(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】補水栓
(51)【国際特許分類】
H01M 50/645 20210101AFI20240214BHJP
H01M 50/682 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M50/645
H01M50/682
(21)【出願番号】P 2021553887
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019042057
(87)【国際公開番号】W WO2021079525
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 久喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
(72)【発明者】
【氏名】永留 伊織
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/073102(WO,A1)
【文献】実開平02-091154(JP,U)
【文献】実開平02-005883(JP,U)
【文献】特開2004-288559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0200851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池に装着されるときに当該蓄電池の外部に位置する主面を有する本体部と、
前記本体部に装着されるフロートと、
を備える蓄電池用の補水栓であって、
前記本体部は、
前記本体部の内部に設けられる弁室と、
前記本体部の外部および前記弁室を連通する給水口と、
前記主面に設けられ、前記本体部の外部および前記弁室を連通する弁座と、
前記主面に設けられると共に前記弁室および前記弁座に対して離間し、前記本体部を貫通する流出口と、
前記主面から立設し、前記流出口から前記弁座に向かって延在する第1側面を含む壁部と、を有し、
前記フロートは、前記蓄電池に収容される電解液の液面に連動する浮き部材と、前記弁室内に位置すると共に当該浮き部材に連動して前記弁座を開閉する弁と、を有し、
前記壁部の立設方向から見て、前記弁座および前記流出口の両方は、前記第1側面に交差する交差方向において前記第1側面よりも一方側に位置する、
補水栓。
【請求項2】
前記本体部は、
前記主面に設けられると共に前記弁座および前記流出口に対して離間し、前記本体部を貫通する第1貫通孔と、
前記立設方向から見て前記弁座を介して前記流出口の反対側に位置し、前記主面から立設する側壁および頂面を有する突出部と、を有し、
前記フロートは、
前記浮き部材に接続されると共に前記立設方向に延在し、前記第1貫通孔を挿通する第1軸と、
前記弁に接続されると共に前記立設方向に延在し、前記弁座を挿通する第2軸と、
前記第1軸および前記第2軸を接続する接続部と、を有し、
前記接続部の一部は、前記主面上にて前記壁部と前記突出部との間に位置する、請求項1に記載の補水栓。
【請求項3】
前記壁部は、前記主面を複数の領域に区画しており、
前記複数の領域に含まれる第1領域には、前記弁座と、前記流出口と、前記第1貫通孔とが設けられる、請求項2に記載の補水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補水栓に関し、特に蓄電池用の補水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池等の電池の一種においては、定期的に電解液を補充する必要がある。このような蓄電池においては、精製水等を補水するための補水栓が設けられる。下記特許文献1には、給水口の下流に配置され、第1の弁および第2の弁が設けられた弁室を有する補水栓が開示されている。この補水栓では、第1の弁と第2の弁とのそれぞれが、弁体および排水口を有しており、各排水口の閉塞タイミングのずれが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電池の補水に要する時間短縮のため、単位時間における水の供給量の増大が求められる。この場合、補水栓内の水圧が上昇するので、補水栓において意図した流路以外に水が流れてしまうことがある。これにより、補水栓外部への漏水などの不具合が発生する。
【0005】
本発明の一側面の目的は、補水時の不具合を抑制可能な補水栓の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電池用の補水栓は、蓄電池に装着されるときに当該蓄電池の外部に位置する主面を有する本体部と、本体部に装着されるフロートと、を備える。本体部は、本体部の内部に設けられる弁室と、本体部の外部および弁室を連通する給水口と、主面に設けられ、本体部の外部および弁室を連通する弁座と、主面に設けられると共に弁室および弁座に対して離間し、本体部を貫通する流出口と、主面から立設し、流出口から弁座に向かって延在する第1側面を含む壁部と、を有する。フロートは、蓄電池に収容される電解液の液面に連動する浮き部材と、弁室内に位置すると共に当該浮き部材に連動して弁座を開閉する弁と、を有し、壁部の立設方向から見て、弁座および流出口の両方は、第1側面に交差する交差方向において第1側面よりも一方側に位置する。
【0007】
この補水栓では、給水口から弁室に供給された水は、開放状態である弁座を介して本体部の主面に到達する。そして、当該主面を流れる水が流出口に到達することによって、蓄電池内に水が供給される。ここで、上記主面には本体部から立設する壁部が設けられており、弁座および流出口は、上記交差方向において上記壁部の第1側面よりも一方側に位置する。このため、弁座から本体部の主面に到達した後に壁部の第1側面まで到達した水は、当該第1側面を伝って流出口に向かいやすくなる。よって、本体部の主面上において意図した流路以外に水が流れにくくなる。したがって、上記補水栓を用いることによって、補水時の不具合を抑制可能になる。
【0008】
本体部は、主面に設けられると共に弁座および流出口に対して離間し、本体部を貫通する第1貫通孔と、立設方向から見て弁座を介して流出口の反対側に位置し、主面から立設する側壁および頂面を有する突出部と、を有し、フロートは、浮き部材に接続すると共に立設方向に延在し、第1貫通孔を挿通する第1軸と、弁に接続すると共に立設方向に延在し、弁座を挿通する第2軸と、第1軸および第2軸を接続する接続部と、を有し、接続部の一部は、主面上にて壁部と突出部との間に位置してもよい。この場合、フロートの移動を壁部および突出部によって規制できるので、フロートに含まれる浮き部材および弁の機能を良好に発揮できる。
【0009】
壁部は、主面を複数の領域に区画しており、複数の領域に含まれる第1領域には、弁座と、流出口と、第1貫通孔とが設けられてもよい。この場合、弁座を介して主面の第1領域に到達した水は、壁部によって第1領域内に留められる。したがって、本体部の主面上において意図した領域以外に水が流れることを良好に抑制できる。
【0010】
本体部は、複数の領域に含まれる第2領域に設けられ、蓄電池の内部を点検する点検装置が挿通される第2貫通孔を有し、壁部において第1貫通孔と第2貫通孔との間に位置する部分には、切欠きもしくは開口が設けられてもよい。この場合、第1領域から溢れる水は、壁部の切欠きもしくは開口から溢れる傾向にある。切欠きもしくは開口から第2領域に溢れた水は、第2貫通孔を介して蓄電池内に流れる。このように壁部の所定位置に切欠きもしくは開口を設けることによって、意図した流路以外に流れた水も、蓄電池内に供給できる。加えて、主面は、第2領域内であって、切欠きもしくは開口と第2貫通孔との間に位置し、第2貫通孔に向かって下がる傾斜部を有してもよい。この場合、第2領域に溢れた水は、傾斜部を介して第2貫通孔に到達しやすくなる。
【0011】
壁部は、立設方向から見て直線状に延在する第1側面を有する第1部分と、第1部分および突出部を一体化する第2部分とを有し、第2部分は、立設方向から見て交差方向における他方側に張り出してもよい。この場合、第1領域の範囲を広げられるので、当該第1領域から意図しない領域への水の流出を抑制できる。
【0012】
本体部は、主面に設けられ、蓄電池の内部を点検する点検装置が挿通される第2貫通孔を有し、第2貫通孔は、交差方向において第1側面よりも他方側に位置してもよい。
【0013】
壁部は、交差方向において第1側面の反対側に位置する第2側面を有し、第2側面は、第2貫通孔に連続すると共に壁部の立設方向に延在する溝を有してもよい。この場合、点検装置を第2貫通孔に容易に装着できる。
【0014】
第1側面は、立設方向において主面側に位置する第1端と、立設方向において第1端の反対側に位置する第2端とを有し、且つ、立設方向に対して傾斜する傾斜面であり、立設方向から見て、第1端は第2端よりも外側に位置してもよい。この場合、交差方向における壁部の耐圧が向上するので、水圧による壁部の破損を抑制できる。
【0015】
本体部は、主面の縁を囲うと共に立設する周壁を有してもよい。この場合、主面上から補水栓の外部への水の流出を良好に抑制できる。
【0016】
上記補水栓は、壁部の頂面に接して配置され、弁座上に位置するカバー部をさらに備えてもよい。この場合、弁座から本体部の主面へ到達する水が補水栓の外部へ流出することを良好に抑制できる。
【0017】
本体部は、壁部と一体化しており、弁座上に位置するカバー部を有してもよい。この場合、弁座から本体部の主面へ到達する水が補水栓の外部へ流出することを良好に抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、補水時の不具合を抑制可能な補水栓を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る補水栓の側面図である。
【
図2】
図2は、補水栓の主要部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、補水栓の主要部を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明一側面に係る実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る補水栓の側面図である。
図2は、補水栓の主要部を示す斜視図であり、
図3は、補水栓の主要部を示す平面図である。
図2および
図3において、後述するフロート4は省略されている。補水栓1は、蓄電池へ収容される水等の液体を過不足なく供給するための蓄電池用部材であり、蓄電池の電槽100A(
図14A及び
図14B参照)に設けられた液口100Bに装着される。また、補水栓1は、液体の供給時における逆流等を防止する機能も示す。図示しないが、補水栓1と液口100Bとの間における液漏れを防止する観点から、補水栓1は、パッキン等のシール材を介して液口100Bに装着される。補水栓1が装着される蓄電池は、例えば鉛蓄電池等の液式蓄電池である。
【0022】
補水栓1は、本体部2と、本体部2に装着されるカバー部3と、本体部2に装着されるフロート4とを備える。以下では、フロート4の浮き部材51が、電槽100Aに収容される電解液Lの液面に連動して移動する方向を方向D1とし、平面視にて方向D1に交差する交差方向を方向D2及び方向D3とする。また以下では、方向D1から見ることは、平面視に相当する。本実施形態では、方向D2と方向D3とは互いに直交しているが、これに限られない。
【0023】
(本体部)
次に、
図1~3に加えて、
図4および
図5を参照しながら本体部2の構造について詳細に説明する。
図4は、本体部を示す平面図である。
図5は、
図4のV-V線に沿った断面図である。本体部2は、蓄電池に供給される液体が流れる部分であり、且つ、蓄電池に装着される部分である。すなわち、本体部2は、液体の流路を構成する部分である。本実施形態では、本体部2は、後述するように組み合わせ構造体であるが、これに限られない。
【0024】
本体部2は、補水栓1が蓄電池に装着されるときに当該蓄電池の外部に位置する主面2aを有する。また、本体部2は、主面2aの縁を囲う周壁11と、方向D1に沿って突出する突出部12と、カバー部3から露出する給水口13と、本体部2の内部に設けられる内部空間14と、内部空間14につながる弁座15と、内部空間14および弁座15に対して離間する流出口16と、主面2aから立設する壁部17と、弁座15および流出口16に対して離間する第1貫通孔18と、平面視にて壁部17を介して流出口16の反対側に位置する第2貫通孔(点検用貫通孔)19と、を有する。本体部2を備える補水栓1を用いた場合、給水口13から補水栓1に供給される液体は、通常、内部空間14、弁座15、および流出口16を順に通過して蓄電池内に供給される。以下では、給水口13、内部空間14、弁座15、および流出口16を順に通過して蓄電池内に供給される液体は、本体部2にて構成される意図した流路FLを通過したものとする。流路FLの詳細な説明は後述する。
【0025】
周壁11は、本体部2の主面2a上に位置する液体の外部への漏れを防止もしくは抑制する部分であり、方向D1に沿って環状に立設している。周壁11は、環状の土台部分11aと、カバー部3に収容可能な略半円形状の第1周壁部分11bと、カバー部3の縁に沿って延在する第2周壁部分11cと、カバー部3から露出すると共に平面視にて給水口13を囲う円筒部11dとを有する。平面視にて、第1周壁部分11bの一部と、第2周壁部分11cと、円筒部11dとは方向D3において本体部2の中心よりも一方側(
図4における紙面右側)に位置しており、第1周壁部分11bの大部分は方向D3において上記中心よりも他方側(
図4における紙面左側)に位置するが、これに限られない。土台部分11aと、第1周壁部分11bと、第2周壁部分11cと、円筒部11dとは、一体的に成形されている。
【0026】
土台部分11aは、本体部2の主面2aの縁に沿って設けられる環状部分であり、第1周壁部分11b、第2周壁部分11c、および円筒部11dの土台(ベース)となる。土台部分11aの一部は、主面2aにおける流路FLを規定する部分の一部である。平面視にて、突出部12と、弁座15と、流出口16と、壁部17と、第1貫通孔18と、第2貫通孔19とは、土台部分11aの内側に位置する。
【0027】
第1周壁部分11bと第2周壁部分11cとのそれぞれは、流路FLから外れ、且つ、主面2a上に位置する液体の外部への漏れを防止もしくは抑制する部分である。第1周壁部分11bは、方向D3における上記一方側にて第2周壁部分11cと隙間なく接合しているが、これに限られない。第1周壁部分11bは、方向D3における上記他方側にて第2周壁部分11cと隙間なく接合してもよい。第2周壁部分11cは、第1周壁部分11bと円筒部11dとを隙間なくつないでいる。平面視にて、第2周壁部分11cの曲率半径は、第1周壁部分11bの曲率半径よりも大きいが、これに限られない。第1周壁部分11bの外周面には、カバー部3の開閉部41(詳細は後述)が係止する係止部である突起11eが設けられる。
【0028】
円筒部11dは、給水口13に液体を供給する装置の装着口、もしくは、当該装置を装着するための付属品(アタッチメント)の装着口である。円筒部11dは、例えば、方向D3における一方側の端に位置する。方向D1において、円筒部11dの高さは、第1周壁部分11bの高さ、並びに第2周壁部分11cの高さよりも高いが、これに限られない。なお、方向D1において、第1周壁部分11bの高さと第2周壁部分11cの高さとは互いに同一であるが、これに限られない。
【0029】
突出部12は、給水口13と内部空間14とを接続する接続空間CS1(後述する
図9および
図10も参照)を画成する部分である。このため、突出部12の内部には接続空間CS1が設けられる。また、突出部12は、カバー部3の一部を支持する部分でもある。平面視にて、突出部12は、弁座15を介して流出口16の反対側に位置している。また平面視にて、突出部12と、弁座15と、流出口16とは、方向D2において順に並んでいる。突出部12は、方向D3における上記一方側に位置する。突出部12は、例えば周壁11の土台部分11aと一体化しているが、これに限られない。なお、本実施形態では、突出部12は、方向D2において弁座15よりも一方側(
図4における紙面下側)に位置する部分に相当する。このため、方向D2において弁座15よりも他方側(
図4における上側)に位置すると共に突出部12に一体化する部分は、説明上、突出部12とは異なる部分とする。
【0030】
突出部12は、主面2aから立設する側壁12aと、側壁12aの頂部から延在する頂面12bとを有する。側壁12aは、主面2a上において流路FLを規定する部分の一部であり、周壁11の土台部分11aと、壁部17とに隙間なく接合している。頂面12bは、カバー部3の一部が配置される部分であり、方向D1において主面2aよりもカバー部3側に位置する。
【0031】
給水口13は、流路FLの入口であり、本体部2の外部および内部空間14を連通する。給水口13は、平面視にて周壁11の円筒部11dに囲われている。給水口13は、突出部12にて画成される接続空間CS1を介して内部空間14に連通している。
【0032】
内部空間14は、本体部2において液体を一時収容する部分である。内部空間14は、接続空間CS1に連通する第1空間14a、弁座15に連通する第2空間14b、および第1空間14aと第2空間14bとを接続する接続空間CS2を有する。例えば液体の供給速度を調整する観点から、方向D1において、第1空間14aは、給水口13に対して重なっていないが、これに限られない。第2空間14bには、フロート4に連動することによって弁座15を開閉する弁53(
図14A,14Bを参照。詳細は後述)が収容されている。このため、第2空間14bを有する内部空間14は、弁53が収容される弁室とも呼称される。接続空間CS2は、第1空間14aと第2空間14bとの間に設けられる仕切りに設けられる開口であり、方向D1において本体部2の底側に位置する。本体部2において第2空間14bを画成する部分には、方向D1において弁座15に重なると共に弁53が載置可能な突起が設けられるが、これに限られない。
【0033】
弁座15は、本体部2の外部および弁室である内部空間14を連通する開口であり、主面2aに設けられる。弁座15は、方向D2において流出口16よりも本体部2の中心側に位置し、且つ、方向D3において給水口13よりも上記他方側に位置する。弁座15は、弁53に嵌合する凹部15aを有する。凹部15aは本体部2の内部に設けられる。また、平面視にて弁座15の周囲は、凹部15aの形状に沿って隆起しているが、これに限られない。
【0034】
流出口16は、流路FLの出口であり、主面2aに設けられると共に本体部2を貫通する貫通孔である。平面視にて、流出口16は、方向D2において弁座15よりも上記他方側に位置する。流出口16の周囲に位置する主面2aの一部には、流出口16に向かって下がる傾斜部が設けられてもよい。
【0035】
壁部17は、突出部12の側壁12aと同様に、主面2a上における流路FLを規定する部分の一部であり、方向D1に沿って立設している。このため、方向D1は、壁部17の立設方向としても呼称される。また、壁部17は、主面2aを複数の領域に区画する部分である。本実施形態では、壁部17は、主面2aを第1領域AR1と第2領域AR2とに区画する。第1領域AR1は、方向D3において壁部17を介して第2領域AR2の反対側に位置する。第1領域AR1には、給水口13と、弁座15と、流出口16と、第1貫通孔18とが設けられており、流路FLの一部が含まれる。第2領域AR2には、第2貫通孔19が設けられており、流路FLが含まれない。このため、壁部17は、弁座15を介して主面2a上に到達した液体の流路FL外(すなわち、第2領域AR2)への流出を防止もしくは抑制する機能も示す。壁部17は、第1部分21と、方向D2において第1部分21よりも上記一方側に位置する第2部分22とを有する。
【0036】
第1部分21は、平面視にて周壁11の土台部分11aから方向D2に沿って直線状に延在する部分である。第1部分21は、突出部12に対して離間している。このため、第1部分21と突出部12との間には隙間S1が設けられる。第1部分21は、第1領域AR1に位置する第1側面23と、方向D3において第1側面23の反対側に位置する第2側面24と、カバー部3が配置される頂面25とを有する。
【0037】
第1側面23は、平面視にて方向D2に沿って直線状に延在する面であり、概ね方向D1に延在すると共に方向D3に対して交差する。第1側面23は、方向D3において弁座15および流出口16よりも上記他方側に位置する。換言すると、弁座15および流出口16の両方は、方向D3において第1側面23よりも上記一方側に位置する。第1側面23の一部23aは、平面視にて流出口16の一部を画成する。第1側面23の他部23bは、方向D2において上記一部23aよりも上記一方側に位置する。加えて平面視にて、当該他部23bは、方向D3において弁座15および給水口13と並んでいる。よって第1側面23は、平面視にて、流出口16から弁座15に向かって延在しており、弁座15を介して主面2a上に到達した液体を流出口16へ誘導するガイドとして機能する。当該ガイド機能を良好に発揮する観点から、第1側面23の他部23bは、方向D2において弁座15よりも上記一方側に位置することが好ましいが、これに限られない。例えば、第1側面23の他部23bは、弁座15よりも方向D2における他方側に位置する場合であっても、上記ガイド機能が奏され得る。
【0038】
第2側面24は、第2領域AR2に位置する面であり、第1側面23と同様に平面視にて方向D2に沿って直線状に延在し、且つ、概ね方向D1に延在すると共に方向D3に対して交差する。第2側面24は、方向D1に沿って延在する溝24aを有する。溝24aは、第2貫通孔19へ部材を挿入する際のガイドとして機能し、第2貫通孔19まで延在している。
【0039】
第2部分22は、第1部分21から突出部12に延在する部分であり、平面視にて方向D3における上記他方側に張り出す。本実施形態では、第2部分22は略半円形状を呈しており、且つ、第2部分22の少なくとも一部は、方向D3において本体部2の中心よりも上記他方側に位置する。第2部分22は、第1側面23に連続する側面26と、第2側面24に連続する側面27と、カバー部3が配置される頂面28とを有する。本実施形態では、頂面28と、第1部分21の頂面25と、土台部分11aの頂面と、突出部12の頂面12bとは、互いに同一平面上に位置するが、これに限られない。
【0040】
第2部分22には、切欠き29が設けられる。切欠き29は、仮に流路FLを外れた液体が第1領域AR1から溢れる場合、溢れた液体を第2領域AR2へ誘導する部分である。切欠き29の形状は特に限定されないが、例えば逆台形状、半円形状等である。第1領域AR1から液体が容易に溢れないようにする観点から、切欠き29の底は、例えば方向D1に沿った第2部分22の中心よりも頂面28側でもよい。切欠き29は、必ずしも本体部2(第2部分22)を切り欠くことによって設けられなくてもよい。例えば、第2部分22を成形するための型に沿って形成されてもよい。よって、切欠き29は、単に方向D1において頂面28から陥没する凹部とも呼称できる。
【0041】
第1貫通孔18は、フロート4の一部が挿通される部分であり、主面2aに設けられると共に本体部2を貫通する。第1貫通孔18は、方向D2において弁座15並びに壁部17の第1部分21よりも上記他方側に位置する。また、第1貫通孔18は、平面視にて突出部12と第2部分22との間に位置する。第1貫通孔18と弁座15との間には、隙間S1が位置している。このため、第1貫通孔18は、隙間S1を介して弁座15の反対側に位置する。弁座15を介して主面2a上に到達した液体が、流路FLを外れて隙間S1を通過して第1貫通孔18に到達した場合、当該液体は、第1貫通孔18を介して蓄電池内に供給される。
【0042】
第2貫通孔19は、蓄電池の内部を点検する点検装置(図示しない)が挿通される部分であり、主面2aに設けられると共に本体部2を貫通する。平面視にて、第2貫通孔19は、壁部17の第1部分21を介して流出口16の反対側に位置する。このため、第2貫通孔19は、方向D3において第1側面23よりも上記他方側に位置する。また平面視にて、第2貫通孔19は、壁部17の切欠き29を介して第1貫通孔18の反対側に位置する。よって、平面視にて第1貫通孔18と第2貫通孔19との間には、切欠き29が設けられる。第2貫通孔19の一部は、第1部分21の溝24aに連続している。第2貫通孔19は、主貫通孔19aと、主貫通孔19a内に画成される副貫通孔19bとを有するが、これに限られない。弁座15を介して主面2a上に到達した液体が流路FLを外れて第2貫通孔19に到達した場合、当該液体は、第2貫通孔19を介して蓄電池内に供給される。
【0043】
第2領域AR2内であって第2貫通孔19の周囲において、主面2aは、第2貫通孔19に向かって下がる傾斜部SF1,SF2を有する。傾斜部SF1は、平面視にて切欠き29と第2貫通孔19との間に少なくとも設けられる。これにより、切欠き29を介して第2領域AR2に到達した液体は、傾斜部SF1を介して第2貫通孔19へ到達しやすくなる。すなわち、第2領域AR2に到達した液体が、第2領域AR2に滞留しにくくなる。傾斜部SF2は、平面視にて第2貫通孔19を介して傾斜部SF1の反対側であって、第2貫通孔19と周壁11の第1周壁部分11bとの間に位置する。
【0044】
以下では、
図6~
図12を参照しながら、本体部2を構成する各構造体と、各構造体の細部とについて説明する。
図6は、本体部の分解図である。
図7は、第1構造体の斜視図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9は、
図7のIX-IX線に沿った断面図である。
図10は、第1構造体の背面側を示す斜視図である。
図11は、第2構造体の要部を示す図である。
図12は、
図11のXII-XII線に沿った断面図である。以下では、既に説明した部分の説明を省略する。また、
図6~
図12において、一部の符号は省略される。
【0045】
図6に示されるように、本体部2は、第1構造体5と第2構造体6との組み合わせ構造体である。第1構造体5と第2構造体6とが組み合わされることによって、本体部2が構成される。補水栓1が蓄電池に装着されたとき、第1構造体5は蓄電池の外部に位置する。一方、第2構造体6の大部分は蓄電池の内部に位置し、第2構造体6の他部は第1構造体5によって覆われる。このため、主面2aは、第1構造体5によって構成される。
【0046】
図7および
図8に示されるように、第1構造体5の壁部17に含まれる第1部分21の第1側面23は、方向D1において主面2a側に位置する第1端23cと、方向D1において第1端23cの反対側に位置する第2端23dとを有し、且つ、方向D1に対して傾斜している。第1端23cは主面2aに接しており、第2端23dは頂面25に接している。また、壁部17の第2側面24は、方向D1において主面2a側に位置する第3端24bと、方向D1において第3端24bの反対側に位置する第4端24cとを有し、且つ、方向D1に対して傾斜している。第3端24bは主面2aに接しており、第4端24cは頂面25に接している。加えて、平面視にて、第1端23cは第2端23dよりも外側に位置しており、第3端24bは第4端24cよりも外側に位置している。第1側面23と頂面25とがなす角度、並びに、第2側面24と頂面25とがなす角度のそれぞれは、鈍角である。このため、方向D3に沿った第1部分21の幅は、方向D1において頂面25側から主面2aに向かうにつれて徐々に広がっている。
【0047】
図9に示されるように、突出部12の側壁12aは、方向D1において主面2a側に位置する端12cと、方向D1において端12cの反対側に位置する端12dとを有し、且つ、方向D1に対して傾斜している。加えて、平面視にて、端12cは端12dよりも外側に位置しており、側壁12aと頂面12bとがなす角度は鈍角である。
【0048】
図11および
図12に示されるように、第2構造体6は、開口6a~6fと、平面視にて開口6fの周囲を囲うと共に方向D1に立設する壁6gとを有する。開口6aは、接続空間CS1(
図5、
図9および
図10を参照)につながっており、方向D1において第1空間14a(
図5を参照)に重なる。開口6bは、弁座15(
図5を参照)につながっており、方向D1において第2空間14b(
図5を参照)に重なる。開口6cは、方向D1において流出口16(
図5を参照)に重なる。開口6dは、方向D1において第1貫通孔18(
図4を参照)に重なる。開口6eは、方向D1において第2貫通孔19の主貫通孔19a(
図4を参照)に重なる。開口6fは、方向D1において第2貫通孔19の副貫通孔19b(
図4を参照)に重なる。壁6gは、副貫通孔19bを画成する部分であり、第2貫通孔19に収容される。
【0049】
(本体部の流路)
次に、
図4および
図5を参照しながら、本体部2にて構成される意図した流路FLと、当該流路FLから外れた液体の流れ(すなわち、意図しない流路)とを説明する。
図4および
図5に示されるように、流路FLは、例えば、第1流路FL1、第2流路FL2、第3流路FL3、第4流路FL4および第5流路FL5に分けられる。
【0050】
第1流路FL1は、外部から給水口13へ供給される液体の流路を示す。第2流路FL2は、第1流路FL1を通過した後に突出部12の接続空間CS1へ向かう液体の流路を示す。第3流路FL3は、第2流路FL2を通過した後に内部空間14へ向かう液体の流路を示す。第4流路FL4は、開放状態である弁座15を介して内部空間14から本体部2の主面2a上へ向かう液体の流路を示す。第5流路FL5は、主面2a上から流出口16へ向かう液体の流路を示す。このため、第1流路FL1から第5流路FL5を順に通過した液体は、流出口16を介して蓄電池の内部に供給される。
【0051】
弁座15を介して主面2a上に到達した液体の大半は、流出口16に向かって流れる、もしくは、壁部17の第1部分21の第1側面23をガイドとして流出口に向かって流れる。しかしながら、上記液体の一部は流路FLから外れ、例えば第1部分21と突出部12との隙間S1へ流れる。隙間S1を通過して第1貫通孔18に到達した液体は、第1貫通孔18を介して蓄電池の内部に供給される。このため、流路FLから外れた液体の一部は、隙間S1を介して第1貫通孔18へ向かう流路(第1の意図しない流路EFL1)に沿って、蓄電池の内部に供給される。
【0052】
流路FLから外れて隙間S1を通過した液体の他の一部は、切欠き29を通過し、第1領域AR1から第2領域AR2へ溢れる。第2領域AR2に溢れた液体は、傾斜部SF1によって第2貫通孔19へ誘導される。第2貫通孔19に到達した液体は、第2貫通孔19を介して蓄電池の内部に供給される。このため、流路FLから外れた液体の他の一部は、隙間S1と切欠き29とを介して第2貫通孔19へ向かう流路(第2の意図しない流路EFL2)に沿って、蓄電池の内部に供給される。このように本実施形態に係る補水栓1の本体部2では、意図した流路FLを外れた液体の少なくとも一部は、第1貫通孔18もしくは第2貫通孔19を介して蓄電池の内部に供給される。
【0053】
(カバー部)
次に、
図1~
図3を参照しながらカバー部3の構成について説明する。カバー部3は、本体部2を流れる液体が外部へ漏れることを防止する部分であり、方向D1において本体部2の主面2a上に位置する。このため、補水栓1が蓄電池に装着されるとき、カバー部3は蓄電池の外部に位置する。カバー部3は、主部(収容部)31と、開閉部41とを有する。
【0054】
主部31は、平面視にて第1領域AR1の一部を覆う部分であり、本体部2の突出部12の頂面12bおよび壁部17の頂面25,28に接して配置される。このため、主部31は、少なくとも弁座15上であって流出口16上に位置する(以上、
図4を参照)。また、主部31は、電槽100A内に面する本体部2の一端とは反対側の他端に設けられ、流路FLの一部(弁座15)を開閉する弁53を電槽100A内の電解液Lの液面に連動して方向D1に移動させるフロート4の一部を収容する。主部31は、例えば、平面視にて円筒部11dに重なる位置が欠落した略半円形状を呈する。主部31は、例えば樹脂成形物である。主部31は、本体部2上に配置される底部32と、底部32から方向D1に沿って隆起する隆起部33とを有する。
【0055】
底部32は、カバー部3の土台(ベース)であり、本体部2に接する部分である。底部32は、例えば、周壁11の第2周壁部分11cと、周壁11の円筒部11dの一部とに隙間なく接触する。この場合、第1領域AR1上に位置する液体の外部への漏れが、良好に防止もしくは抑制される。底部32は、種々の方法によって本体部2に固定される。例えば、底部32は、接着剤等を介して本体部2に固定されてもよいし、本体部2に対して溶着されてもよい。
【0056】
隆起部33は、フロート4において主面2a上に位置する部分の一部(詳細は後述)を収容する空間(不図示)を画成する部分である。また、隆起部33は、カバー部3の開閉部41を支持する部分でもある。隆起部33は、方向D1において本体部2に対向する頂面33aと、頂面33aから本体部2に向かって立設する壁面33bと、壁面33bの一部が方向D1に沿って陥没する陥没部33cと、頂面33aに設けられる一対の軸受部33dと、方向D2に交差する一対の側面33e,33fとを有する。壁面33bは、方向D1,D2に沿って延在しており、方向D3において最も開閉部41に近い部分である。開閉部41が閉鎖しているとき、壁面33bは、当該開閉部41に対向する対向面である。陥没部33cは、方向D1において底部32側から頂面33aに向かって陥没する部分であり、突出部12と壁部17の第1部分21との隙間S1に重なっている。軸受部33dは、開閉部41を回動可能に支持する部分である。
【0057】
開閉部41は、本体部2に対して開閉自在に装着される部分である。開閉部41が閉鎖されるとき、開閉部41は、平面視にて本体部2の第1周壁部分11bおよび第2領域AR2を覆う。開閉部41が第2周壁部分11cおよび第2領域AR2を覆うことによって、第2領域AR2上に位置する第1貫通孔18及び第2貫通孔19から外部への液体の漏れが防止もしくは抑制される。開閉部41が開放されるとき、露出した第2領域AR2に設けられる第2貫通孔19を介して、検査装置等を蓄電池内に挿入できる。換言すると、開閉部41が開放されるとき、補水栓1を蓄電池に装着したまま、検査装置等を蓄電池内に挿入できる。開閉部41は、例えば主部31と同様に樹脂成形物である。この場合、開閉部41に含まれる樹脂は、主部31に含まれる樹脂と同一でもよいし、異なってもよい。本実施形態では、開閉部41に含まれる樹脂は、主部31に含まれる樹脂と異なり、且つ、開閉部41は透明である。この場合、開閉部41が閉鎖状態であっても、フロート4を容易に視認できる。開閉部41は、蓋部42と、回動部43と、取手44とを有する。
【0058】
蓋部42は、開閉部41の本体であり、第1周壁部分11bおよび第2領域AR2を覆う。蓋部42が第1周壁部分11bよりも外側に位置する突起11eに係止することによって、開閉部41が閉鎖された状態を維持できる。開閉部41が閉鎖しているとき、蓋部42は、周壁11の土台部分11a上であって第1周壁部分11bよりも外側に位置する。主部31の隆起部33の一部を覆っている。蓋部42は、隆起部33の頂面33a、壁面33b、および側面33e,33fに対して離間している。蓋部42は、方向D1において本体部2に対向する頂面42aと、方向D3に交差すると共に、方向D3において隆起部33の壁面33bに対向する壁面(第2壁面部)42bと、フロート4の浮き部材51に接続される第1軸52との干渉を避けるために設けられた凸部42cと、方向D2に交差すると共に、方向D2において隆起部33の一対の側面33e,33fのそれぞれに対向する一対の側面(第2側面部)42e,42fとを有する。
【0059】
回動部43は、隆起部33の軸受部33dに回動可能に装着される部分であり、蓋部42に対して一体化している。回動部43は、例えば軸受部33d上にて回転可能な軸形状を有する。回動部43の回動軸は、壁面33bが延在する方向D2に延在している。取手44は、開閉部41を開放する際に用いられる突出部であり、方向D3における他端側に設けられる。
【0060】
壁面33bは、方向D1から見た平面視において、本体部2の内側から本体部2の外縁である周壁11に向かって外縁側端部33baまで延在すると共に方向D1に直交する方向D3に交差している。ここでいう本体部2の内側とは、方向D1から見た平面視において、周壁11の内側の領域をいう。本実施形態では、壁面33bは、本体部2の内側から方向D2に沿って互いに反対方向の外縁側端部33ba,33baまで延在する。言い換えれば、壁面33bは、一方の外縁側端部33baから他方の外縁側端部33baにまで陥没部33cを除いて直線状に延在する。両方の外縁側端部33baは、本体部2の周壁11の一部である第1周壁部分11bの内周面11baに対して離間しているが、これに限られない。両方の外縁側端部33baは、第1周壁部分11bの内周面11baに対して接触してもよい。
【0061】
壁面33bと壁面42bとは、少なくとも壁面33bの外縁側端部33ba,33baにおいて、互いに対向する方向D3に隙間G1が設けられている。本実施形態の壁面33bと壁面42bとは、互いに対向する全区間において連続的に隙間G1が設けられている。ここでいう隙間G1とは、壁面33bと壁面42bとの間で界面張力が発生しない距離を有する隙間をいい、壁面33bおよび壁面42bを形成する材料、電解液Lとして補充される液体の種類等に応じて適宜算出される距離を有する隙間である。外縁側端部33baにおける壁面33bと壁面42bとの距離である隙間G1の大きさは、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)等の樹脂材料から形成される壁面33bとAS(アクリロニトリル-スチレン共重合体)等の樹脂材料から形成される壁面42bとの間に、例えば結露した水分等が介在したときに界面張力が発生しない程度の大きさ(サイズ)であり、例えば2mm~5mmである。
【0062】
側面33eと側面42eとは、互いに対向する方向D2に隙間G2が設けられている。本実施形態の側面33eと側面42eとは、互いに対向する全区間において連続的に隙間G2が設けられている。同様に、側面33fと側面42fとは、互いに対向する方向D2に隙間G2が設けられている。ここでいう隙間G2とは、側面33eと側面42eとの間及び側面33fと側面42fとの間で界面張力が発生しない距離を有する隙間をいい、側面33e,33fおよび側面42e,42fを形成する材料、電解液Lとして補充される液体の種類等に応じて適宜算出される距離を有する隙間である。本実施形態の側面33fと側面42fとは、互いに対向する全区間において連続的に隙間G2が設けられている。隙間G2の大きさは、ABS等の樹脂材料から形成される側面33eとAS等の樹脂材料から形成される側面42eとの間及び側面33fと側面42fとの間に、例えば結露した水分等が介在したときに界面張力が発生しない程度の大きさ(サイズ)であり、例えば2mm~5mmである。
【0063】
隆起部33の側面33e,33fのそれぞれの一部は、周壁11の一部である第1周壁部分11bの内周面11baに対して離間しているが、これに限られない。側面33e,33fのそれぞれの一部は、第1周壁部分11bの内周面11baに接触してもよい。蓋部42の側面42e,42fのそれぞれの一部は、周壁11の一部である第1周壁部分11bの外周面11bbに対して離間している。
【0064】
(フロート)
次に、
図13および
図14A,14Bを参照しながらカバー部3の構成について説明する。
図13は、フロートを示す図である。
図14Aは、弁座が開放状態を示す図であり、
図14Bは、弁座が閉鎖状態を示す図である。
図14A,14Bでは、カバー部3は省略されている。
図13および
図14A,14Bに示されるように、フロート4は、浮き部材51と、浮き部材51に接続される第1軸52と、本体部2の弁座15に対応する弁53と、弁53に接続される第2軸54と、第1軸52および第2軸54を接続する接続部55とを有する。補水栓1が蓄電池に装着されるとき、浮き部材51と、第1軸52の一部と、弁53と、第2軸54の一部とは蓄電池の内部もしくは本体部2の内部に位置し、一方、第1軸52の他部と、第2軸54の他部と、接続部55とは、本体部2の主面2a上であって蓄電池の外部に位置する。
【0065】
浮き部材51は、蓄電池に収容される電解液Lに浮く部材である。このため、浮き部材51は、蓄電池に収容される電解液Lの液面に連動する機能を示す。本実施形態では、浮き部材51が当該液面に連動するとき、フロート4の全体も連動する。浮き部材51の形状は特に限定されない。
【0066】
第1軸52は、本体部2に装着されるとき、方向D1に延在する部材であり、第1貫通孔18を挿通する。第1軸52は、開閉部41(
図2等を参照)を介して容易に視認可能になっている。このため、第1軸52の位置を確認することによって、蓄電池に対して液体の供給が必要か否かを容易に判断できる。
【0067】
弁53は、上述したように本体部2の内部空間14に収容される部材であり、弁座15の凹部15aに対して嵌合可能な形状を有する。弁53は、浮き部材51に連動して弁座15を開閉する。
図14Aに示されるように、蓄電池100に本体部2が装着され、且つ、電解液Lが十分に収容されていない場合、弁53は、凹部15aに対して離間しており、弁座15を開放している。一方で
図14Bに示されるように、蓄電池100に電解液Lが十分に収容されている場合、弁53は、凹部15aに対して嵌合しており、弁座15を閉鎖している。本実施形態では、弁53は略半球形状を有するが、これに限られない。
【0068】
第2軸54は、フロート4が本体部2に装着されるとき、方向D1に延在する部材であり、弁座15を挿通する。第2軸54は、第1軸52と異なり、カバー部3における隆起部33(
図3を参照)の内部に位置する。このため、第2軸54は、第1軸52よりも視認しにくい。第2軸54は、弁53と一体的に成形されているが、これに限定されない。
【0069】
接続部55は、浮き部材51の変位を弁53および第2軸54に伝達する部分である。接続部55を介して第1軸52と第2軸54とが接続されることによって、弁53が浮き部材51に連動する。接続部55は、第1軸52に一体化しており、第2軸54を把持する把持部55aを有するが、これに限られない。フロート4が本体部2に装着されるとき、接続部55の一部は、主面2a上にて壁部17の第1部分21と突出部12との隙間S1を通過する。当該一部は、蓄電池に電解液Lが十分に収容されている場合、隆起部33の陥没部33c(
図3を参照)に位置する。
【0070】
(作用効果)
以上に説明した本実施形態に係る補水栓1では、給水口13から弁室である内部空間14に供給された水等の液体は、開放状態である弁座15を介して本体部2の主面2aに到達する。そして、主面2aを流れる液体が流出口16に到達することによって、蓄電池内に液体が供給される。ここで、主面2aには本体部2から立設する壁部17が設けられており、弁座15および流出口16は、方向D3において壁部17の第1側面23よりも一方側に位置する。このため、弁座15から本体部2の主面2aに到達した後に壁部17の第1側面23まで到達した液体は、第1側面23を伝って流出口16に向かいやすくなる。よって、本体部2の主面2a上において意図した流路FL以外に液体が流れにくくなる。したがって、本実施形態に係る補水栓1を用いることによって、補水時の不具合を抑制可能になる。
【0071】
本実施形態では、本体部2は、主面2aに設けられると共に弁座15および流出口16に対して離間し、本体部2を貫通する第1貫通孔18と、方向D1から見て弁座15を介して流出口16の反対側に位置し、主面2aから立設する側壁12aおよび頂面12bを有する突出部12と、を有し、フロート4は、浮き部材51に接続すると共に方向D1に延在し、第1貫通孔18を挿通する第1軸52と、弁53に接続すると共に方向D1に延在し、弁座15を挿通する第2軸54と、第1軸52および第2軸54を接続する接続部55と、を有し、接続部55の一部は、主面2a上にて壁部17の第1部分21と突出部12との間に位置している。このため、フロート4の移動を壁部17および突出部12によって規制できるので、フロート4に含まれる浮き部材51および弁53の機能を良好に発揮できる。
【0072】
本実施形態では、壁部17は、主面2aを複数の領域に区画しており、複数の領域に含まれる第1領域AR1には、弁座15と、流出口16と、第1貫通孔18とが設けられる。このため、弁座15を介して主面2aの第1領域AR1に到達した液体は、壁部17によって第1領域AR1内に留められる。したがって、本体部2の主面2a上において意図した領域である第1領域AR1以外に水が流れることを良好に抑制できる。
【0073】
本実施形態では、本体部2は、複数の領域に含まれる第2領域AR2に設けられ、蓄電池の内部を点検する点検装置が挿通される第2貫通孔19を有し、壁部17において第1貫通孔18と第2貫通孔19との間に位置する第2部分22には、切欠き29が設けられる。このため、第1領域AR1から溢れた液体は、壁部17の切欠き29から溢れる傾向にある。切欠き29から第2領域AR2に溢れた液体は、第2貫通孔19を介して蓄電池内に流れる。このように壁部17の所定位置に切欠き29を設けることによって、意図した流路FL以外に流れた液体も、蓄電池内に供給できる。加えて本実施形態では、主面2aは、第2領域AR2内であって、切欠き29と第2貫通孔19との間に位置し、第2貫通孔19に向かって下がる傾斜部SF1を有する。このため、第2領域AR2に溢れた水は、傾斜部SF1を介して第2貫通孔19に到達しやすくなる。
【0074】
本実施形態では、壁部17は、方向D1から見て直線状に延在する第1側面23を有する第1部分21と、第1部分21および突出部12を一体化する第2部分22とを有し、第2部分22は、方向D1から見て方向D3における他方側に張り出している。このため、第1領域AR1の範囲を広げられるので、第1領域AR1から意図しない領域である第2領域AR2への液体の流出を抑制できる。
【0075】
本実施形態では、本体部2は、主面2aに設けられ、蓄電池の内部を点検する点検装置が挿通される第2貫通孔19を有し、第2貫通孔19は、方向D3において第1側面23よりも他方側に位置している。
【0076】
本実施形態では、壁部17は、方向D3において第1側面23の反対側に位置する第2側面24を有し、第2側面24は、第2貫通孔19に連続すると共に方向D3に延在する溝24aを有する。このため、点検装置を第2貫通孔19に容易に装着できる。
【0077】
本実施形態では、第1側面23は、方向D1において主面2a側に位置する第1端23cと、方向D1において第1端23cの反対側に位置する第2端23dとを有し、且つ、方向D1に対して傾斜する傾斜面であり、方向D1から見て、第1端23cは第2端23dよりも外側に位置している。このため、方向D3における壁部17の耐圧が向上するので、水圧による壁部17の破損を抑制できる。
【0078】
本実施形態では、本体部2は、主面2aの縁を囲うと共に立設する周壁11を有する。このため、主面2a上から補水栓1の外部への液体の流出を良好に抑制できる。
【0079】
本実施形態に係る補水栓1は、壁部17の頂面25,28に接して配置され、弁座15上に位置するカバー部3を備える。このため、弁座15から本体部2の主面2aへ到達する液体が補水栓1の外部へ流出することを良好に抑制できる。
【0080】
本発明の一側面に係る補水栓は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。上記実施形態では、カバー部は、主部および開閉部を有するが、これに限られない。例えば、カバー部は、主部のみによって構成されてもよい。
【0081】
上記実施形態では、本体部とカバー部とが別部材であるが、これに限られない。本体部は、カバー部の少なくとも一部に一体化してもよい。例えば、カバー部の主部は本体部と一体化している。この場合、本体部とカバー部とは一体成形されてもよい。例えば、本体部は、壁部と一体化しており、弁座上に位置するカバー部を有する。この場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0082】
上記実施形態では、壁部に切欠きが設けられるが、これに限られない。例えば、切欠きの代わりに、壁部に開口部が設けられてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。もしくは、壁部には切欠きと開口部との両方が設けられてもよい。
【0083】
上記実施形態では、本体部の主面は、壁部によって複数の領域に区画されているが、これに限られない。例えば、壁部は第1部分のみを有してもよい。この場合、本体部に設けられる壁部と突出部とは、互いに離間している。よって、主面において弁座、流出口、および第1貫通孔が位置する領域と、主面において第2貫通孔が位置する領域とは、互いにつながっている。この場合であっても、壁部の第1部分は上記実施形態と同様の作用を示すので、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0084】
1…補水栓、2…本体部、2a…主面、3…カバー部、4…フロート、5…第1構造体、6…第2構造体、11…周壁、11a…土台部分、11b…第1周壁部分、11c…第2周壁部分、11d…円筒部、11e…突起、12…突出部、12a…側壁、12b…頂面、13…給水口、14…内部空間(弁室)、15…弁座、16…流出口、17…壁部、18…第1貫通孔、19…第2貫通孔、21…第1部分、22…第2部分、23…第1側面、23c…第1端、23d…第2端、24…第2側面、24a…溝、25,28…頂面、29…切欠き、31…主部、32…底部、33…隆起部、33a…頂面、33b…壁面、33c…陥没部、33d…軸受部、41…開閉部、42…蓋部、43…回動部、44…取手、51…浮き部材、52…第1軸、53…弁、54…第2軸、55…接続部、100…蓄電池、AR1…第1領域、AR2…第2領域、FL…流路、L…電解液、S1…隙間、SF1,SF2…傾斜部。