(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解装置、及びそれを用いた低沸点熱分解油の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20240214BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022187194
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0165527
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520014176
【氏名又は名称】テギョン エスコ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEKYUNG ESCO CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】S-2402, 32, Songdogwahak-ro, Yeonsu-gu, Incheon, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ハク-サン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チャン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン-ウク
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0748624(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0310023(US,A1)
【文献】特開平10-168462(JP,A)
【文献】特開2006-89742(JP,A)
【文献】特開平10-95984(JP,A)
【文献】特開平10-195451(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0061788(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0045650(KR,A)
【文献】特開2003-267896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを無酸素雰囲気中で移送及び溶融させるように移送スクリューが駆動手段によって回転可能に備えられた溶融部と、
前記溶融部から供給された廃プラスチック溶融物を直接加熱方式で急速熱分解させて熱分解物を生成させる熱分解部と、
前記熱分解部での熱分解の後に生成された固形残渣を排出させる残渣排出部と、
前記熱分解部に、ガス流通路及び液体流通路の2つの通路で連結された反応蒸留塔部と、
前記反応蒸留塔部の上部にて分離された未凝縮ガスを加熱させた後、溶融部、熱分解部、及び反応蒸留塔部へと再循環させるガス再循環部と、
前記反応蒸留塔部の下部に残存する未反応物を、溶融部及び熱分解部へと再循環させる液相再循環部と、を含み、
前記ガス流通路は、熱分解部にて熱分解されたガスを、反応蒸留塔部へと移送して反応蒸留塔部にて、熱分解物の沸点に応じて分離して精製油を生成させ、前記液体流通路は、分解されていない未反応物が熱分解部と反応蒸留塔部との間にて流通されるようにし、前記反応蒸留塔部の下部では、未反応物を直接加熱方式で熱分解させることを特徴とする、廃プラスチック熱分解装置。
【請求項2】
前記反応蒸留塔の下部の温度は、熱分解部温度未満であることを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解装置。
【請求項3】
前記反応蒸留塔部は、別途の加熱又は冷却の手段によって反応蒸留塔部の一部を加熱又は冷却して、反応蒸留塔部の高さによる適正な温度分布を維持させることを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解装置。
【請求項4】
前記未凝縮ガスは水素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解装置。
【請求項5】
前記熱分解部は流動床(Fluidized Bed)反応器であることを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解装置。
【請求項6】
前記ガス再循環部から熱分解部及び反応蒸留塔部へと供給される未凝縮ガスは、廃プラスチックの溶融物及び未反応物と直接接触することを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解装置。
【請求項7】
前記精製油は炭素数5~12の炭化水素油であることを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の廃プラスチック熱分解装置を用いて低沸点熱分解油を製造することを特徴とする、低沸点熱分解油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックのリサイクルに関し、より詳細には、廃プラスチックの熱分解効率を高め、低沸点熱分解油の生産性を向上させることができる廃プラスチック熱分解装置、及びそれを用いた低沸点熱分解油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業社会が発展するにつれて、プラスチックの使用量が急速に増加しており、それに伴い、廃棄物である廃プラスチックの発生量も大きく増えている。このような傾向は、生活系、産業系及び建設系分野の全般にわたって共通しており、廃プラスチックを処理することが社会的なイシューとして台頭している。
【0003】
リサイクルできない廃プラスチックは、主に埋立又は焼却がなされている。これにより、焼却の場合、焼却による環境ホルモンの発生、臭気及び有害ガスの発生、二酸化炭素の発生などにより地球温暖化及び環境汚染を誘発するため、ますますその使用が制限されている。また、埋立をする場合には埋立地不足や生態系破壊などの副作用が発生し、埋立の条件は次第に悪化している。さらに、廃プラスチックは、自然界で分解され難いため、埋立を行う場合には、長期にわたって土壌中に残存するので土壌と水質を汚染させている。
【0004】
これにより、廃プラスチックを焼却又は埋立を行うことなくリサイクルする方案として、熱分解を用いた廃プラスチックの油化方法が知られており、かつその装置の研究開発が盛んに行われている。
【0005】
従来から使用されている熱分解装置としては、熱分解反応器に廃プラスチックを装入して外部から熱を加えるバッチ方式と、熱分解反応器に廃プラスチックを連続投入して外部から熱を加えながら連続熱分解する方式との、2つの方法がある。
【0006】
2つの方法のいずれも、短時間で熱分解に必要な熱を外部から集中的に加熱すると、反応器の内壁におけるコーク(coke;炭化物)の生成が激しく、熱伝達の効率が低下してまともに熱分解されないという問題点があり、急激な加熱で熱分解装置の各種設備が円滑に動作しないなどの多くの問題点があった。
【0007】
また、廃プラスチックを熱分解させる熱分解装置には、熱分解反応器の後段に蒸留塔を別途に設置し、配管を通じて熱分解ガスを蒸留塔に移送させて、蒸留塔に移送された熱分解ガスから、沸点に応じて重油などの精製油を生産する技術が開発されているが、熱分解油の生産量を高めるためには、これらの規模をそれぞれ最大化させなければならず、これらの装置の温度を上げ下げする過程でのエネルギーの消費量が多いため、コスト上昇及び安全事故の危険性が内在していた。
【0008】
一例として、韓国特許第0787958号では、熱分解された熱分解ガスから沸点に応じて精製油を生産する蒸留塔を、熱分解室の熱分解ガス排出口の上方に垂直に統合させて、間接加熱によって廃合成高分子化合物を連続的に熱分解する連続式熱分解システムを提示しているのであるが、前記連続式熱分解システムも、間接加熱方式で熱分解を行うことにより、熱伝達効率に劣り、熱分解室の内部温度が低いため、高沸点物質や未分解物が多量生産されるという欠点を持っているので、高品質の燃料生産が難しいという問題点があった。
【0009】
そこで、韓国特許第1180580号では、間接加熱による問題点を解決するために、溶融した熱可塑性樹脂を流動床分解器に連続投入し、予熱された触媒で熱可塑性樹脂を直接熱分解させ、直接熱分解された分解蒸気を一貫工程で連続的に分別蒸留塔に導入して低沸点油とワックスを連続的に分離させた後、分別蒸留塔の下方の固定床分解器の上部に落下する高沸点ワックス類を、触媒で再分解して、低分子に転換された再生油を回収する多段触媒熱分解工法を提示した。
【0010】
しかし、前記多段触媒熱分解工法では、分別蒸留塔の下部に備えられた触媒固定床分解器にワックス類が落下することにより、触媒固定床分解器のコーキング(炭化物生成)を誘発させてワックス類の再分解がまともに行われないだけでなく、一貫工程にて、流動床分解器で気相の熱分解された分解蒸気のみを分別蒸留塔に導入させることにより、流動床分解器に残っている液相の未分解高沸点物質により、流動床分解器の熱伝達を弱化させ、熱分解反応の速度を妨げて熱分解油の生産量を阻害するという問題点があった。
【0011】
これにより、廃プラスチック用熱分解装置が多数開発されたにも拘らず、熱分解効率が低く、高品質の燃料として適用できる低沸点熱分解油の生産量が低調であるため、産業現場では適切に実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国特許第0787958号(公開日:2006年3月30日)
【文献】韓国特許第1180580号(公開日:2010年6月9日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その主な目的は、廃プラスチックの熱分解効率を高め、低沸点熱分解油の生産性を向上させることができる廃プラスチック熱分解装置、及びそれを用いた低沸点熱分解油の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、廃プラスチックを無酸素雰囲気中で移送及び溶融させるように移送スクリューが駆動手段によって回転可能に備えられた溶融部と、前記溶融部から供給された廃プラスチック溶融物を直接加熱方式で急速熱分解させて熱分解物を生成させる熱分解部と、前記熱分解部での熱分解の後に生成された固形残渣を排出させる残渣排出部と、前記熱分解部に、ガス流通路及び液体流通路の2つの通路で連結された反応蒸留塔部と、前記反応蒸留塔部の上部にて分離された未凝縮ガスを加熱させた後、溶融部、熱分解部、及び反応蒸留塔部へと再循環させるガス再循環部と、前記反応蒸留塔部の下部に残存する未反応物を、溶融部及び熱分解部へと再循環させる液相再循環部と、を含み、前記ガス流通路は、熱分解部で熱分解されたガスを、反応蒸留塔部へと移送して反応蒸留塔部にて、熱分解物の沸点に応じて分離して精製油を生成させ、前記液体流通路は、分解されていない未反応物が熱分解部と反応蒸留塔部との間にて流通されるようにし、前記反応蒸留塔部の下部では、未反応物を直接加熱方式で熱分解させることを特徴とする、廃プラスチック熱分解装置を提供する。
【0015】
本発明の好適な一実施形態において、前記反応蒸留塔の下部の温度は、熱分解部温度未満であることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明の好適な一実施形態において、前記反応蒸留塔部は、別途の加熱又は冷却の手段によって反応蒸留塔部の一部を加熱又は冷却して、反応蒸留塔部の高さによる適正な温度分布を維持させることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明の好適な一実施形態において、前記未凝縮ガスは水素を含むことを特徴とすることができる。
【0018】
本発明の好適な一実施形態において、前記熱分解部は流動床(Fluidized Bed)反応器であることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明の好適な一実施形態において、前記ガス再循環部から熱分解部及び反応蒸留塔部へと供給される未凝縮ガスは、廃プラスチックの溶融物及び未反応物と直接接触することを特徴とすることができる。
【0020】
本発明の好適な一実施形態において、前記精製油は、炭素数5~12の炭化水素油であることを特徴とすることができる。
【0021】
本発明の他の実施形態は、前記廃プラスチック熱分解装置を用いて低沸点熱分解油を製造することを特徴とする、低沸点熱分解油の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、廃プラスチックを酸素と接触させることなく直接熱を加える熱分解部と、前記熱分解部にて生成された熱分解物を、沸点に応じて分離し、分解されていない未反応物を下部でさらに熱分解する反応蒸留塔部とを結合させて、一つの装置で連続的に廃プラスチックの熱分解を行うことにより、装置費や操業費などのコストを削減することができ、成分分離や熱分解反応などが複合的に起こるようにして、エネルギー消費を大幅に低減することができる。
【0023】
また、本発明は、間接加熱方式ではなく、直接加熱で廃プラスチックを急速熱分解させることにより、タールの生成を最小限に抑えることができ、廃プラスチックの熱分解により生成された気相の熱分解物を連続的に反応蒸留塔部に導入させて、沸点に応じて分離された高品質の精製油を連続的に回収することができ、熱分解部で分解されていない未反応物と、反応蒸留塔部から還流される高沸点熱分解物とをさらに熱分解して、低分子に転換させることにより、完全な熱分解が行われて高品質の低沸点熱分解油を高収率で回収することができる。
【0024】
また、本発明によれば、廃プラスチックの熱分解時に熱分解物から分離された未凝縮ガスを、熱分解部及び反応蒸留塔部へと再循環させて、直接加熱方式の熱伝達媒体と分解触媒として使用することにより、熱接触面積を最大化させ、熱分解反応速度を増加させて廃プラスチックの熱分解効率を大幅に向上させることができるだけでなく、熱分解部及び反応蒸留塔部の内部に残存する高沸点熱分解物を、一定の滞留時間後に繰り返し熱分解部へと再循環させることにより、熱伝達効率を増加させ、分解されていない未反応物をさらに分解することができる循環工程を構築することで、廃プラスチックの熱分解効率を高め、低沸点熱分解油の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態による廃プラスチック熱分解装置の概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施し得るように本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって、同様の部分には同様の符号を付した。
【0027】
本発明の明細書及び特許請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的又は辞書的な意味に限定解釈されず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
【0028】
本明細書に記載された「備える」、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数値、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを指すものであり、記載されていない他の機能、数値、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在又は付加される可能性を排除しない。
【0029】
本発明の明細書全体において、「A及び/又はB」は、A、B、又はA及びBを意味し、「熱分解」は、酸素を排除した条件で熱分解対象を加熱して、熱分解対象に含まれた化学物質を分解することを意味する。
【0030】
本発明は、廃プラスチックを無酸素雰囲気中で移送及び溶融させるように移送スクリューが駆動手段によって回転可能に備えられた溶融部と、前記溶融部から供給された廃プラスチック溶融物を直接加熱方式で急速熱分解させて熱分解物を生成させる熱分解部と、前記熱分解部にて熱分解の後に生成された固形残渣を排出させる残渣排出部と、前記熱分解部にガス流通路及び液体流通路の2つの通路で連結された反応蒸留塔部と、前記反応蒸留塔部の上部にて分離された未凝縮ガスを加熱させた後、溶融部、熱分解部及び反応蒸留塔部へと再循環させるガス再循環部と、前記反応蒸留塔部の下部に残存する未反応物を溶融部及び熱分解部へと再循環させる液相再循環部と、を含み、前記ガス流通路は、熱分解部にて熱分解されたガスを、反応蒸留塔部へと移送し、反応蒸留塔部にて熱分解物の沸点に応じて分離することで精製油を生成させ、前記液体流通路は、分解されていない未反応物が、熱分解部と反応蒸留塔部との間にて流通されるようにし、前記反応蒸留塔部の下部では、未反応物を直接加熱方式で熱分解させることを特徴とする、廃プラスチック熱分解装置に関する。
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明について、より詳細に説明する。
【0032】
図1を参照すると、本発明の実施形態による廃プラスチック熱分解装置100は、溶融部110、熱分解部120、残渣排出部130、反応蒸留塔部140、ガス再循環部150、及び液相再循環部160を、主な構成として含む。
【0033】
前記溶融部110は、廃プラスチック供給部111から廃プラスチックの供給を受けて廃プラスチックを溶融させながら、後述の熱分解部120へと移送させる。この際、前記溶融部へと供給される廃プラスチックは、図示されていない別途の装置や工程にて、フレーク状又はグラニュール状に粉砕させるか、或いは熱分解されやすいように前処理を行うことができる。
【0034】
前記溶融部110では、廃プラスチックの酸素接触を防止し、無酸素雰囲気を維持するために不活性ガス(inert gas)及び/又は反応蒸留塔部から再循環された未凝縮ガスでパージさせ、廃プラスチックが流入する際に酸素と共に流入しないように溶融部の流入口が密封されており、廃プラスチックを連続的に移送及び溶融させるように移送スクリュー112が駆動手段113によって回転可能に備えられる。
【0035】
前記移送スクリューによって溶融しながら移送された廃プラスチックの溶融物は、熱分解部120の内部に流入し、流入した溶融物は、窒素等の不活性ガス及び/又は後述の反応蒸留塔部140から再循環される高温の未凝縮ガスと接触させて急速熱分解を行う。
【0036】
前記反応蒸留塔部140から再循環される未凝縮ガスは、水素、メタンなどの炭化水素成分、特に水素が含有されており、これを、加熱の後に廃プラスチック溶融物に直接接触させる場合、直接加熱方式の熱伝達媒体の役割と共に分解触媒の役割を果たすことができるため、廃プラスチックの熱分解効率を向上させることができるとともに、高価な不活性ガスや触媒の使用量を低減することができる。
【0037】
一実施形態において、前記熱分解部は、熱伝達媒体へと流動させる流動床反応器(fluidized bed)であってもよく、このような熱分解部を含む本発明の実施形態による廃プラスチック熱分解装置は、バッチ式(batch type)、連続式(continuous type)等のいずれの方式でも運転が可能であるが、熱分解油の生産量の面で、連続式運転が望ましい。
【0038】
また、本発明の具体的な一実施形態において、熱分解部に流入する廃プラスチック溶融物は、その熱分解効率を高めることができる触媒を含んでもよい。ここで、触媒は、低コストの砂や黄土など、又はゼオライトなどの公知の熱分解触媒から選択されうるが、これらに特に限定されるものではない。
【0039】
前記熱分解部120に流入した廃プラスチックの溶融物は、上述したように、高温の不活性ガス及び/又は再循環された高温の未凝縮ガスと接触して、直接加熱熱分解される。ここで、前記高温の不活性ガス及び/又は未凝縮ガスの温度は、廃プラスチックの種類に応じて変わりうるが、常圧付近で300℃~600℃であり得る。もしも前記高温の不活性ガス及び/又は未凝縮ガスの温度が300℃未満である場合には、廃プラスチック溶融物の熱分解がまともに行われず、600℃を超える場合には、高温で廃プラスチック溶融物が炭化して熱分解油の回収率が低下するという問題点が発生しうる。
【0040】
一方、前記熱分解部で熱分解されて残った固形の残渣は、熱伝達を弱化させ、熱分解反応速度を妨げて熱分解油の生産量を阻害しうるので、一定の滞留時間以後には残渣排出部130を通じて熱分解部の外へと排出させることができる。前記残渣排出部130は、公知の熱分解装置の残渣排出部を適用することができ、一例として、移送スクリュー又はスクレーパーが備えられたホッパー部などを適用することができる。
【0041】
前記熱分解部120にて廃プラスチック溶融物の熱分解により生成された熱分解物は、ガス流通路121を通じて反応蒸留塔部へと供給され、熱分解部にて未分解となっている液相の未反応物は、液体流通路122を通じて反応蒸留塔の下部へと供給される。
【0042】
前記ガス流通路121を通じて反応蒸留塔部へと流入した熱分解物(点線矢印表示)は、反応蒸留塔部の温度分布を適切な範囲内に維持させることにより、熱分解物の沸点に応じて部分的に凝縮させて液相熱分解物と気相熱分解物に分離される。この際、前記液相熱分解物の少なくとも一部は、再び反応蒸留塔部の下方へと還流して、反応蒸留塔部に流入する気相熱分解物との気液接触が起こるのであり、この状態で、熱分解物の沸点に応じた成分分離が同時に起こるため、低沸点の熱分解物は反応蒸留塔部の上方に、高沸点の熱分解物は反応蒸留塔部の下方に、それぞれ向かうようになり、沸点に応じた精製油をそれぞれ回収することができる。前記回収された精製油は、使用目的に応じて後段で、追加の冷却又は分離精製を行うことができる。
【0043】
本発明では、熱分解物を低沸点に、より効率よく転換させるために、分解触媒(図示せず)を反応蒸留塔に含ませて用いることができる。本発明に用いられる分解触媒としては、熱分解物の分解反応を促進させることができる物質であれば、いずれのものでもよく、ニッケル、銅、アルミニウムなどの金属触媒とアルミナ、ゼオライトなどの触媒が用いられうる。また、広義の意味で熱分解物中に含有された塩化物、窒化物などの有害物質を除去するための白金、パラジウムなどの触媒や、活性炭などの吸着剤などを含んでもよい。
【0044】
一方、前記液体流通路122を通じして反応蒸留塔部の下部に導入された液相の未反応物(二重線矢印表示)は、反応蒸留塔部で分離された液相の高沸点熱分解物と共に再熱分解反応を行って低分子に分解させる。前記反応蒸留塔部の下部で行われる再熱分解反応は、熱分解部で行われる熱分解反応のように、高温の不活性ガス及び/又は再循環された未凝縮ガスを熱伝達媒体として用いて、未反応物と高沸点熱分解物とを接触させる直接加熱方式で行うことができる。
【0045】
この際、前記反応蒸留塔部の下部の温度は熱分解部の温度よりも低い温度に維持させることにより、熱分解部での過剰な二次分解反応を防止して廃プラスチックの炭化や、未凝縮ガスへの転換を最小限に抑えることができる。この際、前記反応蒸留塔の下部の温度は、300℃~500℃の範囲内で熱分解部温度未満であり得る。
【0046】
前記反応蒸留塔部の下部で再熱分解された気相の熱分解物は、前記反応蒸留塔部の上部へと移動して、沸点に応じて分離されて精製油を生成し、残りの液相の未反応物と固形の残渣は、熱分解物として再循環されて、追加の熱分解と外部への排出が行われる。
【0047】
上述した反応蒸留塔部140の温度分布は、公知の蒸留塔の温度分布のように最終精製油の成分沸点に応じて変わり、反応蒸留塔部の高さ、導入された熱分解物及び未反応物の組成と温度、反応蒸留塔部の圧力、反応蒸留塔部の還流条件などの様々な変数によって定められることができる。所望の範囲の温度分布を得るためには、前記変数を適切に調節しなければならず、これとは無関係に任意に温度分布を制御するために別途に反応蒸留塔を加熱又は冷却する方法を使用することもできる。
【0048】
前記反応蒸留塔部の上部は、効率の良い気液接触による成分分離機能を有する構造であれば、いずれの構造でも制限なく適用可能であり、例えば、一般に化学工程で使用される気液接触手段である、プレート型カラム(plate column)又はパックド型カラム(packed column)のカラムインターナル(column internal)をそのまま本発明の反応蒸留塔部として用いることができ、反応蒸留塔部の下部は、直接加熱方式の熱分解反応器構造であれば、いずれの構造でも制限なく適用可能であり、好ましくは流動床反応器構造であり得る。
【0049】
前記反応蒸留塔部の上部にて凝縮されていない、炭素数5未満の未凝縮ガスは、ガス再循環部150を通じて加熱させた後、上述した溶融部110、熱分解部120及び、反応蒸留塔部140の下部のうちの、いずれかへと再循環させることができる。
【0050】
前記ガス再循環部150は、未凝縮ガスを一定期間貯蔵することができる貯蔵部(図示せず)、及び/又は未凝縮ガスを加熱させる加熱部151を含むことができる。このとき、前記ガス再循環部の貯蔵部及び加熱部は、一般な貯蔵部と加熱部であってもよく、再循環される場所に応じて多数備えられ、加熱温度等のように再循環される未凝縮ガスの条件に応じて調節して作動させることができる。
【0051】
一方、前記反応蒸留塔部の下部に残存する高沸点未反応物は、液相再循環部160を通じて、溶融部110及び/又は熱分解部120へと供給させて、追加の熱分解を行うことができる。
【0052】
上述したように、本発明による廃プラスチック熱分解装置は、廃プラスチックの熱分解時に熱分解物から分離された高温の未凝縮ガスを、溶融部、熱分解部及び反応蒸留塔部のうちの少なくとも一つへと再循環させて、直接加熱方式の熱伝達媒体と分解触媒として使用することにより、熱接触面積を最大化させ、熱分解反応速度を増加させて、廃プラスチックの熱分解効率を大きく向上させることができるだけでなく、反応蒸留塔部内に残存する高沸点熱分解物を、一定の滞留時間以後に繰り返し溶融部及び/又は熱分解部へと再循環させることにより、熱伝達効率を増加させ、分解されていない未反応物をさらに分解することができるため、廃プラスチックの熱分解効率を高め、炭素数5~12の低沸点熱分解油の生産性を向上させることができる。
【0053】
このような構成を有する
図1の装置において廃プラスチックを供給して熱分解させることで低沸点熱分解油を生産する動作について具体的に説明する。
【0054】
本発明による廃プラスチック熱分解装置は、溶融部に廃プラスチックを供給させると、駆動手段によって移送スクリューが回転しながら廃プラスチックを溶融させ、溶融した廃プラスチック溶融物は、熱分解部へと移送される。前記熱分解部に移送された廃プラスチックの溶融物は、反応蒸留塔部から再循環された高温の未凝縮ガス及び不活性ガスによって直接加熱方式で急速熱分解されて、熱分解物、分解されていない未反応物及び固体の残渣として生成され、生成された固形の残渣は、残渣排出部を介して排出される。この際、前記熱分解部に生成された熱分解物(点線矢印)は、ガス流通路を通じて反応蒸留塔部に流入し、流入した熱分解物は、反応蒸留塔部で熱分解物の沸点に応じて分離されて精製油を生成させる。一方、前記熱分解部に生成された未分解未反応物(二重線矢印)は、液体流通路を通じて反応蒸留塔部の下部に流入する。前記流入した未反応物は、反応蒸留塔の下部から再循環された高温の未凝縮ガス及び不活性ガスによって、直接加熱方式で再熱分解されて、熱分解物、分解されていない未反応物及び固形の残渣として生成される。生成された熱分解物は、反応蒸留塔部で沸点に応じて分離されて精製油を生成させ、分解されていない未反応物及び固形の残渣は、熱分解部へと再循環させる。
【0055】
このように、本発明は、上述した廃プラスチック熱分解装置を用いて熱分解油を製造することにより、熱分解油を生産するための設備の稼動によるエネルギー消費効率を増大させるとともに、廃プラスチックの熱分解効率を高め、低沸点熱分解油の生産性を向上させることができる。
【0056】
以上、本発明による廃プラスチック熱分解装置、及びそれを用いた低沸点熱分解油の製造方法の好適な実施形態を説明したが、これは、少なくとも一つの実施形態として説明されるものであり、これにより本発明の技術的思想とその構成及び作用が制限されるものではない。本発明の技術的思想の範囲は、図面、又は図面を参照した説明によって限定/制限されない。また、本発明で提示された発明の概念と実施形態は、本発明の同一の目的を行うために、他の構造へと修正又は設計するための基礎であって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって使用できる。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者による修正又は変更された等価の構造は、特許請求の範囲に記載される本発明の技術的範囲に拘束されるものであって、特許請求の範囲に記載される発明の思想や範囲から外れない限度内にて、さまざまな変化、置換及び変更が可能であろう。
【符号の説明】
【0057】
100 廃プラスチック熱分解装置
110 溶融部
111 廃プラスチック供給部
120 熱分解部
121 ガス流通路
122 液体流通路
130 残渣排出部
140 反応蒸留塔部
150 ガス再循環部
151 加熱部
160 液相再循環部