(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コンタクタを閉じる方法及び温度補償付きコンタクタ
(51)【国際特許分類】
H01H 47/22 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01H47/22 C
H01H47/22 A
(21)【出願番号】P 2021558750
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020060022
(87)【国際公開番号】W WO2020208074
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】102019109176.4
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514122166
【氏名又は名称】シャルトバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】弁理士法人MM&A
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,ペーター
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159070(WO,A1)
【文献】特開昭60-180032(JP,A)
【文献】特開2004-186052(JP,A)
【文献】特開平11-315745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00 - 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチオン処理の間、電気スイッチ装置(1)の接点(5、6)を閉じる方法であって、
前記電気スイッチ装置(1)は、コイル(2)と、開位置及び閉位置の間を移動可能な可動部材(3)とを有する電気機械駆動装置を備え、
前記コイル(2)は、前記電気スイッチ装置(1)の前記接点(5、6)を閉じるために通電され、
最初に、第1期間T
1の間、第1電圧U
1が前記コイル(2)に印加されると共に、測定値が判定され、
さらに、前記第1電圧U
1よりも大きい適切な第2電圧U
2が前記測定値に従って設定され、前記第2電圧U
2が、第2期間T
2の間、前記コイル(2)に印加されて、前記可動部材(3)を前記開位置から前記閉位置に移動させる
ことを前提とし、
前記第1電圧U
1は、一定であり、
前記第1期間T
1は固定され、前記測定値は、前記第1期間T
1の最後において、前記コイル(2)に流れる電流を測定することにより判定された電流測定値I
Messであり、前記第1期間T
1及び前記第1電圧U
1は、前記第1期間T
1の間、前記可動部材(3)が動作しないように選択され、
前記第1期間T
1は、前記第1期間T
1全体の間、前記電流が増加すると共に、前記第1期間T
1の間、前記コイルには最終的な固定電流が現れないように選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
スイッチオン処理の間、電気スイッチ装置(1)の接点(5、6)を閉じる方法であって、
前記電気スイッチ装置(1)は、コイル(2)と、開位置及び閉位置の間を移動可能な可動部材(3)とを有する電気機械駆動装置を備え、
前記コイル(2)は、前記電気スイッチ装置(1)の前記接点(5、6)を閉じるために通電され、
最初に、第1期間T
1の間、第1電圧U
1が前記コイル(2)に印加されると共に、測定値が判定され、
さらに、前記第1電圧U
1よりも大きい適切な第2電圧U
2が前記測定値に従って設定され、前記第2電圧U
2が、第2期間T
2の間、前記コイル(2)に印加されて、前記可動部材(3)を前記開位置から前記閉位置に移動させる
ことを前提とし、
前記第1電圧U
1は、一定であり、
前記第1電圧U
1は、前記コイル(2)を流れる電流が所定の電流値I
Sollに到達するまで印加され、前記第1期間T
1は、前記所定の電流値I
Sollに到達するまでの期間であり、前記第1期間T
1は、前記測定値であり、前記第1電圧U
1
又は前記所定の電流値I
Soll
は、前記第1期間T
1の間、前記可動部材(3)が動作しないように選択され
る
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載に方法において、
前記第2期間T
2は、前記第1期間T
1の直後に設定される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2電圧U
2は、前記第2期間T
2の間、一定である
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2電圧U
2は、前記接点(5、6)が閉じている間、前記コイル(2)の温度から独立して、前記可動部材(3)が同じ速度に到達し続けるように、前記測定値に基づいて設定される
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2電圧U
2は、前記接点(5、6)が閉じている期間と同じ期間の間、前記コイル(2)の温度から独立して、前記可動部材(3)が前記閉位置に向かって移動し続けるように、前記測定値に基づいて設定される
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、
前記測定値に基づく前記第2電圧U
2の設定は、前記測定値に基づいて、メモリに記憶されたテーブルからデフォルト値を読み出すことによって、又は、前記デフォルト値を算出する演算仕様書を適用することによって行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2期間T
2は固定されている
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2期間T
2は、適用されたセンサメカニズム又は評価が、前記可動部材が前記閉位置にあると認識したときに終了する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
接点(5、6)と、前記接点(5、6)を閉じる電磁駆動装置とを有する電気スイッチ装置(1)であって、
前記電気機械駆動装置は、コイル(2)と、開位置と閉位置の間を移動可能な可動部材(3)とを有し、
前記電気スイッチ装置は、前記コイル(2)を流れる電流を測定する電流測定手段(12)をさらに備え、
前記電気スイッチ装置(1)は、制御ユニットを有する
ことを前提とし、
前記制御ユニットは、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように設計又は構成されている
ことを特徴とする電気スイッチ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気スイッチ装置(1)において、
前記制御ユニットは、マイクロコントローラ(11)を有し、前記マイクロコントローラ(11)には、取り得る範囲の測定値と、これに対応するデフォルト値とを有するテーブル、又は前記測定値により前記デフォルト値を演算する演算仕様書が記憶されている
ことを特徴とする電気スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチオン処理の間に電気スイッチ装置の接点を閉じる方法であって、独立請求項1の前提部に記載した方法に関する。電気スイッチ装置は、コイルと、開位置及び閉位置の間で移動可能な可動部材とを有する電気機械駆動装置を備え、コイルは、電気スイッチ装置の接点を閉じるために通電される。電気機械駆動装置の可動部材は、電気スイッチ装置の可動接点に接続される。また、本発明は、独立請求項10の前提部に記載した電気スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気スイッチ装置、特に高出力コンタクタは、多くの用途において高温変動にさらされることがある。このようなことが起こるのは、例えば、鉄道車両、電動車両又は屋外施設に使用される高出力コンタクタの場合である。また、電磁駆動装置のコイルは、作動時における自己発熱のみで非常に高温の変動にさらされることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鉄道用途において、温度範囲は、シベリアにおける約-40℃から砂漠地域における110℃に亘る。この際、コイルの電気抵抗は、1.8倍変化する。補正が行われない場合、スイッチ装置のピックアップ電流(接点が閉じられているときにコイルを流れる電流)及びスイッチング動作は、それに伴って変化する。寒冷地では、より低い抵抗のため、ピックアップは速くなり、これにより、閉状態における電気スイッチ装置の接点の跳ね返りが増大する可能性があり、その結果、基本的に、部品の機械的負荷の増加を招く。非常に高い温度では、接点は、十分に速く閉じられなくなり、フラッタリング及びアークによる損耗の増加が発生する可能性が生じる。
【0004】
従って、温度補償がない場合、駆動装置は、より堅牢にするためにより大きなものとして設計されなければならなくなる。これにより、スイッチ装置が、比較的重く且つ高価なものとなる。
【0005】
一方、温度補償を行う場合、温度範囲全体において均一なスイッチング動作又は均一なスイッチオン時間若しくはピックアップ時間を確保するために、低温時にはコイルにより低い電圧を印加しなければならないと共に、より高温時にはより高い電圧を印加しなければならない。このため、コイルで生じ得る温度又はそれに依存するコイル抵抗を検出しなければならない。この検出は、例えば、温度センサによって行うことができる。しかしながら、温度センサを追加すると、構造がより複雑になると共に、電気スイッチ装置の製造コストが増加する。
【0006】
一方、コイル温度を直接判定することなく、コイルインダクタンス及びコイル抵抗を測定する方法も既に存在している。そのような方法は、例えば、米国特許出願公開第2018/174786号により知られている。しかしながら、このような方法では、比較的大きな演算能力が必要となるため、高価なマイクロプロセッサの使用を要することとなる。
【0007】
従って、本発明の目的は、最初に述べた種類の方法において、ハードウェアの要求を抑えつつ(特に、温度センサ無しに)簡単な温度補償を許容すると共に、ピックアップ処理を過度に長くしない方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、独立請求項1の特徴部により実現される。
【0009】
従って、独立請求項1の前提部に記載した方法において、本発明に係る前記課題の解決手段は、最初に、第1期間T1の間、一定の第1電圧U1がコイルに印加され、測定値が判定される場合、
- 前記第1期間T1は固定され、前記測定値は、前記第1期間T1の最後において、前記コイルを流れる電流を測定することにより判定された電流値IMessであり、前記第1期間T1及び前記第1電圧U1は、前記第1期間T1の間、可動部材(アーマチュア(armature))が動作しないように選択され、又は、
- 前記第1電圧U1は、前記コイルを流れる電流が所定の電流値ISollに到達するまで印加され、前記第1期間T1は、前記所定の電流値ISollに到達するまでの期間であり、前記第1期間T1は、前記測定値であり、前記第1電圧U1は、前記第1期間T1の間、前記可動部材が動作しないように選択され、
判定された前記測定値に基づいて適切な第2電圧が設定され、前記第2電圧U2は、前記第1電圧U1よりも大きく、第2期間T2の間、前記コイルに印加されて、前記可動部材を開位置から閉位置に移動させる
ことを特徴とする。
【0010】
本発明のアイデアは、電圧を印加した際にコイルを通過する電流に関する以下の公知の等式に基づく(この電圧は、可動部材ができるだけ動かないように印加される。)。
【0011】
【0012】
U:コイルへの印加電圧
R:コイル抵抗(温度に依存する)
L:開始位置における可動部材に対するコイルのインダクタンス
【0013】
値L、I、U及びtが既知の場合、コイル抵抗Rは、これらに基づいて計算可能であり、また、温度に依存する。但し、コイル抵抗の実際の計算は、本発明において必要ではない。コイル抵抗に依存する(すなわち温度に依存する)測定値のみが判定される。
【0014】
第1期間T1が固定されている場合、この測定値は、第1期間T1の最後において現れる電流値IMessである。この電流測定値IMessに基づいて、可動部材をピックアップするために(すなわち、可動部材を開位置から閉位置に移動させて接点を閉じるために)コイルに最終的に印加される電圧U2が設定される。ある電流測定値IMessにおいて最適なピックアップ電圧U2は、例えば、実験により測定値を事前に特定しておき、スイッチ装置の制御ユニットのメモリに記憶しておくことにより判定可能である。
【0015】
第1期間T1は、第1期間の間、可動部材が動作しないように選択されなければならない。さもないと、可動部材の移動中に磁界において発生する可動部材の反応が、第1期間の最後における電流測定値を変化させてしまう可能性があると共に、上記式が適用できなくなってしまう。第1期間は、温度の上限値及び下限値における電流測定値の最後の値の相違(温度の影響によるコイル抵抗の変化による)が、十分大きな測定範囲で実現されるように十分長くなければならない。その際、コイル電流に関する測定装置の測定精度及び分解能が考慮されなければならない。第1期間T1の間にコイルに印加される第1電圧U1の値は、最も低い動作温度において、第1期間T1の間、コイルを流れる電流が、可動部材を移動させない値となるように選択されなければならない。
【0016】
一方、第1期間は、スイッチオン処理が必要以上に遅延することがないように短いことが好ましい。
【0017】
固定された第1期間T1における上述した測定値の判定の代わりとして、実現されるべき固定値の電流制限値ISollが設定されてもよい。この場合、温度に依存する(及びそれによりコイル抵抗に依存する)測定値は、電流制限値ISollになるまでの第1期間T1である。しかしながら、第1変形例と比較して、この第2変形例は、第1期間T1全体の間、コイル電流を測定しなければならないため、実現するために多少複雑となる。この第2変形例においても、最初に、所定の電流値ISollに到達するまで第1電圧U1が、一定で維持されなければならず、第2に、第1電圧U1又は到達すべき電流制限値ISollは、電流制限値ISollに到達するまで可動部材が動作しないように設定されなければならないないことが理解されよう。
【0018】
上記いずれの場合も、電流は、第1期間T1全体の間、増加する。このことは、第1期間T1は、コイルに現れる最終的な固定電流が得られる期間よりも長くないことを意味する。R=U/Iを用いれば、抵抗は容易に判定可能であるが、その判定のために必要な測定時間は、スイッチ装置の一般的なピックアップ処理全体よりも明らかに長くなることとなり、受け入れることができないであろう。従って、本発明に係る方法の大きなメリットは、ピックアップ処理が大幅には長くならないことである。
【0019】
本発明では、第1期間T1の間、一定の第1電圧U1がコイルに印加される。このことは、コイルを流れる電流の閉ループ制御は存在しなくてもよいことを意味する。第1期間T1全体の間、一定電圧がコイルに印加される。
【0020】
本発明では、複雑で高価なハードウェア無しに、単純な温度補償が可能となる。特に、本発明に係る方法を実行するために温度センサは必要ない。対応する電流測定手段のみが、コイルを流れる電流を測定するために必要となる。スイッチオン処理の後に電流を保持する閉ループ制御を備える電気スイッチ装置において、そのような電流測定手段は、どのみち存在する。本方法を実行するためには、小さくて安価なマイクロコントローラを用いることができる。
【0021】
本発明は、特に電気コンタクタに適している。
【0022】
本発明に係る方法の好適な実施形態は、従属請求項で規定された内容である。
【0023】
本発明の好適な実施形態によれば、第1期間T1は固定され、測定値は、第1期間T1の最後において、コイルを流れる電流を測定することにより判定された電流値IMessである。第1期間T1及び第1電圧U1は、第1期間T1の間、可動部材が動作しないように選択される。上述したように、この実施形態は、固定された電流制限値ISollを用いる変形例よりも実現が容易である。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態によれば、第2期間は、第1期間の直後に設定される。これにより、スイッチオン時間を短くすることが可能となる。第1期間T1が終了した後にコイルに印加されて可動部材を開位置から閉位置に移動させることで接点を閉状態にする第2電圧U2の判定又は設定において、コイル電流を示す電流値は、第1期間の最後において、第2期間T2の間のピックアップ段階の初期値に既に到達していることが、処理の中で考慮されなければならない。
【0025】
本発明の別の好適な実施形態によれば、第2電圧U2は、第2期間T2の間、一定である。これにより、本発明に係る方法を実質的に容易化する。しかしながら、理論上は、第2期間の間における電圧特性は、判定された測定値により設定されるパラメータに影響することが想定される。この実施形態における一定電圧は、第2期間の間におけるハルス幅変調の平均電圧としても理解される。
【0026】
本発明の別の実施形態において、第2電圧は、接点を閉じている間、コイルの温度から独立して、可動部材が同じ速度に到達し続けるように、測定値に基づいて設定される。温度に依存するある測定値において、このために必要なピックアップ電圧U2は、対応する連続的な測定値により実験的に判定することができる。この目的のため、スイッチ装置は、例えば加熱又は冷却されてもよい。その際に得られる第1期間T1の最後における電流測定値IMessと、第2期間T2の間、異なるピックアップ電圧におけるスイッチング動作とが測定される。
【0027】
別の実施形態において、第2電圧は、接点が閉じている期間と同じ期間の間、コイルの温度から独立して、可動部材が閉位置に向かって移動し続けるように、測定値に基づいて設定される。このことは、接点が閉じるまでの期間は、常に一定であることを意味する。この実施形態においても、必要とされるピックアップ電圧U2は、温度に依存するある測定値において実験的に判定することができる。
【0028】
本発明に係る方法の別の好適な実施形態によれば、第2電圧U2の設定は、メモリに記憶されたテーブルから、測定値に対応するデフォルト値を読み出すことにより実現される。これにより、スイッチオン処理の間、複雑な演算は不要となる。安価で単純なマイクロコントローラを制御に用いることができる。上記のテーブルは、制御用のマイクロコントローラのメモリに記憶されることが好ましい。テーブルには、例えば、ピックアップ電圧(第2電圧U2)用の具体的な値、又は制御に適した他のデフォルト値を記憶することができる。例えば、具体的な電圧値の代わりに、パルス幅変調のデフォルト値を記憶しておいてもよい。そして、電圧値U1、U2を実現するために、パルス幅変調により好適に調整する。供給電圧について起こり得る変動は、それに対応するパルス幅変調の変化により好適に補償される。本発明に係る方法では、動作時のコイルの抵抗及び/又は温度のための具体的な値を判定することは必要ない。測定値と、抵抗若しくは温度から得られるデフォルト値又は電圧値U2との相関のみが重要である。
【0029】
変形例として、デフォルト値を算出する近似関数を、具体的に判定されたデフォルト値から取得し、又は測定値に基づく第2電圧U2の値から取得し、テーブルの代わりに、演算仕様書のパラメータのみを、制御用のマイクロコントローラのメモリに転送するようにしてもよい。この構成は、より大きな演算パワーを必要とする一方で、ディスク容量をより小さくすることができる。この例示的な実施形態においても、供給電圧について起こり得る変動は、それに対応するパルス幅変調の変化により好適に補償される。
【0030】
ある測定値又は上述したデフォルト値に対応するピックアップ電圧U2用の値は、より大きな温度範囲用に設定されてもよい。そのような温度範囲は、例えば、0℃から50℃の温度範囲、より好適には、-20℃から80℃の温度範囲、さらに好適には、-40℃から110℃の温度範囲、さらに好適には、-60℃から130℃の温度範囲とすることができる。値は、テーブルに記憶され、テーブル自体又はそこから取得された演算仕様書が、マイクロコントローラのメモリに転送される。十分な温度補償のためには、例えば1℃毎の離散値、又はより大きな差分(例えば5℃毎)の離散値により値を判定することで十分である。しかしながら、本方法では具体的な温度は重要ではないため、テーブルに入力される値は、測定値である。従って、テーブル用には、一定の差分で示された測定値を好適に用いることができ、これは、温度の一定差分を反映しない。
【0031】
第2期間が経過すると、制御ユニットは、ホールドモードに移行してもよい。可動部材を閉位置で保持するための電力は、可動部材をピックアップさせるのに必要な電力よりも少ないため、出力を低減可能である。本発明に係る方法の別の実施形態では、第2期間T2を固定することで、本発明に係る方法を容易化する。或いは、第2期間T2は、可動部材が閉位置にあると、適用されたセンサメカニズム又は評価(evaluation)が認識したときに終了してもよい。本発明に係る方法のこの実施形態においても、制御ユニットは、その後にホールドモードに移行してもよい。
【0032】
さらに、本発明は、独立請求項10の前提部に記載した電気スイッチ装置を提供する。この電気スイッチ装置の制御ユニットは、本発明に係る方法を実行するように設計又は構成される。
【0033】
前記電気スイッチ装置の好適な実施形態において、制御ユニットは、マイクロコントローラを有し、前記マイクロコントローラには、取り得る範囲の測定値と、これに対応するデフォルト値とを有するテーブルが記憶される。或いは、別の変形例において、テーブルには、測定値によりデフォルト値を演算する演算仕様書が記憶される。
【0034】
本発明のさらなる詳細は、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンタクタの概略的な構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る
図1のコンタクタの配線図である。
【
図3】本発明に係るコンタクタのコイルの電流特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の例において、同一の部品には、同一の参照符号が付される。図面に示される参照符号が、当該図面との関係で明示的に説明されない場合、当該参照符号に対応するものの説明は、その前又はその後になされる。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンタクタ1の概略的な構成を示す。コンタクタ1は、断面のみが図示されている筐体10と、二重ギャップの接触点(double-gap contact point)とを有する。前記接触点は、2つの固定接点5と、可動コンタクトブリッジ6とからなる。コンタクトブリッジ6は、複数の接触押圧ばね7を介して接点支持部材9に設けられる。接点支持部材9は、スイッチロッド4を介して、コンタクタ1の電磁駆動装置の可動部材3に接続される。電磁駆動装置の可動部材3及びヨーク8は、電磁駆動装置のコイル2により少なくとも部分的に覆われる。十分な電圧を印加してコイル2を通電している間、ヨーク8と可動部材3の間で動作する復帰ばね13の力に抗して可動部材3が引き付けられることで、接点が閉じられる。
【0038】
図2は、本発明に係る
図1のコンタクタの配線図である。電流測定手段12は、動作中にコイル2を流れる電流を測定する。部品15は、変動にさらされ得る供給電圧U
Versを測定する電圧測定装置である。電流測定手段12及び電圧測定手段15の測定値は、マイクロコントローラ11に供給され、マイクロコントローラ11は、2つの測定値を処理してサーキットブレーカー17の制御信号を生成し、サーキットブレーカー17を介してコイル2を作動させる。電圧供給源16は、マイクロコントローラ11及び2つの測定手段12、15用であると共に、サーキットブレーカー17を作動させる駆動装置用にも用いることができる。また、電圧供給源16は、供給電圧U
Versに接続されている。また、コイル2には、フリーホイールダイオード18が配置されている。
【0039】
供給電圧スイッチ14を介して供給電圧をオンにする。
【0040】
図3は、時間tの間、コイル2に流れる電流の特性を示している。スイッチオン処理は、2つの段階に分割される。第1期間T
1における第1段階では、一定の第1電圧U
1がコイル2に印加される。ここで提示される例示的な実施形態では、第1期間T
1は固定され、第1期間T
1の最後において、その際のコイル2の電流値I
Messが測定される。ここで、第1電圧U
1及び第1期間T
1は、第1期間T
1の間、可動部材が動作しないように選択される。
【0041】
コイルの温度に依存する測定電流値IMessに基づいて、適切な第2電圧U2が設定される。第2電圧U2は、第1電圧U1よりも大きく、第1期間T1の直後における第2期間T2の間、コイル2に印加される。これにより、可動部材3を開位置から閉位置に移動させて、接点を閉じる。従って、第2期間T2は、スイッチオン処理の第2段階を示す。ある電流測定値IMessに対応する第2電圧U2が、例えば、マイクロコントローラに記憶されたテーブルから読み出される。
【0042】
スイッチオン処理が完了すると、コンタクタの制御ユニットは、ホールドモードに移行する。ホールドモードは、第3期間T3の間、維持される。
【符号の説明】
【0043】
1 電気スイッチ装置
2 コイル
3 可動部材
4 スイッチロッド
5 固定接点
6 コンタクトブリッジ
7 接触押圧ばね
8 ヨーク
9 接点支持部材
10 筐体
11 マイクロコントローラ
12 電流測定手段
13 復帰ばね
14 供給電圧スイッチ
15 電圧測定手段
16 電源
17 サーキットブレーカー
18 フリーホイールダイオード
t 時間
T1 第1期間
T2 第2期間
T3 第3期間
UVers 供給電圧
U1 第1電圧
U2 第2電圧
I 電流
IMess 電流測定値
ISoll 所定電流値
R コイル抵抗