(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】甲状腺ホルモンアナログ及びその多形体の合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 405/12 20060101AFI20240214BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240214BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240214BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240214BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20240214BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240214BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
C07D 237/16 20060101ALI20240214BHJP
C07K 14/72 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07D405/12 CSP
A61K31/53 ZNA
A61P1/16
A61P3/06
A61P29/00
A61P5/14
A61P3/04
A61P3/10
A61P19/08
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P9/06
A61P13/02
A61P25/14
A61P35/00
A61P25/28
A61P25/18
A61P27/16
A61P25/00
C07D237/16
C07K14/72
(21)【出願番号】P 2022034154
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2020020343の分割
【原出願日】2013-09-17
【審査請求日】2022-04-05
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512190723
【氏名又は名称】マドリガル・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MADRIGAL PHARMACEUTICALS,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】507196446
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】F. Hoffmann-La Roche Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディー・キース・ヘスター
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ・ダギッド
(72)【発明者】
【氏名】マーサ・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・シャスノフ
(72)【発明者】
【氏名】ガン・ドン
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン・エル・クロウ
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・タウブ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エイチ・レイノルズ
(72)【発明者】
【氏名】ドク・スン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】リエンホー・シュウ
(72)【発明者】
【氏名】ピン・ワン
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-501759(JP,A)
【文献】杉本功、高橋嘉輝,溶媒和物、非晶質固体と医薬品製剤,紛体工学会誌,1985年,22(2),p.85-97
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,pp.57-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 237/16
A61K 31/53
A61P 1/16
A61P 3/06
A61P 29/00
A61P 5/14
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 19/08
A61P 9/10
A61P 9/00
A61P 9/06
A61P 13/02
A61P 25/14
A61P 35/00
A61P 25/28
A61P 25/18
A61P 27/16
A61P 25/00
C07D 405/12
C07K 14/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)の
二水和物。
【請求項2】
請求項1に記載の
二水和物と医薬として許容可能な担体とを含有する、医薬組成物。
【請求項3】
対象における非アルコール性脂肪性肝炎を治療するための医薬の製造における、請求項1に記載の
二水和物の使用。
【請求項4】
対象における脂肪肝疾患を治療するための医薬の製造における、請求項1に記載の
二水和物の使用。
【請求項5】
対象における高コレステロール血症を治療するための医薬の製造における、請求項1に記載の
二水和物の使用。
【請求項6】
少なくとも1カ所のTRβ突然変異をもつ対象における甲状腺ホルモン不応症(RTH)を治療するための医薬の製造における、請求項1に記載の
二水和物の使用。
【請求項7】
前記対象が、脂肪肝疾患、甲状腺系変性、頻脈、多動行動、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、注意欠陥多動性障害、学習障害、難聴、骨年齢遅延、又は甲状腺癌をもつ、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記TRβ突然変異が、
配列番号1のアミノ酸位置234位における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A234T);
配列番号1のアミノ酸位置243位における野生型残基アルギニン(R)からグルタミン(Q)への置換(R243Q);
配列番号1のアミノ酸位置316位における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R316H);及び
配列番号1のアミノ酸位置317位における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A317T)
から構成される群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記二水和物が、カール・フィッシャー解析による測定で、6.6%のH
2Oを有する、請求項1に記載の
二水和物。
【請求項10】
請求項1に記載の二水和物の調製方法であって、以下の工程:
(a)化合物Aの溶媒和物にアセトンを加えて、混合物を調製する工程、
(b)前記混合物を、第1の温度に加熱する工程、
(c)前記混合物を第1の温度に維持しながら、前記混合物に脱イオン水を加える工程、
(d)前記混合物を、第2の温度に冷却する工程、
(e)前記混合物を濾過して、フィルターケーキを生成する工程、及び
(f)前記フィルターケーキを乾燥する工程
を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年9月17日に出願された米国仮特許出願第61/702,137号、及び2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/790,432号の優先権およびその利益を主張し、それらは各々、その全体が本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
2013年9月16日に作製され、大きさが4KBである、本テキストファイル名「41245-522001WO_ST25.txt」の内容は、本出願に援用される。
【0003】
甲状腺ホルモンは正常な成長及び発生と、代謝恒常性の維持に不可欠である(Paul M.Yen,Physiological reviews,Vol.81(3):pp.1097-1126(2001))。甲状腺ホルモンの血中濃度は視床下部/脳下垂体/甲状腺(HPT)系のフィードバック機構により厳密に調節される。甲状腺機能低下症又は甲状腺機能亢進症に至る甲状腺機能異常は、甲状腺ホルモンが心機能、体重、代謝、代謝率、体温、コレステロール、骨、筋肉及び行動に重大な影響を及ぼすことを明白に示している。
【0004】
甲状腺ホルモンの生物的作用は甲状腺ホルモン受容体(TRないしTHR)を介する(M.A.Lazar,Endocrine Reviews,Vol.14:pp.348-399(1993))。TRは核内受容体と呼ばれるスーパーファミリーに属する。TRはリガンド誘導性転写因子として作用するレチノイド受容体と共にヘテロダイマーを形成する。TRはリガンド結合ドメイン、DNA結合ドメイン及びアミノ末端ドメインをもち、DNA応答エレメント並びに各種核内コアクチベーター及びコリプレッサーとの相互作用を介して遺伝子発現を調節する。甲状腺ホルモン受容体はα及びβの2種の別個の遺伝子に由来する。これらの個々の遺伝子産物は選択的RNAプロセシングを介して複数の形態の夫々の受容体を産生する。主要な甲状腺受容体アイソフォームはα1、α2、β1及びβ2である。甲状腺ホルモン受容体α1、β1及びβ2は甲状腺ホルモンと結合する。甲状腺ホルモン受容体サブタイプは特定の生物学的応答への寄与において夫々相違し得ることが示されている。最近の研究によると、TRβ1はTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)の調節と肝臓における甲状腺ホルモン作用の調節に重要な役割を果たすことが示唆されている。TRβ2はTSH(甲状腺刺激ホルモン)の調節に重要な役割を果たす(Abel et.al.,J.Clin.Invest.,Vol 104:pp.291-300(1999))。TRβ1は心拍数の調節に重要な役割を果たす(B.Gloss et.al.Endocrinology,Vol.142:pp.544-550(2001);C.Johansson et.al.,Am.J.Physiol.,Vol.275:pp.R640-R646(1998))。
【0005】
甲状腺ホルモン受容体β選択性及び/又は組織選択的作用の高い甲状腺ホルモンアナログを合成することが検討されている。このような甲状腺ホルモン類似体は心血管機能又は視床下部/脳下垂体/甲状腺系の正常機能にさほど影響を与えずに、体重、脂質、コレステロール及びリポ蛋白質の望ましい減少をもたらすと思われる(例えばJoharapurkar et al.,J.Med.Chem.,2012,55(12),pp 5649-5675参照)。甲状腺ホルモンの有益な効果を維持しながら甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の望ましくない影響のない甲状腺ホルモンアナログが開発されるならば、肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病等の代謝疾患や、脂肪肝及びNASH、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、甲状腺機能低下症、甲状腺癌、甲状腺疾患、甲状腺ホルモン不応症並びに関連障害及び疾患等の他の障害及び疾患をもつ患者の治療に新たな道が開けるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Paul M.Yen,Physiological reviews,Vol.81(3):pp.1097-1126(2001)
【文献】M.A.Lazar,Endocrine Reviews,Vol.14:pp.348-399(1993)
【文献】Abel et.al.,J.Clin.Invest.,Vol 104:pp.291-300(1999)
【文献】B.Gloss et.al.Endocrinology,Vol.142:pp.544-550(2001)
【文献】C.Johansson et.al.,Am.J.Physiol.,Vol.275:pp.R640-R646(1998)
【文献】Joharapurkar et al.,J.Med.Chem.,2012,55(12),pp 5649-5675。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は一面においてピリダジノン化合物等の甲状腺ホルモンアナログとそのプロドラッグの合成方法を提供する。甲状腺ホルモンアナログとそのプロドラッグの理想的な合成方法は例えば生成化合物を高純度及び高収率で提供する方法であろう。本発明はこれらの望ましい特徴の1つ以上を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は甲状腺ホルモンアナログとしてのピリダジノン化合物の製造用中間体として有用な化合物である6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(「中間体7」)を製造するために使用することができる合成方法に関し、前記方法は、
(a)R1MgX又はR1Liを式(I):
【0009】
【0010】
【化2】
の化合物を形成する工程(上記各式中、R
1はイソプロピル又はイソプロペニルであり、Xはハロであり、R
2はH又はアミン保護基である。)と;
(b)R
1がイソプロペニルである場合には塩基の存在下、又はR
1がイソプロピルである場合には酸化剤の存在下で式(II)の化合物を式(III):
【0011】
【0012】
工程(a)において、溶媒はTHF、ジエチルエーテル、トルエン又はジオキサン等の非プロトン性有機溶媒とすることができ、反応温度は0~60℃、20~50℃、30~45℃、又は35~45℃とすることができ、反応時間は10分間~10時間、1~8時間、又は3~5時間とすることができ、グリニャール試薬(R1MgX)の量は式(I)の化合物の3~10倍等量又は3~6倍等量とすることができる。
【0013】
工程(b)では、塩基を使用して式(II)の化合物を異性化する。塩基は有機塩基又は無機塩基とすることができる。塩基の例としては、限定されないが、トリエチルアミン、ピリジン、KOH、NaOH及び炭酸塩が挙げられる。異性化は例えば酸処理や非プロトン性溶媒中での加熱等の他の条件下で実施することもできる。
【0014】
更に工程(b)において、酸化剤は特に限定されない。例えば、臭素の酢酸溶液又はプロピオン酸溶液を使用することができる。
【0015】
アミン保護基の例としては、限定されないが、置換アルキル基、アシル基(例えばベンゾイル基又はアセチル基)及びシリル基が挙げられる。ヒドロキシ及びアミン保護基はT.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.,John Wiley and Sons(1991)に記載されている。
【0016】
1実施形態では、R1をイソプロペニルとし、XをBrとしてR1MgXを式(I)の化合物と接触させることにより工程(a)を実施する。この反応で使用する溶媒はTHFとすることができ、THFと式(I)の化合物の体積対重量比は7~30(又は7~15)とする。この工程はルイス酸(例えばハロゲン化リチウム)の存在下で実施してもよい。
【0017】
1実施形態では、R1をイソプロピルとし、XをClとしてR1MgXを式(I)の化合物と接触させることにより工程(a)を実施する。この反応で使用する溶媒はTHFとすることができ、THFと式(I)の化合物の体積対重量比は7~30(又は7~15)とする。この工程はルイス酸(例えばハロゲン化リチウム)の存在下で実施してもよい。
【0018】
1実施形態において、工程(b)における塩基は金属水酸化物(例えば水酸化カリウム)である。
【0019】
1実施形態において、工程(b)における酸化剤は臭素であり、酸の存在下で工程(b)を実施する。
【0020】
1実施形態において、式(I)及び式(II)におけるR2基はアセチル基又はベンゾイル基である。別の実施形態において、R2はベンゾイル基である。
【0021】
1実施形態において、前記方法は更に、3,6-ジクロロピリダジンを2,6-ジクロロ-4-アミノフェノールと接触させて3,5-ジクロロ-4-((6-クロロピリダジン-3-イル)オキシ)アニリンを形成し、3,5-ジクロロ-4-((6-クロロピリダジン-3-イル)オキシ)アニリンを加水分解し、加水分解の前又は後に3,5-ジクロロ-4-((6-クロロピリダジン-3-イル)オキシ)アニリンのアミン基を保護して式(I)の化合物を形成することにより、式(I)の化合物を提供する工程を含む。3,6-ジクロロピリダジンを2,6-ジクロロ-4-アミノフェノールと接触させる工程は極性非プロトン性溶媒(例えばジメチルアセトアミド(DMAC))中で塩基(例えばCs2CO3)の存在下に60~120℃(例えば約65℃)の反応温度にて実施する。更に、精製工程を加えてもよい。即ち、工程(a)の前に、式(I)の化合物を80~100℃の温度の酸性溶液中で精製する。
【0022】
1実施形態において、前記方法は更に、工程(c)の式(III)の化合物のアミン保護基R2が存在する場合には、これを除去し、6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを形成する工程を含む。
【0023】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された化合物、例えば中間体7は純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。
【0024】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された化合物、即ち6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンは6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-5-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンが1.5%未満であり、例えば6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-5-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンが1.0%未満、又は6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-5-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンが0.5%未満である。
【0025】
別の実施形態において、上記方法により製造された化合物は6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-5-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを含有していない。
【0026】
本発明の合成方法は更に、甲状腺ホルモンアナログとしてのピリダジノン化合物とそのプロドラッグを合成するために以下の工程、即ち
(d)6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを式(IV):
【0027】
【化4】
[式中、
R
3はH又はCH
2R
aであり、前記式中、R
aはヒドロキシル基、O結合型アミノ酸、-OP(O)(OH)
2又は-OC(O)-R
bであり、R
bは低級アルキル基、アルコキシ基、アルキル酸、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は-(CH
2)
n-ヘテロアリール基であり、nは0又は1であり;
R
4はHであり、R
5はCH
2COOH、C(O)CO
2H、又はそのエステルもしくはアミドであり、あるいはR
4とR
5は一緒になり、-N=C(R
c)-C(O)-NH-C(O)-であり、前記式中、R
cはH又はシアノ基である。]の化合物に変換する工程を含んでいてもよい。
【0028】
1実施形態において、式(IV)の化合物は2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)であり、6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを(2-シアノアセチル)カルバミン酸エチル及び金属亜硝酸塩と接触させた後、DMAC中にて酢酸カリウムで処理することにより上記工程を実施する。
【0029】
1実施形態において、前記方法は更に、2θ=約10.5°、18.7°、22.9°、23.6°及び24.7°にピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)の1形態(形態I)を形成する工程を含む。
【0030】
1実施形態において、式(IV)の化合物は式(V)
【0031】
【化5】
(式中、R
3はCH
2R
aである。)の化合物であり、6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを(2-シアノアセチル)カルバミン酸エチルと接触させた後、DMAC中にて酢酸カリウムで処理して2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)を形成し、例えば米国特許第8,076,334号に記載の技術の1種を使用して適切な方法で化合物Aを式(V)の化合物に変換することにより工程(d)を実施する。
【0032】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物、例えば2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)は純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。例えば、不純物(即ち、本願明細書に記載の方法により製造された組成物中の式(IV)の化合物以外の全成分、例えば副生成物、出発材料、溶媒残渣、重金属等)の含有率は15%未満、14%未満、10%未満、8%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、又は0.2%未満である。
【0033】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物は形態Iの化合物Aであり、純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。例えば、不純物(即ち、本願明細書に記載の方法により製造された組成物中の化合物A以外の全成分、例えば副生成物、出発材料、溶媒残渣、重金属等)の含有率は15%未満、14%未満、10%未満、8%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、又は0.2%未満である。
【0034】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物は形態Iの化合物Aであり、形態Iは純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。例えば、不純物(即ち、本願明細書に記載の方法により製造された組成物中の形態I以外の全成分、例えば化合物Aの他の形態、副生成物、出発材料、溶媒残渣、重金属等)の含有率は15%未満、14%未満、10%未満、8%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、又は0.2%未満である。
【0035】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物(例えば化合物A)を含有する組成物は対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(例えば化合物Aのβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体である2-(3,5-ジクロロ-4-((4-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル)が1.5%未満(例えば1.0%未満、例えば0.5%未満)である。
【0036】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物(例えば化合物A)を含有する組成物は対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(例えば化合物Aのβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体である2-(3,5-ジクロロ-4-((4-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル)を含有していない。
【0037】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物(例えば化合物A)を含有する組成物は重金属(例えば銀)が1.5%未満(例えば0.1%未満)である。
【0038】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物(例えば化合物A)を含有する組成物は重金属(例えば銀、金又は白金)を含有していない。
【0039】
本願明細書に記載の合成方法は米国特許第7,452,882号に開示されている方法等の従来の方法に比較して利点がある。例えば、2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)の総収率が著しく高い(例えば米国特許第7,452,882号に開示されている方法に従って製造した場合は~9%であるのに対して>40%)。また、合成の位置選択性が遥かに優れている。更に、この新規方法は処理し易く、例えば濾過し易い。最後に、化合物Aについて本願明細書に記載する方法では重金属を使用していない。これに対して、米国特許第7,452,882号に記載されている経路では銀を使用していたため、樹脂による除染処理が必要であった。
【0040】
更に別の態様において、本発明は85%を上回る式(IV)の化合物、1.5%未満の対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(即ち
【0041】
【化6】
)、及び/又は1.5%未満の重金属を含有する組成物に関する。
【0042】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。例えば、不純物(即ち、式(IV)の化合物を含有する組成物中の式(IV)の化合物以外の全成分、例えば副生成物、出発材料、溶媒残渣、重金属等)の含有率は15%未満、14%未満、10%未満、8%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、又は0.2%未満である。
【0043】
1実施形態において、式(IV)の化合物は形態Iの化合物Aであり、純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。例えば、不純物(即ち、化合物Aを含有する組成物中の化合物A以外の全成分、例えば副生成物、出発材料、溶媒残渣、重金属等)の含有率は15%未満、14%未満、10%未満、8%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、又は0.2%未満である。
【0044】
1実施形態において、式(IV)の化合物は形態Iの化合物Aであり、形態Iは純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。例えば、不純物(即ち、形態Iを含有する組成物中の形態I以外の全成分、例えば化合物Aの他の形態、副生成物、出発材料、溶媒残渣、重金属等)の含有率は15%未満、14%未満、10%未満、8%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、又は0.2%未満である。
【0045】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(例えば化合物Aのβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体である2-(3,5-ジクロロ-4-((4-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル)が1.5%未満(例えば1.0%未満、例えば0.5%未満)である。
【0046】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(例えば化合物Aのβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体である2-(3,5-ジクロロ-4-((4-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル)を含有していない。
【0047】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は重金属(例えば銀、金又は白金)が1.5%未満(例えば1.0%未満、例えば0.5%未満)である。
【0048】
1実施形態において、本願明細書に記載の方法により製造された式(IV)の化合物(例えば化合物A)は重金属(例えば銀)を含有していない。
【0049】
更に、本発明は2θ=約10.5°、18.7°、22.9°、23.6°及び24.7°にピークを含む粉末X線回折(「XRPD」)パターンを特徴とする2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)の1形態(形態I)に関する。
【0050】
1実施形態において、形態Iは2θ=約8.2°、11.2°、15.7°、16.4°、17.7°、30.0°及び32.2°にもピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0051】
1実施形態において、形態Iは2θ=約8.2°、10.5°、18.7°、22.9°、23.6°及び24.7°にピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0052】
1実施形態において、形態Iは2θ=約8.2°、10.5°、11.2°、15.7°、16.4°、17.7°、18.7°、22.9°、23.6°及び24.7°にピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0053】
1実施形態において、形態Iは2θ=約8.2°、10.5°、11.2°、15.7°、16.4°、17.7°、18.7°、22.9°、23.6°、24.7°、30.0°及び32.2°にピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0054】
別の実施形態において、形態Iは
図1に示すパターンと実質的に同様の粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0055】
別の態様において、本開示は形態Iの製造方法に関する。前記方法は化合物Aを含有する試料(例えば化合物Aの粗調製物又は精製調製物)をアルコール(例えばエタノール)、ケトン(例えばメチルイソブチルケトン、即ちMIBK)、又はアルコールもしくはケトンを含む水溶液等の有機溶媒と混合する工程を含む。例えば、こうして得られた出発化合物Aと溶媒を含む混合物(例えばスラリー又は懸濁液)を第1の温度に加熱後、前記第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却する。有機溶媒はエタノールが好ましい。形態変換する出発化合物Aは水和物(例えば一水和物又は二水和物)又は有機溶媒(例えばジメチルアセトアミド、エタノール又はMIBK)の溶媒和物等の溶媒和物とすることができる。あるいは、出発化合物Aは非溶媒和物(例えば非水和物)とすることができる。
【0056】
1実施形態では、化合物Aを有機溶媒と共に高温(例えば約60~110℃又は約80℃)に加熱してスラリー又は懸濁液を形成した後に、(例えば約0~60℃、約40~60℃、約45~55℃の温度まで、又は約室温に)冷却して化合物A形態Iを得ることにより、前記方法を実施する。例えば、前記有機溶媒はエタノールであり、約40℃を上回る温度まで化合物Aを含有するスラリーを冷却し、形態Iを得ることができる。例えば、前記有機溶媒はMIBKであり、化合物Aを含有するスラリーを室温まで冷却して形態Iを得ることができる。
【0057】
別の実施形態では、化合物Aのエタノール懸濁液を高温(例えば約80℃)まで加熱した後に約40℃以上の温度(例えば約45~55℃)まで冷却し、濾過し(例えば約45~55℃)、加温(例えば45~55℃)したエタノールで洗浄し、例えば45~55℃で乾燥し、化合物Aの溶媒和物(例えばエタノール溶媒和物)を実質的に含有しない化合物Aの形態Iを得る。例えば、製造時点での化合物Aの形態Iはエタノール溶媒和物含有率が<5%(例えば<2%、<1%、<0.5%、又は<0.1%)である。
【0058】
1実施形態において、前記方法は更に、混合物を冷却した後に混合物を濾過する工程を含む。前記濾過工程は約0℃~約60℃の温度(例えば約40~60℃、約45~55℃、又は約室温)で実施し、フィルターケーキを得ることができる。
【0059】
1実施形態において、前記方法は更に、混合物を濾過した後にフィルターケーキをリンスする工程を含む。前記リンス工程は有機溶媒(例えばエタノール等のアルコール)を使用して約0℃~約60℃の温度(例えば約40~60℃、約45~55℃、又は約室温)で実施し、リンスしたフィルターケーキを得ることができる。
【0060】
1実施形態において、前記方法は更に、フィルターケーキをリンスした後に、リンスしたフィルターケーキを乾燥する工程を含む。前記乾燥工程は約0℃~約60℃の温度(例えば約40~60℃、約45~55℃、又は約室温)で実施し、化合物Aの形態Iを得ることができる。
【0061】
1実施形態において、形態Iは純度が91%を上回り、例えば92.5%超、95%超、96%超、97%超、又は97.5%超である。
【0062】
1実施形態において、形態Iは純度が98%を上回り、例えば98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。
【0063】
別の態様において、本開示は例えば6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(「中間体7」)の合成に有用な下式:
【0064】
【0065】
本開示はその治療を必要とする対象における甲状腺ホルモン不応症(RTH)の治療方法も提供する。前記方法は少なくとも1カ所のTRβ突然変異をもつ対象に治療有効量の式(IV):
【0066】
【化8】
[式中、
R
3はH又はCH
2R
aであり、前記式中、R
aはヒドロキシル基、O結合型アミノ酸、-OP(O)(OH)
2又は-OC(O)-R
bであり、R
bは低級アルキル基、アルコキシ基、アルキル酸、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は-(CH
2)
n-ヘテロアリールであり、nは0又は1であり;
R
4はHであり、R
5はCH
2COOH、C(O)CO
2H、又はそのエステルもしくはアミドであり、あるいはR
4はR
5は一緒になって-N=C(R
c)-C(O)-NH-C(O)-であり、前記式中、R
cはH又はシアノ基である。]の化合物を投与する段階を含む。
【0067】
甲状腺ホルモン不応症(RTH)は甲状腺ホルモンに対する種々の組織の感受性低下を特徴とする症候群であり、主にTHRβの常染色体優性突然変異に起因する。Shi et al.,Biochemistry 2005,44,4612-4626参照。
【0068】
1実施形態において、上記方法で使用する化合物は2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)、例えば形態Iの化合物Aである。
【0069】
1実施形態において、上記方法により治療する対象は肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、骨疾患、甲状腺系変性、アテローム性動脈硬化症、心血管障害、頻脈、多動行動、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、注意欠陥多動性障害、学習障害、精神遅滞、難聴、骨年齢遅延、神経もしくは精神疾患又は甲状腺癌をもつ。
【0070】
1実施形態において、前記THRβ突然変異は配列番号1のアミノ酸位置234位における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A234T);配列番号1のアミノ酸位置243位における野生型残基アルギニン(R)からグルタミン(Q)への置換(R243Q);配列番号1のアミノ酸位置316位における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R316H);及び配列番号1のアミノ酸位置317位における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A317T)から構成される群から選択される。別の実施形態において、前記方法で使用する化合物は突然変異体THRβの活性を回復する。
【0071】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)の純度は本願明細書に記載する適切な溶媒から粗生成物である化合物を再スラリー化することにより得られる。別の実施形態において、前記化合物は溶媒和物(例えば水和物)ではない。
【0072】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。
【0073】
1実施形態において、式(IV)の化合物は形態Iの化合物Aであり、純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。
【0074】
1実施形態において、式(IV)の化合物は形態Iの化合物Aであり、形態Iは純度が85%を上回り、例えば86%超、90%超、92.5%超、95%超、96%超、97%超、97.5%超、98%超、98.5%超、99%超、99.2%超、99.5%超、又は99.8%超である。
【0075】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(例えば化合物Aのβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体である2-(3,5-ジクロロ-4-((4-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル)が1.5%未満(例えば1.0%未満、例えば0.5%未満)である。
【0076】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は対応するβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体(例えば化合物Aのβ-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン位置異性体である2-(3,5-ジクロロ-4-((4-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル)を含有していない。
【0077】
1実施形態において、式(IV)の化合物(例えば化合物A)は重金属(例えば銀、金又は白金)が1.5%未満(例えば1.0%未満、例えば0.5%未満)である。
【0078】
1実施形態において、前記対象は哺乳動物である。別の実施形態において、前記対象はヒトである。
【0079】
本開示は更に式(IV)の化合物又はその医薬として許容可能な塩に対する対象の応答性の判定方法を提供し、前記方法は、
(a)対象からの試料を準備する段階と;
(b)甲状腺ホルモン受容体(「TR」)の突然変異を検出し、前記突然変異が存在するならば、前記対象は前記化合物又はその医薬として許容可能な塩に対して応答性であると判定する段階を含む。
【0080】
1実施形態において、式(IV)の化合物は2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)である。
【0081】
1実施形態において、TRはTRβである。
【0082】
1実施形態において、本発明の方法により治療する対象は肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、骨疾患、甲状腺系変性、アテローム性動脈硬化症、心血管障害、頻脈、多動行動、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、注意欠陥多動性障害、学習障害、精神遅滞、難聴、骨年齢遅延、神経もしくは精神疾患又は甲状腺癌をもつ。
【0083】
1実施形態では、式(IV)の化合物に対する応答性の判定方法を前記甲状腺ホルモン不応症の治療方法と併用することができる。即ち、治療前に対象を試験し、前記化合物に対する応答性を判定する。
【0084】
本発明の他の特徴と利点は詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲から容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(「化合物A」)形態Iの粉末X線回折図(XRPD)である。
【
図2】化合物A形態Iの示差走査熱量測定(DSC)図である。
【
図3】
図3A及び3BはTHRβにおけるT3及び化合物Aを夫々示すMacPymolモデリング画像である。
【
図4】THRβにおけるT3と化合物Aを重ね合わせて示すMacPymolモデリング画像である。
【
図5】
図5AはT3と野生型THRβの極性相互作用を示すMacPymolモデリング画像であり、T3はArg320と非常に特異的に相互作用する。
図5Bは化合物Aと野生型THRβの極性相互作用を示すMacPymolモデリング画像であり、化合物AはArg320及びArg316と相互作用する。
【
図6】突然変異がリガンド結合ドメイン(「LBD」)の極性領域に多くの変化をもたらすことを示すMacPymolモデリング画像である。
【
図7】
図7AはT3とAla234Thr、Arg243Gln、Arg316His、Ala317ThrのTHRβ突然変異体との相互作用を示すMacPymolモデリング画像である。
図7Bは化合物AとAla234Thr、Arg243Gln、Arg316His、Ala317ThrのTHRβ突然変異体との相互作用を示すMacPymolモデリング画像であり、T3に比較して化合物Aでは負電荷をもつ複素環が突然変異を受け入れ易いことを示している。
【
図8】
図8A及び8Bは夫々Arg316His突然変異体におけるT3及び化合物AのMacPymolモデリング画像である。この突然変異体ではArg320がリガンドから回転しているため、T3-Arg320相互作用は弱まると思われるが、化合物AはArg320との良好な相互作用を維持し、CN基の位置に良好に置換し、突然変異後のHis316とカチオン-π相互作用を形成する。
【
図9】
図9A及び9Bは夫々WT THRβ及び突然変異体Arg316Hisにおける化合物AのMacPymolモデリング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形の不定冠詞及び定冠詞は文脈からそうでないことが明白である場合を除き、複数の指示対象を含む。従って、例えば「反応体」と言う場合には、単数の反応体のみならず、2種類以上の異なる反応体の組合せ又は混合物も含み、「置換基」と言う場合には、単数の置換基に加えて2個以上の置換基も含み、他の用語についても同様である。
【0087】
本願明細書で使用する「例えば」、「例として」、「等の」又は「含む」等の用語はより一般的な対象を具体的に表す例を紹介するものである。これらの例は単に開示を理解し易くするために挙げるものであり、如何なる点でも限定的ではない。更に、本願明細書で使用する「~でもよい」、「非必須の」、「場合により」又は「場合により~でもよい」なる用語はこれらの用語により説明する状況が存在してもしなくてもよいという意味であり、従って、このような記載はそのような状況が存在する場合と、存在しない場合を含む。例えば、「場合により存在する」なる用語は対象が存在してもしなくてもよいという意味であり、従って、このような記載は対象が存在する場合と対象が存在しない場合を含む。
【0088】
本発明の説明及び特許請求の範囲では、以下の用語を以下の定義に従って使用する。
【0089】
本願明細書で使用する「TR」又は「THR」なる略語は甲状腺ホルモン受容体を意味する。種々の生物種(例えばヒト、ラット、ニワトリ等)に由来するTR核酸及びポリペプチドが従来記載されている。例えば、各々その内容全体を本願に援用するR.L.Wagner et al.(2001),Molecular Endocrinology 15(3):398-410;J.Sap et al.(1986),Nature 324:635-640;C.Weinberger et al.(1986),Nature 324:641-646;及びC.C.Tompson et al.(1986),Science 237:1610-1614を参照されたい。ヒトTRβのアミノ酸配列は例えば本願に援用するGenbankアクセッション番号P10828.2に記載されている。
【0090】
【0091】
配列番号1においてヒトTRβの234位、243位、316位及び317位の残基を下線で示す。上記アミノ酸配列をコードするヒトTRβヌクレオチド配列の部分は配列番号2である。ヒトTRβのヌクレオチド配列は例えば本願に援用するGenbankアクセッション番号NM_000461.4に記載されている。
【0092】
【0093】
本願明細書で使用する「式を有する」又は「構造を有する」なる用語は限定的なものではなく、「含む」なる用語を一般に使用する場合と同様に使用する。「独立して~から選択される」なる用語は本願では指定する要素(例えばR基等)が同一でも異なってもよいことを示すために使用する。
【0094】
本願明細書で使用する「アルキル」なる用語は、必ずしもそうでなくてもよいが、通常では炭素原子数1~約24の分岐鎖又は非分岐鎖飽和炭化水素基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、デシル等)と、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等)を意味する。必ずしもそうでなくてもよいが、一般に、本願明細書におけるアルキル基は炭素原子数1~約18とすることができ、このような基は炭素原子数1~約12とすることができる。「低級アルキル」なる用語は炭素原子数1~6、例えば炭素原子数1、2、3、4、5又は6のアルキル基を意味する。「置換アルキル」とは、1個以上の置換基で置換されたアルキル基を意味し、「ヘテロ原子含有アルキル」及び「ヘテロアルキル」なる用語は以下に詳述するように、少なくとも1個の炭素原子をヘテロ原子で置換えたアルキル置換基を意味する。
【0095】
本願明細書で使用する「アルケニル」なる用語は少なくとも1個の二重結合を含む炭素原子数2~約24の直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基(例えばエテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニル等)を意味する。この場合も必ずしもそうでなくてもよいが、一般に、本願明細書におけるアルケニル基は炭素原子数2~約18とすることができ、例えば炭素原子数2~12とすることができる。「低級アルケニル」なる用語は炭素原子数2~6のアルケニル基を意味する。「置換アルケニル」なる用語は1個以上の置換基で置換されたアルケニル基を意味し、「ヘテロ原子含有アルケニル」及び「ヘテロアルケニル」なる用語は少なくとも1個の炭素原子をヘテロ原子(例えばN、P、O又はS)で置換えたアルケニル基を意味する。
【0096】
本願明細書で使用する「アルキニル」なる用語は少なくとも1個の三重結合を含む炭素原子数2~24の直鎖又は分岐鎖炭化水素基(例えばエチニル、n-プロピニル等)を意味する。この場合も必ずしもそうでなくてもよいが、一般に、本願明細書におけるアルキニル基は炭素原子数2~約18とすることができ、このような基は更に炭素原子数2~12とすることができる。「低級アルキニル」なる用語は炭素原子数2~6のアルキニル基を意味する。「置換アルキニル」なる用語は1個以上の置換基で置換されたアルキニル基を意味し、「ヘテロ原子含有アルキニル」及び「ヘテロアルキニル」なる用語は少なくとも1個の炭素原子をヘテロ原子で置換えたアルキニル基を意味する。
【0097】
本願明細書で使用する「アルコキシ」なる用語は1個の末端エーテル結合を介して結合したアルキル基を意味し、即ち「アルコキシ」基は-O-アルキルとして表すことができ、ここでアルキルは上記に定義した通りである。「低級アルコキシ」基とは炭素原子数の1~6のアルコキシ基を意味し、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、t-ブチルオキシ等が挙げられる。本願明細書で「C1-C6アルコキシ」又は「低級アルコキシ」と称する置換基は例えば炭素原子数1~3とすることができ、別の例として、このような置換基は炭素原子数1又は2とすることができる(即ちメトキシ及びエトキシ)。
【0098】
「アルキル酸」なる用語はアルキル基上に存在する酸置換基を意味し、例えば-(CH2)oCOOH(式中、oは1~6の整数である。)が挙げられる。アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0099】
本願明細書で使用する「アリール」なる用語は、特に指定しない限り、必ずしもそうでなくてもよいが、一般に炭素原子数5~30であり、1個の芳香環又は(個々の芳香環がメチレン部分やエチレン部分等の共通の基と結合するように)融合、直接結合もしくは間接結合した複数の芳香環を含む芳香族置換基を意味する。アリール基は例えば炭素原子数5~20とすることができ、別の例として、アリール基は炭素原子数5~12とすることができる。例えば、アリール基は1個の芳香環又は融合もしくは結合した2個の芳香環を含むことができる(例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン等)。「置換アリール」とは1個以上の置換基で置換されたアリール部分を意味し、「ヘテロ原子含有アリール」及び「ヘテロアリール」なる用語は以下に詳述するように、少なくとも1個の炭素原子をヘテロ原子で置換えたアリール置換基を意味する。特に指定しない限り、「アリール」なる用語は非置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有芳香族置換基をもつ環を包含する。
【0100】
「アラルキル」なる用語はアリール置換基をもつアルキル基を意味し、「アルカリール」なる用語はアルキル置換基をもつアリール基を意味し、ここで「アルキル」及び「アリール」は上記に定義した通りである。一般に、本願明細書におけるアラルキル基とアルカリール基は炭素原子数6~30である。アラルキル基とアルカリール基は例えば炭素原子数6~20とすることができ、別の例として、このような基は炭素原子数6~12とすることができる。
【0101】
「アミノ」なる用語は本願明細書では-NZ1Z2基の意味で使用し、前記式中、Z1及びZ2は水素又は非水素置換基であり、非水素置換基としては、例えばアルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、並びにその置換及び/又はヘテロ原子含有物が挙げられる。
【0102】
「ハロ」及び「ハロゲン」なる用語は従来の意味で使用し、クロロ、ブロモ、フルオロ又はヨード置換基を意味する。
【0103】
「ヘテロ原子含有アルキル基」(別称「ヘテロアルキル」基)や「ヘテロ原子含有アリール基」(別称「ヘテロアリール」基)等における「ヘテロ原子含有」なる用語は1個以上の炭素原子を炭素以外の原子、例えば窒素、酸素、硫黄、リン又はケイ素、典型的には窒素、酸素又は硫黄で置換えた分子、結合又は置換基を意味する。同様に、「ヘテロアルキル」なる用語はヘテロ原子を含有するアルキル置換基を意味し、「複素環」又は「複素環式」なる用語はヘテロ原子を含有する環状部分を意味し、「ヘテロアリール」及び「複素芳香族」なる用語は夫々ヘテロ原子を含有する「アリール」及び「芳香族」置換基を意味し、他の用語についても同様である。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシアリール、アルキルスルファニル置換アルキル、N-アルキル化アミノアルキル等が挙げられる。ヘテロアリール置換基の例としては、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、フリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル等が挙げられ、ヘテロ原子含有脂環式基の例はピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ、テトラヒドロフラニル等である。
【0104】
「ヒドロカルビル」とは直鎖、分岐鎖、環状、飽和及び不飽和種を含めて炭素原子数1~約30、例えば炭素原子数1~約24、特に炭素原子数1~約18、特に炭素原子数約1~12の1価ヒドロカルビル基を意味し、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。「置換ヒドロカルビル」とは、1個以上の置換基で置換されたヒドロカルビル基を意味し、「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」なる用語は少なくとも1個の炭素原子をヘテロ原子で置換えたヒドロカルビル基を意味する。
【0105】
「O結合型アミノ酸」なる用語はアミノ酸のカルボキシル基の酸素を介して、好ましくはアミノ酸のカルボキシ末端のカルボキシル基を介して分子と結合した天然又は合成の任意アミノ酸を意味する。
【0106】
本願明細書で使用する「保護基」なる用語は多官能性化合物において別の反応性部位で選択的に反応を実施できるように、特定の官能性部分(例えばO、S又はN)を一時的にブロックすることを意味する。好ましい実施形態において、保護基は良好な収率で選択的に反応し、予想される反応に対して安定な保護基質を生じ、保護基は容易に入手可能で好ましくは非毒性であって他の官能基を攻撃しない試薬により良好な収率で選択的に除去されなければならず、保護基は(より好ましくは新しい立体中心を生じずに)容易に脱離可能な誘導体を形成し、保護基は反応部位が増えように付加的官能価を最小とする。本願明細書に詳述するように、酸素、硫黄、窒素及び炭素保護基を利用することができる。例えば、所定の実施形態では、所定の代表的な酸素保護基を利用することができる。これらの酸素保護基としては、限定されないが、メチルエーテル類、置換メチルエーテル類(例えばMOM(メトキシメチルエーテル)、MTM(メチルチオメチルエーテル)、BOM(ベンジルオキシメチルエーテル)及びPMBM(p-メトキシベンジルオキシメチルエーテル))、置換エチルエーテル類、置換ベンジルエーテル類、シリルエーテル類(例えばTMS(トリメチルシリルエーテル)、TES(トリエチルシリルエーテル)、TIPS(トリイソプロピルシリルエーテル)、TBDMS(t-ブチルジメチルシリルエーテル)、トリベンジルシリルエーテル、及びTBDPS(t-ブチルジフェニルシリルエーテル))、エステル類(例えばギ酸エステル、酢酸エステル、安息香酸エステル(Bz)、トリフルオロ酢酸エステル、及びジクロロ酢酸エステル)、炭酸エステル類、環状アセタール類及びケタール類が挙げられる。所定の他の代表的な実施形態では、窒素保護基を利用する。窒素保護基と、保護方法及び脱保護方法は当分野で公知である。窒素保護基としては、限定されないが、カルバミン酸エステル類(例えばカルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、置換カルバミン酸エチル(例えばTroc))、アミド類、環状イミド誘導体、N-アルキルアミン類、N-アリールアミン類、イミン誘導体及びエナミン誘導体が挙げられる。更に他の実施形態では、所定の代表的な硫黄保護基を利用してもよい。硫黄保護基としては、限定されないが、上記酸素保護基に加え、脂肪族カルボン酸(例えばアクリル酸)、マレイミド、ビニルスルホニル及び場合により置換されたマレイン酸が挙げられる。本願明細書では所定の他の代表的な保護基について詳述するが、当然のことながら、本発明はこれらの保護基に限定するものではなく、上記基準を使用して種々の他の等価の保護基を容易に認識し、本発明で利用することができる。更に、“Protective Groups in Organic Synthesis”Third Ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley & Sons,New York:1999には種々の保護基が記載されており、その内容全体を本願に援用する。
【0107】
「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」等における「置換」とは、上記定義でも触れたように、ヒドロカルビル、アルキル、アリール又は他の部分において、炭素(又は他の)原子と結合している少なくとも1個の水素原子が1個以上の水素以外の置換基で置換えられていることを意味する。このような置換基の例としては、限定されないが、官能基と、ヒドロカルビル部分としてC1-C24アルキル(例えばC1-C18アルキル、より特定的にはC1-C12アルキル、より特定的にはC1-C6アルキル)、C2-C24アルケニル(例えばC2-C18アルケニル、より特定的にはC2-C12アルケニル、より特定的にはC2-C6アルケニル)、C2-C24アルキニル(例えばC2-C18アルキニル、より特定的にはC2-C12アルキニル、より特定的にはC2-C6アルキニル)、C5-C30アリール(例えばC5-C20アリール、より特定的にはC5-C12アリール)、及びC6-C30アラルキル(例えばC6-C20アラルキル、より特定的にはC6-C12アラルキル)が挙げられる。
【0108】
「官能基」とは、上記定義でも触れたように、1以上の炭化水素以外の官能価を含む水素以外の基を意味する。官能基の例としては、限定されないが、ハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C1-C24アルコキシ、C2-C24アルケニルオキシ、C2-C24アルキニルオキシ、C5-C20アリールオキシ、アシル(例えばC2-C24アルキルカルボニル(-CO-アルキル)及びC6-C20アリールカルボニル(-CO-アリール))、アシルオキシ(-O-アシル)、C2-C24アルコキシカルボニル(-(CO)-O-アルキル)、C6-C20アリールオキシカルボニル(-(CO)-O-アリール)、ハロカルボニル(-CO)-X(式中、Xはハロである。)、C2-C24アルキルカルボナト(-O-(CO)-O-アルキル)、C6-C20アリールカルボナト(-O-(CO)-O-アリール)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシラト(-COO- )、カルバモイル(-(CO)-NH2)、モノ置換C1-C24アルキルカルバモイル(-(CO)-NH(C1-C24アルキル))、ジ置換アルキルカルバモイル(-(CO)-N(C1-C24アルキル)2)、モノ置換アリールカルバモイル(-(CO)-NH-アリール)、チオカルバモイル(-(CS)-NH2)、カルバミド(-NH-(CO)-NH2)、シアノ(-C≡N)、イソシアノ(-N+≡C-)、シアナト(-O-C≡N)、イソシアナト(-O-N+≡C-)、イソチオシアナト(-S-C≡N)、アジド(-N=N+=N-)、ホルミル(-(CO)-H)、チオホルミル(-(CS)-H)、アミノ(-NH2)、モノ-及びジ-(C1-C24アルキル)置換アミノ、モノ-及びジ-(C5-C20アリール)置換アミノ、C2-C24アルキルアミド(-NH-(CO)-アルキル)、C5-C20アリールアミド(-NH-(CO)-アリール)、イミノ(-CR=NH(式中、R=水素、C1-C24アルキル、C5-C20アリール、C6-C20アルカリール、C6-C20アラルキル等である。)、アルキルイミノ(-CR=N(アルキル)(式中、R=水素、アルキル、アリール、アルカリール等である。)、アリールイミノ(-CR=N(アリール)(式中、R=水素、アルキル、アリール、アルカリール等である。)、ニトロ(-NO2)、ニトロソ(-NO)、スルホ(-SO2-OH)、スルホナト(-SO2-O-)、C1-C24アルキルスルファニル(-S-アルキル、別称「アルキルチオ」)、アリールスルファニル(-S-アリール、別称「アリールチオ」)、C1-C24アルキルスルフィニル(-(SO)-アルキル)、C5-C20アリールスルフィニル(-(SO)-アリール)、C1-C24アルキルスルホニル(-SO2-アルキル)、C5-C20アリールスルホニル(-SO2-アリール)、ホスホノ(-P(O)(OH)2)、ホスホナト(-P(O)(O-)2)、ホスフィナト(-P(O)(O-))、ホスホ(-PO2)及びホスフィノ(-PH2)、モノ-及びジ-(C1-C24アルキル)置換ホスフィノ、モノ-及びジ-(C5-C20アリール)置換ホスフィノが挙げられ;更にヒドロカルビル部分としてC1-C24アルキル(例えばC1-C18アルキル、より特定的にはC1-C12アルキル、より特定的にはC1-C6アルキル)、C2-C24アルケニル(例えばC2-C18アルケニル、より特定的にはC2-C12アルケニル、より特定的にはC2-C6アルケニル)、C2-C24アルキニル(例えばC2-C18アルキニル、より特定的にはC2-C12アルキニル、より特定的にはC2-C6アルキニル)、C5-C30アリール(例えばC5-C20アリール、より特定的にはC5-C12アリール)、及びC6-C30アラルキル(例えばC6-C20アラルキル、より特定的にはC6-C12アラルキル)が挙げられる。更に、上記官能基は、個々の基が許容する場合には、上記に具体的に挙げたもの等の1以上の他の官能基又は1以上のヒドロカルビル部分で更に置換されていてもよい。同様に、上記ヒドロカルビル部分は上記に具体的に挙げたもの等の1以上の官能基又は他のヒドロカルビル部分で更に置換されていてもよい。
【0109】
「方法を統合する」なる用語は多段階法をより少数の工程又は単位操作に短縮することを意味する。単位操作は変換に加え、処理工程と単離工程も含む。遠心、濾過、蒸留、デカント、沈降/結晶化、及び包装が単位操作の例である。文献には統合及び他の方法改良の非常に多くの例が挙げられている(例えばJ.Org.Chem.,2007,72,9757-9760参照)。
【0110】
当然のことながら、上記定義には重複しているものもあるため、化学部分によっては2以上の定義に含まれるものもある。
【0111】
置換された基の例のリストの先頭に「置換」なる用語が付いている場合には、この用語はその基の個々の例に適用されるものとする。例えば、「置換アルキル及びアリール」なる用語は「置換アルキル及び置換アリール」と解釈すべきである。
【0112】
本開示は化合物(例えば甲状腺ホルモンアナログとしてのピリダジノン化合物の合成用中間体として有用な化合物)の合成方法を提供する。甲状腺ホルモンアナログとしてのピリダジノン化合物とそのプロドラッグは例えば米国特許第7,452,882号、7,807,674号及び8,076,334号に開示されている。
【0113】
特に、本発明は6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(「中間体7」)又はその塩の製造方法に関し、前記方法は、
(a)R1MgX又はR1Liを式(I):
【0114】
【0115】
【化10】
の化合物を形成する工程(上記各式中、R
1はイソプロピル又はイソプロペニルであり、Xはハロであり、R
2はH又はアミン保護基である。)と;
(b)R
1がイソプロペニルである場合には塩基の存在下、又はR
1がイソプロピルである場合には酸化剤の存在下で式(II)の化合物を式(III):
【0116】
【0117】
本開示は更に甲状腺ホルモンアナログとしてのピリダジノン化合物とそのプロドラッグの合成方法に関する。このような化合物としては、米国特許第7,452,882号、7,807,674号及び8,076,334号に開示されているものが挙げられる。特に、本開示は式(IV):
【0118】
【化12】
の化合物又はその医薬として許容可能な塩の製造方法に関し、上記式中、
R
3はH又はCH
2R
aであり、前記式中、R
aはヒドロキシル基、O結合型アミノ酸、-OP(O)(OH)
2又は-OC(O)-R
bであり、R
bは低級アルキル基、アルコキシ基、アルキル酸、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は-(CH
2)
n-ヘテロアリール基であり、nは0又は1であり;
R
4はHであり、R
5はCH
2COOH、C(O)CO
2H、又はそのエステルもしくはアミドであり、あるいはR
4とR
5は一緒になり、-N=C(R
c)-C(O)-NH-C(O)-であり、前記式中、R
cはH又はシアノ基である。前記方法は、
(a)R
1MgX又はR
1Liを式(I):
【0119】
【0120】
【化14】
の化合物を形成する工程(上記各式中、R
1はイソプロピル又はイソプロペニルであり、Xはハロであり、R
2はH又はアミン保護基である。)と;
(b)R
1がイソプロペニルである場合には塩基の存在下、又はR
1がイソプロピルである場合には臭素および酸の存在下で式(II)の化合物を式(III):
【0121】
【化15】
の化合物に変換する工程と;
(c)式(III)の化合物のアミン保護基R
2が存在する場合にはこれを除去し、6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを形成する工程と;場合により
(d)適切な条件下で6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを式(IV)の化合物に変換する工程を含む。
【0122】
本発明は更に以下のスキームに従い、実施例に示すような本発明の種々の開示化合物の詳細な合成方法を提供する。
【0123】
本明細書では随所において、組成物が特定の成分を有する、含む、又は含有すると記載しているが、これは、組成物が指定成分から本質的に構成される、又は指定成分から構成されるという意味でもある。同様に、方法が特定の処理工程を有する、包含する、又は含むと記載している場合には、これらの方法が指定工程から本質的に構成される、又は指定工程から構成されるという意味でもある。更に、当然のことながら、発明を実施可能である限り、工程の順序又は所定の操作を実施する順序は重要ではない。更に、2以上の工程又は操作を同時に実施することもできる。
【0124】
本発明の合成方法は多様な官能基に対応することができ、従って、種々の置換された出発材料を使用することができる。前記方法では一般に方法全体の終点又は終点付近で所望の最終化合物が得られるが、場合によっては、化合物をその医薬として許容可能な塩、エステル又はプロドラッグに更に変換することが望ましい場合もある。
【0125】
所定の実施形態では、下記スキーム1又は2に従って6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(「中間体7」)を製造する。
【0126】
スキーム1:イソプロピルグリニャール試薬(iPrMgX)による6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(中間体7)の合成。
【0127】
【0128】
スキーム2:イソプロペニルグリニャール試薬による6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(中間体7)の合成
【0129】
【0130】
ステージ1:3,5-ジクロロ-4-((6-クロロピリダジン-3-イル)オキシ)アニリン(化合物2)及びN-(3,5-ジクロロ-4-((6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)ベンズアミド又はN-(3,5-ジクロロ-4-((6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)アセトアミド(化合物4)の合成
【0131】
適切な有機溶媒(例えばDMSO又はDMAC)中で少量の金属炭酸塩(例えば炭酸セシウム又は炭酸カリウム)や金属アルコキシド(例えばカリウムt-ブトキシド)等の適切な塩基の存在下に適切な反応温度(例えば60~120℃)にて反応が完了するまで、通常では約3~30時間、例えば約3~15時間にわたって3,6-ジクロロピリダジンを2,6-ジクロロ-4-アミノフェノールと接触させることにより化合物2を製造する。
【0132】
2を適切なアミン保護試薬(例えば無水安息香酸又は塩化ベンゾイル)で保護した後に、保護した中間体を適切な有機溶媒(例えば酢酸)の存在下で適切な反応温度(例えば100~120℃)にて反応が完了するまで、通常では約2~20時間、例えば約5~15時間にわたって酢酸ナトリウムで処理することにより化合物4を製造する。粗生成物を適切な溶媒(例えば水と酢酸の混液)で適切な温度(例えば88~100℃)にて精製する。化合物2を加水分解条件に供することにより酢酸エステルで保護された化合物4を製造することができる。
【0133】
ステージ2:N-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)ベンズアミド又はN-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)アセトアミド(化合物6)及び6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(中間体7)の合成
【0134】
適切な有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン)中で化合物4をイソプロピルグリニャールと接触させた後に酸化工程を実施することにより、化合物6を製造する。酸化工程は適切な有機溶媒(例えば酢酸)中で臭素等の酸化試薬の存在下に適切な反応温度(例えば60~90℃)にて反応が完了するまで、通常では約2~10時間、例えば約2~5時間実施することができる。
【0135】
当然のことながら、化合物6から中間体7への変換を完了するためには脱保護反応が必要である、特に、中間体7に存在する遊離アミノ基を得るためにはN保護基(即ちアセチル又はベンゾイル)を除去する必要がある。従って、1実施形態では、化合物6(式中、R2はBzである。)を金属水酸化物(例えばKOH又はNaOH)や金属炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム)等の塩基で脱保護することにより中間体7を得る。別の実施形態では、化合物6(式中、R2はAcである。)をトリフルオロ酢酸等の酸で脱保護することにより中間体7を得る。
【0136】
あるいは、適切な有機溶媒(例えばテトラヒドロフランや2-メチルTHF)中で化合物4をイソプロペニルグリニャールと接触させた後に(例えば5Aから6へと)異性化し、金属水酸化物(例えばKOH)等の塩基の処理下で脱保護することにより化合物7を製造する。異性化/脱保護工程は適切な反応温度(例えば60~90℃)にて反応が完了するまで、通常では約10~60時間、例えば90℃にて約16時間実施する。
【0137】
グリニャール反応はLiClやLiBr等のルイス酸の存在下で適切な反応温度(例えば室温~40℃)にて反応が完了するまで、通常では約2~10時間、例えば約2~5時間実施することができる。
【0138】
所定の実施形態では、化合物5又は5Aの合成の結果、中間体7の収率は当分野で公知の他の方法に比較して改善される。例えば、5又は5Aの合成の結果、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、又は90%超の収率となる。
【0139】
所定の実施形態において、グリニャール反応は位置選択性を改善するため、化合物6のβ-イソプロピル位置異性体、即ち
【0140】
【化18】
が有意に減り、従って、中間体7の純度が上がる。
【0141】
1実施形態において、6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(「中間体7」)から化合物Aへの変換は下記スキーム3に従って実施される。
【0142】
【0143】
ステージ3:6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(中間体8)の合成
適切な溶媒(例えば酢酸と水の混液)中で酸(例えばHCl)の存在下に適切な反応温度(例えば10℃未満)にて反応が完了するまで6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オンを(2-シアノアセチル)カルバミン酸エチル及び金属亜硝酸塩(例えば亜硝酸ナトリウム)と接触させることにより中間体8を製造する。
【0144】
ステージ4:2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物A)の合成
適切な溶媒(例えばDMAC)中で適切な反応温度(例えば約120℃)にて反応が完了するまで中間体8と塩基(例えば酢酸ナトリウム又は酢酸カリウム)を接触させることにより化合物Aを製造する。
【0145】
所定の実施形態において、6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(「中間体7」)からMGL-3916以外の式(IV)の化合物(例えばそのプロドラッグ)への変換は例えばその内容全体を本願に援用する米国特許第7,452,882号、7,807,674号及び8,076,334号に記載の条件下で実施される。
【0146】
例えば米国特許第7,452,882号に従来開示されている合成経路におけるビアリールエーテル形成は位置選択性が不良であったが、これに対して本願明細書に記載の合成方法はグリニャール試薬によりイソプロペニル基又はイソプロピル基を導入する結果、位置選択性に優れる。また、ビアリールエーテル生成物をキログラム単位の量で合成する場合には濾過時間がバッチ当たり1週間を上回るため、これを単離することはほぼ実質的に不可能であったが、ビアリールエーテル形成をベンズアミド保護に統合にすることにより、本願明細書に開示する方法はこの生成物を単離せずに済む。
【0147】
本発明は高純度及び/又は特定形態(例えば形態I)の化合物、本願明細書に記載の組成物、並びに肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、骨疾患、甲状腺系変性、アテローム性動脈硬化症、心血管障害、頻脈、多動行動、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、注意欠陥多動性障害、学習障害、精神遅滞、難聴、骨年齢遅延、神経もしくは精神疾患又は甲状腺癌の治療又は予防方法を提供する。
【0148】
当然のことながら、本願明細書に開示する方法は所望の化合物の大規模及び小規模いずれの製造にも適している。本願明細書に記載の方法の好ましい実施形態では、実験/実験室規模ではなく大規模、例えば工業生産規模で甲状腺ホルモンアナログを製造することができる。例えば、本開示の方法によるバッチ型方法は少なくとも1g、又は少なくとも5g、又は少なくとも10g、又は少なくとも100g、又は少なくとも1kg、又は少なくとも100kgの甲状腺ホルモンアナログのバッチの製造を可能にする。更に、前記方法はHPLCにより測定した純度が少なくとも98%、又は少なくとも98.5%である甲状腺ホルモンアナログの製造を可能にする。
【0149】
医薬組成物
本発明は更に、少なくとも1種の医薬として許容可能な賦形剤又は担体と共に式IVの化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0150】
「医薬組成物」とは、対象に投与するのに適した形態の本発明の化合物を含有する製剤である。1実施形態において、医薬組成物はバルク又は単位剤形である。単位剤形は例えばカプセル剤、静注バッグ、錠剤、シングルポンプ式エアゾールインヘラー又はバイアル等の各種剤形のいずれかである。単位用量の組成物における活性成分(例えば開示化合物又はその塩、水和物、溶媒和物又は異性体の製剤)の量は有効量であり、特定の該当治療により異なる。当業者に自明の通り、患者の年齢と状態に応じて用量を常法により変更することが必要な場合がある。用量は投与経路によっても異なる。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、口腔、舌下、胸膜内、髄腔内、鼻腔内等の種々の経路が考えられる。本発明の化合物の局所又は経皮投与用剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、溶液剤、パッチ及び吸入剤が挙げられる。1実施形態では、活性化合物を無菌条件下で医薬として許容可能な担体及び必要に応じて防腐剤、緩衝剤又は噴射剤と混合する。
【0151】
本願明細書で使用する「医薬として許容可能」なる用語は適切な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題もしくは合併症を生じずにヒト及び動物の組織と接触使用するのに適しており、妥当なメリット/リスク比に見合う前記化合物、材料、組成物、担体及び/又は剤形を意味する。
【0152】
「医薬として許容可能な賦形剤又は担体」は一般に安全で非毒性であり、生物学的にも他の面でも有害でない医薬組成物を製造するのに有用な賦形剤又は担体を意味し、獣医学用と人体医薬用とに許容可能な賦形剤を含む。本明細書と特許請求の範囲で使用する「医薬として許容可能な賦形剤」とは1種及び2種以上のこのような賦形剤を包含する。
【0153】
本発明の医薬組成物はその目的とする投与経路に適合可能となるように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口腔(例えば吸入)、経皮(局所)、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内又は皮下投与用に使用される溶液剤又は懸濁剤には以下の成分、即ち滅菌希釈剤(例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒);抗細菌剤(例えばベンジルアルコールやメチルパラベン);酸化防止剤(例えばアスコルビン酸や重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩)及び浸透圧調節剤(例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖)を添加することができる。pHは塩酸又は水酸化ナトリウム等の酸又は塩基で調整することができる。非経口製剤はガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は多用量バイアルに封入することができる。
【0154】
本願明細書で使用する「治療有効量」なる用語は指定疾患もしくは病態を治療、改善もしくは予防するため、又は検出可能な治療効果もしくは阻害効果を発揮するための薬剤の量を意味する。前記効果は当分野で公知の任意アッセイ方法により検出することができる。ある対象の厳密な有効量はその対象の体重、寸法及び健康状態;病態の種類と程度;及び投与に選択する治療法又は治療法の併用によって異なる。所与状況の治療有効量は医師の技量と判断の範囲内の日常的実験により決定することができる。好ましい1態様において、治療する疾患又は病態は代謝障害である。
【0155】
本発明の方法の実施においては、有効量の本発明の化合物のいずれか1種あるいは本発明の化合物のいずれか又はその医薬として許容可能な塩もしくはエステルの組合せを当分野で公知の通常の許容可能な方法のいずれかにより単剤又は併用剤として投与する。従って、前記化合物又は組成物を経口(例えば口腔)、舌下、非経口(例えば筋肉内、静脈内又は皮下)、直腸(例えば坐剤又は洗浄剤)、経皮(例えば皮膚エレクトロポレーション)又は吸入(例えばエアゾール)により、固体、液体もしくは気体剤形(例えば錠剤及び懸濁剤)で投与することができる。投与は適宜単一の単位剤形で持続療法により実施することもできるし、単回療法で実施することもできる。治療のための組成物はパモ酸等の親油性塩と共に油性エマルション又は分散液の形態でもよいし、皮下又は筋肉内投与用の生分解性徐放性組成物の形態でもよい。
【0156】
本発明の組成物の製造に有用な医薬担体は固体、液体又は気体とすることができ、従って、前記組成物は錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、散剤、腸溶コート又は他の保護製剤(例えばイオン交換樹脂に結合したものや、脂質-蛋白質ベシクルにパッケージングしたもの)、徐放性製剤、溶液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアゾール等の形態をとることができる。担体は石油、動物、植物又は合成由来のもの等の各種油類(例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等)から選択することができる。特に注射溶液剤(血液と等張の場合)には、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液及びグリコールが好ましい液体担体である。例えば、静脈内投与用製剤は固体活性成分を水に溶解して水溶液を形成し、前記水溶液を滅菌することにより製造される活性成分の滅菌水溶液を含む。適切な医薬賦形剤としては、澱粉、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、タルク、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。組成物には防腐剤、安定剤、湿潤剤又は乳化剤、浸透圧調節用塩類、緩衝剤等の従来の医薬添加剤を添加してもよい。適切な医薬担体とその製剤化についてはE.W.Martin著Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。このような組成物はいずれにしても、レシピエントに正しく投与するのに適した剤形となるように、適切な担体と共に有効量の活性化合物を含有している。
【0157】
前記医薬製剤は更に防腐剤、溶解補助剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧調節用塩類、緩衝剤、コーティング剤又は酸化防止剤も含有することができる。前記製剤は更に他の治療薬として有益な物質を含有することができ、このような物質としては式Iの成分以外の他の活性成分が挙げられる。
【0158】
本発明の化合物は少なくとも1カ所のTRβ突然変異をもつ対象における甲状腺ホルモン不応症(RTH)の治療のための医薬として有用である。前記対象としては肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、骨疾患、甲状腺系変性、アテローム性動脈硬化症、心血管障害、頻脈、多動行動、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、注意欠陥多動性障害、学習障害、精神遅滞、難聴、骨年齢遅延、神経もしくは精神疾患又は甲状腺癌等の疾患をもつものが挙げられる。
【0159】
本発明の化合物の治療有効量ないし用量は広い範囲をとることができ、当分野で公知の方法で決定することができる。例えば、体重に応じて薬剤を投与することができる。このような用量は投与する特定の化合物、投与経路、治療する病態及び治療する患者等の特定の各症例における個々の要件に合わせて調節される。別の実施形態では、薬剤を固定用量で投与することができ、例えば体重に応じて調節しない。一般に、成人への経口又は非経口投与の場合、約0.5mg~約1000mgの1日用量が適切であると考えられるが、必要な場合には前記上限を越えてもよい。用量は1日当たり約5mg~約400mgが好ましい。好ましい用量は1日当たり約20mg~約100mgとすることができる。前記1日用量を単回投与することもできるし、複数回に分けて投与することもでき、非経口投与では、持続輸液してもよい。
【0160】
薬剤の有効量は医師又は他の有資格観察者が判断した場合に客観的に認識可能な改善をもたらすと判断される量である。本願明細書で使用する「用量効果的」なる用語は対象又は細胞に所望の生物学的効果を生じるための活性化合物の量を意味する。
【0161】
医薬組成物は投与説明書と共に容器、パック又はディスペンサーに収容することができる。
【0162】
本発明の化合物は更に塩を形成することが可能である。これらの全形態も本発明の範囲内に含まれる。
【0163】
本願明細書で使用する「医薬として許容可能な塩」なる用語はその酸塩又は塩基塩を形成することにより親化合物を変換した本発明の化合物の誘導体を意味する。医薬として許容可能な塩の例としては、限定されないが、アミン、アルカリ等の塩基性残基の無機もしくは有機酸塩又はカルボン酸等の酸性残基の有機塩が挙げられる。医薬として許容可能な塩としては、例えば非毒性無機又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性塩としては、限定されないが、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、蓚酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、塩基性酢酸、琥珀酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び通常のアミノ酸(例えばグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン等)から選択される無機酸及び有機酸から誘導されるものが挙げられる。
【0164】
医薬として許容可能な塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、樟脳スルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ムコン酸等から誘導されるものが挙げられる。本発明は更に、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン(例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオン)で置換えられる場合又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、エチレンジアミン、イミダゾール、リジン、アルギニン、モルホリン、2-ヒドロキシエチルモルホリン、ジベンジルエチレンジアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ベンジルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基と配位する場合に形成される塩も包含する。
【0165】
当然のことながら、医薬として許容可能な塩と言う場合には常に同一塩の本願明細書に定義するような溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形体)を包含する。
【0166】
本発明の化合物はエステル(例えば医薬として許容可能なエステル)として製造することもできる。例えば、化合物中のカルボン酸官能基をその対応するエステル(例えばメチル、エチル又は他のエステル)に変換することができる。また、化合物中のアルコール基をその対応するエステル(例えば酢酸エステル、プロピオン酸エステル又は他のエステル)に変換することもできる。
【0167】
本発明の化合物はプロドラッグ(例えば医薬として許容可能なプロドラッグ)として製造することもできる。「プロ-ドラッグ」及び「プロドラッグ」なる用語は本願明細書では同義に使用し、活性な親薬剤を生体内で放出する任意化合物を意味する。プロドラッグは医薬品の多数の望ましい品質(例えば溶解度、生体利用性、製造性等)を強化することが知られているので、本発明の化合物はプロドラッグ形態で送達することができる。従って、本発明は本発明の化合物のプロドラッグ、前記プロドラッグの送達方法及び前記プロドラッグを含有する組成物も包含するものとする。「プロドラッグ」とは、このようなプロドラッグを対象に投与したときに本発明の活性な親薬剤を生体内で放出する任意の共有結合担体を包含するものとする。本発明におけるプロドラッグは日常的操作又は生体内で開裂して親化合物となるように、化合物中に存在する官能基を修飾することにより製造される。プロドラッグとしては、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基又はカルボニル基が生体内で開裂して夫々遊離ヒドロキシル基、遊離アミノ基、遊離スルフヒドリル基、遊離カルボキシ基又は遊離カルボニル基を形成することができる任意基と結合した本発明の化合物が挙げられる。
【0168】
プロドラッグの例としては、限定されないが、本発明の化合物中のヒドロキシ官能基のエステル類(例えば酢酸エステル、ジアルキルアミノ酢酸エステル、ギ酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル及び安息香酸エステル誘導体)及びカルバミン酸エステル類(例えばN,N-ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル類(例えばエチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、アミノ官能基のN-アシル誘導体(例えばN-アセチル)、N-マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びエナミノン類、ケトン及びアルデヒド官能基のオキシム類、アセタール類、ケタール類及びエノールエステル類等が挙げられる。Bundegaard,H.,Design of Prodrugs,p1-92,Elesevier,New York-Oxford(1985)参照。
【0169】
前記化合物又はその医薬として許容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグは経口、鼻腔内、経皮、経肺、吸入、口腔、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸、胸膜内、髄腔内及び非経口投与される。1実施形態では、前記化合物を経口投与する。所定の投与経路の利点は当業者に当業者に理解されよう。
【0170】
前記化合物を利用する投与レジメンは患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び病態;治療する病態の重篤度;投与経路;患者の腎及び肝機能;並びに利用する特定化合物又はその塩等の各種因子に従って選択される。通常の知識をもつ医師又は獣医であれば、病態の進行を予防、抑制又は阻止するために必要な薬剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0171】
本発明の開示化合物の製剤化及び投与技術については、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,第19版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)を参酌することができる。1実施形態において、本願明細書に記載する化合物とその医薬として許容可能な塩は医薬製剤中で医薬として許容可能な担体又は希釈剤と共に使用される。適切な医薬として許容可能な担体としては、不活性固体充填剤又は希釈剤と、滅菌水溶液又は有機溶液が挙げられる。前記化合物は本願明細書に記載の範囲内の望ましい投与量を提供するために十分な量でこのような医薬組成物中に存在する。
【0172】
本発明はリガンド結合ドメインに突然変異を含む突然変異体TRβを発現する対象に、治療有効量の式(IV)の化合物、例えば化合物A(例えばその形態I)を投与することにより、対象における甲状腺ホルモン不応症の症状を治療又は緩和する方法に関する。
【0173】
本開示は更に、対象からの試料を準備する段階と;少なくとも1カ所のTRβ突然変異(例えばTRβポリペプチドのリガンド結合ドメイン、例えば配列番号1に記載のポリペプチドにおける遺伝子突然変異又は突然変異)を検出し、前記突然変異が存在するならば、前記対象は式(IV)の化合物、例えば化合物A(例えばその形態I)に対して応答性であると判定する段階により、本願明細書に開示する式(IV)の化合物に対する甲状腺ホルモン不応症(RTH)をもつ対象の応答性を判定する方法を提供する。前記方法は更に、治療有効量の式(IV)の化合物、例えば化合物A(例えばその形態I)を投与することにより、前記突然変異をもつ対象を治療する段階を含むことができる。
【0174】
1実施形態において、化合物A等の式(IV)の化合物に対して現在又は将来応答性を示す対象は肥満症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪肝、骨疾患、甲状腺系変性、アテローム性動脈硬化症、心血管障害、頻脈、多動行動、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、注意欠陥多動性障害、学習障害、精神遅滞、難聴、骨年齢遅延、神経もしくは精神疾患又は甲状腺癌をもつ。
【0175】
更に、本開示は対象からの試料におけるTRβ遺伝子突然変異の有無を判定する段階と;TRβ遺伝子突然変異の有無に基づき、治療有効量の式(IV)の化合物、例えば化合物A(例えばその形態I)の投与を含む治療法を選択する段階を含む方法も提供する。
【0176】
本開示は更に、配列番号2に記載の核酸配列中にTRβ遺伝子突然変異を含む突然変異体TRβ核酸配列に相補的なプライマーで対象からの試料中の核酸を増幅する段階と;増幅した核酸の有無を判定する段階と;増幅した核酸の有無に基づき、治療有効量の式(IV)の化合物の投与を含む治療法を選択する段階、又は増幅した核酸の有無に基づき、治療有効量の式(IV)の化合物を投与することにより対象を治療する段階を含む方法を提供する。
【0177】
本願明細書に記載の突然変異体TRβは突然変異体TRβポリペプチド又は突然変異体TRβポリペプチドをコードする核酸配列である。
【0178】
1実施形態において、突然変異体TRβは配列番号1のアミノ酸位置234位、243位、316位及び317位に1カ所以上の突然変異を含む。より好ましくは、突然変異は配列番号1のアミノ酸位置234位における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A234T);配列番号1のアミノ酸位置243位における野生型残基アルギニン(R)からグルタミン(Q)への置換(R243Q);配列番号1のアミノ酸位置316位における野生型残基アルギニン(R)からヒスチジン(H)への置換(R316H);及び配列番号1のアミノ酸位置317位における野生型残基アラニン(A)からスレオニン(T)への置換(A317T)から構成される群から選択される。
【0179】
1実施形態において、突然変異体TRβは配列番号1のアミノ酸位置234位、243位、316位、及び317位に1カ所以上の突然変異をもつ突然変異体TRβポリペプチドをコードする核酸配列を含む。突然変異体TRβポリペプチド又は突然変異体TRβポリペプチドに特徴的なペプチドフラグメントをコードする核酸配列は任意の適切な方法を使用して検出することができる。例えば、突然変異体TRβポリペプチドをコードする核酸配列は、適切に選択されたDNA源とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーを当分野で周知の方法に従って使用して全長ゲノム再シークエンシング又は標的領域再シークエンシング(後者はターゲットリシークエンシングとも言う)を使用して検出することができる。例えば,Bentley(2006)Curr Opin Genet Dev.16:545-52、及びLi et al.(2009)Genome Res 19:1124-32参照。前記方法は通常一般には、ゲノムDNA精製工程、着目領域を増幅するためのPCR増幅工程、サイクルシークエンシング工程、シークエンシング反応クリーンアップ工程、キャピラリー電気泳動工程及びデータ解析工程を伴う。イン・シリコプライマー設計ツールを使用して着目領域に対応するための高品質PCRプライマーを設計する。サイクルシークエンシング法は変性、アニール及び伸長の逐次ラウンドをサーマルサイクラーで実施して伸長産物を直線的に増幅させる簡単な方法である。通常では、末端ヌクレオチド塩基をG、A、T又はCと識別する蛍光タグを前記産物の末端に付加する。取込まれなかったダイターミネーターと塩はキャピラリー電気泳動注入に関して競合する可能性があるので、洗浄により除去する。キャピラリー電気泳動中に、サイクルシークエンシング反応の産物はポリマーを充填したキャピラリー内を泳動する。負電荷DNAフラグメントは正電極に向かってキャピラリー内を移動するにつれてサイズ毎に分離される。電気泳動後に、データ取得ソフトウェアにより生データのサンプルファイルを作成する。ダウンストリームソフトウェアアプリケーションを使用して更にデータ解析を実施し、取得したカラーデータ画像を対応するヌクレオチド塩基に翻訳する。上記の代わりに又は上記に加えて、前記方法はマイクロアレイによる標的領域ゲノムDNA検出及び/又はシークエンシングの使用を含むことができる。適切なPCRプライマーを選択して再シークエンシングを実施するためのキット、試薬及び方法は例えばApplied Biosystems、Agilent及びNimbleGen(Roche Diagnostics GmbH)から市販されている。本発明で使用するには、例えば、配列番号1のアミノ酸位置234位、243位、316位、及び317位に1カ所以上の突然変異をもつ突然変異体TRβポリペプチドをコードする核酸配列の少なくとも該当部分を増幅するようにPCRプライマーを選択することができる。
【0180】
上記の代わりに又は上記に加えて、当分野で周知の方法に従ってサザンブロット法を使用して突然変異体TRβポリペプチドをコードする核酸配列を検出してもよい。
【0181】
所定の実施形態において、本発明の方法は対象からの試料中でTRβの突然変異体を検出するためのアッセイを実施する工程を含む。本願明細書で使用する「対象からの試料」とは対象から採取又は由来する細胞又は細胞成分を含む任意の適切な試料を意味する。1実施形態において、前記試料は血液試料である。1実施形態において、前記試料は例えば甲状腺から採取された生検試料である。
【0182】
本開示は更に、突然変異体TRβポリペプチドと式(IV)の化合物を含むリガンド-突然変異体TRβ複合体を提供する。例えば、前記複合体を形成する突然変異体TRβポリペプチドは配列番号1のアミノ酸位置234位、243位、316位、及び317位に1カ所以上の突然変異を含む。例えば、前記複合体を形成する化合物は化合物Aである。
【0183】
更に、本開示は突然変異体TRβ核酸配列と、突然変異体TRβ核酸配列に相補的なPCRプライマーを含むプライマー-核酸複合体を提供し、前記突然変異体核酸配列は配列番号2に記載の核酸配列中にEZH2遺伝子突然変異を含む。
【0184】
本願に引用する全特許、特許出願及び刊行物はその内容全体を本願に援用する。一方、明確な定義を含む特許、特許出願又は刊行物を本願に援用する場合には、これらの明確な定義はこれらの定義が含まれる援用特許、特許出願又は刊行物に適用されるものであると理解すべきであり、本願の明細書の他の部分、特に本願の特許請求の範囲に適用されるものではないと理解すべきである。
【0185】
以上、本発明をその好ましい特定の実施形態について説明したが、当然のことながら、上記記載及び以下の実施例は本発明を例証するものであって、その範囲を制限するものではない。本発明の範囲から逸脱しない限り、種々の変更及び均等物の置換えが可能であり、更に、他の態様、利点及び変更も本発明が属する分野の当業者に想到されることは当業者に理解されよう。
【0186】
本願明細書で使用する全百分率及び比は特に指定しない限り、重量に基づく。本発明の他の特徴及び利点は以下の種々の実施例から明白である。以下の実施例は本発明の実施に有用な種々の要素及び手法について例証する。以下の実施例は請求する発明を制限するものではない。本開示に基づき、当業者は本発明を実施するために有用な他の要素及び手法を認識し、利用することができる。
【実施例】
【0187】
特に指定しない限り、下記実施例に記載する化合物に使用した分析機器及びパラメーターは以下の通りである。
【0188】
XRPDデータはCuKα線(45kV,40mA)を使用して2θ=3~45°でスキャン速度0.12°/min及びステップサイズ0.020°にて粉末X線回折装置(CubiX-Pro XRD)で取得した。
【0189】
Siゼロ復帰超微量試料ホルダーに試料をセットした。10mm照射幅を使用して分析を行い、ハードウェア/ソフトウェアには以下のパラメーターを設定した。
X線管:CuKα,45kV,40mA
検出器:X’Celerator
ASS主スリット:1°固定
発散スリット(Prog):自動-5mm照射長
ソーラースリット:0.02ラジアン
散乱スリット(PASS):自動-5mm観測長
スキャンレンジ:3.0~45.0°
スキャンモード:連続
ステップサイズ:0.02°
ステップ毎の時間:10秒
動作長:2.54°。
【0190】
分析後に、X’Pert HighScore Plusソフトウェアを以下のパラメーターと共に使用してデータを可調節スリットから固定スリットに変換した。
固定発散スリットサイズ:1.00°,1.59mm
交差点:44.3 °ω。
【0191】
以下の実施例において、特に指定しない限り、化合物4はベンゾイル基で保護された化合物である。
【0192】
実施例1:N-(3,5-ジクロロ-4-((6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)ベンズアミド(R2がベンゾイルである化合物4)の製造
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、還流冷却器、及びN2導入管/排出管を装着した1L容三口丸底フラスコに3,6-ジクロロピリダジン(100g,0.672mol,1倍重量)、4-アミノ-2,6-ジクロロフェノール(122g,0.686mol,1.02当量)及びDMAC(500mL,5倍容量)を仕込んだ。得られた溶液に炭酸セシウム(251g,0.771mol,1.15当量)を加え、懸濁液を110℃まで加熱した。この温度で3時間後、バッチ温度を70℃まで下げ、この温度で16時間撹拌した。1H NMR分析(DMSO)によると、ほぼ全量のジクロロピリダジンが消費されていたので、反応は完了したとみなした。バッチを室温まで冷却し、EtOAc(2L,20倍容量)を使用して3L容丸底フラスコに移した。シリカゲル(100g,1倍重量)を加え、懸濁液を30分間撹拌し、濾過した。濾液が無色で溶出するまで反応容器とケーキをEtOAc(500mL,5倍容量)でリンスした。得られた濾液を10%NaCl水溶液(2L,20倍容量)で処理し、2相混合物を30分間撹拌し、下部水層を捨てた。上部有機層を減圧下に濃縮乾涸した。EtOAc(100mL,1倍容量)を残渣に加え、減圧下に濃縮乾涸し、粗生成物である化合物2(251g,128%収率)を油状物として得た。HPLC分析によると、純度は93.4%であった。1H NMR分析(DMSO)は帰属した構造に一致し、≒25%DMAC及び2%EtOAcが存在することを示した。
【0193】
化合物2の他の合成条件を下表1~3に記載する。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
上記粗生成物2を酢酸(1.48L,7.5倍容量)に溶解し、無水安息香酸(168g,0.741mol,1.1当量)を加えた。得られた混合物を100℃まで加熱し、この温度で35分後に2の量は0.8%であった。酢酸ナトリウム(110g,2当量)を加え、温度を110℃まで上げた。この温度で14.5時間後に、反応混合物のHPLC分析は中間体が残留していないことを示したので、反応は完了したとみなした。バッチを75℃まで冷却し、バッチ温度を72~75℃に維持しながら、水(1.5L,7.7倍容量)を1時間かけて加えた。バッチを21℃まで冷却し、Sharkskin濾紙で濾過した。反応容器とケーキを順次水洗(1L,5倍容量)した。採取した固形分を50℃の真空オーブンで16時間乾燥後、粗生成物4の収量は195g(77%)であった。HPLC分析(B法,220nm)によると、純度は91.6%であった。
【0198】
HPLC法B:
カラム:Waters Sunfire C18,3.5μM,4.6×150mm
流速:1.0mL/min.
移動相A:0.05%TFA水溶液
移動相B:0.05%TFA水溶液
希釈剤:50:50 MeCN/H2O
【0199】
【0200】
1H NMR分析(DMSO)は帰属した構造に一致し、酢酸含有率1%を示した。無水安息香酸の代わりに塩化ベンゾイルも保護に使用した。塩化ベンゾイルを使用した場合には、炭酸セシウムや炭酸カリウム等の塩基を使用し、室温で反応を実施した。
【0201】
化合物4の他の合成条件を下表4及び5に記載する。
【0202】
【0203】
【0204】
化合物4の精製:オーバーヘッド撹拌機、熱電対、還流冷却器、及びN2導入管/排出管を装着した5L容三口丸底フラスコに粗生成物4(100g,1倍重量)と酢酸(2L,20倍容量)を仕込んだ。スラリーを撹拌し、95℃まで加熱すると、溶解が生じた。バッチ温度を≒95℃に維持しながら、水(2L,20倍容量)を2.75時間かけて加えると、沈澱が生じた。得られたスラリーを更に30分間95℃に加熱後、加熱を停止した。バッチが周囲温度に達した後、便宜上この温度で一晩撹拌し、Sharkskin濾紙で濾過した。反応容器とケーキを順次水(1L,10倍容量)でリンスした。採取した白色固体を91g(91%)の一定重量になるまで40℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のHPLC分析によると、純度は98.0%であった。1H NMR分析(DMSO)は帰属した構造に一致し、酢酸含有率は0.3%であった。下表6に化合物4の他の精製条件をまとめる。
【0205】
【0206】
実施例2:6-(4-アミノ-2,6-ジクロロフェノキシ)-4-イソプロピルピリダジン-3(2H)-オン(中間体7)の製造
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、N2導入管/排出管、及び還流冷却器を装着した4L容四口丸底フラスコに4(95g,0.253mol,1倍重量)、THF(665mL,7倍容量)、及びLiCl(32.3g,0.759mol,3当量)を仕込んだ。得られた懸濁液を35℃まで加熱し、バッチ温度を35~45℃に維持しながら、イソプロペニルマグネシウムブロミド溶液(0.5M THF溶液,1.72L,0.859mol,3.4当量)を80分間かけて加えた。得られたスラリーを40℃に3時間加熱後、HPLC分析は87%の変換率を示した。イソプロペニルマグネシウムブロミド溶液(0.5M THF溶液,51mL,0.026mol,0.1当量)を加え、スラリーを40~43℃で更に90分間撹拌した。HPLC分析は92.9%の変換率を示したので、反応は完了したとみなした。加熱を停止し、反応混合物を14℃まで冷却し、バッチ温度を26℃未満に維持しながら、3N HCl水溶液(380mL,4倍容量)を15分間かけてゆっくりと加えると、全固形分が溶解した。下部水層を捨て、THF(350mL,3.7倍容量)で抽出した。下部水層を捨てた後、有機層を合わせ、4に対して約5倍容量まで減圧下に濃縮した。得られた溶液に10%(w/w)KOH水溶液(532mL,5.6倍容量)を加え、ショートパス蒸留装置を使用してTHFを留去しながら、混合物を85℃まで加熱した。バッチを85℃に11時間維持し、加熱を停止した。バッチを便宜上、一晩かけて周囲温度まで冷却した。得られたスラリーをHPLC分析(下記A法)した処、中間体7への変換率は99%であり、反応は完了したとみなした。
【0207】
HPLC法A
カラム:Waters Sunfire C18,3.5μM,4.6×150mm
流速:1.0mL/min.
移動相A:0.05%TFA水溶液
移動相B:0.05%TFA水溶液
希釈剤:50:50 MeCN/H2O。
【0208】
【0209】
バッチ温度を48℃に調整し、バッチ温度を46~48℃に維持しながら、3N HCl水溶液(152mL,1.6倍容量)を35分間かけて加え、pHを7.5~8.0に調整した。加熱を停止し、スラリーを30℃まで冷却した。1H NMR分析(DMSO)によると、中間体7/THFモル比は1.0:0.22であった(添付資料14)。バッチを30℃にてSharkskin濾紙で濾過し、反応容器とケーキを順次水洗(475mL,5倍容量)した。ベージュ色固体の中間体7を81.6g(102%収率)の一定重量になるまで40℃の真空オーブンで乾燥した。カール・フィッシャー解析によると、含水率は0.8%であった。1H NMR(DMSO)は帰属した構造に一致し、THF含有率は0.4%であった。HPLC分析によると、純度は92.6%であった。下表7~10は中間体7を製造するための反応パラメーターの概要を示す。
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
実施例3:(2-シアノ-2-(2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)アセチル)カルバミン酸(Z)-エチル(中間体8)の製造
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、N2導入管/排出管を装着した2L容三口丸底フラスコに中間体7(75.0g,0.239mol,1倍重量)、酢酸(600mL,8倍容量)、水(150mL,2倍容量)、及び濃HCl(71.3mL,0.95倍容量)を仕込んだ。得られた低粘度スラリーを6℃まで冷却し、バッチ温度を10℃未満に維持しながら、NaNO2(16.8g,0.243mol,1.02当量)の水(37.5mL,0.5倍容量)溶液を10分間かけて加えた。5~10℃で更に10分間撹拌後、HPLC分析によると、中間体7はジアゾニウム中間体に完全に変換したことが判明した。バッチ温度を10℃未満に維持しながら、NaOAc(54.5g,0.664mol,2.78当量)の水(225mL,3倍容量)溶液を6分間かけて加えた。すぐにN-シアノアセチルウレタン(37.9g,0.243mol,1.02当量)を加え、冷却を停止し、35分間かけてバッチを8℃まで自然昇温させた。HPLC分析によると、ジアゾニウム中間体は完全に消費されたので、反応は完了したとみなした。バッチを21℃まで自然昇温させ、Sharkskin濾紙で濾過した。反応容器とケーキを順次2回水洗(375mL,5倍容量)した。オレンジ色の固体を採取し、35℃の真空オーブンで64時間乾燥し、粗生成物である中間体8(104.8g,91%)を得た。
【0215】
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、及びN2導入管/排出管を装着した1L容三口丸底フラスコに粗生成物である中間体8(104.4g,1倍重量)と酢酸(522mL,5倍容量)を仕込んだ。得られたスラリーを50℃まで加熱し、この温度に1.5時間維持した。バッチを25℃まで2時間かけて自然放冷し、Sharkskin濾紙で濾過した。反応容器とケーキを順次水洗(522mL,5倍容量)し、ケーキを1.75時間減圧下でコンディショニングした。得られた明るいオレンジ色の固体を40℃の真空オーブンで一定重量になるまで乾燥し、目的生成物89.9g(中間体7からの収率78%)を得た。1H NMR(DMSO)は帰属した構造に一致した。
【0216】
実施例4:2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物A)の製造
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、N2導入管/排出管、及び還流冷却器を装着した2L容三口丸底フラスコに中間体8(89.3g,0.185mol,1倍重量)、DMAC(446mL,5倍容量)、及びKOAc(20.0g,0.204mol,1.1当量)を仕込んだ。混合物を120℃まで加熱し、この温度に2時間維持した。HPLC分析は化合物Aへの完全な変換を示した。バッチ温度を1時間かけて18℃に調整し、酢酸(22.3mL,0.25倍容量)を加えた。バッチ温度を8℃に調整し、水(714mL,8倍容量)を1時間かけて加えると、オレンジ色のスラリーが形成された。バッチをSharkskin濾紙で濾過し、ケーキを便宜上、非減圧下のN2下で一晩かけてコンディショニングした。1:1アセトン/水(445mL,5倍容量)のプレミックス溶液をフラスコに加え、減圧下にリンス液としてケーキに加えた。ケーキを2時間減圧下でコンディショニング後、オーバーヘッド撹拌機、熱電対、及びN2導入管/排出管を装着した清浄な1L容三口丸底フラスコに移した。エタノール(357mL,4倍容量)とアセトン(357mL,4倍容量)を加え、得られたスラリーを60℃まで加熱すると、溶解が生じた。バッチ温度を55~60℃に維持しながら、水(890mL,10倍容量)を90分間かけて加えた。得られたスラリーを25℃まで冷却し、Sharkskin濾紙で濾過した。反応容器とケーキを順次1:1 EtOH/水溶液(446mL,5倍容量)で洗浄した。ケーキを便宜上、非減圧下のN2下で一晩かけてコンディショニングした。ケーキの亀裂を平らにし、真空に引いた。ケーキを水洗(179mL,2倍容量)し、70.5g(87%,粗生成物である化合物A)の一定重量になるまで45℃の真空オーブンで乾燥した。HPLC分析によると、純度は94.8%であった。
【0217】
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、N2導入管/排出管、及び還流冷却器を装着した500mL容三口丸底フラスコに粗生成物である化合物A(70.0g)とMIBK(350mL,5倍容量)を仕込んだ。得られたオレンジ色のスラリーを50℃まで加熱し、この温度に2時間維持した。バッチを23℃まで自然放冷し、Sharkskin濾紙で濾過した。反応容器とケーキを順次MIBK(35mL,0.5倍容量)で2回洗浄した。固形分を採取し、58.5g(84%)の一定重量になるまで45℃の真空オーブンで乾燥した。オーバーヘッド撹拌機、熱電対、N2導入管/排出管及び還流冷却器を装着した500mL容三口丸底フラスコにこの固体を加えた。エタノール(290mL,5倍容量)を加え、スラリーを加熱還流した。還流下で3.5時間後に、XRPDはこの固体が形態Iに一致することを示したので、加熱を停止した。25℃に達したら、バッチを濾紙で濾過し、反応容器とケーキを順次EtOH(174mL,3倍容量)で洗浄した。黄褐色の固体である化合物Aを50.4g(87%,中間体8からの収率は64%)の一定重量になるまで40℃の真空オーブンで乾燥した。HPLC分析によると、純度は99.1%であった。1H NMR(DMSO)は帰属した構造に一致した。
【0218】
実施例5:2-(3,5-ジクロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物A)の大規模製造
下記スキームに従って化合物Aの大規模バッチを合成した。下記スキームにおける条件は上記実施例1~4に記載した条件と同様である。
【0219】
【0220】
4の合成:50L容ジャケット付ガラス容器(N2置換下)に3,6-ジクロロピリダジン(2.00kg)、4-アミノ-2,6-ジクロロフェノール(2.44kg)及びN,N-ジメチルアセトアミド(10.0L)を仕込んだ。バッチを3回真空(26inHg)/窒素(1PSIG)置換した。炭酸セシウム(5.03kg)を加え、バッチ温度を3.5時間かけて22.3℃から65.0℃に調整した。バッチを65.0℃に20時間維持した。この時点で、1H NMR分析によると、3,6-ジクロロピリダジンは2に対して3.34%であった。バッチ温度を21.5℃に調整し、酢酸エチル(4.00L)をバッチに加えた。バッチを10分間撹拌後、ポリプロピレン濾布を装着した18”Nutscheフィルターで濾過した。濾過は15分間を要した。酢酸エチル(5.34L)を容器に加え、リンス液としてフィルターに移した。次にバッチを手動でフィルターに再懸濁した後、再び真空に引いた。この工程を更に2回繰返し、フィルターケーキを10分間コンディショニングした。予め調製しておいた15%塩化ナトリウム水溶液(16.0L)を入れた100L容器に濾液を加えた。バッチを5分間撹拌後、35分間分離させた。界面が認められなかったので、計算値23Lの下部水相を捨てた。15%塩化ナトリウムの水溶液16.0Lをバッチに加えた。バッチを6分間撹拌後、7分間分離させた。~19Lで界面が認められたので、下部水相を捨てた。15%塩化ナトリウム水溶液17.0Lをバッチに加えた。バッチを7分間撹拌後、11分間分離させた。下部水相を捨てた。容器を減圧蒸留にセットアップし、バッチ温度を21℃付近に維持しながら、2時間20分間かけてバッチを17.0Lから8.0Lまで濃縮した。無水安息香酸(3.19kg)と酢酸(18.0L)を容器に加えた。容器を減圧蒸留にセットアップし、バッチ温度を20~55℃に維持しながら、バッチを2日間(20℃に一晩維持)かけて28.0Lから12.0Lまで濃縮した。この時点で、1H NMR分析によると、酢酸と酢酸エチルのモル比は1.0:0.015であった。酢酸(4.0L)をバッチに加え、バッチを12Lまで蒸留した。1H NMR分析によると、酢酸と酢酸エチルのモル比は1.0:0.0036であった。酢酸(20.0L)をバッチに加え、バッチ温度を70.0℃に調整した。バッチから試料抽出し、HPLC分析した処、2は0.16%であった。酢酸ナトリウム(2,20kg)をバッチに加え、バッチ温度を72.4℃から110.0℃に調整した。18.5時間後に、HPLC分析によると、中間体Bは検出されなかった。バッチ温度を111.3℃から74.7℃に調整し、2時間かけてバッチに脱イオン水(30.0L)を加えた。バッチ温度を20.5℃に調整後、ポリプロピレン濾布を装着した24”Haselloy Nutscheフィルターを使用して濾過した。予め調製しておいた1:1酢酸の脱イオン水(10.0L)溶液を容器に加え、5分間撹拌した。洗浄液をフィルターに移した後、バッチを手動でフィルターに再懸濁した後、再び真空に引いた。脱イオン水(10.0L)を容器に加えた後、フィルターに移した。バッチを手動でフィルターに再懸濁した後、再び真空に引いた。脱イオン水(10.0L)を直接フィルターに加えた後、バッチを手動でフィルターに再懸濁した後、再び真空に引いた。フィルターケーキを18時間コンディショニングし、14.4kgの4を得た。HPLC分析によると、純度は93.7%であった。この湿潤ケーキを精製に供した。100L容ジャケット付ガラス容器(N2置換下)に粗生成物4(湿潤ケーキ14.42kg)、酢酸(48.8L)を仕込み、撹拌機を始動した。脱イオン水(1.74L)を加えた。バッチ(スラリー)温度を4.25時間かけて18.1℃から100.1℃に調整した。バッチを100.1~106.1℃に1時間維持した後、73.1℃に調整した。バッチ温度を73.1~70.3℃に維持しながら、脱イオン水(28.0L)を1時間かけてバッチに加えた。バッチ温度を一晩かけて更に70.3℃から25.0℃に調整した。ポリプロピレン濾布を装着した24”Hastelloy Nutscheフィルターを使用してバッチを濾過した。濾過は13分間を要した。脱イオン水(9.00L)と酢酸(11.0L)の溶液を調製し、100L容器に加えた。混合物を5分間撹拌後、フィルターケーキに移した。脱イオン水(20.0L)を容器に加え、6分間撹拌後、フィルターケーキに移した。脱イオン水(20.0L)を容器に加え、9分間撹拌後、フィルターケーキに移した。バッチを3日間コンディショニングした後、真空オーブン乾燥のために乾燥トレーに移した。50℃及び28”/Hgでバッチから3日後に、収率74%(3.7kg)で4がオフホワイト固体として得られた。1H NMRスペクトルは帰属した構造に一致し、HPLC分析によると、純度は98.87%であり、KF解析は0.14%H2Oを示した。
【0221】
中間体7の合成:100L容ジャケット付ガラス容器(N2置換下)にテトラヒドロフラン(44.4L)を仕込んだ。撹拌機を始動し(125RPM)、4(3.67kg)を加えた後、塩化リチウム(1.26kg)を加えた。バッチ温度は26.7℃であることが確認され、琥珀色の溶液であった。バッチを24.3~33.6℃に維持しながら、イソプロペニルマグネシウムブロミド1.64モル2-メチルTHF(21.29kg)溶液を2.5時間かけて加えた。バッチを24.5℃で17時間撹拌し、この時点でHPLC分析した処、4は9%であった。第2の100L容ジャケット付ガラス容器(N2置換下)に3N塩化水素(18.3L)を仕込んだ。バッチ温度を20~46℃に維持しながら、3N HClを仕込んだ容器に25分間かけてバッチを移した。2相溶液が認められた。クエンチしたバッチを第1の100L容器に戻し、残留している少量の残渣をクエンチした。THF(2.00L)をリンス液として使用した。バッチ温度は40.9℃であることが認められ、318RPMで45分間撹拌した。バッチ温度を21.8℃に調整し、層分離させた。分離には10分間を要した。下部水相を捨てた(~26.0L)。塩化ナトリウム(1.56kg)の脱イオン水(14.0L)溶液を調製し、バッチに加えた。これを318RPMで10分間撹拌し、撹拌機を停止した。分離には3分間を要した。下部水相を捨てた(~16.0L)。~24”/Hg及びジャケット温度50~55℃を使用してバッチを58.0Lから18.4Lまで減圧蒸留した。72L容丸底フラスコ内で水酸化カリウム(2.30kg)の脱イオン水(20.7L)溶液を調製した。2個の蒸留ヘッドを使用して容器を常圧蒸留にセットアップし、バッチを72L容器に移した。THF(0.75L)をリンス液として使用した。バッチ容量は~41.0Lとし、温度は64.1℃に調整し、N2スイープにより蒸留を開始した。バッチ温度を85.4℃にするように蒸留下に加熱を続け、この時点で72L容器を還流にセットアップした(蒸留終了時のバッチ容量は約28.0Lであった)。バッチを85℃に13時間維持し、この時点でHPLC分析した処、化合物6Aは0.3%であった。加熱を停止し、バッチを100L容ジャケット付ガラス容器に移した。固形分が認められた。バッチ温度を70.6℃から56.7℃に調整した。バッチ温度を56.7~46.7℃に維持しながら、予め調製しておいた炭酸水素ナトリウム(2.82kg)の脱イオン水(35.0L)溶液を80分間かけて加えた。添加終了時のバッチpHは9.8であった。バッチを46.7~49.0℃に40分間維持した後、25.0℃まで冷却した。18”ステンレス鋼Nutscheフィルターを使用してバッチを濾過した。脱イオン水(18.4L)を容器に加え、フィルターに移した。フィルターケーキを手動でフィルターに再懸濁した後、液体を捨てた。この工程をもう一度繰返すと、フィルターケーキは厚み3”となった。フィルターケーキをフィルター上で3日間コンディショニングし、乾燥トレーに移し、45℃の真空オーブンで乾燥し、HPLC純度87.6%で2.93kgの中間体7(95%収率)を得た。
【0222】
中間体8の合成:100L容ジャケット付ガラス容器(N2置換下で苛性ソーダ入りスクラバーに接続)に酢酸(13.0L)を仕込んだ。中間体7(2.85kg)を容器に加え、撹拌機を始動した。N-シアノアセチルウレタン(1.56kg)と脱イオン水(5.70L)を容器に加えた。バッチ温度を17.0℃から5.5℃に調整すると、低粘度スラリーが認められた。この時点でバッチ温度を4.8℃~8.8℃に維持しながら、37%塩化水素(2.70L)を10分間かけて加えた。バッチ温度を5.8℃~8.7℃に維持しながら、予め調製しておいた亜硝酸ナトリウム(638g)の脱イオン水(1.42L)溶液を26分間かけて加えた。添加中に容器ヘッドスペースに茶色い気体が認められた。HPLC分析によると、中間体7は検出されなかった。この時点で、バッチ温度を5.5℃~9.5℃に維持しながら、予め調製しておいた酢酸ナトリウム(2.07kg)の脱イオン水(8.50L)溶液を47分間かけて加えた。添加後、バッチのレベルの真上の容器壁にオレンジ色の残渣の薄層が認められた。バッチ温度を9.4℃から24.5℃に調整し、25℃(±5℃)に12時間維持した。ポリプロピレン濾布を装着した24”Hastelloy Nutscheフィルターを使用してバッチを濾過した。濾過は30分間を要した。容器を1:1酢酸/脱イオン水14.3Lでリンスした。反応容器に残っているオレンジ色の残渣をリンス液で洗い流した。リンス液をフィルターに移し、バッチを手動で再懸濁した。再び真空に引いて洗浄液を除去した。2回目の1:1酢酸/脱イオン水洗浄を上記のように実施し、バッチをフィルター上で26時間コンディショニングした。湿潤フィルターケーキのHPLC分析によると、純度は90.4%であった。バッチを45℃及び28”/Hgの真空オーブンで3.97kg(91%収率)の一定重量になるまで乾燥した。
【0223】
化合物AのDMAC溶媒和物の製造
N2置換下の100L容ジャケット付ガラス容器に中間体8(3.90kg)と酢酸カリウム(875g)を仕込んだ。N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC,18.3L)を容器に加え、撹拌機を始動した。バッチ温度を2時間かけて115℃に調整した。115℃で2時間後、バッチから試料抽出し、HPLC分析した処、0.27%の中間体8が残留していた。バッチ温度を一晩かけて25.0℃に調整した。酢酸(975mL)をバッチに加え、バッチを更に3時間撹拌した。バッチをカルボイに移し、容器をDMAC 800mLでリンスした。減圧を使用して10μmインラインフィルターを通してバッチを100L容器に戻し、DMACリンス液(1.15L)を使用した。濾過は開始時には迅速であったが、終了時には遅くなり、フィルターが詰まった。バッチ温度を11.1℃に調整し、バッチ温度を5~15℃に維持しながら、2時間20分間かけて脱イオン水(35.1L)を加えた。バッチを1時間維持し、密織ポリプロピレン濾布を装着した18” Nutscheフィルターを使用して濾過した。濾過は15時間を要した。1:1エタノール/脱イオン水洗浄液(19.5L)を容器に加え、10℃まで冷却し、フィルターケーキに移した。ケーキをN2及び減圧下で8時間コンディショニングし、乾燥トレーに移した。バッチを45℃及び28”/Hgの真空オーブンで乾燥し、89%収率(3.77kg)で化合物AのDMAC溶媒和物をオレンジ色/黄褐色の固体として得た。1H NMRスペクトルは帰属した構造に一致し、カール・フィッシャー解析によると、0.49%H2Oであった。XRPDは予想通りの形態、即ち化合物AのDMAC溶媒和物を示した。熱重量分析(TGA)によると、重量減少は16%であった。HPLC分析によると、純度は93.67%であった。
【0224】
粗生成物である化合物Aの製造
N2置換下の100L容ジャケット付ガラス容器に化合物AのDMAC溶媒和物(3.75kg)とエタノール(15.0L)を仕込んだ。撹拌機を始動し、アセトン(15.0L)を加えた。1時間かけてバッチ温度を10.6℃から60.0℃に調整した。この時点で、バッチは溶液であった。バッチ温度を60±5℃に維持しながら、1.5時間かけて脱イオン水をバッチに加えた。バッチを60±5℃に1時間に維持し、23.5℃まで冷却した。密織(0.67CFM)ポリプロピレン濾布を装着した18”Nutscheフィルターをセットアップし、バッチを濾過した。濾過は15時間を要した。1:1エタノール/脱イオン水洗浄液(19.5L)を容器に加え、フィルターケーキに移した。ケーキをN2及び減圧下に8時間コンディショニングし、乾燥トレーに移した。バッチを45℃及び28”/Hgの真空オーブンで5日間乾燥し、94%収率(2.90kg)で化合物Aを粉末状の黄褐色固体として得た。1H NMRスペクトルは帰属した構造に一致し、カール・フィッシャー解析は6.6%H2Oを示した。XRPDは予想通りの二水和物の形態を示した。TGAによると、重量減少は6.7%であった。HPLC分析によると、純度は96.4%(AUC)であった。
【0225】
粗生成物である化合物Aの精製
N2置換下の50L容ジャケット付ガラス容器に粗生成物である化合物A(2.90kg)とメチルイソブチルケトン(14.5L)を仕込んだ。撹拌機を始動し、1.5時間かけてバッチ温度を20.2℃から50.4℃に調整した。バッチを50℃(±5℃)に1時間維持し、20~25℃まで冷却した。バッチを20~25℃に2.5時間維持した。密織(0.67CFM)ポリプロピレン濾布を装着した18”Nutscheフィルターをセットアップし、バッチを濾過した。濾過は20分間を要した。メチルイソブチルケトン(MIBK,1.45L)を容器に加え、フィルターケーキに移した。ケーキを手動で再懸濁し、液体を減圧吸引した。メチルイソブチルケトン(2.90L)をフィルターケーキに加え、ケーキを手動で再懸濁した。液体を減圧吸引し、ケーキを15時間減圧及び窒素下でコンディショニングした。フィルターケーキを乾燥し、黄褐色の硬い18”×1.5”ディスク状にした。これを手で砕き、コーヒー豆挽き機にかけ、76%収率(2.72kg)でMGL-3196 MIBK溶媒和物を黄褐色粉末状固体として得た。オーブン乾燥は不要であった。1H NMRスペクトルは帰属した構造に一致し、カール・フィッシャー解析は<0.1%H2Oを示した。XRPDは予想通りのMIBK溶媒和物の形態を示した。TGAによると、重量減少は17.3%であった。HPLC分析によると、純度は98.5%であった。
【0226】
実施例6:化合物Aから形態Iへの変換
上記実施例5に記載したように中間体8から得られた1:1 MIBK溶媒和物としての精製化合物A(4802g)をエタノール24リットルと共に100L容ジャケット付反応容器に仕込んだ。得られたスラリーを1時間25分間かけて80±5℃(還流)まで加熱し、混合物をこの温度で4時間25分間撹拌した。濾過した固体を2時間55分の時点で分析した処、形態変換は完了し、XRPDスペクトルは形態Iに一致した。混合物を45分間かけて20±5℃まで冷却し、この温度で15分間撹拌した。スラリーを濾過し、予め濾過しておいたエタノール(2×4.8L)でフィルターケーキを2回洗浄した。湿潤ケーキ(4.28kg)を40±5℃で118時間減圧乾燥し、3390の化合物A形態Iを得た。
【0227】
上記方法により作製した化合物A形態Iの各種ロットで粉末X線回折試験を実施した。微粉化後のXRPDによると形態1が確認される。
【0228】
形態Iのデータを下表11に示し、形態Iの回折図を
図1として示す。
【0229】
【0230】
形態Iは321℃付近に溶融開始点をもち、溶融後、分解することがDSCにより判明した(
図2)。
【0231】
実施例7:化合物A形態Iの製造:化合物Aの溶媒和物から形態Iへの変換
N2置換下の50L容ジャケット付ガラス容器に上記実施例5からの化合物AのMIBK溶媒和物(2.72kg)とエタノール(13.6L)を仕込んだ。撹拌機を始動し、バッチ温度を1.3時間かけて16.8℃から79.4℃に調整した。バッチを79.5℃に2時間維持し、XRPD分析用に試料抽出した。XRPDは形態Iを示したので、バッチを1時間10分間かけて24.9℃まで冷却した。密織(0.67CFM)ポリプロピレン濾布を装着した18”Nutscheフィルターをセットアップし、バッチを濾過した。濾過は4分間を要した。エタノール(2.8L)を容器に加え、フィルターケーキに移した。ケーキを手動で再懸濁し、液体を減圧吸引した。エタノール(2.80L)をフィルターケーキに加え、ケーキを手動で再懸濁した。液体を減圧吸引し、ケーキを減圧及び窒素下で1時間コンディショニングした。フィルターケーキを乾燥パンに移し、45℃及び28”/Hgで1日間乾燥し、89%収率(1.96kg)で化合物Aを薄黄色固体として得た。HPLC分析によると、純度は99.6%であった。XRPD解析は形態Iに一致する。この材料300gを2”ジェットミルで粉砕し、284g(95%収率)の微粉状の化合物Aを得た。XRPD解析によると、微粉状の化合物Aは形態Iのままであることが確認された。
【0232】
実施例7に記載したように二水和物及びMIBK溶媒和物を経て化合物AのDMAC溶媒和物を形態Iに変換することができる。別法では、8倍容量のエタノールと共に80℃まで2時間加熱後に室温まで冷却して濾過することにより、75%の収率(中間体8から計算した収率)でDMAC溶媒和物は形態Iに直接変換された。別の反応では、8倍容量のMIBKと共に80℃まで加熱後に室温まで冷却することにより、DMAC溶媒和物と二水和物の混合物であった化合物Aの試料は69%の収率で形態Iに変換された。
【0233】
化合物Aと甲状腺ホルモン受容体の相互作用のモデリング
RCSB蛋白質データバンクから結晶構造(ID番号:1N46、1NQ0、1NQ1、1NQ2及び1NUO)を入手した。Mac OS X用MacPymol(Copyright 2006 DeLano Scientific LLC.;現在はSchrodinger Inc.の製品)を使用して蛋白質共結晶構造を整列させた。リガンド-蛋白質相互作用の全分析にもMacPymolを使用し、
図3~9を得た。これらの図から総合的に判断すると、化合物AはTHRβ突然変異体における構造変異をより良好に受け入れることが可能である。例えば突然変異体Arg316Hisにおいて、Arg316はHisに突然変異しており、Arg320はリガンドから若干ずれている。その結果、Arg316His突然変異体ではArg320とT3の特異的相互作用が弱まる。これに対して、化合物Aにおける大きな負の分極性複素環はArg316His突然変異により妨害されない良好な相互作用を形成する。換言するならば、より大きく、より分極性の高い複素環をもつ化合物AはArg320及び突然変異したHis316との間に良好な相互作用を維持する。例えば
図8及び9参照。結果は他の突然変異についても同様である。
【0234】
下表に所定のTRβ突然変異体の生化学的性質をまとめる。他の突然変異体とその性質については、例えばM.Adams et al.,J Clin Invest.1994;94(2):506-515,B.R.Huber et al.,Mol Endocrinol,2003,17(4):643-652;及びB.R.Huber et al.,Mol Endocrinol,2003,17(1):107-116を参照することができ、各々その内容全体を本願に援用する。
【0235】
【0236】
均等物
発明の趣旨又は本質的特徴から逸脱しない限り、他の特定形態でも本発明を実施することができる。従って、上記実施形態は本願明細書に記載する発明を制限するものではなく、あらゆる点において例証であるとみなすべきである。 従って、本発明の範囲は上記記載ではなく、以下の特許請求の範囲により指定されるものであり、特許請求の範囲の均等物の意味と範囲に含まれるあらゆる変更も特許請求の範囲に含むものとする。
【配列表】