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特許7436503ナフサ範囲材料を改良するための固体分離装置を組み込んだ段階的流動接触分解プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ナフサ範囲材料を改良するための固体分離装置を組み込んだ段階的流動接触分解プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20240214BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C10G11/18
B01J8/24 301
B01J8/24 311
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021559239
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 US2020026332
(87)【国際公開番号】W WO2020206081
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】62/828,836
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516148335
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】トムスラ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リァン
(72)【発明者】
【氏名】ローゾス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マリ, ラーマ ラオ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528037(JP,A)
【文献】特開平03-197591(JP,A)
【文献】特表2014-510817(JP,A)
【文献】国際公開第2018/053110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を変換するためのプロセスであって、
移動床反応器からエフルエントを分離する工程であって、前記エフルエントは反応器出口温度であり、且つ反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含み、前記第1の粒子状触媒は、前記第2の粒子状触媒よりも平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低く、前記反応生成物及び前記第1の粒子状触媒を含む第1のストリームと前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを回収する工程;
同伴炭化水素を混合触媒からストリッピングする工程、及びストリッピング済み粒子状触媒を触媒再生器へ供給する工程;
前記触媒再生器内で、第1及び第2の粒子状触媒を再生し、再生済み触媒ストリームを生成する工程;
前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームを再生済み触媒ストリームと混和する工程であって、前記再生済み触媒ストリームは、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を昇温後温度で含み、前記混和によって、前記昇温後温度と前記反応器出口温度との中間にある第1の中間温度で混合触媒を生成する工程;
前記移動床反応器内で、前記混合触媒を軽質ナフサフィードストックと接触させて、その中にある炭化水素を吸熱反応させる工程であって、該吸熱反応により、前記混合触媒の温度を第2の中間温度まで低下させる工程;
前記移動床反応器内で、前記第2の中間温度である前記混合触媒を重質ナフサフィードストックと接触させて、その中にある炭化水素を反応させる工程;及び
前記移動床反応器から、前記反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含むエフルエントを回収する工程、
を有するプロセス。
【請求項2】
前記移動床反応器は垂直反応器であり、前記軽質ナフサフィードストックは、前記重質ナフサフィードストックよりも低い高度で前記反応器へ投入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記昇温後温度は約1300°F~約1500°Fの範囲の温度であり、
前記第1の中間温度は約900°F~約1200°Fの範囲であり、
前記第2の中間温度は約800°F~約1150°Fの範囲であり、
前記反応器エフルエント温度は約700°F~約1150°Fの範囲である、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記混和は、前記移動床反応器内において、前記軽質ナフサフィードストックを投入する高度よりも低い高度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記混和は、前記移動床反応器の外部で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
化学反応を実施するためのシステムであって、
反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含む反応器エフルエントを分離するよう構成され、前記第1の粒子状触媒は、前記第2の粒子状触媒よりも平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低く、前記反応生成物及び前記第1の粒子状触媒を含む第1のストリームと前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを回収するよう構成されたセパレータ;
前記セパレータで回収された前記第1及び第2の粒子状触媒を再生し、触媒ストリームを生成するよう構成された触媒再生器;
前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームを触媒ストリームと密に接触させるよう構成され、前記触媒ストリームは、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を昇温後温度で含み、前記密な接触によって、前記昇温後温度と前記反応器出口温度との中間にある均一温度で混合触媒を生成する混合装置;
前記混合触媒を、軽質ナフサを含む第1の反応物質と中間温度で接触させることで、前記混合触媒の温度を第2の中間温度まで低下させるよう構成され、且つ前記第2の中間温度である前記混合触媒を、重質炭化水素を含む第2の反応物質と接触させるよう構成された移動床反応器;及び
前記移動床反応器から前記反応器エフルエントを回収するよう構成されたフローストリーム、
を有するシステム。
【請求項7】
前記混合装置は、
前記セパレータからの前記第2のストリームを受け入れる第1の入口;
触媒再生器からの前記触媒ストリームを受け入れる第2の入口;及び
前記混合触媒を前記移動床反応器へ供給する出口、
を備えたスタンドパイプを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記混合装置は、
前記移動床反応器の下部に配置された第1の触媒分配器であって、前記セパレータからの前記第2のストリームを収容し、且つ前記第2のストリームに含まれる前記第2の触媒を前記移動床反応器へ分散させるよう構成された触媒分配器;及び
前記第1の触媒分配器と隣接して配置された第2の触媒分配器であって、前記触媒再生器からの前記触媒ストリームを収容し、且つ前記触媒ストリームに含まれる前記第1及び第2の触媒を、前記移動床反応器へ分散させると共に前記第1の触媒分配器からの前記第2の触媒と接触させるよう構成された触媒分配器、
を有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1及び第2の触媒分配器より下に配置され、且つ前記触媒同士を流動化させ且つ密に混合して均一な中間温度としてから、前記第1の反応物質と接触させるよう構成されたガス分配器を更に有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記移動床反応器の内部且つ前記第1の反応物質を供給する高度より低い位置に配置されており、前記触媒同士の接触を促進して均一な中間温度としてから、前記第1の反応物質と接触させる構造を更に有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
炭化水素を変換するためのプロセスであって、
第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含む触媒ストリームを反応器へ供給する工程であって、前記第1の粒子状触媒は、前記第2の粒子状触媒よりも平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低い工程;
軽質ナフサフィードストック及び重質ナフサフィードストックを前記反応器へ供給する工程であって、前記軽質ナフサフィードストックは、前記重質ナフサフィードストックよりも低い高度で前記反応器へ投入される工程;
前記軽質及び重質ナフサフィードストックを前記第1及び第2の粒子状触媒と接触させて、その中に含有される炭化水素を反応させる工程;
前記反応器から、変換済み炭化水素エフルエント、前記第2の粒子状触媒、及び前記第1の粒子状触媒を含む塔頂生成物を回収する工程;
前記塔頂生成物から前記第2の粒子状触媒を分離して、前記第1の粒子状触媒及び前記変換済み炭化水素エフルエントを含む第1のストリームと、分離された前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを得る工程;
前記第2のストリーム中にある分離された前記第2の粒子状触媒を前記反応器に返送する工程;及び
前記触媒ストリームと前記第2のストリームとを混和させて、約900°F~約1250°Fの範囲の均一な温度を有する混合触媒ストリームを得る工程を有し、
前記触媒ストリームは約1300°F~約1500°Fの範囲の温度であり、
前記軽質ナフサフィードストックの接触は約900°F~約1250°Fの範囲の温度であり、
前記重質ナフサフィードストックの接触は約850°F~約1200°Fの範囲の温度であり、
前記塔頂生成物ストリームは約700°F~約1150°Fの範囲の温度である、プロセス。
【請求項12】
前記反応器から、前記第2の粒子状触媒を含む塔底生成物を回収する工程を更に有する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
炭化水素フィードストックと、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の混合物とを第2の反応器へ供給する工程;
前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物を前記炭化水素フィードストックと接触させて、前記炭化水素フィードストックを分解し、より軽質な炭化水素と第1及び第2の粒子状触媒の混合物とを含む第2の反応器エフルエントを形成する工程;
前記第1のストリーム及び前記第2の反応器エフルエントの両方をセパレータへ供給する工程;及び
前記第1及び第2の粒子状触媒を、前記より軽質な炭化水素及び前記変換済み炭化水素エフルエントから分離して、炭化水素生成物を回収すると共に、同伴炭化水素を含む混合触媒を形成する工程、
を更に有する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第2の反応器はライザー反応器である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記同伴炭化水素を前記混合触媒からストリッピングする工程、及びストリッピング済み粒子状触媒を触媒再生器へ供給する工程を更に有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒再生器内で、前記第1及び第2の粒子状触媒を再生する工程を更に有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記反応器へ供給された前記触媒ストリームは、前記触媒再生器からの第1及び第2の再生済み粒子状触媒を含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
新しい第2の粒子状触媒を前記反応器へ供給する工程;及び
新しい第1の粒子状触媒を前記触媒再生器へ供給する工程、
を更に有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第2の反応器へ供給した前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物として、前記再生器からの第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の混合物を前記第2の反応器へ供給する工程を更に有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項20】
前記第2の粒子状触媒はZSM-5又はZSM-11を含み、前記第1の粒子状触媒はY型分解触媒又はFCC分解触媒を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項21】
前記炭化水素生成物を、軽質ナフサ留分及び重質ナフサ留分を含む2種以上の炭化水素留分に分離する工程;及び
前記軽質ナフサ留分及び前記重質ナフサ留分を前記反応器へ供給する工程、
を更に有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項22】
炭化水素を分解するためのシステムであって、
第1の昇温後温度で第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含んでいる触媒混合物を収容するよう構成され、
より低い第2の温度で第2の粒子状触媒を含んでいる触媒ストリームを収容するよう構成され、且つ
前記触媒混合物及び前記触媒ストリーム中の触媒を混和して、均一な中間温度を有する混合触媒を得るよう構成された、混合ゾーン;
前記均一な中間温度を有する混合触媒を軽質ナフサフィードと接触させて、第2の中間温度で炭化水素/触媒混合物を得るよう構成され、且つ
第2の中間温度で前記炭化水素/触媒混合物を軽質ナフサフィードと接触させて、第1の粒子状触媒、第2の粒子状触媒、及び炭化水素を含む反応器エフルエントを生成するよう構成された、反応ゾーン;
前記反応器エフルエントから第2の粒子状触媒を分離して、炭化水素及び前記第1の粒子を含む炭化水素エフルエントストリームと、第2の粒子状触媒を含む前記触媒ストリームとを回収する粒子セパレータ;及び
分離済みの第2の粒子を前記粒子セパレータから前記混合ゾーンへ返送する供給ライン、
を有するシステム。
【請求項23】
前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物を第2の炭化水素フィードストックと接触させて、前記第2の炭化水素フィードストックの少なくとも一部をより軽質な炭化水素に変換し、且つ前記より軽質な炭化水素と、前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物とを含むライザー反応器エフルエントを回収するためのライザー反応器;
前記炭化水素エフルエントストリーム及び前記ライザー反応器エフルエントストリームを受け入れる分離システムであって、その中に含まれる炭化水素を前記第1及び第2の粒子状触媒と分離する分離システム;及び
前記分離システム中で回収された第1及び第2の粒子状触媒を再生するための再生器、
を更に有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記分離システムと前記再生器との中間に配置され、前記分離済み粒子状触媒から追加の炭化水素をストリッピングし且つ該ストリッピング済み粒子状触媒を前記再生器へ供給するためのストリッパを更に有する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記分離システムから回収した炭化水素生成物ストリームを、前記軽質ナフサ留分及び重質ナフサ留分を含む2種以上の炭化水素留分に分離するための第2の分離システムを更に有する、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
新しい第2の粒子状触媒を前記反応器へ供給するための第1の供給ライン、及び
新しい第1の粒子状触媒を前記再生器へ供給するための第2の供給ライン、
を更に有する、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中の実施形態は、概して、混合触媒系を用いて炭化水素を変換するためのシステム及びプロセスに関する。より具体的には、本明細書中の実施形態は、有利な作用条件において軽質ナフサと重質ナフサとを接触させつつ、反応器中でナフサ変換触媒の濃度を向上させることを目的としている。
【背景技術】
【0002】
近年、流動接触分解(FCC)プロセスによる軽質オレフィンの生成が最も魅力的な案の一つとして検討されてきた。加えて、プロピレン、エチレン、及び芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン等)といった石油化学系ビルディングブロックへの需要が高まり続けている。更に、石油精製所を石油化学コンビナートと統合することが、経済的理由及び環境的理由の両方で好ましい選択肢となっている。
【0003】
また、世界的な動向から、ガソリン生成物よりも中間留分(ディーゼル)の需要が高まっていることが分かる。FCCプロセスからの中間留分を最大化するためには、FCCをより低い反応器温度及び異なる触媒組成で稼働させる必要がある。このような変化の不利な面としては、FCCユニットが大幅に低い反応器温度で稼働するために軽質オレフィンの収率が低下してしまうことが挙げられる。この場合、アルキル化ユニット用のフィードストックも減少してしまう。
【0004】
過去20年間にわたり、変化する市場の需要に合わせて、いくつかの流動床接触プロセスが開発されてきた。例えば、特許文献1には、ライザー反応器を半径が異なる2つのセクションに分割することで、軽質オレフィン生成の選択性が向上している流動接触反応器システムが開示されている。上記ライザー反応器のうち半径が小さい第1の部分は、重質フィード分子をナフサ範囲に分解するのに採用されている。ライザー反応器のうち半径が大きい第2の部分は、ナフサ範囲生成物を、プロピレン、エチレン等の軽質オレフィンへ更に分解するのに使用されている。上記反応器システムの概念はかなり単純であるが、以下の理由、すなわち、(1)ナフサ範囲フィードストリームが、部分的にコークス化又は不活化した触媒と接触すること、(2)両セクションにおける反応が吸熱性であるため、反応セクションの第2部分における温度が第1ゾーンよりもかなり低いこと、及び(3)軽質フィードの分解には重質炭化水素と比較して高い活性化エネルギーが必要だが、それが不足してしまうことから、軽質オレフィンに対する選択性の度合いは限定的なものである。
【0005】
炭化水素を分解するシステムとしては他にも様々なものが開発されており、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、及び特許文献11に記載のもの等が挙げられる。
【0006】
特許文献12には、軽質オレフィン、又は中間留分及び軽質オレフィンを最大化するプロセスが開示されている。このシステムは、2つの反応器を用いたスキームによる炭化水素の分解を含み、従来のライザー反応器を向流バブリング/乱流流動床反応器と組み合わせて、分解触媒混合物を分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7479218号明細書
【文献】米国特許第6106697号明細書
【文献】米国特許第7128827号明細書
【文献】米国特許第7658837号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0205139号明細書
【文献】国際公開第2010/067379号
【文献】米国特許第6869521号明細書
【文献】米国特許第7611622号明細書
【文献】米国特許第5944982号明細書
【文献】米国特許出願公開第20060231461号明細書
【文献】米国特許第7323099号明細書
【文献】米国特許第9452404号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本明細書中に開示した実施形態は、炭化水素を変換するためのプロセスに関する。本プロセスは、移動床反応器からエフルエントを分離する工程を有していてもよく、前記エフルエントは反応器出口温度であり、且つ反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含む。前記第1の粒子状触媒は、前記第2の粒子状触媒よりも平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低くてもよい。前記反応生成物及び前記第1の粒子状触媒を含む第1のストリームと前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを回収してもよい。前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームを再生済み触媒ストリームと混和してもよく、前記再生済み触媒ストリームは、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の両方を昇温後温度で含んでいてもよい。前記混和によって、前記昇温後温度と前記反応器出口温度との中間にある温度で混合触媒を生成してもよい。前記移動床反応器内で、前記混合触媒を軽質ナフサフィードストックと接触させて、その中にある炭化水素を反応させてもよく、該吸熱反応により、前記混合触媒の温度を第2の中間温度まで低下させてもよい。次いで、前記移動床反応器内で、前記第2の中間温度である前記混合触媒を重質ナフサフィードストックと接触させて、その中にある炭化水素を反応させてもよい。前記移動床反応器から回収したものは、前記反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含むエフルエントであってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記移動床反応器は垂直反応器であってもよく、前記軽質ナフサフィードストックは、前記重質ナフサフィードストックよりも低い高度で前記反応器へ投入されてもよい。いくつかの実施形態において、上記再生済み触媒ストリームの昇温後温度は、例えば、約1300°F~約1500°Fの範囲であってもよい。前記第1の中間温度は約900°F~約1200°Fの範囲であってもよい。前記第2の中間温度は約800°F~約1150°Fの範囲であってもよい。前記反応器エフルエント温度は約700°F~約1150°Fの範囲であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記触媒ストリームの混和は、前記移動床反応器内において、前記軽質ナフサフィードストックを投入する高度よりも低い高度で実施してもよい。他の実施形態において、前記混和は、前記移動床反応器の外部で実施してもよい。
【0011】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、化学反応を実施するためのシステムに関する。本システムは、反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含む反応器エフルエントを分離するよう構成されたセパレータを有していてもよい。前記第1の粒子状触媒は、前記第2の粒子状触媒よりも平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低くてもよい。前記セパレータからは、前記反応生成物及び前記第1の粒子状触媒を含む第1のストリームと前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを回収してもよい。混合装置を備えていてもよく、該混合装置は、前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームを触媒ストリームと密に接触させるよう構成されていてもよく、前記触媒ストリームは、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を昇温後温度で含んでいてもよい。前記密な接触によって、前記昇温後温度と前記反応器出口温度との中間にある均一温度で混合触媒を生成してもよい。上記システムは、前記混合触媒を第1の反応物質と中間温度で接触させることで、前記混合触媒の温度を第2の中間温度まで低下させるよう構成され、且つ前記第2の中間温度である前記混合触媒を第2の反応物質と接触させるよう構成された移動床反応器を有していてもよい。前記移動床反応器から前記反応器エフルエントを回収するよう構成されたフローラインを備えていてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記混合装置は、前記セパレータからの前記第2のストリームを受け入れる第1の入口;触媒再生器からの前記触媒ストリームを受け入れる第2の入口;及び前記混合触媒を前記移動床反応器へ供給する出口、を備えたスタンドパイプを有していてもよい。他の実施形態において、前記混合装置は、前記移動床反応器の下部に配置された第1の触媒分配器であって、前記セパレータからの前記第2のストリームを収容し、且つ前記第2のストリームに含まれる前記第2の触媒を前記移動床反応器へ分散させるよう構成された触媒分配器;及び前記第1の触媒分配器と隣接して配置された第2の触媒分配器であって、前記触媒再生器からの前記触媒ストリームを収容し、且つ前記触媒ストリームに含まれる前記第1及び第2の触媒を、前記移動床反応器へ分散させると共に前記第1の触媒分配器からの前記第2の触媒と接触させるよう構成された触媒分配器、を有していてもよい。
【0013】
上記システムは、前記第1及び第2の触媒分配器より下に配置され、且つ前記触媒同士を流動化させ且つ密に混合して均一な中間温度としてから、前記第1の反応物質と接触させるよう構成されたガス分配器を更に有していてもよい。また、いくつかの実施形態において、上記システムは、前記移動床反応器の内部且つ前記第1の反応物質を供給する高度より低い位置に配置されており、前記触媒同士の接触を促進して均一な中間温度としてから、前記第1の反応物質と接触させる構造を更に有していてもよい。
【0014】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、炭化水素を変換するためのプロセスに関する。本プロセスは、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含む触媒ストリームを反応器へ供給する工程を有していてもよい。前記第1の粒子状触媒は、前記第2の粒子状触媒よりも平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低くてもよい。また、上記プロセスは、軽質ナフサフィードストック及び重質ナフサフィードストックを前記反応器へ供給する工程であって、前記軽質ナフサフィードストックは、前記重質ナフサフィードストックよりも低い高度で前記反応器へ投入される工程を有していてもよい。次いで、前記軽質及び重質ナフサフィードストックを前記第1及び第2の粒子状触媒と接触させて、その中に含有される炭化水素を反応させ、上記反応器から塔頂生成物を回収してもよい。上記塔頂生成物は、変換済み炭化水素エフルエント、前記第2の粒子状触媒、及び前記第1の粒子状触媒を含んでいてもよい。次いで、前記塔頂生成物から前記第2の粒子状触媒を分離して、前記第1の粒子状触媒及び前記変換済み炭化水素エフルエントを含む第1のストリームと、分離された前記第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを得てもよい。前記第2のストリーム中にある分離された前記第2の粒子状触媒を前記反応器に返送してもよい。いくつかの実施形態において、前記反応器から塔底生成物を回収してもよく、該塔底生成物は、前記第2の粒子状触媒を含んでいてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、炭化水素フィードストックと、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の混合物とを第2の反応器へ供給する工程を更に有していてもよい。前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物は、上記第2の反応器内にある前記炭化水素フィードストックと接触させて、前記炭化水素フィードストックを分解し、より軽質な炭化水素と第1及び第2の粒子状触媒の混合物とを含む第2の反応器エフルエントを形成してもよい。次いで、前記第1のストリーム及び前記第2の反応器エフルエントの両方をセパレータへ供給してもよく、該セパレータは、前記第1及び第2の粒子状触媒を、前記より軽質な炭化水素及び前記変換済み炭化水素エフルエントから分離して、炭化水素生成物を回収すると共に、同伴炭化水素を含む混合触媒を形成してもよい。いくつかの実施形態において、例えば、上記第2の反応器はライザー反応器であってもよい。
【0016】
前記同伴炭化水素を前記混合触媒からストリッピングしてもよく、ストリッピング済み粒子状触媒を触媒再生器へ供給してもよく、これを用いて前記第1及び第2の粒子状触媒を再生してもよい。前記反応器へ供給された前記触媒ストリームは、例えば、前記再生器からの第1及び第2の再生済み粒子状触媒を含んでいてもよい。また、上記プロセスは、新しい第2の粒子状触媒を前記反応器へ供給する工程;及び/又は新しい第1の粒子状触媒を前記再生器へ供給する工程の1つ以上を有していてもよい。
【0017】
上記プロセスは、前記第2の反応器へ供給した前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物として、前記再生器からの第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の混合物を前記第2の反応器へ供給する工程を更に有していてもよい。いくつかの実施形態において、前記第2の粒子状触媒はZSM-5又はZSM-11であってもよく、前記第1の粒子状触媒はY型分解触媒又はFCC分解触媒であってもよい。
【0018】
上記プロセスは、前記炭化水素生成物を、軽質ナフサ留分及び重質ナフサ留分を含む2種以上の炭化水素留分に分離する工程を有していてもよい。前記軽質ナフサ留分及び前記重質ナフサ留分を前記反応器へ供給してもよい。
【0019】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、炭化水素を分解するためのシステムに関する。本システムは、第1の昇温後温度で第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含んでいる触媒混合物を収容するよう構成され、より低い第2の温度で第2の粒子状触媒を含んでいる触媒ストリームを収容するよう構成され、且つ前記触媒混合物及び前記触媒ストリーム中の触媒を混和して、均一な中間温度を有する混合触媒を得るよう構成された、混合ゾーンを有していてもよい。反応ゾーンを備えていてもよく、該反応ゾーンは、前記均一な中間温度を有する混合触媒を軽質ナフサフィードと接触させて、第2の中間温度で炭化水素/触媒混合物を得るよう構成され、且つ第2の中間温度で前記炭化水素/触媒混合物を軽質ナフサフィードと接触させて、第1の粒子状触媒、第2の粒子状触媒、及び炭化水素を含む反応器エフルエントを生成するよう構成されていてもよい。また、上記システムは、前記反応器エフルエントから第2の粒子状触媒を分離して、炭化水素及び前記第1の粒子を含む炭化水素エフルエントストリームと、第2の粒子状触媒を含む前記触媒ストリームとを回収する粒子セパレータを有していてもよい。分離済みの第2の粒子を前記粒子セパレータから前記混合ゾーンへ返送する供給ラインを備えていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記システムは、前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物を第2の炭化水素フィードストックと接触させて、前記第2の炭化水素フィードストックの少なくとも一部をより軽質な炭化水素に変換し、且つ前記より軽質な炭化水素と、前記第1及び第2の粒子状触媒の混合物とを含むライザー反応器エフルエントを回収するためのライザー反応器を有していてもよい。分離システムが、前記炭化水素エフルエントストリーム及び前記ライザー反応器エフルエントストリームを収容してもよく、該分離システムは、その中に含まれる炭化水素を前記第1及び第2の粒子状触媒と分離するよう構成されていてもよい。前記分離システム中で回収された第1及び第2の粒子状触媒を再生するための再生器を備えていてもよい。
【0021】
また、上記システムは、前記分離システムと前記再生器との中間に配置され、前記分離済み粒子状触媒から追加の炭化水素をストリッピングし且つ該ストリッピング済み粒子状触媒を前記再生器へ供給するためのストリッパを更に有していてもよい。また、前記第2のセパレータから回収した炭化水素生成物ストリームを、前記軽質ナフサ留分及び重質ナフサ留分を含む2種以上の炭化水素留分に分離するための第2の分離システムを備えていてもよい。新しい第2の粒子状触媒を前記反応器へ供給するための第1の供給ラインを備えていてもよく、新しい第1の粒子状触媒を前記再生器へ供給するための第2の供給ラインを備えていてもよい。
【0022】
以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、他の態様及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1A図1Cは、本明細書中の実施形態に係る反応器システムを単純化したフロー図である。
図2】本明細書中の実施形態に係る反応器システムにおいて有用なセパレータを表す。
図3】本明細書中の実施形態に係る反応器システムにおいて有用なセパレータを表す。
図4】本明細書中の実施形態に係る反応器システムにおいて有用なセパレータを表す。
図5】本明細書中の実施形態に係る反応器システムにおいて有用なセパレータを表す。
図6】本明細書中の実施形態に係るプロセスを単純化したフロー図である。
図7】本明細書中の実施形態に係るプロセスを単純化したフロー図である。
図8】本明細書中の実施形態に係るプロセスを単純化したフロー図である。
図9】本明細書中の実施形態に係る反応器システムで得られる有利な反応条件を表すデータを示す。
図10】本明細書中の実施形態に係る反応器システムで得られる有利な反応条件を表すデータを示す。
図11】本明細書中の実施形態に係る反応器システムで得られる有利な反応条件を表すデータを示す。
図12】本明細書中の実施形態に係る反応器システムで得られる有利な反応条件を表すデータを示す。
図13】本明細書中の実施形態に係る反応器システムを従来のシステムと比較したデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中、「触媒」、「粒子」、「粒子状触媒」等の用語は、それぞれ交換可能に使用できる。上で要約した通り、また以下で更に説明する通り、本明細書中の実施形態を用いて、大きさ及び/又は密度に基づいて粒子状の混合触媒材料を分離させることで、ナフサ変換システムにおいて有利な効果を達成できる。触媒反応又は熱反応を促進するのに使用される粒子又は粒子状材料としては、例えば、触媒、吸収剤、及び/又は触媒活性を持たない伝熱材料が挙げられる。
【0025】
一態様において、本明細書中の実施形態は、ナフサ範囲炭化水素を変換するための流動接触分解装置及びプロセスに関する。本明細書中の実施形態は、より高く、より好ましい分解温度で、より軽質なナフサ留分を変換した後、より低く、より選択的な温度で、より重質なナフサ留分を変換できる点で有利である。従って、より好ましい又は最適な条件で各ナフサ留分を接触させ且つ変換することで、より選択的に分解でき、且つ水素、メタン、及びエタン等の軽質炭化水素(「ガス」)生成物の生成を低減できる。
【0026】
本明細書中のいくつかの実施形態で使用される通り、ナフサ範囲材料は「軽質」及び「重質」のものを指す一方、他の実施形態では、使用した処理及び「分離(split)」に応じて、「軽質」、「中質(medium)」、及び「重質」のものを指し得る。このような種類のフィードは、例えば、典型的には約C~215℃(420°F)の沸点範囲を有するフルレンジ・ナフサに由来していてもよく、いくつかの実施形態においては、480°F、500°F、更には520°Fまでで沸騰する成分や、この範囲で沸騰する炭化水素を含む他の炭化水素混合物等が挙げられる。
【0027】
本明細書中の実施形態で使用される軽質ナフサ留分は、いくつかの実施形態においては約C又はC~165℃(330°F)、他の実施形態においては約C又はC~約280°F、更に他の実施形態においては約C又はC~約250°Fの沸点範囲を有していてもよい。他の実施形態において、軽質ナフサ留分は、沸点範囲の終点が約49℃(120°F)~約88℃(190°F)であってもよい。
【0028】
本明細書中の実施形態で使用される重質ナフサ留分は、いくつかの実施形態において、沸点範囲が約125℃~210℃(260°F~412°F)であってもよく、本明細書中の実施形態に係る重質ナフサは、いくつかの実施形態において約110℃(230°F)を超える温度で、他の実施形態において121℃(250°F)を超える温度で、更に他の実施形態において約132℃(270°F)を超える温度で沸騰する炭化水素を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、重質ナフサ範囲留分は、400°F、420°F、480°F、500°F、更には520°Fまでで沸騰する成分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、重質ナフサ留分は、初期沸点が約110℃(230°F)~約132℃(270°F)の範囲であってもよい。
【0029】
使用するナフサ留分の初期沸点及び終沸点は、ソース、ナフサ範囲材料を処理するのに使用される触媒、反応器内に配置されたフィード位置又は分配器の数や、フィード位置又は分配器付近の稼働温度によって異なっていてもよい。3つ以上のフィード位置又は分配器が配置されている場合、ナフサ留分は、中質ナフサ留分を含む3つの留分で得られる。例えば、本明細書で使用される中質ナフサ留分は、始点が約60℃(140°F)~約66℃(150°F)であり終点が約110℃(230°F)~約132℃(270°F)又は138℃(280°F)の範囲である沸点範囲、例えば、約83.3℃(150°F)~約61.1℃(230°F)の沸点範囲を有していてもよい。更に、本明細書中のいくつかの実施形態の場合、意図した標的「カット」温度として記載されたものは、初期温度又は終点温度を意味しており、下限が5wt%又は15wt%沸点温度であり、且つ/又は上限が95%又は85%沸点温度であってもよく、例えば、ASTM D86又はASTM D2887で測定できる。
【0030】
様々な種類の反応器を用いて、本明細書中の実施形態に従ってナフサ留分を処理できる。いくつかの実施形態において、反応器は移動床を有していてもよい。他の実施形態において、反応器は流動床部分と移動床部分とを有していてもよい。
【0031】
稼働時、反応器は、例えば第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含む触媒粒子の混合物を収容してもよい。第1の粒子状触媒は、第2の粒子状触媒より平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低くてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、第2の粒子状触媒はZSM-5又はZSM-11を含んでいてもよく、第1の粒子状触媒はY型分解触媒又はFCC分解触媒を含んでいてもよく、他の触媒を追加で又は代替として使用してもよい。以下で記載する実施形態は、具体的な種類の触媒に関して記載するが、これらの記載は本明細書中の実施形態の例示を意図したものであり、本発明をこれらの触媒の使用のみに限定することを意図したものではない。
【0032】
第2の(より大きく且つ/又は密度がより高い)粒子状触媒はナフサ範囲材料の変換に対してより選択的であり得るため、該触媒を反応器内で濃縮することが望ましい。従って、移動床反応器内の条件は、反応器から少なくとも第1の粒子状触媒を輸送させるよう調整してもよく、他の実施形態では第1の粒子状触媒と第2の粒子状触媒の一部とを輸送させるよう調整してもよく、更に他の実施形態では反応器から第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の両方を輸送させるよう調製してもよい。このようにして、いくつかの実施形態においては、反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含むエフルエントを生成してもよい。従って、輸送又は移動床反応器の場合、反応器内のガス速度は最も大きく且つ/又は最も密度が高い触媒粒子の輸送速度より大きくなるよう制御してもよい。
【0033】
次いで、輸送した触媒粒子を含む反応器エフルエントをセパレータへ供給してもよい。次いで、反応器からの粒子をひとまとめにしたストリームを大きさ及び/又は密度に基づいて分離し、より大きく且つ/又はより高密度な粒子を反応器に返送して反応を継続してもよい。より軽質且つ/又はより低密度な粒子を除去することで、反応器システム内において、より重質且つ/又はより高密度な粒子の濃度をより高く、より有益なものにできる。
【0034】
流動床/移動床を組み合わせた反応器を使用する場合、反応器内のガス速度は、最も大きく且つ/又は最も高密度な第2の触媒粒子の輸送速度より低いが、より小さく且つ/又はより低密度な第1の触媒粒子の輸送速度より高くなるよう制御してもよい。すなわち、より重質な粒子が反応器の流動床部分で乱流床を形成し、より軽質且つ/又は低密度な粒子が移動床を形成して、より軽質且つ/又はより低密度な粒子を反応器から輸送させてもよい。より重質且つ/又はより高密度な粒子の一部が移動床に同伴されるような条件であってもよい。次いで、反応器からの粒子をひとまとめにしたストリームを大きさ及び/又は密度に基づいて分離し、より大きく且つ/又はより高密度な粒子を反応器に返送して反応を継続してもよい。より軽質且つ/又はより低密度な粒子を反応器エフルエントから除去及び分離することで、反応器システム内において、より重質且つ/又はより高密度な粒子の濃度をより高く、より有益なものにできる。
【0035】
第1及び第2の触媒粒子は、それぞれ粒度分布を有するものとして記載でき、それらはDx(例えば、D10、D25、D50、D75、及びD90)として列挙でき、xは、直径が径Dより小さい粒子の割合を示し、平均粒子径はD50と表され、粒度分布は例えばスクリーニング又は光分散で測定できる。いくつかの実施形態において、反応器内のガス空塔速度は、より大きく且つ/又はより高密度な粒子のD10、D25、D50、D75、又はD90より小さい粒子を輸送するよう選択してもよい。他の実施形態において、反応器中のガス空塔速度は、より大きく且つ/又はより高密度な粒子の少なくともD75又はD90の大きさを有する粒子を輸送するよう選択することで、粒子の大半又は全てを反応器から粒子セパレータへ輸送してもよい。
【0036】
次いで、上述の通り、移動床反応器又は移動床反応ゾーンからのエフルエントを粒子分離装置へ供給してもよい。粒子分離装置を用いて、触媒粒子を大きさ及び/又は密度に基づいて分離することで、反応生成物及び第1の粒子状触媒を含む第1のストリームと第2の粒子状触媒を含む第2のストリームとを回収してもよい。
【0037】
第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒の両方を含む混合触媒系のフィードは、典型的には触媒再生器から収容するものであり、一般的には、好ましい軽質ナフサ変換条件を十分に超える再生温度である。反応器システム内で好ましい触媒を濃縮するのに加えて、本明細書中の実施形態は、混合触媒と炭化水素フィードとの初期接触温度がより低い点でも有利であり得る。このようにより低い初期接触温度は、第2の粒子状触媒を含む第2のストリームを、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含む再生した混合触媒ストリームと昇温後温度で密に接触及び混合することで得られる。粒子を密に混合及び接触させることで、(i)より重質且つ/又はより高密度な第2の粒子状触媒が、再生器からの触媒フィードよりも高濃度であり、(ii)昇温後の再生器温度と反応器出口温度との中間の温度である混合触媒が生成される。その結果、移動床反応器内で、混合触媒が軽質ナフサフィードストックと接触してその中にある炭化水素が反応し、該吸熱反応により、混合触媒の温度が第2の中間温度まで低下する。この温度は、移動床反応器内で、第2の中間温度である混合触媒と重質ナフサフィードストックとを接触させてその中にある炭化水素を反応させるのに好適な温度である。次いで、反応生成物、第1の粒子状触媒、及び第2の粒子状触媒を含むエフルエントを反応器から回収し、粒子セパレータへ輸送して上述の通り処理を継続し、より大きく且つ/又はより高密度な粒子を分離して反応器へ返送し、これらのより大きく且つ/又はより高密度な粒子の反応器内での濃度を上昇させ、再生器から供給された触媒の温度を制御する手段としてもよい。
【0038】
移動床反応器システムの例として、移動床反応器は垂直反応器であってもよい。軽質ナフサフィードストックは、重質ナフサフィードストックよりも低い高度で反応器へ投入してもよい。触媒再生器から反応器へ供給した触媒混合物は、例えば、約1300°F~約1500°Fの範囲の昇温後温度であってもよい。第1の中間温度、すなわち、分離済みのより大きく且つ/又はより高密度な粒子と密に接触させた混合触媒の温度は、例えば、約900°F~約1200°Fの範囲であってもよい。軽質ナフサは、第1の中間温度で触媒と接触させて、軽質ナフサの一部をより軽質な炭化水素に変換し、混合触媒粒子の温度を第2の中間温度まで更に低下させてもよい。第2の中間温度、すなわち、軽質ナフサの吸熱変換後の温度は、約800°F~約1150°Fの範囲であってもよい。重質ナフサは、第2の中間温度で触媒と接触させて、重質ナフサの一部をより軽質な炭化水素に変換し、混合触媒粒子の温度を反応器出口温度、例えば反応器エフルエント温度である約700°F~約1150°Fの範囲まで更に低下させてもよい。3つ以上のフィード位置又はフィード分配器を有する反応器の場合、軽質及び重質ナフサフィードの高度の中間で中質ナフサ留分を投入してもよい。本発明者らは、本明細書中の実施形態に従い、軽質ナフサフィードを重質ナフサフィードより低く移動床反応器へ供給することで、所望の軽質及び重質ナフサ分解反応に好適な反応速度が得られることを見出した。
【0039】
上述の通り、反応器エフルエントから分離され、反応器内で濃縮された触媒粒子を用いて、分離済み触媒粒子を再生済み触媒粒子と密に混合することで、炭化水素の接触前に再生済み触媒の温度を変化させてもよい。いくつかの実施形態において、混和は、移動床反応器内において、軽質ナフサフィードストックを投入する高度より低い高度で実施してもよい。他の実施形態において、混和は、移動床反応器の外で実施してもよい。
【0040】
本明細書中の実施形態は、第2の粒子状触媒を含む第2のストリームを触媒ストリームと密に接触させるよう構成された混合装置を有する。上記触媒ストリームは、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を昇温後温度で含み、例えば触媒再生器から収容してもよい。2つの触媒ストリームを密に接触させることで、昇温後温度と反応器出口温度との中間にある均一な温度で混合触媒が生成される。本明細書中、「均一な温度」とは、平均床温度の数度以内の温度を有する粒子の触媒床を指す。本明細書中の均一な温度は、いくつかの実施形態において平均床温度の±20℃、他の実施形態において平均床温度の±15℃、他の実施形態において平均床温度の±10℃、他の実施形態において平均床温度の±5℃、更に他の実施形態において平均床温度の±2℃である温度を有する粒子を含んでいてもよい。触媒粒子は固体であるが、混合装置は、ナフサフィード位置への輸送中に、軽質ナフサとの反応に望ましい均一な温度を達成できる接触時間及び衝突を得られるよう構成されていてもよい。
【0041】
上述の通り、再生器温度は1300°Fより高くてもよいが、1250°F未満の温度で軽質ナフサを触媒と接触させるのが有益である。ひとまとめにした触媒ストリームを所望の均一な温度とするために、再生済み触媒(混合触媒ストリーム)及び返送済み触媒(第2のストリーム)は、いくつかの実施形態において0.2~1~5:1、他の実施形態において0.3:1~3:1、更に他の実施形態において0.5:1~1.5:1の供給比でひとまとめにしてもよい。返送済み触媒に対する再生済み触媒の比として使用するものは、所望の均一な温度、触媒対油比、及び他の反応器の変数に応じて異なっていてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、均一な温度は、混合装置内、例えば反応器システムの下部に配置された接触エリアで達成してもよい。従って、混合装置は、移動床反応器の下部に配置された第1の触媒分配器及び第2の触媒分配器を有していてもよい。第1の触媒分配器は、セパレータから第2のストリームを収容し、第2のストリームに含まれる第2の触媒を移動床反応器へ分散させるよう構成されていてもよい。第2の触媒分配器は、第1の触媒分配器付近に配置されていてもよく、触媒再生器から混合触媒ストリームを収容し、触媒ストリームに含まれる第1及び第2の触媒を移動床反応器へ分散させると共に、第1の触媒分配器からの第2の触媒と接触させるよう構成されていてもよい。このような反応器の下部における輸送速度は、触媒供給ゾーンにおいて2つの触媒ストリームの滞留時間と密な接触及び混合とを得られる程度に低く保持してもよい。これにより、所望の均一な温度を達成してから軽質ナフサフィードと接触させられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の触媒分配器の下にガス分配器を配置してもよい。ガス分配器は、触媒を流動化及び密に混合して、軽質ナフサとの接触前に均一な中間温度を得られるように構成されていてもよい。ガス分配器で投入されるガスは、輸送媒体の中でも、窒素又は水蒸気等の不活なものであってもよい。
【0044】
様々な実施形態において、上記システムは、移動床反応器内において、軽質ナフサ等の第1の反応物質を供給する高度より低い位置に内部構造を有していてもよい。本構造により、触媒粒子を輸送するための湾曲路を形成して触媒同士の接触を向上させ、ナフサとの接触前に均一な中間温度が得られる。
【0045】
密に接触することなく、再生済み触媒の温度が低下している場合、軽質ナフサと接触させたら過剰な分解等の反応が起こり、例えば水素又はメタン等の望ましくない軽質ガスが生成される。更に、重質ナフサフィードストックとの接触に望まれるよりも触媒温度が高いままとなって、この場合も反応器の性能が低下する恐れがある。しかしながら、本明細書中の実施形態で達成可能な均一な中間温度であれば、軽質ナフサ及び重質ナフサの両方を有利な条件で混合触媒系と接触させて、反応器の性能を向上させると共により望ましい混合生成物が得られる。
【0046】
図1A及び図1Bを参照して、本明細書中の実施形態に係る反応器システムを説明する。反応器32は、例えばフローライン30を介して、第1の粒子状触媒及び第2の粒子状触媒を含む触媒粒子混合物を収容でき、また、触媒分配器を介してこれらを反応器32へ投入できる。第1の粒子状触媒は、第2の粒子状触媒より平均粒子径が小さく且つ/又は密度が低くてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、第2の粒子状触媒はZSM-5又はZSM-11を含んでいてもよく、第1の粒子状触媒はY型分解触媒又はFCC分解触媒を含んでいてもよいが、他の触媒を追加で又は代替として使用してもよい。これらの触媒を使用することで、例えば、それぞれフローライン34a及び34bを介して反応器32へ投入された軽質ナフサフィードストック及び重質ナフサフィードストックを分解できる。
【0047】
上述の通り、反応器32を輸送反応器として稼働させることで、混合触媒系を反応エフルエントと共に反応器32からセパレータ47へ輸送させられるようなガス空塔速度を保持できる。反応器32からのエフルエントはフローライン45を介して回収できるため、分解済み炭化水素生成物、未反応の炭化水素フィードストック、窒素又は水蒸気(ストリッピング媒体又は添加流動ガス(例えばフローライン35を介して添加))、及び混合触媒を含むことができ、反応器へ投入したもののうち、実質的に全てのより軽質且つ/又はより小さい触媒と、一部又は全てのより大きく且つ/又はより高密度な触媒とを含むこととなる。
【0048】
次いで、フローライン45を介してエフルエントを固体セパレータ47へ輸送できる。セパレータ47は、2種類の触媒をその物性、すなわち、粒子径及び/又は密度に基づいて分離するよう構成されたセパレータであってもよい。例えば、セパレータ47は、慣性力又は遠心力の差を用いてFCC触媒とZSM-5とを分離してもよい。固体分離容器47は、第2の反応器32の外側にある容器であり、2種類の触媒をその物理的性質に基づいて分離するのを促進するような流体力学的性質で稼働する。
【0049】
セパレータ47で分離した後、セパレータ出口ライン36aを介して、より小さく且つ/又はより軽質な触媒(Y型ゼオライト又はFCC触媒等)を反応器エフルエント蒸気と共に回収できる。より大きく且つ/又はより高密度な触媒(ZSM-5又はZSM-11等)は、フローライン49及び関連の触媒分配器を介して反応器32へと返送し、分配器34a及び34bを通じて投入された炭化水素フィードとの反応を継続させてもよい。
【0050】
図1Bは、容器32内で複数の触媒分配器を使用する別の形態を表す。逆に、混合触媒フィード30及びストリーム49内の触媒を、第2の触媒の濃度が上昇した混合物を容器32へ投入するのに使用した単一の触媒分配器の上流で混和してもよい。
【0051】
より軽量な/より小さい触媒の実質的に全てと、より大きく且つ/又はより高密度な触媒の一部とを同伴し、それに続いて分離し、より大きく且つ/又はより高密度な触媒を反応器32へ再利用することで、より大きく且つ/又はより高密度な触媒を反応器32内で多量に蓄積させることができる。この触媒はC炭化水素及びナフサ範囲炭化水素の分解に対してより選択的であるため、より大きく且つ/又はより高密度な触媒が蓄積することで、選択性及び収率を有利にできる。更に、反応器を流動フローレジームで稼働させて両方の種類の触媒を同伴させることで、上述の通り、反応器の操作性や稼働時の柔軟性を向上させられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、より大きく且つ/又はより高密度な第2の触媒等の新しい触媒を、フローライン43を介して反応器容器32へそのまま加えてもよい。昇温後温度である再生済み触媒混合物は、パイプ30を通じて再生器(図示せず)から反応器容器32へ輸送される。触媒ストリーム30及び49を混合及び密に接触させることで、上述の通り、均一な触媒温度としてから軽質ナフサフィード34aと接触させられる。フローライン43を介して新しい触媒を追加する速度は低くてもよく、全体の触媒温度に対する影響は最低限であると考えられる。それでもなお、新しい触媒43を投入する地点は入口30及び49の付近であって、所望の均一な温度を達成するのに寄与するようなものであってもよいし、軽質ナフサフィード34a及び重質ナフサフィード34bの中間であって、混合触媒の温度を、重質ナフサフィード34bの投入地点の付近における、より好ましい重質ナフサ反応温度へ低下させるものであってもよい。
【0053】
反応器容器32内の触媒床は、乱流床、気泡床、又は高速流動化レジームで稼働することが考えられる。図示した通り、軽質ナフサフィード34aは、混合触媒の存在下、反応器32へ供給して軽質オレフィンへ変換してもよい。上昇ガス35は、容器32内の生成ガスと共に、両方の触媒を含む固体を、パイプ45を通じて固体分離容器47へ上昇させる。2種の触媒粒子は大きさ及び/又は密度が異なることから、固体分離容器47内で、より重質な触媒粒子(例えば、ZSM-5又はZSM-11)の大半がより軽質なもの(例えば、Y型又はFCC触媒)から分離され、返送ライン49を介して反応器32へと返送されることになる。次いで、より軽質な触媒粒子は、フローライン36aを介して反応器エフルエントと共に下流へ輸送されて、例えばセパレータ、ストリッパ、及び/又は再生器等において処理が継続されることになる。
【0054】
図示していないが、容器32は、容器から触媒を放出(de-inventoried)するための底部フランジ又は出口を有していてもよい。必要に応じ、この出口を用いて、容器32内に蓄積するより大きく且つ/又はより重質な触媒粒子を定期的に除去してもよい。
【0055】
図1A及び図1Bでは、移動床又は輸送反応器を単一の連続した反応器容器32として図示しているが、本明細書中の実施形態では、図1Cに示す通り、第1の反応段階(軽質ナフサ等)及び第2の反応段階(重質ナフサ等)に対して別々の容器を利用することも考えられる。図中、同様の番号は同様の部材を表す。図1Cに示す通り、最上部の反応器段階から回収された反応器エフルエント45をセパレータ47へ供給して、より重質且つ/又はより高密度な触媒を反応生成物及びより軽質且つ/又はより低密度な触媒と分離してもよい。
【0056】
フローライン36aを介して、より軽質且つ/又はより低密度な触媒及び反応生成物を回収してもよい。フローライン36a内の反応生成物及び触媒は、必要に応じて、クエンチストリームを介してクエンチしてもよい。クエンチストリームは、重質減圧軽油若しくは重質残留フィード等の炭化水素フィード、ライト・サイクル・オイル(LCO)、又は水蒸気であってもよく、分配器36bを通じてセパレータ出口ライン36aへ投入してもよい。次いで、(必要に応じてクエンチした)反応エフルエントを、フローライン37を介して下流へ供給し、更に処理してもよい。
【0057】
フローライン49を介して、より重質且つ/又はより高密度な触媒粒子をセパレータ47から回収できる。フローライン49を用いて、反応段階32A及び32B内でより重質且つ/又はより高密度な触媒を濃縮できる。いくつかの実施形態において、ライン49内の触媒フローは、最下部の反応段階32Aへ全て送ってもよい。必要に応じて、フローライン49Bを介してライン49内にある触媒の一部を中間又は上部反応段階32Bへ送ってもよい。使用する触媒スプリットにかかわらず、十分な触媒を最下部の反応段階32Aへ送って再生済み触媒ストリーム30と接触及び混和させ、所望の均一な触媒混合物温度としてから、触媒混合物を軽質ナフサフィード34aと接触させるべきである。
【0058】
下部反応段階32A内のガス空塔速度を十分に高く保持することで、輸送ライン38を介して上部反応段階32Bへより軽質且つ/又はより低密度な触媒を全て輸送できる。次いで、重質ナフサフィード34bを触媒混合物と接触させ、反応段階32B内の条件を、フローライン45を介して反応生成物と共により軽質且つ/又はより低密度な触媒を全てセパレータ47へ輸送できるように保持してもよい。
【0059】
上述の通り、本明細書中の実施形態に係るシステムは、2種類の触媒をその物性、例えば粒子径及び/又は密度に基づいて分離するよう構成されたセパレータ47を有していてもよい。セパレータ47は、サイクロンセパレータ、スクリーンセパレータ、メカニカルシフター、重力チャンバー、遠心セパレータ、バッフルチャンバー、ルーバーセパレータ、インライン又は空気分級機、他の種類のセパレータ等、大きさ及び/又は流体力学的性質に基づいて粒子を効率的に分離するのに有用なものであってもよい。
【0060】
本明細書中の実施形態で有用なセパレータ又は分級機としては、図2図5に記載のものが挙げられる。いくつかの実施形態において、セパレータ47は、図2に記載したような、粒子径及び/又は粒子密度が異なる2種類の固体粒子又は触媒を分離できるU字慣性セパレータであってもよい。このセパレータは、U字状であって、上部に入口70を、U字の他端にガス出口84を、U字セパレータの基部にメインの固体出口80を有するように構成されていてもよい。
【0061】
大きさが異なる固体粒子又は触媒の混合物72が、入口70を通じてキャリアガスストリームと共に投入され、1回の折り返しだけで固体に慣性分離力がかかって、大きさの異なる固体粒子が分離される。より大きく且つ/又はより高密度な固体粒子78は、セクション74/76で優先的に下降し、U字の基部に接続されたスタンドパイプ又はディプレグ80へ向かう一方、より軽質且つ/又はより小さい固体粒子は、ガスストリームと共に出口82へ優先的に運ばれ、そこで小粒子及びガスの混合物84を回収できる。U字セパレータの基部にある固体出口80(より大きく且つ/又はより高密度な触媒粒子を第2の反応器32へ返送するのに使用されるスタンドパイプ又はディプレグの入口)は、通常の固体/触媒フローを蓄積できるような大きさとすべきである。
【0062】
下向きのスタンドパイプへ流入し、メインのガスストリーム出口から流出するガス流速を制御することで、U字慣性セパレータ全体の分離効率、及びより大きく且つ/又はより高密度な粒子をより小さく且つ/又はより低密度な粒子と分離する選択性を操作できる。これは十分に密閉されたディプレグにまで及び、ディプレグから流出するガスストリームは、流出する固体/触媒フローに同伴されたものだけになる。U字慣性セパレータにより分離効率を操作できるため、上述の通りシステム内で蓄積し得る中間径の粒子は、セパレータ47から回収された炭化水素生成物と定期的に又は連続的に同伴して、容器8内で分離され且つ再生器24内で再生される。
【0063】
いくつかの実施形態において、ガススパージャ75又は追加の水蒸気/不活性ガスを出口セクション80の上部付近、例えばスタンドパイプ入口の上部近くに配置してもよい。セパレータ内へ追加する上昇ガスは、より大きく且つ/又はより高密度な固体粒子とより低密度且つ/又はより小さい固体粒子との分離を更に促進できる。追加ガスは、より軽質な固体粒子をガス出口84へ優先的に上昇させて、より良好に固体を分級できるからである。
【0064】
U字セパレータの入口70及び出口82、並びにU字セパレータ全体(エリア74及び76を含む)の断面積を調整して装置内のガス空塔速度を操作し、分離効率及び選択性を制御してもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のセパレータ壁の位置を調整可能としてもよいし、セパレータの1つ以上のセクションに移動バッフルを配置し、それを用いて分離効率及び選択性を制御してもよい。いくつかの実施形態において、上記システムは、出口82の下流に粒度分布計を有していてもよい。これにより、U字セパレータを通過するフロー構成をリアルタイムで調整でき、所望の分離を達成できる。
【0065】
直列接続したU字慣性セパレータ又はU字慣性セパレータとサイクロンとの組み合わせを利用することで柔軟性が得られ、目的とする全体の分離効率と、目的とする、より小さく且つ/又はより低密度な粒子に対するより大きく且つ/又はより高密度な粒子の選択性との両方を同時に達成できる。
【0066】
また、二次反応器32は、バッフル又は米国特許第7,179,427号明細書に記載されているようなモジュール式グリッド等の内部構造を備えていてもよい。接触効率及び生産選択性/収率を向上させるような他の種類の内部構造を使用してもよい。内部構造は、反応器全体にわたる触媒分配を向上させ、フィード蒸気と触媒との接触を向上させることで、平均反応速度を上昇させ、全体の触媒活性を向上させ、稼働条件を最適化して軽質オレフィンの生産を増加させることができる。
【0067】
本明細書中に開示した実施形態では、Y型ゼオライト又は従来のFCC触媒を使用して、重質炭化水素フィードの返還を最大化している。Y型ゼオライト又はFCC触媒は、移動床又は輸送反応器内において軽質オレフィンの生成を向上させるのに使用したZSM-5又は類似の触媒よりも粒子径が小さく且つ/又は軽質である。ZSM-5又は類似の触媒は、移動床又は輸送反応器及び固体セパレータのそれぞれにおいて触媒種の分離を向上させるのに使用したY型ゼオライト又はFCC触媒よりも大きな粒子径及び/又は高い密度を有する。移動床又は輸送反応器における蒸気のガス空塔速度を保持することで、Y型ゼオライト又はFCC触媒とZSM-5又はZSM-11触媒の一部とを移動床又は輸送反応器から同伴させることができ、固体セパレータは、単一粒子終端速度の差又は最小流動速度/最小気泡速度の差を利用することで、ZSM-5/ZSM-11を分離して移動床又は輸送反応器へ返送できる。このような概念により、2段階FCCシステムを除外でき、ひいては単純且つ効率的なプロセスを達成できる。本プロセスで採用した触媒は、Y型ゼオライト/FCC触媒とZSM-5との組み合わせであってもよいし、他の類似の触媒であってもよく、例えば、米国特許第5043522号明細書及び米国特許第5846402号明細書に記載のものが挙げられる。他の様々な触媒混合物もこのような反応器システムで使用できる。
【0068】
移動床又は輸送反応器から両触媒を同伴し、それに続いて分離し、移動床又は輸送反応器でZSM-5/ZSM-11触媒を再利用及び蓄積させることで、反応器においてガス空塔速度に何らかの制限がかかる可能性を排除できる。従って、固体分離容器を使用することで、反応器内におけるプロセス柔軟性が得られ、移動床又は輸送反応器の稼働を気泡床系に限定することなく、気泡床、乱流床、又は高速流動化レジームで稼働させられる。固体分離容器は、サイクロン等の容器であってもよく、固体及びガスが共通の入口で投入され、脱気、慣性力及び遠心力により、大きさ及び/又は密度に基づいて粒子が分離され、より小さいFCC型粒子の大半は蒸気出口に同伴され、より大きく且つ/又はより高密度なZSM-5又はZSM-11型粒子は緻密相スタンドパイプ又はディプレグを介して移動床又は輸送反応器容器32へ返送される。
【0069】
図2に関連して記載したU字粒子セパレータに加えて、図3図5は、本明細書中の実施形態で使用される別の各種粒子分離装置を表す。図3によれば、触媒又は他の粒子を大きさ及び/又は密度に基づいて分離するバッフルチャンバーセパレータ900は、水平流路等の入口910を有していてもよい。次いで、水平流路に含まれる蒸気及び粒子がチャンバー912へ流入すると、バッフル914によって一方へ寄せられる。チャンバー912は、第1の垂直出口916及び第1の水平出口918と接続されている。バッフル914は、チャンバー912の中間、チャンバーの入口910付近、又は水平出口918付近に配置できる。バッフルは、角度が付いていたり移動可能であったりすることで、バッフルを用いていくらかの触媒粒子を一方へ寄せられるものであり、且つ具体的な粒子混合用に構成されたものであってもよい。
【0070】
本明細書中のプロセスでは、バッフルチャンバーセパレータ900を利用して、炭化水素反応エフルエント等のキャリアガスに含まれるより大きく且つ/又はより高密度な粒子をより小さく且つ/又はより低密度な粒子と分離させてもよい。バッフルチャンバーセパレータ900は、第2の粒子タイプの少なくとも一部をキャリアガス及び第1の粒子タイプと分離し、第1の垂直出口916を介して第2の粒子タイプを回収し、且つ第1の水平出口918を介してキャリアガス及び第1の粒子タイプを含む混合物を回収するよう構成されていてもよい。また、セパレータは、流動化ガスを投入するための分配器(図示せず)が第1の垂直出口内又はその付近に配置されていることで、第1の粒子タイプと第2の粒子タイプとの分離を更に促進するものであってもよい。
【0071】
図4を参照すると、本明細書中の実施形態に従って使用するためのルーバーセパレータが記載されている。図示及び記載した他のセパレータと同様に、ルーバーセパレータ1000は、触媒等の粒子を大きさ及び/又は密度に基づいて分離するのに使用できる。ルーバーセパレータ1000は、チャンバー1012と接続された垂直入口1010を有していてもよく、チャンバーの1つ以上の垂直側面1014が狭いスロット状出口1016を備えており、これらをルーバーと記載することもできる。ルーバーの数は用途(例えば、分離対象である所望の粒子混合物)によって異なっていてもよく、ルーバーの角度を調整可能とすることで、ルーバー出口を通過し、そこから流出する蒸気量を制御してもよい。また、チャンバー1012は、チャンバーの底部で第1の垂直出口1014と接続されている。
【0072】
本明細書中のプロセスでは、ルーバーセパレータ1000を利用して、炭化水素反応エフルエント等のキャリアガスに含まれるより大きく且つ/又はより高密度な粒子をより小さく且つ/又はより低密度な粒子と分離させてもよい。ルーバーセパレータ1000は、第2の粒子タイプの少なくとも一部をキャリアガス及び第1の粒子タイプと分離し、第1の垂直出口1014を介して第2の粒子タイプを回収し、且つルーバー出口1016を介してキャリアガス及び第1の粒子タイプを回収するよう構成されていてもよい。また、セパレータは、流動化ガスを投入するための分配器(図示せず)が第1の垂直出口内又はその付近に配置されていることで、第1の粒子タイプと第2の粒子タイプとの分離を更に促進するものであってもよい。
【0073】
図5を参照すると、本明細書中の実施形態に従って使用するための慣性セパレータ1100が記載されている。図示及び記載した他のセパレータと同様に、慣性セパレータ1100は、触媒等の粒子を大きさ及び/又は密度に基づいて分離するのに使用できる。上記セパレータは、チャンバー1112の上部に、その内部へ延在する入口1110を有していてもよい。いくつかの実施形態において、チャンバー1112内における入口1110の高度又は配置は調整可能であってもよい。また、上記セパレータは、1つ以上の側面出口1114及び1116、例えば1~8個の側面出口と、垂直出口1118とを有していてもよい。また、上記セパレータは、流動化ガスを投入するための分配器(図示せず)が垂直出口1118内又はその付近に配置されていてもよい。
【0074】
大きさが異なる固体粒子又は触媒の混合物1172を、入口1110を通じてキャリアガスストリームと共に投入する。混合物1172内のガスは、差圧に基づいて出口1114及び1116へと優先的に向かい、チャンバー1112内へ延在した入口1110から粒子及びキャリアガスを折り返して出口1114及び1116へと流すことで、固体に慣性分離力がかかり、この慣性力によって、異なる大きさ/密度の粒子を分離する。より大きく且つ/又はより重質な固体粒子1174は、セクション1118内で優先的に下降し、セパレータの基部に接続されたスタンドパイプ又はディプレグ(図示せず)へ向かう一方、より軽質又はより小さい固体粒子1176は、ガスストリームと共に出口1114及び1116へ優先的に運ばれ、そこで小粒子及びガスの混合物を回収できる。
【0075】
本明細書に記載の各セパレータでは、下向きのスタンドパイプ/分離チャンバーへ流入し、メインのガスストリーム出口から流出するガス流速を制御することで、セパレータ全体の分離効率、及びより重質且つ/又はより大きい粒子をより軽質且つ/又はより小さい粒子と分離する選択性を操作できる。これは十分に密閉されたディプレグにまで及び、ディプレグから流出するガスストリームは、流出する固体/触媒フローに同伴されたものだけになる。
【0076】
いくつかの実施形態において、ガススパージャ又は追加の水蒸気/不活性ガスを重質/高密度粒子出口セクションの上部付近、例えばスタンドパイプ入口の上部近くに配置してもよい。セパレータ内へ追加する上昇ガスは、より重質且つ/又はより大きい固体粒子とより軽質又はより小さい固体粒子との分離を更に促進できる。追加ガスは、より軽質な固体粒子をガス出口へ優先的に上昇させて、より良好に固体を分級できるからである。
【0077】
本明細書に記載の粒子セパレータは、容器の内部に配置しても外部に配置してもよい。更に、いくつかの実施形態において、粒子セパレータの大きい/高密度な粒子出口を外部容器へ流動的に接続し、分離した粒子を所望の反応器で選択的に再利用したり、そこへ供給したりすることで、例えば、所望の触媒バランスを保持できる。
【0078】
別の態様において、本明細書中の実施形態は、より重質な塔底生成物及びメタン等の軽質ガスの収率を最小化するのと同時に、減圧軽油及び/又は重質油残留分等の重質炭化水素フィードを、超高収率で、プロピレン及びエチレン等の軽質オレフィン、芳香族化合物、並びに高オクタン価のガソリン又は中間留分へ最大限に変換するための流動接触分解装置及びプロセスに関する。この目的を達成するため、図1A図1Cに関して上述した触媒濃縮反応器等の二次反応器(移動床又は輸送反応器であってもよい)を、ライザー反応器等の従来の流動接触分解反応器と統合できる。
【0079】
空気圧並流式(pneumatic flow co-current)反応器であるライザー反応器内で、重質炭化水素フィードをナフサ、中間留分、及び軽質オレフィンへ接触分解してもよい。軽質オレフィン(エチレン及びプロピレン)への収率及び選択性を向上させるため、ライザー反応器からの分解済み炭化水素生成物、例えばナフサ範囲炭化水素(オレフィン及びパラフィン)を、移動床又は輸送反応器(触媒濃縮反応器)内で再利用及び処理してもよい。その代わり、又はそれに加えて、スチームクラッカー、メタセシス反応器、又はディレード・コーキング装置等の他のプロセスに由来するC、ナフサ、又は他の炭化水素留分等の外部フィードストリーム、並びに他の炭化水素フィードストックのうち、直留ナフサ、ディレード・コーキングやビスブレーキング由来のもの、又は天然ガス濃縮物等のナフサ範囲ストリームを、移動床又は輸送反応器内で処理して、エチレン及びプロピレン等の軽質オレフィンを生成してもよい。本明細書中に開示した実施形態に従って、移動床又は輸送反応器を従来のFCCライザー反応器と統合することで、既存のプロセスにおける欠点を克服でき、全体的な変換率及び軽質オレフィン収率を実質的に増加させることができ、水素及びメタン等の軽質ガスの生成を低減でき、且つ/又はより重質なフィードストックの処理能力を向上させられる。
【0080】
本明細書中に開示した実施形態に従った移動床又は輸送反応器と従来のFCCライザー反応器とは、(a)一般の触媒再生容器を使用すること、(b)より重質な炭化水素の分解に選択的なものと、C及びナフサ範囲炭化水素の分解に選択的なものの2種類の触媒を使用して軽質オレフィンを生成すること、及び(c)2種類の触媒を部分的に分離させるフローレジームにおいて、図1A図1Cに関して記載した移動床又は輸送反応器又は触媒濃縮反応器を使用し、C又はナフサフィードと、それらの分解及び軽質オレフィンの生成に対して選択性を有する触媒との接触を促進させることで、容易に統合できる。
【0081】
二次反応器の稼働範囲を拡張し、プロセス柔軟性を向上させるため、移動床又は輸送反応器をフローレジームで稼働させて、より重質な炭化水素の分解に選択性を有する触媒を同伴させ、且つC及びナフサ範囲炭化水素の分解に選択性を有する触媒の一部を同伴させてもよい。次いで、分解済み炭化水素生成物及び同伴した触媒をセパレータへ供給して、C及びナフサ範囲炭化水素の分解に選択性を有する触媒を、分解済み炭化水素生成物及びより重質な炭化水素の分解に選択性を有する触媒と分離してもよい。このような固体分離容器は、反応器外部の容器であり、2種類の触媒をその物理的性質、例えば粒子径及び/又は密度に基づいて分離するのを促進するような流体力学的性質で稼働する。次いで、C及びナフサ範囲炭化水素の分解に選択性を有する分離済み触媒を移動床又は輸送反応器へ返送して反応を継続させ、移動床又は輸送反応器内でC及びナフサ範囲炭化水素の分解に選択性を有する触媒の濃度を向上させ、プロセス全体の選択性を向上させると共に、稼働範囲の拡張によってプロセス全体の柔軟性を向上させてもよい。
【0082】
上述の通り、分解システムでは、それぞれ異なる種類の炭化水素フィードに有利な2種類の触媒を利用できる。第1の分解触媒は、より重質な炭化水素フィードストックの分解に有用なY型ゼオライト触媒、FCC触媒、又は他の類似した触媒であってもよい。第2の分解触媒は、C又はナフサ範囲炭化水素の分解に有用であり、軽質オレフィンの生成に選択性を有するZSM-5若しくはZSM-11系の触媒、又は類似の触媒であってもよい。本明細書中に開示した2段反応器スキームを促進するため、第1の分解触媒は、第1の平均粒子径及び密度を有し且つ第2の分解触媒よりも小さく且つ/又は軽質であることで、これらの触媒を密度及び/又は大きさに基づいて(例えば、終端速度等の触媒粒子の特性に基づいて)分離してもよい。
【0083】
触媒再生容器では、ライザー反応器及び移動床又は輸送反応器の両方から回収した消費済み触媒を再生する。再生したら、混合触媒の第1部分を再生容器からライザー反応器(並流反応器)へ供給してもよい。混合触媒の第2部分を再生容器から移動床又は輸送反応器へ供給してもよい。
【0084】
並流(ライザー)反応器では、第1の炭化水素フィードを再生触媒の第1部分と接触させることで、炭化水素の少なくとも一部を分解してより軽質な炭化水素を生成してもよい。次いで、エフルエントを並流反応器から回収してもよい。エフルエントは、第1の分解済み炭化水素生成物及び消費済み混合触媒留分を含む。
【0085】
図1A~1Cに関して記載及び図示したもの等の第2の触媒濃縮反応器では、軽質ナフサを触媒混合物と接触させ、次いで重質ナフサを触媒混合物と接触させてもよい。軽質ナフサ及び重質ナフサの反応ゾーンは、例えば、触媒対油比(重量)が約20kg/kg~約50kg/kgの範囲で稼働するものであってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、移動床又は輸送反応器は、第1の分解触媒及び第2の分解触媒を、二次反応器塔頂出口からのエフルエントとして回収した炭化水素生成物と同伴させるような流動化レジームで稼働する。次いで、エフルエントをセパレータへ供給して、分解済み炭化水素生成物及び第1の分解触媒を第2の分解触媒から分離する。
【0087】
次いで、セパレータから回収した蒸気/第1の分解触媒ストリームを分離工程へ進める。セパレータから回収した第2の分解触媒は、上述の通り、移動床又は輸送反応器へ返送して再利用することで、反応を継続してもよい。
【0088】
第1のエフルエント(ライザー反応器からの分解済み炭化水素及び消費済み混合触媒)及び第2のエフルエント(移動床又は輸送反応器からの分解済み炭化水素及び第1の分離済み分解触媒)は、いずれも脱着容器へ供給して、消費済み混合触媒留分及び第1の分離済み分解触媒を第1及び第2の分解済み炭化水素生成物と分離してもよい。次いで、軽質オレフィン、C炭化水素、ナフサ範囲炭化水素、及びより重質な炭化水素を含む分解済み炭化水素生成物を分離して、所望の生成物や生成物留分を回収してもよい。
【0089】
従って、本明細書中に開示したプロセスでは、触媒濃縮反応器、外部の固体セパレータ、及びライザー反応器を、一般的な生成物分離及び触媒再生と統合しており、移動床又は輸送反応器(触媒濃縮反応器)で使用される触媒は、C及びナフサ範囲炭化水素の分解による軽質オレフィンの生成に対して選択性が高い。一般的な触媒再生により熱バランスが得られ、一般的な生成物分離(脱着容器等)により単純な稼働及び部品点数の抑制といった利点が得られる。
【0090】
従って、図1A図1Cに記載のシステムは、例えば図6に記載のライザー反応器及び再生器システムと関連させる点で有利なものにできる。
【0091】
図6を参照すると、本明細書中に開示した実施形態に係る、炭化水素を分解して軽質オレフィンを生成するシステムの単純化したプロセスフロー図が記載されている。このシステムは、石油残留フィードストック等の炭化水素ストリームからのプロピレン及びエチレンの収率を最大化するための2段反応器構造を有している。第1の反応器3は、例えば、より重質な炭化水素フィードを分解するためのライザー反応器であってもよい。第2の反応器32は、移動床又は輸送反応器であって、バッフル又は内部構造を備えていてもよい。第1の反応器3からの軽質ナフサ及び重質ナフサ生成物や、外部ソースからの類似したフィードストリームを第2の反応器32で処理して、プロピレン及びエチレンを含む軽質オレフィンや、芳香族化合物/高オクタン価ガソリンの収率を向上させてもよい。
【0092】
重質石油残留フィードが、第1の反応器3の底部付近に配置された1つ以上のフィードインジェクタ2を通じて投入される。重質石油フィードは、J字ベンド1を通じて投入された高温の再生済み触媒と接触する。第1の反応器3へ供給された触媒は触媒混合物であり、より重質な炭化水素の分解に選択性を有する第1の触媒(Y型ゼオライト系触媒等)と、C及びナフサ範囲炭化水素の分解及び軽質オレフィン生成に選択性を有する第2の触媒(ZSM-5又はZSM-11等)とを含み、他の触媒と組み合わせて使用してもよい。第1及び第2の触媒は、粒子径及び密度の一方又は両方が異なっていてもよい。Y型系ゼオライト等の第1の触媒は、粒子径が20~200ミクロンの範囲、見かけの仮比重が0.60~1.0g/mlの範囲であってもよい。ZSM-5又はZSM-11等の第2の触媒は、粒子径が20~350ミクロンの範囲、見かけの仮比重が0.7~1.2g/mlの範囲であってもよい。
【0093】
フィードを蒸発させ、且つ/又はフィードの温度を所望の反応器温度、例えば500℃~約700℃の範囲まで上昇させるのに必要な熱、及び吸熱(反応熱)に必要な熱は、再生器17から送られてくる高温の再生済み触媒によって得られるものであってもよい。第1の反応器3内の圧力は、典型的には約1barg~約5bargである。
【0094】
分解反応の大部分が完了したら、生成物、未変換フィード蒸気、及び消費済み触媒の混合物が、サイクロン格納容器8内に収納された2段階サイクロンシステムへと流入する。2段階サイクロンシステムは、消費済み触媒を蒸気と分離するための一次サイクロン4を有していてもよい。消費済み触媒は、一次サイクロンディプレグ5を通じてストリッパ9へと放出される。一次サイクロン4からの分離済み蒸気に同伴する触媒微粒子と、フローライン36a及び単段階サイクロン36cを介して投入された第2の反応器32からの生成蒸気とは、二次サイクロン6で分離される。回収された触媒混合物は、ディプレグ7を介してストリッパ9へ放出される。二次サイクロン6からの蒸気は、プレナム11と接続されていてもよい二次サイクロン出口12bを通じて排気され、次いでメインの分留装置/ガスプラント(図示せず)へ送られて、所望のオレフィンを含む生成物が回収される。必要に応じて、分配器ライン12aを介してライト・サイクル・オイル(LCO)又は水蒸気をクエンチ媒体として投入することで、生成蒸気を更に冷却する。
【0095】
ディプレグ5及び7を介して回収した消費済み触媒は、ストリッパ床9でストリッピングし、水蒸気分配器10を通じてストリッパ9の底部へ投入した水蒸気と向流接触させて、隙間の蒸気(触媒粒子間に捕捉された炭化水素の蒸気)を除去する。次いで、消費済み触媒スタンドパイプ13及び上昇ライン15を介して、消費済み触媒を再生器17へ移送する。消費済み触媒スタンドパイプ13a上に配置された消費済み触媒スライドバルブ13bを用いて、ストリッパ9から再生器17への触媒フローを制御する。分配器14を通じて少量の燃焼空気又は窒素を投入して、消費済み触媒の移送を円滑化してもよい。
【0096】
コークス化又は消費済み触媒は、高密度な再生器床24の中心にある消費済み触媒分配器16を通じて放出する。再生器床24の底部に配置した空気分配器18で燃焼空気を投入する。次いで、燃焼空気との反応を介して、触媒上に蓄積したコークスを再生器17内で焼き落とす。再生器17は、例えば、約640℃~約750℃の範囲の温度及び約1barg~約5bargの範囲の圧力で稼働できる。煙道ガスと同伴する微小触媒は、一次サイクロン19及び二次サイクロン21で回収され、各ディプレグ20及び22を通じて再生器触媒床へ放出される。二次サイクロン21の出口から回収した煙道ガスは、再生器プレナム23を介して煙道ガスライン50へ向かい、下流での排熱回収及び/又は動力回収に使用される。
【0097】
再生済み触媒混合物の第1部分は、J字ベンド1と流動連通している再生触媒スタンドパイプ27を介して引き込まれる。再生器17から反応器3への触媒フローは、再生済み触媒スタンドパイプ27上に配置されたスライドバルブ28によって制御できる。スライドバルブ28の開きを調整することで触媒フローを制御し、反応器3内で所望の塔頂温度を保持できる。
【0098】
上昇水蒸気に加え、上昇媒体として、Cオレフィン及びナフサ等のフィードストリームや類似の外部ストリームを、Y字セクションに配置されたガス分配器1aを通じてJ字ベンド1に注入することで、J字ベンド1から反応器3への再生触媒の移送を円滑化することもできる。また、J字ベンド1は、Cオレフィン及びナフサストリームを軽質オレフィンに分解する反応に好ましい条件、例えばWHSVが0.5~50h-1、温度が640℃~750℃、滞留時間が3~10秒という条件で、そのような反応のための高密床反応器としても作用できる。
【0099】
再生済み触媒混合物の第2部分は、スタンドパイプ30を通じて第2の反応器32に引き込まれる。スライドバルブ31を用いて、蒸気出口温度の設定値に基づき、再生器17から第2の反応器32への触媒フローを制御してもよい。軽質及び重質ナフサストリームは、液相又は蒸気相の状態で、1つ以上のフィード分配器34(34a及び34b)を通じて触媒床の底部セクションへ注入される。上述の通り、第2の反応器32は移動床又は輸送床反応器として稼働し、そこで再生済み触媒混合物及びフィード炭化水素ストリームの一部が上方へ(反応器床の底部から上部へ)流れ、フローライン45を介してエフルエントとして回収される。
【0100】
第2の反応器32は、触媒及びフィード分子の密な接触及び混合を容易にするバッフル又は内部構造(図示せず)を備えていてもよい。また、これらの内部構造によれば、チャネリング、気泡成長、及び/又はコアレッシング(Coalescence)を容易に最小限に抑えられる。また、第2の反応器32は、長さ方向に沿って異なるセクションにおいて拡大することで、セクション内で一定の又は所望のガス空塔速度を保持できる。炭化水素フィード/生成物に加え、流動媒体として、水蒸気、窒素、又は他のガス(メタン等)を、分配器35を通じて投入してもよい。
【0101】
上述の通り、第2の反応器32では、粒子径及び密度の一方又は両方が異なっていてもよい2つの異なる触媒、例えば、より軽質且つより小さいY型ゼオライト又はFCC触媒と、より大きく且つ/又はより高密度なZSM-5/ZSM-11形状選択的ペンタシル型小孔ゼオライトとを利用する。第2の反応器32内のガス空塔速度を保持して、より軽質な、より小さい触媒(例えば、Y型ゼオライト/FCC触媒)の実質的に全て又は大部分と、より重質な、より大きい触媒(例えば、ZSM-5/ZSM-11)の一部とが、フローライン45を介して回収された分解済み炭化水素及び水蒸気と共に、反応器から運ばれるようにする。より大きく且つ/又はより高密度な触媒の一部を反応器32内に保持することで、上述の通り、反応器の下部へ向かって高密度床を形成してもよい。
【0102】
従って、フローライン45を介して反応器32から回収したエフルエントは、分解済み炭化水素生成物と、未反応の炭化水素フィードストックと、水蒸気(ストリッピング媒体)と、より軽質且つ/又はより小さい触媒の実質的に全て及びより大きく且つ/又はより高密度な触媒の一部を含む、反応器へ投入された触媒混合物とを含んでいてもよい。次いで、フローライン45を介してエフルエントを固体セパレータ47へ輸送してもよい。セパレータ47は、2種類の触媒をその物理的性質、すなわち、粒子径及び/又は密度に基づいて分離するよう構成されたセパレータであってもよい。例えば、セパレータ47は、慣性力又は遠心力の差を用いてFCC触媒とZSM-5を分離してもよい。固体分離容器47は、第2の反応器32の外部容器であり、2種類の触媒をその物理的性質に基づいて分離するのを促進するような流体力学的性質で稼働する。
【0103】
セパレータ47で分離した後、出口ライン36aを介して、より小さく且つ/又はより軽質な触媒(Y型ゼオライト/FCC触媒)を、セパレータ47から、ライザー反応器サイクロン及び/又は反応完了システムを収納している一般的な分離器(disengager)又は格納容器8へ輸送する。より大きく且つ/又はより高密度な触媒(ZSM-5/ZSM-11)は、フローライン49を介して混合フロー反応器32へと返送し、分配器34を通じて投入された炭化水素フィードとの反応を継続させてもよい。
【0104】
より軽質な/より小さい触媒の実質的に全てと、より大きく且つ/又はより高密度な触媒の一部又は全部とを同伴し、それに続いて分離し、より大きく且つ/又はより高密度な触媒を反応器32へ返送することで、より大きく且つ/又はより高密度な触媒を反応器32内で多量に蓄積させることができる。この触媒はC炭化水素及びナフサ範囲炭化水素の分解に対してより選択的であるため、より大きく且つ/又はより高密度な触媒が蓄積することで選択性及び収率を有利にできる。更に、反応器を移動床又は輸送フローレジームで稼働させて両方の種類の触媒を同伴させることで、上述の通り、反応器の操作性や稼働時の柔軟性を向上させられる。
【0105】
重質減圧軽油若しくは重質残留フィード等の炭化水素フィード、ライト・サイクル・オイル(LCO)、又は水蒸気を、クエンチ媒体として、分配器36bを通じて出口ライン36aへ注入してもよい。このようなクエンチ媒体の流速は、格納容器8に流入するストリームの温度を設定することで制御してもよい。分配器36bを通じて供給され且つ/又はセパレータ47へ投入されるものを含む、第2の反応器32からの蒸気は全て、単段階サイクロン36cを通じて格納容器8の希釈相へ流出する。炭化水素フィードをクエンチ媒体として採用するのが好ましい。第2の反応器32からの生成物を冷却すること及び中間留分の生成を向上させることという2つの目的を満たすからである。
【0106】
ライザー反応器等の第1段階の反応器3は、塔頂セクションにおいて、高速流動化レジーム(例えば、底部セクションにおけるガス空塔速度が約3~約10m/sの範囲)及び空気圧輸送レジーム(例えば、ガス空塔速度が約10~約20m/s)で稼働してもよい。
【0107】
第2の反応器32内のWHSVは、典型的には約0.5h-1~約50h-1の範囲である。蒸気及び触媒の滞留時間は、約2~約20秒の範囲で変動させてもよい。異なるフィードが投入された場合、Cフィードは軽質ナフサフィードの注入よりも低い高度で注入され、軽質ナフサフィードは重質ナフサフィードの注入よりも低い高度で注入されることが好ましい。中質ナフサフィードが使用される場合、軽質ナフサの高度と重質ナフサの高度との中間にあたる高度で注入される。
【0108】
必要に応じて、1つ以上のフローライン42及び43を介して補給触媒を投入してもよい。例えば、フローライン42を介して新しい又は補給用のFCC若しくはY型ゼオライト触媒又はこれら2つの混合物を再生器17へ投入し、フローライン43を介して新しい又は補給用のZSM-5/ZSM-11触媒を第2の反応器32へ投入してもよい。システム全体の触媒在庫は、例えば、再生器24から混合触媒を引き込むことで保持できる。反応器32における触媒在庫及び好ましい触媒の蓄積は、以下で記載する通り、反応器及びセパレータ47の稼働を制御することで制御してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、再生済み触媒の第1部分は、再生器17及び再生済み触媒スタンドパイプ27と流体連通している引込みライン25を介して、再生器17から再生済み触媒(RCSP)ホッパー26へと引き込まれる。RCSPホッパー26内の触媒床は、再生器17の床の高さで浮遊している。次いで、J字ベンド1と流体連通している再生済み触媒スタンドパイプ27を介して、再生済み触媒をRCSPホッパー26から反応器3へ輸送する。再生器17から反応器3への触媒フローは、再生済み触媒スタンドパイプ27上に配置されたRCSPスライドバルブ28で制御してもよい。均圧化ライン29を設けてもよい。類似のフィードシステムを用いて、第2の反応器32へ触媒を供給してもよい。
【0110】
例えば図1に記載のように、セパレータバイパスライン60を用いて、反応器32の塔頂から容器8への粒子の輸送を促進してもよい。図1に関して上述した通り、第2の反応器32では、粒子径及び密度の一方又は両方が異なっていてもよい2つの異なる触媒、例えば、より軽質且つ/又はより小さいY型ゼオライト又はFCC触媒と、より大きく且つ/又はより高密度なZSM-5/ZSM-11形状選択的ペンタシル型小孔ゼオライトとを利用する。第2の反応器32内のガス空塔速度を保持して、より軽質な、より小さい触媒(例えば、Y型ゼオライト/FCC触媒)の実質的に全てと、より大きく且つ/又はより高密度な触媒(例えば、ZSM-5/ZSM-11)の一部とが、フローライン45を介して回収された分解済み炭化水素及び水蒸気と共に、反応器から運ばれるようにする。
【0111】
従って、フローライン45を介して反応器32から回収したエフルエントは、分解済み炭化水素生成物と、未反応の炭化水素フィードストックと、水蒸気(ストリッピング媒体)と、より軽質な、より小さい触媒の実質的に全て及びより大きく且つ/又はより高密度な触媒の一部を含む、反応器へ投入された触媒混合物とを含んでいてもよい。次いで、フローライン45を介してエフルエントを固体セパレータ47へ輸送してもよい。セパレータ47は、2種類の触媒をその物理的性質、すなわち、粒子径及び/又は密度に基づいて分離するよう構成されたセパレータであってもよい。セパレータ47は、2種類の触媒をその物理的性質に基づいて分離するのを促進するような流体力学的性質で稼働する。
【0112】
セパレータ47で分離した後、出口ライン36aを介して、より小さい/より軽質な触媒(Y型ゼオライト/FCC触媒)を、セパレータ47から、ライザー反応器サイクロン及び/又は反応完了システムを収納している一般的な分離器(disengager)又は格納容器8へ輸送する。より大きく且つ/又はより高密度な触媒(ZSM-5/ZSM-11)は、混合フロー反応器32へと返送し、分配器34を通じて投入された炭化水素フィードとの反応を継続させてもよい。
【0113】
連続的に又は断続的に、両方の種類の触媒を含みフローライン45を介して輸送されているエフルエントの一部を、バイパスセパレータ47へ分流させてもよい。エフルエントの分流部分は、分流器又はフロー制御バルブ62を有していてもよいフローライン60を介してセパレータ47の周りを流れる。次いで、フローライン64を介してエフルエントを脱着器8へ継続的に返送し、炭化水素生成物を触媒と分離してもよい。フローライン64は、フローライン36aを介してセパレータ47から回収されたエフルエント及びより小さい触媒とひとまとめにしてもよく、クエンチ36bの上流又は下流へ投入してもよい。あるいは、ライン60内の分流エフルエントを脱着器/格納容器8へ直接供給してもよい。
【0114】
分流器バルブ62と共に図6で記載されているが、本明細書中の実施形態では、Y字流路等の装置を用いて、両方の種類の触媒粒子を含むエフルエントの一部を脱着器8へ継続的に送る一方、セパレータ47へもエフルエントの一部を連続的に送ることで、反応器32内でより大きく且つ/又はより高密度な触媒粒子を所望の通り蓄積させることが考えられる。図1に表す通り、第2の反応器からの触媒はまた、ライン37、スライドバルブ38、及び輸送ライン40を介して、再生器17へ移送できる。ブロワーの空気をキャリアガス39として使用して、触媒を再生器17へ移送してもよい。このような触媒移送設備では、反応器32内における触媒床の高さを制御しやすくなるだけでなく、より頻繁に触媒を再生しやすくなる。上述の通り、フローを増大させてキャリア流体を使用し且つ/又はフロー分流器を使用すると、第2の反応器32内におけるナフサ範囲炭化水素の分解に選択性を有する触媒を蓄積する点で有益となる。
【0115】
上述の方法による、本明細書中に開示した実施形態によれば、二次反応器(移動床又は輸送反応器容器32)内で所望の触媒の濃度が大きく上昇し、その結果、軽質オレフィンの収率が上昇する。加えて、本プロセスは、ZSM-5及びZSM5-11の引込み及び追加と、FCC触媒の引込み及び追加とを切り離す方法としても作用する。要するに、本開示に示すFCCプロセスによれば、所望のZSM-5又はZSM-11触媒添加剤が豊富な環境を二次反応器32内に形成し、一次反応器由来のもの等の軽質及び重質ナフサ生成物を優先的に変換でき、軽質オレフィンの収率を向上させられるのと同時に、一次反応器又はライザー内で最適な作動条件を与えることで、中間留分の収率を最大化できる。
【0116】
本明細書中に開示した実施形態の別の利点としては、統合型の2段階反応器スキームによって、スタンドアローン型のC/ナフサ接触分解プロセスにおける熱バランスの制限を克服できる点がある。二次(混合フロー)反応器は、触媒再生器と統合されてヒートシンクとして作用し、残留フィードストックを処理すると共に触媒クーラーの必要性を最小化できる。
【0117】
二次反応器からの生成蒸気は、第1段階反応器/脱着容器又は反応完了装置へ輸送される。これらの蒸気は、第1段階からの生成物及び/又はLCO若しくは水蒸気等の外部クエンチ媒体と混合及びクエンチされて、望ましくない熱分解反応が最小限に抑えられる。あるいは、移動床又は輸送反応器/固体セパレータの生成物出口ラインを用いて、重質フィードの追加分又は第1段階反応器(ライザー反応器)由来のフィードの別ルート部分を投入してもよい。この場合、(1)固体セパレータ蒸気出口ライン内にある触媒の大部分が、これらの重質フィード分子を中間留分へ分解するのに好ましいY型ゼオライト/従来のFCC触媒であり、(2)このような分解反応は吸熱性であって、放出される生成蒸気の温度及び滞留時間の低減を容易にするという2つの目的が満たされる。
【0118】
図6に関して上述した反応器システムは、まず軽質オレフィンの生成に関し、更に、システムの反応性及び選択性を向上させるのに有利な混合触媒系内の触媒の濃縮に関する。また、このような反応器システムは、触媒のうち1種の濃縮が有利であってもよい他の混合触媒系に用いてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、反応システムをガソリンの脱硫に用いてもよい。この場合、触媒混合物は、ゼオライトY等のより小さく且つ/又はより低密度のFCC触媒と、ガソリン脱硫添加剤等のより大きく且つ/又はより高密度な触媒とを含んでいてもよい。
【0119】
一般に、図1及び図6のプロセスフロー図では、触媒/粒子分離技術を用いて、二次容器内で追加又は再利用炭化水素フィードストックを処理している。システム中を循環する触媒混合物は、例えば、分解、脱硫、脱金属、脱窒素等の具体的な反応に選択的な触媒を含んでいてもよく、混合物の触媒は、上述の通り、異なる物理的性質を有するように選択されることで、所望の触媒が二次反応器内で濃縮される。再生済み触媒は、高速流動化床、気泡床、又は乱流床(用途による)で稼働できる二次移動床又は輸送反応器/容器へ供給される。二次反応器/容器のエフルエントはセパレータ47へ向かい、そこで一次及び二次触媒が大きさ及び/又は密度に基づいて分離され、セパレータ底部は、二次触媒が豊富であり、二次反応器/容器へ返送されて再利用される。二次反応器/容器は、用途によっては有利となり得る触媒引込み部を必要に応じて有していてもよく、用途に応じて異なる炭化水素フィードを有していてもよい。二次触媒を濃縮することで、反応システム全体の操作性、柔軟性、及び選択性を向上させてもよい。
【0120】
脱着容器8/ストリッパ9から回収された炭化水素生成物は、上述の通り、分留装置/ガスプラントへ進めて、1種以上の炭化水素留分を分離及び回収してもよい。本明細書中の実施形態において、分留装置/ガスプラントから回収した1種以上の炭化水素留分は、例えば図7及び図8に記載の通り、ライザー反応器3又は二次移動床又は輸送反応器32へ再循環させて更に処理してもよい。
【0121】
本明細書中に開示した実施形態に係る、炭化水素を処理するシステムの単純化したプロセスフロー図が記載されている。同様の番号は同様の部材を表す。分解反応の大部分が完了したら、生成物、未変換フィード蒸気、及び消費済み触媒の混合物が、サイクロン格納容器8内に収納された2段階サイクロンシステムへと流入する。回収した触媒混合物は、ストリッパ9へ放出される。セパレータ8からの蒸気は、二次サイクロン出口12bを通じて排気され、次いで分留装置/ガスプラント110へ送られて、所望のオレフィンを含む生成物が回収される。
【0122】
分留装置110は、例えば、FCCプラントのメインの分留装置であってもよく、軽質オレフィン含有留分112、軽質ナフサ留分114、重質ナフサ留分116、及び重質留分118等の様々な炭化水素カットを含む様々な炭化水素留分を生成してもよい。分留装置/ガスプラント110へ送られた生成物は、脱硫時に生成され得る水蒸気及び硫化水素等の他の軽質ガスを含んでいてもよい。メインの分留装置/ガスプラントの上流又は下流でこれらの不純物を分離するのが望ましい場合、セパレータ又は吸収器等の装置を稼働させる工程を含んでいてもよい。
【0123】
図7に記載の通り、軽質ナフサ留分114は、触媒濃縮反応器32(32A)の第1段階又は最下部反応段階へ送ってもよい。重質ナフサ留分は、触媒濃縮反応器32(32B)の第2段階又は最上部反応段階へ送ってもよい。望ましい場合、追加のソースから追加の軽質ナフサ34a及び重質ナフサ34bを適切な反応段階へ供給してもよい。あるいは、留分114及び116をそれぞれフィード34a及び34bとして用いてもよい。
【0124】
図8に記載の通り、分留装置110は、軽質オレフィン含有留分112、ナフサ留分115、及び重質留分118等の様々な炭化水素カットを含む様々な炭化水素留分を生成してもよい。次いで、ナフサ留分115は、分留装置120で軽質ナフサ留分34a及び重質ナフサ留分34bへ更に分解してもよく、上述の通り、これらを触媒濃縮反応器32で更に処理してもよい。
【0125】
本明細書中の実施形態は、様々な種類の触媒又は粒子を利用して所望の反応を実施してもよく、一般の再生器を用いて触媒の混合物を再生してもよく、セパレータは、1つ以上の反応器において、触媒の混合物に含まれる特定の触媒を増やせるよう配置することが有利である。本明細書中の実施形態を用いて、単位操作を向上させ、例えば、軽質オレフィン生成、ガソリン脱硫、及び重質油処理を含む用途向けに、反応システムの選択性及び柔軟性を向上させてもよい。
【0126】
軽質オレフィンの生成では、上述の通り、様々な軽質、中間、及び重質炭化水素フィードをライザーに供給してもよい。第2の反応器32へのフィードは、直留ナフサ又は再利用接触ナフサといったナフサ等のフィードを含んでいてもよく、ナフサは、有益な反応条件で軽質ナフサと重質ナフサとを接触させて、オレフィンの生成を向上させ且つ軽質ガスの生成を低減するように分離されていることが有利である。軽質オレフィン生成用の触媒混合物は、FCC触媒(例えば、ゼオライトY)等のより小さく且つ/又はより低密度な触媒と、ZSM-5又はZSM-11等のより重質/より高密度な触媒との組み合わせ等を含んでいてもよい。他の分解触媒を用いてもよい。炭化水素を分解するための様々な触媒が、米国特許第7,375,257号明細書、米国特許第7,314,963号明細書、米国特許第7,268,265号明細書、米国特許第7,087,155号明細書、米国特許第6,358,486号明細書、米国特許第6,930,219号明細書、米国特許第6,809,055号明細書、米国特許第5,972,205号明細書、米国特許第5,702,589号明細書、米国特許第5,637,207号明細書、米国特許第5,534,135号明細書、及び米国特許第5,314,610号明細書等に記載されている。
【0127】
本明細書中の実施形態では、セパレータで分離される触媒混合物、反応器内の混合物内において優先的な触媒の効果的な濃度、再生済み触媒と反応物との初期接触における温度制御が記載されている。本明細書中の実施形態によれば、反応物が接触する上流で均一な触媒温度を更に達成できる触媒濃縮の概念を利用して、ナフサ範囲材料を改良するための新規な流動接触分解プロセスが提供される。上述の通り、一般の再生器を共有する異なる機能に対して、粒子径及び/又は密度が異なる2種類の異なる触媒及び/又は添加剤が存在する。FCC触媒システムは恐らく3種以上の触媒/添加剤を採用するものと理解されるが、効果的な触媒/添加剤は、上述の物理的性質を有するものである。更に、上述の固体分離容器を用いて、FCC触媒及び/又は添加剤の一部を、その大きさ及び/又は密度に基づいて選択的に返送して、二次反応容器内で所望の触媒及び/又は添加剤を相対的に高い濃度とし、その具体的な触媒又は添加剤に対する好ましい反応を向上させられる。
【0128】
二次反応器の異なる地点で具体的なナフサ範囲材料を投入すると、触媒濃縮効果及び固有の熱及び材料バランスの効果で、最適な選択性及び生産性が得られる。FCCシステム内の反応器で段階的に供給するような他のプロセスも存在する(例えば、米国特許第5154818号明細書、米国特許第7029571号明細書)。しかしながら、これらのプロセスではナフサを更に別々のストリームへ特異的に分割することも、二元触媒システムを利用することもできない。このように2種類の触媒システムと共にナフサフィードを更に分割することで、システムの熱及び材料バランスに基づいて生成物の選択性を最適化できる。
【0129】
本開示の利点を以下で例示する。本明細書に示した第1のケーススタディには、2つの異なるナフサ材料のブレンドが包含される。第1の材料はライト(LSR)系材料又はナフサ範囲材料であり、第2の材料は接触分解によるナフサである。北米では精油所でのタイトオイル処理が増加しており、低オクタン価の直留系ナフサが余っている。接触分解により、この直留ナフサをプロピレン、エチレン、及びブチレンを含む軽質オレフィンに改良することが望ましい。しかしながら、直留ナフサを処理するには、流動接触分解ユニットで処理される従来のフィードストックよりも高い反応温度及び長い触媒接触時間が必要である。直留ナフサを共処理し、従来の温度範囲及び触媒接触時間の範囲で稼働すると、一般的には、従来のFCCUで処理される直留ナフサの収率が限界値に制限される。より厳格な条件及びより長い接触時間で直留ナフサを共処理すると、一般的には、ドライガス及びコークス等の望ましくない生成物の量が多くなり、FCCプロセス全体の利益が低下する。また、より厳格な条件は、一般的に、従来のFCCの設計範囲外となり、多くの改善が必要となる。本プロセスによれば、以下の手順でこれらの制限を克服できる。
(a)ナフサ材料を処理する第2の反応器を導入する。固体分離装置からの触媒を再利用することで、添加剤の濃度がより高くなるという利益がある。
(b)部分コークス化Yゼオライト/FCC触媒の再利用によって、望ましくない副反応を限定し、反応器選択性を上昇させる。また、混合触媒系において、ZSM-5はより重質な/より大きい触媒であってもよく、Yゼオライト/FCC触媒はより軽質な/より小さい触媒であり、本明細書中の実施形態に係る固体分離装置及びシステムでは100%の分類は不可能である。しかしながら、部分コークス化Yゼオライト/FCC触媒を含む再利用固体によって、選択性に関して予想外の効果が得られることが分かった。
(c)二次反応器の底部でより反応性の低いライトナフサを投入する。そこでの温度はより最適なものであり、触媒接触時間は最も長い。ライトナフサは、一般的に、システムへのナフサフロー全体の10wt%~75wt%であると、熱バランスの効果を得られる。
(d)他のプロセスと比較した場合、固体分離装置からの触媒再利用を介して、同じ反応器出口温度での過剰な温度及びドライガス形成を防止する。このような触媒の再利用により、反応器をより等温なものとすることができ、プロセスの選択性に有益である。
【0130】
図9は、各触媒対油比に対する、段階化したナフサ処理スキームの効果を表す。本明細書中、触媒対油比は、第2段階の反応器出口温度を達成するための再生器からの触媒フローとして定義される。第1段階出口温度は、新しい再生済み触媒、再利用された部分消費済み触媒、及び第1段階ナフサフィードの組み合わせである。上記図は、重量比50:50であるライトナフサと接触ナフサとのブレンドであり、第1段階では第2段階に対して約50°F高い温度を達成できたことが分かる。触媒粒子セパレータからの再利用触媒の影響で、このようなより高い温度はより等温なものである。これら両方の効果により、軽質オレフィンへの反応率及び選択性が上昇することになる。
【0131】
図10は、第1段階へのフィードの重量%を変動させることで、3つの異なる反応器出口温度においてより高い第1段階出口温度を達成する段階化ナフサスキームの利点を表す。このように第1段階出口温度を上昇させることで、従来のプロセスに対して、大幅に高い割合のライトナフサを処理できる。
【0132】
本明細書に示した第2のケースでは、接触分解由来のナフサを、低沸点範囲の材料とより高い沸点範囲の材料とに分解している。より低い沸点範囲の材料は、主にC5炭化水素と、いくらかのC4及びC6炭化水素(およそ30°F~160°Fの沸点)で構成され、より高い沸点範囲の材料は、150°F~430°Fの範囲の材料で構成される。より低い沸点範囲の材料は、より高い沸点範囲材料と比較して、ZSM-5系触媒の分解に対する固有活性が低く、反応器の収率を上げるためにはより厳格な操作が必要である。しかしながら、このように厳格さを高めると、沸騰留分には有害となってしまう。そのため、ここでは、反応器条件が最も厳格な(すなわち、温度がより高く触媒接触時間がより長い)反応器底部でより低い沸点範囲の材料を投入し、C6以上の材料は反応器のより後半の段階で投入する。本プロセスは以下の理由で有利である。
・一般に、C範囲材料はフルレンジライト接触ナフサ材料の約20wt%を占める。第1段階で投入されたC材料がこのような量であると、第1及び第2の(全体の)反応器出口温度間で温度が大きく異なる。
図11は、一定の第2段階反応器出口温度における全体と比較した場合の、各重量%でナフサフィードを反応器の第1段階に供給した場合の効果を表す。第1段階反応器は、全体の反応器出口温度と比較して50°F以上高い温度を達成できる。
・第1段階の後に、より反応性の高いC以上のナフサを投入することで、軽質オレフィンに対する選択性が向上し、ドライガスの形成が最小となる。ナフサが供される最も高い温度が第1段階での温度になるからである。本明細書中で記載した通り、触媒粒子セパレータを使用し且つ再生済み触媒と密に混合することで、この温度は従来のライザー反応器構造より低くなる。
・C5材料は、反応器の生産性を上昇させるため、より高い温度に加えてより長い触媒接触時間を必要とする。本明細書中の実施形態によれば、図12に示す通り、触媒対油比で算出される触媒接触時間が長くなっている。
【0133】
図13を参照すると、従来のライザー反応器の稼働を本明細書中で記載した触媒濃縮反応器の稼働と比較しており、各シミュレーションにおいて再生器温度は1350°Fに設定されている。触媒対油比が低く、第1段階において温度が相対的に高いと、ライザー反応器の第1及び第2段階の稼働範囲はかなり狭くなり、より多くのドライガスを生成し得る。一方、触媒濃縮反応器を使用し、そこで達成可能である均一な混合触媒温度の場合、本明細書中の実施形態の稼働範囲は広くなり、第1の反応段階において、より低くより好適な条件で更にプロセス柔軟性が得られる。これにより、従来のライザー反応器システムよりもドライガスの生成が少なくなる。
【0134】
本明細書中の実施形態に係るシステムに固体分離装置を導入することで、内部の触媒対油比が大きく向上する。例えば、図13において、本明細書中の実施形態の触媒/油比は従来のケースのおよそ4倍である。同じ再生器温度において同じ流量で触媒が再生器から流入する場合、本明細書中の実施形態における第1段階と第2段階との平均温度の差は、従来の2段階システムのものと比較してかなり小さい。この結果は、単純に本明細書中の実施形態で得られる熱バランス及びより高い内部の触媒対油比によるものである。本明細書中の実施形態で得られるより均一な温度プロファイル(2つの段階間で温度差が小さい)によれば、過分解及びドライガス生成を抑制できる。
【0135】
上述の通り、本明細書中の実施形態によれば、ナフサ範囲炭化水素を有利に処理できる。本明細書中で記載した触媒濃縮反応器によれば、均一な触媒温度で軽質ナフサと初期接触させ、次いで、より好ましい温度で触媒混合物と重質ナフサとを接触させられる点で有益となり得る。従って、本明細書中の実施形態によれば、より適切な条件で反応物を接触させることができ、ドライガス等の副生成物の生成を抑制できる点で有利である。
【0136】
本開示には限られた数の実施形態しか含まれていないが、本開示の範囲を逸脱しない他の実施形態も考えられることが、本開示の利益を享受する当業者には理解できるであろう。従って、本範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13