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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】排ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20240214BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20240214BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240214BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240214BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240214BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240214BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20240214BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/63 A ZAB
B01J35/57 E
B01J35/57 L
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/24 E
F01N3/022 C
F01N3/035 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021571199
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000755
(87)【国際公開番号】W WO2021145326
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2020003874
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】馬場 誉士
(72)【発明者】
【氏名】栗原 広樹
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-503191(JP,A)
【文献】特表2013-500857(JP,A)
【文献】特開2012-152696(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056573(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051458(WO,A1)
【文献】特開2010-029752(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133085(WO,A1)
【文献】特開2019-147111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
B01J 23/63
B01J 35/57
F01N 3/10
F01N 3/28
F01N 3/24
F01N 3/022
F01N 3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化システムであって、
前記排ガス浄化システムは、
排ガスが流通する排気通路と、
前記排気通路内の上流側に設けられた第1排ガス処理部と、
前記排気通路内の下流側に設けられた第2排ガス処理部と、
を備え、
前記第1排ガス処理部は、
フロースルー型基材と、
第1触媒層と、
を備え、
前記フロースルー型基材は、
前記排ガス流通方向に延在し、前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部及び前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部がともに開口している複数のセルと、
前記複数のセルを仕切る隔壁と、
を備え、
前記第1触媒層は、前記隔壁の表面上に形成されている部分を有し、
前記第2排ガス処理部は、
ウォールフロー型基材と、
第2触媒層と、
第3触媒層と、
を備え、
前記ウォールフロー型基材は、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部が開口しており、前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部が閉塞しており、前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁と、
を備え、
前記第2触媒層は、前記隔壁の前記流入側セル側の表面上に、前記隔壁の前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第3触媒層は、前記隔壁の前記流出側セル側の表面上に、前記隔壁の前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第1触媒層は、セリウム元素を含み、
前記第1触媒層の質量に対する、前記第1触媒層に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率Pは、5.0質量%以上13.0質量%以下であり、
前記第2触媒層は、ロジウム元素を含
前記第2触媒層及び前記第3触媒層は、セリウム元素を含み、
前記第2触媒層の質量と前記第3触媒層の質量との合計に対する、前記第2触媒層に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量と前記第3触媒層に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量との合計の百分率P 23 は、前記百分率P の1.1倍以上5.3倍以下であり、
前記第2触媒層の質量に対する、前記第2触媒層に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率P は、前記百分率P の1.1倍以上5.3倍以下であり、
前記第3触媒層の質量に対する、前記第3触媒層に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率P は、前記百分率P の1.1倍以上5.3倍以下である、前記排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記百分率P 23 が、前記百分率P の1.3倍以上4.2倍以下である、請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項3】
前記百分率P が、前記百分率P の1.1倍以上1.4倍以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化システム。
【請求項4】
前記百分率P が、前記百分率P の1.1倍以上3.0倍以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項5】
前記百分率P が、7.0質量%以上11.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項6】
前記百分率P が、7.0質量%以上11.0質量%以下であり、前記百分率P 23 が、前記百分率P の1.3倍以上4.2倍以下であり、前記百分率P が、前記百分率P の1.1倍以上1.4倍以下であり、前記百分率P が、前記百分率P の1.1倍以上3.0倍以下である、請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項7】
前記第1触媒層が、ロジウム元素を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項8】
前記第3触媒層が、ロジウム元素を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項9】
前記第3触媒層が、パラジウム元素を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項10】
前記ウォールフロー型基材の1平方インチあたりのセル密度が、200セル以上400セル以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項11】
前記フロースルー型基材の1平方インチあたりのセル密度が、400セル以上1200セル以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項12】
前記第1触媒層が積層構造を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項13】
前記第1触媒層が、パラジウム元素を含む下層と、ロジウム元素を含む上層とを有する、請求項12に記載の排ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で三元触媒が使用されている。三元触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属触媒が使用されており、Pt及びPdは主としてHC及びCOの酸化浄化に関与し、Rhは主としてNOxの還元浄化に関与する。
【0003】
内燃機関に供給される空気/燃料比(空燃比A/F)は、理論空燃比(ストイキ)近傍に制御されることが望ましい。しかしながら、実際の空燃比は、車両の走行条件等によってストイキを中心にリッチ(燃料過剰雰囲気)側又はリーン(燃料希薄雰囲気)側に変動するため、排ガスの空燃比も同様にリッチ側又はリーン側に変動する。このため、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して、触媒の排ガス浄化能を向上させるために、排ガス中の酸素濃度が高い時には酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低い時には酸素を放出する能力(すなわち、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity))を有する材料(以下「OSC材料」という場合がある)、例えば、CeO-ZrO系複合酸化物が使用されている。
【0004】
排ガス中には、HC、CO、NOx等の有害成分とともに、粒子状物質(PM:Particulate Matter)が含まれており、大気汚染の原因となることが知られている。例えば、ガソリンエンジン搭載車両において採用されている直噴エンジン(GDI:Gasoline Direct Injection engine)は、低燃費かつ高出力であるが、従来のポート噴射式エンジンと比較して排ガス中のPMの排出量が大きいことが知られている。PMに関する環境規制に対応するため、GDI等のガソリンエンジン搭載車両においても、ディーゼルエンジン搭載車両と同様、PM捕集機能を有するフィルタ(GPF:Gasoline Particulate Filter)の設置が求められている。
【0005】
GPFとして、例えば、ウォールフロー型と呼ばれる構造を有する基材が使用されている。ウォールフロー型基材では、セル入口から流入した排ガスがセルを仕切る多孔質の隔壁部を通過してセル出口から流出する際、排ガス中のPMが隔壁部内部の細孔内に捕集される。
【0006】
一般に排ガス浄化用触媒の搭載スペースは限られているため、Pt、Pd、Rh等の貴金属触媒をGPFに担持させて、PMの捕集とともに、HC、CO、NOx等の有害成分の浄化を行うことが検討されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、基材のセル入口側の隔壁の表面上に触媒層が形成されているとともに、基材のセル出口側の隔壁の表面上に触媒層が形成されているGPFが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、内燃機関の排気経路の上流側に触媒コンバータを配置するとともに、内燃機関の排気経路の下流側にGPFを配置することにより、排ガス中の有害成分を浄化するとともに、排ガス中のPMを捕集する排ガス浄化システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-099748号公報
【文献】特開2018-189092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
内燃機関の排気経路の上流側に触媒コンバータが配置されるとともに、内燃機関の排気経路の下流側に、ロジウム元素を含む触媒層を備えるGPFが配置される場合、GPFの触媒層に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を効率よく発揮させるための工夫が必要である。
【0011】
例えば、ロジウム元素が過度に酸化されると、ロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)は低下する。一方、触媒コンバータを通過してGPFに供給される排ガス中の酸素濃度は、触媒コンバータに含まれるOSC材料の影響を受ける。したがって、GPFの触媒層(特に、触媒コンバータの直後に位置し、触媒コンバータを通過してGPFに供給される排ガスと最初に接触する触媒層、すなわち、GPFにおいて、基材のセル入口側に形成されている触媒層)に含まれるロジウム元素の触媒活性が、触媒コンバータを通過してGPFに供給される排ガス中の酸素濃度の影響を受けて低下することを防止するために、触媒コンバータに含まれるOSC材料の量が調整されることが望ましい。また、GPFの触媒層に含まれるロジウム元素の触媒活性を効率よく発揮させるために、GPFの触媒層に含まれるロジウム元素が、触媒コンバータを通過してGPFに供給される排ガスと接触する時間を長くすることが望ましい。
【0012】
そこで、本発明は、内燃機関の排気経路の上流側に設けられた第1排ガス処理部(触媒コンバータに相当する)と、内燃機関の排気経路の下流側に設けられた第2排ガス処理部(GPFに相当する)とを備える排ガス浄化システムであって、第2排ガス処理部の触媒層(特に、第1排ガス処理部の直後に位置し、第1排ガス処理部を通過して第2排ガス処理部に供給される排ガスと最初に接触する触媒層、すなわち、第2排ガス処理部において、基材のセル入口側に形成されている触媒層)に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を効率よく発揮させることができる排ガス浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化システムであって、
前記排ガス浄化システムは、
排ガスが流通する排気通路と、
前記排気通路内の上流側に設けられた第1排ガス処理部と、
前記排気通路内の下流側に設けられた第2排ガス処理部と、
を備え、
前記第1排ガス処理部は、
フロースルー型基材と、
第1触媒層と、
を備え、
前記フロースルー型基材は、
前記排ガス流通方向に延在し、前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部及び前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部がともに開口している複数のセルと、
前記複数のセルを仕切る隔壁と、
を備え、
前記第1触媒層は、前記隔壁の表面上に形成されている部分を有し、
前記第2排ガス処理部は、
ウォールフロー型基材と、
第2触媒層と、
第3触媒層と、
を備え、
前記ウォールフロー型基材は、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部が開口しており、前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部が閉塞しており、前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁と、
を備え、
前記第2触媒層は、前記隔壁の前記流入側セル側の表面上に、前記隔壁の前記排ガス流通方向の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第3触媒層は、前記隔壁の前記流出側セル側の表面上に、前記隔壁の前記排ガス流通方向の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対方向に沿って形成されている部分を有し、
前記第1触媒層は、セリウム元素を含み、
前記第1触媒層の質量に対する、前記第1触媒層に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率Pは、5.0質量%以上13.0質量%以下であり、
前記第2触媒層は、ロジウム元素を含む、前記排ガス浄化システムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内燃機関の排気経路の上流側に設けられた第1排ガス処理部(触媒コンバータに相当する)と、内燃機関の排気経路の下流側に設けられた第2排ガス処理部(GPFに相当する)とを備える排ガス浄化システムであって、第2排ガス処理部の触媒層(特に、第1排ガス処理部の直後に位置し、第1排ガス処理部を通過して第2排ガス処理部に供給される排ガスと最初に接触する触媒層、すなわち、第2排ガス処理部において、基材のセル入口側に形成されている触媒層)に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を効率よく発揮させることができる排ガス浄化システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化システムの平面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、図2において符号R1で示される領域の拡大図である。
図4図4は、触媒層の積層構造の一実施形態を示す断面図である。
図5図5は、図1のB-B線断面図である。
図6図6は、図5において符号R2で示される領域の拡大図である。
図7図7は、図5において符号R3で示される領域の拡大図である。
図8図8は、排ガス浄化用触媒を基材の軸方向と平行な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して切断面の観察を行うことにより得られたSEM観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の排ガス浄化システムの実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化システム1の平面図であり、図2は、図1のA-A線断面図(排ガス浄化システム1が備える第1排ガス処理部3の断面図)であり、図3は、図2において符号R1で示される領域の拡大図であり、図4は、触媒層の積層構造の一実施形態を示す断面図であり、図5は、図1のB-B線断面図(排ガス浄化システム1が備える第2排ガス処理部4の断面図)であり、図6は、図5において符号R2で示される領域の拡大図であり、図7は、図5において符号R3で示される領域の拡大図である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る排ガス浄化システム1は、内燃機関の排気経路に配置されており、内燃機関から排出される排ガス中のHC、CO、NOx等の有害成分を浄化するとともに、排ガス中の粒子状物質を捕集する。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン(例えば、GDIエンジン等)等である。
【0018】
図1に示すように、排ガス浄化システム1は、排気管2と、排気管2内の上流側に設けられた第1排ガス処理部3と、排気管2内の下流側に設けられた第2排ガス処理部4とを備える。第1排ガス処理部3は、触媒コンバータに相当し、第2排ガス処理部4はGPFに相当する。
【0019】
排気管2の一端部21は内燃機関に接続されており、内燃機関から排出された排ガスは、排気管2の一端部21から他端部22に向けて排気管2内を流通する。すなわち、排気管2は、排ガスが流通する排気通路を形成する。各図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。排気管2内を流通する排ガスは、排気管2内の上流側に設けられた第1排ガス処理部3に供給され、第1排ガス処理部3で処理され、第1排ガス処理部3を通過した排ガスは、排気管2内の下流側に設けられた第2排ガス処理部4に供給され、第2排ガス処理部4で処理される。
【0020】
なお、本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側を「排ガス流入側」、排ガス流通方向Xの下流側を「排ガス流出側」という場合がある。また、本明細書において、「長さ」は、別段規定される場合を除き、排ガス流通方向Xと平行な方向の寸法を意味し、「厚み」は、別段規定される場合を除き、排ガス流通方向Xと垂直な方向の寸法を意味する。
【0021】
≪第1排ガス処理部≫
以下、第1排ガス処理部3について説明する。
【0022】
図2に示すように、第1排ガス処理部3は、フロースルー型基材31と、第1触媒層32とを備える。
【0023】
<フロースルー型基材>
以下、フロースルー型基材31について説明する。
【0024】
フロースルー型基材31を構成する材料は、排ガス浄化用触媒の基材の材料として一般的に使用されている材料から適宜選択することができる。フロースルー型基材31を構成する材料は、フロースルー型基材31が高温(例えば400℃以上)の排ガスに曝露された場合にもフロースルー型基材31が安定した形状を有し得る材料であることが好ましい。フロースルー型基材31の材料としては、例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0025】
フロースルー型基材31は、例えば、ハニカム構造体である。
【0026】
図2に示すように、フロースルー型基材31は、複数のセル311と、複数のセル311を仕切る隔壁部312とを有する。フロースルー型基材31において、隣接する2つのセル311の間には、隔壁部312が存在し、隣接する2つのセル311は、隔壁部312によって仕切られている。なお、フロースルー型基材31は、フロースルー型基材31の外形を規定する筒状部(不図示)を備え、隔壁部312は、筒状部内に形成されている。筒状部の形状は、例えば、円筒状であるが、その他の形状であってもよい。その他の形状としては、例えば、楕円筒状、多角筒状等が挙げられる。フロースルー型基材31の軸方向は、筒状部の軸方向と一致する。フロースルー型基材31は、筒状部の軸方向が排ガス流通方向Xと略一致するように配置されている。
【0027】
図2に示すように、フロースルー型基材31には、排ガス流入側及び排ガス流出側がともに開口する複数の穴部が形成されており、これらの穴部内の空間によってセル311が形成されている。
【0028】
図2に示すように、複数のセル311は、それぞれ、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流通方向Xの排ガス流入側の端部及び排ガス流通方向Xの排ガス流出側の端部を有する。図2に示すように、排ガス流通方向Xの排ガス流入側の端部及び排ガス流通方向Xの排ガス流出側の端部はともに開口している。以下、セル311の排ガス流入側の端部を「セル311の排ガス流入側の開口部」といい、セル311の排ガス流出側の端部を「セル311の排ガス流出側の開口部」という場合がある。
【0029】
セル311の排ガス流入側及び排ガス流出側の開口部の平面視形状(フロースルー型基材31を排ガス流通方向Xの排ガス流入側及び排ガス流出側から平面視した時の形状)としては、それぞれ、例えば、正方形、平行四辺形、長方形、台形等の四角形、正三角形等の三角形、正六角形等の六角形、正八角形等の八角形等の多角形、円形、楕円形等の種々の幾何学形状が挙げられる。
【0030】
セル311の排ガス流入側の開口部の平面視形状の面積と、セル311の排ガス流出側の開口部の平面視形状の面積とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
セル311の密度は、圧損、粒子状物質の捕集率等を考慮して適宜調整することができる。セル311の密度が小さいほど、セル311の排ガス流入側の開口部の開口面積が大きくなり、圧損を低下させることができるが、粒子状物質の捕集率が低下する。したがって、フロースルー型基材31の1平方インチあたりのセル311の密度は、好ましくは400セル以上1200セル以下、さらに好ましくは600セル以上900セル以下である。フロースルー型基材31の1平方インチあたりのセル311の密度は、フロースルー型基材31を排ガス流通方向Xの排ガス流入側又は排ガス流出側から観察した際における1平方インチあたりのセル311の合計個数である。
【0032】
フロースルー型基材31の体積は、好ましくは0.7L以上1.6L以下、より好ましくは0.8L以上1.2L以下である。フロースルー型基材31の体積を上記範囲に調整することにより、第1触媒層32中のセリウム元素を含む無機酸化物が酸素貯蔵能をより適度に発揮することができる。フロースルー型基材31の体積は、フロースルー型基材31の見かけの体積(すなわち、セル311及び隔壁部312を含むフロースルー型基材31全体の体積)である。フロースルー型基材31が円筒形状である場合、フロースルー型基材31の外形を規定する筒状部の外径を2rとし、フロースルー型基材31の長さをL31すると、フロースルー型基材31の体積は、下記式に基づいて算出することができる。
フロースルー型基材31の体積=π×r×L31
【0033】
隔壁部312の厚みは、例えば、54μm以上73μm以下である。なお、隔壁部312の厚みは、後述する触媒層の厚みの算出方法と同様の算出方法により求められる。
【0034】
<第1触媒層>
以下、第1触媒層32について説明する。
【0035】
図2及び図3に示すように、第1触媒層32は、隔壁部312の表面上に形成されている部分321を有する。具体的には、第1触媒層32は、隔壁部312の表面上に、隔壁部312の排ガス流入側の端部から隔壁部312の排ガス流出側の端部まで、排ガス流通方向Xに沿って形成されている部分321を有する。「隔壁部312の表面」は、隔壁部312の外形を規定する外表面を意味する。「隔壁部312の表面上に形成されている部分」は、隔壁部312の外表面からセル311側に隆起している部分を意味する。
【0036】
図3に示すように、第1触媒層32は、部分321とともに、隔壁部312の内部に存在する部分322を有していてもよい。例えば、隔壁部312が多孔質である場合には、第1触媒層32を形成する際、通常、部分321とともに部分322が形成される。部分321が存在する領域は、隔壁部312が存在する領域と重ならないが、部分322が存在する領域は、隔壁部312が存在する領域と重なる。したがって、第1触媒層32を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用した断面観察等により断面を分析し、組成、形態等に基づいて、部分321及び部分322を特定することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、例えば、SEMによる切断面の観察と、切断面の組成分析とを併用して行うことができる。元素マッピングは、例えば、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、透過型X線検査装置等を使用して行うことができる。切断面の元素マッピングにより、第1触媒層32と隔壁部312との間の形態及び組成の相違に基づいて、部分321及び部分322を特定することができる。
【0037】
第1触媒層32の量は、第1触媒層32の熱耐久性及び第1排ガス処理部3の圧損を考慮して適宜調整することができる。第1触媒層32の熱耐久性の向上の観点からは、第1触媒層32の量は多い方が好ましいが、量の増加に伴ってセル311の排ガス流入側の開口部の面積が減少し、圧損が上昇する。したがって、フロースルー型基材31の単位体積当たりの第1触媒層32の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは135g/L以上320g/L以下、さらに好ましくは150g/L以上270g/L以下、一層好ましくは190g/L以上240g/L以下である。なお、フロースルー型基材31の体積は、フロースルー型基材31の見かけの体積である。
【0038】
フロースルー型基材31の単位体積当たりの第1触媒層32の質量の算出方法は、例えば、以下の通りである。
【0039】
第1排ガス処理部3から、フロースルー型基材31の軸方向に延在し、フロースルー型基材31の長さL31と同一の長さを有するサンプルを切り出し、サンプルをフロースルー型基材31の軸方向と垂直な平面で切断し、第1触媒層32を含む切断片S1を準備する。切断片S1は、例えば、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である。切断片S1の直径及び長さの値は必要に応じて変更することができる。切断片S1に含まれる第1触媒層32の長さは、切断片S1の長さと等しい。
【0040】
切断片S1と同一のサイズを有するフロースルー型基材31の切断片を準備する。フロースルー型基材31の切断片は、第1触媒層32を含まない。
【0041】
切断片S1の質量及びフロースルー型基材31の切断片の質量を測定し、下記式に基づいて、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量を算出する。
切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量=((切断片S1の質量)-(フロースルー型基材31の切断片の質量))/(切断片S1の体積)
【0042】
切断片S1の体積は、切断片S1のみかけの体積である。例えば、切断片S1が、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である場合、切断片S1の体積は、π×(12.7mm)×10mmである。その他の切断片(後述する切断片S2及びS3)の体積も同様である。
【0043】
第1排ガス処理部3の任意の箇所から作製された3個の切断片S1に関して、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量を算出し、それらの平均値を、フロースルー型基材31の単位体積当たりの第1触媒層32の質量とする。
【0044】
フロースルー型基材31の切断片を使用することなく、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量を算出してもよい。そのような算出方法の一例は以下の通りである。切断片S1の質量及び体積を測定する。切断片S1に含まれるフロースルー型基材31の組成を、切断片S1の切断面の元素マッピング等により特定する。切断片S1の組成を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置等で分析することにより特定する。特定したフロースルー型基材31及び切断片S1の組成に基づいて、切断片S1の質量のうち第1触媒層32の質量が占める割合を算出する。下記式に基づいて、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量を算出する。
切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量=(切断片S1の質量)×(切断片S1の質量のうち第1触媒層32の質量が占める割合)/(切断片S1の体積)
【0045】
第1触媒層32は、1種又は2種以上の触媒活性成分を含む。触媒活性成分は、例えば、白金(Pt)元素、パラジウム(Pd)元素、ロジウム(Rh)元素、ルテニウム(Ru)元素、イリジウム(Ir)元素、オスミウム(Os)元素等の貴金属元素から選択することができるが、排ガス浄化性能を高める観点から、白金(Pt)元素、パラジウム(Pd)元素及びロジウム(Rh)元素から選択することが好ましい。貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含有する合金、貴金属元素を含有する化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で第1触媒層32に含まれる。触媒活性成分は、排ガス浄化性能を高める観点から、粒子状であることが好ましい。
【0046】
第1触媒層32は、セリウム(Ce)元素を含む。第1触媒層32に含まれるセリウム元素は、セリウム元素を含む無機酸化物に由来する。すなわち、第1触媒層32は、セリウム元素を含む無機酸化物を含む。
【0047】
セリウム元素を含む無機酸化物は、排ガス浄化用触媒の作動条件で構成元素の価数変化が生じる無機酸化物であり、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity))を有する。セリウム元素を含む無機酸化物は、例えば、粉末の形態で使用される。触媒活性成分を担持させやすい観点から、セリウム元素を含む無機酸化物は、多孔質体であることが好ましい。多孔質体のBET比表面積は、例えば、50~150m/gである。なお、BET比表面積は、JIS R1626「ファインセラミック粉体の気体吸着BET法による比表面積測定方法」の「6.2流動法」における「(3.5)一点法」に従って測定される。気体としては、吸着ガスである窒素を30容量%、キャリアガスであるヘリウムを70容量%含有する窒素-ヘリウム混合ガスが使用される。測定装置としては、マイクロトラック・ベル製の「BELSORP-MR6」が使用される。
【0048】
セリウム元素を含む無機酸化物としては、例えば、酸化セリウム(CeO)、セリウム(Ce)元素及びジルコニウム(Zr)元素を含む複合酸化物(以下「CeO-ZrO系複合酸化物」という。)等が挙げられるが、これらのうち、CeO-ZrO系複合酸化物が好ましい。CeO-ZrO系複合酸化物において、CeO及びZrOは、固溶体相を形成していることが好ましい。CeO-ZrO系複合酸化物において、CeO及びZrOは、それぞれ、固溶体相に加えて、単独相(CeO単独相又はZrO単独相)を形成していてもよい。CeO及びZrOが固溶体相を形成していることは、X線回折装置(XRD)を使用して、CeO-ZrOに由来する単相が形成されていることを確認することにより確認することができる。
【0049】
第1触媒層32の質量に対する、第1触媒層32に含まれるセリウム元素の酸化セリウム(CeO)換算の質量の百分率Pは、5.0質量%以上13.0質量%以下である。
【0050】
ロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を十分に発揮させるためには、排ガス中の酸素濃度を一定の範囲に収める必要がある。例えば、排ガス中の酸素濃度が高すぎると、ロジウム元素が過度に酸化され、ロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)は低下する。一方、ロジウム元素の触媒活性を十分に発揮させるためには、ロジウム元素が適度に酸化されていることが好ましいため、排ガス中の酸素濃度が低すぎると、ロジウム元素の酸化が過度に抑制され、ロジウム元素の触媒活性が不十分になってしまう。したがって、第2排ガス処理部4の第2触媒層42に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を良好に維持するためには、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度の範囲を一定の範囲に収める機能が求められる。一方、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度は、第1触媒層32に含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の影響を受ける。百分率Pが、5.0質量%以上13.0質量%以下であると、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度を、第2排ガス処理部4の第2触媒層42に含まれるロジウム元素が十分な触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を発現する範囲に収めるができる。この理由の詳細は定かでないが、次の理由が考えられる。百分率Pが増加するほど、第1触媒層32の酸素貯蔵能が増加し、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度の変動の幅が小さくなる。百分率Pが5.0質量%未満であると、第1触媒層32の酸素貯蔵能が十分でなく、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度の変動の幅が大きすぎるため、第2排ガス処理部4の第2触媒層42に含まれるロジウム元素が、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度の影響を受けて過剰に酸化される場合があり、第2排ガス処理部4の第2触媒層42に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)が低下すると考えられる。一方、百分率Pが13.0質量%を超えると、第1触媒層32の酸素貯蔵能が過剰となり、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガス中の酸素濃度の変動の幅が小さすぎる(すなわち、第1触媒層32の内部でやり取りされる酸素が増加し、第1触媒層32から放出されて第2排ガス処理部4の第2触媒層42に供給される酸素が減少し過ぎてしまう)ため、第2排ガス処理部4の第2触媒層42に含まれるロジウム元素の酸化が不十分となり、第2排ガス処理部4の第2触媒層42に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)が不十分になってしまうと考えられる。第1触媒層32の内部における酸素のやり取りは、例えば、ある無機酸化物粒子が放出した酸素を、別の無機酸化物粒子が貯蔵することにより生じ得る。
【0051】
また、第1触媒層32がロジウム元素を含む場合、第1触媒層32に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)は、第1排ガス処理部3を通過する排ガス中の酸素濃度の影響を受けて低下するおそれがある。一方、第1排ガス処理部3を通過する排ガス中の酸素濃度は、第1触媒層32に含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の影響を受ける。百分率Pが、5.0質量%以上13.0質量%以下であると、第1触媒層32に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)が、第1排ガス処理部3を通過する排ガス中の酸素濃度の影響を受けて低下することを防止することができる。この理由の詳細は定かでないが、次の理由が考えられる。百分率Pが増加するほど、第1触媒層32の酸素貯蔵能は増加する。百分率Pが5.0質量%未満であると、第1触媒層32の酸素貯蔵能が十分でなく、第1触媒層32に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)が、第1排ガス処理部3を通過する排ガス中の酸素濃度の影響を受けて低下することを十分に防止することができないと考えられる。一方、百分率Pが13.0質量%を超えると、第1触媒層32の酸素貯蔵能の増加によって、第1触媒層32の内部でやり取りされる酸素が増加し、第1触媒層32と第1触媒層32の外部(第1排ガス処理部3を通過する排ガス)との間でやり取りされる酸素が減少し過ぎてしまい、第1触媒層32に含まれるロジウム元素の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)が不十分になってしまうと考えられる。第1触媒層32の内部における酸素のやり取りは、例えば、ある無機酸化物粒子が放出した酸素を、別の無機酸化物粒子が貯蔵することにより生じ得る。
【0052】
百分率Pは、5.0質量%以上13.0質量%以下である限り特に限定されないが、好ましくは6.0質量%以上12.0質量%以下、さらに好ましくは7.0質量%以上11.0質量%以下、さらに一層好ましくは8.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0053】
百分率Pの算出方法は、以下の通りである。
【0054】
上記と同様にして切断片S1を作製し、切断片S1に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定し、切断片S1の単位体積当たりのセリウム元素の酸化セリウム換算の質量を算出する。第1排ガス処理部3の任意の箇所から作製された3個の切断片S1に関して、切断片S1の単位体積当たりのセリウム元素の酸化セリウム換算の質量を算出し、それらの平均値を、フロースルー型基材31の単位体積当たりのセリウム元素の酸化セリウム換算の質量とする。下記式に基づいて、百分率Pを算出する。
百分率P=(フロースルー型基材31の単位体積当たりのセリウム元素の酸化セリウム換算の質量)/(フロースルー型基材31の単位体積当たりの第1触媒層32の質量)×100
【0055】
CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるセリウム元素の量は、酸素貯蔵能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。酸素貯蔵能とコストとのバランス等の観点から、CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の量は、CeO-ZrO系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下である。CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるセリウム元素の酸素セリウム換算の量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法を使用して測定することができる。CeO-ZrO系複合酸化物に含まれる他の金属元素の酸化物換算の量も同様である。
【0056】
CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるジルコニウム元素の量は、耐熱性とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。耐熱性とコストとのバランス等の観点から、CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の量は、CeO-ZrO系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは50質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは55質量%以上80質量%以下である。
【0057】
酸素貯蔵能と耐熱性とのバランス等の観点から、CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の量に対する、CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の量の比率(ジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の質量/セリウム元素の酸化セリウム換算の質量)は、好ましくは1.0以上9.0以下、さらに好ましくは1.2以上4.0以下である。
【0058】
CeO-ZrO系複合酸化物は、セリウム元素及びジルコニウム元素以外の金属元素を含んでいてもよい。セリウム元素及びジルコニウム元素以外の1種又は2種以上の金属元素又はその酸化物は、CeO及び/又はZrOとともに固溶体相を形成していてもよいし、単独相を形成していてもよい。セリウム元素及びジルコニウム元素以外の1種又は2種以上の金属元素又はその酸化物が、CeO及び/又はZrOとともに固溶体相を形成していることは、上記と同様にX線回折装置(XRD)により確認することができる。
【0059】
セリウム元素及びジルコニウム元素以外の1種又は2種以上の金属元素は、例えば、セリウム元素以外の希土類元素、アルカリ土類金属元素及び遷移金属元素から選択することができるが、セリウム元素以外の希土類元素から選択することが好ましい。
【0060】
CeO-ZrO系複合酸化物に含まれるセリウム元素及びジルコニウム元素以外の1種又は2種以上の金属元素の酸化物換算の合計量は、CeO-ZrO系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは7質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
【0061】
セリウム元素以外の希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)元素、プラセオジム(Pr)元素、スカンジウム(Sc)元素、ランタン(La)元素、ネオジム(Nd)元素、サマリウム(Sm)元素、ユーロピウム(Eu)元素、ガドリニウム(Gd)元素、テルビウム(Tb)元素、ジスプロシウム(Dy)元素、ホルミウム(Ho)元素、エルビウム(Er)元素、ツリウム(Tm)元素、イッテルビウム(Yb)元素、ルテチウム(Lu)元素等が挙げられるが、これらのうち、ランタン元素、ネオジム元素、プラセオジム元素、イットリウム元素、スカンジウム元素及びイッテルビウム元素が好ましく、ランタン元素、ネオジム元素及びイットリウム元素がさらに好ましい。希土類元素の酸化物は、プラセオジム元素及びテルビウム元素を除いてセスキ酸化物(Ln、Lnは希土類元素を表す)である。酸化プラセオジムは通常Pr11であり、酸化テルビウムは通常Tbである。
【0062】
アルカリ土類金属元素としては、例えば、カルシウム(Ca)元素、ストロンチウム(Sr)元素、バリウム(Ba)元素、ラジウム(Ra)元素等が挙げられるが、これらのうち、カルシウム元素、ストロンチウム元素及びバリウム元素が好ましい。
【0063】
遷移金属元素としては、例えば、マンガン(Mn)元素、鉄(Fe)元素、コバルト(Co)元素、ニッケル(Ni)元素、銅(Cu)元素等が挙げられる。
【0064】
第1触媒層32は、セリウム元素を含む無機酸化物以外の無機酸化物(以下「その他の無機酸化物」という)を含むことが好ましい。その他の無機酸化物は、例えば、粉末の形態で使用される。触媒活性成分を担持させやすい観点から、その他の無機酸化物は、多孔質体であることが好ましい。多孔質体のBET比表面積は、例えば、50~150m/gである。その他の無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミノ-シリケート類、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-ランタナ等が挙げられるが、これらのうち、耐熱性の観点から、アルミナが好ましい。
【0065】
第1触媒層32に含まれるその他の無機酸化物の量は、第1触媒層32の熱耐久性及び第1排ガス処理部3の圧損を考慮して適宜調整することができる。第1触媒層32の熱耐久性の向上の観点からは、第1触媒層32に含まれるその他の無機酸化物の量は多い方が好ましいが、量の増加に伴ってセル311の排ガス流入側の開口部の面積が減少し、圧損が上昇する。したがって、第1触媒層32に含まれるその他の無機酸化物の質量は、第1触媒層32の質量を基準として、好ましくは86質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは88質量%以上94質量%以下、さらに一層好ましくは90質量%以上92質量%以下である。第1触媒層32の質量に対する、第1触媒層32に含まれるその他の無機酸化物の質量の百分率の算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。
【0066】
セリウム元素を含む無機酸化物以外の無機酸化物は、セリウム元素を含む無機酸化物で修飾されていてもよいし、セリウム元素を含む無機酸化物を担持していてもよい。例えば、アルミナ等の孔部の内表面又は外表面が、セリウム元素を含む無機酸化物により修飾されていてもよい。また、アルミナ等の孔部の内表面又は外表面に、セリウム元素を含む無機酸化物が分散した状態で担持されていてもよい。
【0067】
触媒活性成分による排ガス浄化性能を効率よく発揮させる観点から、触媒活性成分は、セリウム元素を含む無機酸化物及び/又はその他の無機酸化物に担持されていることが好ましい。「触媒活性成分が無機酸化物に担持されている」とは、無機酸化物粒子の外表面又は細孔内表面に、触媒活性成分が物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。例えば、触媒層の断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)で分析して得られた元素マッピングにおいて、無機酸化物と触媒活性成分とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分が無機酸化物に担持されていると判断することができる。
【0068】
第1触媒層32は、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。第1触媒層32が積層構造を有する場合、ある層の組成と、別の層の組成とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ある層に含まれる触媒活性成分と、別の層に含まれる触媒活性成分とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
第1触媒層32の積層構造の一実施形態を図4に示す。図4に示すように、第1触媒層32は、下層32aと上層32bとからなる二層構造を有していてもよい。なお、下層32aは、上層32bよりも隔壁部312側に位置する層である。
【0070】
第1触媒層32が積層構造を有する場合、第1触媒層32の部分321は、1つの層の全体又は一部で形成されていてもよいし、1つ以上の層の全体と別の1つの層の全体又は一部とで形成されていてもよい。例えば、第1触媒層32が二層構造を有する場合、第1触媒層32の部分321は、上層の全体又はその一部で形成されていてもよいし、上層の全体と下層の一部とで形成されていてもよい。図4に示す実施形態において、第1触媒層32の部分321は、上層32bの全体と下層32aの一部とで形成されている。
【0071】
図4に示す実施形態において、フロースルー型基材31に設けられる下層32a及び上層32bの量は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能とコストとのバランス等の観点から、フロースルー型基材31の単位体積当たりの下層32aの質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは90g/L以上200g/L以下、さらに好ましくは110g/L以上185g/L以下、さらに一層好ましくは140g/L以上175g/L以下であり、フロースルー型基材31の単位体積当たりの上層32bの質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは45g/L以上120g/L以下、さらに好ましくは40g/L以上90g/L以下、さらに一層好ましくは50g/L以上66g/L以下である。なお、フロースルー型基材31の体積は、フロースルー型基材31全体の見かけの体積である。
【0072】
図4に示す実施形態において、下層32a及び上層32bは、それぞれ、1種又は2種以上の触媒活性成分を含む。下層32aに含まれる触媒活性成分と、上層32bに含まれる触媒活性成分とは異なることが好ましい。例えば、下層32aに含まれる触媒活性成分は、パラジウム元素であり、上層32bに含まれる触媒活性成分は、パラジウム元素以外の貴金属元素(例えば、ロジウム元素)である。パラジウム元素を含む下層32aを、上層32bで被覆することにより、下層32aに含まれるパラジウム元素のリン被毒(排ガス中に含まれるリンによって引き起こされるパラジウム元素の触媒活性の低下)を低減させることができる。
【0073】
図4に示す実施形態において、下層32a及び上層32bのうち少なくとも一方は、セリウム元素を含む無機酸化物を含む。一実施形態において、下層32aは、セリウム元素を含む無機酸化物を含み、上層32bは、セリウム元素を含む無機酸化物を含まない。別の実施形態において、下層32aは、セリウム元素を含む無機酸化物を含まず、上層32bは、セリウム元素を含む無機酸化物を含む。さらに別の実施形態において、下層32a及び上層32bの両方が、セリウム元素を含む無機酸化物を含む。いずれの実施形態においても、第1触媒層32(上層32a及び下層32b)の質量に対する、第1触媒層32(上層32a及び下層32b)に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率Pは、5.0質量%以上13.0質量%以下である。
【0074】
下層32aに含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量は、酸素貯蔵能及び第1排ガス処理部3の圧損を考慮して適宜調整することができる。酸素貯蔵能の向上の観点からは、下層32aに含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量は多い方が好ましいが、量の増加に伴ってセル311の排ガス流入側の開口部の面積が減少し、圧損が上昇する。したがって、下層32aの質量に対する、下層32aに含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率は、好ましくは7質量%以上12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上12質量%以下である。
【0075】
上層32bに含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量は、下層32aと同様の観点から、酸素貯蔵能及び第1排ガス処理部3の圧損を考慮して適宜調整することができる。上層32bの質量に対する、上層32bに含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率は、好ましくは1質量%以上7質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上7質量%以下である。
【0076】
図4に示すように、第1触媒層32が、下層32aと上層32bとからなる二層構造を有する場合、下層32a及び上層32bは、それぞれ、その他の無機酸化物を含むことが好ましい。
【0077】
下層32aに含まれるその他の無機酸化物の量は、下層32aの熱耐久性及び第1排ガス処理部3の圧損を考慮して適宜調整することができる。下層32aの熱耐久性の向上の観点からは、下層32aに含まれるその他の無機酸化物の量は多い方が好ましいが、量の増加に伴ってセル311の排ガス流入側の開口部の面積が減少し、圧損が上昇する。したがって、下層32aに含まれるその他の無機酸化物の質量は、下層32aの質量を基準として、好ましくは60質量%以上76質量%以下、さらに好ましくは64質量%以上72質量%以下である。
【0078】
上層32bに含まれるその他の無機酸化物の量は、下層32aと同様の観点から、上層32bの熱耐久性及び第1排ガス処理部3の圧損を考慮して適宜調整することができる。上層32bに含まれるその他の無機酸化物の質量は、上層32bの質量を基準として、好ましくは33質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは33質量%以上56質量%以下である。
【0079】
以下、第1触媒層32の形成方法について説明する。
フロースルー型基材31と、第1触媒層32を形成するためのスラリーを準備する。第1触媒層32が積層構造を有する場合、第1触媒層32を形成するためのスラリーとして、2種以上のスラリーを準備する。
【0080】
第1触媒層32を形成するためのスラリーの組成は、第1触媒層32の組成に応じて調整される。スラリーは、例えば、貴金属元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダー、造孔剤、溶媒等を含む。貴金属元素の供給源としては、例えば、貴金属元素の塩が挙げられ、貴金属元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、セリウム元素を含む無機酸化物、その他の無機酸化物等が挙げられる。セリウム元素を含む無機酸化物及びその他の無機酸化物に関する説明は上記と同様である。バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等が挙げられる。造孔剤としては、例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸ブチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリアクリル酸エステル粒子、メラミン系樹脂等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶媒は、1種の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。
【0081】
第1触媒層32を形成するためのスラリーをフロースルー型基材31に塗布し、乾燥させ、必要に応じて焼成する。第1触媒層32が積層構造を有する場合、この操作を繰り返す。これにより、第1触媒層32の前駆層が形成される。スラリーの固形分濃度、粘度等を調整することにより、第1触媒層32の前駆層の長さ(ひいては、第1触媒層32の長さ)を調整することができる。また、スラリーのコート量、スラリーを構成する材料の種類、スラリーに含まれる造孔剤の粒径等を調整することにより、第1触媒層32の前駆層の厚み(ひいては、第1触媒層32の厚み)及び第1触媒層32の前駆層の質量(ひいては、第1触媒層32の質量)を調整することができる。乾燥温度は、通常70℃以上200℃以下、好ましくは90℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、通常1時間以上3時間以下、好ましくは1.5時間以上2時間以下である。
【0082】
造孔剤の粒径は、適宜調整することができるが、造孔剤のメジアン径D50は、剥離抑制、圧損上昇抑制、PMの捕集性能等の観点から、通常5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下である。造孔剤の粒径が大きいほど、第1触媒層32の厚みが大きくなる。D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径である。D50の測定は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置自動試料供給機(マイクロトラック・ベル社製「Microtorac SDC」)を使用して、造孔剤を水性分散媒に投入し、26mL/secの流速中、40Wの超音波を360秒間照射した後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラックMT3300EXII」)を使用して行う。測定は、粒子屈折率を1.5、粒子形状を「真球形」、溶媒屈折率を1.3、「セットゼロ」を30秒、測定時間を30秒の条件で、2回行い、得られた測定値の平均値をD50とする。水性分散媒としては純水を使用する。
【0083】
第1触媒層32を形成するためのスラリーの塗布は、例えば、フロースルー型基材31の全体を、第1触媒層32を形成するためのスラリー中に浸漬することにより、あるいは、フロースルー型基材31の排ガス流入側又は排ガス流出側の端部を、第1触媒層32を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引することにより行うことができる。
【0084】
第1触媒層32の前駆層の形成後、焼成する。これにより、第1触媒層32が形成される。焼成温度は、通常450℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下であり、焼成時間は、通常1時間以上4時間以下、好ましくは1.5時間以上2時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0085】
≪第2排ガス処理部≫
以下、第2排ガス処理部4について説明する。
【0086】
図5に示すように、第2排ガス処理部4は、ウォールフロー型基材41と、第2触媒層42と、第3触媒層43とを備える。
【0087】
<ウォールフロー型基材>
以下、ウォールフロー型基材41について説明する。
【0088】
ウォールフロー型基材41を構成する材料は、排ガス浄化用触媒の基材の材料として一般的に使用されている材料から適宜選択することができ、例えば、上述したフロースルー型基材31を構成する材料と同様の材料を用いることができる。
【0089】
図5に示すように、ウォールフロー型基材41は、流入側セル411と、流出側セル412と、流入側セル411と流出側セル412とを仕切る多孔質の隔壁413とを備える。ウォールフロー型基材41において、1つの流入側セル411の周りに複数(例えば4つ)の流出側セル412が隣接するように配置されており、流入側セル411と、該流入側セル411に隣接する流出側セル412とは、多孔質の隔壁部413によって仕切られている。なお、ウォールフロー型基材41は、ウォールフロー型基材41の外形を規定する筒状部(不図示)を備え、隔壁413は、筒状部内に形成されている。筒状部の形状は、例えば、円筒状であるが、その他の形状であってもよい。その他の形状としては、例えば、楕円筒状、多角筒状等が挙げられる。ウォールフロー型基材41の軸方向は、筒状部の軸方向と一致する。ウォールフロー型基材41は、筒状部の軸方向が排ガス流通方向Xと略一致するように配置されている。
【0090】
図5に示すように、ウォールフロー型基材41には、排ガス流入側が開口する凹部及び排ガス流出側が開口する凹部が形成されており、排ガス流入側が開口する凹部内の空間によって流入側セル411が形成されており、排ガス流出側が開口する凹部内の空間によって流出側セル412が形成されている。
【0091】
図5に示すように、流入側セル411は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。図5に示すように、流入側セル411の排ガス流入側の端部は開口しており、流入側セル411の排ガス流出側の端部は閉塞している。以下、流入側セル411の排ガス流入側の端部を「流入側セル411の開口部」という場合がある。
【0092】
図5に示すように、ウォールフロー型基材41には、流入側セル411の排ガス流出側の端部を封止する第1封止部44が設けられており、流入側セル411の排ガス流出側の端部は、第1封止部44によって閉塞している。
【0093】
図5に示すように、流出側セル412は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。図5に示すように、流出側セル412の排ガス流入側の端部は閉塞しており、流出側セル412の排ガス流出側の端部は開口している。以下、流出側セル412の排ガス流出側の端部を「流出側セル412の開口部」という場合がある。
【0094】
図5に示すように、ウォールフロー型基材41には、流出側セル412の排ガス流入側の端部を封止する第2封止部45が設けられており、流出側セル412の排ガス流入側の端部は、第2封止部45によって閉塞している。
【0095】
流入側セル411及び流出側セル412の開口部の平面視形状(ウォールフロー型基材41を排ガス流通方向Xの排ガス流入側及び排ガス流出側から平面視した時の形状)としては、それぞれ、例えば、正方形状、平行四辺形、長方形、台形等の四角形、正三角形等の三角形、正六角形等の六角形、正八角形等の八角形等の多角形、円形、楕円形等の種々の幾何学形状が挙げられる。
【0096】
流入側セル411の開口部の平面視形状の面積と、流出側セル412の開口部の平面視形状の面積とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0097】
流入側セル411及び流出側セル412の密度は、圧損、粒子状物質の捕集率等を考慮して適宜調整することができる。流入側セル411及び流出側セル412の密度が小さいほど、流入側セル411の開口部の開口面積が大きくなり、圧損を低下させることができるが、粒子状物質の捕集率も低下する。したがって、ウォールフロー型基材41の1平方インチあたりの流入側セル411及び流出側セル412の密度は、好ましくは200セル以上400セル以下、さらに好ましくは200セル以上300セル以下である。なお、ウォールフロー型基材41の1平方インチあたりの流入側セル411及び流出側セル412の密度は、ウォールフロー型基材41を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られる断面における1平方インチあたりの流入側セル411及び流出側セル412の合計個数である。
【0098】
ウォールフロー型基材41の体積は、好ましくは1.0L以上2.2L以下、より好ましくは1.3L以上1.7L以下である。ウォールフロー型基材41の体積を上記範囲に調整することにより、第2触媒層42及び/又は第3触媒層43にセリウム元素を含む無機酸化物が含有される場合に、当該セリウム元素を含む無機酸化物が酸素貯蔵能をより適度に発揮することができる。なお、ウォールフロー型基材41の体積は、ウォールフロー型基材41の見かけの体積(すなわち、流入側セル411、流出側セル412、隔壁413、第1封止部44及び第2封止部45を含むウォールフロー型基材41全体の体積)である。ウォールフロー型基材41が円筒形状である場合、ウォールフロー型基材41の外形を規定する筒状部の外径を2rとし、ウォールフロー型基材41の長さをL41すると、ウォールフロー型基材41の体積は、下記式に基づいて算出することができる。
ウォールフロー型基材41の体積=π×r×L41
【0099】
隔壁部413は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有する。隔壁部413の厚みは、例えば、200μm以上280μm以下である。なお、隔壁部413の厚みは、後述する触媒層の厚みの算出方法と同様の算出方法により求められる。
【0100】
<第2触媒層>
以下、第2触媒層42について説明する。
【0101】
図5及び図6に示すように、第2触媒層42は、隔壁部413の流入側セル411側の表面上に形成されている部分421を有する。具体的には、第2触媒層42は、隔壁部413の流入側セル411側の表面上に、隔壁部413の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って形成されている部分421を有する。「隔壁部413の流入側セル411側の表面」は、隔壁部413の外形を規定する流入側セル411側の外表面を意味する。「隔壁部413の流入側セル411側の表面上に形成されている部分」は、隔壁部413の流入側セル411側の外表面から流入側セル411側に隆起している部分を意味する。
【0102】
第2触媒層42が、隔壁部413の流入側セル411側の表面上に形成されている部分421を有することにより、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガスは、第2触媒層42に含まれるロジウム元素と接触しやすくなる。これにより、第2触媒層42に含まれるロジウム元素の触媒活性を効率よく発揮させることができる。
【0103】
図6に示すように、第2触媒層42は、部分421とともに、隔壁部413の内部に存在する部分422を有していてもよい。隔壁部413は多孔質であるため、第2触媒層42を形成する際、通常、部分421とともに部分422が形成される。部分421が存在する領域は、隔壁部413が存在する領域と重ならないが、部分422が存在する領域は、隔壁部413が存在する領域と重なる。したがって、第2触媒層42を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用した断面観察等により断面を分析し、組成、形態等に基づいて、部分421及び部分422を特定することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様にして行うことができる。切断面の元素マッピングにより、第2触媒層42と隔壁部413との間の形態及び組成の相違に基づいて、部分421及び部分422を特定することができる。
【0104】
第2触媒層42は、ウォールフロー型基材41の流入側セル411側に形成されている。第2触媒層42がウォールフロー型基材41の流入側セル411側に形成されていることは、第2触媒層42の部分421が所定の厚みを有していることから判断することができる。
【0105】
第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガスと、第2触媒層42に含まれるロジウム元素との接触効率を向上させる観点から、部分421が適度な厚みを有することが好ましい。第2触媒層42の部分421の厚みT421は、好ましくは15μm以上55μm以下、さらに好ましくは25μm以上45μm以下、さらに一層好ましくは30μm以上40μm以下である。
【0106】
第2触媒層42の部分421の厚みT421の算出方法は、以下の通りである。
【0107】
第2排ガス処理部4(例えば、ウォールフロー型基材41の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに10mm離れた箇所)を、ウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、切断面から任意に選択された1個の流入側セル411に存在する第2触媒層42の観察を行い、ウォールフロー型基材41の隔壁部413が存在する領域及び第2触媒層42が存在する領域を特定する。SEMによる切断面の観察において、視野倍率は、例えば300倍であり、視野全幅(ウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な方向の長さ)は、例えば500~600μmである。SEMによって観察する領域は、流入側セル411の角部が含まれないように設定される。ウォールフロー型基材41の隔壁部413が存在する領域及び第2触媒層42が存在する領域は、ウォールフロー型基材41の隔壁部413と第2触媒層42との間の形態の相違に基づいて特定することができる。この際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様にして行うことができる。切断面の元素マッピングにより、ウォールフロー型基材41の隔壁部413と第2触媒層42との間の形態及び組成の相違に基づいて、ウォールフロー型基材41の隔壁部413が存在する領域及び第2触媒層42が存在する領域を特定することができる。
【0108】
SEM観察像において、左端側又は右端側から順に、ウォールフロー型基材41の隔壁部413の厚み方向と平行な第1~第Nのグリッド線を15μm間隔で描き、ウォールフロー型基材41の隔壁部413が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、ウォールフロー型基材41の隔壁部413の表面の位置を特定する。Nは、例えば、30~50の整数である。同様に、第2触媒層42が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、第2触媒層42の表面の位置を特定する。ある交点P1から該交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2を表面の位置の特定に使用しないこと(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2を除くこと)が好ましい。ある交点P1から該交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量は、交点P1を通り、ウォールフロー型基材41の隔壁部413の厚み方向と垂直な直線と、交点P2を通り、ウォールフロー型基材41の隔壁部413の厚み方向と垂直な直線との距離を意味する。交点P1から交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超えるとともに、交点P1から、交点P2に隣接する交点P3への厚み方向の変化量もグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2に加えて交点P3も表面の位置の特定に使用しないこと(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2及び交点P3を除くこと)が好ましい。このように直線で結ぶ交点から連続して5つの交点を除く場合、当該SEM画像に対しては厚みの測定を行わないことが好ましい。
【0109】
ウォールフロー型基材41の隔壁部413の表面の位置及び第2触媒層42の表面の位置を特定した後、画像解析ソフトウェアを使用して、第2のグリッド線と、第(N-1)のグリッド線と、ウォールフロー型基材41の隔壁部413の表面と、第2触媒層42の表面とで囲まれた領域の面積を求める。画像解析ソフトウェアとしては、例えば、AreaQ(エステック株式会社製)、ImageJ(パブリックドメイン)、Photoshop(Adobe Systems株式会社)等を使用することができる。なお、画像の両端部は不鮮明になり易く、ウォールフロー型基材41の隔壁部413の表面の位置及び第2触媒層42の表面の位置を特定し難いため、第1のグリッド線及び第Nのグリッド線は使用しない。
【0110】
上記領域の面積を求めた後、下記式に基づいて、上記領域の厚みを算出する。
上記領域の厚み=上記領域の面積/(グリッド線の間隔×グリッド線の間隔の数)
なお、グリッド線の間隔は15μmであり、グリッド線の間隔の数は(N-3)である。
【0111】
切断面から任意に選択された20個の流入側セル411に関して、上記領域の厚みを算出し、それらの平均値を第2触媒層42の部分421の厚みT421とする。
【0112】
ウォールフロー型基材41の長さL41に対する、第2触媒層42の長さL42の百分率(L42/L41×100)は、好ましくは10%以上80%以下、さらに好ましくは30%以上60%以下、さらに一層好ましくは40%以上50%以下である。
【0113】
第2触媒層42の長さL42の算出方法は、以下の通りである。
【0114】
第2排ガス処理部4から、ウォールフロー型基材41の軸方向に延在し、ウォールフロー型基材41の長さL41と同一の長さを有するサンプルを切り出す。サンプルは、例えば、直径25.4mmの円柱状である。なお、サンプルの直径の値は必要に応じて変更することができる。サンプルをウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流入側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。切断片の長さは5mmである。切断片の組成を、蛍光X線分析装置(XRF)(例えば、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)、波長分散型X線分析装置(WDX)等)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)等を使用して分析し、切断片の組成に基づいて、切断片が第2触媒層42を含むか否かを確認する。
【0115】
第2触媒層42を含むことが明らかである切断片に関しては、必ずしも組成分析を行う必要はない。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面を観察し、切断片が第2触媒層42を含むか否かを確認することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様に行うことができる。
【0116】
切断片が第2触媒層42を含むか否かを確認した後、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第2触媒層42の長さを算出する。
サンプルに含まれる第2触媒層42の長さ=5mm×(第2触媒層42を含む切断片の数)
【0117】
例えば、第1切断片~第k切断片は第2触媒層42を含むが、第(k+1)~第n切断片は第2触媒層42を含まない場合、サンプルに含まれる第2触媒層42の長さは、(5×k)mmである。
【0118】
第2触媒層42の長さをより詳細に測定する場合には、次のように算出する。
第k切断片(すなわち、第2触媒層42を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流出側から得られた切断片)をウォールフロー型基材41の軸方向で切断して、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面に存在する第2触媒層42を観察することにより、第k切断片における第2触媒層42の長さを測定する。そして、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第2触媒層42の長さを算出する。
サンプルに含まれる第2触媒層42の長さ=(5mm×(k-1))+(第k切断片における第2触媒層42の長さ)
【0119】
第2排ガス処理部4から任意に切り出された8~16個のサンプルに関して、各サンプルに含まれる第2触媒層42の長さを算出し、それらの平均値を第2触媒層42の長さL42とする。
【0120】
ウォールフロー型基材41に設けられる第2触媒層42の量は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能とコストとのバランス等の観点から、ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第2触媒層42の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは15g/L以上30g/L以下、さらに好ましくは17g/L以上24g/L以下である。なお、ウォールフロー型基材41の体積は、ウォールフロー型基材41の見かけの体積である。
【0121】
ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第2触媒層42の質量の算出方法は、例えば、以下の通りである。
【0122】
第2排ガス処理部4から、ウォールフロー型基材41の軸方向に延在し、ウォールフロー型基材41の長さL41と同一の長さを有するサンプルを切り出し、サンプルをウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な平面で切断し、第2触媒層42は含むが、第3触媒層43は含まない切断片S2を準備する。切断片S2は、例えば、直径25.4mm、長さ10mmの円柱状である。切断片S2の直径及び長さの値は必要に応じて変更することができる。第3触媒層43が隔壁413の排ガス流入側の端部まで延在していない場合、隔壁413の排ガス流入側の端部近傍において、第2触媒層42は存在するが、第3触媒層43は存在しない。したがって、隔壁413の排ガス流入側の端部近傍から、切断片S2を得ることができる。切断片S2に含まれる第2触媒層42の長さは、切断片S2の長さと等しい。
【0123】
切断片S2と同一のサイズを有するウォールフロー型基材41の切断片を準備する。ウォールフロー型基材41の切断片は、第2触媒層42及び第3触媒層43をともに含まない。
【0124】
切断片S2の質量及びウォールフロー型基材41の切断片の質量を測定し、下記式に基づいて、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層42の質量を算出する。
切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層42の質量=((切断片S2の質量)-(ウォールフロー型基材41の切断片の質量))/(切断片S2の体積)
【0125】
第2排ガス処理部4の任意の箇所から作製された3個の切断片S2に関して、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層42の質量を算出し、それらの平均値を算出する。下記式に基づいて、ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第2触媒層42の質量を算出する。
ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第2触媒層42の質量=(切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層42の質量の平均値)×(第2触媒層42の長さL42/ウォールフロー型基材41の長さL41
【0126】
ウォールフロー型基材41の切断片を使用することなく、切断片S2の単位体積当たりの第2触媒層42の質量を算出してもよい。そのような算出方法の一例は、フロースルー型基材31の切断片を使用することなく、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量を算出する方法の一例と同様である。
【0127】
第2触媒層42は、触媒活性成分として、ロジウム(Rh)元素を含む。ロジウム元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、ロジウム金属、ロジウム元素を含有する合金、ロジウム元素を含有する化合物(例えば、ロジウム元素の酸化物)等の形態で第2触媒層42に含まれる。触媒活性成分は、排ガス浄化性能を高める観点から、粒子状であることが好ましい。
【0128】
第2触媒層42に含まれるロジウム元素の量は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能とコストとのバランス等の観点から、第2触媒層42に含まれるロジウム元素の質量は、第2触媒層42の質量を基準として、好ましくは1.3質量%以上2.7質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以上2.4質量%以下である。第2触媒層42の質量に対する、第2触媒層42に含まれるロジウム元素の質量の百分率の算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。なお、ロジウム元素の質量は、金属換算の質量である。
【0129】
第2触媒層42は、ロジウム元素以外の1種又は2種以上の触媒活性成分を含んでもよい。ロジウム元素以外の触媒活性成分は、例えば、白金(Pt)元素、パラジウム(Pd)元素、ルテニウム(Ru)元素、イリジウム(Ir)元素、オスミウム(Os)元素等の貴金属元素から選択することができるが、排ガス浄化性能を高める観点から、白金(Pt)元素及びパラジウム(Pd)元素から選択することが好ましい。貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含有する合金、貴金属元素を含有する化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で第2触媒層42に含まれる。触媒活性成分は、排ガス浄化性能を高める観点から、粒子状であることが好ましい。
【0130】
一実施形態において、第2触媒層42は、ロジウム元素を含み、ロジウム元素以外の触媒活性成分を含まない。別の実施形態において、第2触媒層42は、ロジウム元素及びパラジウム元素を含み、ロジウム元素及びパラジウム元素以外の触媒活性成分を含まない。
【0131】
第2触媒層42が、ロジウム元素以外の触媒活性成分を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素以外の触媒活性成分の量は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能とコストとのバランス等の観点から、第2触媒層42に含まれるロジウム元素以外の触媒活性成分の質量は、第2触媒層42の質量を基準として、好ましくは1.3質量%以上2.7質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以上2.4質量%以下である。第2触媒層42の質量に対する、第2触媒層42に含まれるロジウム元素以外の触媒活性成分の質量の百分率の算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。
【0132】
第2触媒層42は、セリウム元素を含む無機酸化物を含むことが好ましい。セリウム元素を含む無機酸化物に関する説明は、上記と同様である。セリウム元素を含む金属酸化物は、好ましくは、CeO-ZrO系複合酸化物である。CeO-ZrO系複合酸化物に関する説明は上記と同様である。
【0133】
第2触媒層42に含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量は、第3触媒層43に含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量を考慮して、適宜調整することができる。
【0134】
第2触媒層42の質量と第3触媒層43の質量との合計に対する、第2触媒層42に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量と第3触媒層43に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量との合計の百分率P23は、百分率Pよりも大きいことが好ましい。第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に流入する排ガス中の酸素濃度は変動し得るため、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)の触媒活性が、第2排ガス処理部4に流入した排ガス中の酸素濃度の影響を受けて適度に発揮されない可能性がある。この点、百分率P23が、百分率Pよりも大きい場合、第2排ガス処理部4に流入した排ガス中の酸素濃度の影響を抑制することができ、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)の触媒活性を適度に発現させることができると考えられる。すなわち、排ガス流通方向Xの上流側から下流側に向かって酸素吸蔵能を増加させることにより、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を高めることができると考えられる。
【0135】
百分率P23は、百分率Pの1.1倍以上5.3倍以下であることが好ましく、1.3倍以上4.2倍以下であることがさらに好ましく、1.7倍以上2.9倍以下であることがさらに一層好ましい。百分率P23が小さすぎると、適度な触媒活性を発揮させるのに十分な酸素を供給することができない一方、百分率P23が大きすぎると、過剰な酸素が供給され、却って触媒活性を低下させると考えられる。この点、百分率P23が上記範囲であれば、適度な触媒活性を発揮させるのに十分な酸素を供給することができると考えられる。
【0136】
第2触媒層42の質量に対する、第2触媒層42に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率Pは、百分率Pよりも大きいことが好ましい。第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に流入する排ガス中の酸素濃度は変動し得るため、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)の触媒活性が、第2排ガス処理部4に流入した排ガス中の酸素濃度の影響を受けて適度に発揮されない可能性がある。この点、百分率Pが百分率Pよりも大きい場合、第2排ガス処理部4に流入した排ガス中の酸素濃度の影響を抑制することができ、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)の触媒活性を適度に発現させることができると考えられる。すなわち、排ガス流通方向Xの上流側から下流側に向かって酸素吸蔵能を増加させることにより、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)の触媒活性(例えば、NOx浄化性能)を高めることができると考えられる。
【0137】
百分率Pは、百分率Pの1.1倍以上5.3倍以下であることが好ましく、1.2倍以上2.9倍以下であることがさらに好ましく、1.2倍以上1.4倍以下であることがさらに一層好ましい。百分率Pが小さすぎると、適度な触媒活性を発揮させるのに十分な酸素を供給することができない一方、百分率Pが大きすぎると、過剰な酸素が供給され、却って触媒活性を低下させると考えられる。この点、百分率Pが上記範囲であれば、適度な触媒活性を発揮させるのに十分な酸素を供給することができると考えられる。
【0138】
百分率Pの算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。
【0139】
第2触媒層42は、その他の無機酸化物を含むことが好ましい。その他の無機酸化物に関する説明は上記と同様である。
【0140】
第2触媒層42に含まれるその他の無機酸化物の量は、第2触媒層42の熱耐久性及び第2排ガス処理部4の圧損を考慮して適宜調整することができる。第2触媒層42の熱耐久性の向上の観点からは、第2触媒層42に含まれるその他の無機酸化物の量は多い方が好ましいが、量の増加に伴って流入側セル411の排ガス流入側の開口部の面積が減少し、圧損が上昇する。したがって、第2触媒層42に含まれるその他の無機酸化物の質量は、第2触媒層42の質量を基準として、好ましくは20質量%以上72質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上57質量%以下、さらに一層好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0141】
第2触媒層42の質量に対する、第2触媒層42に含まれるその他の無機酸化物の質量の百分率の算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。
【0142】
触媒活性成分による排ガス浄化性能を効率よく発揮させる観点から、触媒活性成分は、セリウム元素を含む無機酸化物及び/又はその他の無機酸化物に担持されていることが好ましい。「触媒活性成分が無機酸化物に担持されている」の意義は、上記と同様である。
【0143】
第2触媒層42は、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。第2触媒層42が積層構造を有する場合、ある層の組成と、別の層の組成とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ある層に含まれる触媒活性成分と、別の層に含まれる触媒活性成分とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0144】
<第3触媒層>
以下、第3触媒層43について説明する。
【0145】
図5及び図7に示すように、第3触媒層43は、隔壁部413の流出側セル412側の表面上に形成されている部分431を有する。具体的には、第3触媒層43は、隔壁部413の流出側セル412側の表面上に、隔壁部413の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って形成されている部分431を有する。「隔壁部413の流出側セル412側の表面」は、隔壁部413の外形を規定する流出側セル412側の外表面を意味する。「隔壁部413の流出側セル412側の表面上に形成されている部分」は、隔壁部413の流出側セル412側の外表面から流出側セル412側に隆起している部分を意味する。
【0146】
第3触媒層43が、隔壁部413の流出側セル412側の表面上に形成されている部分431を有することにより、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガスは、第2触媒層42に含まれるロジウム元素と接触しやすくなる。これにより、第2触媒層42に含まれるロジウム元素の触媒活性を効率よく発揮させることができる。また、第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガスは、第3触媒層43に含まれるロジウムと接触しやすくなり、これにより、第3触媒層43に含まれるロジウム元素の触媒活性を効率よく発揮させることができる。第3触媒層43が部分431を有する場合、第3触媒層43が部分431を有しない場合と比較して、第2触媒層42及び第3触媒層43と接触する排ガスの流速が低下するため、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)と排ガスとが接触する機会の向上につながると推測される。なお、第3触媒層43の部分431内には、多孔質である隔壁部413が存在しない(これに対して、後述する第3触媒層43の部分432内には、多孔質である隔壁部413が存在する)ため、第3触媒層43が部分431を有する場合、第3触媒層43が部分431を有しない場合と比較して、第3触媒層43の見かけ密度が増加し、これにより、第2触媒層42及び第3触媒層43と接触する排ガスの流速が低下すると推測される。
【0147】
図7に示すように、第3触媒層43は、部分431とともに、隔壁部413の内部に存在する部分432を有していてもよい。隔壁部413は多孔質であるため、第3触媒層43を形成する際、通常、部分431とともに部分432が形成される。部分431が存在する領域は、隔壁部413が存在する領域と重ならないが、部分432が存在する領域は、隔壁部413が存在する領域と重なる。したがって、第3触媒層43を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用した断面観察等により断面を分析し、組成、形態等に基づいて、部分431及び部分432を特定することができる。
【0148】
第3触媒層43は、ウォールフロー型基材41の流出側セル412側に形成されている。第3触媒層43がウォールフロー型基材41の流出側セル412側に形成されていることは、第3触媒層43の部分431が所定の厚みを有していることから判断することができる。
【0149】
第1排ガス処理部3を通過して第2排ガス処理部4に供給される排ガスと、第2触媒層42に含まれるロジウム元素(第3触媒層43がロジウム元素を含む場合、第2触媒層42に含まれるロジウム元素及び第3触媒層43に含まれるロジウム元素)との接触効率を向上させる観点から、部分431が適度な厚みを有することが好ましい。第3触媒層43の部分431の厚みT431は、好ましくは20μm以上100μm以下、さらに好ましくは40μm以上80μm以下、さらに一層好ましくは45μm以上65μm以下である。
【0150】
第3触媒層43の部分431の厚みT431の算出方法は、第2触媒層42の部分421の厚みT421の算出方法と同様である。なお、第3触媒層43の部分431の厚みT431の算出方法では、第2排ガス処理部4(例えば、ウォールフロー型基材41の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に10mm離れた箇所)を、ウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、切断面から任意に選択された流出側セル412に存在する第3触媒層43の観察を行う。
【0151】
ウォールフロー型基材41の長さL41に対する、第3触媒層43の長さL43の百分率(L43/L41×100)は、好ましくは30%以上90%以下、さらに好ましくは50%以上80%以下、さらに一層好ましくは65%以上75%以下である。
【0152】
第3触媒層43の長さL43の算出方法は、第2触媒層42の長さL42の算出方法と同様である。なお、第3触媒層43の長さL43の算出方法では、サンプルをウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。
【0153】
ウォールフロー型基材41に設けられる第3触媒層43の量は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能とコストとのバランス等の観点から、ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第3触媒層43の質量(乾燥及び焼成後の質量)は、好ましくは27g/L以上53g/L以下、さらに好ましくは27g/L以上37g/L以下である。なお、ウォールフロー型基材41の体積は、ウォールフロー型基材41の見かけの体積である。
【0154】
ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第3触媒層43の質量の算出方法は、第2触媒層42の質量の算出方法と同様である。
【0155】
例えば、まず、第2排ガス処理部4から、ウォールフロー型基材41の軸方向に延在し、ウォールフロー型基材41の長さL41と同一の長さを有するサンプルを切り出し、サンプルをウォールフロー型基材41の軸方向と垂直な平面で切断し、第3触媒層43は含むが、第2触媒層42は含まない切断片S3を準備する。次いで、切断片S3と同一のサイズを有するウォールフロー型基材41の切断片を準備する。ウォールフロー型基材41の切断片は、第2触媒層42及び第3触媒層43をともに含まない。
【0156】
切断片S3の質量及びウォールフロー型基材41の切断片の質量を測定し、下記式に基づいて、切断片S3の単位体積当たりの第3触媒層43の質量を算出する。
切断片S3の単位体積当たりの第3触媒層43の質量=((切断片S3の質量)-(ウォールフロー型基材41の切断片の質量))/(切断片S3の体積)
【0157】
第2排ガス処理部4の任意の箇所から作製された3個の切断片S3に関して、切断片S3の単位体積当たりの第3触媒層43の質量を算出し、それらの平均値を算出する。下記式に基づいて、ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第3触媒層43の質量を算出する。
ウォールフロー型基材41の単位体積当たりの第3触媒層43の質量=(切断片S3の単位体積当たりの第3触媒層43の質量の平均値)×(第3触媒層43の長さL43/ウォールフロー型基材41の長さL41
【0158】
ウォールフロー型基材41の切断片を使用することなく、切断片S3の単位体積当たりの第3触媒層43の質量を算出してもよい。そのような算出方法の一例は、フロースルー型基材31の切断片を使用することなく、切断片S1の単位体積当たりの第1触媒層32の質量を算出する方法の一例と同様である。
【0159】
第3触媒層43は、1種又は2種以上の触媒活性成分を含む。触媒活性成分は、例えば、白金(Pt)元素、パラジウム(Pd)元素、ロジウム(Rh)元素、ルテニウム(Ru)元素、イリジウム(Ir)元素、オスミウム(Os)元素等の貴金属元素から選択することができるが、排ガス浄化性能を高める観点から、白金(Pt)元素、パラジウム(Pd)元素及びロジウム(Rh)元素から選択することが好ましい。貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含有する合金、貴金属元素を含有する化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の形態で第3触媒層43に含まれる。触媒活性成分は、排ガス浄化性能を高める観点から、粒子状であることが好ましい。
【0160】
一実施形態において、第3触媒層43は、ロジウム元素を含み、ロジウム元素以外の触媒活性成分を含まない。別の実施形態において、第3触媒層43は、ロジウム元素及びパラジウム元素を含み、ロジウム元素及びパラジウム元素以外の触媒活性成分を含まない。
【0161】
第3触媒層43は、第2触媒層42に含まれる触媒活性成分とは異なる触媒活性成分を含んでもよい。これにより、第2排ガス処理部4の排ガス浄化性能を向上させることができる。一実施形態において、第3触媒層43は、パラジウム元素を含む。この実施形態において、第3触媒層43は、パラジウム元素以外の触媒活性成分を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0162】
第3触媒層43に含まれる触媒活性成分の量は、排ガス浄化性能とコストとのバランス等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能とコストとのバランス等の観点から、第3触媒層43に含まれるロジウム元素又はパラジウム元素の質量は、第3触媒層43の質量を基準として、好ましくは0.8質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは1.1質量%以上1.5質量%以下である。第3触媒層43がロジウム元素及びパラジウム元素を含む場合には、ロジウム元素及びパラジウム元素の合計量が上記範囲であることが好ましい。第3触媒層43の質量に対する、第3触媒層43に含まれるロジウム元素又はパラジウム元素の質量の百分率の算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。なお、ロジウム元素の質量及びパラジウム元素の質量は、金属換算の質量である。
【0163】
第3触媒層43は、セリウム元素を含む無機酸化物を含むことが好ましい。セリウム元素を含む無機酸化物に関する説明は、上記と同様である。セリウム元素を含む金属酸化物は、好ましくは、CeO-ZrO系複合酸化物である。CeO-ZrO系複合酸化物に関する説明は上記と同様である。
【0164】
第3触媒層43に含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量は、第2触媒層42に含まれる、セリウム元素を含む無機酸化物の量を考慮して、適宜調整することができる。
【0165】
上記の通り、百分率P23は、第1触媒層32の質量に対する、第1触媒層32に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率よりも大きいことが好ましい。
【0166】
上記の通り、百分率P23は、百分率Pの1.1倍以上5.3倍以下であることが好ましく、1.3倍以上4.2倍以下であることがさらに好ましく、1.7倍以上2.9倍以下であることがさらに一層好ましい。
【0167】
第3触媒層43の質量に対する、第3触媒層43に含まれるセリウム元素の酸化セリウム換算の質量の百分率Pは、百分率Pよりも大きいことが好ましい。百分率Pが百分率Pよりも大きいことが好ましい理由は、百分率Pが百分率Pよりも大きいことが好ましい理由と同様である。
【0168】
百分率Pは、百分率Pの1.1倍以上5.3倍以下であることが好ましく、2.4倍以上4.4倍以下であることがさらに好ましく、2.4倍以上3.0倍以下であることがさらに一層好ましい。百分率Pが小さすぎると、適度な触媒活性を発揮させるのに十分な酸素を供給することができない一方、百分率Pが大きすぎると、過剰な酸素が供給され、却って触媒活性を低下させると考えられる。この点、百分率Pが上記範囲であれば、適度な触媒活性を発揮させるのに十分な酸素を供給することができると考えられる。
【0169】
百分率Pの算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。
【0170】
第3触媒層43は、その他の無機酸化物を含むことが好ましい。その他の無機酸化物に関する説明は上記と同様である。
【0171】
第3触媒層43に含まれるその他の無機酸化物の量は、第3触媒層43の熱耐久性及び第2排ガス処理部4の圧損を考慮して適宜調整することができる。第3触媒層43の熱耐久性の向上の観点からは、第3触媒層43に含まれるその他の無機酸化物の量は多い方が好ましいが、量の増加に伴って流入側セル411の排ガス流入側の開口部の面積が減少し、圧損が上昇する。したがって、第3触媒層43に含まれるその他の無機酸化物の質量は、第3触媒層43の質量を基準として、好ましくは19質量%以上63質量%以下、さらに好ましくは19質量%以上43質量%以下である。
【0172】
第3触媒層43の質量に対する、第3触媒層43に含まれるその他の無機酸化物の質量の百分率の算出方法は、百分率Pの算出方法と同様である。
【0173】
触媒活性成分による排ガス浄化性能を効率よく発揮させる観点から、触媒活性成分は、セリウム元素を含む無機酸化物及び/又はその他の無機酸化物に担持されていることが好ましい。「触媒活性成分が無機酸化物に担持されている」の意義は、上記と同様である。
【0174】
第3触媒層43は、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。第3触媒層43が積層構造を有する場合、ある層の組成と、別の層の組成とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ある層に含まれる触媒活性成分と、別の層に含まれる触媒活性成分とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0175】
以下、第2触媒層42及び第3触媒層43の形成方法について説明する。
ウォールフロー型基材41と、第2触媒層42を形成するためのスラリーと、第3触媒層43を形成するためのスラリーを準備する。第2触媒層42が積層構造を有する場合、第2触媒層42を形成するためのスラリーとして、2種以上のスラリーを準備する。第3触媒層43が積層構造を有する場合、第3触媒層43を形成するためのスラリーとして、2種以上のスラリーを準備する。
【0176】
第2触媒層42を形成するためのスラリーの組成は、第2触媒層42の組成に応じて調整される。第3触媒層43を形成するためのスラリーの組成は、第3触媒層43の組成に応じて調整される。スラリーは、例えば、貴金属元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダー、造孔剤、溶媒等を含む。貴金属元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダー、造孔剤、溶媒等としては、上述した第1触媒層32を形成するためのスラリーと同様のものを用いることができる。
【0177】
第2触媒層42を形成するためのスラリーをウォールフロー型基材41に塗布し、乾燥させ、必要に応じて焼成する。第2触媒層42が積層構造を有する場合、この操作を繰り返す。これにより、第2触媒層42の前駆層が形成される。スラリーの固形分濃度、粘度等を調整することにより、第2触媒層42の前駆層の長さ(ひいては、第2触媒層42の長さ)を調整することができる。また、スラリーのコート量、スラリーを構成する材料の種類、スラリーに含まれる造孔剤の粒径等を調整することにより、第2触媒層42の前駆層の厚み(ひいては、第2触媒層42の厚み)及び第2触媒層42の前駆層の質量(ひいては、第2触媒層42の質量)を調整することができる。
【0178】
第3触媒層43を形成するためのスラリーをウォールフロー型基材41に塗布し、乾燥させ、必要に応じて焼成する。第3触媒層43が積層構造を有する場合、この操作を繰り返す。これにより、第3触媒層43の前駆層が形成される。スラリーの固形分濃度、粘度等を調整することにより、第3触媒層43の前駆層の長さ(ひいては、第3触媒層43の長さ)を調整することができる。また、スラリーのコート量、スラリーを構成する材料の種類、スラリーに含まれる造孔剤の粒径等を調整することにより、第3触媒層43の前駆層の厚み(ひいては、第3触媒層43の厚み)及び第3触媒層43の前駆層の質量(ひいては、第3触媒層43の質量)を調整することができる。
【0179】
乾燥温度は、通常70℃以上200℃以下、好ましくは90℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、通常1時間以上3時間以下、好ましくは1.5時間以上2時間以下である。
【0180】
第2触媒層42を形成するためのスラリーの塗布は、例えば、ウォールフロー型基材41の排ガス流入側の端部を、第2触媒層42を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引することにより行うことができる。
【0181】
第3触媒層43を形成するためのスラリーの塗布は、例えば、ウォールフロー型基材41の排ガス流出側の端部を、第3触媒層43を形成するためのスラリー中に浸漬し、反対側からスラリーを吸引することにより行うことができる。
【0182】
第2触媒層42の前駆層及び第3触媒層43の前駆層の形成後、焼成する。これにより、第2触媒層42及び第3触媒層43が形成される。焼成温度は、通常450℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下であり、焼成時間は、通常1時間以上4時間以下、好ましくは1.5時間以上2時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0183】
造孔剤の粒径は、適宜調整することができるが、造孔剤のメジアン径D50は、剥離抑制、圧損上昇抑制、PMの捕集性能の観点から、通常5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下である。造孔剤の粒径が大きいほど、第2触媒層42及び第3触媒層43の厚みが大きくなる。D50の測定は上記と同様である。
【実施例
【0184】
以下、実施例を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0185】
第1排ガス処理部Aの作製
(1)下層形成用スラリーの調製
下記組成及びBET比表面積のOSC材料(セリウム元素を含む無機酸化物)を用意した。
CeO:30質量%、ZrO:55質量%、Y:5質量%、La:5質量%、Nd:5質量%、BET比表面積:80m/g
なお、OSC材料中、CeO、Y3、La、Nd及びZrOが固溶体を形成していた。
ボールミルポットに、OSC材料、酸化ランタン修飾アルミナ(La修飾量:1質量%、BET比表面積:100m/g)、酢酸バリウム、アルミナゾル及び水を加え、ボールミルにより混合及び粉砕を行ない、ベーススラリーを得た。このベーススラリーと硝酸パラジウム水溶液とを混合し、下層形成用スラリーを得た。下層形成用スラリー中の各成分の量比は、焼成後の下層において、OSC材料が28.2質量%、酸化ランタン修飾アルミナが47.0質量%、炭酸バリウムが10.0質量%、アルミナが10.0質量%、パラジウムが4.8質量%となる量とした。
【0186】
(2)下層の形成
得られた下層形成用スラリーに、フロースルー型基材を浸漬し、その後、フロースルー型基材を150℃で2.5時間乾燥させた後、450℃で2.5時間焼成して、下層を形成した。フロースルー型基材の単位体積当たりの下層の質量は、130g/Lであった。フロースルー型基材の単位体積当たりの下層中のパラジウム含量は、金属換算で6.2g/Lであった。なお、フロースルー型基材として、図2に示す構造を有し、厚みが50~70μmの隔壁で区画された軸方向に延びるセルを、軸方向と直交する面において、600セル/インチの密度で有し、体積が1.0Lであるフロースルー型基材を使用した。
【0187】
(3)上層形成用スラリーの調製
下記組成及びBET比表面積のZrO系材料を用意した。
ZrO:85質量%、Y:5質量%La:5質量%、Nd:5質量%、BET比表面積:80m/g
なお、ZrO系材料において、ZrO、Y3、La及びNdが固溶体を形成していた。
ボールミルポットに、ZrO系材料、ランタン修飾アルミナ(La修飾量:1質量%、BET比表面積:100m/g)、アルミナゾル及び水を加えて、ボールミルにより混合及び粉砕を行ない、ベーススラリーを得た。このベーススラリーと硝酸ロジウムの水溶液とを混合し、上層形成用スラリーを得た。上層形成用スラリー中の各成分の量比は、焼成後の上層においてZrO系材料が66.7質量%、ランタン修飾アルミナが22.0質量%、アルミナが10.0質量%、ロジウムが金属換算で1.3質量%となる量とした。
【0188】
(4)上層の形成
得られた上層形成用スラリーに、下層が形成されたフロースルー型基材を浸漬し、その後、フロースルー型基材を150℃で2.5時間乾燥させた後、450℃で2.5時間焼成した。これにより、ウォールフロー型基材と、フロースルー型基材に形成された第1触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造し、製造された排ガス浄化用触媒を第1排ガス処理部として使用した。第1触媒層は、下層と下層の表面全域に形成された上層とからなる二層構造を有していた。フロースルー型基材の単位体積当たりの上層の焼成後の質量は、60g/Lであった。フロースルー型基材の単位体積当たりの上層中のロジウム含量は、金属換算で0.8g/Lであった。
【0189】
第1排ガス処理部Bの作製
第1排ガス処理部の下層の形成において、下層形成用スラリー中の各成分の量比を、焼成後の下層において、OSC材料が35.9質量%、酸化ランタン修飾アルミナが39.3質量%、炭酸バリウムが10.0質量%、アルミナが10.0質量%、パラジウムが4.8質量%となる量に変更した点、並びに、第1排ガス処理部の上層の形成において、上層形成用スラリー中のZrO系材料を、CeO:5質量%、ZrO:80質量%、Y:5質量%、La:5質量%、Nd:5質量%、BET比表面積:80m/gの組成とBET比表面積を持つOSC材に変更した点を除き、第1排ガス処理部Aと同様にして、第1排ガス処理部Bを作製した。
【0190】
第1排ガス処理部Cの作製
第1排ガス処理部の下層の形成において、下層形成用スラリー中の各成分の量比を、焼成後の下層において、OSC材料が35.9質量%、酸化ランタン修飾アルミナが39.3質量%、炭酸バリウムが10.0質量%、アルミナが10.0質量%、パラジウムが4.8質量%となる量に変更した点、並びに、第1排ガス処理部の上層の形成において、上層形成用スラリー中のZrO系材料を、CeO:10質量%、ZrO:75質量%、Y:5質量%、La:5質量%、Nd:5質量%、BET比表面積:80m/gの組成とBET比表面積を持つOSC材に変更した点を除き、第1排ガス処理部Aと同様にして、第1排ガス処理部Cを作製した。
【0191】
第1排ガス処理部Dの作製
第1排ガス処理部の焼成後の下層において、下層形成用スラリー中の各成分の量比を、OSC材料が46.2質量%、酸化ランタン修飾アルミナが29.0質量%、炭酸バリウムが10.0質量%、アルミナが10.0質量%、パラジウムが4.8質量%となる量に変更した点、並びに、第1排ガス処理部の上層の形成において、上層形成用スラリー中のZrO系材料を、CeO:10質量%、ZrO:75質量%、Y:5質量%、La:5質量%、Nd:5質量%、BET比表面積:80m/gの組成とBET比表面積を持つOSC材に変更した点を除き、第1排ガス処理部Aと同様にして、第1排ガス処理部Dを作製した。
【0192】
第1排ガス処理部Eの作製
第1排ガス処理部の下層の形成において、下層形成用スラリー中の各成分の量比を、焼成後の下層において、OSC材料が23.1質量%、酸化ランタン修飾アルミナが52.1質量%、炭酸バリウムが10.0質量%、アルミナが10.0質量%、パラジウムが4.8質量%となる量に変更した点を除き、第1排ガス処理部Aと同様にして、第1排ガス処理部Eを作製した。
【0193】
第1排ガス処理部Fの作製
第1排ガス処理部の下層の形成において、下層形成用スラリー中の各成分の量比を、焼成後の下層において、OSC材料が51.3質量%、酸化ランタン修飾アルミナが23.9質量%、炭酸バリウムが10.0質量%、アルミナが10.0質量%、パラジウムが4.8質量%となる量に変更した点、並びに、第1排ガス処理部の上層の形成において、上層形成用スラリー中のZrO系材料を、CeO:15質量%、ZrO:70質量%、Y:5質量%、La:5質量%、Nd:5質量%、BET比表面積:80m/gの組成とBET比表面積を持つOSC材に変更した点を除き、第1排ガス処理部Aと同様にして、第1排ガス処理部Fを作製した。
【0194】
第2排ガス処理部aの作製
(1)第2触媒層形成用スラリーの調製
CeO-ZrO固溶体粉末(CeO-ZrO固溶体中にCeO15質量%、ZrO70質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物15質量%を含有)及びアルミナ粉末を用意した。CeO-ZrO固溶体粉末とアルミナ粉末と混合し、硝酸ロジウム水溶液中に含浸させた。
次いで、この混合液に、造孔剤(架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、液媒として水と、を混合して、第2触媒層形成用スラリーを調製した。スラリー中の各成分の質量比は、焼成後の第2触媒層において、ロジウムが2.3質量%となり、ロジウム以外の成分比率が、CeO-ZrO固溶体粉末81.4質量%、アルミナ10.6質量%、アルミナゾル5.0質量%、ジルコニア3.0質量%となる量とし、造孔剤は、焼成後の触媒層の質量に対して30.0質量%となる量とした。
【0195】
(2)第3触媒層形成用スラリーの調製
CeO-ZrO固溶体粉末(CeO-ZrO固溶体中にCeO15質量%、ZrO70質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有)及びアルミナ粉末を混合し、硝酸ロジウム水溶液中に含浸させた。
次いで、この混合液に、造孔剤(架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、アルミナゾルと、該ジルコニアゾルと、液媒として水と、を混合して、第3触媒層形成用スラリーを調製した。スラリー中の各成分の質量比は、焼成後の第3触媒層において、ロジウムが1.5質量%となり、ロジウム以外の成分比率が、CeO-ZrO固溶体粉末81.5質量%、アルミナ10.5質量%、アルミナゾル5.0質量%、ジルコニア3.0質量%となる量とし、造孔剤は、焼成後の触媒層の質量に対して30質量%となる量とした。
【0196】
(3)第2触媒層の前駆層の形成
ウォールフロー型基材として、図5に示す構造を有し、厚みが200~250μmの隔壁で区画された軸方向に延びるセルを、軸方向と直交する面において、300セル/inchの密度で有し、体積が1.4Lであるウォールフロー型基材を使用した。ウォールフロー型基材は、流入側端面における1個の流入側セルの開口部の面積と、流出側端面における1個の流出側セルの開口部の面積とが概ね同じであった。
第2触媒層形成用スラリー中にウォールフロー型基材の排ガス流通方向の上流側端部を浸漬し、下流側から吸引した後に70℃で10分乾燥させた。これにより、ウォールフロー型基材の隔壁における流入側セルに臨む面に、第2触媒層形成用スラリーの固形分からなる層(第2触媒層の前駆層)を形成した。
【0197】
(4)第3触媒層の前駆層の形成
第2触媒層の前駆層を形成した後、ウォールフロー型基材の排ガス流通方向の下流側端部を、第3触媒層形成用スラリー中に浸漬し、上流側から吸引した後に70℃で10分乾燥させた。これにより、ウォールフロー型基材の隔壁における流出側セルに臨む面に、第3触媒層形成用スラリーの固形分からなる層(第3触媒層の前駆層)を形成した。
【0198】
(5)焼成
第2触媒層の前駆層及び第3触媒層の前駆層を形成した後、ウォールフロー型基材を、450℃で1時間にわたり焼成した。これにより、ウォールフロー型基材と、ウォールフロー型基材に形成された第2触媒層及び第3触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造し、製造された排ガス浄化用触媒を第2排ガス処理部として使用した。なお、第2触媒層及び第3触媒層は、単層で構成されていた。
【0199】
ウォールフロー型基材の全長に対する第2触媒層の長さの比率は45%であり、ウォールフロー型基材全体の体積に対する単位体積当たりの第2触媒層の質量は焼成後の質量で17.6g/Lであった。ウォールフロー型基材の全長に対する第3触媒層の長さの比率は70%であり、ウォールフロー型基材全体の体積に対する単位体積当たりの第3触媒層の質量は焼成後の質量で27.4g/Lであった。
【0200】
得られた排ガス浄化用触媒をウォールフロー型基材の軸方向と垂直な平面で切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して切断面に存在する第2触媒層及び第3触媒層の観察を行い、第2触媒層及び第3触媒層の形態を特定した。第1触媒層の観察では、排ガス浄化用触媒を、基材の排ガス流入側の端部から基材の軸方向に10mm離れた箇所で切断し、第2触媒層の観察では、排ガス浄化用触媒を、基材の排ガス流出側の端部から基材の軸方向に10mm離れた箇所で切断した。
【0201】
SEMによる切断面の観察において、視野倍率は300倍とし、視野全幅(基材の軸方向と垂直な方向の長さ)は500~600μmとした。SEMによって観察する領域は、セルの角部が含まれないように設定した。
【0202】
第2触媒層のみが形成された部分のSEM観察像を図8に示す。図8に示すように、ウォールフロー型基材の隔壁が存在する領域及び第2触媒層が存在する領域は、ウォールフロー型基材の隔壁部と第2触媒層との間の形態面の相違に基づいて特定することができた。ウォールフロー型基材の隔壁が存在する領域及び第3触媒層が存在する領域も同様に、ウォールフロー型基材の隔壁と第3触媒層との間の形態面の相違に基づいて特定することができた。
【0203】
第2触媒層は、ウォールフロー型基材の排ガス流通方向の上流側端部から下流側に向けて、隔壁の流入側セル側の表面上に形成されている部分(隔壁の流入側セル側の表面から流入側セル側に向けて隆起している部分)を有していた。なお、隔壁の流入側セル側の表面は、隔壁の外形を構成する流入側セル側の外表面である。隔壁の流入側セル側の表面上に形成されている部分は、隔壁の流入側セル側の外表面から流入側セル側に隆起している部分であり、以下「第2触媒層の隆起部分」という場合がある。
【0204】
第3触媒層は、ウォールフロー型基材の排ガス流通方向の下流側端部から上流側に向けて、隔壁の流出側セル側の表面上に形成されている部分(流出側セル側の隔壁の表面から流出側セル側に向けて隆起している部分)を有していた。なお、隔壁の流出側セル側の表面は、隔壁の外形を構成する流出側セル側の外表面である。隔壁の流出側セル側の表面上に形成されている部分は、隔壁の流出側セル側の外表面から流出側セル側に隆起している部分であり、以下「第3触媒層の隆起部分」という場合がある。
【0205】
図8に示すように、SEM観察像において、左端側から順に、基材の軸方向に垂直な第1~第37のグリッド線を15μm間隔で描き、基材の隔壁部が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、基材の隔壁部の表面の位置を特定した。同様に、第1触媒層が存在する領域の輪郭線と各グリッド線との交点同士を直線で結び、第1触媒層の表面の位置を特定した。ある交点P1から該交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2を表面の位置の特定に使用しなかった(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2を除いた)。また、交点P1から交点P1に隣接する交点P2への厚み方向の変化量がグリッド線の間隔(15μm)を超えるとともに、交点P1から、交点P2に隣接する交点P3への厚み方向の変化量もグリッド線の間隔(15μm)を超える場合、交点P2に加えて交点P3も表面の位置の特定に使用しなかった(すなわち、直線で結ぶ交点から、交点P2及び交点P3を除いた)。このように直線で結ぶ交点から連続して5つの交点を除く場合、当該SEM画像は、厚みの測定に使用しなかった。
【0206】
基材の隔壁部の表面の位置及び第2触媒層の表面の位置を特定した後、画像解析ソフトウェアを使用して、第2のグリッド線と、第36のグリッド線と、基材の隔壁部の表面と、第2触媒層の表面とで囲まれた領域の面積を求めた。画像解析ソフトウェアとしては、AreaQ(エステック株式会社製)を使用した。なお、画像の両端部は不鮮明になり易く、隔壁部の表面の位置及び第1触媒層の表面の位置を特定し難いため、第1のグリッド線及び第37のグリッド線は使用しなかった。
【0207】
上記領域の面積を求めた後、下記式に基づいて、上記領域の厚みを算出した。
上記領域の厚み=上記領域の面積/(グリッド線の間隔×グリッド線の間隔の数)
なお、グリッド線の間隔は15μmであり、グリッド線の間隔の数は34である。
【0208】
切断面から任意に選択された20個の第2触媒層に関して、上記領域の厚みを算出し、得られた算出値の平均値を求めたところ、47μmであった。この平均値を、第2触媒層の隆起部分の厚みとした。第3触媒層の隆起部分の厚みも同様に算出したところ、41μmであった。
【0209】
第2排ガス処理部bの作製
第2排ガス処理部の第2触媒層の形成において、第2触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO32質量%、ZrO58質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更し、CeO-ZrO固溶体粉末とアルミナ粉末とを混合し、第2触媒層中のRhが金属換算で0.6質量%、Pdが金属換算で1.7質量%となるよう調整した硝酸ロジウム及び硝酸パラジウムの混合溶液中に含浸した点、並びに、第2排ガス処理部の第3触媒層の形成において、第3触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO32質量%、ZrO58質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更し、CeO-ZrO固溶体粉末とアルミナ粉末とを混合し、第3触媒層中のRhが金属換算で0.4質量%、Pdが金属換算で1.1質量%となるよう調整した硝酸ロジウム及び硝酸パラジウムの混合溶液中に含浸した点を除き、第2排ガス処理部aと同様にして、第2排ガス処理部bを作製した。
【0210】
第2排ガス処理部cの作製
第2排ガス処理部の第2触媒層の形成において、第2触媒層中のRhが金属換算で0.6質量%、Pdが金属換算で1.7質量%となるよう調整した硝酸ロジウム及び硝酸パラジウムの混合溶液中に含浸した点、並びに、第2排ガス処理部の第3触媒層の形成において、第3触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO20質量%、ZrO70質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更し、CeO-ZrO固溶体粉末とアルミナ粉末とを混合し、第3触媒層中のRhが金属換算で0.4質量%、Pdが金属換算で1.1質量%となるよう調整した硝酸ロジウム及び硝酸パラジウムの混合溶液中に含浸した点を除き、第2排ガス処理部aと同様にして、第2排ガス処理部cを作製した。
【0211】
第2排ガス処理部dの作製
第2排ガス処理部の第2触媒層の形成において、第2触媒層中のRhが金属換算で1.7質量%となるよう調整した硝酸ロジウム溶液中に含浸し、焼成後のウォールフロー型基材全体の体積に対する単位体積当たりの第2触媒層の質量を焼成後の質量で23.5g/Lとした点、並びに、第2排ガス処理部の第3触媒層の形成において、第3触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO20質量%、ZrO70質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更し、第3触媒層中のRhが金属換算で1.1質量%となるよう調整した硝酸ロジウム溶液中に含浸し、焼成後のウォールフロー型基材全体の体積に対する単位体積当たりの第2触媒層の質量を焼成後の質量で36.5g/Lとした点を除き、第2排ガス処理部aと同様にして、第2排ガス処理部dを作製した。
【0212】
第2排ガス処理部eの作製
第2排ガス処理部の第2触媒層の形成において、第2触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO23質量%、ZrO67質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更し、第2触媒層中のRhが金属換算で1.7質量%となるよう調整した硝酸ロジウム溶液中に含浸し、焼成後のウォールフロー型基材全体の体積に対する単位体積当たりの第2触媒層の質量を焼成後の質量で23.5g/Lとした点、並びに、第2排ガス処理部の第3触媒層の形成において、第3触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO30質量%、ZrO60質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更し、CeO-ZrO固溶体粉末とアルミナ粉末とを混合した点を除き、第2排ガス処理部aと同様にして、第2排ガス処理部eを作製した。
【0213】
第2排ガス処理部fの作製
第2排ガス処理部の第2触媒層の形成において、第2触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO8質量%、ZrO82質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更した点、並びに、第2排ガス処理部の第3触媒層の形成において、第3触媒層形成用スラリーの調製に使用するCeO-ZrO固溶体粉末を、CeO-ZrO固溶体中にCeO10質量%、ZrO80質量%、Ce以外の希土類元素の酸化物10質量%を含有するCeO-ZrO固溶体粉末に変更した点を除き、第2排ガス処理部aと同様にして、第2排ガス処理部fを作製した。
【0214】
第1排ガス処理部A~Fにおける第1触媒層の組成を表1に示し、第2排ガス処理部a~fにおける第2触媒層及び第3触媒層の組成を表2に示す。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
実施例1~8及び比較例1~3:排気ガス浄化性能の評価
第1排ガス処理部及び第2排ガス処理部について、16~24万キロ走行を想定した劣化処理として、次のような耐久条件を課した。具体的には、排ガスが流通する排気通路の上流側に第1排ガス処理部を配置し、排気通路の下流側に第2排ガス処理部を配置して、下記条件にてエンジンを稼働させて排出した排ガスを接触させた状態で、触媒温度を下記温度に保ち、下記の時間処理した。
【0218】
(耐久条件)
・耐久用エンジン:乗用NA 2L ガソリンエンジン
・使用ガソリン:市販レギュラーガソリン
・耐久温度・時間:第1排ガス処理部層内1000℃-80hr
・触媒前段空燃比変動:A/F=14.6(20sec)→フューエルカット制御(5sec)→12.5(5sec)の繰り返し
【0219】
上記条件にて耐久試験を行った後、耐久試験後の第1排ガス処理部及び耐久試験後の第2排ガス処理部を表3に示すように組み合わせて、排ガス流路上流側に耐久試験後の第1排ガス処理部が位置し、排ガス流路下流側に耐久試験後の第2排ガス処理部が位置するように、下記車両に設置した。車両試験として、この車両を、国際調和排ガス試験モード(WLTC)の運転条件に従って運転した。運転開始から1800秒までの第1排ガス処理部及び第2排ガス処理部を通過した排ガス中のNMHC(メタン以外のハイドロカーボン)及びNOxを測定し、単位走行距離当たりの排出量を求めた。得られたエミッション値を、基準となる実施例1の値を1としたときの値を表3に示す。また、WLTCの排出量(Totalの排出量)とともにNMHC及びNOxのそれぞれの排出量を表3に示す。
【0220】
(浄化率測定条件)
・評価車両:1.5L直噴ターボ乗用車
・使用ガソリン:認証試験用燃料
【0221】
【表3】
【0222】
表3に示すように、実施例1~8における第1排ガス処理部及び第2排ガス処理部の組み合わせは、比較例1~3の第1排ガス処理部及び第2排ガス処理部の組み合わせよりも、TotalのNMHC及びNOx排出量が少なくなっており、このことから、本発明の実施例1~8における第1排ガス処理部及び第2排ガス処理部の組み合わせは、酸化セリウムの使用量を低減しつつ、高い排ガス浄化性能が発揮されていることが確認された。
【符号の説明】
【0223】
1 排ガス浄化システム
2 排気管
3 第1排ガス処理部
31 フロースルー型基材
311 セル
312 隔壁部
32 第1触媒層
4 第2排ガス処理部
41 ウォールフロー型基材
411 流入側セル
412 流出側セル
413 隔壁部
42 第2触媒層
43 第3触媒層
44 第1封止部
45 第2封止部
X 排ガス流通方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8