(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 8/00 20090101AFI20240214BHJP
H04W 76/20 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
H04W8/00 110
H04W76/20
(21)【出願番号】P 2022128271
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 八雲
(72)【発明者】
【氏名】中西 優
(72)【発明者】
【氏名】春名 恒臣
【審査官】中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/055437(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/126622(WO,A1)
【文献】特開2016-192642(JP,A)
【文献】特表2008-503977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアネットワークと接続される情報処理装置であって、
前記コアネットワークが管理する端末の登録管理状態において、当該端末の状態が、前記コアネットワークに登録されていることを示す登録状態であり、かつ、前記コアネットワークが管理する端末の接続管理状態において、当該端末の状態が、当該端末と前記コアネットワークの制御プレーン機能との接続が確立されていないことを示すアイドル状態である場合、前記アイドル状態が継続している時間である継続時間を計測する計測部と、
計測された前記継続時間が閾値を超えた場合、前記端末から前記コアネットワークへの応答を要求するポーリングメッセージを、前記コアネットワークから前記端末に送信させる送信制御部と、
前記端末に対応して前記コアネットワークから取得される情報に基づいて、前記閾値を前記端末ごとに設定する閾値設定部とを備える
情報処理装置。
【請求項2】
前記閾値設定部は、
前記端末の用途、通信能力または利用可能電力量に係る情報である属性情報を、前記コアネットワークから取得し、
前記属性情報に基づいて前記閾値を設定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記閾値設定部は、
前記属性情報に基づいて、前記コアネットワーク内での前記端末の通信の優先度を特定し、前記優先度に応じて前記閾値を設定する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記閾値設定部は、
前記端末の移動速度および通信頻度に係る情報であるビヘイビア情報と、
前記端末の位置に係る位置情報とを前記コアネットワークからさらに取得し、
前記属性情報、前記ビヘイビア情報および前記位置情報に基づいて前記閾値を設定する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記閾値設定部は、
前記端末の位置情報として、前記端末が属するTA(Tracking Area)に係るTA情報を前記コアネットワークから取得する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記閾値は、
前記端末が、予め設定された品質値より低い受信品質で基地局から送信される信号を受信したとき、無線リンク障害を判定するために要する判定時間に、所定の係数を乗じることにより算出され、
前記端末に対応して前記コアネットワークから取得される情報に基づいて前記所定の係数が定まる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記ポーリングメッセージの送信後、所定の待機時間が経過した後、前記接続管理状態において、当該端末の状態が、当該端末と前記コアネットワークの制御プレーン機能との接続が確立されている接続状態に遷移しない場合、前記端末が圏外に位置すると判定する判定部をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記閾値設定部は、
前記ポーリングメッセージの送信回数Nをさらに設定し、
前記判定部は、前記ポーリングメッセージが送信される都度、前記接続管理状態において、当該端末の状態が遷移したか否かを判定する
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記閾値設定部は、
前記ポーリングメッセージの送信回数Nをさらに設定し、
前記判定部は、前記ポーリングメッセージがN回送信された後、前記接続管理状態において、当該端末の状態が遷移したか否かを判定する
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記閾値設定部は、
前記端末が属するTAに含まれるセルに係るセル情報を、前記コアネットワークから取得し、
前記セル情報に基づいて前記送信回数Nを設定する
請求項8または9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記端末は、前記コアネットワークを介してアプリケーションサーバと通信し、
前記コアネットワークは、前記判定部の判定結果を、前記アプリケーションサーバに提供する
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記閾値設定部は、前記端末ごとに、前記待機時間をさらに設定する
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記閾値設定部は、
前記端末に設定されるDRX(Discontinuous Reception)に係るDRX情報を、前記コアネットワークから取得し、
前記DRX情報に基づいて前記待機時間を設定する
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記ポーリングメッセージは、C-Planeメッセージである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記C-Planeメッセージは、
SMS、NIDD、または、PDU session modification commandである
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
コンピュータを、
コアネットワークと接続される情報処理装置であって、
前記コアネットワークが管理する端末の登録管理状態において、当該端末の状態が、前記コアネットワークに登録されていることを示す登録状態であり、かつ、前記コアネットワークが管理する端末の接続管理状態において、当該端末の状態が、当該端末と前記コアネットワークの制御プレーン機能との接続が確立されていないことを示すアイドル状態である場合、前記アイドル状態が継続している時間である継続時間を計測する計測部と、
計測された前記継続時間が閾値を超えた場合、前記端末から前記コアネットワークへの応答を要求するポーリングメッセージを、前記コアネットワークから前記端末に送信させる送信制御部と、
前記端末に対応して前記コアネットワークから取得される情報に基づいて、前記閾値を前記端末ごとに設定する閾値設定部とを備える情報処理装置として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置およびプログラムに関し、端末が圏外に位置することをより早く把握できるようにする情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5Gコアネットワークでは、例えば、Access and Mobility management Function(AMF)が、端末の接続状態を、RM(Registration Management)ステートおよびCM(Connection Management)ステートとして管理する。3GPP.TS23.501によれば、RMステートがRM-DEREGISTEREDからRM-REGISTEREDに遷移した時点、または、Registration Updated Acceptがなされた時点を起点として、RM-REGISTERED状態の継続時間がT3512タイマで計測される。そして、タイマが満了すると、RMステートが、RM-REGISTEREDからRM-DEREGISTEREDへ遷移させられる。これにより、5Gコアネットワークは、当該端末が圏外に位置することを知ることができる。
【0003】
また、位置報告イベントの監視中に、アプリケーションサーバが指定する最小報告間隔内に、端末の位置が複数回変化した場合でも、アプリケーションサーバが適宜端末の位置を確認できるようにする技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、5Gコアネットワークに接続されるアプリケーションサーバによって提供されるサービスが多様化しており、端末との通信の可否をより早期に把握するニーズが高まっている。とりわけ遠隔操作される端末や、移動体、飛行体などに取り付けられる端末では、より短時間での端末との通信の可否の把握が求められる。
【0006】
しかしながら、上述したような従来技術では、T3512タイマが満了するまで、端末が圏外に位置していることを把握できないという問題があった。
【0007】
本発明の一態様は、端末が圏外に位置することをより早く把握できるようにする技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、コアネットワークと接続される情報処理装置であって、前記コアネットワークが管理する端末の登録管理状態において、当該端末の状態が、前記コアネットワークに登録されていることを示す登録状態であり、かつ、前記コアネットワークが管理する端末の接続管理状態において、当該端末の状態が、当該端末と前記コアネットワークの制御プレーン機能との接続が確立されていないことを示すアイドル状態である場合、前記アイドル状態が継続している時間である継続時間を計測する計測部と、計測された前記継続時間が閾値を超えた場合、前記端末から前記コアネットワークへの応答を要求するポーリングメッセージを、前記コアネットワークから前記端末に送信させる送信制御部と、前記端末に対応して前記コアネットワークから取得される情報に基づいて、前記閾値を前記端末ごとに設定する閾値設定部とを備える。
【0009】
本発明の各態様は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることによりシステムをコンピュータにて実現させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、端末が圏外に位置することをより早く把握できるようにする技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来の5Gネットワーク通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】3GPP TS23.501で規定される、AMFにおけるCMステートおよびRMステートの状態遷移図である。
【
図3】AMFで管理されるCMステートおよびRMステートに対応する端末の状態を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る5Gネットワーク通信システムの構成例を示す図である。
【
図5】圏外判定制御装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図6】圏外判定処理の一例について、流れを説明するフローチャートである。
【
図7】閾値等設定処理の一例について、流れを説明するフローチャートである。
【
図8】閾値等設定処理の一例について、流れを説明するフローチャートである。
【
図9】T_polling、N_polling、T_waitの設定に関するバリエーションを説明する図である。
【
図10】各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
(従来の5Gネットワーク通信システム)
最初に従来の5Gネットワーク通信システムについて説明する。
【0013】
図1は、従来の5Gネットワーク通信システム10の構成例を示す図である。同図に示される5Gネットワーク通信システム10においては、端末21-1乃至端末21-3が、コアネットワーク50を介してアプリケーションサーバ60と通信することができる。なお、端末21-1乃至端末21-3を個々に区別する必要がない場合、まとめて端末21と称することにする。また、端末は、UE(User Equipment)とも称される。
【0014】
端末21は、基地局41を介してコアネットワーク50に接続される。基地局41は、基地局41の通信エリアであるセル42に対応して設置される。
図1においては、基地局41が1つだけ記載されているが、実際にはもっと多くの基地局と、それらの基地局に対応するセルが存在する。また、複数のセルから成るTA(Tracking Area)が定義され、端末21は、基地局41がどのTAに属するかを検知することができる。
【0015】
コアネットワーク50には、AMF(Access and Mobility managementFunction)51、NEF(Network Exposure Function)52が含まれる。なお、AMF51およびNEF52は、通信の確立などの制御処理に係る制御プレーン機能(CPF:Control Plane Function)群の一部とされる。ユーザデータの送受信処理などは、ユーザプレーン機能(UPF:User Plane Function)53により実行される。
【0016】
アプリケーションサーバ60は、コアネットワーク50のNEF52およびUPF53に接続される。
【0017】
図1の例では、端末21-1がアプリケーションサーバ60と通信中である。すなわち、端末21-1は、基地局41、AMF51、およびNEF52を介してアプリケーションサーバ60と制御プレーンに係るデータの送受信を行う。また、端末21-1は、基地局41、およびUPF53を介してアプリケーションサーバ60とユーザプレーンに係るデータの送受信を行う。
【0018】
図1の例では、端末21-2および端末21-3は、アプリケーションサーバ60との通信を行っていない。
【0019】
AMF51は、端末21の接続管理状態であるCM(Connection Management)ステートを管理する。
【0020】
端末21が、AMF51とN1インターフェースにより接続されている場合、端末21のCMステートは、CM-CONNECTEDとなる。すなわち、端末21とコアネットワーク50の制御プレーン機能(この例では、AMF51)との間でNAS(Non-Access-Stratum)シグナリングによる接続が確立されている場合、端末21のCMステートは、CM-CONNECTEDとなる。
【0021】
一方、端末21が、AMF51とN1インターフェースにより接続されていない場合、端末21のCMステートは、CM-IDLEとなる。すなわち、端末21とコアネットワーク50の制御プレーン機能(この例では、AMF51)との間でNASシグナリングによる接続が確立されていない場合、端末21のCMステートは、CM-IDLEとなる。
【0022】
図1の例では、端末21-1のCMステートは、CM-CONNECTEDであり、端末21-2および端末21-3のCMステートは、CM-IDLEである。
【0023】
AMF51は、また、端末21の登録管理状態であるRM(Registration Management)ステートを管理する。
【0024】
端末21がコアネットワーク50に登録されている場合、端末21のRMステートは、RM-REGISTEREDとなり、端末21がコアネットワーク50に登録されていない場合、端末21のRMステートは、RM-DEREGISTEREDとなる。
【0025】
RMステートが、RM-REGISTEREDの場合、端末21は、自分の位置を表す情報をAMF51に提供する。例えば、端末21が移動することにより、無線リンクが確立された基地局に対応するセルが属するTAが変わった場合、端末21は、新たなTAの識別情報をAMF51に送信する。このように、端末21が自分のセルが属するTAの情報を更新する処理を、NAS Mobility Update、またはMobility Registration Updateと称する。
【0026】
RMステートが、RM-DEREGISTEREDの場合、コアネットワーク50は、端末21の位置を検知することができないため、端末21に到達することができない。
【0027】
なお、
図1の例では、端末21-1乃至端末21-3のRMステートは、RM-REGISTEREDであるものとする。
【0028】
3GPP TS23.501には、CMステートおよびRMステートの詳細が規定されている(5.3.2、5.3.3)。
図2は、3GPP TS23.501で規定される、AMF51におけるCMステートおよびRMステートの状態遷移図を示している。
【0029】
図2に示されるように、N2 Contextが解放されると、AMF51で管理されるCMステートが、CM-CONNECTEDからCM-IDLEに遷移する。N2 Contextが確立されると、AMF51で管理されるCMステートが、CM-IDLEからCM-CONNECTEDに遷移する。
【0030】
また、Deregistaration Registrationが拒絶されると、AMF51で管理されるRMステートが、RM-REGISTEREDからRM-DEREGISTEREDに遷移する。さらに、Registrationが受け付けられると、AMF51で管理されるRMステートが、RM-DEREGISTEREDからRM-REGISTEREDに遷移する。一方、Registration Updateが受け付けられた場合、AMF51で管理されるRMステートはRM-REGISTEREDから遷移せず、Registrationが拒絶された場合、AMF51で管理されるRMステートはRM-DEREGISTEREDから遷移しない。
【0031】
図3は、AMF51で管理されるCMステートおよびRMステートに対応する端末21の状態を説明する図である。CMステートがCM-IDLEであり、かつRMステートがRM-DEREGISTEREDである場合、端末21は、電源がオフであるか、または圏外、すなわちセル42の外に位置している。CMステートがCM-CONNECTEDであり、かつRMステートがRM-REGISTEREDである場合、端末21は通信中である。CMステートがCM-IDLEであり、かつRMステートがRM-REGISTEREDである場合、端末21は待受中である。
【0032】
図1の例では、端末21-2および端末21-3のCMステートがCM-IDLEであり、コアネットワーク50から見ると、端末21-2および端末21-3は待受中と認識される。しかし、実際には、端末21―3は、セル42の外である圏外に位置しており、コアネットワーク50は、端末21―3に到達することはできない。
【0033】
3GPPの規定によれば、AMF51は、端末21-3のRM-DEREGISTEREDからRM-REGISTEREDに遷移した時点を起点あるいはRegistration Updated Acceptがなされた時点を起点として,RM-REGISTERED状態の継続時間をT3512タイマにより監視する。そして、T3512タイマが満了してもなおUEからAMFへRegistration Updateが起こらなかった場合、AMF51は、端末21-3のRMステートをRM-DEREGISTEREDに遷移させる。
【0034】
通常、T3512タイマの満了時間は、54分とされ、この間、端末21―3が圏外に位置していたとしても、コアネットワーク50は、端末21―3を待受中と認識してしまう。
【0035】
近年、5Gコアネットワークに接続されるアプリケーションサーバ60によって提供されるサービスが多様化しており、端末21との通信の可否をより早期に把握するニーズが高まっている。とりわけ遠隔操作される端末や、移動体、飛行体などに取り付けられる端末では、より短時間での端末との通信の可否の把握が求められる。
【0036】
しかしながら、従来は、T3512タイマが満了するまで、端末が圏外に位置していることを把握できなかった。
【0037】
(本実施形態に係る5Gネットワーク通信システム)
図4は、本実施形態に係る5Gネットワーク通信システムの構成例を示す図である。なお、
図1を参照して説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0038】
図4の例では、5Gネットワーク通信システム10に、圏外判定制御装置70が設けられている。圏外判定制御装置70は、コアネットワーク50のAMF51およびNWDAF(Network Data Analysis Function)54と接続されている。圏外判定制御装置70は、概略的には、T3512タイマの満了を待つことなく、端末21-3が圏外に位置するか否かを判定し、コアネットワーク50に通知する装置である。また、圏外判定制御装置70は、AMF51およびNWDAF54から取得した情報に基づいて、上述した判定に用いる閾値を、端末21ごとに設定する。一例として、圏外判定制御装置70は、汎用のコンピュータにより構成することができる。
【0039】
(圏外判定制御装置70の構成例)
図5は、圏外判定制御装置70の機能的構成例を示すブロック図である。同図の例では、圏外判定制御装置70は、総合制御部71、ステート確認部72、継続時間計測部73、送信制御部74、閾値設定部75、および判定部76を有している。
【0040】
総合制御部71は、圏外判定制御装置70を構成する各部の処理を制御するとともに、コアネットワーク50とのデータの送受信などに係る制御を行う。ステート確認部72は、端末21のCMステートおよびRMステートを、AMF51またはNEFを介して取得する。継続時間計測部73は、ステート確認部72によって取得されたCMステートがCM-IDLEであり、かつRMステートがRM-REGISTEREDである場合、CMステートがCM-IDLEである状態が継続している時間である継続時間を計測する。
【0041】
送信制御部74は、継続時間計測部73によって計測された継続時間が予め設定された閾値を超えた場合、端末21からコアネットワーク50への応答を要求するポーリングメッセージを、コアネットワーク50から端末21に送信させる。閾値設定部75は、AMF51およびNWDAF54から取得した情報に基づいて、上述した判定に用いる閾値を、端末21ごとに設定する。
【0042】
このように、圏外判定制御装置70は、コアネットワーク50が管理する端末21の登録管理状態において、当該端末21の状態が、コアネットワーク50に登録されていることを示す登録状態(RM-REGISTERED)であり、かつ、コアネットワークが管理する端末の接続管理状態において、当該端末21の状態が、当該端末21とコアネットワーク50の制御プレーン機能との接続が確立されていないことを示すアイドル状態(CM-IDLE)である場合、アイドル状態が継続している時間である継続時間を計測する継続時間計測部73と、計測された継続時間が閾値を超えた場合、端末21からコアネットワーク50への応答を要求するポーリングメッセージを、コアネットワーク50から端末21に送信させる送信制御部74と、端末21に対応してコアネットワーク50から取得される情報に基づいて、閾値を端末21ごとに設定する閾値設定部75とを備える。
【0043】
また、判定部76は、端末21への到達可否に係る状態を判定する。判定部76は、例えば、ポーリングメッセージの送信後、所定の待機時間が経過した後、接続管理状態において、当該端末の状態が、当該端末と前記コアネットワークの制御プレーン機能との接続が確立されている接続状態(CM-CONNECTED)に遷移しない場合、端末が圏外に位置すると判定する。
【0044】
(圏外判定処理の流れ)
次に、
図6を参照して、圏外判定制御装置70により実行される圏外判定処理の例について説明する。
図6は、圏外判定処理の一例について、流れを説明するフローチャートである。
【0045】
ステップS31において、総合制御部71は、圏外判定の対象となる端末を特定する。圏外判定の対象となる端末は、一例として、アプリケーションサーバ60からの要求に基づいて特定される。例えば、アプリケーションサーバ60から端末21-3についての圏外判定の要求があった場合、ステップS31では、コアネットワーク50を経由して端末21-3の識別情報などが取得されることにより、圏外判定の対象となる端末が特定される。
【0046】
ステップS32において、ステート確認部72は、ステップS31で特定された端末のCMステートとRMステートを、AMF51またはNEF52を介して取得する。
【0047】
ステップS33において、ステート確認部72は、ステップS32で取得されたRMステートは、RM-REGISTEREDであるか否かを判定する。ステップS33において、RM-REGISTEREDではないと判定された場合、ステップS34の処理が実行される。この場合、RMステートは、RM-DEREGISTEREDである。ステップS34では、判定部76が、ステップS31で特定された端末は、電源がOFFされていると判定する。
【0048】
ステップS33において、RM-REGISTEREDであると判定された場合、ステップS35の処理が実行される。ステップS35において、ステート確認部72は、ステップS72で取得されたCMステートは、CM-IDLEであるか否かを判定する。ステップS35において、CM-IDLEではないと判定された場合、ステップS32に戻ってそれ以降の処理が実行される。この場合、CMステートは、CM-CONNECTEDである。
【0049】
ステップS35において、CM-IDLEであると判定された場合、ステップS36の処理が実行される。ステップS36において、継続時間計測部73は、CMステートがCM-IDLEである状態の継続している時間、換言すれば、CMステートが遷移しない状態の継続時間の計測を開始する。
【0050】
ステップS37において、継続時間計測部73は、ステップS36で計測が開始された継続時間が閾値を超えたか否かを判定する。なお、詳細は後述するが、ここで用いられる閾値は、ステップS31で特定される端末ごとに設定された閾値である。
【0051】
例えば、閾値が3分であった場合、CMステートが遷移しない状態が、継続時間の計測が開始されてから3分を超えて継続すると、ステップS37では、継続時間が閾値を超えたと判定され、ステップS38の処理が実行される。
【0052】
一方、継続時間の計測が開始されてから3分以内に、CMステートが遷移すると、ステップS37では、継続時間は閾値を超えないと判定される。この場合、CMステートは、既にCM-CONNECTEDに遷移しているので、処理は、ステップS32に戻る。
【0053】
ステップS38において、送信制御部74は、コアネットワーク50に、C-Planeメッセージを送信させる。ここで、C-Planeメッセージは、端末21からコアネットワーク50への応答を要求するポーリングメッセージの一例である。また、一例として、C-Planeメッセージは、SMS、NIDD、または、PDU session modification commandとしてもよい。このようなメッセージが端末21で受信されると、端末21は、コアネットワーク50に応答するので、当該端末21のCMステートが、CM-IDLEからCM-CONNECTEDに遷移することになる。
【0054】
なお、ポーリングメッセージは、C-Planeメッセージに限られるものではなく、例えば、PingなどのU-Planeメッセージが、ポーリングメッセージとしてコアネットワーク50から端末21に送信されるようにしてもよい。すなわち、メッセージを受信した端末21のCMステートが、CM-IDLEからCM-CONNECTEDに遷移するものであれば、ポーリングメッセージとして用いることができる。
【0055】
ステップS38の処理の後、ステップS39において、所定の待機時間が経過したか否かが判定される。
【0056】
ステップS40において、ステート確認部72は、ステップS31で特定された端末のCMステートを取得する。ステップS41において、ステート確認部72は、ステップS40で取得したCMステートは、CM―IDLEであるか否かを判定する。
【0057】
ステップS41において、CM―IDLEであると判定された場合、当該端末21のCMステートが、CM-IDLEからCM-CONNECTEDに遷移したことになるので、処理は、ステップS32に戻る。
【0058】
なお、C-Planeメッセージに応答した端末21の状態の遷移がAMF51で管理されるCMステートに反映されるのに要する時間(すなわち、ステップS39の待機時間)が経過するのを待ってからCMステートがCM-IDLEであるか否かの判定が行われる。従って、端末21が圏外に位置しているか否かの判定は、ポーリングメッセージの送信後、所定の待機時間が経過した後で行われることになる。
【0059】
待機時間は、例えば、予め決められた時間であってもよい。また、端末21の状態の遷移がAMF51で管理されるCMステートに反映されるのに要する時間が充分に短い場合、ステップS39の処理は、スキップされるようにしてもよい。
【0060】
ステップS41において、CM―IDLEであると判定された場合、ステップS42の処理が実行される。ステップS42において、判定部76は、ステップS31で特定された端末は、圏外に位置していると判定する。例えば、
図4に示される端末21-3は、AMF51で管理されるRMステートがRM-REGISTEREDであるが、ステップS42では、端末21-3が圏外に位置していると判定されることになる。
【0061】
一例として、ステップS42の判定結果は、総合制御部71によりNEF52に送信され、NEF52からアプリケーションサーバ60に、端末21-3が圏外に位置していることを表す情報が送信される。すなわち、端末21が、コアネットワーク50を介してアプリケーションサーバ60と通信し、コアネットワーク50は、判定部76の判定結果を、アプリケーションサーバ60に提供する。
【0062】
また、ステップS42の判定結果は、総合制御部71によりAMF51、SMF(Session Management Function)、NWDAF54などのコアネットワークを形成するNF(Network Function)やアプリケーションサーバ60に送信されるようにしてもよい。この場合、AMF51は、端末21-3が圏外に位置していることを検知できるので、端末21-3のRMステートを、RM-REGISTEREDからRM-DEREGISTEREDに遷移させてもよい。
【0063】
このようにして、圏外判定制御装置70による圏外判定処理が実行される。圏外判定処理が実行されることで、アプリケーションサーバ60は、コアネットワーク50によって待受中と認識されている端末21が、実際には圏外に位置していることを検知することが可能となる。
【0064】
(閾値等設定処理の流れ)
次に、
図6のステップS37で用いられる閾値の詳細について説明する。この閾値は、圏外判定制御装置70の閾値設定部75によって、端末ごとに設定される。
【0065】
図7と
図8は、閾値等設定処理の一例について、流れを説明するフローチャートである。この処理は、例えば、
図6の処理の実行に先立って実行されるようにしてもよいし、
図6の処理の途中で実行されるようにしてもよい。例えば、
図6のステップS35とステップS36の間で、閾値等設定処理が実行されるようにしてもよい。
【0066】
図7のステップS61において、閾値設定部75は、設定される閾値に対応する端末21の属性情報を取得する。例えば、端末21―3の圏外判定処理に用いられる閾値が設定される場合、端末21―3の属性情報が取得される。一例として、属性情報は、端末の用途を表す情報であってもよいが、これに限られるものではない。
【0067】
端末の用途を表す属性情報は、例えば、当該端末がスマートフォンであるのか、IoTデバイスであるのか、自動車、ドローンなどの移動体、飛行体に取り付けられる端末であるか、などを特定する情報である。また、それぞれの端末がコアネットワーク50を運用するキャリアと契約しているサービスの内容などが属性情報に含まれてもよい。属性情報は、例えば、端末21からコアネットワーク50のCPFに送信され、圏外判定制御装置70に提供される。
【0068】
ステップS62において、閾値設定部75は、属性情報に基づく優先度を判定する。例えば、当該端末の用途が緊急通信に用いられる端末であることを示している場合、または、移動体や飛行体に取り付けられ、遠隔操作される端末であることを示している場合、当該端末の通信の優先度は高い。一方、当該端末の用途が、通常のスマートフォンであって、キャリアと低料金の契約がなされている端末であることを示している場合、当該端末の通信の優先度は低い。閾値設定部75は、例えば、属性情報に対応して優先度を識別するテーブルを有しているものとし、ここでは、ステップS61で取得された属性情報が、高、中、低の3つの優先度に分類されるものとする。
【0069】
このように、閾値設定部75は、属性情報に基づいて、コアネットワーク内での端末の通信の優先度を特定し、優先度に応じて閾値を設定する。
【0070】
ステップS62において、優先度が高いと判定された場合、ステップS64の処理が実行される。ステップS64において、閾値設定部75は、閾値T_pollingの値を、当該端末が無線リンク障害の判定に要する無線リンク障害判定時間T_RLFと同じ値(T_RLF×1)に設定する。
【0071】
端末21は、自身が圏外に位置するか否かを検知できるように、基地局41から送信される参照信号の受信品質を、所定の間隔(例えば、100ms)で検出するように構成されている。参照信号の受信品質が所定の閾値を下回ると、受信品質が低下したことを示すout‐of‐syncが検出される。このout‐of‐syncが所定の回数(N310)連続して検出されると、無線リンク障害(RLF:Radio Link Failure)を判定するためのタイマ(T310)が起動される。タイマ310の満了前に、参照信号の受信品質が閾値を以上とならない場合、端末21は、基地局41との間で無線リンク障害があったと判定する。すなわち、無線リンク障害判定時間T_RLFの値は、N310×100ms+T310によって算出される。なお、N310の値と、T310の値は、コアネットワーク50のCPFまたは基地局によって設定される。
【0072】
また、ステップS62において、優先度が低いと判定された場合、ステップS66の処理が実行される。ステップS66において、閾値設定部75は、閾値T_pollingの値を、タイマT3512により設定される時間の1/2(T3512×0.5)に設定する。なお、ステップS66において、閾値設定部75は、閾値T_pollingの値を、T_RLF×100のように設定してもよい。
【0073】
このように、閾値設定部75は、端末の用途に係る情報である属性情報を、コアネットワーク50から取得し、属性情報に基づいて閾値を設定する。また、閾値は、端末21が、予め設定された品質値より低い受信品質で基地局から送信される信号を受信したとき、無線リンク障害を判定するために要する判定時間に、所定の係数を乗じることにより算出され、端末21に対応してコアネットワーク50から取得される情報に基づいて所定の係数が定まる。
【0074】
一方、ステップS62において、優先度が中間である(「中」である)と判定された場合、ステップS63の処理が実行される。ステップS63において、閾値設定部75は、当該端末21のUEロケーションとビヘイビアを取得する。
【0075】
UEロケーションは、端末21の位置に係る情報であり、一例として、端末21をカバーするセル42に対応する基地局41が属するTA(Tracking Area)を表すTA情報とされる。
【0076】
ビヘイビアは、NWDAF54による解析結果に基づいて得られる情報とされる。NWDAF54は、例えば、コアネットワーク50のNF(Network Function)、OAM(Operation Administration and Management)などからデータを収集し解析する。ビヘイビアを参照することで、例えば、当該端末の移動速度、通信頻度などを特定することが可能となる。
【0077】
このように、閾値設定部75は、端末21の移動速度および通信頻度に係る情報であるビヘイビア情報と、端末の位置に係る位置情報とをコアネットワーク50からさらに取得し、属性情報、ビヘイビア情報および位置情報に基づいて閾値を設定する。
【0078】
ステップS63の処理の後、ステップS65において、閾値設定部75は、ステップS63で取得されたビヘイビアを参照することで、当該端末21のTAおよび移動速度を特定する。
【0079】
ステップS67において、閾値設定部75は、ステップS65で特定されたTAの地理的な広さを判定する。TAの地理的な広さは、例えば、当該TAに含まれる基地局のセルによってカバーされる面積の大小として判定され、例えば、予め設定された閾値より面積が大きい場合はTAが広いと判定され、閾値より面積が小さい場合はTAが狭いと判定される。ステップS67において、TAが広いと判定された場合、ステップS68の処理が実行される。
【0080】
ステップS68において、閾値設定部75は、ステップS65で特定された端末21の移動速度が高速であるか低速であるかを判定する。例えば、予め設定された閾値より端末21の移動速度が速い場合は移動速度が高速であると判定され、閾値より端末21の移動速度が遅い場合は移動速度が低速であると判定される。なお、端末が停止している場合、すなわち、移動速度が0kmである場合、移動速度は低速であると判定される。
【0081】
ステップS68において、移動速度が低速と判定された場合、ステップS70の処理が実行される。ステップS70において、閾値設定部75は、仮閾値Pの値を、T_RLF×1により算出する。
【0082】
一方、ステップS68において、移動速度が高速と判定された場合、ステップS71の処理が実行される。ステップS71において、閾値設定部75は、仮閾値Pの値を、T_RLF×4により算出する。
【0083】
一方、ステップS67において、TAが狭いと判定された場合、ステップS69の処理が実行される。ステップS69において、閾値設定部75は、ステップS65で特定された端末21の移動速度が高速であるか低速であるかを判定する。
【0084】
ステップS69において、移動速度が低速と判定された場合、ステップS72の処理が実行される。ステップS72において、閾値設定部75は、仮閾値Pの値を、T_RLF×2により算出する。
【0085】
一方、ステップS69において、移動速度が高速と判定された場合、ステップS73の処理が実行される。ステップS71において、閾値設定部75は、仮閾値Pの値を、T_RLF×8により算出する。
【0086】
このように、仮閾値Pは、無線リンク障害を判定するために要する判定時間であるT_RLFに基づいて算出される。また、ステップS70~ステップS73の処理で算出された仮閾値Pに、この後の処理で所定の係数が乗じられることで閾値T_pollingの値が設定される。
【0087】
ステップS67でTAの広さを判定し、ステップS68およびステップS69で端末21の移動速度を判定することで、当該端末21によりNAS Mobility Updateが実行される可能性の高さを判定できる。上述したように、端末21が移動することによって、異なるTAのセルに対応する基地局に接続されたとき、端末21は、NAS Mobility Updateを実行する。NAS Mobility Updateを実行した端末21のCMステートは、CM-CONNECTEDに遷移するので、ポーリングメッセージを送信しなくても、CMステートが遷移し得る。
【0088】
例えば、高速で移動する端末21は、TAをまたがって移動する可能性が高く、NAS Mobility Updateを実行する可能性も高い。また、TAが狭い場合、高速で移動する端末21は、TAをまたがって移動する可能性はさらに高く、NAS Mobility Updateを実行する可能性もさらに高い。このような端末に21対して、C-planeメッセージ(ポーリングメッセージ)を、
図6のステップS38で頻繁に送信させることは非効率的である。上述したように、ポーリングメッセージは、端末21のCMステートを遷移させるために送信されるものだからである。このため、ステップS71およびステップS73の処理では、無線リンク障害判定時間T_RLFに乗じられる値が大きくなり、閾値T_pollingの値も大きくなる。従って、ポーリングメッセージの送信のための閾値となる時間が長くなる。
【0089】
反対に、例えば、低速で移動する端末21は、TAをまたがって移動する可能性が低く、NAS Mobility Updateを実行する可能性も低い。また、TAが広い場合、低速で移動する端末21は、TAをまたがって移動する可能性はさらに低く、NAS Mobility Updateを実行する可能性もさらに低い。このような端末に21対しては、
図6のステップS38のC-planeメッセージ(ポーリングメッセージ)を早期に送信させるべきである。このため、ステップS70およびステップS72の処理では、無線リンク障害判定時間T_RLFに乗じられる値が小さくなり、閾値T_pollingの値も小さくなる。従って、ポーリングメッセージの送信のための閾値となる時間が短くなる。
【0090】
ステップS70~ステップS73の処理の後、
図8のステップS80の処理が実行される。ステップS80において、閾値設定部75は、ステップS63で取得されたビヘイビアを参照することで、通信頻度を特定する。ここで、通信頻度は、例えば、所定の間隔で定期的になされる通信であるか、または、不定期になされる通信であるかを示す情報として特定される。換言すれば、通信頻度は、当該端末21が周期的通信を実行するものであるか否かを表す情報であり、周期的通信に係る特性といってもよい。なお、不定期になされる通信は、イベントドリブン通信とも称される。
【0091】
ステップS81において、閾値設定部75は、ステップS81で特定された通信頻度が、周期的であるかイベントドリブンであるかを判定する。
【0092】
ステップS81において、通信頻度がイベントドリブンであると判定された場合、ステップS82の処理が実行される。ステップS82において、閾値設定部75は、閾値T_pollingの値を、仮閾値Pに所定の係数αを乗じた値(P×α)に設定する。係数αは、1つの値として予め決められていてもよいし、ステップS61で取得された属性情報に対応して定められる値であってもよい。例えば、当該端末とキャリアとの契約内容に応じて係数αの値が定まるようにしてもよい。
【0093】
ステップS81において、通信頻度が周期的であると判定された場合、ステップS83の処理が実行される。ステップS83において、閾値設定部75は、周期的通信における通信間隔は、仮閾値Pより小さいか否かを判定する。
【0094】
ステップS83において、通信間隔が仮閾値Pより小さいと判定された場合、ステップS84の処理が実行される。ステップS84において、閾値設定部75は、閾値T_pollingの値を、仮閾値Pに0.9を乗じた値に設定する。すなわち、閾値T_pollingの値が端末21の通信周期より大きい値にならないように設定される。なお、ステップS83では、閾値T_pollingの値が、無線リンク障害判定時間T_RLFと同じ値に設定されるようにしてもよい。
【0095】
一方、ステップS83において、通信間隔が仮閾値P以上であると判定された場合、閾値設定部75は、閾値T_pollingの値を、仮閾値Pと同じ値に設定する。
【0096】
図7のステップS64またはステップS66の処理が実行された後、閾値等設定処理は終了する。また、
図8のステップS82、ステップS84、またはステップS85の処理が実行された後、閾値等設定処理は終了する。
【0097】
このようにして、閾値等設定処理が実行される。
【0098】
(第1実施形態の効果)
以上に説明したように、本実施形態に係る圏外判定制御装置70によって、圏外判定処理が実行されることで、コアネットワーク50によって待受中と認識されている端末21が、実際には圏外に位置していることが検知される。例えば、コアネットワーク50では、
図4に示される端末21-3は、AMF51で管理されるRMステートがRM-REGISTEREDであるが、圏外判定制御装置70によって、端末21-3が圏外に位置していると判定されることになる。
【0099】
これにより、従来のようにT3512タイマの満了を待つことなく圏外に位置するか否か判定することができ、端末が圏外に位置することをより早く把握できるようにする技術を実現することができる。例えば、遠隔操作される端末や、移動体、飛行体などに取り付けられる端末などにおいて要求される、より短時間での端末との通信の可否の把握が可能となる。
【0100】
また、本実施形態に係る圏外判定制御装置70では、端末21からコアネットワーク50への応答を要求するポーリングメッセージを送信するタイミングを決めるための閾値が、端末21ごとに設定される。これにより、端末の属性、位置、ビヘイビアに応じて適切な送信頻度でポーリングメッセージを送信することが可能となる。例えば、ポーリングメッセージの送信頻度をいたずらに増加させることによる無線通信リソースの消費を抑制することができ、また、ポーリングメッセージに対する応答に伴う端末の電力消費を抑制することが可能となる。
【0101】
さらに、ポーリングメッセージとしてC-Planeメッセージを用いることで、端末に課金される通信費の増加を抑制することも可能となる。
【0102】
<第二実施形態>
第一実施形態においては、CMステートがCM-IDLEである状態が継続しているときに、ポーリングメッセージが送信されるまでの時間であるT=pollingを閾値として端末ごとに設定して圏外判定処理を実行する例について説明した。しかし、T=pollingに加えて、さらにポーリングメッセージの送信回数であるN_pollingが設定されるようにしてもよい。
【0103】
例えば、端末21の位置に対応するセル42において、基地局41から送信される信号の受信品質が低い場合などは、ポーリングメッセージの送信またはポーリングメッセージに対する応答の受信が失敗する可能性が高い。このような場合、ポーリングメッセージが再送されるようにする必要がある。このため、圏外判定制御装置70の閾値設定部75は、閾値T=pollingに加えて、ポーリングメッセージの送信回数N_pollingをさらに設定するようにしてもよい。
【0104】
例えば、NWDAF54では各セルでのイベントが解析されるので、NWDAF54において各セルでの再接続の発生回数を検出することができる。再接続の発生回数の多いセルは、基地局41から送信される信号の受信品質が低いと考えられるので、例えば、圏外判定制御装置70がNWDAF54から端末21の位置に対応するセルの再接続の発生回数を取得するようにすればよい。なお、端末21の位置に対応するセルを特定する情報は、例えば、AMF51から取得される。
【0105】
すなわち、閾値設定部75は、端末21が属するTAに含まれるセルに係るセル情報を、コアネットワーク50から取得し、セル情報に基づいて送信回数Nを設定する。
【0106】
一例として、閾値設定部75は、再接続の回数と、ポーリングメッセージの送信回数とを対応付けるテーブルを用いて、端末21の位置のセルに対応するN_pollingを設定する。再接続の回数と、ポーリングメッセージの送信回数とを対応付けるテーブルは、例えば、予め生成されて圏外判定制御装置70の記憶部などに記憶されているものとする。あるいは、再接続の回数に対して所定の演算を行うことにより、N_pollingが設定されるようにしてもよい。
【0107】
この場合、圏外判定制御装置70の送信制御部74は、
図6のステップS38において、N_pollingの値に対応する回数のC-Planeメッセージを、予め設定された間隔(例えば、10秒間隔)で送信する。例えば、送信制御部74は、N_pollingの値が2である場合、C-Planeメッセージが1回送信され、その10秒後に再度C-Planeメッセージが送信される。
【0108】
このように、N_pollingが設定される場合、圏外判定制御装置70の判定部76は、ポーリングメッセージが送信される都度、CMステートが遷移したか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、閾値設定部75は、ポーリングメッセージの送信回数Nをさらに設定し、判定部76は、ポーリングメッセージが送信される都度、接続管理状態において、当該端末の状態が端末のCMステートが遷移したか否かを判定するようにしてもよい。
【0109】
あるいは、判定部76は、N_pollingの値に対応する回数のポーリングメッセージが送信された後、1回だけCMステートが遷移したか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、閾値設定部75は、ポーリングメッセージの送信回数Nをさらに設定し、判定部76は、ポーリングメッセージがN回送信された後、接続管理状態において、当該端末の状態が遷移したか否かを判定するようにしてもよい。
【0110】
このように、ポーリングメッセージの送信回数が端末21ごとに設定されるようにすることで、端末21の位置に応じて最適な回数のポーリングメッセージを送信することが可能となる。これにより、無線通信リソースの消費および端末の電力消費を適正に抑制しつつ、より正確な圏外判定を行うことが可能となる。
【0111】
<第三実施形態>
また、T=pollingに加えて、ポーリングメッセージが送信された後、端末21が圏外に位置しているか否かの判定までの待機時間が、端末ごとに設定されるようにしてもよい。この場合、
図6のステップS39で用いられる待機時間T_waitが、端末ごとに設定されることになる。
【0112】
端末21には、DRX(Discontinuous Reception)に係る設定がなされていることがある。端末21のDRXに係る設定を特定する情報は、DRX情報としてコアネットワーク50の制御プレーン機能群から取得することが可能である。
【0113】
DRXに係る設定がなされている場合、端末21では信号が間欠的に受信される。このため、DRXに係る設定がなされていない端末21と比較して、DRXに係る設定がなされている端末21では、ポーリングメッセージに対する応答により時間を要する可能性が高い。
【0114】
このため、圏外判定制御装置70の閾値設定部75は、端末ごとに、ポーリングメッセージの送信後、判定部76が、端末のCMステートが遷移したか否かを判定する処理を実行するまでの待機時間をさらに設定するようにしてもよい。そして、閾値設定部75は、端末に設定されるDRX(Discontinuous Reception)に係るDRX情報を、コアネットワーク50から取得し、DRX情報に基づいて待機時間を設定するようにしてもよい。
【0115】
一例として、閾値設定部75は、DRX情報に含まれるDRX cycleの値に応じて待機時間を設定する。閾値設定部75は、DRX cycleの値と、待機時間とを対応付けるテーブルを用いて、T_waitを設定するようにしてもよいし、DRX cycleの値に対して所定の演算を行うことによりT_waitを設定するようにしてもよい。
【0116】
なお、待機時間T_waitの設定は、端末21においてeDRX(extended DRX)が設定されている場合にのみ行われるようにしてもよい。端末21にeDRXが設定されているか否かは、やはりDRX情報に基づいて特定することができる。この場合、さらに、T_pollingの値も、DRX情報に含まれるeDRX cycleの値に応じて設定されるようにしてもよい。
【0117】
一例として、閾値設定部75は、端末21においてeDRXが設定されている場合、T_pollingを、eDRX cycleのM倍(Mは正の整数)に設定し、T_waitを、eDRX cycleと同じ値に設定するようにしてもよい。
【0118】
このように、待機時間が端末21ごとに設定されるようにすることで、端末の電力消費を適正に抑制しつつ、さらに正確な圏外判定を行うことが可能となる。
<閾値、送信回数、待機時間の設定に関するバリエーション>
図9は、閾値T_polling、送信回数N_polling、待機時間T_waitの設定に関するバリエーションを説明する図である。
【0119】
T_pollingは、端末21自身の特徴、および端末21と基地局41やコアネットワークとの間での通信に係る各種の設定に関する特徴に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0120】
一例として、端末21は、属性情報から、スマートフォン(スマホ)、動かないIoTデバイス、または動くIoTデバイスに分類することができる。
【0121】
スマートフォンに分類された端末21は、さらに、通常の使い方で利用されるもの、優先制御サービスを享受して使われるもの、または車などと連携して使われるものに分類される。また、動かないIoTデバイスに分類された端末21は、CPE(Customer Premises Equipment)、スマートメーター、または遠隔操作デバイスに分類される。動くIoTデバイスに分類された端末21は、モバイルWi-Fi(登録商標)ルータ若しくはUSBドングル、ドローン、またはConnected Vehicleに分類される。さらに、ドローンに分類された端末21は、目視内飛行用のドローン、目視外飛行用のドローンに分類され、Connected Vehicleに分類された端末21は、自動運転LV2若しくはLV3、または自動運転LV4以上に分類される。
【0122】
例えば、通常の使い方で利用されるスマートフォン、CPE、または、モバイルWi-Fi(登録商標)ルータ若しくはUSBドングルに分類された端末21の優先度は低いと考えられるので、比較的長い時間としてのT_pollingが設定されるようにしてよい。一方、例えば、目視外飛行用のドローン、または、自動運転LV4以上に分類された端末21の優先度は高いと考えられるので、比較的短い時間としてのT_pollingが設定されるようにしてよい。
【0123】
また、属性情報による分類結果から、端末の通信能力、端末の利用可能電力量が特定され、端末の通信能力、端末の利用可能電力量に基づいて、T_polling、N_polling、またはT_waitの設定が行われるようにしてもよい。
【0124】
通信能力は、例えば、当該端末21から送信される電波の強度や、当該端末21の受信感度などである。例えば、端末21の最大送信電力、最低受信感度などの強弱により、当該端末21の通信能力の高低が特定されるようにしてもよい。一例として、通信能力が高い端末21と比較して、通信能力が低い端末21の閾値T_pollingは短い時間に設定され、送信回数N_pollingも大きい値に設定されるようにすることが可能である。
【0125】
また、利用可能電力量は、例えば、1回の充電により、当該端末21が消費できる電力量などである。例えば、端末21のバッテリー容量、充電後の経過時間などの大小により、当該端末21の利用可能電力量の大小が特定されるようにしてもよい。一例として、利用可能電力量が大きい端末21と比較して、利用可能電力量が小さい端末21の閾値T_pollingは長い時間に設定され、送信回数N_pollingも小さい値に設定されるようにすることが可能である。
【0126】
同様に、端末21は、ビヘイビアから移動の速さと通信頻度とを特定することができる。
図7を参照して上述した例では、移動速度は、低速または高速のいずれかに分類されると説明した。しかし、
図9に示されるように、端末21とともに移動する自動車が渋滞に巻き込まれている、端末21を保持するユーザが歩行中である、端末21を保持するユーザが屋内滞在中である、端末21を保持するユーザが自転車で移動中である、のように分類されてもよい。
【0127】
また、端末21と基地局41やコアネットワークとの間での通信に係る各種の設定に関する特徴としては、TAエリアの広さ、DRXに係る設定、T3512タイマの値、または、セルの再接続の多さが挙げられる。
【0128】
上述したように、TAの広さは、例えば、移動速度と組み合わせてNAS Mobility Updateが実行される可能性の高さの判定に用いることができる。DRXに係る設定は、例えば、待機時間T_waitの設定に用いられるようにすることができる。セルの再接続の多さは、例えば、ポーリングメッセージの送信回数N_pollingの設定に用いられるようにすることができる。
【0129】
また、T3512タイマの値は、AMF51によって変更され得る。例えば、T3512タイマの値として設定されている時間が通常より長い場合、または、PSM(Power Saving Mode)が用いられている場合、上述した実施形態において説明した閾値等設定処理とは異なる処理が実行されるようにしてもよい。
【0130】
第一実施形態乃至第三実施形態における閾値T_polling、送信回数N_polling、または待機時間T_waitの設定は、上述した端末21自身の特徴、および端末21と基地局41やコアネットワークとの間での通信に係る各種の設定に関する特徴に基づいて様々な方式で実行され得る。
【0131】
(ソフトウェアによる実現例)
圏外判定制御装置70の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0132】
後者の場合、圏外判定制御装置70は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図10に示す。
【0133】
コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを圏外判定制御装置70として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、圏外判定制御装置70の各機能が実現される。
【0134】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0135】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インターフェースを更に備えていてもよい。
【0136】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0137】
さらに、圏外判定制御装置70の各ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、各ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより各ブロックの機能を実現することも可能である。
【0138】
また、以上説明してきた本発明の各態様が奏する作用効果は、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」等の達成に貢献するものである。
【0139】
また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
10 5Gネットワーク通信システム
21 端末
41 基地局
42 セル
50 コアネットワーク
51 AMF
52 NEF
53 UPF
54 NWDAF
60 アプリケーションサーバ
70 圏外判定制御装置
71 総合制御部
72 ステート確認部
73 継続時間計測部
74 送信制御部
75 閾値設定部
76 判定部
【要約】
【課題】端末が圏外に位置することをより早く把握できるようにする技術を実現できるようにする。
【解決手段】コアネットワークが管理する端末の登録管理状態において、当該端末の状態が、コアネットワークに登録されていることを示す登録状態であり、かつ、コアネットワークが管理する端末の接続管理状態において、当該端末の状態が、当該端末とコアネットワークの制御プレーン機能との接続が確立されていないことを示すアイドル状態である場合、アイドル状態が継続している時間である継続時間を計測する計測部(73)と、計測された継続時間が閾値を超えた場合、端末からコアネットワークへの応答を要求するポーリングメッセージを、コアネットワークから端末に送信させる送信制御部(74)と、端末に対応してコアネットワークから取得される情報に基づいて、閾値を端末ごとに設定する閾値設定部(75)とを備える。
【選択図】
図5