(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ヒトの健康及び疾患の治療用途向けの短鎖脂肪酸の腸への送達用ポリマー材料
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20240214BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240214BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20240214BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/20 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20240214BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240214BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08F293/00
A23L33/10
A23L33/12
A61K31/19
A61K31/20
A61K47/58
A61P1/00
A61P3/00
A61P3/10
A61P25/00
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/08
C08L53/00
(21)【出願番号】P 2022108522
(22)【出願日】2022-07-05
(62)【分割の表示】P 2019556663の分割
【原出願日】2018-04-17
【審査請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399019892
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハベル,ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ディー.スコット
(72)【発明者】
【氏名】ナグラー,キャスリン アール.
(72)【発明者】
【氏名】プランケット,キャサリン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-002431(JP,A)
【文献】特開昭62-178502(JP,A)
【文献】特表2016-519195(JP,A)
【文献】特表2015-505881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08L 53/00
A61K 47/58
A61K 31/19
A61K 31/20
A61P 37/02
A61P 37/08
A61P 29/00
A61P 31/00
A61P 3/00
A61P 25/00
A61P 1/00
A61P 35/00
A61P 3/10
A23L 33/10
A23L 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)
【化1】
のブロック共重合体を含む組成物であって、
M
h
はN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)
モノマーであり、
M
F2
は式(II)
【化2】
のモノマーであって、
式中、
Xは、O、NH、またはSであり、
Lは、(CH
2)
n
であり、nは1~
8であり、
SCFAは
酪酸、酢酸、プロピオン酸から選択され、
aは1~1000であり、
bは1~1000である、組成物。
【請求項2】
前記SCFAが10~80重量%の酪酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記SCFAが100重量%の酪酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体が式(VI)
【化3】
を含み、
式中、a及びbは独立に1~1000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体が式(VII)
【化4】
を含み、
式中、a及びbは独立に1~1000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物の超分子集合体を含むシステムであって、前記超分子集合体がミセルまたはナノ粒子である、システム。
【請求項7】
請求項
6に記載のシステムと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物または食品または機能性食品組成物。
【請求項8】
疾患もしくは疾病を治療または予防において使用されるための、組成物、または医薬組成物または食品または機能性食品組成物であって、上記疾患または疾病が、自己免疫疾患、アレルギー、炎症性疾病、感染症、代謝障害、中枢神経系の疾患、大腸癌、糖尿病、自閉症スペクトラム障害からなる群より選択される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物、または請求項
7に記載の医薬組成物または食品または機能性食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、例えば、短鎖脂肪酸の送達に使用されるポリマー材料が提供される。特に、安定したナノスケール構造を形成し、例えば、共有結合の開裂により(例えば、加水分解または酵素的開裂により)それらのペイロードを放出するポリマーが提供される。上記ポリマーは、例えば、健康及び疾患の治療用途向けの腸へのペイロード(例えば、短鎖脂肪酸(SCFA))の送達に有用であり、とりわけ、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、代謝疾患、及び中枢神経系疾患を含む、ヒト微生物叢の変化に関連する疾患に幅広い適用性を有する。
【背景技術】
【0002】
宿主と微生物叢との相互作用は適切な免疫恒常性を確立するために不可欠であり、自然に選択された細菌集団の摂動である、ディスバイオシスと呼ばれる疾病は多くの異なる病理と関連している。ディスバイオシスは、腸の恒常性を維持するために重要な細菌代謝産物、特に腸内の炭水化物の細菌発酵によって生成する短鎖脂肪酸の濃度を低下させる可能性がある。これらの酸の不足は、とりわけ、炎症性疾患、自己免疫疾患、及びアレルギー性疾患(Sandin et al., 2009,Nylund et al., 2015,Berni-Canani et al., 2016、参照によりそれらの全体が援用される)、代謝疾患(Meijer et al., 2010、参照によりその全体が援用される)、及び中枢神経系障害(Haghikia et al., 2015,MacFabe, 2015、参照によりそれらの全体が援用される)などを含む、様々な疾病と関連付けられている。腸内細菌の発酵に由来する短鎖脂肪酸は、腸の制御性T細胞の割合と機能上の能力の両方を調節する(Arpaia et al., 2013;Furusawa et al., 2013;Smith et al., 2013、参照によりそれらの全体が援用される)。また、腸上皮細胞の主要な燃料源として、短鎖脂肪酸は、増殖及び粘液産生を増加させることによりバリア機能を促進し、透過性を低下させる(Berni-Canani et al. 2015、参照によりその全体が援用される)。食事に短鎖脂肪酸を添加すると、アレルギー、肥満、及びその他の動物モデルにおいて治療効果が実証されている。
【0003】
短鎖脂肪酸治療薬は、腸を通過する際に分解が急速に起こり、且つ当該分子自体が、遊離塩基及び酸の塩のいずれだとしても、不快な味であり、悪臭があり、胃を不調にするため、これらを臨床的な使用に置き換えることは困難であった。腸溶性コーティングした短鎖脂肪酸製品が市販されてはいるが、上述の欠点、ならびに治療効果を示すのに十分な量の薬学的に活性な短鎖脂肪酸を密に充填することができないことに一部起因して、広範には使用されていない。特定の疾患の治療または予防に関して具体的に評価された製品はない。
【0004】
上記の制限を克服する送達システムは、上記に列挙した短鎖脂肪酸の全ての公知の臨床的用途に有用となろう。
【発明の概要】
【0005】
本明細書においては、短鎖~中鎖の疎水性または両親媒性カルボン酸(例えば、前記鎖中に3~12の炭素原子、本明細書において短鎖脂肪酸「SCFA」と総称される)及びそれらの酸の機能化誘導体の送達用ビヒクルである共重合体(例えば、ランダムまたはブロック)が提供される。上記ポリマーは、小腸及び大腸、特定の実施形態においては回腸の粘膜内壁を含む腸へ上記SCFAを送達する。上記SCFA及び/またはそれらの誘導体は上記共重合体の主鎖に共有結合により結合され、この共有結合は加水分解または酵素により開裂可能であり、それによって上記SCFAを放出し、ヒトの疾患に対して所望の治療効果を有する。上記治療効果は、腸及び腸の粘液層のバリア機能を標的とし、粘液層の厚さまたはバリア機能が関係する全ての疾患が治療される可能性がある。例示的な、本明細書に記載のポリマーで治療可能なヒトの疾患としては、とりわけ、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、セリアック病)、アレルギー性及びアトピー性疾患(例えば、あらゆるタイプの食物アレルギー、好酸球性食道炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、ペットアレルギー、薬物アレルギー)、炎症性疾病(例えば、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病)、感染症、代謝障害、中枢神経系の疾患(例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病)、血液障害(例えばβサラセミア)大腸癌、腸の運動性に影響を及ぼす疾患(例えば、下痢)、I型糖尿病、及び自閉症スペクトラム障害などが挙げられるが、これらに限定はされない。上記共重合体は、任意且つ適宜の投与経路(例えば、経口投与、経直腸投与など)によって投与され、短鎖脂肪酸の単独投与に伴う公知の制限を克服する。
【0006】
本明細書の実施形態は、共重合体(例えば、ランダムまたはブロック)であって、(i)親水性モノマーのポリマーと、(ii)SCFA部分を露出し、メタクリル酸エステル基またはメタクリルアミド基によって上記共重合体に結合するモノマーとの上記共重合体、それらの超分子集合体、かかる共重合体を含むナノ粒子、及びそれらの使用方法に関する。いくつかの実施形態において、上記共重合体は、ランダム分布または擬似ランダム分布の2つのタイプのモノマーを含む。他の実施形態において、上記共重合体は、ブロック共重合体であって、親水性ブロックと、SCFA部分を露出し、メタクリル酸エステル基またはメタクリルアミド基によって上記共重合体に結合するモノマーを含むブロック(例えば、SFCAを露出するポリ(N-メタクリル酸オキシエチル)ブロック、SFCAを露出するポリ(N-オキシエチルメタクリルアミド)ブロック、SFCAを露出するポリ(N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミド)ブロック、SFCAを露出するポリ(N-メタクリル酸(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキル)ブロックなど)とを含む上記ブロック共重合体である。
【0007】
薬学的に活性なSCFAが上記ポリマー鎖に共有結合している本明細書に記載のポリマー薬物送達システムの利点としては、SCFAの臭気のマスキング、SCFAの嗜好性の向上、及び特に他の形態の場合には治療上の使用には不向きな遠位腸におけるSCFAの生物学的利用能の増加が挙げられる。いくつかの実施形態において、SCFAが担持されたポリマーナノ粒子は更に、より高密度に充填し、治療上妥当な用量の生理活性分子を送達することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の送達システムは、胃の通過に耐え、pH変化によって、または例えば、細菌のもしくは宿主のエステラーゼによる酵素的開裂によって生じる加水分解が起こると、腸バリアを標的とする治療に必要なペイロードのSCFAを送達することができ、従って、短鎖脂肪酸送達のための魅力的な選択肢の役割を果たす。
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(i)親水性モノマーのポリマー(またはポリ-親水性ブロック)と、(ii)N-オキシアルキルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)であって、共有結合を介してこのブロックに結合したSCFA部分または他の薬学的に好適な小分子を有する上記モノマー(または上記ブロック)との共重合体(例えば、ブロックまたはランダム)が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態において、N-オキシアルキルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、オキシメチルメタクリルアミド、2-オキシエチルメタクリルアミド、3-オキシプロピルメタクリルアミド、N-オキシイソプロピルメタクリルアミド、4-オキシブチルメタクリルアミド、N-オキシイソブチルメタクリルアミド、またはより長い、もしくは他の形態で分枝した、もしくは置換されたアルキル鎖を有するN-オキシアルキルメタクリルアミドからなる群より選択されるモノマーを含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の直鎖アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、2-メチルペンチル、3-エチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、4-エチル-2-メチルヘキシル、または他の任意の且つ適宜の分枝鎖アルキル基などの、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の分枝鎖アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、1もしくは複数の二重または三重炭素-炭素結合を含む(例えば、アルカニルの代わりにアルケニルまたはアルキニル)。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1つであって、当該アルキル基中の炭素の1つを置換した1または複数のヘテロ原子(例えば、O、S、NHなど)を有する上記アルキル基の1を含むヘテロアルキル基(例えば、(CH2)nX(CH2)m、式中、m及びnは独立に1~10であり、XはO、S、またはNHである)を含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、1または複数のペンダント置換基(例えば、OH、NH2、=O、ハロゲン(例えば、Cl、F、Br、I)、CN、CF3など))を有する上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1を含む置換アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記ポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)は、ヘテロ原子、ペンダント置換基、二重結合などの任意且つ適宜の組み合わせを含む直鎖または分枝鎖アルキル基を含む。特定の実施形態において、上記N-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)は、2-オキシアルキルメタクリルアミド(またはポリ(2-オキシアルキルメタクリルアミド)ブロック)である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(i)親水性モノマーのポリマー(またはポリ-親水性ブロック)と、(ii)N-オキシアルキルフェノールエステルメタクリルアミド(またはポリ(N-オキシアルキルフェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)であって、共有結合を介してこのブロックに結合したSCFA部分または他の薬学的に好適な小分子を有する上記N-オキシアルキルフェノールエステルメタクリルアミド(または上記ブロック)との共重合体(例えば、ブロックまたはランダム)が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)は、オキシメチル4-フェノールメタクリルアミド、2-オキシエチル4-フェノールメタクリルアミド、3-オキシプロピル4-フェノールメタクリルアミド、4-オキシブチル4-フェノールメタクリルアミド、またはより長い、もしくは他の形態で分枝した、もしくは置換されたアルキル鎖を有するN-オキシアルキル4-フェノールメタクリルアミドからなる群から選択されるモノマーを含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)は、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の直鎖アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)は、2-メチルペンチル、3-エチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、4-エチル-2-メチルヘキシル、または他の任意の且つ適宜の分枝鎖アルキル基などの、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の分枝鎖アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)は、1もしくは複数の二重または三重炭素-炭素結合を含む(例えば、アルカニルの代わりにアルケニルまたはアルキニル)。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)は、上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1つであって、当該アルキル基中の炭素の1を置換した1または複数のヘテロ原子(例えば、O、S、NHなど)を有する上記アルキル基の1を含むヘテロアルキル基(例えば、(CH2)nX(CH2)m、式中、m及びnは独立に1~10であり、XはO、S、またはNHである)を含む。いくつかの実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミドモノマー(またはポリ(N-オキシアルキル4-フェノールエステルメタクリルアミド)ブロック)は、1または複数のペンダント置換基(例えば、OH、NH2、=O、ハロゲン、(例えば、Cl、F、Br、I)、CN、CF3など))を有する上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1を含む置換アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記ポリ(N-オキシアルキルメタクリルアミド)は、ヘテロ原子、ペンダント置換基、二重結合などの任意且つ適宜の組み合わせを含む直鎖または分枝鎖アルキル基を含む。特定の実施形態において、上記N-オキシアルキル4-フェノールメタクリルアミドはポリ(2-オキシエチル4-フェノールメタクリルアミド)である。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリ(N-オキシアルキル4-フェノールメタクリルアミド)は、上述のアルキル修飾の有無にかかわらず、フェノール環上の任意の位置で、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミン、N-アルキルアミン、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、及びそれらの誘導体を含む、但しこれらに限定されない基から選択される部分によって置換される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(i)親水性モノマーのポリマー(またはポリ-親水性ブロック)と、(ii)メタクリル酸N-オキシアルキルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)であって、共有結合を介してこのブロックに結合したSCFA部分または他の薬学的に好適な小分子を有する上記モノマー(または上記ブロック)との共重合体(例えば、ブロックまたはランダム)が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、メタクリル酸オキシメチル、メタクリル酸2-オキシエチル、メタクリル酸3-オキシプロピル、メタクリル酸N-オキシイソプロピル、メタクリル酸4-オキシブチル、メタクリル酸N-オキシイソブチル、またはより長い、もしくは他の形態で分枝した、もしくは置換されたアルキル鎖を有するメタクリル酸N-オキシアルキルからなる群より選択されるモノマーを含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の直鎖アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、2-メチルペンチル、3-エチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、4-エチル-2-メチルヘキシル、または他の任意の且つ適宜の分枝鎖アルキル基などの、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の分枝鎖アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、1もしくは複数の二重または三重炭素-炭素結合を含む(例えば、アルカニルの代わりにアルケニルまたはアルキニル)。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1つであって、当該アルキル基中の炭素の1を置換した1また複数のヘテロ原子(例えば、O、S、NHなど)を有する上記アルキル基の1を含むヘテロアルキル基(例えば、(CH2)nX(CH2)m、式中、m及びnは独立に1~10であり、XはO、S、またはNHである)を含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、1または複数のペンダント置換基(例えば、OH、NH2、=O、ハロゲン、(例えば、Cl、F、Br、I)、CN、CF3など))を有する上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1を含む置換アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記ポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)は、ヘテロ原子、ペンダント置換基、二重結合などの任意且つ適宜の組み合わせを含む直鎖または分枝鎖アルキル基を含む。特定の実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)ブロック)は、メタクリル酸2-オキシアルキル(またはポリ(メタクリル酸2-オキシアルキル)ブロック)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(i)親水性モノマーのポリマー(またはポリ-親水性ブロック)と、(ii)メタクリル酸N-オキシアルキルフェノールエステル(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキルフェノールエステル)ブロック)であって、共有結合を介してこのブロックに結合したSCFA部分または他の薬学的に好適な小分子を有する上記N-メタクリル酸オキシアルキルフェノールエステル(または上記ブロック)との共重合体(例えば、ブロックまたはランダム)が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステル)ブロック)は、メタクリル酸オキシメチル4-フェノール、メタクリル酸2-オキシエチル4-フェノール、メタクリル酸3-オキシプロピル4-フェノール、メタクリル酸4-オキシブチル4-フェノール、またはより長い、もしくは他の形態で分枝した、もしくは置換されたアルキル鎖を有するメタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールからなる群から選択されるモノマーを含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステル)ブロック)は、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の直鎖アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステル)ブロック)は、2-メチルペンチル、3-エチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、4-エチル-2-メチルヘキシル、または他の任意の且つ適宜の分枝鎖アルキル基などの、1~20の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の範囲(例えば2~8))の分枝鎖アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステル)ブロック)は、1もしくは複数の二重または三重炭素-炭素結合を含む(例えば、アルカニルの代わりにアルケニルまたはアルキニル)。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステル)ブロック)は、上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1つであって、当該アルキル基中の炭素の1つを置換した1また複数のヘテロ原子(例えば、O、S、NHなど)を有する上記アルキル基の1を含むヘテロアルキル基(例えば、(CH2)nX(CH2)m、式中、m及びnは独立に1~10であり、XはO、S、またはNHである)を含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステルモノマー(またはポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールエステル)ブロック)は、1または複数のペンダント置換基(例えば、OH、NH2、=O、ハロゲン、(例えば、Cl、F、Br、I)、CN、CF3など))を有する上述のアルキル基(例えば、直鎖または分枝鎖)の1を含む置換アルキル基を含む。いくつかの実施形態において、上記ポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル)は、ヘテロ原子、ペンダント置換基、二重結合などの任意且つ適宜の組み合わせを含む直鎖または分枝鎖アルキル基を含む。特定の実施形態において、上記メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノールはポリ(メタクリル酸2-オキシエチル4-フェノール)である。
【0017】
いくつかの実施形態において、ポリ(メタクリル酸N-オキシアルキル4-フェノール)は、上述のアルキル修飾の有無にかかわらず、フェノール環上の任意の位置で、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミン、N-アルキルアミン、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、及びそれらの誘導体を含む、但しこれらに限定されない基から選択される部分によって置換される。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記親水性モノマーのポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(「PEG」)、ポリ(エチレンオキシド)-共-ポリ(プロピレンオキシド)ランダム、ジ、またはマルチブロック共重合体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン-共-ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルオキサゾリン)(「PMOXA」)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(アクリル酸アルキル)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、親水性ポリペプチド、多糖、ポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、シクロデキストリン、またはポリ(N-アクリロイルモルホリン)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、親水性モノマーのポリマー(ブロックまたはランダム共重合体のいずれかの形態)は、メタクリル酸エステル基またはメタクリルアミド基により上記共重合体に結合している。特定の実施形態において、上記親水性ブロックはポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(「pHPMA」または「ポリHPMA」)である。特定の実施形態において、上記ポリHPMAブロックの分子量は7000~15,000Da(例えば、7000Da、8000Da、9000Da、10000Da、11000Da、12000Da、13000Da、14000Da、15000Da、またはそれらの間の範囲(例えば9000~14000Da))である。
【0019】
特定の実施形態において、上記共重合体は、共有結合したSCFA部分または他の薬学的に好適な小分子を含む。いくつかの実施形態において、上記SCFA部分は、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、12以下の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの中の任意の範囲(例えば3~10)の脂肪族尾部を有する任意の脂肪酸を本明細書の実施形態において用いることができる。特定の実施形態において、上記SCFA部分は、酪酸エステル(酪酸)またはイソ酪酸エステル(イソ酪酸)である。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記親水性ブロックの上記SCFAを露出する(または他の薬学的に好適な小分子を露出する)ブロックに対する比率は0.25~3.5の間(例えば、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、またはそれらの間の範囲(例えば0.7~1.8))である。いくつかの実施形態において、上記親水性モノマーの上記SCFAを露出する(または他の薬学的に好適な小分子を露出する)モノマーに対する比率は0.5~2.0の間(例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、またはそれらの間の範囲(例えば0.7~1.8))である。
【0021】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20(またはその間の任意の範囲)の、疎水性モノマーに対する親水性モノマーの導入比を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、20~80重量パ-セント(例えば、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、またはそれらの間の範囲)の親水性モノマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーは、20~80重量パ-セント(例えば、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、またはそれらの間の範囲)の疎水性モノマーを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書では、共重合体であって、HPMAモノマー(またはポリHPMAブロック)と、リンカー基を介して、メタクリル酸エステル基またはメタクリルアミド基によって上記共重合体に共有結合した、SCFA部分(例えば、酪酸エステルまたはイソ酪酸エステル)または他の薬学的に好適な小分子とを含む上記共重合体が提供される。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書では、(例えば液体中に分散した)複数種の本明細書に記載される共重合体(例えば、SCFAまたは他の小分子カーゴを含む)を含む超分子集合体が提供される。いくつかの実施形態において、集合体は、径が10~1000nm(例えば、10、20、50、100、200、500、1000nm、またはそれらの間の範囲(例えば50~500nm))のナノ粒子である。特定の実施形態において、上記複数種のブロック共重合体は、自己集合または共有結合してナノ粒子を形成する直鎖及び分枝鎖の共重合体を含む。他の実施形態において、上記集合体はミセルである。更に他の実施形態において、上記超分子集合体は(例えば粉末として)単離され、(例えば液体中に)再分散される。
【0025】
いくつかの実施形態において、本明細書では、標的分子(例えばSCFA)の対象(例えば、ヒトの対象、男性の対象、女性の対象など)への送達方法であって、上記標的分子(例えばSCFA)を含む本明細書に記載の共重合体の超分子集合体を用意することと、上記対象に上記超分子集合体を接触させ、それによって上記標的分子を対象に送達することとを含む、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のブロック共重合体及び/またはそれらの超分子集合体を含む組成物(例えば医薬組成物)は、任意且つ適宜の投与経路によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、上記標的分子(例えばSCFA)は上記超分子集合体に共有結合している。特定の実施形態において、上記超分子集合体は、対象に与えられる際に、経口的に接触(例えば投与)される。いくつかの実施形態において、上記超分子集合体は、対象と接触する際に液体担体に分散している。他の実施形態において、上記超分子集合体は、対象と接触する際に固体である。いくつかの実施形態において、上記超分子集合体は、薬剤として使用するためのものである。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の共重合体の超分子集合体の、医薬品の製造における使用が提供される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の超分子集合体を含む医薬組成物が提供される。特定の実施形態において、超分子集合体は、薬学的に許容される(例えば安全且つ有効であると考えられる)担体と組み合わされて、(例えば、望ましくない生物学的副作用または望ましくない相互作用を引き起こすことなく)対象に投与される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書では、
(i)親水性モノマーと、
(ii)式(I)
【0029】
【0030】
(式中、Xは、O、NH、またはSであり、Lは、アルキル鎖、ヘテロアルキル鎖、置換アルキル鎖、または置換ヘテロアルキル鎖から選択されるリンカーである)のモノマーとの共重合体であって、1または複数の短鎖脂肪酸(SCFA)部分を露出する上記共重合体を含む組成物が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書では、
(i)親水性モノマーと、
(ii)式(II)
【0032】
【0033】
のモノマーであって、
式中、
Xは、O、NH、またはSであり、
Lは、アルキル鎖、ヘテロアルキル鎖、置換アルキル鎖、または置換ヘテロアルキル鎖から選択されるリンカーであり、
SCFAは短鎖脂肪酸である
上記式(II)のモノマーと
の共重合体を含む組成物が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記親水性モノマーは、ポリ(エチレンオキシド)(「PEG」)、ポリ(エチレンオキシド)-共-ポリ(プロピレンオキシド)ランダム、ジ、またはマルチブロック共重合体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレン-共-ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルオキサゾリン)(「PMOXA」)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(アクリル酸アルキル)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、親水性ポリペプチド、多糖、ポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、シクロデキストリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、及びポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(「ポリHPMA」)からなる群より選択されるポリマーを形成する。いくつかの実施形態において、上記親水性モノマーは、重合のためにメタクリルアミドまたはメタクリレート末端を含む。いくつかの実施形態において、上記親水性モノマーはHPMAを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、式(I)または式(II)のLは(CH2)nであり、ここでnは1~16(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはそれらの間の範囲)である。いくつかの実施形態において、Lは(CH2)nO(CO)-ベンゼンである。いくつかの実施形態において、上記SCFAは式(I)のモノマーに共有結合している。いくつかの実施形態において、上記式(I)のモノマーに結合したSCFAは式(II)
【0036】
【0037】
のモノマーを構成する。いくつかの実施形態において、式(I)のモノマーまたは式(II)のモノマーに結合したSCFAは式(III)
【0038】
【0039】
を構成する。いくつかの実施形態において、上記SCFAは、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、それらの分枝鎖型、及びそれらの誘導体からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記SCFAは酪酸である。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記共重合体は親水性ブロックと式(I)または式(II)のブロックとを含むブロック共重合体である。いくつかの実施形態において、上記ブロック共重合体は
式(IV)
【0041】
【0042】
を含み、
式中、
Mhは上記親水性モノマーの側鎖であり、
MF2は式(II)のモノマー
【0043】
【0044】
の側鎖であり、
aは1~1000(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、133、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれらの間の範囲)であり、
bは1~1000(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、133、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれらの間の範囲)である。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記共重合体はランダム共重合体である。いくつかの実施形態において、上記ランダム共重合体は、式(V)
【0046】
【0047】
を含み、
式中、各Yは独立に、
式(II)から形成されるポリマー
【0048】
【0049】
の側鎖、及び
ポリHPMA
【0050】
【0051】
の側鎖
から選択される。いくつかの実施形態において、2、5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、またはそれらの間の範囲の繰り返される露出基Yが存在する。
【0052】
いくつかの実施形態において、式(II)のモノマーはN-ブタノイルオキシアルキルメタクリルアミドを含む。いくつかの実施形態において、上記N-ブタノイルオキシアルキルメタクリルアミドモノマーは2-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミドである。いくつかの実施形態において、上記共重合体はブロック共重合体であり、且つ式(VI)
【0053】
【0054】
を含み、式中、a及びbは独立に1~1000(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、133、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれらの間の範囲)である。いくつかの実施形態において、上記共重合体はランダム共重合体であり、且つ式(V)
【0055】
【0056】
を含み、
式中、各Yは独立に、
(i)ポリHPMA
【0057】
【0058】
の側鎖、及び
(ii)ポリ(メタクリル酸2-ブタノイルオキシエチル)の側鎖
から選択される。いくつかの実施形態において、2、5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、またはそれらの間の範囲の繰り返される露出基Yが存在する。
【0059】
いくつかの実施形態において、式(II)のモノマーはメタクリル酸N-ブタノイルオキシアルキルを含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-ブタノイルオキシアルキルモノマーはメタクリル酸2-ブタノイルオキシエチルである。いくつかの実施形態において、上記共重合体はブロック共重合体であり、且つ式(VII)
【0060】
【0061】
を含み、
式中、a及びbは独立に1~1000(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、133、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれらの間の範囲)である。いくつかの実施形態において、上記共重合体はランダム共重合体であり、且つ式(V)
【0062】
【0063】
を含み、
式中、各Yは独立に、
(i)ポリHPMA
【0064】
【0065】
の側鎖、及び
(ii)メタクリル酸2-ブタノイルオキシエチルの側鎖
から選択される。いくつかの実施形態において、2、5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、またはそれらの間の範囲の繰り返される露出基Yが存在する。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記式(II)のモノマーはメタクリル酸N-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)アルキルを含む。いくつかの実施形態において、上記メタクリル酸N-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)アルキルモノマーはメタクリル酸2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチルである。いくつかの実施形態において、上記共重合体はブロック共重合体であり、且つ式(VIII)
【0067】
【0068】
を含み、
式中、a及びbは独立に1~1000(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、133、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれらの間の範囲)である。いくつかの実施形態において、上記共重合体はランダム共重合体であり、且つ式(V)
【0069】
【0070】
を含み、
式中、各Yは独立に、
(i)ポリHPMA
【0071】
【0072】
の側鎖、及び
(ii)ポリ(メタクリル酸2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチル)
【0073】
【0074】
の側鎖
から選択される。いくつかの実施形態において、2、5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、またはそれらの間の範囲の繰り返される露出基Yが存在する。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記式(II)のモノマーはN-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドを含む。いくつかの実施形態において、上記N-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドモノマーは2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチルメタクリルアミドである。いくつかの実施形態において、上記共重合体はブロック共重合体であり、且つ式(IX)
【0076】
【0077】
を含み、
式中、a及びbは独立に1~1000(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、133、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれらの間の範囲)である。いくつかの実施形態において、上記共重合体はランダム共重合体であり、且つ式(V)
【0078】
【0079】
を含み、
式中、各Yは独立に、
(i)ポリHPMA
【0080】
【0081】
の側鎖、及び
(ii)ポリ(2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチルメタクリルアミド)
【0082】
【0083】
の側鎖
から選択される。いくつかの実施形態において、2、5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、またはそれらの間の範囲の繰り返される露出基Yが存在する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の共重合体の超分子集合体が提供される。いくつかの実施形態において、上記超分子集合体はミセルまたはナノ粒子である。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の超分子集合体または共重合体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の超分子集合体もしくは共重合体を含む食品または機能性食品組成物が提供される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の医薬組成物、食品、または機能性食品組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、疾患または状態を治療または予防するために実施される。いくつかの実施形態において、疾患または状態は、自己免疫疾患、アレルギー、炎症状態、感染、代謝障害、中枢神経系の疾患、結腸癌、糖尿病、自閉症スペクトラム障害からなる群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の共重合体、超分子集合体、医薬組成物、食品、及び/もしくは機能性食品組成物の合成または製造方法が提供される。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の共重合体、超分子集合体、医薬組成物、食品、及び/もしくは機能性食品組成物の疾患または疾病の治療あるいは予防のための使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】薬学的に活性な小分子を有するN-オキシアルキルメタクリルアミドモノマーの合成の図である。
【
図2】A-B:(A)2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミド)モノマー、及び(B)薬学的に活性な小分子を有するメタクリル酸2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルモノマーの合成の図である。
【
図3】対照ビヒクル用のモノマーの合成の図である。
【
図4】ブロック共重合体pHPMA-b-pBMAの合成の図である。
【
図5】ブロック共重合体pHPMA-b-pBBOMAの合成の図である。
【
図6】N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド(2)の
1H-ΝΜR(500MHz、CDCl
3)の図である。
【
図7】N-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミド(3)の
1H-ΝΜR(500MHz、CDCl
3)の図である。
【
図8】pHPMA(5)の
1H-ΝΜR(500MHz、DMSO-d6)の図である。
【
図9】pHPMA-b-pBMA(6)の
1H-ΝΜR(500MHz、DMSO-d6)の図である。
【
図10】種々の濃度の共重合体pHPMA-b-pBMA(HPMA/BMA=0.71)の溶液の動的光散乱データの図である。80mg/mLでは、上記溶液は64.6nmの径に鋭いピ-クを示した。
【
図11】時間0におけるブロック共重合体の経口投与の後の1日間の糞便中の酪酸濃度の図である。
【
図12】毎日5日間ブロック共重合体を経口投与した後、2日間ブロック共重合体を離脱させた後の糞便中の酪酸の濃度の図である。
【
図13】ポリマーによる処置を行う場合と行わない場合での、落花生タンパク質の負荷後の経時的な深部体温の図である。「アレルギー性陽性対照」または「アレルギー性」とは、5mgの落花生タンパク質+アジュバントとしての10μgのコレラ毒素を用いた胃管栄養法による感作により、マウスに落花生に対するアレルギーが誘発されたことを意味する。「非アレルギー性陰性対照」とは、10μgのコレラ毒素アジュバントのみを用い、アレルギーを誘発しなかったことを意味する。
【
図14】ポリマーによる処置を行う場合と行わない場合での、落花生タンパク質の負荷の24時間後の血清中の落花生特異的IgEの濃度の図である。「アレルギー性陽性対照」または「アレルギー性」とは、5mgの落花生タンパク質+アジュバントとしての10μgのコレラ毒素を用いた胃管栄養法による感作により、マウスに落花生に対するアレルギーが誘発されたことを意味する。「非アレルギー性陰性対照」とは、10μgのコレラ毒素アジュバントのみを用い、アレルギーを誘発しなかったことを意味する。
【
図15】ポリマーによる処置を行う場合と行わない場合での、落花生タンパク質の負荷の24時間後の血清中の落花生特異的IgG1の濃度の図である。「アレルギー性陽性対照」または「アレルギー性」とは、5mgの落花生タンパク質+アジュバントとしての10μgのコレラ毒素を用いた胃管栄養法による感作により、マウスに落花生に対するアレルギーが誘発されたことを意味する。「非アレルギー性陰性対照」とは、10μgのコレラ毒素アジュバントのみを用い、アレルギーを誘発しなかったことを意味する。
【
図16】ポリマーによる処置を行う場合と行わない場合での、落花生タンパク質の負荷の90分後の血清中のマウスマスト細胞プロテアーゼ-1の濃度の図である。「アレルギー性陽性対照」または「アレルギー性」とは、5mgの落花生タンパク質+アジュバントとしての10μgのコレラ毒素を用いた胃管栄養法による感作により、マウスに落花生に対するアレルギーが誘発されたことを意味する。「非アレルギー性陰性対照」とは、10μgのコレラ毒素アジュバントのみを用い、アレルギーを誘発しなかったことを意味する。
【
図17】落花生タンパク質の負荷後に酪酸ナトリウムで処置したマウスまたは処置しなかったマウス(「陽性対照」すなわち「PN+CT」または「CTのみ」と表示)におけるアレルギー感受性のマ-カ-の比較の図である。左側はマウスの深部体温の変化、中央は落花生特異的IgEの量、右側は落花生特異的IgG1の量の図である。
【
図18】1×PBS中、53.3mg/mLにおける、記載されたBMAに対するHPMAの比率のポリマー粒子のDLS(動的光散乱)の図である。
【
図19】ポリマー及び酪酸ナトリウムによる処置を行う場合と行わない場合での、落花生タンパク質の負荷後の経時的な深部体温の図であり、HPMA/BMA=1.01(「酪酸エステルポリマー」)またはポリマーなしの酪酸ナトリウムでは保護を示さない。
【
図20】GPC、NMR、及びDLSによって特徴付けられたpHPMA-b-pBMA処方の比較の図である。
【
図21】A-C:A.pHPMA-b-pBMA処方1のGPC曲線の図である。B.pHPMA-b-pBMA処方1のDLS曲線の図である。C.処方1のNMRスペクトルならびに分子量及びHPMA:BMAブロック比率を決定するために用いられる積分値の図である。
【
図22】A-C:A.pHPMA-b-pBMA処方4のGPC曲線の図である。B.pHPMA-b-pBMA処方4のDLS曲線の図である。C.処方4のNMRスペクトルならびに分子量及びHPMA:BMAブロック比率を決定するために用いられる積分値の図である。
【
図23】A-C:A.pHPMA-b-pBMA処方3のGPC曲線の図である。B.pHPMA-b-pBMA処方3のDLS曲線の図である。C.処方3のNMRスペクトルならびに分子量及びHPMA:BMAブロック比率を決定するために用いられる積分値の図である。
【
図24】A-C:A.異なるバッチのポリマーpHPMA-b-pBMAのGPC曲線の重ね描きの図である。B.(A)における、ポリマーpHPMA-b-pBMAに対応する約16分のピ-クの細部の重ね描きの図であり、分子量及び溶出時間の差異を示す。C.異なるバッチのポリマーpHPMA-b-pBMAのDLS曲線の重ね描きの図であり、分子量が異なると粒径が異なることを示す。
【
図25】種々のpHPMA-b-pBMAの溶液の写真であり、粒子径及び分子量に応じた溶液の色ならびに不透明度の差異を示す。
【
図26】マウスへの単回投与後の、処方1または処方3のいずれかのポリマー骨格から放出される酪酸の割合の図である。
【
図27】A-D:(A)負荷後の経時的な深部体温、(B)負荷24時間前の血清中の落花生特異的IgE濃度、(C)負荷24時間前の血清中の落花生特異的IgG1濃度、及び(D)マウスを処方3もしくは酪酸ナトリウムで毎日処置した、または処置しなかった場合の、落花生タンパク質での負荷の90分後の血清中のマウスマスト細胞プロテアーゼ-1の濃度の比較の図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
[用語の定義]
本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法及び材料を、本明細書に記載の実施形態の実施または試験に用いることができるが、いくつかの好ましい方法、組成物、デバイス、及び材料を本明細書に記載する。但し、本材料及び方法を説明する前に、本明細書に記載の特定の分子、組成物、方法論、またはプロトコルは、慣用的な実験及び最適化に従って変化し得ることから、本発明は本明細書に記載のこれらに限定されないことを理解されたい。また、説明で用いられる用語は、特定の形態または実施形態を説明することのみを目的としており、本明細書で説明する実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0092】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。但し、相反する場合は、定義を含む本明細書が優先されることとなる。従って、本明細書に記載の実施形態の文脈では、以下の定義が適用される。
【0093】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別段の明確な指示がない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、「ブロック共重合体」への言及は、1種または複数種のブロック共重合体及び当業者に公知のそれらの均等物などへの言及である。
【0094】
本明細書では、用語「含む(comprise)」及びその言語上の変化形は、記載された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などの存在を、更なる特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などの存在を排除することなく示す。逆に、用語「~からなる(consisting of)」及びその言語上の変化形は、記載された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などの存在を示し、且つ通常同伴する不純物を除いて、記載されないいずれの特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)なども排除する。語句「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、記載された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)など、及び当該組成物、システム、または方法の基本的な性質に実質的な影響を与えない任意の更なる特徴(複数可)、要素(複数可)、方法のステップ(複数可)などを示す。本明細書の多くの実施形態は、開いた(open)「含む(comprising)」言語を用いて記載される。かかる実施形態は、複数の閉じた(closed)「~からなる」及び/または「~から本質的になる」実施形態を包含し、これらは、代替的に、かかる言語を用いて権利請求または説明されてもよい。
【0095】
本明細書では、用語「短鎖脂肪酸」(「SCFA」)とは、飽和または不飽和の脂肪族鎖に結合したカルボン酸をいい、当該脂肪族鎖の長さは12の炭素以下である。
【0096】
本明細書では、用語「脂肪酸誘導体」(特に「SCFA誘導体」)とは、脂肪酸分子(例えばSCFA分子)に簡単な修飾(例えば、アミド化、メチル化、ハロゲン化など)を行うことにより得られる小分子化合物をいう。例えば、ブチルアミド、D-またはL-アミノ-n-酪酸、α-またはβ-アミノ-n-酪酸、酪酸アルギニン、ブチリン、フェニルブチラート(例えば、4-、3-、2-)、ジメチルブチラート、4-ハロブチラート(例えば、フルオロ-、クロロ-、ブロモ-、ヨ-ド-)、3-ハロブチラート(例えば、フルオロ-、クロロ-、ブロモ-、ヨ-ド-)、2-ハロブチラート(例えば、フルオロ-、クロロ-、ブロモ-、ヨ-ド-)、オキシブチラート、及びメチルブチラートは例示的なブチラート誘導体である。他のブチラート誘導体及び他のSCFAの類似の誘導体は、本明細書に記載のSCFA誘導体の範囲内である。
【0097】
本明細書では用語「共重合体」とは、2種以上の異なるモノマーサブユニットから形成されるポリマーをいう。例示的な共重合体としては、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0098】
本明細書では、用語「ブロック共重合体」とは、繰り返しサブユニットがポリマーブロック、すなわちポリマーのポリマーである共重合体をいう。ブロックAとブロックBとの共重合体では、A及びBはそれぞれ、モノマーの重合によって得られるポリマーの実態自体を表す。かかるブロック共重合体の例示的な構成としては、分岐、星形、ジブロック、トリブロックなどが挙げられる。
【0099】
本明細書では、用語「超分子」(例えば「超分子集合体」)とは、分子及び/または溶液(例えば、ポリマー、高分子など)と、多成分集合体、複合体、系、及び/または結果として形成される繊維との間の非共有結合性相互作用をいう。
【0100】
本明細書では、用語「薬学的に許容される担体」とは、対象に投与するための治療薬と共に用いるための、従来から用いられる、非毒性の固体、半固体、もしくは液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、賦形剤、または担体をいう。薬学的に許容される担体は、用いられる用量及び濃度において受容者に対して無毒であり、且つ用いられる製剤の他の成分と適合性がある。上記薬学的に許容される担体は、用いられる製剤に適する。例えば、当該の治療薬が経口投与される場合、当該の担体はゲルカプセルであってもよい。「医薬組成物」は一般的に、少なくとも1種の活性剤(例えば本明細書に記載の共重合体)及び薬学的に許容される担体を含む。
【0101】
本明細書では、用語「有効量」とは、有益なまたは所望の結果を実現するのに十分な組成物(例えば医薬組成物)の量をいう。有効量は、1回または複数回の投与、塗布、または投薬で投与してもよく、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。
【0102】
本明細書では、用語「投与」とは、薬物、プロドラッグ、もしくは他の薬剤、または治療処置(例えば本発明の医薬組成物)を対象に、またはイン・ビボで、イン・ビトロで、もしくはエクス・ビボで細胞、組織、及び器官に与える行為をいう。例示的な人体への投与経路は、目(例えば、眼内、硝子体内、眼周囲、眼科など)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(頬側)、耳、直腸を経るもの、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内など)によるものなどであってよい。
【0103】
本明細書では、用語「併用」及び「併用する」とは、対象への少なくとも2種の薬剤(複数可)または療法の投与をいう。いくつかの実施形態において、上記2種以上の薬剤または療法の併用は(例えば、同一のまたは別個の製剤で)同時である。他の実施形態において、第1の薬剤/療法は、第2の薬剤/療法の前に投与される。当業者であれば、使用される種々の薬剤または療法の製剤及び/または投与経路が変化し得ることを理解している。併用のための適切な用量は、当業者によって容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、薬剤または療法が併用される場合、当該のそれぞれの薬剤または療法は、それらの単独投与(実施)に適したものよりも低い用量で投与される。従って、薬剤または療法の併用が、潜在的に有害な(例えば毒性の)薬剤(複数可)の必要な用量を低下させる実施形態において、併用が特に望ましい。
【0104】
本明細書では、用語「ナノ粒子」とは、平均寸法(例えば、径、幅、長さなど)が1μm未満である粒子(例えば、<500nm(「サブ500nmナノ粒子」)、<100nm(「サブ100nmナノ粒子」)、<50nm(「サブ50nm」ナノ粒子」)をいう。
【0105】
本明細書では、用語「生体適合性の」とは、対象に投与された際に重大な有害作用を引き起こさないまたは誘発しない材料、化合物、または組成物をいう。生体適合性を制限する可能性のある悪影響の例としては、過度の炎症、過度のまたは有害な免疫応答、及び毒性が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0106】
本明細書では、用語「生体安定性の」とは、生理学的または類似の水性環境において容易に分解もしくは劣化しない組成物または材料をいう。逆に、本明細書では、用語「生分解性の」とは、生理学的または他の環境において容易に分解する(例えば、解重合する、加水分解する、酵素分解する、解離するなど)組成物または材料をいう。
【0107】
本明細書では、用語「置換」とは、1または複数の更なる基で修飾された基(例えばアルキルなど)をいう。置換基の非限定的な例としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジノ(=N-NH2)、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2)、及び-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2);ならびに、それぞれが、任意選択でハロゲン、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジノ(=N-NH2)、NH2)-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2)、及び-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2)、炭素環及び複素環によって置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニルが挙げられ、ここで、各Raは独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、炭素環、及び複素環から選択され、各Raは、原子価が許容する限り、任意選択でハロゲン、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジノ(=N-NH2)、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2)、及び-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2)で置換されていてもよく、各Rbは、直接結合または直鎖もしくは分枝鎖アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン鎖から独立に選択され、各Rcは、直鎖または分枝鎖アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン鎖である。置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、メルカプチル、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、ならびにアミノ(一置換及び二置換アミノ基を含む)、及びその保護誘導体から選択することができるが、これらに限定はされない。「置換アルキル」は、置換基部分を示すアルカンに加えて、アルキン及びアルケンを包含する。
【0108】
本明細書では、用語「擬似ランダム」とは、モノマーまたは成分の添加の順序を制御するためのステップまたは手段が取られていないプロセスによって生成する配列または構造をいう。
【0109】
本明細書では、用語「露出する」とは、分子、モノマー、ポリマー、ナノ構造、または他の化学的実体による溶媒に曝露された官能基の提示をいう。
【0110】
[発明の詳細な説明]
本明細書においては、例えば、短鎖脂肪酸の送達に使用されるポリマー材料が提供される。特に、安定したナノスケール構造を形成し、例えば共有結合の開裂により(例えば加水分解または酵素的開裂により)それらのペイロードを放出するポリマーが提供される。上記ポリマーは、例えば、健康及び疾患の治療用途向けの腸へのペイロード(例えばSCFA)の送達に有用であり、とりわけ、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、代謝疾患、及び中枢神経系疾患を含む、ヒト微生物叢の変化に関連する疾患に幅広い適用性を有する。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書では、親水性モノマー(またはそれらのブロック)とペンダント基地を露出するメタクリルアミドモノマーまたはメタクリル酸モノマー(またはそのブロック)との共重合体(例えば、ブロックまたはランダム)が提供される。いくつかの実施形態において、これらの共重合体をナノ粒子、ミセル、または他の送達システムへの集合化方法が提供される。いくつかの実施形態において、様々な疾患及び疾病の治療または予防のための、上記共重合体の投与方法、ならびにかかる共重合体を含む送達システムが提供される。特に、ポリマーは、(例えば、加水分解または酵素活性により)切断されることとなる共有結合で、ヒトの疾患の治療に関連する薬学的に好適な小分子部分(例えばSCFA)を送達するために機能化される。いくつかの実施形態において、共重合体は、開始剤による適宜のモノマーの可逆的付加開裂連鎖移動(「RAFT」)重合を用いて得られる。
【0112】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、N-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)モノマーを含むランダム共重合体である。他の合成天然分子またはポリマーを親水性モノマーとして用いてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、HPMA-(N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド)共重合体は、HPMAモノマーとN-ヒドロキシエチルメタクリルアミドモノマーとの共重合体(例えばランダム共重合体)である。遊離HPMA末端(例えば、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドブロックに結合していない)は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。一部または全てのN-ヒドロキシエチルメタクリルアミドモノマーは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、連鎖中に最大12の炭素原子、例えば連鎖中に3~10の間の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、HPMA-(メタクリル酸N-ヒドロキシエチル)共重合体は、HPMAモノマーとメタクリル酸N-ヒドロキシエチルモノマーとの共重合体(例えばランダム共重合体)である。遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。一部または全てのメタクリル酸N-ヒドロキシエチルモノマーは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、HPMA-(メタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキル)共重合体は、HPMAモノマーとメタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルモノマーとの共重合体(例えばランダム共重合体)である。遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。一部または全てのメタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルモノマーは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、HPMA-(N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミド)共重合体は、HPMAモノマーとN-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドモノマーとの共重合体(例えばランダム共重合体)である。遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含むが、これらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。一部または全てのN-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドモノマーは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、親水性ブロックとしてポリ(N-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)を含むブロック共重合体である。他の合成天然分子またはポリマーを親水性モノマーとして用いてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、HPMA-(N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド)共重合体は、上記N-ヒドロキシエチルメタクリルアミドブロックに共有結合した親水性ポリHPMAブロックから構成される。上記N-ヒドロキシエチルメタクリルアミドブロックに結合していない遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。上記N-ヒドロキシエチルメタクリルアミドブロックは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。上記N-ヒドロキシエチルメタクリルアミドブロックに結合していない遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、HPMA-(メタクリル酸N-ヒドロキシエチル)共重合体は、上記メタクリル酸N-ヒドロキシエチルブロックに共有結合した親水性ポリHPMAブロックから構成される。上記メタクリル酸N-ヒドロキシエチルブロックに結合していない遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。上記メタクリル酸N-ヒドロキシエチルブロックは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。上記メタクリル酸N-ヒドロキシエチルブロックに結合していない遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、HPMA-(メタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキル)共重合体は、上記メタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルブロックに共有結合した親水性ポリHPMAブロックから構成される。上記メタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルブロックに結合していない遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。上記メタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルブロックは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。上記メタクリル酸N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルブロックに結合していない遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、HPMA-(N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミド)共重合体は、上記N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドブロックに共有結合した親水性ポリHPMAブロックから構成される。上記N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドブロックに結合していない遊離HPMA末端は、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、マレイミド、ハロゲン、ポリマー連鎖移動剤、保護基、薬物、生体分子、または組織標的化部分を含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。上記N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドブロックは、上記ヒドロキシエチル官能基に共有結合した薬学的に好適な小分子を露出する。上記薬学的に好適な小分子の好ましい実施形態は、例えば連鎖中に3~12の間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれらの間の範囲)の炭素原子を含有する短鎖及び中鎖脂肪酸(「SCFA」)ならびにそれらの誘導体である。上記連鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。例示的なSCFAとしては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及び本明細書に記載の他のSCFA、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。上記N-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)アルキルメタクリルアミドブロックに結合していない遊離SCFA末端は、メチル、ヒドロキシル、メトキシ、チオール、アミン、N-アルキルアミンなどを含む、但しこれらに限定されない多くの化学基の1つであってよい。
【0122】
ブロックは分子量、従って大きさが変化してもよく、それらの調整により、不活性で、機能化されていない、薬学的に不活性な材料と、活性で、機能化され、薬学的に活性な材料の比率が変化する。いくつかの実施形態は、相対的なブロックの大きさが、0.25~3.5の間(例えば、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、及びその間の範囲(例えば0.7~1.8))である直鎖HPMA-(N-オキシエチルメタクリルアミド)ブロック共重合体である。他の実施形態は、相対的なブロックの大きさが、0.25~3.5の間(例えば、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、及びそれらの間の範囲(例えば0.7~1.8))である直鎖HPMA-(メタクリル酸2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)エチル)ブロック共重合体である。0.25~3.5の「相対的なブロックの大きさ」とは、1モルのHPMA重量毎に対して、N-オキシエチルメタクリルアミドブロック(またはSCFA官能化誘導体)が0.25モル~3.5モルであることを意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のブロック共重合体は、(例えば液体中に)分散する際に、10~1000nm(例えば、10、20、50、100、200、500、1000nm、またはそれらの間の範囲(例えば50~500nm)のナノ粒子またはミセルを形成する。かくして形成されたナノ粒子またはミセルは、次いで、安定剤(例えば界面活性剤)を含んでまたは含まずに、固体として(例えば、凍結乾燥などによる粉末)単離することができる。
【0123】
本明細書の特定の実施形態は親水性ブロックとしてポリHPMAに言及するが、ポリHPMAに代えて、ポリ(エチレンオキシド)-共-ポリ(プロピレンオキシド)ランダム、ジ、またはマルチブロック共重合体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレン-共-ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルオキサゾリン)(「PMOXA」)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(アクリル酸アルキル)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、親水性ポリペプチド、多糖、ポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、シクロデキストリン、またはポリ(N-アクリロイルモルホリン)を含む他の親水性ポリマーを用いてもよい。上記親水性ブロックは、3000~50,000Daの間(例えば、3000、4000、5000Da、6000Da、7000Da、8000Da、9000Da、10000Da、11000Da、12000Da、13000Da、14000Da、15000Da、20000Da、25000Da、30000Da、35000Da、40000Da、45000Da、50000Da、またはそれらの間の範囲(例えば、9000~14000Da、14000~30000))の分子量で存在してもよい。
【0124】
特定の実施形態において、本明細書の共重合体組成物は、医薬組成物、栄養補助食品、または食物もしくは飲料の形態で投与される。本明細書の組成物が食品または飲料として使用される場合、当該食品または飲料は、例えば、健康食品、機能性食品、特定の健康用途の食品、栄養補助食品、または患者向け食品であってよい。上記組成物は1回または2回以上投与されてもよい。複数回投与する場合、定期的に(例えば、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週1回、月1回、年1回)もしくは必要に応じて、または不定期に投与でされてもよい。上記組成物の投与頻度は、当業者によって経験的に決定することができる。
【0125】
上記薬学的に活性な小分子(例えばSCFA)の放出は、材料加工または下流の生物学的用途に対する当該共重合体の性能の必然的に重要な側面である。いくつかの実施形態において、上記薬学的に活性な小分子は、加水分解(例えば特定のpHにおける)及び酵素活性(例えばエステラーゼ)を含む適宜の生物学的条件下で当該ポリマーの骨格から開裂させることができる。これに関して、上記共重合体はプロドラッグと呼んでもよい。種々の実施形態において、上記医薬組成物は、約10~80重量%(例えば、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、またはそれらの間の範囲)の薬学的に活性な小分子、例えばSCFAまたはその誘導体を含む。臨床薬理学の当業者であれば、慣用的な実験を用いて投与量に容易に見出すことができる。
【0126】
上記薬学的に活性な小分子の放出は、腸及び腸の粘液層のバリア機能を標的とすることを始めとする、SCFAの治療効果を再現する治療効果を必然的に有し、SCFAが、粘液層の厚さまたはバリア機能の増加を始めとする治療上の利点を有することに関係しているとされている全ての疾患を治療することができる。いくつかの実施形態において、治療可能なヒトの疾患としては、とりわけ、関節リウマチ、セリアック病及び他の自己免疫疾患、全てのタイプの食物アレルギー、好酸球性食道炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、ペットアレルギー、薬物アレルギー、及びその他のアレルギー性及びアトピー性疾患、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び付加的な炎症性疾患、感染症、代謝障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、及び中枢神経系の他の疾患、サラセミア及び他の血液障害、大腸癌、下痢及び腸の運動性に影響する関連疾患、I型糖尿病、ならびに自閉症スペクトラム障害などが挙げられるが、これらに限定はされない。この一覧は網羅的ではなく、当業者であればSCFAの治療効果があることが明らかになっている更なる適応症を容易に治療することができる。
【0127】
医薬製剤は、当業者に公知の薬物製剤方法により、本発明の組成物から製剤化することができる。製剤は、望ましくない生物学的副作用及び望ましくない相互作用を引き起こすことなく、安全且つ有効であると考えられる材料で構成される、薬学的に許容される「担体」を用いて調製される。好適な担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセリン、エタノール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。上記組成物は、投与様式に適合させることができ、例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤、スプレー剤、散剤、または液剤の形態であってよい。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、コーティング剤、充填剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、安定剤、または界面活性剤などの、選択された投与経路及び投与様式に適した1種または複数種の薬学的に許容される添加剤を含む。これらの組成物は、限定はされないが、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、くも膜下を含む任意の非経口経路によって、ならびに局所、経口によって、及び鼻腔内、吸入、直腸、膣、頬側、及び舌下などの粘膜送達経路によって投与することができる。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、注射用の無菌、非発熱性の液剤を含む液剤、乳液剤、散剤、エアロゾル剤、錠剤、カプセル剤、腸溶性錠剤、または坐剤の形態で、脊椎動物(例えば哺乳動物)の対象への投与用に調製される。
[実施例]
【0128】
例1:薬学的に活性な小分子を有するN-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミドモノマーの調製
エタノールアミン(3.70mL、61.4mmol、2.0当量)、トリエチルアミン(4.72mL、33.8mmol、1.1当量)、及び50mLのDCMを250mLフラスコに加えた。この系を氷浴で冷却した後、(1)塩化メタクリロイル(3.00mL、30.7mmol、1.0当量)を窒素保護下で滴加した。この反応混合物を室温まで自然に加温し、終夜反応させた。次いで、この反応混合物をロータリーエバポレータにより濃縮し、DCM/MeOHを用いたシリカカラムで精製した。生成物であるN-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド(2)を無色油状物として得て(3.42g、86.3%)、これを1H-NMR(500MHz,CDCl3)δHppm 1.93(s,3H,C(CH2)-CH3),3.43(m,2H,NH-CH2),3.71(m,2H,O-CH2),5.32(s,1H,CCH2),5.70(s,1H,CCH2),6.44(brs,1H,NH)によって分析した。
【0129】
N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド(3.30mL、25.6mmol、1.0当量)、トリエチルアミン(7.15mL、51.2mmol、2.0当量)、及び50mLのDCMを250mLフラスコに加えた。この反応系を氷浴で冷却した後、窒素保護下で無水酪酸(5.00mL、30.7mmol、1.2当量)を滴加した。この系を終夜反応させた。この反応混合物をろ過し、NH4Cl溶液、NaHCO3溶液、及び水で洗浄した。無水MgSO4で脱水した後、有機層をロータリーエバポレータにより濃縮し、DCM/MeOHを用いたシリカカラムで精製した。生成物であるN-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミド(3)を淡黄色油状物として得て(4.56g、89.6%)、これを1H-NMR(500MHz,CDCl3)δHppm 0.95(t,3H,CH2CH2-CH3),1.66(m,2H,CH2-CH2),1.97(s,3H,C(CH2)-CH3),2.32(t,2H,CO-CH2),3.59(dt,2H,NH-CH2),4.23(t,2H,O-CH2),5.35(s,1H,CCH2),5.71(s,1H,CCH2),6.19(brs,1H,NH)によって分析した。この例は、薬学的に活性な小分子を上記ブロック共重合体のモノマー単位に結合するこのとの実施可能性を示している。同様の方法で、更にSCFAを上記モノマー単位に結合することができる。
【0130】
例2A:親水性ポリマーとN-(2-ヒドロキシエチルメチルアクリルアミドとのブロック共重合体の調製
RAFT連鎖移動剤としてのジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル及び開始剤としての2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)を用いて、pHPMAを調製した。簡単に説明すると、シュレンク管中で、HPMA(4)(1.0g、7.0mmol、1.0当量)、ジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル(15mg、0.07mmol、1/100当量)、及びAIBN(2.9mg、0.017mmol、1/400当量)を2.0mLのMeOHに溶解した。この反応混合物を4回の凍結-排気-融解サイクルに供した。70℃で15時間重合を行った。ポリマーを石油エーテルで5回沈殿させ、真空乾燥器中で終夜乾燥した。生成物であるポリ(HPMA)(5)を淡桃色固体として得て(0.79g、79%)、これを1H-NMR(500MHz,DMSO-d6),δHppm 0.8-1.2(m,6H,CH(OH)-CH3,及び骨格のCH3),1.5-1.8(m,2H,骨格のCH2),2.91(m,2H,NH-CH2),3.68(m,1H,C(OH)-H),4.70(m,1H,CH-OH),7.18(m,1H,NH)によって分析した。
【0131】
マクロRAFT連鎖移動剤としてのpHPMA及び2回目のRAFT重合のモノマーとしてのN-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミド(3)を用いて、ブロック共重合体を調製した。簡単に説明すると、シュレンク管中で、pHPMA(0.71g、1.0当量)、N-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミド(2.0g、10.0mmol、100当量)、及びAIBN(4.1mg、0.025mmol、0.25当量)を4.0mLのMeOHに溶解した。この反応混合物を4回の凍結-排気-融解サイクルに供した。70℃で15時間重合を行った。ポリマーを石油エーテルで5回沈殿させ、真空乾燥器中で終夜乾燥した。生成物を淡桃色固体として得て(1.54g、75%)、これを1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δHppm 0.80-1.1(m,9H,CH(OH)-CH3(HPMA),CH2-CH3(BMA),及び骨格のCH3),1.55(m,4H,CH2-CH2(BMA),及び骨格のCH2),2.28(m,2H,CO-CH2(BMA)),2.91(m,2H,NH-CH2(HPMA)),3.16(m,2H,NH-CH2(BMA)),3.67(m,1H,CH(OH)-H),3.98(m,2H,O-CH2(BMA)),4.71(m,1H,CH-OH(HPMA)),7.19(m,1H,NH),7.44(m,1H,NH)によって分析した。この例から拡張して、各ブロックに対してそれぞれ5kD~14kDで変化する分子量を容易に得ることができ、当該ポリマー中に種々の比率の不活性ブロックと活性ブロックが得られる。このようにして、それによって導入される薬学的に活性な成分の範囲を、総ポリマー重量の約10~80%とすることができる。
【0132】
例2B:薬学的に活性な小分子を有するメタクリル酸2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)エチルモノマーの調製
2-ブロモエタノール(4.36mL、61.5mmol、1.5当量)、トリエチルアミン(9.15mL、65.6mmol、1.6当量)、及び60mLのDCMを250mLフラスコに加えた。この系を氷浴で冷却した後、(1)塩化メタクリロイル(4.00mL、41.0mmol、1.0当量)を窒素保護下で滴加した。この反応混合物を室温まで自然に加温し、終夜反応させた。次いで、この反応混合物をロータリーエバポレータにより濃縮し、DCM/MeOHを用いたシリカカラムで精製した。生成物であるメタクリル酸2-ブロモエチル(7)を無色油状物として得て(6.62g、84.1%)、これを1H-NMR(500MHz,CDCl3)δHppm 1.95(s,3H,C(CH2)-CH3),3.57(m,2H,Br-CH2),4.45(m,2H,O-CH2),5.62(s,1H,CCH2),6.18(s,1H,CCH2)によって分析した。
【0133】
4-ヒドロキシ安息香酸(2.00g、14.5mmol、1.2当量)、重炭酸ナトリウム(2.94g、35.0mmol、2.9当量)、及び20mLのDMFを2口フラスコに加えた。この混合物を70℃で1時間保持した。次いで、メタクリル酸2-ブロモエチル(2.32g、12.1mmol、1.0当量)を10mLのDMFに溶解し、上記フラスコに滴加した。70℃で終夜反応を行った。この反応混合物を冷却し、100mLの水に注ぎ込み、100mLの50:50ヘキサン/酢酸エチル混合物で3回抽出した。有機相を水(100mL)で2回洗浄し、Na2SO4で脱水し、DCM/MeOHを用いたシリカカラムで精製した。生成物であるメタクリル酸2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)エチル(8)を粘ちょうな油状物として得て(0.87g、58%)、これを1H-NMR(500MHz,CDCl3)δHppm 1.95(s,3H,C(CH2)-CH3),4.48(m,2H,O-CH2),4.54(m,2H,O-CH2),5.62(s,1H,CCH2),6.14(s,1H,CCH2),6.86(d,2H,ArH),7.96(d,2H,ArH)によって分析した。
【0134】
メタクリル酸2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)エチル(0.87g、3.48mmol、1.0当量)、トリエチルアミン(1.46mL、10.44mmol、3.0当量)、及び30mLのDCMを100mLフラスコに加えた。この反応系を氷浴で冷却した後、無水酪酸(1.14mL、6.96mmol、2.0当量)を窒素保護下で滴加した。このシステムを終夜反応させた。この反応混合物をろ過し、NH4Cl溶液、NaHCO3溶液、及び水で洗浄した。無水MgSO4で脱水した後、有機層をロータリーエバポレータにより濃縮し、DCM/MeOHを用いたシリカカラムで精製した。生成物であるメタクリル酸2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチル(9)を淡色油状物として得て(1.02g、92%)、これを1H-NMR(500MHz,CDCl3)δHppm 1.06(t,3H,CH2CH2-CH3),1.72(m,2H,CH2-CH2),1.94(s,3H,C(CH2)-CH3),2.54(t,2H,CO-CH2),4.48(m,2H,O-CH2),4.56(m,2H,O-CH2),5.59(s,1H,CCH2),6.14(s,1H,CCH2),7.16(d,2H,ArH),8.06(d,2H,ArH)によって分析した。
【0135】
例3:親水性ポリマーとN-(2-ヒドロキシエチル)メチルアクリルアミドとのブロック共重合体の調製
RAFT連鎖移動剤としてのジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル及び開始剤としての2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)を用いて、pHPMAを調製した。簡単に説明すると、シュレンク管中で、HPMA(4)(1.0g、7.0mmol、1.0当量)、ジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル(15mg、0.07mmol、1/100当量)、及びAIBN(2.9mg、0.017mmol、1/400当量)を2.0mLのMeOHに溶解した。この反応混合物を4回の凍結-排気-融解サイクルに供した。70℃で15時間重合を行った。ポリマーを石油エーテルで5回沈殿させ、真空乾燥器中で終夜乾燥した。生成物であるポリ(HPMA)(5)を淡桃色固体として得て(0.79g、79%)、これを1H-NMR(500MHz,DMSO-d6),δHppm 0.8-1.2(m,6H,CH(OH)-CH3,及び骨格のCH3),1.5-1.8(m,2H,骨格のCH2),2.91(m,2H,NH-CH2),3.68(m,1H,C(OH)-H),4.70(m,1H,CH-OH),7.18(m,1H,NH)によって分析した。
【0136】
マクロRAFT連鎖移動剤としてのpHPMA及び2回目のRAFT重合のモノマーとしてのN-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミド(3)を用いて、ブロック共重合体(pHPMA-b-pBMA)を調製した。簡単に説明すると、シュレンク管中で、pHPMA(0.71g、1.0当量)、N-ブタノイルオキシエチルメタクリルアミド(2.0g、10.0mmol、100当量)、及びAIBN(4.1mg、0.025mmol、0.25当量)を4.0mLのMeOHに溶解した。この反応混合物を4回の凍結-排気-融解サイクルに供した。70℃で15時間重合を行った。ポリマーを石油エーテルで5回沈殿させ、真空乾燥器中で終夜乾燥した。生成物を淡桃色固体として得て(1.54g、75%)、これを1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δHppm 0.80-1.1(m,9H,CH(OH)-CH3(HPMA),CH2-CH3(BMA),及び骨格のCH3),1.55(m,4H,CH2-CH2(BMA),及び骨格のCH2),2.28(m,2H,CO-CH2(BMA)),2.91(m,2H,NH-CH2(HPMA)),3.16(m,2H,NH-CH2(BMA)),3.67(m,1H,CH(OH)-H),3.98(m,2H,O-CH2(BMA)),4.71(m,1H,CH-OH(HPMA)),7.19(m,1H,NH),7.44(m,1H,NH)によって分析した。この例から拡張して、各ブロックに対してそれぞれ5kD~14kDで変化する分子量を容易に得ることができ、当該ポリマー中に種々の比率の不活性ブロックと活性ブロックが得られる。このようにして、それによって導入される薬学的に活性な成分の範囲を、総ポリマー重量の約10~80%とすることができる。
【0137】
例4:親水性ポリマーとメタクリル酸2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)エチルとのブロック共重合体の調製
マクロRAFT連鎖移動剤としてのpHPMA及び2回目のRAFT重合のモノマーとしてのメタクリル酸2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチル(10)を用いて、ブロック共重合体(pHPMA-b-pBBOMA)を調製した。簡単に説明すると、シュレンク管中で、pHPMA(0.50g、1.0当量)、メタクリル酸2-(4-ブタノイルオキシベンゾイルオキシ)エチル(1.12g、3.5mmol、50当量)、及びAIBN(3.0mg、0.018mmol、0.005当量)を4.0mLのMeOHに溶解した。この反応混合物を4回の凍結-排気-融解サイクルに供した。70℃で15時間重合を行った。ポリマーを石油エーテルで5回沈殿させ、真空乾燥器中で終夜乾燥した。生成物を淡桃色固体として得て(1.34g、83%)、これを1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δHppm 0.80-1.1(m,9H,CH(OH)-CH3(HPMA),CH2-CH3(BBOMA),及び骨格のCH3),1.57(m,4H,CH2-CH2(BBOMA),及び骨格のCH2),2.46(m,2H,CO-CH2(BBOMA)),2.90(m,2H,NH-CH2(HPMA)),3.67(m,1H,CH(OH)-H),4.00-4.40(m,4H,O-CH2(BBOMA)),4.71(m,1H,CH-OH(HPMA)),7.17(m,2H,ArH(BBOMA)),7.92(m,2H,ArH(BBOMA))によって分析した。
【0138】
例5:ポリマー溶液の調製
共溶媒蒸発法を使用してポリマー溶液を調製した。ビーカー中で、80mgのpHPMA-b-pBMAを1.0mLのエタノールに溶解した。次いで、1.0mLの1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を上記ビーカーに添加した。この溶液を6時間激しく撹拌してエタノールを蒸発させた。ポリマー溶液を80mg/mLの1×PBS溶液として得て、これを4℃で保存した。ポリマー製剤の径を動的光散乱によって測定した。この例は溶液中での粒子への集合を示している。この例で実現したように、他の溶液及び溶液中の添加剤を用いて粒子を調製することができる。この例で実現したように、10~1000nmの粒子径を達成することができる。
【0139】
例6:経口胃管栄養法によるポリマー溶液の投与及び糞便中のSCFAの増加
上記の調製したポリマー溶液を用いてマウスに経口胃管栄養した。針を用い、経口胃管栄養法によって125μLの80mg/mLの溶液をマウスの胃に投与した。マウスの糞便試料を4時間毎に採取し、これらの糞便試料をガスクロマトグラフィー用に処理した。ガスクロマトグラフィー用試料は、0.1gの糞便に0.4mLのリン酸緩衝生理食塩水を添加し、ボルテックスで均質化することにより、Kaur, 2012に記載の方法を適合化して調製した。0.5mMの4-メチル吉草酸、5%のメタリン酸、及び1.56mg/mLの硫酸銅を含む0.1mLの内部標準混合物を添加し、この試料をボルテックスし、13000rpmで10分間遠心分離した。10μLの上清をガスクロマトグラフに注入して分析し、検量線を用いて糞便中のSCFAの濃度を測定した。この例は、上記ブロック共重合体の経口投与により、当該ブロックポリマーに結合したSCFAの糞便中の濃度が増加することを示す。
【0140】
例7:経口胃管栄養法によるポリマー溶液の投与ならびにアレルギー反応及びアナフィラキシーの生理学的マーカーの低下
既報であり、当業者に公知の手順に従って、離乳時及び週に1回、合計5週間、5mgの落花生タンパク質+アジュバントとしての10μgのコレラ毒素(この例ならびに
図13、14、15、及び16において「アレルギー性陽性対照」もしくは「アレルギー性」と表記)、または10μgのコレラ毒素アジュバントのみ(この例及び
図13、14、15、及び16において「非アレルギー性陰性対照」と表記)を用いた胃管栄養法による感作によって、マウスに落花生に対するアレルギーを誘導した。被験体の体重及び投薬を管理するために、雄のマウスのデータのみを報告する。80mg/mLのポリマーの原液を調製し、次いでリン酸緩衝生理食塩水を用いて13.3mg/mL(2mgのポリマーの日用量用)及び53.3mg/mL(8mgのポリマーの日用量用)に希釈した。150μLの上記ポリマー溶液を、針を用いて胃管栄養法により「アレルギー性」マウスの胃に毎日投与した。1日2mgを投与した「アレルギー性」マウス(N=6)には上記13.3mg/mLの溶液を用い、1日8mgを投与した「アレルギー性」マウス(N=5)には上記53.3mg/mLの溶液を用い、ポリマーを投与しない「アレルギー性」マウス(N=6)には150μLの1×PBSを対照として用いた。「非アレルギー性陰性対照」マウス(N=4)には150μLの1×PBSを対照として毎日投与した。5回目の感作の1週間後(実験の35日目)に、上記マウスに5mgの落花生タンパク質を腹腔内注射により投与した。注射後90分間、直腸で深部体温を監視し、注射の90分後及び24時間後にマウスの血清を採取した。血清をELISA用に処理し、落花生特異的免疫グロブリンE(IgE)、落花生特異的免疫グロブリンG1(IgG1)、及びマウスマスト細胞プロテアーゼ-1(mMCP-1)を測定した。この例は、上記ブロック共重合体の経口投与により、毎日投与した場合、アレルギー反応の生理学的マーカーが低下し、且つ症状が軽減されることを示す。
【0141】
例8:経口胃管栄養法による酪酸ナトリウム溶液の投与ならびにアレルギー反応及びアナフィラキシーの生理学的マーカーの低下における、ポリマーと比較した酪酸ナトリウムの劣位
既報であり、当業者に公知の手順に従って、離乳時及び週に1回、合計5週間、6mgの落花生タンパク質+10μgのコレラ毒素(「アレルギー性陽性対照」または「アレルギー性」と表記、N=19)を用いた経口胃管栄養法による感作によって、マウスに落花生に対するアレルギーを誘導した。針を用いた、「アレルギー性」マウスの胃への、リン酸緩衝生理食塩水に溶解した酪酸ナトリウムの経口胃管栄養法により、マウスにマウスの体重g当り2.83mgの用量の酪酸ナトリウムを毎日投与した。この用量は、マウスの体重g当り0.8mgのポリマーでのポリマーにより投与される用量に相当する。マウスの体重を週に1回測定し、最新の体重に基づいて溶液の量を調整した。5回目の感作の1週間後(実験の35日目)に、上記マウスに5mgの落花生タンパク質を腹腔内注射により投与した。注射後90分間、直腸で深部体温を監視し、注射の90分後及び24時間後にマウスの血清を採取した。血清をELISA用に処理し、落花生特異的免疫グロブリンE(IgE)、落花生特異的免疫グロブリンG1(IgG1)、及びマウスマスト細胞プロテアーゼ-1(mMCP-1)を測定した。これらの結果は、同等のブロック共重合体と同一用量の酪酸ナトリウムの経口投与は、毎日投与した場合、アレルギー反応の生理学的マーカーの低下及び症状の軽減に有効ではないことを示す(
図17)。
【0142】
例9:経口胃管栄養法による異なる処方のポリマーの投与は、アレルギー反応及びアナフィラキシーの生理学的マーカーの低下において有効性が同等ではない
例3及び5に記載の方法を用いて2種の処方のポリマーを調製した。1種のポリマーは、当該共重合体中のHPMAブロック:BMAブロックの比が1.01であり、且つ動的光散乱による粒子径が329nmであることが特徴付けられ及び実証された(「処方2」)。もう一方のポリマーは、当該共重合体中のHPMAブロック:BMAブロックの比が0.75であり、且つ動的光散乱による粒子径が64.6nmであることが特徴付けられ及び実証された(「処方1」)。(
図18)。
【0143】
既報であり、当業者に公知の手順に従って、離乳時及び週に1回、合計5週間、6mgの落花生タンパク質+10μgのコレラ毒素(「アレルギー性陽性対照」もしくは「アレルギー性」と表記)、または10μgのコレラ毒素のみ(「非アレルギー性陰性対照」と表記、N=4)を用いた経口胃管栄養法による感作によって、マウスに落花生に対するアレルギーを誘導した。例3と同様にして80mg/mLの処方2のポリマーの原液を調製し、次いで53.3mg/mLに希釈した。針を用いて経口胃管栄養法により「アレルギー性」マウスの胃に、マウスの体重g当り0.8mgのポリマーを毎日投与した。別の群の「アレルギー性」マウスに、例7と同一の方法で2.83mgの酪酸ナトリウムを投与した。別の群の「アレルギー性」マウスに、マウスの体重g当り0.8mgの日用量の酪酸を放出することができない対照ポリマーを投与した。ポリマーを投与しない「アレルギー性」マウスには、等容量の1×PBSの溶液を対照として用いた。「非アレルギー性陰性対照」マウスには、マウスの体重g当り0.8mgの対照ポリマーを対照として毎日投与した。5回目の感作の1週間後(実験の35日目)に、上記マウスに5mgの落花生タンパク質を腹腔内注射により投与した。注射後90分間、直腸で深部体温を監視し、注射の90分後及び24時間後にマウスの血清を採取した(
図19)。血清をELISA用に処理し、落花生特異的免疫グロブリンE(IgE)、落花生特異的免疫グロブリンG1(IgG1)、及びマウスマスト細胞プロテアーゼ-1(mMCP-1)を測定した。これらの結果は、糞便中の酪酸の増加は有効性を予測するのに十分ではないこと、ならびに当該ポリマーの分子としての及びモルフォロジーとしての特性によって、治療効果の違いが明確になることはないことを示している。詳細には、分子量及びブロック比のみが処方1と異なる処方2を毎日投与した場合、アレルギー反応の生理学的マーカーが低下せず、且つ症状が軽減されない。
【0144】
例10:経口胃管栄養法による複数の処方のポリマーの投与によって、酪酸濃度は同等に変化するが、アレルギー反応及びアナフィラキシーの生理学的マーカーの低下については同等に有効ではない。同等に有効であるためには、特定のポリマーの分子特性の厳密な制御が必要。
例3及び5に記載の方法を用いて3種の処方のポリマーを調製した(
図20)。1種のポリマーは、当該共重合体中のHPMAブロック:BMAブロックの比が0.75であり、分子量が約40,000g/molであり、動的光散乱による粒子径が60~70nmであることが特徴付けられ及び実証された(「処方1」)。第2のポリマーは、当該共重合体中のHPMAブロック:BMAブロックの比が0.71であり、分子量が約52,000g/molであり、動的光散乱による粒子径が120~130nmであることが特徴付けられ及び実証された(「処方3」)。第3のポリマーは、当該共重合体中のHPMAブロック:BMAブロックの比が0.77であり、分子量が約39,000g/molであり、動的光散乱による粒子径が75~82nmであることが特徴付けられ及び実証された(「処方4」)。
【0145】
GPC、DLS、及びNMRによる上記3種の処方の分析を
図21~24に示す。
【0146】
8mgの処方1及び処方3を、胃管栄養法による単回経口投与で複数の群のマウス(群当りN=8)に投与し、各マウスの糞便物質を24時間にわたって採取し、1つにまとめた。これらの試料をガスクロマトグラフィー用に処理し、例6に記載の方法を用いて遊離酪酸の濃度を測定した。理論的に放出される酪酸に対する遊離酪酸の比率を測定し、放出率に変換した(
図26)。
【0147】
例5及び7にした誘導アレルギーモデル手順を用いて、これら3種の処方を比較した(
図27)。マウスに5mgの落花生タンパク質を腹腔内注射で投与した後、注射後90分間、深部体温を直腸で監視し、注射の90分後及び24時間後にマウスの血清を採取した。血清をELISA用に処理し、落花生特異的免疫グロブリンE(IgE)、落花生特異的免疫グロブリンG1(IgG1)、及びマウスマスト細胞プロテアーゼ-1(mMCP-1)を測定した。これらの結果は、ブロック比の差異ではなく分子量の差異によって治療効果の差異が生じることを示す。詳細には、処方2はブロック比では処方1及び3と有意に異なることはないが、分子量及びモルフォロジーで異なり、これを毎日投与した場合、アレルギー反応の生理学的マーカーは低下せず、且つ症状は軽減されない。分子としての及びモルフォロジーとしての特性がわずかに異なる処方1及び3を毎日投与した場合、アレルギー反応の生理学的マーカーが低下し、且つ症状が軽減される。
【0148】
[参考文献]
以下の参考文献(一部は上記に引用)は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0149】
Arpaia, N., Campbell, C., Fan, X., Dikiy, S., van der Veeken, J., deRoos, P., Liu, H., Cross, J.R., Pfeffer, K., Coffer, P.J., and Rudensky, A.Y. (2013). Metabolites produced by commensal bacteria promote peripheral regulatory T-cell generation. Nature 504, 451-455.
Berni Canani, R., Gilbert, J.A., and Nagler, C.R. (2015). The role of the commensal microbiota in the regulation of tolerance to dietary allergens. Curr Opin Allergy Clin Immunol, 15, 243-249.
Berni Canani, R., Sangwan, N., Stefka, A.T., Nocerino, R., Papro, L., Aitoro, R., Calignano, A., Kahn, A.A., Gilbert, J.A., and Nagler, C.R. (2016). Lactobacillus rhamnosus GG-supplemented formula expands butyrate-producing bacterial strains in food allergic infants. ISME J, 10, 742-750.
Furusawa, Y., Obata, Y., Fukuda, S., Endo, T.A., Nakato, G.,Takahashi, D., Nakanishi, Y., Uetake, C., Kato, K., Kato, T., Takahashi, M., Fukuda, N.N., Murakami, S., Miyauchi, E., Hino, S., Atarashi, K., Onawa, S., Fujimura, Y., Lockett, T., Clarke, J.M., Topping, D.L., Tomita, M., Hori, S., Ohara, O., Morita, T., Koseki, H., Kikuchi, J., Honda, K., Hase, K., and Ohno, H., (2013). Commensal microbe-derived butyrate induces the differentiation of colonic regulatory T cells. Nature 504, 446-450.
Haghikia, A., Jorg, S., Duscha, A., Berg, J., Arndt, M., Waschbisch, A., Hammer, A., Lee, D.-H., May, C., Wilck, N., Balogh, A., Ostermann, A.I., Schebb, N.H., Akkad, D.A., Grohme, D.A., Kleinewietfeld, M., Kempa, S., Thone, J., Demir, S., Muller, D.N., Gold, R., and Linker, R.A. (2015). Dietary Fatty Acids Directly Impact Central Nervous System Autoimmunity via the Small Intestine. Immunity, 43, 817-829.
Kaur, A., (2012) Modulation of gut microbiota and its environment using starch-entrapped microspheres and cereal arabinoxylans. Purdue.
MacFabe, D.F. (2015) Enteric short-chain fatty acids: microbial messengers of metabolism, mitochondria, and mind: implications in autism spectrum disorders. Microb Ecol Health Dis, 26, 28177.
Meijer, K. de Vos, P., and Priebe, M.G. (2010). Butyrate and other short-chain fatty acids as modulators of immunity: what relevance for health? Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 13, 715-721.
Nylund, L., Nermes, M., Isolauri, E., Salminen, S., de Vos, W.M., and Satokari, R. (2015). Severity of atopic disease inversely correlates with intestinal microbiota diversity and butyrate-producing bacteria. Allergy, 70, 241-244.
Sandin, A., Braback, L., Norin, E., and Bengt Bjorksten, B. (2009). Faecal short chain fatty acid pattern and allergy in early childhood. Acta Paediatrica, 98, 823-827.
Smith, P.M., Howitt, M.R., Panikov, N., Michaud, M., Gallini, C.A., Bohlooly-Y, M., Glickman, J.N., and Garrett, W.S. (2013). The microbial metabolites, short chain fatty acids, regulate colonic Treg cell homeostasis. Science 341, 569-573.