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特許7436534情報処理装置、プログラム、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/32 20120101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q20/32 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022020608
(22)【出願日】2022-02-14
(65)【公開番号】P2023117834
(43)【公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】593022629
【氏名又は名称】株式会社ジェーシービー
(73)【特許権者】
【識別番号】521008248
【氏名又は名称】合同会社Keychain
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】間下 公照
(72)【発明者】
【氏名】南井 享
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ホープ
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/002282(WO,A1)
【文献】特開2006-313440(JP,A)
【文献】特開平08-221662(JP,A)
【文献】特開2006-099485(JP,A)
【文献】特開2007-323329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのアカウントの第1残高を記録する可読媒体を読み取って前記第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する第1装置であって第1ネットワークを介して通信可能な第1装置との接続状態を判定する接続判定部と、
前記第1残高を含む前記アカウントのアカウント残高を示すアカウント残高情報を取得する取得部と、
前記アカウント残高に対して、前記第1装置と前記第1ネットワークとの接続状態に関わらず前記ユーザが利用可能な残高を確保するためのオフライン枠を設定する設定部と、
前記判定された接続状態に基づいて、前記オフライン枠を示すオフライン枠情報を、前記第1装置経由で前記可読媒体に前記第1残高として書き込むために、前記第1ネットワークを介して前記第1装置に送信する送信部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記アカウント残高に対して前記オフライン枠が前記設定部により設定できない場合、前記減算処理を制限するための制限情報を、前記第1装置に送信する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記情報処理装置は、
前記第1装置から、前記第1ネットワークを介して、前記減算処理の履歴を示す第1履歴情報を受信する受信部と、
前記第1履歴情報に基づいて、所定期間ごとに、前記第1残高から減算した第1取引金額の前記所定期間の累計を算出する算出部と、
前記オフライン枠の残高から前記累計を減算し、前記減算したオフライン枠の残高に基づいて、前記アカウント残高を更新する更新部と、をさらに備え、
前記設定部は、前記更新されたアカウント残高に対して、前記オフライン枠を再設定する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記アカウント残高に対して、前記オフライン枠に加え、前記ユーザの第2取引の決済を行うための第2装置と前記情報処理装置とが通信可能に接続することで利用できる残高を確保するためのオンライン枠を設定し、
前記情報処理装置は、
前記第2装置から、前記オンライン枠の残高で支払い可能な第2取引金額を含む決済の要求を受け付ける受付部と、
前記決済の要求に基づいて、前記オンライン枠の残高から前記第2取引金額を減算する処理を実行する決済処理部と、をさらに備え、
前記更新部は、前記オンライン枠の残高に基づいて前記アカウント残高を更新し、
前記設定部は、前記更新されたアカウント残高に対して、さらに、前記オンライン枠を再設定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記第1装置が承認可能な第1取引の条件を少なくとも一つ含む承認情報を記憶する承認記憶部を参照して、前記第1取引が前記第1装置で承認可能であるかを判定させるために、前記承認情報を前記第1装置に送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記第1装置が承認可能な取引の条件を少なくとも一つ含む承認情報を記憶する承認記憶部を参照して、前記第1取引が前記第1装置で承認可能であるかを判定する承認判定部をさらに備え、
前記送信部は、前記承認判定部の判定の結果を含む承認判定情報に基づいて、前記第1装置に、前記減算処理を実行可能にするための指示を送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記承認判定部は、前記第1取引が前記第1装置で承認可能でないと判定した場合、前記第1装置と通信可能に接続されている第3装置が承認可能な取引の条件を少なくとも一つ含む上位承認情報を記憶する上位承認記憶部を参照して、前記第1取引が承認可能であるかを再判定し、
前記承認判定情報は、前記承認判定部が再判定した結果を含み、
前記送信部は、前記承認判定情報に基づいて、前記第1装置に、前記第3装置から前記第1取引の承認が得られた場合に前記減算処理を実行可能にするための指示を送信する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータに、
ユーザのアカウントの第1残高を記録する可読媒体を読み取って前記第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する第1装置であって第1ネットワークを介して通信可能な第1装置との接続状態を判定する接続判定機能と、
前記第1残高を含む前記アカウントのアカウント残高を示すアカウント残高情報を取得する取得機能と、
前記アカウント残高に対して、前記第1装置と前記第1ネットワークとの接続状態に関わらず前記ユーザが利用可能な残高を確保するためのオフライン枠を設定する設定機能と、
前記判定された接続状態に基づいて、前記オフライン枠を示すオフライン枠情報を、前記第1装置経由で前記可読媒体に前記第1残高として書き込むために、前記第1ネットワークを介して前記第1装置に送信する送信機能と、を実現させる、
プログラム。
【請求項9】
コンピュータが、
ユーザのアカウントの第1残高を記録する可読媒体を読み取って前記第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する第1装置であって第1ネットワークを介して通信可能な第1装置との接続状態を判定し、
前記第1残高を含む前記アカウントのアカウント残高を示すアカウント残高情報を取得し、
前記アカウント残高に対して、前記第1装置と前記第1ネットワークとの接続状態に関わらず前記ユーザが利用可能な残高を確保するためのオフライン枠を設定し、
前記判定された接続状態に基づいて、前記オフライン枠を示すオフライン枠情報を、前記第1装置経由で前記可読媒体に前記第1残高として書き込むために、前記第1ネットワークを介して前記第1装置に送信する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが所有するカードや端末等の媒体(以下、「ユーザ媒体」ともいう)と当該ユーザにサービスや商品を提供する事業者が所有する決済用の端末(以下、「決済用端末」ともいう)との間の通信により商取引の決済を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。このような技術は、M2M(Machine to Machine)サービスやIoT(Internet of Things)サービスに欠かせない存在となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-119483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ユーザ媒体と決済端末との間の通信により商取引の決済を行う技術においても、クレジットカード決済等、インターネット等のネットワークに決済用端末が接続していることが決済の前提となることがある。このような決済では、このネットワークとの接続ができない環境では利用できないという課題がある。他方、プリペイドカード決済等は、このようなネットワークに決済用端末が接続されていることが決済の前提とならないこともある。しかしながら、このような決済では、ユーザが事前にチャージして残高を充当する必要があったり、チャージの上限額はクレジットカード限度額と比較すると少額であったりとユーザの使い勝手に改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、ユーザ媒体と決済用端末との間の通信により商取引の決済を行うにあたって、インターネット等のネットワークと決済用端末との接続を決済の前提とせず、ユーザの使い勝手を改善できる情報処理装置、プログラム、および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、ユーザのアカウントの第1残高を記録する可読媒体を読み取って第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する第1装置であって第1ネットワークを介して通信可能な第1装置との接続状態を判定する接続判定部と、第1残高を含むアカウントのアカウント残高を示すアカウント残高情報を取得する取得部と、アカウント残高に対して、第1装置と第1ネットワークとの接続状態に関わらずユーザが利用可能な残高を確保するためのオフライン枠を設定する設定部と、判定された接続状態に基づいて、オフライン枠を示すオフライン枠情報を、第1装置経由で可読媒体に第1残高として書き込むために、第1ネットワークを介して第1装置に送信する送信部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、ユーザのアカウントの第1残高を記録する可読媒体を読み取って前記第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する第1装置であって第1ネットワークを介して通信可能な第1装置との接続状態を判定する接続判定機能と、前記第1残高を含む前記アカウントのアカウント残高を示すアカウント残高情報を取得する取得機能と、前記アカウント残高に対して、前記第1装置と前記第1ネットワークとの接続状態に関わらず前記ユーザが利用可能な残高を確保するためのオフライン枠を設定する設定機能と、
前記判定された接続状態に基づいて、前記オフライン枠を示すオフライン枠情報を、前記第1装置経由で前記可読媒体に前記第1残高として書き込むために、前記第1ネットワークを介して前記第1装置に送信する送信機能と、を実現させる。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、ユーザのアカウントの第1残高を記録する可読媒体を読み取って第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する第1装置であって第1ネットワークを介して通信可能な第1装置との接続状態を判定し、第1残高を含むアカウントのアカウント残高を示すアカウント残高情報を取得し、アカウント残高に対して、第1装置と第1ネットワークとの接続状態に関わらずユーザが利用可能な残高を確保するためのオフライン枠を設定し、判定された接続状態に基づいて、オフライン枠を示すオフライン枠情報を、第1装置経由で可読媒体に第1残高として書き込むために、第1ネットワークを介して第1装置に送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザ媒体と決済用端末との間の通信により商取引の決済を行うにあたって、インターネット等のネットワークと決済用端末との接続を決済の前提とせず、ユーザの使い勝手を改善できる情報処理装置、プログラム、および情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る決済システムのシステム構成例を説明するための図である。
図2】本実施形態に係る決済システムの概要を説明するための図である。
図3】本実施形態に係る決済装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る決済システムの動作例を示す図である。
図5】本実施形態に係る決済システムの動作例を示す図である。
図6】本実施形態に係る決済装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
本実施形態において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【0013】
<1.システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係わる決済システム1のシステム構成例を説明する。
【0014】
決済システム1は、交通機関や店舗等でサービスや商品を提供する事業者(以下、「提供事業者」ともいう)とその顧客であるユーザに決済サービスを提供するためのシステムである。決済サービスを提供する事業者を、「決済事業者」ともいう。提供事業者は、第1提供事業者と第2提供事業者とを含む。図1に示すように、決済システム1は、決済事業者が使用する決済装置100と、ユーザが使用するユーザ媒体200と、第1提供事業者が使用する第1装置300と、第2提供事業者が使用する第2装置400と、を含む。
【0015】
決済装置100と第1装置300と第2装置400とは、第1ネットワークN1を介して接続されることができ、通信可能となっている。また、ユーザ媒体200と第1装置300や第2装置400とは、例えば、第2ネットワークN2を介して通信可能であってもよい。また、決済システム1は、例えば、第1ネットワークN1を介して、外部システムである分散台帳500と接続され、通信可能となっている。
【0016】
第1ネットワークN1は、広域通信網のネットワークであり、インターネット、移動体通信網、電話回線を含む。また、第1ネットワークN1は、例えば、3G(3rd Generation)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、またはLTE(登録商標)(Long Term Evolution)回線などを用いた無線通信方式を用いてもよい。
【0017】
第2ネットワークN2は、ユーザ媒体200と第1装置300や第2装置400とを直接接続するための通信ネットワークである。第2ネットワークN2は、例えば、NFC(Near Field Communication)等の電磁誘導等を利用した10cm程度の至近距離での無線通信、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信等の10m程度の近距離無線通信を実現するネットワークを含む。
【0018】
決済装置100は、決済サービスを提供するための装置であり、第1装置300と第2装置400との通信が可能な情報処理装置である。決済装置100は、所定のプログラムを実行することにより、ユーザ媒体200と第1装置300や第2装置400と連携する。決済装置100は、この連携により、店舗等からユーザへの商品販売またはサービス提供による取引の決済(以下、単に「決済」ともいう)をするための処理を制御するサーバ機能を実現する。また、この決済では、ユーザ媒体200で利用可能なユーザの口座等のアカウント(以下、単に「アカウント」ともいう)に予め残高を充当(チャージ)し、充当した残高から取引の取引金額を減算して支払う前払い方式(プリペイド)を採用する。
【0019】
ユーザ媒体200は、第1残高を記録する可読媒体である。「第1残高」とは、ユーザ媒体200と第1装置300との間の決済で利用可能な残高であり、ユーザのアカウントのアカウント残高に含まれる残高である。例えば、ユーザ媒体200に第1残高を管理させてもよい。ユーザ媒体200は、ユーザによって携帯される媒体であり、例えば、一次元コード(バーコード)もしくは二次元コード(QRコード(登録商標))、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグ(NFC(Near Field Communication)タグを含む)等であってもよい。また、ユーザ媒体200は、他の例として、第1装置300との通信が可能なスマートフォンやラップトップなどの端末装置であってもよい。本実施形態では、ユーザ媒体200がNFCタグを備えるカードである例を説明する。
【0020】
アカウント残高は、典型的には、ユーザのアカウントの総残高、すなわちアカウントの利用可能残高の合計であるが、これに限定されない。アカウント残高は、例えば、アカウントの利用可能残高の合計のうちユーザにより設定された残高であってもよい。言い換えれば、アカウント残高は、アカウントの利用可能残高の合計より少ない金額であってもよい。
【0021】
第1装置300は、決済装置100と第1ネットワークN1を介して通信が可能な端末装置である。また、第1装置300は、第1提供事業者が有する旅客輸送(公共交通機関含む)のための乗り物(例えば、バスやタクシー等)や店舗に設置された決済のための端末装置である。第1装置300は、可読媒体が読み取れる装置であればどのような装置でもよく、バーコードリーダー機能やNFCリーダー機能等を備える、タブレット端末、またはハンディ端末等である。また、第1装置300は、第1ネットワークN1を介して決済装置100と通信が可能であるが、決済にあたって第1ネットワークN1と接続されていることを前提とはしない。すなわち、第1装置300は、第1ネットワークN1との接続が仮に途絶えていても、ユーザ媒体200との二者間通信ができれば決済が可能である。第1装置300とユーザ媒体200との間で処理される取引を「第1取引」ともいう。また、第1取引で取引される金額を「第1取引金額」ともいう。
【0022】
第1装置300は、ユーザ媒体200を読み取って第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する。
【0023】
第2装置400は、決済装置100と第1ネットワークN1を介して通信が可能な端末装置である。また、第2装置400は、第2提供事業者が有する店舗に設置された決済のための端末装置である。第2装置400は、可読媒体が読み取れる装置であればどのような装置でもよく、バーコードリーダー機能やNFCリーダー機能等を備える、POSレジ端末、タブレット端末、またはハンディ端末等である。第2装置400は、例えば、商品またはサービスの入力を受け付け、受け付けた商品等の代金の合計金額(第2取引金額)の算出などのPOSレジ機能を備えてもよい。また、第2装置400は、上記のPOSレジ機能を実現にあたって、商品等の売上に関する情報を管理するPOSシステム(不図示)に接続されてもよい。第2装置400とユーザ媒体200との間で処理される取引を「第2取引」という。また、第2取引で取引される金額を「第2取引金額」ともいう。
【0024】
分散台帳500は、取引の履歴及び後述の承認情報を複数の端末が共有することが可能なネットワークシステムである。本実施形態において、分散台帳500は、第1装置300や第2装置400とユーザ媒体200との間の取引の履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部として機能する。また、分散台帳500は、例えば、承認情報を記憶する記憶部として機能してもよい。なお、この取引は、第1取引と第2取引を含む。また、この履歴情報は、後述する第1履歴情報と第2履歴情報とを含む。履歴情報は、例えば、取引履歴(第1取引履歴と第2取引履歴を含む)、および/または取引履歴改ざん防止のためのハッシュ値(ハッシュポインタ)等を含む。なお、本実施形態では、履歴情報を記憶する記憶部の一例として分散台帳500を用いて説明するが、この記憶部は分散台帳500に限定されない。例えば、この記憶部は、決済装置100の記憶部140であってもよい。なお、この分散台帳500に、第1装置300や第2装置400が含まれてもよい。
【0025】
<2.概要>
図2を参照して、決済システム1の概要を説明する。
【0026】
本例では、取引の決済方法として、ユーザ媒体200としてNFCタグを搭載したカードによるカード決済を用いるものとするが、本発明に係る決済方法をこれに限る趣旨ではない。決済システム1は、例えば、NFCを利用したモバイル決済、QRコードやバーコードを用いるコード決済等の様々なプリペイド決済の手段を用いることができる。
【0027】
(1)図2に示すように、ユーザは、ユーザ媒体200に関連付けられているアカウント残高へ充当する。具体的には、決済装置100と通信可能な端末装置(不図示)により、ユーザから、資金移動先と資金移動元のアカウントに関する情報(例えば、アカウント識別情報(以下、「アカウントID」ともいう)やアカウントの認証情報等)と、ユーザから充当(移動)する金額と、が入力される。決済装置100は、この入力された内容に基づいて、充当するための資金移動処理を実行し、自身の記憶部140で管理するアカウント残高を示すアカウント残高情報を更新する。
【0028】
(2)決済装置100は、送信された残高充当情報に基づいて、自身の記憶部140で管理するアカウント残高を示すアカウント残高情報を更新する。
【0029】
(3)決済装置100は、所定期間ごとの処理(サイクリックに実行する処理)として、所定の時刻に、記憶部140からアカウント残高情報を取得し、アカウントのアカウント残高に対して、オフライン枠とオンライン枠をそれぞれ設定する。「所定期間」とは、一回設定されたオフライン枠の残高をユーザが決済に利用する期間である。所定期間は、言い換えると、オフライン枠を決済装置100が設定してから次に再設定するまでの期間である。この「所定期間ごとの処理」とは、例えば、数時間ごとの処理、日次処理、または週次処理等である。本例では、所定期間ごとの処理を、日次処理とする。例えば、アカウント残高が5万円であれば、決済装置100は、5万円のうち、オフライン枠を1万円に、オンライン枠を4万円に設定することができる。
【0030】
「オフライン枠」とは、第1装置300と第1ネットワークN1の接続状態に関わらずユーザが利用可能な残高を確保するための枠である。すなわち、オフライン枠は、通信環境がよくないところに第1装置300がいても、ユーザが決済に利用できる枠である。例えば、地方バス等の運行経路上に電波状況が悪いところがあり第1装置300と第1ネットワークN1との接続の途絶が一定程度発生するケースにおいて、このオフライン枠の残高をユーザは決済に利用することができる。
【0031】
「オンライン枠」とは、第2装置400と決済装置100とが通信可能に接続することで利用できる残高を確保するための枠である。
【0032】
オフライン枠の決済の利用にあたっての流れを(4-1)~(10)で説明する。(4-1)決済装置100は、第1装置300との接続状態を判定する。
【0033】
(5-1)決済装置100は、上記(4-1)で接続状態を第1装置300と問題なく通信できると判定した場合、上記(3)で設定したオフライン枠を示すオフライン枠情報を第1装置300に送信する。オフライン枠情報には、設定されたオフライン枠とアカウントIDとが関連付けられている。また、決済装置100は、アカウント残高が不足している等を理由にオフライン枠を設定できない場合、制限情報を、第1装置300に送信する。
【0034】
「制限情報」とは、アカウントの利用制限(利用停止を含む)をするための情報である。言い換えると、制限情報は、第1装置300の減算処理を制限するための情報でもある。制限情報は、例えば、取引のリスクに関する情報(以下、「リスク情報」ともいう)を含んでもよい。リスク情報の詳細は、後述する。
【0035】
(6-1)~(8)の処理は、ユーザ媒体200と第1装置300との間の通信により取引の決済を行う際の処理であり、かつ第1ネットワークN1と第1装置300との接続を必要としない処理である。
【0036】
(6-1)第1装置300は、第1提供事業者が提供するサービス(本例では、輸送サービスとする)をユーザが利用する際、第1取引としてこの輸送サービスの利用料(第1取引金額)の支払いの決済をするため、第2ネットワークN2を介してユーザ媒体200の媒体情報を読み取る。
【0037】
「媒体情報」とは、ユーザ媒体200に関する情報であり、ユーザ媒体200に記録されている情報である。媒体情報は、例えば、アカウントID、媒体を識別するための媒体識別情報(例えば、NFCタグそのもののID等の製品固有ID等)、最終利用日時、第1残高、取引履歴(第1取引履歴と第2取引履歴を含む)、取引履歴改ざん防止のためのハッシュ値(ハッシュポインタ)等を含む。
【0038】
(7-1)第1装置300は、アカウントIDをキーにして、読み込んだ媒体情報に対応するオフライン枠情報を参照する。同様に、第1装置300は、アカウントIDをキーにして、読み込んだ媒体情報に対応する制限情報を参照する。また、第1装置300は、参照したオフライン枠情報および制限情報に基づいて、輸送サービスの利用料を支払う第1取引を承認するか否かを判定する処理(以下、「承認処理」ともいう)を実行する。
【0039】
(8)第1装置300は、日次処理として日ごとの初回のユーザ媒体200の利用の際に、第2ネットワークN2を介して参照したオフライン枠を、媒体情報の第1残高としてユーザ媒体200に書き込む。すなわち、設定されたオフライン枠が1万円の場合には、第1残高が1万円としてユーザ媒体200に書き込まれる。その後、第1装置300は、上記(7-1)で「承認」と判定した場合、第1装置300は、第1残高から第1取引の第1取引金額(本例では、千円とする)を減算する処理(以下、「減算処理」ともいう)を実行する。なお、他の例として、第1装置300は、第1残高から第1取引金額を減算して、減算された第1残高をユーザ媒体200に書き込んでもよい。第1装置300は、減算処理を実行した際に、この減算処理の履歴を示す第1履歴情報を生成する。第1装置300は、生成した第1履歴情報を第1取引履歴として、ユーザ媒体200や分散台帳500に記憶させる。
【0040】
(9)第1装置300は、上記(8)で生成した第1履歴情報を、決済装置100に送信する。(10)決済装置100は、日ごとに(例えば、毎日23:00になった際に)、第1残高から減算した第1取引金額の日ごとの累計を算出する。
【0041】
次にオンライン枠の決済の利用にあたっての流れを(4-2)~(6-2)で説明する。
(4-2)~(6-2)の処理は、ユーザ媒体200と第2装置400との間の通信により取引の決済を行う際の処理であり、かつ第1ネットワークN1と第2装置400との接続を必要とする処理である。
【0042】
(4-2)第2装置400は、第2提供事業者が提供するサービス(本例では、飲食サービスとする)をユーザが利用する際、第2取引としてこの飲食サービスの利用料(第2取引金額)の支払いの決済をするため、第2ネットワークN2を介してユーザ媒体200の媒体情報を読み取る。
【0043】
(5-2)第2装置400は、第1ネットワークN1を介して決済装置100と接続して、アカウントIDをキーに、読み込んだ媒体情報に対応する決済装置100が管理するオンライン枠情報を参照する。同様に、第2装置400は、第1ネットワークN1を介して決済装置100と接続して、アカウントIDをキーに、読み込んだ媒体情報に対応する決済装置100が管理する制限情報を参照する。第2装置400は、決済装置100に対して、オンライン枠の残高で支払い可能な第2取引金額を含む決済の要求を送信する。決済装置100は、この決済要求を受け付けて、オンライン枠の残高から第2取引金額を減算する処理を実行する。決済装置100は、減算処理を実行した際に、この減算処理の履歴を示す第2履歴情報を生成する。
【0044】
(6-2)第2装置400は、上記(5-2)で生成された第2履歴情報を第2取引履歴として、第2ネットワークN2を介してユーザ媒体200に書き込んでもよい。
【0045】
(11)決済装置100は、日ごとに、オフライン枠の残高から上記(10)で算出した累計を減算し、減算したオフライン枠の残高とオンライン枠の残高とに基づいて、アカウント残高を更新する。
【0046】
上記構成によれば、決済装置100は、第1ネットワークN1と第1装置300との接続状態に関わらずオフライン枠を利用してユーザ媒体200による決済をさせることができる。また、上記構成によれば、アカウントのアカウント残高からオフライン枠を所定期間ごとに切り出すため、オフライン枠の残高を充当させるためだけの手続き(チャージ)をユーザがする必要がない。このため、上記構成によれば、決済装置100は、ユーザ媒体200と第1装置300との間の通信により取引の決済を行うにあたって、インターネット等のネットワークと第1装置300との接続を決済の前提とせず、ユーザの使い勝手を改善できる。
【0047】
<3.機能構成>
図3を参照して、本実施形態に係る決済装置100の機能構成を説明する。図3に示すように、決済装置100は、制御部110と、通信部130と、記憶部140と、を備える。
【0048】
-制御部-
制御部110は、接続判定部111と、取得部112と、設定部113と、を備える。また、制御部110は、例えば、算出部114、更新部115、受付部116、決済処理部117、承認判定部118、または残高充当部119を備えてもよい。
【0049】
-接続判定部-
接続判定部111は、第1装置300との接続状態を判定する。接続判定部111は、例えば、第1装置300と疎通できるか否か、また第1装置300との通信が確立できるか否か等を判定することで、第1装置300との接続状態を判定してもよい。接続判定部111は、例えば、第1装置300と疎通できるか否かについて、例えば、pingコマンドやnetstatコマンドを利用して接続状態を確認もよい。また、接続判定部111は、例えば、第1装置300との通信が確立できるか否かについて、TCPコネクションを確立するための3ウェイハンドシェイク、すなわちSYNを送信してそのACKを受信できたか否かで接続状態を判定してもよい。
【0050】
-取得部-
取得部112は、記憶部140から、アカウント残高情報を取得する。また、取得部112は、他の例として、アカウント残高情報を管理する外部装置の記憶部(不図示)から、アカウント残高情報を取得してもよい。この「外部装置の記憶部」は、複数装置の記憶部に分散されていてもよく、例えば、分散管理台帳技術を利用したものでもよい。
【0051】
-設定部-
設定部113は、アカウントのアカウント残高に対して、オフライン枠を設定する。また、設定部113は、例えば、アカウントのアカウント残高に対して、オンライン枠を設定してもよい。設定部113は、オフライン枠とオンライン枠の金額は、例えば、それぞれ固定であってもよいし、アカウント残高に対するそれぞれの割合で設定してもよい。また、設定部113は、例えば、優先順位情報に基づいて、オフライン枠を先に設定(確保)して、アカウント残高から設定したオフライン枠の残高を減算して残った残高に対して、オンライン枠を設定してもよい。
【0052】
オフライン枠は、例えば、決済システム1共通の固定値(例えば、一律千円等)であってもよいし、アカウントIDのグループごとに異なる固定値(例えば、グループA:5千円、グループB:3千円、グループC:千円等)であってもよいし、アカウントIDごとに異なる固定値(例えば、第1提供事業者またはユーザの指定により設定されている値等)であってもよい。
【0053】
設定部113は、例えば、更新部115により更新されたアカウント残高に対して、オフライン枠を再設定してもよい。すなわち、設定部113は、次の所定期間に向けて、更新されたアカウント残高に対して、オフライン枠を再設定してもよい。設定部113は、例えば、更新部115により更新されたアカウント残高が2万2千円であれば、2万2千円に対して、オフライン枠(例えば、1万円)を再設定してもよい。
【0054】
上記構成によれば、設定部113は、所定期間ごと等に、自動的にオフライン枠を再設定することできる。このため、上記構成によれば、設定部113は、アカウント残高の変動に応じてユーザが手動でオフライン枠を再設定するような負荷を軽減することができる。
【0055】
設定部113は、例えば、アカウントのアカウント残高に対して、オフライン枠に加え、オンライン枠を設定してもよい。
【0056】
設定部113は、更新部115により更新されたアカウント残高に対して、さらに、オンライン枠を再設定してもよい。設定部113は、例えば、更新部115により更新されたアカウント残高が2万2千円であれば、2万2千円に対して、オフライン枠(例えば、1万円)を再設定し、残りの残高1万円1千円をオンライン枠として再設定してもよい。
【0057】
上記構成によれば、設定部113は、所定期間ごと等に、自動的にオンライン枠を再設定することできる。このため、上記構成によれば、設定部113は、アカウント残高の変動に応じてユーザが手動でオンライン枠を再設定するような負荷を軽減することができる。
【0058】
-算出部-
算出部114は、第1履歴情報に基づいて、所定期間の終了(締め)の際に、第1残高から減算した第1取引金額の所定期間の累計を算出する。所定期間は、例えば、半日ごと、日ごと、週ごと等の単位期間であってもよい。例えば、ユーザ媒体200と取引した第1装置300が第1装置300aと第1装置300bと所定期間において複数存在する場合、それぞれから取得した第1履歴情報に基づいて、第1残高から減算した第1取引金額の所定期間の累計を算出してもよい。ユーザ媒体200と第1装置300aとの第1取引金額が5千円で、ユーザ媒体200と第1装置300bとの第1取引金額が4千円の場合、第1取引金額の累計は9千円となる。
【0059】
-更新部-
更新部115は、オフライン枠の残高から算出部114が算出した累計を減算し、減算したオフライン枠の残高に基づいて、アカウント残高を更新する。例えば、オンライン枠の減算前の残高が1万円で、算出部114が算出した累計が8千円であれば、更新部115は、減算したオフライン枠の残高として2千円でアカウント残高を更新してもよい。
【0060】
更新部115は、例えば、オンライン枠の残高に基づいて、アカウントのアカウント残高を更新してもよい。例えば、減算したオフライン枠の残高として2千円で、オンライン枠の残高が2万円であれば、更新部115は、これらの残高を合計した金額2万2千円でアカウント残高を更新してもよい。
【0061】
-受付部-
受付部116は、第2装置400から、通信部130を介して、設定部113が設定したオンライン枠の残高で支払い可能な第2取引金額を含む決済の要求を受け付ける。受付部116は、例えば、設定部113が設定したオンライン枠の残高を超える第2取引金額を含む決済の要求の場合、その受付を拒否してもよい。
【0062】
-決済処理部-
決済処理部117は、受付部116が受け付けた決済の要求に基づいて、オンライン枠の残高から第2取引金額を減算する処理を実行する。
【0063】
-承認判定部-
承認判定部118は、承認情報を記憶する承認記憶部141を参照して、第1取引が第1装置で承認可能であるかを判定する。例えば、承認情報に含まれる承認項目として取引金額の上限が設定されている場合、承認判定部118は、この上限を超える第1取引金額の第1取引は、第1装置300で承認不可と判定してもよい。すなわち、承認情報に基づいて、決済装置100等の中央側で承認する必要がある第1取引については、承認判定部118は、第1装置300で承認不可としてもよい。承認判定部118は、判定の結果を承認判定情報として記憶部140に記憶させてもよい。
【0064】
「承認情報」とは、第1装置300が第1取引を承認可能か否か判定するための情報である。承認情報は、例えば、承認項目として、取引金額の上限もしくは下限、取引回数の上限、端末装置の位置、または上位装置を含んでもよい。また、承認情報は、その他の承認項目として、装置の所有者であるユーザに関する情報や、リスク情報を含んでもよい。承認情報は、その他の承認項目として、特定の条件の下で行われる取引であることを示す取引種別を含んでもよい。
【0065】
「リスク情報」とは、取引のリスクを示す情報である。リスク情報は、例えば、ネガティブチェックに用いられる利用停止に関するネガティブ情報、または過去の取引履歴に基づくユーザへの評価に関する情報等である。
【0066】
承認判定部118は、例えば、第1取引が前記第1装置300で承認可能でないと判定した場合、上位承認情報を記憶する上位承認記憶部142を参照して、上位装置により第1取引が承認可能であるかを再判定してもよい。承認判定部118は、この再判定の結果を承認判定情報に含めて、記憶部140に記憶させてもよい。
【0067】
「上位承認情報」とは、第1装置300の上位装置が第1取引を承認可能か否か判定するための情報である。上位承認情報は、第1装置300と通信可能に接続されている第3装置(不図示)が承認可能な取引の条件を少なくとも一つ含む。
【0068】
-残高充当部-
残高充当部119は、ユーザアカウントのアカウント残高への残高を充当するための処理を行う。
残高充当部119は、残高を充当するためにアカウントを移動先とする資金移動を行う決済には、どのような決済でも適用可能である。残高充当部119は、例えば、クレジットカード決済やデビットカード決済などのカード決済、カードレス払い決済、電子マネー決済、銀行振込決済などの決済方法うちユーザや決済事業者が選択した決済方法により資金移動のための処理を行って残高を充当してもよい。
【0069】
残高充当部119は、例えば、アカウント残高の中で、オフライン枠の残高のみまたはオンライン枠の残高のみ充当するよう処理してもよい。また、残高充当部119は、例えば、アカウント残高への残高を、設定された配分に基づいて、オフライン枠の残高とオンライン枠の残高それぞれに配分して充当するよう処理してもよい。
【0070】
-通信部-
通信部130は、第1ネットワークN1を介して、第1装置300および/または第2装置400と各種情報を送受信する。通信部130は、送信部131と受信部132とを備える。
【0071】
-送信部-
送信部131は、接続判定部111により判定された接続の状態に基づいて、オフライン枠情報を、第1装置300経由でユーザ媒体200に第1残高として書き込むために、第1ネットワークN1を介して第1装置300に送信する。送信部131がオフライン枠情報を送信するタイミングは、例えば、所定期間におけるユーザ媒体200の初回の利用の際でもよい。また、このユーザ媒体200の初回の利用は、第1装置300での利用であってもよいし、第2装置400での利用であってもよい。
【0072】
上記構成によれば、送信部131は、第1ネットワークN1と第1装置300との接続状態に関わらずオフライン枠を利用してユーザ媒体200による決済をさせることができる。また、上記構成によれば、アカウントのアカウント残高からオフライン枠を所定期間ごとに切り出させることができるため、オフライン枠の残高を充当させるためだけのユーザの手続き(チャージ)を削減することができる。このため、上記構成によれば、送信部131は、ユーザ媒体200と第1装置300との間の通信により取引の決済を行うにあたって、インターネット等のネットワークと第1装置300との接続を決済の前提とせず、ユーザの使い勝手を改善できる。
【0073】
送信部131は、例えば、アカウントのアカウント残高に対してオフライン枠が設定部113により設定できない場合、制限情報を記憶する記憶部140を参照して、制限情報を、第1ネットワークN1を介して第1装置300に送信してもよい。また、送信部131は、例えば、接続判定部111により判定された接続の状態に基づいて、第1ネットワークN1を介して第1装置300に制限情報を送信してもよい。
【0074】
上記構成によれば、送信部131は、アカウント残高がオフライン枠に対して不足している等の状況において、ユーザ媒体200でのオフライン枠の利用を制限することができる。このため、上記構成によれば、送信部131は、ユーザ媒体200でのオフライン枠の利用を精度よく制御することができる。
【0075】
送信部131は、例えば、承認情報を記憶する承認記憶部141を参照して、第1取引が第1装置300で承認可能であるかを判定させるために、承認情報を第1装置300に送信してもよい。
【0076】
例えば、第1装置300とユーザ媒体200との間の第1取引の内容によっては、決済事業者等の中央側の承認が必要なケースが考えられる。このようなケースに対して、上記構成によれば、送信部131は、第1装置300だけで承認できるリスクの低い取引等に限定してオフライン枠を利用させることができる。
【0077】
送信部131は、例えば、承認判定情報に基づいて、第1装置300に、減算処理を実行可能にするための指示を送信してもよい。第1装置300は、第1ネットワークN1を介して決済装置100からこの指示を受信したことを条件に、所定期間において第1ネットワークN1との接続状態に関わらず減算処理を実行してもよい。
【0078】
上記構成によれば、送信部131は、第1装置300で承認できない取引に関する減算処理を制限することができる。このため、上記構成によれば、送信部131は、第1装置300に対して、例えば、中央側で承認が必要なリスクの高い取引を制限し、第1装置300の第1ネットワークN1との接続状態に関わらずに取引できるリスクの低い取引に限定して第1取引をさせることができる。
【0079】
送信部131は、例えば、承認判定情報に基づいて、第1装置300に、第3装置から第1取引の承認が得られた場合に減算処理を実行可能にするための指示を送信してもよい。
【0080】
上記構成によれば、送信部131は、第1装置300で承認できない取引に関する減算処理を制限しつつ、その上位の装置で承認できる取引に関する減算処理は実行可能にすることができる。このため、上記構成によれば、送信部131は、第1装置300に対して、例えば、中央側で承認が必要なリスクの高い取引を制限しつつ、リスクの程度に応じて段階的に第1装置300の第1ネットワークN1との接続状態に関わらずに取引できる取引を限定して、第1取引をさせることができる。
【0081】
受信部132は、第1装置300から、第1ネットワークN1を介して、第1履歴情報を受信する。
【0082】
記憶部140は、アカウント残高情報、オフライン枠情報、オンライン枠情報、制限情報、履歴情報、またはユーザ情報などを記憶してもよい。記憶部140は、例えば、これらの情報を相互に関連付けて記憶してもよい。記憶部140は、データベースマネジメントシステム(DBMS)を利用して各情報を記憶してもよいし、ファイルシステムを利用して各情報を記憶してもよい。DBMSを利用する場合は、上記情報ごとにテーブルを設けて、このテーブル間を関連付けて各情報を管理してもよい。記憶部140は、承認記憶部141と、上位承認記憶部142とを備える。承認記憶部141は、承認情報を記憶する。上位承認記憶部142は、上位承認情報を記憶する。
【0083】
「ユーザ情報」は、ユーザに関する情報である。ユーザ情報は、例えば、ユーザを識別するための識別情報、ユーザが保有するアカウントそれぞれのアカウントIDを含む。
【0084】
<4.動作例>
図4~5を参照して、決済システム1の動作例を説明する。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。図4は、決済システム1でオンライン枠およびオフライン枠を設定し、オンライン枠を利用した決済を行うまでの相互作用を示したシーケンス図である。図5は、決済システム1でオフライン枠を利用した決済をし、所定期間の第1取引金額の累計を算出して、オンライン枠およびオフライン枠を再設定するまでの相互作用を示したシーケンス図である。
【0085】
図4に示すように、決済装置100は、アカウント残高情報を取得する(S10)。決済装置100は、アカウント残高情報に基づいて、オフライン枠とオンライン枠とを設定する(S11)。
【0086】
決済装置100は、設定したオフライン枠を示すオフライン枠情報を、第1装置300に送信する(S12)。第1装置300等は、所定期間における初回のユーザ媒体200による決済の利用の際に、複合フラグメントopt1(option1)が示すエリア内の処理を実行する。具体的には、第1装置300は、所定期間における初回のユーザ媒体200による決済の利用の際に、オフライン枠を示すオフライン枠情報を、ユーザ媒体200に第1残高として書き込む(S13)。ユーザ媒体200は、第1残高を記録する(S14)。
【0087】
第2装置400は、第2取引にあたって第2取引金額を含む決済の要求を、決済装置100に送信する(S15)。決済装置100は、受信した決済の要求に含まれる第2取引金額がオンライン枠の残高内の場合、複合フラグメントopt2(option2)が示すエリア内の処理を実行する。具体的には、決済装置100は、決済の要求を受け付ける(S16)。決済装置100は、受け付けた決済の要求に基づいて、オンライン枠の残高から第2取引金額を減算する処理を実行する(S17)。決済装置100は、オンライン枠の残高を更新する(S18)。
【0088】
図5に示すように、第1装置300は、ユーザ媒体200から第1残高を読み取る(S20)。第1装置300は、読み取った第1残高から第1取引の第1取引金額を減算する減算処理を実行する(S21)。第1装置300は、第1取引金額を減算した第1残高をユーザ媒体200に書き込む(S22)。ユーザ媒体200は、第1残高を更新する(S23)。第1装置300は、第1履歴情報を生成して、分散台帳500に記憶させる。
【0089】
決済装置100と第1装置300とは、現在日時が所定期間の終了日時(締めの日時)となった場合、複合フラグメントopt3(option3)が示すエリア内の処理を実行する。具体的には、第1装置300は(または分散台帳500は)、第1履歴情報を決済装置100に送信する(S25)。決済装置100は、第1履歴情報に基づいて、第1残高から減算した第1取引金額の所定期間の累計を算出する(S26)。決済装置100は、オフライン枠の残高から算出した累計を減算し、減算したオフライン枠の残高とオンライン枠の残高に基づいて、アカウント残高を更新する(S27)。決済装置100は、更新されたアカウント残高に対して、オフライン枠とオンライン枠を再設定する(S28)。
【0090】
<5.ハードウェア構成>
図6を参照して、上述してきた決済装置100をコンピュータ800により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0091】
図6に示すように、コンピュータ800は、プロセッサ801と、メモリ803と、記憶装置805と、入力I/F部807と、データI/F部809と、通信I/F部811、及び表示装置813を含む。
【0092】
プロセッサ801は、メモリ803に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ800における様々な処理を制御する。例えば、決済装置100の制御部110が備える各機能部などは、メモリ803に一時記憶されたプログラムを、プロセッサ801が実行することにより実現可能である。
【0093】
メモリ803は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。メモリ803は、プロセッサ801によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0094】
記憶装置805は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置805は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。この他、記憶装置805は、アカウント残高情報、オフライン枠情報、オンライン枠情報、制限情報、履歴情報、またはユーザ情報等の各種情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じてメモリ803にロードされることにより、プロセッサ801から参照される。
【0095】
入力I/F部807は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F部807の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイスなどが挙げられる。入力I/F部807は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介してコンピュータ800に接続されても良い。
【0096】
データI/F部809は、コンピュータ800の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F部809の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置などがある。データI/F部809は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F部809は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ800へと接続される。
【0097】
通信I/F部811は、コンピュータ800の外部の装置と有線または無線により、インターネットNを介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F部811は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F部811は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ800に接続される。
【0098】
表示装置813は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置813の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイなどが挙げられる。表示装置813は、コンピュータ800の外部に設けられても良い。その場合、表示装置813は、例えばディスプレイケーブルなどを介してコンピュータ800に接続される。また、入力I/F部807としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置813は、入力I/F部807と一体化して構成することが可能である。
【0099】
なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以上に述べた各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0100】
また、上記実施の形態で記載された決済装置が備える構成要素は、記憶装置805に格納されたプログラムがプロセッサ801によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、または「モジュール」などとも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0101】
[変形例]
なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0102】
[変形例1]
上記実施形態に係る決済装置100が備える各構成の少なくとも一部は、ユーザ媒体200、第1装置300または第2装置400が備えていてもよい。ユーザ媒体200、第1装置300または第2装置400は、例えば、それぞれがインストールする決済システム1専用のアプリケーションプログラムを実行することでこれらの構成を実現させてもよい。
【0103】
[変形例2]
上記実施形態に係る決済装置100の受付部116は、第2装置400から、設定部113が設定したオンライン枠の残高で支払い可能な第2取引金額を含む決済の要求を受け付ける例を説明したが、本発明はこれに限定されない、受付部116は、例えば、オンライン枠の残高を超える第2取引金額でもユーザ媒体200に記録されている第1残高との合算した金額内であれば、第2取引金額を含む決済の要求を受け付けてもよい。受付部116がこの決済の要求を受け付けた場合、送信部131は、接続判定部111により判定された接続状態に基づいて、第1装置300経由でユーザ媒体200の第1残高を更新するための情報を、第1ネットワークN1を介して第1装置300に送信する。この「第1残高を更新するための情報」とは、第2取引金額がオンライン枠の残高を超える分の金額を第1残高から減算するための情報である。
【符号の説明】
【0104】
1…決済システム、100…決済装置、110…制御部、111…接続判定部、112…取得部、113…設定部、114…算出部、115…更新部、116…受付部、117…決済処理部、118…承認判定部、119…残高充当部、130…通信部、140…記憶部、200…ユーザ媒体、300…第1装置、400…第2装置、800…コンピュータ、801…プロセッサ、803…メモリ、805…記憶装置、807…入力I/F部、809…データI/F部、811…通信I/F部、813…表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6