
この結果、スマートキー1は外来するリクエスト信号を受け付けることができなくなるため、筒形ケース4内にスマートキー1を保持するだけでリレーアタックによる不正な解錠行為を阻止することができる。
【0038】
このように第1実施形態のリレーアタック防止装置10によれば、コイル周囲の空間(電磁場G)にスマートキー1を保持するだけで、不正なリクエスト信号の通電電波を遮断することができる。したがって、容器等にスマートキー1を密閉しなくても、リレーアタックによる不正な解錠行為を効果的に阻止することができる。
また、リレーアタック防止装置10は、螺旋状のコイル2と発振器3とを組み合わせた極めてシンプルで消費電力を抑えた装置となる。スマートキー1や車載機の改良の必要はなく、既設のシステムに対してもそのまま使用することができる。つまり、リレーアタック防止装置10によれば簡単な構成でありながらリレーアタックによる不正行為を防止することができる。
【0039】
また、リレーアタック防止装置10は、螺旋状のコイル2と発振器3とを電気的に接続する構成であるため、電気的なONとOFFの制御を簡単に行うことができる。このため、センサ5によってスマートキーを検知して発振器3を起動するといった使い方も容易になる。
【0040】
さらに、リレーアタック防止装置10によれば、筒形ケース4の筒内空間Sに電磁場Gが形成されるため、この筒内空間Sにスマートキーを入れることで、リクエスト信号の通信電波を抑圧することができる。スマートキー1の保管時に筒形ケース4を蓋などで密閉する必要はなく、開放したまま使用することができるため、日常生活に取り入れる際の利便性が良好になる。疲れて帰った帰宅時や忙しい朝でもスマートキー1の管理が面倒になることはない。
【0041】
また、筒形ケース4にスマートキー1を入れることにより、筒内空間Sの電磁場Gに確実にスマートキーを保持することができる。電磁場Gからスマートキー1がはみ出るような不具合がなくなるため、安心してスマートキー1を保管することができる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態の構成を
図6~
図8に示した。第2実施形態のリレーアタック防止装置20は、螺旋状のコイル2に代えて、渦巻状(平面状)のコイル2を採用したものである。
リレーアタック防止装置20は、主要な構成として、導電材料からなる渦巻状のコイル2と、このコイル2に電気的に接続される発振器3とを備えている。これらが
図7に示すプレート台7に内蔵されている。このプレート台7が電磁場Gにスマートキー1を保持する保持体となる。
発振器3からコイル2に交流電流を供給することによりコイル2の周囲に電磁場Gが形成されるようになっている(
図6および
図8参照)。
【0043】
コイル2は、第1実施形態と同様に電気伝導性に優れた金属等(導電材料)からなる。渦巻状の配線を基板にプリントしてコイル2とすることもできる。単一の基板にコイル2と発振器3の回路を形成すればプレート台7のコストダウン・小型・軽量化に役立つ。
コイル2は、その外径がスマートキー1を賄える大きさになっている。例えば、コイル外径80~100mm程度、巻き1000程度のコイルが選択される。
【0044】
発振器3の主要な構成は、第1実施形態と同様である。発振器3の周波数はリクエスト信号の通信電波の周波数と同一または近接する周波数に設定される。このように発振器3の周波数を設定することにより、スマートキー1の受信電波の周波数にほぼ一致した電磁場Gがコイル2の周囲に形成されるようになっている。
なお、発振器3の周波数については、第1実施形態と同様に、必ずしもリクエスト信号の通信電波の周波数と同一または近接する周波数でなくてもよく、スマートキーの受信回路を抑圧できる強さの電磁場を作成できれば、上記周波数以外の周波数を適宜採用することが可能である。
【0045】
発振器3からコイル2に交流電流が供給されると、コイル2の周囲の空間に電磁場Gが形成される。この電磁場Gは、渦巻状のコイル2に電流を流したときに生じる磁界によって表れるもので、コイル2の上下の空間に連なる(
図6参照)。
【0046】
図7および
図8に示すように、プレート台7は、ほぼ一定の厚みを有する板状のもので、スマートキー1よりも広い台面7aを備えている。プレート台7の内側にはその台面方向に連なるように渦巻状のコイル2が内蔵されている。
【0047】
コイルに2の側方には発振器3が設けられる(
図8参照)。プレート台7内で発振器3の端子にコイル2の両端が接続されている。発振器3からコイル2に交流電流が供給されると、プレート台7(台面7a)の上方に電磁場Gが形成されることになる。
【0048】
プレート台7には、スマートキー1の存在を検知するためのセンサ5が設けられる。プレート台7の台面7a上で電磁場Gの形成される範囲にスマートキー1が置かれると、センサ5がこれを検知し、発振器3にON信号を送る。台面7aからスマートキー1が取り出されると、センサ5がこれを検知して発振器3にOFF信号を送る。
発振器3はON信号を受けると、コイル2に交流電流を供給し、OFF信号を受けると、コイル2への交流電流の供給を停止する。つまり、プレート台7にスマートキー1を置いたときのみ発振器3を起動させることで、発振器3の消費電力を抑えるように構成される。
【0049】
プレート台7の所定位置にはインジケータランプ6が設けられている。このインジケータランプ6は、センサ5のON・OFF信号に応じて点灯状態と消灯状態に切り替わる。スマートキー1がプレート台7の正しい位置(電磁場Gの範囲)に置かれるときにはインジケータランプ6が点灯し、スマートキー1が正しい位置に置かれていないか、台面7aから取り出されたときにはインジケータランプ6が消灯する。
なお、円形のプレート台7を採用して台面全体に電磁場Gを形成する構成とすれば、上記のようなインジケータランプを省略することも可能である。また、発振器3を連続的に作動させる場合にはセンサ5およびインジケータランプ6を省略することもできる。
【0050】
リレーアタック防止装置20を使用する場合、自宅の玄関や居間などの保管場所にプレート台7を置いておく。スマートキー1の保管時にはプレート台7にスマートキー1を置くと、発振器3が駆動してコイル2に交流電流が供給され、台面7a上に電磁場Gが形成される
スマートキー1の使用時には、プレート台7からスマートキー1を取り出すと、発振器3からコイル2への交流電流の供給が停止され、台面7a上の電磁場Gが消失する。
【0051】
スマートキー1の保管時には電磁場Gがスマートキーの受信回路を抑圧する。
この結果、スマートキー1は外来するリクエスト信号を受け付けることができなくなるため、プレート台7にスマートキー1を置くだけでリレーアタックによる不正な解錠行為を阻止することができる。
【0052】
第2実施形態のリレーアタック防止装置20によれば、コイル周囲の空間(電磁場G)にスマートキー1を保持することで、不正なリクエスト信号の通電電波を抑圧し、その通信を遮断することができる。したがって、容器等にスマートキーを密閉しなくても、リレーアタックによる不正な解錠行為を効果的に阻止することができる。
また、リレーアタック防止装置20は、渦巻状のコイル2と発振器3とを組み合わせた極めてシンプルで消費電力を抑えた装置となる。スマートキー1や車載機の改良の必要はなく、既設のシステムに対してもそのまま使用することができる。
【0053】
また、リレーアタック防止装置20は、渦巻状のコイル2と発振器3とを電気的に接続する構成であるため、電気的なONとOFFの制御を簡単に行うことができる。このため、センサ5によってスマートキー1を検知して発振器3を起動するといった使い方も容易になる。
【0054】
さらに、リレーアタック防止装置20によれば、プレート台7の上方空間に電磁場Gが形成されるため、この上方空間にスマートキー1を置くことで、リクエスト信号の通信電波を抑圧することができる。プレート台7にスマートキー1を置くだけで保管することができるため、その利便性がさらに良好になる。
また、プレート台7に置かれたスマートキー1の保管状況を目視でチェックすることができる。スマートキー1を使用する際には直ぐに見つけることができ、探す手間が省ける。
さらには、プレート台7の厚みを抑えることができるため、スマートキー1の保管スペースの確保が容易になる。
【0055】
[試験例]
(1)通信遮断試験
第1実施形態の構成を備えた試作品を用いて車載機とスマートキーの間の通信遮断効果を試験した。試験に使用したスマートキーと、試作品における発振器の周波数は共に125KHzである。
試作品の筒形ケースにスマートキーを入れ、車載機の通信範囲でドアロック解除ボタン・ノブに触れたところ、ドアが解錠することはなかった。また、車内で筒形ケースにスマートキーを入れて始動ボタンを押したところ、エンジンが始動しないことが確認された。
第2実施形態の構成を備えた試作品についても同様な試験を行ったところ、プレート台にスマートキーを置いた状態では車両のドアが解錠することはなく、また、エンジンが始動することはなかった。
【0056】
この結果、筒形ケース内またはプレート台上にスマートキーを保管することで、車載機とスマートキーとの間の通信が遮断されることが確認された。リレーアタックによる中継器とスマートキーとの距離は、上記試験における車載機とスマートキーとの距離よりさらに離れていることが想定されるため、スマートキーの受信電波はさらに小さくなる。このため、試作品にスマートキーを保管することでリレーアタックによる不正な通信を効果的に遮断しうることが確認された。
【0057】
(2)電波強度試験
第2実施形態の構成を備えた試作品を用いて電波強度を試験した。試験は、三重県工業研究所の電波暗室において下記の測定機材を用いて行った。
アンテナ :ETS-EMCO 社 Model 6502
測定受信機 : Rohde&Schwarz 社 ESCI7
解析ソフトウェア: 東陽テクニカ社 EP5/ME
【0058】
上記の電波暗室内で試作品を125KHzで作動させ、3m法により別室で電波強度を測定した(
図9(A)参照)。
測定の結果、
図9(B)に示すように、試作品(被試験体)から該当帯域(125KHz)および測定全体域(10KHz~30MHz)において信号は測定されなかった。つまり、試作品からの電波は微弱であり、周囲の空間にほとんど影響を及ぼさないことが確認された。
【0059】
[変形例]
以上、第1実施形態および2実施形態によるリレーアタック防止装置を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限られることなく、種々の変形が可能である。
例えば、前述した第1実施形態では、スマートキー1を保管する空間として、螺旋状のコイル2の内側を利用しているが、
図10に示すように、螺旋状のコイル2の外側を利用してよい。コイル2の周囲に形成される電磁場Gの範囲であれば、スマートキー1を保管する空間とすることができる。
【0060】
電磁場Gにスマートキー1を保持するための保持体は、筒形ケース4またはプレート台7に限定されない。電磁場Gにスマートキー1を吊す手段を用いてもよいし、棚の台面などをそのまま保持体としてもよい。
螺旋状のコイル2は、円筒形に限らず、円すい形・たる形・つづみ形のようにコイル径を変化させてもよい。渦巻状のコイル2についても円形ではなく、楕円形・長円形・四角形のようにコイル径を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 スマートキー
2 コイル
3 発振器
4 筒形ケース
4a 筒部
4b 底部
5 センサ
6 インジケータランプ
7 プレート台
10,20 リレーアタック防止装置
S 筒内空間
G 電磁場